説明

自己接着性をもった付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物,その製造法,複合成形部材の製造法およびその使用

本発明は自己接着性をもった付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物、その製造法、および本発明の配合物により複合成形部材を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己接着性をもった付加交叉結合性の(addision−crosslinking)シリコーンゴム配合物、その製造法、複合成形部材の製造法およびその使用に関する。
【0002】
本発明の自己接着性をもった付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は、成形製品を製造するのに使用される成形型の特殊な処理を必要とせずに、基質に対して効果的な接着を行ない、また該成形型から自己接着性をもった付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を成形型から取出すことができることを特徴としている。さらに一般に後で該複合成形体を加熱する必要はない。
【0003】
付加交叉結合性のシリコーン・エラストマーと種々の基質との間に接着性の結合(adhesive bond)を達成するために或る一連の方法が提案されている。一つの方法は、基質の表面の予備処理に使用されるいわゆるプライマーを使用する方法である。この処理を行なう場合、これにはさらに他の作業工程が必要であり、また溶媒を用いる操作が必要である。その操作は両方とも不利である。
【0004】
他の方法は、一つまたはそれ以上の添加物を交叉結合していないシリコーンゴムの配合物に加えることにより基質に付加交叉結合性のシリコーン・エラストマーを接着させる方法である。
【0005】
さらに他の方法は、熱可塑性プラスティックス/シロキサンの配合物を製造する方法であるが、この場合成形を行なう前に異なった種類のシロキサンを熱可塑性プラスティックスのマトリックスの中に混合し、この熱可塑性プラスティックスからつくられた成形品の表面を付加交叉結合性のシリコーンゴムを用いて接着させなければならない。この点に関しては、特許文献1において熱可塑性プラスティックスのマトリックスの中に余分のアルケニル基を有する水素シロキサンが請求されており、このマトリックスを付加交叉結合性のポリ有機シロキサンゴムと結合させるが、これはさらに有機官能性のSiH接着促進剤を含んでいることが好ましい。
【0006】
特許文献2には、エポキシまたはアリール基を有する水素シロキサン含有シロキサンの共重合体または三元重合体を含むポリカーボネートが記載されている。シロキサンを含む熱可塑性プラスティックスの代わりに、特許文献3では、付加交叉結合性のポリ有機シロキサンゴムおよびエポキシ含有SiHシロキサンを含むポリプロピレンの三元重合体が提案されており、交叉結合の過程においてこれを接着させる。接着は例えば120℃において8分で起こる。この場合、シリコーンゴムを被覆する直前に熱可塑性プラスティックスの部材を射出する。このシステムは金属の成形型から複合部材を型抜きすることができる。
【0007】
他の解決法は、熱可塑性プラスティックスの基質の性質に依存して一つまたはそれ以上の添加物を含んで成り、交叉結合の過程において種々の条件下で該熱可塑性プラスティックスに接着させることができる付加交叉結合性のポリ有機シロキサンゴムの提供である。この点に関しては、高い軟化点をもった熱可塑性プラスティックスをシリコーンゴムに接着させ、また逆に金属製の成形型材料、即ち一般的には鋼に対する接着を最低限度に抑制することが特に望ましい。
【0008】
特許文献4に従えば、例えば二つの添加物、即ち少なくとも一つのSiOH基を有する短鎖のポリシロキサンおよび少なくとも一つのエポキシ基および一つのSiに結合したアルコキシ基を有するシランを添加することによりアルミニウムに対し効果的な接着が得られる。非特許文献1に従えば、エポキシシランを単独重合体の交叉結合剤と組み合わせて加えることにより種々の金属およびプラスティックスに対する効果的な接着が得られる。特許文献5においては、エポキシ基を有するアルコキシシランおよびまた1分子当たり少なくとも20個のSiH官能性を有する水素シランを使用することにより、種々のプラスティックスに対する接着が改善される。これらの配合物はまた改善された反応性をもっていることを特徴としている。
【0009】
特許文献6には、ガラスおよび金属に対し付加交叉結合性のシリコーン・エラストマーを永久的に接着させるための添加物として、アクリル−またはメタクリロイルオキシシランをエポキシ官能性のシランおよび多価アルコールの部分的アリルエーテルと組み合わせて使用することが記載されている。
【0010】
これらの配合物は、金属に対して効果的な接着性を示し、従って被覆されていない金属の成形型を用いて加工を行なう場合には問題が生じるという欠点をもっている。
【0011】
特許文献7には、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランおよびメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを組み合わせ、次いで複合部材を加熱することによりポリアミドおよびポリブチレンテレフタレートに対し効果的な接着性を有し、同時に被覆されていない鋼の成形型からの型抜きが容易な接着を行なう方法が記載されている。しかし比較的多量のシランが使用され、最終的に効果的な接着性を得るためには、次に複合成形品を加熱することが一般的に推奨されているが、このことには余分な作業段階を伴う。
【0012】
特許文献8には、三元重合体、即ち少なくとも3個の異なったシロキシ基から成るシロキサンを使用することが記載されている。Si−エポキシ基の他に、この三元重合体はSi−フェニル、SiH、および他のシロキシ単位を含んで成っていることができる。殆ど任意のアルケニルシロキサン(A)および同じく水素シロキサン(B)の他に、このエポキシシロキサンは熱可塑性プラスティックスの基質と付加交叉結合性のポリ有機シロキサンゴムとの間に接着を生じさせるために使用される。珪素上の有機官能基の単位に対する好適な濃度は記載されていない。エポキシ含有三元重合体が存在すると、熱可塑性プラスティックスに対するばかりではなく金属に対しても接着が生じる。
【0013】
特許文献9には、エポキシ含有三元重合体の代わりに少なくとも一つの酸素含有フェニレン基、およびまた少なくとも一つのSiH基を含む共重合体または三元重合体が記載されている。このシリコーンゴムは例えば120℃において8分間で硬化して熱可塑性のプラスティックスの表面に接着する。被覆されていない金属の成形型からの型抜きもうまく行なわれる。
【0014】
特許文献10においては、酸素含有シロキサン共重合体または三元重合体の代わりに、少なくとも一つのフェニルまたはフェニレン単位、窒素含有単位、およびSiH基をもった三元重合体が提案されている。このシリコーンゴムは例えば120℃において10分間で硬化して熱可塑性プラスティックスの表面に接着する。
【0015】
特許文献11には、有機水素ポリシロキサンの添加物として少なくとも12モル%の芳香族の基である1価のSiに結合した有機基を使用することが記載されている。この場合、ABSへの接着は認められているが定量化されておらず、金属の成形型からの型抜きは容易であることが見出されており、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレートまたはポリフェニレンスルフィドのような典型的な技術的熱可塑性プラスティックスに関する評価は
なされていない。これらの熱可塑性プラスティックスに対する特定的に設定された問題は観測されていない。対応するシロキサン成分のSiH含量に対する好適範囲も記載されていない。このシリコーンゴムは交叉結合の際例えば60〜100℃において10秒〜8分間で熱可塑性プラスティックスの表面に接着する。一般にSiH含量は1分子当たり水素原子2個よりも多いと云われている。特定の例において水素含量は1分子当たり6個の水素シロキシ単位を越えない。
【0016】
特許文献12には、分子中に平均として20個よりも少ないSiH基を有するポリ有機水素シロキサンを用いる自己接着性をもった付加交叉結合性のシリコーン・エラストマー組成物が記載されている。また1分子中にSiH基が20個より少ないこの種のポリ有機水素シロキサンを使用することが重要であるとも記載されている。何故なら付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物の貯蔵安定性がかなり影響を受けるから、即ち流動性が著しく悪影響を受けるからである。
