説明

自脱型コンバインの刈り取り搬送構造

【課題】左右一対の引起枠を備える刈取搬送部のコストパフォーマンスの向上を図れるようにする。
【解決手段】作物Cの穀稈を作付け条ごとに分ける3つの分草部材21A〜21Cを、隣り合う分草部材21A〜21Cとの間に最大2条の作物Cの導入が可能となるように、左右方向に所定間隔をあけて配置するとともに、隣り合う分草部材21A〜21Cの間に、それらの間に導入された作物Cの穀稈を引き起こす引起装置22A,22Bを装備して、刈取搬送部3に2条用の左右一対の引起枠26A,26Bを形成することにより、刈取搬送部3を、2枠4条刈り仕様に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の穀稈を作付け条ごとに分ける3つの分草部材を、左右方向に所定間隔をあけて配置するとともに、隣り合う2つの分草部材の間に、それらの間に導入された作物の穀稈を引き起こす引起装置を配置することにより、刈取搬送部に左右一対の引起枠を形成してある自脱型コンバインの刈り取り搬送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような自脱型コンバインの刈り取り搬送構造としては、右側の分草部材と左右中央の分草部材とを、それらの間に最大2条の作物の穀稈の導入が可能となるように左右方向に所定間隔をあけて配置するとともに、それらの2つの分草部材の間に、最大2条の作物の穀稈の引き起こしが可能となるように構成した引起装置を配備して、右側の引起枠を、最大2条の作物の穀稈を引き起こす2条用に形成し、かつ、左側の分草部材と左右中央の分草部材とを、それらの間に1条の作物の穀稈を導入するように左右方向に所定間隔をあけて配置するとともに、それらの2つの分草部材の間に、1条の作物の穀稈を引き起こすように構成した引起装置を配備して、左側の引起枠を、1条の作物の穀稈を引き起こす1条用に形成することにより、刈取搬送部を、通常2条で最大3条の作物穀稈を刈り取ることが可能な3条刈り仕様に構成したものがある(例えば特許文献1よび2参照)。
【特許文献1】特開平9−154361号公報
【特許文献2】特開2007−289027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成では、刈取搬送部に形成した左右一対の引起枠によって最大3条の作物の穀稈を引き起こすように構成しているだけであることから、コストパフォーマンスの向上を図る上において改善の余地がある。
【0004】
本発明の目的は、左右一対の引起枠を備える刈取搬送部のコストパフォーマンスの向上を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
作物の穀稈を作付け条ごとに分ける3つの分草部材を、隣り合う分草部材との間に最大2条の作物の導入が可能となるように、左右方向に所定間隔をあけて配置するとともに、隣り合う分草部材の間に、それらの間に導入された作物の穀稈を引き起こす引起装置を装備して、刈取搬送部に2条用の左右一対の引起枠を形成することにより、前記刈取搬送部を、2枠4条刈り仕様に構成してあることを特徴とする。
【0006】
この特徴構成によると、左右一対の引起枠を形成するものでありながら、左右の引起枠によってそれぞれ2条ずつの穀稈を引き起こす4条作業や、左右一方の引起枠によって2条の穀稈を引き起こし、かつ、左右他方の引起枠によって1条の穀稈を引き起こす3条作業などを行うことができる。
【0007】
従って、左右一対の引起枠を備える刈取搬送部のコストパフォーマンスの向上を図ることができる。
【0008】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
左右の前記引起枠のそれぞれに、前記引起装置により引き起こした穀稈を、左右の前記引起枠の間に形成した穀稈通過部に掻き込み搬送する2条用の掻込搬送装置を備えてあることを特徴とする。
【0009】
この特徴構成によると、左右の引起枠によって引き起こした最大4条の穀稈を、左右の掻込搬送装置によって穀稈通過部に掻き込み搬送することができる。
【0010】
従って、左右一対の引起枠を備える刈取搬送部のコストパフォーマンスの向上をさらに図ることができる。
【0011】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項2に記載の発明において、
前記刈取搬送部の底部に、前記刈取搬送部を駆動する動力を前記刈取搬送部の左右方向に分配する左右向きの動力分配軸を配備し、
前記分配伝動軸の左端側を、左側の前記引起枠に備えた前記引起装置に左側の伝動軸を介して伝動連結し、
前記分配伝動軸の右端側を、右側の前記引起枠に備えた前記引起装置に右側の伝動軸を介して伝動連結し、
左右いずれか一方の伝動軸から分岐した動力を、左右いずれ一方の前記掻込搬送装置に伝達し、
左右の前記掻込搬送装置に、掻き込み用の複数の突出部を備えた回転体を装備するとともに、これらの回転体における前記突出部の噛み合いにより、左右の前記掻込搬送装置が連動するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
この特徴構成によると、左右の引起装置に対する伝動を、それぞれ専用の伝動軸を介して行なうことにより、引起装置同士を連動させる伝動機構を左右の引起装置の上部にわたって架設する必要がないことから、左右の引起装置の上部にわたって伝動機構を架設する場合に比較して、刈取搬送部の重心位置を低くすることができる。
【0013】
従って、車体の安定を向上させることができる。
【0014】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項3に記載の発明において、
前記刈取搬送部に、前記引起装置により引き起こした穀稈を刈り取る刈取装置を備え、
前記刈取搬送部における左右いずれか一方の前記伝動軸よりも車体横外方側の位置に、前記分配伝動軸と前記刈取装置とを連動連結する刈刃駆動装置を配備してあることを特徴とする。
【0015】
この特徴構成によると、刈取装置により刈り取った穀稈の株元側が刈刃駆動装置に接触することを確実に防止することができ、その接触により穀稈の搬送姿勢に乱れが生じることを防止することができ、その乱れに起因して、脱穀装置に供給される穀稈の穂先側の揃いが悪くなって、脱穀装置での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなることを防止することができる。
【0016】
従って、刈り取った穀稈の株元側が刈刃駆動装置に接触することに起因した穀粒回収率の低下を未然に回避することができる。
【0017】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項4に記載の発明において、
前記刈取搬送部の左右一側方に搭乗運転部を備え、
前記刈取搬送部の反搭乗運転部側に前記刈刃駆動装置を配備してあることを特徴とする。
【0018】
この特徴構成によると、刈刃駆動装置が、搭乗運転部が隣接せずに開放される刈取搬送部の横一側端部に位置するようになることから、刈刃駆動装置の組み付けやメンテナンスが行ないやすくなる。
【0019】
従って、刈刃駆動装置の組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1には自脱型コンバインの全体左側面を、図2にはその全体平面を、図3にはその全体正面をそれぞれ示してある。これらの図に示すように、本実施形態で例示する自脱型コンバインは、走行車体1の前部右側に搭乗運転部2を形成してある。走行車体1の前部左側には、車体の走行に伴って水稲や麦などの作物Cの穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部3を昇降揺動可能に連結してある。走行車体1の左半部には、刈取搬送部3からの穀稈に脱穀処理などを施す脱穀装置4を搭載してある。脱穀装置4の後部には、脱穀処理後の穀稈である排ワラを車外に排出する排ワラ処理装置5を連結してある。走行車体1の後部右側には、脱穀装置4からの単粒化穀粒を貯留する穀粒タンク6を搭載してある。穀粒タンク6には、その内部に貯留した単粒化穀粒を車外に排出搬送するスクリュー搬送式の穀粒排出装置7を装備してある。
