説明

自己洗浄性を有するコーティング用組成物を用いたフィルムまたは建築外装材及びその製造方法

(a)平均粒径が5〜30nmのヒドロキシ基を有する無機物粒子と、(b)平均粒径が0.2〜5μmのヒドロキシ基を有する無機物粒子と、(c)下記式(I)で表わされるオルガノシランと、(d)溶媒と、を含む、優れた自己洗浄性を有するコーティング用組成物、この組成物を用いたフィルム及び建築外装材、並びにこれらの製造方法。RSi(OR')4−n (I)(式中、Rは炭素原子数1〜8のアミノアルキル基、グリシドキシアルキル基またはイソシアネートアルキル基であり、R’は炭素原子数1〜6の低級アルキル基であり、nは0〜3の整数である。)本発明に係るコーティング用組成物は、ヒドロキシ基を有する無機物粒子を用いることにより、従来のコーティング材の初期親水性が改善するだけではなく、相異なる粒径を有する2種の無機物粒子を混用することにより、水接触角が30°以下の親水性コーティング層を形成することができる。特に、コーティング基材への侵食性及び低い沸騰点を有する有機溶剤を用いて、従来の建築外装材の生産ラインに新しいコーティングラインを構築することなく簡単に適用可能であるため、例えば、ビニールサイディングなどの基材にコーティングを行うとき、親水性及び優れた自己洗浄性を有する長寿命の建築資材を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己洗浄性(セルフクリーニング性)を有するコーティング用組成物、この組成物を用いて得られる、優れた自己洗浄性及び耐汚染性を有する基材、例えば、フィルムまたは建築外装材、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広告用フィルム及び建築外装材を長時間屋外に露出させる場合、ホコリや煤煙などによる汚染及び紫外線による変色などが深刻な問題として挙げられていた。この理由から、屋外用フィルム及び外装材には、特に、長期信頼性を示す自己洗浄性、耐候性などの物性が求められる。
【0003】
屋外用フィルム及び建築外装材の表面上の汚染は、主として、都心の空気中のホコリまたはカーボンブラックなどの燃焼生成物及び粘度粒子などの無機物質によるものである。通常、屋外用フィルム及び建築外装材の表面に沈積された汚染源は間欠的に降る雨により洗い取られて屋外用フィルム及び建築外装材が元の状態に戻ることもある。しかし、少量の雨が降る場合には雨に捕らわれて表面に付着され、且つ、乾燥中にホコリ、汚染または斑紋の形で表面に存在することになる。さらに、日照りで雨が降らない場合には、大気中における汚染物質の発生量が増加し、しかも雨による洗浄も行われないため、汚染物質が積もり続くといった悪循環が加速化する。そこで、このような不具合を解消するために、従来より下記の如き耐汚染コーティング材が用いられてきている。
【0004】
最も広く知られている方法は、光触媒粒子を用いる方法である。具体的に、光触媒粒子の表面に紫外線を当てると、表面が強い親水性を示すことになる。この状態は、光の照射を止めても数時間から1週間ほど続くが、結局として徐々に光照射前の状態、すなわち、疎水状態に戻る。また、疎水状態に戻ってからも、紫外線を照射すれば直ぐ超親水性のものに早く回復する。換言すれば、光照射を行い続けることなくとも、間欠的な光照射により表面を超親水性の状態に保持でき、しかも、これによる耐汚染性をも保持することができる。しかしながら、光触媒粒子は有機物を分解する特性を有するため、光触媒コーティングを行う前に、熱可塑性樹脂などのプラスチック基材にさらにプライマーコーティングを行う必要があるという欠点がある。
【0005】
加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロ基を含む撥水性コーティング材が、上述した如き汚染を防ぐ上で好適であると言われている。撥水性コーティング材は低い表面張力を有するため、形成された塗膜表面の水滴が下部に移動しながら表面層のホコリを洗い取るという役割を果たすが、その水滴が小さくて重力による移動が不可能な場合には汚れたままで乾いてしまい、局部的な汚染跡を残すという不具合がある。
【0006】
さらに、親水性グラフト混成重合体を塗布する方法が提案されているが、従来の無機質ホコリと水との間の接触角が20〜50°であるのに対し、前記親水性グラフト混成重合体によるコーティング膜の水接触角は30〜40°であるため(例えば、下記の非特許文献1参照)、前記混成重合体は、表面上に積もっている無機質ホコリによる斑点や汚染が効率よく洗い取れなくなる。また、簡単に入手可能な親水性塗料も水接触角が50〜70°となっているため、やはり都心のホコリによる汚染が効率よく取れないという不具合がある。
【0007】
一方、従来の建築外装材、例えば、ビニールサイディングとして、これまで自己洗浄性及び耐汚染性機能を有する製品は市販されていない。上述した如き特性を得る上では耐汚染コーティングが求められるが、ビニールサイディング基材が堅固であるため、従来のロール方式の一般フィルムのように量産することは困難であるという不具合がある。
【0008】
さらに、建築外装材は、通常、押出し段階、成形及び冷却段階及び切断段階などの生産ラインにより製造されるか、あるいは、前記工程の間に別途の工程が選択的に追加された量産ライン、例えば、押出し段階、浮き彫り処理段階、成形及び冷却段階、穿孔段階、張力調節段階及び切断段階といった量産ラインにより製造される。
【0009】
建築外装材に耐汚染性を与えるためには、上述した如き量産工程後に別途のコーティング作業を行う必要があるが、この場合、コーティングのための量産ラインがさらに必要となる。これにより、量産時の歩留まりの低下及び生産コストアップなどの不具合が生じ、結果として、コスト及び作業空間の点から不利になる。
【非特許文献1】Newspaper Daily Chemical Industry,30,1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、上記問題点に鑑みて、親水性基であるヒドロキシ基を有する無機物粒子及びこれと異なる粒径の無機物粒子を混用する場合、初期親水性及び表面粗さ効果による親水性の向上が図れることにより、表面上に形成された雨水膜が下部に移動しながらコーティング層の表面上に付いている汚染物質を効率よく除去するという優れた自己洗浄性が得られることを知見した。
【0011】
さらに、コーティング基材、例えば、建築外装材への侵食性及び低い沸騰点を有する有機溶剤を前記コーティング用組成物の溶媒成分として用いる場合、上述した建築外装材の量産ラインに別途のコーティング工程を追加することなく、いかなる生産段階にでもコーティング組成物を適用することができるということを知見した。
【0012】
そこで、本発明は、優れた自己洗浄性を与えるコーティング用組成物及びその製造方法、この組成物を用いた自己洗浄性基材を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明の他の目的は、前記組成物を用い、建築外装材の量産ラインに新しい量産ラインを追加することなく、耐汚染性及び自己洗浄性を有する建築外装材を製造する方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(a)平均粒径が5〜30nmのヒドロキシ基を有する無機物粒子と、(b)平均粒径が0.2〜5μmのヒドロキシ基を有する無機物粒子と、(c)下記式1で表わされるオルガノシランと、(d)溶媒と、を含むコーティング用組成物及びその製造方法を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、Rは炭素原子数1〜8のアミノアルキル基、グリシドキシアルキル基またはイソシアネートアルキル基であり、R’は炭素原子数1〜6の低級アルキル基であり、nは0〜3の整数である。
【0017】
また、本発明は、(a)基材と、(b)前記基材の片面または両面に前記コーティング用組成物をコーティングしてなるコーティング層と、を含む自己洗浄性基材、好ましくは、フィルムまたは建築外装材を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、(a)冷却段階を経る前の建築外装材の片面または両面をコーティング用組成物によりコーティングする段階と、(b)前記段階(a)においてコーティングされた建築外装材を冷却または切断する段階と、を含む建築外装材の製造方法を提供する。
【0019】
この明細書及び請求範囲に使われている用語のうち、低級とは、炭素原子数6以下、好ましくは、5以下の原子団基または化合物を意味する。
【0020】
低級アルキル基とは、線形または枝状の低級飽和脂肪族炭化水素を意味するが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル及びn−ペンチル基がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るコーティング用組成物は、親水性のヒドロキシ基を有する、平均粒径が相異なる2種以上の無機物粒子を用いることにより、親水性基と表面粗さ効果により得られる優れた自己洗浄性のコーティング層を屋外用フィルム及び建築外装材に提供することができる。また、低い沸騰点を有する有機溶剤を用いることにより、従来の押出し工程により生産されるビニールサイディングをはじめとするあらゆるプラスチック基材を既存の量産ラインにおいて同時にコーティングでき、結果として、コスト及びスペースを節減することができる。
【0022】
そこで、本発明は、既存の通常の屋外用フィルム及び建築外装材に自己洗浄性による汚染防止機能を与えて綺麗な外観を保持することにより、定期的な掃除にかかる手間とコストを節減することができ、本発明に係るコーティング用組成物は、産業的な活用価値が高いものであると期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳述する。
【0024】
1)本発明はコーティング用組成物の構成成分として、ヒドロキシ基を有する2種類以上の相異なる粒径を有する無機物粒子を混用することにより、優れた自己洗浄性を得ることができる。
【0025】
近年、耐汚染性を有する屋外用フィルム及び建築外装材は、主として光触媒粒子または親水性基を導入しているが、この場合、基材を保護可能なプライマー層が求められるか、あるいは、部分的な洗浄による表面斑点などの副作用、短時間の持続性などの不具合があった。
【0026】
これに対し、本発明においては、既存のシリカまたはアルミナなどの無機物粒子を水、アルコールまたはケトンなどの分散液に分散してヒドロキシ基を保持させることにより、水の表面への到達時の水膜形成性及び濡れ性を高め、結果として、親水性を得ることができる。
【0027】
また、上述した親水性基の導入方法の他に、表面粗さ、すなわち、従来のヒドロキシ基を有する特定の無機物粒子よりも平均粒径が大きな粒子を加えて混用することにより、表面粗さによりコーティング層の親水性を一層高めることができる。
【0028】
加えて、前記コーティング用組成物の構成成分であるオルガノシランとの反応により網目構造を形成することにより、上述した親水性と共に耐摩耗性を得ることができる。
