説明

自己緩衝タンパク質製剤

【課題】バイオ医薬タンパク質の製造、製剤化ならびにバイオ医薬タンパク質組成物の、pHを維持する改良された方法の提供。
【解決手段】動物およびヒトに対する医学的使用に好適な自己緩衝医薬タンパク質製剤であり、実質的に他の緩衝剤を含まず、動物およびヒトに対する医学的使用のための医薬タンパク質の流通および保存に関わる長期間pHを安定的に維持する。他の利点に加えて、この製剤は現在の医学的使用のためのタンパク質の製剤において従来利用されている緩衝剤に伴う不都合を回避する。これらの点および他の点において、広範囲のタンパク質に対して生産的に適用することが可能であり、動物のため、また医学的使用のため、特にヒト被験体の疾患の治療のための医薬タンパク質の自己緩衝製剤の製造と使用に特に役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、タンパク質製剤、とりわけ医薬タンパク質に関する。特に本発明は、自己緩衝バイオ医薬タンパク質組成物、および該組成物の設計、製造および使用の方法に関する。さらに本発明は、動物(獣医学)および/またはヒトに対する医学的使用のための医薬タンパク質組成物およびこれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
医薬品生産と製剤工程の多くの態様はpH感受性である。最終医薬品の正確なpHの維持は、その安定性、有効性および有効期間には重大な意味を持ち、またpHは、許容可能であり且つ安全で有効な投与用の製剤の設計において重要な考慮事項である。
【0003】
pHを維持するため、製薬工程および製剤化には、1種以上の緩衝剤が使用される。広範囲の緩衝剤を製薬用途に利用することができる。所与の適用のための緩衝液(1種または複数)は、所望のpHにおいて有効でなければならない。これらの緩衝液は、所望のpHを必要な限り長く維持するために十分な緩衝能をもたらすものでなければならない。医薬組成物用の優れた緩衝液は、他の多くの条件も満たすものでなければならない。緩衝液は、適度に可溶性でなければならない。緩衝液は、金属イオンと有害な複合体を形成したり、毒性であったり、または膜もしくは他の表面上で過度に浸透し、溶解し、もしくは吸収されるものであってはならない。緩衝液は、その利用可能性または有効性を減少させるいずれの方法においても、組成物の他の成分と相互作用するものであってはならない。緩衝液は、製品の製剤中および保存期間中に緩衝液が曝されると考えられる条件の範囲にわたるpHの維持において安定且つ有効でなければならない。その環境において生じる酸化または他の反応(例えば、上記緩衝液が緩衝作用を与える組成物の処理において生じる反応)により悪影響を及ぼされるものであってはならない。最終製品に持ち越され、または組み込まれる場合、緩衝剤は、投与に安全で、該製品の有効期間にわたり組成物の他の成分と適合し、エンドユーザーへの投与に許容可能でなければならない。
【0004】
一般用途には多くの緩衝液があるが、生物学的適用に好適な緩衝液の数は限られており、これらのうち、製薬工程および製剤化に許容可能な緩衝液は依然として少ない。結果として、所与の製薬工程、製剤化または製品のためのpHの維持に有効なだけでなく、他の全ての必要条件を満たす緩衝液を見出すのは困難であることが多い。
【0005】
製薬用途に好適な緩衝液の発見の課題は、医薬タンパク質について特に重大である。タンパク質の立体構造と活性は、pHに大きく依存している。タンパク質は、その有効性に有害な種々のpH感受性反応(典型的には、小分子薬に影響を及ぼすことをはるかに超える反応)の影響を受けやすい。例えば、ほんの幾つかの顕著な例を挙げると、アスパラギンとグルタミンの側鎖のアミドは低pH(4.0未満)で、また中性または高pH(6.0以上)でも脱アミド化する。アスパラギン酸残留は、低pHで隣接ペプチド結合の加水分解を促す。ジスルフィド結合の安定性と配置は、特にチオールの存在下でpHに高度に依存する。タンパク質の溶解度、凝結、凝集、沈殿、および細動は、pHに強く依存している。一部の医薬製剤には重要な晶癖も、pHに強く依存している。さらにpHは、多くの医薬ペプチドおよびタンパク質の表面吸収において重要な因子でもある。
【0006】
1つ以上の他の成分を不活性化するおよび/または分解する反応を触媒する緩衝剤もまた、医薬製剤において使用することはできない。製薬用途のための緩衝液は、適正なpHを維持するために必要とされる緩衝能を有するだけでなく、その投与が被験体の生理的pHを有害にかく乱するほど強く緩衝するものであってもならない。医薬品製剤用の緩衝液はまた、一般的に複雑な製剤工程に適合するものでなければならない。例えば、昇華または蒸発する緩衝液(例えば酢酸塩とイミダゾール)は通常、凍結乾燥中のpH、また再構成された凍結乾燥製品のpHを維持する目的で信頼することはできない。該タンパク質の非晶相を晶出する他の緩衝液、例えばリン酸ナトリウムは、凍結を必要とする工程のpHを維持する目的で信頼することはできない。
【0007】
医薬最終製品中でpHを維持するために用いられる緩衝液もまた、pHの維持に有効なだけでなく、被験体への投与に安全かつ許容可能でなければならない。例えば、幾つかの他の有用な緩衝液、例えば低濃度または高濃度のクエン酸塩と高濃度の酢酸塩は、非経口的に投与されると望ましくない痛みを伴う。
【0008】
一部の緩衝液は、医薬タンパク質の製剤化に役立つことが見出されている(例えば酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン(イミダゾール)、リン酸塩およびトリス(Tris))。これらは全て、望ましくない制限と不利点を有する。またこれらは全て、製剤中の追加成分であることの固有の不利点を有し、製剤工程を複雑にし、他の成分、安定性、有効期間、およびエンドユーザーへの許容可能性に悪影響を及ぼす危険性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、医薬品の製造および製剤化ならびに医薬組成物の、特にバイオ医薬タンパク質の製造および製剤化ならびにバイオ医薬タンパク質組成物の、pHを維持するさらなる改良された方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
従って、特定の好ましい実施形態において本発明が提供する多様な目的および態様の1つは、タンパク質を含むタンパク質製剤、特に、所望のpHを維持するための追加の緩衝剤を必要とせずにタンパク質自身によって緩衝される医薬タンパク質を含む製薬上許容される製剤、および該製剤中でタンパク質が実質的に唯一の緩衝剤である(すなわち他の成分は、存在しているとしても製剤中で緩衝剤としては実質的に作用しない)タンパク質製剤である。
【0011】
この点および他の点に関して、特定の好ましい実施形態において本発明が提供する多様な目的および態様の1つは、タンパク質の自己緩衝製剤、特に製剤化されたタンパク質の濃度が所望の緩衝能を与えることを特徴とする医薬タンパク質製剤である。
【0012】
さらに特定の特に好ましい実施形態において本発明が提供する多様な目的および態様の1つは、自己緩衝タンパク質製剤、特に総塩濃度が150mM未満である、医薬タンパク質製剤である。
【0013】
さらに特定の特に好ましい実施形態において本発明が提供する多様な目的および態様の1つは、自己緩衝タンパク質製剤、特に1種以上のポリオールおよび/または1種以上の界面活性剤をさらに含む医薬タンパク質製剤である。
【0014】
さらにまた、特定の特に好ましい実施形態において本発明が提供する多様な目的および態様の1つは、タンパク質、特に医薬タンパク質を含む自己緩衝製剤であって、該製剤中の総塩濃度が150mM未満であり、1種以上の賦形剤、例えば、限定するものではないが、製薬上許容される塩;浸透バランス剤(osmotic balancing agent)(等張化剤);界面活性剤、ポリオール、抗酸化物質;抗生物質;抗真菌剤;増量剤;凍結乾燥保護剤(lyoprotectant);消泡剤;キレート剤;保存剤;着色剤;および鎮痛剤をさらに含む、上記の自己緩衝製剤である。
【0015】
さらに特定の好ましい実施形態において本発明が提供する多様な目的および態様の1つは、自己緩衝タンパク質製剤、特に、該タンパク質に加えて1種以上の他の製薬上活性な薬剤を含む、医薬タンパク質製剤である。
【0016】
本発明の多様な付加的態様および実施形態は、下記の番号が付された段落において具体的に記載される。本発明は、該段落において説明される各事項への言及により、個々におよび/または任意の組み合わせとしてまとめて記載される。出願人は、任意のこのような組み合わせに基づく特許請求の範囲を主張する権利を明確に留保する。
【0017】
1. 下記の組成物のいずれかに係る組成物であって、該組成物がその医薬用途に関して、その承認を与える法律により権限を与えられた国内当局または国際当局、好ましくは欧州医薬品審査庁、日本の厚生労働省、中国の国家薬品監督管理局、米国食品医薬品局、またはこの当局内の下位機関、特に好ましくは、米国食品医薬品局、またはこの当局内の下位機関により承認されている、上記組成物。
【0018】
2. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、ここで該組成物は、ヒトに用いる医薬品の製造に適用可能な適正製造基準に従って製造される、上記組成物。
【0019】
3. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質を含み、該タンパク質は、pH範囲5.0〜4.0または5.0〜5.5にわたる純水中の、約2.0または3.0または4.0または5.0または6.50または8.00または10.0または15.0または20.0または30.0または40.0または50.0または75.0または100または125または150または200または250または300または350または400または500 mM、特に好ましくは少なくとも2.0 mM、極めて特に好ましくは少なくとも3.0 mM、さらに極めて特に好ましくは少なくとも4.0 mMまたは少なくとも5.0 mM、極めて特に好ましくは少なくとも7.5 mM、特に好ましくは少なくとも10 mM、好ましくは少なくとも20 mMの酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能以上の単位体積あたりおよびpH単位あたりの緩衝能を有し、この緩衝能は好ましくは実施例1および2に記載される方法により測定される、上記組成物。
【0020】
4. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、上記タンパク質の緩衝能を除く、該組成物の単位体積あたりおよびpH単位あたりの緩衝能が、pH範囲4.0〜5.0またはpH 5.0〜5.5にわたる純水中の、1.0または1.5または2.0または3.0または4.0または5.0 mMの酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能と等しいかもしくはそれより小さく、特に好ましくは1.0 mMの緩衝能未満、さらに極めて特に好ましくは2.0 mMの緩衝能未満、極めて特に好ましくは2.5 mMの緩衝能未満、特に好ましくは3.0 mMの緩衝能未満、好ましくは5.0 mMの緩衝能未満であり、この緩衝能は好ましくは実施例1および2に記載される方法により測定される、上記組成物。
【0021】
5. タンパク質を含む上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、該組成物のpHから±1pH単位の範囲にわたり、該タンパク質の緩衝能は、少なくとも約1.00または1.50または1.63または2.00または3.00または4.00または5.00または6.50または8.00または10.0または15.0または20.0または30.0または40.0または50.0または75.0または100または125または150または200または250または300または350または400または500または700または1,000 mEq/リットル(l)/pH単位であり、好ましくは、少なくとも約1.00、特に好ましくは1.50、極めて特に好ましくは1.63、さらに極めて特に好ましくは2.00、さらに非常に極めて特に好ましくは3.00、さらに極めて特に好ましくは5.0、極めて特に好ましくは10.0、特に好ましくは20.0 mEq/l/pH単位である、上記組成物。
【0022】
6. タンパク質を含む上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、該組成物のpHから±1pH単位の範囲にわたり、該タンパク質を除いて、該組成物の単位体積あたりおよびpH単位あたりの緩衝能が、pH範囲5.0〜4.0またはpH 5.0〜5.5にわたる純水中の、0.50または1.00または1.50または2.00または3.00または4.00または5.00または6.50または8.00または10.0または20.0または25.0 mMの酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能と等しいかもしくはそれより小さい、この緩衝能は特に好ましくは実施例1および/または2により測定される、上記組成物。
【0023】
7. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、所望のpHから±1pH単位の範囲にわたり、上記タンパク質が、該組成物の緩衝能の少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の緩衝能を与え、好ましくは該組成物の緩衝能の少なくとも約75%、特に好ましくは少なくとも約85%、極めて特に好ましくは少なくとも約90%、さらに極めて特に好ましくは少なくとも約95%、さらに非常に極めて特に好ましくは少なくとも約99%の緩衝能を与える、上記組成物。
【0024】
8. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、上記タンパク質の濃度が約20〜400、または約20〜300、または約20〜250、または約20〜200、または約20〜150 mg/mlであり、好ましくは約20〜400 mg/ml、特に好ましくは約20〜250、極めて特に約20〜150mg/mlである、上記組成物。
【0025】
9. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、上記タンパク質の緩衝作用により維持されるpHが、約3.5〜8.0、または約4.0〜6.0、または約4.0〜5.5、または約4.0〜5.0、好ましくは約3.5〜8.0、極めて特に好ましくは約4.0〜5.5である、上記組成物。
【0026】
10. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、塩濃度が、150 mMまたは125 mMまたは100 mMまたは75 mMまたは50 mMまたは25 mM未満であり、好ましくは150 mM、特に好ましくは125 mM、極めて好ましくは100 mM、さらに特に好ましくは75 mM、特に好ましくは50 mM、好ましくは25 mM未満である、上記組成物。
【0027】
11. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、1種以上の製薬上許容される塩;ポリオール;界面活性剤;浸透バランス剤(osmotic balancing agent);等張化剤;抗酸化物質;抗生物質;抗真菌剤(antimycotics);増量剤;凍結乾燥保護剤(lyoprotectant);消泡剤;キレート剤;保存剤;着色剤;鎮痛剤;または付加薬剤をさらに含む、上記組成物。
【0028】
12. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、1種以上の、低張、等張、もしくは高張、好ましくはほぼ等張、特に好ましくは等張量の製薬上許容されるポリオール、極めて好ましくは任意の1種以上のソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、またはグリセロール、特に極めて好ましくは約5%ソルビトール、5%マンニトール、9%スクロース、9%トレハロース、または2.5%グリセロール、この点についてさらに特に5%ソルビトール、5%マンニトール、9%スクロース、9%トレハロース、または2.5%グリセロールを含む、上記組成物。
【0029】
13. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、界面活性剤、好ましくは1種以上の、ポリソルベート20、ポリソルベート80、他のソルビタンの脂肪酸エステル、ポリエトキシレート、およびポロキサマー188、特に好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80、好ましくは約0.001〜0.1%ポリソルベート20またはポリソルベート80、さらに好ましくは約0.002〜0.02%ポリソルベート20またはポリソルベート80、特に0.002〜0.02%ポリソルベート20またはポリソルベート80をさらに含む、上記組成物。
【0030】
14. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が医薬品であり、該組成物が、非ヒトまたはヒト被験体の治療に好適なその滅菌製剤である、上記組成物。
【0031】
15. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が疾患の治療に有効な医薬用薬剤であり、該組成物が、その疾患を治療するための被験体への投与に好適な該タンパク質の滅菌製剤である、上記組成物。
【0032】
16. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、被験体への投与後に著しく有害な抗原反応を誘導しない、上記組成物。
【0033】
17. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、被験体への投与後に著しく有害な免疫応答を誘導しない、上記組成物。
【0034】
18. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質がヒトタンパク質である、上記組成物。
【0035】
19. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質がヒト化タンパク質である、上記組成物。
【0036】
20. 上記のまたは下記のいずれかの方法であって、タンパク質が抗体であり、好ましくはIgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM抗体、特に好ましくはIgG抗体、極めて特に好ましくはIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体、特にIgG2抗体である、上記方法。
【0037】
21. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、Fab3フラグメント、Fcフラグメント、scFvフラグメント、ビス-scFv(s)フラグメント、ミニボディー(minibody)、二量体(diabody)、三量体(triabody)、四量体(tetrabody)、VhHドメイン、V-NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダ型Ig、Ig NAR、もしくはペプチド抗体(peptibody)、または上記抗体のいずれかの変異体、誘導体もしくは改変体である、上記組成物。
【0038】
22. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、Fcフラグメントもしくはその一部、またはFcフラグメントもしくはその一部の誘導体もしくは変異体を含む、上記組成物。
【0039】
23. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、一対の同種結合部分(cognate binding moieties)の第一結合部分を含み、ここで第一部分は第二部分に特異的に結合する、上記組成物。
【0040】
24. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、(a)Fcフラグメントもしくはその一部、またはFcフラグメントもしくはその一部の誘導体もしくは変異体、および(b)一対の同種結合部分の第一結合部分を含む、上記組成物。
【0041】
25. 上記請求項1、5、7、9、11、13、または14のいずれかに記載の組成物であって、タンパク質が、CDタンパク質、HER受容体ファミリータンパク質、細胞接着分子、成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子(TGF)、インスリン様成長因子、骨誘導因子、インスリンおよびインスリン関連タンパク質、凝集および凝集関連タンパク質、コロニー刺激因子(CSF)、他の血液タンパク質および血清タンパク質血液型抗原;受容体、受容体関連タンパク質、成長ホルモン受容体、T細胞受容体;神経栄養因子、ニューロトロフィン、リラキシン、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、インテグリン、リウマチ因子、免疫毒素、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、およびイムノアドヘシンの1つ以上に特異的に結合するタンパク質からなる群から選択される、上記組成物。
【0042】
26. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、OPGL特異的結合タンパク質、ミオスタチン特異的結合タンパク質、IL-4受容体特異的結合タンパク質、IL1-R1特異的結合タンパク質、Ang2特異的結合タンパク質、NGF-特異的結合タンパク質、CD22特異的結合タンパク質、IGF-1受容体特異的結合タンパク質、B7RP-1特異的結合タンパク質、IFNγ特異的結合タンパク質、TALL-1特異的結合タンパク質、幹細胞因子、Flt-3リガンド、およびIL-17受容体からなる群から選択される、上記組成物。
【0043】
27. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34;HER2、HER3、HER4、EGF受容体;LFA-1、Mol、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン;血管内皮成長因子(「VEGF」);成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミューラー阻害物質、ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-β、血小板由来成長因子(PDGF)、aFGF、bFGF、表皮成長因子(EGF)、TGF-α、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、TGF-β5、IGF-I、IGF-II、脱(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、インスリン様成長因子結合タンパク質;例えば、特に因子VIII、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、タンパク質C、α-1-抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子(例えばウロキナーゼ)ならびに組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)、ボンバジン(bombazine)、トロンビン、およびトロンボポエチン;M-CSF、GM-CSF、G-CSF、アルブミン、IgE、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、脳誘導神経栄養因子(BDNF)(NT-3、NT-4、NT-5、NT-6); リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン;インターフェロン-α、-β、および-γ;IL-1〜IL-10;AIDSエンベロープウイルス抗原;カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺界面活性剤、腫瘍壊死因子-αおよび-β、エンケファリナーゼ、RANTES、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、インヒビン、およびアクチビン;タンパク質AまたはD、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ、崩壊促進因子(DAF)の1つ以上に特異的に結合するタンパク質からなる群から選択される、上記組成物。
【0044】
28. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、Actimmune(インターフェロン-γ-1b)、Activase(アルテプラーゼ)、Aldurazme(ラロニダーゼ)、Amevive(アレファセプト)、Avonex(インターフェロンβ-1a)、BeneFIX(ノナコグアルファ)、Beromun(タソネルミン)、Beatseron(インターフェロン-β-1b)、BEXXAR(トシツモマブ)、Tev-Tropin(ソマトロピン)、BioclateもしくはRECOMBINATE(組換え)、CEREZME(イミグルセラーゼ)、ENBREL(エタネルセプト)、Eprex(エポエチンα)、EPOGEN/Procit(エポエチンアルファ)、FABRAZYME(アガルシダーゼベータ)、Fasturtec/Elitek ELITEK(ラスブリカーゼ)、FORTEO(テリパラタイド)、GENOTROPIN(ソマトロピン)、GlucaGen(グルカゴン)、Glucagon(グルカゴン、rDNA由来)、GONAL-F(ホリトロピンアルファ)、KOGENATE FS(オストコグアルファ)、HERCEPTIN(トラスツズマブ)、HUMATROPE(ソマトロピン)、HUMIRA(アダリムマブ)、溶液中インスリン、INFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1)、KINERET(登録商標)(アナキンラ)、Kogenate FS(抗血友病因子)、LEUKIN(サルグラモスチム組換えヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(rhuGM-CSF))、CAMPATH(アレムツズマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、TNKase(テネクテプラーゼ)、MYLOTARG(ゲムツズマブオゾガマイシン)、NATRECOR(ネシリチド)、ARANESP(ダルベポエチンアルファ)、NEULASTA(ペグフィルグラスチム)、NEUMEGA(オプレルベキン)、NEUPOGEN(フィルグラスチム)、NORDITROPIN CARTRIDGES(ソマトロピン)、NOVOSEVEN(エプタコグアルファ)、NUTROPIN AQ(ソマトロピン)、Oncaspar(ペガスパルガーゼ)、ONTAK(デニロイキンディフィトックス)、ORTHOCLONE OKT(ムロモナブ-CD3)、OVIDREL(コリオゴナドトロピンアルファ)、PEGASYS(ペグインターフェロンアルファ-2a)、PROLEUKIN(アルデスロイキン)、PULMOZYME(ドルナーゼアルファ)、Retavase(レテプラーゼ)、REBETOL(登録商標)(リバビリン)とINTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ-2b)を含むREBETRON併用療法、REBIF(インターフェロンβ-1a)、REFACTO(抗血友病因子)、REFLUDAN(レピルジン)、REMICADE(インフリキシマブ)、REOPRO(アブシキシマブ)ROFERON(登録商標)-A(インターフェロンアルファ-2a)、SIMULECT(バシリキシマブ)、SOMAVERT(ペグビソマント)、SYNAGIS(登録商標)(パリビツマブ)、Stemben(アンセスチム、幹細胞因子)、THYROGEN、INTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ-2b)、PEG-INTRON(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ-2b)、XIGRIS(登録商標)(活性型ドロトレコジンα)、XOLAIR(登録商標)(オマリツマブ)、ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)、およびZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)からなる群から選択される、上記組成物。
