説明

自然風合の稠密板材及び自然風合の稠密板材の製造方法

【課題】マツ科の木材等を原材料として、黒檀、紫檀等の天然大径木の希少材の板材とできるだけ良く似た自然風合いの稠密板材を得る。その際、着色剤と熱硬化性の樹脂の含浸における温度の上限及び最後の圧縮処理における圧力の下限を従来技術より拡張する。
【解決手段】人工林にて循環再生が可能な木材等を製材して木材ブロックとし、着色剤と熱硬化性の樹脂を、0℃〜90℃で含浸させ、製材あるいはスライサー加工して板材とし、乾燥後、圧力0.5〜15N/mm、温度100〜170℃で熱密圧し、自然風合いの稠密板材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マツ科の木材あるいは人工林で循環生産が可能な木材等を用いて、希少価値の高い黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した稠密木材に似た風合いの自然風合の稠密板材を製造する自然風合の稠密板材の製造方法及び該方法にて製造された自然風合の稠密板材に関するものであり、さらに詳しくは、次の<1>〜<7>に示す自然風合の稠密板材の製造方法及び該方法にて製造された自然風合の稠密板材に関するものである。
<1>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックを製材し、板材を得るステップと、
該板材を水分が25%以下になるように乾燥するステップと、
水分が25%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<2>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックをスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<3>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックをスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材を水分が40%以下になるように乾燥するステップと、
水分が40%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<4>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をさらに製材し板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
該板材を水分が25%以下になるように乾燥するステップと、
水分が25%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<5>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<6>

木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された板材を水分が40%以下になるように乾燥するステップと、
水分が40%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<7>
<1>あるいは<2>あるいは<3>あるいは<4>あるいは<5>あるいは<6>に記載の自然風合の稠密板材の製造方法によって製造された自然風合の稠密板材。
【背景技術】
【0002】
黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材は、高級感があり人気がある一方、これらの樹木は成長に時間がかかり、植林による供給ができないので、市場に供される機会が近年ますます減少し、これらの樹種の大径木による板材は、すでに一般的な建築や家具製造に用いられなくなって久しい。また、屋久島の屋久杉や白神山地のブナ、あるいは台湾の台桧等はユネスコの世界遺産に指定されたり、国家によって伐採が禁止されたりして、建築や家具の用材として用いるのは不可能な状況にある。
【0003】
しかしながら、屋久杉や白神山地のブナ、あるいは台湾の台桧等は困難としても、黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材が醸し出す高級感を求める需要は根強く、これに応えるために様々な工夫がなされてきた。例えば、上記樹種の大径木の木目を印刷によって再現して家具や建築に貼り付ける等の方法は、極めて安易であるがよく行われてきた。しかし、印刷では誰が見ても見劣りがするので、最近ではこの方法はあまり用いられなくなっている。
【0004】
また、比較的安価で成長が早く、植林にて十分に供給可能な樹種を製材して、例えば黒檀に似せるというのなら黒色の顔料あるいは染料で着色するという試みも行われてきた。しかし、従来の方法では、製材された板材全体が均一に黒色に着色されてしまい、黒檀の持つ風味とは程遠い、単なる黒い板材を得ることができるだけであった。この状況は、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等に似せた板材を得る方法でも同様で、やはり本物とは程遠い、単なる色の付いた板材を得ることができるだけであった。
【0005】
すなわち、従来の方法は、できるかぎり色ムラのない着色方法を希求することにその主眼が置かれていたので、結果として、天然大径木の有する風合いとは程遠い結果しか導出できなかったといって良い。そこで、本願発明者は、出来る限り自然風合いの集成板材を得る方法として、冬目を濃く、夏目を淡く(浅く)着色する方法を開発した。該方法は、下記特許文献1にて開示されているとおりのものである。但し、ここにいう夏目とは、早材とも言われ、年輪の春から夏にかけて形成される部分であり、成長が早いので幅が広く、淡い色となる。また、ここにいう冬目とは、晩材とも言われ、年輪の秋から冬にかけて形成される部分であり、成長が遅いので幅が狭く、濃い色となる。
【0006】
特許文献1に開示されている方法により、冬目が濃く、夏目が淡く(浅く)着色された板材を得ることが可能となり、従来の均一に着色された板材に比較すると、はるかに自然風合いの板材に近い結果を得ることができるようになった。しかし、さらにまだ、以下の点において、本物の黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材との相違点が顕著であった。
【0007】
相違点の第1点目は、年輪の幅の問題である。すなわち、本物の黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の天然大径木から製材した板材は、概して年輪幅が稠密で、この点がこれらの希少材特有の高級感を醸しだす要因の一つとなっていた。しかるに、特許文献1に開示されている方法にて素材として用いられる木材は、人工林にて短いサイクルで循環可能なポプラ、ラジアタパイン、ホワイトウッド、ゴム等であり、成長が早いという特徴と不可分の特性として、年輪幅が、上記の希少材と比較するとはるかに広く、だれの目にも、両者は一見して異なるものと判別可能である。したがって、色彩面からはなるほど上記の希少材と極めて良く似た印象を与えるものの、特許文献1に開示されている方法により製作された板材は、やはり上記の希少材とは異なる視覚的印象を持ち、この点にて今ひとつ高級感に欠けるという点が指摘されるところであった。
【0008】
次に、相違点の第2点目は、重さ、すなわち重量感の問題である。これは、例えば建築資材などに用いられて、その場所から移動させることがない場合にはあまり問題とならないが、家具や額縁や玩具など、移動可能なものに用いられると、特許文献1に開示されている方法により製作された板材を用いた製品は、上記の希少材によって製造された製品とは明白に重さが異なるので、その点で大きな違和感を生ずることとなった。
【0009】
そこで、本願発明者は、下記特許文献2に開示されている方法を開発した。すなわち、人工林にて循環再生が可能な木材等を製材して木材ブロックとし、着色剤と熱硬化性の樹脂を、圧力釜にて樹脂が硬化しない温度で含浸させたのち乾燥させ、木材ブロックどうしを相互に接着して集成木材ブロックとなし、該集成木材ブロックを製材あるいはスライサー加工して集成板材あるいは板材とし、乾燥後、圧力10〜150kg/cm、温度100〜150℃で熱密圧し、自然風合いの稠密板材を得る方法である。
