説明

自然風合の稠密板材及び自然風合の稠密板材の製造方法

【課題】人工林にて短周期で循環可能な木材を原材料として、黒檀、紫檀等の天然大径木の希少材の板材とできるだけ良く似た自然風合いの稠密板材を得る。その際、色目、冬目が濃く夏目が淡く着色されている点、年輪幅、気乾比重等においても、上記希少材にできるだけ近づける。
【解決手段】人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとし、着色剤と熱硬化性の樹脂を、圧力釜にて樹脂が硬化しない温度で含浸させ、製材あるいはスライサー加工して集成板材とし、圧力10〜150kg/cm、温度100〜150℃で熱密圧し、自然風合いの稠密板材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポプラ、ラジアタパイン、ホワイトウッド、ゴム等の人工林にて短いサイクルでの循環生産が可能な木材を用いて、希少価値の高い黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した稠密木材に似た風合いの自然風合の稠密板材を製造する自然風合の稠密板材の製造方法及び該方法にて製造された自然風合の稠密板材に関するものであり、さらに詳しくは、次の構成の自然風合の稠密木材の製造方法及び該方法にて製造された自然風合の稠密板材に関するものである。
<構成1>
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、圧力釜にて5〜20kg/cmの圧力で、常温〜40℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックの表面を乾燥して水分20%以下の木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックの一方の木口面を正面とした場合に、乾燥済みの複数の木材ブロックの側面どうしを常温〜40℃で硬化する接着剤で接着して集成木材ブロックを得るステップと、
該集成木材ブロックを製材し、あるいは加水してスライサー加工して、集成板材を得るステップと、
該集成板材を水分が15%以下になるように乾燥するステップと、
乾燥された集成板材に、温度100〜150℃、圧力10〜150kg/cmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を30%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<構成2>
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックの一方の木口面を正面とした場合に、複数の木材ブロックどうしを常温〜40℃で硬化する接着剤で接着して集成木材ブロックを得るステップと、
該集成木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、圧力釜にて5〜20kg/cmの圧力で、常温〜40℃で含浸させるステップと、
該集成木材ブロックをスライサー加工し、あるいは乾燥して製材し、集成板材を得るステップと、
該集成板材を水分が15%以下になるように乾燥するステップと、
乾燥された集成板材に、温度100〜150℃、圧力10〜150kg/cmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を30%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<構成3>
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップにおいて、
目標とする自然風合いの稠密板材が柾目材である場合には、各木材ブロックの柾目を上面とした場合に各木材ブロックの高さを揃えて製材し、
目標とする自然風合いの稠密板材が板目材である場合には、各木材ブロックのうち、板目を上面とする木材ブロックのみを他の木材ブロックより高さを大に製材して後、他の木材ブロックと同じ高さになるように圧縮する、
ことを特徴とする構成1あるいは構成2に記載の自然風合の稠密板材の製造方法。
<構成4>
構成1あるいは構成2あるいは構成3のいずれか1項に記載の自然風合の稠密板材の製造方法によって製造された自然風合の稠密板材。
【背景技術】
【0002】
黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材は、高級感があり人気がある一方、これらの樹木は成長に時間がかかり、植林による供給ができないので、市場に供される機会が近年ますます減少し、これらの樹種の大径木による板材は、すでに一般的な建築や家具製造に用いられなくなって久しい。また、屋久島の屋久杉や白神山地のブナ、あるいは台湾の台桧等はユネスコの世界遺産に指定されたり、国家によって伐採が禁止されたりして、建築や家具の用材として用いるのは不可能な状況にある。
【0003】
しかしながら、屋久杉や白神山地のブナ、あるいは台湾の台桧等は困難としても、黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材が醸し出す高級感を求める需要は根強く、これに応えるために様々な工夫がなされてきた。例えば、上記樹種の大径木の木目を印刷によって再現して家具や建築に貼り付ける等の方法は、極めて安易であるがよく行われてきた。しかし、印刷では誰が見ても見劣りがするので、最近ではこの方法はあまり用いられなくなっている。
【0004】
また、比較的安価で成長が早く、植林にて十分に供給可能な樹種を製材して、例えば黒檀に似せるというのなら黒色の顔料あるいは染料で着色するという試みも行われてきた。しかし、従来の方法では、製材された板材全体が均一に黒色に着色されてしまい、黒檀の持つ風味とは程遠い、単なる黒い板材を得ることができるだけであった。この状況は、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等に似せた板材を得る方法でも同様で、やはり本物とは程遠い、単なる色の付いた板材を得ることができるだけであった。
【0005】
すなわち、従来の方法は、できるかぎり色ムラのない着色方法を希求することにその主眼が置かれていたので、結果として、天然大径木の有する風合いとは程遠い結果しか導出できなかったといって良い。そこで、本願発明者の一人は、出来る限り自然風合いの集成板材を得る方法として、冬目を濃く、夏目を浅く着色する方法を開発した。該方法は、下記特許文献1にて開示されているとおりのものである。
【特許文献1】特許第3785626号公報
【特許文献2】特許第2810918号公報
【特許文献3】特許第2954748号公報
【特許文献4】特許第2997393号公報
【特許文献5】特開平7−285104号公報
【特許文献6】特開平9−174514号公報
【特許文献7】特開2001−260103号公報
【特許文献8】特開2001−310306号公報
【特許文献9】特開2006−240032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている方法により、冬目が濃く、夏目が浅く着色された板材を得ることが可能となり、従来の均一に着色された板材に比較すると、はるかに自然風合いの板材に近い結果を得ることができるようになった。しかし、さらにまだ、以下の点において、本物の黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材との相違点が顕著であった。
【0007】
相違点の第1点目は、年輪の幅の問題である。すなわち、本物の黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材は、概して年輪幅が稠密で、この点がこれらの希少材特有の高級感を醸しだす要因の一つとなっていた。しかるに、特許文献1に開示されている方法にて素材として用いられる木材は、人工林にて短いサイクルで循環可能なポプラ、ラジアタパイン、ホワイトウッド、ゴム等であり、成長が早いという特徴と不可分の特性として、年輪幅が、上記の希少材と比較するとはるかに広く、だれの目にも、両者は一見して異なるものと判別可能である。したがって、色彩面からはなるほど上記の希少材と極めて良く似た印象を与えるものの、特許文献1に開示されている方法により製作された板材は、やはり上記の希少材とは異なる視覚的印象を持ち、この点にて今ひとつ高級感に欠けるという点が指摘されるところであった。
【0008】
次に、相違点の第2点目は、重さ、すなわち重量感の問題である。これは、例えば建築資材などに用いられて、その場所から移動させることがない場合にはあまり問題とならないが、家具や額縁や玩具など、移動可能なものに用いられると、特許文献1に開示されている方法により製作された板材を用いた製品は、上記の希少材によって製造された製品とは明白に重さが異なるので、その点で大きな違和感を生ずることとなった。
【0009】
したがって、本発明の課題を、次のように設定した。
人工林にて短いサイクルで循環可能なポプラ、ラジアタパイン、ホワイトウッド、ゴム等を原材料として、黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木の希少材から製材した板材とできるだけ良く似た自然風合いの稠密板材を得る。その際、色目や、冬目が濃く夏目が淡く着色されている点のみの相似に留まらず、年輪幅や密度の点においても、上記希少材にできるだけ近い風合いの稠密板材を得る。
