説明

自己免疫疾患を同定するためにキメラ受容体を使用する高感度かつ迅速な方法

本発明は、自己免疫疾患の診断および管理において有用な方法および組成物を提供する。特に、本発明は、グレーブス病の診断および管理のための改良された方法および組成物を提供する。本発明の方法は、放射活性の必要性を回避するだけでなく、グレーブス病の診断のために伝統的に用いられる方法よりも非常に単純で、経済的で、かつ迅速であり、以前のルシフェラーゼに基づく自己抗体検出アッセイの感度および検出能力を改善する。そのような改善は、限定されるものではないが、デキサメタゾンなどの糖質コルチコイドの存在下でキメラTSH受容体を含むアッセイの優れた性能に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の診断において有用な方法および組成物を提供する。特に、本発明は、グレーブス病の診断および管理における使用のための方法および組成物を提供する。例えば、1つの組成物は、循環する甲状腺刺激免疫グロブリンに対する改良された感度および特異性を有するキメラ甲状腺刺激ホルモン受容体を含む。そのようなキメラ受容体を使用するアッセイを、糖質コルチコイドの存在下で最適化することができる。
【背景技術】
【0002】
グレーブス病(「広汎性中毒性甲状腺腫」とも呼ばれる)は、甲状腺に存在する受容体を認識し、これに結合する自己抗体の作用に起因する甲状腺機能亢進症の主要な原因であり、腺の増殖および甲状腺ホルモンの過剰生産をもたらす。グレーブス病は、小児期および青年期における甲状腺機能亢進症の最も頻繁な原因であると報告されている(BoterおよびBrown, J. Pediatr. 132: 612-618 (1998)を参照)。
【0003】
グレーブス病に関する現在の診断技術が、依然として高く望まれている。一般的には、市販の方法は面倒であり、困難である。他の方法では、診断を要する人への放射性トレーサーの投与が必要である。しかしながら、最も重要なことに、大多数の現在用いられている方法は、迅速、正確かつ費用効果的な試験を実施することができるような十分な感度を欠いている。
【0004】
依然として必要とされているものは、安全、簡便、高感度、特異的、かつ費用効果的である、グレーブス病のためのアッセイ系である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、自己免疫疾患の診断および管理において有用な方法および組成物を提供する。特に、本発明は、グレーブス病の診断および管理のための方法および組成物を提供する。例えば、1つの組成物は、循環する甲状腺刺激免疫グロブリンのための改良された感度および特異性を有するキメラ甲状腺刺激ホルモン受容体を含む。そのようなキメラ受容体を用いるアッセイを、糖質コルチコイドの存在下で最適化することができる。
【0006】
一実施形態においては、本発明は、a)i)キメラTSH受容体およびルシフェラーゼ遺伝子をコードする安定にトランスフェクトされたベクターを含む細胞系;ii)グレーブス病を有すると疑われた患者に由来する血清サンプル;およびiii)糖質コルチコイドを含む細胞培養培地を提供すること;b)ルシフェラーゼ遺伝子が検出可能なシグナルを放出するような条件下で、該血清サンプルと、該細胞系および培地とを接触させることを含む方法を意図する。一実施形態においては、前記方法はさらに、工程c)サンプル中に存在する甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗体濃度と相関するシグナル強度を測定することを含む。一実施形態においては、糖質コルチコイドを、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、またはコルチゾンを含む群より選択する。一実施形態においては、前記接触はさらに、ポリエチレングリコールを含む。一実施形態においては、キメラTSH受容体は、ラット絨毛膜ホルモンゴナドトロピン受容体に由来する(から誘導された)アミノ酸配列を含む。一実施形態においては、前記アミノ酸配列は、ヒトTSH受容体アミノ酸配列のアミノ酸残基262-335に対応する73個のアミノ酸を含む。一実施形態においては、血清サンプルは、TSH受容体自己抗体を含む。一実施形態においては、自己抗体はTSH刺激自己抗体を含む。一実施形態においては、自己抗体はTSH阻害抗体を含む。
【0007】
一実施形態においては、本発明は、キメラTSH受容体と、血清TSH自己抗体を検出することができるルシフェリン-ルシフェラーゼ系であって、糖質コルチコイドを含む前記系とを含むキットを意図する。一実施形態においては、糖質コルチコイドを、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、またはコルチゾンを含む群より選択する。一実施形態においては、前記受容体は、ヒトTSH受容体アミノ酸配列を含む。一実施形態においては、前記受容体は、ラット絨毛膜ホルモン受容体アミノ酸配列を含む。一実施形態においては、ラット受容体アミノ酸配列は、アミノ酸残基262-335を含む。一実施形態においては、前記キットはさらに、キメラTSH受容体およびルシフェリン-ルシフェラーゼ系を発現することができる細胞系を含む。一実施形態においては、前記キットはさらに、ポリエチレングリコールを含む。一実施形態においては、前記キットはキメラTSH受容体およびルシフェラーゼ遺伝子をコードするベクターを含む。一実施形態においては、前記ベクターはさらに、該ベクターに機能し得る形で連結されたプロモーターを含む。一実施形態においては、前記プロモーターは、糖タンパク質αサブユニットプロモーターを含む。一実施形態においては、前記細胞系は、CHO細胞を含む。一実施形態においては、前記細胞系は、RD細胞を含む。一実施形態においては、前記キットはさらに、説明書を含む。
【0008】
一実施形態においては、本発明は、試験サンプル中の甲状腺刺激自己抗体の存在を決定する方法であって、a)i)甲状腺刺激自己抗体を含むと疑われる試験サンプル、ii)試験手段内に含まれる糖質コルチコイドを含む培養細胞であって、該細胞がキメラTSH受容体とルシフェリン-ルシフェラーゼ系を発現する前記細胞、およびiii)ポリエチレングリコールを提供すること;b)甲状腺刺激抗体がルシフェリン-ルシフェラーゼ系を用いて検出可能であるような条件下で前記培養細胞とポリエチレングリコールに前記試験サンプルを曝露すること;ならびにc)検出可能な甲状腺刺激抗体の存在について観察することを含む、前記方法を提供する。一実施形態においては、糖質コルチコイドを、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、またはコルチゾンを含む群より選択する。1つの好ましい実施形態においては、培養細胞を、RDlucおよびCHORluc細胞からなる群より選択する。別の実施形態においては、観察をルミノメーターを用いて行う。さらなる実施形態においては、cAMP濃度を、ルシフェリン-ルシフェラーゼ系により決定する。さらに別の実施形態においては、前記方法はさらに、増殖培地を含むが、他の実施形態においては、前記方法はさらに、刺激培地を含む。いくつかの特に好ましい実施形態においては、培養細胞を増殖培地に曝露した後、試験サンプルを曝露する。さらなる実施形態においては、培養細胞を、試験サンプルを含む刺激培地に曝露する。他の特に好ましい実施形態においては、刺激培地はポリエチレングリコールを含む。
【0009】
本発明はまた、試験サンプル中の甲状腺刺激自己抗体の存在を決定する方法であって、a)i)甲状腺刺激自己抗体を含むと疑われる試験サンプル、ii)糖質コルチコイドを含む培養細胞であって、試験手段内に含まれるRD-RlucまたはCHO-Rluc細胞を含む群より選択され、キメラTSH受容体を発現する前記細胞、およびiii)ポリエチレングリコールを提供すること;b)甲状腺刺激抗体がルシフェリン-ルシフェラーゼ系を用いて検出可能であるような条件下で、該試験サンプルを該培養細胞とポリエチレングリコールに曝露すること;ならびにc)検出可能な甲状腺刺激抗体の存在について、ルミノメーターを用いて観察することを含む、前記方法を提供する。一実施形態においては、糖質コルチコイドを、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、またはコルチゾンを含む群より選択する。さらなる実施形態においては、cAMP濃度を、ルシフェリン-ルシフェラーゼ系により決定する。いくつかの実施形態においては、前記方法はさらに、増殖培地を含むが、他の実施形態においては、前記方法はさらに、刺激培地を含む。いくつかの特に好ましい実施形態においては、培養細胞を増殖培地に曝露した後、試験サンプルに曝露する。さらに他の実施形態においては、培養細胞を、試験サンプルを含む刺激培地に曝露する。さらに他の好ましい実施形態においては、刺激培地はポリエチレングリコールを含む。
【0010】
本発明はまた、試験サンプル中の甲状腺刺激自己抗体の存在を決定する方法であって、a)i)甲状腺刺激自己抗体を含むと疑われる試験サンプル、ii)糖質コルチコイドを含む培養細胞であって、試験手段内に含まれるRD-RlucまたはCHO-Rluc細胞を含む群より選択され、キメラTSH受容体を発現する前記細胞、iii)増殖培地、およびiv)ポリエチレングリコールを含む刺激培地を提供すること;b)該培養細胞を増殖培地に曝露して、増殖細胞を産生させること;c)甲状腺刺激抗体がルシフェリン-ルシフェラーゼ系を用いて検出可能であるような条件下で、該試験サンプルを増殖細胞と刺激培地に曝露すること;ならびにd)検出可能な甲状腺刺激抗体の存在について、ルミノメーターを用いて観察することを含む、前記方法を提供する。一実施形態においては、糖質コルチコイドを、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、またはコルチゾンを含む群より選択する。さらなる実施形態においては、cAMP濃度を、ルシフェラーゼ-ルシフェリン系により決定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】6%PEG-8000を含む刺激培地を用いるアッセイにおける、3つのグレーブス病IgGサンプル(未治療のグレーブス病から得たもの)の連続3倍希釈液に関する結果を提供する。
【図2】CHO-Rlucルシフェラーゼの結果と、35人の未治療のグレーブス病患者に由来するIgGに関するFRTL-5 cAMPの結果との比較を提供する。
【図3】CHO-Rlucルシフェラーゼの結果と、35人の未治療のグレーブス病患者に由来するIgGに関するCHO-R cAMPの結果との比較を提供する。
【図4】CHO-R cAMPの結果と、35人の未治療のグレーブス病患者に由来するIgGに関するFRTL-5 cAMPの結果との比較を提供する。
【図5】CHO-Rluc細胞のbTSHに対する応答の直線性を示す。
【図6】FRTL-5細胞を用いる公知のTSI結果を含むサンプル群に関する結果を示す(LCA TSI標本の10μlサンプル)。
【図7】正常サンプル群に関する結果を示す(10μlのAML「正常」標本)。
【図8】2,324塩基対を含み、730アミノ酸をコードするキメラhTSH/mLH(Mc4)受容体のDNA配列の一実施形態を示す。イタリック体の文字はラットLHR配列である。ラットLHR配列中の「*」(T)は、野生型配列においてはGである。このGからTへの突然変異は、アルギニンからセリンへのアミノ酸変化をもたらした。
【図9】サイクリックAMP(cAMP)調節エレメント(CRE)(AF401991)を含む236個のヌクレオチドの糖タンパク質αサブユニットプロモーターと、HEK細胞からPCRにより増幅されたGPHプロモーターとの配列アラインメントの一実施形態を示す。影付きの領域は相同性を示す。強調されていない領域は、プラスミド中のプロモーターのフランキング領域を表す。
【図10−1】陰性および陽性のTSI含有血清に対するCHO-RMc4、RD-RMc4およびCHO-RLuc細胞系の応答を示す例示データを提供する。図10A:TSI陰性および陽性血清で誘導されたCHO-RLucおよびCHO-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイを示す。図10B:TSI陰性および陽性血清で誘導されたCHO-RLucおよびCHO-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイから誘導されたS/N比を示す。
【図10−2】陰性および陽性のTSI含有血清に対するCHO-RMc4、RD-RMc4およびCHO-RLuc細胞系の応答を示す例示データを提供する。図10C:TSI陰性および陽性血清で誘導されたCHO-RLucおよびRD-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイを示す。図10D:TSI陰性および陽性血清で誘導されたCHO-RLucおよびRD-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイから誘導されたS/N比を示す。
【図10−3】陰性および陽性のTSI含有血清に対するCHO-RMc4、RD-RMc4およびCHO-RLuc細胞系の応答を示す例示データを提供する。図10E:TSI陰性および陽性血清で誘導されたCHO-RLuc、CHO-RMc4およびRD-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイから誘導されたS/N比を示す。
【図11】血清希釈プロフィールに応答するRD-RMc4およびCHO-RLuc細胞系に関するシグナル対ノイズ(S/N)比を示す例示的データを提供する。図11A:同じ希釈率のTSI陽性血清で誘導されたCHO-RLucおよびRD-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイに由来するS/N比を示す。図11B:TSI陽性血清の希釈液で誘導されたCHO-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイに由来するS/N比を示す。図11C:より高い希釈率のTSI陽性血清で誘導されたCHO-RMc4細胞系に関するルシフェラーゼアッセイに由来するS/N比を示す。
【図12】CHO-RMc4細胞系とCHO-RLuc細胞系の間のTSH感度を比較する例示的データを提供する。
【図13】CHO-RMc4とCHO-RLuc細胞系を用いるヒト血清に由来するシグナル対ノイズ比の分布を提供する例示的データを提供する。
【図14】臨床患者血清サンプルに対するCHO-RMc4、RD-RMc4およびCHO-RLuc細胞系の相対感度を示す例示的データを提供する。
【図15】例示的アミノ酸配列:黄体形成ホルモン受容体を提供する。図15A:カリトリックス・ジャッカス(Callithrix jacchus)(シロミミマーモセット)CAJ57370。図15B:コツルニックス・ジャポニカ(Coturnix japonica)(日本ウズラ)AAB32614。図15C:ガルス・ガルス(Gallus gallus)(ニワトリ)NP_990267。図15D:ムス・ムスクラス(Mus musculus)(マウス)AAB24402。図15E:ボス・タウラス(Bos taurus)(ウシ)NP_776806。
【図16】試験プレート中のTSIサンプルの代表的配置を例示する。
【図17】40μMのデキサメタゾンと比較した場合、代用糖質コルチコイドであるフルチカゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾンおよびコルチゾンが、同じシグナル強度のCHO-RMc4アッセイを提供することを示す例示的な相対光単位(RLU)データを提供する。
【図18】代用糖質コルチコイドであるフルチカゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾンおよびコルチゾンが、改良されたCHO-RMc4アッセイを提供することを示す例示的な血清参照単位率(SSR%)データを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書および特許請求の範囲における用語「サンプル」および「標本」は、その最も広い意味で用いられる。一方で、それらは標本または培養物を含むことを意味する。他方で、それらは生物サンプルおよび環境サンプルの両方を含むことを意味する。これらの用語は、限定されるものではないが、体液(例えば、血液)、ならびに固形組織などのヒトおよび他の動物から得られる全ての型のサンプルを包含する。
【0013】
生物サンプルは、ヒトなどの動物、液体もしくは組織、乳製品などの食品および食品成分、野菜、肉および肉副産物、ならびに廃棄物であってよい。これらの例は、本発明に適用可能なサンプル型を限定すると解釈されるべきではない。
【0014】
本明細書で用いられる用語「キット」は、試薬および他の材料の組合せに関連して用いられる。
【0015】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、特定の抗原と反応する任意の免疫グロブリン分子に関連して用いられる。この用語は、任意の起源(例えば、ヒト、げっ歯類、非ヒト霊長類、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなど)から得られる任意の免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなど)を包含すると意図される。
【0016】
本明細書で用いられる用語「抗原」は、抗体と反応することができる任意の物質に関連して用いられる。この用語は、任意の抗原および「免疫原」(すなわち、抗体の形成を誘導する物質)を包含すると意図される。かくして、免疫原性反応においては、抗体は抗原(免疫原)または抗原の一部の存在に応答して産生される。
【0017】
本明細書で用いられる用語「抗原断片」および「抗原の一部」は、抗原の一部に関連して用いられる。抗原断片または一部は、抗原全体の小さい割合から大きい割合までであるが、抗原の100%ではない、様々なサイズで生じてもよい。しかしながら、抗原の少なくとも一部が特定される状況では、抗原全体が存在してもよいことが意図される。抗原断片または一部は、抗体により認識される「エピトープ」を含んでもよいが、含む必要はない。抗原断片または部分はまた、免疫原性であっても、そうでなくともよい。
【0018】
本明細書で用いられる用語「自己抗体」とは、個体自身の組織または細胞の抗原性構成要素に対して反応することができる(例えば、抗体は「自己」抗原を認識し、これに結合する)抗体を指す。
【0019】
本明細書で用いられる用語「免疫アッセイ」は、抗体を、抗原の検出において用いる任意の方法に関連して用いられる。限定されるものではないが、直接免疫アッセイ、間接免疫アッセイ、および「サンドイッチ」免疫アッセイなどの、様々な免疫アッセイ形式がこの定義により包含されると意図される。しかしながら、本発明は、任意の特定の形式に限定されると意図されない。ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光アッセイ(IFA)、ならびに限定されるものではないが、ELISA、RIAおよび/もしくはIFA方法に関する変形などの他のアッセイ形式を含む他の形式が、本発明の方法において有用であると意図される。
【0020】
