説明

自己組織化ペプチド主体の構造体および当該構造体の自己組織化を制御する方法

自己組織化ペプチドの熱力学的性質を変化させると様々な形態を作り出すことができる。環境因子を変化させることにより、自己組織化プロセスの開始および進展を変化させ、それにより得られる構造体の形態を変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年3月22日に出願された米国仮特許出願第60/366,826号、2003年10月23日に出願された同第60/420,746号、および2003年3月21日に出願された同速達郵便ラベル番号EV269328445USの利益を請求するものであり、これらはその全体が援用されて本明細書の一部となる。
【0002】
技術分野
本発明は、一般にペプチドに関し、特に自己組織化ペプチド主体の(self-assembling-peptide-based)構造体および当該構造体の自己組織化(self-assembly)を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
近年、ナノテクノロジーは様々な理由から大きな関心を集めてきた。例えばナノ構造体を使用すると、分子レベルで装置を作製し、それにより分子レベルで探索を実施することが可能になる。特に、コネクタ、ワイヤおよびアクチュエータのためにフィブリルを使用できることが示唆されている。さらに、生体系またはその他の系内に小さなタンパク質を導入するための超小型ピペットとしてナノチューブを使用できることが示唆されている。
【0004】
ナノチューブは、緻密に制御された高エネルギーの動力学的プロセス(high-energy kinetic process)を通して作製でき、そこでは、グラファイト主体の構造体(例えば、バッキーチューブ)が極めて高温で形成される。しかし、これらの動力学的プロセスの結果を予測するのはしばしば困難であり、そして、得られる構造体は不均質になる傾向がある。
【0005】
グラファイト主体の構造体に関連する相対的に予測不能な動力学的プロセスを考えると、均質に作製でき、複雑な動力学的プロセスを必要としない頑丈なナノ構造に対する要求が産業界には存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示は、自己組織化ペプチド主体の構造体および当該構造の自己組織化を制御する方法を提供する。
【0007】
手短に説明すると、構築物において、1つの実施形態は、自己組織化プロセス中の環境における変化を制御した結果として作り出されるフィブリルまたはナノチューブ構造体である。
【0008】
本開示は、さらにまた自己組織化ペプチド主体の構造の自己組織化を制御する方法を提供する。
【0009】
これに関連して、本方法の1つの実施形態は、制御された環境内に自己組織化ペプチドを配置するステップと、該環境を制御することにより自己組織化プロセスの開始および進展を制御するステップと、を含む。
【0010】
その他のシステム、方法、特徴および利点は、添付図面および詳細な説明を調査すれば当業者には明白であろうし、または明白になるであろう。そのようなすべての追加のシステム、方法、特徴および利点はこの明細書の範囲内に含まれることが意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好もしい実施形態の詳細な説明
本開示の多数の態様は、添付図面を参照することにより、より明確に理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも縮尺表示されておらず、むしろ本発明の原理を明瞭に示すことに重点が置かれている。さらにこれらの図面では、同様の参照数字はいくつかの図にわたって対応する部分を示している。
【0012】
ここで図面に例示した実施形態の説明を詳細に参照する。いくつかの実施形態をこれらの図面と結び付けて記載したが、本発明を本明細書に開示した1つ以上の実施形態に限定することは意図されていない。これとは反対に、すべての代替形態、変更形態および同等形態を含むことが意図されている。
【0013】
一定のペプチドが熱力学的プロセスを通してペプチド主体の様々な構造体に自己組織化することは知られている。これらの自己組織化ペプチドの環境を操作することによって、自己組織化の核生成および進展を制御することができる。その結果として、環境因子を操作すると、自己組織化構造体の形態を予測可能に制御することができる。高エネルギーの動力学的プロセスを必要とするグラファイト主体の構造体とは相違して、これらの自己組織化ペプチドは熱力学的プロセスを通して自身で組織化するので、自己組織化ペプチドを使用することは有益である。これに関連して、得られるペプチド主体の構造体は間接費をほとんど必要としない。
【0014】
自己組織化ペプチドを使用することのまた別の利点は、比較的粗く構造化される脂質主体の構造体とは相違して、得られるペプチド主体の構造体の構造的完全性は、該構造体を規定するバックボーンに沿った水素(H)結合のために相当に頑丈であることにある。これに関連して、ペプチド主体の構造体は脂質主体の構造体およびグラファイト主体の構造のどちらよりも優れた明確な利点を持っている。
【0015】
以下の説明は、ペプチド主体の構造体を形成する際の核生成および進展を制御することにより、得られるペプチド主体の構造体の形態を制御する方法を提供する。一般的な意味で、自己組織化は十分に定義され均質な構造が形成される制御された環境を提供する。以下の説明では、核生成および形成の進展に影響を及ぼす環境因子を制御した結果として形成できる実施例の構築物を単に略述する。
【0016】
図1は、1つの例示であるアミロイドフィブリル10の構造を示した図である。詳細には、図1は、積層化しており、そして凝集体内でフィブリル10を形成する複数のβシートを有するAβ(10〜35)(配列番号1のアミノ酸残基10〜35)フィブリルを示している。図1に示したように、隣接残基間の水素結合(H結合)は複数枚のシートの積層化を生じさせる。H結合はさらに、フィブリル10の構造を安定化させる。フィブリル10を含むセグメントの長さに依存して、これらのセグメント間のH結合の作用は相違することがある。H結合は図1に示したようにフィブリル10の湾曲に寄与するので、これらのセグメントの長さはさらにフィブリル10の湾曲度に寄与し、それによりさらにフィブリルから形成できる構造体の形態に影響を及ぼす。まだ正確な機序は完全には理解されていないが、トポロジーが繊維セグメントの長さと相関していることは明白である。これはAβ(10〜35)(配列番号1のアミノ酸残基10〜35)およびAβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)から結果として生じるトポロジーが相違することによって証明されており、これについては2003年3月21日に出願(速達郵便の郵送ラベル番号EV269328445)された米国仮特許出願明細書に十分に記載されているLuらによる論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly(ナノチューブ自己組織化のためのアミロイドフィブリル積層化を調査する)」の中でより詳細に記載されている。この観察所見を前提にすると、1つの実施形態では、自己組織化構造体の構成は、成分の繊維セグメントの長さを変更することにより変化させることができるのは明白である。