【0017】
同様に、特許文献13にはポリ有機水素シロキサンおよびビフェニル化合物をベースにした特定の接着促進剤を含んで成る付加交叉結合性のシリコーン・エラストマー組成物が記載されている。しかし価格が比較的高いためにこのようなビフェニル化合物を使用することには欠点がある。
【0018】
同様に特許文献14にも、SiHに比較的富み、フェニルを含まない有機水素ポリシロキサン並びにフェニル含有有機水素ポリシロキサンを含んで成る付加交叉結合性のシリコーン・エラストマー組成物が記載されている。使用されるフェニル含有有機水素ポリシロキサンのSiH含量は比較的少ない。
【0019】
【特許文献1】米国特許第5 366 806号明細書。
【特許文献2】米国特許第5 366 805号明細書。
【特許文献3】米国特許第5 418 065号明細書。
【特許文献4】米国特許第4 087 585号明細書。
【特許文献5】ヨーロッパ特許−A−875 536号明細書。
【特許文献6】ヨーロッパ特許第350 951号明細書。
【特許文献7】ヨーロッパ特許−A2−1085053号明細書。
【特許文献8】米国特許第4 082 726号明細書。
【特許文献9】米国特許第5 405 896号明細書。
【特許文献10】米国特許第6 127 503号明細書。
【特許文献11】ヨーロッパ特許第686 671号明細書(米国特許第5 536 803号明細書)。
【特許文献12】ヨーロッパ特許第−A2−1106662号明細書。
【特許文献13】ヨーロッパ特許第−B1−1375622号明細書。
【特許文献14】国際公開第03/066736号パンフレット。
【非特許文献1】J.Adhesion Sci.Technol.誌、第3巻, 第6号、463〜473頁(1989年)。
【発明の開示】
【0020】
驚くべきことに本明細書においては、SiH含量が1分子当たり平均20個より多く、芳香族の基が比較的少ない自己接着性をもった付加交叉結合性のシリコーン・エラストマー組成物は、貯蔵中安定であり、多くの基質に対する接着性が良好であり、交叉結合速度が高く、しかもそれを充填した射出成形型から型抜きすることができることが見出された。
【0021】
本発明の目的は、成形型に粘着するのを防ぐために成形型を被覆したり型抜き剤で処理
する必要がなく、また自動射出成形装置上で加工を行なう目的で一般的に複合部材を後で加熱する必要がなく、種々の基質、特に軟化点の高い技術的な熱可塑性プラスティックス(technical thermoplastics)、例えばポリアミド、ポリブチレンテレフタレートまたはポリフェニレンスルフィドに効果的に接着する特徴をもつ付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を提供することである。この目的のために、工業的に公知の、好ましくは二成分ゴムに対し、別々にまたは別の成分として添加し得る容易に且つ廉価に製造できるシリコーンゴムに対する添加物成分について研究が行なわれた。
【0022】
従って本発明によれば、
(a)粘度が0.01〜30000Pa.s(25℃)で、少なくとも二つのアルケニル基を有する少なくとも一つの直鎖または分岐した有機ポリシロキサン、
(b1)それぞれの場合1分子中に平均して少なくとも20個のSiH単位を有し、芳香族の基、ハロゲン原子、擬ハロゲン基、ポリエーテル基、アミノアルキル基、およびアンモニオアルキル基から成る群から選ばれる少なくとも一つの構成要素を含む少なくとも一つの有機基を有する少なくとも一つの有機水素シロキサン、
(b2)必要に応じて使用される、1分子中に平均して少なくとも2個のSiH単位を有し、有機基が飽和および不飽和の脂肪族炭化水素基から成る群から選ばれる一つまたはそれ以上の有機水素ポリシロキサン、
(c)少なくとも一つのヒドロシリル化触媒、
(d)それぞれ少なくとも一つのエポキシ基を有するアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン、アクリルおよびメタクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン(acryl− and metacryloyloxyalkyltrialkoxysilane)、および水、アルコール、シラノールおよび/またはシロキサンジオールとの反応により得られる上記化合物の縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも一つの構成要素、
(e)必要に応じて使用される少なくとも一つの抑制剤、
(f)必要に応じて使用される表面が変性されまたはされていない少なくとも一つの充填剤、
(g)必要に応じて使用される少なくとも一つの助剤
を含んで成る付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物が提供される。
【0023】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は好ましくは下記の組成をもっている(重量部単位):
100部のポリ有機シロキサン(a)、
0.2〜60部の有機水素シロキサン(b)、
触媒(c)の金属成分およびシリコーンゴム配合物の全重量に関し1〜1000ppm、
0.01〜10部のエポキシアルコキシシランおよび/またはエポキシアルコキシシロキサン(d)、
0〜2部の抑制剤(e)、
0〜300部の表面が変性されまたはされていない充填剤(f)、
0〜15部の助剤(g)。
【0024】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は(a)粘度が0.01〜30 000Pa.s(25℃)で、少なくとも二つのアルケニル基を有する少なくとも一つの直鎖または分岐した有機ポリシロキサンを含んで成っている。
【0025】
有機ポリシロキサン(a)は分岐したポリシロキサンであることができる。「分岐したポリシロキサン」と云う言葉はまたマクロ環式またはスピロ環式の構造を含んでいる。即ちこれらは上記の粘度範囲における熔融粘度を有する、融点が90℃より低い固体である
か、または典型的な溶媒或いはシロキサン重合体に可溶な固体である。
【0026】
成分(a)は実質的にSi−H基を含んでいない。
【0027】
有機ポリシロキサン(a)は好ましくは下記のシロキシ単位を有することができる直鎖または分岐したポリシロキサンである:
【0028】
【化1】

【0029】
ここで置換基Rは同一または相異なることができ、
− 炭素数最高12の、必要に応じて使用される少なくとも一つのフェニルおよびハロゲン、さらに好ましくはフッ素から成る群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていることができる直鎖の、分岐した、または環式の基、
− 炭素数最高12の直鎖の、分岐したまたは環式のアルケニル基、
− フェニル基、
− ヒドロキシル、および
− 炭素数最高6の直鎖の、分岐したまたは環式のアルコキシ基
から成る群から選ばれる基であるか、或いは
異なったシロキシ単位の二つの置換基Rは一緒になって二つの珪素原子の間に2〜12個の炭素原子を有する直鎖の、分岐したまたは環式のアルカンジイル基をつくっている基であるが、
但し1分子当たり少なくとも二つの置換基Rは同一または相異なることができる上記アルケニル基を表すものとする。
【0030】
上記のシロキシ単位は互いに不規則に分布しているかまたはブロックとなって配置されていることができる。
【0031】
炭素数が最高12の一つの好適な直鎖の、分岐したまたは環式のアルキル基はメチルである。
【0032】
一つの好適なフェニル置換アルキル基には例えばスチリル(フェニルエチル)が含まれる。
【0033】
一つの好適なハロゲン置換アルキル基には例えば少なくとも一つのフッ素原子を有するフルオロアルキル基、例えばパーフルオロアルキルエチル基、好ましくは例えば3,3,3−トリフルオロプロピル、またはパーフルオロアルキルエーテルまたはエポキシパーフルオロアルキルエーテルが含まれる。
【0034】
炭素数が2〜8の直鎖のまたは分岐したアルケニル基には例えば下記の基が含まれる:ビニル、アリル、ヘキセニル、オクテニル、ビニルフェニルエチル、シクロヘキセニル、エチリデンノルボルニル、またはノルボルニルエチル、またはリモニル。ビニルが特に好適である。
【0035】
一つの好適な直鎖の、分岐したまたは環式の炭素数最高6のアルコキシ基は例えばメトキシおよびエトキシ基である。
【0036】
従って好適な基Rはメチル、フェニル、ビニル、および3,3,3−トリフルオロプロピルである。
【0037】