【0045】
29. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、Ab-hCD22もしくはそのフラグメント、またはAb-hCD22もしくはそのフラグメントの変異体、誘導体、もしくは改変体;Ab-hIL4Rもしくはそのフラグメント、またはAb-hIL4Rもしくはそのフラグメントの変異体、誘導体、もしくは改変体;Ab-hOPGLもしくはそのフラグメント、またはAb-hOPGLもしくはそのフラグメントの変異体、誘導体、もしくは改変;Ab-hB7RP1もしくはそのフラグメント、またはAb-hB7RP1もしくはそのフラグメントの変異体、誘導体、もしくは改変体である、上記組成物。
【0046】
30. 上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、Ab-hCD22またはAb-hIL4RまたはAb-hOPGLまたはAb-hB7RP1である、上記組成物。
【0047】
31. タンパク質と溶媒とを含む上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、タンパク質が、pH範囲4.0〜5.0またはpH5.0〜5.5にわたる4.0 mMの酢酸ナトリウム水溶液の緩衝能以上の単位体積あたりおよびpH単位あたりの緩衝能を有し、この緩衝能は特に実施例1および2に記載される方法により測定されるものであり、さらに、該タンパク質を除いた該組成物の単位体積あたりおよびpH単位あたりの緩衝能が、2.0 mM 酢酸ナトリウム水溶液の、上記と同じpH範囲にわたる、好ましくは同じ方法で測定された緩衝能と等しいかまたはそれより小さい、上記組成物。
【0048】
32. タンパク質と溶媒とを含む上記のまたは下記のいずれかの組成物であって、該組成物のpHにおいて、該タンパク質の緩衝能は、該組成物の±1pH単位のpH変化について、少なくとも1.63 mEq/lであり、該タンパク質を除いた該組成物の緩衝能は、±1pH単位のpH変化について、該組成物のpHにおいて0.81 mEq/lと等しいかまたはそれより小さい、上記組成物。
【0049】
33. 再構成の際に、上記のまたは下記のいずれかの組成物を与える凍結乾燥物。
【0050】
34. 上記のまたは下記のいずれかの組成物または凍結乾燥物およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【0051】
35. 対イオンを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、上記のまたは下記のいずれかの組成物または凍結乾燥物の製造方法。
【0052】
36. 対イオンの存在下で、クロマトグラフィー、透析、および/または十字流ろ過のいずれか1つ以上を使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、上記のまたは下記のいずれかの組成物または凍結乾燥物の製造方法。
【0053】
37. 十字流ろ過を使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、上記のまたは下記のいずれかの組成物または凍結乾燥物の製造方法。
【0054】
38. 製剤のpH以下のpHの溶液に対して透析するステップ、および必要に応じて、その後希酸または希塩基の添加によりpHを調整するステップを含んでなる、上記のまたは下記のいずれかの組成物または凍結乾燥物の製造方法。
【0055】
39. 再構成された凍結乾燥物を含む上記のまたは下記のいずれかの組成物を、治療に有効な量および経路で被験体に投与することを含んでなる、被検体の治療方法。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、滴定データと緩衝能を、pH 5.0〜4.0の範囲にわたる酢酸ナトリウム標準緩衝液の濃度の関数として表す。パネルAは、実施例1に記載のとおり、幾つかの異なる濃度の標準酢酸ナトリウム緩衝液を酸滴定したときのpH変化を表すグラフである。pHは縦軸上に示す。各溶液に添加した酸の量は、溶液1 mlあたりに添加したHClのマイクロ当量(μEq/ml)で横軸上に示す。線形最小二乗法の傾き線は、各データセットについて表す。酢酸塩濃度は、差込図に示す。パネルBは、実施例1に記載のとおり、パネルAに表す滴定データから決定される、酸性のpH範囲にわたる酢酸塩緩衝液の緩衝能を表すグラフである。緩衝能は、酸のマイクロ当量/緩衝液1 ml/pHの単位変化(μEq/ml-pH)として縦軸上に示す。酢酸塩濃度は、mMで横軸上に示す。
【図2】図2は、滴定データと緩衝能を、pH 5.0〜5.5にわたる酢酸ナトリウム標準緩衝液の濃度の関数として表す。パネルAは、実施例2に記載のとおり、幾つかの異なる濃度の標準酢酸ナトリウム緩衝液を塩基滴定したときのpH変化を表すグラフである。pHは縦軸上に示す。各溶液に添加した塩基の量は、溶液1 mlあたりに添加したNaOHのマイクロ当量(μEq/ml)で横軸上に示す。線形最小二乗法の傾き線は、各データセットについて表す。酢酸塩濃度は差込図に示す。パネルBは、パネルAに表す滴定データから決定される、塩基性のpH範囲にわたる酢酸塩緩衝液の緩衝能を表すグラフであり、実施例2に説明される。緩衝能は、塩基のマイクロ当量/緩衝液1 ml/pHの単位変化(μEq/ml-pH)として縦軸上に示す。酢酸塩濃度は、mMで横軸上に示す。
【図3】図3は、実施例3に記載のとおり、酢酸塩緩衝標準液中の酢酸塩濃度の測定を表す。このグラフは、ピーク面積が縦軸上に示され酢酸塩濃度が横軸上に示される、測定に関する標準曲線を示す。緩衝能の経験的測定に用いられる溶液中の酢酸塩の名目量と測定量は、グラフの下に表としてまとめる。
【図4】図4は、実施例4に記載のとおり、pH 5.0〜4.0にわたり、幾つかの異なる濃度のAb-hOPGLを酸滴定したときのpH変化を表すグラフである。pHは縦軸上に示す。溶液に添加した酸の量は、緩衝液1 mlあたりに添加したHClのマイクロ当量(μEq/ml)で横軸上に示す。線形最小二乗法の傾き線は、各データセットについて表す。Ab-hOPGL濃度は、差込図に示す。
【図5】図5は、実施例5に記載のとおり、pH 5.0〜6.0にわたり、幾つかの異なる濃度のAb-hOPGLを塩基滴定したときのpH変化を表すグラフである。pHは縦軸上に示される。溶液に添加した塩基の量は、緩衝溶液1 mlあたりに添加したNaOHのマイクロ当量(μEq/ml)で横軸上に示される。線形最小二乗法の傾き線は、各データセットについて表す。Ab-hOPGL濃度は、差込図に示す。
【図6】図6は、緩衝能の測定に使用したAb-hOPGL溶液中の残留酢酸塩レベルを示す。グラフは、実施例6に記載のとおり、酢酸塩測定に使用した標準曲線を示す。溶液中の、名目酢酸塩濃度と実験的に測定された酢酸塩濃度は、グラフの下に表としてまとめられる。
【図7】図7は、pH範囲5.0〜4.0における、Ab-hOPGL±残留酢酸塩の緩衝能を表すグラフである。このデータは、実施例7に記載されるとおり取得した。上の線は、残留酢酸塩を含むAb-hOPGLの緩衝能を示す。下の線は、残留酢酸塩について調整したAb-hOPGLの緩衝能を示す。縦軸は、緩衝能を酸のマイクロ当量/Ab-hOPGL溶液1 ml/pH単位(μEq/ml-pH)で示す。横軸は、Ab-hOPGLの濃度をmg/mlで示す。実施例1に記載される異なる濃度の標準酢酸塩緩衝液の緩衝能は、横線として表される。緩衝液の濃度は、線の上に示す。
【図8】図8は、塩基性pH範囲のpH 5.0〜6.0における、Ab-hOPGL±残留酢酸塩の緩衝能を表すグラフである。データは、実施例8に記載されるとおり取得した。。上の線は、残留酢酸塩を含むAb-hOPGLの緩衝能を表す。下の線は、残留酢酸塩について調整したAb-hOPGLの緩衝能を表す。縦軸は、緩衝能を、添加した塩基のマイクロ当量/緩衝液1 ml/pH単位(μEq/ml-pH)で示す。横軸は、Ab-hOPGLの濃度をmg/mlで示す。実施例2に記載される幾つかの濃度の標準酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能は横線で示される。酢酸塩濃度は、各線の上に示される。
【図9】図9は、自己緩衝製剤と従来の緩衝製剤におけるpHとAb-hOPGLの安定性を一対のグラフに表す。パネルAは、自己緩衝Ab-hOPGL、酢酸塩中で製剤化したAb-hOPGL、およびグルタミン酸塩中で製剤化したAb-hOPGLの安定性を、4℃で6月間の保存時間の関数として表す。縦軸は、Ab-hOPGLの安定性を、SE-HPLCで測定したAb-hOPGLモノマー率(%)で示す。保存時間は横軸上に示す。パネルBは、同じ時間にわたって測定した上記と同じ3種類の製剤のpHを表す。タンパク質安定性の測定とpHの計測については、実施例9に記載される。
【図10】図10は、幾つかの濃度の自己緩衝Ab-hB7RP製剤について、pH範囲5.0〜4.0にわたる滴定曲線と緩衝能を表す。パネルAは滴定データを示す。pHは縦軸上に示す。溶液に添加した酸の量は、添加したHClのマイクロ当量/緩衝液1 ml (μEq/ml)で横軸上に示す。線形最小二乗法の傾き線は、各データセットについて表す。Ab-hB7RP1の濃度は差込図に示される。パネルBはAb-hB7RP1製剤の緩衝能を表す。上の線は残留酢酸塩の寄与を含む製剤の緩衝能を示す。下の線は、実施例3に記載されるSE-HPLC測定に基づいて残留酢酸塩の寄与を引いた後の製剤の緩衝能を示す。線形最小二乗法の傾き線は、2つのデータセットについて示す。縦軸は、緩衝能を酸のマイクロ当量/緩衝液1 ml/pH単位(μEq/ml-pH)で示す。Ab-hB7RP1の濃度は横軸上にmg/mlで示す。実施例1に記載される幾つかの濃度の標準酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能は、点線の横線で示す。酢酸塩緩衝液濃度は各線の下に示す。この結果は、実施例10に記載のとおりに得られた。
【図11】図11は、幾つかの濃度の自己緩衝Ab-hB7RP1製剤について、pH範囲5.0〜6.0にわたる滴定曲線と緩衝能を表す。パネルAは滴定データを示す。pHは縦軸上に示す。溶液に添加した塩基の量は、添加したNaOHのマイクロ当量/緩衝液1ml(μEq/ml)で横軸上に示す。線形最小二乗法の傾き線は、各データセットについて表す。Ab-hB7RP1濃度は、差込図に示す。パネルBは、Ab-hB7RP1製剤の緩衝能を表す。上の線は、残留酢酸塩を含む上記製剤の緩衝能を示す。下の線は、残留酢酸塩の寄与を除くように調整した製剤の緩衝能を示す。線形最小二乗法の傾き線は、2つのデータセットについて示す。縦軸は、塩基のマイクロ当量/緩衝溶液1 ml/pH単位(μEq/ml-pH)で緩衝能を示す。Ab-hB7RP1の濃度は横軸上にmg/mlで示される。実施例2に記載される幾つかの濃度の標準酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能は、点線の横線で示す。酢酸塩緩衝液濃度は、各線の上に示す。結果は、実施例11に記載のとおりに得られた。
【図12】図12は、4℃と29℃での、自己緩衝製剤および従来の緩衝製剤におけるAb-hB7RP1の安定性を表す。パネルAは、自己緩衝Ab-hB7RP1、酢酸塩緩衝液中で製剤化したAb-hB7RP1、およびグルタミン酸塩中で製剤化したAb-hB7RP1の安定性を、4℃で6月間の保存時間の関数として表す。縦軸は、SE-HPLCで測定したサンプル中のAb-hB7RP1モノマー率(%)を表す。時間は、横軸上に示される。パネルBは、上記と同じ3種類の製剤の安定性を、29℃で同じ時間にわたる保存の関数として表す。パネルBの縦軸と横軸はパネルAと同じである。HPLC-SEによるタンパク質安定性の測定は、実施例12に記載される。
【図13】図13は、4℃と29℃での、Ab-hB7RP1の自己緩衝製剤のpH安定性を表す。縦軸はpHを示す。時間(週)は横軸上に示される。データセットの温度は差込図に示す。このデータは、実施例13に記載のとおりに取得した。
【図14】図14は、自己緩衝製剤Ab-hCD22の緩衝能を、pH範囲4.0〜6.0にわたるAb-hCD22の濃度の関数として表す。パネルAは、自己緩衝Ab-hCD22製剤の緩衝能を、pH4.0〜5.0の範囲にわたるAb-hCD22の濃度の関数として表す。パネルBは、自己緩衝Ab-hCD22製剤の緩衝能を、pH範囲5.0〜6.0にわたる濃度の関数として表す。両パネルとも、縦軸は塩基のマイクロ当量/緩衝溶液1 ml/pH単位(μEq/ml-pH)で緩衝能を示し、横軸はAb-hCD22濃度をmg/mlで示す。参考のため、実施例1に記載される10 mM 酢酸ナトリウムの緩衝能を、両パネルに点線の横線で示す。この図に示す結果は、実施例14に記載のとおりに得られたものである。
【図15】図15は、pH範囲5.0〜4.0にわたる幾つかの濃度の自己緩衝Ab-hIL4R製剤について、滴定曲線と緩衝能を表す。パネルAは滴定データを示す。pHは縦軸上に示す。溶液に添加した酸の量は、添加したHClのマイクロ当量/緩衝溶液1 ml(μEq/ml)で横軸上に示す。線形最小二乗法の傾き線は各データセットについて表す。Ab-hIL4R濃度は、差込図に示す。パネルBは、Ab-hIL4Rの緩衝能を濃度の関数として表す。線形最小二乗法の傾き線は各データセットについて表す。縦軸は、塩基のマイクロ当量/緩衝溶液1 ml/pH単位(μEq/ml-pH)で緩衝能を示す。Ab-hIL4Rの濃度はmg/mlで横軸上に示す。実施例1に記載される幾つかの濃度の標準酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能は、点線の横線で示す。酢酸塩緩衝液の濃度は、各線の上に示す。結果は、実施例15に記載のとおりに得られた。
【図16】図16は、pH 5.0〜6.0の範囲にわたる幾つかの濃度の自己緩衝Ab-hIL4R製剤のについて、滴定曲線と緩衝能を表す。パネルAは滴定データを示す。pHは縦軸上に示す。溶液に添加した塩基の量は、添加したNaOHのマイクロ当量/緩衝溶液1 ml (μEq/ml)で横軸上に示す。線形最小二乗法の傾き線は各データセットについて表す。Ab-hIL4R濃度は差込図に示す。パネルBは、Ab-hIL4Rの緩衝能を濃度の関数として表す。線形最小二乗法の傾き線はこのデータセットについて示す。縦軸は、塩基のマイクロ当量/緩衝溶液1 ml/pH単位(μEq/ml-pH)で緩衝能を表す。Ab-hIL4Rの濃度は、mg/mlで横軸上に示す。実施例2に記載される幾つかの濃度の標準酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能は、点線の横線で示す。酢酸塩緩衝液の濃度は各線の上に示す。結果は、実施例16に記載のとおりに得られた。
【図17】図17は、37℃におけるAb-hIL4Rの酢酸塩緩衝剤と自己緩衝製剤中のAb-hIL4RとpHの安定性を、時間の関数として表す。パネルAは、37℃で4週間にわたるAb-hIL4Rの安定性を示す棒グラフである。縦軸は、安定性を単量体Ab-hIL4RのパーセントでSE-HPLCで測定したとおりに示す。横軸は保存時間を週で示す。差込図は、酢酸塩のデータと自己緩衝製剤のデータを同定する。パネルBは、上記と同じ製剤のpH安定性を、同じ条件と同じ期間について示す。pHは縦軸上に示す。保存時間(週)は、横軸上に示す。酢酸塩と自己緩衝製剤に関するデータは差込図に示す。このデータは、実施例17に記載のとおりに得られた。
【発明を実施するための形態】
【0057】
用語解説
本明細書で用いる様々な用語および語句に属する意味を、以下に具体的に説明する。
【0058】
本明細書における「1つの(「A」または「a」)」という用語は、「少なくとも1つ;」「1つまたは1つ以上」を意味する。
【0059】
「約」という用語は、特に指定のない限り、±20%を意味する。例えば、本明細書において約100とは、80〜120を意味し、約5とは4〜6を意味し、約0.3とは0.24〜0.36を意味し、約60%とは48%〜72%を意味する(40%〜80%ではない)。
【0060】
本明細書において「アゴニスト」という用語は、対応する刺激性リガンドとは異なるが、同じ刺激作用を有する分子的実体を意味する。例えば(アゴニストは他の機構を通じて機能するが)、対応するホルモン受容体に結合することにより活性を刺激するホルモンに関して、アゴニストはこのホルモン受容体に結合してその活性を刺激する、化学的に異なる実体である。
【0061】
本明細書において「アンタゴニスト」という用語は、対応するリガンドとは異なり、且つ反対の作用を有する分子的実体を意味する。例えば(アンタゴニストは他の機構を通じて機能するが)、対応するホルモン受容体に結合することにより活性を刺激するホルモンのアンタゴニストの1種は、ホルモンとは異なり、ホルモン受容体と結合するが、ホルモン結合により生じる活性を刺激せず、この作用により該ホルモンのエフェクター活性を阻害する化学的実体である。
【0062】
本明細書において「抗体」という用語は、生化学とバイオテクノロジーの技術分野における通常の意味に従って用いられる。
【0063】
本明細書において用いられるこの用語の意味の範囲内の抗体は、生物学的源から単離される抗体であり、例えばモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、組換えDNA技術によって作製される抗体(本明細書においては組換え抗体ともいう)、例えば内因性遺伝子の活性化を伴う方法により作製される抗体および外因性発現構築物の発現を伴う方法により作製される抗体(例えば細胞培養物中で作製される抗体、およびトランスジェニック植物および動物中で作製される抗体、およびペプチド合成および半合成などの化学合成を伴う方法で作製される抗体)が挙げられる。本明細書において用いられるこの用語の範囲内には、別に明確に示す場合を除き、特にキメラ抗体とハイブリッド抗体も含まれる。
【0064】
原型的な抗体は、ジスルフィド結合で結合した2つの同一の軽鎖-重鎖二量体からなる四量体糖タンパク質である。脊椎動物には2種類の軽鎖、カッパ(kappa)とラムダ(lambda)がある。各々の軽鎖は、定常領域と可変領域からなる。この2つの軽鎖は、定常領域の配列により区別される。脊椎動物には5種類の重鎖:アルファ(alpha)、デルタ(delta)、イプシロン(epsilon)、ガンマ(gamma)、およびミュー(mu)がある。各々の重鎖は、可変領域と3つの定常領域とからなる。5つの重鎖の種類は、脊椎動物抗体の5つの種類(アイソタイプ):IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを規定する。各アイソタイプは、それぞれ、(a)2つのアルファ重鎖、デルタ重鎖、イプシロン重鎖、ガンマ重鎖、またはミュー重鎖、および(b)2つのカッパ軽鎖または2つのラムダ軽鎖で構成されている。それぞれの種類の重鎖は両方の種類の軽鎖と結合するが、所与の1分子中の2つの軽鎖は、両方ともカッパ鎖か、両方ともラムダ鎖である。IgD、IgE、およびIgGは通常、「遊離の」異種四量体糖タンパク質として生じる。IgAとIgMは通常、「J」鎖ポリペプチドと結合した数個のIgA異種四量体または数個のIgM異種四量体を含む複合体として生じる。一部の脊椎動物アイソタイプは、定常領域配列中の相違により互いに区別され、サブクラスに分類される。ヒトIgGサブクラスは4種類存在し、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、ならびに2種類のIgAサブクラス、すなわちIgA1とIgA2がある。これら全ての抗体および上記に具体的に記載されていない他の抗体は、本明細書において用いられる用語「抗体」の意味に含まれる。
【0065】
「抗体」という用語はさらに、本明細書の他の箇所にさらに記載される上記のいずれかのアミノ酸配列変異体を含む。
【0066】
本明細書において用いられる「抗体由来」は、抗体から製造された任意のタンパク質、および抗体に基づく設計の任意のタンパク質を意味する。この用語は、その意味の中に抗体の全部または一部を用いて製造されたタンパク質、抗体の全部または一部を含むタンパク質、抗体の全部または一部に基づいてその全体または一部が設計されたタンパク質を含む。「抗体由来」タンパク質としては、限定するものではないが、Fc、Fab、およびFab2フラグメントならびにこれらを含むタンパク質、VHドメインフラグメントおよびVLドメインフラグメントならびにこれらを含むタンパク質、抗体の可変領域および/または定常領域を全体として、または一部含む他のタンパク質、scFvイントラボディ(intrabody)、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、二量体(diabody)、上記のアミノ酸配列変異体、ならびにこのような多様な他の分子、例えば、限定するものではないが、本明細書中の他の箇所に記載される他のタンパク質が挙げられる。
【0067】
本明細書において用いられる「抗体関連」は、任意のタンパク質またはその構造、機能、またはデザインが抗体または抗体のいずれかの部分に似ている模倣体を意味する。本明細書において用いられる用語としての「抗体関連」タンパク質は、上記の「抗体由来」タンパク質である。「抗体由来」という用語と「抗体関連」という用語が、実質的に重複している点に留意すべきである。両用語は、多くのこのようなタンパク質に適用される。「抗体関連」タンパク質の例は、この点について限定を意図するものではないが、ペプチド抗体とレセプチボディ(receptibody)である。「抗体関連」タンパク質の他の例は、本明細書の他の箇所に記載される。
【0068】
本明細書において用いられる「抗体ポリペプチド」は、特に指定のない限り、抗体の一部であるポリペプチド(例えば軽鎖ポリペプチド、重鎖ポリペプチドおよびJ鎖ポリペプチド)を意味し、幾つかの例として、特にフラグメント、誘導体、およびこれらの変異体、ならびに関連ポリペプチドが挙げられる。
【0069】
「約(Approximately)」という用語は、特に指定のない限り、「約(about)」と同じ意味である。
【0070】
「結合部分」とは、別の分子または分子複合体の一部に特異的に結合する分子または分子複合体の一部を意味する。この結合部分は、それが結合する分子または分子複合体の部分と同じかまたは異なる。この結合部分は、分子または分子複合体の全体であってもよい。
【0071】
「特異的に結合する」は、本明細書において当技術分野の通常の意味に従って用いられ、特に指定のない限り、特定の特異的部分との結合が他の一般の部分との結合より強いことを意味し、広範囲の部分に生じ得る非特異的結合より強く、結合が特定の部分に対して選択的であり、他の部分との結合はそれほど強い程度には生じないことを意味する。特異的結合の極端な場合においては、単一種類の部分との極めて強い結合が生じ、任意の他の部分との非特異的結合は生じない。
【0072】
「共投与(co-administer)」という用語は、同時投与および/または連続投与を含む、互いに組み合わせた2種以上の薬剤の投与を意味する。
【0073】
本明細書において「同種(cognate)」とは、相補的で、共に適合し、一致すること、例えば互いに適合する2つのジグソーパズル、錠のシリンダー機構とそれを開ける鍵、酵素の基質結合部位とその酵素の基質、および標的とそれに特異的に結合する標的結合タンパク質のような関係であることを意味する。
【0074】
本明細書における「同種結合部分」とは、互いに特異的に結合する結合部分を意味する。典型的には、常にではないが、互いに特異的に結合する1対の結合部分を意味する。特異的リガンドとリガンド受容体との高度に選択的な結合に関与する部分は、同種結合部分の具体的な例を与える。別の例は、抗原および抗体に結合する部分により与えられる。
【0075】
「組成物」という用語は、1種以上の構成成分を含む任意の組成物、例えば製剤を意味する。
【0076】
「からなる」は、「含む」と同義語である(以下参照)。
【0077】
「含む」は、含まれ得るまたは含まれ得ない他の何かに関してさらに留保、限定、または除外することなく、含有することを意味する。例えば、「xとyとを含む組成物」は、その組成物が他に何を含み得るかを問わず、xとyを含有する任意の組成物を意味する。同様に「xを含んでなる方法」は、他に何が起こり得るかを問わず、その方法においてxが実施される任意の方法である。
【0078】
本明細書において「濃度」という用語は、当技術分野の周知の意味に従って用いられ、ある項目を含む所定量の混合物中の当該項目の量を意味し、典型的には割合として表される。例えば、溶質(例えば溶液中のタンパク質)の濃度は、例えば(限定するものではないが):(A)重量パーセント(i) = 溶媒体積100部あたりの溶質の重量;(B)重量パーセント(ii) = 総重量100部あたりの溶質の重量;(C)重量パーセント(iii) = 溶媒の重量100部あたりの溶質の重量;(D)質量パーセント = 溶液100質量部あたりの溶質の質量;(E)モル比 = 全成分の総モル数あたりの溶質のモル;(F)モル濃度 = 溶液(すなわち、溶質を加えた溶媒)1リットルあたりの溶質のモル数;(G)重量モル濃度 = 溶媒1Kgあたりの溶質のモル数;および(H)体積モル濃度 = 溶媒1リットルあたりの溶質のモル数、などの多くの方法で表現することができる。
【0079】
本明細書において「制御領域」は、当技術分野の周知の意味に従って用いられ、特に指定のない限り、その1つ以上の機能または活性の制御に関与するDNAまたはタンパク質中の領域を指す。例えば、遺伝子発現の制御に関する「発現制御領域」は、転写が適切に起きるために必要とされ、転写が起こる場合には調節に関与し、転写が停止される場合にはいかに効率よく停止が起こるか等に関与するDNA中の領域を意味する。
【0080】
本明細書において「de novo(新規の)」は、当技術分野の周知の意味に従って用いられ、新しく作られるものを意味する。例えば、de novoアミノ酸配列は、天然のアミノ酸配列には由来しない配列であるが、このようなde novo配列は、天然の配列との類似性を有し得る。de novoアミノ酸配列は、例えば、推測的設計、コンビナトリアル法、選択法により生成することができる。これらのアミノ酸は、例えば、化学合成、半合成、および様々な組換えDNA技術により作製することが可能であり、これらの方法は全て当業者に周知である。
