自己抗体関連疾患の検出および/または治療
本発明は、オステオプロテゲリン(OPG)に対する自己抗体を検出する方法を提供する。前記方法は、骨粗しょう症を罹患しているかまたはそのリスクがある対象者から生物学的サンプルを提供する工程および、オステオプロテゲリン(OPG)に対する何らかの抗体が前記サンプルに存在するか否かを検出する工程を含む。さらにまた、本発明は、一般的に自己免疫および/または血管系疾患についての診断/予後および/または治療スケジュールの支援に有用な方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オステオプロテゲリンに対する自己抗体を検出する方法ととともにオステオプロテゲリンに対する自己抗体に関連する疾患の可能な治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗しょう症は、骨質量の減少および脆弱性骨折のリスクの増加を伴う一般的な疾患である。骨粗しょう症はセリアック病の周知の合併症であるが、これは、一般的にはカルシウムおよびビタミンDの欠乏並びに吸収障害作用の二次的結果であると考えられる。
核因子カッパBシグナリング経路のレセプターアクチベーター(RANK)は、骨質量および骨代謝の調節で決定的な役割を果たす(1)。RANKは、破骨細胞の前駆細胞および樹状細胞上で発現されるTNFレセプタースーパーファミリーのメンバーである。RANKシグナリングの活性化はRANKLの結合時に生じる(RANKLは、骨髄支質細胞によって発現されるTNFスーパーファミリーのメンバーである)。これは、破骨細胞の生成を促進するいくつかの細胞内シグナリング経路の活性化を引き起こす。RANKL-RANK相互作用はオステオプロテゲリン(OPG)によって阻止される(OPGはRANKLのおとり役レセプターとして機能することにより骨吸収を阻害する)。ヒトの破骨細胞生成におけるこの経路の重要性は、RANKまたはRANKLの欠損遺伝は大理石骨病を引き起こし(9)、一方、OPGの機能喪失変異は骨代謝における普遍的増加を引き起こして、マウスおよびヒトの両方で骨の変形、骨粗しょう症、および脆弱性骨折を生じる(2−4)という事実によって強調される。最近の研究は、OPGの一般的な多形性もまた、骨のパジェット病および骨粗しょう症の両方の遺伝的調節で役割を果たすことを示している(5−8)。骨粗しょう症の血清OPGレベルの関連性については矛盾する証拠が存在し、特にOPG生成または活性の後天的異常によって生じる骨疾患はこれまで報告がない。
本発明は、高い骨代謝を示す重症骨粗しょう症の対象者でオステオプロテゲリンに対する自己抗体を確認したことに基づく。
【発明の概要】
【0003】
第一の特徴では、オステオプロテゲリン(OPG)に対する自己抗体を検出する方法が提供される。前記方法は、骨粗しょう症の対象者または骨粗しょう症のリスクを有する対象者から生物学的サンプルを提供する工程、およびオステオプロテゲリン(OPG)に対する何らかの抗体が前記生物学的サンプルに存在するか否かを検出する工程を含む。
本発明の自己抗体は、宿主(特にヒト)の免疫系によって、OPGまたはその抗原性フラグメントに対して生じる抗体であると理解される。
【0004】
上記で述べたように、本発明は、高い骨代謝を示す重症骨粗しょう症の対象者でOPGに対する自己抗体が確認されたことに基づき、したがって、前記検出方法は骨粗しょう症の診断の補助に利用することができる。前記検出方法は単独で用いることはできず、他の試験(例えば二重X線吸収法)と併用することができる。それにもかかわらず、そのような方法は、陽性ならば、骨粗しょう症の複雑な因子の認定を容易にし、医師の具体的な治療スケジュールの決定を支援することができる。
【0005】
しかしながら、骨粗しょう症を提示している対象者の他に、対象者はまた自己免疫セリアック病に罹患していることが観察された。当分野では、セリアック病は骨粗しょう症と密接に関係し得ることが知られているが、これは、カルシウム、ビタミンDおよび他の栄養物の吸収不良によると考えられる。理論に拘束されないが、本発明者らは、OPGに対する自己抗体は骨粗しょう症に付随しているのではなくて、一般的に自己免疫症状のマーカーであり得るか、自己免疫症状に付随し得ると推測する。前記自己免疫症状には、しばしば骨粗しょう症が合併するセリアック病、慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患が含まれるが、これまでこれらの症状でOPGに対する自己抗体が確認されたことはない。
【0006】
さらにまた、本発明者らは、OPGに対する自己抗体が、自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、重症特発性骨粗しょう症および多発性硬化症の患者で存在することを観察した。したがって、理論に拘束されないが、OPGに対する自己抗体は、他の症状(例えば自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、重症特発性骨粗しょう症および多発性硬化症)に付随するか、またはマーカーであり得ると推定される。したがって、本明細書で用いられる“自己免疫疾患”または“自己免疫症状”は、本明細書で開示する全ての疾患および/または症状(例えばセリアック病、自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、および多発性硬化症とともに他の自己免疫疾患(例えばSLE、強皮症、結合組織疾患および/または他の免疫系の異常)を含む)に関連する。骨粗しょう症は一般的には自己免疫疾患であるとは考えられていないが、OPGに対する自己抗体が重症骨粗しょう症の患者に存在するという観察は、いくつかの症例では、骨粗しょう症は“自己免疫”疾患と考えることができることを示唆し、前記の場合、自己免疫反応は主として骨格、より具体的には“OPGタンパク質”に向けられている。
【0007】
さらにまた、骨粗しょう症と血管系疾患はしばしば併存することもまた公知であり、OPGの欠乏は血管の石灰化の病理発生を促進し得ることを示唆する証拠が存在する。初めてOPGに対する自己抗体が確認され、本発明はまた、血管系疾患(OPGレベル/機能と密接に関連し得る)の診断および/または治療を補助する潜在的方法を提供する。
【0008】
理論に拘束されないが、OPGに対する自己抗体は対象者に存在するOPGと結合し、それによってOPGの天然の活性を破壊し、それは続いてRANK/RANKL/OPGのシステムまたは均衡に影響を及ぼし、自己免疫および/または血管症状と密接に関係し得る下流における結果をもたらすであろうということは理解されよう。
【0009】
したがって、自己免疫および/または血管系疾患のための診断/予後および/または治療スケジュールの支援に前記方法を用いることができる。ある実施態様では、本明細書に開示する検出方法は、例えばセリアック病、自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、重症特発性骨粗しょう症および多発性硬化症を診断/判定するために、および/または適切な治療スケジュールを決定するために用いることができる。
【0010】
生物学的サンプルは、任意の適切なサンプルであり得る。前記には、血液(例えば血清、血漿など)とともに尿、唾液および血液から単離された白血球が含まれる。
【0011】
生物学的サンプルで前記自己免疫を決定する方法は、抗体の検出に用いることができる公知の任意の免疫診断法であり得る。例には、放射線免疫アッセイ、ELISA、サンドイッチアッセイなどが含まれる。適切なアッセイの一般的な説明は以下で見出すことができる:Immunoassay: A practical guide, Brian Law, CRC Press, 1996;およびImmunoassay: A practical approach, James P. Gosling, Oxford University Press, 2000(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0012】
そのような免疫診断方法を実施することができる例示的な態様は、精製OPGまたはOPG自己抗体と結合することができるそのフラグメントで被覆した土台(例えばマイクロタイタープレートのウェル)を提供することである。生物学的サンプルに存在するいずれの抗OPGも、未反応物質を洗い流す前に前記土台に結合することができよう。この結合抗OPGは、さらに別の、場合によって標識した抗-抗OPG抗体の手段によって続いて検出することができる。しかしながら、別の抗体は実際には要求されないことがあり、結合した抗OPG抗体は、物理学的、電気物理学的、または分光分析的手段(例えばラマン計測法)によって指向され得る。
【0013】
別の実施態様では、置換または競合的結合アッセイが提供される。OPGはRANKLのおとり役レセプターであり、RANKLと結合してRANKLが破骨細胞および他の標的細胞の表面でRANKと結合するのを妨げる。多くのRANKLアッセイはOPGがRANKLと結合できるという事実を利用し、これらのアッセイは、血清または血漿サンプルに存在するRANKLを“捕捉する”方法のように、ELISAプレート上の基質としてOPGを利用する。しかしながら、OPGに対する抗体が血清中に存在する場合、前記抗体はRANKLのOPGと結合する能力に干渉するであろう。これによって、OPG抗体を有する患者では異常に低いRANKL血清レベルが提示され、血清サンプルが希釈されるにつれてRANKLが増加することが予想されよう。或いは、既知量のRANKLを含むサンプルにOPG抗体を含む患者由来の血清の添加は測定レベルの低下をもたらすであろう。基準値を提供するために、既知量のRANKLおよびOPGを用いてコントロール/陰性コントロールを設定できよう。さらにまた、抗OPG抗体を含むサンプルが添加される場合、前記抗体は、サンプル中の利用可能なOPGと結合してRANKLと結合するその作用を妨げ、続いてRANKと結合するRANKLの量を増加させるであろう。この増加もまた検出することができる。
【0014】
本方法はまたチップ系技術を用いて、または迅速(一点集中(point-of-care))型アッセイとして実施することができる。
【0015】
OPGはヒトでも動物でもよく、さらに相応に精製できるが、また、例えば組換え手段によって生成するか、既知の原核細胞または真核細胞発現系で発現させてもよい(例えば以下を参照されたい:Sambrook and Russel: “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2001, CSHL Press)。OPGの抗原分画もまた用いることができる。いったん精製すれば、既知の方法にしたがってOPGまたはその抗原分画を用い、本明細書に記載の方法で使用できる抗体(モノクローナル抗体を含む)の供給源を作製することができる。これらの抗体を、放射線、蛍光、酵素タグまたは当分野で公知の任意の他の手段によって標識できる。
【0016】
本明細書に記載した検出方法と同様に、本発明はまた、本明細書に記載のRANKL/RANK/OPG経路とともにRANK活性化後の下流におけるシグナリング経路の不均衡に付随する疾患の可能な治療方法を提供する。具体的には、前記疾患には骨粗しょう症、自己免疫疾患(例えばセリアック病、自己免疫甲状腺機能低下および重症特発性骨粗しょう症)および血管系疾患が含まれる。前記治療方法は、自己免疫プロセスで必要とされる抗体を不活化(阻止)または除去することを目的とすることができるが、また他方、免疫寛容を生じさせることにより特異的態様でこの病理学的プロセスに影響を与えることを目的とすることも考えられる。抗体を阻止するためには、OPGに対する自己抗体に対して生成した抗体を用いるか、または自己抗体とOPG間の相互作用を阻止する小分子を開発することが可能である。
【0017】
そのような阻止抗体または治療用抗体は、抗OPGと特異的に結合し、したがって抗OPGと補完性であると定義される免疫グロブリンであると理解される。前記抗体はモノクローナルでもポリクローナルでもよく、さらに当分野で周知の技術、例えば宿主の免疫と血清(ポリクローナル)の採集、または継続性ハイブリッド細胞株の調製と分泌タンパク質(モノクローナル)の採集、またはヌクレオチド配列もしくはその変異導入変型(少なくとも天然の抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列をコードする)のクローニングと発現によって調製できる。抗体は完全な免疫グロブリンまたはそのフラグメントを含むことができ、前記免疫グロブリンには、多様なクラスおよびアイソタイプ、例えばIgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2aおよびIgG3、IgMなどが含まれる。そのフラグメントには、Fab、FvおよびF(ab')2、Fab'などが含まれ得る。さらにまた、免疫グロブリンまたはそれらのフラグメントの凝集物、ポリマーおよび連結物も、適切な場合には、個々のポリペプチドに対する結合親和性が維持されているかぎり用いることができる。
【0018】
また別には、免疫寛容を誘発する治療薬剤として、または抗原提示の阻止もしくは調節により抗原提示細胞またはT細胞におけるT細胞反応性の阻止を誘発する治療薬剤として、OPGを完全な形態で、またはアダクツ、リン酸化生成物、部分ペプチド、ペプチドアナローグまたはスプライス変種の形態で用いることができる。
【0019】
したがって、上記に記載の検出方法の提供に加えて、骨粗しょう症、自己免疫疾患および/または血管系疾患を有する患者またはそのような疾患を発症するリスクを有する患者を治療する、以下の工程を含む方法が提供される:
(a)OPGに対する自己抗体について患者をスクリーニングすることにより、前記疾患または前記疾患を発症する傾向を検出する工程;および
(b)工程(a)の試験で陽性の患者を以下のいずれかで処置する工程:
(i)破骨細胞性骨吸収のインヒビター、例えばゾレドロニック酸(Zoledronic acid)、アレンドロニック酸(alendronic acid)、リセドロネート二ナトリウム、カルシトニン並びにその塩および溶媒和物;
(ii)OPGを認識する自己抗体に対して作製された抗体、またはOPG抗体とOPGまたはOPGフラグメントとの結合を妨げるペプチド(例えばRANKLに由来するペプチド)および小分子;
(iii)OPGに対する免疫寛容を回復させるOPGまたはそのフラグメント;または
(iv)(i)−(iii)の処置の組合せ。
【0020】
さらに別の特徴では、骨粗しょう症および/または関連する自己免疫または血管症状の治療で使用するために、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体の使用が提供される。さらに別の実施態様では、本発明は、骨粗しょう症および/または関連する自己免疫または血管症状の治療方法を提供する。前記方法は、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体の治療的に有効な量を投与する工程を含む。
【0021】
本発明の使用または方法のために、抗OPG自己抗体またはその抗原性フラグメントに対して作製された抗体は医薬処方物として提供され、前記処方物は、したがって1つまたは2つ以上の医薬的に許容できる担体および場合によって他の治療薬および/または予防薬成分と一緒に抗体を含むことができる。担体は、処方物の他の成分と適合し、さらにその受容者にとって有害ではないという意味で許容可能でなければならない。
【0022】