【0022】
図1〜4に示すように、走行車体1は、車体フレーム8に搭載したエンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと略称する)11に一体装備した静油圧式無段変速装置(以下、HSTと略称する)12、および、T/Mケース11の内部に備えた走行伝動系(図示せず)、などを介して、車体フレーム8の下部に備えた左右一対のクローラ13A,13Bに伝達するように構成してある。
【0023】
図示または符号の付設は省略するが、車体フレーム8は、角パイプからなる複数のサイドメンバやクロスメンバにより形成した基枠フレームに、種々の鋼材からなる補強部材や支持部材などの多数を連結して構成してある。エンジン9は、水冷式で、車体フレーム8における前部の右側部分にラジエータとともに配置してある。T/Mケース11は、左右2分割構造で、車体フレーム8における前部の左右中央側部分に配備してある。T/Mケース11の内部には、対応するクローラ13A,13Bを制動する左右一対のサイドブレーキなどを備えてある。HST12は、T/Mケース11における左側ケースの上部に位置し、変速後の動力を走行用として走行伝動系に伝達する。走行伝動系は、対応するクローラ13A,13Bへの伝動を断続する左右一対のサイドクラッチなどを備えて構成してある。左右のクローラ13A,13Bは、対応するサイドクラッチを介して伝達された動力で作動し、対応するサイドブレーキの作動で制動する。左右一対のサイドクラッチおよびサイドブレーキは、油圧操作式に構成してある。
【0024】
ちなみに、走行車体1においては、HST12の代わりにギア式変速装置をT/Mケース11の内部に備えて、エンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、ギア式変速装置、およびサイドクラッチ、などを介して左右のクローラ13A,13Bに伝達するように構成してもよい。また、走行伝動系に、HST12による変速後の動力を変速する副変速装置を装備してもよい。
【0025】
図1〜3に示すように、搭乗運転部2は、車体フレーム8の前部右側に、フロントパネル14、サイドパネル15、およびエンジンカバー16、などを配備して、車体右側からの乗降が可能となるように形成してある。フロントパネル14には、十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー17などを装備してある。サイドパネル15には、揺動式で位置保持型の変速レバー18などを装備してある。エンジンカバー16には運転座席19を装備してある。
【0026】
図1〜7に示すように、刈取搬送部3は、車体フレーム8の前部左側に昇降揺動可能に連結した刈取フレーム20に、3つの分草部材21A〜21C、左右一対の引起装置22A,22B、バリカン型の刈取装置23、左右一対の掻込搬送装置24A,24B、および供給搬送装置25、などを備えて構成してある。そして、3つの分草部材21A〜21Cを左右方向に所定間隔をあけて配置し、それらの分草部材21A〜21Cのうちの隣接する2つの間に、左右いずれかの対応する引起装置22A,22Bを配置することにより、刈取搬送部3の前部に左右一対の引起枠26A,26Bを形成してある。
【0027】
3つの分草部材21A〜21Cは、刈取搬送部3の左端部に位置する左分草部材21A、刈取搬送部3の右端部に位置する右分草部材21B、および、それらの間に位置する中分草部材21Cであり、車体の走行に伴って対応する作物Cの穀稈を作付け条ごとに分ける。左右の引起装置22A,22Bは、対応する分草部材21A〜21Cの間に導入された作物Cの穀稈を引き起こす。刈取装置23は、左右の引起装置22A,22Bが引き起こした作物Cの穀稈を刈り取る。左右の掻込搬送装置24A,24Bは、その搬送領域内に位置する穀稈を、刈取搬送部3の左右中央部に設けた穀稈通過部27に掻き込み搬送する。供給搬送装置25は、穀稈通過部27の穀稈を脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置4に向けて供給搬送する。
【0028】
図4に示すように、刈取搬送部3には、エンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、HST12の入力軸28、および、ベルトテンション式の刈取クラッチ29、などを介して伝達する。
【0029】
なお、図示は省略するが、HST12による変速後の動力を刈取搬送部3に伝達するように構成してもよい。また、刈取搬送専用の変速装置を備えて、エンジン9からの動力を、ベルト式伝動装置10、HST12の入力軸28、刈取搬送専用の変速装置、および、刈取クラッチ29、などを介して刈取搬送部3に伝達するように構成してもよい。ちなみに、刈取搬送専用の変速装置にはギア式の変速装置やHSTなどを採用することができる。
【0030】
図1〜10に示すように、刈取搬送部3は、車体フレーム8と刈取フレーム20とにわたって架設した昇降シリンダ30の作動により昇降揺動する。昇降シリンダ30には、単動型の油圧シリンダを採用してある。
【0031】
図示は省略するが、操縦レバー17は、その前後方向への揺動操作に基づいて昇降シリンダ30の作動が制御されるように、昇降用の油圧制御系を介して昇降シリンダ30に連係してある。これにより、操縦レバー17を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送部3を、下限側の作業領域と上限側の非作業位置とにわたって昇降揺動させることができる。そして、その作業領域では、収穫する作物Cに対する刈取装置23の高さ位置を調節する刈り高さ調節を行なうことができる。
【0032】
また、操縦レバー17は、その左右方向への揺動操作に基づいて、その操作方向に応じた左右のサイドクラッチおよびサイドブレーキの作動が制御されるように、操舵用の油圧制御系を介して左右のサイドクラッチおよびサイドブレーキに連係してある。変速レバー18は、その揺動操作に基づいてHST12が作動するように、HST12の変速操作軸に連係機構を介して連係してある。これにより、変速レバー18を揺動操作することにより、左右のクローラ13A,13Bを、停止状態と前進駆動状態と後進駆動状態とに無段階に切り換えることができる。また、前進駆動状態と後進駆動状態のそれぞれにおいては、左右のクローラ13A,13Bの駆動速度を無段階に変更することができる。そして、前進駆動状態または後進駆動状態において、操縦レバー17を左右方向に揺動操作することにより、走行状態を、左右のクローラ13A,13Bを等速駆動させる直進状態と、クラッチ操作で左右のクローラ13A,13Bを差動させる緩旋回状態と、左右一方(旋回内側)のクローラ13A,13Bを制動する急旋回状態とに切り換えることができる。
【0033】
図1〜3に示すように、脱穀装置4は、その左側部に備えた挟持搬送機構31により、刈取搬送部3により搬送された穀稈の株元側を受け取るとともに、その穀稈の穂先側が脱穀装置4の内部に供給されるように、刈取搬送部3からの穀稈を後方の排ワラ処理装置5に向けて挟持搬送する。そして、図示は省略するが、脱穀装置4の内部に備えた扱胴により、その内部に供給した穀稈の穂先側に脱穀処理を施し、脱穀装置4の内部に備えた篩い式や風力式などの選別機構により、その脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す。この選別処理で得た単粒化穀粒は、1番回収部により回収して穀粒タンク6に向けて搬送する。未単粒化穀粒などは、2番回収部により回収して再脱穀処理や再選別処理を施す。切れワラやワラ屑などの塵埃は、脱穀装置4の後端部に形成した排塵口から車外に排出する。脱穀装置4に備えた挟持搬送機構31、扱胴、および選別機構、などは、脱穀クラッチなどを介して伝達されるエンジン9からの動力で作動する。
【0034】