【0029】
2)本発明においては、コーティング用組成物の溶媒成分として、コーティング基材、例えば、建築外装材への侵食性及び低い沸騰点を有する有機溶剤を用いて通常のプラスチック基材の表面の一部を多少侵食させることにより、基材とコーティング層が互いに絡んでいる構造を形成する。これにより、自己洗浄性を有するコーティング層が安定的に存在するだけではなく、硬化が起こり易くなり、上述した如き優れた耐汚染性及び自己洗浄性を長時間同時に得ることができる。
【0030】
3)さらに、本発明に係るコーティング用組成物は、従来の建築外装材の生産工程に新しいコーティング量産ラインを追加することなく、いかなる段階にでも簡単に適用可能であるため、コスト及び作用空間の点から高い経済性を図ることができる。
【0031】
すなわち、図1に示すように、従来の建築外装材の量産ラインは、押出し段階、浮き彫り処理段階、成形及び冷却段階、穿孔段階、張力調節段階、切断段階を含む。通常、コーティング作業に当たっては、基材にコーティング後に乾燥及び硬化を行うため、前記建築外装材、例えば、ビニールサイディングにコーティングを行うためにはさらなるコーティング量産ラインが求められる。これにより、さらなる生産設備を設ける必要があり、コストがかかる。
【0032】
本発明においては、上述した建築外装材の生産ラインにさらなる生産設備を設けることなく同時にコーティング作業を行うために、冷却段階前、好ましくは、押出し段階の直後、すなわち、外装材の表面が高温となっているときに上述したコーティング用組成物を用いてコーティングを行う。このとき、コーティング用組成物に含まれている低い沸騰点を有する有機溶剤により、熱または紫外線硬化剤をさらに用いなくとも硬化が起こり易くなるだけではなく、上述した生産ラインのいかなる段階にでもコーティング設備の設置及びコーティングの適用が可能である。
【0033】
本発明に係るコーティング用組成物の構成成分のうち第1の無機物粒子(a)としては、当業界における通常の無機物粒子が使用可能であり、その非制限的な例としては、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、SnO,MgO,CaOまたはこれらの混合体などがある。
【0034】
前記第1の無機物粒子の平均粒径は5〜30nmの範囲であることが好適であり、好ましくは、平均粒径が10〜20nmの範囲である。無機物粒子の平均粒径が5nm未満であれば、高い原料コストのために価格競争力が低下するという不具合があり、30nmを超えると、粒径が大きくなって粒子充填度が下がり、膜の強度が低下する恐れがある。
【0035】
平均粒径が5〜30nmの無機物粒子の含量は、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり1〜15重量%であることが好適であり、特に、3〜10重量%が好ましい。平均粒径が5〜30nmの無機物粒子の含量が1重量%未満であれば、フィルムの膜強度が低下し、15重量%を超えると、コーティング塗膜の形成が正常に行われなくなる。
【0036】
本発明に係るコーティング用組成物の構成成分のうち第2の無機物粒子(b)としては、上述した如き当業界における通常の無機物粒子を用いることができる。第2の無機物粒子の平均粒径は0.2〜5μmの範囲であることが好適であり、1.5〜2μmの平均粒径を有する無機物粒子を用いることが、表面粗さによりコーティング層の親水性を高めることができて好適である。無機物粒子の平均粒径が0.2μm未満であれば、高い原料コストのために価格競争力が低下するという不具合があり、5μmを超えると、コーティング用組成物の保存安定性に不具合が起こる可能性がある。
【0037】
平均粒径が0.2〜5μmの無機物粒子の含量は、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり0.05〜3重量%であることが好適である。平均粒径が0.2〜5μmの無機物粒子の含量が0.05重量%未満であれば、親水性が低下して自己洗浄性が低下し、3重量%を超えると、コーティング膜の亀裂及び剥離などの不具合が生じて好ましくない。
【0038】
上述した如き相異なる平均粒径を有する無機物粒子(a),(b)としては、少なくとも2種またはそれ以上を用いることができる。また、前記無機物粒子は、親水性を高めるために無機物粒子内に親水性官能基を含むことが好ましく、このために、水、アルコールまたはケトンなどの溶媒に分散して用いることが好ましい。
【0039】
本発明に係るコーティング用組成物の構成成分のうち第3の成分は、前記式1で表わされるオルガノシラン(c)である。
【0040】
オルガノシランは親水性シランであって、基材との付着力を高めると共に、上述した如き2種以上の平均粒径を有する無機物粒子と結合して有無機混成ナノ網目構造を形成するため、シラン系カップリング剤として用いられる。
【0041】
前記オルガノシランとしては、テトラアルコキシシランまたは加水分解後にヒドロキシ基の以外の親水性官能基を有するシランを用いることができ、特に、1または2つの親水性官能基を有するシランが好適に用いられる。前記式1において、親水性官能基は化学式1におけるRを意味し、その例としては、グリシドキシアルキル基、アミノアルキル基、イソシアネートアルキル基などが挙げられる。さらに、これらの他にチオール基、アミンオキシド基、スルホキシド基、フォスフェイト基、サルフェート基またはこれらの塩、またはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの親水性基も含むことができる。
【0042】
上記において、親水性シランの非制限的な例としては、N−アミノエチルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリメトキシシランまたはこれらの混合物などがある。
【0043】
オルガノシランの含量は、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり1〜15重量%であることが好適である。オルガノシランの含量が1重量%未満であれば、フィルム塗膜が形成されず、15重量%を超えると、親水性が低下するという不具合がある。
【0044】
本発明に係るコーティング用組成物の構成成分のうち第4番目の成分は溶媒(d)であって、当業界における通常の水、有機溶剤またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0045】
前記溶媒としては、コーティング基材、好ましくは、PVCなどの一般プラスチックに対する溶解度指数(δ)が9.5Mpa0.5以下の有機溶剤を含むものが好適に用いられる。これは、コーティング基材へのコーティング時に多少の侵食性を有することにより、コーティング基材とコーティング層が互いに強固に結合するためである。また、前記溶媒としては、低い沸騰点により硬化を容易に行うために、平均沸騰点(b.p.)が60〜150℃の範囲である1種以上の有機溶剤を含むものが好適に用いられる。
【0046】
使用可能な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールまたはジアセトンアルコールなどの炭素原子数1〜4のアルコールと、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどの炭素原子数1〜5のケトンと、メチルアセテートまたはエチルアセテートなどのアセテートと、炭素原子数4〜6のセロソルブ類と、炭素原子数7の芳香族溶剤類またはこれらの混合物などがあるが、これらに制限されることはない。
【0047】
前記溶媒の含量には特に制限がないが、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり50〜85重量%の範囲であることが好ましい。溶媒の含量が50重量%未満であれば、未硬化が起こる恐れがあり、85重量%を超えると、親水性が低下する恐れがある。
【0048】
本発明に係るコーティング用組成物は、光触媒粒子をさらに含むことができる。
【0049】
光触媒粒子は、触媒に当てられた光エネルギーにより高活性の物質を生成して化学反応を促進する物質であって、バンドギャップエネルギー以上の光を当てると、電子とホールが生成され、これらにより強い酸化−還元反応が起こる。酸化−還元過程中に有機化学物質が無害な2酸化炭素と水に分解されることにより、浮遊粉塵のコーティング層の表面に対する付着力を落とすことができる。また、表面への親水性基同士の縮合による経時的な親水性の低下を防ぐと共に、親水持続性を図ることができる。
【0050】
光触媒粒子の表面に紫外線を当てると、表面が強い親水性を帯びる。この状態は、光照射を止めても数時間ないし1週間ほど持続され、徐々に光照射前の疎水状態に戻る。また、疎水性に戻ってからも、紫外線を当てると直ぐ超親水性に回復される。すなわち、常に光照射を行うことなくとも、間欠的な光照射により表面を超親水性の状態に保持することができる。このため、本発明に係るコーティング用組成物に光触媒粒子を加えてコーティング基材、好ましくは、広告用フィルムまたは建築外装材をコーティングする場合、昼間の太陽光の照射により親水化が起こるだけではなく、親水性を持続的に保持することができる。
【0051】
使用可能な光触媒粒子の非制限的な例としては、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、酸化第二スズ、3酸化タングステン、酸化第2鉄、チタン酸ストロンチウム、ZnO,SnO,SrTiO,WO,Bi,Feまたはこれらの混合体などが挙げられ、中でもチタニア(TiO)が最適である。チタニアは、バンドギャップエネルギーが高いため、光励起時に紫外線を必要とし、光励起中において可視光を吸収しないために補色成分による発色が起こらない。
【0052】
光触媒粒子を励起させるために用いられる光源としては、蛍光灯、白熱電灯、水銀ランプなどの室内照明、太陽などが挙げられる。具体的には、光励起の照度は0.001mW/cm以上であることが好適であり、特に、0.1mW/cmの照度であることが好ましい。
【0053】
前記光触媒粒子の平均粒径は、10〜80nmの範囲であることが好適であり、特に、15〜60nmであることが好ましい。光触媒粒子の平均粒径が10nm未満であれば、高い原料コストにより価格競争力が低下するという不具合があり、80nmを超えると、粒径による光散乱によりフィルムの透明性(白化発生)の不具合が生じる。
【0054】
光触媒粒子の含量は、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり0.1〜3重量%であることが好適である。光触媒粒子の含量が0.1重量%未満であれば、親水性が低下して自己洗浄性が低下し、3重量%を超えると、コーティング膜の亀裂及び剥離などの不具合が生じるために好ましくない。
【0055】
さらに、本発明に係るコーティング用組成物は、下記式2で表わされるアルコキシシラン官能化芳香族紫外線吸収剤の加水分解物をさらに含むことができる。
【0056】
【化2】