医薬処方物は、経口、局所(皮膚、頬側および舌下を含む)、直腸または、非経口(皮下、皮内、筋肉内および静脈内を含む)、鼻および肺(例えば吸入による)投与に適したものを含む。処方物は、適切な場合には、別々の調剤ユニットとして都合よく提供することができ、製薬業界で周知の方法のいずれかによって製造することができる。全ての方法が、活性化合物を液状担体または微細に分割された固体状担体またはその両方と混合し、さらに必要な場合には、続いて生成物を所望の処方物に形作る工程を含む。
【0023】
経口投与に適した医薬処方物(担体は固体である)は、もっとも好ましくはユニットドース処方物、例えばボーラス、カプセルまたは錠剤として提供され、前記は各々予め決定された量の活性化合物を含む。錠剤は、場合によって1つまたは2つ以上の付属成分とともに圧縮または成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、自由に流動する形状(例えば粉末または顆粒)で、場合によって結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、研磨剤、表面活性剤または分散剤と混合された活性化合物を適切な機械で圧縮することによって製造できる。成形錠剤は、活性化合物を不活性な液状希釈剤とともに成形することによって製造できる。錠剤は場合によって被覆でき、被覆しない場合は切れ込みを入れることができる。カプセルは、活性化合物を単独でまたは1つもしくは2つ以上の付属成分との混合物としてカプセルの殻に充填し、続いて通常の態様でそれらを封じることによって製造できる。カシェーはカプセルと類似し、この場合、活性化合物は付属成分と一緒にライスペーパーの袋に封入される。活性化合物はまた、分散性顆粒として処方でき、前記顆粒は、例えば投与前に水に懸濁させるか、食べ物に振りかけることができる。顆粒は例えばサシェとして包装できる。担体が液状である、経口投与に適した処方物は、水性または非水性液体中の溶液または懸濁液として、または液体状の水中油エマルジョンとして提供できる。
【0024】
経口投与用処方物には制御放出調剤形(例えば錠剤)が含まれ、前記調剤形では、活性化合物は適切な放出制御マトリックス中に処方されるか、または適切な放出制御フィルムで被覆される。そのような処方物は予防的使用に特に便利であり得る。
【0025】
担体が固体である、直腸投与に適した医薬処方物は、もっとも好ましくはユニットドースの座薬として提供される。適切な担体には、カカオ脂および当分野で通常的に用いられる他の物質が含まれる。座薬は、活性化合物を軟化または溶融担体と混合し、続いて冷却し鋳型で成形することによって都合よく形成できる。
【0026】
非経口投与に適した医薬処方物には、水性または油性ベヒクル中の活性抗体の無菌溶液または懸濁物が含まれる。
【0027】
注射可能調製物はボーラス注射または持続輸液のために適合させることができる。そのような調製物は、ユニットドースまたはマルチドース容器で都合よく提供される。前記容器は、処方物の導入後使用が必要になるまで封じられる。また別には、活性抗体は粉末形であり、使用前に適切なベヒクル(例えば無菌的で発熱因子を含まない水)で構成することができる。
【0028】
活性抗体はまた、長期作用性蓄積調製物として処方でき、前記は筋肉内注射によって、または埋め込み(例えば皮下または筋肉内)によって投与できる。蓄積調製物には、例えば適切なポリマーもしくは疎水性物質またはイオン交換樹脂が含まれ得る。そのような長期作用性処方物は予防的使用に特に都合よい。
【0029】
頬腔を介する肺投与に適した処方物は、活性化合物を含み、望ましくは直径が0.5から7ミクロンの範囲の粒子が受容者の気管支にデリバリーされるように提供される。
1つの可能性として、そのような処方物は微細に粉砕された粉末形であり、前記は、吸入装置で使用するために貫通可能なカプセル(適切には例えばゼラチン)として、或いは、活性化合物、適切な液状またはガス状推進体および場合によって他の成分(例えば界面活性剤および/または固体希釈剤)を含む自己推進処方物として都合よく提供できる。適切な液状推進体にはプロパンおよびクロロフルオロカーボンが含まれ、適切なガス状推進体には二酸化炭素が含まれる。活性化合物が溶液または懸濁物の微小滴の形で調合される自己推進処方物もまた利用することができる。
【0030】
そのような自己推進処方物は当分野で公知のものに類似し、確立された手順で製造することができる。適切には、それらは、所望の噴霧特性を有する、手動操作可能なまたは自動的に機能するバルブを備えた容器中で提供される。有利には、前記バルブは、毎回の操作時に固定された体積(例えば25から100マイクロリットル)がデリバリーされる計測型である。
【0031】
さらに別の可能性として、活性抗体は、噴霧器またはネブライザーで使用される溶液または懸濁物の形態でもよい(前記装置により生じた加速気流または超音波攪拌が吸入のための微細な霧滴の生成に利用される)。鼻内投与に適した処方物は、肺投与のために上記に記載した調製物と概ね類似する調製物が含まれる。適用されたとき、そのような処方物は、鼻腔内での保持を可能にするために望ましくは10から200ミクロンの範囲の粒子直径を有する。これは、適切な粒子サイズの粉末を使用するか、または適切なバルブを選択することによって達成することができる。他の適切な処方物には、20から500ミクロンの粒子直径を有する粗粉末(鼻近くに保持された容器から鼻道を通過する迅速な吸引による投与用)、および水性もしくは油性溶液または懸濁液中の0.2から5%w/vの活性化合物を含む点鼻薬が含まれる。
【0032】
前述の担体成分に加えて、上記の医薬処方物は、適切な1つまたは2つ以上のまた別の担体成分、例えば希釈剤、緩衝剤、香料、結合剤、表面活性剤、膨張剤、滑沢剤、保存料(抗酸化剤を含む)など、および処方物を意図される受容者の血液と等張にする目的のために含まれる物質を含むことができることは理解されよう。
【0033】
医薬的に許容される担体は当業者には周知であり、0.1M好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液または0.8%の食塩水が含まれるが、ただしこれらに限定されない。さらにまた、そのような医薬的に許容できる担体は、水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンであり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングルコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)である。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液(食塩水および緩衝媒体を含む)が含まれる。非経口ベヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または固定油が含まれる。保存料および他の添加物もまた存在し得る。前記は、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどである。
【0034】
本発明者の発見から鑑みて、骨粗しょう症の発症リスクがあるかまたは骨粗しょう症を罹患していると考えられる自己免疫疾患の患者は、したがって本明細書に記載の方法にしたがってOPG自己抗体についてスクリーニングされるべきである。自己免疫抗体が陽性であることが判明した患者およびその家族は、本明細書に記載の方法にしたがって治療することを考慮されるべきである。本発明の信頼できる免疫学的アッセイは、自動化またはフィンガースティックスクリーニング試験として開発することができる。さらにまた、本発明は、患者または骨粗しょう症の発症リスクのある人々でOPG自己抗体を検出するためのキットを提供する。前記キットは、精製OPGまたはその抗原フラグメントの供給源および場合によって他の試薬、例えばRANK、RANKLおよび/または抗OPG(これらのいずれかは場合によって標識される)を含むであろう。
【0035】
本明細書で用いられるように、“キット”という用語は、物質のデリバリーのためのデリバリー系を意味する。反応アッセイに関する文脈では、そのようなデリバリー系は、ある場所から別の場所へ、反応試薬(例えば適切な容器中のプローブ、酵素など)および/または補助物質(例えば緩衝剤、アッセイ実施のための指示書など)の貯蔵、輸送またはデリバリーを可能にする系を含む。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または補助物質を収納する1つまたは2つ以上の封入物(例えば箱)を含む。そのような内容物は、意図する受容者へ一緒にまたは別々にデリバリーされ得る。例えば、第一の容器はアッセイで使用されるOPG供給源を含み、第二の容器はタグを含むことができる。
本発明はこれから例をもって、さらに下記図面を参照しながら記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】対象者の臨床的特徴および治療に対する応答を示す。図版a:類骨継ぎ目の範囲の増加を示すトルイジンブルー染色腸骨横断骨生検の光学顕微鏡写真で、軽度の無機化不足を示唆している。図版b:巣状病巣の証拠の非存在下におけるトレーサー取り込みの全体的増加を示す、放射性ヌクレオチド骨スキャン。図版c:破骨細胞(赤い矢印)および骨芽細胞(青い矢印)の顕著な増加を示す、H&E染色腸骨横断骨生検の光学顕微鏡写真。不規則なセメント線によって立証されるように、網状骨が生検全体に存在する。図版d:骨の無機質濃度。および図版e:受診時および治療応答時の尿のデオキシピリジノリン/クレアチニン比(DPD)およびアルカリホスファターゼ(ALP)レベル。グルテン非含有食事、カルシウムおよびビタミンDによる長期間の治療にもかかわらず、骨密度は低下した(灰色の線)が、BMDはゾレドロニック酸による治療で次第に増加した(矢印)(図版c)。血清APLレベルは、グルテン非含有食事、カルシウムおよびビタミンDによる治療の後、3000u/mL以上から約100u/mLに低下したが、DPDは大きく上昇したままであった。ゾレドロニック酸による治療(矢印)は、骨代謝の両生化学的マーカーを正常化させた。
【図2】オステオプロテゲリンに対する自己抗体の中和の検出をしめす。図版a:左の図版は、患者血清中のオステオプロテゲリンに対する自己抗体の存在を示す(前記は免疫沈澱に続いて抗OPG抗体によるウェスタンブロットでの55Kdバンドの検出によって示された)。5人のコントロール由来サンプルは、同じ条件下でOPGを沈殿させなかった。上段右の図版は、ゲルのローディングが等しいことを確認するために免疫グロブリンについて染色されている。表示されている結果は、3つの別個の実験の代表例である。図版b:患者の血清は、HEK239細胞でのRANKL刺激NFκB活性化に対する100ng/mLのOPGの阻害性作用を停止させるが、コントロール血清は停止させない。400ng/mLのOPG添加(XS OPGと標識した棒線)はこの阻害を克服した。**p<0.001(ベヒクル);##p<0.01(RANKLおよびRANKL+OPG+患者血清)。結果は3つの別個の実験の代表例である。
【図3】(A)患者血清(レーン2)中のOPGに対する自己抗体の存在を示す(前記は、免疫沈澱に続いて抗OPG抗体によるウェスタンブロットでの55Kdの強いバンドの検出によって示された)。レーン1は陰性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者1−10の結果を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン9および10に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(B)レーン1は陰性コントロールを示し、レーン2は指標患者の血清の陽性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者11−20を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン10および12に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(C)レーン1は指標患者の血清の陽性コントロールを示し、レーン2は陰性コントロールを示す。レーン3−8はセリアック病の患者21−26を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン4および7に存在する。下段の図版は、免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示し、レーンは等しくローディングされなかったことを表す。
【図4】(A)レーン1は陰性コントロールを示し、レーン2は指標患者の血清の陽性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者27−36を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン4、5、6および12に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(B)レーン1は指標患者血清の陽性コントロールを示し、レーン2は陰性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者37−48を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン3、6、7および11に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。
【図5】レーン1は指標患者の血清の陽性コントロールを示し、レーン2は陰性コントロールを示す。レーン3−12は特発性骨粗しょう症の患者1−10を示す。OPG自己抗体の証拠はレーン3、4、5、7、8、9および11に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。
【図6】(A)レーン1は陰性コントロールを示し、レーン2は指標患者の血清の陽性コントロールを示す。レーン3−12は自己免疫甲状腺機能低下の患者1−10を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン2に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(B)レーン1は陰性コントロールを示す。レーン2−12は自己免疫甲状腺機能低下の患者11−21を示し、TRAB自己抗体をそれらの血清において確認した。OPG自己抗体の証拠はレーン3、4および5に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(C)レーン1は陰性コントロールを示す。レーン2−12は自己免疫甲状腺機能低下の患者22−31を示し、TRAB自己抗体をそれらの血清において確認した。OPG自己抗体の証拠はレーン2、3、4、5および6に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。
【図7】多発性硬化症におけるプリバレンス:多発性硬化症の未選別患者の代表的免疫沈澱アッセイ。OPG抗体はレーン9に示されている。下の図版は抗ヒトIgGをプローブとして調べた同じブロットを示し、ローディングが等しいことを表している。20人の患者を含む前試験グループの多発性硬化症における全体的なプリバレンスは10%であった。レーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者のサンプルである。