【0017】
アミロイドフィブリル10の成分の構造については、図1のアミロイドフィブリル10内の積層状βシート100を示した図である図2および3において極めて詳細に考察されている。図2に示したように、Aβ(10〜35)(配列番号1のアミノ酸残基10〜35)内のβシート100a...100fは、H結合のために相互に平行に整列している。これらのシートは、図3に示したように、繊維セグメントのバックボーンに沿ったH結合の形成の結果として生じた引力および反発力によって支配される比較的固定されたシート間隔(D)を有する。さらに、βシート100g、100hに沿った残基205a...205dは、これらの引力および反発力のために相当に組織化された方法で配列されている。以下に提供する理由から、これらの残基205a...205dは、例えばフィブリル形成の核生成および進展に影響を及ぼす金属イオン等の物質の結合部位を提供することができる。
【0018】
環境の酸性度(pH)を(例えば約2〜約7.5の間で)変化させると、引力および反発力の変化が生じる。上記に記載したように、自己組織化ペプチド主体の構造体は成分セグメント間に形成されたH結合に基づいていると思われるので、実質的なH+含量の変化であるpHの変化は形態学的変化を生じさせる。典型的には、形成速度はpHが低いと低下し、pHが高いと上昇する。これに関連して、また別の実施形態では、得られる形態は、自己組織化プロセスが起こる環境のpHを変えることにより変化させることができる。非限定的例として、約2.0のpHは、比較的均質な自己組織化構造体を提供するが、他方、より中性のpH(例えば、約7.0〜約7.4)は、相当に不均質な自己組織化構造体を提供する可能性がある。形態における変化は、2002年3月22日に出願された米国仮特許出願明細書第60/366,826号の中で十分に記載されたBurkothらによる「Structure of the β-Amyloid(10-35)(amino acid residues 10-35 of SEQ ID NO:1)Fibril(βアミロイド(10〜35)(配列番号1のアミノ酸残基10〜35)フィブリルの構造)」、2003年10月23日に出願された米国仮特許出願明細書第60/420,746号の中で十分に記載されたMorganらによる「Metal Switch for Amyloid Formation: Insight into the Structure of the Nucleus(アミロイド形成のための金属スイッチ:核の構造についての洞察)」、および「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」に提示された様々な形態を比較することによって明らかになる。
【0019】
図4は、図2の積層状構造内の2本のβストランド間の潜在的金属イオン結合部位を示した図である。図4に示したように、βストランド120a、120bは、βストランド120a、120b内および120a、120b間のH結合の結果として特別な構成で配置されている残基305a...305dを有する。そこで、得られる構成は、金属イオン410aに結合できる2本のβストランド120a、120b間の隣接残基305a、305cに極めて近接する潜在的結合部位を生じさせる。金属イオンに起因する引力および反発力の変化は、さらにまた、得られるペプチド主体の構造体の形態にも寄与する可能性がある。さらに、金属イオンの存在は、成分セグメントを予備組織化させることにより自己組織化プロセスを促進する可能性がある。そこで、また別の実施形態では、自己組織化構造体の構成は、環境内の金属含量を変更し、それによって、得られる自己組織化構造体を形成する際の自己組織化ペプチドが相互作用する方法に影響を及ぼすことによって変化させることができる。自己組織化の核生成および進展に関連する詳細について図5Aおよび5Bを参照しながら説明するが、これは論文「Metal Switch for Amyloid Formation: Insight into the Structure of the Nucleus」にも記載されている。
【0020】
図5Aは、Aβ(10〜21)(配列番号1のアミノ酸残基10〜21)についての金属イオン含量の関数としての正規化したフィブリル形成速度を示しているグラフ500である。詳細には、図5Aではグラフ500のy軸510上には正規化したフィブリル形成速度、そしてx軸520上には時間がプロットされている。図5Aの実施例では、金属イオンは、塩化亜鉛(ZnCl2)として自己組織化ペプチドの環境内に導入される亜鉛イオン(Zn+2)である。図5Aに示したように、Aβ(10〜21)(配列番号1のアミノ酸残基10〜21)はZnCl2の不在下では比較的緩徐な速度で自己組織化する。これに比較して、ZnCl2の存在下では、Aβ(10〜21)(配列番号1のアミノ酸残基10〜21)は相当に迅速な速度で自己組織化し、自己組織化構造体を形成する。
【0021】
図5Bは、修飾アミノ酸残基13を有するAβ(10〜21)であるAβ(10〜21)H13Q(配列番号3)についての金属イオン含量の関数としての正規化したフィブリル形成速度を示しているグラフ505である。詳細には、図5Bではグラフ505のy軸510上には正規化したフィブリル形成速度、そしてx軸520上には時間がプロットされている。さらに、Zn+2が金属イオンとして使用されている。図5Bに示したように、Aβ(10〜21)H13Q(配列番号3)は、亜鉛イオンの不在下でさえアミロイド形成に向かうより大きな性質を示す。そこで、Aβ(10〜21)H13Q(配列番号3)については、核生成期間は図5Bではほとんど検出できないほど大きく短縮された。図5Bに示したように、Aβ(10〜21)H13Q(配列番号3)についての自己組織化の速度はZnCl2の不在下よりZnCl2の存在下の方が比較的速い。図5Aまたは5Bには示されていないが、自己組織化の核生成(または活性化)は自己組織化ペプチドの環境内へZn+2ではなく銅(Cu+2)を導入することによって阻害される。
【0022】