本明細書で用いられる用語「捕捉抗体」とは、抗原に結合することによって、その後適用される抗体による抗原の認識を可能にするのに用いられる抗体を指す。例えば、捕捉抗体をマイクロタイターウェルに結合させることができ、ウェルに添加されたサンプル中に存在する目的の抗原に結合させるのに役立つ。次いで、別の抗体(「一次抗体」と呼ばれる)を用いて、抗原-抗体複合体に結合させて、抗体-抗原-抗体複合体から構成される「サンドイッチ」を形成させる。この複合体の検出を、いくつかの方法により実施することができる。一次抗体を、ビオチン、酵素、蛍光マーカー、または放射活性などの標識を用いて調製し、この標識を直接使用して検出することができる。あるいは、一次抗体を認識する標識された「二次抗体」または「リポーター抗体」を添加し、抗体-抗原-抗体-抗体複合体から構成される複合体を形成させることができる。再度、次いで好適なリポーター試薬を添加して、標識抗体を検出する。任意の数のさらなる抗体を、必要に応じて添加してもよい。また、これらの抗体を、限定されるものではないが、酵素、蛍光マーカー、または放射活性などのマーカーを用いて標識することもできる。
【0021】
本明細書で用いられる用語「リポーター試薬」または「リポーター分子」は、抗原に結合した抗体の存在を検出することができる化合物に関連して用いられる。例えば、リポーター試薬は、酵素基質に結合させた比色物質であってよい。抗体と抗原の結合の際に、前記酵素はその基質上で作用し、色の生成を引き起こす。他のリポーター試薬としては、限定されるものではないが、蛍光および放射性の化合物または分子が挙げられる。この定義はまた、検出系の一部として、ビオチンおよびアビジンに基づく化合物(例えば、限定されるものではないが、ニュートラアビジンおよびストレプトアビジン)の使用も包含する。本発明の一実施形態においては、ビオチン化抗体を、アビジン被覆固相支持体と共に本発明において用いることができる。
【0022】
本明細書で用いられる用語「シグナル」は、反応、例えば、抗体の抗原への結合が起こった指示因子に関連して用いられる。放射活性、蛍光反応、発光および酵素反応の形態のシグナルを、本発明と共に用いることができると意図される。このシグナルを、定量的ならびに定性的に評価することができる。
【0023】
本明細書で用いられる用語「シグナル強度」とは、反応基質の量と相関する、シグナル強度の規模を指す。例えば、ルシフェリン-ルシフェラーゼ系は、甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗体により生成されたcAMPの量と相関するシグナル強度を生成する。
【0024】
本明細書で用いられる用語「ルシフェリン-ルシフェラーゼ系」とは、得られる発光を検出することができるような条件下、基質(すなわち、例えば、cAMP)の存在下でのルシフェリンとルシフェラーゼの接触を可能にする任意のプロセスまたは方法を指す。そのような系を、ベクターによりコードされるトランスフェクトされた宿主細胞内に含有させるか、または内容物を一緒に混合することができる個別のキット容器中で提供することができる。
【0025】
本明細書で用いられる用語「固相支持体」は、抗体、抗原、および他の化合物などの試薬を結合させることができる任意の固体材料に関連して用いられる。例えば、ELISA方法においては、マイクロタイタープレートのウェルは固相支持体を提供することが多い。固相支持体の他の例としては、顕微鏡スライド、カバースリップ、ビーズ、粒子、細胞培養フラスコ、ならびに多くの他のアイテムが挙げられる。
【0026】
本明細書で用いられる用語「細胞染色」は、その可視化を増強する細胞を標識または染色するのに用いられる方法に関連して用いられる。この染色または標識を、限定されるものではないが、蛍光色素、酵素、金、およびヨウ素などの様々な化合物の使用を介して達成することができる。この定義は、試験(すなわち、アッセイ)を、サンプルに対してin situで行う、「in situ発色アッセイ」などの方法を包含すると意図される。また、in situ発色アッセイは、免疫アッセイ(すなわち、ELISA)の使用を含むと意図される。
【0027】
本明細書で用いられる用語「増殖培地」とは、限定されるものではないが、ビタミン、アミノ酸、コファクター、ならびに培養中の細胞の増殖および複製を増強するための任意の他の好適な栄養素などの様々な増殖因子を含むように製剤化された培養培地を指す。
【0028】
本明細書で用いられる用語「刺激培地」とは、TSHおよび/またはTSIによる刺激を増強することによって、得られるシグナル(例えば、cAMPおよび/またはルシフェラーゼ)を増加させるための、特定の構成要素(例えば、塩化ナトリウム)が欠損するように製剤化された培地を指す。
【0029】
本明細書で用いられる用語「飢餓培地」とは、増殖培地中に含まれる少なくとも1種の増殖因子が欠損するように製剤化された培地を指す。好ましい実施形態においては、この培地は、短時間に渡って細胞を持続させるのに必要な塩およびグルコースのみを含む。
【0030】
本明細書で用いられる用語「生物」および「微生物」は、限定されるものではないが、ウイルスおよび細菌、例えば、リケッチアおよびクラミジアなどの任意の種または型の微生物を指す。かくして、この用語は、限定されるものではないが、DNAおよびRNAウイルス、ならびにリケッチア目およびクラミジア目内の生物を包含する。
【0031】
本明細書で用いられる用語「培養物」とは、1種以上の微生物を含むと疑われる任意のサンプルまたは標本を指す。「純粋培養物」は、存在する生物が、特定の属および種の1つの株のみである培養物である。これは、2種以上の属および/または種の微生物が存在する培養物である、「混合培養物」と対照的である。
【0032】
本明細書で用いられる用語「細胞型」とは、その起源または特性と関係なく、任意の細胞を指す。
【0033】
本明細書で用いられる用語「細胞系」とは、一次細胞系、有限細胞系、連続細胞系、および形質転換細胞系などの、in vitroで培養された細胞を指す。
【0034】
本明細書で用いられる用語「一次細胞培養物」および「一次培養物」とは、動物または昆虫組織から直接得られた細胞培養物を指す。これらの培養物を、成体ならびに胎児組織から誘導することができる。
【0035】
本明細書で用いられる用語「有限細胞系」とは、限られた数の集団を老化の前に倍加させることができる細胞培養物を指す。
【0036】
本明細書で用いられる用語「連続細胞系」とは、一次または有限細胞系中の細胞集団が、見かけ上は増殖を停止するが、細胞集団が、減少した細胞サイズ、より高い増殖速度、より高いクローニング効率、増加した腫瘍原性、および可変染色体補体の一般的特性と共に出現する「危機」期を受けた細胞培養物を指す。これらの細胞は、in vitroでの同時的形質転換から得られることが多い。これらの細胞は、無限の寿命を有する。
【0037】
本明細書で用いられる用語「形質転換細胞系」とは、上記の特性を有する連続細胞系中に形質転換された細胞培養物を指す。形質転換細胞系を、腫瘍組織から直接誘導し、また、全ウイルス(例えば、SV40もしくはEBV)、またはベクター系を用いて形質転換ウイルスから誘導されたDNA断片を用いるin vitroでの細胞の形質転換により誘導することができる。
【0038】
本明細書で用いられる用語「ハイブリドーマ」とは、2種の細胞型を一緒に融合させることにより産生された細胞を指す。一般的に用いられるハイブリドーマとしては、免疫された動物に由来する抗体を分泌するB細胞と、in vitroで無限に増殖することができる悪性ミエローマ細胞系との融合により作製されたものが挙げられる。これらの細胞をクローニングし、これを用いてモノクローナル抗体を調製する。
【0039】
本明細書で用いられる用語「混合細胞培養物」とは、2種の型の細胞の混合物を指す。いくつかの好ましい実施形態においては、前記細胞は、遺伝子操作されていない細胞系であるが、他の好ましい実施形態においては、前記細胞は遺伝子操作されている細胞系である。いくつかの実施形態においては、1種以上の細胞型は、「許容性」(すなわち、培養物内で複製し、細胞から細胞へ拡散することができるウイルス)である。本発明は、用いられる全ての細胞型が遺伝子操作されていない混合細胞培養物、1種以上の細胞型が遺伝子操作され、残りの細胞型が遺伝子操作されていない混合物、ならびに全ての細胞型が遺伝子操作された混合物などの、サンプル中のウイルスの検出、同定、および/または定量化にとって好適な細胞型の任意の組合せを包含する。
【0040】
本明細書で用いられる用語「細胞内寄生生物の検出にとって好適な」とは、サンプル中の細胞内寄生生物の存在を検出するのにうまく用いることができる細胞培養物を指す。好ましい実施形態においては、細胞培養物は、感染に対するその罹患性を維持することができ、および/または細胞内寄生生物の複製を支援する。本発明は、特定の細胞型または細胞内寄生生物に限定されないと意図される。
【0041】
本明細書で用いられる用語「感染に対する罹患性」とは、ウイルスまたは別の細胞内生物に感染されるようになる細胞の能力を指す。それは「許容性」感染を包含するが、この用語が、細胞は感染するが、生物は必ずしも複製、および/または感染した細胞から他の細胞に拡散しない環境を包含すると意図されるため、この用語がそのように制限されることを意図しない。本明細書で用いられる語句「ウイルス増殖」は、許容性細胞型から、許容性もしくは罹患性の特性を有するさらなる細胞への感染性ウイルスの拡散または継代を説明するものである。
【0042】
本明細書で用いられる用語「単層」、「単層培養物」、および「単層細胞培養物」とは、基質に接着し、厚さが1個の細胞である層として増殖する細胞を指す。単層を、限定されるものではないが、フラスコ、チューブ、カバースリップ(例えば、シェルバイアル)、ローラーボトルなどの様々な容器中で増殖させることができる。また、細胞を、限定されるものではないが、ビーズなどの微小担体に結合させて増殖させることもできる。
【0043】
本明細書で用いられる用語「懸濁液」および「懸濁培養物」とは、基質に結合させなくても生存し、増殖する細胞を指す。典型的には、懸濁培養物を、造血幹細胞、形質転換細胞系、および悪性腫瘍に由来する細胞を用いて製造する。
【0044】
本明細書で用いられる用語「培養培地」および「細胞培養培地」とは、in vitroで(すなわち、細胞培養物)の細胞の増殖を支援するのに好適である培地を指す。この用語は、任意の特定の培養培地に限定されないと意図される。例えば、この定義は過増殖培地ならびに維持培地を包含すると意図される。実際、この用語は目的の細胞培養物の増殖にとって好適な任意の培養培地を包含すると意図される。
【0045】
本明細書で用いられる用語「偏性細胞内寄生生物」(または「偏性細胞内生物」)とは、その生存および/または複製に細胞内環境を必要とする任意の生物を指す。偏性細胞内寄生生物としては、ウイルス、ならびに限定されるものではないが、i)リケッチア目の多くのメンバー:例えば、コクシエラ属、リケッチア属およびエールリヒア属;ならびにii)クラミジア目:例えば、クラミジア・トラコマティス(C. trachomatis)、クラミジア・シッタシ(C. psittaci)などの特定の細菌を含む多くの他の生物が挙げられる。用語「細胞内寄生生物」とは、限定されるものではないが、上記で簡単に説明された偏性細胞内寄生生物などの宿主動物の細胞内に認められる任意の生物を指す。例えば、細胞内寄生生物としては、ブルセラ菌、リステリア菌、マイコバクテリウム(例えば、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(M. tuberculosis)およびマイコバクテリウム・レプラ(M. leprae))、ならびにプラスモジウム、ならびにロシャリメアなどの生物が挙げられる。
【0046】
本明細書で用いられる用語「抗微生物剤」は、微生物の増殖を阻害するか、またはそれを殺傷する任意の化合物に関連して用いられる。この用語はその最も広い意味で用いられ、限定されるものではないが、天然または合成的に製造される抗体などの化合物を含むと意図される。また、この用語は微生物の増殖を阻害するか、またはそれを殺傷するのに有用である化合物および要素を含むと意図される。
【0047】
本明細書で用いられる用語「発色化合物」および「発色基質」とは、その光吸収または放出特性による検出系において有用な任意の化合物を指す。この用語は、視覚的に、または光学的装置を用いて検出可能である、可溶性、ならびに不溶性の任意の酵素切断産物を包含すると意図される。「発色」の記号内に含まれるのは、色の変化として検出可能である最終生成物を産生する全ての酵素基質である。これは、限定されるものではないが、藍色、青色、赤色、黄色、緑色、橙色、褐色などの伝統的な意味の「色」において用いられる任意の色、ならびに蛍光を用いて検出可能な色を産生する、蛍光色素または蛍光化合物(例えば、黄緑色のフルオレセイン、赤色のローダミンなど)を含む。染料および発光化合物などの他の指示因子(例えば、pH)もこの定義内に包含されると意図される。
【0048】
本明細書で用いられる用語「pH指示因子」、「レドックス指示因子」および「酸化還元指示因子」の一般的に用いられる意味が意図される。かくして、「pH指示因子」は、限定されるものではないが、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモクレゾールグリーン、ブロモクロロフェノールブルー、m-クレゾールパープル、チモールブルー、ブロモクレゾールパープル、キシレノールブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、およびクレゾールレッドなどの、pH変化の検出に一般的に用いられる全ての化合物を包含する。用語「レドックス指示因子」および「酸化還元指示因子」は、限定されるものではないが、様々な型または形態のテトラゾリウム、レザズリン、およびメチレンブルーなどの酸化/還元能力(すなわち、「eH」)の検出に一般的に用いられる全ての化合物を包含する。
【0049】
本明細書で用いられる用語「接種懸濁液」または「接種材料」は、試験しようとする生物に接種することができる懸濁液に関連して用いられる。用語「接種懸濁液」は、特定の流体または液体物質に限定されないと意図される。例えば、接種懸濁液は、水、塩水、または水性溶液から構成されていてもよい。また、接種懸濁液は、水、塩水または任意の水性材料を添加した成分を含んでもよいことが意図される。一実施形態においては、前記成分は意図される微生物にとって有用な少なくとも1種の成分を含むと意図される。本発明は、特定の成分に限定されないと意図される。
【0050】
本明細書で用いられる用語「一次単離」とは、サンプルから直接的に生物を培養するプロセスを指す。本明細書で用いられる用語「単離物」とは、それが一次単離物であっても、維持および/もしくは使用のための生物の保存培養物の「継代」または「移動」などの、任意のその後の培養であっても、生物の任意の培養物を指す。
【0051】
本明細書で用いられる用語「推定診断」とは、患者の疾患に関与する病因生物に関して、治療する医師に対するいくらかの指針を与える予備診断を指す。推定診断は、「推定同定」に基づくことが多く、本明細書では微生物の予備同定を指すように用いられる。
【0052】
本明細書で用いられる用語「確定診断」は、患者の疾患の病因が同定された最終的な診断を指すように用いられる。用語「確定同定」は、属および/または標本レベルへの生物の最終的な同定に関連して用いられる。
【0053】
本明細書で用いられる用語「組換えDNA分子」とは、分子生物学技術の手段により一緒に連結されたDNAの断片から構成されるDNA分子を指す。
【0054】
DNA分子は、モノヌクレオチドが反応して、1個のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸が、ホスホジエステル結合を介して一方向にその近隣の3'酸素に結合するような様式でオリゴヌクレオチドを作るため、「5'末端」と「3'末端」を有すると言われる。従って、オリゴヌクレオチドの末端を、その5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に連結されていない場合、「5'末端」と呼び、その3'酸素がそれに続くモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に連結されていない場合、「3'末端」と呼ぶ。本明細書で用いられる核酸配列は、より大きいオリゴヌクレオチドに対して内部である場合でも、5'および3'末端を有すると言うこともできる。線状または環状DNA分子中で、離れたエレメントを、「下流」または3'エレメントの「上流」または5'であると呼ぶ。この用語は、転写が、DNA鎖に沿って、5'から3'の様式で進行するという事実を反映したものである。連結された遺伝子の転写を指令するプロモーターおよびエンハンサーエレメントは、一般的にはコード領域の5'または上流に位置する(エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントおよびコード領域の3'に位置する場合でも、その効果を発揮することができる)。転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルは、コード領域の3'または下流に位置する。
【0055】
用語「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」とは、遺伝子のコード領域を含むDNA配列、換言すれば、遺伝子産物をコードするDNA配列を指す。コード領域は、cDNAまたはゲノムDNAの形態で存在してもよい。一次RNA転写物の転写の適切な開始および/または正確なプロセッシングを可能にするのに必要とされる場合、エンハンサー、プロモーター、スプライスジャンクション、ポリアデニル化シグナルなどの好適な制御エレメントを、遺伝子のコード領域の近くに置くことができる。あるいは、本発明のベクター中で用いられるコード領域は、内因性のエンハンサーおよび/もしくはプロモーター、スプライスジャンクション、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性および外因性制御エレメントの両方の組合せを含んでもよい。
【0056】
本明細書で用いられる用語「転写単位」とは、転写の開始と終結の部位と、効率的な開始および終結にとって必要な調節エレメントとの間のDNA断片を指す。例えば、エンハンサー/プロモーター、コード領域、ならびに終結配列およびポリアデニル化配列を含むDNAの断片は、転写単位を含む。
【0057】
本明細書で用いられる用語「調節エレメント」とは、核酸配列の発現のいくつかの態様を制御する遺伝子エレメントを指す。例えば、プロモーターは、コード領域に機能し得る形で連結された転写の開始を容易にする調節エレメントである。他の調節エレメントは、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなど(上記で定義)である。
【0058】
本明細書で用いられる用語「リポーター遺伝子構築物」または「リポーター遺伝子ベクター」とは、リポーター遺伝子の産物をコードする配列と、特定の宿主生物中での機能し得る形で連結されたコード配列の発現にとって必要な好適な核酸配列とを含む組換えDNA分子を指す。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結およびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0059】
用語「リポーター遺伝子」とは、異種プロモーターおよび/もしくはエンハンサーエレメントに機能し得る形で連結されたリポーター遺伝子配列を含む構築物を、プロモーターおよび/もしくはエンハンサーエレメントの活性化にとって必要な因子を含む(もしくは含むように作製することができる)細胞中に導入する場合に、容易かつ定量的にアッセイされる遺伝子産物(典型的には、酵素)をコードする配列を有するオリゴヌクレオチドに関する。リポーター遺伝子の例としては、限定されるものではないが、β-ガラクトシダーゼをコードする細菌遺伝子(lacZ)、細菌クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(cat)、蛍ルシフェラーゼ遺伝子およびβ-グルクロニダーゼをコードする遺伝子(GUS)が挙げられる。