【0010】
なお、木材ブロックや単板に熱硬化性樹脂を含浸させて、加熱圧縮すれば含浸された樹脂が硬化して当然密度は上がり、稠密木材が得られる。この方法は公知技術であって、前記特許文献2〜9には、さまざまな方法が開示されている。しかしながら、黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木の希少材から製材した板材とできるだけ良く似た自然風合いの稠密板材を得るための方法として特化された技術内容を開示しているものは見られず、したがって、この方面の技術開発は、まだこれからという段階であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、下記の解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、圧力釜にて5〜20kg/cmの圧力で、常温〜40℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックの表面を乾燥して水分20%以下の木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックの一方の木口面を正面とした場合に、乾燥済みの複数の木材ブロックの側面どうしを常温〜40℃で硬化する接着剤で接着して集成木材ブロックを得るステップと、
該集成木材ブロックを製材し、あるいは加水してスライサー加工して、集成板材を得るステップと、
該集成板材を水分が15%以下になるように乾燥するステップと、
乾燥された集成板材に、温度100〜150℃、圧力10〜150kg/cmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を30%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段2>
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックの一方の木口面を正面とした場合に、複数の木材ブロックどうしを常温〜40℃で硬化する接着剤で接着して集成木材ブロックを得るステップと、
該集成木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、圧力釜にて5〜20kg/cmの圧力で、常温〜40℃で含浸させるステップと、
該集成木材ブロックをスライサー加工し、あるいは乾燥して製材し、集成板材を得るステップと、
該集成板材を水分が15%以下になるように乾燥するステップと、
乾燥された集成板材に、温度100〜150℃、圧力10〜150kg/cmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を30%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
[解決手段3]
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップにおいて、
目標とする自然風合いの稠密板材が柾目材である場合には、各木材ブロックの柾目を上面とした場合に各木材ブロックの高さを揃えて製材し、
目標とする自然風合いの稠密板材が板目材である場合には、各木材ブロックのうち、板目を上面とする木材ブロックのみを他の木材ブロックより高さを大に製材して後、他の木材ブロックと同じ高さになるように圧縮する、
ことを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2に記載の自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段4>
解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3のいずれか1項に記載の自然風合の稠密板材の製造方法によって製造された自然風合の稠密板材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の解決手段1〜4の発明によれば、次の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<効果1>
集成板材の上面と下面を圧縮する際に、上面と下面にプレス板が当接することにより、含浸されている着色料や熱硬化性樹脂の溶脱を防止できる。これは、上下方向の圧縮率が0%の場合でも、集成板材の上面と下面には力を加えない状態でプレス板を当接させるので、該効果は奏される。
<効果2>
集成板材の上面と下面を圧縮する際に、集成板材の上面及び下面に染み出た樹脂が、プレス板の平滑な表面に沿って拡がり、硬化するので、後の工程にて塗装が省略できる。これは、上下方向の圧縮率が0%の場合でも、集成板材の上面と下面には力を加えない状態でプレス板を当接させるので、該効果は奏される。
<効果3>
最初に樹脂を充分に含浸させてから熱処理と圧縮処理を行うので、樹脂が表層から深層まで均一に充填された状態となり、塗装では得られない深みのある仕上がりとなる。
<効果4>
最終的に100℃〜150℃という高温で加熱するため、製品は、耐熱性に優れたものとなる。すなわち、通常の着色においては良くみられる色素や木材部分の熱やけが生じない製品を得ることができる。
<効果5>
左右方向への圧縮処理によって年輪幅が圧縮され、また板材全体の密度も高くなるので、本物の希少木材に非常に近い仕上がりとなる。この場合、左右方向への圧縮率は70〜0%と幅広い範囲にて選択が可能であるので、目標とする希少材の年輪幅に可能な限り近い年輪幅を得るように圧縮することができる。
<効果6>
板材全体に樹脂が均一に含浸されているため、防水性、耐候性、寸法安定性、音響特性等において、本物の希少木材以上の効果を有するものである。
【0014】
上記1〜6の効果により、従来本物の希少木材を用いるべき用途において、本発明の稠密板材を用いることができるばかりでなく、さらに新たな用途の開拓が可能となる。例えば、従来の希少木材においては、大量に使用される建築用材としての用途は現今の状況においては考えられなかったが、本発明の稠密板材は、安価で、しかも本物の希少木材以上の防水性、耐候性、寸法安定性、音響特性等を有するため、建築用材としての用途も充分に考えられる。
【実施例1】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。図12には実施例1の工程を、図13には実施例2の工程を、夫々フロー図にて示している。
【0016】
本発明の実施例1の方法においては、図12のステップS101に示すように、まずポプラ、ラジアタパイン、ホワイトウッド、ゴム等の人工林にて短いサイクルでの循環生産が可能な木材を製材して、図1に示すように長手方向に柾目あるいは板目が現れている面を有する複数個の直方体状の木材ブロック11、11、……を得る。
【0017】
次に、図12のステップS102に進む。ここでは、最終結果として入手したい稠密板材が、柾目材であるのか板目材であるのかを選択する。最終結果として入手したい稠密板材が柾目材である場合には、図1に示すように、複数の木材ブロック11は、柾目の現われている面をすべて上面11aとして用いる。入手したい稠密板材が板目材である場合は後述するとして、まず、入手したい稠密板材が柾目材である場合のステップの流れを以下に説明する。
【0018】
なお、木材ブロック11の個数は、実施例1にては15ピースを用いるが、図1では、図面スペースの関係上、木材ブロック11は10ピースまでしか示していない。また、木材ブロック11の個数は、当然15ピースに限定される理由はなく、2ピース以上任意の個数を使用できる。ただ、木材ブロックとしての適切なサイズとか、後に使用するプレス機のサイズなどから、常識的な範囲としては5〜30ピース程度を用いるのが適切であると考えられる。
【0019】
図1では、複数の木材ブロック11は、すべて柾目が現われている面を上面11aとしている。またこの場合、複数の木材ブロック11の幅W11には若干の不揃いがあっても構わないが、高さH11と長さL11は略同一のサイズに揃えておく(ステップS103)。
【0020】
この場合、夫々の木材ブロック11において、高さH11と長さL11は、厳密に同一寸法とする必要はない。というのは、後のステップS110あるいはステップS112にて、製材加工あるいはスライサー加工を施す際に、表面部分を切除することにより、凹凸を除去できるからである。したがって、高さH11と長さL11は夫々を略同一のサイズに揃えれば問題は生じない。なお、図1にては、図面上、すべての木材ブロック11において、幅W11、高さH11、長さL11を夫々同一として表示している。
【0021】
次に、図12のステップS106に進む。ステップS106においては、木材ブロック11を、1ピースずつ圧力釜A(図2a、図2b参照)に入れて、個別に着色剤と熱硬化性樹脂を含む水溶液Cに浸漬し、着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させる。水溶液Cは、水が85〜90質量%前後、熱硬化性樹脂が10質量%前後、着色剤が1〜5質量%前後の成分構成比のものを用いる。