図5Aおよび5Bの副産物として起こる結果は論文「Metal Switch for Amyloid Formation: Insight into the Structure of the Nucleus」の中でより詳細に考察されているので、ここではZnCl2がAβ(10〜21)(配列番号1のアミノ酸残基10〜21)に及ぼす効果について一部のみ考察する。しかし、2枚のグラフ500、505によって証明されるように、より一般的な意味において、金属イオンの存在は、正確なペプチド配列とは無関係に自己組織化プロセスの核生成(または活性化)および進展に影響を及ぼすことが理解されなければならない。さらに、図5Aおよび5Bによって証明されるように、自己組織化プロセスの核生成および進展は、該ペプチドの一定のセグメントを修飾することによって変化させることができる。これに関連して、また別の方法の実施形態には自己組織化プロセスの核生成および進展に影響を及ぼすためにペプチド内のセグメントを変化させるステップが含まれる。図5Aおよび5Bは特異的な核生成エレメントおよび阻害エレメントとして金属イオンを示しているが、核生成エレメントまたは阻害エレメントとして他の物質も使用できることが理解されなければならない。例えば、ペプチドの構造を参照しながら考察されたように、残基に結合して構造に影響を及ぼすあらゆる物質は、核生成エレメントまたは阻害エレメントとして使用することができる。さらに、阻害エレメントは自己組織化プロセス中にペプチドが行ういずれかの自己組織化経路に影響を及ぼす可能性がある。これに関連して、結合部位の特定の位置および構造が時間の関数として変化する場合は、そのような制御物質によって自己組織化プロセスの様々な段階を阻害または活性化することができる。非限定的例として、その他の核生成エレメントまたは阻害エレメントには他の金属イオン、小さな有機分子、設計ペプチドおよびペプチドアナログ、核酸アナログ、またはこれらのエレメントの組み合わせが含まれうる。
【0023】
図3および4に示したように、金属イオンはおそらくペプチドに沿って一定の結合部位で結合するので、形成速度は金属イオン対ペプチド濃度比の関数である可能性がある。そこで、金属イオン対ペプチド濃度比をより大きくすれば、結合部位を金属イオンでより急速に飽和させることができる。これに関連して、また別の実施形態では、結果として生じる形態に影響を及ぼすために金属イオン対ペプチド濃度比の変化を変更することができる。非限定的例として、高い金属イオン対ペプチド濃度比は約1.5であってよく、そして低い金属イオン対ペプチド濃度比は約0.3であってよい。同様に、金属イオンの添加はさらにまた誘電特性に影響を及ぼすので、また別の実施形態では、制御された環境の誘電特性の変化が形態の変化に影響を及ぼすことができる。金属イオンの添加は誘電特性の変化を説明するが、誘電特性はまた別の既知の技術によっても変化させることができると理解されなければならない。
【0024】
図6および7は、金属イオンの不在下および存在下で形成された様々な繊維を示した図である。詳細には、図6は、およそpH2においてZnCl2の不在下で得られる形態を示している。上記で考察したように、亜鉛イオンの不在下、そして低pHでは、組織化速度は比較的緩徐である。結果として、自己組織化構造体の緩徐な形成は、不均質な長い繊維を生じさせる。これとは逆に、図7に示したように、Zn+2の存在下では、より急速な組織化速度は、多数の短い繊維を生じさせる。そこで、図6および7は、金属イオンの存在が組織化速度に影響を及ぼすだけではなく(図5Aおよび5Bに示したように)、結果として生じる構造体の安定性にも影響を及ぼすことを示唆している。
【0025】
図8は、フィブリルセグメントの凝集体として形成される長方形の二重層800としての構造体の1つの実施形態を示した図である。詳細には、図8はAβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)、CH3CO−KLVFFAE−NH2を使用して形成された長方形の二重層800を示している。図8に示したように、Aβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)二重層は、幅約130nm×厚み約4nmであり、各リーフレットはβシートから構成されている。対応するバックボーンH結合は長方形の二重層800の長軸810に沿って示されており、積層化は長方形の二重層800の130nmの幅に沿って進行することが示されている。この長方形の二重層800の構造は「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」の中により詳細に記載されているので、ここでは長方形の二重層800についてのこれ以上の考察は省略する。しかし、以下でさらに記載するように、図8の二重層構造を使用してさらに他の構築物が構築される。これに関連して、自己組織化ペプチド主体の構造体の1つの実施形態は、図8に示したものに類似するペプチド二重層として見ることができる。
【0026】
図9は、時間の経過に伴った平均残基楕円率(mean residue ellipticity)930の進行を示しているグラフであり、時間の経過に伴って形成される構造を示している。平均残基楕円率はグラフ900のy軸910上にプロットされており、そして時間はx軸920上にプロットされている。図9に示したように、平均残基楕円率930は、およそ20時間後に、βシートの形成を示唆するネガティブな楕円率が発生したことを示している。次の10時間内に楕円率は劇的に変化し、それによりらせん状のリボンの形成が示唆され、さらにナノチューブ構造体へ進行した。この構造体の進行については論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」の中により詳細に記載されているので、ここでは省略した考察だけを提示する。しかし、得られるペプチド主体のナノチューブ構造体は、脂質主体のナノチューブ構造体より頑丈かつ安定であることは言及しておく価値があると思われる。さらに、図9および論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」に示したように、ペプチド主体のナノチューブは、グラファイト主体の構造体を形成するために必要とされる高エネルギーの動力学的プロセスより、むしろ熱力学的プロセスによって形成される。
【0027】
図10は、Aβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)から形成された1つの実施例であるナノチューブ1000の平面図を示した図である。図10、ならびに論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」に示したように、ナノチューブ1000は約22nmの内半径、約26nmの外半径、および約4nmの壁厚(t)を有する。約4nmの壁厚は、Aβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)の長さのほぼ2倍であり、これはナノチューブ1000の壁が図8に示したものに類似するペプチド二重層から構成されることを示唆している。これを図11により詳細に示した。