【0060】
真核生物中の転写制御シグナルは、「プロモーター」および「エンハンサー」エレメントを含む。プロモーターおよびエンハンサーは、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する短いDNA配列からなる(Maniatisら、Science 236:1237(1987))。プロモーターおよびエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫および哺乳動物細胞ならびにウイルス中の遺伝子などの様々な真核起源から単離されたものである(類似制御エレメント、すなわち、プロモーターは原核生物中にも認められる)。特定のプロモーターおよびエンハンサーの選択は、目的のタンパク質を発現させるためにどの細胞型を用いるかに依存する。いくつかの真核プロモーターおよびエンハンサーは広い宿主範囲を有するが、他のものは限定されたサブセットの細胞型において機能的である(概説については、Vossら、Trends Biochem. Sci., 11:287(1986)、およびManiatisら、上掲(1987)を参照されたい)。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの哺乳動物種に由来する様々な細胞型において非常に活発であり、哺乳動物細胞中でのタンパク質の発現のために広く用いられてきた(Dijkemaら、EMBO J. 4:761(1985))。広範囲の哺乳動物細胞型において活性なプロモーター/エンハンサーエレメントの2つの他の例は、ヒト伸長因子1α遺伝子(Uetsukiら、J. Biol. Chem., 264:5791 (1989); Kimら、Gene 91: 217 (1990);ならびにMizushimaおよびNagata, Nuc. Acids. Res., 18:5322 (1990))ならびにラウス肉腫ウイルス(Gormanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 6777(1982))およびヒトサイトメガロウイルス(Boshartら、Cell 41: 521 (1985))の長い末端反復配列に由来するものである。
【0061】
用語「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーターおよびエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むDNAの断片(例えば、レトロウイルスの長い末端反復配列は、プロモーターとエンハンサー機能の両方を含む)を意味する。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」または「外因性」または「異種性」であってよい。内因性エンハンサー/プロモーターは、ゲノム中の所与の遺伝子に天然に連結されたものである。外因性(異種性)エンハンサー/プロモーターは、遺伝子操作(すなわち、分子生物学技術)を用いて遺伝子と並列に配置されたものである。
【0062】
発現ベクター上の「スプライシングシグナル」の存在は、組換え転写物のより高レベルの発現をもたらすことが多い。スプライシングシグナルは、一次RNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、スプライス供与体および受容体部位からなる(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989), pp. 16.7-16.8)。一般的に用いられるスプライス供与体および受容体部位は、SV40の16S RNAに由来するスプライスジャンクションである。
【0063】
真核細胞における組換えDNA配列の効率的な発現には、得られる転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を指令するシグナルが必要である。一般的には、転写終結シグナルは、ポリアデニル化シグナルの下流に認められ、長さ数百個のヌクレオチドである。本明細書で用いられる用語「ポリA部位」または「ポリA配列」は、発生期のRNA転写物の終結およびポリアデニル化の両方を指令するDNA配列を表す。ポリA尾部を欠く転写物は不安定であり、急速に分解されるため、組換え転写物の効率的なポリアデニル化が望ましい。発現ベクター中で用いられるポリAシグナルは、「異種性」または「内因性」であってよい。内因性ポリAシグナルは、ゲノム中の所与の遺伝子のコード領域の3'末端に天然で認められるものである。異種性ポリAシグナルは、ある遺伝子から単離され、別の遺伝子の3'末端に配置されたものである。一般的に用いられる異種性ポリAシグナルは、SV40ポリAシグナルである。SV40ポリAシグナルは、237 bpのBamHI/BcII制限断片上に含まれ、終結とポリアデニル化の両方を指令する(Sambrook、上掲、16.6-16.7)。この237 bpの断片は、671 bpのBamHI/PstI制限断片内に含まれる。
【0064】
用語「遺伝子操作された細胞系」とは、分子生物学技術(すなわち、組換えDNA技術)により細胞系中に導入された異種DNAを含む細胞系を指す。
【0065】
本明細書で用いられる用語「ベクター」とは、少なくとも1個のプロモーターと、目的の遺伝子とを含むヌクレオチド配列を指す。そのような目的の遺伝子は、前記アミノ酸配列(すなわち、例えば、TSH受容体アミノ酸配列)を発現させるためのアミノ酸配列をコードしてもよい。ベクターは、外来DNA中に組込まれて、安定なトランスフェクト細胞を形成する能力を有する。
【0066】
用語「安定なトランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」とは、トランスフェクトされた細胞のゲノム中への外来DNAの導入および組込みを指す。
【0067】
用語「安定なトランスフェクタント」とは、ゲノムDNA中に外来DNAを安定に組込んだ細胞を指す。
【0068】
用語「安定なトランスフェクション」(または「安定にトランスフェクトされた」)とは、トランスフェクトされた細胞のゲノム中への外来DNAの導入および組込みを指す。用語「安定なトランスフェクタント」とは、ゲノムDNA中に外来DNAを安定に組込んだ細胞を指す。
【0069】
用語「RDluc」とは、ルシフェラーゼ遺伝子で安定にトランスフェクトされたRD細胞系を指す。さらに、RD-Rlucとは、ルシフェラーゼ遺伝子で安定にトランスフェクトされ、外因性受容体(すなわち、例えば、限定されるものではないが、Mc4受容体などのTSH受容体)を展示するRD細胞系を指す。
【0070】
用語「CHOluc」とは、ルシフェラーゼ遺伝子で安定にトランスフェクトされたCHO細胞系を指す。さらに、CHO-Rlucとは、ルシフェラーゼ遺伝子で安定にトランスフェクトされ、外因性受容体(すなわち、例えば、限定されるものではないが、野生型受容体などのTSH受容体)を展示するCHO細胞系を指す。あるいは、CHO-RMc4lucとは、ルシフェラーゼ遺伝子で安定にトランスフェクトされ、キメラ受容体(すなわち、例えば、ラット絨毛性ゴナドトロピン受容体から誘導されたアミノ酸配列を含むTSH受容体)を展示するCHO細胞系を指す。
【0071】
本明細書で用いられる用語「選択マーカー」とは、選択マーカーが発現される細胞に、抗生物質または薬剤に対する耐性を付与する酵素活性をコードする遺伝子の使用を指す。選択マーカーは、「優性」であってよい;優性選択マーカーは、任意の哺乳動物細胞系において検出することができる酵素活性をコードする。優性選択マーカーの例としては、哺乳動物細胞中でG418薬剤に対する耐性を付与する細菌アミノグリコシド3'ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも呼ばれる)、抗生物質ヒグロマイシンに対する耐性を付与する細菌ヒグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子およびミコフェノール酸の存在下で増殖する能力を付与する細菌キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも呼ばれる)が挙げられる。他の選択マーカーは、その使用が、関連する酵素活性を欠く細胞系と共にあらなければならない点で優性ではない。非優性選択マーカーの例としては、tk細胞系と共に用いられるチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、CAD-欠損細胞と共に用いられるCAD遺伝子およびhprt細胞系と共に用いられる哺乳動物ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞系中での選択マーカーの使用に関する概説は、Sambrookら、上掲、16.9-16.15に提供されている。
【0072】
用語「をコードする核酸分子」、「をコードするDNA配列」および「をコードするDNA」とは、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。かくして、DNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0073】
接着性細胞系に関連して本明細書で用いられる用語「集密な」または「集密」とは、細胞が、培養を通して、細胞の連続的なシートまたは「単層」に見えるものを作るように互いに接触させる条件を定義する。
【0074】
本明細書で用いられる用語「細胞変性効果」または「CPE」は、ウイルスなどの外部因子の結果生じる細胞構造の変化(すなわち、病理学的効果)を説明する。一般的な細胞変性効果としては、細胞破壊、合胞体(すなわち、融合巨細胞)形成、細胞周囲液胞形成、および封入体の形成が挙げられる。CPEは、許容性細胞宿主が、生存に必要なその機能を実行する能力に負に影響する許容性細胞に対するウイルスの作用の結果生じる。in vitro細胞培養系においては、CPEは、細胞が、集密な単層の一部として、ウイルスを含む標本との接触後に集密でない領域を示す場合に明らかである。観察される顕微鏡的効果は、一般的には天然では限局性であり、病巣は1個のビリオンにより開始される。しかしながら、サンプル中のウイルス量に応じて、十分な期間のインキュベーション後には、単層を通してCPEを観察することができる。ウイルス誘導性CPEを示す細胞は、通常、丸い形状に形態変化し、長時間かけて死滅し、単層中の固定点から放出され得る。多くの細胞が病巣破壊点に達した時、その領域はウイルスプラークと呼ばれ、単層中の穴として出現する。細胞変性効果は、当業者であれば容易に識別および区別することができる。
【0075】
省略形「ONPG」は、o-ニトロフェニル-13-D-ガラクトピラノシドを表す。ONPGは、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)酵素の基質である。ONPGとβ-galとの反応は、405 nmでの分光光度分析により定量することができる黄色の生成物を産生する。
【0076】
省略形「X-gal」は、β-ガラクトシダーゼ酵素の基質である化合物5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-3-D-ガラクトピラノシドを表す。X-galとβ-ガラクトシダーゼとの反応は、視覚的に識別できる青色の沈降物の形成をもたらす。
【0077】
用語「hybriwix」は、DNAハイブリダイゼーションにより細胞の感染した単層中での特定のウイルスDNAの定量を可能にするDiagnostic Hybrids, Inc., Atherns, Ohioの製品である。「DNAハイブリダイゼーション」は、塩基配列が塩基対形成の規則に従って一致する2個の相補的DNA分子のアニーリングである。DNAハイブリダイゼーションは、既知のDNAまたは「プローブ」へのハイブリダイゼーションにより未知の、または「標的」DNAを同定または定量するのに用いられる。典型的には、このプローブを、γカウンターを用いて検出、定量することができる放射性アイソトープである125Iなどのリポーター分子を用いて標識する。
【0078】
本明細書で用いられる語句「プラーク減少アッセイ」または「PRA」は、薬剤に曝露された細胞単層中でのプラーク形成の減少を数えることにより、抗ウイルス剤の効力を決定するのに用いられる標準的な方法を説明する。「プラーク」は、「CPE」の規定の領域である。それは通常、1個の感染性ウイルスが細胞単層に感染した後、複製し、単層の近隣の細胞に拡散する結果である。また、プラークは「ウイルス感染の病巣」とも呼ばれる。
【0079】
本明細書で用いられる用語「許容性」は、ウイルスとその推定される宿主との間の相互作用事象の連続を説明する。このプロセスは宿主細胞表面へのウイルスの吸着から始まり、感染性ビリオンの放出で終わる。それが他の細胞へのウイルスの拡散を容易に許容する場合、細胞は「許容性」である。限定されるものではないが、プラーク減少アッセイ、ゲル電気泳動から得られた結果に基づくウイルスタンパク質の産生および/もしくは量の比較、DNAもしくはRNA含量を分析するためのハイブリダイゼーション分析を用いる相対的比較などの、所与の細胞系の許容性の決定のための多くの方法が利用可能である。
【0080】
本明細書で用いられる用語「罹患性」とは、許容性または非許容性宿主細胞が吸着し、ウイルスにより浸透され得る程度を説明する。細胞系が浸透されるが、ビリオンを放出できないという点で、細胞系は許容性になることなく罹患性であってよい。しかしながら、許容性細胞系は、罹患性である必要がある。
【0081】
本明細書で用いられる語句「シードオン」は、容器を十分な期間保存して、懸濁細胞または「シード」が重力により沈降し、接着した細胞に比較的均質な様式で結合し、混合物として最終的な細胞単層中に組込まれるようにした後、表面に接着した細胞を含有する容器中に懸濁細胞の水性溶液を移す動作を説明する。「混合された細胞単層」は、「シードオン」プロセスの結果生じる。
【0082】
本明細書で用いられる語句「シードイン」は、各細胞懸濁液が異なる細胞特性を有する、懸濁された組織培養細胞の2種以上の水性溶液の混合、ならびに懸濁細胞が重力により沈降し、任意の単一の細胞型の分布が、元の混合物中での細胞の相対比率を示すような比較的均質な様式で結合するのを可能にするのに十分な期間保存される容器中へのそのような細胞の混合物の移動を説明する。
【0083】
本明細書で用いられる用語「starts」とは、ウイルスの初期感染を表すリポーター細胞を指す。ウイルスはリポーター細胞(遺伝子操作された細胞)に感染し、リポーター遺伝子の発現を誘導する。リポーター細胞は非許容性(すなわち、リポーター細胞の許容性は必要ではない)であってよく、依然としてstartsを産生する。
【0084】
本明細書で用いられる用語「キメラ」とは、2種以上の異なる種に由来する部分を含む任意の核酸および/またはアミノ酸配列を指す。一次アミノ酸配列が2種以上の異なる種に由来する部分を含む(すなわち、例えば、hTSH/rLH-RまたはRMc4)場合、タンパク質はキメラであってよい。また、一次アミノ酸配列が、同じ種に由来するにしろ、異なる種に由来するにしろ、2種以上の異なるタンパク質に由来する部分を含む場合も、タンパク質はキメラであってよい。四次アミノ酸構造が2種以上の異なる種に由来するタンパク質を含む場合も、タンパク質はキメラであってよい。さらに、一次ヌクレオチド配列が2種以上の異なる種に由来する部分を含む場合、核酸はキメラであってよい。また、一次ヌクレオチド配列が、同じ種に由来するにしろ、異なる種に由来するにしろ、2種以上の異なるタンパク質に由来する部分を含む場合も、核酸はキメラであってよい。
【0085】
本明細書で用いられる用語「糖質コルチコイド」とは、肝臓グリコーゲンおよび血中グルコースの濃度を上昇させる糖新生を増加させる任意のコルチコステロイド化合物を指す;その群としては、限定されるものではないが、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、フルチカゾン、コルチゾール、コルチゾン、またはコルチコステロンが挙げられる。
【0086】
発明の詳細な説明
本発明は、自己免疫疾患の診断において有用な方法および組成物を提供する。特に、本発明は、グレーブス病の診断および管理における使用のための方法および組成物を提供する。例えば、1つの組成物は、循環する甲状腺刺激免疫グロブリンに対する改良された感度および特異性を有するキメラ甲状腺刺激ホルモン受容体を含む。そのようなキメラ受容体を用いるアッセイを、糖質コルチコイドの存在下で最適化することができる。
【0087】
さらに、本発明は、個体の免疫状態および応答をモニターするための方法および組成物を提供する。特に、本発明は、ワクチンレシピエントの免疫応答をモニターするのに有用である。本発明はさらに、ウイルスの細胞表面への結合を加速および増強し、サンプル中のウイルスを検出し、定量するためのアッセイの感度を増加させるための方法および組成物を提供する。
【0088】
I. グレーブス病
典型的には、若い成人におけるグレーブス病の臨床像は、非常に容易に認識される。患者は一般的には男性より女性に多く、限定されるものではないが、発汗、動悸、緊張、興奮、不眠、震え、頻繁な排便、および良好な食欲にも拘わらない体重減少などの症候が報告されている。理学的検査は通常、軽度の眼球突出、凝視、眼瞼遅滞、平滑性、広汎性、非圧痛性の甲状腺腫、大きい心音を伴う頻脈(特に、運動後)、ならびに頻繁には収縮期雑音もしくは胸骨左縁擦過傷、震え、爪甲離床症、および手掌紅斑を示す;頻繁には、甲状腺上で雑音が聞こえ、頸部のブンブン音がほとんど常に存在する。これらの症候を有する患者においては、グレーブス病が容易に認識され、研究室試験により確認することができる(Federman, Thyroid, DaleおよびFederman(編)、Scientific American Medicine, 3:1-6, Scientific American, New York, NY (1997)を参照)。
【0089】
上記の兆候および症候は煩わしいものであるが、この疾患の他の症候はより危険であり得る。最も憂慮すべき症候の1つは、眼筋麻痺、濾胞性結膜炎、結膜浮腫、および視力低下を伴う重篤な眼球突出症である。さらなる症候としては、限定されるものではないが、皮膚症、前脛骨粘液水腫、クラビング、および最も重篤な事例では、先端強皮症などが挙げられる。これらの兆候および症候は、グレーブス病の代表的な自己免疫的病因を示唆する。
【0090】
グレーブス病の典型的な臨床像にも拘わらず、診断を確定するための方法が必要であり、ならびに管理および治療のための予後指示因子を提供する方法が必要である。さらに、甲状腺機能亢進症の原因が不明確である場合、診断試験方法を用いて、病因を決定しなければならない。放射性ヨウ素取込み(RAIU)などのin vivoでの方法を、グレーブス病を有する患者の診断およびモニタリングにおいて用いることができる(例えば、Baldetら、Acta Endocrinol. (Copenh) 116:7-12(1987))が、この目的のために開発された2つの群のin vitroアッセイ系が存在する。一方は、甲状腺刺激のいくつかの指標(例えば、cAMP生成)の測定に依存し、他方は放射標識された甲状腺刺激ホルモン(TSH)のその受容体への結合を阻害する甲状腺刺激自己抗体(TSAb)の能力を評価する。これらの方法は、TSAbに関するバイオアッセイおよびin vitroアッセイを含む。しかしながら、グレーブス病の診断における甲状腺刺激免疫グロブリン(TSIまたはTSAb)を測定する幅広い用途の方法は報告されていない(例えば、Rapoportら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 58:332-338(1984)を参照)。さらに、グレーブス病患者の血清中には、甲状腺ホルモン受容体を認識する異種集団の免疫グロブリンG(IgG)分子が存在すると認識されている(例えば、Yokoyamaら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 64:215-218 (1987)を参照)。さらに、TSH-結合阻害アッセイが、甲状腺刺激活性を必ずしも反映しないという認識は、そのようなアッセイの臨床適用に関する合意に達する試みにおける混乱をもたらした(例えば、McKenzieおよびZakarija, J. Clin. Endocrinol. Metabol., 69:1093-1096 (1989)を参照)。感度および特異性に関する限界も問題が多い。実際、利用可能なアッセイ系に関する問題は、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の測定が、甲状腺自己免疫の基礎となる十分に高感度のマーカーであるという議論をもたらした(BoteroおよびBrown、上掲を参照)。