図1に示すように、排ワラ処理装置5は、その上部に備えた排ワラ搬送機構32により、挟持搬送機構31により脱穀装置4から搬出された脱穀処理後の穀稈である排ワラを受け取って後方に向けて搬送する。そして、図示は省略するが、その排ワラを、長尺のまま車外に放出する長ワラ放出状態と、内部に備えたディスクカッタにより細断してから車外に放出する細断放出状態とに、排ワラ放出形態の切り換えが可能となるように構成してある。排ワラ搬送機構32およびディスクカッタはエンジン9からの動力で作動する。
【0035】
図1および図3に示すように、穀粒タンク6は、揚送コンベヤ33により搬送される脱穀装置4からの単粒化穀粒を貯留する。図示は省略するが、揚送コンベヤ33はエンジン9からの動力で作動する。穀粒排出装置7は、排出クラッチを介して伝達されるエンジン9からの動力で排出作動し、その作動により、穀粒タンク6に貯留した穀粒を車外の所定位置(例えばトラックの荷台など)に排出する。
【0036】
図1および図4〜10に示すように、刈取フレーム20は、その後端部に昇降揺動時の揺動支点となる左右向きの支点部材34を備えている。支点部材34には、走行車体1の前下方に向けて延出する延出部材35を連結してある。延出部材35の延出端には、刈取搬送部3の底部に位置する中間部材36を左右向きに連結してある。中間部材36の左端部には、その左端部から前方に向けて延出するように左分草部材21Aを連結し、かつ、その左端部から左側の引起装置22Aの上部に向けて延出する支持部材37を立設してある。中間部材36の右端部には、その右端部から延出するように右分草部材21Bを連結してある。中間部材36の右側部分には、その右側部分から前方に向けて延出するように中分草部材21Cを連結してある。
【0037】
支点部材34の内部には、刈取クラッチ22の出力プーリ38と一体回転する入力軸39などを備えてある。延出部材35の内部には、一対のベベルギア40を介して入力軸39と連動する伝動軸41などを備えている。中間部材36の内部には、一対のベベルギア42を介して伝動軸41と連動する中継軸43や、一対のベベルギア44を介して中継軸43と連動する動力分配軸45などを備えている。支持部材37の内部には、一対のベベルギア46を介して動力分配軸45と連動する左伝動軸47などを備えている。中間部材36の右端部には、一対のベベルギア48を介して動力分配軸45と連動する右伝動軸49を、右側の引起装置22Bの上下中間部に向けて延出するように立設してある。
【0038】
図5〜8に示すように、左分草部材21Aは、中間部材36の左端部から前方に向けて延出する左分草パイプ50Aの前端に板金製の左デバイダ51Aを装備して、刈取搬送部3の左端部に位置するように構成してある。右分草部材21Bは、中間部材36の右端部から右横側方に向けて延出する右向きの延出部と、その延出端から前方に向けて延出する前向きの延出部とを有するL字状に形成した右分草パイプ50Bの前端に、板金製の右デバイダ51Bを装備して、右分草パイプ50Bの前向きの延出部と右デバイダ51Bとが刈取搬送部3の右端部に位置するように構成してある。中分草部材21Cは、中間部材36の右側部分から前方に向けて延出する中分草パイプ50Cの前端に板金製の中デバイダ51Cを装備して、刈取搬送部3の略左右中間位置に位置する(左デバイダ51Aと右デバイダ51Bとの間における略左右中間位置に中デバイダ51Cが位置する)ように構成してある。そして、各分草部材21A〜21Cは、隣り合う2つの分草部材21A,21Cまたは21B,21Cとの間に最大2条の作物Cの導入が可能となるように、左右方向に所定間隔をあけて配置してある。また、刈取搬送部3を作業領域に位置させた場合に、それらの姿勢が水平姿勢または略水平姿勢になるように設定してある。
【0039】
なお、図11に示すように、各分草部材21A〜21Bに、ゴムホースにより弾性変形可能に構成したデバイダ51X〜51Zを装備するようにしてもよい。
【0040】
この構成によると、刈取搬送部3による穀稈の刈り高さを最低に設定した場合であっても、各デバイダ51X〜51Zが地面に突っ込む不都合が生じることを回避することができる。また、各デバイダ51X〜51Zの弾性変形を利用することにより、より畦の近くに位置する作物Cの穀稈にまで刈取搬送部3を作用させることができる。これにより、このコンバインによる刈り取り作業で刈り残る作物Cの量を減少させることができ、刈り残った作物Cの穀稈を手刈りして脱穀装置4に手動供給する枕扱き作業に要する労力を軽減させることができる。
【0041】
ちなみに、左デバイダ51Xは、その一端部を左分草パイプ50Aの前端に外嵌装着し、他端部を左側の引起装置22Aに支持させることにより、対応する作物Cの穀稈を作付け条ごとに分けることが可能な保形性を有するように構成してある。右デバイダ51Yは、その一端部を右分草パイプ50Bの前端に外嵌装着し、他端部を右側の引起装置22Bに支持させることにより、対応する作物Cの穀稈を作付け条ごとに分けることが可能な保形性を有するように構成してある。中デバイダ51Zは、その一端部を中分草パイプ50Cの前端に外嵌装着し、他端部を中分草パイプ50Cに固定することにより、対応する作物Cの穀稈を作付け条ごとに分けることが可能な保形性を有するように構成してある。
【0042】
図4〜6、図9、図10および図12に示すように、左右の引起装置22A,22Bは左右対称形状に構成してある。詳述すると、左右の引起装置22A,22Bは、それらの引起ケース52A,52Bの上部に入力軸53A,53Bを備えている。各引起ケース52A,52Bの内部には、入力軸53A,53Bと一体回転する駆動スプロケット54A,54B、駆動スプロケット54A,54Bの横側方に隣接するテンションスプロケット55A,55B、引起ケース52A,52Bの下部に配備した第1ガイドローラ56A,56Bと第2ガイドローラ57A,57B、および、それらにわたって回し掛けた無端チェーン58A,58B、などを備えている。各無端チェーン58A,58Bには、複数の引起爪59A,59Bを一定ピッチで整列配備してある。各引起爪59A,59Bは、それらの遊端側が引起ケース52A,52Bの内部に位置する格納姿勢と、引起ケース52A,52Bの外方に延出して作物Cに作用する作用姿勢とに、無端チェーン58A,58Bとの連結ピン60A,60Bを支点にして揺動する。第1ガイドローラ56A,56Bと第2ガイドローラ57A,57Bとの間には、引起爪59A,59Bを下向きの作用姿勢に保持する第1ガイドレール61A,61Bを配備してある。第2ガイドローラ57A,57Bと駆動スプロケット54A,54Bとの間には、引起爪59A,59Bを横向きの作用姿勢に保持する第2ガイドレール62A,62Bを配備してある。
【0043】
左側の引起装置22Aは、その入力軸53Aが一対のベベルギア63を介して左伝動軸47と連動する。この連動により、その無端チェーン58Aが正面視において右回りに回動する。この回動により、その各引起爪59Aが、第1ガイドレール61Aにより下向きの作用姿勢に保持される領域Aa1では、刈取搬送部3の左端側から左右中央側に向けて移動し、この移動により、左分草部材21Aと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を刈取搬送部3の左右中央側に向けて掻き込み案内する。また、第2ガイドレール62Aにより横向きの作用姿勢に保持される領域Aa2では、引起ケース52Aの下端部から上部に向けて移動し、この移動により、掻き込み案内後の作物Cの穀稈を引き起こす。
【0044】
右側の引起装置22Bは、その入力軸53Bがチェーン式伝動機構64と一対のベベルギア65とを介して右伝動軸49と連動する。この連動により、その無端チェーン58Bが正面視において左回りに回動する。この回動により、その各引起爪59Bが、第1ガイドレール61Bにより下向きの作用姿勢に保持される領域Ab1では、刈取搬送部3の右端側から左右中央側に向けて移動し、この移動により、右分草部材21Bと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を刈取搬送部3の左右中央側に向けて掻き込み案内する。また、第2ガイドレール62Bにより横向きの作用姿勢に保持される領域Ab2では、引起ケース52Bの下端部から上部に向けて移動し、この移動により、掻き込み案内後の作物Cの穀稈を引き起こす。
