説明

自己注射器

薬剤を送達するための自己注射器(101)は、ハウジング(111)と、ハウジング(111)に連結された針(103)と、を含む。圧縮可能な貯蔵部(121)がハウジング(111)に連結され、針(103)と流体連通し、貯蔵部(121)を圧縮すると、薬剤が貯蔵部(121)から針(103)に運ばれ、針(103)が第一の位置から第二の位置に移動する。平台(171)がハウジング(111)の中に配置され、その周囲でハウジング(111)を複数の位置の間で回転させることができる。これらの位置の各々は、注射中に針(103)を第二の位置まで移動させる際の異なる距離に対応し、それによって注射深さを変化させることができる。注射終了後は、針(103)がハウジング(111)の中に引き戻され、使用者が手で操作する必要がなく、その結果、針刺しおよびその他の事故を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己注射器に関する。より詳しくは、本発明は、圧縮可能な貯蔵部を有する自己注射器に関する。さらにより詳しくは、本発明は、注射深さが調節可能で、皮内、境界(junctional)または皮下注射が可能であり、また自己注射器に薬剤を充填できるような自己注射器に関する。さらにより詳しくは、自己注射器は、針刺し事故を防止するための受動的安全機構を有する。
【背景技術】
【0002】
シリンジは、組織領域、例えば皮下組織層、皮内組織層または、皮内組織層と皮下組織層の間の境界領域等に薬剤を注入するために使用される。しかしながら、既存のシリンジは、これらの組織層のうちの1つにしか薬剤を送達できない。それ故、皮内、境界および皮下組織層の各々に薬剤を送達するためには、別々のシリンジを使用する必要があり、それによって在庫量が増え、製造費用もかさむ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、薬剤を皮内、皮下および境界組織層のいずれにも送達できるようになされたシリンジが必要とされている。
【0004】
さらに、針刺しまたはその他の事故によって細菌やウイルス性病原菌の拡散を防止するために、このような器材に安全機構を組み込むことも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の例示的実施形態による自己注射器は、注射深さが調節可能であり、それによって、同じ自己注射器で皮内、境界または皮下注射を行うことができる。
【0006】
本発明の例示的実施形態によれば、自己注射器は、ハウジングと、ハウジングに連結された針を含む。針は、針の近位端がハウジング内に位置付けられる第一の位置と、針の近位端がハウジングの外に位置付けられる第二の位置と、の間で移動可能である。圧縮可能な貯蔵部がハウジングに連結され、針と流体連通し、それによって、貯蔵部を圧縮すると、薬剤が貯蔵部から針に運ばれ、針は第一の位置から第二の位置に移動する。
【0007】
本発明の他の例示的実施形態によれば、自己注射器は、ハウジングと、ハウジングに連結された針と、を有する。針は、針が完全にハウジング内に位置付けられる第一の位置と、針の近位端がハウジングの外に位置付けられる第二の位置と、の間で移動可能である。平台がハウジング内に配置され、その周囲でハウジングを複数の位置の間で回転させることができる。これらの位置の各々は、注射中に針が第二の位置まで移動するときの異なる距離に応答する。
【0008】
本発明の他の例示的実施形態によれば、注射器により薬剤を投与する方法が提供される。この器材を、薬剤を送達すべき部位に設置する。ハウジングおよびハウジング内に配置された針に連結された貯蔵部を押圧すると、針がその部位に挿入され、貯蔵部の中に保管されていた薬剤が貯蔵部から針を通ってその部位へと送達される。ハウジングの上側ハウジングを下側ハウジングに関して回転させることによって、所望の注射深さが選択される。
【0009】
本発明の各種の実施形態の上記のような利点とその他の利益は、本発明の例示的実施形態に関する以下の詳細な説明と添付の図面から、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の例示的実施形態による自己注射器の斜視図である。
【図2】図1の自己注射器の正面図である。
【図3】図1の自己注射器の分解斜視図である。
【図4】図1の自己注射器の正面部分断面図である。
【図5】皮内注射用に設定された自己注射器の正面断面図である。
【図6】境界注射用に設定された自己注射器の正面断面図である。
【図7】皮下注射用に設定された自己注射器の正面断面図である。
【図8】図7の自己注射器の、上から見た斜視図である。
【図9】図8の自己注射器の、下から見た斜視図である。
【図10】長い隔壁を有する自己注射器の他の例示的実施形態の正面部分断面図である。