【0091】
Rapoportらにより示されたように、標準化された様式で、かつ多数のサンプルについて容易に実施することができる利用可能なアッセイは、感度および/または特異性の点で有意な限界を有し、これらの試験を臨床使用にとって信頼性の低いものにする。これらの問題は、ヒト甲状腺形質膜に対する放射標識されたTSHの結合を阻害するTSIの能力を測定するアッセイに主に適用される(すなわち、このアッセイはTSI活性自体を測定するものではない)。また、抗TSH受容体抗体は全部、刺激性であるわけではない。Rapoportらはさらに、ヒト甲状腺形質膜におけるアデニル酸シクラーゼ活性のTSI刺激を用いるアッセイは、感度が著しく低いことを示唆している。新鮮なヒト甲状腺組織の使用に依存し、限定されたサンプル容量のために極端に困難な技術を含み、ならびに非常に面倒でありおよび/または非経済的であるものなどの、いくつかのアッセイは一般的な臨床使用にとって非実用的である(例えば、Rapoportら、上掲を参照)。TSHに対するcAMPの応答を測定する培養イヌおよびブタ甲状腺細胞を用いるアッセイの開発を、優れた結果を与えることができるヒト甲状腺細胞に関する使用のために後に適合させた。これらの方法(例えば、Rapoportらにより考察された方法)のいくつかにおける新鮮な甲状腺細胞に関する要件に加えて、多くは標本をアッセイする前に退屈かつ時間を浪費するサンプル調製をも必要とする。例えば、いくつかのプロトコルは、面倒で時間を浪費する透析方法および/または硫酸アンモニウムもしくはポリエチレングリコールを用いる試験血清中での免疫グロブリンの沈降を必要とする(例えば、Rapoportら、上掲;およびKasagiら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 62:855-862 (1986)を参照)。
【0092】
これらのアッセイ系に関して遭遇する問題を考慮して、実行が容易で、信頼性が高く、高感度で、かつグレーブス病の自己抗体にとって特異的であるアッセイを開発する努力において他の方法を精査した。例えば、cAMP産生を測定するバイオアッセイの使用は、連続培養中で増殖させた非ヒト起源の細胞の使用または一次培養物として用いられるか、もしくは必要に応じた使用のためのアリコート中で凍結されたヒト細胞に依存する。ヒト甲状腺細胞の使用に関する問題としては、外科的に得られた甲状腺組織の応答性の変動が挙げられる。かくして、ラット甲状腺細胞系(FRTL-5)などの非ヒト起源の細胞が人気を得た。これはよく研究され、特性評価された、トランスフェクトされていない分化細胞系である(例えば、Bideyら、J. Endocrinol., 105:7-15(1985);およびMichelangeliら、Clin. Endocrinol., 40:645-652 (1994)を参照)。しかしながら、いくつかの欠点が、これらの細胞をグレーブス病のアッセイについて理想的でないものにしている。例えば、これらの細胞は増殖が遅く、TSHに対する必要性を含む難しい増殖要件を有する。結果として、合理的なレベルの感度を達成するためには、アッセイの前に少なくとも5日間、細胞からTSHを枯渇させる必要がある。
【0093】
JP09細胞(機能的ヒトTSH受容体でトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣細胞)およびヒトTSH受容体を安定に発現する他の細胞系などのその後の細胞の開発は、グレーブス病の自己抗体の検出にとって利用可能なアッセイ系を大きく改善した。これらの細胞は、天然の甲状腺細胞のものに匹敵するTSH受容体を有し、Gタンパク質カップリング、アデニル酸シクラーゼの活性化ならびにTSHおよび甲状腺刺激抗体(TSAb)に応答したcAMP生成を含む機能的シグナル伝達系を有する(例えば、Michelangeliら、上掲を参照)。これらの細胞は、FRTL-5細胞と比較して、類似する診断情報を提供するが、より感度が高く、より速く増殖し、あまり難しくない増殖要件を有し、未抽出の血清に応答するため、FRTL-5細胞よりも優れていると報告されている(Michelangeliら、上掲;また、Kakinumaら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 82:212902134 (1997)も参照)。さらに、これらの方法はより迅速かつ再現性が高く、おそらくヒト受容体に対するヒト自己抗体の検出にとってより特異的である。さらに、これらのアッセイは、FRTL-5細胞系を用いるものよりも実行が容易であり、面倒ではない(例えば、Vittiら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 76:499-503 (1993)を参照)。しかしながら、これらのアッセイは、cAMPを検出、定量するために放射活性の使用(例えば、ラジオイムノアッセイにおける)に依存しており、結果として、依然として面倒である。
【0094】
II. グレーブス病のための診断アッセイ
グレーブス病は、抗体を介する自己免疫反応により引き起こされる甲状腺障害である。グレーブス病患者においては、主に甲状腺刺激抗体(TSAb)および甲状腺阻害抗体(TBAb)などの、TSHRを認識する自己抗体(TRAb)は異種性である。TSAbは甲状腺機能亢進症を引き起こすTSHアゴニストとして作用するが、TBAbは甲状腺機能低下症を引き起こすTSHアンタゴニストとして機能する。TSAbおよびTBAbはTSHR上の異なるエピトープに結合するが、TBAb結合はTSAbの刺激効果を「中和」することができる。TSAbがTSHRに結合する時、それはcAMPシグナリング経路を誘導するが、TBAbはこの効果を有さない。
【0095】
現在、グレーブス病を診断するためにいくつかのバイオアッセイが用いられている。TRAbの決定のためにはKronus(登録商標)Radio Receptor Assay(RRA)キットが用いられており、これはTSAbとTBAbの両方を検出するが、この2つを識別することはできない。Diagnostic Hybrids Inc. (DHI)社は以前に、患者血清中のTRAbを検出するグレーブス病診断用のCHO-Luc細胞系を開発した。この細胞系は、野生型TSH受容体遺伝子と、ヒト糖タンパク質αサブユニットプロモーターにより駆動される蛍ルシフェラーゼ遺伝子とを同時発現する。この野生型TSHRは、TSAbおよびTBAbに結合するエピトープを有する。受容体へのTBAbの結合は、TSAbの結合を調節し、TSAbによるより少ない刺激をもたらすことができる。
【0096】
甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対する甲状腺刺激自己抗体(TSAb)は、サイクリック-アデノシン一リン酸(cAMP)の産生を担う酵素である甲状腺アデニル酸シクラーゼを刺激することができる。これらの自己抗体は、グレーブス病を有する患者において認められる甲状腺機能亢進症の原因となるようであるため、この疾患に罹患する患者の検出および同定のための診断マーカーとして用いられている。しかしながら、以下により詳細に考察するように、これらのTSAbを検出、測定するために一般的に用いられる方法は複雑であり、時間を浪費するものである。
【0097】
A. cAMPの検出
TSAbを測定する1つの方法は、「FRTL-5」として知られるラット甲状腺細胞系を用いる。Interthyroid Research Foundation (Baltimore, MD)から入手可能なこの細胞系は、ヒトTSAbと交叉反応する受容体を発現する。TSAbの存在下では(すなわち、例えば、これらの抗体を含有するグレーブス病患者に由来する血清への前記細胞の曝露の際に)、FRTL-5細胞はcAMPを産生するように刺激される。次いで、このcAMPを、ラジオイムノアッセイ法を用いて、溶解させた細胞の一部または細胞を入れた培地中で測定する。FRTL-5細胞は、グレーブス病の特徴である自己抗体に関するバイオアッセイを初めて成功させるための基礎を形成した。米国特許第4,609,622号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。
【0098】
B. FRTL-5細胞アッセイおよび飢餓培地
Vittiら(Vittiら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 76:499(1993)により記載されたように実施されるFRTL-5細胞を用いる典型的なアッセイは、細胞培養培地中で用いられる通常の増殖構成要素に加えて、6種のホルモンを含む特殊な完全培地(すなわち、例えば、6H培地)中、96穴プレート中にFRTL-5細胞(30,000細胞/ウェル)を播種することを含む。5%CO2中、加湿された37℃インキュベーター中で2〜3日間インキュベートした後(すなわち、細胞が集密になった時)、TSHが6H培地中の6種のホルモンの1つである場合、TSHが欠損した(それにより5H培地をもたらす)「飢餓培地」に培地を交換する。次いで、細胞を、2〜3日毎に培地交換をしながら、インキュベーター中で4〜5日間維持する。この時間の間に、細胞は増殖または複製しない。続いて、細胞を診断アッセイにおいて用いることができる。
【0099】
C. 放射標識アッセイおよび刺激培地
グレーブス病のための初期診断方法を、飢餓培地を除去し、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、0.5 mMメチルイソブチルキサンチン;IBMX)を含む特殊な低塩化ナトリウム、高スクロースバッファー(HBSS NaCl + 222 mMスクロース;このバッファーの調合法は、0.0608 g/L KH2PO4、0.144 g/L CaCl3、0.373 g/L KCl、0.048 g/L MgSO4、0.097 g/L Na2PHO4、1.0 g/L D-グルコース、76 g/L(すなわち、222 mM)スクロース、4.77 g/L HEPES、および10 g/L BSA;pH 7.2 - 7.4である)を含む刺激培地を添加して、この酵素がcAMPを破壊するのを防止することにより実施した。患者の免疫グロブリン(IgG)の特殊調製されたサンプル、対照、および標準物を、通常は3回、好適なウェルに添加し、プレートを5%CO2中、加湿された37℃インキュベーター中で2時間インキュベートする。このインキュベーション後、5〜10μlの培地を各ウェルから取り出し、ラジオイムノアッセイ系において使用して、cAMPの存在を検出する。典型的には、このアッセイを、患者について2回、約6個の標準物と共に実行し、対照も2回実行する。通常、このアッセイには、一晩のインキュベーションが必要であり、抗体に結合した放射標識されたcAMPから遊離の放射標識されたcAMPを分離するために次の日にも約1時間のインキュベーションが必要である。
【0100】
放射活性の使用および長い調製時間はFRTL-5アッセイの負の態様であるため、改良された系が開発された。1つの調査は、アッセイ系の感度を増加させる低い塩条件の使用を含んでいた(Kosugiら、Endocrinol., 125:410-417 (1989)を参照)。バイオアッセイにおけるさらなる改良は、ヒトTSH受容体でトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞株を含んでいた(「CHO-R」;Vittiら、上掲を参照)。この細胞系は、FRTLアッセイに対して2つの主要な改善をもたらした。第1に、この方法は、TSAbの検出のためにより高い特異性およびおそらくより高い感度を提供すべきラットTSH受容体の代わりに、ヒトTSH受容体の使用を含む。第2に、ウェルに接種するのに用いられる細胞懸濁液の密度に応じて、CHO-R細胞は標準補給培地上で良好に増殖し、播種後1〜3日間使用することができるため、6〜8日間に渡って特殊な6H培地および5H培地交換の必要がない。さらに、FRTL-5細胞に関する比較試験は、CHO-R細胞がグレーブス病のTSAbの検出においてより正確であり得ることを示していた(Vittiらを参照)。
【0101】
D. CHO-Rluc細胞系を用いるルシフェラーゼ遺伝子アッセイ
リポーター遺伝子(すなわち、例えば、ルシフェラーゼ)の使用を介してTSIにより引き起こされるcAMP量の増加を容易に評価するために設計されたCHO-R細胞の使用により、さらなる改良が提供された(Evansら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 84:374 (1999))。かくして、この遺伝子操作された細胞系(すなわち、CHO-Rluc)の導入を用いる場合、cAMPの検出および定量のための以前に開発されたラジオイムノアッセイにおいて用いられる放射性化合物の使用に付いて回る複雑性および危険性が排除される。これらの細胞を用いる場合、単に細胞から培地を除去し、溶解バッファーを添加し、20〜30分間溶解を起こさせ、溶解物のサンプルを除去し、ルシフェラーゼ基質を添加し、ルミノメーターを用いて15秒間隔に渡って光出力を測定することにより、ルシフェラーゼを測定する。しかしながら、以下の実験の節に示されるように、この方法は、曖昧な結果および必要とされるさらなる改善を提供する。
【0102】
一実施形態においては、本発明は、信頼性および再現性の点でさらなる利点を提供しながら、CHO-Rlucプロトコルの利点を含む方法を意図する。未治療のグレーブス病患者に由来するTSHおよび免疫グロブリンを用いる発光測定アッセイにおけるCHO-Rluc細胞の使用を可能にするものなどの本発明の方法の開発に対して、かなりの開発努力が払われた。
【0103】
元々用いられた標準プロトコルは、インキュベーションの18〜24時間後に集密な単層をもたらす濃度で播種するために凍結保存液からCHO-Rluc細胞を植え付けることを含んでいた。最初に、増殖培地を除去し、刺激培地を単層に添加し、一連のTSH標準物(例えば、0、10、100、1000μIU TSH/ml)、および患者のIgGサンプルを添加した。この手法により良好な結果が得られなかったため、一晩の飢餓または条件化期間を試験した。
【0104】
飢餓期間は、より低いバックグラウンド値を伴う改善された結果をもたらし、TSH標準物および試験患者サンプルに関する良好な値をもたらすようであった。ポリエチレングリコール(PEG)を用いて抗原および抗体結合を増強したさらなる実験オプションも試験した。これらの実験においては、PEGを刺激培地に添加した。
【0105】
様々な実験において、以下の実験の節に記載のように、様々な培地製剤および組合せを試験した。例えば、刺激培地を用いる飢餓は、0μIU/ml TSH標準物については(32,103)、10μIU TSH/mlサンプルについては-1,148、1000μIU TSH/mlサンプルについては47,478、IgGサンプル番号13については19,350のRLU/秒値をもたらした。これ、および以下の考察においては、括弧内の数字は0μIU TSH/mlの値であり、標準物またはサンプルに関する値から差し引いて正味の値を得る。
【0106】
標準HBSSを用いる飢餓は、0μU/ml TSH対照については(21,671)、10μIU TSH/mlサンプルについては1,336、1000μIU TSH/mlサンプルについては82,466、およびIgGサンプル番号13については39,082のRLU/秒値をもたらした。刺激培地中の標準HBSSおよび6%PEGを用いる飢餓は、0μU/ml TSH対照については(32,562)、10μIU TSH/mlサンプルについては5,980、1000μIU 5 TSH/mlサンプルについては207,831、およびIgGサンプル番号13については174,461のRLU/秒値をもたらした。かくして、標準HBSSを用いる飢餓は、TSHおよびグレーブス病サンプルについてはより高い値をもたらし、刺激培地中へのPEGの取込みはさらにより高い値をもたらした。これらのより高い値は、上記の方法と比較して、本発明の方法におけるより高いレベルの感度を与えるようである。にも拘わらず、飢餓期間を含むこれらのアッセイの長い期間は不利である。アッセイ期間を3〜4日間短縮するアッセイの改良は、アッセイの感度および正確性も改善し得ると仮定された。
【0107】
E. キメラTSH受容体細胞系
一実施形態においては、本発明は、蛍ルシフェラーゼ遺伝子と共にTSH/LH/TSHキメラ受容体(すなわち、例えば、RMc4)を発現する組換え細胞系(すなわち、例えば、CHOおよびRD)を意図する。一実施形態においては、この発現は、ヒト糖タンパク質αサブユニットプロモーターにより駆動される。本発明の機序を理解する必要はないが、キメラ受容体を用いることにより、遮断抗体(すなわち、例えば、TBAb)の結合は排除され、および/または減少すると考えられる。一実施形態においては、キメラ受容体は、TSAb結合領域のみが発現されるように、少なくとも1個の遺伝子改変を含む。CHO-Luc細胞またはKRONUS(登録商標)アッセイと比較した場合、組換え細胞系は高い特異性を有すると考えられる。
【0108】
III. 免疫応答発生のモニタリング
上記のように、本発明は、免疫応答の発生をモニタリングするための方法および組成物も提供する。特に、本発明は、ワクチン接種に対する個体の応答をモニタリングするのに好適な方法および組成物を提供する。
【0109】
一実施形態においては、免疫前血清(すなわち、ワクチンの投与前に採取された血清)を、対照目的の基本線として用いることができる。そのような血清を、ワクチン接種後すぐに(例えば、ワクチン接種の1〜2週間後)ならびにワクチン接種後数ヶ月中、定期的に採取することもできる。次いで、血清サンプルを、中和抗体の存在および量について試験する。
【0110】
いくつかの実施形態においては、診断アッセイを行って、ウイルス抗原に対する応答をモニターする。そのようなアッセイにおいては、ELVIS(商標)(Diagnostic Hybrids, Athens, OH)などの細胞を、本発明のポリエチレングリコール(PEG)溶液と共に用いる。一実施形態においては、PEGは抗原-抗体反応を増強させることにより、より高い反応性をもたらす。
【0111】
IV. CHO-Mc4lucおよびRD-Mc4luc細胞系におけるTSIの検出
一実施形態においては、本発明は、グレーブス病を診断する、および/またはグレーブス病の療法をモニターするための遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)および/またはヒト横紋筋肉腫細胞(RD)の使用を意図する。
【0112】