好適なシロキシ単位の例はアルケニル単位、例えばジメチルビニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、およびビニルシロキシ単位、アルキル単位、例えばトリメチルシロキシ、ジメチルシロキシ、およびメチルシロキシ単位、フェニルシロキシ単位、例えばトリフェニルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシ、フェニルメチルシロキシ、およびフェニルシロキシ単位、およびフェニル置換アルキルシロキシ単位、例えば(メチル)(スチリル)シロキシである。
【0038】
有機ポリシロキサン(a)の中のシロキシ単位の数は、好ましくは100〜10000、特に好ましくは300〜1000である。有機ポリシロキサン(a)のアルケニル含量は好ましくはビニル置換ポリジメチルシロキサンに関して0.003〜11.6ミリモル/gの範囲にあり、これはそれに対応して異なった式量をもつ他の基Rに等モル的に換算することができる。
【0039】
有機ポリシロキサン(a)は0.001〜30kPa.s,極めて好ましくは5〜200Pa.sの粘度をもっている。粘度は25℃においてDIN 53019に従って決定される。
【0040】
本発明の好適な一具体化例においては、有機ポリシロキサン(a)は異なったアルケニル(好ましくはビニル)含量を有する異なったポリシロキサンの混合物を含んで成っており、そのアルケニルまたはビニル含量は少なくとも1.5〜3のファクターで異なっていることが好ましい。
【0041】
有機ポリシロキサン(a)の好適な混合物は、アルケニルに富んだ(好ましくはビニルに富んだ)有機ポリシロキサンと、少なくとも一つの、好ましくは少なくとも二つの、特に好ましくは二つの低級アルケニル(好ましくは低級ビニル)有機ポリシロキサンとの配合物である。
【0042】
アルケニルに富んだ(好ましくはビニルに富んだ)有機ポリシロキサンは好ましくはビニル置換ポリジメチルシロキサンに関し0.4ミリモル/gより多く11.6ミリモル/gまでのアルケニル基の含量を有している。この値はそれに対応して他の基Rに等モル的に適用することができる。
【0043】
これらのシロキサン重合体は好ましくは上記に定義された分岐したポリシロキサンを表している。即ち融点が90℃より低い固体、または典型的な溶媒またはシロキサン重合体に可溶な固体である。低級アルケニル(好ましくは低級ビニル)有機ポリシロキサンはアルケニル含量が0.4ミリモル/gより少ないことが好適であり、好ましくは0.02〜0.4ミリモル/gである。ここでアルケニル含量はH−NMRによって決定される。A.L.Smith編:J.D.Winefordner著、Chemical Analysis中のThe Analytical Chemistry of Silicones,J.Wiley & Sons 1991年発行、112巻、356頁以降を参照のこと。アルケニル基の含量はアルケニルジメチルシロキシ単位によって設定されることが好ましい。それによって異なったアルケニル含量の他に異なった鎖長が生じ、従って異なった粘度が得られる。異なったアルケニル(好ましくはビニル)含量をもった上記の混合物を使用することにより、本発明の交叉結合したシリコーンゴムの機械的な性質、
例えば伸びおよび引裂き伝播抵抗性を最適化することができる。アルケニルに富んだ有機ポリシロキサン(a)の混合の割合は、有機ポリシロキサン(a)の全重量に関して0.5〜30重量%である。異なったアルケニル(好ましくはビニル)含量を有する異なった有機ポリシロキサンの混合物の全アルケニル含量は、好ましくは0.9ミリモル/gよりも少なくなければならない。
【0044】
有機ポリシロキサン(a)はそれ自身は公知の方法、例えば米国特許第5,536,803号明細書第4欄記載のようなアルカリ性または酸性の触媒を使用する方法で製造することができる。
【0045】
有機ポリシロキサン(a)の量はシリコーンゴムの全重量に関して好ましくは約20.5〜99.8重量%である。
【0046】
アルケニルに富んだ有機ポリシロキサンは、特に溶媒に可溶な固体の樹脂または液体の樹脂を含んでおり、これらはトリアルキルシロキシ(M単位)およびシリケート単位(Q単位)から構成され、好ましくはビニル基の含量が少なくとも2ミリモル/gになるような量でビニルジメチルシロキシ単位を含んでいることが好適である。これらの樹脂はさらにSi原子に関し最高10モル%のアルコキシまたはOH基を含んでいる。
【0047】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物の成分(b1)は、それぞれの場合1分子中に平均して少なくとも20個のSiH単位を有する少なくとも一つの有機水素シロキサンである。この有機水素シロキサンが1分子中に20個よりも少ないSiH単位をもっている場合には、基質、例えば特に熱可塑性プラスティックスに対する接着が減少する。本発明に使用される有機水素シロキサン(b1)は1分子中に平均して少なくとも23個のSiH単位を、もっと好ましくは1分子中に少なくとも30個のSiH単位を含んでいる。
【0048】
これに加えて、有機水素シロキサン(b1)は少なくとも一つの有機基を含み、この中には芳香族の基、ハロゲン原子、擬ハロゲン基、ポリエーテル基、アミノアルキル基、およびアンモニオアルキル基から成る群から選ばれる少なくとも一つの構成要素が含まれる。有機水素シロキサン(b1)は好ましくは少なくとも一つの有機基を含み、これは平均して少なくとも1個の芳香族の基を含んでいることが好ましい。
【0049】
有機水素シロキサン(b1)は好ましくは下記のシロキシ単位を含むことができる直鎖の、分岐したまたは環式のポリシロキサンから成る群から選ばれる:
【0050】
【化2】

【0051】
ここでRは同一または相異なることができ、
− 水素、
− 炭素数が最高12で、必要に応じて使用されるフェニル、ナフチル、ビフェニル、ビフェニルエーテルおよびハロゲン、特にフッ素から成る群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていることができる直鎖の、分岐したまたは環式の基、
− 炭素数が最高12の直鎖の、分岐したまたは環式のアルケニル基、
− 芳香族の基、
− 炭素数が最高6の直鎖の、分岐したまたは環式のアルコキシ基から成る群から選ばれる基であるか、或いは
異なったシロキシ単位の2個の基Rが一緒になって2個の珪素原子の間に2〜12個の炭素原子を有する直鎖の、分岐したまたは環式のアルカンジイル基をつくっている基である。
【0052】
第1の具体化例においては、珪素に結合したHおよび珪素に結合した有機基の和に対する珪素に結合したHの割合として定義される有機水素シロキサン(b1)のSi−H含量は、36モル%より大きい。
【0053】
少なくとも一つの置換基をもたないまたは置換基をもった芳香族の基、特に好ましくはフェニル、ナフチル、ビフェニルまたはビフェニルエーテル基を有する有機水素シロキサン(b1)が特に好適である。好適な芳香族の単位は置換基Rとして例えば
次の基を含んでいる:芳香族の基が直接珪素原子に結合している芳香族単位、例えばフェニル、C〜C10−アルキルフェニル、C〜C10−アルキレンフェニル、C〜C10−アルコキシフェニル、C〜C10−アルキレンオキシフェニル、ハロフェニル、およびナフチル、並びに芳香族の基がアルキル基を介して珪素原子に結合している芳香族単位、例えばフェニル(C〜C12)−アルキル。直接珪素原子に結合している芳香族の基、特にフェニルが好適である。
【0054】
有機水素ポリシロキサン(b1)中の芳香族の基を含む有機基の量は、珪素原子上のすべての基(Si−O−Si酸素原子は除く)の量に関し、換言すれば水素原子と有機基とを含めた量に関し、12モル%より少ないことが好ましく、さらに好ましくは8モル%より、もっと好ましくは7.4モル%より少ない。芳香族の基の最低量は好ましくは0.5モル%、さらに好ましくは1モル%である。
【0055】
好適な有機水素シロキサン(b1)は直鎖のトリ有機シロキシ−および/またはジ有機水素シロキシ−末端有機水素シロキサンであって、トリ有機シロキシ末端基がトリメチルシロキシ、トリフェニルシロキシ、ジフェニルメチルシロキシ、フェニルジメチルシロキシ、フェニルエチルジメチルシロキシ、およびフェニルプロピルジメトキシシロキシから成る群から選ばれ、ジ有機水素シロキシ末端基は好ましくはジメチル水素シロキシ基であり、平均して20〜1000個のメチル水素シロキシ単位、平均して0〜500個のジメチルシロキシ単位、平均して360個より少ない(メチル)(フェニル)シロキシ単位、および/または平均して180個より少ない、好ましくは111または222より少ないジフェニルシロキシ単位を有するものである。