【図8】さらに別の疾患グループにおけるプリバレンス。A:セリアック病の未選別患者の代表的免疫沈澱アッセイ。OPG抗体はレーン10から12に示されている。下の図版は抗ヒトIgGをプローブとして調べた同じブロットを示し、ローディングが等しいことを表している。レーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者である。B:慢性関節リウマチ(レーン3から7)および甲状腺機能低下(レーン8−10)の患者の代表的免疫沈澱アッセイ。レーン11−12は健常コントロールであった。繰り返せばレーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者である。C:重症骨粗しょう症(レーン3から12のサンプル)の未選別患者でOPG抗体の存在を示す免疫沈澱アッセイ。レーン6および8の患者はまた治療された甲状腺機能低下を有していた。レーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者である。
【図9】抗体力価および骨の無機質濃度。重症骨粗しょう症で観察されるバンドの強さは、自己免疫グループの場合よりも顕著であるように思われる(自己免疫骨粗しょう症の場合、典型的には骨粗しょう症の重症度はより低い)。免疫沈澱アッセイは正確には定量的ではないが、血清のローディングについておよび陽性コントロールに対して標準化した結果は、OPGバンドの強さと骨の無機質濃度との間の過度に強くはないが統計的に有意な相関性を示唆している(r=-0.33、p=0.023)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
症例報告
40歳の白人男性が、息子と遊んでいたときに起きた左鎖骨の軽度の外傷性骨折後に受診した。彼はそれ以前には活発で健康であり、30代後半まで定期的にラグビーに興じていたにもかかわらず骨折歴はなかった。二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)を実施したところ、骨無機質濃度(BMD)が低く、T-スコアは脊柱で-6.6、大腿骨頸部で-2.9であった。この時点で日常的精密検査を実施して、アルカリホスファターゼ(ALP)の上昇(2601U/L)(正常範囲25−120U/L)が示され、これは、イソ酵素試験により骨起源であることが示された。患者はまた血清ホスフェートの上昇(2.36mmol/L)(正常範囲0.8−1.4mmol/L)も示した。この時点では、全血球算定、尿素および電解質、肝機能検査、血清カルシウム、アルブミンレベルおよび短シナクテン(short synacthen)(ACTH)検査はいずれも正常であった。血清副甲状腺ホルモン(PTH)レベルは8ng/Lで低く(正常範囲10−65ng/L)、さらに患者の血清25(OH)Dレベルは35ng/Lで正常範囲内であることが示された(正常範囲25−150ngμL)。
【0038】
受診前の1年間、患者は活力の欠乏および寒さに対する耐え難さに気付いていたので、甲状腺機能低下についてスクリーニングを実施した。患者の血清遊離サイロキシンは5pmol/L未満(正常範囲は10−20pmol/L)であることが示され、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルは65mU/Lで高かった(正常範囲2−5mU/L)。抗甲状腺ペルオキシダーゼ自己抗体は243u/mL(正常範囲0−82u/mL)のレベルで検出されたが、TSHレセプター阻止自己抗体についての検査はいずれも陰性であった。血清テストステロンおよびゴナドトロピンは正常で、患者は、確認された甲状腺機能低下の治療のためにL-サイロキシン(100mcg/日)を開始した。
【0039】
ALPレベルは3539U/Lまで上昇を続け、患者は血清カルシウムレベル2.8mmol/Lで高カルシウム血症を発症した(正常範囲2.1−2.6mmol/L)。この時点で、血清PTHおよび1,25(OH)Dのレベルは検出不能であった。尿カルシウム/クレアチニン比は、高カルシウム血症の吸収メカニズム(前記は続いて静脈内再水和により溶解する)に対応して4.78に上昇した(正常範囲<0.5)。広範囲の精密検査を実施して不顕性悪性疾患を排除した。前記検査には、骨髄吸引、腹部および胸郭CT、並びにミエローマスクリーニングが含まれたが、結果は注目するものではなかった。放射性核種骨スキャンは、巣状病巣の非存在下においてトレーサーの取り込みの散在性増加を骨格全体にわたって示した(図1aおよび1b)。腸骨横断骨生検は、網状骨とともに破骨細胞および骨芽細胞の劇的な増加を示す高骨代謝を示した(図1c)。類骨継ぎ目の範囲の軽度の増加があったが、類骨の厚さは正常であった(図1d)。
【0040】
トランスグルタミナーゼIgA自己抗体力価は101u/Lに上昇し(正常範囲は5−30u/L)、小腸生検によってセリアック病が確認された。前記のための治療が、厳密なグルテン非含有食事(エルゴカルシフェロール10,000ユニット/日)および1g/日のカルシウム補充により開始された。その後6カ月の経過観察で、この患者は1000U/LのALPレベルを示したが、骨粗しょう症は悪化し、再度のDEXAでT-スコアは-7.1を示した。患者は左上腕骨の軽度の外傷性骨折を示し、多発性脊椎骨骨折のために身長が6cm減少した。この時点で、再度の十二指腸生検は腸組織学の正常化を示し、患者の1,25(OH)Dレベルは正常範囲内であった。
【0041】
血清オステオプロテゲリン(OPG)レベルを1ヶ月離して2回、ELISA(Biomedica, Oxford Biosystems, Oxford UK)で測定し、それぞれ0.78pmol/Lおよび0.47pmol/Lを示した(正常範囲は0.14−130pmol/L)。同じ時に、ELISA(Apotech, Epalinges, Switzerland)で測定した血清総RANKLレベルは、0.152および0.143nmol/Lであった(正常範囲は0−10nmol/L)。
【0042】
患者の持続的な症状悪化を考慮し、3カ月の期間にわたって患者を4mgのゾレンドロニック酸の3回輸液で治療した。最初の投与の後で、血清カルシウムレベルは1.91mmol/Lに減少し、これにはPTHの163ng/Lへの上昇および1,25(OH)2D3の992pmol/Lへの上昇(正常範囲15−150pmol/L)が付随した。この治療スケジュールの完了後に、全ての血清かく乱は正常範囲内に戻った。最初の受診から42カ月の経過観察で、患者は更なる骨折を生じず、身長は安定し、再度のDEXAでT-スコアは-1.7に改善した。
【実施例1】
【0043】
方法
OPGの免疫沈澱アッセイ
前記患者からその病気期間中に数回、および年齢が一致した10人の健常な男性コントロールから非絶食血清サンプルを入手した。さらに別のスクリーニングを、セリアック病患者の20サンプルで、および原発性甲状腺機能低下の14サンプルで実施した。タンパク質含有量は、二シンコニン酸(bicinchonic acid)アッセイ(Pierce)を用いて測定した。免疫沈澱アッセイのためには、1:100希釈の患者またはコントロール血清を12.5gの組換えヒトOPG(R&D systems)およびタンパク質G被覆アガロースビーズ(Calbiochem)とともにインキュベートした(前記アガロースビーズは、非特異的結合を減少させるために5%アルブミンでプレインキュベートしてあった)。37℃で1時間インキュベートした後、タンパク質Gアガロースビーズを遠心沈殿し、PBSで5回洗浄した。最後の洗浄の後で、ビーズを遠心沈殿し、30μLの還元サンプル緩衝液に再懸濁し、90℃で5分インキュベートした。サンプルを冷却し、ビーズを遠心沈殿し、上清を12%ポリアクリルアミドゲル(Biorad Criterion)にローディングし、200Vで60分電気泳動を実施した。電気泳動の後、タンパク質をウェスタンブロッティングによって荷電ナイロン膜に移し、さらにこの膜をヒトOPGに対するマウスモノクローナル抗体(Abcam)をプローブとして調べ、1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ロバ抗マウス抗体(Jackson)によって検出した。サンプルのローディングは、ブロットを1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ヤギ抗ヒト抗体(Jackson)をプローブとして調べることによって判定した。免疫標識バンドは、Syngene GeneGenome画像化装置で化学発光(Supersignal Pierce)を用いて検出した。
【0044】
RANKシグナリングアッセイ
我々は、RANKL誘発NFκB活性化に対する患者血清およびコントロール血清の影響をHEK293細胞で調べた(前記HEK239細胞は、NFκB応答性ルシフェラーゼレポーターベクター(Cambridge Biosciences)を安定的にトランスフェクトされてあった)。前記細胞を10%ウシ胎児血清およびヒグロマイシン(Roche)補充DMEMで維持したが、RANKL刺激前の2時間は血清を枯渇させ、その後2%サイトカイン枯渇TCH補充物(MP biomedicals)を含むDMEMで維持した。血清サンプルは、製造業者の指示にしたがってタンパク質Gスピンカラム(Pierce)を用いて精製し、一切の非特異的血清作用を回避した。ヒト組換えRANKL(Prosckelia, 100ng/mL)をOPG単独(R&D systems, 100から400ng/mL)、OPGおよび血清(1:40)またはベヒクルと37℃で1時間インキュベートした。血清枯渇後、細胞をヒトRANKL調製物で4時間刺激した。次に、細胞を溶解し、Steady Glo試薬(Promega)を用いBiotek Synergy HTプレートリーダーで溶解物をルシフェラーゼ活性について解析した。全てのレポーターアッセイは96ウェルプレート(各ウェルに5 x 104細胞を含む)で5組ずつにして実施した。
【0045】
考察
本明細書に記載した患者は、セリアック病および甲状腺障害の発症と密接に関連する重症の高骨代謝を示す骨粗しょう症により40歳で受診した。我々はOPGに対する新規な抗体を提示し、前記患者の血清がRANKL誘発RANKシグナリングに対するOPGの阻害作用をin vitroで逆転するが、コントロール血清は逆転しないことを示した。これは、OPGに対する抗体の偶発的発生による疾患についての最初の報告である。我々は、ある患者での組換えOPG構築物(AMGN-0007)の治療的投与はこの生成物に対する抗体の発生をもたらしたという事実を承知している。これはしかしながら臨床症状を伴わなかった。OPG抗体がこの患者で生じたメカニズムは不明であるが、循環タンパク質の自己抗体は自己免疫疾患を有する患者で以前に記載されたことがあった(10)。
【0046】
骨密度の測定は、我々の患者で彼が症状を提示する前に実施したことがあるが、骨折の家族歴がないことおよびラグビーに興じることを含めて極めて活動的な生活様式にもかかわらず骨折を経験したことがなかったという事実から、遺伝型骨粗しょう症は排除された。セリアック病または甲状腺機能低下がこの疾患に実質的に関わっているということもまた極めてありそうにない。セリアック病は、カルシウム、ビタミンDおよび他の栄養物の吸収不良のために骨粗しょう症および骨軟化症と密接に関連し得る。軽度の無機化不全が存在する重症の骨粗しょう症および高骨代謝は、セリアック病で予想されるものと一致せず、グルテン非含有食事、カルシウム補充およびビタミンDによる治療は骨粗しょう症の進行に実質的に影響を及ぼすことができなかった。TSHが骨の再形成を阻害するということを示唆した以前の報告(11)を考慮して、我々はまた、自己免疫甲状腺機能低下が骨粗しょう症に寄与したかもしれないという可能性を考えた。この可能性を調べるために、我々は、骨代謝で上昇TSHレベルの阻害作用をおそらく阻止し得るTSHレセプター阻止抗体の存在についてスクリーニングを実施したが、これらは陰性であった。これに関して、成人の甲状腺機能低下で骨の異常が認められるときは、前記は典型的には低い骨代謝状態であり、本明細書に記載した臨床像とは完全に反対の状態であることは記載しておくべきであろう。前記の観点から、骨粗しょう症が甲状腺機能低下と何らかの態様で関係があるということは極めてあり得ないように思われ、このことは、骨再造形の調節に主として対応し得るのはTSHではなく甲状腺ホルモンであることを示した他の研究結果と一致する(12)。
【0047】
我々の患者の開花性骨異常は、マウス(4)およびヒト(2,3)の遺伝性OPG欠乏で認められると報告された表現型と一致し、他の十分な説明が得られなかったので、OPGに対する抗体の発生がこの患者の症状の原因であることがほぼ確実であるように思われる。我々は、続いて20人の新たなセリアック病患者のうち5人で抗OPG抗体の存在を示し、これらの抗体はこれら自己免疫患者でかなり一般的であり得ることを示した。これらの患者では抗体レベルは最初の患者の場合よりはるかに低いようであるが、それは骨代謝に対してより重大でない影響をもたらすであろうと考えられよう。セリアック病の治療およびカルシウムとビタミンDの補充にもかかわらず、この骨異常の重症性および症状の悪化は、破骨細胞による骨吸収の強力なインヒビター、ゾレドロニック酸による治療に応答して生じた顕著な回復によってのみ適合する。我々の研究は、OPGに対する自己抗体は自己免疫疾患の状況下で偶発的に生じ、OPGに対する抗体が、他の炎症における骨代謝の上昇および骨粗しょう症の病理発生に寄与し得る可能性が高まることを示している。
【0048】
セリアック患者でのOPGに対する自己抗体の同定に加えて、骨密度との相関性が存在する可能性があり、したがって骨密度測定もまた、セリアック病患者のOPG自己抗体検出と一緒に実施することができる。実際、本発明者らは、OPG自己抗体を有する幾人かのセリアック病患者がより低い骨無機質濃度有することを観察した。
【0049】
最後に、本発明者らはまた、通常の血清RANKLアッセイもまた調べた。この実験は、血清RANKLの遊離分画を検出するアッセイ(Biomedica, Vienna, Austria)を製造業者の指示にしたがって用い、患者の血清RANKLについてELISAを実施することを必要とした。未希釈または水で希釈したサンプルをアッセイした。結果(表1参照)は、サンプルを希釈したときにRANKLの増加を示し、RANKLとOPGとの結合に干渉する抗体の存在と一致した(OPGはこのアッセイではRANKLの“捕捉”のために用いられる)。前記結果は、おそらく、これまで利用可能であった血清RANKLアッセイはOPG自己抗体の影響を受けていることを示唆している。
【実施例2】
【0050】
方法
血清サンプルは以下のグループから入手した:
患者自身;いくつかのサンプルを患者の病臥中の種々の時点で入手した;
年齢が一致する10人の健常な男性コントロール患者(指標患者の年齢の±10歳);
46人のセリアック病患者;
31人の自己免疫甲状腺機能低下の患者
10人の特発性重症骨粗しょう症患者
10人の慢性関節リウマチ患者
20人の多発性硬化症患者。
全てのサンプルは非絶食で入手し、タンパク質量は、二シンコニン酸アッセイ(Pierce)を用いて測定した。収集血清サンプルは4℃で保存し、採集から1週間以内に精製した。精製プロセスは、タンパク質Gスピンカラム(Pierce)のための標準的プロトコルにしたがった。
【0051】
OPGのための免疫沈澱アッセイ