臨床研究室は現在、グレーブス病に罹患する患者を同定し、その療法をモニターするための患者の血清中のグレーブス病に特異的な自己抗体の刺激の検出および測定のために様々な細胞および反応バッファーを用いている。例えば、野生型ヒト甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)およびCRE-Luc受容体系を含む遺伝子改変されたCHO細胞を含む細胞が、多くの研究室により用いられている。しかしながら、これらの細胞は、増殖のために1日、飢餓のために1日を必要とし、試験結果を入手可能にするために時間を拘束する。3日目に、患者の血清標本を細胞および反応バッファーと共にインキュベートして、グレーブス病自己抗体の存在を検出する。いくつかの実施形態においては、本発明は、これらの複数日のアッセイ手順を必要としない方法を意図する。一実施形態においては、これらのより短い方法は、飢餓期間インキュベーションを有さない。グレーブス病を診断するための迅速、正確、かつ高感度のアッセイの利点を、以下でより完全に説明する。
【0113】
一実施形態においては、本発明は、甲状腺刺激免疫グロブリン(TSI)検出細胞系(CHO-RLuc)を改善するための方法を意図する。一実施形態においては、前記細胞系はさらに、キメラ受容体を含む。一実施形態においては、キメラ受容体は、ヒト甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)およびラット黄体形成ホルモン(LH)(すなわち、例えば、RMc4受容体)を含む。本発明の機序を理解する必要はないが、キメラTSH受容体は、診断アッセイ中の飢餓期間が必要でないように、TSIに対する改善された結合特異性を提供すると考えられる。
【0114】
一実施形態においては、本発明は、CHO細胞および/またはRD細胞(もしくは他の哺乳動物細胞)中でMc4キメラ受容体を発現させるための方法を意図する。一実施形態においては、前記方法は、TSIを検出するためのリポーター遺伝子としてのCRE-Lucの使用をさらに含む。一実施形態においては、キメラ受容体は、刺激自己抗体(すなわち、遮断自己抗体とは対照的である)に優先的に結合することにより野生型受容体よりも高い特異性を提供する。一実施形態においては、キメラ受容体は、刺激自己抗体(すなわち、遮断自己抗体とは対照的である)に優先的に結合することにより野生型受容体よりも高い感度を提供する。一実施形態においては、前記細胞培養物は、PEGをさらに含む。本発明の機序を理解する必要はないが、グレーブス病患者の血清は自己抗体を刺激および遮断することができるため、野生型TSH-R受容体は両方の抗体と等しく結合すると考えられる。さらに、遮断自己抗体は刺激自己抗体活性を調節し、抑制することができると考えられる。
【0115】
開示された細胞系中で発現されるこれらのキメラTSH-R受容体は、現在用いられている細胞系に対して以下の利点を与える:
1. この系は、より高いシグナル:ノイズ(S:N)またはシグナル:バックグラウンド(S:B)比をもたらすより低いルシフェラーゼ活性バックグラウンドをもたらす。
【0116】
2. これらの細胞系は、TSI結合の結果生じるシグナルを最大化するために現在用いられている細胞系に関する要件である、一晩「飢餓させる」必要はない。この変化は、現在の3日間のアッセイから2日間のアッセイに転換時間を減少させ、研究室、医師、および患者にとって非常に有利である。
【0117】
3. このアッセイは刺激抗体を測定するように設計されるが、野生型TSH-Rは刺激抗体と遮断抗体の両方に応答するが、このMc4キメラ受容体は刺激抗体にのみ応答することによって、測定しようとするものに対するより高い特異性を提供する。
【0118】
V. キメラTSH受容体
一実施形態においては、本発明は、高い検出感度および特異性で甲状腺刺激ホルモン受容体(TSH-R)自己抗体(すなわち、例えば、甲状腺刺激免疫グロブリン;TSI)を検出する新規診断細胞系を意図する。一実施形態においては、細胞系は、組換えチャイニーズハムスター卵巣細胞(すなわち、例えば、CHO-K1細胞)を含む。一実施形態においては、細胞系は、ヒト横紋筋肉腫(RD)細胞を含む。
【0119】
一実施形態においては、本発明は、蛍ルシフェラーゼリポーター遺伝子に連結され、糖タンパク質ホルモンαサブユニットプロモーターと機能し得る形で組合わされたhTSH/rLH-R融合タンパク質(すなわち、例えば、RMc4)をコードする核酸配列を含むベクターを意図する。一実施形態においては、細胞系を前記ベクターでトランスフェクトする。一実施形態においては、トランスフェクトされた細胞系は、ルシフェラーゼリポーターシグナルが検出されるような条件下で、ヒトTSH-R/ラット黄体形成ホルモン(LH)キメラ受容体(hTSH/rLH-R)を発現する。
【0120】
A. キメラ構築物
グレーブス病に関連するTSHおよび甲状腺刺激自己抗体のための結合部位の同一性を、ヒト/ラットキメラTSH-R構築物を構築することにより最初に試験した。対応するラット配列を含むヒトTSH-Rの部分的置換は、以下のキメラ受容体をもたらした:i)アミノ酸残基8-165を置換するMc1+2;ii)アミノ酸90-165を置換するMc2;およびiii)アミノ酸残基261-370を置換するMc4。このデータは、アミノ酸残基8-165が、TSHにより必要とされるものと同じではない甲状腺刺激自己抗体にとって特異的なエピトープを含むことを示唆していた。特発性粘液水腫甲状腺刺激抗体、グレーブス病甲状腺刺激抗体、およびTSHの間の結合部位における有意な異種性が観察された。Taharaら、「Immunoglobulins From Graves' Disease Patients Interact With Different Sites On TSH Receptor/LH/CG Receptor Chimeras Than Either TSH Or Immunogloblins From Idiopathic Myxedema Patients」、Biochem Biophys Res Comm 179:70-77 (1991)を参照されたい。
【0121】
初期の研究により、ラットTSH受容体およびラット黄体形成ホルモン絨毛性ゴナドトロピン受容体に由来する断片を含むキメラTSH受容体のトランスフェクションおよび発現が示された。様々なラットTSHアミノ酸配列を、対応するラットLH/GC配列と置換した。このデータは、アミノ酸残基268-304が、cAMP応答の生成にとって重要ではないが、TSH高親和性結合部位を排除したことを示していた。Akamizuら、「Chimeric Studies Of The Extracellular Domain Of The Rat Thyrotropin (TSH) Receptor: Amino Acids (264-304) In The TSH Receptor Are Involved In Ligand High Affinity Binding, But Not In TSH Receptor-Specific Signal Transduction」、Endocr J 40: 363-372 (1993)を参照されたい。抗TSH受容体抗体の異種性を、ヒトTSH受容体のアミノ酸残基90-165を、黄体形成ホルモン絨毛性ゴナドトロピン受容体に由来する同等のアミノ酸残基により置換したキメラヒトTSH受容体を用いて、i)TSH-結合阻害免疫グロブリン;ii)甲状腺刺激抗体;およびiii)甲状腺遮断抗体の結合を比較することにより解決した。結合データは、2種の異なる型の甲状腺刺激抗体、3種の異なる型のTSH結合阻害免疫グロブリン、および1種の非機能的抗体が存在し得ることを示唆している。
【0122】
グレーブス病との関連が疑われる様々な型の循環抗体を検出し、特性評価するキメラTSH受容体が報告されている。そのような抗体は、限定されるものではないが、TSH-Rを活性化することができる刺激自己抗体およびTSHまたは刺激自己抗体によるTSH-R結合を遮断することができる遮断自己抗体を含むと考えられる。例えば、ヒトTSH-R(hTSH-R)と黄体形成ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン受容体(LH-hCG-R)とのキメラは、ヒトLH/CG-Rに由来する等価な残基で置換されたhTSH-Rのアミノ酸261-370を有するRMc4キメラを含んでいた。グレーブス病の血清サンプルに由来する精製されたIgGサンプルがcAMP産生を刺激する能力を、ラジオイムノアッセイにより測定した。Kungら、Epitope Mapping of TSH Receptor-Blocking Antibodies In Graves' Disease That Appear During Pregnancy」、J. Clin Endocrinol Metab 86: 3647-3653 (2001)を参照されたい。
【0123】
TSH刺激自己抗体と遮断自己抗体との相互作用を、2つの型のTSH-Rキメラ構築物を用いることにより解決した。第1のキメラをMc2と呼び、ラット黄体形成ホルモン絨毛性ゴナドトロピン受容体に由来する等価な残基により置換されたヒトTSH-Rアミノ酸残基を有する。第2のキメラをMc1+2と呼び、ラット黄体形成ホルモン絨毛性ゴナドトロピン受容体に由来する等価な残基により置換されたヒトTSH-Rアミノ酸残基8-165を有する。グレーブス病患者における循環自己抗体の評価により、遮断自己抗体は刺激自己抗体の作用に強く拮抗しないが、現在のCHO-hTSH-R診断アッセイ方法により測定された刺激自己抗体活性の過小評価の原因となり得ることが示された。Kimら、「The Prevalance And Clinical Significance Of Blocking Thyrotropin Receptor Antibodies In Untreated Hyperthyroid Graves' Disease」、Thyroid 10:579-586 (2000)を参照されたい。
【0124】
キメラhTSH/rLH-R受容体(RMc4)のDNA配列は、合計2,324塩基対を含み、730アミノ酸をコードする。図8を参照されたい。このキメラ受容体においては、アミノ酸番号262〜335の範囲のヒトTSH-R領域を、ラット黄体形成ホルモン(LH)受容体に由来する対応する73アミノ酸と置換した。
【0125】
ルシフェラーゼ受容体の発現を駆動する配列は、236ヌクレオチドの糖タンパク質αサブユニットプロモーターであり、サイクリックAMP(cAMP)調節エレメント(CRE)を含み、PCRによりクローニングされたものである。クローニングされたプロモーターのヌクレオチド配列を、DNA配列決定により決定し、Gene bank配列AF401991との配列比較により確認した。クローニングされたプロモーターと、HEK細胞からPCRにより増幅されたGPHプロモーターとのアラインメントは、2個の配列が同一であることを示している。図9を参照されたい。
【0126】
C. キメラ診断アッセイ
次いで、陰性および陽性TSI血清に対するCHO-RMc4luc、RD-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系の応答を比較した。細胞を、TSI陰性および陽性血清と共に3時間インキュベートした。次いで、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ活性をVeritas Microplat Luminometerにより測定した。この結果は、CHO-RMc4lucおよびRD-RMc4luc細胞系の両方が、CHO-Rluc細胞と比較した場合、非常により高い検出感度を有することを示していた。図10A、10B、10C、10Dおよび10Eを参照されたい。TSI陽性血清に由来するルシフェラーゼRLUと、陰性血清との比率(S/N比)の比較は、CHO-RMc4lucおよびRD-RMc4luc細胞が、CHO-Rluc細胞系よりも6〜8倍および2.1〜4倍感度が高かったことを示している。それぞれ、図10Bおよび10Dを参照されたい。CHO-RMc4luc細胞は、RD-RMc4luc細胞よりも約1.3〜3.5倍感度が高かった。図10Eを参照されたい。さらに、CHO-RMc4lucは、より低いバックグラウンドおよび高いシグナル/陰性(S/N)比をもたらすTSI陰性血清を用いて試験した場合、CHO-Rlucよりも低いレベルのルシフェラーゼ活性を誘導した。図10Aを参照されたい。さらに、CHO-RMc4lucおよびRD-RMc4luc細胞系は両方とも、非常に低い標準偏差値を示した。それぞれ、図10Aおよび10Cを参照されたい。19番と命名されたTSI陽性血清は、CHO-RMc4luc、RD-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系に対して高いルシフェラーゼ誘導レベルを示した。この血清を希釈し、これらの細胞系上で試験して、感度を比較した。図10Eを参照されたい。
【0127】
さらに、連続希釈されたTSI陽性血清を用いて誘導したCHO-Rluc、CHO-RMc4lucおよびRD-RMc4luc細胞系の間の検出感度を比較した。例えば、TSI陽性血清を連続希釈し、様々な細胞系上で3時間インキュベートした。RD-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系は、1:2〜1:8の血清希釈範囲で直線的応答のS/N比を示した。しかしながら、RD-RMc4lucに関する、用量応答(値)の勾配および従って、検出感度は、CHO-Rluc細胞系のものよりも非常に高かった。図11Aを参照されたい。CHO-RMc4lucは、希釈していない血清または低い血清希釈率で直線的応答のS/N比を示さなかった。図11Bを参照されたい。しかしながら、CHO-RMc4luc細胞は、1:32〜1:128の範囲の血清希釈に由来する直線的用量応答のS/N比を示した。図11Cを参照されたい。用量応答(値)の勾配はRD-RMc4luc細胞系のものよりもさらに高かったことに留意されたい。図11Aと図11Cを参照されたい。
【0128】
また、CHO-RMc4luc細胞系を、TSH感度についてCHO-Rluc細胞系と比較した。S/N比を、組換えヒトTSHを用いて誘導されたCHO-Rluc、CHO-RMc4lucおよびRD-RMc4luc細胞系を用いてルシフェラーゼアッセイから誘導した。様々な濃度の組換えヒトTSHを、CHO-RMc4lucまたはCHO-Rluc細胞系と共に3時間インキュベートした。インキュベーション後、ルシフェラーゼアッセイを実施した。その結果は、それらが両方とも5μIU/mlの低い濃度でTSHを検出することができるが、CHO-RMc4lucの検出感度はCHO-Rluc細胞系のものよりも非常に高いことを示していた。図12を参照されたい。
【0129】
また、CHO-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系を、ヒト黄体形成ホルモン(hLH)、ヒト卵胞刺激ホルモン(hFSH)およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)(全て共通のαサブユニットを有する)などの他の下垂体前葉ホルモンを用いて、その特異性について試験した。細胞系は、試験したホルモンといかなる交叉活性も示さなかった。表1を参照されたい。
【表1】

【0130】
CHO-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系を用いて正常ヒト血清をスクリーニングして、ルシフェラーゼアッセイに由来するS/N比の分布を決定した。108人の正常な人々から得た血清を用いて誘導されたCHO-RlucおよびCHO-RMc4luc細胞系に関するルシフェラーゼアッセイに由来するS/N比の分布の比較を実施した。全ての血清サンプルを、CHO-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系の両方において試験した。既知の正常血清を、S/N比を算出するための参照として用いた。CHO-RMc4luc細胞系の分布は、CHO-Rluc細胞系のものと非常に類似するパターンを示した。CHO-Rluc細胞の平均は1であり、CHO-RMc4lucは0.88であった。CHO-Rlucの標準偏差は0.23であり、CHO-Lucは0.21であった。図13を参照されたい。
【0131】
臨床患者血清サンプルに対するCHO-Rluc4luc、RD-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系の応答を比較した。12個の臨床血清サンプルを用いて誘導されたCHO-Rluc、CHO-RMc4lucおよびRD-RMc4luc細胞系に関するルシフェラーゼアッセイに由来するS/N比を示す。12個の血清サンプルのそれぞれを、CHO-RMc4luc、RD-RMc4lucおよびCHO-Rluc細胞系において試験した。これらのサンプルのルシフェラーゼ活性を、既知の陰性血清サンプル(陰性参照)に由来するものと比較した。この研究の結果は、CHO-RMc4lucおよびRD-RMc4luc細胞系が両方とも、CHO-Rluc細胞系を、最も感度の高い細胞系であるCHO-RMc4luc細胞系と比較した場合、非常により高い検出感度を有することを示していた。図14を参照されたい。
【0132】
VI. キメラ受容体アッセイおよび飢餓予備条件化期間
上記で考察されたように、CHO-RMc4luc細胞系は、現在用いられているCHO-Rluc細胞系を超えて、感度および特異性における無限の利点を提供する。例えば、グレーブス病抗体による刺激に際して、CHO-RMc4luc細胞は、相対光単位(RLU)出力により測定されるようにルシフェラーゼ応答の増加を提供する。この改善により、プロトコルから1日の飢餓工程を排除することができる。
【0133】
CHO-Rluc細胞系のために用いられる標準的な手順は、飢餓期間を含む。飢餓形式のためのプロトコルは、1日目に増殖のために細胞を植えること、2日目に飢餓させること、ならびに3日目に刺激し、RLUを測定することである。飢餓期間を排除する場合、「2日目の飢餓」工程を排除し、最終結果を3日目の代わりに2日目に医師に報告することができるが、これがより望ましい。全てその1日の飢餓を用いるCHO-Rlucプロトコルにより提供されるものよりも高い正確性のアッセイを用いる場合、この非飢餓プロトコルは、使用者の作業が有意に減少し、医師が次の日には結果を得ることができるため、使用者および医師に対して有意な利点を提供する。
【0134】
飢餓期間を用いて、正常血清とグレーブス病の陽性血清との間のRLUまたは分離率(%)を増加させた。このRLU分離は、アッセイの正確性に直接関連する。飢餓期間の効果を、2種の異なる細胞系、CHO-RlucおよびCHO-RMc4lucを用いて、グレーブス病陽性および正常血清標本を用いて試験した。表8を参照されたい。
【表8】

【0135】
飢餓CHO-RlucおよびCHO-RMc4luc細胞、ならびに非飢餓CHO-RMc4luc細胞に関する対応するプロトコルを用いて得られたグレーブス病陽性および陰性血清に関するRLU値を示す。CHO-RMc4luc細胞に対する飢餓の意図された効果は、細胞中のルシフェラーゼ活性のバックグラウンドレベルを低下させて、グレーブス病陽性とグレーブス病陰性血清との間のRLUの比を上昇させることであった。これらの血清のセットについて、飢餓CHO-Rlucに関する平均比は、3.25xであり、非飢餓CHO-RMc4lucについては、7.29Xであり、飢餓CHO-RMc4luc細胞については11.5Xである。
【0136】
かくして、非飢餓CHO-RMc4luc細胞は、飢餓CHO-Rluc細胞よりも光度(すなわち、および従って感度)において2倍以上の増加を提供した。これは、1日短く続き、より正確かつ感度の高い結果を提供するプロトコルの異なる利点を提供する。血清:参照比(SRR)は、百分率としてRLU値を比較し、CHO-RMc4luc細胞(飢餓もしくは非飢餓)は正常血清とグレーブス病の血清とのRLU間の改良された分離を提供することをさらに確認する。提供されるカットオフ値は近似値であり、アッセイされた値が、特定のプロトコル/細胞系のカットオフ値以上である場合、グレーブス病を示す。