【図11】図10の自己注射器の、貯蔵部が押圧された状態の正面部分断面図である。
【図12】長い隔壁とバネを有する自己注射器の他の例示的実施形態の正面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
全ての図面を通じて、同様の参照番号は、同様の部品、構成要素および構造を指すと理解するものとする。
【0012】
図1から図9に示される本発明の例示的実施形態による自己注射器101は、ハウジング111と、ハウジングに連結された針103と、ハウジングに連結された圧縮可能な貯蔵部121と、を有する。針103は、針の近位端104がハウジング111の内部に位置付けられる、図4に示される第一の位置と、図5から図7のように針の近位端104がハウジングの外に位置付けられる第二の位置と、の間で移動可能である。貯蔵部121は針103と流体連通し、貯蔵部を圧縮すると、薬剤が貯蔵部から針に運ばれ、針は第一の位置から第二の位置に移動する。
【0013】
ハウジング111は、図3と図4に示されるように、上側ハウジング131と下側ハウジング141を有する。ハウジングは、適当なプラスチック材料、例えばポリプロピレンで製作される。
【0014】
上側ハウジング131は、基底部133と、その外側周縁から略垂直に延びる壁135を有する。壁135の自由端には、内側に延びる複数のタブ137がある。壁135の、タブ137の付近には切欠き部138が形成され、これはタブに柔軟性を持たせる。突起139が、上側ハウジング131の基底部133の内面134から外側に延びる。突起139の長さ全体にわたり、開口部138が延びる。第一のタブ(図示せず)と第二のタブ136が内面134から下方に延び、突起139に関して直径方向に反対に配置される。第一および第二のフランジ130および132が内面134から下方に延び、突起139に関して直径方向に反対に配置される。好ましくは、第一および第二のフランジ130および132は略L字型であり、突起139に関して第一および第二のタブ136および138の半径方向に外側に配置される。窓107が上側ハウジング131の基底部133の中に形成される。上側ハウジングは好ましくは、直径が約31ミリメートルである。
【0015】
下側ハウジング141は、図2と図4に示されるように、基底部143と、その外側周縁から略垂直に延びる壁145を有する。壁145の自由端は、外側に延びるリップ147を有する。基底部143の開口部149は、針139が、そこを貫通できるようになされている。図3に示されるように、溝148が壁145の内面146に形成されている。溝148は、第一および第二の部材140および142の間に形成される。下側ハウジング141の基底部143の外面から上側ハウジング131の基底部133の外面までの距離は、好ましくは約15ミリメートルである。下側ハウジング141の基底部143の外面から圧縮されていない貯蔵部121の上部までの距離は、好ましくは約21ミリメートルである。
【0016】
接着性のある裏当てを下側ハウジング141の基底部143の外面に設置して、注射を行う際に自己注射器101を皮膚表面に当てた時に、自己注射器101が実質的に動かないようにしてもよい。接着性のある裏当てはまた、皮膚を動かないようにし、固定し、伸ばし、または拡げて、注射を行いやすくするのに役立つかもしれない。
【0017】
段差153、155、157、159からなる階段状部材151が、図3に示されるように、基底部143の内面144から上方に延びる。好ましくは、徐々に低くなる4つの段差が隣接している。第一の段差153は最も高い段差であり、上側ハウジング131と針103の下方への移動を阻止するようになされている。第二の段差155は第一の段差153に隣接し、針103が皮内注射用に移動できるようになされている。第三の段差157は第二の段差155に隣接し、針が境界注射用に移動できるようになされている。第四の段差159は第三の段差157に隣接し、針が皮下注射用に移動できるようになされている。好ましくは、上記と同じ段差を持つ第二の階段状部材が、基底部145の開口部149に関して、第一の階段状部材151と直径方向に反対にある。この例示的実施形態では3種類の注射深さが提供されるが、本発明はこの実施形態に限定されず、注射深さがそれより少ない、または多いものも本発明の範囲内である。
【0018】
皮膚は3つの層、表皮、真皮および皮下層で構成される。表皮は皮膚の最も外側の層であり、表皮の下に真皮層があり、真皮層の下に皮下層がある。皮内注射は真皮層の中に行われ、それに必要な注射深さは約1mmである。境界注射は真皮と皮下層の間の境界部に行われ、それに必要な注射深さは約2mmである。皮下注射は皮下層に行われ、それに必要な注射深さは約4mmである。