免疫沈澱アッセイのためには、タンパク質G被覆アガロースビーズ(Calbiochem)を5%ヒト組換えアルブミンと37.5℃で1時間プレインキュベートして、非特異的結合を減少させた。続いて1:100希釈の血清サンプルを12.5gの組換えヒトOPGホモダイマー(R&D systems)とインキュベートした。続いて予め温めたPBSでビーズを5回洗浄し、30mLの還元サンプル緩衝液に懸濁させ、90℃で5分インキュベートした。簡単に遠心した後、上清を12%ポリアクリルアミドゲル(Biorad Criterion)にローディングし、200Vで60分電気泳動した。ウェスタンブロッティングに続いて、この膜をヒトOPGに対するマウスモノクローナル抗体(Abcam)をプローブとして調べ、1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ロバ抗マウス抗体(Jackson)によって検出した。免疫標識バンドは、GeneGenome画像化装置(Syngene)で化学発光(Supersignal Pierce)を用いて検出した。サンプルの等量ローディングは、各ブロットを剥がし、1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ヤギ抗ヒト抗体(Jackson)をプローブとして総免疫グロブリンについて調べることによって判定した。
実験中、指標患者血清を用いて陽性コントロールバンドを提供し、陰性コントロールバンドはウサギ抗アクチン抗体を用いることによって提供した。
【0052】
RANKシグナリングアッセイ
患者血清およびコントロール血清から精製した免疫グロブリンのRANKL誘発NFκB活性化に対する影響を、NFκB応答性ルシフェラーゼレポーターベクター(Cambridge Biosciences)を安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞を用いて調べた。細胞は10%ウシ胎児血清およびヒグロマイシン(Roche)補充DMEMで維持した。細胞は刺激前2時間枯渇させ、その後2%サイトカイン枯渇TCH補充物(MP biomedicals)を含むDMEMで維持した。全てのアッセイは96ウェルプレート(各ウェルに5 x 104細胞を含む)で5組ずつにして実施した。細胞は、100から400ng/mLのOPG(R&D systems)の存在下および1/40希釈の免疫グロブリンの存在下または非存在下で、37℃で1時間100ng/mLのヒト組換えRANKL(Prosckelia)で刺激した。刺激後 、細胞を溶解し、Steady Glo試薬(Promega)を用いBiotek Synergy HTプレートリーダーで溶解物をルシフェラーゼ活性について解析した。
【0053】
統計解析
骨密度データは、臨床管理の部分として以前にDEXAスキャンニングを受けた患者について入手した。各疾患グループを以下の2つのグループに分けた:血清中にOPG自己抗体の証拠を有する患者および血清中にOPG自己抗体の証拠をもたない患者。これら2つのグループについて平均BMDデータをt-検定を用いて統計的に比較し、この2つのグループ間に有意な相違が存在するか否かを確認した。95%の信頼間隔を用い、p<0.05の場合に有意と決定した。
【0054】
結果
患者の血清はOPGを免疫沈澱させた。OPGの免疫沈澱はウェスタンブロットで55Kdの強いバンドの出現によって示される(図2)。10人の健常な男性コントロール患者由来の血清は陰性結果を提示した。IPをグリアジンの存在下で繰り返し、OPG自己抗体がセリアック病患者で免疫反応を引き起こすタンパク質と交差反応するか否かを調べた。グリアジンの存在は患者血清のOPGを免疫沈澱させる能力に影響を与えないことが示された。
【0055】
BMDデータは、セリアック病の46人の患者のこのグループから36人の患者について利用可能であった。このグループの平均BMD T-スコア値は、OPG抗体をもたない患者については-1.116で、OPG抗体の証拠を有する患者については-2.237であった。この相違は統計的には有意であった(p=0.011;p≦0.05の場合に有意)。BMD T-スコアを若い健常コントロールに対して標準化し、一方、BMD Z-スコアを年齢一致コントロールに対して標準化した。血清中にOPG自己抗体の証拠を有する患者の平均年齢は67.5歳で、一方、OPG自己抗体の証拠をもたない患者の平均年齢は54.2歳であった。OPG自己抗体をもたない患者は-0.812の平均脊椎Z-スコアを有し、一方、OPG自己抗体を有する患者は-0.431の平均脊椎Z-スコアを有していた。この相違は統計的に有意ではなかった(p=0.254)。
【0056】
OPG自己抗体の証拠はまた、重症特発性骨粗しょう症の10人の患者のうち7人で、自己免疫甲状腺機能低下の31人の患者のうち4人で検出された(図5および6)。OPG自己抗体の証拠はまた、多発性硬化症の20人の患者のうち2人で(図7)、さらに慢性関節リウマチの10人の患者のうち2人で(図8b)観察された。重症特発性骨粗しょう症の患者の小さなグループの平均BMD T-スコアは、OPG自己抗体の無い患者については-3.6で、OPG自己抗体の証拠をそれらの血清で有する患者については-3.4である。この相違は有意ではなかった(p=0.36)。BMD Z-スコアはこの患者グループについては利用可能ではなかった。残念なことに、自己免疫甲状腺機能低下の患者グループのBMDデータは利用可能ではなかった。
【0057】
シグナリングアッセイに用いられた細胞へのRANKLの添加は、レポーター遺伝子発現の顕著な活性化を引き起こした(図2b)。この活性化は、コントロール血清の免疫グロブリン分画の存在下で等濃度のヒト組換えOPGによって阻害されることが示された。しかしながら、患者血清の免疫グロブリン分画の存在下ではOPGの阻害性作用は失われた。より高濃度のOPG(400ng/L)の添加はこの阻害を克服した。RANKLの非存在下では、患者の免疫グロブリンまたはコントロールの免疫グロブリンの添加は、レポーター遺伝子発現に対して有意な作用をもたないことが示された。RANKシグナリングアッセイは、患者の精製血清のOPGへの添加は、RANKLによって引き起こされるOPGの阻害作用の低下をin vitroで阻害することを示した。
【0058】
考察
本研究で考察した患者は40代で鎖骨の軽度外傷性骨折に関して受診し、セリアック病および自己免疫甲状腺機能低下が付随する、重症高骨代謝性骨粗しょう症を発症していることが示された。この患者は、OPGに対する循環中和自己抗体を有することが示された。この患者の血清は、RANKL誘発NFκBシグナリングでOPGの作用をin vitroで阻害することが示された。年齢が一致する健常コントロール患者から採取した血清はこの作用を示さなかった。
【0059】
これは、OPGに対する自己抗体の偶発的発生に付随して生じる骨疾患の最初の報告である。OPG自己抗体がこの患者で生じたメカニズムは不明であるが、しかしながら他の循環タンパク質に対する自己抗体が自己免疫疾患を患者で発症させることが報告されており(12)、おそらくOPGはこの患者の内因性免疫応答の標的となったと思われる。
【0060】
この患者の可能な他の診断も考えた。この疾患の開始が遅かったことおよびこの患者が30代後半に激しく接触するスポーツ(例えばラグビー)に定期的に参加していながら骨折歴が無いという事実から、可能な原因として先天性骨粗しょう症の遺伝型は初期に排除された。骨粗しょう症および骨軟化症は、ビタミンDおよびカルシウム欠乏のためにセリアック病の周知の合併症である(2,3)。これらの選択肢は、骨粗しょう症の重症性、迅速な開始と極めて高レベルの骨代謝、およびBMD改善のための通常のセリアック病の治療の失敗(厳密なグルテン非含有食およびカルシウムとビタミンD補給を含む)により除外された。線維形成不完全骨化(fibrogenesis imperfect ossium(FIO))の診断もまた、患者は通常成人してから脆弱性骨折を提示するので考慮してみた。しかしながら、この患者の臨床的特徴はFIOの患者と明らかに異なっていた(FIOは、X線で結節性肥厚、骨生検で厚い類骨の蓄積および治療に対する貧弱な応答を特徴とする(13))。
【0061】
本研究はまた、自己免疫甲状腺機能低下および重症特発性骨粗しょう症の患者の小さな患者グループにおいてOPG自己抗体が存在することを示した。OPG自己抗体を有すると確認された患者は、OPG抗体をもたない患者より低い平均BMDを有することが示され、セリアック病の患者のグループ内のBMD T-スコアに対してOPG自己抗体の有無を比較したとき、顕著な違いが確認された。BMDは、遺伝因子及び環境因子の両方の影響を受ける複雑な特性であり、したがって、BMDスコアに影響を及ぼした可能性がある他のリスク因子についてのデータを探した。セリアック病グループ内の全ての患者の年齢は判明しており、10歳を超える平均年齢差を確認した(OPG自己抗体を有する患者の平均年齢=67.5歳、OPG抗体をもたない患者の平均年齢=54.2歳)。この発見に続いて、BMD Z-スコアとOPG自己抗体の有無とを比較した(BMD Z-スコアは年齢一致健常コントロールに対して修正され、一方BMD T-スコアは若い健常コントロールに対して修正されている(15))。この結果は統計的には有意ではなかった(p=0.254)。しかしながら、これは、この小さなグループ間で大きな年齢差が与えられたとしたら驚くべきことではない。
【0062】
OPG抗体は自己免疫疾患で骨粗しょう症の病理発生に寄与し、OPG自己抗体を有する患者はより重篤な骨粗しょう症に罹患している者であると推測することは極めて興味ぶかい。説明がつかない重症骨粗しょう症の患者でOPG自己抗体の存在を確定することもまた極めて興味をそそられる。健常コントロールはOPG自己抗体の証拠を示さず、したがって患者血清のOPG自己抗体の存在は、重症骨粗しょう症の更なる進行の明らかなマーカーとして機能し得る可能性がある。このことは、医師が、どの患者が特発性骨粗しょう症の発症リスクを有するかを確定することを可能にし、環境および生活様式におけるリスク因子を減少させるために緊密な管理および早期の介入を実施することを可能にするであろう。しかしながら、BMDは、遺伝因子および環境因子の両方から患者の生涯を通して影響を受ける極めて複雑な特性であり、したがって本研究で得られた結果は、ある程度慎重に、特に小さなグループサイズの調査に関しては解釈されるべきであるということを、研究者は心に留めておくことが重要である。残念なことに、セリアック病患者のグループ間で年齢差について修正したデータの徹底的解析は統計的には有意ではなく、OPG自己抗体と低BMDとの間に真に有意な関係が存在するか否かについて確定するためには更なる研究が必要であろう。
【0063】
実施例1で引用された文献
【0064】
実施例2で引用された文献
【0065】
表1
【0066】
表2
【技術分野】
【0001】
本発明は、オステオプロテゲリンに対する自己抗体を検出する方法ととともにオステオプロテゲリンに対する自己抗体に関連する疾患の可能な治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗しょう症は、骨質量の減少および脆弱性骨折のリスクの増加を伴う一般的な疾患である。骨粗しょう症はセリアック病の周知の合併症であるが、これは、一般的にはカルシウムおよびビタミンDの欠乏並びに吸収障害作用の二次的結果であると考えられる。
核因子カッパBシグナリング経路のレセプターアクチベーター(RANK)は、骨質量および骨代謝の調節で決定的な役割を果たす(1)。RANKは、破骨細胞の前駆細胞および樹状細胞上で発現されるTNFレセプタースーパーファミリーのメンバーである。RANKシグナリングの活性化はRANKLの結合時に生じる(RANKLは、骨髄支質細胞によって発現されるTNFスーパーファミリーのメンバーである)。これは、破骨細胞の生成を促進するいくつかの細胞内シグナリング経路の活性化を引き起こす。RANKL-RANK相互作用はオステオプロテゲリン(OPG)によって阻止される(OPGはRANKLのおとり役レセプターとして機能することにより骨吸収を阻害する)。ヒトの破骨細胞生成におけるこの経路の重要性は、RANKまたはRANKLの欠損遺伝は大理石骨病を引き起こし(9)、一方、OPGの機能喪失変異は骨代謝における普遍的増加を引き起こして、マウスおよびヒトの両方で骨の変形、骨粗しょう症、および脆弱性骨折を生じる(2−4)という事実によって強調される。最近の研究は、OPGの一般的な多形性もまた、骨のパジェット病および骨粗しょう症の両方の遺伝的調節で役割を果たすことを示している(5−8)。骨粗しょう症の血清OPGレベルの関連性については矛盾する証拠が存在し、特にOPG生成または活性の後天的異常によって生じる骨疾患はこれまで報告がない。
本発明は、高い骨代謝を示す重症骨粗しょう症の対象者でオステオプロテゲリンに対する自己抗体を確認したことに基づく。
【発明の概要】
【0003】
第一の特徴では、オステオプロテゲリン(OPG)に対する自己抗体を検出する方法が提供される。前記方法は、骨粗しょう症の対象者または骨粗しょう症のリスクを有する対象者から生物学的サンプルを提供する工程、およびオステオプロテゲリン(OPG)に対する何らかの抗体が前記生物学的サンプルに存在するか否かを検出する工程を含む。
本発明の自己抗体は、宿主(特にヒト)の免疫系によって、OPGまたはその抗原性フラグメントに対して生じる抗体であると理解される。
【0004】
上記で述べたように、本発明は、高い骨代謝を示す重症骨粗しょう症の対象者でOPGに対する自己抗体が確認されたことに基づき、したがって、前記検出方法は骨粗しょう症の診断の補助に利用することができる。前記検出方法は単独で用いることはできず、他の試験(例えば二重X線吸収法)と併用することができる。それにもかかわらず、そのような方法は、陽性ならば、骨粗しょう症の複雑な因子の認定を容易にし、医師の具体的な治療スケジュールの決定を支援することができる。
【0005】
しかしながら、骨粗しょう症を提示している対象者の他に、対象者はまた自己免疫セリアック病に罹患していることが観察された。当分野では、セリアック病は骨粗しょう症と密接に関係し得ることが知られているが、これは、カルシウム、ビタミンDおよび他の栄養物の吸収不良によると考えられる。理論に拘束されないが、本発明者らは、OPGに対する自己抗体は骨粗しょう症に付随しているのではなくて、一般的に自己免疫症状のマーカーであり得るか、自己免疫症状に付随し得ると推測する。前記自己免疫症状には、しばしば骨粗しょう症が合併するセリアック病、慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患が含まれるが、これまでこれらの症状でOPGに対する自己抗体が確認されたことはない。
【0006】
さらにまた、本発明者らは、OPGに対する自己抗体が、自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、重症特発性骨粗しょう症および多発性硬化症の患者で存在することを観察した。したがって、理論に拘束されないが、OPGに対する自己抗体は、他の症状(例えば自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、重症特発性骨粗しょう症および多発性硬化症)に付随するか、またはマーカーであり得ると推定される。したがって、本明細書で用いられる“自己免疫疾患”または“自己免疫症状”は、本明細書で開示する全ての疾患および/または症状(例えばセリアック病、自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、および多発性硬化症とともに他の自己免疫疾患(例えばSLE、強皮症、結合組織疾患および/または他の免疫系の異常)を含む)に関連する。骨粗しょう症は一般的には自己免疫疾患であるとは考えられていないが、OPGに対する自己抗体が重症骨粗しょう症の患者に存在するという観察は、いくつかの症例では、骨粗しょう症は“自己免疫”疾患と考えることができることを示唆し、前記の場合、自己免疫反応は主として骨格、より具体的には“OPGタンパク質”に向けられている。