【0028】
図11は、図10における破線1100によって定義されたナノチューブ1000の部分分解図である。図11および論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」に示したように、Aβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)ペプチドは、厚み約4nmの二重層を生成する。図11の二重層は、二重層の内面および外面がβシート110i、110jによって規定され、そして各々平行なβストランド120c、120dがバックボーンH結合によって規定された1つ以上の固定間隔によって分離されている点で、図8の二重層構造に類似する。Aβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)について、その間隔は約5Åである。ナノチューブ1000については、論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」の中で、より詳細に記載されているので、ここではナノチューブについての省略した考察だけを提示する。しかし、ペプチド主体のナノチューブ1000は、グラファイト主体のナノチューブを形成するために必要とされる高エネルギーの動力学的プロセスより、むしろ比較的低い間接費を生じさせる熱力学的プロセスの結果として生じることは理解されなければならない。さらに、脂質主体の構造とは相違して、ペプチド主体のナノチューブ1000は、部分的にその構造を規定するH結合のために相当に剛性かつ頑丈である。
【0029】
そのような構造体を形成することに加えて、論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」は、ナノチューブが、高温(例えば、約80℃)で融解する(または不安定になる)ことを示している。これに関連して、他の実施形態では、自己組織化プロセス中の温度を制御する(例えば、約80℃より低い温度を維持する)ステップは、最終自己組織化構造の形態を制御するための1つのアプローチであると見ることができる。
図1から11を参照しながら、そして論文「Metal Switch for Amyloid Formation: Insight into the Structure of the Nucleus」、論文「Exploiting Amyloid Fibril Lamination for Nanotube Self-Assembly」、および上記の仮特許出願明細書に含まれている他の論文の中で記載したように、自己組織化ペプチドに関連する自己組織化プロセスを操作する能力は、ナノ構造体を形成するための新規のアプローチに帰着する。さらに、自己組織化ペプチドが自己組織化プロセスを行う環境を制御することによって、得られる構造の形態を変化させることができる。さらに、自己組織化ペプチドの組織化の基礎にある機序を前提にすると、これらのプロセスは、プロセスが起こる環境を制御することにより活性化および非活性化することができる。
【0030】
代表的実施形態を示して記載してきたが、それらのいずれにも本発明の精神から逸脱しない多数の変更、修飾、または変化を加えることができることは、当業者には明白であろう。例えば、上記には特定のペプチドを例示したが、開示した実施形態の変異体もまた本発明の範囲内に含まれることが理解されなければならない。これらの変異体は、少なくとも1つのアミノ酸を付加、欠失、または置換することによっても形成できるが、このとき変化は、基準ペプチド配列のアミノ末端またはカルボキシル末端位置、あるいは配列内のアミノ酸間に個別に散在して、または配列内の1つ以上の隣接基に散在したりする、これらの末端位置間のあらゆる位置で発生してよい。さらに詳細には考察していないが、例えば環境の媒体誘電体等の他の環境因子もまた形態学的変化に影響を及ぼすために変化させることができると理解されなければならない。さらに、ナノチューブ、ペプチド二重層、らせん、長い繊維および短い繊維、βシート、βストランド等について上記で記載してきたが、上記に記載した方法を使用して他の構造体もまた形成できることが理解されなければならない。さらに、本明細書に記載したナノ構造体の状況では、長い繊維は500nm以上の繊維長を有するあらゆる繊維であると規定されており、短い繊維は500nmより短い繊維長を有する繊維であると規定されている。さらに、Aβ(10〜21)(配列番号1のアミノ酸残基10〜21)、Aβ(10〜21)H13Q(配列番号3)、およびAβ(16〜22)(配列番号1のアミノ酸残基16〜22)について明確に考察してきたが、βアミロイド構造はAβ(16〜21)(配列番号1のアミノ酸残基16〜21)、Aβ(10〜35)(配列番号1のアミノ酸残基10〜35)、Aβ(10〜21)E11N(配列番号2)、Aβ(l〜40)(配列番号1のアミノ酸残基1〜40)、Aβ(l〜42)(配列番号1、1DAEFRHDSG10YEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGL35MVGGVVI42A)等であってよいことが理解されなければならない。このため、すべてのそのような変更、修飾および変化は、本発明の範囲内に含まれると見なすべきである。
【0031】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合(すなわち、ペプチド同配体(peptide isosteres))によって相互に結合した2つ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドまたはタンパク質を意味する。「ポリペプチド」は、短鎖(一般にペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマーと呼ばれる)および長鎖(一般にタンパク質と呼ばれる)の両方を意味する。「ポリペプチド」は遺伝子コードされた20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含むことができる。「ポリペプチド」には、翻訳後プロセッシング等の自然プロセス、または当技術分野においてよく知られている化学修飾技術のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列が含まれる。そのような修飾は、基礎的教科書およびより詳述されたモノグラフ、ならびに膨大な研究論文の中で記載されている。
【0032】