【0019】
図3と図4に示されるように、バネ161がハウジング111の中に配置される。バネ161の第一の端163は、下側ハウジング141の基底部143の内面144と当接する。バネ161の第二の端165は、上側ハウジング131の基底部133の内面134に当接する。好ましくは、バネ161は、図4に示されるように、下側ハウジング141の段差153、155、157、159と上側ハウジング131のタブ136の、半径方向に外側に配置される。
【0020】
図3および図4に示されるように、平台171が、上側ハウジングの基底部133の内面134に隣接して配置され、そこに第一および第二のフランジ130および132によって固定される。ストッパ173がプラットフォーム171の下面から外側に延びる。ストッパ173は、下側ハウジング141の壁145の内面に形成されている溝148によって受けられる。ストッパ173は溝148によって受けられ、それによって、上側ハウジング131は平台171に関して回転でき、平台171は下側ハウジング143の溝148の中に入ったストッパ173によって回転できない。図3および図8に示されるように、複数の位置指示手段178が、平台171の上面174には複数の位置指示手段が表示され、上側ハウジング131の窓107から見える。
【0021】
圧縮可能な貯蔵部121は、図1から図3に示されるように、上側ハウジング131に連結されている。貯蔵部121の中には、貯蔵部121と上側ハウジング131によって画定される空間123が形成され、その中に薬剤が保管される。上側ハウジング131の上面133に陥凹部125が形成され、圧縮可能な貯蔵部121を受ける。圧縮可能な貯蔵部121は、上側ハウジング131に、どのような好適な方法でも固定でき、例えば、圧縮可能な貯蔵部121に外側に延びるフランジを設置し、これが陥凹部125に形成された溝の中に受けられるようにする方法、接着剤を使って陥凹部125の中に圧縮可能な貯蔵部121を固定する方法、または圧縮可能な貯蔵部121と陥凹部125の間の締り嵌めによる方法がある。圧縮可能な貯蔵部121は、好適な柔軟プラスチックまたはエラストマ材料、例えばバイロンまたはシリコンゴム等で製作される。
【0022】
針103は、図4から図7に示されるように、上側ハウジング131の基底部133に連結されて、固定される。針103の遠位端105は、上側ハウジング131の陥凹部125の開口部138と同一平面となる。針103の近位端104は、図4に示されるように、上側ハウジング131がその初期の位置にあるときはハウジング111の中に位置付けられる。好ましくは、上側ハウジング131がその初期の位置にあるとき、針103近位端104は弾性隔壁181の中に位置付けられる。
【0023】
隔壁181は、図4に示されるように、下側ハウジング141の基底部143の内面144に連結され、下側ハウジングの開口部149を覆う。隔壁181は、好ましくは中実で弾性であり、注射中に針103が移動すると、針103がそこを貫通できる。隔壁181は針103の近位端104を覆うことによってシールドと密閉材の役割を果たし、それによって、針刺し事故を防止し、開口部149を密閉する。隔壁は、適当な弾性材料、例えばシリコンゴムで製作される。
【0024】
自己注射器101は、予め充填されていても、使用者が充填してもよい。自己注射器101に薬剤を充填する手順は、ある部位に薬剤を注入する方法と実質的に同様であり、これについては後述する。
【0025】
自己注射器は、図4においてはロックされた位置で示されている。タブ136が第一の段差153に当接し、それによって、上側ハウジング131は下側ハウジング141に関して下方に移動できない。針103の近位端104はハウジング111の中、好ましくは、隔壁181の中に位置付けられる。平台171の上の指示手段が上側ハウジングの窓107から見えて、自己注射器がロックされた位置にあることを示し、例えば数字「0」(図3)は、針がこの設定において0ミリメートル移動可能、すなわち移動しないことを示す。
【0026】
図4に示されるように、上側ハウジング131の内径は、下側ハウジング141の外径より大きい。それ故、図5から図9に示されるように、上側ハウジング131は下側ハウジング141の周囲で下方に移動可能である。上側ハウジング131のタブ137は、注射後にバネ161が延びると、外側に延びるリップ147と係合することによって、上側ハウジングが下側ハウジング141から外れるのを防止する。タブ137は上側ハウジングのスロット138によって柔軟性を有し、それによって、タブを、自己注射器101を最初に組み立てる際に、リップ147の上で撓ませることができる。
【0027】
