説明

自然石ブロックおよびその製造方法

【課題】コンクリートの材料であるセメントに含まれる六価クロム等の有害重金属の溶出を防止するとともに、河川や護岸工事の現場で発生する自然石を有効に利用して、環境に優しい、長寿命の自然石ブロックおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】セメントと、骨材と、セメント中の重金属無害化処理のための添加剤を添加し、重金属溶出を防止するための硬化剤を添加しつつ混練し、得られた結合材料を、予め複数の自然石が配置された型枠に流し込み、所定の期間養生した後、型枠から離型して自然石ブロック1を得る。自然石ブロック1には、基材2から自然石3が露出しているので、そこに苔や藻、水草が育成しやすい。また、添加剤、硬化剤を用いてセメント中の有害重金属の溶出を防止しているので、有害重金属の蓄積による環境汚染の問題を解消でき、アルカリ骨材反応を抑制して長寿命化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント中に含まれる重金属類の無害化を目的とした自然石ブロックおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、河川の氾濫による水害を防ぐために、治水工事が行われるが、護岸にはコンクリートブロックが用いられる。
【0003】
近年では、外観の向上のみならず、苔や藻、水草を植生させるために、コンクリートブロックの表面に凹凸を形成した擬石ブロックや、自然石の一部が表面に露出するように自然石を埋設したブロックが採用される傾向にある。
【0004】
例えば特許文献1には、型枠の底版上に砂を敷設し、その砂層に石材類をその一部が露出するように埋め込み配置した後、速硬性のモルタルを石材間の砂層表面に流し込み、モルタル硬化後、コンクリートを打設して養生硬化させ、養生後脱型して石材間の砂を除去するコンクリートブロックの製法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、乾いた玉砂利が詰められている箱形の中枠体の中に大中小の所要数の自然石の頂部をそれぞれ中枠体底部に当接させるようにして埋め込み、中枠体に振動を加えて自然石を安定させるとともに、自然石が互いに形成する隙間及び自然石と中枠体との間に詰められている湿った玉砂利を締め固め、中枠体の四辺底部に蝶着されている枠板各片を引き起こし、外枠体を組み立て、締め固められた湿った玉砂利の層及び同層から上に露出する自然石の上にポーラスコンクリートを打設し、コンクリート養生後、脱型して擁壁を製造する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平3−49903号公報
【特許文献2】特開2004−106505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンクリートブロックとしては、工場で型枠にコンクリートを流し込んで成形したものを現地まで運搬し、重機等を用いて敷設しているが、工場からトラック等に積み込む際の手間、運搬する手間、現地で積み卸す手間がかかり、工期の長期化、高コスト化を招いている。一方、現地では、川底を浚渫する際に、大量の土砂や岩が発生し、これらを他の場所に運搬する作業が必要になる。
【0008】
コンクリートブロックの材料であるポルトランドセメントは、石灰石,粘土,軟ケイ石,硫化鉄鉱焼滓等の天然資源を原料として製造されるため、地球上のあらゆる元素が微量成分として含まれている。その中には、有害なCr,Zn,Pb,Cu,As,Se,Cd,Hg等の重金属も含まれている。例えばCrには水溶性の六価クロムが含まれ、セメントの焼成過程で天然の無害な三価クロムの一部が高温、酸化雰囲気下で六価クロムとなったもので、セメント製造の宿命ともいえる物質である。
【0009】
コンクリートブロックを河川の護岸に使用した場合、セメント中に含まれる重金属等の微量成分が環境中に溶出するリスクがあることが、従来より危惧されている。
【0010】
また、コンクリートのアルカリ骨材反応により、コンクリートブロックが中性化し続けるため、コンクリートが膨張、収縮し、そのため、設計の寿命に達しないうちに劣化してしまうという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、コンクリートの材料であるセメントに含まれる六価クロム等の有害重金属の溶出を防止するとともに、長寿命化を図り、河川や護岸工事の現場で発生する自然石を有効に利用して、環境に優しい自然石ブロックおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の第1の構成は、セメントと、骨材と、前記セメント中の重金属無害化処理のための添加剤と、前記重金属溶出を防止するための硬化剤とが混練された結合材料により、複数の自然石が固着されている自然石ブロックである。
【0013】