【0137】
VII. 糖質コルチコイドを用いるキメラ受容体アッセイの改良
上記データは、飢餓期間はCHO-RMc4luc細胞の正確性および感度の改善をももたらすことを示すため、飢餓期間を用いずに優れたCHO-RMc4luc細胞アッセイを開発するためのさらなる調査を行った。
【0138】
1セットのデータを、CHO-RMc4luc細胞を飢餓期間にかけた後、様々な濃度のデキサメタゾン(DEX)と共にインキュベートする実施例15に従って収集した。このデータは、デキサメタゾンが飢餓期間のみにより提供されたものよりもRLU強度を有意に改善したことを明確に示している。表9を参照されたい。
【表9】

【0139】
このデータは、デキサメタゾンが、同時に患者番号18のRLU読み取り値を大きく増加させながら、参照血清RLU読み取り値を低下させることを示す。全体として、デキサメタゾンの存在は、患者番号18の血清サンプルに関するS/B比の約80%の増加をもたらす。
【0140】
これらの観察は、デキサメタゾンを飢餓期間の代わりに用いる場合、改善されたアッセイが得られるという示唆を提供した。結果として、飢餓期間に曝露された細胞と、増殖培地中のデキサメタゾン(40μM)にのみ曝露された細胞との比較を実施した。実施例16を参照されたい。様々なプロトコルを比較するために、グレーブス病陽性およびグレーブス病陰性血清に関するRLUの結果を一緒に平均化し、参照標準物を超えるその対応する割合(%)を算出した。表10を参照されたい。
【表10】

【0141】
このデータは、デキサメタゾンを含む非飢餓CHO-RMc4luc細胞が、デキサメタゾンを含まない非飢餓CHO-RMc4luc細胞と比較して、循環するTSIのより高感度(および従って、より正確な)の検出を提供することを示している。例えば、飢餓期間にかけなかったグレーブス病陽性患者血清中で、デキサメタゾンを含むCHO-rMc4luc細胞は、発光の365%の増加(参照と比較して)を示したが、デキサメタゾンを含まないCHO-rMc4細胞は発光の189%の増加を示した。
【0142】
デキサメタゾンに関する感度および正確性の改善は、グレーブス病陽性患者血清とグレーブス病陰性患者血清とを比較した場合、さらにより劇的である。例えば、デキサメタゾンの存在下では、グレーブス病陽性血清とグレーブス病陰性血清との差異は309%(すなわち、例えば、365%-56%)であるが、デキサメタゾンの非存在下では、グレーブス病陽性血清とグレーブス病陰性血清との差異は157%(すなわち、例えば、189%-32%)である。
【0143】
これらの結果は、デキサメタゾンが、より強い発光シグナル強度に起因して感度の点でより良好なアッセイ系を提供することを明確に示している。そのような改善は、改善された試験正確性をもたらし、RMc4luc試験プラットフォームと組合わせた場合、本発明は、飢餓培地期間を要する任意の以前に開示されたTSI抗体アッセイよりも迅速かつ正確である診断アッセイを意図する。
【0144】
さらなる研究により、この効果がデキサメタゾンに限定されないだけでなく、全てではないとしても、多くの糖質コルチコイドから期待できることが示された。例えば、本明細書に提供されるデータは、他の糖質コルチコイドも、CHO-RMc4lucアッセイの感度を改善して、飢餓培地期間への置換と比較して、等価な感度を提供することを示している。にも拘わらず、糖質コルチコイドの存在は、このアッセイを、3日よりもむしろ、2日で実施することができるという利点を提供する。
【0145】
代用糖質コルチコイド(GC)を、相対光単位(RLU)および%で表される血清参照比(SRR%)に基づいてデキサメタゾン(40μM)と比較した。この目的のために、5種の試験した糖質コルチコイドは全て、飢餓期間の非存在下でRMc4lucアッセイの感度の改善において包括的な効果を示す。
【0146】
データを、実施例17に概略されたプロトコルに従って収集した。このデータを、それぞれ、その濃度での陽性対照のRLU値またはSRR%から、その濃度での正常対照のRLU値またはSRR%値を差し引くことにより、各糖質コルチコイド(GC)濃度のRLU値またはSRR%値の差異(Δ)として算出した。
【0147】
このデータは、4つのGCが全部、シグナル強度を少なくとも6000 RLU改善し、ヒドロコルチゾンおよびコルチゾンはデキサメタゾンと等価なシグナル強度を有することを示している。図17を参照されたい。しかしながら、データをSRR%として算出した場合、デキサメタゾンは全ての代替的なGCと比較して、シグナル対ノイズ比を約2倍改善することが認められる。図18を参照されたい。にも拘わらず、このデータは、任意の糖質コルチコイドが、飢餓培地期間が必要とされないようにRMc4lucアッセイの感度および正確性の改善を提供することができることを示している。
【0148】
VII. キット
さらに他の実施形態においては、本発明は、キメラTSH受容体を用いてグレーブス病の診断アッセイを実施するためのキットを提供する。このキットは、本発明の細胞系に基づく診断方法を含む1個以上の容器を含むのが好ましい。いくつかの実施形態においては、前記容器は、限定されるものではないが、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、またはフルチカゾンなどの糖質コルチコイドを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、このキットは、全ての対照、アッセイを実施するための指示書、ならびに結果の分析および提示のための任意のソフトウェアを含む、患者血清中の循環するTSH自己抗体を検出するためのグレーブス病診断アッセイを実施するのに必要な、またはそれにとって十分な全ての成分を含む。いくつかの実施形態においては、前記キットは、細胞系をトランスフェクトすることができるキメラTSH受容体をコードするベクターを含む。いくつかの実施形態においては、このキットは、単一の反応で診断アッセイを実施し、診断、予後、もしくは予測情報を提供する(例えば、研究者もしくは医師に対して)のに必要な、またはそれにとって十分な全ての材料を含む。例えば、そのようなキットは、キメラTSH受容体とルシフェラーゼ受容体系を含む細胞系を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、前記キットは、Mc4キメラTSH受容体のための第1の核酸配列、ルシフェリン/ルシフェラーゼリポーター系のための第2の核酸配列、およびプロモーターのための第3の核酸配列を含む1個以上のベクターを含む。他の実施形態はまた、バッファー、対照試薬、検出装置、ソフトウェア、説明書、およびTSH自己抗体標準調製物を含んでもよい。
【0149】
前記キットはまた、必要に応じて、光または他の有害条件による試薬の分解を防止するための好適な系(例えば、不透明な容器)または安定化剤(例えば、酸化防止剤)を含んでもよい。それぞれの容器または組成物を、バイアルまたはボトル中に含有させ、全てのバイアルを商業的販売のために箱の中に厳重に閉じ込めて保持することができる。
【0150】
前記キットは必要に応じて、グレーブス病の診断、検出、および/または治療における試薬の使用を提供する指示書(すなわち、プロトコル)を含む説明材料を含んでもよい。説明材料は、典型的には文書化された材料または印刷された材料を含むが、それらはそのようなものに限定されない。そのような説明書を保存し、それらを末端利用者に連絡することができる任意の媒体が、本発明により意図される。そのような媒体としては、限定されるものではないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例えば、CD ROM)などが挙げられる。そのような媒体は、そのような説明材料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含んでもよい。
【0151】
(実施例)
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を証明し、さらに例示するために提供されるものであり、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0152】
以下の実験の開示においては、以下の省略形を適用する:eq(当量);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);N(正常);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);もしくはL(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);μIU(マイクロ国際単位);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏);sec.もしくはs(秒);min.およびm(分);MW(分子量);甲状腺刺激ホルモンもしくはサイロトロピン(TSH);bTSH(ウシTSH);TSI(甲状腺刺激免疫グロブリン);TSAb(甲状腺刺激抗体);EDTA(エチレンジアミン四酢酸);RLU/sec(相対光単位/秒);GMもしくはPM(増殖培地もしくは植え付け培地);SM(飢餓培地);HBSS(Hank's平衡塩溶液);EMEM(イーグル最少必須培地);FBSもしくはFCS(ウシ胎仔血清);DMSO(ジメチルスルホキシド);CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞);CHO-R(ヒトTSH受容体でトランスフェクトされたCHO細胞);CHO-Rluc(cre-ルシフェラーゼリポーター遺伝子複合体でトランスフェクトされたCHO-R細胞);Oxoid(Oxoid、Basingstoke、England);BBL(Becton Dickinson Microbiology Systems, Cockeysville, ME);DIFCO(Difco Laboratories, Detroit, Nil);U.S. Biochemical(U.S. Biochemical Corp., Cleveland, OH);Fisher (Fisher Scientific, Pittsburgh, PA);Sigma (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO);ATCC (American Type Culture Collection, Rockville, Maryland);LTI (Life Technologies, Rockville, MD);およびPromega (Promega Corp., Madison, WI)。
【0153】
以下の方法においては、これらの方法において用いられる全ての溶液は滅菌されており(TSH、対照、患者標本を除く)、無菌的に処理した。全ての操作を、無菌条件下でバイオセーフティーキャビネット中で行った。細胞培養培地(例えば、Ham's F-12, EMEMなど)はLTI社から取得したものであるが、非必須アミノ酸などの添加試薬はSigma社から取得したものであった。
【0154】
細胞の凍結バイアルは、温度の循環が生存能力の喪失をもたらすため、解凍および本発明の方法における使用の直前までその-80℃(またはそれ以下)の保存温度から温めるべきではない。それは室温では不安定なジチオトレイトールを含むため、5倍細胞溶解溶液を、1倍溶液の調製にとって必要な容量を除去するのに十分な時間だけ、その-20℃の保存温度から除去すべきである。また、それはジチオトレイトールを含むため、再構成されたルシフェラーゼ基質溶液を、使用の直前まで-20℃に凍結保持し、その時点で取り出し、25〜37℃の水浴中に入れて解凍し、室温まで到達させるべきである。
【0155】
一般的には、ウェル(例えば、マイクロタイタープレートなど)から液体を除去する場合、液体をウェルから取り出し、バイオセーフティーフード中の容器に入れることができる。残りの液体を、滅菌吸収ティッシュ上にプレートを上下逆さまにして置くことにより排水し、除去することができる。または、液体をアスピレーター上の微細な先端部を用いる吸引により除去することができる。吸引を用いる場合、液体がウェルから流出しない程度にプレートを急勾配の角度で保持し、アスピレーターの先端部をウェルの側面からほとんど底面に下に向け、液体を除去し、最少の残渣のみを残す。しかしながら、細胞はアスピレーターにより容易に除去され得るので、細胞単層の動揺を防止するためには注意を払わなければならない。
【0156】
以下の方法に示されるように、標本、標準物、および対照を3回実行することが推奨される。溶液3の粘性およびウェル中での十分な混合を達成する際の困難性のため、合計3回分の容量が+10%(33μl)のこれらの試薬であり、これを必要とされる3回分の容量+10%(330μl)の溶液3に移し、完全に混合し、110μlを3個のウェルに移す場合、最良の再現性が達成された。
【0157】
細胞単層(例えば、マイクロタイタープレートのウェル内)の調製においては、細胞をウェル内に均一に分布させるのが好ましい。かくして、不均一な細胞分布を回避するために、ウェルへの細胞懸濁液の移動を、無振動バイオセーフティーフード中で実施すべきである。プレート中の全てのウェルに細胞を入れた後、プレートにカバーをかけ、固形の無振動表面上に30分間注意深く置いて、細胞をウェルの底部に平静に付着させる。これは、細胞の均一な分布がそれぞれのウェル中に存在することを確実に助ける。
【実施例1】
【0158】
試験のためのCHO-Rluc細胞の調製
これらの実験においては、CHO-Rluc細胞を、グレーブス病患者中のTSIを検出するための試験方法における使用のためにW-25 CHO-R細胞から調製した。ピューロマイシン耐性細胞のプールを取得し、ウシTSHに応答する光出力について試験した。最も高い光出力を有するクローンを、以下に記載の実験における使用のために選択した。
【0159】
CHO-Rluc細胞を、Ham's F-12培地、10%FBS(56℃で30分間加熱して、補体を不活性化する)、2 mMグルタミン、および1x非必須アミノ酸を含む増殖培地中、細胞培養フラスコ(例えば、T-225フラスコ)中で増殖させた。フラスコを、5%二酸化炭素を含む、加湿雰囲気中、35〜37℃でインキュベートした。
【0160】
細胞培養物が集密に到達した後、各フラスコに由来する培地を吸引し、細胞単層を、CaおよびMg++を含まないHBSSで洗浄した。次いで、7 mlの0.25%トリプシン/1 mM EDTA溶液を各フラスコに添加し、室温で約5〜10分間、単層と反応させて、ほぼ単一細胞の懸濁液中に細胞を分離し、分散させた。次いで、細胞懸濁液を300〜400 x gで約5分間遠心分離した。次いで、上清を除去し、沈降した細胞を、1x HBSSおよび20%FBSを含む4 mlのEMEMと、4 mlの凍結防止培地(1x HBSSと15%DMSOを含むEMEM)とを混合することにより調製された8 mlの培地中に再懸濁した。
【0161】
次いで、各細胞懸濁液のアリコートを用いて、懸濁液中に存在する細胞数を決定した。この決定を、限定されるものではないが、細胞計数を決定するための血球計を用いる方法などの当業界で公知の任意の方法を用いて達成することができる。かくして、懸濁液中の細胞計数を決定するために、任意の方法を用いることができると意図される。懸濁液中の細胞数に基づいて、標準的な凍結用バイアル中に約2 x 106細胞の容量で細胞を分注した。次いで、細胞を短期間の保存のために-90℃で凍結保存した。長期間の保存のために、細胞を液体窒素(約-200℃)中で保存した。
【実施例2】
【0162】
CHO-Rlucアッセイプレートの調製および試験
これらの実験においては、実施例1に記載のように調製されたCHO-Rluc細胞を、グレーブス病の診断のためのアッセイにおいて用いた。試験のための24個の単層を調製するために、最初に96穴マイクロタイタープレート中の24ウェルを、50〜100μlの0.1%ゼラチン溶液(Sigma)を添加することにより処理して、試験のために選択された24ウェルの底部への細胞の結合を増強した。室温で約1分間インキュベートした後、ゼラチン溶液を、吸引によりそれぞれのウェルから除去した。このゼラチンは1分より長い時間、ウェル上に残存し得る。細胞がウェルにより急速に付着し、より迅速に集密に達するように、ゼラチンはウェルをコラーゲンでコーティングするのに役立つ。しかしながら、細胞を植え付け、ゼラチンを用いずに集密まで増殖させ、依然としてうまく実施することができる。
【0163】
実施例1に記載のように産生されたCHO-Rluc細胞の凍結バイアルを、37℃水浴中で急速解凍して、約0.4 mlの細胞懸濁液を提供し、ピペットを用いてよく混合した。次いで、細胞を2.5 mlのGM(「植え付け培地」とも呼ぶ)に添加し、1〜2秒間ボルテックスすることにより完全に混合し、100μlアリコートの細胞懸濁液を各ウェルに添加し、プレートにカバーをかけた。各ウェル中で均一な分布の細胞をもたらすのが好ましい。かくして、不均一な細胞分布を回避するために、マイクロタイタープレートを、細胞の植え付けおよびマイクロタイタープレートの壁への細胞の付着のために無振動フード中に入れるべきである。次いで、植えられた細胞を、5%CO2を含む加湿雰囲気中、35〜37℃で約20〜24時間インキュベートして、細胞に、ほぼ、または完全に集密な単層を形成させた。
【0164】
次いで、単層を動揺させないように注意しながら、GMを可能な限り完全に各ウェルから吸引した(すなわち、集密な単層はウェル中に残存する)。単層を、ウェルあたり約100μlの飢餓培地(Ca++(0.14 g/L)およびMg++(0.048 g/L)を含むHBSS)で洗浄した。飢餓培地を吸引した後、新鮮な100μlの飢餓培地を各ウェルに添加した。これらの工程を、細胞単層が乾燥しないように十分に迅速に行うことが重要である。次いで、プレートを5%CO2を含む加湿されたインキュベーター中、35〜37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、単層の動揺を回避するために注意しながら、飢餓培地をウェルから吸引した。次いで、約100μlの飢餓培地を各単層に添加し、単層が乾燥しないように再度急速に行った。
【0165】
次いで、以前に記載されたものに対する代替的な方法において、10μlの患者、対照、およびTSH標準溶液を好適なウェルに添加した。TSH標準物およびIgGサンプルを、希釈剤(すなわち、HBSS--NaCl + 222 mMスクロース)で希釈した。TSH標準物を、0、10、100、1000、および5000μIUの濃度で試験した。患者サンプルを、アッセイ中での使用のために10 mgタンパク質/mlの濃度に希釈した。刺激培地は粘性であるため、懸濁液の完全な混合が重要であった。混合の十分さを、単層の顕微鏡検査により確認した。プレートを、5%CO2を含む加湿されたインキュベーター中、35〜37℃で4時間インキュベートした。培地を各ウェルから注意深く吸引し、150μlの溶解溶液(Promega)を各ウェルに添加した。溶解溶液は、25 mM Tris-リン酸、pH 7.8、2 mMジアミノシクロヘキサン四酢酸(CDTA)、2 mMジチオトレイトール(DTT)、10%グリセロール、および1%Triton X-100を含んでいた。次いで、プレートを室温で30分間インキュベートして、単層を溶解させた。溶解後、各ウェルを引っ掻き、ピペットチップを用いて攪拌した。次いで、25μlの溶解物を各ウェルから除去し、ルミノメーターチューブ(12 x 75 mm、ポリプロピレン)中に入れた後、50μlのルシフェラーゼ基質(Promega)を添加した。チューブを1〜2秒間ボルテックスし、5秒の遅延および10秒の読み取りの設定を用いて、RLU/秒値を決定した。平均正味値を得るために、「0 TSH」(すなわち、陰性対照)サンプルを全試験平均値から差し引いた。