【0010】
あるいは、人工林にて循環再生が可能な木材等を製材して木材ブロックとし、木材ブロックどうしを相互に接着して集成木材ブロックとなし、該集成木材ブロックに圧力釜にて樹脂が硬化しない温度で含浸させたのち製材あるいはスライサー加工して集成板材あるいは板材とし、乾燥後、圧力10〜150kg/cm、温度100〜150℃で熱密圧し、自然風合いの稠密板材を得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3785626号公報
【特許文献2】特願2008−121146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2の方法により、人工林にて短いサイクルで循環可能な樹種から、黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の希少木材から得られる板材に極めて近い稠密板材を得ることができたが、なおいくつかの課題が残されていた。
【0013】
課題の一点目は、素材となる木材を、小サイズの木材ブロックに製材し、さらにそれらの木材ブロックを相互に接着して集成木材ブロックとなすという点にある。すなわち、このステップが意外に手間がかかり、特に上面が板目になった稠密板材を得るためには、上面が板目の木材ブロックは、他の木材ブロックと完成後の気乾比重を揃えるために、予め圧縮処理をせねばならず、その圧縮率の計算が面倒であった。
【0014】
また、2点目は、小サイズの木材ブロックを相互に接着して1枚の集成板材としているところから、どうしても、隣接する木材ブロックどうしで、品質を揃えるのが難しいという問題である。例えば、木目の入り方をとってみても、ある木材ブロックにおいては木目が比較的疎であるが、隣接する木材ブロックにおいては密である場合、接着されてできる集成木材ブロックにおいては、疎な木目が急に密な木目に変化するなど、やや不自然な外観を呈する。
【0015】
さらには、隣接する木材ブロックどうしで、木材ブロックの品質の差から着色剤の含浸のされ方が微妙に異なる場合には、木材ブロック単位で、微妙に着色具合が異なって表現される結果、外観的にも1枚の板材としてはやや不自然な出来上がりとなることがある。
【0016】
3点目は、小サイズの木材ブロックに、接着前に着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させる方法の場合、温度管理がかなり難しくなるという点である。すなわち、着色剤や熱硬化性樹脂は、温度を上げるほど木材の内部にまで速やかに浸透する性質があるので、この点からのみ考えれば含浸の際の温度は高めの方が理想的であるといえる。
【0017】
しかしながら、木材ブロックのサイズが小さい場合には、余り温度を上げてしまうと木材ブロックが内部まで高温となって、熱可塑性樹脂のゲル化が始まる危険がある。この関係上、着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させるステップにおいては、温度の上限は40℃程度にしなければならず、温度管理が難しくなる。もしサイズが大きいものであれば、40℃を越えて上限90℃程度に至る温度幅が設定できるので、温度管理はずっと楽なものとなるし、温度が高くなりすぎて木材ブロック内でゲル化が始まり、不良品となる確率もずっと少なくできる。
【0018】
4点目は、小サイズの木材ブロックを相互に接着した上で着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させる方法をとった場合であるが、この際にも、含浸中に温度が高くなりすぎると、木材ブロックどうしの接着面が不安定となるため、あまり温度が上げられず、やはり上限温度は40℃くらいとなる。したがって、3点目と同様、温度管理が困難になるという結果となる。
【0019】
5点目は、最後の熱処理+圧縮処理のステップにおいて、圧力の下限として10kg/cm(略1N/mm)程度の圧力がどうしても必要となるという点である。すなわち、小サイズの木材ブロックを相互に接着しているという構成上、熱処理によって接着層が不安定となるが、圧縮処理の際の圧力によってこの不安定さを解消している。したがって、ある程度以上の圧力をかけないと接着層の不安定さが最後まで残る結果となる。この際の、最低限度の圧力として、10kg/cm(略1N/mm)という値が選択されたのである。
【0020】
しかるに、以下の項目に詳述するように、場合によっては、圧力が余り必要なく、10kg/cm(略1N/mm)を下回る圧力で処理を施したいという場合も出てくる。このような場合に、小サイズの木材ブロックを相互に接着して集成板材としている構成では対応できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、下記の解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックを製材し、板材を得るステップと、
該板材を水分が25%以下になるように乾燥するステップと、
水分が25%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段2>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックをスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段3>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックをスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材を水分が40%以下になるように乾燥するステップと、
水分が40%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段4>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をさらに製材し板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
該板材を水分が25%以下になるように乾燥するステップと、
水分が25%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段5>
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段6>

木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された板材を水分が40%以下になるように乾燥するステップと、
水分が40%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
<解決手段7>
解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3あるいは解決手段4あるいは解決手段5あるいは解決手段6に記載の自然風合の稠密板材の製造方法によって製造された自然風合の稠密板材。
【0022】
本発明の方法においては、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸の際の圧力や温度、着色剤や熱硬化性樹脂の種類や配合割合等は、基本的に前記特許文献2に記載の、集成板材を用いる方法に倣うが、以下の点において該方法すなわち、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法とは異なってくる。
【0023】
まず第一点は、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸の際の温度の上限を、解決手段1〜3に記載の方法にては90℃にまで、解決手段4〜6に記載の方法にては80℃にまで、拡張できるという点である。前記特許文献2に記載の方法においては、温度の上限を40℃としているが、これは、集成板材を用いる第1の方法、すなわち前記特許文献2の実施例1に記載の方法においては木材ブロックの大きさが比較的小さいものである関係上、余り温度を上げると木材ブロックの内部まで高温となって熱硬化性樹脂のゲル化が始まる危険があるからであり、また、集成板材を用いる第2の方法、すなわち前記特許文献2の実施例2に記載の方法においては、集成木材ブロックは比較的大きいものの、糊による接着がなされているため、あまり高温にすると接着面が不安定になるという理由による。