【0056】
ジメチルシロキシ単位対メチル水素シロキシ単位のモル比は好ましくは0.1より小さい。
【0057】
有機水素シロキサン(b1)は好ましくは2ミリモル/gより多く最高約16ミリモル/gのSiH含量をもっている。有機水素シロキサン(b1)はポリメチル水素ジメチルシロキサンに関し7ミリモル/gより多いSiH含量を有し、この値は異なった式量をもった基Rの存在下においてそれに対応して等モル的に適用される。
【0058】
有機水素シロキサン(b1)の粘度は例えば10mPa.s〜100Pa.s、好ましくは15mPa.s〜10Pa.s(25℃)である。
【0059】
SiH含量はH−NMRにより決定される。A.L.Smith編:J.D.Win
efordner著、Chemical Analysis中のThe Analytical Chemistry of Silicones,J.Wiley & Sons 1991年発行、112巻、356頁以降を参照のこと。同様にSi−フェニル含量はH−NMRおよび/または29Si−NMRによって決定される。上記A.L.Smithの文献参照。
【0060】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は必要に応じさらに、有機基が飽和または不飽和の炭化水素基から成る群から選ばれる、即ち芳香族の基を含まない一つまたはそれ以上の有機水素シロキサン(b2)を含んで成っている。これに加えて有機水素シロキサン(b2)は平均して1分子中に少なくとも2個のSiHを含んでいる。
【0061】
成分(b1)および(b2)が両方とも存在することが特に好適である。これに加えて両方の成分(b1)および(b2)は20個より多いSiH単位をもった少なくとも一つのトリ有機シロキシ−またはジ有機水素シロキシ−末端ポリ有機水素シロキサンから成る群から選ばれることが好適である。
【0062】
有機水素シロキサン(b2)は好ましくは下記のシロキシ単位を有することができる直鎖の、分岐したまたは環式のポリシロキサンである:
【0063】
【化3】

【0064】
ここで置換基Rは同一または相異なることができ、
− 水素、
− 炭素数最高12の直鎖の、分岐したまたは環式のアルキル基、
− 炭素数最高12の直鎖の、分岐したまたは環式のアルケニル基、
− 炭素数最高6の直鎖の、分岐したまたは環式のアルコキシ基から成る群から選ばれる基であるか、または
2個の珪素原子の間に異なったシロキシ単位のRが一緒になって炭素数2〜12の直鎖の、分岐したまたは環式のアルカンジイル基をつくっている基である。
【0065】
有機水素シロキサン(b2)は随時使用される。これらは特に交叉結合の速度、ゴムの機械的性質、例えば引裂き伝播抵抗性、または老化の性質(例えば高温空気に対する安定性)を最適化する際に使用される。
【0066】
この随時使用される成分(b2)のSiH含量は、ポリメチル水素ジメチルシロキサンに関し0.2〜16ミリモル/g、好ましくは4〜16ミリモル/gであり、この値は異なった式量を有する基Rの存在下においてそれに対応して当モル的に適用される。
【0067】
有機水素シロキサン(b2)の場合のシロキシ単位の数は好ましくは5〜1000であるが、さらに好ましくは10〜500であり、もっと好ましくは10〜200である。
【0068】
液体またはシロキサンに可溶な25℃における粘度が0.5〜50000mPa.sの水素シロキサンが得られるように、(b2)におけるシロキシ単位を調節することが好ましい。またシロキサン(b2)は90℃より低い温度で融解し熔融粘度が上記の範囲内に
ある固体、または典型的な溶媒またはシロキサン重合体に可溶な固体を含んでいる。
【0069】
代表的な好適な例はトリメチル−および/または水素ジメチルシロキシ末端ポリメチル水素ジ有機シロキサンである。
【0070】
有機水素シロキサン(b2)はそれ自身は公知の方法、例えば米国特許第5 536 803号明細書記載の方法でつくられ、有機シロキシ単位に対する水素有機シロキシ単位の適切な重量比、およびトリメチルシロキシ基のようなモノ官能性末端基を選ぶことによりSiH含量を調節する。
【0071】
有機水素シロキサン(b2)の好適な量は成分(a)の100重量部当たり0〜30重量部である。
【0072】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は(c)交叉結合反応またはヒドロシリル化反応に対する少なくとも一つのPt、Ruおよび/またはRh触媒を含んで成っている。白金触媒が好適である。特に好適な触媒(c)は好ましくはPt(0)錯体、Pt(II)錯体、またはその塩であって、錯化剤として例えばアルケニルシロキサン、シクロアルキリデン、アルケン、ハロゲンまたは擬ハロゲン、カルボキシル−、S−、N−またはP−基を含む配位子を含むものであり、これを金属に関し1〜1000ppm、好ましくは1〜100ppm、特に好ましくは1〜20ppmの触媒量で用いる。Ruおよび/またはRh触媒の例には次のものが含まれる:RhまたはRu錯体および塩、例えばジ−μ,μ’−ジクロロ−ジ(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム。同様に使用し得るRh化合物はJ.Appl.Polym.Sci誌、30巻、1837〜1846頁(1985年)に記載されている。
【0073】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は随時少なくとも一つの抑制剤を含んで成っている。本発明の目的に対する抑制剤は、ヒドロシリル化を遅延させるか抑制するために現在まで既に使用されてきたすべての通常の化合物である。このような好適な抑制剤の例はビニルメチルシロキサン、例えば1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、l,3,5,7−テトラビニル−l,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、アルキノール、例えば2−メチルブチン−2−オールまたは1−エチニルシクロヘキサノール、50〜10000ppmの量で使用される米国特許第3445420記載のもの、また成分(c)の純粋なPt、RuまたはRh触媒によって生じるヒドロシリル化反応を遅延させ得るすべての他のS−、N−および/またはP−含有抑制剤(ドイツ特許−A−36 35 236号明細書)である。
【0074】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム混合物はさらに下記のものから成る群から選ばれる少なくとも一つの構成要素を含んで成っている:それぞれ少なくとも一つのエポキシ基を有するアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン、アクリルおよびメタクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン、および同様に上記の化合物と水、アルコール、シラノールおよび/またはシロキサンジオールとの縮合によって生じる縮合生成物。エポキシ基はアルカンジイル基を介してSi(エポキシ−(CH−Si)に結合したエポキシ基が有利である。アルコキシ官能基の炭素数が5以下であり、1分子中に典型的には2より、好ましくは3より多いアルコキシ基を有するものが好適である。これらの中にはエポキシシロキサンおよびヨーロッパ特許第691 364号明細書記載のエポキシシロキサン類が含まれる。
【0075】
アルコキシシラン(d)はグリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、およびまたジアルコキシシラン、または2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、エポキシリモニルトリアルコキシシラン、エポキシ化されたノルボルネニ
ルエチルトリアルコキシシラン、またはエチリデンノルボルニルトリアルコキシシラン、並びに他のC〜C14−エポキシ化アルケニル−および/またはアルケニルアリールトリアルコキシシラン、エポキシ化されたトリスアルコキシシリルプロピルアリルシアヌレートおよびイソシアヌレート、およびまたそれぞれの場合のそれらのジアルコキシ誘導体、アクリル−および/またはメタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、およびまたそれらと水、アルコールまたはシラノール、および/またはシロキサンジオールとの縮合生成物を含んでいる。
【0076】