【0022】
この際、圧力は5〜20kg/cmとし、熱硬化性樹脂には、硬化点が120℃前後のフェノールやメラミン等を使用する。また、着色剤は、目標とする希少材の色に着色できるものを使用し、夏目が淡く、冬目が濃く着色できる程度の量と浸漬時間とする。なお、熱硬化性樹脂が硬化しない程度の温度範囲(常温〜40℃の範囲)にて作業を進める。
【0023】
圧力釜Aは図2a、図2bに見るような構成である。すなわち、円筒形状の本体A1の両端部に蓋体A2、A3が夫々気密的かつ開閉自在に装着されて、内部空間を外部から気密的に遮断できる構成となっている。本体A1の中央上部には通気孔A4が設けられており、通気孔A4を通じて空気を抜く(図1aの矢印X1)ことにより内部を減圧し、また、通気孔A4を通じて空気を入れる(図1aの矢印X2)ことにより内部を加圧することができるようになっている。
【0024】
圧力釜Aの内部には内容器A5が設けられており、図2aに示すように、最初は、内容器A5に木材ブロック11が格納されただけの状態にて圧力釜Aを密閉し、通気孔A4から空気を抜いて(矢印X1)内部を減圧状態とする。これにより、木材ブロック11の木材組織中に含まれていた空気が抜かれる。減圧状態としては、50分の1〜70分の1気圧程度とするのが最適である。
【0025】
次に、図2bに示すように内容器A5に着色剤と熱硬化性樹脂を含む水溶液Cを充填して木材ブロック11が浸漬される状態とし、通気孔A4から空気を注入して(矢印X2)圧力釜Aの内部を加圧状態とする。この際の圧力が5〜20kg/cmである。これにより、着色剤と熱硬化性樹脂は、空気が抜かれた状態の木材ブロック11の木材組織中に満遍なく浸透する。
【0026】
夏目が淡く、冬目が濃く着色された時点(図3の状態)で圧力釜Aから木材ブロック11を取り出し、乾燥させる(図12のステップS107)。乾燥の目安は水分20%以下であるが、水分比率の最高値20%は、次の接着のステップ(図12のステップS108)が支障なく行われる限界の数値であり、水分比率が20%を越えた状態では、充分な接着が行われない。木材ブロック11は、夏目が淡く、冬目が濃く着色された状態の木材ブロック11xとなる(図3参照)。
【0027】
次に、図12のステップ108に進み、複数の木材ブロック11xを接着する。この際、柾目が上面11axとなるようにして、隣接する木材ブロック11xの側面どうしの接着を行う。このようにして、図4に示す集成木材ブロック2を得る。集成木材ブロック2にては木材ブロック11xが15ピース使用されているが、木材ブロック11xの数は、上に述べたように15に限定される必然性はない。
【0028】
図4に示す集成木材ブロック2にては、15ピースの木材ブロック11xの上面11axが連続されて上面2aをなし、あたかも1枚の幅広の柾目材のような外観を呈している。W2は集成木材ブロック2の幅であり、これは、15ピースの木材ブロック11xの幅W11x(図3参照)の総和である。また、L2は集成木材ブロック2の長さであり、これは、木材ブロック11xの長さL11xに等しい。さらに高さH2も、当然木材ブロック11xの高さH11xと同一である。なお、W11x=W11、L11x=L11、H11x=H11である(W11、L11、H11は図1参照)。
【0029】
なお、図12のステップ108にて使用する接着剤は、常温か、常温よりやや高い程度の温度、すなわち常温から40℃くらいで硬化するものを用いることができる。具体的には、水性ビニールウレタン系接着剤、2液性の尿素系接着剤、レゾシノールなどが挙げられる。また、この時点にては、集成木材ブロック2に含浸されている熱硬化性樹脂は、まだ硬化していない。
【0030】
次に、図12のステップ109に進む。ここでは、集成木材ブロック2を製材するか、あるいはスライサー加工するかの選択となるが、まず、製材する場合について説明する。この場合、ステップS110にて製材して集成板材3(図5参照)を得る。
【0031】
集成板材3の上面3aは、集成木材ブロック2の上面2a(図4参照)と同様、さながら1枚の柾目の板材に見える。また、集成板材3の高さH3は集成木材ブロック2の高さH2より小であり、集成木材ブロック2の残りの部分(図5に仮想線で示す部分)も製材していくことにより、集成板材3と同様の集成板材(図示せず)が複数枚得られる。
【0032】
なお、集成板材3の横幅W3は集成木材ブロック2の横幅W2と同一、集成板材3の長さL3は集成木材ブロック2の長さL2と同一である。また、Δhは、集成木材ブロック2の上面2a(図4参照)を薄く剥ぎ取ることによって、集成板材3の上面3aを平滑にした場合に、剥ぎ取られた部分の厚さを示す。
【0033】
次に、ステップS109にて、スライサー加工を選択する場合を示す。スライサー加工の場合には、集成木材ブロック3にある程度の水分が含まれていないと作業ができないので、加水し(ステップS111)、スライサー加工を施して(ステップS112)、集成板材3(図5参照)を得る。この後の工程は、製材加工を選択した場合と全く同様となるが、加水されている分、次の乾燥のステップS113では若干時間を要する。
【0034】
次に、ステップS113に移り、集成板材3を乾燥させる。集成板材3は、製材の場合(ステップS110)には水分比率は比較的少なく、スライサー加工をされたものである場合(ステップS112)には水分比率は比較的多めであるが、いずれの場合においても乾燥させ、水分比率を15%以下とする。この15%という最大値は、これを越えると次のステップS114に支障が生じるという限界値である。
【0035】
次に、図12のステップS114に移り、水分比率15%以下とされた集成板材3に対して熱処理と圧縮処理を同時に行う。熱処理の温度範囲は100℃〜150℃とするが、通常は熱硬化性樹脂の硬化温度である120℃前後に設定する。また、圧縮処理における圧力は、10〜150kg/cmとする。
【0036】
図6aには、プレス機(全体は図示せず)の作用部Bを模式的に示す。B1、B2は上下方向(垂直方向)のプレス板であり、プレス板B2は固定で、プレス板B1が下降することにより集成板材3を上下方向に圧縮する。また、B3、B4は左右方向(水平方向)のプレス板であり、プレス板B3は固定で、プレス板B4が左方に摺動することにより集成板材3を左右方向に圧縮する。なお、集成板材3の正面及び背面の両方の木口面は、自由状態とする。
【0037】
圧縮処理において、集成板材3の上下方向の圧縮率は、30〜0%の範囲内とし、左右方向の圧縮率は、70〜0%の範囲内とする。但し、この際、圧縮率が10%とは、圧縮後の長さが圧縮前の長さの90%になるように圧縮するという意味であり、圧縮率が70%とは、圧縮後の長さが圧縮前の長さの30%になるように圧縮するという意味である。即ち、
圧縮率=長さの減少分/元の長さ
である。
【0038】
但し、気乾比重の変化との関係からすると、圧縮率という概念を用いるよりは、縮小率という概念を用いた方が説明がわかりやすく、計算も簡便になるので、以下においてはこちらを用いて説明する。但し、縮小率は、左右方向(水平方向)の圧縮率あるいは上下方向(垂直方向)の圧縮率から一義的に決定される概念であって、
左右方向の縮小率=1−左右方向の圧縮率、
上下方向の縮小率=1−上下方向の圧縮率
である。
【0039】
したがって、
左右方向の縮小率=圧縮後の左右方向の長さ/元の左右方向の長さ
上下方向の縮小率=圧縮後の上下方向の長さ/元の上下方向の長さ
である。
また、体積の縮小率は、幅(左右)方向、長さ(前後)方向、高さ(上下)方向の夫々の縮小率の積であると定義する。
【0040】
このように熱処理と圧縮処理を同時に施すことにより、集成板材3に含浸されていた熱硬化性樹脂が硬化すると同時に集成板材3の年輪の稠密化と密度の増大が進行し、最終製品として、図7a、図7bに示す自然風合いの稠密板材4を得る(ステップS115)。
【0041】
稠密板材4においては、全体が圧縮される結果として、含浸された着色剤の染料粒子の分布密度が大となり、結果として、全体の色合いが集成板材3より濃い目となる。したがって、ステップS106の着色剤の含浸工程においては、ステップS114にて圧縮処理の結果として色合いが濃くなる分を計算に入れて、着色剤の含浸量を調節しなければならない。すなわち、ステップS106にては、最終的に希望する色合いよりは薄めに木材ブロック11が着色された時点で、処理を停止させるということが必要となる。
【0042】
また、ステップS114における体積の縮小率は、ステップS110あるいはステップS112にて得られた集成板材3の乾燥後(ステップS113)の密度(気乾比重)と、結果として得たい稠密板材4の密度(気乾比重)の比によって決定される。すなわち、集成板材3の気乾比重をρ3、稠密板材4の気乾比重をρ4とすれば、ステップS114における体積の縮小率S1は、次式によって決定される。
S1=ρ3/ρ4 (1)
【0043】
たとえば、集成板材3の気乾比重が0.5であった場合、これから気乾比重1の稠密板材4を得たいとするならば、ρ3=0.5、ρ4=1であるから、体積の縮小率S1は、
S1=ρ3/ρ4
=0.5/1
=0.5
となる。