また、本発明の第2の構成は、セメントと、骨材と、前記セメント中の重金属無害化処理のための添加剤を添加し、前記重金属溶出を防止するための硬化剤を添加しつつ混練する第1の工程と、前記第1の工程により得られた結合材料を、予め複数の自然石が配置された型枠に流し込む第2の工程と、前記第2の工程から所定の期間養生した後、前記型枠から離型する第3の工程とを含むことを特徴とする自然石ブロックの製造方法である。
【0014】
本発明では、セメント中の重金属無害化処理のための添加剤は、例えば高分子系液体キレート剤を用いることができる。高分子系液体キレート剤は、ジチオカルバミン酸系のキレート基を持ち、このキレート基は、多種の有害重金属、例えばCr,Zn,Pb,Cu,As,Se,Cd,Hg等と化合して水に不溶性の錯体を形成して無害化する性質を有している。
【0015】
また、硬化剤としては、リグニン酸を主体とした硬化剤を用いることができ、界面活性剤で中和させることにより、リグニン酸スルホン塩とカルシウムで水和化合を起こさせ、硬化させる。これにより、有害重金属の溶出を防止することができる。また、アルカリ骨材反応を抑制し、長寿命化を図ることができる。
【0016】
自然石ブロックを製造する際に使用する骨材(砂、砂利)や自然石を別の産地から大量に持ち込むことは、運搬のコストや手間が掛かるばかりでなく、その別の産地の環境破壊につながるが、それらをブロック敷設現場またはその周辺における浚渫工事で発生したものを用いることにより、環境保護に貢献することができる。また、自然石などに付着してその後生育する微生物はその土地固有のものであるので、外来種の混入を防止できる。
【0017】
自然石の表面をブロックの表面から露出させる方法として、乾燥砂を型枠の底部に敷き、その上に自然石を配置して振動により自然石の下部を型枠の底面に沈ませ、乾燥砂の上面に結合材料を流し込むようにすると、自然石の凹凸の出方が揃ったものを製造でき、また脱型後の砂は容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリートの材料であるセメントに含まれる六価クロム等の有害重金属の溶出を防止することにより、有害重金属の蓄積による環境汚染の問題を解消できる。また、河川や護岸工事の現場で発生する自然石を有効に利用して、環境に優しい自然石ブロックを得ることができる。さらに、アルカリ骨材反応を抑制し、長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る自然石ブロックの製造工程を示すフロー図である。
【0020】
ステップS11:骨材(砂等の細骨材、砂利等の粗骨材)に、普通セメント(ポルトランドセメント)を混入する。
【0021】
ステップS12:セメント中の重金属無害化処理のための添加剤、例えば高分子系液体キレート剤を添加する。
【0022】
ステップS13:硬化剤を添加して混練機により混練する。硬化剤は、たとえばリグニン酸を主体とした薬剤である。
ステップS14:自然石ブロックの型枠に自然石を配置し、ステップS13で得られた結合材料を流し込んで自然石を固化させ、養生後、離型して自然石ブロックを得る。
【実施例】
【0023】
砂、砂利80〜82質量部に、セメント15質量部、添加剤として高分子系液体キレート剤(例えば(株)ゼロ・プロジェクト社製のNEWエコプラス800 A剤)3質量部を添加し、硬化剤としてリグニン酸を主体とした薬剤(例えば(株)ゼロ・プロジェクト社製、製品名NEWエコプラス800 B剤)の原液600cc(10質量部)とを混練し、自然石を配置した型枠内に流し込み、締め固めして養生した。
【0024】
図2〜図8は本実施例により得られる自然石ブロックおよびその製造方法である。
図2は本実施例の自然石ブロックの斜視図、図3は護岸の施工例を示す正面図、図4は上下の自然石ブロックの連結状態を示す断面図、図5は隣接する自然石ブロックの連結部の拡大断面図、図6〜図8は製造工程を示す説明図である。
【0025】
図2〜図5において、1は自然石ブロック、2は基材、3は自然石、4は連結穴、5は吊り下げ用リング、6は連結ピンである。
【0026】
自然石ブロック1は、基材2に自然石3の基部が埋め込まれ、基材2の表面に自然石3の凹凸が露出する状態に形成されている。また敷設の際にクレーン等で吊り下げることができるよう、基材2に、吊り下げ用リング5の下半が埋設されている。
【0027】
自然石3や骨材は、ブロック敷設現場またはその周辺における浚渫工事で発生したものを用いることにより、運搬コストを削減できる。また、別の土地で採取するとその土地の環境破壊を引き起こすが、現場で採取した自然石、骨材を使用することにより、環境保護に貢献することができる。さらに、自然石などに付着してその後生育する微生物はその土地固有のものであるので、外来種の混入を防止できる。
【0028】
この自然石ブロック1を、図3に示すように、千鳥格子状に積む場合、隣接する自然石ブロック1および上下の自然石ブロック1間の連結強度を増すために、連結穴4に連結ピン6を差し込む。連結ピン6は、一度連結穴4に入ったら抜けにくいようにダルマ形とし、耐震性や耐候性の点で、強化ゴム(硬質ゴム)で製造する。