好適なものはモノ(エポキシ有機)トリアルコキシシラン、例えばグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、例えば2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよび/またはそれらのシロキサンであり、特に成分(a)100部当たり0.01〜10部の量、或いは付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物の全重量に関し約0.002〜9.1重量%の量のグリシジルオキシプロピルトリメトキシシランとメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとの混合物が好適である。
【0077】
成分(b1)に対して記載したように、(a)および(b)を用い(d)をヒドロシリル化して得られる反応生成物、或いは(d)を(b)と縮合させて得られる反応生成物を使用することもできる。
【0078】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物はさらに随時表面を変性されまたは変性されていない一つまたはそれ以上の充填剤(f)を含んで成っている。これらの充填剤には例えば次のものが含まれる:Pt触媒による交叉結合反応を妨害せず、従ってエラストマーの被膜、成形品または押出し物を製造し得るすべての微粉末充填剤、即ち100μmより小さい粒子。
【0079】
これらの充填剤は鉱物性の充填剤、例えば珪酸塩、炭酸塩、窒化物、酸化物、カーボンブラックまたはシリカであることができる。充填剤は好ましくはゴムの機械的性質を補強する種類のもの、例えばBET表面積が50〜400m/gの煙霧シリカまたは沈澱シリカであり、また表面を処理されており、成分(a)に関し0〜300重量部、好ましくは10〜50重量部で使用されることができる。
【0080】
BET表面積が50m/gより大きい充填剤は、ゴムの機械的性質が改善されたシリコーン・エラストマーを製造することができる。例えばこのような表面積をもつAerosil、HDK,Cab−O−Silのような煙霧シリカの場合、ゴムの機械的強度および透明度が増加する。
【0081】
上記の充填剤に加えて、またはその代わりに、いわゆる増量充填剤(extender
filler)、例えばBET表面積が1〜50m/gの微粉砕石英、珪藻土、微粉砕クリスタボライト(cristabolite)、雲母、酸化アルミニウム、Ti、FeおよびZnの酸化物、白亜またはカーボンブラックを使用することができる。
【0082】
「充填剤(f)」という言葉は、充填剤と重合体との相互作用、例えば濃化作用に影響を及ぼす、表面に結合した疎水性剤および/または分散剤および/または加工助剤を含む充填剤を意味する。充填剤の表面処理は好ましくはシランまたはシロキサンを用いる疎水性化である。これは例えばシラザン、例えばヘキサメチルシラザンおよび/またはジビニルテトラメチルジシラザンおよび水を加えることによりその場で行なうことができる。その場で行なう疎水性化が好適である。また他の通常の充填剤処理剤、例えばビニルアルコキシシランを用いて行なうこともできる。その一例はビニルトリメトキシシラン、交叉結合反応に対する反応部位を与えるための鎖長が2〜50の有機シロキサンジオールであり
、また脂肪酸誘導体または脂肪族アルコール誘導体を用いても行なうことができる。
【0083】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物はさらに随時少なくとも一つの助剤(g)、例えば自己潤滑性の加硫物を与えるフェニルシロキサン油を含んで成っている。その例にはジメチルシロキシおよびジフェニルシロキシまたはメチルフェニルシロキシ基から構成された共重合体、およびまた好ましくは0.1〜10Pa.sの粘度(25℃)のメチルフェニルシロキシ基を有するポリシロキサン、或いはカラー・ペーストの形の着色顔料、付加的な型抜き剤、例えば脂肪酸誘導体または脂肪アルコール誘導体、或いは押し出し助剤、例えば硼酸またはPTFEペースト、殺生物剤、例えば殺菌・殺カビ剤、および高温の空気に対する安定剤、例えばFe、Ti、Ce、NiおよびCo化合物がある。助剤の量は成分(a)100重量部当たり0〜15重量部が好適であり、好ましくはゴム配合物の全重量に関し13重量%より少ない。
【0084】
さらに本発明によれば、分子中に平均して少なくとも20個の水素シロキシ基を含み、芳香族基を包含する、シリコンに結合した1価の有機基を含む、該1価の有機基の量が12モル%より少ないことを特徴とする有機水素ポリシロキサンが提供される。これらの有機水素ポリシロキサンに対しては好ましくは成分(b1)に対して上記に示した好適範囲が適用される。
【0085】
本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は、好ましくは、別のSi含有ビフェニル接着促進成分を含んでいない。この中には2個のビフェニルが2価の基、例えば置換基をもったまたはもたないアルキレン、SO−、−SO−、−CO−、−O−または−O−Si(CH−O−により結合された化合物が含まれる。特にヨーロッパ特許第1375622号明細書の成分(C)として定義されたビフェニル接着促進剤が存在しないことが好ましい。この特許の内容は引用により本明細書に包含される。
【0086】
本発明によればさらに、成分(a)〜(d)、および随時成分(e)〜(g)を混合することを含んで成る付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物の製造法が提供される。
【0087】
この混合は、高粘度のペーストに適した混合機、例えば配合機、溶解機、または遊星混合機を用い不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。
【0088】
好適な一具体化例においては、混合操作中その場で疎水性化が行なわれるように補強用の充填剤、即ちBET表面積が50m/gよりも大きい充填剤を混合する。
【0089】
この場合、高粘度材料に適した混合機、例えば配合機、溶解機、または遊星混合機を用い有機ポリシロキサン(a)、充填剤、および疎水性化剤、好ましくはヘキサメチルジシラザンおよび/またはジビニルテトラメチルジシラザンを成分(f)のシリカの存在下において水と共に、好ましくは90〜100℃の温度において少なくとも20分間撹拌し、次いで最初は大気圧下において蒸発により、次いで100〜20ミリバールの減圧下において150〜160℃で過剰の疎水性化剤および水を除去することが好ましい。次いで10〜30分間に亙り他の成分を混入することが有利である。
【0090】
付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を製造する一好適具体化例は、(a)〜(g)の2種以上ではあるが全部ではない成分を含む少なくとも一つの部分混合物をつくることによって開始される。
【0091】
このように部分混合物へ分割する目的は、成分(a)〜(d)および適当な場合には(e)〜(g)を構成する反応性の混合物の取扱いを改善することである。
【0092】
特に貯蔵の目的に対しては、成分(b1)〜(b2)は好ましくは触媒(c)から分離して保持されなければならない。相互作用する成分(a)、(b1)/(b2)、および(c)が同時に他のものと一緒に存在しない限り、成分(d)および抑制剤(e)を任意の成分の中に保持できることが多少とも有利である。
【0093】
付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を製造する本発明方法の好適な一具体化例においては、先ず
− 少なくとも一つの有機ポリシロキサン(a)、
− 必要に応じて少なくとも一つの充填剤(f)、
− 必要に応じて少なくとも一つの助剤(g)、
− 少なくとも一つの触媒(c)、および
− 必要に応じて少なくとも一つのアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン(d)を一緒にして第1の部分混合物をつくり、
− 必要に応じて有機ポリシロキサン(a)
− 少なくとも一つの有機水素シロキサン(b1)、
− 必要に応じて少なくとも一つの有機水素ポリシロキサン(b2)、
− 必要に応じて少なくとも一つの充填剤(f)、
− 必要に応じて少なくとも一つのアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン(d)、
− 必要に応じて少なくとも一つの抑制剤(e)、および
− 必要に応じて少なくとも一つの助剤(g)を一緒にして第2の部分混合物をつくり、
次いでこの二つの部分混合物を混合する。
【0094】