【0081】
本明細書において用いられる「有害な(deleterious)」という用語は、「有害な(harmful)」ことを意味する。例として、例えば疾患の進行の有害な(harmful)影響および治療の有害な(harmful)副作用を含む有害な(deleterious)作用が挙げられる。
【0082】
本明細書において「誘導体」は、物質、形態または設計において誘導されること、例えば、参照ポリペプチドに基づくが、アミノ酸配列の変更、別のポリペプチドとの融合、または共有結合修飾により、参照ポリペプチドとは異なるポリペプチドを意味する。
【0083】
「疾患」は、被験体の健康に悪影響を及ぼす病態、症状である。
【0084】
「障害」は、健康を悪化させる障害(malediction)、症状である。
【0085】
本明細書において用いられる「機能障害」という用語は、本来なら正常な過程の障害、疾患、または有害な影響を意味する。
【0086】
「有効量」は通常、所望の局所的または全身的な効果をもたらす量を意味する。例えば有効量は、有益なまたは望ましい臨床結果をもたらすのに十分な量である。この有効量は、単回投与で一度に全て、または数回の投与で有効量を与える分割量で提供することができる。有効量と考えられる量の正確な決定は、各被験体の個々の要因、例えば被験体の大きさ、年齢、損傷、および/または治療される疾患または損傷、および損傷が生じてから、または疾患が発症してからの時間の量に基づき得る。当業者であれば、当技術分野において日常的なこれらの考慮事項に基づいて所与の被験体のための有効量を決定することができるであろう。本明細書において用いられる「有効投与量」は、「有効量」と同じ意味である。
【0087】
「有効な経路」は通常、所望のコンパートメント、系、または位置への薬剤の送達を提供する経路を意味する。例えば、有効な経路とは、そこを通じて薬剤を投与し、所望の作用部位に、有益なまたは所望の臨床結果を達成するのに十分な量の薬剤を提供することができる経路である。
【0088】
本明細書において、「内因性」(例えば内因性遺伝子)は、他に示されない限り、例えば、遺伝子および他の態様のDNA、例えばゲノムおよび生物中で天然に存在する制御領域を指すために用いられる。
【0089】
本明細書において「外因性」(例えば外因性遺伝子)は、他に示されない限り、通常は、例えば細胞に導入され、そのゲノムに組み込まれたDNAなどの外部の源に由来するDNAを意味するために用いられる。
【0090】
「FBS」は、ウシ胎仔血清を意味する。
【0091】
「製剤」は、1つ以上の特定の用途、例えば保存、さらなる処理、販売および/または、被験体への投与(例えば、特定の疾患を治療するための、特定薬剤の特定量での特定経路による被験体への投与)のための、少なくとも1種の活性成分と1種以上の他の成分との組み合わせを意味する。
【0092】
本明細書において「フラグメント」は、タンパク質の一部(例えば、より大きなポリペプチドの完全アミノ酸配列より小さい配列からなるポリペプチド)などのより大きな実体の一部を意味する。 本明細書において用いられるように、この用語は末端欠失により形成されるフラグメントと内部欠失により形成されるフラグメント(例えば、内部で1つのポリペプチドの2つ以上の非隣接部分が結合し、元のタンパク質のフラグメントであるより小さなポリペプチドを形成するフラグメント)を含む。
【0093】
本明細書において「融合タンパク質」は、同一でも異なっていてもよい2つのポリペプチドの全てまたは一部を融合させることにより形成されるタンパク質を意味する。典型的な融合タンパク質は、組換えDNA技術により2つ(または2つ以上)のポリペプチドをコードするヌクレオチドの末端同士の結合により作製される。
【0094】
本明細書において「遺伝子操作された」という用語は、遺伝子変更の人為的な方法、例えば組換DNA技術、遺伝子操作の古典的方法、化学的方法、3種全ての組み合わせ、または他の方法を用いて製造されたことを意味する。
【0095】
本明細書において「ホモログ」という用語は、例えば別のタンパク質と相同なタンパク質のように、別の実体と相同性を有することを意味する。「相同的な」は構造または機能が似ていることを意味する。
【0096】
本明細書において「イオン化」は、物質上の正味電荷の少なくとも1電荷の変化を意味し、電荷の喪失または獲得、例えばHOAcからOAc-とH+への低pH溶液中の酢酸のイオン化が挙げられる。
【0097】
本明細書において「k」は、化学分野の標準的な意味に従って、平衡係数を示す。
【0098】
本明細書において「ka」は、化学分野の標準的な意味に従って、ある分子の特定の水素の解離定数、例えば酢酸の酸性水素の解離定数を示す。
【0099】
本明細書において、「kd」は、化学分野の標準的な意味に従って、1対の化学的実体(または部分)の解離定数を示す。
【0100】
「キット」は、所与の目的(1つまたは複数)のために共に使用される品目の集合物を意味する。
【0101】
本明細書において「リガンド」は、1つ以上の他の分子的実体上の1つ以上の特異的部位に選択的かつ化学量論的に結合する分子的実体を意味する。結合は、典型的には非共有結合であるが、共有結合であってもよい。他の多くの例の中でも特に、数少ない例としては、(a) 一般的に同種抗体上の結合部位に非共有結合的に結合する抗原;(b) 一般的にホルモン受容体に非共有結合的に結合するホルモン;(c)特定の糖に非共有結合的に結合するレクチン;(d)アビジンおよび他のアビジン様タンパク質上の複数の部位に非共有結合的に結合するビオチン;(e)ホルモン受容体に結合し、その活性および/または対応するホルモンの活性を阻害するホルモンアンタゴニスト;(f) 同様にホルモン受容体に結合するが、これらの活性を促進するホルモンアゴニストがある。
【0102】
本明細書において「リガンド結合部分」は、リガンドに結合する分子的実体、典型的には該リガンドに結合するより大きな分子的実体の一部、またはこれから誘導される分子的実体を意味する。
【0103】
本明細書において「リガンド結合タンパク質」は、リガンドに結合するタンパク質を意味する。
【0104】
本明細書において「リガンド部分」は、対応するリガンドとほぼ同じようにリガンド結合性の分子的実体に結合する分子的実体を意味する。リガンド部分は、リガンドの全体もしくはその一部、リガンドから誘導された部分、または新たに(de novo)作成された部分であってよい。しかし、典型的には、このリガンド部分は多かれ少なかれ専ら対応するリガンド結合性の実体と結合する態様である。リガンド部分は、リガンド結合に必要とされる構造的特徴以外の構造的特徴を含む必要はないし、この用語は通常この特徴を意味するものではない。
【0105】
本明細書において「mEq」は、ミリ当量を意味する。
【0106】
本明細書において「μEq」は、マイクロ当量を意味する。
【0107】
本明細書において「模倣体」は、別の、通常は無関係の化学的実体の構造的特徴または機能的特徴を有する化学的実体を意味する。例えば、ある種のホルモン模倣体は、対応する受容体に、対応するホルモンと同様に結合する非ペプチド有機分子である。
【0108】
「mM」は、ミリモル; 10-3モル/lを意味する。
【0109】
本明細書において「修飾タンパク質」、「修飾ポリペプチド」、または「修飾フラグメント」は、天然タンパク質を形成する20種の天然アミノ酸の化学的部分(構造)以外の化学的部分(構造)を含むタンパク質もしくはポリペプチドまたはタンパク質もしくはポリペプチドのフラグメントを意味する。修飾は、ほとんどの場合共有結合的に結合されるが、タンパク質または他のポリペプチド、例えばタンパク質のフラグメントに非共有結合的に結合することもできる。
【0110】
本明細書において「部分」とは、外来成分なしで、特定の構造および/または機能を体現する分子的実体を意味する。例えば、多くの場合、リガンド結合タンパク質の小さな一部分のみがリガンド結合に関与する。このタンパク質の一部は、連続的にコードされていても不連続にコードされていても、リガンド結合部分の一例である。
【0111】
「天然の」は、ヒトの介入なしに自然に生じることを意味する。
【0112】
「非天然の」とは、自然に生じるものではないことを意味し、または、自然に生じる場合には、それが天然の状態、環境、状況等ではないことを意味する。
【0113】
「PBS」は、リン酸緩衝生理食塩水を意味する。
【0114】
「ペプチド抗体」は、抗体のCH1、CL、VH、およびVLドメインならびにFabおよびF(ab)2を除く抗体のFcドメイン(すなわち、CH2およびCH3抗体ドメイン)を含む分子を指し、ここで該Fcドメインは、1つ以上のペプチド、好ましくは薬理学的に活性なペプチド、特に好ましくは無作為に生成された薬理学的に活性なペプチドに結合されている。ペプチド抗体の製造は、2000年5月4日に公開されたPCT公開公報WO00/24782に一般的に記載されており、特にペプチド抗体の構造、合成、特性および用途に関してその全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
本明細書において「ペプチド」はポリペプチドと同じ意味であり;必然的にではないが頻繁に、比較的短いポリペプチドについて用いられる。
【0116】
「pH」は、以下:
pH = - log[H3O+]
という周知の、一般的な定義に従って用いられる。
【0117】
本明細書において用いられる、「医薬」という用語は、治療のためのヒトまたは非ヒト被験体への使用、特にヒトに対する使用に許容可能であり、かつその使用を規制する法的権限を与えられた規制当局、例えば米国食品医薬品局、欧州医薬品審査庁、日本の厚生労働省、またはR. Ng, DRUGS: FROM DISCOVERY TO APPROVAL, Wiley-Liss (Hoboken, NJ) (2004)に記載される他の規制当局により治療のためのヒトまたは非ヒト被験体への使用が承認されていることを意味する。上記の文献の開示内容は、特に第7章に記載される薬物の承認に関わる規制当局について、全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において用いられる「該組成物は、医薬用途の承認を与える法的権限を与えられた当局により医薬用途が承認されている」という語句は、法律により、ヒトおよび場合により非ヒトに対する薬物の使用を規制し、承認する責務と権限を負う法律により設立された団体または機関等を意味する。いずれの機関によるものでも、任意のこのような1機関による承認は、この必要条件を満たす。承認機関は、例えば、違反している国の承認機関である必要はない。このような団体の例としては、米国食品医薬局および本明細書で上に記載される他の機関が挙げられる。
【0118】
本明細書において用いられる「医薬」という用語はまた、特にR. Ng, DRUGS: FROM DISCOVERY TO APPROVAL, Wiley-Liss (Hoboken, NJ) (2004)の第9章と第10章に記載される適正製造基準に従って製造される製品を指してよく、特に第9章と第10章で説明される医薬タンパク質製剤の適正製造基準に関する部分において、上記文献の開示内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
本明細書において、「製薬上許容される」という用語は、当技術分野の周知の意味に従って用いられ、医学的使用または獣医学的使用、好ましくはヒトに対する医学的使用に許容可能であること、特に「製薬上」の意味に関してこのような使用が米国食品医薬局または上記の他の機関により承認されていることを意味する。
【0120】
「ポリペプチド」は「タンパク質」と見なす。
【0121】
本明細書において、「前駆体」という用語は、当技術分野の周知の意味に従って用いられ、そこから別の実体が誘導されるような実体を意味する。例えば、前駆体タンパク質はタンパク質分解的切断または修飾などのプロセシングを受けるタンパク質であり、これにより別の前駆体タンパク質(さらなるプロセシングを受ける)または成熟タンパク質を生じさせる。
【0122】
本明細書において「タンパク質」は、当技術分野の周知の意味に従って、ポリペプチドまたはポリペプチドの複合体を意味する。本明細書において用いられる「タンパク質」は、直鎖ポリペプチドと分岐ポリペプチドの両方を含む。「タンパク質」は、非修飾ポリペプチドと、天然の修飾および天然には生じない修飾を含有する修飾ポリペプチドを含む。このような修飾としては、幾つかの例を挙げるとすれば、末端、ペプチド骨格およびアミノ酸側鎖の化学修飾;アミノ酸の置換、欠失および付加;ならびに異常アミノ酸および他の部分の導入が挙げられる。このタンパク質は、「操作された」ポリペプチドとその複合体、例えば限定するものではないが、その構造が、例えば組換えDNA技術、化学合成、および/または共有結合修飾(例えばアミノ酸配列の人為的変更および/または翻訳後修飾)により人為的に変更された任意のポリペプチドまたはポリペプチドの複合体も含む。
【0123】
「プロトン化」は、少なくとも1個の水素の付加を意味する。
【0124】
「自己緩衝」は、他の緩衝剤の不在下で、医薬タンパク質のような物質が、所与の用途に十分なpH変化に抵抗する能力を意味する。
【0125】
本明細書において「半de novo(半新規の)」は、(a)特定の基準に従って部分的に設計されおよび/または前駆体から産生されること、また(b)特定の基準を参照せずに部分的に設計される(例えば、一般原則により、また任意の特定の基準に基づくことなく単独で設計される)ことを意味する。例えば、あるポリペプチドは、微生物発現系において第1のペプチドを産生させ、化学合成により第2のペプチドをを産生させ、その後上記の2つのペプチドを結合させて該ポリペプチドを形成することにより作製される。
【0126】
本明細書において用いられる「半合成」は、化学的合成法と非化学的合成法との組合せを意味する。
【0127】
「被験体」は、哺乳動物(例えばヒト)などの脊椎動物を意味する。哺乳動物としては、限定するものではないが、ヒト、家畜、競技用動物および愛玩動物が挙げられる。本発明の方法および/または組成物による治療が必要な被験体としては、障害、機能障害もしくは疾患またはそれらの副作用、あるいはこれらの治療の副作用を患う被験体が挙げられる。
【0128】
本明細書において「実質的に」は、その平易かつ/または通常の定義に従って用いられ、「程度が大きいこと」または「度合いが大きいこと」を意味する。例えば、「実質的に完全な」は、「大きい程度で完全であること」、「大きい度合いで完全であること」を意味する。さらなる例として、「実質的に残留物がない」とは、「大きい程度で残留物がないこと」、「大きい度合いで残留がないこと」を意味する。数値的正確さが必要とされる場合、文脈に応じて、本明細書において用いられる「実質的に」という用語は、少なくとも、80%以上、特に90%以上、極めて特に95%以上を意味する。
【0129】
本明細書において「治療上有効な」は、当技術分野におけるその周知の意味に従って用いられ、被験体の予後または症状の改善を達成すること、そうでなければ治療目的、例えば、被験体の症状が悪化し続けていてもそれに関わらず疾患の進行速度の低下を達成することを意味する。
【0130】
「治療上有効な量」は通常、薬剤の量が重篤な障害の改善を達成する量を包含するよう適格化させるために用いられる。例えば、有効な腫瘍治療剤は、被験体の生存率を延ばし、腫瘍に関連して急速に増える細胞増殖を阻害し、または腫瘍退縮に作用する。本明細書において用いられる用語の意味の範囲内で治療上有効な治療は、疾患の結果自体を改善するものではないとしても、被験体の生活の質を改善する治療を含む。
【0131】
「治療する」、「治療している」、または「治療」は、本発明に関して広く用いられ、これらの用語は各々、特に欠乏症、機能障害、疾患、または他の有害な経過(治療を妨げる経過および/または治療に起因する経過を含む)の予防、改善、阻害、または治癒を包含する。
【0132】
本明細書において「変異体」は、例えば、元のタンパク質とは構造的に異なるが、構造上および/または機能上関連しているタンパク質の天然型または合成型、例えばタンパク質の対立遺伝子変異体、パラログ、またはホモログを意味する。
【0133】
発明の詳細な説明
本発明は、特に自己緩衝タンパク質製剤(特にバイオ医薬タンパク質製剤)、この製剤の製造方法、また特にこの製剤の使用方法を初めて提供するものである。本発明により、所要のpH範囲内で、その目的の用途に適した濃度で十分な緩衝能を提供する任意のタンパク質を本発明の自己緩衝タンパク質製剤として製造することができる。本発明は、天然タンパク質と、「工学的に操作された」タンパク質の両方、特に以下でさらに論じるバイオ医薬タンパク質を含み、様々なタンパク質を用いて実施することができる。
【0134】
自己緩衝組成物(特に製薬上許容される組成物)として製剤化されるタンパク質(特にバイオ医薬タンパク質)の有用性は本明細書に開示される本発明以前は認識されていなかった。生理的pHの調節におけるタンパク質の影響は認識されており、研究されることもあった。しかし、タンパク質、特にバイオ医薬タンパク質が、付加的な緩衝剤を用いることなく製剤を所望のpH範囲内に維持するのに十分な緩衝能を有し得るということは今まで認識されていなかった。
【0135】
米国で使用するためのバイオ医薬タンパク質は、緩衝溶液剤、非緩衝溶液剤、非晶質懸濁剤または結晶性懸濁剤、および凍結乾燥物として製剤化される。
【0136】
大部分の緩衝溶液製剤は、従来の緩衝剤を使用する。2種類のタンパク質、Pulmozyme(登録商標)とHumulin(登録商標)は、従来の緩衝剤を使用せずに液剤として製剤化される。これらのいずれのタンパク質も、上記製剤中で実質的な自己緩衝能力をもたらすことはない。
【0137】
Pulmozyme(登録商標)は、約37,000ダルトンの分子量を有し、その260アミノ酸中に5個のヒスチジン、22個のアスパラギン酸、および12個のグルタミン酸を含有する。このタンパク質の、pH6.3における0.5 pH単位内の緩衝能は、実質的にそのヒスチジン含量により決定される。この事実に基づいて、上記製剤の自己緩衝能の上限値は、ヒスチジン残基の有効濃度、0.15 mMにより決定される。上記製剤中のアスパラギン酸とグルタミン酸のモル濃度は、0.9 mMである。従って、3種類のアミノ酸の全てを合わせた総モル濃度は、上記の製剤の濃度において、1 mMをわずかに上回るにすぎない。
【0138】
Humulin(登録商標)は、3.5 g/mlの濃度で製剤化される。このタンパク質は約6,000ダルトンの分子量を有し、2個のアスパラギン酸、8個のグルタミン酸、および2個のヒスチジンを含有する。これらのいずれのアミノ酸も、製剤のpH7.0〜7.8においては特に有効な緩衝ではない。
【0139】
この濃度において、pKaが製剤のpHに最も近いヒスチジンのモル濃度は、1.16 mMである。
【0140】
本発明のバイオ医薬凍結乾燥物は、使用の前に再構成され、溶液剤または懸濁剤を形成する。大部分の凍結乾燥物は、再構成される製剤の適正pHを維持する従来の緩衝液を含有する。タンパク質濃度が低いか、またはpHが低く(3未満)もしくは高く(9.5以上)なければならない幾つかの他のバイオ医薬凍結乾燥物は、効果的に緩衝されない。
【0141】
従って、現在のバイオ医薬タンパク質において、緩衝は、従来の緩衝剤を使用して達成される。タンパク質がそれ自体で医薬タンパク質製剤を緩衝する能力は、完全には理解されておらず、タンパク質医薬品の製造に使用されていなかった。
【0142】
タンパク質の緩衝能の測定は、主として、本発明による自己緩衝タンパク質製剤を開発するために重要である。これに関して、緩衝能を計測する方法と、タンパク質の緩衝能を測定する方法が以下に記載される。データの比較可能性を準備できるようにするため、タンパク質緩衝能は、比較可能な単位で、および/または緩衝液の標準に関連して表さなければならない。従って以下の項は、本発明による、pHの測定基準およびこれらの必要条件を満たす標準を説明する。
【0143】
1. 緩衝
「緩衝」の広く認められた定義は、酸または塩基を添加したときの、組成物のpH変化に対する抵抗性である。このため緩衝能は、pH変化に抵抗する組成物の能力として定義されることが多い。
【0144】
典型的には、緩衝能は、組成物のpHを所与量変化させるために必要とされる強酸または強塩基の量に関して表現される。Van Slykeは、最も広く用いられる緩衝能の定量的基準を提供した。この基準によれば、ある溶液に関する緩衝能は、標準的な温度条件と圧力条件下で、上記溶液1リットルのpHを1pH単位変化させるのに必要とされる強酸または強塩基の量として表現される。
【0145】
この基準によれば、例えば、pH 4.76で純水に溶解した5 mM酢酸塩(HOAc)、5 mM酢酸ナトリウム(NaOAc)1リットルの緩衝能は、4.09 x 10-3モルの一価の強塩基(すなわち、4.09 x 10-3当量の塩基)であり、以下のとおりに計算できる。
【0146】
上記溶液のヘンダーソン-ハッセルバルヒ式(Henderson-Hasselbalch equation)は:
pH = log {[5 mM] NaOAc / [5 mM] HOAc} + 4.76
従って、この緩衝液のpHを上昇させるために必要とされる一価の強塩基の濃度Xは:
4.76〜5.76は、5.76 = log {[5 mM + X mM] NaOAc / [5 mM - X mM] HOAc} + 4.76、
従って:
1.00 = log {[5 mM + X mM] NaOAc / [5 mM - X mM] HOAc}
10.0 = [5 mM + X mM] NaOAc / [5 mM - X mM] HOAc
10.0 = (5 mM + X mM) / (5 mM - X mM)
50 mM - 10X mM= 5 mM + X mM
11X mM = 45 mM
X = 4.09 mM、
であり、
1リットルにつき:
(4.09 x 10-3モル/リットル)(1リットル)(1当量/モル) = 4.09 x 10-3当量を生じさせる。
【0147】
従って、この基準によると、純水中に5 mM NaOAcと5 mM HOACをpH 4.76で含む10mM酢酸塩緩衝液1リットルの緩衝能は、塩基4.09 x 10-3当量/リットル/pH単位である。逆に言えば、上記溶液の緩衝能は、塩基4.09ミリ当量/リットル/pH単位であり、塩基4.09マイクロ当量/ミリリットル/pH単位であり、塩基0.409マイクロ当量/100マイクロリットル/pH単位であり、塩基40.9ナノモル/10マイクロリットル/pH単位であり、塩基4.09ナノモル/マイクロリットル/pH単位である。
【0148】
同じ計算から、pH 4.76におけるこの酢酸塩緩衝液の他の濃度について以下の緩衝能が算出される。上記の酢酸塩緩衝液は、2 mMで0.818 mEq/リットル/pH単位の緩衝能を有する。4 mMで、緩衝能は1.636 mEq/リットル/pH単位である。5 mMでの緩衝能は、2.045 mEq/リットル/pH単位である。7.5 mMで、緩衝能は3.068 mEq/リットル/pH単位である。10 mMで、上記の酢酸塩緩衝液は4.091 mEq/リットル/pH単位の緩衝能を有する。15 mMで、その緩衝能は、6.136 mEq/リットル/pH単位である。
【0149】
酢酸の解離定数(pKa)(pH 4.76)において酢酸塩緩衝液溶液の酢酸と酢酸塩が等モルである(すなわち、上記のpKaにおいて、酸と塩基が等量存在する)という事実は、注目に値する。結果として、酢酸のpKaにおける酢酸塩緩衝液のpH変化に対する抵抗性(緩衝能)は、酸の添加についても塩基の添加についても同じである。酸と塩基の平衡は、緩衝液中の緩衝剤の、pKaと等しいpHでの一般的特徴である。
【0150】
任意の他のpHにおいて、ある緩衝液は、異なる量の酸と塩基の形を含み、その結果、この緩衝液の、酸を添加したときの変化に対する抵抗性(すなわち、その緩衝能)は、塩基を添加したときの変化に対する抵抗性と同じではないだろう。結果として、このような緩衝液の能力を(i)pHを1単位ずつ低下させるために必要とされる酸の量、および(ii)pHを1単位ずつ上昇させるために必要とされる塩基の量に関して規定することが好ましい。
【0151】
緩衝液中での酸と塩基の分離は、所与の組成物、例えばpH標準に生じ、pH 4.76プラスまたはマイナスでの10 mM NaOAc(等モル量の酢酸と酢酸ナトリウムとを含む)の緩衝能の説明において上述した方法を用いて、任意のpHおよび緩衝液濃度で計算することができる。この結果は、参照用標準の緩衝能を規定するために用いることができる。
【0152】
従って、例えば、pH 5.0での溶液中の酢酸の、酢酸と酢酸塩への分離は、上記の手順を用いて容易に計算することが可能であり、この値から、塩基添加と酸添加の両方について緩衝能を計算することができる。このように計算すると、10 mM 酢酸ナトリウム緩衝液のpH 5.0〜5.5にわたる理論緩衝能は、約2.1 mM/0.5 pH単位であり、約4.2 mM/pH単位である。言い換えれば、上記緩衝液の緩衝能は、理論上は、約4.2 μEq/緩衝溶液1 ml/pH単位変化である。同様に、10 mM 酢酸ナトリウム緩衝液のpH 5.0〜4.0にわたる理論緩衝能は4.9 mMであり、言い換えれば、所与のpH範囲にわたる4.9 μEq/緩衝液1 ml/pH単位変化である。
【0153】
多くの場合、このような計算は極めて有用ではあるが、経験的標準と経験的測定が好ましい。特に好ましい経験的標準は、実施例1と2に例示される、pH範囲5.0〜4.0とpH範囲5.0〜5.5にわたる酢酸ナトリウム緩衝液である。特に好ましいのは、実施例1と2に従った酢酸ナトリウム緩衝液であり、この緩衝液の総酢酸塩濃度は、本明細書中の他の箇所に示される濃度の中でも特に、10 mM、好ましくは5 mM、特に4 mMである。
【0154】
pH 5.0の酢酸塩緩衝液は、上記のとおり、塩基添加のときのpH変化よりも、酸添加のときのpH変化に対してより抵抗性である。緩衝能の好ましい経験的標準において、標準酢酸塩緩衝液の緩衝能は、例えば以下:(i)上記緩衝液のpH 5.0〜pH 5.5の塩基滴定データについて計算される最小二乗法による回帰線の傾き、および(ii)上記緩衝液のpH 5.0〜pH 4.0の酸滴定データについて計算される最小二乗法による回帰線の傾き、として定義される。標準酢酸塩緩衝液の調製およびこれらの緩衝能の測定は、実施例1、2および3に記載されている。ほぼ同じ方法を利用して、他の好適な緩衝剤を用いて緩衝能標準を確立し、使用し得ることが理解されよう。
【0155】
本明細書による自己緩衝タンパク質組成物の緩衝能の計測において、この緩衝能を、同じpHで同じ緩衝能を有する標準緩衝液の濃度に関して表すのが便利である。緩衝剤のpKaのところにない標準(例えば、最初pH 5.0の酢酸ナトリウム緩衝液)を使用する場合、本発明の自己緩衝組成物は、塩基滴定のときの緩衝能もしくは酸滴定のときの緩衝能のいずれも(または両方)が、上記標準の対応する緩衝能と等しいか、またはこれを上回る場合には、標準の緩衝能と等しいか、またはそれ以上の緩衝能を有すると定義される。
【0156】