【0007】
さらにまた、骨粗しょう症と血管系疾患はしばしば併存することもまた公知であり、OPGの欠乏は血管の石灰化の病理発生を促進し得ることを示唆する証拠が存在する。初めてOPGに対する自己抗体が確認され、本発明はまた、血管系疾患(OPGレベル/機能と密接に関連し得る)の診断および/または治療を補助する潜在的方法を提供する。
【0008】
理論に拘束されないが、OPGに対する自己抗体は対象者に存在するOPGと結合し、それによってOPGの天然の活性を破壊し、それは続いてRANK/RANKL/OPGのシステムまたは均衡に影響を及ぼし、自己免疫および/または血管症状と密接に関係し得る下流における結果をもたらすであろうということは理解されよう。
【0009】
したがって、自己免疫および/または血管系疾患のための診断/予後および/または治療スケジュールの支援に前記方法を用いることができる。ある実施態様では、本明細書に開示する検出方法は、例えばセリアック病、自己免疫甲状腺機能低下、慢性関節リウマチ、重症特発性骨粗しょう症および多発性硬化症を診断/判定するために、および/または適切な治療スケジュールを決定するために用いることができる。
【0010】
生物学的サンプルは、任意の適切なサンプルであり得る。前記には、血液(例えば血清、血漿など)とともに尿、唾液および血液から単離された白血球が含まれる。
【0011】
生物学的サンプルで前記自己免疫を決定する方法は、抗体の検出に用いることができる公知の任意の免疫診断法であり得る。例には、放射線免疫アッセイ、ELISA、サンドイッチアッセイなどが含まれる。適切なアッセイの一般的な説明は以下で見出すことができる:Immunoassay: A practical guide, Brian Law, CRC Press, 1996;およびImmunoassay: A practical approach, James P. Gosling, Oxford University Press, 2000(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0012】
そのような免疫診断方法を実施することができる例示的な態様は、精製OPGまたはOPG自己抗体と結合することができるそのフラグメントで被覆した土台(例えばマイクロタイタープレートのウェル)を提供することである。生物学的サンプルに存在するいずれの抗OPGも、未反応物質を洗い流す前に前記土台に結合することができよう。この結合抗OPGは、さらに別の、場合によって標識した抗-抗OPG抗体の手段によって続いて検出することができる。しかしながら、別の抗体は実際には要求されないことがあり、結合した抗OPG抗体は、物理学的、電気物理学的、または分光分析的手段(例えばラマン計測法)によって指向され得る。
【0013】
別の実施態様では、置換または競合的結合アッセイが提供される。OPGはRANKLのおとり役レセプターであり、RANKLと結合してRANKLが破骨細胞および他の標的細胞の表面でRANKと結合するのを妨げる。多くのRANKLアッセイはOPGがRANKLと結合できるという事実を利用し、これらのアッセイは、血清または血漿サンプルに存在するRANKLを“捕捉する”方法のように、ELISAプレート上の基質としてOPGを利用する。しかしながら、OPGに対する抗体が血清中に存在する場合、前記抗体はRANKLのOPGと結合する能力に干渉するであろう。これによって、OPG抗体を有する患者では異常に低いRANKL血清レベルが提示され、血清サンプルが希釈されるにつれてRANKLが増加することが予想されよう。或いは、既知量のRANKLを含むサンプルにOPG抗体を含む患者由来の血清の添加は測定レベルの低下をもたらすであろう。基準値を提供するために、既知量のRANKLおよびOPGを用いてコントロール/陰性コントロールを設定できよう。さらにまた、抗OPG抗体を含むサンプルが添加される場合、前記抗体は、サンプル中の利用可能なOPGと結合してRANKLと結合するその作用を妨げ、続いてRANKと結合するRANKLの量を増加させるであろう。この増加もまた検出することができる。
【0014】
本方法はまたチップ系技術を用いて、または迅速(一点集中(point-of-care))型アッセイとして実施することができる。
【0015】
OPGはヒトでも動物でもよく、さらに相応に精製できるが、また、例えば組換え手段によって生成するか、既知の原核細胞または真核細胞発現系で発現させてもよい(例えば以下を参照されたい:Sambrook and Russel: “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2001, CSHL Press)。OPGの抗原分画もまた用いることができる。いったん精製すれば、既知の方法にしたがってOPGまたはその抗原分画を用い、本明細書に記載の方法で使用できる抗体(モノクローナル抗体を含む)の供給源を作製することができる。これらの抗体を、放射線、蛍光、酵素タグまたは当分野で公知の任意の他の手段によって標識できる。
【0016】
本明細書に記載した検出方法と同様に、本発明はまた、本明細書に記載のRANKL/RANK/OPG経路とともにRANK活性化後の下流におけるシグナリング経路の不均衡に付随する疾患の可能な治療方法を提供する。具体的には、前記疾患には骨粗しょう症、自己免疫疾患(例えばセリアック病、自己免疫甲状腺機能低下および重症特発性骨粗しょう症)および血管系疾患が含まれる。前記治療方法は、自己免疫プロセスで必要とされる抗体を不活化(阻止)または除去することを目的とすることができるが、また他方、免疫寛容を生じさせることにより特異的態様でこの病理学的プロセスに影響を与えることを目的とすることも考えられる。抗体を阻止するためには、OPGに対する自己抗体に対して生成した抗体を用いるか、または自己抗体とOPG間の相互作用を阻止する小分子を開発することが可能である。
【0017】
そのような阻止抗体または治療用抗体は、抗OPGと特異的に結合し、したがって抗OPGと補完性であると定義される免疫グロブリンであると理解される。前記抗体はモノクローナルでもポリクローナルでもよく、さらに当分野で周知の技術、例えば宿主の免疫と血清(ポリクローナル)の採集、または継続性ハイブリッド細胞株の調製と分泌タンパク質(モノクローナル)の採集、またはヌクレオチド配列もしくはその変異導入変型(少なくとも天然の抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列をコードする)のクローニングと発現によって調製できる。抗体は完全な免疫グロブリンまたはそのフラグメントを含むことができ、前記免疫グロブリンには、多様なクラスおよびアイソタイプ、例えばIgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2aおよびIgG3、IgMなどが含まれる。そのフラグメントには、Fab、FvおよびF(ab')2、Fab'などが含まれ得る。さらにまた、免疫グロブリンまたはそれらのフラグメントの凝集物、ポリマーおよび連結物も、適切な場合には、個々のポリペプチドに対する結合親和性が維持されているかぎり用いることができる。
【0018】
また別には、免疫寛容を誘発する治療薬剤として、または抗原提示の阻止もしくは調節により抗原提示細胞またはT細胞におけるT細胞反応性の阻止を誘発する治療薬剤として、OPGを完全な形態で、またはアダクツ、リン酸化生成物、部分ペプチド、ペプチドアナローグまたはスプライス変種の形態で用いることができる。
【0019】
したがって、上記に記載の検出方法の提供に加えて、骨粗しょう症、自己免疫疾患および/または血管系疾患を有する患者またはそのような疾患を発症するリスクを有する患者を治療する、以下の工程を含む方法が提供される:
(a)OPGに対する自己抗体について患者をスクリーニングすることにより、前記疾患または前記疾患を発症する傾向を検出する工程;および
(b)工程(a)の試験で陽性の患者を以下のいずれかで処置する工程:
(i)破骨細胞性骨吸収のインヒビター、例えばゾレドロニック酸(Zoledronic acid)、アレンドロニック酸(alendronic acid)、リセドロネート二ナトリウム、カルシトニン並びにその塩および溶媒和物;
(ii)OPGを認識する自己抗体に対して作製された抗体、またはOPG抗体とOPGまたはOPGフラグメントとの結合を妨げるペプチド(例えばRANKLに由来するペプチド)および小分子;
(iii)OPGに対する免疫寛容を回復させるOPGまたはそのフラグメント;または
(iv)(i)−(iii)の処置の組合せ。
【0020】
さらに別の特徴では、骨粗しょう症および/または関連する自己免疫または血管症状の治療で使用するために、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体の使用が提供される。さらに別の実施態様では、本発明は、骨粗しょう症および/または関連する自己免疫または血管症状の治療方法を提供する。前記方法は、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体の治療的に有効な量を投与する工程を含む。
【0021】
本発明の使用または方法のために、抗OPG自己抗体またはその抗原性フラグメントに対して作製された抗体は医薬処方物として提供され、前記処方物は、したがって1つまたは2つ以上の医薬的に許容できる担体および場合によって他の治療薬および/または予防薬成分と一緒に抗体を含むことができる。担体は、処方物の他の成分と適合し、さらにその受容者にとって有害ではないという意味で許容可能でなければならない。
【0022】
医薬処方物は、経口、局所(皮膚、頬側および舌下を含む)、直腸または、非経口(皮下、皮内、筋肉内および静脈内を含む)、鼻および肺(例えば吸入による)投与に適したものを含む。処方物は、適切な場合には、別々の調剤ユニットとして都合よく提供することができ、製薬業界で周知の方法のいずれかによって製造することができる。全ての方法が、活性化合物を液状担体または微細に分割された固体状担体またはその両方と混合し、さらに必要な場合には、続いて生成物を所望の処方物に形作る工程を含む。
【0023】
経口投与に適した医薬処方物(担体は固体である)は、もっとも好ましくはユニットドース処方物、例えばボーラス、カプセルまたは錠剤として提供され、前記は各々予め決定された量の活性化合物を含む。錠剤は、場合によって1つまたは2つ以上の付属成分とともに圧縮または成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、自由に流動する形状(例えば粉末または顆粒)で、場合によって結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、研磨剤、表面活性剤または分散剤と混合された活性化合物を適切な機械で圧縮することによって製造できる。成形錠剤は、活性化合物を不活性な液状希釈剤とともに成形することによって製造できる。錠剤は場合によって被覆でき、被覆しない場合は切れ込みを入れることができる。カプセルは、活性化合物を単独でまたは1つもしくは2つ以上の付属成分との混合物としてカプセルの殻に充填し、続いて通常の態様でそれらを封じることによって製造できる。カシェーはカプセルと類似し、この場合、活性化合物は付属成分と一緒にライスペーパーの袋に封入される。活性化合物はまた、分散性顆粒として処方でき、前記顆粒は、例えば投与前に水に懸濁させるか、食べ物に振りかけることができる。顆粒は例えばサシェとして包装できる。担体が液状である、経口投与に適した処方物は、水性または非水性液体中の溶液または懸濁液として、または液体状の水中油エマルジョンとして提供できる。
【0024】
経口投与用処方物には制御放出調剤形(例えば錠剤)が含まれ、前記調剤形では、活性化合物は適切な放出制御マトリックス中に処方されるか、または適切な放出制御フィルムで被覆される。そのような処方物は予防的使用に特に便利であり得る。
【0025】
担体が固体である、直腸投与に適した医薬処方物は、もっとも好ましくはユニットドースの座薬として提供される。適切な担体には、カカオ脂および当分野で通常的に用いられる他の物質が含まれる。座薬は、活性化合物を軟化または溶融担体と混合し、続いて冷却し鋳型で成形することによって都合よく形成できる。
【0026】
非経口投与に適した医薬処方物には、水性または油性ベヒクル中の活性抗体の無菌溶液または懸濁物が含まれる。
【0027】
注射可能調製物はボーラス注射または持続輸液のために適合させることができる。そのような調製物は、ユニットドースまたはマルチドース容器で都合よく提供される。前記容器は、処方物の導入後使用が必要になるまで封じられる。また別には、活性抗体は粉末形であり、使用前に適切なベヒクル(例えば無菌的で発熱因子を含まない水)で構成することができる。
【0028】
活性抗体はまた、長期作用性蓄積調製物として処方でき、前記は筋肉内注射によって、または埋め込み(例えば皮下または筋肉内)によって投与できる。蓄積調製物には、例えば適切なポリマーもしくは疎水性物質またはイオン交換樹脂が含まれ得る。そのような長期作用性処方物は予防的使用に特に都合よい。
【0029】
頬腔を介する肺投与に適した処方物は、活性化合物を含み、望ましくは直径が0.5から7ミクロンの範囲の粒子が受容者の気管支にデリバリーされるように提供される。
1つの可能性として、そのような処方物は微細に粉砕された粉末形であり、前記は、吸入装置で使用するために貫通可能なカプセル(適切には例えばゼラチン)として、或いは、活性化合物、適切な液状またはガス状推進体および場合によって他の成分(例えば界面活性剤および/または固体希釈剤)を含む自己推進処方物として都合よく提供できる。適切な液状推進体にはプロパンおよびクロロフルオロカーボンが含まれ、適切なガス状推進体には二酸化炭素が含まれる。活性化合物が溶液または懸濁物の微小滴の形で調合される自己推進処方物もまた利用することができる。
【0030】
そのような自己推進処方物は当分野で公知のものに類似し、確立された手順で製造することができる。適切には、それらは、所望の噴霧特性を有する、手動操作可能なまたは自動的に機能するバルブを備えた容器中で提供される。有利には、前記バルブは、毎回の操作時に固定された体積(例えば25から100マイクロリットル)がデリバリーされる計測型である。
【0031】
さらに別の可能性として、活性抗体は、噴霧器またはネブライザーで使用される溶液または懸濁物の形態でもよい(前記装置により生じた加速気流または超音波攪拌が吸入のための微細な霧滴の生成に利用される)。鼻内投与に適した処方物は、肺投与のために上記に記載した調製物と概ね類似する調製物が含まれる。適用されたとき、そのような処方物は、鼻腔内での保持を可能にするために望ましくは10から200ミクロンの範囲の粒子直径を有する。これは、適切な粒子サイズの粉末を使用するか、または適切なバルブを選択することによって達成することができる。他の適切な処方物には、20から500ミクロンの粒子直径を有する粗粉末(鼻近くに保持された容器から鼻道を通過する迅速な吸引による投与用)、および水性もしくは油性溶液または懸濁液中の0.2から5%w/vの活性化合物を含む点鼻薬が含まれる。