【0024】
これに対し、本発明の解決手段1〜3に記載の方法においては、木材ブロックの大きさが比較的大であり、且つ接着もなされていないので、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸の際の温度の上限を90℃にまで拡張できるものである。また、解決手段4〜6に記載の方法においては、木材ブロックではなく板材であるので解決手段1に記載の方法よりは若干上限温度は下がるものの、80℃にまで拡張できるものである。無論、木材ブロックが小さい場合あるいは板材が薄い場合には温度の上限は、大きさや厚みに応じて下げなければならないが、十分な大きさの木材ブロックあるいは十分な厚さの板材の場合には、上限を90℃(木材ブロック)あるいは80℃(板材)とすることが可能となる。なお、木材ブロックと板材の区別についてであるが、ここでは、厚さが5cmまでのものを板材、厚さが5cmを越えるものを木材ブロックと呼ぶことにする。
【0025】
着色剤と熱硬化性樹脂は、温度を上げるほど木材の内部にまで速やかに浸透する性質があるので、この点からのみ考えれば含浸の際の温度は高めの方が理想的であるといえる。しかしながら、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法にては、上記の点において制約があったので、上限温度を40℃とした。しかるに、本発明の方法においては、上記制約がないので上限温度を90℃あるいは80℃にすることが可能となった。但し、温度が90℃(解決手段1〜3)あるいは80℃(解決手段4〜6)を超えると、かなりの大きさの木材ブロックあるいは厚めの板材においても熱硬化性樹脂のゲル化が始まる危険があるので、本発明の方法においても温度の上限は90℃(木材ブロック)あるいは80℃(板材)となる。また、解決手段4〜6の方法においては、下限を0℃にまで拡張しているが、これは、板材の厚さが充分に薄い場合には、0℃にても着色剤と熱硬化性樹脂の含浸が充分に行われることが試験の繰り返しにより知見されたことによるものである。
【0026】
なお、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸の際の圧力に関しては、上限は前記特許文献2の解決手段1、2に記載の方法に倣うが、本発明の解決手段4〜6の方法においては、下限を0N/mmとすることが可能となった。すなわち、本発明の解決手段4〜6の方法においては、木材ブロックではなく板材に着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させるため、板材の厚さが薄い場合には、圧力をかけなくても着色剤と熱硬化性樹脂の含浸が進行するので、場合によっては圧力の下限を0N/mmとすることができる。但しこの場合には、当然温度の上限を40℃くらいにしておかなければならない。
【0027】
熱処理+圧縮処理の際にも、乾燥具合や熱処理の際の温度、圧縮処理の際の圧力と上下方向及び左右方向の圧縮率は、基本的には集成板材を用いる方法、すなわち前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法に倣うものであるが、圧力の下限が、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法とはやや異なる。すなわち、圧力の下限を、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法では10kg/cmとしていたが、これを0.5N/mm(略5kg/cm)まで下げることが可能となった。
【0028】
その理由は、以下のとおりである。すなわち、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法にては、集成板材に熱処理+圧縮処理を施すものであり、上記のように熱処理によって接着層が不安定となるが、圧縮処理の際の圧力によってこの不安定さを解消している。したがって、集成板材の場合には、ある程度以上の圧力をかけないと接着層の不安定さが最後まで残る結果となる。この際の、最低限度の圧力として、10kg/cmという値が選択された。
【0029】
しかるに、本発明にては、熱処理+圧縮処理は集成板材ではなく一体として板材に対して行われるので、上記接着層の不安定さによる圧力の下限設定は考える必要がなくなり、圧力の下限設定をさらに引き下げることが可能となる。なお、本発明にて圧力の下限設定を0.5N/mmとしたのには、次の理由がある。
【0030】
すなわち、圧縮処理の過程にては、板材を水平方向あるいは上下方向に圧縮するわけであるが、この際、水平方向あるいは上下方向のいずれかに対して圧力が0N/mm、すなわち圧縮しないという選択肢が可能である。
【0031】
この場合には、圧力が0N/mmとなる方向においては、板材はただプレス板に当接しているだけである。しかし、たとえば上下方向に圧力が0N/mmとした場合に、水平方向に僅かに圧力をかけることにより、板材は上下方向に膨出しようとして上下のプレス板に圧接される結果、上下方向にも若干の圧力がかけられたと同じ結果となる。
【0032】
また逆に、水平方向に圧力0N/mmとし、上下方向に僅かに圧力をかけた場合には、やはり左右のプレス板に板材の両側面が圧接され、水平方向にも若干の圧力をかけたと同じ結果となる。
【0033】
本発明にては、板材自体に接着層を有していないので、理論的には上下方向にも左右方向にも圧力0N/mmとしても、なんら差し支えは生じない。つまり、接着層を安定させるための圧力は不要であるので、理論的には上下にも左右にも押圧する必要が生じない。しかしながら、実際上には、上下にも左右にも圧力0N/mmとした場合、製品の品質上の不都合が生じる。すなわち、完成品の稠密板材の表面処理の問題が生じる。
【0034】
本発明においては、着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させた板材を、最後に熱処理することによって熱硬化性樹脂を硬化させることにより、完成品の稠密板材を得るのであるが、その際、上下にも左右にも圧力0N/mmとすると、完成品の稠密板材の表面が、硬化した熱硬化性樹脂による凹凸によって荒れた状態となり、そのままでは製品にはならない。
【0035】
したがって、表面を僅かに剥離したり研磨したり、あるいはさらに樹脂コーティングを施して製品化しなければならないが、その手間がかなり大変なものとなる。すなわち、稠密板材の両側面、あるいは正面と背面に関しては、面積が小さいので剥離や研磨、コーティングの手間もあまり大したことにはならないが、上面と下面は面積が大きいので、この両面を製品として出荷できるまで平滑に剥離、研磨、コーティングしようとすると、かなりの手間と時間を要する結果となる。
【0036】
これに対し、上面と下面および両側面にプレス板を当接させ、上下方向あるいは左右方向あるいは上下方向と左右方向の両方向に僅かでも圧力をかけた状態にすれば、結果として上面と下面および両側面はプレス板に圧接されるので、凹凸や気泡が生じることなく、完全に平滑で、熱硬化性樹脂によってコーティングされた状態に仕上がるので、その後の表面処理ステップ、特に大面積の上面と下面の表面処理ステップが全て省略でき、非常に合理的である。
【0037】
そして、この際の、最小限必要な圧力を、いろいろな素材(木材)を用いた試験によって求めてみると、凡そ0.5N/mmという結果となる。したがって、圧力の最小値を0.5N/mm(略5kg/cm)とした。ところが、上記のように、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法においては、0.5N/mmの圧力では接着層が不安定になる場合が生じるので、どうしても最小値を10kg/cm(略1N/mm)としなければならない。
【0038】
素材とする木材と、目標とする稠密板材の気乾比重の差が大きい場合には、1N/mm(略10kg/cm)をはるかに超える圧力をかけて密圧処理を施すので、圧力の最小値はあまり問題にならないが、素材とする木材と、目標とする稠密板材の気乾比重の差が小さい場合には、あまり圧力を大きくすると、完成品の稠密板材の気乾比重が目標とする稠密板材の気乾比重の値を超えてしまうので、この場合には、圧力の最小値は大きな問題となる。
【0039】