本発明による自己緩衝タンパク質組成物のpHは、通常、該組成物中の自己緩衝タンパク質、または任意の酸-塩基置換基のpKaのところにないということがさらに理解されよう。実際、タンパク質は多プロトン性であり、本明細書中で論じられるように幾つかの置換基を有することが多く、各々がいくらか異なるpKaを有し、これが所与のpH範囲におけるタンパク質の緩衝能に寄与する。従って、本発明による自己緩衝タンパク質製剤の緩衝能は、好ましくは、該組成物の所望のpHからの所与のpH範囲の変化にわたる酸滴定と塩基滴定の両方により経験的に測定される。この点に関する好ましい実施形態において緩衝能は、上記製剤の出発pHから、それぞれ±1pH単位の変化にわたり酸およびこれとは別に塩基を用いて滴定することによって測定される。特に好ましい実施形態において、滴定データは±0.5 pH単位のpH変化に関して収集される。実施例に記載されるように、緩衝能は、滴定範囲にわたって組成物に添加した酸または塩基の平衡の関数としての、pHのデータに関する最小二乗法による回帰線の傾きである。
【0157】
a. 緩衝能の経験的基準および標準
本発明の特定の好ましい実施形態において、緩衝能の基準は経験的標準である。この点について好ましい経験的標準の1つは、特定の緩衝剤を特定の濃度で含有し、水以外の成分を含まないか、または1以上の他の特定の成分を各々特定の濃度で含有する水溶液の、特定の温度および特定のpHにおける特定の体積である。
【0158】
本発明の様々な態様および好ましい実施形態による緩衝能の測定に特に好ましい特定の標準は、実施例1と2に記載される、21℃で1気圧の大気と平衡で他の成分を含まない10 mM 酢酸ナトリウム含有純水、pH 5.00であり、好ましくは、当量/単位体積/pH単位(例えばμEq/ml-pH)で表される。標準の緩衝能は、実施例1、2および3に記載されるように、また本明細書の他の箇所でさらに論じるように、経験的に測定しなければならない。
【0159】
本発明の様々な態様および好ましい実施形態による緩衝能を測定するための特に好ましい特定の標準は、実施例1および2に記載される、21℃で1気圧の大気と平衡で他の成分を含まない10 mM酢酸ナトリウム含有純水、pH 4.76であり、好ましくは、当量/単位体積/pH単位(例えばμEq/ml-pH)で表される。標準の緩衝能は、実施例1、2および3に記載されるように、また本明細書の他の箇所で論じるように、経験的に測定しなければならない。上記のとおり、ヘンダーソン-ハッセルバルヒ式に従うと、pH 4.76±1pH単位の範囲にわたるこの標準の計算緩衝能は、4.09マイクロ当量/ミリリットル/pH単位(4.09 μEq/ml-pH)である。
【0160】
この点に関する本発明の様々な態様および好ましい実施形態により、他の様々な緩衝液が他のpH範囲における標準としての用途に利用可能である。この点について、基準緩衝液(例えば周知の、分析化学測定に日常的に用いられる緩衝液)が特に好ましい。このような様々な緩衝剤は、分析化学の教科書およびpHと緩衝能の正確な測定に関する論文(monograph)中で示される。
【0161】
同様にこの点について本発明に役立つのは生物学的緩衝液であり、例えば、教科書の中では特に:TEITZ TEXTBOOK OF CLINICAL CHEMISTRY, 第3版, BurtisおよびAshwood編, W.B. Saunders Company, Philadelphia, PA (1999)、特に表50-13〜50-16に記載される生物学的緩衝液であって、本発明による緩衝剤と緩衝液ならびにpHおよび/または緩衝能標準としてのこれらの使用に関して該文献の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれ;THE TOOLS OF BIOCHEMISTRY, Terrance G. Cooper, John Wiley & Sons, New York, NY (1977)、特に第1章、1-35頁に記載される生物学的緩衝液であって、本発明による緩衝剤と緩衝液ならびにpHおよび/または緩衝能標準としてのこれらの使用に関して、極めて特に表1-3、1-4、および1-5ならびにこれらに関連する本文に関して該文献の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれ;またPROTEIN PURIFICATION PRINCIPLES AND PRACTICE, 第3版., Robert K. Scopes, Springer-Verlag, New York, NY (1994)、特に160-164頁、特にこの頁中の表6.4および6.5ならびにこれらに関連する本文、第12章、第3項、324-333頁、特にこの頁中の表12-4および12-5ならびにこれらに関連する本文、また別表Cの全体:Buffers for Use in Protein Chemistryに記載される生物学的緩衝液であって、本発明による緩衝剤および緩衝液ならびにこれらの使用に関して該文献の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0162】
しかし、水中に溶解した気体の一部は、OH-および/またはH3O+と反応するため、本発明の標準液の経験的に測定された緩衝能は、理論値から多少変化する可能性がある。従って、本発明の標準の定義は、この標準液が1気圧の大気と平衡状態にあることを必要とする。さらに緩衝標準は、その成分または緩衝能を変化させない物質(例えば酢酸塩緩衝液の有効濃度または活性を、緩衝能を変化させ得る任意の方法で変化させることができる酸、塩基、または他の反応物質を取り除く(leach)物質)の中に保持され、このような物質とのみ接触するものでなければならない。上記の、容器の大気平衡と不活性の両方を考慮すると、標準の緩衝能は、その体積を用いて直接的かつ線形的に測定されるだろう。従って、100 mlの緩衝能は、1.00リットルの緩衝能の1/10であり、10 mlの緩衝能は、1.00リットルの緩衝能の1/100である。結果的に、標準の体積は、都合良く調整し、その後所望のとおり1リットルに戻して標準化することができる。
【0163】
実使用のために上記の10 mM 酢酸塩緩衝能の標準を作製することが常に便利であるとは限らない。しかし、酢酸塩緩衝液と同様に、他の多様な緩衝剤を用いて他の様々な緩衝能の標準を作成し、使用することができる。緩衝標準が適切に調製されることのみを条件とすると、これらの標準を、上記の酢酸塩緩衝液の標準に対して較正し、その後現場で使用することができる。このような代替標準を用いて得られた結果は、実質的な歪みまたは誤りを有することなく、その後上記の酢酸塩標準に関して表すことができる。
【0164】
このような代替標準の緩衝能は、計算によって較正することもできる。このように較正するため、代替標準の緩衝能は直接的に測定され、mEq/単位体積/pH単位で表される。代替標準に基づく測定値は、その後、mEq/単位体積/pH単位表される代替標準の緩衝能と酢酸塩標準の緩衝能の比を用いて酢酸塩標準に対して標準化することができる。
【0165】
実標準を参照標準に戻して関連させるための計量法において一般的に利用されるこのような方法を用いて、上記の酢酸塩緩衝標準は、任意の組成物の緩衝能の測定のための、ポータブルで、測定可能な、信頼性のある、正確な基準であって、類似の方法を用いて他の組成物に適用される異なる基準と容易に比較することができる基準を提供する。
【0166】
b. 緩衝能標準の調製
緩衝能標準は、分析化学の確立された方法を用いて調製することができる。例えば、ANALYTICAL CHAMISTRY, 第3版, Douglas A. SkoogおよびDonald M. West, Holt, Rinehart and Winston, New York (1979)、の特に第9章(186-226頁)、第10章(227-233頁)、および583-588頁に記載の方法;TEITZ TEXTBOOK OF CLINICAL CHEMISTRY, 第3版, BurtisおよびAshwood編, W.B. Saunders Company, Philadelphia, PA (1999)、特に、緩衝液の調製と較正の一般的な実験技術に関する第1章および表50-13〜50-16;THE TOOLS OF BIOCHEMISTRY, Terrance G. Cooper, John Wiley & Sons, New York, NY (1977)、特に第1章、1-35頁、また表1-3、1-4、および1-5ならびにこれらに関する本文;PROTEIN PURIFICATION PRINCIPLES AND PRACTICE、第3版、Robert K. Scopes, Springer-Verlag, New York, NY (1994)、特に160-164頁、特にこの頁中表 6.4および6.5ならびにこれらに関する本文、第12章、第3項、324-333頁、特にこの頁中表12-4および12-5ならびにこれらに関する本文、また別表Cの全体:Buffers for Use in Protein Chemistry;ならびにREMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY, 第21版, Beringerら編, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (2005),特に緩衝剤、緩衝液、緩衝能等に関する部分を参照されたい。各文献は、特に本発明による緩衝液および緩衝能標準の調製および使用に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0167】
緩衝能標準の調製に用いられる水は、高度に精製されていなければならず、好ましくはI型水(Type I Water)、例えばmilliQ水、または3回蒸留水である。緩衝試薬は純粋で、特に、標準液のpHまたは緩衝能を変化させ得る任意の物質を含まないものでなければならず、例えば、上記の参考文献中に記載される、解析的化学分析を要する用途に好適な基準グレード試薬またはACSグレード試薬、特に上記に引用されるTEITZおよびREMINGTONであり、これらの文献中の内容は、特に分析グレード水と試薬に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
緩衝試薬の正確な組成は、十分に確立されていなければならない。各緩衝試薬について、その分子量は正確に知られているはずである。上記の分子量は、使用する予定の試薬に関するものでなければならず、この試薬に含まれる水和物などの付加物化合物の重量を含むはずである。1分子あたりの、水素供与体または水素受容体の有効数は、各緩衝試薬について正確に知られていなければならない。水和物などの様々な形態の比例配分は、このような形態の混合物を含む各試薬について知られているはずである。液体緩衝試薬の濃度は、好ましくはモル/体積およびモル/質量(例えば、モル/リットルおよびモル/gmまたはkg)で正確に知られているはずである。吸湿性物質を乾燥させて湿気を除去し、試薬が正確に量れるようにしなければならない。
【0169】
一般的に言えば、試薬および基準グレード試薬の大手業者により提供される情報は、上記の緩衝能標準の調製に関して十分に正確である。また分析化学において日常的に利用される周知の標準技術は、「吸湿性物質」を乾燥させて緩衝能標準を正確に量ることができるようにするために用いることができる。
【0170】
上記の各文献に記載されるように、十分に確立され、日常的に利用される分析化学法は、緩衝能を測定するために緩衝能標準液ならびにサンプルタンパク質溶液を滴定するための1N HClと1N NaOH(2つだけ挙げるとすれば)などの酸溶液と塩基溶液を調製し較正するために用いることができる。滴定用のNaOH溶液の調製は、特定の溶解した気体と塩基性溶液との相互作用、およびこの溶媒和のpH変化の効果から生じる誤りを排除するように行なわなければならないことに留意すべきである。例えば、緩衝液と緩衝標準の調製と較正に関して上で引用された、Skoog and West(1979)と他の参考文献を参照されたい。特に上記の滴定用標準溶液の調製に関する部分において、上記文献の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0171】
c. 緩衝能の経験的基準
緩衝能を測定するための標準液とサンプルの滴定は、周知の、日常的な方法を用いて行うことができる。滴定は手動で行うことができる。滴定は、自動滴定装置を用いて実施することもできる。この点について、本発明の使用に適した広範囲の自動滴定装置が多くの業者から市販されている。この点に関する本発明の使用に好適な方法は、緩衝標準の調製および較正に関して上で引用された参考文献に記載される方法と同じであり、各文献は、特に緩衝能を測定するための既知のおよび未知の溶液の滴定に関する部分において、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0172】
2. タンパク質による緩衝とタンパク質の緩衝能
a. タンパク質の水素平衡と緩衝能の測定
タンパク質は、常に多くの酸性の構成要素と塩基性の構成要素を含有する。結果として、タンパク質の水素イオン平衡は、極めて複雑である。実際、所与の環境におけるタンパク質の水素イオン平衡の完全な説明は、現在の理論的方法およびコンピュータによる方法を超えている。従って、タンパク質緩衝能の経験的測定が好ましい。タンパク質水素平衡の正確な経験的測定のために開発され、当業者が使用可能で、また当業者に日常的に用いられる方法は、本発明の自己緩衝タンパク質製剤の開発に関するタンパク質の緩衝特性の測定に十分に適している。このように、タンパク質のpH滴定曲線は、周知の方法(例えば、Tanfordとその同僚のリボヌクレアーゼに関するpH滴定研究に記載され、例示される方法)により本発明に従って測定することができる。T. Shedlovsky(編), ELECTROCHEMISTRY IN BIOLOGY AND MEDICINE, John Wiley and Sons, New York, 1955, 第13章;C. TanfordおよびJ.D. Hauenstein, J. Am. Chem. Soc. 78, 5287 (1956)、C. Tanford, PHYSICAL CHEMISTRY OF MACROMOLECULES, John Wiley and Sons, New York, 1961, 特に554-567頁を参照されたい。上記の文献は全て、特にタンパク質の水素イオン滴定ならびにタンパク質の緩衝作用と緩衝能の測定に関する部分において参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
しかし、本発明は上記の参考文献に記載されるような正確な測定は必要としない。むしろ、本発明のタンパク質の緩衝特性と緩衝能は、分析化学および生化学に関する標準的な参考文献、例えば上に引用されるSkoog (1979)、Cooper (1977)、およびScopes (1994)に記載された方法を用いて測定することが可能であり、各文献は全て、特に本発明の所与のpH範囲内のタンパク質の滴定曲線の経験的測定に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
本発明による滴定曲線と緩衝能の測定は、以下の実施例中で、酢酸塩緩衝液および様々な医薬タンパク質に関して詳細に記載されている。このように、タンパク質のpH滴定曲線は、上記の参考文献に記載される方法に従って、所与の製剤に関する特定の限定されたpH範囲にわたり経験的に測定することができる。これらの方法は、多くの点で酢酸塩緩衝液などの小分子の滴定のための分析化学に用いられる方法(実施例に示す方法)と同じである。しかし、有効な製剤に必要とされる立体構造と機能を維持するため、タンパク質の取扱いにはいくらか大きな注意を払わなければならない。
【0175】
タンパク質の滴定は、手動で、または自動滴定装置を用いて行うことができる。手動滴定用の機器と自動滴定装置は、多数の供給者と業者から容易に入手可能である。タンパク質のpH滴定曲線と緩衝能の測定に好適な方法は、規定のpH範囲にわたる酢酸塩緩衝液標準の滴定と幾つかの異なる治療タンパク質の滴定に言及することによって、実施例に例示される。これらの方法は、本発明のによる素のイオン化挙動と任意の他のタンパク質の緩衝能の測定に用いることができる。
【0176】
本発明の特定の態様は、タンパク質の緩衝能を溶液中の濃度の関数として測定することである。この点に関する好適な方法において、所与のタンパク質の溶液は、一連の段階的濃度で調製される。pH滴定曲線は、目的のpH範囲にわたる各濃度のタンパク質について測定される。好ましくは、滴定曲線は、塩基滴定と酸滴定の両方を用いて、目的の範囲について測定される。特定の好ましい実施形態において、上記のデータは、各溶液の測定pHに対して添加した酸または塩基の当量のグラフ上にプロットされる。典型的には、各濃度の滴定データは、約0.5〜1.0 pH単位の範囲について、好ましくは最小二乗法の回帰分析により測定される直線に密接に適合する。この点に関する好ましい実施形態において、各濃度のタンパク質の緩衝能は、当量/ml/pHの単位(またはその分割量)で表される回帰線の傾きと等しい。同様に、この点に関して本発明において同様に有用なのは、タンパク質の緩衝能とタンパク質の濃度との関係である。特定の好ましい実施形態において、この関係は、タンパク質濃度に対する緩衝能のグラフ上にプロットされた上記のデータに従って決定される、緩衝能データの最良適合直線の最小二乗法の回帰分析により測定する。
【0177】
本発明によるタンパク質の緩衝能に関する経験的データは、好ましくは標準酢酸塩緩衝液の緩衝能に関する。すなわち、この点に関する本発明の特に好ましい実施形態において、上記のように測定される、所与の製剤の所与の濃度における所与のタンパク質の緩衝能は、同等の緩衝能を有する標準酢酸塩緩衝液の濃度と等しい。
【0178】
本明細書に記載される経験的測定は、通常、本発明の様々な態様および好ましい実施形態による自己緩衝組成物の製剤化の極めて重要な局面であるが、このような組成物の設計、製造および使用を導くため、理論的方法およびコンピュータによる方法も(経験的測定と組み合わせて)、以下に説明するとおり生産的に用いることができる。
【0179】
b. タンパク質の水素イオン平衡と緩衝能の予測
タンパク質中の水素のイオン化は複雑であるが、一般用語では、アミノ酸側鎖のイオン化水素によって規定されるpH範囲と、末端アミノ基および末端カルボキシル基によって規定されるpH範囲とに分けることができる。ポリペプチド中の末端カルボキシル基のpKaは、典型的にはほぼ3.1である。アスパラギン酸とグルタミン酸の側鎖の酸性水素のpKaは、ほぼ4.4である。ポリペプチド中のヒスチジンのpKaはほぼ6.0である。末端アミノ基の水素イオン化pKaは、典型的にはほぼ7.5である。システイン中のスルフヒドリル基のpKaは、ほぼ8.5である。チロシンの水酸基とリシンのアミンは、両方ともほぼ10のpKaを有する。アルギニンのpKaはほぼ12である。
【0180】
立体構造上の折り畳みは、一般的に、極性溶媒中の大型ポリペプチドとタンパク質を、むき出しの溶媒接触可能領域と、周囲環境とほとんど接触しないか全く接触しないほぼ非極性のコア領域へと分配する。折り畳みは、これらの2極端の間に多くの環境を生じさせる。さらに、タンパク質中の所与のアミノ酸側鎖の周囲の微小環境は、典型的には、幾つかの可能性を挙げるとすれば、溶媒効果;イオン結合; キレート化;複合体形成;補因子との会合;および翻訳後修飾;の1つ以上による影響を受ける。これらは各々、タンパク質中の所与のアミノ酸のイオン化のpKaに影響を及ぼす可能性がある。このように、所与のタンパク質中の特異的残基のpKaは、フリーのアミノ酸のpKaから劇的に変化し得る。
【0181】
実際、タンパク質中のアミノ酸の微小環境によるpKaのゆらぎは、タンパク質の折り畳みならびに折り畳まれたタンパク質中の特異的アミノ酸の配置および荷電状態を研究するために用いられてきた。Tanfordらにより報告された複数のタンパク質滴定曲線は、共通して、幾つかの広範な特徴と複合している。典型的には、イオン化プロトンの一部のみが滴定曲線で説明される。他のイオン化プロトンは明らかにコア領域に位置し、溶媒とは接触不可能である。場合により検出することができる個々の同種の側鎖のpKaは、互いに区別することができる。それにも関わらず、検出可能に異なるが、これらのpKaは通常遊離アミノ酸のpKaに近い。
【0182】
タンパク質の最も強い緩衝作用は、誤解されているかもしれないが、通常は等電点では起こらない。実際、緩衝は、アミノ酸側鎖の水素と末端の水素によって決まり、このため上記のとおり遊離アミノ酸におけるイオン化水素のpKaにわたる範囲で生じる。これらのうち、タンパク質、特に、弱酸性のpH(pH 4〜6)でより可溶性かつ/またはより安定な特定の医薬タンパク質の組成物の製剤化のために最も重要なのは、アミノ酸のアスパラギン酸とグルタミン酸のカルボキシル水素のpKa、すなわち、pH 4.0〜5.5、特に約4.5の範囲において生じる緩衝作用である。
【0183】
所与の溶液中の所与のタンパク質の、所与のpHでの緩衝能の推定に利用可能な様々な方法がある。方法は、高度に専門的で複雑なコンピュータモデルから手動計算機上で実行し得る方法まで多岐にわたる。これらの方法はいずれも完全ではなく、あるいは完全に正確ではない。しかしこれらの方法は、場合により有用な推定をもたらす。
【0184】
例えば、場合により、溶液中のタンパク質に関して、その緩衝能の潜在的に有用な知識を、そのアミノ酸組成、末端アミノ基と末端カルボキシ基およびアミノ酸側鎖の水素供与体と水素受容体のpKa、タンパク質の濃度、ならびに溶液のpHに基づいて計算することができる。
【0185】
例えば、(遊離アミノ酸としての)グルタミン酸の側鎖カルボキシル水素のpKaの範囲内のpHにおけるタンパク質の緩衝能の潜在的に有用な推定は、タンパク質の分子量および、そのタンパク質が含むグルタミン酸残基の数から得ることができる。前者を後者で割ると、グルタミン酸1当量あたりの重量が与えられ、その結果、グルタミン酸のpKaにおけるイオン化水素1当量あたりの重量が与えられる。グルタミン酸とアスパラギン酸の側鎖のカルボキシル基はほぼ同じpKaを有するため、両方のpKa前後の緩衝能の推定を得るためには、これら2つのアミノ酸に関する上記の計算の結果を加えなければならない。上記のpKaにおけるタンパク質溶液の推定緩衝能は、溶液中のタンパク質の濃度と、自然発生的にもたらされる内因子、すなわちイオン化水素1当量あたりの重量から計算することができる。上記濃度を1当量当たりの重量で割ると、緩衝能のEq/体積単位での推定値が得られる。このような推定値は高すぎることが多いと考えられるが、これは一部の残基が、通常は該タンパク質の溶媒と接触し得ない領域に封鎖され、その結果現実の緩衝能に寄与しないためである。特定の例では、緩衝能に関する上記の封鎖効果を計算に入れてよい。例えば、封鎖の理論的推定値または経験的推定値を反映する分数係数を適用し、元の計算を調整することができる。
【0186】
このような計算は、通常、本明細書の他の箇所に記載される方法によるタンパク質緩衝能の経験的測定値よりは実用性が低く、それほど正確ではないだろう。しかし、溶液中タンパク質の緩衝能のおおよその最大推定値を提供することには役立つ。
【0187】
3. タンパク質
本明細書に開示される発明は、所望の製剤に必要とされるタンパク質濃度等のパラメータ内の所望のpH範囲で十分な緩衝能をもたらす任意のタンパク質を用いて実施することができる。この点について好ましいタンパク質は、動物および/またはヒトに対する治療上の使用、特にヒトに対する治療上の使用のための医薬タンパク質である。同様に好ましいタンパク質は、水溶液中で可溶なタンパク質、特に比較的高濃度で可溶なタンパク質および長時間安定なタンパク質である。さらに好ましいタンパク質は、所望の緩衝作用のpHに近い側鎖水素のイオン化定数を有する溶媒接触可能なアミノ酸を比較的多数含むタンパク質である。
【0188】
さらに、本発明の好ましいタンパク質は、被検体への投与後に極めて有害な抗原応答を誘導することのない医薬製剤用タンパク質である。この点について好ましいのは、動物および/またはヒトに対する医学的使用のためのタンパク質であり、特に後者に関して、ヒト化タンパク質およびヒトタンパク質である。
【0189】
さらに、本発明の好ましいタンパク質は、特異的な標的に選択的に結合するタンパク質、例えばリガンド結合タンパク質およびタンパク質リガンドである。抗原結合タンパク質、これらから誘導されるタンパク質、およびこれらに関連するタンパク質は、この点に関して本発明の特に好ましい実施形態である。この点において本発明の極めて好ましいタンパク質は、抗体、および抗体から誘導されるタンパク質または抗体を全体もしくは一部組み込んだタンパク質であり、例えばこのような実体を幾つか挙げるとすれば:モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、遺伝子操作された抗体、ハイブリッド抗体、二特異性抗体、単一鎖抗体、遺伝子改変された抗体(例えば、1つ以上のアミノ酸の置換、付加、および/または欠失を有する抗体(抗体変異体))、キメラ抗体、抗体誘導体、上記の任意の抗体に由来し得る、またこれらの抗体を同様に操作または改変した誘導体であり得る抗体フラグメント、抗体または抗体もしくは抗体フラグメントから誘導される部分(上記の任意の抗体またはその抗体の改変体もしくは誘導体)を含む融合タンパク質、抗体または抗体から誘導される部分(例えば、上記の任意の抗体またはその改変体もしくは誘導体)を含むコンジュゲート、ならびに化学的に改変された抗体、抗体フラグメント、抗体融合タンパク質等(例えば、上記の全ての抗体)が挙げられる。
【0190】
a. 抗体、抗体由来タンパク質および抗体関連タンパク質等
本発明による特に好ましいタンパク質は、天然の抗体に生じ、また天然の抗体を構成するアミノ酸配列と同一の配列(例えば、血清および抗血清中で生じるアミノ酸配列)を有する重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドなどの抗体ポリペプチドであり、例えば、自然の源から単離されるポリペプチドおよびタンパク質、ならびにハイブリドーマ技術、内因性遺伝子の活性化(例えば、相同組み換えまたは非相同組み換えによる)、内因性転写制御領域の制御下での外因性遺伝子の発現、外因性発現構築物の発現、半合成およびde novo合成により製造されるポリペプチドおよびタンパク質が挙げられる。上記の技術は、本発明による抗体ポリペプチドおよび抗体タンパク質を製造するために用いることができる、抗体ならびに抗体関連ポリペプチドおよび抗体関連タンパク質の製造に一般的に用いられる技術の一部である。
【0191】
これらの抗体関連ポリペプチドおよびタンパク質には、de novoアミノ酸配列を全体または一部に有する抗体関連ポリペプチドおよびタンパク質があり、特に、抗体の全体または1以上の部分(すなわち、天然の抗体ポリペプチドのアミノ酸配列中の任意の4つ以上の残基と同じ配列を有するアミノ酸の連続鎖)を含む抗体関連ポリペプチドおよびタンパク質、天然抗体のアミノ酸配列と何らかの方法では一致するが、他の方法では異なるアミノ酸配列を有する抗体関連ポリペプチドおよびタンパク質、天然の対応アミノ酸配列またはこれに関連する配列と同一のアミノ酸配列を有するが、1つ以上の翻訳後修飾がなされた対応アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する抗体関連ポリペプチドおよびタンパク質、また天然に生じたものであるか否かに関わらず本発明の抗体関連ポリペプチドおよびタンパク質と類似しているがこれらとは異なり、半de novoアミノ酸配列および/またはde novoアミノ酸配列を有する、第2の異なる抗体ポリペプチドのものでありまたはこの抗体ポリペプチドから誘導されまたはこの抗体ポリペプチドに関連する、また任意の他のポリペプチドもしくはタンパク質のものでありまたは任意の他のポリペプチドまたはタンパク質から誘導される、1つ以上のポリペプチド領域に(部分的にまたは全体的に)融合した上記のいずれかの抗体の一部に含まれる抗体関連ポリペプチドおよびタンパク質が挙げられる。