成分(b2)を使用する付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を製造する本発明方法の他の好適な一具体化例においては、先ず
− 少なくとも一つの有機ポリシロキサン(a)、
− 必要に応じて少なくとも一つの充填剤(f)、
− 必要に応じて少なくとも一つの助剤(g)
− 少なくとも一つの触媒(c)、および
− 第2および第3の部分混合物中に存在しない場合には、必要に応じて少なくとも一つのアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン(d)を一緒にして第1の部分混合物をつくり、
− 少なくとも一つの有機水素シロキサン(b2)、
− 必要に応じて有機ポリシロキサン(a)、
− 必要に応じて少なくとも一つの充填剤(f)、
− 第1および第3の部分混合物中に存在しない場合には、必要に応じて少なくとも一つのアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン(d)、
− 必要に応じて少なくとも一つの抑制剤(e),および
− 必要に応じて少なくとも一つの助剤(g)を一緒にして第2の部分混合物をつくり、
− 芳香族の基を含む少なくとも一つの有機水素シロキサン(b1)、および/または
− 少なくとも一つのアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン(d)
− 必要に応じて少なくとも一つの有機ポリシロキサン(a)
− 必要に応じて少なくとも一つの充填剤(f)、および
− 必要に応じて少なくとも一つの助剤(g)を一緒にして第3の部分混合物をつくり、
次いでこの三つの部分混合物を混合する。
【0095】
「部分混合物」または「反応性成分」と云う言葉はまた部分混合物がただ一つの成分し
か含まない場合も含むものとする。
【0096】
さらに本発明によれば、本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を交叉結合または加硫させて得られる付加交叉結合したシリコーンゴム配合物が提供される。交叉結合または加硫は、付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物の反応性に依存して0〜300℃の温度範囲において起こる。
【0097】
交叉結合は大気圧下、20ミリバールまでの減圧下、または周囲の空気が存在する場合の大気圧以上の圧力下において適切に行なうことができる。周囲空気の存在下における大気圧以上の圧力は、射出条件下において、即ち成形型の単位面積に対し最高300バールの圧力において行なわれる射出成形および交叉結合における基質表面にかかる圧力を含んでいる。
【0098】
付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物は一般にエラストマー性の成形品である。
【0099】
さらに本発明によれば、本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物の少なくとも一つを鉱物質、金属、熱硬化されたおよび/または熱可塑性の基質の上で交叉結合させることを特徴とする複合成形品の製造法が提供される。
【0100】
好適な基質は熱可塑性の基質であり、特に好ましくは基質はポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、またはポリフェニレンスルフィドからつくられたものである。
【0101】
複合成形品を製造する本発明方法の一好適具体化例においては、本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を予めつくられた熱可塑性の成形品の表面に対し、好ましくは大気圧下において、適宜塗布(spreading)、注型(casting)、カレンダー掛け、ナイフによる被覆、およびロール掛けによって被覆した後、0〜300℃、好ましくは50〜250℃の温度において交叉結合させ、この過程中で接着させる。
【0102】
特に好ましくは、付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を被覆する直前に好適な熱可塑性の成形品をつくる。
【0103】
複合成形品をつくる本発明方法の他の好適具体化例においては、本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を交叉結合または加硫させ、この過程中において50〜300℃の温度で熱可塑性成形品の表面に接着させる。この成形品は射出成形型の中で予め直前に射出成形されたものであることが好ましい。
【0104】
複合成形品を製造する上記の方法においては、一般に基質の表面含量が存在する加硫室の中に射出成形することにより付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を被覆することが含まれている。この場合、成分(a)〜(g)を混合することにより直前において付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物がつくられていることが好ましい。上記の反応性の部分混合物を前以てつくり、次いでこれを混合することが特に好適である。また、反応性の部分混合物を目標の基質の上に直接射出成形した後交叉結合させることも可能である。
【0105】
本発明の交叉結合したシリコーンゴム配合物で被覆できる基質にはさらに例えば次のものが含まれる:ガラス、予備処理したまたはしない金属、または好ましくは予備処理したまたはしないプラスティックス。好適な熱可塑性プラスティックスにはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、すべて芳香族のポリエステル、液晶性ポリエステル、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、脂肪族のポリアミド、ポリフタルアミド、部分的に芳香族のポリアミド、ポリフェニルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルフォン、
ポリエーテルスルフォン、芳香族のポリエーテルケトン、PMMA、ポリカーボネート、ABS重合体、フルオロ重合体、シンジオタクティックポリスチレン、エチレン−一酸化炭素共重合体、ポリフェニレンスルフォン、ポリアリーレンスルフィド、およびポリフェニレンスルフォキシドが含まれる。熱硬化したプラスティックスには例えば次のものが含まれる:メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェニレンオキシド樹脂、またはフェノール樹脂。
【0106】
これらの基質は交叉結合または加硫の過程中において少なくとも一つの本発明の付加交叉結合可能なまたは加硫可能なシリコーンゴム配合物と接着する。
【0107】
加硫を行なう前に、自動射出成形装置、または上手にある混合ヘッドおよび必要に応じ下手にある静止型混合機の中で混合することにより、二つまたは三つに分割されたシリコーンゴム配合物を一緒にし、この混合物を混合し、得られた混合物を次に0〜300℃において交叉結合させて接着する。混合した後に50〜250℃の高められた温度において成分を成形型の中へ射出成形することが好ましい。シリコーンゴム配合物を入れるこの成形型のキャビティーは、型抜き剤を用いて成形型を被覆するか処理して成形型の表面に対する接着性のレベルを型抜きを行なうために十分低いレベルまで低下させる必要はない。熱硬化した材料または熱可塑性材料、およびエラストマー材料を順次装入する成形型の設計に関する情報は、Schwarz;Ebeling; Furth:Kunststoffverabeitung,Vogel Verlag,ISBN:3−8023−1803−X、およびWalter Michaeli:Einfuehrung in die Kunststoffverarbeitung,Hanser−Verlag,ISBN:3−446−15635−6に記載されている。成形型を動かしこれを閉じた状態に保つことができるようにするためには、型締力が成形型の表面1cm当たり3000Nよりも大きい自動射出成形装置を選ぶことが好ましい。
【0108】
通常の自動射出成形装置はすべて本発明の方法に使用することができる。その技術的な選択はシリコーンゴムの配合物の粘度および成形品の寸法によって行なう。
【0109】
使用される反応性の部分混合物の割合は本発明のシリコーンゴム配合物を混合した後に得られる割合に対応している。これらは所望のSi−アルケニル対SiHの比によって、また成分(b1)および適切な場合には成分(b2)の接着促進成分の必要量によって決定される。
【0110】