【0045】
つまり、左側の引起装置22Aは、刈取搬送部3の入力軸39から、伝動軸41、中継軸43、動力分配軸45、および左伝動軸47、などを介して伝達される動力により作動し、この作動により、左分草部材21Aと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を引き起こすように構成してある。
【0046】
また、右側の引起装置22Bは、刈取搬送部3の入力軸39から、伝動軸41、中継軸43、動力分配軸45、右伝動軸49、およびチェーン式伝動機構62、などを介して伝達される動力により作動し、この作動により、右分草部材21Bと中分草部材21Cとの間に導入された最大2条の作物Cの穀稈を引き起こすように構成してある。
【0047】
さらに、左右の引起装置22A,22Bには、それらに備えた複数の引起爪59A,59Bにより、3つの分草部材21A〜21Cのうちの対応するものの間に導入された作物Cの穀稈を刈取搬送部3の左右中央側に向けて掻き込み案内する案内領域Aa1,Ab1と、掻き込み案内した作物Cの穀稈を引き起こす引き起こし領域Aa2,Ab2とを形成してある。
【0048】
これにより、左右の引起枠26A,26Bを最大2条の穀稈を引き起こす2条用に構成することができ、刈取搬送部3を、左右一対の引起枠26A,26Bにより最大4条の作物Cの収穫を行う2枠4条刈り仕様に構成することができる。その結果、4つの分草部材と3つの引起装置とを備えて最大4条の作物Cの収穫を行なうように構成した一般的な3枠4条刈り仕様の刈取搬送部に比較して、同様の広い作業幅を有するように構成しながら構成の簡素化やコストの削減を図ることができる。
【0049】
また、左右の引起装置22A,22Bに案内領域Aa1,Ab1と引き起こし領域Aa2,Ab2とを形成することにより、構成の簡素化が図られた2枠4条仕様でありながら、4条の作物穀稈を円滑かつ良好に引き起こすことができる。
【0050】
しかも、刈取搬送部3を、左右の引起装置22A,22Bの上部にわたって、それらの上部に配備した入力軸53A,53Bを連動連結するための重量の大きい軸式伝動機構を架設する必要のないアーチレス構造に構成することができ、よって、左右の引起装置22A,22Bの上部にわたって軸式伝動機構を架設するアーチ構造を採用する場合に比較して、刈取搬送部3の重心位置を低くすることができ、車体の安定性を向上させることができる。
【0051】
ところで、図示は省略するが、3枠4条刈り仕様の刈取搬送部にアーチレス構造を採用する場合には、刈取搬送部の左右中央側に配置する引起装置に対する伝動系を、穀稈の搬送通路の下方となる刈取搬送部の左右中央側の底部に配備する必要がある。このような位置に伝動系を配置すると、伝動系のケース上に泥や雑草などの異物が堆積しやすくなり、この堆積した異物に穀稈が接触すると、その穀稈の搬送姿勢に乱れが生じ、この乱れに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理の際に扱き残しが発生しやすくなることから、穀粒回収効率の低下を招きやすくなる。
【0052】
これに対し、本発明に係る刈取搬送部3は、4条刈りでありながら左右中央側の引起装置を必要としない2枠4条刈り仕様であることから、そのような異物の堆積に起因した穀粒回収効率の低下を未然に回避することができる。
【0053】
図1〜3、図5〜7および図12に示すように、左側の引起ケース52Aは、その下部を左分草パイプ50Aに左支持部材66Aを介して支持させてある。また、その上部を支持部材37に支持させてある。右側の引起ケース52Bは、その下部を右分草パイプ50Bに右支持部材66Bを介して支持させてある。また、その上部と左側の引起ケース52Aの上部とにわたるように渡しかけたアーチ状の連結部材67により、その上部を左側の引起ケース52Aの上部に連結してある。つまり、右側の引起ケース52Bは、その上部を連結部材67と左側の引起ケース52Aとを介して支持部材37に支持させてある。そして、これらの支持構造により、左右の引起装置22A,22Bを、それらの上部側ほど車体後方側に位置する後倒れ姿勢で刈取搬送部3に装備してある。
【0054】
なお、左右の引起装置22A,22Bとして、複数の引起爪59A,59Bを左右方向に掻き込み移動させることにより案内領域Aa1,Ab1を形成する構造のものに代えて、車体の走行に伴って、作物Cの穀稈を引き起こし領域Aa2,Ab2に向けて左右方向に摺動案内するガイド部材により形成する構造のもの採用するようにしてもよい。
【0055】
図4〜9に示すように、刈取装置23は、各分草部材21A〜21Cの分草パイプ50A〜50Cに支持させてある。そして、その上側に左右方向に連続して並ぶように整列配置した複数の可動刃68が、その下側に左右方向に連続して並ぶように整列配置した複数の固定刃69に対して、左右方向に一定ストロークで往復摺動することにより、左右の引起装置22A,22Bにより引き起こした作物Cの穀稈を刈り取る。各可動刃68は、クランク式の刈刃駆動装置70を介して動力分配軸45と連動することにより、固定刃69に対して左右方向に一定ストロークで往復摺動する。
【0056】
つまり、刈取装置23は、刈取搬送部3の動力分配軸45から刈刃駆動装置70を介して伝達される動力により作動し、この作動により、左右の引起装置22A,22Bにより引き起こした作物Cの穀稈を刈り取るように構成してある。
【0057】
図4〜9および図13に示すように、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、穀稈の株元側の上部を掻き込み搬送する回動体としての掻込搬送機構71A,71Bと、穀稈の株元側の下部を掻き込み搬送する回転体としてのパッカ72A,72Bとを上下に配置し、かつ、それらの間に、掻込搬送機構71A,71Bおよびパッカ72A,72Bにより掻き込み搬送される穀稈を案内する案内部材73A,73Bを備えて構成してある。左右の掻込搬送機構71A,71Bは、掻き込み搬送用の複数の突出部74a,74bを一定ピッチで一体形成したゴム製の掻込ベルト74A,74Bを、大径の駆動プーリ75A,75Bと小径の従動プーリ76A,76Bとにわたって回し掛けて構成してある。左右の掻込搬送機構71A,71Bの上部には、掻込ベルト74A,74Bのベルト側とともに駆動プーリ75A,75Bと従動プーリ76A,76Bとを上方から覆うことにより、掻込搬送機構71A,71Bに対する穀稈の巻き付を防止するカバー77A,77Bを装備してある。左右のパッカ72A,72Bは、その外周部に掻き込み搬送用の複数の突出部72a,72bを一定ピッチで一体形成してある。
【0058】
左側の掻込搬送装置24Aは、その掻込搬送機構71Aの駆動プーリ75Aとパッカ72Aとを、刈取搬送部3の左右中央側に位置するように、支持部材37に備えた支軸78に回転可能に支持させてある。また、その掻込搬送機構71Aの従動プーリ76Aを、刈取搬送部3の左端部で駆動プーリ75Aよりも前側に位置するように、左支持部材66Aの左端部に一体装備した左補助部材79Aに支持させてある。
【0059】
右側の掻込搬送装置24Bは、その掻込搬送機構71Bの駆動プーリ75Bとパッカ72Bとを、刈取搬送部3の左右中央側に位置するように、右伝動軸49に外嵌した筒軸80に装備してある。また、その掻込搬送機構71Bの従動プーリ76Bを、刈取搬送部3の右端部で駆動プーリ75Bよりも前側に位置するように、右支持部材66Bの右端部に一体装備した右補助部材79Bに支持させてある。
【0060】
そして、この支持構造により、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、刈取搬送部3を作業領域内に位置させた状態では、それらの掻込搬送機構71A,71Bの姿勢が、刈取搬送部3の左右中央側ほど後方に位置する傾斜姿勢で、かつ、後上がりの傾斜姿勢となり、また、それらのパッカ72A,72Bの姿勢が、後上がりの傾斜姿勢となるように刈取搬送部3に装備してある。