【0032】
前述の担体成分に加えて、上記の医薬処方物は、適切な1つまたは2つ以上のまた別の担体成分、例えば希釈剤、緩衝剤、香料、結合剤、表面活性剤、膨張剤、滑沢剤、保存料(抗酸化剤を含む)など、および処方物を意図される受容者の血液と等張にする目的のために含まれる物質を含むことができることは理解されよう。
【0033】
医薬的に許容される担体は当業者には周知であり、0.1M好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液または0.8%の食塩水が含まれるが、ただしこれらに限定されない。さらにまた、そのような医薬的に許容できる担体は、水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンであり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングルコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)である。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液(食塩水および緩衝媒体を含む)が含まれる。非経口ベヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または固定油が含まれる。保存料および他の添加物もまた存在し得る。前記は、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどである。
【0034】
本発明者の発見から鑑みて、骨粗しょう症の発症リスクがあるかまたは骨粗しょう症を罹患していると考えられる自己免疫疾患の患者は、したがって本明細書に記載の方法にしたがってOPG自己抗体についてスクリーニングされるべきである。自己免疫抗体が陽性であることが判明した患者およびその家族は、本明細書に記載の方法にしたがって治療することを考慮されるべきである。本発明の信頼できる免疫学的アッセイは、自動化またはフィンガースティックスクリーニング試験として開発することができる。さらにまた、本発明は、患者または骨粗しょう症の発症リスクのある人々でOPG自己抗体を検出するためのキットを提供する。前記キットは、精製OPGまたはその抗原フラグメントの供給源および場合によって他の試薬、例えばRANK、RANKLおよび/または抗OPG(これらのいずれかは場合によって標識される)を含むであろう。
【0035】
本明細書で用いられるように、“キット”という用語は、物質のデリバリーのためのデリバリー系を意味する。反応アッセイに関する文脈では、そのようなデリバリー系は、ある場所から別の場所へ、反応試薬(例えば適切な容器中のプローブ、酵素など)および/または補助物質(例えば緩衝剤、アッセイ実施のための指示書など)の貯蔵、輸送またはデリバリーを可能にする系を含む。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または補助物質を収納する1つまたは2つ以上の封入物(例えば箱)を含む。そのような内容物は、意図する受容者へ一緒にまたは別々にデリバリーされ得る。例えば、第一の容器はアッセイで使用されるOPG供給源を含み、第二の容器はタグを含むことができる。
本発明はこれから例をもって、さらに下記図面を参照しながら記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】対象者の臨床的特徴および治療に対する応答を示す。図版a:類骨継ぎ目の範囲の増加を示すトルイジンブルー染色腸骨横断骨生検の光学顕微鏡写真で、軽度の無機化不足を示唆している。図版b:巣状病巣の証拠の非存在下におけるトレーサー取り込みの全体的増加を示す、放射性ヌクレオチド骨スキャン。図版c:破骨細胞(赤い矢印)および骨芽細胞(青い矢印)の顕著な増加を示す、H&E染色腸骨横断骨生検の光学顕微鏡写真。不規則なセメント線によって立証されるように、網状骨が生検全体に存在する。図版d:骨の無機質濃度。および図版e:受診時および治療応答時の尿のデオキシピリジノリン/クレアチニン比(DPD)およびアルカリホスファターゼ(ALP)レベル。グルテン非含有食事、カルシウムおよびビタミンDによる長期間の治療にもかかわらず、骨密度は低下した(灰色の線)が、BMDはゾレドロニック酸による治療で次第に増加した(矢印)(図版c)。血清APLレベルは、グルテン非含有食事、カルシウムおよびビタミンDによる治療の後、3000u/mL以上から約100u/mLに低下したが、DPDは大きく上昇したままであった。ゾレドロニック酸による治療(矢印)は、骨代謝の両生化学的マーカーを正常化させた。
【図2】オステオプロテゲリンに対する自己抗体の中和の検出をしめす。図版a:左の図版は、患者血清中のオステオプロテゲリンに対する自己抗体の存在を示す(前記は免疫沈澱に続いて抗OPG抗体によるウェスタンブロットでの55Kdバンドの検出によって示された)。5人のコントロール由来サンプルは、同じ条件下でOPGを沈殿させなかった。上段右の図版は、ゲルのローディングが等しいことを確認するために免疫グロブリンについて染色されている。表示されている結果は、3つの別個の実験の代表例である。図版b:患者の血清は、HEK239細胞でのRANKL刺激NFκB活性化に対する100ng/mLのOPGの阻害性作用を停止させるが、コントロール血清は停止させない。400ng/mLのOPG添加(XS OPGと標識した棒線)はこの阻害を克服した。**p<0.001(ベヒクル);##p<0.01(RANKLおよびRANKL+OPG+患者血清)。結果は3つの別個の実験の代表例である。
【図3】(A)患者血清(レーン2)中のOPGに対する自己抗体の存在を示す(前記は、免疫沈澱に続いて抗OPG抗体によるウェスタンブロットでの55Kdの強いバンドの検出によって示された)。レーン1は陰性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者1−10の結果を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン9および10に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(B)レーン1は陰性コントロールを示し、レーン2は指標患者の血清の陽性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者11−20を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン10および12に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(C)レーン1は指標患者の血清の陽性コントロールを示し、レーン2は陰性コントロールを示す。レーン3−8はセリアック病の患者21−26を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン4および7に存在する。下段の図版は、免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示し、レーンは等しくローディングされなかったことを表す。
【図4】(A)レーン1は陰性コントロールを示し、レーン2は指標患者の血清の陽性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者27−36を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン4、5、6および12に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(B)レーン1は指標患者血清の陽性コントロールを示し、レーン2は陰性コントロールを示す。レーン3−12はセリアック病の患者37−48を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン3、6、7および11に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。
【図5】レーン1は指標患者の血清の陽性コントロールを示し、レーン2は陰性コントロールを示す。レーン3−12は特発性骨粗しょう症の患者1−10を示す。OPG自己抗体の証拠はレーン3、4、5、7、8、9および11に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。
【図6】(A)レーン1は陰性コントロールを示し、レーン2は指標患者の血清の陽性コントロールを示す。レーン3−12は自己免疫甲状腺機能低下の患者1−10を示し、OPG自己抗体の証拠はレーン2に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(B)レーン1は陰性コントロールを示す。レーン2−12は自己免疫甲状腺機能低下の患者11−21を示し、TRAB自己抗体をそれらの血清において確認した。OPG自己抗体の証拠はレーン3、4および5に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。(C)レーン1は陰性コントロールを示す。レーン2−12は自己免疫甲状腺機能低下の患者22−31を示し、TRAB自己抗体をそれらの血清において確認した。OPG自己抗体の証拠はレーン2、3、4、5および6に存在する。下段の図版は、ゲルのローディングが等しいことを示すために免疫グロブリンについて染色したウェスタンブロットを示す。
【図7】多発性硬化症におけるプリバレンス:多発性硬化症の未選別患者の代表的免疫沈澱アッセイ。OPG抗体はレーン9に示されている。下の図版は抗ヒトIgGをプローブとして調べた同じブロットを示し、ローディングが等しいことを表している。20人の患者を含む前試験グループの多発性硬化症における全体的なプリバレンスは10%であった。レーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者のサンプルである。
【図8】さらに別の疾患グループにおけるプリバレンス。A:セリアック病の未選別患者の代表的免疫沈澱アッセイ。OPG抗体はレーン10から12に示されている。下の図版は抗ヒトIgGをプローブとして調べた同じブロットを示し、ローディングが等しいことを表している。レーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者である。B:慢性関節リウマチ(レーン3から7)および甲状腺機能低下(レーン8−10)の患者の代表的免疫沈澱アッセイ。レーン11−12は健常コントロールであった。繰り返せばレーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者である。C:重症骨粗しょう症(レーン3から12のサンプル)の未選別患者でOPG抗体の存在を示す免疫沈澱アッセイ。レーン6および8の患者はまた治療された甲状腺機能低下を有していた。レーン1は陰性コントロールで、レーン2は指標患者である。
【図9】抗体力価および骨の無機質濃度。重症骨粗しょう症で観察されるバンドの強さは、自己免疫グループの場合よりも顕著であるように思われる(自己免疫骨粗しょう症の場合、典型的には骨粗しょう症の重症度はより低い)。免疫沈澱アッセイは正確には定量的ではないが、血清のローディングについておよび陽性コントロールに対して標準化した結果は、OPGバンドの強さと骨の無機質濃度との間の過度に強くはないが統計的に有意な相関性を示唆している(r=-0.33、p=0.023)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
症例報告
40歳の白人男性が、息子と遊んでいたときに起きた左鎖骨の軽度の外傷性骨折後に受診した。彼はそれ以前には活発で健康であり、30代後半まで定期的にラグビーに興じていたにもかかわらず骨折歴はなかった。二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)を実施したところ、骨無機質濃度(BMD)が低く、T-スコアは脊柱で-6.6、大腿骨頸部で-2.9であった。この時点で日常的精密検査を実施して、アルカリホスファターゼ(ALP)の上昇(2601U/L)(正常範囲25−120U/L)が示され、これは、イソ酵素試験により骨起源であることが示された。患者はまた血清ホスフェートの上昇(2.36mmol/L)(正常範囲0.8−1.4mmol/L)も示した。この時点では、全血球算定、尿素および電解質、肝機能検査、血清カルシウム、アルブミンレベルおよび短シナクテン(short synacthen)(ACTH)検査はいずれも正常であった。血清副甲状腺ホルモン(PTH)レベルは8ng/Lで低く(正常範囲10−65ng/L)、さらに患者の血清25(OH)Dレベルは35ng/Lで正常範囲内であることが示された(正常範囲25−150ngμL)。
【0038】
受診前の1年間、患者は活力の欠乏および寒さに対する耐え難さに気付いていたので、甲状腺機能低下についてスクリーニングを実施した。患者の血清遊離サイロキシンは5pmol/L未満(正常範囲は10−20pmol/L)であることが示され、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルは65mU/Lで高かった(正常範囲2−5mU/L)。抗甲状腺ペルオキシダーゼ自己抗体は243u/mL(正常範囲0−82u/mL)のレベルで検出されたが、TSHレセプター阻止自己抗体についての検査はいずれも陰性であった。血清テストステロンおよびゴナドトロピンは正常で、患者は、確認された甲状腺機能低下の治療のためにL-サイロキシン(100mcg/日)を開始した。
【0039】
ALPレベルは3539U/Lまで上昇を続け、患者は血清カルシウムレベル2.8mmol/Lで高カルシウム血症を発症した(正常範囲2.1−2.6mmol/L)。この時点で、血清PTHおよび1,25(OH)Dのレベルは検出不能であった。尿カルシウム/クレアチニン比は、高カルシウム血症の吸収メカニズム(前記は続いて静脈内再水和により溶解する)に対応して4.78に上昇した(正常範囲<0.5)。広範囲の精密検査を実施して不顕性悪性疾患を排除した。前記検査には、骨髄吸引、腹部および胸郭CT、並びにミエローマスクリーニングが含まれたが、結果は注目するものではなかった。放射性核種骨スキャンは、巣状病巣の非存在下においてトレーサーの取り込みの散在性増加を骨格全体にわたって示した(図1aおよび1b)。腸骨横断骨生検は、網状骨とともに破骨細胞および骨芽細胞の劇的な増加を示す高骨代謝を示した(図1c)。類骨継ぎ目の範囲の軽度の増加があったが、類骨の厚さは正常であった(図1d)。
【0040】
トランスグルタミナーゼIgA自己抗体力価は101u/Lに上昇し(正常範囲は5−30u/L)、小腸生検によってセリアック病が確認された。前記のための治療が、厳密なグルテン非含有食事(エルゴカルシフェロール10,000ユニット/日)および1g/日のカルシウム補充により開始された。その後6カ月の経過観察で、この患者は1000U/LのALPレベルを示したが、骨粗しょう症は悪化し、再度のDEXAでT-スコアは-7.1を示した。患者は左上腕骨の軽度の外傷性骨折を示し、多発性脊椎骨骨折のために身長が6cm減少した。この時点で、再度の十二指腸生検は腸組織学の正常化を示し、患者の1,25(OH)Dレベルは正常範囲内であった。
【0041】