修飾は、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖およびアミノ末端もしくはカルボキシル末端を含むポリペプチドのあらゆる位置で発生してよい。同一タイプの修飾が所定のポリペプチドの数ヵ所の部位で、同一または様々な程度で存在してよいことは理解されるであろう。同様に、所定のポリペプチドは多数のタイプの修飾を含有していてよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐化することができ、それらは分岐を伴う、または伴わない環状であってよい。環状、分岐状、および分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の自然プロセスの結果として生じることがあり、あるいは化学合成法によって作製することができる。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋結合の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化等のタンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA媒介性付加、およびユビキチン化が含まれる(Proteins-Structure and Molecular Properties(タンパク質−構造および分子的特性), 2nd Ed., T.E.Creighton, W.H.Freeman and Company, New York, 1993、Wold, F., Post-translational Protein Modifications: Perspectives and Prospects(翻訳後タンパク質修飾:展望および考察), pgs 1-12 in Post-translational Covalent Modification of Proteins, B.C.Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983、Seifter et al., Meth. Enzymol. 182: 626-646, 1990、およびRattan et al., Ann NY Acad.Sci., 663: 48-62, 1992)。
【0033】
「変異体」は、基準ポリペプチドとは相違するが本質的特性は維持しているポリペプチドを意味する。ポリペプチドの典型的な変異体は、他の基準ポリペプチドとはアミノ酸配列が相違する。一般に、基準ポリペプチドと変異体の配列は全体的には密接に類似しており、多数の領域では同一であるように、相違は限定されている。変異体および基準ポリペプチドは、アミノ酸配列において1つ以上の置換、付加、および欠失によるあらゆる組み合わせで相違していてよい。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによってコードされた残基であっても、コードされていない残基であってもよい。ポリペプチドの変異体は対立遺伝子変異体等の天然型であってよいし、あるいは天然に発生するとは知られていない変異体であってもよい。ポリペプチドの非天然型変異体は、突然変異誘発技術によって、または直接合成によって作製されてよい。
【0034】
当技術分野において知られている「同一性」とは、配列を比較することによって決定される2つ以上のポリペプチド配列間の関係である。また、当技術分野において、「同一性」は、場合によって、当該配列のストリング間の適合によって決定できる、ポリペプチド配列間の配列関連度を意味する。「同一性」および「類似性」は、「Computational Molecular Biology(コンピュータを利用した分子生物学), Lesk, A.M., Ed., Oxford University Press, New York, 1988」、「Biocomputing: Informatics and Genome Projects(バイオコンピューティング:情報科学およびゲノムプロジェクト), Smith, D.W., Ed., Academic Press, New York, 1993」、「Computer Analysis of Sequence Data, Part I(配列データのコンピュータ解析第I部),Griffin, A.M., and Griffin, H.G., Eds., Humana Press, New Jersey, 1994」、「Sequence Analysis in Molecular Biology(分子生物学における配列解析),von Heinje, G., Academic Press, 1987」、および「Sequence Analysis Primer(配列解析プライマー),Gribskov, M. and Devereux, J., Eds., M.Stockton Press, New York, 1991」、および「Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48:1073(1988)」に記載されているものを含むがそれらに限定されない既知の方法によって容易に計算できる。
【0035】
同一性を判定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の適合を生じさせるように設計されている。同一性および類似性を判定する方法は、公に利用できるコンピュータプログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性率は、Needelmanおよび Wunsch(J. Mol. Biol., 48, 443-453, 1970)アルゴリズム(例えば、NBLASTおよびXBLAST)を組み込んでいる解析用ソフトウエア(すなわち、Genetics Computer Group社(ウィスコンシン州マディソン)製の配列解析ソフトウエアパッケージ)を使用することにより判定できる。本発明のポリペプチドについて同一性を判定するためにはデフォルト・パラメーターが使用される。
【0036】
用語「アミノ末端」および「カルボキシル末端」は、本明細書ではポリペプチド内の位置を意味するために使用される。状況が許す場合は、これらの用語はポリペプチドの特定配列または部分を参照して近位または関連位置を明示するために使用される。例えば、1つのポリペプチド内の基準配列のカルボキシル末端に配置された一定の配列は、基準配列のカルボキシル末端の近くに位置するが、必ずしも完全ポリペプチドのカルボキシル末端ではない。
【0037】
本発明の実施形態はさらにまた、配列番号1のアミロイドポリペプチドに対して実質的に相同であるアミロイドポリペプチドも提供する。用語「実質的に相同」は、本明細書では配列番号1に示した配列に対して約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および好ましくは約95%の配列同一性を有するポリペプチドを意味するために使用される。配列同一性率は、上記で考察した従来型方法によって測定される。
【0038】