【実施例3】
【0166】
IgGサンプルの調製
これらの実験においては、患者のIgGを、本発明の方法における試験のために調製した。38人のよく知られ、特性評価された、未治療のグレーブス病患者に由来する凍結乾燥されたIgGサンプルは、Dr. B.Y. Cho (Department of Internal Medicine, Seoul National University, College of Medicine, Seoul, Korea)の厚意により提供されたものである。このサンプルの多くはCHO-RおよびFRTL-5細胞を用いる標準的な方法で以前に試験されたものであるので、これらの試験結果は、これらのサンプルのうちの35個について公知であった。
【0167】
凍結乾燥のための調製において、IgGを、当業界で公知のようにプロテインA-Sepharose CL-4Bカラムを用いて親和性精製した後、4℃で100倍容量の蒸留水に対して透析した。透析用の水を、2日間に渡って8時間毎に交換した。4℃で15分間、1500 xgで遠心分離することにより変性したタンパク質を除去した後、IgGを凍結乾燥し、本明細書に記載の実験において用いるまで-20℃で保存した。
【0168】
いくつかの実験においては、精製された未治療のグレーブス病のIgGを正常血清(以下の実施例7で考察される甲状腺機能正常血清)中で希釈し、以下に記載のCHORlucアッセイを用いてアッセイした。
【実施例4】
【0169】
CHO-Rlucアッセイ
これらの実験においては、Evansら(Evansら、J. Clin. Endocrinol. Metabol., 84:374 (1999))により記載された方法を用いて、CHO-Rluc細胞の性能を評価した。実施例2に記載のように調製した96穴マイクロタイタープレート中で用いられた24穴中の細胞単層に由来する培地を吸引し、10%低ホルモンウシ血清(Sigma)を含む100μlのHam's F-12培地と交換し、5%CO2を含む加湿雰囲気中、35〜37℃で一晩インキュベートした。
【0170】
次いで、一定範囲の濃度(例えば、0、10、100、および1000μIU)に希釈したウシTSH標準物およびグレーブス病のIgG(低ホルモンウシ血清中の10 mgタンパク質/mlの濃度に溶解したもの)の10μlを、対応する4個のウェルに添加した。各ウェル中の懸濁液を混合し、5%CO2を含む加湿雰囲気中、35〜37℃で4時間、プレートをインキュベートした。次いで、培地をそれぞれのウェルから吸引し、150μlの溶解バッファー(Promega、上記のもの)を各ウェルに添加した。次いで、プレートを室温で30分間インキュベートして、ウェル中の細胞を溶解させた。次いで、25μlの各溶解物を12 x 75のポリエチレンルミノメーターチューブに移し、50μlのルシフェラーゼ基質(Promega)を、添加した直後に混合し、5秒の遅延および10秒の読み取りの設定でルミノメーター中で読み取った。ルミノメーターの読み出し値は、1秒あたりの相対光単位(RLU/秒)として結果を提供した。負または「ゼロ」のTSH標準値を、それぞれの読み取り値から差し引いた。1つの実行において、0μU/mlのTSI標準物の平均正味値は68,011 RLU/秒であったが、10μIU/μlを含むサンプルに関する結果は4031 RLU/秒であり、1000μIUを含むサンプルは222,801 RLU/秒であり、1つのグレーブス病IgG試験サンプルは384 RLUTsec(サンプル番号1)であり、別のグレーブス病IgG試験サンプルは-3012 RLU/秒(サンプル番号9)であった。
【0171】
グレーブス病IgGサンプル番号1およびサンプル番号9は、標準的なFRTL-5細胞およびcAMP RIAアッセイを用いて以前にアッセイされたものである。cAMPアッセイにおいては、FRTL-5細胞に関する153より高い値は、TSIの存在について陽性であると考えられる。サンプル番号1に関するFRTL-5細胞についてのcAMP値は212であり、サンプル番号9に関するcAMP値は803であった。これらの同じサンプル(1番および9番)に関するCHO-R値は、173を超えるCHO-R値がグレーブス病に関して陽性であると考えられるアッセイ系において、それぞれ116および1733であった。かくして、これらの結果は、グレーブス病の検出のために異なる細胞系を用いて得られた結果間に相違があることを明確に示している。実際、Evansらの方法の使用は、両方のIgGサンプルに関して陰性の結果をもたらしたが、CHO-Rlucを用いるこの系は、ウシTSHに対する応答が非常に良好であるという事実にも拘わらず、ヒトTSIの検出にとっては役に立たないことを示している。
【0172】
さらに、本発明の開発の間に(以下に記載)、CHO-Rluc細胞を、低ホルモンウシ血清を含む培地中に24時間(すなわち、集密に達するまで)植えた場合、細胞はウェルの底部に単に付着したが、通常のFBSを用いる状況と違って、インキュベーション期間に複製し、集密にならないと決定された。かくして、この驚くべき結果は、培地中での低ホルモン血清の使用が、5H培地中でのFRTL-5細胞のインキュベーションといくらか類似した、細胞の飢餓工程をもたらしたことを示している。
【0173】
いくつかの実験においては、正常血清中で希釈された精製された未治療のグレーブス病IgGを、CHO-Rlucアッセイ(PEGを用いる)において試験した。IgG番号10(2 mg/ml)については、RLU/sec値は131,461であった;IgG番号15(2 mg/ml)については、RLU/sec値は180,327であった;IgG番号27(5 mg/ml)については、RLU/sec値は179,777であった;およびIgG番号32(5 mg/ml)については、RLU/sec値は112,627であった。これらの結果は、CHO-Rlucアッセイが血清の存在下でTSIを測定することを明確に示している。
【実施例5】
【0174】
培地製剤の開発
以前に記載の実験を考慮して、様々な培地製剤の効果を、ウシTSHおよびヒトTSIの測定においてCHO-Rluc細胞と共に使用するために調査した。これらの実験においては、様々な培地製剤を、bTSHおよびグレーブス病患者の血清から抽出したIgGを用いて、CHO-Rlucアッセイにおける「飢餓」および「刺激」工程について試験した。
【0175】
これらの実験においては、一度、96穴マイクロタイタープレート(上記のもの)のウェル内に含有された細胞単層が集密に達したら、増殖培地を吸引により除去し、100μlの飢餓培地を各単層に添加した。次いで、プレートを5%CO2を含む加湿雰囲気中で35〜37℃で16〜24時間インキュベートして、細胞を飢餓させるか、または条件付けした。次いで、飢餓培地をウェルから吸引した。
【0176】
アッセイを実施するために、10μlの患者標本IgG、bTSH標準物、ならびにIgG対照(正常およびグレーブス病血清)を、3回単層に添加した。懸濁液を各ウェル内で混合し、上記の条件下で4時間インキュベートした。次いで、液体を吸引により各単層から除去し、150μlの溶解バッファー(Promega、上記)を各ウェルに添加した。プレートを室温で30分間インキュベートして、単層中の細胞を溶解させた。
【0177】
TSH標準物またはTSH受容体に対する抗体により引き起こされる細胞刺激の量を測定するために、細胞溶解物中のルシフェラーゼを、50μlの基質溶液(Promega)を添加したルミノメーターチューブに25μlの溶解物を添加することにより測定した。懸濁液を混合した後、5秒の遅延および10秒の読み取りの設定を用いるルミノメーター中で読み取って、各サンプルに関するRLUを決定した。
【0178】
TSIまたはTSH刺激のための細胞を用いるために、飢餓培地を吸引により除去し、100μlの刺激培地を各ウェルに添加した。この刺激培地は、HBSS--NaCl + 222 mMスクロースであった。以下の表2は、HBSS--NaCl + 222 mMスクロースの製剤と標準的なHBSSとの比較を提供する。
【表2】

【0179】
この刺激培地製剤は、FRTL-5およびCHO-R細胞中でのTSIの測定において一般的に用いられる製剤である。
【0180】
様々な飢餓培地製剤を試験するための実験の結果を、以下の表3に示す。これらの実験においては、HBSS--NaCl + 222 mMスクロース刺激培地を用いた。表3に示されるように、20 mMスクロースを含む標準的なHBSSは、最良のシグナル対ノイズ比をもたらした(すなわち、最も低いバックグラウンドと最も高いグレーブス病IgGの値)。
【表3】

【実施例6】
【0181】
PEGの使用
反応速度を援助または増強するためにin vitroでの抗原/抗体反応においてPEGを用いることができるため、PEGを刺激培地中に含有させた試験を行った。この化合物は抗原/抗体複合体の解離速度または解離を減少させることができるため、本発明の方法におけるPEGの使用を調査した。
【0182】
HBSS--NaClスクロース中の12%PEG-8000(すなわち、平均分子量8,000)に関する予備的結果は、細胞間の空間が増加した単層をもたらした。この見かけの浸透圧を低下させるために、HBSS--NaCl + 111 mMスクロース中の6%PEG-8000を試験した。これらの実験においては、最良の結果をもたらす飢餓培地(すなわち、標準的なHBSS + 20 mMスクロース)を用いた。この結果を以下の表4に示す。
【表4】

【0183】
表4に示されたように、6%PEG-8000の含有は、添加されたbTSH、ならびにグレーブス病IgGに応答して、CHO-Rluc細胞に由来する発光シグナルを有意かつ実質的に増強した。
【0184】
刺激培地中で用いるためにPEG-8000の最適濃度を決定するために、さらなる実験を行った。957のFRTL-5 cAMP値に関する、1つのグレーブス病サンプル(グレーブス病IgG番号20)の正味の値を表5に示す。表5に示されるように、6%PEGはグレーブス病TSAbに関して最大のシグナルをもたらした。
【表5】

【0185】
その後の実験により、飢餓培地を用いる結果と、用いない結果において統計学的に有意な差異はないため、飢餓培地は20 mMスクロースを含む必要はないことが示された。
【0186】
さらに、本発明のアッセイが用量依存的様式で甲状腺刺激免疫グロブリンを測定することを証明するための実験を行った。これらの実験においては、3個のグレーブス病IgGサンプル(6番、11番、および16番)を試験した。6%PEG-8000を含む刺激培地と、上記の方法を用いて、連続3倍希釈液を作製した。その結果を、希釈率の直線性を示す図1に示す。IgGサンプルを10 mg/ml保存液から調製した後、未希釈のまま、ならびに0.3333、0.1111、0.0371、0.0123および0.0041の希釈率まで連続希釈(3倍希釈) (すなわち、3.333 mg/mlが得られ、次いで、3倍希釈して1.111 mg/mlなどを得た)して試験した。
【0187】
IgGサンプル番号6のFRTL-5値は2080であったが、IgGサンプル番号11のFRTL-5値は4453であり、IgGサンプル番号16については、その値は830であった。以下の表6は、これらのサンプルのそれぞれに関する結果を列挙するものである。相関係数(r)は、IgGサンプル番号6については0.857、サンプル番号11については0.858、およびサンプル番号16については0.995であった。
【表6】

【実施例7】
【0188】
PEGを用いる代替的なプロトコル
これらの実験においては、PEGを用いる代替的なプロトコルを試験した。第1に、CHO-Rluc細胞の凍結バイアルを解凍し、増殖培地中に希釈し(それぞれの細胞バイアルの内容物を2.5 mlの培地に添加した)、100μlのこの細胞懸濁液を、以前に記載のように調製された、96穴マイクロタイタープレートの24個のゼラチン被覆ウェルのそれぞれに添加した。プレートを、5%CO2を含む雰囲気を有する35〜37℃の加湿されたインキュベーター中、20〜24時間インキュベートした。これにより、緩く集密になった単層が得られた。
【0189】
増殖培地を除去し、単層を100μlの飢餓培地(Ca++およびMg++を含む通常のHBSS)で洗浄し、最後に100μlを各単層に添加した後、上記の条件下で一晩インキュベートした。インキュベーション後、飢餓培地を除去し、6%PEG(すなわち、上記のもの)を含む100μlの刺激培地を各単層に添加した。次いで、10μlのそれぞれの標準物およびサンプルを、ウェルに入れた(3回)。他の容量も試験したが(例えば、25μl、50μlおよび75μl)、得られた値は10μl容量について得られたものと実質的に等しかった。かくして、サンプルおよび試薬を保存し、いくつかの血清サンプル中に存在する干渉する可能性のある物質の濃度を最小化するために、より少ない容量を用いた。
【0190】
ウェルの内容物を混合し、単層を上記のように(すなわち、刺激工程)4時間インキュベートした。培地をそれぞれのウェルから除去し、150μlの溶解溶液(上記のもの)を各ウェルに添加した。単層を室温で30分間静置して、溶解を起こさせた。次いで、25μlの各溶解物を個々のルミノメーターチューブに添加した。50μlのルシフェラーゼ基質(上記のもの)を各チューブに添加し、内容物を混合し、チューブを、5秒の遅延および10秒の読み取り時間の設定を有するルミノメーター中ですぐに読み取った。
【0191】
甲状腺機能正常血清の正常範囲を決定するための実験において、参照研究室から得られた24個の標本を、上記のCHO-Rlucアッセイを用いて実行した。血清は、サンプルが甲状腺試験のために提出されなかった点で甲状腺機能正常であった。平均(55,334 RLU/sec)および標準偏差(1 SD 7,434 RLU/sec)を、これらの24個の甲状腺機能正常サンプルについて算出した。その結果を図7に示す。次いで、SD値に3を掛け、77,636 RLU/secの正常、非グレーブス病値のカットオフを得た。このカットオフは、99%を超える正常集団を包含する;これより高い値はTSI陽性であると考えられた。
【0192】
別のセットの実験において、TSIについてcAMP RIAおよびFRTL-5細胞を用いる市販の秘伝的な試験研究室により以前に試験された17人の患者標本群を、上記の手順を用いて、CHO-Rluc細胞を用いて試験した。FRTL-5試験結果は、16個の患者標本がTSIについて陰性である(すなわち、1個だけが陽性である)ことを示していた。FRTL-5/cAMPアッセイにより同定された1個の陽性標本(アッセイのカットオフが130%であった場合、258%もしくは1.98xのカットオフ)は、図7に示されるように、77,636 RLU/secの2.45xカットオフに基づいて、CHO-Rlucアッセイ(190,691 RLU/sec)により、同様に陽性であった。FRTL-5/cAMPアッセイにより陰性(すなわち、正常)であった16人の患者の標本のCHO-Rluc値は、このアッセイの正常範囲を確立するために用いられた24個の正常血清と良好に一致することがわかった。図7を参照されたい。
【実施例8】
【0193】
CHO-Rluc方法と標準的方法の比較
これらの実験においては、6%PEG-8000を含む刺激培地を用いる本発明の方法を、標準的なHBSSを含有する飢餓培地および刺激培地を用いる方法と比較して、Dr.Choから得られた35個の未治療のグレーブス病IgG標本についてルシフェラーゼ値を得た。本発明の方法において用いられるのと同じIgGサンプルを用いるFRTL-5およびCHO-R細胞についでのDr.Choにより得られたcAMPの値を、図2、3および4中のCHO-Rルシフェラーゼの結果と比較して示す。図5は、bTSHに応答するルシフェラーゼの直線性を示す。
【0194】
図2は、CHO-Rlucルシフェラーゼの結果と、FRTL-5のcAMPの結果との比較を提供する。この図面は、これらの方法間の相関が全く良好であることを示唆している。図3は、CHO-Rlucルシフェラーゼの結果と、CHO-RのcAMPの結果との比較を提供する。CHO-R cAMPのカットオフ値は173であった。このカットオフを下回る値は以下の通りであった(CHOluc RLU/sec):110(219,913)、113(14,434)、116(25,373)、152(84,493)、156(7576)、および161(61,321)。この図面に示されるように、CHO-R cAMPの結果の範囲は、CHO-Rluc値と比較して、比較的狭い。また、これを、CHO-R cAMPの結果と、FRTL-5 cAMPの結果との比較を提供する図4にも示す。CHO-R値は173であった。FRTL-5のカットオフ値は153であった。カットオフを下回る値は以下の通りであった(FRTL-5値):110(830)、113(283)、116(212)、152(1100)、156(388)、および161(335)。図2に示された試験に関する、IgG対照(ICN)の平均+/- SD値は、472+/-4015(n=8)であった。
【0195】
図5は、CHO-Rluc細胞のbTSHに対する応答の直線性を示す。これらの実験においては、bTSHの希釈液を試験した。得られたRLU/sec値を、以下の表7に示す。
【表7】

【0196】
bTSHに対する応答のこの直線性および感度は、TSH受容体に対する遮断抗体(例えば、TSH受容体を遮断することによって、甲状腺ホルモンの産生および放出を阻害し、甲状腺機能低下症をもたらす萎縮性甲状腺炎および橋本甲状腺炎を有する患者中のこれらの自己抗体)の検出において有用であると意図される。この図面はまた、CHO-R細胞系が、FRTL-5細胞系ほどグレーブス病患者血清に由来するTSIに対する感度が高くない理由の少なくとも部分的な説明を提供する。これらの結果においては、相関係数(r)は0.9925であった。3つのS.D.(標準偏差)感度は1.3μIU TSH/mlであった。
【実施例9】
【0197】
免疫応答のモニタリング
これらの実験においては、ワクチンレシピエントの免疫応答を測定、モニタリングする。本発明はそのように限定されることを意図されないが、本実施例は、単純ヘルペスウイルス(HSV)ワクチンに対する被験者の免疫応答のモニタリングを記載する。
【0198】
ワクチンの投与前に、血清サンプル(すなわち、免疫前の血清)を、基線もしくは対照としての使用のために被験者から回収し、試験まで凍結保存する。また、血清サンプルを、ワクチンの投与後に定期的な間隔で(例えば、ワクチン接種後1〜2週間、1ヶ月、2ヶ月など)回収する。この血清を必要に応じて解凍し、アッセイにおいて用いて、中和抗体の存在および量(すなわち、力価)を決定する。血清を連続希釈し、既知量のHSVと混合する。これらのサンプルを、2 mMグルタミン、2%FBS、およびPEG(例えば、6%PEG 8000)を含有するHBSSを含むイーグルのMEMを含む希釈剤中で希釈する。しかしながら、用いられるウイルスおよびアッセイ系にとって好適な、様々な濃度および型のPEGを含有する希釈剤などの他の希釈剤は本発明の方法において有用であることも意図される。これらのサンプルを、HSVによる感染の際に3-ガラクトシダーゼなどの酵素を産生することができる細胞(例えば、ELVIS(商標)細胞、Diagnostic Hybrids)を含む細胞単層に添加する。標準的な細胞培養条件下で一晩インキュベートした後、単層を溶解させ、発色法または発光法を用いて酵素活性を測定する。
【0199】
ワクチンに対する陽性応答は、サンプル中のHSVを中和するワクチン接種後の血清の最も低い希釈率により示される(すなわち、免疫前の対照と比較して、低いODもしくは発光値により示される)。
【0200】
まとめると、本発明は、使いやすさ、信頼性、感度、特異性、費用効果性、および再現性の利点と組合わせた、放射活性の回避などの、従来技術を超える多くの進歩および利点を提供する。
【実施例10】
【0201】
キメラTSH-Rプラスミド構築物