前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法においても、本発明の方法においても、着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させるステップにおいて、すでに気乾比重はある程度増加するので、目標とする稠密板材の気乾比重が素材とする木材の気乾比重とあまり変わらない場合には、最後の熱処理+圧縮処理のステップにおいては、殆ど圧力をかけたくないという場合も当然発生する。
【0040】
このような場合に、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法における圧力の最小値の10kg/cmと、本発明の方法における圧力の最小値の0.5N/mmとの差の約0.5N/mmは、小さな値のように見えるが、場合によっては、大変大きな効果の差を有するものである。すなわち、素材とする木材の選択においても、目標とする稠密板材の選択においても、選択肢が豊富となり、選択の自由度が高まる結果、より広範囲の製品を、合理的且つ安価に製造できるようになる。
【0041】
また、この問題は、単に気乾比重だけではなく、素材とする木材と目標とする稠密板材の木目の入り方にも関係する。すなわち、場合によっては、圧力をかけすぎると目標とする稠密板材の木目の入り方に比べてさらに木目が密となり、外観的に目標とする稠密板材からかけはなれた製品となってしまう可能性もある。したがって、木目の入り方という点においても、圧力の最小値を0.5N/mmにまで拡張できるという点は、大変に有用な効果を奏することができるのである。
【0042】
なお、圧縮処理の場合において、上下方向に圧力をかけ、左右方向には圧力が必要ない場合には、上下のプレス板は当然必要であるが、左右のプレス板は必ずしも必要としない。というのは、左右のプレス板なしで上下方向に圧縮した場合、板材の左右両側面は当然変形をきたすが、左右両側面は面積的には小さいので、圧縮処理後、左右両側面を適宜切断することにより、完成品の稠密板材とすることができるからである。この場合、切断面の研磨処理やコーティング処理は、必ずしも必要としない場合が多い。すなわち、稠密板材を建築や家具に貼りこむ場合、表面の平滑さは当然問題になるが、左右両側面はどのようにも処理できるので問題にならないからである。
【0043】
次に、本発明の方法において、素材となる木材の樹種について言及しておく。前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法にては、木材ブロックをさらに小さな木材ブロックに製材し、それらの小さな木材ブロックを接着して集成木材ブロックとしていたが、本発明の方法にては、集成木材ブロックを作らず、原木から製材された状態の木材ブロックのままで着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させスライサー加工、あるいは製材して板材とし、あるいは原木から製材された状態の木材ブロックをスライサー加工、あるいは製材して板材として着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させ、乾燥、熱処理+圧縮処理を行う。したがって、本発明の方法にては、前記特許文献2の実施例1、2に記載の方法に比べ、最初の製材の段階で、ある程度大きなサイズの木材ブロックあるいは板材を得るものである。
【0044】
したがって、素材となる木材の樹種に関して、本発明の方法における大きな特徴は、最初の製材の段階で、ある程度大きなサイズの木材ブロックあるいは板材を得ることができるような樹種を用いるという点にある。マツ科のラジアタパインやサザンイエローパインなどは、この目的にふさわしい特性を有する樹種であるといえる。なお、サザンイエローパインとは、米国の南部諸州に生育する複数のパイン種の総称であって、それらのうち木質が最も疎であるロブロリーパインの気乾比重は0.58、最も密であるスラッシュパインの気乾比重は0.67である。さらには、人工林にて循環生産が可能な樹種にても、適するものは多々ある。
【0045】
図10に、本発明にて材料とする木材の一例と目標とする木材の一例を示す。例えば、気乾比重が0.5のラジアタパインの木材ブロックを用いて気乾比重1の黒檀に似せた稠密板材を製造しようとする場合には、前記の圧縮処理のステップにおける圧力の最小限値はあまり問題にならない。しかるに、例えば、サザンイエローパインの一種のスラッシュパイン(気乾比重0.67)を用いて気乾比重0・7の花梨に似せた稠密板材を製造しようとする場合には、圧縮処理のステップにおける圧力の最小限値が大きな問題となる。このように、圧力の最小限値を下方に0.5N/mmでも拡張できるということは、図10を見れば大きな効果を奏するものであることが明らかにされる。
【0046】
本発明の方法における長所のひとつは、集成板材を形成するステップを省略できるという点である。すなわち、小さな木材ブロックに製材し、木目を揃えて接着するという手間を省くことができる。また、元々が一体の木材ブロックや板材であるから、着色剤や熱硬化性樹脂の含浸の際にもムラが生じることなく、出来上がりも自然な状態により近くなる。さらに強度的に見ても元々一体の木材ブロックや板材なので弱い部分が生じず、丈夫である。
【発明の効果】
【0047】
本発明の解決手段1〜7の発明によれば、次の効果を奏することができる。
【0048】
<効果1>
小サイズの木材ブロックを、木目を揃えて接着させ、集成板材を形成する手間を省略できる。特に、最終的に板目の稠密板材を造りたい場合には、最初から板目の木材ブロックあるいは板材を使用すればよく、上記課題の1点目に関して、大幅な時間と手間の節約となる。
<効果2>
元々が一体の木材ブロックあるいは板材であるから、着色剤や熱硬化性樹脂の含浸の際にもムラが生じることなく、完成品の稠密板材も自然な状態により近くなる。さらに、強度的に見ても元々一体の木材ブロックあるいは板材なので弱い部分が生じることがなく、丈夫である。
<効果3>
着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させるプロセスにおいて、温度の上限を90℃(解決手段1〜3)あるいは80℃(解決手段4〜6)に設定できるので、上限40℃の場合に比べるとはるかに温度管理が楽になる。また、少々温度が上昇しても、90℃あるいは80℃までであれば、小サイズの木材ブロックの場合のように内部で熱硬化性樹脂のゲル化が始まってしまうことがなく、不良品の発生率を低くできる。さらに、ある程度高い温度にて着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させられるので、含浸が円滑に進み、含浸に必要な時間も短縮できる。
<効果4>
着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させるステップにおいても、最後の熱処理+圧縮処理のステップにおいても、接着面が存在しないので、ある程度温度が高くなっても不安定となることがない。したがって、この点においても、温度管理が楽になる。
<効果5>
熱処理+圧縮処理のステップにおいて、圧力の下限を0.5N/mmまで下げることが可能である。すなわち、接着層を有しないので、熱処理による不安定化が発生せず、したがって、圧縮処理においても圧縮による安定化を考慮することなく圧力を設定できるので、圧力の下限を0.5N/mmまで下げることが可能となる。そして、これにより、素材とする木材と目標とする稠密板材の気乾比重の差が殆どない場合にても、本発明の方法を適用できることとなった。すなわち、素材とする木材においても、目標とする稠密板材においても、選択の幅が拡大された。さらには、接着層を有しないので、熱処理における温度の上限を170℃にまで拡張できる。
<効果6>
本発明の解決手段4〜6の方法においては、着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させるプロセスにおいて、圧力の下限を0N/mmとすることができる。すなわち、着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させる板材が十分に薄いものである場合には、圧力をかけなくても含浸のプロセスが進行するので、圧力の下限を0N/mmとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が柾目材である場合に、木材ブロックが製材されたステップを説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、木材ブロックが製材されたステップを説明する説明図である。