【0057】
式中、R及びRは互いに独立的に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、ORはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシまたはアセトキシであり、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基またはアリール基であり、Xは水素またはハロゲン原子であり、lは5〜9の整数であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。
【0058】
上述した如きアルコキシシラン官能化紫外線吸収剤の加水分解物は、オルガノシランと結合してコーティング用組成物の相溶性を極大化させ、且つ、マトリックスシランとの化学結合により長期間に亘っての耐候性を保持可能にする。この紫外線吸収剤の加水分解物の製造方法については、大韓民国特許公開第2000−0009647号公報に開示されている。
【0059】
アルコキシシラン官能化紫外線吸収剤の加水分解物の含量は、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり1〜10重量%であることが好適である。アルコキシシラン官能化紫外線吸収剤の加水分解物の含量が1重量%未満であれば、紫外線の吸収効果が低下し、10重量%を超えると、経済性が落ちるなどの不具合が生じる。
【0060】
本発明に係るコーティング用組成物は、上述した如き成分の他に、酸、硬化剤、ポリウレタン水性エマルジョンまたはその他の添加物などをさらに含むことができる。
【0061】
本発明に係るコーティング用組成物は、当分野における通常の方法により製造することができ、例えば、一実施の形態として、(a)平均粒径が5〜30nmの無機物粒子を分散媒に付加・混合して無機物粒子分散液を得る段階と、(b)前記段階(a)において得られた無機物粒子分散液に平均粒径が0.2〜5μmの無機物粒子、前記式1で表わされるオルガノシラン、酸及び溶媒を混合及び反応させる段階と、(c)前記段階(b)の反応結果物に有機溶剤を加えて反応させる段階と、を含む方法により製造可能である。
【0062】
先ず、1)親水性基であるヒドロキシ基を有する平均粒径5〜30nmの無機物粒子分散液は、前記無機物粒子1〜15重量%と分散媒15〜30重量%を混合して得られる。
【0063】
このとき、無機物粒子の分散液の製造に用いられる分散媒としては、水、アルコール、ケトンなどを用いることができ、以降に用いられる有機溶剤との均一な混合、低い沸騰点による硬化容易性を図ると共に、親水性官能基であるヒドロキシ基を有させるためには、メタノールなどのアルコール類が好適に用いられる。しかし、本発明の範ちゅうを超えない範囲内であれば、通常の溶媒を用いても構わない。
【0064】
ヒドロキシ基を有する無機物粒子分散液の固形分の含量は、10〜40重量%の範囲であることが好適であり、特に、15〜35重量%の固形分を含むことが好ましい。
【0065】
2)得られたヒドロキシ基を有する平均粒径5〜30nmの無機物粒子分散液1〜15重量%とアルコール15〜30重量%に平均粒径が0.2〜5μmの無機物粒子0.05〜2重量%、オルガノシラン1〜10重量%、加水分解触媒としての0.001〜2重量%の酸、溶媒を付加・混合して20〜80℃の温度において1〜48時間ゾルゲル反応させた後、室温まで冷却させる。
【0066】
平均粒径が0.2〜5μmの無機物粒子は、上述した如く、親水性及び表面粗さを調節するために用いることができ、無機物粒子の粒径及び種類には制限がない。
【0067】
反応温度及び時間はそれぞれ20〜80℃及び1〜48時間であることが好適であり、特に、25〜60℃の温度及び5〜24時間であることが好ましい。
【0068】
上記において、酸は反応触媒の役割を果たすものであって、その非制限的な例としては、フルオロ化水素酸、硝酸、塩酸、アセト酸、硫黄酸及びその混合酸などがある。酸の使用量は、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり0.001〜2重量%の範囲であることが好適であるが、これに限定されることはない。酸入り反応物の酸度(pH)は1〜5に調節することが好適である。pHが6以上であれば、基材との付着性が得られないか、あるいは、白化などコーティング性に不具合が生じる恐れがある。
【0069】
3)反応結果物に有機溶剤を加えた後、室温において1時間反応を保持する。
【0070】
前記製造段階において、有機溶剤を加える前の反応結果物に熱硬化性触媒1〜4重量%を加えて用いても構わない。
【0071】
前記熱硬化性触媒は、無機物粒子と結合してナノ網目構造が形成可能にオルガノシランの構造を変え、且つ、90℃における比較的に短い硬化時間(2分)下でも硬化を行う役割を果たす。通常、熱硬化性触媒は塩基性を帯びるため、酸性状態である無機物粒子の分散液に加えるときには、適切な攪拌後、溶解性のある溶媒に対して約10重量%希釈した状態で少量ずつ加えなければ、局部的なゲル化を防ぐことができない。
【0072】
使用可能な熱硬化触媒の非制限的な例としては、アセト酸ナトリウムまたはホルム酸カリウムなどのカルボン酸のアルカリ金属塩と、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテートまたはジメチルアニリンホルメートなどのカルボン酸アミン塩と、テトラメチルアンモニウムアセテート、ベンジルトリメチルアンモニウムアセテートまたはエタノールトリメチルアセテート(コリンアセテート)などのカルボン酸4次アンモニウム塩と、トリエチルアミン、トリエタノールアミンまたはパラフィンなどのアミン、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ水酸化物などがある。
【0073】
熱硬化性触媒の使用量は、本発明に係るコーティング用組成物100重量%当たり1〜10重量%であることが好適である。熱硬化性触媒の使用量が1重量%未満であれば、塗膜の強度が低下し、10重量%を超えると、コーティング液自体の保存安定性が下がるなどの不具合が生じる。
【0074】
上記の製造段階において、有機溶剤を加える前のゾルゲル反応結果物に、前記式2で表わされるアルコキシシラン官能化芳香族紫外線吸収剤の加水分解物1〜10重量%をさらに加えることにより、耐候性を図ることができる。このとき、紫外線吸収剤の加水分解物を加えた後、室温において1〜2時間攪拌することが好適である。また、親水性を高めるために、アミノシラン0.001〜1重量%を加えて親水性を高めることもできる。
【0075】
前記製造段階において、光触媒粒子分散液0.1〜3重量%及び/またはポリウレタン水性エマルジョン1〜10重量%をさらに用いて親水持続性、耐摩耗性及び耐スクラッチ性を高めることもできる。このとき、光触媒粒子分散液は、平均粒径が10〜80nmのチタニア(TiO)と適量の溶媒を用いて製造することができ、その固形分の含量は15重量%であることが好適である。また、ポリウレタン水性エマルジョンとしては、ポリエステルを主鎖として有する水性エマルジョンポリウレタン樹脂を用いることができ、その使用量は、コーティング用組成物100重量%当たり1〜10重量%であることが好ましい。
【0076】
また、上記の製造段階において、コーティング性と滑り性を高めるために、選択的に界面活性剤0.001〜0.5重量%を用いることができ、この以外に、その他の添加剤、すなわち、各種の界面活性剤、耐水性向上剤、酸化防止剤、滑剤、熱吸収剤、着色剤、帯電防止剤または可塑剤などの添加物をさらに用いることができる。必要に応じて、フィルムの平滑性を高めるために、レベリング剤、組成物の表面張力を弱めて基材への濡れ性を改善するための湿潤剤、紫外線吸収剤、均塩剤、輻射線遮断剤(赤外線吸収剤または赤外線反射剤)などの添加剤をさらに含むことができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤または両性イオン界面活性剤のうちいずれか1種以上を用いることができる。
【0077】
このようにして得られたコーティング用組成物の剤型には特に制限がなく、使用の利便性のために、主として液状に剤型化して用いることができる。