一般に、相同ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有することを特徴とする。これらの変化は、好ましくは、同類(conservative)アミノ酸置換、およびポリペプチドの活性に有意な影響を及ぼさない他の置換であり、典型的には1〜約6アミノ酸の、小さな置換、およびアミノ末端のメチオニン残基、約2〜6残基までの小さなリンカーペプチド、もしくはアフィニティータグ等の小さなアミノ末端またはカルボキシル末端伸長、である軽度のものである。アフィニティータグを含む相同ペプチドは、さらに相同ペプチドとアフィニティータグとの間にタンパク質分解性開裂部位を含むことができる。
【0039】
さらに、本発明の実施形態には、配列番号1のアミロイドポリペプチドと比較して1つ以上の「同類アミノ酸置換」を有するポリペプチドが含まれる。同類アミノ酸置換は、アミノ酸の化学的特性に基づくことができる。すなわち、アルキルアミノ酸がアミロイドポリペプチド内のアルキルアミノ酸と置換されている、芳香族アミノ酸がアミロイドポリペプチド内の芳香族アミノ酸と置換されている、硫黄含有アミノ酸がアミロイドポリペプチド内の硫黄含有アミノ酸と置換されている、ヒドロキシ含有アミノ酸がアミロイドポリペプチド内のヒドロキシ含有アミノ酸と置換されている、酸性アミノ酸がアミロイドポリペプチド内の酸性アミノ酸と置換されている、塩基性アミノ酸がアミロイドポリペプチド内の塩基性アミノ酸と置換されている、または二塩基性モノカルボキシルアミノ酸がアミロイドポリペプチド内の二塩基性モノカルボキシルアミノ酸と置換されている、配列番号1の1つ以上のアミノ酸置換を含有する変異体を入手できる。
【0040】
同類アミノ酸変異体を有するアミロイドポリペプチドは、非天然型アミノ酸残基を含むこともできる。非天然型アミノ酸には、制限なく、トランス−3−メチルプロリン、2,4−メタノプロリン、シス−4−ヒドロキシプロリン、トランス−4−ヒドロキシプロリン、N−メチル−グリシン、アロ−トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシ−エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトロ−グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3−および4−メチルプロリン、3,3−ジメチルプロリン、tert−ロイシン、ノルバリン、2−アザフェニル−アラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン、および4−フルオロフェニルアラニンが含まれる。
【0041】
限定された数(すなわち、6未満)の非同類(non-conservative)アミノ酸、遺伝コードによってコードされないアミノ酸、非天然型アミノ酸、および非天然(unnatural)アミノ酸が、アミロイドポリペプチドアミノ酸残基と置換されてよい。
【0042】
本明細書で考察した方法を使用すると、当業者はアミロイドポリペプチドの機能的特性を維持している配列番号1の様々なアミロイドポリペプチドフラグメントもしくは変異体を同定および/または調製することができる。
【0043】
一般的アミノ酸の中では、例えば「同類アミノ酸置換」は、以下の各群内のアミノ酸間の置換によって例示される。(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(3)セリンおよびトレオニン、(4)アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩、(5)グルタミンおよびアスパラギン、ならびに(6)リシン、アルギニンおよびヒスチジン。その他の同類アミノ酸置換については表1に提供した。
【0044】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】1つの例示であるアミロイドフィブリルの構造を示した図である。
【図2】図1のアミロイドフィブリル内の積層状βシートを示した図である。
【図3】図2の2つの隣接するβシートおよび側鎖の位置をより詳細に示した図である。
【図4】図2の積層状構造内のβシートに沿った2本のβストランド間の潜在的金属イオン結合部位を示した図である。
【図5A】Aβ(10〜21)(配列番号1のアミノ酸残基10〜21)についての金属イオン含量の関数としての正規化したフィブリル形成速度を示しているグラフである。
【図5B】Aβ(10〜21)H13Q(配列番号3)についての金属イオン含量の関数としての正規化したフィブリル形成速度を示しているグラフである。
【図6】金属イオンの不在下で形成される均質な長い繊維を示した図である。
【図7】金属イオンの存在下で形成される多数の短い繊維を示した図である。
【図8】フィブリルセグメントの凝集体として形成される長方形の二重層としての構造の実施形態を示した図である。
【図9】時間の経過に伴った平均残基楕円率の進行を示しているグラフであり、時間の経過に伴って形成される構造を示している。
【図10】アミロイドフィブリルから形成された実施例のナノチューブの平面図を示した図である。
【図11】図10のナノチューブの部分分解図である。
【配列表】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己組織化ペプチド主体の構造体の自己組織化を制御する方法であって、以下の(A)および(B)を含む方法:
(A)制御された環境を、以下によって提供するステップ:
(A1)制御された環境内の金属イオンの含量を制御するステップであって、金属イオンは、
(A1a)亜鉛イオン、および
(Alb)銅イオン、
からなる群から選択される前記ステップ、
(A2)制御された環境の酸性度を制御するステップであって、酸性度は約2.0のpHから約7.4のpHの範囲内にある前記ステップ、
(A3)制御された環境の温度を制御するステップであって、温度は約80℃未満である前記ステップ、
(A4)制御された環境の誘電特性を制御するステップ、
(A5)制御された環境内の金属イオン対ペプチド濃度比を制御するステップであって、金属イオン対ペプチド濃度比は約0.3〜約1.5である前記ステップ;
(B)自己組織化構造体を生成するために制御された環境内にβアミロイドのセグメントを配置するステップ:
(B1)ここで自己組織化構造体は、
(B1a)約500nm以上の繊維長を有する長い繊維、
(B1b)約500nm未満の繊維長を有する短い繊維、
(B1c)らせん状構造体、
(B1d)ねじりリボン構造体、
(B1e)フィブリル状構造体、
(B1f)ペプチド二重層、および
(B1g)ナノチューブ、
からなる群から選択され、また、
(B2)βアミロイドのセグメントは、
(B2a)配列番号1のアミノ酸残基10〜21(Aβ(10〜21))、
(B2b)配列番号2(Aβ(10〜21)E11N)、
(B2c)配列番号3(Aβ(10〜21)H13Q)、