【0192】
さらに本明細書に記載される本発明の好ましいタンパク質は、上記の全ての改変タンパク質である。このような改変タンパク質には、非共有結合、共有結合、または共有結合と非共有結合の両方により化学的に改変されたタンパク質がある。同様に、細胞修飾系により作られ得る1つ以上の翻訳後修飾、または酵素的および/もしくは化学的方法によりex vivoで導入される修飾、または他の方法で導入される修飾をさらに含む、上記の全てのタンパク質が挙げられる。
【0193】
この点に関する本発明の好ましいタンパク質は、典型的な二量体(LH)2抗体を特定のプロテアーゼ(軽鎖はインタクトなままとするが、可変領域と隣接する定常領域の間で、重鎖を結合するジスルフィド結合「上で」重鎖を切断する)で切断することにより産生されるようなFabフラグメントである。この切断から、結合した重鎖の残った部分を含む1つのFcフラグメントと、インタクトな軽鎖と重鎖の可変領域を各々含む、2つの二量体Fabフラグメントが放出される。Fabフラグメントは、天然抗体の単離および/またはプロテアーゼを用いた切断を必要としない他の技術により製造することもできる。
【0194】
同様に好ましいのは、Fabフラグメントとほぼ同じ方法で、ジスルフィド結合の「間または下で」切断するプロテアーゼを用いて製造されるFab2フラグメントである。結果として、2つのFabフラグメントはジスルフィド結合で結合し、単一のFab2フラグメントとして放出される。Fab2フラグメントは、多くの他の技術、例えばインタクトな抗体の単離または所要の特異性を有するプロテアーゼを用いた切断を必要としない技術により製造することができる。さらに、単一特異性Fab2フラグメントと二重特異性Fab2フラグメントの両方は、現在、多様な日常的技術によって作製することができる。
【0195】
この点に関して同様に好ましいタンパク質は、3つのFabフラグメントが共に結合した、操作された抗体フラグメントのFab3フラグメントである。Fab3フラグメントは、単一特異性、二重特異性、または三重特異性であり得る。これらは、関連技術分野の当業者に周知の様々な方法で作製することができる。
【0196】
この点に関して他の好ましいタンパク質はFcフラグメントであり、例えばFabフラグメントまたはFab2フラグメントのいずれかの製造に用いられる方法と同じ方法でプロテアーゼを用いた切断により製造されるFcフラグメントである。しかし、Fcフラグメントの製造のため、フラグメントを含む軽鎖よりも、むしろフラグメントを含む二量体重鎖が単離される。Fcフラグメントは抗原結合部位を欠いているが、抗体を伴う生理的プロセスにおいて役割を果たすエフェクター領域を含む。Fcフラグメントは、この目的のための、当業者に周知で且つ日常的に用いられる様々な技術により作製することができる。
【0197】
この点に関する他の好ましいタンパク質は、単一鎖可変フラグメント(「scFv」)である。scFvは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を結合することにより作製される融合タンパク質である。scFvの重鎖と軽鎖は、典型的には、短いセリン、グリシンのリンカーにより結合される。scFvは、これらが由来する抗体と同じ特異性を有する。scFvは、最初はファージディスプレイ法で製造されていたが、現在は多様な周知の方法で作製することができる。
【0198】
同様に好ましいのは、2つのscFvの融合体であるBis-scFvである。Bis-scFvは、単一特異性または二重特異性であり得る。様々な方法が周知であり、本発明のBis-scFvの作製に適用することができる。
【0199】
同様にこの点について本発明により好ましいのは、、ミニボディー(minibody);単一特異性および二重特異性二量体(diabody);単一特異性、二重特異性および三重特異性三量体(triabody);単一特異性、二重特異性、三重特異性、四重特異性四量体(tetrabody)、VhHドメイン、V-NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダIg、Ig NAR、および他の抗体である。
【0200】
同様に、この点および他の点に関する本発明の様々な態様および好ましい実施形態による好適な実施形態は、抗体の1つ以上のCDRおよび/もしくはCDR由来および/もしくはCDR関連領域、または抗体の1つ以上のFRおよび/もしくはFR由来および/もしくはFR関連領域を含むタンパク質である。この点に関して、CDRは相補性決定領域(complementary determining region)、すなわち抗体の軽鎖または重鎖の超可変領域、典型的には、通常は抗体の抗原特異的結合部分の重要な部分である長さ約9〜12アミノ酸を意味する。この点に関して、FRは抗体のフレームワーク領域、すなわち、抗体の抗原特異的結合部分中でCDRを隔てる約15〜20アミノ酸の領域を意味する。
【0201】
CDR由来およびCDR関連という用語、ならびにFR由来およびFR関連という用語は、上記の「用語」の項で、抗体という用語関して抗体由来および抗体関連という用語について説明されるとおり、それぞれCDRおよびFRと同じ意味を有する。
【0202】
本明細書に開示される本発明の上記のおよび他の態様による抗体、抗体由来および抗体関連タンパク質に関して、例えば、Protein Engineering:Principles and Practice, Jeffrey L. ClelandおよびChares S. Craik, 編 Wiley-Liss, Inc., New York (1996)、この中でも特に、Kelley, Robert F., “Engineering Therapeutic Antibodies,”第15章, 399-434頁およびHollinger, P. & Hudson, P., “Engineered antibody fragments and the rise of single domains,” Nature Biotechnology, 2005年9月, 1126-1136を参照されたい。各文献は、特に抗体(特にバイオ医薬抗体)ならびに抗体由来タンパク質および抗体関連タンパク質(特に本明細書に開示される本発明の抗体由来タンパク質および抗体関連医薬タンパク質)の構造および操作に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0203】
上記全てのタンパク質に関して、本発明において特に好ましいのは、ヒトに投与された場合に著しく有害な免疫応答は生じない、ヒトタンパク質、ヒト化タンパク質、および他のタンパク質である。同様に本発明において好ましいのは、非ヒトに投与されたときに、同様に著しく有害な免疫応答を生じさせない上記全てのタンパク質である。
【0204】
本発明による極めて特に好ましいタンパク質は、上記の全てのタンパク質を含む、抗体および/または抗体由来タンパク質、ポリペプチド、もしくはフラグメント等を含む融合タンパク質である。この点に関して、本発明の極めて特に好ましい融合タンパク質は、本明細書に具体的に記載される、上記のような抗体または抗体由来タンパク質もしくはフラグメントとリガンド結合部分とを含む融合タンパク質である。
【0205】
b. 標的結合タンパク質
同様にこの点に関して本発明の好ましいタンパク質は、抗体と他の種類の標的結合タンパク質、およびこれに関連するタンパク質またはこれから誘導されるタンパク質、ならびにタンパク質リガンド、およびこれから誘導されるタンパク質またはこれに関連するタンパク質である。この点について特に好ましいリガンド結合タンパク質は、シグナルタンパク質およびエフェクタータンパク質に結合するタンパク質、およびこれらに関連するタンパク質またはこれらから誘導されるタンパク質である。
【0206】
このような結合タンパク質、例えば抗体、これから誘導されるタンパク質およびこれに関連するタンパク質は、単独でまたは任意の組合せで、1種以上の以下のタンパク質に結合する結合タンパク質である:
(i) CDタンパク質、例えば、限定するものではないが、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、およびCD34;
(ii) HER受容体ファミリータンパク質、例えば、HER2、HER3、HER4、およびEGF受容体;
(iii) 細胞接着分子、例えば、LFA-1、Mol、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、およびαv/β3 インテグリン;
(iv) 成長因子、例えば、限定するものではないが、血管内皮成長因子(「VEGF」);成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミューラー阻害物質、ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α)、エリスロポエチン(EPO)、神経成長因子(例えばNGF-β)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(例えばaFGFとbFGF)、表皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子(TGF)(例えば、特にTGF-αとTGF-β(例えばTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはTGF-β5))、インスリン様成長因子IおよびII(IGF-IとIGF-II)、脱(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、ならびに骨誘導因子;
(v) インスリンおよびインスリン関連タンパク質、例えば、限定するものではないが、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、およびインスリン様成長因子結合タンパク質;
(vi) 凝集および凝集関連タンパク質、例えば、特に因子VIII、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、タンパク質C、α-1-抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子(例えばウロキナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」))、ボンバジン、トロンビン、ならびにトロンボポエチン;
(vii) コロニー刺激因子(CSF)、例えば以下の、特にM-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;
(viii) 他の血液タンパク質および血清タンパク質、例えば、限定するものではないが、アルブミン、IgE、および血液型抗原;
(ix) 受容体および受容体関連タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、成長ホルモン受容体、およびT細胞受容体;
(x) 神経栄養因子、例えば、限定するものではないが、骨誘導神経栄養因子(BDNF)およびニューロトロフィン-3、-4、-5、または-6(NT-3、NT-4、NT-5、またはNT-6);
(xi) リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、およびプロリラキシン;
(xii) インターフェロン、例えば、インターフェロンα、β、およびγ;
(xiii) インターロイキン(IL)、例えば、IL-1〜IL-10;
(xiv) ウイルス抗原、例えば、限定するものではないが、AIDSエンベロープウイルス抗原;
(xv) リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺界面活性剤、腫瘍壊死因子αおよびβ、エンケファリナーゼ、RANTES(ランテス、通常はT細胞から発現および分泌され、活性化の際に調節される)、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、インヒビン、およびアクチビン;
(xvi) インテグリン、タンパク質AまたはD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、AIDSエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、イムノアドヘシン、抗体;および
(xvii) 上記のいずれかの生物学的に活性なフラグメントまたは変異体。
【0207】
上記の全てに関して、特に好ましいのは、有効な治療剤であるタンパク質、特に標的(特に上記に挙げられる標的タンパク質、これらから誘導される標的、これらに関連する標的、およびこれらの改変を含む)に結合することにより治療効果を発揮するタンパク質である。
【0208】
c. 特定の具体的なタンパク質
特定の具体的なタンパク質は、特定の抗体および抗体関連タンパク質、例えば、直下に、また本明細書の他の箇所に挙げられるペプチド抗体である。
【0209】
OPGL特異的抗体およびペプチド抗体等(RANKL特異的抗体、ペプチド抗体等とも呼ばれる)として、例えば完全ヒト化抗体およびヒトOPGL特異的抗体、特に完全ヒト化モノクローナル抗体、例えば、限定するものではないが、国際公開第WO 03/002713号に記載される抗体が挙げられる。この文献の内容は、OPGL特異的抗体と抗体関連タンパク質、特にこの文献中に示される配列を有するOPGL特異的抗体と抗体関連タンパク質、特に、限定するものではないが、この文献中に示される配列:9H7;18B2;2D8;2E11;16E1;および22B3、例えばこの文献の図2に示される配列番号2の軽鎖および/または図4に示される配列番号4の重鎖のいずれかを有するOPGL特異的抗体に関してその全体が本明細書に組み込まれる。各OPGL特異的抗体およびペプチド抗体等は、上記公報に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。OPGL特異的抗体(「Ab-hOPGL」)の、pH範囲4.5〜5.0とpH 5.0〜5.5にわたる酸滴定と塩基滴定は、以下の実施例に記載される。これらのpH範囲におけるAb-hOPGLの緩衝能の計算も、以下の実施例に記載される。
【0210】
ミオスタチン結合剤またはペプチド抗体として、例えばミオスタチン特異的ペプチド抗体、特に米国出願公開第2004/0181033号に記載されるミオスタチン特異的ペプチド抗体が挙げられる。この文献の内容は、ミオスタチン特異的ペプチド抗体に関する部分、例えば、限定するものではないが、mTN8-19ファミリーのペプチド抗体(例えばTN8-19-1〜TN8-19-40、TN8-19 con1およびTN8-19 con2を含む配列番号305〜351のペプチド抗体);配列番号357〜383のmL2ファミリーのペプチド抗体;配列番号384〜409のmL15ファミリー;配列番号410〜438のmL17ファミリー;配列番号439〜446のmL20ファミリー;配列番号447〜452のmL21ファミリー;配列番号453〜454のmL24ファミリー;および配列番号615〜631のペプチド抗体に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各ミオスタチン結合剤またはミオスタチン結合ペプチド抗体は、上記公報に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0211】
IL-4受容体特異的抗体、特にIL-4および/またはIL-13の、受容体への結合により媒介される活性を阻害するIL-4受容体特異的抗体として、例えば、国際特許出願第PCT/US2004/03742号の国際公開第WO 2005/047331号に記載されるIL-4受容体特異的抗体が挙げられる。この文献の内容は、IL-4受容体特異的抗体に関する部分、特にこの文献に記載されるIL-4受容体特異的抗体、特に、限定するものではないが、この文献中で指定されるIL-4受容体特異的抗体:L1H1;L1H2;L1H3;L1H4;L1H5;L1H6;L1H7;L1H8;L1H9;L1H10;L1H11;L2H1;L2H2;L2H3;L2H4;L2H5;L2H6;L2H7;L2H8;L2H9;L2H10;L2H11;L2H12;L213;L2H14;L3H1;L4H1;L5H1;L6H1に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各IL-4受容体特異的抗体は、上記公報に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。IL-4受容体特異的抗体(「Ab-hIL4R」)の、pH範囲4.5〜5.0とpH 5.0〜5.5にわたる酸滴定と塩基滴定、およびこの範囲における緩衝能の計算は、以下の実施例に記載される。
【0212】
インターロイキン1-受容体1(「IL1-R1」)特異的抗体、ペプチド抗体および関連タンパク質等として、例えば、限定するものではないが、米国出願公開第2004/097712A1号に記載されるIL1-R1特異的抗体が挙げられる。この文献の内容は、IL1-R1特異的結合タンパク質、特にモノクローナル抗体、特に、限定するものではないが、この文献中で指定されるモノクローナル抗体:15CA、26F5、27F2、24E12、および10H7に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各インターロイキン1-受容体1特異的抗体は、上記の米国出願公開に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0213】
Ang2特異的抗体およびペプチド抗体および関連タンパク質等として、例えば、限定するものではないが、国際公開第WO 03/057134号および米国出願公開第US2003/0229023号に記載されるAng2特異的抗体およびペプチド抗体および関連タンパク質が挙げられる。各文献の内容は、Ang2特異的抗体およびペプチド抗体等、特にこの文献に記載される配列のAng2特異的抗体およびペプチド抗体等、例えば、限定するものではないが:L1(N);L1(N) WT;L1(N) 1K WT;2xL1(N);2xL1(N) WT;Con4 (N)、Con4 (N) 1K WT、2xCon4 (N) 1K;L1(C);L1(C) 1K;2xL1 (C);Con4 (C);Con4 (C) 1K;2xCon4 (C) 1K;Con4-L1 (N);Con4-L1 (C);TN-12-9 (N);C17 (N);TN8-8(N);TN8-14 (N);Con 1 (N)に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。同様にAng2特異的抗体およびペプチド抗体および関連タンパク質等として、抗Ang2抗体およびその製剤、例えば国際公開第WO 2003/030833号に記載される抗Ang2抗体およびその製剤が挙げられ、この文献の内容は、抗Ang2抗体および製剤、特にこの文献に記載されるとおり多様な順番のAb526;Ab528;Ab531;Ab533;Ab535;Ab536;Ab537;Ab540;Ab543;Ab544;Ab545;Ab546;A551;Ab553;Ab555;Ab558;Ab559;Ab565;AbF1AbFD;AbFE;AbFJ;AbFK;AbG1D4;AbGC1E8;AbH1C12;AblA1;AblF;AblKAblP;およびAblPに関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各Ang2特異的抗体およびペプチド抗体および関連タンパク質は、上記の公報に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0214】
NGF特異的抗体として、例えば、特に、限定するものではないが、米国出願公開第US2005/0074821号に記載されるNGF特異的抗体が挙げられる。この文献の内容は、特に、この点に関するNGF特異的抗体および関連タンパク質、特に、限定するものではないが、この文献中で指定されたNGF特異的抗体、4D4、4G6、6H9、7H2、14D10および14D11に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各NGF特異的抗体は、上記の公報に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0215】
CD22特異的抗体および関連タンパク質として、例えば、米国特許第5,789,554号に記載されるCD22特異的抗体および関連タンパク質がある。この文献の内容は、CD22特異的抗体および関連タンパク質、特にヒトCD22特異的抗体、例えば、限定するものではないが、ヒト化抗体および完全ヒト抗体、例えば、限定するものではないが、ヒト化抗体および完全ヒトモノクローナル抗体、特に、限定するものではないが、例えばヒト-マウスモノクローナルhLL2γ鎖とヒト-マウスモノクローナルhLL2κ鎖がジスルフィド結合した二量体などのヒトCD22特異的IgG抗体(限定するものであるが、例えばCAS登録番号501423-23-0のEpratuzumab中のヒトCD22特異的完全ヒト化抗体)に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の例として、CD22特異的抗体(「Ab-hCD22」)の、pH範囲4.5〜5.0とpH 5.0〜5.5にわたる酸滴定と塩基滴定が以下の実施例に記載される。
【0216】
IGF-1受容体特異的抗体および関連タンパク質として、例えば、国際特許出願第PCT/US2005/046493号に記載されるIGF-1受容体特異的抗体および関連タンパク質がある。この文献の内容は、IGF-1受容体特異的抗体および関連タンパク質、例えば、限定するものではないが、この文献中で指定されるIGF-1特異的抗体、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26、L27H27、L28H28、L29H29、L30H30、L31H31、L32H32、L33H33、L34H34、L35H35、L36H36、L37H37、L38H38、L39H39、L40H40、L41H41、L42H42、L43H43、L44H44、L45H45、L46H46、L47H47、L48H48、L49H49、L50H50、L51H51およびL52H52に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。各IGF-1受容体特異的抗体および関連タンパク質は、上記の国際出願に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0217】
B-7関連タンパク質1(「B7RP-1」)特異的抗体として、(B7RP-1は文献中でB7H2、ICOSL、B7h、またCD275とも呼ばれる)特にB7RP特異的完全ヒトモノクローナルIgG2抗体、特にB7RP-1の第一免疫グロブリン様ドメイン中のエピトープに結合する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体、特にB7RP-1とその天然の受容体との相互作用を阻害する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体、特に活性型T細胞上のICOS、特に、上記の全ての点に関して、2005年7月8日に出願された米国仮出願第60/700,265号に開示されるB7RP-1特異的抗体が挙げられる。この文献の内容は、このような抗体および関連タンパク質、例えば、限定するものではないが、この文献中で指定される以下のB7RP-1特異的抗体:16H(軽鎖可変部配列と重鎖可変部配列の配列番号1と配列番号7を各々有する);5D(軽鎖可変部配列と重鎖可変部配列の配列番号2と配列番号9を各々有する);2H(軽鎖可変部配列と重鎖可変部配列の配列番号3と配列番号10を各々有する);43H(軽鎖可変部配列と重鎖可変部配列の配列番号6と配列番号14を各々有する);41H(軽鎖可変部配列と重鎖可変部配列の配列番号5と配列番号13を各々有する);および15H(軽鎖可変部配列と重鎖可変部配列の配列番号4と配列番号12を各々有する)に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各B7RP-1特異的抗体および関連タンパク質は、上記の米国仮出願に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。B7RP-1特異的抗体(「Ab-hB7RP1」)の酸滴定と塩基滴定および緩衝能の測定は、以下の実施例に示される。
【0218】
IL-15特異的抗体、ペプチド抗体および関連タンパク質として、例えば、特にヒト化モノクローナル抗体、特に米国出願公開第:US2003/0138421号;US2003/023586号;US2004/0071702号に開示される抗体がある。各IL-15特異的抗体等は、IL-15特異的抗体および関連タンパク質、例えばペプチド抗体、特に、例えば、限定するものではないが、146B7などのHuMax IL-15抗体および関連タンパク質に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0219】
IFNγ特異的抗体、特にヒトIFNγ特異的抗体、特に完全ヒト抗IFNγ抗体として、例えば、米国出願公開第US2005/0004353号に記載されるIFNγ特異的抗体がある。この文献の内容は、IFNγ特異的抗体、特に、例えば、この文献中で指定される抗体、1118;1118*;1119;1121;および1121*に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各IFNγ特異的抗体は、上記の米国出願公開に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0220】
TALL-1特異的抗体および他のTALL特異的結合タンパク質として、例えば、米国出願公開第2003/0195156号に記載されるTALL-1特異的抗体および他のTALL特異的結合タンパク質がある。この文献の内容は、TALL-1結合タンパク質、特に表4および表5Bの分子に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。各TALL-1特異的抗体および他のTALL特異的結合タンパク質は、上記の米国出願公開に開示されるとおり十分にその全体が参照により本明細書に個々にかつ具体的に組み込まれる。
【0221】
幹細胞因子(「SCF」)および関連タンパク質として、例えば、米国特許第6,204,363号および第6,207,802号に記載されるSCFおよび関連タンパク質がある。各SCFおよび関連タンパク質は、幹細胞因子および関連タンパク質、特に、例えば、幹細胞因子「STEMGEN(登録商標)」に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0222】
Flt3-リガンド、(「Flt3L」)および関連タンパク質として、例えば、米国特許第6,632,424号に記載されるFlt3Lおよび関連タンパク質があり、この文献の内容は、Flt3-リガンドおよび関連タンパク質に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0223】