【0078】
本発明は、(a)基材と、(b)前記基材の片面または両面に前記コーティング用組成物をコーティングしてなるコーティング層と、を含む自己洗浄性基材を提供する。
【0079】
基材としては、水及び空気を除くあらゆる種類が使用可能であり、このような基材の非制限的な例としては、建築外装材、タイル、プラスチック、ガラス、樹脂、フィルム、セラミック、金属、コンクリート、ファイバ、木、紙、石などがあり、特に、フィルム、樹脂、建築外装材などは、当業界における通常のプラスチックを制限なしに用いることができる。この中でも、フィルムまたは建築外装材が好適に用いられる。
【0080】
基材の表面上に形成された自己洗浄性コーティング層の膜厚には特に制限がなく、0.01〜50μmの範囲であることが好ましい。コーティング層の膜厚が0.01μm未満であれば、膜硬度が不良であり、50μmを超えると、コーティング層の柔軟性が落ちて塗膜に亀裂が生じるなどの不具合がある。
【0081】
本発明に係る自己洗浄性基材の製造方法には特に制限がなく、例えば、コーティング基材の片面または両面を前記コーティング用組成物によりコーティングした後、コーティングされた基材を乾燥することにより製造すれば良い。
【0082】
コーティング用組成物の塗布方法としては、当業界における通常の塗布方法を用いれば良く、特に制限はない。前記塗布法としては、エア−ナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレイ法、浸漬法、ブラシング法、バーコーティング法、スピンコーティング法またはこれらの混合方式を挙げることができる。硬化条件は、60〜150℃下における4秒〜2分であることが好適であるが、特に制限はない。硬化温度が60℃未満であれば、フィルムが完全に乾燥できず、150℃を超えると、コーティングフィルム及び基材に劣化が起こる。
【0083】
また、本発明は、押出し段階を経て得られる建築外装材の製造方法を提供する。前記製造方法は、例えば、(a)冷却段階を経る前の建築外装材の片面または両面をコーティング用組成物によりコーティングする段階と、(b)前記段階(a)においてコーティングされた建築外装材を冷却または切断する段階と、を含んでなる。
【0084】
前記製造方法において注目すべき点は、押出し(a)段階直後の建築外装材の表面温度が約100〜250℃と高温であるため、冷却水に入るまでコーティング層の乾燥及び硬化が行えるという点である。このため、冷却前段階、例えば、押出し段階、浮き彫り処理段階及び成形段階まで、好ましくは、押出し段階直後、すなわち、外装材の表面が100〜250℃の範囲である高温下においてコーティングを行うことが好ましい。しかし、特に前記温度範囲に制限されることはなく、室温において行われても構わない。また、上記方式の他に、建築外装材の全工程、例えば、押出し−浮き彫り処理−成形及び冷却−穿孔−張力調節−切断段階のうちいかなる段階にでも、コーティング設備の設置及びコーティング段階の追加が可能である。
【0085】
上述した如き特徴から、本発明に係る建築外装材の製造方法は、特に熱硬化または紫外線硬化などが不要になるだけではなく、別途のコーティングラインを設置すること、及びその設置のための空間などが不要になる。しかも、従来より用いられる建築外装材、例えば、ビニールサイディングの生産ラインにコーティング段階を簡単に追加することができる。
【0086】
前記製造方法は、押出し工程により得られるあらゆるプラスチック基材に適用可能である。また、前記コーティング用組成物には特に制限がなく、コーティング工程を通じて建築外装材に与えたい物性、例えば、耐汚染性、自己洗浄性、耐候性、耐スクラッチ性またはその他の物性を与えられるコーティング用組成物を用いることができる。特に、前記組成物は、低い沸騰点による硬化発生の容易性及び侵食性による堅固なコーティング層の形成を図るために、平均沸騰点(b.p.)が60〜150℃と低いか、あるいは、溶解度指数(δ)が9.5Mpa0.5以下の有機溶剤を含むことが好ましい。このため、上述した如き有機溶剤成分を含む本発明に係るコーティング用組成物を用いることが好ましく、前記建築外装材が本発明に係るコーティング用組成物により製造される場合、前記コーティング用組成物が目的とする優れた耐汚染性及び自己洗浄性を同時に実現することができる。
【0087】
使用可能なコーティング法は、上述した通りである。得られた建築外装材のコーティング層の膜厚は約0.01〜50μmであることが好適であり、特に、0.5〜20μmであることが好ましい。
【0088】
硬化条件は、押出し段階直後の外装材の表面温度が100〜250℃であり、コーティング後の硬化時間が4秒以上であれば適切である。硬化時間が4秒であり、且つ、硬化温度が100℃以下であれば、フィルムの未乾燥及び未硬化が起こる恐れがあり、250℃を超えると、親水性が低下する。
【0089】
以下、本発明への理解を容易にするために好適な実施例を挙げるが、下記の実施例は単に本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に制限されることはない。
【実施例】
【0090】
製造例.アルコキシシラン官能化芳香族紫外線吸収剤の加水分解物の合成
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としてのチヌビン1130(Tinuvin 1130、チバガイギ社製)30.5重量%及びアセトン42重量%を混合して反応器の内部に入れ、反応器の内部温度を55〜57℃に保持しながら攪拌した。この混合物にγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン11.5重量%を30分間滴下した後、55〜57℃の温度において90分間反応させた。次いで、ここにグリシドキシプロピルトリメトキシシラン11重量%を加え、55〜57℃において30分間反応させた。この溶液に水5重量%を入れ、55〜57℃の温度において2時間反応させることにより、アルコキシシラン官能化紫外線吸収剤の加水分解物が得られた。このとき、得られた加水分解物の固形分の含量は52%であった。
【0091】
[実施例1−7].コーティング用組成物、これを用いた広告紙及び建築外装材の製造
実施例1
1−1.コーティング用組成物
固形分の含量が30%である平均粒径10〜20nmのメタノール分散シリカ分散液(MA−ST,イルサン化学社製)9重量%(シリカ2.7重量%とメタノール6.3重量%)及び平均粒径が1.7μmのシリカ粒子(ファインシールT−32,トクヤマ社製)0.09重量%、10%濃度の硝酸0.01重量%、水1.01重量%、メタノール18重量%、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.89重量%を入れ、50℃において24時間反応を行った後、室温においてエチルアセテート(EA)10重量%、メチルエチルケトン(MEK)54.5重量%、トルエン5重量%を次第に入れた後、1時間攪拌してコーティング用組成物を得た。
【0092】
1−2.耐汚染性建築用外装材の製作
前記実施例1に従い得られたコーティング用組成物を、ビニールサイディングの量産ラインの浮き彫り処理段階の直後に(LG化学社、LGサイドオン)、スプレイコーティング方法を用いて乾燥厚さが2μmになるようにコーティングすることにより、耐汚染ビニールサイディングを得た。
【0093】
実施例2
浮き彫り処理に代えて、室温においてビニールサイディング基材(LG化学社、LGサイドオン)にコーティングを行った以外は、前記実施例1の方法と同様にして耐汚染性ビニールサイディングを得た。
【0094】
実施例3
3−1.コーティング用組成物の製造
固形分の含量が20%の平均粒径20nmの水分散シリカ分散液(ST−C、イルサン化学社製)32重量%(シリカ6.4重量%と水25.6重量%)及び平均粒径が1.7μmのシリカ粒子(ファインシールT−32、トクヤマ社製)0.56重量%、67%濃度の硝酸0.05重量%、水60.62重量%、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.48重量%、熱硬化性触媒としてのエチレンジアミン0.37重量%とコリンアセテート1.92重量%を入れ、室温において3時間攪拌することによりコーティング用組成物を得た。