血清オステオプロテゲリン(OPG)レベルを1ヶ月離して2回、ELISA(Biomedica, Oxford Biosystems, Oxford UK)で測定し、それぞれ0.78pmol/Lおよび0.47pmol/Lを示した(正常範囲は0.14−130pmol/L)。同じ時に、ELISA(Apotech, Epalinges, Switzerland)で測定した血清総RANKLレベルは、0.152および0.143nmol/Lであった(正常範囲は0−10nmol/L)。
【0042】
患者の持続的な症状悪化を考慮し、3カ月の期間にわたって患者を4mgのゾレンドロニック酸の3回輸液で治療した。最初の投与の後で、血清カルシウムレベルは1.91mmol/Lに減少し、これにはPTHの163ng/Lへの上昇および1,25(OH)2D3の992pmol/Lへの上昇(正常範囲15−150pmol/L)が付随した。この治療スケジュールの完了後に、全ての血清かく乱は正常範囲内に戻った。最初の受診から42カ月の経過観察で、患者は更なる骨折を生じず、身長は安定し、再度のDEXAでT-スコアは-1.7に改善した。
【実施例1】
【0043】
方法
OPGの免疫沈澱アッセイ
前記患者からその病気期間中に数回、および年齢が一致した10人の健常な男性コントロールから非絶食血清サンプルを入手した。さらに別のスクリーニングを、セリアック病患者の20サンプルで、および原発性甲状腺機能低下の14サンプルで実施した。タンパク質含有量は、二シンコニン酸(bicinchonic acid)アッセイ(Pierce)を用いて測定した。免疫沈澱アッセイのためには、1:100希釈の患者またはコントロール血清を12.5gの組換えヒトOPG(R&D systems)およびタンパク質G被覆アガロースビーズ(Calbiochem)とともにインキュベートした(前記アガロースビーズは、非特異的結合を減少させるために5%アルブミンでプレインキュベートしてあった)。37℃で1時間インキュベートした後、タンパク質Gアガロースビーズを遠心沈殿し、PBSで5回洗浄した。最後の洗浄の後で、ビーズを遠心沈殿し、30μLの還元サンプル緩衝液に再懸濁し、90℃で5分インキュベートした。サンプルを冷却し、ビーズを遠心沈殿し、上清を12%ポリアクリルアミドゲル(Biorad Criterion)にローディングし、200Vで60分電気泳動を実施した。電気泳動の後、タンパク質をウェスタンブロッティングによって荷電ナイロン膜に移し、さらにこの膜をヒトOPGに対するマウスモノクローナル抗体(Abcam)をプローブとして調べ、1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ロバ抗マウス抗体(Jackson)によって検出した。サンプルのローディングは、ブロットを1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ヤギ抗ヒト抗体(Jackson)をプローブとして調べることによって判定した。免疫標識バンドは、Syngene GeneGenome画像化装置で化学発光(Supersignal Pierce)を用いて検出した。
【0044】
RANKシグナリングアッセイ
我々は、RANKL誘発NFκB活性化に対する患者血清およびコントロール血清の影響をHEK293細胞で調べた(前記HEK239細胞は、NFκB応答性ルシフェラーゼレポーターベクター(Cambridge Biosciences)を安定的にトランスフェクトされてあった)。前記細胞を10%ウシ胎児血清およびヒグロマイシン(Roche)補充DMEMで維持したが、RANKL刺激前の2時間は血清を枯渇させ、その後2%サイトカイン枯渇TCH補充物(MP biomedicals)を含むDMEMで維持した。血清サンプルは、製造業者の指示にしたがってタンパク質Gスピンカラム(Pierce)を用いて精製し、一切の非特異的血清作用を回避した。ヒト組換えRANKL(Prosckelia, 100ng/mL)をOPG単独(R&D systems, 100から400ng/mL)、OPGおよび血清(1:40)またはベヒクルと37℃で1時間インキュベートした。血清枯渇後、細胞をヒトRANKL調製物で4時間刺激した。次に、細胞を溶解し、Steady Glo試薬(Promega)を用いBiotek Synergy HTプレートリーダーで溶解物をルシフェラーゼ活性について解析した。全てのレポーターアッセイは96ウェルプレート(各ウェルに5 x 104細胞を含む)で5組ずつにして実施した。
【0045】
考察
本明細書に記載した患者は、セリアック病および甲状腺障害の発症と密接に関連する重症の高骨代謝を示す骨粗しょう症により40歳で受診した。我々はOPGに対する新規な抗体を提示し、前記患者の血清がRANKL誘発RANKシグナリングに対するOPGの阻害作用をin vitroで逆転するが、コントロール血清は逆転しないことを示した。これは、OPGに対する抗体の偶発的発生による疾患についての最初の報告である。我々は、ある患者での組換えOPG構築物(AMGN-0007)の治療的投与はこの生成物に対する抗体の発生をもたらしたという事実を承知している。これはしかしながら臨床症状を伴わなかった。OPG抗体がこの患者で生じたメカニズムは不明であるが、循環タンパク質の自己抗体は自己免疫疾患を有する患者で以前に記載されたことがあった(10)。
【0046】
骨密度の測定は、我々の患者で彼が症状を提示する前に実施したことがあるが、骨折の家族歴がないことおよびラグビーに興じることを含めて極めて活動的な生活様式にもかかわらず骨折を経験したことがなかったという事実から、遺伝型骨粗しょう症は排除された。セリアック病または甲状腺機能低下がこの疾患に実質的に関わっているということもまた極めてありそうにない。セリアック病は、カルシウム、ビタミンDおよび他の栄養物の吸収不良のために骨粗しょう症および骨軟化症と密接に関連し得る。軽度の無機化不全が存在する重症の骨粗しょう症および高骨代謝は、セリアック病で予想されるものと一致せず、グルテン非含有食事、カルシウム補充およびビタミンDによる治療は骨粗しょう症の進行に実質的に影響を及ぼすことができなかった。TSHが骨の再形成を阻害するということを示唆した以前の報告(11)を考慮して、我々はまた、自己免疫甲状腺機能低下が骨粗しょう症に寄与したかもしれないという可能性を考えた。この可能性を調べるために、我々は、骨代謝で上昇TSHレベルの阻害作用をおそらく阻止し得るTSHレセプター阻止抗体の存在についてスクリーニングを実施したが、これらは陰性であった。これに関して、成人の甲状腺機能低下で骨の異常が認められるときは、前記は典型的には低い骨代謝状態であり、本明細書に記載した臨床像とは完全に反対の状態であることは記載しておくべきであろう。前記の観点から、骨粗しょう症が甲状腺機能低下と何らかの態様で関係があるということは極めてあり得ないように思われ、このことは、骨再造形の調節に主として対応し得るのはTSHではなく甲状腺ホルモンであることを示した他の研究結果と一致する(12)。
【0047】
我々の患者の開花性骨異常は、マウス(4)およびヒト(2,3)の遺伝性OPG欠乏で認められると報告された表現型と一致し、他の十分な説明が得られなかったので、OPGに対する抗体の発生がこの患者の症状の原因であることがほぼ確実であるように思われる。我々は、続いて20人の新たなセリアック病患者のうち5人で抗OPG抗体の存在を示し、これらの抗体はこれら自己免疫患者でかなり一般的であり得ることを示した。これらの患者では抗体レベルは最初の患者の場合よりはるかに低いようであるが、それは骨代謝に対してより重大でない影響をもたらすであろうと考えられよう。セリアック病の治療およびカルシウムとビタミンDの補充にもかかわらず、この骨異常の重症性および症状の悪化は、破骨細胞による骨吸収の強力なインヒビター、ゾレドロニック酸による治療に応答して生じた顕著な回復によってのみ適合する。我々の研究は、OPGに対する自己抗体は自己免疫疾患の状況下で偶発的に生じ、OPGに対する抗体が、他の炎症における骨代謝の上昇および骨粗しょう症の病理発生に寄与し得る可能性が高まることを示している。
【0048】
セリアック患者でのOPGに対する自己抗体の同定に加えて、骨密度との相関性が存在する可能性があり、したがって骨密度測定もまた、セリアック病患者のOPG自己抗体検出と一緒に実施することができる。実際、本発明者らは、OPG自己抗体を有する幾人かのセリアック病患者がより低い骨無機質濃度有することを観察した。
【0049】
最後に、本発明者らはまた、通常の血清RANKLアッセイもまた調べた。この実験は、血清RANKLの遊離分画を検出するアッセイ(Biomedica, Vienna, Austria)を製造業者の指示にしたがって用い、患者の血清RANKLについてELISAを実施することを必要とした。未希釈または水で希釈したサンプルをアッセイした。結果(表1参照)は、サンプルを希釈したときにRANKLの増加を示し、RANKLとOPGとの結合に干渉する抗体の存在と一致した(OPGはこのアッセイではRANKLの“捕捉”のために用いられる)。前記結果は、おそらく、これまで利用可能であった血清RANKLアッセイはOPG自己抗体の影響を受けていることを示唆している。
【実施例2】
【0050】
方法
血清サンプルは以下のグループから入手した:
患者自身;いくつかのサンプルを患者の病臥中の種々の時点で入手した;
年齢が一致する10人の健常な男性コントロール患者(指標患者の年齢の±10歳);
46人のセリアック病患者;
31人の自己免疫甲状腺機能低下の患者
10人の特発性重症骨粗しょう症患者
10人の慢性関節リウマチ患者
20人の多発性硬化症患者。
全てのサンプルは非絶食で入手し、タンパク質量は、二シンコニン酸アッセイ(Pierce)を用いて測定した。収集血清サンプルは4℃で保存し、採集から1週間以内に精製した。精製プロセスは、タンパク質Gスピンカラム(Pierce)のための標準的プロトコルにしたがった。
【0051】
OPGのための免疫沈澱アッセイ
免疫沈澱アッセイのためには、タンパク質G被覆アガロースビーズ(Calbiochem)を5%ヒト組換えアルブミンと37.5℃で1時間プレインキュベートして、非特異的結合を減少させた。続いて1:100希釈の血清サンプルを12.5gの組換えヒトOPGホモダイマー(R&D systems)とインキュベートした。続いて予め温めたPBSでビーズを5回洗浄し、30mLの還元サンプル緩衝液に懸濁させ、90℃で5分インキュベートした。簡単に遠心した後、上清を12%ポリアクリルアミドゲル(Biorad Criterion)にローディングし、200Vで60分電気泳動した。ウェスタンブロッティングに続いて、この膜をヒトOPGに対するマウスモノクローナル抗体(Abcam)をプローブとして調べ、1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ロバ抗マウス抗体(Jackson)によって検出した。免疫標識バンドは、GeneGenome画像化装置(Syngene)で化学発光(Supersignal Pierce)を用いて検出した。サンプルの等量ローディングは、各ブロットを剥がし、1/5000希釈のペルオキシダーゼ連結ヤギ抗ヒト抗体(Jackson)をプローブとして総免疫グロブリンについて調べることによって判定した。
実験中、指標患者血清を用いて陽性コントロールバンドを提供し、陰性コントロールバンドはウサギ抗アクチン抗体を用いることによって提供した。
【0052】
RANKシグナリングアッセイ
患者血清およびコントロール血清から精製した免疫グロブリンのRANKL誘発NFκB活性化に対する影響を、NFκB応答性ルシフェラーゼレポーターベクター(Cambridge Biosciences)を安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞を用いて調べた。細胞は10%ウシ胎児血清およびヒグロマイシン(Roche)補充DMEMで維持した。細胞は刺激前2時間枯渇させ、その後2%サイトカイン枯渇TCH補充物(MP biomedicals)を含むDMEMで維持した。全てのアッセイは96ウェルプレート(各ウェルに5 x 104細胞を含む)で5組ずつにして実施した。細胞は、100から400ng/mLのOPG(R&D systems)の存在下および1/40希釈の免疫グロブリンの存在下または非存在下で、37℃で1時間100ng/mLのヒト組換えRANKL(Prosckelia)で刺激した。刺激後 、細胞を溶解し、Steady Glo試薬(Promega)を用いBiotek Synergy HTプレートリーダーで溶解物をルシフェラーゼ活性について解析した。
【0053】
統計解析
骨密度データは、臨床管理の部分として以前にDEXAスキャンニングを受けた患者について入手した。各疾患グループを以下の2つのグループに分けた:血清中にOPG自己抗体の証拠を有する患者および血清中にOPG自己抗体の証拠をもたない患者。これら2つのグループについて平均BMDデータをt-検定を用いて統計的に比較し、この2つのグループ間に有意な相違が存在するか否かを確認した。95%の信頼間隔を用い、p<0.05の場合に有意と決定した。
【0054】
結果
患者の血清はOPGを免疫沈澱させた。OPGの免疫沈澱はウェスタンブロットで55Kdの強いバンドの出現によって示される(図2)。10人の健常な男性コントロール患者由来の血清は陰性結果を提示した。IPをグリアジンの存在下で繰り返し、OPG自己抗体がセリアック病患者で免疫反応を引き起こすタンパク質と交差反応するか否かを調べた。グリアジンの存在は患者血清のOPGを免疫沈澱させる能力に影響を与えないことが示された。
【0055】
BMDデータは、セリアック病の46人の患者のこのグループから36人の患者について利用可能であった。このグループの平均BMD T-スコア値は、OPG抗体をもたない患者については-1.116で、OPG抗体の証拠を有する患者については-2.237であった。この相違は統計的には有意であった(p=0.011;p≦0.05の場合に有意)。BMD T-スコアを若い健常コントロールに対して標準化し、一方、BMD Z-スコアを年齢一致コントロールに対して標準化した。血清中にOPG自己抗体の証拠を有する患者の平均年齢は67.5歳で、一方、OPG自己抗体の証拠をもたない患者の平均年齢は54.2歳であった。OPG自己抗体をもたない患者は-0.812の平均脊椎Z-スコアを有し、一方、OPG自己抗体を有する患者は-0.431の平均脊椎Z-スコアを有していた。この相違は統計的に有意ではなかった(p=0.254)。
【0056】
OPG自己抗体の証拠はまた、重症特発性骨粗しょう症の10人の患者のうち7人で、自己免疫甲状腺機能低下の31人の患者のうち4人で検出された(図5および6)。OPG自己抗体の証拠はまた、多発性硬化症の20人の患者のうち2人で(図7)、さらに慢性関節リウマチの10人の患者のうち2人で(図8b)観察された。重症特発性骨粗しょう症の患者の小さなグループの平均BMD T-スコアは、OPG自己抗体の無い患者については-3.6で、OPG自己抗体の証拠をそれらの血清で有する患者については-3.4である。この相違は有意ではなかった(p=0.36)。BMD Z-スコアはこの患者グループについては利用可能ではなかった。残念なことに、自己免疫甲状腺機能低下の患者グループのBMDデータは利用可能ではなかった。
【0057】