自己注射器は、図5において、皮内注射に対応する位置にある状態で示されている。上側ハウジング131は平台171に関して回転され、それによって、窓107から見える指示手段により、この自己注射器が皮内注射用の位置にあることが示されている。指示手段は、数字「1」(図3)であってもよく、これは針103が1ミリメートル移動できることを示し、これは皮内注射に必要な深さに対応する。平台171のストッパ173は、下側ハウジング141の溝148の中に入り、それによって、上側ハウジング131が回転されたときに、平台171と下側ハウジング141の回転が阻止される。皮内注射を行うためには、貯蔵部を押圧し、それによって上側ハウジング131は下方に移動し、最終的にタブ136が第二の段差155と当接する。バネ161は、それぞれ上側ハウジング131と下側ハウジング141の間で圧縮される。その結果、針103は下側ハウジング141の基底部143を超えて約1ミリメートル移動し、これは図5の距離D1によって示される。貯蔵部121が皮内注射用に圧縮されたとき、下側ハウジング141の基底部143の外面から下側ハウジング131の基底部133の外面までの距離は、好ましくは約13ミリメートルである。
【0028】
針103は、上側ハウジング131に固定され、これと一緒に移動する。針103の近位端104は、隔壁181を通り、下側ハウジング141の基底部143の開口部149を通過する。貯蔵部121の窩洞123の中に貯蔵された薬剤は、針103の遠位端105に入り、針103を通じて注射部位へと移動する。貯蔵部121を解放すると、圧縮されていたバネ161が伸びる。この動作により、針103は注射部位から開口149を通って引き戻り、それによって、針103の近位端104は再び隔壁181の中に位置付けられる。好ましくは、自己注射器101は、注射に使用された後は廃棄される。針103の近位端104が隔壁181の中に位置付けられることによって、注射後の針刺し事故が防止される。
【0029】
前段落で述べたように、上側ハウジング131は、境界注射(図6)と皮下注射(図7から図9)に対応する位置まで回転可能である。境界注射の位置では、平台の指示手段は数字「2」(図3)であってもよく、これは針が下側ハウジングの基底部を超えて2ミリメートル移動することを示し、これは境界注射に必要な距離に対応する。上側ハウジング131のタブ136は、貯蔵部121が押圧されると第三の段差155に当接し、針103の移動を約2ミリメートルに限定し、これは図6の距離D2で示される。好ましくは、境界注射のために貯蔵部121を圧縮したときの下側ハウジング141の基底部143の外面から上側ハウジング131の基底部133の外面までの距離は、好ましくは約12ミリメートルである。
【0030】
皮下注射の位置では、平台の指示手段は数字「4」(図3)であってもよく、これは針が下側ハウジングの基底部を超えて約4ミリメートル移動することを示し、これは皮下注射に必要な距離に対応し、図7の距離D4で示される。貯蔵部121を押圧すると、上側ハウジング131のタブ136は第四の段差155に当接して、針103の移動を約4ミリメートルに限定する。好ましくは、皮下注射のために貯蔵部121を圧縮したときの下側ハウジング141の基底部143の外面から上側ハウジング131の基底部133の外面までの距離は、好ましくは約10ミリメートルである。注射を行うためのその他の工程は、皮内注射に関して上述した工程と略同様である。
【0031】
空の貯蔵部を充填するための工程は、皮下注射を実行する場合と同様である。図7から図9に示されるように、上側ハウジング131を皮下注射に対応する位置まで回転させる。自己注射器101を所望の薬剤の入ったバイアルの付近に置く。貯蔵部121を押圧し、針103の近位端104が薬剤の中に入るようにする。貯蔵部121を解放すると、薬剤が針103を通じて貯蔵部121の窩洞123の中に引き込まれる。次に、上側ハウジング131を図4に示されるロック位置まで回転させ、針103が予期せず移動するのを防止する。あるいは、自己注射器101は、予め充填された状態で使用者に提供されてもよい。
【0032】
自己注射器101は小型であれば、特に片手での操作を考えると、使用者にとって使いやすい。自己注射器101の各構成要素は複数の機能を備えるため、組立に必要な部品数が少なくて済む。さらに、前述のように、注射を行った後、上側ハウジング131は回転によりロック位置に戻るため、針刺し事故が防止され、自己注射器101自体が自己完結的な「針類回収器」となる。
【0033】
さらに、自己注射器101には、針刺しまたはその他の事故による細菌およびウイルス性病原菌の拡散を防止するための安全機構が組み込まれる。前述のように、貯蔵部121を解放すると、図4に示されるように、針103がハウジング111の中に引き戻る。針103の近位端104は隔壁181中に配置され、それによって、注射後の針刺し事故またはその他の事故が防止される。針103は受動的に引き戻されるため、使用者は積極的に針を引っ込めることを忘れないようにする必要がなく、その結果、安全な自己注射器101が提供される。