すなわち、ステップS114において、気乾比重0.5の集成板材3を体積の縮小率S1が0.5、すなわち50%になるように圧縮することにより、気乾比重1の稠密板材4が得られる計算となる。
【0044】
なお、ステップS114における体積の縮小率S1は、長さ方向(前後方向)への縮小はなされていないので、上下方向への縮小率S1aと左右方向への縮小率S1bの積となる。すなわち、
S1=S1a×S1b (2)
縮小率S1aとS1bは、いずれかを先に決定すれば、残りは(2)式から決定されるが、縮小率S1aは木目と平行方向の圧縮になり、70〜100%と縮小可能範囲が狭いので、縮小率S1aを先に決定する方が合理的である。今、縮小率S1aを仮に95%とすると、(2)式より、
S1b=S1/S1a (3)
ここで、S1=50%(0.5)、S1a=95%(0.95)とすると、
S1b≒52.6%
と決定される。
【0045】
図6a、図6bにおいて、プレス板B3、B4の上面とプレス板B1の下面の間に空隙cが設けてあるのは、プレス板B1の下降距離を見込んで、プレス板B3、B4の上面とプレス板B1の下面が当接しないようにとの配慮からである。プレス板B1の下降距離は、上記の垂直方向への縮小率S1aと集成板材3の高さH3(図5参照)から計算できるので、空隙cの間隔Δcは、プレス板B1の下降距離よりやや大に設定する。
【0046】
最終ステップS115にて、完成品の稠密板材4(図7a、図7b参照)を得る。
稠密板材4の高さH4は集成板材3の高さH3の70〜100%、横幅W4は集成板材3の横幅W3の30〜100%となっている。なお、稠密板材4の長さL4は、集成板材3の長さL3と同一である。
【0047】
なお、縮小率が100%の場合には、実質的には圧縮を行わないということになる。しかしながら、上下方向の圧縮に関しては、縮小率が100%の場合においても、プレス板B1、B2(図6a参照)による挟着は行う。これに対し、左右方向の圧縮に関しては、縮小率が100%の場合にはプレス板B3、B4による挟着は行わず、自由状態としても良い。この場合には、完成品の稠密板材4の両側面は当然変形するが、最後に変形部分を適宜切除する。また、プレス板B3、B4を用いても、空隙cの部分で稠密板材4の両側面に若干の変形が発生する可能性もあるが、その場合にても最後に変形部分を適宜切除すればよい。
【0048】
上下方向に関して、縮小率が100%の場合においても、プレス板B1、B2による挟着を行うのは、左右方向の圧縮の安定という理由に加え、次のような理由による。すなわち、もし挟着を行わなかった場合、含浸された熱硬化性樹脂が硬化する際に、上面3a、下面3bにおいて表面が均一に硬化せず、ために完成した稠密板材4の上面4a、下面4b(図7a参照)が平滑に仕上がらず、微細な凹凸がランダムに分布して、視覚的にも触覚的にもざらざらの表面となってしまうからである。このように上面4a、下面4bがざらざらの表面となってしまうと、その後に、さらに塗装や研磨等の仕上げ工程を設けなければ製品化できない。
【0049】
しかるに、縮小率が100%の場合においても、プレス板B1、B2による挟着を行えば、樹脂がプレス板B1、B2の平滑な表面に沿って硬化するので、完成した稠密板材4の上面4a、下面4bは極めて均一且つ平滑な表面となる。しかも、表面が平滑な樹脂にコーティングされた状態となるので、そのまま製品として市場に出せる。すなわち、塗装や研磨等の仕上げ工程を全て省くことが可能となる。
【0050】
上下方向への圧縮は、上記のように、主として稠密板材4の上面4a、下面4bの平滑且つ稠密な仕上がりを確保するために行われるものであるが、左右方向への圧縮は、年輪幅を縮めるとともに、上述のように密度(気乾比重)を増すという点が主眼となる。左右方向への圧縮は、年輪に対して垂直な方向への圧縮になるので、縮小率S1bは、30〜100%という幅広い範囲にて選択が可能であり、原材料である木材ブロック11の年輪幅や密度(気乾比重)と、目標とする稠密板材4の年輪幅や密度(気乾比重)を比較検討して、適正な縮小率S1bを選択することができる。着色剤の選択と、水平方向への縮小率S1bの適正な選択により、任意の希少材に限りなく近い状態の稠密板材4を得ることが可能となる。
【0051】
ただし、この場合は、途中のステップS106にて着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させているので、当初の木材ブロック11(図1参照)の気乾比重ρ1と含浸後の集成木材ブロック2(図4参照)の気乾比重ρ2、集成板材3(図5参照)の気乾比重ρ3の間には、次の(4)式による関係が生じる。
ρ1<ρ2=ρ3 (4)
【0052】
水溶液C(図2b参照)の成分比率や浸漬時間によっても異なるが、通常のケースでは、ρ2はρ1の10〜20%増しとなる。したがって、この増加分を見こんで当初の木材ブロック11の気乾比重ρ1と完成品の稠密板材4の気乾比重ρ4の関係、及び体積の縮小率S1、上下方向の縮小率S1a、左右方向の縮小率S1bを決定せねばならない。
【0053】
今、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸による気乾比重の増加分をΔρとすれば、
Δρ=(ρ2−ρ1)/ρ1=(ρ3−ρ1)/ρ1 (5)
したがって、
ρ2=ρ3=ρ1+(Δρ×ρ1) (6)
一方、(1)式よりS1=ρ3/ρ4であったから、(6)式より、
S1=[ρ1+(Δρ×ρ1)]/ρ4 (7)
となり、体積の縮小率S1が決定される。
なお、体積の縮小率S1、上下方向の縮小率S1a、左右方向の縮小率S1bの関係は、(2)式に示したとおりである。
【0054】
ここで、例えば原材料の木材ブロック11の気乾比重ρ1を0.4とし、完成品の稠密板材4の気乾比重ρ4を1とし、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸による気乾比重の増加分Δρを15%とすると、7式より、
S1=[0.4+(0.15×0.4)]/1
となり、これを計算すると、
S1=0.46
すなわち、体積の縮小率S1は46%ということになる。
【0055】
ここで、上下方向への縮小率S1aを例えば95%とすると、左右方向への縮小率S1bは、(3)式から、
S1b=0.46/0.95
≒0.48
となる。
したがって、気乾比重ρ1が0.4の木材ブロック11を原材料として気乾比重ρ4が1の稠密板材4を得たい場合、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸による気乾比重の増加分Δρを15%とすれば、体積の縮小率S1は46%であり、上下方向への縮小率S1aを95%とした場合には、左右方向への縮小率S1bは48%とすれば良いということが計算できる。
【0056】
ステップS114における圧縮処理は、1mmの圧縮に1分少々をかける位のごくゆっくりとした速度にて行う。したがって、通常の厚さの板材(図5のH3が10〜40mm程度)の場合で、温度や体積の縮小率S1にもよるが、30分〜1時間以上の時間を要する。このように、ゆっくりと圧縮を加えていくことにより、着色剤や熱硬化性樹脂の溶脱が防止されるとともに木材組織の均一な圧縮と熱硬化性樹脂の均一な硬化がもたらされ、仕上がりが堅牢で美しいものとなる。
【0057】
次に、図12のステップS102にて、最終結果として入手したい稠密板材として板目材を選択した場合を述べる。この場合には、図8に示すように、系列の中央付近に板目の現われている面を上面12aとする木材ブロック12を配し、左右に柾目の現われている面を上面11aとする木材ブロック11を複数個配する。そして、この場合、木材ブロック12の寸法は、幅W12は木材ブロック11の幅W11の2〜3倍程度に、高さH12は木材ブロック11の高さH11の数割増しとする。なお、木材ブロック12の長さL12は木材ブロック11の長さL11と略等しいものとする。また、高さH12の算出方法については後述する。
【0058】
幅W12を木材ブロック11の幅W11の2〜3倍程度に構成する理由は、木材ブロック12は稠密板材7として完成された段階において(図11a、図11b参照)、木材ブロック12の上面12aが全体の略中央に位置し、稠密板材7の板目板材としての印象が、上面12aによってのみ決定づけられることになるので、幅W12があまりに狭いと、板目板材としての印象が弱められてしまうからである。
【0059】
また、高さH12(図8参照)を木材ブロック11の高さ11の数割増しとする理由は次のとおりである。すなわち、後に着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された複数の木材ブロック11xと着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロック12x(図9c参照)を接着して集成木材ブロック5(図10a)とし、さらに製材あるいはスライサー加工して複数の木材ブロック11yと木材ブロック12yからなる集成板材6(図10b)とした場合に(図12のステップS108〜ステップS112)、次の熱処理及び圧縮処理の工程(ステップS114)において、左右方向から圧縮した場合、複数の木材ブロック11yには木目に直交する方向に力がかかるので縮小率が大になるが、木材ブロック12yには木目と平行方向に力がかかる結果、縮小率が余り大きくならない。