【図2】(a)本発明の実施例1の方法において、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させるステップのうち、事前に木材ブロックを減圧する工程を説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させるステップのうち、加圧して木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させる工程を説明する説明図である。
【図3】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が柾目材である場合に、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂が同時に含浸され、冬目が濃く、夏目が淡く着色されたステップを説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、木材ブロックに着色剤と熱硬化性樹脂が同時に含浸され、冬目が濃く、夏目が淡く着色されたステップを説明する説明図である。
【図4】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が柾目材である場合に、木材ブロックを製材あるいはスライサー加工して板材を得るステップを説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得たい稠密板材が板目材である場合に、木材ブロックを製材あるいはスライサー加工して板材を得るステップを説明する説明図である。
【図5】(a)本発明の実施例1の方法において、板材に熱処理と圧縮処理を同時に施して自然風合いの稠密板材を得るステップを説明する説明図である。(b)図5aの要部の拡大図である。
【図6】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの柾目の稠密板材を、元の板材と比較した状態を説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの柾目の稠密板材の外観を説明する説明図である。
【図7】(a)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの板目の稠密板材を、元の板材と比較した状態を説明する説明図である。(b)本発明の実施例1の方法において、最終的に得られる自然風合いの板目の稠密板材の外観を説明する説明図である。
【図8】本発明の実施例1の方法における各ステップの流れを説明するフロー図である。
【図9】本発明の実施例2の方法における各ステップの流れを説明するフロー図である。
【図10】本発明の方法における材料とする木材の一例と目標とする木材の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0050】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施例1の方法においては、図8に見るように、木材を製材して木材ブロックとした(ステップS101)後、圧力釜に入れ、着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させる(ステップS102)。この際、木材ブロックは、図1aに見るように、柾目が上面1aに現れた木材ブロック1や図1bに見るように、板目が上面2aに現れた木材ブロック2などを、製材の方法次第で自由に作ることが可能である。図1a、図1bは、木材ブロックの1例を示しているだけであり、この他にも色々な木目の木材ブロックを製作できるのは当然のことである。
【0051】
図1aにて、W1は木材ブロック1の幅、D1は木材ブロック1の奥行き、H1は木材ブロック1の高さである。また、図1bにて、W2は木材ブロック2の幅、D2は木材ブロック2の奥行き、H2は木材ブロック2の高さである。
【0052】
次に、図8のステップS102においては、図2aに見るように、木材ブロック1あるいは2を圧力釜Aに入れ、図2bに見るように着色剤と熱硬化性樹脂を含む水溶液Cに浸漬し、着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させる。水溶液Cは、水が85〜90質量%前後、熱硬化性樹脂が10質量%前後、着色剤が1〜5質量%前後の成分構成比のものを用いる。
【0053】
この際、圧力は0.5〜2MPaとし、熱硬化性樹脂には、硬化点が120℃前後のフェノールやメラミン等を使用する。また、着色剤は、目標とする希少材の色に着色できるものを使用し、夏目が淡く、冬目が濃く着色できる程度の量と浸漬時間とする。この際、熱硬化性樹脂が硬化しない程度の温度範囲すなわち、常温〜90℃の温度範囲にて作業を進める。
【0054】
圧力釜Aは図2a、図2bに見るような構成である。すなわち、円筒形状の本体A1の両端部に蓋体A2、A3が夫々気密的かつ開閉自在に装着されて、内部空間を外部から気密的に遮断できる構成となっている。本体A1の中央上部には通気孔A4が設けられており、通気孔A4を通じて空気を抜く(図1aの矢印X1)ことにより内部を減圧し、また、通気孔A4を通じて空気を入れる(図1aの矢印X2)ことにより内部を加圧することができるようになっている。
【0055】
圧力釜Aの内部には内容器A5が設けられており、図2aに示すように、最初は、内容器A5に木材ブロック1あるいは木材ブロック2が格納されただけの状態にて圧力釜Aを密閉し、通気孔A4から空気を抜いて(矢印X1)内部を減圧状態とする。これにより、木材ブロック1あるいは木材ブロック2の木材組織中に含まれていた空気が抜かれる。減圧状態としては、500分の1〜700分の1MPa程度とするのが最適である。
【0056】
次に、図2bに示すように内容器A5に着色剤と熱硬化性樹脂を含む水溶液Cを充填して木材ブロック1あるいは木材ブロック2が浸漬される状態とし、通気孔A4から空気を注入して(矢印X2)圧力釜Aの内部を加圧状態とする。この際の圧力が0.5〜2MPaである。これにより、着色剤と熱硬化性樹脂は、空気が抜かれた状態の木材ブロック1あるいは木材ブロック2の木材組織中に満遍なく浸透する。
【0057】
夏目が淡く、冬目が濃く着色された時点(図3a、図3bの状態)で圧力釜Aから木材ブロック1あるいは木材ブロック2を取り出す。ここからは、木材ブロック1あるいは木材ブロック2をスライサー加工するか、あるいは製材するかの選択(ステップ103)となるが、まず、スライサー加工を選択する場合について説明する。
【0058】
スライサー加工の場合には、ステップ102にて木材ブロック1あるいは木材ブロック2に十分な水分が含まれているので、そのままスライサー加工を施して(ステップS104)、板材11(図4a参照)のような柾目の板材、あるいは板材21(図4b参照)のような板目の板材とする。また、ステップ103にて製材を選択した場合には、圧力釜Aから取り出した木材ブロック1あるいは木材ブロック2を製材して(ステップ105)、板材11(図4a参照)のような柾目の板材、あるいは板材21(図4b参照)のような板目の板材とする。この際、木材ブロック1あるいは木材ブロック2の水分含有量が多すぎる場合には、適宜乾燥のステップを挟むことも当然考え得る。
【0059】
図4aの板材11の幅W11は木材ブロック1の幅W1と同一、板材11の奥行きD11は木材ブロック1の奥行きD1と同一、板材11の高さH11は木材ブロック1の高さH1より小である。木材ブロック1の残りの部分(図4aに仮想線で示す)も製材あるいはスライサー加工していくことにより、板材11と同様の板材(図示せず)が複数枚得られる。
【0060】
図4bの板材21の幅W21は木材ブロック2の幅W2と同一、板材21の奥行きD21は木材ブロック2の奥行きD2と同一、板材21の高さH21は木材ブロック2の高さH2より小である。木材ブロック2の残りの部分(図4bに仮想線で示す)も製材あるいはスライサー加工していくことにより、板材21と同様の板材(図示せず)が複数枚得られる。
【0061】