【0061】
これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、それらの掻込ベルト74A,74Bの突出部74a,74bやパッカ72A,72Bの突出部72a,72bにより、刈取搬送部3の左右両側では、それらの搬送領域内に位置する穀稈を左右外方の下方側から受け止めて持ち上げるようにしながら穀稈通過部27に向けて掻き寄せ、穀稈通過部27の直前では、掻き寄せた穀稈を前下方側から受け止めて持ち上げるようにしながら穀稈通過部27に掻き入れ、穀稈通過部27では、掻き入れた穀稈を前下方側から受け止めて持ち上げるようにしながら後方の穀稈受け渡し位置に向けて掻き出すことにより、穀稈通過部27を通過させる。
【0062】
その結果、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより、刈取装置23により刈り取った穀稈を掻き込み搬送する際には、その穀稈の株元側を刈取装置23に接触しにくくすることができ、これにより、その接触により穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を未然に回避することができる。
【0063】
図4〜9および図13に示すように、左側の掻込搬送装置24Aは、その掻込搬送機構71Aの駆動プーリ75Aとパッカ72Aとが一体回転するように、その駆動プーリ75Aとパッカ72Aとを連結してある。左側の掻込搬送装置24Bは、その掻込搬送機構71Bの駆動プーリ75Bとパッカ72Bとが筒軸80と一体回転するように、その駆動プーリ75Bとパッカ72Bとを筒軸80に連結してある。筒軸80は、ギア式の減速機構81を介して右伝動軸49と連動する。左側のパッカ72Aは右側のパッカ72Bと噛み合い連動する。
【0064】
つまり、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、右伝動軸49から減速機構81および筒軸80を介して伝達される動力により作動し、この作動により、刈取装置23により刈り取った穀稈を、左右のパッカ72A,72Bの噛合部である穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送し、穀稈通過部27から穀稈受け渡し位置に向けて掻き出し搬送するように構成してある。
【0065】
図1、図2および図4に示すように、供給搬送装置25は、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより穀稈受け渡し位置に掻き出し搬送された穀稈の株元側を挟持して搬送する挟持搬送機構82と、その穀稈の穂先側を係止して搬送する係止搬送機構83とを上下に配置して構成してある。挟持搬送機構82および係止搬送機構83は、それらの入力軸として機能する伝動軸84が一対のベベルギア85を介して刈取搬送部3の入力軸39と連動することにより、穀稈通過部27の穀稈を脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置4に向けて供給搬送するように構成してある。
【0066】
図8および図13に示すように、刈取搬送部3において、中分草部材21Cは、穀稈通過部27の左右幅内である左右のパッカ72A,72Bの谷径da,dbの間に位置するように配置してある。
【0067】
この配置により、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより穀稈を穀稈通過部27に搬送する際に、その穀稈が中分草部材21Cを跨ぐようにして移動することを防止することができる。その結果、穀稈が中分草部材21Cを跨ぐ場合に比較して、その穀稈の株元側を中分草部材21Cに接触しにくくすることができ、これにより、その接触により穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を未然に回避することができる。
【0068】
また、前述したように、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、刈取搬送部3を作業領域内に位置させた状態では、それらの掻込搬送機構71A,71Bの姿勢が、刈取搬送部3の左右中央側ほど後方に位置する傾斜姿勢で、かつ、後上がりの傾斜姿勢となり、また、それらのパッカ72A,72Bの姿勢が、後上がりの傾斜姿勢となることにより、刈取搬送部3を作業領域内に位置させた場合に水平姿勢または略水平姿勢になる中分草部材21Cに対しては、その搬送方向下手側ほど中分草部材21Cから上方に離れるようになる。これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより穀稈通過部27に掻き込み搬送される穀稈が、穀稈通過部27において中分草部材21Cに接触することを防止することができ、結果、その接触による穀稈の搬送姿勢の乱れに起因した穀粒回収率の低下を阻止することができる。
【0069】
図2、図3および図14に示すように、反搭乗運転部側に位置する左側のクローラ13Aは、その車体横外方側の端部となる左端部13Aaが、刈取搬送部3の最反搭乗運転部側に位置する左分草部材21Aの分草始端21Aaと左右方向で一致するように配置してある。また、搭乗運転部側に位置する右側のクローラ13Bは、その車体横外方側の端部となる右端部13Baが、刈取搬送部3の最搭乗運転部側に位置する右分草部材21Bの分草始端21Baから車体の右外方側に少しだけ食み出すように配置してある。
【0070】
つまり、左右のクローラ13A,13Bは、それらの車体横外方側の端部間距離Lが、最大4条の刈り取り搬送が可能となるように構成した刈取搬送部3の作業幅Wよりも大きくなるように、左右方向に所定間隔をあけて配置してある。これにより、左右のクローラ13A,13Bの轍間距離を長くすることができ、各クローラ13A,13Bの接地長さを長くすることによる旋回性能の低下を招くことなく、湿田性能を向上させることができる。
【0071】
また、左側のクローラ13Aは、その左端部13Aaの位置が左分草部材21Aの分草始端21Aaと左右方向で一致することにより、その分草始端21Aaから車体左側に食み出さないようになっている。これにより、車体の左側に未刈りの作物Cxが存在する回り刈りや車体の左右両側に未刈りの作物Cx,Cyが存在する中割りなどの作業走行時に、左側のクローラ13Aで車体の左外側近傍に位置する未刈りの作物Cxを踏み付ける、あるいは、左側のクローラ13Aで車体の左外側近傍に位置する未刈りの作物Cxに泥寄せする、などの不都合の発生を防止することができ、その踏み付けや泥寄せに起因した作業効率の低下を回避することができる。
【0072】
一方、右側のクローラ13Bは、その右端部13Baの位置が右分草部材21Bの分草始端21Baと左右方向で略一致することにより、車体の左右両側に未刈りの作物Cx,Cyが存在する中割りなどの作業走行時に、右分草部材21Bの分草始端21Baが、刈取搬送部3の作業幅内で最搭乗運転部側に位置する作物Cbと、この作物Cbと隣り合う作業幅外の作物Cyとの間における、作業幅内の作物Cbの側近を通るようにすれば、右側のクローラ13Bで車体の右外側近傍に位置する未刈りの作物Cyを踏み付ける、といった不都合の発生を防止することができ、その踏み付けに起因した作業効率の低下を回避することができる。
【0073】
ちなみに、右側のクローラ13Bにおける右分草部材21Bの分草始端21Baから車体の右外方側への食み出し長さLzは、右側のクローラ13Bによる車体右外側近傍の未刈り作物Cyの踏み付けを防止できる長さであれば、例えば、作物Cの植え付け間隔Scとの関係から、Lz=1/3*ScやLz=1/4*Scなどの種々の長さに設定することが可能であるが、Lz≦1/6*Scとすることが好ましい。そして、その食み出し長さLzが短いほど、右側のクローラ13Bによる車体右外側近傍の未刈り作物Cyに対する泥寄せを抑制することができ、その泥寄せに起因した作業効率の低下を抑制することができる。逆に、その食み出し長さLzが長いほど、左右のクローラ13A,13Bの轍間距離を長くすることができ、湿田性能を向上させることができる。