本実施例は、グレーブス病自己抗体を検出するためのキメラTSH-R受容体を含む細胞系の構築の一実施形態を提供する。
【0202】
プラスミドの構築
TSH-Rキメラ受容体をコードする第1の核酸配列とニューロマイシン耐性遺伝子をコードする第2の核酸配列とを含むプラスミドを、ルシフェラーゼ遺伝子および糖タンパク質ホルモンαサブユニットプロモーターに連結した。
【0203】
ヒト糖タンパク質αサブユニットプロモーターのクローニング
QIAGEN RNA/DNAキット(QIAGENカタログ番号14123)を用いて、ヒト胚性腎細胞から染色体DNAを単離した。糖タンパク質αサブユニットプロモーター断片を、PCR鋳型としての単離された染色体DNAおよび以下に示す2対のオリゴヌクレオチドプライマー:
5'PCRプライマー:5'-GAGCTC ATG TGT ATG GCT CAA TAA AAT TAC GTA CAA AGT GAC AGC -3'
3'PCRプライマー:5'-AGATCT TCG TCT TAT GAG TTC TCA GTA ACT GCA GTA TAA TGA AGT -3'
を用いるPCRにより増幅した。
【0204】
SacI制限部位を5'PCRプライマーの5'末端に付加したが、BglII制限部位を3'PCRプライマーの5'末端に付加した(両方とも下線付き配列として示す)。PCR増幅のために、BD Advantage 2 Polymerase Mix (BD Bioscience Palo Alto CA)を使用し、PCR反応をサーマルサイクラー(Eppendorf Mastercycler Personal,German)中で行った。40サイクルを30秒間、94℃で実行して、DNAを変性させた。次いで、サンプルを63℃で30秒間、サーマルサイクラー中、プライマーにアニーリングさせ、1サイクルあたり68℃で1分30秒間、伸長を誘導した。2個のアンプリコン(1.2 kbおよび0.6 kb)を、プラスミドベクターpcDNA2.1 (Invitrogen, Carlsbad, CA)中にクローニングし、ABI377自動配列決定装置(Davis Sequencing Inc.)上でBigDye Terminator v3.0 Cycle Sequencing法を用いて配列決定した。
【0205】
プラスミドpGHP/Lucの構築
ヒト糖タンパク質αサブユニットプロモーターを、SacIおよびBglIIを用いる制限切断によりベクターpcDNA2.1から単離した。次いで、得られる316 bpの断片を、プラスミドpGHP/Lucの構築のために、pGL2エンハンサープラスミド(Promega, Madison, WI)のSac I/Bgl II部位中にサブクローニングした。
【0206】
プラスミドpMc4-neoの構築
抗生物質選択(陽性クローン選択)のためのネオマイシン耐性遺伝子を、XhoIおよびHicIIの制限酵素を用いてベクターpMC1 (Stratagene Ceder Creek, TX)から単離した。次いで、得られた断片を、SV40プロモーター(Dr. Leonard Kohnから入手)により駆動されたTSHR/LHキメラ受容体を含むプラスミドpMc4のXbaI部位中にサブクローニングした。最終プラスミドをpMc4-neoと命名した。
【0207】
プラスミドpMc4-Bsdの構築
制限酵素XhoIおよびXbaIを用いてベクターpCMV/Bsd (Invitrogen, Carlsbad, CA)から単離された、抗生物質選択遺伝子ブラストシジンを、TSHR/LHキメラ受容体を含むプラスミドpMc4のXbaI部位にサブクローニングした。Taharaら、「Immunoglobulin From Graves' Disease Patients Interact With Different Sites On TSH Receptor/LH/CG Receptor Chimeras Than Either TSH Or Immunoglobulins From Idiopathic Myxedema Patients」、Biochem Biophys Res Comm 179: 70-77 (1991)を参照されたい。最終プラスミドをpMc4-Bsdと命名した。
【0208】
プラスミドpMc4-GHP/Lucの構築
蛍ルシフェラーゼリポーター遺伝子を含むヒト糖タンパク質αサブユニットプロモーターを、SmaIおよびAccIによる制限切断後、ベクターpMc4/Lucから単離した。次いで、単離されたDNA断片を、pMc4-neoプラスミドのPfoI部位中にサブクローニングした。最終プラスミドを、pMV4-GHP/Lucと命名した。
【実施例11】
【0209】
哺乳動物細胞の選択
7種の異なる哺乳動物細胞系を試験して、最も低いサイクリックAMP基底レベルと最も高い潜在的誘導レベルを有する細胞系を選択した。この結果により、CHOおよびRD細胞が、最も低いサイクリックAMP基底活性および最も高い潜在的誘導レベルを示すことが示された。この経験的研究手法は、細胞培養型の適切な選択により、アッセイ感度を最大化する。例えば、より低いサイクリックAMP基底レベルは、ルシフェラーゼアッセイの感度を増加させる。また、サイクリックAMPの最も高く誘導された発現は、ルシフェラーゼアッセイの正確性を改善する。
【実施例12】
【0210】
キメラTSH-Rプラスミドを用いるCHO細胞系のトランスフェクション/選択
本実施例は、CHO細胞の永続的トランスフェクションを記載する。
【0211】
チャイニーズハムスター卵巣細胞系(CHO-K1;ATCC番号:CCL-61, Manassas VA)を、製造業者の説明書に従ってHyFect(登録商標)(Denville Scientific, Metuchen, NJ)を用いて、線状化(Xmn1)されたpMc4-GPH/ルシフェラーゼでトランスフェクトした。次いで、CHO-K1細胞を、5%CO2を含む加湿雰囲気中、37℃で、10%(v/v)ウシ胎仔血清および9種の必須アミノ酸を含むHam's F12培地中で増殖させた。トランスフェクションの24時間後、細胞を混合し、96穴プレート中に植え付け、10%FBSを含むHam's F12培地中で0.5 mg/mlのG418を用いて選択した。
【実施例13】
【0212】
キメラTSH-Rプラスミドを用いるRD細胞系のトランスフェクション/選択
本実施例は、検出を容易にするための一連の2個のプラスミドpGHP/LucおよびpMc4-Bsdを用いるヒト横紋筋肉腫(RD)(ATCC番号:CCL-136)細胞系のトランスフェクションを記載する。
【0213】
RD細胞を、製造業者の説明書に従って、HyFect (Denville Scientific, Metuchen, NJ)を用いて、線状化されたpGPH/Luc (Sca1)プラスミドでトランスフェクトした。細胞を、0.5 mg/mlのネオマイシンを用いて選択した。次いで、このトランスフェクションおよび選択に由来する最適なクローンを、線状化されたプラスミドpMc4-Bsdを用いてトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞をネオマイシン(0.5 mg/ml)およびブラスチシジン(5μg/ml)の両方を用いて選択して、最終的なRD組換え細胞系を作製した。
【0214】
全てのCHOおよびRD抗生物質耐性クローンを、TSI陽性および正常血清を用いて試験して、TSIの検出のために用いることができるクローンを選択した。TSI誘導陽性クローンを、限界希釈クローニングにかけて、単一のクローンをさらに選択した。
【0215】
最終的なクローンは、市場にある現在の製品よりも高い感度でグレーブス病を診断し、および/またはグレーブス病を有する患者の薬剤治療をモニターする能力を有する。10回以上継代したこれらの細胞系は、良好な安定性を示し、非常に類似した性能特性を示し続ける。
【実施例14】
【0216】
TSI含有血清を用いる細胞系の誘導
凍結バイアルに由来するCHO細胞を希釈し、増殖培地(10%(v/v)ウシ胎仔血清および9種の必須アミノ酸を含むHam's F12培地)中、37℃および5%CO2で16時間増殖させた。16時間後、培地を除去し、CHO細胞を洗浄し、100μl/ウェルの「飢餓」HBSS培地を再供給した。次いで、CHO細胞を22〜24時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、CHO細胞を洗浄し、100μl/ウェルの反応バッファーを再供給した。次いで、CHO細胞を、BSA、PEG、スクロース、グルコース、および塩(Diagnostic Hybridsカタログ番号40-300500)を含む反応バッファー中、1:11希釈率の患者血清を用いて、37℃および5%CO2で4時間誘導した。
【0217】
RD細胞を、37℃および5%CO2で16〜24時間、10%(v/v)ウシ胎仔血清を含むイーグル最少必須培地(EMEM)中で増殖させた。次いで、RD細胞を、37℃および5%CO2で4時間、反応バッファー(Diagnostic Hybridsカタログ番号40-300500)中、患者血清を用いて直接誘導した。
【0218】
上記明細書に記載された全ての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。本発明の記載された方法および系の様々な改変および変更が、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者には明らかとなるであろう。本発明を特定の好ましい実施形態と共に説明してきたが、特許請求された本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、診断、細胞培養、および/または関連する分野における当業者には明らかである本発明を実行するための記載の方法の様々な改変が、以下の特許請求の範囲内にあると意図される。
【実施例15】
【0219】
飢餓CHO-RMc4luc細胞に対するデキサメタゾンの効果
CHO-Rluc(041307A)およびCHO-RMc4luc(062707, P8, 3e6/ml)細胞を、5 mlのCHO増殖培地中にそれぞれ入れた。この細胞保存液から、十分なものを取り、それぞれのデキサメタゾン濃度(100、50、40、25、12.5、および0μM)に関して、CHO-Rlucアッセイについては66,666細胞/ウェルおよびCHO-RMc4lucアッセイについては50,000細胞/ウェルとなるように6個のチューブに分注した。デキサメタゾン保存液は、CHO増殖培地中で500μMであった。全てのデキサメタゾンを新鮮に作製した。これらのバイアルを遠心分離し、細胞をCHO増殖培地中の様々な濃度のデキサメタゾンに入れた。
【0220】
次いで、細胞を24時間増殖させ、飢餓培地で洗浄した後、同じものを含むデキサメタゾン含有飢餓培地中で24時間インキュベートした。次いで、細胞を反応バッファーで洗浄し、血清(1:11に希釈)をウェルに既に入れた100μlの反応バッファーに添加した。以下の血清:i)参照121506R;ii)PC 121506P;およびiii)患者番号18のTSI血清を用いた。参照および患者番号18の血清を両方とも同じように処理し、全部で6つの濃度のデキサメタゾンと共にインキュベートした。
【0221】
誘導の4時間後、プレートを75μlのBright Glo(登録商標)で5分間溶解した後、Veritasルミノメーター上で読み取った。
【実施例16】
【0222】
デキサメタゾン処理に対する飢餓期間の比較
4個のサンプルがグレーブス病について陽性であると知られ、5個のサンプルがグレーブス病について陰性であると知られる9個のヒト血清サンプルを調製した。9個のサンプルのそれぞれを、非飢餓/デキサメタゾンプロトコルおよび飢餓プロトコルの両方の各条件で試験した。
【0223】
1. 非飢餓/デキサメタゾンプロトコル
3個の細胞プレートを、CHO-RMc4プロトコルを用いて分析した。プレート1:CHO-Mc4luc細胞(4e6細胞/プレート)+CHO-Mc4反応バッファー中に40μMのデキサメタゾンを含む増殖培地。プレート2:CHO-RMc4luc細胞(4e6細胞/プレート)+CHO-Mc4反応バッファー中に40μMのデキサメタゾンを含まない増殖培地。プレート3:CHO-Rluc細胞(4e6細胞/プレート)+CHO-Rluc反応バッファー中に40μMのデキサメタゾンを含まない増殖培地。
【0224】
それぞれのプレートは16時間の増殖期間、3時間の誘導期間、および10分間の溶解期間を受けた。
【0225】
2. 飢餓プロトコル
3個のプレートを、CHO-Rプロトコルを用いて分析した。プレート1:CHO-RMc4細胞(4e6細胞/プレート)+CHO-Mc4反応バッファー中に40μMのデキサメタゾンを含む増殖培地。プレート2:CHO-RMc4luc細胞(4e6細胞/プレート)+CHO-Mc4反応バッファー中に40μMのデキサメタゾンを含まない増殖培地。プレート3:CHO-Rluc細胞(4e6細胞/プレート)+CHO-Rluc反応バッファー中に40μMのデキサメタゾンを含まない増殖培地。各プロトコルに関するサンプルの配列を同一に配置した。図16を参照されたい。
【0226】
各プレートは、24時間の増殖期間、24時間の飢餓期間、4時間の誘導期間、および5分間の溶解期間を受けた。各サンプルの光度を、Veritasルミノメーターを用いて測定した。
【実施例17】
【0227】
代用糖質コルチコイドとデキサメタゾンとの比較
本実施例は、CHO-RMc4アッセイの改善された感度が、実施例16に従うデキサメタゾン(Dex)による飢餓培地期間の置換に限定されないことを示すデータを提供する。これらのデータは、4種の代用糖質コルチコイド(GC)がシグナル強度の改善において同等の効果を有することを示している。
【0228】
4種のGCを、この研究において試験した:i)プレドニゾン(Sigma);ii)ヒドロコルチゾン(Sigma);iii)プロピオン酸フルチカゾン(Sigma);およびiv)コルチゾン(Sigma)。それぞれのGCの保存濃度(100 mM)を、DMSO中で作製した。次いで、DMSO中の1:10(10 mM)および1:100(1 mM)希釈液を、100 mM保存液から作製した。全てのDMSO/GC保存液は透明であり、可視的な沈降物はなかった。
【0229】
様々な濃度の各GCを含む増殖培地を、以下のように作製した:i)100μMのGC培地:5μLの100 mM GC保存液+5 mLのSR097(w/o Dex);ii)50μMのGC培地:2.5μLの100 mM GC保存液+5 mLのSR097(w/o Dex);iii)10μMのGC培地:5μLの10 mM GC保存液+5 mLのSR097(w/o Dex);iv)1μMのGC培地:5μLの1 mM GC保存液+5 mLのSR097(w/o Dex);およびv)0.1μMのGC培地:0.5μLの1 mMのGC保存液+5 mLのSR097(w/o Dex)。40μMのデキサメタゾン対照サンプルを、これらの様々な濃度の代用糖質コルチコイドと比較して実行した。さらなる対照は、溶媒対照として1μl/mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を含む増殖培地および糖質コルチコイドを含まない増殖培地を含んでいた。
【0230】
各アッセイを、試験したそれぞれの糖質コルチコイドについて2個のマイクロウェルプレートを用いることにより実施した。各プレートのサンプルレイアウトを以下のように同定した。
【0231】

【0232】
生データを以下に提供する。表8を参照されたい。
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)キメラTSH受容体とルシフェラーゼ遺伝子をコードする安定にトランスフェクトされたベクターを含む細胞系;
ii)グレーブス病を有すると疑われる患者に由来する血清サンプル;および
iii)糖質コルチコイドを含む細胞培養培地;
を提供すること;
b)該血清サンプルと、該細胞系および培地とを、ルシフェラーゼ遺伝子が検出可能なシグナルを放出するような条件下で接触させること、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法が、工程c)前記サンプル中に存在する甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗体濃度と相関するシグナル強度を測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触が、ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キメラTSH受容体が、ラット絨毛性ホルモンゴナドトロピン受容体に由来するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アミノ酸配列が、ヒトTSH受容体アミノ酸配列のアミノ酸残基262-335に対応する73個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
血清TSH自己抗体を検出することができるキメラTSH受容体およびルシフェリン-ルシフェラーゼ系を含むキットであって、該系が糖質コルチコイドを含む、前記キット。
【請求項7】
前記キットが、該キメラTSH受容体と該ルシフェリン-ルシフェラーゼ系を発現することができる細胞系をさらに含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記キットが、ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項6に記載のキット。
【請求項9】
前記キメラTSH受容体および前記ルシフェリン-ルシフェラーゼ系がベクターによりコードされる、請求項6に記載のキット。
【請求項10】
前記細胞系がCHO細胞およびRD細胞からなる群より選択される、請求項7に記載のキット。
【請求項11】
a)i)甲状腺刺激自己抗体を含むと疑われる試験サンプル;
ii)試験手段内に含まれる糖質コルチコイドを含む培養細胞であって、キメラTSH受容体およびルシフェリン-ルシフェラーゼ系を発現する、前記細胞、ならびに
iii)ポリエチレングリコール;
を提供すること;
b)前記試験サンプルを前記培養細胞およびポリエチレングリコールに、前記甲状腺刺激抗体が前記ルシフェリン-ルシフェラーゼ系を用いて検出可能となるような条件下で曝露すること;ならびに
c)検出可能な甲状腺刺激抗体の存在について観察すること、
を含む方法。
【請求項12】
前記培養細胞がRDlucおよびCHORluc細胞からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記観察を、ルミノメーターを用いて行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ルシフェリン-ルシフェラーゼ系がcAMP濃度を決定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、増殖培地および刺激培地からなる群より選択される培地をさらに含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−539975(P2010−539975A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527945(P2010−527945)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/011027
【国際公開番号】WO2009/045292
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510088974)ダイアグノスティック ハイブリッズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】