次に、板材11あるいは板材21が製材(ステップS105)で得られたものである場合には、図8のステップS107に移り、板材11あるいは板材21を乾燥させ、水分比率を25%以下とする。この25%という最大値は、これを越えると次のステップS108に支障が生じるという限界値である。すなわち、未乾燥のままで次のステップS108に進むと、板材11あるいは板材21に含有される水分が水蒸気となって膨張・破裂して木質を破壊し、完成品の品質を大きく損なう結果となるからである。
【0062】
板材11あるいは板材21がスライサー加工(ステップS104)で得られたものである場合には、図8のステップS106で、板材11あるいは板材21の厚さにより、そのままステップS108に進むか乾燥させてから(ステップS107)ステップS108に進むかの選択となる。ここで、板材11あるいは板材21が充分に薄い場合には乾燥(ステップS107)を省いてステップS108に進むことができる。
【0063】
一般的に、板材11あるいは板材21の厚さを5mm以下としたい場合には、製材ではなく、スライサー加工が選択される。しかしながら、スライサー加工の場合にても厚さが例えば5mm近い厚いものである場合には、上記の不都合、すなわち板材11あるいは板材21に含有される水分が水蒸気となって膨張・破裂して木質を破壊するという不都合が生じやすく、製品の歩留まりは極めて悪くなる。なお、スライサー加工にて得られる厚さの最小値は0.2mm程度である。
【0064】
では、板材11あるいは板材21の厚さがどれくらいであるならば乾燥工程を省略できるのであろうか。これについて、試験を繰り返した結果、厚さと水分比率の関係について、次のようなことが判明してきた。
厚さ2、3mm〜5mmの場合……水分比率30%以下とすることが必要である。すなわち、製材の場合(水分比率25%以下)に近い程度に乾燥させなければならない。
厚さ1mm〜2、3mmの場合……水分比率40%以下とすることが必要である。
厚さ0.2mm〜1mm未満の場合……乾燥させる必要なし。
【0065】
無論、厚さ0.2mm〜1mm未満の場合でも乾燥させてからステップS108に進むことは当然可能である。ただ、厚さがあまりに薄い場合には、何枚かの板材を重ねて乾燥しなければならないなどの手間がかかるので、乾燥工程を省くことができればそれに越したことはない。それともう一点、これもやはり試験を繰り返すうちに判明してきたことであるが、板材11あるいは板材21の厚さが充分に薄い場合(上記の厚さ0.2mm〜1mm未満)乾燥せずにステップS108に進んで熱密圧をかけると、完成品の表面に独特の美しい光沢が現れ、表面加工の必要がない。これに対し、乾燥工程を経てステップS108に進んだ場合には、この独特の美しい光沢は生じない。したがって、板材21の厚さが充分に薄い場合(上記の厚さ0.2mm〜1mm未満)には、わざわざ乾燥工程を挟むメリットが認められないということが言い得る。
【0066】
次にステップS108に移り、板材11あるいは板材21に対して熱処理と圧縮処理を同時に行う。熱処理の温度範囲は100℃〜150℃とするが、通常は熱硬化性樹脂の硬化温度である120℃前後に設定する。また、圧縮処理における圧力は、0.5〜15N/mmとする。
【0067】
図5aには、プレス機(全体は図示せず)の作用部Bを模式的に示す。B1、B2は上下方向(垂直方向)のプレス板であり、プレス板B2は固定で、プレス板B1が下降することにより板材11を上下方向(方向Y1)に圧縮する。また、B3、B4は左右方向(水平方向)のプレス板であり、プレス板B3は固定で、プレス板B4が左方に摺動することにより板材11を左右方向(方向Y2)に圧縮する。なお、板材11の正面及び背面の両方の木口面は、自由状態とする。また、図5a、図5bにては、板材11を圧縮する場合のみを示すが、板材21を圧縮する場合も略同様に行われる。
【0068】
圧縮処理において、板材11の上下方向の圧縮率は、70〜0%の範囲内とし、左右方向の圧縮率は、70〜0%の範囲内とする。但し、この際、圧縮率が10%とは、圧縮後の長さが圧縮前の長さの90%になるように圧縮するという意味であり、圧縮率が70%とは、圧縮後の長さが圧縮前の長さの30%になるように圧縮するという意味である。
即ち、
圧縮率=長さの減少分/元の長さ
である。
【0069】
但し、気乾比重の変化との関係からすると、圧縮率という概念を用いるよりは、縮小率という概念を用いた方が説明がわかりやすく、計算も簡便になるので、以下においてはこちらを用いて説明する。但し、縮小率は、左右方向(水平方向)の圧縮率あるいは上下方向(垂直方向)の圧縮率から一義的に決定される概念であって、
左右方向の縮小率=1−左右方向の圧縮率、
上下方向の縮小率=1−上下方向の圧縮率
である。
【0070】
したがって、
左右方向の縮小率=圧縮後の左右方向の長さ/元の左右方向の長さ
上下方向の縮小率=圧縮後の上下方向の長さ/元の上下方向の長さ
である。
また、体積の縮小率は、幅(左右)方向、長さ(前後)方向、高さ(上下)方向の夫々の縮小率の積であると定義する。
【0071】
このように熱処理と圧縮処理を同時に施すことにより、板材11に含浸されていた熱硬化性樹脂が硬化すると同時に板材11の年輪の稠密化と密度の増大が進行し、最終製品として、図6a、図6bに示す自然風合いの稠密板材12を得る(ステップS109)。あるいは、板材21に熱処理と圧縮処理を同時に行った場合には、図7a、図7bに示す自然風合いの稠密板材22を得る。
【0072】
稠密板材12、22においては、全体が圧縮される結果として、含浸された着色剤の染料粒子の分布密度が大となり、結果として、全体の色合いが板材11、21より濃い目となる。したがって、ステップS102の着色剤の含浸工程においては、ステップS109にて圧縮処理の結果として色合いが濃くなる分を計算に入れて、着色剤の含浸量を調節しなければならない。すなわち、ステップS102にては、最終的に希望する色合いよりは薄めに木材ブロック1、2が着色された時点で、処理を停止させるということが必要となる。
【0073】
また、ステップS109における体積の縮小率は、ステップS104あるいはステップS107によって得られるステップS108に入る直前の板材の密度(気乾比重)と、結果として得たい稠密板材の密度(気乾比重)の比によって決定される。すなわち、板材の気乾比重をρ3、稠密板材の気乾比重をρ4とすれば、ステップS109における体積の縮小率S1は、次式によって決定される。
S1=ρ3/ρ4 (1)
【0074】
たとえば、ステップS108に入る直前の板材の気乾比重が0.5であった場合、これから気乾比重1の稠密板材を得たいとするならば、ρ3=0.5、ρ4=1であるから、体積の縮小率S1は、
S1=ρ3/ρ4
=0.5/1
=0.5
となる。
すなわち、ステップS108に入る直前において気乾比重0.5の板材を、ステップ108において体積の縮小率S1が0.5、すなわち50%になるように圧縮することにより、ステップ109にて気乾比重1の稠密板材が得られる計算となる。
【0075】
なお、ステップS109における体積の縮小率S1は、長さ方向(前後方向)への縮小はなされていないので、上下方向への縮小率S1aと左右方向への縮小率S1bの積となる。すなわち、
S1=S1a×S1b (2)
縮小率S1aとS1bは、いずれかを先に決定すれば、残りは(2)式から決定される。ここで、上下方向への縮小率S1aは、理論的には30%〜100%の範囲が可能であるが、上下方向への縮小をいくらかけても木目の稠密さはあまり変わらないので、通常は90%〜100%位の狭い範囲で実施されることが多い。したがって、縮小率S1aを先に決定する方が合理的である。今、縮小率S1aを仮に95%とすると、(2)式より、
S1b=S1/S1a (3)
ここで、S1=50%(0.5)、S1a=95%(0.95)とすると、
S1b≒52.6%
と決定される。
【0076】
図5a、図5bにおいて、プレス板B3、B4の上面とプレス板B1の下面の間に空隙cが設けてあるのは、プレス板B1の下降距離を見込んで、プレス板B3、B4の上面とプレス板B1の下面が当接しないようにとの配慮からである。プレス板B1の下降距離は、上記の上下方向への縮小率S1aと板材11の高さH11(図4a参照)から計算できるので、空隙cの間隔Δc(図5b参照)は、プレス板B1の下降距離よりやや大に設定する。
【0077】