(B2d)配列番号1のアミノ酸残基10〜35(Aβ(10〜35))、
(B2e)配列番号1のアミノ酸残基16〜21(Aβ(16〜21))、
(B2f)配列番号1のアミノ酸残基16〜22(Aβ(16〜22))、
(B2g)配列番号1のアミノ酸残基18〜28(Aβ(18〜28))、
(B2h)配列番号1のアミノ酸残基1〜40(Aβ(1〜40))、および
(B2i)配列番号1(Aβ(1〜42))、
からなる群から選択される。
【請求項2】
ペプチド主体の構造体の自己組織化を制御する方法であって、
制御された環境を提供するステップであって、制御された環境は自己組織化プロセスを変更するように適合しており、該自己組織化プロセスは自己組織化ペプチドと関連している前記ステップ、および
制御された環境内に自己組織化ペプチドを配置することにより自己組織化ペプチド主体の構造体を生成するステップ、
を含む方法。
【請求項3】
制御された環境を提供するステップは、核生成エレメントを導入することにより自己組織化プロセスを活性化するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
自己組織化プロセスを活性化するステップは、金属イオンを導入するステップを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
制御された環境を提供するステップは、阻害エレメントを導入することにより自己組織化経路を阻害するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
自己組織化経路を阻害するステップは、金属イオンを導入するステップを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
制御された環境を提供するステップは、
制御された環境内の核生成エレメントの含量を制御するステップ、および
制御された環境内の阻害エレメントの含量を制御するステップ、
からなる群から選択されるステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
核生成エレメントの含量を制御するステップは、制御された環境内の亜鉛イオンの含量を制御するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
阻害エレメントの含量を制御するステップは、制御された環境内の銅イオンの含量を制御するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
制御された環境を提供するステップは、
制御された環境内の核生成エレメント対ペプチド濃度比を制御するステップ、および
制御された環境内の阻害エレメント対ペプチド濃度比を制御するステップ、
からなる群から選択されるステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項11】
制御された環境を提供するステップは、制御された環境内の酸性度を制御するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項12】
制御された環境を提供するステップは、制御された環境の温度を制御するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項13】
制御された環境を提供するステップは、制御された環境の誘電特性を制御するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項14】
自己組織化構造体を生成するステップは、約500nm以上の繊維長を有する長い繊維を生成するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項15】
自己組織化構造体を生成するステップは、約500nm未満の繊維長を有する短い繊維を生成するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項16】
自己組織化構造体を生成するステップは、らせん状構造体を生成するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項17】
自己組織化構造体を生成するステップは、ペプチド二重層を生成するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項18】
自己組織化構造体を生成するステップは、ナノチューブを生成するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項19】
自己組織化構造体を生成するステップは、
制御された環境内にβアミロイドのセグメントを配置するステップを含み、βアミロイドのセグメントが、
配列番号1のアミノ酸残基10〜21(Aβ(10〜21))およびそれらの変異体、
配列番号2(Aβ(10〜21)E11N)およびそれらの変異体、
配列番号3(Aβ(10〜21)H13Q)およびそれらの変異体、
配列番号1のアミノ酸残基16〜21(Aβ(16〜21))およびそれらの変異体、ならびに
配列番号1のアミノ酸残基16〜22(Aβ(16〜22))およびそれらの変異体、
からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項20】
自己組織化構造体を生成するステップは、
制御された環境内にβアミロイドのセグメントを配置するステップを含み、βアミロイドのセグメントが、
配列番号1のアミノ酸残基10〜35(Aβ(10〜35))およびそれらの変異体、
配列番号1のアミノ酸残基18〜28(Aβ(18〜28))およびそれらの変異体、
配列番号1のアミノ酸残基1〜40(Aβ(1〜40))およびそれらの変異体、ならびに
配列番号1(Aβ(1〜42))およびそれらの変異体、
からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項21】
自己組織化ペプチド主体の構造体の自己組織化を制御する方法であって、
制御された環境内に自己組織化ペプチドを配置するステップ、
自己組織化プロセスの開始を制御するステップであって、自己組織化プロセスは自己組織化ペプチドと関連している前記ステップ、および
自己組織化プロセスの進展を制御するステップ、
を含む方法。
【請求項22】
制御された環境内に自己組織化ペプチドを配置するステップは、
制御された環境内にβアミロイドのセグメントを配置するステップを含み、βアミロイドのセグメントが、
配列番号1のアミノ酸残基10〜21(Aβ(10〜21))およびそれらの変異体、
配列番号2(Aβ(10〜21)E11N)およびそれらの変異体、
配列番号3(Aβ(10〜21)H13Q)およびそれらの変異体、
配列番号1のアミノ酸残基16〜21(Aβ(16〜21))およびそれらの変異体、ならびに