IL-17受容体および関連タンパク質(「IL-17R」)として、例えば、米国特許第6,072,033号に記載されるIL-17Rおよび関連タンパク質があり、この文献の内容は、Flt3-リガンドおよび関連タンパク質に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0224】
Embrelとも呼ばれるエタネルセプト、および関連タンパク質。
【0225】
Actimmune(インターフェロン-γ-1b)、Activase(アルテプラーゼ)、Aldurazme(ラロニダーゼ)、Amevive(アレファセプト)、Avonex(インターフェロンβ-1a)、BeneFIX(ノナコグアルファ)、Beromun(タソネルミン)、Beatseron(インターフェロン-β-1b)、BEXXAR(トシツモマブ)、Tev-Tropin(ソマトロピン)、BioclateもしくはRECOMBINATE (組換え)、CEREZME(イミグルセラーゼ)、ENBREL(エタネルセプト)、Eprex(エポエチンα)、EPOGEN/Procit(エポエチンα)、FABRAZYME(アガルシダーゼベータ)、Fasturtec/Elitek ELITEK(ラスブリカーゼ)、FORTEO(テリパラタイド)、GENOTROPIN(ソマトロピン)、GlucaGen(グルカゴン)、Glucagon(グルカゴン、rDNA由来)、GONAL-F(ホリトロピンアルファ)、KOGENATE FS(オストコグアルファ)、HERCEPTIN(トラスツズマブ)、HUMATROPE(ソマトロピン)、HUMIRA(アダリムマブ)、溶液中インスリン、INFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1)、KINERET(登録商標)(アナキンラ)、Kogenate FS(抗血友病因子)、LEUKIN(サルグラモスチム組換えヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(rhuGM-CSF))、CAMPATH(アレムツズマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、TNKase(テネクテプラーゼ)、MYLOTARG(ゲムツズマブ オゾガマイシン)、NATRECOR(ネシリチド)、ARANESP(ダルベポエチンアルファ)、NEULASTA(ペグフィルグラスチム)、NEUMEGA(オプレルベキン)、NEUPOGEN(フィルグラスチム)、NORDITROPIN CARTRIDGES(ソマトロピン)、NOVOSEVEN(エプタコグアルファ)、NUTROPIN AQ(ソマトロピン)、Oncaspar(ペガスパルガーゼ)、ONTAK(デニロイキンディフィトックス)、ORTHOCLONE OKT(ムロモナブ-CD3)、OVIDREL(コリオゴナドトロピンアルファ)、PEGASYS(ペグインターフェロンアルファ-2a)、PROLEUKIN(アルデスロイキン)、PULMOZYME(ドルナーゼアルファ)、Retavase(レテプラーゼ)、REBETOL(登録商標)(リバビリン)とINTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ-2b)を含むREBETRON併用療法、REBIF(インターフェロンβ-1a)、REFACTO(抗血友病因子)、REFLUDAN(レピルジン)、REMICADE(インフリキシマブ)、REOPRO(アブシキシマブ)ROFERON(登録商標)-A(インターフェロンアルファ-2a)、SIMULECT(バシリキシマブ)、SOMAVERT(ペグビソマント)、SYNAGIS(登録商標)(パリビツマブ)、Stemben(アンセスチム、幹細胞因子)、THYROGEN、INTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ-2b)、PEG-INTRON(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ-2b)、XIGRIS(登録商標)(活性型ドロトレコジンα)、XOLAIR(登録商標)(オマリツマブ)、ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)、およびZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)。
【0226】
d. 配列変異
上記のおよび下記の全てのタンパク質に関して特に好ましいタンパク質としては、上記の結合タンパク質、特に医薬結合タンパク質の基準アミノ酸配列、例えば基準タンパク質のGenBankまたは他の基準配列と、アミノ酸配列が70%以上、特に80%以上、極めて特に90%以上、さらに極めて特に95%以上、特に97%以上、極めて特に98%以上、さらに極めて特に99%以上同一の領域を含むタンパク質が挙げられる。
【0227】
この点について、同一性は、様々な周知の、容易に入手可能なアミノ酸配列解析ソフトウェアを用いて測定することができる。好ましいソフトウェアとしては、例えば、配列の検索および整列の問題に対する満足のいく解決策と考えられるSmith-Watermanアルゴリズムを実行するソフトウェアが挙げられる。特にスピードが重要な考慮事項となる場合、他のアルゴリズムも用いることができる。DNA、RNA、およびポリペプチドのアラインメントおよびホモロジーマッチングのために一般的に利用され、これに関して使用することができるプログラムとしては、FASTA、TFASTA、BLASTN、BLASTP、BLASTX、TBLASTN、PROSRCH、BLAZE、およびMPSRCHが挙げられる。後者はMasParで作成された超並列プロセッサ上で実施するSmith-Watermanアルゴリズムを実行するものである。
【0228】
BLASTN、BLASTX、およびBLASTPプログラムは、このような決定に好適なプログラムであり、前者はポリヌクレオチド配列の比較用であり、後者の2つは、ポリペプチド配列の比較用である:BLASTXは、ポリヌクレオチド配列の3種全てのリーディングフレームから予想されるポリペプチド配列の比較用であり、BLASTPは、単一ポリペプチド配列の比較用である。
【0229】
BLASTは、多様な、ユーザーが任意に定義可能なパラメータを提供し、このパラメータは比較の実行前に設定される。これらのパラメータの一部は、インターネット上でアクセス可能なNCBI BLASTおよび他の配列アラインメントプログラムにより提供されるグラフィカルユーザインターフェース上で、他のパラメータに比べ、見てすぐに分かる。パラメータの設定および値は、サービスウェブサイト上で提示されまた説明され、特に、様々な容易に入手可能な教科書、例えば、限定するものではないが、BIOINFORMATICS:SEQUENCE AND GENOME ANALYSIS, 第2版, David W. Mount, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2004), 特に一般的なタンパク質配列および核酸配列の比較ならびにBLAST比較とBLAST検索に関する第3、4、5、および6章;SEQUENCE ANALYSIS IN A NUTSHELL:A GUIDE TO COMMON TOOLS AND DATABASES, Scott MarkelおよびDarryl Leon, O’Reilly & Associates, Sebastopol, California (2003), 特にBLASTに関する第7章において詳細に説明および提示される。各文献は、特にヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の比較、ならびにこれらの配列の同一性、類似性、相同性および/または同種のものの度合いの決定、特に試験配列と基準配列との同一性の度合い(パーセント)を計算するためのこれらの比較に関する部分において、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0230】
この点に関する本発明の好ましい実施形態において、配列の関連性は、SEQUENCE ANALYSIS IN A NUTSHELL:A GUIDE TO COMMON TOOLS AND DATABASES, Scott MarkelおよびDarryl Leon, O’Reilly & Associates, Sebastopol, California (2003), 47-51頁に説明されるとおり、任意の様々な上記のBLAST比較検索(期待値e = 10とし、他の全てのパラメータは、NCBI webサーバー上でこれらの初期値に設定される)により返される同一性スコアとしてパーセントで定義される。この文献は、その全体が、またBLASTを用いた配列比較(例えばNCBI BLAST上の配列比較)のための本発明のパラメータの好ましい設定の全事項において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0231】
下記の参考文献は、この点または他の点について配列比較に関するさらなる情報を提供する。GUIDE TO HUMAN GENOME COMPUTING, 編Martin J. Bishop, Academic Press, Harcourt Brace & Company Publishers, New York (1994)、この文献は、上記の、特にアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の同一性および/または相同性の決定に関する部分、特に第7章に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。BLASTプログラムは、Altschulら,“Basic Local Alignment Research Tool,” J Mol Biol 215: 403-410 (1990)に記載されており、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列解析ならびに相同性と同一性の決定に関するさらなる情報は、当業者に周知で容易に入手可能な多くの他の参考文献:NUCLEIC ACID AND PROTEIN SEQUENCE ANALYSIS: A PRACTICAL APPROACH, M. J. BishopおよびC. J. Rawings編, IRL Press, Oxford, UK (1987);PROTEIN STRUCTURE: A PRACTICAL APPROACH, T. E. Creighton編, IRL Press, Oxford, UK (1989);Doolittle, R. F.:“Searching through sequence databases,” Met Enz. 183: 99-110 (1990);MeyersおよびMiller:“Optimal alignments in linear space” Comput. Applica. in Biosci 4: 11-17 (1988);NeedlemanおよびWunsch:“A general method applicable to the search for similarities in amino acid sequence of two proteins,” J Mol Biol 48: 443-453 (1970)、ならびにSmithおよびWaterman “Identification of common molecular subsequences,” J Mol Biol 147: 1950 et seq. (1981)に提供され、各文献は上記の、特に配列比較ならびに同一性と相同性の決定に関する部分についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0232】
この点について特に好ましい実施形態では、上記の基準タンパク質の50%〜150%の活性を有する。特に極めて好ましい実施形態では、基準タンパク質の60%〜125%の活性を有し、さらにより極めて好ましい実施形態では、基準タンパク質の75%〜110%の活性を有し、さらに極めて好ましい実施形態では、基準の85%〜125%の活性を有し、さらに極めて好ましい実施形態では、基準の90%〜110%の活性を有する。
【0233】
4. 製剤
タンパク質医薬品の製剤化に従来利用されていた多くの試薬と方法は、本発明の様々な態様および好ましい実施形態による自己緩衝タンパク質組成物の製剤化に用いることができる。しかし、本発明の自己緩衝タンパク質製剤においては、緩衝は、従来の製剤のように緩衝剤からではなく、実質的に完全に該タンパク質自体からもたらされる。さらに、本発明の様々な態様および好ましい実施形態による自己緩衝タンパク質製剤は、このような緩衝剤を実質的に含まない。
【0234】
しかし、他の多くの点について、本発明の様々な態様および実施形態による自己緩衝タンパク質組成物は、タンパク質の製剤化に従来用いられていた試薬および方法、特に、医薬品(例えば動物およびヒトに使用するための医薬品)の製剤化に用いられていた試薬および方法、特に動物、および特にヒトに使用するためのタンパク質医薬品の製剤化に好適なこれらの試薬および方法を用いて製剤化することができる。
【0235】
これに従って、医薬品の製剤化および使用のための、周知かつ関連技術分野では日常的な多くの方法と成分を、これに関連する本発明の様々な態様および好ましい実施形態による自己緩衝タンパク質製剤の設計、製造および使用に用いることができる。このような方法と成分は、これに関して幾つか容易に入手可能な参考文献を挙げると、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY, 第21版;Beringerら編, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (2005);ANSEL’S PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVARY SYSTEMS, 第8版, Allenら編, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (2005);ならびにPHARMACEUTICAL FORMULATION OF PEPTIDES AND PROTEINS, Sven FrokjaerおよびLars Hovgaard編, CRC Press, Boca Raton, Florida (2000)に記載されており、各参考文献は、特にこれに関連した本発明の様々な態様および好ましい実施形態によるによるタンパク質の自己緩衝製剤に使用し得る従来の成分および方法に関する部分において、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0236】
この点について役立ち得るさらなる方法と成分は、特に米国特許第6,171,586号;国際公開WO 2005/044854号;米国特許第6,288,030号;米国特許第6,267,958号;国際公開WO 2004/055164号;米国特許第4,597,966号;米国特許第2003/0138417号;米国特許第6,252,055号;米国特許第5,608,038号;米国特許第6,875,432号;米国出願公開第2004/0197324号;国際公開WO 02/096457号;米国特許第5,945,098号;米国特許第5,237,054号;米国特許第6,485,932号;米国特許第6,821,515号;米国特許第5,792,838号;米国特許第5,654,403号;米国特許第5,908,826号;欧州特許第0 804 163号;および国際公開WO 2005/063291号に開示されており、各公報は、特に本発明による製薬上許容される自己緩衝タンパク質製剤に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0237】
多様な、特定の態様の成分および特定の種類の製剤が、例として以下にさらに記載されている。このように提供される記載は、本発明の様々な態様および実施形態による自己緩衝タンパク質製剤に適用可能な方法および組成物を網羅するものではなく、いかなる場合にもそれらを排除するものでもない。
【0238】
本発明の様々な態様の好ましい実施形態において、自己緩衝タンパク質の製剤はタンパク質と担体を含む。本明細書中で担体は、場合によって1種以上の、ビヒクル、主ビヒクル、希釈剤、主希釈剤、主担体、溶媒および/または主溶媒、とさまざまに呼ばれ得る。最も広い意味において、担体は、上記組成物および/またはその使用の態様に適合するように、気体、液体または固体であってよい。この点に関し本発明の一部の実施形態において、担体は、タンパク質が分散し得る粉末などの固体である。この点に関する好ましい実施形態において担体は液体であり、特に所望の緩衝能を与える濃度において自己緩衝タンパク質が高溶解性の液体である。液体担体は、有機担体または非有機担体であってよい。好ましくは、これらの液体担体は水性であり、最も好ましくは、これらは主にまたは完全に純水で構成される。
【0239】
本発明の様々な態様および実施形態による医薬上の使用のための製剤は、これらの製剤がさらされる、例えば滅菌処理(通常、活性剤との混合前に適用される)および保存中の状態などの方法および条件に適合するものでなければならないということが理解されるだろう。
【0240】
ほとんどの場合、本発明の多数の態様および実施形態による製剤は、賦形剤および他の医薬品などの付加成分を含むが、これに多少なりとも限定されるものではない。いずれにせよ本発明による製剤は、本明細書の他の箇所に記載されるように、その緩衝能が実質的にまたは完全に主タンパク質自体によってもたらされる自己緩衝製剤であるということが理解されるべきである。
【0241】
本発明の様々な態様および実施形態による製剤は、特に、下記の賦形剤、例えば、限定するものではないが、上記の製剤ならびに/または主ポリペプチドおよび/もしくはタンパク質の、例えば、質量オスモル濃度(osmolality)、容量オスモル濃度(osmolarity)、粘度、透明度、色度、張度、匂い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着もしくは浸透の速度を改変し、維持し、または保持するための成分を含んでいてもよい。
【0242】
当然ながら製剤は、特に、例えば製剤化される特定のタンパク質、該製剤に含まれる他の医薬品のような他の活性剤、目的の投与経路、利用する投与方法、投与量、投与頻度、および送達形態によって決まるだろう。
【0243】
本発明の様々な態様の特定の好ましい実施形態による製剤は、タンパク質、好ましくは医薬タンパク質および溶媒を含む組成物を提供し、ここで該タンパク質は、少なくとも約:2.0または3.0または4.0または5.0または6.50または8.00または10.0または15.0または20.0または30.0または40.0または50.0または75.0または100または125または150または200または250または300または350または400または500または700または1,000または1,500または2,000または2,500または3,000または4,000または5,000 mMの酢酸ナトリウム緩衝液の単位体積当たりの、pH範囲5.0〜4.0または5.0〜5.5にわたり実施例1または2および本明細書の他の箇所に記載されるとおりに測定された緩衝能を有するタンパク質である。
【0244】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特に医薬タンパク質組成物を提供し、ここで、該タンパク質の緩衝能を除いて、該組成物の単位体積あたりの緩衝能は、1.0または1.5または2.0または3.0または4.0または5.0 mMの酢酸ナトリウム緩衝液の、pH範囲5.0〜4.0またはpH 5.0〜5.5の範囲にわたり実施例1または2および本明細書の他の箇所に記載されるとおりに測定された緩衝能と等しいかまたはこれに満たない。
【0245】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質と溶媒を含む医薬タンパク質組成物を提供し、ここで、該組成物のpHにおいて、該タンパク質の緩衝能は、少なくとも約:1.00または1.50または1.63または2.00または3.00または4.00または5.00または6.50または8.00または10.0または15.0または20.0または30.0または40.0または50.0または75.0または100または125または150または200または250または300または350または400または500または700または1,000または1,500または2,000または2,500または3,000または4,000または5,000 mEq/l/1pH単位のpH変化である。
【0246】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質と溶媒を含む医薬タンパク質組成物を提供し、ここで、該組成物のpHにおいて、該タンパク質を除いて、該組成物の単位体積あたりの緩衝能は、0.50または1.00または1.50または2.00または3.00または4.00または5.00または6.50または8.00または10.0または20.0または25.0 mMの酢酸塩緩衝液の、pH範囲5.0〜4.0またはpH 5.0〜5.5にわたり実施例1または2および本明細書の他の箇所に記載されるとおりに測定された緩衝能と等しいかまたはこれに満たない。
【0247】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質と溶媒を含む医薬タンパク質組成物を提供し、ここで、所望のpHにおいて、該タンパク質は、該組成物の緩衝能の少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の緩衝能を与える。
【0248】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質と溶媒を含む医薬タンパク質組成物を提供し、ここで該タンパク質の濃度は、約:20〜400、または20〜300、または20〜250、または20〜200、または20〜150 mg/mlである。
【0249】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質と溶媒を含む医薬タンパク質組成物を提供し、ここで該タンパク質の緩衝作用により維持されるpHは、pH約:3.5〜8.0、または4.0〜6.0、または4.0〜5.5、または4.5〜5.5である。
【0250】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質と溶媒を含む医薬タンパク質組成物を提供し、ここで該組成物の塩濃度は:150 mMまたは125 mMまたは100 mMまたは75 mMまたは50 mMまたは25 mM未満である。
【0251】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特に医薬タンパク質組成物を提供し、該組成物はタンパク質と溶媒を含み、さらに1種以上の:製薬上許容される塩;浸透バランス剤(等張化剤);抗酸化物質;抗生物質;抗真菌剤;増量剤;凍結乾燥保護剤;消泡剤;キレート剤;保存剤;着色剤;鎮痛剤;または付加薬剤を含む。
【0252】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特に医薬タンパク質組成物を提供し、該組成物はタンパク質と溶媒を含み、また低張、等張、または高張、好ましくはほぼ等張、特に好ましくは等張な量の1種以上の製薬上許容されるポリオール、極めて好ましくは任意の1種以上のソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、またはグリセロール、特に極めて好ましくは約5%ソルビトール、5%マンニトール、9%スクロース、9%トレハロース、または2.5%グリセロール、この点について特に5%ソルビトール、5%マンニトール、9%スクロース、9%トレハロース、または2.5%グリセロールをさらに含む。
【0253】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特に医薬タンパク質組成物を提供し、該組成物はタンパク質と溶媒を含み、また1種以上の製薬上許容可能な界面活性剤、好ましくは1種以上のポリソルベート20、ポリソルベート80、他のソルビタンの脂肪酸エステル、ポリエトキシレート、およびポロキサマー188、特に好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80、好ましくは約0.001〜0.1%ポリソルベート20またはポリソルベート80、極めて好ましくは約0.002〜0.02%ポリソルベート20またはポリソルベート80、特に0.002〜0.02%ポリソルベート20またはポリソルベート80をさらに含む。
【0254】
本発明の様々な態様における特定の好ましい実施形態による製剤は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質と溶媒を含む医薬タンパク質組成物を提供し、ここで該タンパク質は医薬品であり、該組成物は動物またはヒトの医学上の被験体(medical subject)の治療に好適な、タンパク質の滅菌製剤である。
【0255】
同様に本明細書に記載される本発明の様々な態様および実施形態による製剤は、特に再構成される際に上記のまた本明細書の他の箇所に記載される製剤を与える、上記の凍結乾燥された組成物である。
【0256】
a. 賦形剤および他の付加成分
上記のとおり、本発明の態様による特定の実施形態は、自己緩衝タンパク質組成物、特にタンパク質(特に医薬タンパク質)に加えて、この項および本明細書の他の箇所に具体的に記載されるような1種以上の賦形剤を含む医薬タンパク質組成物を提供する。この点に関し賦形剤は、本発明において、以下の広範囲の目的、例えば製剤の物理的、化学的、または生物学的特性の調整、粘度の調整、および/または有効性を改善するためおよび/またはこのような製剤を安定化させるための本発明の処理、ならびに例えば、製造、輸送、保存、使用前処理、投与の間またその後に生じるストレスに起因する劣化および損傷に対する処理に使用される。
【0257】
タンパク質の安定化と製剤化、この点について有用な材料および方法に関する様々な説明、例えば、Arakawaら, “Solvent interactions in pharmaceutical formulations,” Pharm Res. 8(3): 285-91 (1991);RATIONAL DESIGN OF STABLE PROTEIN FORMULATIONS: THEORY AND PRACTICE, CarpenterとManning編 Pharmaceutical Biotechnology. 13: 61-84 (2002)中のKendrickら, “Physical stabilization of proteins in aqueous solution,”およびRandolphら, “Surfactant-protein interactions,” Pharm Biotechnol. 13: 159-75 (2002)が利用可能であり、各文献は、特に本発明による自己緩衝タンパク質製剤用の賦形剤およびその処理に関する部分において、特に動物および/またはヒトへの医学的使用のためのタンパク質医薬製品および方法に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0258】
本発明において有用な様々な賦形剤は表1に列挙され、またその下にさらに記載される。
【表1】

【0259】
i.