【0060】
したがって、ステップS104にて木材ブロック12の高さH12を木材ブロック11の高さH11と略同一として後のステップに進行すると、結局熱処理及び圧縮処理のステップS114にて木材ブロック11yと木材ブロック12yの縮小率が異なることから、複数の木材ブロック11zと木材ブロック12zからなる完成品の稠密板材7(図11a参照)において、木材ブロック12zの部分だけが全体の気乾比重にくらべて低い気乾比重となり、視覚的印象にても違和感を生じ、さらには稠密板材7がこの部分にて脆弱になってしまう。
【0061】
したがって、最初に木材ブロック12のみを高さ方向にも大きめに製材しておき(ステップS104)、次のステップS105にて木材ブロック12のみを単独でプレス機(図示せず)にかけて上下方向への圧縮を行い、高さH12を高さH11に揃える(図9b参照)。すなわち、圧縮後の木材ブロック12vにおいては、高さH12が高さH12vとなる。これにより、木材ブロック12vの気乾比重のみが予め大とされるので、後のステップS114にて木材ブロック12z(図11a参照)の縮小率のみが小となってもバランスがとれ、稠密板材7全体の気乾比重は、略同程度のものとすることができる。なお、ステップS105にて木材ブロック12のみを単独で圧縮する際には、左右方向は僅かの圧縮でよく、あるいは木材ブロック12の変形を防止するためにプレス板(図示せず)で押えておくだけでもよく、必ずしも圧縮する必要はない。
【0062】
ステップS105における木材ブロック12の縮小率は、以下の計算によって算出する。
今、図14aにて、ステップS104における木材ブロック11、12の気乾比重をρ1、図14bにて、ステップS105において圧縮された木材ブロック12vの気乾比重をρ1a、ステップS105における木材ブロック12vの体積の縮小率をS2とすれば、
S2=ρ1/ρ1a (8)
ただし、上下方向への縮小率をS2a、左右方向への縮小率をS2bとするなら、
S2=S2a×S2b (9)
木材ブロック12の高さをH12、木材ブロック12vの高さをH12vとするなら、
S2a=H12v/H12 (10)
木材ブロック12の幅をW12、木材ブロック12vの幅をW12vとするなら、
S2b=W12v/W12 (11)
なお、比較のために、木材ブロック12の横に木材ブロック11を配置している。木材ブロック11は、ステップS105には関連しないため、その気乾比重ρ1は変化しない。
【0063】
次に、ステップS106にて、木材ブロック12vに着色剤と熱硬化性樹脂が含浸される結果、着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロック12xの気乾比重は増加する(図14c参照)。含浸後の気乾比重をρ2aとし、着色剤と熱硬化性樹脂による増加分をΔρとすると、
ρ2a=ρ1a+(Δρ×ρ1a) (12)
ここから、
ρ1a=ρ2a−(Δρ×ρ1a) (13)
ただし、Δρ=ρ2a−ρ1aである。
なお、木材ブロック11も、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸により、木材ブロック11xとなる。その気乾比重は、前述のようにΔρ(%)だけ増加してρ2となる。
【0064】
次に、木材ブロック12xはステップS108にて木材ブロック11xと接着され、ステップS110あるいはS112にて製材加工あるいはスライサー加工されて、集成板材6を構成する部分としての木材ブロック12yとなる(図15a参照)。また、木材ブロック11xは11yとなる。ただし、ステップS108、ステップS110、ステップS112においては、いずれのステップにおいても圧縮や含浸等、気乾比重を変化させるような処理は行われないので、木材ブロック12yの気乾比重ρ3aは木材ブロック12xの気乾比重ρ2aと等しい。すなわち、
ρ3a=ρ2a (14)
また、木材ブロック12yの幅W12yは、木材ブロック12xの幅W12xと等しい。すなわち、
W12y=W12x (15)
さらに、木材ブロック12yの高さH12yは、集成板材6の高さH6と等しい。すなわち、
H12y=H6 (16)
木材ブロック11yについても、前述のようにその気乾比重ρ3は木材ブロック11xの気乾比重ρ2と等しい(式4参照)。
【0065】
次に、ステップS114において、熱処理と圧縮処理が同時に行われて、木材ブロック12yは圧縮され、完成品の稠密板材7を構成する木材ブロック12zとなる(図15b参照)。この際の体積の縮小率をS3、木材ブロック12zの気乾比重をρ4aとすると、
S3=ρ3a/ρ4a=ρ2a/ρ4a (17)
ただし、隣接する木材ブロック11zにおいては、体積の縮小率S1は前記(1)式にて定まるS1であり、木材ブロック11yは縮小率S1で圧縮されて気乾比重ρ4の木材ブロック11zとなる(1式参照)。したがって、縮小率S3と縮小率S1は当然異なる。しかしながら、木材ブロック12zの気乾比重ρ4aと木材ブロック11zの気乾比重ρ4を揃えるのが目標であるから、
ρ4a=ρ4 (18)
したがって、これにより(17)式を書き直すと、
S3=ρ3a/ρ4=ρ2a/ρ4 (19)
また、(19)式を変形すれば、
ρ2a=S3×ρ4 (20)
【0066】
また、縮小率S3において、上下方向への縮小率をS3a、左右方向への縮小率をS3bとするなら、
S3=S3a×S3b (21)
木材ブロック12yの高さをH12y、木材ブロック12zの高さをH12zとするなら、
S3a=H12z/H12y (22)
木材ブロック12yの幅をW12y、木材ブロック12zの幅をW12zとするなら、
S3b=W12z/W12y (23)
【0067】
ここで、木目に平行方向への縮小率をすべて同一とすれば、
S2b=S3b (24)
(S2bについては9式参照)
また、図15aから図15bへの圧縮(ステップS114)にては、木材ブロック12yは木材ブロック11yと接着されていて、上下方向への縮小率は等しくなるので、
S3a=S2b=S3b=S1a (25)
(S1aについては2式参照)
したがって、(21)式は、
S3=S1a×S1a (26)
と書き直せる。
【0068】
したがって、(20)式に(26)式を代入すると、
ρ2a=S1a×S1a×ρ4 (27)
となって、ρ2aは、ρ4とS1aを決定すれば一義的に決まる値となる。
一方、(12)式を変形すると、
ρ2a=(1+Δρ)ρ1a (28)
したがって、
ρ1a=ρ2a/(1+Δρ) (29)
したがって、ρ1aはρ2aとΔρが決まれば一義的に決定される。
【0069】
今、ここで、S1aを95%、ρ4を1とすれば、(27)式より、
ρ2a=0.95×0.95×1
=0.9025
Δρを15%として、この結果を(29)式に代入すれば、
ρ1a=0.9025÷1.15
=0.7848
ここで、ρ1が0.4として、(8)式にρ1と上のρ1aの値を代入すれば、
S2=ρ1/ρ1a (8)
=0.4/0.7848
≒0.5097
となり、縮小率S2は、約51%となる。
【0070】
ここで、(9)式を変形すると、
S2a=S2/S2b
S2bは木目に平行方向の縮小率なので、これを95%とすれば、
S2a=0.51÷0.95
≒0.5368
となり、縮小率S2aは約54%という結果となる。
【0071】
ここで、(10)式を変形すれば、
H12=H12v/S2a (30)
これに、縮小率S2a=54%を代入すれば、
H12≒1.8519×H12v
≒1.85×H12v
高さH12vは、高さH11と同一だから(図14b参照)、
H12≒1.85×H11
したがって、木材ブロック12の高さH12を木材ブロックH11の高さの1.85倍として製材すればよいことがわかる。
【0072】
このように、木材ブロック12の高さH12を木材ブロックH11の高さの何倍とするかは、木材ブロックH11、12の気乾比重ρ1、目標とする稠密板材の気乾比重ρ4、ステップS106における数値Δρ、そして、木目に平行方向への縮小率S1a(=S2b=S3a=S3b)を決定すれば、計算によって割り出すことが可能である。
【0073】
なお、上記にては、木目に平行方向への縮小率をすべて同一であるとして計算しているが、実際にはそのようにする必然性はない。ただ、木目に平行方向への縮小率は70%が略限界値であり、実際には95%程度の縮小率にて圧縮が行われるケースが多い。したがって、木目に平行方向への縮小率をすべて同一として計算しても大局的には大きな誤差は生じないと考えてさしつかえない。実際上は、稠密板材7の各部において、気乾比重が完全に同一でなくても実用上の支障はないので、この方法で、実用上なんら差し支えのない稠密板材7が得られるものである。
【0074】
次に、実施例1の方法で、実際に気乾比重の軽い木材を原料として、気乾比重の重い稠密木材を製作した例を述べる。材料として使用したのは、気乾比重ρ1=0.48のラジアタパインであり、目標とする稠密木材は、気乾比重0.85〜1.09の黒檀である。
【0075】
図16aの模式図に見るように、気乾比重ρ1=0.48のラジアタパインを製材して、幅W11、長さL11、高さH11の揃った木材ブロック11を15ピース製作した。この工程は、実施例1のステップS101〜ステップS103に相当する。なお、各木材ブロック11において、幅W11は20mm、長さL11は2400mm、高さH11は145mmとした。