【0095】
3−2.広告紙の製作
前記実施例3−1に従い得られたコーティング用組成物を、白色PVC広告紙(LG化学社、Hi−Cast)にバーコーティング法を用いて乾燥厚さが1μmになるようにコーティングした後、90℃において2分間硬化することにより広告紙を製作した。
【0096】
実施例4
4−1.コーティング用組成物の製造
固形分の含量が20%である平均粒径20nmの水分散シリカ分散液(ST−C、イルサン化学社製)32重量%(シリカ6.4重量%とメタノール25.6重量%)及び平均粒径が1.7μmのシリカ粒子(ファインシールT−32、トクヤマ社製)0.56重量%、67%濃度の硝酸0.05重量%、水40.62重量%、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.48重量%、熱硬化性触媒としてのエチレンジアミン0.37重量%とコリンアセテート1.92重量%を入れ、室温において3時間攪拌することによりコーティング用組成物を得た。ここに固形分の含量が15%である平均粒径40nmのチタニア(ST−21、イサハラ産業社製)水分散液20重量%(TiO3重量%、水17重量%)を混合してコーティング用組成物を得た。
【0097】
4−2.広告紙の製作
前記実施例4−1に従い得られたコーティング用組成物を用いた以外は、前記実施例3−2の方法と同様にして広告紙を製作した。
【0098】
実施例5
5−1.コーティング用組成物の製造
固形分の含量が20%である平均粒径20nmの水分散シリカ分散液(ST−C、イルサン化学社製)32重量%(シリカ6.4重量%と水25.6重量%)及び平均粒径が1.7μmのシリカ粒子(ファインシールT−32、トクヤマ社製)0.56重量%、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.48重量%、67%濃度の硝酸0.05重量%と水31.5重量%を反応器に入れた後、50℃において24時間反応を保持した。次いで、室温まで冷却して熱硬化性触媒としてのエチレンジアミン0.37重量%とコリンアセテート1.92重量%を入れ、室温において3時間攪拌した。この溶液にアミノプロピルエトキシシラン0.28重量%、界面活性剤(BYK333、BYKケミー社製)0.19重量%及びメチルセロソルブ4.16重量%を入れた後に室温において1時間攪拌し、ここに固形分の含量が15%である平均粒径40nmのチタニア(ST−21、イサハラ産業社製)水分散液20重量%(TiO3重量%、水17重量%)、10%固形分のポリウレタン樹脂(PESA160−P、タカマツ社製)3重量%及び前記製造例に従い得られた紫外線吸収剤1.5重量%を混合することにより、コーティング用組成物を得た。
【0099】
5−2.広告紙の製作
前記実施例5−1に従い得られたコーティング用組成物を用いた以外は、前記実施例3−2の方法と同様にして広告紙を製作した。
【0100】
実施例6
6−1.コーティング用組成物の製造
平均粒径が1.7μmのシリカに代えて、平均粒径が3μmのシリカ粒子を用いた以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物を得た。
【0101】
6−2.広告紙の製作
前記実施例6−1に従い得られたコーティング用組成物を用いた以外は、前記実施例3−2の方法と同様にして広告紙を製作した。
【0102】
実施例7
7−1.コーティング用組成物の製造
平均粒径が1.7μmのシリカ粒子0.56重量%及び水31.5重量%に代えて、平均粒径が1.7μmのシリカ粒子1.12重量%及び水30.94重量%を用いた以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物を得た。
【0103】
7−2.広告紙の製作
前記実施例7−1に従い得られたコーティング用組成物を用いた以外は、前記実施例3−2の方法と同様にして広告紙を製作した。
【0104】
[比較例1−9].コーティング用組成物、これを用いた広告紙及び外装材の製造
比較例1
平均粒径が10〜20nmのシリカを使用しなかった以外は、前記実施例1の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いたビニールサイディングを製作した。
【0105】
比較例2
平均粒径1.7μmのシリカを使用しなかった以外は、前記実施例1の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いたコーティングされたビニールサイディングを製造した。
【0106】
比較例3
溶剤として水10%とエタノール90%を用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いたコーティングされたビニールサイディングを製造した。
【0107】
比較例4
固形分の含量が15%である平均粒径40nmのシリカ(ST−21、イサハラ産業社製)水分散液20重量%を使用しなかった以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いた広告紙を製造した。
【0108】
比較例5
平均粒径20nmのシリカを使用しなかった以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いた広告紙を製造した。
【0109】
比較例6
紫外線吸収剤の加水分解物を使用しなかった以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いた広告紙を製造した。
【0110】
比較例7
平均粒径が20nmのシリカ粒子に代えて、平均粒径が90nmのシリカ粒子を用いた以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いた広告紙を製造した。
【0111】
比較例8
固形分の含量が15%であるシリカ水分散液20重量%に代えて、同光触媒粒子水分散液40重量%(TiO6重量%及び水34重量%)を用いた以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いた広告紙を製造した。
【0112】
比較例9
平均粒径が20nmのシリカ粒子と平均粒径が1.7μmのシリカを使用しなかった以外は、前記実施例5の方法と同様にしてコーティング用組成物及び前記組成物を用いた広告紙を製造した。
【0113】
実験例1.親水性及び親水持続性の評価
本発明に係るコーティング用組成物を用いて製造された広告紙及び建築用外装材の親水性及び親水持続性を評価するために、下記の如き測定を行った。
【0114】
クルス社の接触角測定器により測定し、各試料をそれぞれ屋外に配置した後、1ヶ月、3ヶ月及び6ヶ月経過後にこれらの表面接触角を測定した。
【0115】
1−1.建築用外装材
試料としては、前記実施例1、実施例2及び比較例1〜3に従い製造されたビニールサイディングが用いられ、前記方法により測定された結果を下記表1に示す。
【0116】
実験の結果,平均粒径が相異なる無機物粒子のうち10〜20nm粒子を使用しなかったコーティング用組成物を用いて製造された比較例1のビニールサイディングと、溶剤の組成を調整した比較例3のビニールサイディングは、低い親水性を有することが分かった(表1参照)。特に、比較例1の場合には、ナノシリカ粒子の表面の親水性基による親水性効果がないことが分かった。さらに、比較例3のビニールサイディングの場合、高い沸騰点(b.p.)または低い侵食性のために基材上にコーティング層が正常に形成されず、その結果、親水性に劣っていると判断される。さらに、1.7μmのシリカを使用しなかった比較例2のビニールサイディングは、実施例1の場合よりも親水性に劣っていることが分かる。これは、シリカ粒子の表面の親水性基と表面粗さの低下によるものであると判断される。
【0117】
これに対し,実施例1及び実施例2に従い得られた組成物によりコーティングされたビニールサイディングは、初期親水性が最も高いだけではなく、親水持続性にも優れていることが確認できた(表1)。
【0118】
【表1】