最終ステップS109にて、完成品の稠密板材12(図6a、図6b)、22(図7a、図7b)を得る。稠密板材12の高さH12は板材11の高さH11の30〜100%、幅W12は板材11の幅W11の30〜100%となっている。なお、稠密板材12の奥行きD12は、板材11の奥行きD11と同一である。また、稠密板材22の高さH22は板材21の高さH21の30〜100%、幅W22は板材21の幅W21の30〜100%となっている。なお、稠密板材22の奥行きD22は、板材11の奥行きD11と同一である。
【0078】
なお、縮小率が100%の場合には、実質的には圧縮を行わないということになる。しかしながら、上下方向の圧縮に関しては、縮小率が100%の場合においても、プレス板B1、B2(図5a参照)による挟着は行う。これに対し、左右方向の圧縮に関しては、縮小率が100%の場合にはプレス板B3、B4による挟着は行わず、自由状態としても良い。この場合には、完成品の稠密板材12、22の両側面は当然変形するが、最後に変形部分を適宜切除する。また、プレス板B3、B4を用いても、空隙cの部分で稠密板材4の両側面に若干の変形が発生する可能性もあるが、その場合にても最後に変形部分を適宜切除すればよい。
【0079】
上下方向に関して、縮小率が100%の場合においても、プレス板B1、B2による挟着を行うのは、左右方向の圧縮の安定という理由に加え、先に解決手段の項にても記述した次のような理由による。すなわち、もし挟着を行わなかった場合、含浸された熱硬化性樹脂が硬化する際に、上面11aにおいて表面が均一に硬化せず、ために完成した稠密板材12の上面12a(図6a、図6b参照)が平滑に仕上がらず、微細な凹凸がランダムに分布して、視覚的にも触覚的にもざらざらの表面となってしまうからである。このように上面12a、下面12bがざらざらの表面となってしまうと、その後に、さらに塗装や研磨等の仕上げ工程を設けなければ製品化できない。この点は、稠密板材22(図7a、図7b)の上面22a、下面22bにても全く同様である。
【0080】
しかるに、上下方向の縮小率が100%の場合においても、プレス板B1、B2による挟着を行えば、樹脂がプレス板B1、B2の平滑な表面に沿って硬化するので、完成した稠密板材12の上面12a、下面12bは極
めて均一且つ平滑な表面となる。しかも、表面が平滑な樹脂にコーティングされた状態となるので、そのまま製品として市場に出せる。すなわち、塗装や研磨、コーティング等の仕上げ工程を全て省くことが可能となる。
【0081】
上下方向(垂直方向)への圧縮は、上記のように、主として稠密板材12の上面12a、下面12bの平滑且つ稠密な仕上がりを確保するために行われるものであるが、左右方向(水平方向)への圧縮は、年輪幅を縮めるとともに、上述のように密度(気乾比重)を増すという点が主眼となる。すなわち、原材料である木材ブロック1の年輪幅や密度(気乾比重)と、目標とする稠密板材12の年輪幅や密度(気乾比重)を比較検討して、適正な縮小率S1bを選択することができる。着色剤の選択と、水平方向への縮小率S1bの適正な選択により、任意の希少材に限りなく近い状態の稠密板材12を得ることが可能となる。
【0082】
ただし、この場合は、途中のステップS102にて着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させているので、当初の木材ブロック1(図1a参照)あるいは木材ブロック2(図1b参照)の気乾比重ρ1と含浸後の木材ブロック1(図3a参照)あるいは木材ブロック2(図3b参照)の気乾比重ρ2、板材11(図4a参照)あるいは板材21(図4b参照)の気乾比重ρ3の間には、次の(4)式による関係が生じる。
ρ1<ρ2=ρ3 (4)
【0083】
水溶液C(図2b参照)の成分比率や浸漬時間によっても異なるが、通常のケースでは、ρ2(ρ3)はρ1の10〜20%増しとなる。したがって、この増加分を見こんで当初の木材ブロック1、2の気乾比重ρ1と完成品の稠密板材12、22の気乾比重ρ4の関係、及び体積の縮小率S1、上下方向(垂直方向)の縮小率S1a、左右方向(水平方向)の縮小率S1bを決定せねばならない。
【0084】
今、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸による気乾比重の増加分をΔρとすれば、
Δρ=(ρ2−ρ1)/ρ1=(ρ3−ρ1)/ρ1 (5)
したがって、
ρ2=ρ3=ρ1+(Δρ×ρ1) (6)
一方、(1)式よりS1=ρ3/ρ4であったから、(6)式より、
S1=[ρ1+(Δρ×ρ1)]/ρ4 (7)
となり、体積の縮小率S1が決定される。
なお、体積の縮小率S1、上下方向の縮小率S1a、左右方向の縮小率S1bの関係は、(2)式に示したとおりである。
【0085】
ここで、例えば原材料の木材ブロック1(2)の気乾比重ρ1を0.4とし、完成品の稠密板材12(22)の気乾比重ρ4を1とし、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸による気乾比重の増加分Δρを15%とすると、(7)式より、
S1=[0.4+(0.15×0.4)]/1
となり、これを計算すると、
S1=0.46
すなわち、体積の縮小率S1は46%ということになる。
【0086】
ここで、上下方向への縮小率S1aを例えば95%とすると、左右方向への縮小率S1bは、(3)式から、
S1b=0.46/0.95
≒0.48
となる。
したがって、気乾比重ρ1が0.4の木材ブロック1(2)を原材料として気乾比重ρ4が1の稠密板材12(22)を得たい場合、着色剤と熱硬化性樹脂の含浸による気乾比重の増加分Δρを15%とすれば、体積の縮小率S1は46%であり、上下方向への縮小率S1aを95%とした場合には、左右方向への縮小率S1bは48%とすれば良いということが計算できる。
【0087】
ステップS108における圧縮処理は、1mmの圧縮に1分少々をかける位のごくゆっくりとした速度にて行う。したがって、通常の厚さの板材(図4aのH11、図4bのH21が10〜40mm程度)の場合で、温度や体積の縮小率S1にもよるが、30分〜1時間以上の時間を要する。このように、ゆっくりと圧縮を加えていくことにより、着色剤や熱硬化性樹脂の溶脱が防止されるとともに木材組織の均一な圧縮と熱硬化性樹脂の均一な硬化がもたらされ、仕上がりが堅牢で美しいものとなる。
【実施例2】
【0088】
本発明の実施例2の方法においては、図9に見るように、木材を製材して木材ブロックとした(ステップS201)後、さらに製材するか、あるいはスライサー加工するかの選択(ステップS202)となる。製材を選択した場合には、そのまま製材して(ステップS203)板材とし、スライサー加工を選択した場合には、加水してから(ステップS204)スライサー加工して板材とする(ステップS205)。
【0089】
次に、ステップS203あるいはステップS205で得られた板材を圧力釜に入れ、着色剤と熱硬化性樹脂を同時に含浸させる(ステップS206)。この際の着色剤と熱硬化性樹脂の配合比率や種類などは実施例1と同様とするが、圧力は0〜2MPa、温度範囲は0℃〜80℃とし、板材の厚さが厚い場合には上限温度を高めに、薄い場合には上限温度を低めに設定する。また、板材の厚さが十分に薄い場合には、下限圧力を0MPaとすることができるが、この場合には上限温度を40℃程度に抑える。なお、圧力を0MPaとする場合には、圧力釜を使用せず、通常の容器にて含浸を行っても良い。また、板材の厚さは、前述のように5cmまでとし、5cmを越えるものについては木材ブロックとして、実施例1の方法に倣うものとする。また、夏目が淡く、冬目が濃く着色された時点で圧力釜あるいは容器から取り出す点は、実施例1と同じである。
【0090】
次に、図9のステップS207で、板材を乾燥させるか否かの選択を行う。この選択の基準は板材の厚さによるもので、実施例1にて記載した基準をそのまま援用する。すなわち、板材がスライサー加工されたもので厚さが0.2mm〜1mm未満の場合には乾燥工程を経ることなくそのままステップS209に進むことができる。厚さが増すにつれ、少しずつ水分含有量を下げなければならないので、乾燥工程(ステップS208)が必要となり、製材で得られた板材については、実施例1同様水分含有量が25%以下になるまで乾燥させる。
【0091】