【0074】
なお、右側のクローラ13Bを、その右端部13Baが右分草部材21Bの分草始端21Baと左右方向で一致する、または、右分草部材21Bの分草始端21Baよりも車体内方側に位置するように配置してもよい。また、左側のクローラ13Aを、その左端部13Aaが左分草部材21Aの分草始端21Aaよりも車体内方側に位置するように配置してもよく、また、左側のクローラ13Aによる車体左外側近傍の未刈り作物Cxの踏み付けを防止でき、かつ、未刈り作物Cxに対する泥寄せを抑制できる範囲内で、その左端部13Aaが左分草部材21Aの分草始端21Aaよりも車体外方側に位置するように配置してもよい。
【0075】
図14に示すように、3つの分草部材21A〜21Cは、4条の作物Cを収穫する作業走行時に、搭乗運転部2の前下方に位置する右分草部材21Bの前端側が、刈取搬送部3の作業幅内で最搭乗運転部側に位置する作業幅内最右の作物Cbと、この作物Cbと隣り合う右側の作業幅外の作物Cyまたは作物の刈り跡Czとの間における、作業幅内の作物Cbの側近を通るように、作物Cに対して右分草部材21Bを位置合わせした場合には、中分草部材21Cが、その作用対象となる作業幅内の左右中央側に位置する2つの作物Cc,Cdの中間位置または略中間位置を通り、かつ、左分草部材21Aが、刈取搬送部3の作業幅内で最反搭乗運転部側に位置する作業幅内最左の作物Caと、この作物Caと隣り合う左側の作業幅外の作物Cxまたは作物の刈り跡Czとの間における、それらの中間位置よりも作業幅内の作物Caに近い位置を通るように配置してある。
【0076】
つまり、4条刈りの作業走行時には、搭乗運転部2の前下方に位置することにより搭乗運転部2からの視認性の高い右分草部材21Bの前端側を、作業幅内の最右に位置する作物Cbの右横側近を通るように位置合わせすることにより、搭乗運転部2から離れることにより搭乗運転部2からの視認性の低い左分草部材21Aおよび中分草部材21Cを、それらの視認を行なうことなく、作物Cの植え付け位置から外れた適切な位置に通すことができ、それらの分草部材21A,21Cによる作物Cの押し倒しや踏み付けを回避することができる。
【0077】
これにより、作物Cの倒伏が激しい場合であっても、各分草部材21A〜21Bを作物Cに対する適切な位置に容易かつ確実に位置合わせすることができ、各分草部材21A〜21Bおよび左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを効率よく行うことができる。
【0078】
また、中分草部材21Cが、作業幅内の左右中央側に位置する2つの作物Cc,Cdの中間位置または略中間位置を通ることにより、左側の引起枠26Aの枠内に導入される2条の作物Ca,Ccの穀稈と、右側の引起枠26Bの枠内に導入される2条の作物Cb,Cdの穀稈とを、中分草部材21Cの真上に位置する穀稈通過部27を挟んだ左右対称の位置に位置させることができ、その左右対象となる穀稈の穀稈通過部27からの距離を一様に短くすることができる。
【0079】
これにより、左右の引起枠26A,26Bに2条ずつの作物Cの穀稈を導入するようにしながらも、中分草部材21Cが、作業幅内の左右中央側に位置する2つの作物Cc,Cdの中間位置から大きく外れることにより、左右の引起枠26A,26Bのいずれか一方に導入される穀稈の穀稈通過部27からの距離が不必要に長くなって、左右いずれか一方の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の搬送効率が低下することを防止することができる。また、左右いずれか一方の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の搬送に不必要な遅れが生じることを防止することができ、この遅れに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れによって、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を防止することができる。
【0080】
しかも、左分草部材21Aが、作業幅内の最左に位置する作物Caの左横近くを通ることにより、4条の作物Cを収穫する作業走行時には、常に、右分草部材21Bの前端側を、作業幅内の最右に位置する作物Cbの右横側近を通るように位置合わせする必要が生じることになる。
【0081】
これにより、4条の作物Cを収穫する作業走行時には、常に、各分草部材21A〜21Cを、作物Cに対する上述した適切な位置に確実に通すことができるようになり、結果、4条の作物Cを収穫する作業走行時における作業性の向上を図ることができる。
【0082】
図15に示すように、3つの分草部材21A〜21Cは、3条の作物Cを収穫する作業走行時に、搭乗運転部2の前下方に位置する右分草部材21Bの前端側が、刈取搬送部3の作業幅内の最搭乗運転部側に位置する作業幅内右側の作物Cbと隣り合う右側の作物の刈り跡Czの上方を通るように、右側の作物の刈り跡Czに対して右分草部材21Bの前端側を位置合わせした場合には、中分草部材21Cが、その作用対象となる作業幅内の右側と左右中央側とに位置する2つの作物Cb,Ccの間における右側の作物Cbよりも左右中央側の作物Ccに近い位置を通り、かつ、左分草部材21Aが、その作用対象となる、刈取搬送部3の作業幅内の最反搭乗運転部側に位置する作業幅内左側の作物Caと、この作物Caと隣り合う左側の作業幅外の作物Cxまたは作物の刈り跡Czとの間の中間位置または略中間位置を通るように配置してある。
【0083】
つまり、3条刈りの作業走行時には、搭乗運転部2の前下方に位置することにより搭乗運転部2からの視認性の高い右分草部材21Bの前端側を、右側の刈り跡Czの上方を通るように位置合わせすることにより、搭乗運転部2から離れることにより搭乗運転部2からの視認性の低い左分草部材21Aおよび中分草部材21Cを、それらの視認を行なうことなく、作物Cの植え付け位置から外れた適切な位置に通すことができ、それらの分草部材21A,21Cによる作物Cの押し倒しや踏み付けを回避することができる。
【0084】
これにより、作物Cの倒伏が激しい場合であっても、右分草部材21Bおよび中分草部材21Cを作物Cに対する適切な位置に容易かつ確実に位置合わせすることができ、各分草部材21A〜21Bおよび左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを効率よく行うことができる。
【0085】
また、中分草部材21Cが、作業幅内の左右中央側に位置する作物Ccの右横近くを通ることにより、左側の引起枠26Aの枠内に導入される2条の作物Ca,Ccの穀稈と、右側の引起枠26Bの枠内に導入される1条の作物Cbの穀稈のうち、中分草部材21Cの真上に位置する穀稈通過部27から最も離れる左側の作物Caの穀稈を、穀稈通過部27からの距離が最短になるようにすることができる。
【0086】
これにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bにより3条の穀稈を穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送する際の搬送効率を向上させることができる。また、左右いずれか一方の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の搬送に不必要な遅れが生じることを防止することができ、この遅れに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れによって、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を防止することができる。
【0087】
しかも、左分草部材21Aが、作業幅内の左側に位置する作物Caと、左側の作業幅外の作物Cxまたは作物の刈り跡Czとの間の中間位置または略中間位置を通ることにより、3条の作物Cを収穫する作業走行時には、搭乗運転部2からの視認性が最も低い左分草部材21Aを、その作用対象の作物Cの植え付け位置から、その作用範囲内での最も離れた位置に位置させることができる。