【0076】
次に、図16bの模式図に見るように、圧力釜Aに木材ブロック11を1本ずつ入れて、まず最初に減圧(1/60気圧、1時間)し、次に、着色剤と熱硬化性樹脂の水溶液Cに浸漬して加圧(7.5kg/cm、3時間)し、着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させる。水溶液Cの配分比率は、水分88%、着色剤2%、フェノール(熱硬化性樹脂)10%とした。浸漬後、気乾比重は約15%増加して、ρ2=0.55となった。(ステップS106)着色剤は、黒檀を目標としているので、黒色系のものを使用し、冬目が濃く、夏目が淡く着色された段階で圧力釜Aから取り出した。
【0077】
次に、ステップS107に移って着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロック11xを乾燥させる(図16c参照)。この場合、屋外にて天日乾燥で乾燥させたケースにては、1ヶ月(夏季)〜1ヵ月半(冬季)で水分含有量を20%程度に、また、屋内にて人為乾燥させたケースにては、40℃〜60℃の室内で10日間乾燥させ、水分含有量を15%程度にまですることができた。
【0078】
次に、ステップS108に移って(図16d)、木材ブロック11xを相互に接着して集成木材ブロック2とした。この場合、各木材ブロック11xは、すべて柾目の表われている面を上面として接着したので、集成木材ブロック2は全体として、柾目板材の外観を呈することとなった。接着剤としては、ビニールウレタン系接着剤を使用した。得られた集成木材ブロック2は、幅W2が300mm(20mm×15ピース)、長さL2が2400mm、高さH2が145mmとなった。
【0079】
次にステップS110、S112にて、集成木材ブロック2を、製材(ステップS110)あるいはスライサー加工(ステップS112)にて、集成板材3とした(図17a参照)。集成木材ブロック2の上面は、わずかに凹凸がある状態だったので、集成木材ブロック2の上面を3mmほど剥ぎ取って平滑面とし、さらに高さH3が40mmになるように製材あるいはスライサー加工を施した。集成木材ブロックの高さH2は145mmであるから、高さH3が40mmの集成板材3が3枚得られた。3枚の集成板材3は、幅W3が300mm、長さL3は2400mmであった。また、3枚共上下両面は平滑面となっている。
【0080】
次にステップS113に移って、集成板材3を乾燥させ(図17b参照)、水分含有量15%以下とした。この場合には、人為乾燥を用いて水分含有量を15%以下に下げた。なお、集成板材3の気乾比重ρ3は、集成木材ブロック2の気乾比重ρ2と等しく0.55である。
【0081】
次に、ステップS114に移り(図17c)、加熱しながら集成板材3をプレス機にかけて、熱処理と圧縮処理を同時に行った。まず、熱処理については、120℃まで加熱して、120℃を90分間保持した。これにより、熱硬化性樹脂(フェノール)の完全な硬化を見た。
【0082】
圧縮処理に関しては、垂直方向に50kg/cmの圧力をかけて圧縮した結果、上下方向の縮小率S1aは92.5%となり、40mmであった集成板材3の高さH3が37mmに縮小された。また、左右方向に100kg/cmの圧力をかけて圧縮した結果、左右方向の縮小率S1bは70%となり、300mmであった集成板材3の幅W3が210mmに縮小された。体積の縮小率S1は、縮小率S1aと縮小率S1bの積で、64.75%となった。
【0083】
ステップS115(図17d参照)にて、完成品の稠密板材4を得た。完成品の稠密板材4の気乾比重ρ4は、集成板材3の気乾比重ρ3を全体の縮小率S1で除した値となり、ρ4=0.849となって、目標とする黒檀の気乾比重0.85〜1.09に略近い気乾比重とすることができた。また、完成品の稠密板材4の色は、ステップS114による圧縮処理によってさらに黒色が濃くなり、また、木目も約3分の2の間隔に圧縮されることとなって、外見的にも黒檀にきわめて近い印象の稠密板材4を得ることができた。なお、稠密板材4の幅W4は210mm、長さL4は2400mm、高さH4は37mmであった。
【0084】
稠密板材4は、外観的にも手にした感じ(重さ)もきわめて黒檀に近いものであり、木材の種類に詳しくない人には見分けがつかないくらいのものとなった。また、熱硬化性樹脂(フェノール)が、上面と下面において極めて平滑な膜を形成していて、塗装は一切必要なく、そのまま各種用途に使えるものとなった。
【0085】
図18には、本発明の方法において、材料とされる木材と、目標とする木材の名称及び気乾比重を掲げてある。材料とされる木材としては、人工林にてサイクルの短い生産が可能なものとして、ポプラ、ラジアタパイン、ホワイトウッド、ゴムを、目標とする木材としては、所謂銘木材として、黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラを掲げてあるが、むろん、本発明の方法は、これらの木材に限定されるものではない。これらは、単なる例示として掲げられているにすぎない。
【0086】
例えば、気乾比重ρ1が0.5のラジアタパインの木材ブロック11から気乾比重ρ4が1の黒檀の稠密板材4を得たい場合、ステップS106にて着色剤と熱硬化性樹脂の含浸により、気乾比重が15%増加するとすると、ステップS108で得られる集成木材ブロック2の気乾比重ρ2及びステップS113で得られる集成板材3の気乾比重ρ3は、共に0.575となる。したがって、ステップS114における体積の縮小率S1はρ3/ρ4となり、これを計算するとS1=57.5%となる。
【0087】
体積の縮小率S1は、上下方向の縮小率S1aと左右方向の縮小率S1bの積なので、範囲が70〜100%と狭い上下方向の縮小率S1aを先に、例えば95%と決定すると、左右方向の縮小率S1bは、S1b=S1/S1aで、これを計算すると左右方向の縮小率S1bは約60.5%となる。すなわち、集成板材3を上下方向に縮小率S1aが95%に、左右方向に縮小率S1bが60.5%になるように圧縮すると、気乾比重ρ4が略1の、黒檀に近い稠密板材4が得られる。
【0088】
このようにして、材料とする木材と目標とする木材を決めれば、体積の縮小率S1が定まるので、理論的には材料とする木材と目標とする木材の任意の組み合わせが行えることとなる。しかしながら、現実には、特に木目の外観の問題から、より適切な組み合わせというものが幾通りか選択されることとなる。また、材料とする木材の中で、ゴムだけは気乾比重がかなり高い(0.64)ので、ゴムを材料とした場合の目標とする木材は、ある程度限定されてくる。
【0089】
次に、実施例1の方法による稠密板材の寸法安定性に対する試験結果を記載する。試験を実施したのは、愛知県産業技術研究所である。
【0090】
図19に示すように、幅WR、長さLR、高さHRの木材ブロックに熱硬化性樹脂と着色剤を含浸させ、さらに熱処理と圧縮処理を同時に行ったものを試料Rとして用いた。なお、試料Rの材質は、上面に板目が表われたラジアタパインであり、幅WRは150mm、長さLRは500mm、高さHRは25mmであった。
【0091】
上記の試料Rに、着色剤1%、熱硬化性樹脂10%を含浸させた例(試料R1)、着色剤1%、熱硬化性樹脂5%を含浸させた例(試料R2)、着色剤も熱硬化性樹脂も含浸させない例(試料R0)の3種の試料にて寸法安定性に対する試験を行った。なお、熱処理温度は160℃、圧縮処理は上下方向(高さ方向)にのみ30kg/cmの圧力をかけて行った。
【0092】
寸法安定性の測定は、3種の試料を、最初に30%の湿度下に24時間放置した後に1回目の測定を行い、次に、湿度を90%に上昇させた状態で24時間放置した後に2回目の測定を行い、さらに湿度を30%に下げて24時間放置した後に3回目の測定を行った。なお、測定は、幅WRの変化について計測した。
【0093】
図19のグラフと表にその結果を示す。3種の試料とも、1回目の測定(湿度30%で24時間経過)結果を寸法変化率0(原点)とし、後の2回の測定結果は、幅WRが伸縮した割合をパーセントで表示している。すなわち、測定結果が0.1であれば、それは幅WRが1回目の測定の際の数値に較べて1.001倍となったことを示し、測定結果が−0.1であれば、それば、幅WRが1回目の測定の際の数値に較べて0.999倍となったことを示すものである。
【0094】
1回目の測定結果は、試料R1、R2、R0ともに当然ながら0である。これに対し、2回目の測定結果は、試料R1が−0,03、試料R2が0.04であったのに対し、試料R0は0.15と、試料R1の絶対値で5倍、試料R2の絶対値で4倍近い値となった。これに対し、3回目の測定結果においては、試料R1が0.01、試料R2が−0.03、試料R0が0.02であり、3試料ともに元の状態(第1回の測定結果)に近い値に戻っている。
【0095】
ここからは、次のようなことが結論される。すなわち、湿度が90%にまで増加すると、未含浸の試料R0にはやや顕著な寸法変化が生じるが、これに対し、熱硬化性樹脂10%含浸の試料R1、熱硬化性樹脂5%含浸の試料R2は双方ともに安定した値となる。わずかに寸法変化が見られるものの、0.5%以下の寸法変化率は、実際上、試料の個体差に吸収されるものであるから、ほぼ寸法の変形はないといっていいレベルである。しかしながら、湿度が30%に戻ると、再び3つの試料の差異はほぼ消失する。