シグナリングアッセイに用いられた細胞へのRANKLの添加は、レポーター遺伝子発現の顕著な活性化を引き起こした(図2b)。この活性化は、コントロール血清の免疫グロブリン分画の存在下で等濃度のヒト組換えOPGによって阻害されることが示された。しかしながら、患者血清の免疫グロブリン分画の存在下ではOPGの阻害性作用は失われた。より高濃度のOPG(400ng/L)の添加はこの阻害を克服した。RANKLの非存在下では、患者の免疫グロブリンまたはコントロールの免疫グロブリンの添加は、レポーター遺伝子発現に対して有意な作用をもたないことが示された。RANKシグナリングアッセイは、患者の精製血清のOPGへの添加は、RANKLによって引き起こされるOPGの阻害作用の低下をin vitroで阻害することを示した。
【0058】
考察
本研究で考察した患者は40代で鎖骨の軽度外傷性骨折に関して受診し、セリアック病および自己免疫甲状腺機能低下が付随する、重症高骨代謝性骨粗しょう症を発症していることが示された。この患者は、OPGに対する循環中和自己抗体を有することが示された。この患者の血清は、RANKL誘発NFκBシグナリングでOPGの作用をin vitroで阻害することが示された。年齢が一致する健常コントロール患者から採取した血清はこの作用を示さなかった。
【0059】
これは、OPGに対する自己抗体の偶発的発生に付随して生じる骨疾患の最初の報告である。OPG自己抗体がこの患者で生じたメカニズムは不明であるが、しかしながら他の循環タンパク質に対する自己抗体が自己免疫疾患を患者で発症させることが報告されており(12)、おそらくOPGはこの患者の内因性免疫応答の標的となったと思われる。
【0060】
この患者の可能な他の診断も考えた。この疾患の開始が遅かったことおよびこの患者が30代後半に激しく接触するスポーツ(例えばラグビー)に定期的に参加していながら骨折歴が無いという事実から、可能な原因として先天性骨粗しょう症の遺伝型は初期に排除された。骨粗しょう症および骨軟化症は、ビタミンDおよびカルシウム欠乏のためにセリアック病の周知の合併症である(2,3)。これらの選択肢は、骨粗しょう症の重症性、迅速な開始と極めて高レベルの骨代謝、およびBMD改善のための通常のセリアック病の治療の失敗(厳密なグルテン非含有食およびカルシウムとビタミンD補給を含む)により除外された。線維形成不完全骨化(fibrogenesis imperfect ossium(FIO))の診断もまた、患者は通常成人してから脆弱性骨折を提示するので考慮してみた。しかしながら、この患者の臨床的特徴はFIOの患者と明らかに異なっていた(FIOは、X線で結節性肥厚、骨生検で厚い類骨の蓄積および治療に対する貧弱な応答を特徴とする(13))。
【0061】
本研究はまた、自己免疫甲状腺機能低下および重症特発性骨粗しょう症の患者の小さな患者グループにおいてOPG自己抗体が存在することを示した。OPG自己抗体を有すると確認された患者は、OPG抗体をもたない患者より低い平均BMDを有することが示され、セリアック病の患者のグループ内のBMD T-スコアに対してOPG自己抗体の有無を比較したとき、顕著な違いが確認された。BMDは、遺伝因子及び環境因子の両方の影響を受ける複雑な特性であり、したがって、BMDスコアに影響を及ぼした可能性がある他のリスク因子についてのデータを探した。セリアック病グループ内の全ての患者の年齢は判明しており、10歳を超える平均年齢差を確認した(OPG自己抗体を有する患者の平均年齢=67.5歳、OPG抗体をもたない患者の平均年齢=54.2歳)。この発見に続いて、BMD Z-スコアとOPG自己抗体の有無とを比較した(BMD Z-スコアは年齢一致健常コントロールに対して修正され、一方BMD T-スコアは若い健常コントロールに対して修正されている(15))。この結果は統計的には有意ではなかった(p=0.254)。しかしながら、これは、この小さなグループ間で大きな年齢差が与えられたとしたら驚くべきことではない。
【0062】
OPG抗体は自己免疫疾患で骨粗しょう症の病理発生に寄与し、OPG自己抗体を有する患者はより重篤な骨粗しょう症に罹患している者であると推測することは極めて興味ぶかい。説明がつかない重症骨粗しょう症の患者でOPG自己抗体の存在を確定することもまた極めて興味をそそられる。健常コントロールはOPG自己抗体の証拠を示さず、したがって患者血清のOPG自己抗体の存在は、重症骨粗しょう症の更なる進行の明らかなマーカーとして機能し得る可能性がある。このことは、医師が、どの患者が特発性骨粗しょう症の発症リスクを有するかを確定することを可能にし、環境および生活様式におけるリスク因子を減少させるために緊密な管理および早期の介入を実施することを可能にするであろう。しかしながら、BMDは、遺伝因子および環境因子の両方から患者の生涯を通して影響を受ける極めて複雑な特性であり、したがって本研究で得られた結果は、ある程度慎重に、特に小さなグループサイズの調査に関しては解釈されるべきであるということを、研究者は心に留めておくことが重要である。残念なことに、セリアック病患者のグループ間で年齢差について修正したデータの徹底的解析は統計的には有意ではなく、OPG自己抗体と低BMDとの間に真に有意な関係が存在するか否かについて確定するためには更なる研究が必要であろう。
【0063】
実施例1で引用された文献
【0064】
実施例2で引用された文献
【0065】
表1
【0066】
表2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オステオプロテゲリン(OPG)に対する自己抗体を検出する方法であって、前記方法が、骨粗しょう症を有するかまたは前記を発症するリスクを有する対象者から生物学的サンプルを提供する工程、およびオステオプロテゲリン(OPG)に対する何らかの抗体が前記生物学的サンプルに存在するか否かを検出する工程を含む、前記検出方法。
【請求項2】
自己免疫疾患で骨粗しょう症または骨粗しょう症に対する感受性の診断の補助に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自己免疫疾患を有する患者で、血管系合併症(例えば虚血性心臓疾患、卒中および末梢血管系疾患)に対する感受性の診断の補助に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オステオプロテゲリン(OPG)に対する自己抗体を検出する方法であって、前記方法が、自己免疫および/または血管系疾患を有するかまたは前記疾患を発症するリスクを有する対象者から生物学的サンプルを提供する工程、およびオステオプロテゲリン(OPG)に対する何らかの抗体が前記生物学的サンプルに存在するか否かを検出する工程を含む、前記検出方法。
【請求項5】
サンプルが、血液、血清、血漿、尿、唾液または白血球サンプルである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
生物学的サンプル中の前記自己抗体の検出が免疫診断方法による、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
免疫診断方法が、放射線免疫アッセイ、ELISA競合性結合アッセイまたはサンドイッチアッセイである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、骨粗しょう症、自己免疫疾患および/または血管系疾患を有する患者またはそのような疾患を発症するリスクを有する患者を治療する方法:
(a)OPGに対する自己抗体について患者をスクリーニングすることにより、前記疾患または前記疾患発症リスクを検出する工程;および
(b)工程(a)の試験での陽性患者を以下のいずれかで処置する工程:
(i)破骨細胞性骨吸収のインヒビター、例えばゾレドロニック酸、アレンドロニック酸、リセドロネート二ナトリウム、カルシトニン並びにその塩および溶媒和物;
(ii)OPGを認識する自己抗体に対して作製された抗体、またはOPG抗体とOPGもしくはOPGフラグメントとの結合を妨げるペプチド、例えばRANKLに由来するものおよび小分子;
(iii)OPGに対する免疫寛容を回復させるOPGまたはそのフラグメント;または
(iv)(i)−(iii)の処置の組合せ。
【請求項9】
破骨細胞性骨吸収のインヒビターが、ゾレドロニック酸、アレンドロニック酸、リセドロネート二ナトリウム、カルシトニン並びにその塩および溶媒和物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
骨粗しょう症および/または関連する自己免疫および/または血管系症状の治療で使用される、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体。
【請求項11】
骨粗しょう症および/または関連する自己免疫および/または血管系症状を治療する方法であって、前記方法が、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体の治療的に有効な量を投与する工程を含む、前記治療方法。
【請求項12】
精製OPGまたはその抗原性フラグメントの供給源および場合によって他の試薬、例えばRANK、RANKLおよび/または抗OPG(これらのいずれかは場合によって標識される)を含む、骨粗しょう症、自己免疫および/または血管系症状を有する患者または前記を発症するリスクを有する人々においてOPG自己抗体を検出するキット。
【請求項13】
自己免疫疾患が、セリアック病、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、自己免疫甲状腺機能低下、重症特発性骨粗しょう症、多発性硬化症、SLE、強皮症、および結合組織疾患から成る群から選択される、請求項2、3、4、8、10および11に記載の方法。
【請求項1】
オステオプロテゲリン(OPG)に対する自己抗体を検出する方法であって、前記方法が、骨粗しょう症を有するかまたは前記を発症するリスクを有する対象者から生物学的サンプルを提供する工程、およびオステオプロテゲリン(OPG)に対する何らかの抗体が前記生物学的サンプルに存在するか否かを検出する工程を含む、前記検出方法。
【請求項2】
自己免疫疾患で骨粗しょう症または骨粗しょう症に対する感受性の診断の補助に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自己免疫疾患を有する患者で、血管系合併症(例えば虚血性心臓疾患、卒中および末梢血管系疾患)に対する感受性の診断の補助に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オステオプロテゲリン(OPG)に対する自己抗体を検出する方法であって、前記方法が、自己免疫および/または血管系疾患を有するかまたは前記疾患を発症するリスクを有する対象者から生物学的サンプルを提供する工程、およびオステオプロテゲリン(OPG)に対する何らかの抗体が前記生物学的サンプルに存在するか否かを検出する工程を含む、前記検出方法。
【請求項5】
サンプルが、血液、血清、血漿、尿、唾液または白血球サンプルである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
生物学的サンプル中の前記自己抗体の検出が免疫診断方法による、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
免疫診断方法が、放射線免疫アッセイ、ELISA競合性結合アッセイまたはサンドイッチアッセイである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、骨粗しょう症、自己免疫疾患および/または血管系疾患を有する患者またはそのような疾患を発症するリスクを有する患者を治療する方法:
(a)OPGに対する自己抗体について患者をスクリーニングすることにより、前記疾患または前記疾患発症リスクを検出する工程;および
(b)工程(a)の試験での陽性患者を以下のいずれかで処置する工程:
(i)破骨細胞性骨吸収のインヒビター、例えばゾレドロニック酸、アレンドロニック酸、リセドロネート二ナトリウム、カルシトニン並びにその塩および溶媒和物;
(ii)OPGを認識する自己抗体に対して作製された抗体、またはOPG抗体とOPGもしくはOPGフラグメントとの結合を妨げるペプチド、例えばRANKLに由来するものおよび小分子;
(iii)OPGに対する免疫寛容を回復させるOPGまたはそのフラグメント;または
(iv)(i)−(iii)の処置の組合せ。
【請求項9】
破骨細胞性骨吸収のインヒビターが、ゾレドロニック酸、アレンドロニック酸、リセドロネート二ナトリウム、カルシトニン並びにその塩および溶媒和物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
骨粗しょう症および/または関連する自己免疫および/または血管系症状の治療で使用される、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体。
【請求項11】
骨粗しょう症および/または関連する自己免疫および/または血管系症状を治療する方法であって、前記方法が、OPGに対する自己抗体に対して作製された抗体の治療的に有効な量を投与する工程を含む、前記治療方法。
【請求項12】
精製OPGまたはその抗原性フラグメントの供給源および場合によって他の試薬、例えばRANK、RANKLおよび/または抗OPG(これらのいずれかは場合によって標識される)を含む、骨粗しょう症、自己免疫および/または血管系症状を有する患者または前記を発症するリスクを有する人々においてOPG自己抗体を検出するキット。
【請求項13】
自己免疫疾患が、セリアック病、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、自己免疫甲状腺機能低下、重症特発性骨粗しょう症、多発性硬化症、SLE、強皮症、および結合組織疾患から成る群から選択される、請求項2、3、4、8、10および11に記載の方法。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図9】
【図1】
【図7】
【図8】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図9】
【図1】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−523002(P2012−523002A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504067(P2012−504067)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000699
【国際公開番号】WO2010/116135
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504373299)ザ ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニヴァーシティ オブ エディンバラ (11)
【出願人】(511243587)ザ ユニヴァーシティ オブ リヴァプール (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000699
【国際公開番号】WO2010/116135
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504373299)ザ ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニヴァーシティ オブ エディンバラ (11)
【出願人】(511243587)ザ ユニヴァーシティ オブ リヴァプール (1)
【Fターム(参考)】
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