【0034】
図10および図11に示されるような本発明の他の例示的実施形態において、自己注射器201は自己注射器101と実質的に同じである。長い中空の隔壁281がハウジング211の中に配置されている。貯蔵部221を圧縮すると、図11のように、上側ハウジング231が下側ハウジング241に関して下方に移動し、それによって、弾性隔壁281を圧縮する。針203は上側ハウジング231に剛性的に固定され、それによって針は隔壁281を貫通する。貯蔵部221を解放すると、隔壁281の弾性により、図10に示されるように、上側ハウジング231が初期の位置に戻る。針203の近位端もまた、受動的にハウジング211の中に引き戻され、その結果、針刺しおよびその他の事故を防止する安全な自己注射器201が提供される。
【0035】
図12に示されるような他の例示的実施形態において、自己注射器201は自己注射器101と実質的に同じである。長い中空の隔壁381がハウジング311の中に配置されている。バネ361が隔壁381を取り囲み、圧縮された後に弾性の隔壁が図12に示されるような当初の位置に戻りやすくしている。貯蔵部321が圧縮されると、上側ハウジング331は下側ハウジング341に関して下方に移動する。針303は、上側ハウジング331に剛性的に固定されて、それによって針は隔壁381を貫通する。貯蔵部321を解放すると、隔壁281の弾性とバネ361とにより、図12に示されるように、上側ハウジング331が初期の位置に戻る。針303の近位端もまた、受動的にハウジング311の中に引き戻され、その結果、針刺しまたはその他の事故を防止する安全な自己注射器301が提供される。
【0036】
本発明の例示的実施形態による自己注射器は、ワクチンやインシュリン等の薬剤の注射が可能な、安全で使いやすいプッシュボタン式自己注射器を提供する。この自己注射器には、針の受動的な引き込み機能が含まれ、針刺しまたはその他の事故による細菌やウイルス性病原菌の拡散を防止する。所望の注射深さを選択して、自己注射器を患者の皮膚の上に設置する。圧縮可能な貯蔵部を押圧すると、針が皮膚の中に挿入され、薬剤が注入される。あるいは、貯蔵部充填モードを選択してもよく、自己注射器を薬剤入りのバイアルの上に設置して、薬剤を圧縮可能な貯蔵部の中に引き込む。圧縮可能な貯蔵部を解放すると、針は自動的に引き戻され、その結果、安全な自己注射器が提供される。
【0037】
本発明を説明するために、例示的実施形態を選択したが、当業者にとっては当然のことながら、付属の実施形態に定義された本発明の範囲およびその等価物から逸脱することなく、実施形態には様々な変更や改変を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を送達するための自己注射器であって、
相互に係合し、相互に関して選択的に移動可能な第一のハウジング部と第二のハウジング部を有するハウジングと、
前記第一および第二のハウジング部の一方が有する針であって、前記針の近位端が前記ハウジングの中に位置付けられる第一の位置と、前記針の前記近位端が前記ハウジングの外に位置付けられる第二の位置の間で移動可能な針と、
前記針と流体連通する圧縮可能な貯蔵部であって、圧縮すると、前記針が前記第一の位置から前記第二の位置へと移動する貯蔵部と、
を備えることを特徴とする自己注射器。
【請求項2】
前記第一のハウジング部と前記第二のハウジング部は、相互に関して、複数の位置の間で回転可能であり、前記位置の各々は、前記第一および第二の位置の間の前記針の移動距離を設定することを特徴とする請求項1に記載の自己注射器。
【請求項3】
前記複数の位置は、前記針の近位端が患者の皮膚の中へと入る複数の深さを規定し、前記複数の深さの各々は、皮内注射、境界注射または皮下注射のうちの1つに対応することを特徴とする請求項2に記載の自己注射器。
【請求項4】
前記第二のハウジング部の中に画定された開口部の中に配置された弾性隔壁をさらに備え、前記針の少なくとも一部は前記隔壁の中に位置付けられることを特徴とする請求項1に記載の自己注射器。
【請求項5】
前記第一および第二のハウジング部の一方に接着剤を備え、それにより、注射中、前記注射器が患者の皮膚に固定されることを特徴とする請求項4に記載の自己注射器。
【請求項6】
通常、前記第一および第二のハウジング部を相互から遠ざかるように付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の自己注射器。
【請求項7】