次にステップS209に移り、熱処理と圧縮処理を同時に行う。熱処理の温度範囲は実施例1同様100℃〜170℃とするが、通常は熱硬化性樹脂の硬化温度である120℃前後に設定する。また、圧縮処理における圧力は、0.5〜15N/mmとする。すなわち、圧力の下限値が、実施例1より約0.5N/mm拡張されているが、その理由は前記のとおりであるのでくりかえさない。
【0092】
圧縮処理において、板材の上下方向の圧縮率は、70〜0%の範囲内とし、左右方向の圧縮率は、70〜0%の範囲内とする。このように熱処理と圧縮処理を同時に施すことにより、板材に含浸されていた熱硬化性樹脂が硬化すると同時に板材の年輪の稠密化と密度の増大が進行し、最終製品として、稠密板材を得る(ステップS210)。この際、圧縮率あるいは縮小率の計算は、実施例1と同様であるので省略する。
【0093】
ステップS209における圧縮処理は、実施例1同様1mmの圧縮に1分少々をかける位のごくゆっくりとした速度にて行う。したがって、通常の厚さの板材の場合で、温度や体積の縮小率にもよるが、30分〜1時間以上の時間を要する。このように、ゆっくりと圧縮を加えていくことにより、着色剤や熱硬化性樹脂の溶脱が防止されるとともに木材組織の均一な圧縮と熱硬化性樹脂の均一な硬化がもたらされ、仕上がりが堅牢で美しいものとなる。
【0094】
実施例2の方法における利点は、着色剤や熱硬化性樹脂の含浸工程において現れる「含浸ムラ」を少なくすることができるという点である。すなわち、実施例1の方法においては、厚さが5cmを越える木材ブロックに着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させる関係上、木材ブロックの内部において「含浸ムラ」が発生するケースも起こってくる。しかし、表面からは、この「含浸ムラ」は気づかれず、そのまま製材あるいはスライサー加工を行って板材とした場合に、はじめて発見される。表面から「含浸ムラ」が視認されるような板材は製品にならないので、廃棄するしかない。
【0095】
しかるに、実施例2の方法において、板材としてから着色剤や熱硬化性樹脂を含浸させた場合、それ以上製材やスライサー加工を行わないので、たとえ板材の内部に「含浸ムラ」があった場合にても視認されないから、そのまま製品とすることができる。また、木材ブロックに比べると薄いので、「含浸ムラ」も発生しにくく、製品の歩留まりが向上する。
【0096】
逆に、実施例2の方法の欠点としては、実施例1の方法に比べると、同じ枚数の稠密板材を得るために、着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させる回数が増える点と、木材ブロックに比べると薄い板材に着色剤と熱硬化性樹脂を含浸させるために、含浸時の上限温度を低めに設定せねばならず、その分温度管理が難しくなり、温度管理がうまくいかなかった場合には、熱硬化性樹脂のゲル化を見るなど、この点での不良品の発生率が若干増大するという点である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、色合い、年輪幅、密度の各要素を限りなく天然の希少材に近づけることのできる自然風合いの稠密板材の製造方法、及び該製造方法によって得られる自然風合いの稠密板材に関するより進歩した技術内容を開示するものであり、これまでの自然風合いの稠密板材の製造方法に比較して、さらに自然な外観を提示する自然風合いの稠密板材を、より簡単な方法で得ることが可能となった。
【符号の説明】
【0098】
1 木材ブロック
1a 上面
11 板材
11a 上面
11b 下面
12 稠密板材
12a 上面
12b 下面
2 木材ブロック
2a 上面
21 板材
21a 上面
21b 下面
22 稠密板材
22a 上面
22b 下面
A 圧力釜
A1 本体
A2 蓋体
A3 蓋体
A4 通気孔
A5 内容器
B 作用部
B1 プレス板
B2 プレス板
B3 プレス板
B4 プレス板
C 水溶液
D1 高さ
D11 高さ
D12 高さ
D2 高さ
D21 高さ
D22 高さ
H1 高さ
H11 高さ
H12 高さ
H2 高さ
H21 高さ
H22 高さ
W1 幅
W11 幅
W12 幅
W2 幅
W21 幅
W22 幅
S1 縮小率
S1a 縮小率
S1b 縮小率
S101 ステップ
S102 ステップ
S103 ステップ
S104 ステップ
S105 ステップ
S106 ステップ
S107 ステップ
S108 ステップ
S109 ステップ
S201 ステップ
S202 ステップ
S203 ステップ
S204 ステップ
S205 ステップ
S206 ステップ
S207 ステップ
S208 ステップ
S209 ステップ
S210 ステップ
X1 矢印
X2 矢印
Y1 矢印
Y2 矢印
c 空隙
Δc 間隔
Δρ 増加分
ρ1 気乾比重
ρ2 気乾比重
ρ3 気乾比重
ρ4 気乾比重






【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックを製材し、板材を得るステップと、
該板材を水分が25%以下になるように乾燥するステップと、
水分が25%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項2】
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックをスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項3】
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材ブロックに、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0.5〜2MPaの圧力で、常温〜90℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された木材ブロックをスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材を水分が40%以下になるように乾燥するステップと、
水分が40%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項4】
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をさらに製材し板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
該板材を水分が25%以下になるように乾燥するステップと、
水分が25%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、
から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項5】
木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項6】

木材を製材して木材ブロックとするステップと、
該木材をスライサー加工し、板材を得るステップと、
該板材に、着色剤と、120℃前後で硬化する熱硬化性樹脂を、0〜2MPaの圧力で、0℃〜80℃で含浸させるステップと、
着色剤と熱硬化性樹脂が含浸された板材を水分が40%以下になるように乾燥するステップと、
水分が40%以下になるように乾燥された板材に、温度100〜170℃、圧力0.5〜15N/mmで熱処理と圧縮処理を施し、その際、上下方向の圧縮率を70%〜0%、左右方向の圧縮率を70%〜0%として、自然風合いの稠密板材を得るステップ、から構成されることを特徴とする自然風合の稠密板材の製造方法。
【請求項7】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5あるいは請求項6に記載の自然風合の稠密板材の製造方法によって製造された自然風合の稠密板材。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−20400(P2011−20400A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168745(P2009−168745)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(596106733)尾州木材工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】