塩は、例えば、自己緩衝製剤のイオン強度および/または等張性を調整するためおよび/または本発明による自己緩衝タンパク質組成物の自己緩衝タンパク質または他の成分の溶解度および/または物理的安定性を改良するために、本発明の特定の好ましい実施形態にしたがって使用することができる。
【0260】
周知のとおり、イオンは、タンパク質表面上の荷電した残基に結合することにより、またタンパク質中の荷電基と極性基を遮蔽してこれらの静電相互作用、誘引作用および反発作用の強さを低下させることによりタンパク質の天然状態を安定化させることができる。イオンは、特に該タンパク質の変性したペプチド結合(-CONH)に結合することによりタンパク質の変性状態を安定化させることもできる。さらに、1つのタンパク質中の荷電基および極性基のイオン相互作用もまた、分子間静電相互作用を低下させ、これによりタンパク質の凝集および不溶化を妨げまたは低下させることができる。
【0261】
イオン種は、タンパク質に対する効果の点で著しく異なる。多数の、イオンのカテゴリー別順列およびタンパク質に対するこれらの影響が明らかにされており、これらは本発明による自己緩衝タンパク質組成物の製剤化に用いることができる。1つの例はホフマイスターシリーズ(Hofmeister series)であり、これは、イオン性の溶質と極性非イオン性の溶質を、溶液中のタンパク質の立体構造上の安定性に対するこれらの影響により順列付けるものである。安定化させる溶質は、「コスモトロピック」と呼ばれる。不安定化させる溶質は、「カオトロピック」と呼ばれる。コスモトロープは、一般的に高濃度(例えば、1モル超の硫酸アンモニウム)で用いられ、溶液からタンパク質を沈殿させる(「塩析」(salting-out))。カオトロープは、一般的にタンパク質を変性および/または安定化させるために用いられる(「塩溶」(salting-in))。「塩溶」および「塩析」に対するイオンの相対的影響が、ホフマイスターシリーズにおけるイオンの位置を規定する。
【0262】
これらの(上記の)有用性と欠点に加えて、塩は、タンパク質製剤の粘度の低下にも有効であり、この目的のために本発明において用いることができる。
【0263】
本発明の好ましい実施形態による非経口製剤中の等張性を維持し、タンパク質の溶解性および/または安定性を改良し、粘度特性を改良し、タンパク質の安定性および凝集に関する有害な塩の影響を回避し、塩媒介性のタンパク質分解を妨げるため、本発明の様々な好ましい実施形態による自己緩衝製剤中の塩濃度は(一価イオンについて)150 mM未満であり、また多価イオンについて150 mEq/l未満である。この点に関し、本発明の特定の特に好ましい実施形態において、総塩濃度は、約75 mEq/L〜約140 mEq/Lである。
【0264】
ii. アミノ酸
遊離のアミノ酸は、本発明の様々な好ましい実施形態によるタンパク質製剤中で、幾つか例を挙げれば、増量剤、安定剤および抗酸化物質として使用することができる。しかし、本発明による自己緩衝タンパク質製剤に含まれるアミノ酸は、緩衝作用をもたらさない。この理由により、顕著な緩衝能を有するアミノ酸は用いられず、これらのアミノ酸が顕著な緩衝活性を有するpHの前後の任意のpHでは用いられず、または低濃度で使用されるため、結果として、製剤中のアミノ酸の緩衝能は、顕著ではない。これは、特に医薬製剤中で緩衝として一般的に用いられるヒスチジンおよび他のアミノ酸の場合に当てはまる。
【0265】
上記の考慮事項に従って、リシン、プロリン、セリンおよびアラニンを製剤中のタンパク質を安定化させるために用いることができる。グリシンは、凍結乾燥物において正しいケーキ構造と特性を確保するため有用である。結果として、グリシンは、Neumega(登録商標)、Genotropin(登録商標)、およびHumatrope(登録商標)などの凍結乾燥製剤および再構成された凍結乾燥物において一般的な成分である。アルギニンは、Activase(登録商標)、Avonex(登録商標)、およびEnbrel(登録商標)液体などの液体製剤と凍結乾燥製剤の両方においてタンパク質の凝集を阻害するために役立ち得る。メチオニンは、抗酸化物質として有用である。
【0266】
iii. ポリオール
ポリオールとしては、糖(例えば、マンニトール、スクロース、およびソルビトール)ならびに多価アルコール(例えば、グリセロールおよびプロピレングリコール)、また、本明細書における考察の目的のため、ポリエチレングリコール(PEG)および関連物質が挙げられる。ポリオールはコスモトロピック(水に強い親和性をもつ)である。これらは、液体製剤および凍結乾燥製剤の両方において、物理的および化学的分解過程からタンパク質を保護するために有用な安定化剤である。ポリオールは、製剤の張度の調整にも役立つ。
【0267】
この点について、本発明において有用なポリオールの1つはマンニトールであり、これは、例えばLeukine(登録商標)、Enbrel(登録商標)-Lyo、およびBetaseron(登録商標)などの凍結乾燥製剤中のケーキの構造的安定性を確保するために一般的に用いられる。マンニトールは、ケーキの構造的安定性を確保する。マンニトールは通常、凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)、例えばスクロースと共に用いられる。ソルビトールとスクロースは、張度を調整するための好ましい薬剤であり、輸送中の凍結融解ストレスまたは製造工程中のバルクの生成に対して保護するための安定剤としての役割も果たす。還元糖(遊離のアルデヒド基またはケトン基を含む)、例えばグルコースとラクトースは、表面のリシン残基とアルギニン残基を糖化することができる。したがって、グルコースとラクトースは通常、本発明により用いるための好ましいポリオールではない。さらに、反応種を形成する糖、例えば酸性条件下でフルクトースとグルコースへと加水分解され、その結果糖化を引き起こすスクロースも、この点に関して本発明の好ましいアミノ酸ではない。PEGは、タンパク質の安定化のために、また抗凍結剤として有用であり、これに関して、Recombinate(登録商標)中で用いられるように、本発明中で用いることができる。
【0268】
iv. 界面活性剤
タンパク質分子は、気体と液体、固体と液体、および液体と液体の界面における、表面での吸着および変性ならびに結果として生じる凝集の影響を受けやすい。これらの影響は、通常、タンパク質濃度と反比例する。これらの有害な相互作用は、通常、タンパク質濃度と反比例し、典型的には製品の輸送中および取扱中に生じる物理的攪拌により悪化する。
【0269】
界面活性剤は、表面吸着を防止し、最小化し、または減少させるため、日常的に用いられる。この点に関して本発明における有用な界面活性剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ソルビタンの他の脂肪酸エステルであるポリエトキシレート、およびポロキサマー188が挙げられる。
【0270】
界面活性剤はまた、タンパク質の立体構造上の安定性を制御する目的にも一般的に用いられる。この点について界面活性剤の使用は、任意の所与の界面活性剤は、典型的には一部のタンパク質は安定化し、他のタンパク質は不安定にすると考えられるため、タンパク質特異的である。
【0271】
ポリソルベートは酸化的分解の影響を受けやすく、供給される際に、タンパク質残基の側鎖、特にメチオニンの酸化を引き起こすのに十分な過酸化物の量を含むことが多い。このため、ポリソルベートは注意深く使用しなければならず、使用する場合には、その最小有効濃度で用いなければならない。この点についてポリソルベートは、賦形剤はその最小有効濃度で使用しなければならないという原則の良い例となる。
【0272】
v. 抗酸化物質
様々な方法が、医薬製剤中のタンパク質の有害な酸化をもたらし得る。タンパク質の有害な酸化は、医薬製剤中で適正レベルの周辺酸素および温度を維持し、光への曝露を避けることによってある程度防ぐことができる。タンパク質の酸化的分解を防ぐため、抗酸化賦形剤も使用することができる。この点について有用な抗酸化物質は、還元剤、酸素/フリーラジカル捕捉剤、およびキレート剤である。本発明による治療用タンパク質製剤のための抗酸化物質は、好ましくは水溶性であり、製品の有効期間を通じてタンパク質の活性を維持する。EDTAは、この点に関して本発明の好ましい抗酸化物質であり、本発明において、酸性線維芽細胞成長因子の製剤ならびにKineret(登録商標)およびOntak(登録商標)などの製品において用いられてきた方法とほぼ同様に用いることができる。
【0273】
抗酸化物質は、タンパク質を損傷する可能性がある。例えば、特にグルタチオンなどの還元剤は、分子内ジスルフィド結合を破壊し得る。このように、本発明において用いるための抗酸化物質は、特に、これら自体が製剤中のタンパク質を損なう可能性を排除するか、または十分に低下させるように選択される。
【0274】
vi. 金属イオン
本発明による製剤は、タンパク質の補因子であって、タンパク質配位錯体を形成するために必要な金属イオン(例えば、特定のインスリン懸濁剤を形成するために必要な亜鉛)を含み得る。金属イオンは、タンパク質を分解する一部の過程も阻害し得る。しかし、金属イオンは、タンパク質を分解する物理的および化学的過程をも触媒する。
【0275】
マグネシウムイオン(10〜120 mM)は、アスパラギン酸からイソアスパラギン酸への異性化を阻害することもできる。Ca+2イオン(100 mM以下)は、ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase、Pulmozyme(登録商標))の安定性を高めることができる。しかし、Mg+2、Mn+2、およびZn+2は、rhDNaseを不安定化させる可能性がある。同様に、Ca+2とSr+2 はVIII因子を安定化させることができるが、この因子はMg+2、Mn+2およびZn+2、Cu+2およびFe+2により不安定化される可能性があり、この因子の凝集はAl+3イオンにより増大し得る。
【0276】
vii. 保存剤
保存剤は、同じ容器からの1回以上の取り出しを伴う複数回投与の非経口製剤を開発する場合に必要となる。保存剤の主な機能は、微生物増殖を妨げ、該医薬品の有効期間または使用期間を通じて製品の無菌性を確保することである。一般的に用いられる保存剤としては、ベンジルアルコール、フェノールおよびm-クレゾールが挙げられる。保存剤には、小分子非経口剤と共に使用されてきた長い歴史があるが、保存剤を含むタンパク質製剤の開発は困難である。保存剤は、ほぼ必ず、タンパク質上で不安定化効果(凝集)を有し、これが複数回投与タンパク質製剤におけるこれらの使用を制限する主な要因となる。現在まで、大部分のタンパク質薬は、単回使用のためにのみ製剤化されている。しかし、複数回投与製剤ができれば、患者にとって便利になり、市場性が高まるというさらなる利点を有する。好例は、ヒト成長ホルモン(hGH)であり、この保存製剤の開発は、より便利な、多用途の注射ペンの発表を商品化に導いた。少なくとも4種類の、hGHの保存製剤を含むこのようなペンデバイスが現在市販されている。Norditropin(登録商標)(液剤、Novo Nordisk)、Nutropin AQ(登録商標)(液剤、Genentech) & Genotropin(凍結乾燥型-二腔カートリッジ, Pharmacia & Upjohn)はフェノールを含み、一方Somatrope(登録商標)(Eli Lilly)は、m-クレゾールと共に製剤化される。
【0277】
保存製剤の製剤化および開発の間の幾つかの側面を考慮する必要がある。医薬品中の有効保存剤濃度は最適化されていなければならない。この事実は、タンパク質の安定性を損なうことなく抗菌効果を与える濃度範囲を有する上記の製剤中の所与の保存剤を試験することを必要とする。例えば、インターロイキン-1受容体(I型)用の液体製剤の開発において、至差走査熱量測定(DSC)を用いて3種類の保存剤が首尾よく選別された。これらの保存剤を、市販品において一般的に用いられる濃度での安定性に与えるこれらの影響に基づいて順位付けした。
【0278】
予想どおり、保存剤を含有する液体製剤の開発は、凍結乾燥製剤より困難である。凍結乾燥製品は、保存剤を用いずに凍結乾燥し、使用時に保存剤含有希釈剤を用いて再構成することができる。これは、保存剤がタンパク質と接触する時間を短縮し、接触に伴う安定性のリスクを著しく最小化する。液体製剤に用いる場合、保存剤の有効性と安定性は、製品の全有効期間(〜18-24月間)にわたって維持されなければならない。留意すべき重要な点は、保存剤の有効性は、有効薬と全ての賦形剤成分を含む最終製剤中で示されなければならないということである。
【0279】
本発明による自己緩衝タンパク質製剤、特に自己緩衝バイオ医薬タンパク質製剤は通常、特に投与の特定の経路および方法、特定の投与量および投与頻度、特定の治療および特定の疾患のために、特に生体利用性と持続性の範囲を伴って設計されるだろう。
【0280】
このように、製剤は、本発明に従って、任意の好適な経路、例えば、限定するものではないが、経口、経耳、経眼(opthalmically)、経直腸、および経膣による送達、ならびに非経口経路、例えば静脈注射および動脈注射、筋肉内注射、および皮下注射による送達のために設計することができる。
【0281】
b. 非経口投与用製剤
非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張滅菌注射液剤または懸濁剤の形態であってよい。これらの液剤と懸濁剤は、滅菌粉末剤または顆粒剤から、経口投与用製剤中で使用するための1種以上の上記の担体または希釈剤を用いて、または他の好適な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤を用いることによって調製することができる。
【0282】
非経口投与を意図する場合、本発明において使用するための治療用組成物は、発熱物質を含まず、製薬上許容されるビヒクル中に所望のタンパク質を含む、非経口的に許容可能な水性溶液形態とすることができる。非経口注射用に特に好適なビヒクルは滅菌純水であり、この中で本発明のタンパク質は、滅菌性の、等張自己緩衝溶液として製剤化される。
【0283】
このような製剤は、特に注射可能なミクロスフェア、生体内分解性粒子、高分子化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸)、ビーズ、またはリポソームの形態、例えば制御放出または持続放出をもたらす形態の所望のタンパク質製剤も含み得る。このような製剤は、特に埋め込み型の薬物送達デバイスにより導入することができる。
【0284】
非経口投与用の製剤は、粘度を調整する物質、例えばカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、およびデキストランを含んでもよい。製剤は、所望のタンパク質または他の成分の溶解度を増大させる成分および1種以上のこのような成分、例えば場合により、本発明の自己緩衝タンパク質を安定化させる成分も含み得る。
【0285】
c. 経肺投与用製剤
本発明の特定の実施形態による医薬組成物は、吸入に好適であり得る。経肺投与用に、本発明の医薬組成物は、エアロゾル形態で、または乾燥粉末エアロゾルを含む吸入器を用いる形態で投与することができる。例えば、結合剤は、吸入用の乾燥粉末として製剤化することができる。吸入溶液は、エアロゾル送達用の推進剤を用いて製剤化することもできる。さらに別の実施形態において、溶液は噴霧することができる。経肺投与は、化学修飾されたタンパク質の経肺送達を記載した国際特許出願第PCT/US94/001875号にさらに記載されている。
【0286】
d. 経口投与用製剤
経口投与用に、本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、または液剤の形態とすることができる。本発明の医薬組成物は、好ましくは、特定量の活性成分を含む投与単位の形態で製造される。このような投与単位の例は、錠剤またはカプセル剤である。この点に関して本発明による経口投与用製剤は常法で製造することが可能であり、ここで、製剤中の緩衝は、本明細書中の他の箇所に記載される自己緩衝タンパク質によりもたらされる。
【0287】
e. 制御放出製剤
本明細書中に記載される、本発明において役立ち得る付加的な製剤には、持続送達製剤と制御送達製剤がある。本発明の様々な態様および好ましい実施形態により使用し得るこのような持続送達製剤と制御送達製剤を製造するための技術は当業者に周知である。これらの技術には、リポソーム担体、生体内分解性マイクロ粒子、多孔質ビーズ、および半透過性ポリマーマトリクスを用いる送達方法、例えば国際特許出願第PCT/US93/00829号;米国特許第3,773,919号;欧州特許第58,481号;Sidmanら, Biopolymers, 22:547-556 (1983);Langerら, J. Biomed. Mater. Res., 15:167-277, (1981);Langerら, Chem. Tech., 12:98-105(1982);欧州特許第133,988号;Eppsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 82:3688-3692 (1985);欧州特許第36,676号;欧州特許第88,046号;および欧州特許第143,949号に記載される送達方法があり、各文献は、特に本明細書中に記載される本発明の自己緩衝持続-および制御送達医薬タンパク質製剤に関する部分においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0288】
f. 滅菌
in vivo投与に使用される本発明の医薬組成物は、通常は滅菌されていなければならない。滅菌は、滅菌濾過膜を通した濾過により達成される。組成物が凍結乾燥されている場合、この方法を用いる滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかに行うことができる。非経口投与用の組成物は、凍結乾燥形態でまたは溶液中で保存することができる。さらに、非経口組成物は通常、滅菌されたアクセス口を有する容器、例えば、皮下注射針で穴を開けられる止め具を有する静脈用液剤バッグまたはバイアルの中に入れられる。
【0289】
g. 保存
本発明の医薬組成物は、一旦製剤化されると、液剤、懸濁剤、ゲル剤、エマルション剤、固形剤、または脱水もしくは凍結乾燥させた粉末剤として滅菌バイアル中に保存することができる。このような製剤は、使用準備済の形態または投与前の再構成を必要とする形態(例えば凍結乾燥形態)のいずれかの形で保存することができる。
【0290】
h. 付加薬剤
本発明による自己緩衝タンパク質組成物、特に自己緩衝医薬タンパク質組成物は、該組成物の自己緩衝タンパク質に加えて、1種以上の付加薬剤を含み得る。このような薬剤は、タンパク質であってもよく、または他の種類の薬剤であってもよい。このような薬剤には、任意の障害または疾患の予防または治療用の薬剤がある。このような薬剤としては、例えば、抗生物質および抗真菌剤が挙げられる。また、付加薬剤はヒトの障害を治療するための薬剤も含み、例えば、限定するものではないが、幾つかの例として、炎症性疾患、癌、代謝障害、神経障害および腎臓障害の治療用薬剤が挙げられる。これに関して、本発明において用いることができる薬剤としては、自己緩衝組成物の作用を増大させ、および/またはこれらの投与の任意の望ましくない副作用を防ぎ、改善しもしくは治療するために有用な薬剤も挙げられる。
【0291】
i. 自己緩衝タンパク質製剤の製造方法
本発明による組成物は、タンパク質、特に医薬タンパク質を製造し、製剤化し、また使用するための周知の、日常的方法を用いて製造することができる。本発明の多くの態様の特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物の製造方法は、残留緩衝剤を除去するための対イオンの使用を含む。この点について、対イオンという用語は、組成物の製造中に、該組成物から緩衝剤を置換させる役割を果たす、任意の極性のまたは荷電した構成成分である。この点に関して有用な対イオンとしては、例えば、グリシン、塩化物、硫酸塩、およびリン酸塩が挙げられる。これに関して対イオンという用語は、置換イオンとほぼ同じものを意味するために用いられる。
【0292】
残留緩衝剤は、この対イオンを使用し、様々な周知の方法、例えば、限定するものではないが、透析の標準的な方法および、十字流透析ろ過法などの高性能膜拡散ベースの方法を用いて除去することができる。この点に関して、対イオンを用いた残留緩衝剤除去のための方法は、場合により、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて実施することもできる。
【0293】
この点に関する特定の関連した好ましい実施形態において、本発明による組成物は、自己緩衝タンパク質を含む製剤のpHより低いpHの無緩衝溶液に対する透析を伴う方法により調製される。この点に関する本発明の特に好ましい実施形態において、上記の無緩衝溶液は、対イオン、特に残留緩衝剤の除去を容易にし且つ自己緩衝タンパク質またはその製剤に悪影響を及ぼさない対イオンを含む。本発明のさらに特に好ましい実施形態において、透析後、製剤のpHは希酸または希塩基を用いて所望のpHに調整される。
【0294】
この点に関する特定の関連した好ましい実施形態において、本発明による組成物は、自己緩衝タンパク質を含む製剤のpHより低いpHの無緩衝溶液に対する十字流透析ろ過を伴う方法により調製される。この点に関する本発明の特に好ましい実施形態において、上記の無緩衝溶液は、対イオン、特に残留緩衝剤の除去を容易にし且つ自己緩衝タンパク質またはその製剤に悪影響を及ぼさない対イオンを含む。本発明のさらに特に好ましい実施形態において、透析ろ過後、製剤のpHは希酸または希塩基を用いて所望のpHに調整される。
【0295】
5. 投与経路
本発明による製剤は、様々な実施形態において、被験体への治療薬投与の分野における当業者に周知の様々な好適な経路で投与することができる。この点に関する本発明の実施形態において、本明細書の他の箇所に記載されるとおり、1種以上の製剤が消化管経由で投与される。他の実施形態において、本明細書の他の箇所に記載されるとおり、1種以上の製剤が非経口的に投与される。様々な実施形態において、1種以上の製剤は、非経口的に投与される1種以上の他の製剤と組み合わせて消化管経由で投与することができる。
【0296】
様々な実施形態におけるこのような経路としては、限定するものではないが、本発明の組成物の、経口投与、眼投与、粘膜投与、局所投与、直腸投与、経肺投与(例えば吸入スプレーによる)、および経皮投与が挙げられる。下記の、非経口投与経路もまた、本発明の様々な実施形態において有用である:静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内、髄腔内、骨内、関節内、滑膜内、皮内、皮内、皮下、腹膜投与、および/または筋肉内注射による投与。
【0297】
一部の実施形態において、静脈内、動脈内、皮内、皮内、皮下および/または筋肉内注射が用いられる。一部の実施形態において、静脈内、動脈内、皮内、皮下および/または筋肉内注射が用いられる。
【0298】
本発明の特定の実施形態において、組成物は局所的に、例えば、眼の新血管形成、網膜症、または年齢関連黄斑変性を治療するための眼内注射により投与される。
【0299】
6. 投与量
投与する自己緩衝タンパク質製剤の量、およびこの製剤を用いて疾患状態を治療するための投与レジメンは、様々な要因、例えば被験体の年齢、体重、性別および病状、疾患の種類、疾患の重篤度、投与の経路および頻度、ならびに利用する特定の製剤によって決まる。特に量は、投与されるタンパク質治療剤およびこれと組み合わせて投与される任意の他の治療剤によって決まる。投与量は、本発明による製剤に関して、この目的のために十分に確立された通例の製薬法を用いて決定することができる。
【0300】
7. 投与レジメン
本発明の製剤は、特定の患者の年齢、性別、体重、および症状などの要因、ならびに投与される製剤(例えば、固形製剤対液体製剤)を考慮して、医学および獣医学分野の当業者に周知の投与量また技術により投与することができる。ヒトまたは他の哺乳動物用の投与量は、当業者による過度の実験を要することなく、本明細書の開示、本明細書に引用される文献、および当技術分野の知識から決定することができる。
【0301】
様々な実施形態により、適正な投与量および投与計画は、多数の要因によって決まり、また異なる状況下で変わり得る。投与の最適な投与量計画を決定するパラメータとしては、典型的には、治療する疾患およびその段階;被験体の種、その健康状態、性別、年齢、体重、および代謝率;投与する他の治療剤;ならびに被験体の病歴または遺伝子型から予想される潜在的な合併症の一部または全部が挙げられるだろう。
【0302】
所与の状況下の最適な投与量計画もまた、製剤の性質、投与法、投与後の分配経路、および作用部位と被験体の身体の両方からの除去速度を考慮に入れるであろう。最終的に、最適投与の決定は、好ましくは、最大薬効の閾値以下、または活性剤の投与量に伴う悪影響が漸増量の利点を上回る閾値以上のいずれでもない有効投与量を提供するだろう。
【0303】
「投与量」は、一度に全て、分割量で、または長期間にわたり継続的に送達し得るということが理解されるだろう。全投与量は、単一の部位に送達してもよいし、または分割量で幾つかの部位に部分的に広げてもよい。さらに、投与量は治療の間同じ状態のままでよく、あるいは変化してもよい。
【0304】
様々な実施形態において、本発明の製剤は、初期投与量で投与され、その後追加的な投与でその量が維持される。一部の実施形態において、本発明の製剤は、最初は1つの方法により投与され、その後同じ方法により、または1つ以上の異なる方法により投与される。継続投与(on-going administration)の投与量を調整して、被験体中の活性剤のレベルを特定の値に維持することができる。一部の実施形態において、本発明の組成物は、最初に投与され、および/または、被験体中の該組成物のレベルを維持するため、静脈内注射で投与される。様々な実施形態において、他の投与形態が用いられる。
【0305】
本発明の製剤は、広範囲の時間にわたり多くの頻度で投与することが可能であり、例えば治療有効量を送達する任意の好適な頻度および時間範囲で投与することができる。投与量は、数時間毎に、1日に1回以上、毎日、一日おきにもしくは週に数回、またはそれほど頻繁ではなく継続的に送達し、投与することができる。一部の実施形態において、本発明の製剤は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、またはこれ以上の期間にわたり投与される。一部の実施形態において、本発明の製剤は、1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月、またはこれ以上の期間にわたり投与される。様々な実施形態において、本発明の製剤は、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年またはこれ以上の期間にわたり投与される。連続投与のための初回投与と追加投与量の好適な投与計画は、全て同じ投与量でもよいし、投与量が変化してもよい。適切な投与計画は、本明細書の開示、本明細書に引用される参考文献、および技術常識から、当業者が確定することができる。一般的に、治療期間は、疾患進行の期間、適用される治療の有効性、および治療対象の被験体の症状と応答に比例するだろう。
【0306】
8. 疾患と治療
好ましい実施形態において、本発明による自己緩衝医薬タンパク質組成物は、多様な疾患および障害を患っている複数の被験体を治療するために役立つ。本明細書の他の箇所で言及されるように、本発明は特に、広範囲の疾患関連の標的に特異的なFcエフェクター機能および結合ドメインを含むことが可能であり、疾患の治療に役立つ医薬抗体、抗体由来医薬タンパク質、および抗体関連医薬タンパク質の自己緩衝組成物を提供する。これらのタンパク質とその自己緩衝組成物は本明細書の上記に詳細に記載されており、これらの標的に関連する様々な障害および疾患の治療におけるこれらの使用もまた記載される。製剤方法、投与方法、投与量、および投与方法を含む本発明の組成物の使用方法は、全て上記に具体的に記載される。本発明の任意の特定の組成物の製剤化および投与は、本発明の説明により提供される指針を考慮に入れて、当技術分野における周知の日常的技術を用いて特定の疾患の治療に合うように調整することができる。本発明の様々な態様および好ましい実施形態による自己緩衝医薬タンパク質製剤を用いて有効に治療される疾患には、幾つか挙げるとすれば、炎症性疾患、癌、代謝障害、神経障害および腎障害がある。
【0307】
9. パッケージングとキット
本発明はまた、自己緩衝タンパク質製剤を含むキット、特に1つ以上の容器に自己緩衝医薬タンパク質製剤とその使用に関する説明書とを含むキット、特に、製剤がヒトへの使用に製薬上許容される製剤であるキットも提供する。好ましいキットには、1つ以上の容器に本発明の自己緩衝タンパク質製剤および1つ以上の別文書、キットの内容物および/またはその使用に関する情報を含むキット、特に、該タンパク質がヒトの疾患の治療のために製剤化されたバイオ医薬タンパク質であるキットがある。
【0308】
この点に関する本発明の特定の態様において、好ましいキットとしては、1種以上の本発明の自己緩衝タンパク質製剤を投与するための1つ以上の単室型または多室型シリンジ(例えば、液体シリンジおよび凍結乾燥シリンジ(lyosyringe)をさらに含む上記のキットが挙げられる。この点に関する本発明の特定の態様において、特定の特に好ましいキットは、充填済(preloaded)シリンジをさらに含む。この点に関するさらに特に好ましい実施形態において、上記のキットは、部分的真空下でバイアル中に密封された非経口投与用の自己緩衝医薬組成物を、シリンジに充填し被験体に投与する準備が整った形で含む。この点に関する特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、部分的真空下でバイアル中に配置される。この点または他の点の全てに関し、特定のさらに特に好ましい実施形態において、本発明のキットは、上記のいずれかによるバイアルを1つ以上含み、ここで各バイアルは、被験体に投与する単回投与量を含む。これらの全ての点および他の点において、本発明はさらに、上記のとおり配置され、再構成の際に、凍結乾燥物による組成物を与える該凍結乾燥物を含むキットに関する。この点について、本発明は、その特定の好ましい実施形態において、本発明による凍結乾燥物と、この凍結乾燥物を再構成するための滅菌希釈液とを含むキットをさらに提供する。
【実施例】
【0309】
本発明は、下記の例示的、非限定的な実施例としてさらに記載される。
【0310】
実施例1:酢酸ナトリウム緩衝液の酸滴定と、pH範囲5.0〜4.0の緩衝能
既知の濃度の酢酸塩の原液を、HPLCグレード水中で超高純度の氷酢酸塩を希釈し、その後NaOHを用いて所望の値までpHを滴定することによって調製した。原液を空気および21℃と平衡させた。体積標準(volumetric standard)は濃度1Nに調製し、HPLC水を用いて必要に応じて希釈した。
【0311】
1 mM、2.5 mM、5 mM、7.5 mM、10 mM、および15 mMの酢酸ナトリウム緩衝液は、原液をHPLC水中で希釈することにより調製した。この溶液はHClで滴定した。1、2.5、および5 mM溶液には0.2 N HClを使用し、7.5 mM溶液には0.4 N HClを使用し、10および15 mM溶液には0.8 N HClを使用した。上記の滴定は、標準的な分析実験技術を用いて行った。
【0312】
図1のパネルAは、各溶液のデータから計算した滴定データと、最小二乗法の傾き線を示す。各データセットから計算した傾き線の傾きを、対応する酢酸塩緩衝液の緩衝能と見なした。酢酸塩緩衝液濃度に対する緩衝能の線形の依存性は、図1のパネルBに示す。
【0313】
実施例2:酢酸ナトリウム緩衝液の塩基滴定と、pH範囲5.0〜5.5の緩衝能
酢酸塩緩衝液の原液と滴定用溶液は、実施例1に記載のとおりに調製した。この滴定用溶液は、pH 5.0〜5.5に滴定し、HClの代わりにNaOHを用いて滴定を行った点を除いて、実施例1に記載のとおりに滴定した。1、2.5、および5 mM 溶液を滴定するため0.2 N NaOHを使用し、7.5、10、および15 mM 溶液には0.4 N NaOHを使用した。滴定の結果は、図2Aに示す。酢酸塩緩衝液濃度に対する緩衝能の線形の依存性は、図2Bに示す。
【0314】
実施例3:HPLCによる酢酸塩の測定
酢酸塩緩衝液サンプル中で、分析用SE-HPLCを使用して酢酸塩を測定した。酢酸塩濃度の関数としてのピーク面積の標準曲線は、既知の酢酸塩濃度の緩衝液中の酢酸塩の分析により確立した。試験サンプル中の酢酸塩量は、この標準曲線から内挿した。標準曲線は、図3に示す。試験緩衝液中の酢酸塩の名目量と測定量は、図中の標準曲線の下に表としてまとめる。
【0315】
実施例4:Ab-hOPGL製剤のpH 5.0〜pH 4.0の範囲にわたる酸滴定
10 mM 酢酸塩(名目値)に溶解した原体Ab-hOPGL、5%ソルビトール、pH 5.0を、LABSCALE TFF(登録商標)system(Millipore社)に溶解した5.25%ソルビトール、pH 3.2(HClで調整)に対して、マルチマニホールドカセットを用いて、3 Millipore Pellicon XL 50再生セルロース限外ろ過膜を使用して透析ろ過した。この透析ろ過液は、各製剤の透析ろ過の間に、8〜10回交換した。透析ろ過の後、得られた無緩衝溶液のpHを測定し、0.05 N HClまたは0.05 N NaOHを用いてpH 5.0に調整した。
【0316】