これに加えて本発明によれば、複合成形品、例えば密封用および/または制動取付用の機素、把手(handle)、キーボード、スイッチ、シャワーヘッド、エラストマー密封材をもったプラグ、ランプのソケット、または熱可塑性部材およびシリコーンゴムの部材の両方をもつ他の固定材(fixing)の製造に対する本発明の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物の使用が提供される。
【0111】
作業実施例
【実施例1】
【0112】
(対照試験)
基本混合物BM1の製造:
熔解機の中で、粘度が10Pa.s(25℃)のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a1)9.1部および粘度が65Pa.s(25℃)のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a2)16.5部を、2.9部のヘキサメチルジシラザンおよび1.0部の水と混合し、次にこの混合物を11.1部のBET表面積が300m/gの煙霧シリカ(Aerosil 300(R) Degussa)と混合し
,約100℃に加熱し、約1時間撹拌し、しかる後150〜160℃において水および過剰の疎水性化剤を除去し(最終的に圧力20ミリバールの減圧で)除去し、次いで6.2部の(a1)で希釈した。これによって基本混合物BM1が得られる。
【0113】
冷却後、約200部の基本混合物BM1を粘度が10Pa.s(25℃)のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a1)6部、ビニル含量が2ミリモル/gで粘度が0.2Pa.sのメチルビニルシロキシ基を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a3)0.6部、1.5部のグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、1.8部のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、並びに抑制剤としての0.1部のエチニルシクロヘキサノール、およびテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中に含まれるアルケニルシロキサン基をもった0.0145部のPt錯体(c)(Pt含量:15重量%)、およびさらに平均のSiH含量が15ミリモル/gで成分(b2)の1分子当たりの平均のMeHSiO基の含量が30の1.1部のトリメチルシリル末端メチル水素シロキサン(b2)、平均のSiH含量が4.9ミリモル/gの2.0部のトリメチルシリル末端ジフェニルメチル水素ジメチルポリシロキサン(b1)、Mphe20.9を混合した。成分(b1)は陰イオンの平衡化によって生じた。
【0114】
この反応性配合物を硬化または加硫させ、それぞれの場合成形型のキャビティーをもつ成形型の中に入れた。成形型のキャビティーはそれぞれの場合与えられた条件下で表1に示されているような挿入された熱可塑性の部材を含んでいる。試験したすべてのエラストマー/熱可塑性複合部材に対し、得られた接着性の結果は良好である。
【実施例2】
【0115】
(本発明の実施例)
冷却後、約200部の基本混合物BM1を粘度が10Pa.s(25℃)のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a1)6部、ビニル含量が2ミリモル/gで粘度が0.2Pa.s(25℃)のメチルビニルシロキシ基を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a3)0.6部、1.5部のグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、1.8部のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、抑制剤としての0.1部のエチニルシクロヘキサノール、およびテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中に含まれるアルケニルシロキサン基をもった0.0145部のPt錯体(c)(Pt含量:15重量%)、およびさらに平均のSiH含量が15ミリモル/gで成分(b2)の1分子当たりの平均のMeHSiO基の含量が30のトリメチルシリル末端メチル水素シロキサン(b2)0.34部、成分(b1)として平均のSiH含量が10.8ミリモル/gの2.0部のトリメチルシリル末端ジフェニルメチル水素ジメチルポリシロキサン(b1)、M24phe2を混合した。成分(b1)は陰イオンの平衡化によって生じた。
【0116】
この反応性配合物を硬化または加硫させ、それぞれの場合成形型のキャビティーをもつ成形型の中に入れた。成形型のキャビティーはそれぞれの場合与えられた条件下で表1に示されるような挿入された熱可塑性の部材を含んでいる。試験したすべてのエラストマー/熱可塑性複合部材に対し、得られた接着性の結果は優秀であり、その大部分は対照実施例1よりも高い水準にあった。
【0117】
【表1】

【0118】
複合部材の製造および評価
複合部材は、実験室用のプレス成形型の中でつくった後、個々の熱可塑性成形品の表面で175℃において10分間個々のシリコーンゴムの配合物を加硫することにより厚さ約3mmの熱可塑性成形品を挿入した。
【0119】
複合成形品を製造するためにこれらの実施例で使用された成形型はTeflon(R)で表面を被覆した成形型であった。硬化したシリコーンゴム配合物の種々の熱可塑性基質に対する接着性は、それぞれの場合少なくとも2個の試料を用い、製造した後複合部材の試料に対しさらに熱処理を行なわずに、24時間後において引張り速度100mm/分でDIN 53 289に基づいた方法(ローラ剥離試験)で試験した。この場合複合部材の試料に対しさらに加熱処理は行なわなかった。ローラ剥離試験の結果を表1にまとめる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粘度が0.01〜30000Pa.s(25℃)で少なくとも二つのアルケニル基を有する少なくとも一つの直鎖または分岐した有機ポリシロキサン、
(b1)それぞれの場合1分子中に平均して少なくとも20個のSiH単位を有し、芳香族の基、ハロゲン原子、擬ハロゲン基、ポリエーテル基、アミノアルキル基、およびアンモニオアルキル基から成る群から選ばれる少なくとも一つの構成要素を含む少なくとも一つの有機基を有する、少なくとも一つの有機水素シロキサン、
(b2)必要に応じて使用される、1分子中に平均して少なくとも2個のSiH単位を有し、有機基が飽和および不飽和の脂肪族炭化水素基から成る群から選ばれる一つまたはそれ以上の有機水素ポリシロキサン、
(c)少なくとも一つのヒドロシリル化触媒、
(d)それぞれ少なくとも一つのエポキシ基を有するアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン、アクリルおよびメタクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン、および水、アルコール、シラノールおよび/またはシロキサンジオールとの反応により得られる上記化合物の縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも一つの構成要素、
(e)必要に応じて使用される少なくとも一つの抑制剤、
(f)必要に応じて使用される表面が変性されまたはされていない少なくとも一つの充填剤、
(g)必要に応じて使用される少なくとも一つの助剤
を含んで成ることを特徴とする付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項2】
有機ポリシロキサン(a)は下記のシロキシ単位:
【化1】

但し式中置換基Rは同一または相異なることができ、
− 炭素数最高12の、必要に応じてフェニルおよびハロゲン、特にフッ素、から成る群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていることができる直鎖の、分岐した、または環式の基、
− 炭素数最高12の直鎖の、分岐したまたは環式のアルケニル基、
− フェニル基、
− ヒドロキシル、および
− 炭素数最高6の直鎖の、分岐したまたは環式のアルコキシ基
から成る群から選ばれる基であるか、或いは
異なったシロキシ単位の二つの置換基Rは二つの珪素原子の間において2〜12個の炭素原子を有する直鎖の、分岐したまたは環式のアルカンジイル基をつくっている基であるが、
但し1分子当たり少なくとも二つの置換基Rは同一または相異なることができる上記アルケニル基を表すものとする、