【0119】
1−2.広告紙
試料としては、前記実施例3〜7及び比較例4〜9に従い製造された広告紙が用いられ、前記方法により測定された結果を下記表2に示す。
【0120】
実験の結果、光触媒粒子を使用しなかったコーティング用組成物を用いてそれぞれ製造された実施例3及び比較例4,5,9の広告紙は、約22〜60°の水接触角を示し、これを除く全ての広告紙は5°以下の水接触角を示した。特に、本発明の平均粒径が相異なる2種の無機物粒子のうちいずれか1種を用いず、且つ、光触媒粒子を使用しなかった比較例9の広告紙は、光触媒粒子のみ使用しなかった比較例5の広告紙に比べて初期親水性のみならず、親水持続性が最も低かった。これは、平均粒径が相異なる2種の無機物粒子が親水性及び親水持続性の影響因子であることを意味する。
【0121】
これより、本発明に係るコーティング用組成物は優れた親水性及び親水持続性を示すことが確認できた(表2参照)。
【0122】
【表2】

【0123】
実験例2.自己洗浄性の評価
本発明に係るコーティング用組成物を用いて製造された広告紙及び建築用外装材の自己洗浄性を評価するために、下記の如き測定を行った。
【0124】
測定方法としては、平均粒径が10μmの土砂を固形分5%として水に分散した後、試料としてのビニールサイディングまたは広告紙に吹き付け、乾燥後、蒸留水によりさらに吹き付けを行った。6ヶ月経過後、広告紙の表面に残存する土砂量を目視で観察し、土砂量による汚染を基準として優秀(きれいである)、良好(やや汚れている)、不十分(汚れている)、不良(とても汚れている)に区分して示す。
【0125】
2−1.建築用外装材
試料としては、前記実施例1、実施例2及び比較例1〜3に従い製造されたビニールサイディングが用いられ、上記の方法により測定された結果を下記表3に示す。
【0126】
実験の結果、全体的に既に評価済みの親水性及び親水持続性の結果とほとんど同様であり、特に、平均粒径が相異なる無機物粒子のうち10〜20nm粒子を使用しなかったコーティング用組成物を用いて製造された比較例1のビニールサイディングは、不良な自己洗浄性を示すことが分かった。これに対し、実施例1と実施例2に従い製造されたビニールサイディングは、優れた自己洗浄性を有することが確認できた(表3参照)。
【0127】
【表3】