1、10、30、60、90、および110 mg/mlの溶液を希釈により滴定用に調製した。各希釈液のpHは、必要に応じて、NaOHまたはHClでpH 5.0に調整した。滴定は、上記の実施例に記載のとおりに行った。1、10、および30 mg/ml溶液を滴定するために0.2 N HClを使用した。60 mg/ml溶液を滴定するために0.4 N HClを使用した。90および110 mg/mlの溶液を滴定するため0.8 N HClを使用した。
【0317】
滴定の結果は、図4に示す。最小二乗法による回帰線は、各濃度のデータセットについて示す。緩衝能は、各濃度の回帰線の傾きとして考えられる。
【0318】
実施例5:Ab-hOPGL製剤のpH範囲5.0〜6.0にわたる塩基滴定
1、10、30、60、90、および110 mg/mlのAb-hOPGL溶液を、実施例4に記載のとおり滴定用に調製した。前記実施例に記載のとおりNaOHを用いて塩基滴定を行った。1、10、30、および60 mg/mlの溶液には0.2 N NaOHを使用し、90および110 mg/mlの溶液には、0.4 N NaOHを使用した。滴定の結果は、図5のグラフに表す。各濃度のデータについて線形回帰線を示す。緩衝能は、各濃度の回帰線の傾きとして考えられる。
【0319】
実施例6:自己緩衝Ab-hOPGL製剤中の残留酢酸塩レベル
Ab-hOPGL製剤中の残留酢酸塩の量を、実施例3に記載の方法を用いて測定した。結果は酢酸塩濃度のHPLC測定に関する標準曲線を示すグラフで図6に表し、またグラフの下には、異なる濃度のAb-hOPGL製剤について行った測定結果の表を示す。Ab-hOPGL濃度は左側に示し(「名目測定値」)また各Ab-hOPGL濃度の酢酸塩の測定濃度は右側に示す。
【0320】
実施例7:Ab-hOPGL製剤±残留酢酸塩のpH範囲5.0〜4.0の緩衝能
自己緩衝Ab-hOPGL製剤を、上記の実施例に記載のとおりに調製し、HClで滴定した。さらに、例えば実施例3に記載のSE-HPLCによる酢酸塩含量の測定に基づいて残留酢酸塩緩衝の寄与を引くことによりデータを調整した。緩衝能は上記のとおり測定した。プラスとマイナス両方のデータセットについて同じ分析を行った。図7に表される結果は、Ab-hOPGL製剤の緩衝能に関する残留酢酸塩の影響を示す。この結果は、残留酢酸塩の緩衝能が、分析した自己緩衝Ab-hOPGL製剤の緩衝能の中ではマイナーな要因であることを明らかにする。
【0321】
実施例8:Ab-hOPGL±残留酢酸塩のpH範囲5.0〜6.0の緩衝能
自己緩衝Ab-hOPGL製剤を、上記の実施例に記載のとおりに調製し、NaOHで滴定した。さらに、例えば実施例3に記載のSE-HPLCによる酢酸塩含量の測定に基づいて残留酢酸塩緩衝の寄与を引くことによってデータを調整した。緩衝能は上記のとおりに測定した。プラスとマイナス両方のデータセットについて同じ分析を行った。図8に表す結果は、Ab-hOPGL製剤の緩衝能に対する残留酢酸塩の影響を示す。この結果は、残留酢酸塩の緩衝能が、分析した自己緩衝Ab-hOPGL製剤の緩衝能の中ではマイナーな要因であることを明らかにする。
【0322】
実施例9:自己緩衝製剤と従来の緩衝剤のpHおよびAb-hOPGL安定性
Ab-hOPGLの自己緩衝製剤を、上記の実施例のとおりに調製した。さらに製剤は、従来の緩衝剤である酢酸塩またはグルタミン酸塩のいずれかを含むように作製した。製剤は全て、60 mg/ml Ab-hOPGLを含有していた。この製剤中のpHとAb-hOPGLの安定性を、4℃で6ヶ月の保存期間中にモニターした。安定性は、保存期間中、製剤中の単量体のAb-hOPGLを測定することによりモニターした。測定は、上記のSE-HPLCを用いて行った。全3種類の製剤に関する結果を図9に示す。パネルAは3種類の製剤中のAb-hOPGLの安定性を示す。自己緩衝製剤中の安定性は、従来の緩衝製剤と同程度に優れている。パネルBはこの3種類の製剤のpH安定性を示す。この場合もやはり、自己緩衝製剤中のpH安定性は、従来の緩衝製剤と同程度に優れている。
【0323】
実施例10:Ab-hB7RP1の滴定と緩衝能 - pH 5.0〜4.0
Ab-hB7RP1の自己緩衝製剤を、上記実施例中でAb-hOPGLについて記載したとおり、1、10、30、および60 mg/mlの濃度に調製した。滴定は、上記のとおり、HClを用いて行った。さらに、例えば実施例3に記載のSE-HPLCによる酢酸塩含量の測定に基づいて残留酢酸塩緩衝の寄与を引くことによってデータを調整した。図10のパネルAは滴定結果を示す。図10のパネルBは、残留酢酸塩緩衝の寄与を引く前と引いた後の、Ab-hB7RP1製剤濃度に対する緩衝能の依存性を示す。この結果は、このpH範囲におけるAb-hB7RP1の自己緩衝能を明確に示す。Ab-hB7RP1の自己緩衝製剤は、40 mg/mlでは、10 mM 酢酸ナトリウム緩衝液とほぼ同程度のこのpH範囲での緩衝能を与える。60 mg/mlでは、上記製剤は、15 mM 酢酸ナトリウム緩衝液とほぼ同程度の緩衝能を与える。
【0324】
実施例11:Ab-hB7RP1の滴定と緩衝能 - pH 5.0〜6.0
Ab-hB7RP1の自己緩衝製剤を、上記実施例でAb-hOPGLについて記載したとおり、1、10、30、および60 mg/mlの濃度に調製した。滴定は、上記のとおり、NaOHを用いて行った。さらに、例えば実施例3に記載のSE-HPLCによる酢酸塩含量の測定に基づいて残留酢酸塩緩衝の寄与を引くことによりデータを調整した。図11のパネルAは滴定結果を示す。図11のパネルBは、残留酢酸塩緩衝の寄与を引く前と引いた後の、Ab-hB7RP1製剤濃度に対する緩衝能の依存性を示す。この結果は、このpH範囲におけるAb-hB7RP1の自己緩衝能を明確に示す。Ab-hB7RP1の自己緩衝製剤は、60 mg/mlでは、10 mM 酢酸ナトリウム緩衝液とほぼ同程度のこのpH範囲内での緩衝能を与える。
【0325】
実施例12:4℃と29℃における、自己緩衝製剤および従来の緩衝製剤中のAb-hB7RP1の安定性
Ab-hB7RP1を上記の実施例に記載のとおりに調製し、自己緩衝製剤と、従来の緩衝剤である酢酸塩またはグルタミン酸塩のいずれかを用いた製剤とに上記のとおり製剤化した。製剤は全て、60 mg/ml Ab-hB7RP1を含有していた。溶液のpHと溶液中のAb-hB7RP1の安定性を、4℃または29℃での26週間の保存期間中モニターした。安定性は、保存期間中に製剤中の単量体Ab-hB7RP1を測定することによりモニターした。測定は、SE-HPLCを用いて上記のとおり行った。結果を図12に示す。パネルAは4℃での保存の結果を示す。パネルBは29℃での保存の結果を示す。Ab-hB7RP1は、4℃の自己緩衝製剤中で従来の緩衝剤と少なくとも同程度に安定していた。29℃においては、自己緩衝製剤は従来の緩衝剤と少なくとも同程度に安定しており、10週目〜最終時点では、従来の緩衝製剤を僅かに上回っていた可能性がある。
【0326】
実施例13:4℃と29℃における、自己緩衝Ab-hB7RP1のpH安定性
60 mg/mlの自己緩衝Ab-hB7RP1を、上記の実施例に記載のとおりに調製した。上記の実施例に記載のとおりの保存期間中、同じ温度でpHをモニターした。結果は図13に示す。
【0327】
実施例14:Ab-hCD22製剤の緩衝能 - pH 4.0〜6.0
Ab-hCD22の自己緩衝製剤を調製し、上記の実施例中でAb-hOPGLとAb-hB7RP1について記載のとおり、pH範囲5.0〜4.0と5.0〜6.0にわたり滴定した。緩衝能は、上記と同様に滴定データから計算した。濃度の関数としての緩衝能を、両方のpH範囲について図14に示す。パネルAは、Ab-hCD22製剤のpH範囲5.0〜4.0にわたる緩衝能を示す。緩衝能は濃度に線形に依存し、Ab-hCD22の約21 mg/ml製剤は、同様に測定した10 mM 酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5.0の緩衝能と等しい緩衝能を有する。パネルBは、pH範囲5.0〜6.0にわたる濃度の関数としての緩衝能を示す。このpH範囲内で、Ab-hCD22の約30 mg/ml製剤は、同様に測定した10 mM 酢酸ナトリウム緩衝液 pH 5.0の緩衝能と等しい緩衝能を有する。
【0328】
実施例15:Ab-hIL4R 製剤の滴定と緩衝能 - pH 5.0〜4.0
Ab-hIL4Rの自己緩衝製剤を、上記の実施例中でAb-hOPGLに関して記載したとおり、1、10、25、および90 mg/mlの濃度に調製した。滴定は、上記のとおりHClを用いて行った。図15のパネルAは滴定結果を示す。図15のパネルBは、Ab-hIL4R濃度に対する緩衝能の依存性を示す。この結果は、Ab-hIL4RのこのpH範囲の自己緩衝能を明確に示す。約75 mg/mlでは、Ab-hIL4Rの自己緩衝製剤は、同様に測定した10 mM酢酸ナトリウム pH 5.0とほぼ同じ程度の標題のpH範囲の緩衝能を与える。
【0329】
実施例16:Ab-hIL4R製剤の滴定と緩衝能 - pH 5.0〜6.0
Ab-hIL4Rの自己緩衝製剤を、上記の実施例中でAb-hOPGLに関して記載したとおり、1、10、25、および90 mg/mlの濃度に調製した。滴定は、上記のとおりNaOHを用いて行った。図16のパネルAは滴定結果を示す。図16のパネルBは、このpH範囲における、Ab-hIL4R濃度に対する緩衝能の依存性を示す。この結果は、このpH範囲におけるAb-hIL4Rの自己緩衝能を明確に示す。約90 mg/mlでは、Ab-hIL4Rの自己緩衝製剤は、同様に測定した10 mM酢酸ナトリウム pH 5.0とほぼ同じ程度の、標題のpH範囲での緩衝能を与える。
【0330】
実施例17:37℃における、酢酸塩製剤と自己緩衝Ab-hIL4R製剤中のAb-hIL4RとpHの安定性
pH 5.0、70 mg/mlのAb-hIL4Rの自己緩衝製剤と酢酸塩緩衝剤とを上記のとおり調製した。pHとAb-hIL4Rの安定性は、製剤中で4週間、37℃でモニターした。Ab-hIL4Rの安定性は、上記のとおりSE-HPLCでモニターした。この結果を図17に示す。パネルAは、Ab-hIL4Rが、自己緩衝製剤中で酢酸ナトリウム緩衝製剤中のAb-hIL4Rと少なくとも同程度に安定であることを示す。パネルBは、自己緩衝製剤中のpHが酢酸ナトリウム緩衝剤中のpHと同程度に安定であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬タンパク質を含む組成物であって、該組成物のpH、21℃、一気圧、および大気との平衡状態において、該タンパク質は、該同一条件下で、pH 5.0〜4.0またはpH 5.0〜5.5のpH範囲の純水中の約4.0 mM 酢酸ナトリウム緩衝液の緩衝能以上の単位体積あたりの緩衝能を有し、さらに、該タンパク質の緩衝能を除いた該同一条件下での該組成物の単位体積あたりの緩衝能は、同条件下で、pH範囲5.0〜4.0または5.0〜5.5のpH範囲の純水中の2.0 mM 酢酸ナトリウム緩衝液の単位体積あたりの緩衝能以下であり、該組成物は、医薬用途の承認を与える法的権限を持つ当局により医薬用途が承認されているものである、前記組成物。
【請求項2】
医薬タンパク質を含む組成物であって、該組成物のpH、21℃、一気圧、および大気との平衡状態において、該タンパク質は、少なくとも1.50 mEq/リットル-pH単位の単位体積あたりの緩衝能を有し、さらに、その緩衝能を除いた該組成物の単位体積あたりの緩衝能は0.5 mEq/リットル-pH単位より小さく、該組成物は、医薬用途の承認を与える法的権限を持つ当局により医薬用途が承認されているものである、前記組成物。
【請求項3】
前記タンパク質が、前記組成物の緩衝能の少なくとも80%の緩衝能を与える、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質の濃度が、約20〜400mg/mlである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記タンパク質の緩衝作用により維持されるpHが約3.5〜8.0である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記タンパク質の緩衝作用により維持されるpHが約4〜6である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
1種以上の製薬上許容される塩をさらに含み、総塩濃度は150 mM未満である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
1種以上の製薬上許容される塩をさらに含み、総塩濃度は100 mM未満である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1種以上の製薬上許容されるポリオールをさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリオールが、1種以上のソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロースまたはグリセロールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
1種以上の製薬上許容される界面活性剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤が、1種以上のポリソルベート20、ポリソルベート80、他のソルビタンの脂肪酸エステル、ポリエトキシレート、およびポロキサマー188である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1種以上の製薬上許容される界面活性剤をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
1種以上の製薬上許容される、浸透バランス剤;抗酸化物質;抗生物質;抗真菌剤;増量剤;凍結乾燥保護剤;消泡剤;キレート剤;保存剤;着色剤;鎮痛剤;または付加薬剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
1種以上の製薬上許容される、浸透バランス剤;抗酸化物質;抗生物質;抗真菌剤;増量剤;凍結乾燥保護剤;消泡剤;キレート剤;保存剤;着色剤;鎮痛剤;または付加薬剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項16】
1種以上の製薬上許容される:浸透バランス剤;抗酸化物質;抗生物質;抗真菌剤;増量剤;凍結乾燥保護剤;消泡剤;キレート剤;保存剤;着色剤;鎮痛剤;または付加薬剤をさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項17】
前記タンパク質が:抗体、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、Fab3フラグメント、Fcフラグメント、scFvフラグメント、ビス-scFvフラグメント、ミニボディー(minibody)、二量体(diabody)、三量体(triabody)、四量体(tetrabody)、VhHドメイン、V-NARドメイン、VHドメイン、VLドメイン、ラクダ型Ig、Ig NAR、リセプチボディ(receptibody)、ペプチド抗体(peptibody)、またはこれらの変異体もしくは誘導体またはこれらに関連するタンパク質、またはこれらの改変体であるか、あるいはこれらを含む、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記タンパク質が、Fcフラグメントもしくはその一部、またはFcフラグメントもしくはその一部の変異体もしくは誘導体、またはFcフラグメントもしくはその一部に関連するタンパク質、またはこれらのいずれかの改変体を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記タンパク質が、一対の同種結合部分の第一結合部分をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記タンパク質が、CDタンパク質、HER受容体ファミリータンパク質、細胞接着分子、成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子(TGF)、インスリン様成長因子、骨誘導因子、インスリンおよびインスリン関連タンパク質、凝集および凝集関連タンパク質、コロニー刺激因子(CSF)、他の血液タンパク質および血清タンパク質血液型抗原;受容体、受容体関連タンパク質、成長ホルモン受容体、T細胞受容体;神経栄養因子、ニューロトロフィン、リラキシン、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、インテグリン、リウマチ因子、免疫毒素、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、ならびにイムノアドヘシンの1つ以上に特異的に結合するタンパク質からなる群から選択される、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記タンパク質が、OPGL特異的結合タンパク質、ミオスタチン特異的結合タンパク質、IL-4受容体特異的結合タンパク質、IL1-R1特異的結合タンパク質、Ang2特異的結合タンパク質、NGF-特異的結合タンパク質、CD22特異的結合タンパク質、IGF-1受容体特異的結合タンパク質、B7RP-1特異的結合タンパク質、IFNγ特異的結合タンパク質、TALL-1特異的結合タンパク質、幹細胞因子、Flt-3リガンド、およびIL-17受容体からなる群から選択される、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記タンパク質が、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34;HER2、HER3、HER4、EGF受容体;LFA-1、Mol、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン;血管内皮成長因子(「VEGF」);成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミューラー阻害物質、ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-β、血小板由来成長因子(PDGF)、aFGF、bFGF、表皮成長因子(EGF)、TGF-α、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、TGF-β5、IGF-I、IGF-II、デス(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン、インスリン様成長因子結合タンパク質;例えば、特に因子VIII、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、タンパク質C、α-1-抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)、ボンバジン(bombazine)、トロンビン、およびトロンボポエチン;M-CSF、GM-CSF、G-CSF、アルブミン、IgE、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、脳由来神経栄養因子(BDNF)、NT-3、NT-4、NT-5、NT-6;リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン;インターフェロン-α、-β、および-γ;IL-1〜IL-10;AIDSエンベロープウイルス抗原;カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺界面活性剤、腫瘍壊死因子-αおよび-β、エンケファリナーゼ、RANTES、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、インヒビン、およびアクチビン;タンパク質AまたはD、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ、崩壊促進因子(DAF)の1つ以上に特異的に結合するタンパク質からなる群から選択される、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記タンパク質が、Actimmune(インターフェロン-γ-1b)、Activase(アルテプラーゼ)、Aldurazme(ラロニダーゼ)、Amevive(アレファセプト)、Avonex(インターフェロンβ-1a)、BeneFIX(ノナコグアルファ)、Beromun(タソネルミン)、Beatseron(インターフェロン-β-1b)、BEXXAR(トシツモマブ)、Tev-Tropin(ソマトロピン)、BioclateもしくはRECOMBINATE(組換え)、CEREZME(イミグルセラーゼ)、ENBREL(エタネルセプト)、Eprex(エポエチンα)、EPOGEN/Procit(エポエチンα)、FABRAZYME(アガルシダーゼベータ)、Fasturtec/Elitek ELITEK(ラスブリカーゼ)、FORTEO(テリパラタイド)、GENOTROPIN(ソマトロピン)、GlucaGen(グルカゴン)、Glucagon(グルカゴン、rDNA由来)、GONAL-F(ホリトロピンアルファ)、KOGENATE FS(オストコグアルファ)、HERCEPTIN(トラスツズマブ)、HUMATROPE(ソマトロピン)、HUMIRA(アダリムマブ)、溶液中インスリン、INFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1)、KINERET(登録商標)(アナキンラ)、Kogenate FS(抗血友病因子)、LEUKIN(サルグラモスチム組換えヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(rhuGM-CSF))、CAMPATH(アレムツズマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、TNKase(テネクテプラーゼ)、MYLOTARG(ゲムツズマブ オゾガマイシン)、NATRECOR(ネシリチド)、ARANESP(ダルベポエチンアルファ)、NEULASTA(ペグフィルグラスチム)、NEUMEGA(オプレルベキン)、NEUPOGEN(フィルグラスチム)、NORDITROPIN CARTRIDGES(ソマトロピン)、NOVOSEVEN(エプタコグアルファ)、NUTROPIN AQ(ソマトロピン)、Oncaspar(ペガスパルガーゼ)、ONTAK(デニロイキンディフィトックス)、ORTHOCLONE OKT(ムロモナブ-CD3)、OVIDREL(コリオゴナドトロピンアルファ)、PEGASYS(ペグインターフェロンアルファ-2a)、PROLEUKIN(アルデスロイキン)、PULMOZYME(ドルナーゼアルファ)、Retavase(レテプラーゼ)、REBETOL(登録商標)(リバビリン)とINTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ-2b)を含むREBETRON併用療法、REBIF(インターフェロンβ-1a)、REFACTO(抗血友病因子)、REFLUDAN(レピルジン)、REMICADE(インフリキシマブ)、REOPRO(アブシキシマブ)ROFERON(登録商標)-A(インターフェロンアルファ-2a)、SIMULECT(バシリキシマブ)、SOMAVERT(ペグビソマント)、SYNAGIS(登録商標)(パリビツマブ)、Stemben(アンセスチム、幹細胞因子)、THYROGEN、INTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ-2b)、PEG-INTRON(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ-2b)、XIGRIS(登録商標)(活性型ドロトレコジンα)、XOLAIR(登録商標)(オマリツマブ)、ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)、およびZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)からなる群から選択される、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記タンパク質が、Ab-hOPGLもしくはそのフラグメント、またはAb-hOPGLもしくはそのフラグメントの変異体もしくは誘導体、またはAb-hOPGL関連タンパク質もしくはそのフラグメント、またはこれらのいずれかの改変体である、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記タンパク質がAb-hOPGLである、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記タンパク質が、Ab-hIL4Rもしくはそのフラグメント、またはAb-hIL4Rもしくはそのフラグメントの変異体もしくは誘導体、またはAb-hIL4R関連タンパク質もしくはそのフラグメント、またはこれらのいずれかの改変体である、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記タンパク質がAb-hIL4Rである、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記タンパク質が、Ab-hB7RP1もしくはそのフラグメント、またはAb-hB7RP1もしくはそのフラグメントの変異体もしくは誘導体、またはAb-hB7RP1関連タンパク質もしくはそのフラグメント、またはこれらのいずれかの改変体である、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記タンパク質がAb-hB7RP1である、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
再構成の際に、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物を与える凍結乾燥物。
【請求項31】
請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項32】
請求項30に記載の凍結乾燥物およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項33】
請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物を治療に有効な量および経路で被験体に投与することを含んでなる、被験体の治療方法。
【請求項34】
対イオンを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項35】
対イオンの存在下で、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、および/または十字流ろ過のいずれか1つ以上を使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項34に記載の組成物の製造方法。
【請求項36】
イオン交換クロマトグラフィーを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項35に記載の組成物の製造方法。
【請求項37】
所望のpH以下のpHを有する無緩衝溶液に対する透析ろ過により残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項1、5、7、9、11、13または14のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項38】
透析ろ過の後、希酸および/または希塩基の添加によりpHが所望のpHに調整される、請求項37に記載の組成物の製造方法。
【請求項39】
再構成の際に、請求項20に記載の組成物を与える凍結乾燥物。
【請求項40】
請求項20に記載の組成物およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項41】
請求項40に記載の凍結乾燥物、およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項42】
請求項20に記載の組成物を、治療に有効な量および経路で被験体に投与することを含んでなる、被験体の治療方法。
【請求項43】
対イオンを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項20に記載の組成物の製造方法。
【請求項44】
対イオンの存在下で、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、および/または十字流ろ過のいずれか1つ以上を使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項43に記載の組成物の製造方法。
【請求項45】
イオン交換クロマトグラフィーを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項43に記載の組成物の製造方法。
【請求項46】
所望のpH以下のpHを有する無緩衝溶液に対する透析ろ過により残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項20に記載の組成物の製造方法。
【請求項47】
透析ろ過の後、希酸および/または希塩基の添加によりpHが所望のpHに調整される、請求項46に記載の組成物の製造方法。
【請求項48】
再構成の際に、請求項21に記載の組成物を与える凍結乾燥物。
【請求項49】
請求項21に記載の組成物およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項50】
請求項49に記載の凍結乾燥物およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項51】
被験体に、治療に有効な量および経路で、請求項21に記載の組成物を投与することを含んでなる、被験体の治療方法。
【請求項52】
対イオンを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項21に記載の組成物の製造方法。
【請求項53】
対イオンの存在下で、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、および/または十字流ろ過のいずれか1つ以上を使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項52に記載の組成物の製造方法。
【請求項54】
イオン交換クロマトグラフィーを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項52に記載の組成物の製造方法。
【請求項55】
所望のpH以下のpHを有する無緩衝溶液に対する透析ろ過により残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項21に記載の組成物の製造方法。
【請求項56】
透析ろ過の後、希酸および/または希塩基の添加によりpHが所望のpHに調整される、請求項55に記載の組成物の製造方法。
【請求項57】
再構成の際に、請求項23に記載の組成物を与える凍結乾燥物。
【請求項58】
請求項23に記載の組成物およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項59】
請求項57に記載の凍結乾燥物、およびその使用に関する説明書を1つ以上の容器に含むキット。
【請求項60】
請求項23に記載の組成物を、治療に有効な量および経路で被験体に投与することを含んでなる、被験体の治療方法。
【請求項61】
対イオンを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項23に記載の組成物の製造方法。
【請求項62】
対イオンの存在下で、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、および/または十字流ろ過のいずれか1つ以上を使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項61に記載の組成物の製造方法。
【請求項63】
イオン交換クロマトグラフィーを使用して残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項61に記載の組成物の製造方法。
【請求項64】
所望のpH以下のpHを有する無緩衝溶液に対する透析ろ過により残留緩衝剤を除去することを含んでなる、請求項61に記載の組成物の製造方法。
【請求項65】
透析ろ過の後、希酸および/または希塩基の添加によりpHが所望のpHに調整される、請求項62に記載の組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−47261(P2013−47261A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242454(P2012−242454)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2008−516958(P2008−516958)の分割
【原出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】