【0096】
日本の各地の湿度は、大体50%台から60%台であるが、梅雨時から夏季には80%を越すこともある。このような日本の特有の気候条件からすれば、湿度が90%となっても寸法変化率がごくわずかであった試料R1、R2は、様々な分野に用いることのできる顕著な特性を有しているといえる。すなわち、熱硬化性樹脂を含浸させた本発明の稠密板材の寸法安定性に関して、説得性のある試験結果が得られたと言い得るものである。
【実施例2】
【0097】
本発明の実施例2の方法を、図13のフローチャートに示す。実施例2の方法においては、木材ブロックを製材(ステップS201)した後ですぐに複数の木材ブロックを接着して、集成木材ブロックとし、この集成木材ブロックに、着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させる(ステップS206)。
【0098】
すなわち、実施例1の方法(図12参照)にては、個々の木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させ(ステップS106)てから乾燥させ(ステップS107)、接着して(ステップS108)集成木材ブロックを得ていたのに対し、実施例2の方法にては、この部分が逆転している。したがって、実施例1の方法における乾燥のステップ(S107)が、後に来る(ステップS210)。
【0099】
実施例2においても、最終的に得たい稠密板材として、柾目材とするのか板目材とするのかの選択が、最初に行われる(ステップS202)。すなわち、ここで、最終的に得たい稠密板材が柾目材の場合にはステップS203に進んですべての木材ブロックを同じ高さに製材する。これに対し、最終的に得たい稠密板材が板目材の場合にはステップS204に進み、板目を上面にする木材ブロックだけを大きめに製材し、他の木材ブロックはすべて同じ高さに製材する。
【0100】
次に、ステップS205に進んで、板目を上面にする木材ブロックのみをプレス機によって圧縮し、他の木材ブロックと高さを揃える。この際、板目を上面にする木材ブロックの縮小率の計算や、当初の高さの割りだしなどはすべて実施例1に準じて行えばよい。
【0101】
後の流れは実施例1の方法と略同様であるが、実施例2においては、ステップS207において着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させた段階で、集成木材ブロック自体が湿気を含んだ状態であるので、スライサー加工を施す場合(ステップS209)はそのまま、製材加工を施す場合(ステップS211)には事前に乾燥させる(ステップS210)。この後は、実施例1と同様に乾燥(ステップS212)、熱処理+圧縮処理(ステップS213)と進み、完成品の稠密板材を得る(ステップS214)。
【0102】
上述の実施例2の方法における大きな特徴は、個々の木材ブロックを接着して集成木材ブロックとしておいてから、一気に着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させるという点である。したがって、着色剤や熱硬化性樹脂が、実施例1の方法に較べると全体に均一に含浸されることになり、仕上がりもきれいであるし、また含浸工程も一度ですむので非常に合理的である。
【0103】
ただし、実施例2の方法においては、集成木材ブロックのサイズによっては、集成木材ブロック全体を収納できるような大規模な圧力釜を必要とする。また、実施例1の方法においては、含浸工程で出る不良品は個々の木材ブロックであるので、良好に含浸されたものだけを選抜して次の工程に進むということが可能であるが、実施例2の方法においては、集成木材ブロック全体を一気に含浸させるため、ここで一部の木材ブロックが不良品となると、集成木材ブロック全体が使えないというマイナス面も存する。
【0104】
また、実施例1と実施例2の中間的な方法として、使用予定の木材ブロックのうちの一部、例えば15ピース使用であればそのうち5ピース分を先に接着して3組の集成木材ブロックを形成し、その3組の集成木材ブロックを個々に圧力釜に入れて含浸工程を行い、さらにその3組の集成木材ブロックを接着して木材ブロックを15ピース使用した集成木材ブロックを形成するという方法も考えられる。この方法であれば、使用する圧力釜のサイズに合わせて、適宜最初に接着するピース数を決めれば良いので、非常に合理的である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、色合い、年輪幅、密度の各要素を限りなく天然の希少材に近づけることのできる自然風合いの稠密板材の製造方法、及び該製造方法によって得られる自然風合いの稠密板材に関する技術内容を開示するものであり、これまで擬似的にしか得られなかった希少材の稠密板材に限りなく近い自然風合いの稠密板材を得ることが可能となった。
【0106】
本発明の応用範囲は広く、家具や日用品、玩具から建築資材、車両や航空機の内装資材にまで及び、風合いの点では実物の希少材に限りなく近く、防水性や耐候性、寸法安定性、音響特性においては実物の希少材を上回る堅牢にして高級感の溢れる板材を、各方面に極めて安価に提供できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が柾目材である場合に、木材ブロックが製材されたステップを説明する説明図である。
【図2】(a)本発明の実施例1の方法において、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させるステップのうち、事前に木材ブロックを減圧する工程を説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させるステップのうち、加圧して木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させる工程を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が柾目材である場合に、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸され、夏目が濃く、冬目が淡く着色されたステップを説明する説明図である。
【図4】本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が柾目材である場合に、木材ブロックを接着して集成木材ブロックを得るステップを説明する説明図である。
【図5】本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が柾目材である場合に、集成木材ブロックを製材あるいはスライサー加工して集成板材を得るステップを説明する説明図である。
【図6】(a)本発明の実施例1の方法において、集成板材に熱処理と圧縮処理を同時に施して自然風合いの稠密板材を得るステップを説明する説明図である。(b)図6aの要部の拡大図である。
【図7】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの柾目の稠密板材を、元の集成板材と比較した状態を説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの柾目の稠密板材の外観を説明する説明図である。
【図8】本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、木材ブロックが製材されたステップを説明する説明図である。
【図9】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、木材ブロックが製材されたステップを説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、上面に板目が表われた木材ブロックのみを先に圧縮するステップを説明する説明図である。(c)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させ、冬目が濃く、夏目が淡く着色されたステップを説明する説明図である。
【図10】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、木材ブロックを接着して集成木材ブロックを得るステップを説明する説明図である。 (b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、集成木材ブロックを製材あるいはスライサー加工して集成板材を得るステップを説明する説明図である。
【図11】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの板目の稠密板材を、元の集成板材と比較した状態を説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの板目の稠密板材の外観の説明図である。
【図12】本発明の実施例1の方法における各ステップの流れを説明するフロー図である。