【0088】
これにより、3条の作物Cを収穫する作業走行時には、搭乗運転部2からの視認性が最も低い左分草部材21Aを、その作用対象の作物Cに良好に作用させることができるとともに、左分草部材21Aが作用対象の作物Cの植え付け位置に位置することをより確実に防止することができる。
【0089】
ちなみに、上述した3つの分草部材21A〜21Cと作物Cの位置関係を満たすための3つの分草部材21A〜21Cの具体的な配置としては、3つの分草部材21A〜21Cの左右間隔Sa,Sbと作物Cの植え付け間隔Scとの関係が、Sa=Sb=1.75*Scとなる配置や、Sa=Sb≒1.75*Scとなる配置、あるいは、Sa>SbでSa≒1.75*ScかつSb≒1.75*Scとなる配置や、Sa<SbでSa≒1.75*ScかつSb≒1.75*Scとなる配置、などが考えられる。そして、4条の作物Cを収穫する作業走行時には、左分草部材21Aとその右横に位置する作業幅内最左の作物Caとの離間距離Laが、右分草部材21Aとその左横に位置する作業幅内最右の作物Cbとの離間距離Lbよりも大きくなることが好ましい。
【0090】
図2、図3、図7、図12および図13に示すように、前端側が搭乗運転部2の前下方に位置する右分草部材21Bを備えた右側の引起枠26Bにおいて、この引起枠26Bに備える2条用の引起装置22Bは、その引き起こし領域Ab2が搭乗運転部2から離れる左側に位置するように構成してある。
【0091】
これにより、右側の引起枠26Bに、引き起こし領域Ab2が搭乗運転部側である右側に位置するように構成した2条用の引起装置を装備する場合に比較して、搭乗運転部2からの車体前方に対する視界を良好にすることができ、車体前方の作業地などに対する搭乗運転部2からの視認性を向上させることができる。
【0092】
図2、図3、図7、図12および図13に示すように、左右の引起装置22A,22Bは、それらの引き起こし領域Aa2,Ab2の左右幅Wa,Wbを、最大2条の穀稈の引き起こしに対応する幅広に形成してある。また、左右の引起装置22A,22Bに備える引起爪59A,59Bは、幅広の引き起こし領域Aa2,Ab2に対応する長尺に形成してある。
【0093】
これにより、左右の引起装置22A,22Bが常に2条ずつの穀稈を引き起こす4条刈りの作業走行時に、穀稈が左右の対応する引き起こし領域Aa2,Ab2を通過する際の抵抗が許容範囲を超えることを防止することができる。その結果、4条刈りの作業走行時においても、左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを円滑かつ良好に行なわせることができる。
【0094】
また、各引起爪59A,59Bを、幅広の引き起こし領域Aa2,Ab2に対応する長尺に形成することにより、幅広の引き起こし領域Aa2,Ab2において引起爪59A,59Bが穀稈に作用しなくなるデッドゾーンが形成されることを防止することができる。その結果、左右の引起装置22A,22Bの各引き起こし領域Aa2,Ab2を、2条の穀稈の通過を許容する幅広に形成しながらも、左右の引起装置22A,22Bによる穀稈の引き起こしを確実に行なわせることができる。
【0095】
ちなみに、3条刈りと4条刈りとにかかわらず、常に2条の穀稈が供給される左側の引起装置22Aを、その引き起こし領域Aa2の左右幅Waが、最大2条の穀稈の引き起こしに対応する幅広になり、かつ、その引起爪59Aが、幅広の引き起こし領域Aa2に対応する長尺になるように構成してもよい。
【0096】
ところで、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、穀稈の株元側の上部を掻き込み搬送する回動体として、ゴム製の掻込ベルト74A,74Bを備えた掻込搬送機構71A,71Bを採用していることにより、刈り取り前の穀稈に作用した場合には、掻込ベルト74A,74Bの突出部74a,74bが、刈り取り前の穀稈の強度に負けて変形することにより、その穀稈が刈り取られるまでの間、その穀稈を穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送しなくなる。
【0097】
このような場合に、左右の掻込搬送装置24A,24Bを、それらに備えた穀稈巻き付き防止用のカバー77A,77Bが、刈取装置23の刈刃である可動刃68および固定刃69の先端よりも車体前方側に位置するように構成していると、そのカバーが、車体の走行に伴って、刈り取り前の穀稈に接当して、その穀稈を車体の進行方向に向けて押し曲げるようになる。
【0098】
そして、このように押し曲げられた作物Cの穀稈が、刈取装置23の刈り取り位置に達して刈り取られると、その刈り取りとともに、車体の進行方向に向けて押し曲げられた状態からまっすぐの状態に戻ろうとする復元作用により、左右の掻込搬送装置24A,24Bから離れる車体の進行方向に飛び出して、左右の掻込搬送装置24A,24Bの搬送領域から外れることがある。
【0099】
このような現象が通常の刈り取り作業時に発生しても、左右の掻込搬送装置24A,24Bの搬送領域から外れた穀稈は、車体の走行とともに左右の掻込搬送装置24A,24Bの搬送領域に向けて次々と導入される後続の穀稈により、左右の掻込搬送装置24A,24Bの搬送領域内に押し戻されるようになることから、左右の掻込搬送装置24A,24Bによって穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送することができる。
【0100】
しかしながら、上記の現象が、刈取搬送部3による刈り取り搬送を中断する畦際旋回などの直前や、刈取搬送部3による穀稈の刈り取り搬送量が少ない圃場の隅部での刈り取り作業時などにおいて発生すると、左右の掻込搬送装置24A,24Bの搬送領域から外れた穀稈を搬送領域内に押し戻すことができなくなり、結果、搬送領域から外れたままこぼれ落ちる穀稈が多数発生することになる。
【0101】
そこで、図5〜7に示すように、このコンバインでは、左右の掻込搬送装置24A,24Bを、それらの平面に対する垂直方向から各掻込搬送装置24A,24Bを見た場合に、それらのカバー77A,77Bが、刈取装置23の刈刃である可動刃68および固定刃69の先端よりも車体後方側に位置するように、好ましくは、可動刃68および固定刃69の車体前後方向での刈取作用範囲の中間部よりも車体後方側に位置するように構成してある。
【0102】
これにより、掻込ベルト74A,74Bの突出部74a,74bが、刈り取り前の穀稈の強度に負けて変形した場合であっても、カバー77A,77Bが、車体の走行に伴って、刈り取り前の穀稈に接当して、その穀稈を車体の進行方向に向けて押し曲げるようになることを防止することができる。その結果、その押し曲げに起因して、押し曲げられた穀稈が、刈り取りとともに左右の掻込搬送装置24A,24Bの搬送領域から外れてこぼれ落ちることを防止することができる。
【0103】
図7および図13に示すように、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、それらの平面に対する垂直方向から各掻込搬送装置24A,24Bを見た場合に、それらの掻込搬送機構71A,71Bの掻き込み搬送領域で、掻込ベルト74A,74Bの突出部74a,74bの先端が描く軌跡K1a,K1bが、可動刃68および固定刃69の先端と車体前後方向で略一致するように構成してある。
【0104】
これにより、各掻込ベルト74A,74Bの突出部74a,74bが、刈り取り前の穀稈に作用して変形することを抑制することができ、その変形による耐久性の低下を抑制することができる。また、突出部74a,74bの変形を抑制することにより、刈り取り直後の穀稈を、左右の掻込ベルト74A,74Bによって素早く穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送することができ、結果、左右の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の掻き込み搬送効率を向上させることができるとともに、搬送遅れに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れによる穀粒回収率の低下を防止することができる。