【0128】
2−2.広告紙
試料としては、前記実施例3〜7及び比較例4〜9に従い製造された広告紙が用いられ、前記方法により測定された結果を下記表4に示す。
【0129】
実験の結果、光触媒粒子を使用しなかったコーティング用組成物を用いて製造された実施例3と比較例4の広告紙は、不十分な自己洗浄性を示した。また、光触媒粒子を用い、且つ、平均粒径が1.7μmの無機物粒子を使用しなかった比較例5の広告紙は良好な自己洗浄性を示し、そして、光触媒粒子と平均粒径が相異なる無機物粒子のうちいずれか1つを使用しなかった比較例9の広告紙は、不良な自己洗浄性を示した。これは、平均粒径が1種類である無機物粒子を用いたコーティング用組成物は、ヒドロキシ基による親水性は見られるものの、表面粗さによる親水性の向上が有意的に起こらず、自己洗浄性が低下することを意味する。これに対し、2種の平均粒径を有する無機物粒子を用いた本発明に係るコーティング用組成物は、優れた自己洗浄性を有することが確認できた(表4参照)。
【0130】
【表4】

【0131】
実験例3.耐候性の評価
本発明に係るコーティング用組成物を用いて製造された広告紙及び建築用外装材の耐候性を評価するために、下記の如き測定を行った。
【0132】
試料としてのビニールサイディングまたは広告紙に対し、QUV加速化耐候試験器(UVB313ランプ、60℃)を用いて1000時間試験を行った後、黄変度(ΔYellow Index)及び亀裂の発生有無を測定した。
【0133】
3−1.建築用外装材
試料としては前記実施例1、実施例2及び比較例1〜3に従い製造されたビニールサイディングが用いられ、前記方法により測定された結果を下記表5に示す。
【0134】
実験の結果、実施例及び比較例に従い製造された全てのビニールサイディングには亀裂の発生が見られず、比較的に優れた黄変度を有することが分かった(表5参照)。
【0135】
【表5】

【0136】
3−2.広告紙
試料としては、実施例3〜7及び比較例4〜9に従い製造された広告紙が用いられ、前記方法により測定された結果を下記表6に示す。
【0137】
実験の結果、本発明に従い実施例3〜7及び比較例4〜9に従い得られたコーティング用組成物によりコーティングされた広告紙はいずれも比較的に優れた黄変度を示した(表6参照)。これらのうち、紫外線吸収剤を使用しなかった実施例3、実施例4及び比較例6のコーティング用組成物によりコーティングされた広告紙は多少高い黄変度を示したが、他の物性、すなわち、耐候性低下の徴候は示さなかった。
【0138】
これより、本発明に係るコーティング用組成物を用いて製造された広告紙は優れた自己洗浄性を有すると共に、優れた耐候性を有することが確認できた。
【0139】
【表6】

【0140】
実験例4.耐スクラッチ性の評価
本発明に係るコーティング用組成物を用いて製造された建築用外装材及び広告紙の耐スクラッチ性を評価するために、下記の如き測定を行った。
【0141】
試料としては、実施例1、実施例2及び比較例1〜3に従い製造されたビニールサイディングが用いられ、測定方法としては、スチールウール(#0000)テストを行うことにより、200gの荷重におけるスクラッチの発生時点の回数を測定するという方法を用いた。その結果を下記表7に示す。
【0142】
実験の結果、平均粒径が相異なる2種の無機物粒子のうち10〜20nmのシリカ粒子を使用しなかったコーティング用組成物を用いて製造された比較例1のビニールサイディングと有機溶剤の組成を変えた比較例3のビニールサイディングは、耐スクラッチ性に劣っていることを確認できた。これは、有機溶剤が高い沸騰点(b.p.)または低い侵食性を有するためにビニールサイディング基材上にコーティング層の網目構造が正常に形成されず、その結果、低い耐スクラッチ性を示すということを意味する。
【0143】
これに対し、実施例1及び2に従い製造されたビニールサイディングは、優れた耐スクラッチ性を示すことが確認できた(表7参照)。
【0144】
【表7】