【図13】本発明の実施例2の方法における各ステップの流れを説明するフロー図である。
【図14】(a)本発明の実施例1あるいは実施例2の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、板目を上面にした木材ブロックの製材したばかりの状態を説明する説明図である。(b)本発明の実施例1あるいは実施例2の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、板目を上面にした木材ブロックのみを予め圧縮した状態を説明する説明図である。(c)本発明の実施例1あるいは実施例2の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、板目を上面にした木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させ、冬目が濃く、夏目が淡く着色されたステップを説明する説明図である。
【図15】(a)本発明の実施例1あるいは実施例2の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、板目を上面にした木材ブロックが隣接する柾目を上にした木材ブロックと接着され、集成板材の一部を構成している状態を説明する説明図である。 (b)本発明の実施例1あるいは実施例2の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、全体の集成板材が圧縮されて稠密板材となり、板目を上面にした木材ブロックが隣接する柾目を上にした木材ブロックと接着圧縮され稠密板材の一部を構成している状態を説明する説明図である。
【図16】(a)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS101〜S103を模式的に説明する説明図である。 (b)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS106を模式的に説明する説明図である。 (c)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS107を模式的に説明する説明図である。 (d)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS108を模式的に説明する説明図である。
【図17】(a)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS110、S112を模式的に説明する説明図である。 (b)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS113を模式的に説明する説明図である。 (c)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS114を模式的に説明する説明図である。 (d)本発明の実施例1の方法で、実際に稠密板材を製作した際の、ステップS115を模式的に説明する説明図である。
【図18】本発明の実施例1あるいは実施例2の方法において、材料とする木材の一部と目標とする木材の一部の気乾比重を説明する説明図である。
【図19】本発明の実施例1あるいは実施例2の方法において、着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させ、熱処理と圧縮処理を同時に施した木材ブロックに対する寸法安定性の試験を行った結果を示すグラフ、表、及び試料諸元である。
【符号の説明】
【0108】
11 木材ブロック
11a 上面
11ax 上面
11x 木材ブロック
11y 木材ブロック
11z 木材ブロック
12 木材ブロック
12a 上面
12v 木材ブロック
12x 木材ブロック
12y 木材ブロック
12z 木材ブロック
2 集成木材ブロック
2a 上面
3 集成板材
3a 上面
3b 下面
4 稠密板材
4a 上面
4b 下面
5 集成木材ブロック
6 集成板材
7 稠密板材
A 圧力釜
A1 本体
A2 蓋体
A3 蓋体
A4 通気孔
A5 内容器
B 作用部
B1 プレス板
B2 プレス板
B3 プレス板
B4 プレス板
C 水溶液
H11 高さ
H11x 高さ
H12 高さ
H12v 高さ
H12x 高さ
H12y 高s
H2 高さ
H3 高さ
H4 高さ
HR 高さ
L11 長さ
L11x 長さ
L12 長さ
L2 長さ
L3 長さ
L4 高さ
LR 高さ
R 試料
R0 試料
R1 試料
R2 試料
S1 縮小率
S1a 縮小率
S1b 縮小率
S2 縮小率
S2a 縮小率
S2b 縮小率
S3 縮小率
S3a 縮小率
S3b 縮小率
S101 ステップ
S102 ステップ
S103 ステップ
S104 ステップ
S105 ステップ
S106 ステップ
S107 ステップ
S108 ステップ
S109 ステップ
S110 ステップ
S111 ステップ
S112 ステップ
S113 ステップ
S114 ステップ
S115 ステップ
S201 ステップ
S202 ステップ
S203 ステップ
S204 ステップ
S205 ステップ
S206 ステップ
S107 ステップ
S208 ステップ
S209 ステップ
S210 ステップ
S211 ステップ
S212 ステップ
S213 ステップ
S214 ステップ
W11 幅
W11x 幅
W12 幅
W12v 幅
W12x 幅
W12y 幅
W12z 幅
W2 幅
W3 幅
W4 幅
WR 幅
X1 矢印
X2 矢印
c 空隙
Δc 間隔
Δh 厚さ
Δρ 増加分
ρ1 気乾比重
ρ1a 気乾比重
ρ2 気乾比重
ρ2a 気乾比重
ρ3 気乾比重
ρ3a 気乾比重
ρ4 気乾比重
ρ4a 気乾比重





【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、圧力釜にて5〜20kg/cmの圧力で、常温〜40℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックの表面を乾燥して水分20%以下の木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックの一方の木口面を正面とした場合に、乾燥済みの複数の木材ブロックの側面どうしを常温〜40℃で硬化する接着剤で接着して集成木材ブロックを得るステップと、
該集成木材ブロックを製材し、あるいは加水してスライサー加工して、集成板材を得るステップと、
該集成板材を水分が15%以下になるように乾燥するステップと、
乾燥された集成板材に、温度100〜150℃、圧力10〜150kg/cmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を30%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項2】
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックの一方の木口面を正面とした場合に、複数の木材ブロックどうしを常温〜40℃で硬化する接着剤で接着して集成木材ブロックを得るステップと、
該集成木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、圧力釜にて5〜20kg/cmの圧力で、常温〜40℃で含浸させるステップと、
該集成木材ブロックをスライサー加工し、あるいは乾燥して製材し、集成板材を得るステップと、
該集成板材を水分が15%以下になるように乾燥するステップと、
乾燥された集成板材に、温度100〜150℃、圧力10〜150kg/cmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を30%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項3】
人工林にて循環再生が可能な木材を製材して木材ブロックとするステップにおいて、
目標とする自然風合いの稠密板材が柾目材である場合には、各木材ブロックの柾目を上面とした場合に各木材ブロックの高さを揃えて製材し、
目標とする自然風合いの稠密板材が板目材である場合には、各木材ブロックのうち、板目を上面とする木材ブロックのみを他の木材ブロックより高さを大に製材して後、他の木材ブロックと同じ高さになるように圧縮する、
ことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3のいずれか1項に記載の自然風合の稠密板材の製造方法によって製造された自然風合の稠密板材。












【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−269273(P2009−269273A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121146(P2008−121146)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(596106733)尾州木材工業株式会社 (5)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【Fターム(参考)】