【0105】
図7および図13に示すように、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、それらの平面に対する垂直方向から各掻込搬送装置24A,24Bを見た場合に、各案内部材73A,73Bの案内作用部73a,73bが可動刃68および固定刃69の先端よりも車体後方側に位置するように、好ましくは、可動刃68および固定刃69の車体前後方向での刈取作用範囲の中間部よりも車体後方側に位置するように構成してある。
【0106】
これにより、案内部材73A,73Bが、車体の走行に伴って、刈り取り前の穀稈に接当して、その穀稈を車体の進行方向に向けて押し曲げるようになることを防止することができる。その結果、その押し曲げに起因して、押し曲げられた穀稈が、刈り取りとともに左右の掻込搬送装置24A,24Bの搬送領域から外れてこぼれ落ちることを防止することができる。
【0107】
図7および図13に示すように、左右の掻込搬送装置24A,24Bは、それらの平面に対する垂直方向から各掻込搬送装置24A,24Bを見た場合に、左右のパッカ72A,72Bの突出部72a,72bの先端が描く軌跡K2a,K2bの前端が、可動刃68および固定刃69の先端と車体前後方向で略一致するように構成してある。
【0108】
これにより、刈り取り直後の穀稈を、左右のパッカ72A,72Bによって素早く穀稈通過部27に向けて掻き込み搬送することができ、結果、左右の掻込搬送装置24A,24Bによる穀稈の掻き込み搬送効率を向上させることができるとともに、搬送遅れに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れによる穀粒回収率の低下を防止することができる。
【0109】
ちなみに、左右の掻込搬送装置24A,24Bを、それらの平面に対する垂直方向から各掻込搬送装置24A,24Bを見た場合に、それらの掻込搬送機構71A,71Bの掻き込み搬送領域で、左右のパッカ72A,72Bの突出部72a,72bの先端が描く軌跡K2a,K2bの前端が、可動刃68および固定刃69の先端と車体前後方向で一致するように構成してもよい。
【0110】
図4、図5および図7〜9に示すように、刈刃駆動装置70は、左伝動軸47よりも車体横外方側の位置に位置するように中間部材36の左端部に配備してある。
【0111】
これにより、刈取装置23により刈り取った穀稈の株元側が刈刃駆動装置70に接触することを確実に防止することができ、結果、その接触により穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因して、供給搬送装置25により穀稈を脱穀装置4に向けて搬送する際の穂先側の揃いが悪くなり、脱穀装置4での脱穀処理において扱き残しが発生しやすくなる、といった穀粒回収率の低下を未然に回避することができる。
【0112】
また、刈刃駆動装置70が、搭乗運転部2が隣接せずに開放される刈取搬送部3の左端部に位置することにより、刈刃駆動装置70の組み付けやメンテナンスが行ないやすくなる。
【0113】
〔別実施形態〕
【0114】
〔1〕左側の伝動軸47から分岐した動力を左側の掻込搬送装置24Aに伝達し、左右の掻込搬送装置24A,24Bに備えた回転体72A,72Bの突出部72a,72bの噛み合いにより、左右の掻込搬送装置24A,24Bが連動するように構成してもよい。
【0115】
〔2〕刈取搬送部3の左側方に搭乗運転部2を備えるように構成してもよい。
【0116】
〔3〕刈刃駆動装置70を、刈取搬送部3における右側の伝動軸49よりも車体横外方側の位置に配備するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】自脱型コンバインの全体平面図
【図3】自脱型コンバインの正面図
【図4】刈取搬送部の伝動構成などを示す図
【図5】刈取搬送部の前部の構成を示す左側面図
【図6】刈取搬送部の前部の構成を示す右側面図
【図7】掻込搬送装置の平面に対する垂直方向から見た要部の横断平面図
【図8】掻込搬送装置などの構成を示す要部の縦断正面図
【図9】刈取搬送部の伝動構成を示す要部の縦断背面図
【図10】右側の引起装置に対する伝動構成を示す要部の縦断右側面図
【図11】デバイダをゴムホースで構成した分草部材の別実施形態を示す要部の左側面図と平面図
【図12】引起装置の構成を示す縦断正面図
【図13】掻込搬送装置の平面に対する垂直方向から見た場合の掻込搬送装置と刈取装置との位置関係を示す要部の横断平面図
【図14】4条刈りの作業状態を示す要部の概略平面図
【図15】3条刈りの作業状態を示す要部の概略平面図
【符号の説明】
【0118】
2 搭乗運転部
3 刈取搬送部
21A 分草部材
21C 分草部材
22A 引起装置
22B 引起装置
23 刈取装置
24A 掻込搬送装置
24B 掻込搬送装置
26A 引起枠
26B 引起枠
27 穀稈通過部
45 動力分配軸
47 伝動軸(左)
49 伝動軸(右)
70 刈刃駆動装置
72a 突出部
72b 突出部
72A 回転体
72B 回転体
C 作物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の穀稈を作付け条ごとに分ける3つの分草部材を、隣り合う分草部材との間に最大2条の作物の導入が可能となるように、左右方向に所定間隔をあけて配置するとともに、隣り合う分草部材の間に、それらの間に導入された作物の穀稈を引き起こす引起装置を装備して、刈取搬送部に2条用の左右一対の引起枠を形成することにより、前記刈取搬送部を、2枠4条刈り仕様に構成してあることを特徴とする自脱型コンバインの刈り取り搬送構造。
【請求項2】
左右の前記引起枠のそれぞれに、前記引起装置により引き起こした穀稈を、左右の前記引起枠の間に形成した穀稈通過部に掻き込み搬送する2条用の掻込搬送装置を備えてあることを特徴とする請求項1に記載の自脱型コンバインの刈り取り搬送構造。
【請求項3】
前記刈取搬送部の底部に、前記刈取搬送部を駆動する動力を前記刈取搬送部の左右方向に分配する左右向きの動力分配軸を配備し、
前記分配伝動軸の左端側を、左側の前記引起枠に備えた前記引起装置に左側の伝動軸を介して伝動連結し、
前記分配伝動軸の右端側を、右側の前記引起枠に備えた前記引起装置に右側の伝動軸を介して伝動連結し、
左右いずれか一方の伝動軸から分岐した動力を、左右いずれ一方の前記掻込搬送装置に伝達し、
左右の前記掻込搬送装置に、掻き込み用の複数の突出部を備えた回転体を装備するとともに、これらの回転体における前記突出部の噛み合いにより、左右の前記掻込搬送装置が連動するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の自脱型コンバインの刈り取り搬送構造。
【請求項4】
前記刈取搬送部に、前記引起装置により引き起こした穀稈を刈り取る刈取装置を備え、
前記刈取搬送部における左右いずれか一方の前記伝動軸よりも車体横外方側の位置に、前記分配伝動軸と前記刈取装置とを連動連結する刈刃駆動装置を配備してあることを特徴とする請求項3に記載の自脱型コンバインの刈り取り搬送構造。
【請求項5】
前記刈取搬送部の左右一側方に搭乗運転部を備え、
前記刈取搬送部の反搭乗運転部側に前記刈刃駆動装置を配備してあることを特徴とする請求項4に記載の自脱型コンバインの刈り取り搬送構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−11772(P2010−11772A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173745(P2008−173745)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】