【0029】
次に、この自然石ブロック1の製造方法を、図6〜図8により説明する。
【0030】
型枠を構成する底版10および側版11を組み立てる。側版11には、連結穴4を形成するための凸部12が設けられている。また、図示しないが、吊り下げ用リング1を一つの側版に保持する。なお、底版10および側版11は、強化プラスチックで形成し、また横方向にスライドできる構成とすることにより、サイズの異なるブロックにも対応できるようにすることが好ましい。
【0031】
この型枠の底部に、図6に示すように乾燥砂13を所定の高さ敷く。次に、図7に示すように、複数の自然石3を配置し、振動を与えて自然石3の下部が底版10に沈むようにする。このとき、ブロックの強度を高めるために、網状に組んだ鉄筋をセットすることもある。
【0032】
次いで、図8に示すように、上述の結合材料14を流し込む。必要に応じて、振動を与えて結合材料14を締め固めする。
【0033】
養生後、側版11を取り外し、固まった自然石ブロック1を吊り上げて脱型し、表面の砂13を取ることにより、図2に示した自然石ブロック1を得ることができる。
【0034】
このようにして製造した自然石ブロック1を用いた護岸や用壁は、自然石の表面に苔や藻、水草等の植物が育成する。それに伴い、魚や小動物が棲息して、自然環境の復元が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ブロックの材料として用いられるセメントに含まれる六価クロム、鉛等の有害重金属の、環境への溶出を防止し、また、河川や護岸工事の現場で発生する自然石を有効に利用して、環境に優しい、長寿命の自然石ブロックとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る自然石ブロックの製造工程を示すフロー図である。
【図2】本発明の実施例に係る自然石ブロックの斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る護岸の施工例を示す正面図である。
【図4】本発明の実施例に係る上下の自然石ブロックの連結状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る隣接する自然石ブロックの連結部の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る製造工程を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例に係る製造工程を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例に係る製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 自然石ブロック
2 基材
3 自然石
4 連結穴
5 吊り下げ用リング
6 連結ピン
10 底版
11 側版
12 凸部
13 乾燥砂
14 結合材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、骨材と、前記セメント中の重金属無害化処理のための添加剤と、前記重金属溶出を防止するための硬化剤とが混練された結合材料により、複数の自然石が固着されている自然石ブロック。
【請求項2】
セメントと、骨材と、前記セメント中の重金属無害化処理のための添加剤を添加し、前記重金属溶出を防止するための硬化剤を添加しつつ混練する第1の工程と、
前記第1の工程により得られた結合材料を、予め複数の自然石が配置された型枠に流し込む第2の工程と、
前記第2の工程から所定の期間養生した後、前記型枠から離型する第3の工程とを含むことを特徴とする自然石ブロックの製造方法。
【請求項3】
前記添加剤は、高分子系液体キレート剤である請求項2記載の自然石ブロックの製造方法。
【請求項4】
前記硬化剤は、リグニン酸を主体とするものである請求項2または3に記載の自然石ブロックの製造方法。
【請求項5】
前記骨材および前記自然石は、ブロック敷設現場またはその周辺で採取したものを用いることを特徴とする請求項2から4のいずれかの項に記載の自然石ブロックの製造方法。
【請求項6】
前記型枠に自然石を配置する際、乾燥砂を型枠の底部に敷き、その上に自然石を配置して振動により前記自然石の下部を前記型枠の底面に沈ませ、前記乾燥砂の上面に前記結合材料を流し込むことを特徴とする請求項2記載の自然石ブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−347836(P2006−347836A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177945(P2005−177945)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(503202000)株式会社ゼロ・プロジェクト (2)
【出願人】(503201999)
【Fターム(参考)】