配列番号1のアミノ酸残基16〜22(Aβ(16〜22))およびそれらの変異体、
からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
制御された環境内に自己組織化ペプチドを配置するステップは、
制御された環境内にβアミロイドのセグメントを配置するステップを含み、βアミロイドのセグメントが、
配列番号1のアミノ酸残基10〜35(Aβ(10〜35))およびそれらの変異体、
配列番号1のアミノ酸残基18〜28(Aβ(18〜28))およびそれらの変異体、
配列番号1のアミノ酸残基1〜40(Aβ(1〜40))およびそれらの変異体、ならびに
配列番号1(Aβ(1〜42))およびそれらの変異体、
からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
自己組織化プロセスの開始を制御するステップは、核生成エレメントを添加することにより自己組織化プロセスを活性化するステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
自己組織化プロセスの開始を制御するステップは、阻害エレメントを添加することにより自己組織化プロセスを阻害するステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
自己組織化プロセスの開始を制御するステップは、
制御された環境内の核生成エレメントの含量を制御するステップ、および
制御された環境内の阻害エレメントの含量を制御するステップ、
からなる群から選択されるステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項27】
自己組織化プロセスの開始を制御するステップは、
制御された環境内の核生成エレメント対ペプチド濃度比を制御するステップ、および
制御された環境内の阻害エレメント対ペプチド濃度比を制御するステップ、
からなる群から選択されるステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項28】
自己組織化プロセスの開始を制御するステップは、制御された環境の温度を制御するステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項29】
自己組織化プロセスの進展を制御するステップは、制御された環境内の金属イオンの含量を制御するステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項30】
自己組織化プロセスの進展を制御するステップは、制御された環境内の金属イオン対ペプチド濃度比を制御するステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項31】
自己組織化プロセスの進展を制御するステップは、制御された環境の温度を制御するステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項32】
自己組織化ペプチド主体の構造体であって、
βアミロイドのセグメントであって、該セグメントは、
配列番号1のアミノ酸残基10〜21(Aβ(10〜21))、
配列番号2(Aβ(10〜21)E11N)、
配列番号3(Aβ(10〜21)H13Q)、
配列番号1のアミノ酸残基16〜21(Aβ(16〜21))、
配列番号1のアミノ酸残基16〜22(Aβ(16〜22))、
同類アミノ酸置換を有する配列番号1のアミノ酸残基10〜21(Aβ(10〜21))、
同類アミノ酸置換を有する配列番号2(Aβ(10〜21)E11N)、
同類アミノ酸置換を有する配列番号3(Aβ(10〜21)H13Q)、
同類アミノ酸置換を有する配列番号1のアミノ酸残基16〜21(Aβ(16〜21))、および
同類アミノ酸置換を有する配列番号1のアミノ酸残基16〜22(Aβ(16〜22))、
からなる群から選択されたセグメントと、
βアミロイドのセグメントの間で形成された水素結合と、
を含む構造体。
【請求項33】
該構造体は約500nm以上の繊維長を有する長い繊維である、請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項34】
該構造体は約500nm未満の繊維長を有する短い繊維である、請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項35】
該構造体はペプチド二重層である、請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項36】
該構造体はフィブリル状構造体である、請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項37】
該構造体はらせん状構造体である、請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項38】
該構造体はねじりリボン構造体である、請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項39】
該構造体はナノチューブである、請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項40】
該ナノチューブは、約4nmの壁厚と、約50nmから約100nmの外径とを備えた請求項39記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項41】
該構造体は、約4nmの厚みと、約130nmの幅とを有するペプチド二重層である請求項32記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。
【請求項42】
自己組織化ペプチド主体の構造体であって、自己組織化ペプチドと、ナノチューブを形成するために自己組織化ペプチド間に形成された水素結合とを含む構造体。
【請求項43】
該ナノチューブは、約4nmの壁厚と、約50nmから約100nmの外径とを備えた請求項42記載の自己組織化ペプチド主体の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−510572(P2006−510572A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−580364(P2003−580364)
【出願日】平成15年3月24日(2003.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/009229
【国際公開番号】WO2003/082900
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(504357495)エモリー ユニバーシティー (5)
【Fターム(参考)】