前記複数の位置は、前記第一および第二のハウジング部の一方に画定されたタブと、前記第一および第二のハウジング部のもう一方に画定された段差によって画定されることを特徴とする請求項3に記載の自己注射器。
【請求項8】
前記タブと前記段差は少なくとも4つの段差を含み、第一の段差は、前記貯蔵部が圧縮されたときに前記第一およよび第二のハウジング部が相互に関して回転することを阻止し、第二の段差は、前記針の移動を皮内注射に対応する第一の位置に限定し、第三の段差は、前記針の移動を境界注射に対応する第二の位置に限定し、第四の段差は、前記針の移動を皮下注射に対応する第三の位置に限定することを特徴とする請求項7に記載の自己注射器。
【請求項9】
薬剤を送達するための自己注射器であって、
相互に係合し、相互に関して選択的に移動可能な第一のハウジング部と第二のハウジング部を有するハウジングと、
前記第一および第二のハウジング部の一方が有する針であって、前記針の近位端が前記ハウジングの中に位置付けられる第一の位置と、前記針の前記近位端が前記ハウジングの外に位置付けられる第二の位置の間で移動可能な針と、
前記針と流体連通する圧縮可能な貯蔵部であって、圧縮すると、前記針が前記第一の位置から前記第二の位置へと移動する貯蔵部と、
を備え、
前記第一のハウジング部と前記第二のハウジング部は、相互に関して、複数の位置の間で回転可能であり、前記位置の各々は、前記第一および第二の位置の間の前記針の移動距離を設定することを特徴とする自己注射器。
【請求項10】
前記複数の位置は、前記針の前記近位端が患者の皮膚の中に入る複数の深さを規定し、前記複数の位置の各々は、皮内注射、境界注射および皮下注射のための注射深さに対応することを特徴とする請求項9に記載の自己注射器。
【請求項11】
前記第一および第二のハウジング部の間に付勢手段をさらに備え、前記付勢手段は通常、前記第一および第二のハウジング部を相互から遠ざかるように付勢することを特徴とする請求項1に記載の自己注射器。
【請求項12】
前記複数の位置は、前記第一および第二のハウジング部の一方のタブと、前記第一および第二のハウジング部のもう一方の段差によって画定されることを特徴とする請求項9に記載の自己注射器。
【請求項13】
前記タブと前記段差は少なくとも4つの段差を含み、第一の段差は、前記貯蔵部が圧縮されたときに前記第一および第二のハウジング部が相互に関して回転することを阻止し、第二の段差は、前記針の移動を皮内注射に対応する第一の位置に限定し、第三の段差は、前記針の移動を境界注射に対応する第二の位置に限定し、第四の段差は、前記針の移動を皮下注射に対応する第三の位置に限定することを特徴とする請求項12に記載の自己注射器。
【請求項14】
前記第二のハウジング部の中に画定された開口部の中に配置された弾性隔壁をさらに備え、前記針の少なくとも一部は前記隔壁の中に位置付けられることを特徴とする請求項12に記載の自己注射器。
【請求項15】
注射器を用いて薬剤を投与する方法であって、
前記注射器を、前記薬剤を送達するべき部位に設置するステップと、
ハウジングに連結された貯蔵部を押圧することによって、前記ハウジングに連結された針を、前記ハウジング内の第一の位置から第二の位置に移動させ、針が前記部位に挿入されて、前記貯蔵部の中に収容されていた前記薬剤が前記貯蔵部から前記針を通じて前記部位の中に注入されるようにするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ハウジングの第一のハウジング部を第二のハウジング部に関して回転させることによって、所望の注射深さを選択するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記注射器を薬剤容器の上に配置し、前記貯蔵部を押圧して前記薬剤を前記容器から前記貯蔵部の中に引き込むことによって、前記薬剤を送達する前に前記貯蔵部を充填するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記貯蔵部を解放して前記針を受動的に引き戻し、前記貯蔵部を解放すると前記針の近位端が前記ハウジング内に配置され、前記針を手で操作する必要がなく、それによって針刺し事故が防止されるようにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−504403(P2013−504403A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529720(P2012−529720)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/005148
【国際公開番号】WO2011/034516
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】