【0145】
実験例5.濁度の評価
本発明に従い得られたコーティング用組成物の濁度の評価を下記のようにして行った。
【0146】
試料としては、前記実施例3〜7及び比較例4〜9に従い製造された広告紙が用いられた。測定は、試料としての透明なPVCフィルムに対し、ASTMD−1003法により反射・透過測定器(HR−100、ムラカミ社製)を用いて入射光に対する透過光の散乱の度合い、すなわち、濁度を測定することにより行われた。その結果を下記表8に示す。
【0147】
一般に、眩しさの防止効果を得るためには光沢度を低めると共に、濁度を高める必要がある。視認性の側面から、屋外用広告材の濁度は20%まで許容されると言われている。
【0148】
実験の結果、本発明に従い得られたコーティング用組成物によりコーティングされた実施例5の広告紙は濁度が約10であるのに対し、比較例により製造された広告紙は5〜20の値を有することが確認できた(表8参照)。
【0149】
【表8】

【0150】
実験例6.光沢度の評価
本発明に従い得られたコーティング用組成物の光沢度の評価を下記のようにして行った。
【0151】
試料としては、前記実施例3〜7及び比較例4〜9に従い製造された広告紙が用いられ、測定方法としては、試料としての透明なPVCフィルムに対し、BYKガードナー社の光沢度測定器を用いて60°入射光に対する60°反射光の相対値を測定することにより、表面の光沢度を測定するという方法を用いた。その結果を下記表9に示す。
【0152】
通常、光沢度は、表面の光沢度に応じて有光(80%以上)、半光(40〜80%)、無光(40%以下)に分類される。眩しさの防止効果を与えるためには、光沢度が20〜40%の値を有することが好ましい。
【0153】
実験の結果、本発明に従い得られたコーティング用組成物によりコーティングされた広告紙は、優れた光沢度を有することが確認できた(表9参照)。
【0154】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】従来の建築外装材の通常の製造工程(押出し段階、浮き彫り処理段階、成形及び冷却段階、穿孔段階、張力調節段階及び切断段階)の一実施の形態を示す模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均粒径が5〜30nmのヒドロキシ基を有する無機物粒子と、
(b)平均粒径が0.2〜5μmのヒドロキシ基を有する無機物粒子と、
(c)下記式(I)で表わされるオルガノシランと、
(d)溶媒と、
を含むコーティング用組成物:
【化1】

式中、Rは炭素原子数1〜8のアミノアルキル基、グリシドキシアルキル基またはイソシアネートアルキル基であり、R’は炭素原子数1〜6の低級アルキル基であり、nは0〜3の整数である。
【請求項2】
前記コーティング用組成物は、光触媒粒子をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コーティング用組成物は、下記式(II)で表わされるアルコキシシラン官能化芳香族紫外線吸収剤の加水分解物をさらに含む請求項1に記載のコーティング用組成物:
【化2】

式中、R及びRは互いに独立的に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、ORはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシまたはアセトキシであり、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基またはアリール基であり、Xは水素またはハロゲン原子であり、lは5〜9の整数であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。
【請求項4】
前記溶媒は、平均沸騰点(b.p.)が60〜150℃の範囲にある1種以上の有機溶剤を含む請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、プラスチックへの溶解度指数(δ)が9.5Mpa0.5以下の有機溶剤を含む請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項6】
(a)平均粒径が5〜30nmのヒドロキシ基を有する無機物粒子15重量%と、
(b)平均粒径が0.2〜5μmのヒドロキシ基を有する無機物粒子0.05〜3重量%と、
(c)オルガノシラン1〜15重量%と、
(d)溶媒50〜85重量%と、
を含む請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項7】
前記組成物は、
(a)光触媒粒子0.1〜3重量%と、
(b)請求項3に記載のアルコキシシラン官能化芳香族紫外線吸収剤の加水分解物1〜10重量%と、
(c)酸0.001〜2重量%と、
(d)熱硬化触媒1〜10重量%と、
(e)ポリウレタン水性エマルジョン1〜10重量%と、
をさらに含む請求項6に記載のコーティング用組成物。
【請求項8】
(a)基材と、
(b)前記基材の片面または両面に請求項1ないし7のうちいずれかに記載のコーティング用組成物をコーティングしてなるコーティング層と、
を含む自己洗浄性基材。
【請求項9】
前記基材は、フィルム、建築外装材、タイル、プラスチック、ガラス、樹脂、セラミック、金属、コンクリート、ファイバ、木、紙及び石よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の自己洗浄性基材。
【請求項10】
前記コーティング層の膜厚は、0.01〜50μmの範囲である請求項8に記載の自己洗浄性基材。
【請求項11】
(a)平均粒径が5〜30nmの無機物粒子を分散媒に加えて混合することにより、無機物粒子分散液を得る段階と、
(b)前記段階(a)において得られた無機物粒子分散液に平均粒径が0.2〜5μmの無機物粒子、下記式(I)で表わされるオルガノシラン、酸及び溶媒を混合・反応させる段階と、
(c)前記段階(b)における反応結果物に有機溶剤を加える段階と、
を含む自己洗浄性を有するコーティング用組成物の製造方法:
【化3】

式中、Rは炭素原子数1〜8のアミノアルキル基、グリシドキシアルキル基またはイソシアネートアルキル基であり、R’は炭素原子数1〜6の低級アルキル基であり、nは0〜3の整数である。
【請求項12】
前記段階(a)及び段階(b)における分散媒または溶媒は、水、アルコール及びケトンよりなる群から選ばれた1種以上である請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記製造方法は、
(i)前記段階(b)及び段階(c)の間に、段階(b)における反応結果物に熱硬化触媒を加えて反応させる段階と、
(ii)前記段階(b)と段階(c)との間に、段階(b)における反応結果物に下記式(II)で表わされるアルコキシシラン官能化芳香族紫外線吸収剤の加水分解物を加えて反応させる段階と、
(iii)前記段階(c)において、光触媒粒子分散液及び/またはポリウレタン水性エマルジョンを加える段階と、
よりなる群から選ばれた少なくとも1つの段階をさらに含む請求項11に記載の製造方法:
【化4】

式中、R及びRは互いに独立的に炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、ORはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシまたはアセトキシであり、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基またはアリール基であり、Xは水素またはハロゲン原子であり、lは5〜9の整数であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。
【請求項14】
(a)冷却段階を経る前の建築外装材の片面または両面をコーティング用組成物によりコーティングする段階と、
(b)前記段階(a)においてコーティングされた建築外装材を冷却または切断する段階と、
を含む建築外装材の製造方法。
【請求項15】
前記建築外装材は、押出し段階、浮き彫り処理段階及び成形段階よりなる群から選ばれたいずれか1種以上の段階を経たプラスチック基材であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記段階(a)における建築外装材の表面温度は、100〜250℃である請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記コーティング用組成物は、請求項1〜7のうちいずれかに記載の自己洗浄性コーティング用組成物であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−506831(P2008−506831A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522412(P2007−522412)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002038
【国際公開番号】WO2006/031012
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】