を有することができる直鎖または分岐したポリシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項3】
成分(b1)は、下記のシロキシ単位:
【化2】

但し式中Rは同一または相異なることができ、
− 水素、
− 炭素数が最高12で、必要に応じてフェニルおよびハロゲン、特にフッ素、から成る群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていることができる直鎖の、分岐したまたは環式の基、
− 炭素数が最高12の直鎖の、分岐したまたは環式のアルケニル基、
− 芳香族の基、
− 炭素数が最高6の直鎖の、分岐したまたは環式のアルコキシ基から成る群から選ばれる基であるか、或いは
異なったシロキシ単位の2個の基Rが一緒になって2個の珪素原子の間に2〜12個の炭素原子を有する直鎖の、分岐したまたは環式のアルカンジイル基をつくっている基である、
を有することができる直鎖の、分岐したまたは環式のポリシロキサンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項4】
有機水素シロキサン(b1)はそれぞれの場合1分子当たり平均して少なくとも23個のSiH単位を有することを特徴とする請求項1〜3の一つまたはそれ以上に記載された付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項5】
珪素に結合したH原子対珪素に結合したH原子および珪素に結合した有機基の割合として定義される有機水素シロキサン(b1)のSi−H含量は36モル%より大きいことを特徴とする請求項1〜4の一つまたはそれ以上に記載された付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項6】
有機水素シロキサン(b1)は置換基をもったまたはもたない少なくとも一つの芳香族の基をもっていることを特徴とする請求項1〜5の一つまたはそれ以上に記載された付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項7】
有機水素シロキサン(b1)は直鎖のトリ有機シロキシ−および/またはジ有機水素シロキシ−末端有機水素シロキサンであって、トリ有機シロキシ末端基はトリメチルシロキシ、トリフェニルシロキシ、ジフェニルメチルシロキシ、フェニルジメチルシロキシ、フェニルエチルジメチルシロキシ、およびフェニルプロピルジメトキシシロキシから成る群から選ばれ、ジ有機水素シロキシ末端基は好ましくはジメチル水素シロキシ基であり、平均して20〜1000個のメチル水素シロキシ単位、平均して500個より少ないジメチルシロキシ単位、平均して360個より少ない(メチル)(フェニル)シロキシ単位、および平均して180個より少ないジフェニルシロキシ単位をもっていることを特徴とする請求項1〜6の少なくとも一つに記載された付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項8】
成分(d)のアルコキシシランはグリシジルオキシプロピルアルコキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、およびメタクリロイルオキシトリアルコキシシランから選ばれる請求項1〜7の少なくとも一つに記載された付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物。
【請求項9】
成分(a)〜(d)および随時成分(e)〜(g)を混合することを含んで成ることを特徴とする請求項1〜8の少なくとも一つに記載された付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を製造する方法。
【請求項10】
成分(a)〜(g)のうちの二つ以上ではあるが全部ではない成分を含んで成る少なくとも一つの部分混合物をつくことを含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
第1の部分混合物は
− 少なくとも一つの有機ポリシロキサン(a)、
− 必要に応じて少なくとも一つの充填剤(f)、
− 必要に応じて少なくとも一つの助剤(g)、
− 少なくとも一つの触媒(c)、および
− 必要に応じて少なくとも一つのアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン(d)を一緒にしてつくり、
第2の部分混合物は
− 必要に応じて有機ポリシロキサン(a)
− 少なくとも一つの有機水素シロキサン(b1)、
− 必要に応じて少なくとも一つの有機水素ポリシロキサン(b2)、
− 必要に応じて少なくとも一つの充填剤(f)、
− 必要に応じて少なくとも一つのアルコキシシランおよび/またはアルコキシシロキサン(d)、
− 必要に応じて少なくとも一つの抑制剤(e)、および
− 必要に応じて少なくとも一つの助剤(g)を一緒にしてつくり、
次いでこの二つの部分混合物を混合することを特徴とする請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜8の任意の一つに記載された組成物を交叉結合させて得られることを特徴とする付加交叉結合したシリコーンゴム配合物。
【請求項13】
請求項1〜8の少なくとも一つに記載された少なくとも一つの付加交叉結合性のシリコーンゴム配合物を基質上で交叉結合させることを特徴とする複合成形品を製造する方法。
【請求項14】
基質は鉱物質、金属、熱硬化したおよび/または熱可塑性の基質から選ばれることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
シリコーンゴム配合物を予めつくられた熱硬化したまたは熱可塑性の成形品の表面に適宜塗布、注型、カレンダー掛け、ナイフによる被覆、およびロール掛けを用いて被覆し、次いで接着させる過程において0〜300℃の温度で交叉結合させることを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前以て射出成形型の中に射出成形された熱硬化したまたは熱可塑性の成形品の表面上で50〜300℃においてシリコーンゴム配合物を加硫し、この加硫の過程において接着させることを特徴とする請求項13〜15記載の方法。
【請求項17】
熱可塑性材料はポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、またはポリフェニレンスルフィドから選ばれることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一つに記載された方法。
【請求項18】
請求項10および11のいずれかに記載された部分混合物を混合することにより付加交
叉結合性のシリコーンゴム配合物を製造することを特徴とする請求項13〜17のいずれか一つに記載された方法。
【請求項18】
一緒にした場合請求項1〜8の任意の一つに記載された付加交叉結合性の組成物を生じる少なくとも2種の貯蔵安定性をもった成分からなる成分のセット。
【請求項19】
鉱物質、金属、熱硬化したおよび/または熱可塑性の基質および請求項12記載の付加交叉結合したシリコーンゴム配合物を含んで成ることを特徴とする複合成形品。
【請求項20】
密封用および/または制動取付用の要素、把手、キーボード、エラストマー性の密封材をもったプラグ、スイッチ、シャワーヘッド、ランプのソケット、または他の固定材である請求項19記載の複合成形品。
【請求項21】
分子中に平均して少なくとも20個の水素シロキシ単位を有し、芳香族の基を含むSiと結合した1価の有機基を含み、芳香族の基を含むSiと結合した1価の有機基の含量が12モル%より少ないことを特徴とする有機水素ポリシロキサン(b1)。

【公表番号】特表2008−537967(P2008−537967A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502338(P2008−502338)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002739
【国際公開番号】WO2006/100098
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(599092697)モーメンテイブ・パーフオーマンス・マテリアルズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (9)
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials GmbH
【Fターム(参考)】