説明

自走型防除機

【課題】本発明の課題は、自走型防除機において、薬液流通経路の屈曲経路部をできるだけ少なくし、その経路や配置に工夫をして圧力損失の低減、省エネ化を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、防除ポンプ8より圧送される薬液の入口側経路部20aから散布ブーム9に通ずる散布コック16側への出口側経路部20cまでの薬液流通経路20は、最低限の第1屈曲経路部21と第2屈曲経路部22を介して連通構成してあることを特徴とする自走型防除機の構成とする。また、薬液流通経路20の入口側経路部20aを水平方向に設け、この下流側の同一線上には流量制御バルブ部24を設けると共に、薬液の流れを第1屈曲経路部21によって所定角度に方向変換すべく構成してあることを特徴とする自走型防除機の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自走しながら圃場の作物に薬液を散布する自走型防除機に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、防除ポンプから散布ブームへの散布コック間にわたる薬液流通経路中には、流動抵抗の小さい直線経路が極めて少なく、大きく曲がった屈曲経路部が数箇所あり、特に、特許文献1に示されものでは7箇所もの屈曲経路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−29284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屈曲経路が多いほど流動抵抗も大きくなり、圧力損失が大きくなって、基圧もそれなりに大きく設定しなければならず、エンジン馬力が大となり、燃費の悪化を招く問題があった。
【0005】
本発明の課題は、薬液流通経路の屈曲経路部をできるだけ少なくして上記問題点を解消せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、防除ポンプ(8)より圧送される薬液の入口側経路部(20a)から散布ブーム(9)に通ずる散布コック(16)側への出口側経路部(20c)までの薬液流通経路(20)は、最低限の第1屈曲経路部(21)と第2屈曲経路部(22)を介して連通構成してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、防除ポンプ(8)より圧送される薬液は、薬液流通経路(20)の入口側経路部(20a)から第1屈曲経路部(21)及び第2屈曲経路部(22)を通じて方向変換し、散布コック(16)に至る出口側経路部(20)まで圧送される。
【0008】
第1・第2屈曲経路部以外の経路は全て直線的に構成されるので、薬液流通経路の屈曲経路部を最低限の2箇所に設定することで、圧力損失が大幅に低減し、省エネ化が可能となる。
【0009】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記薬液流通経路(20)の入口側経路部(20a)を水平方向に設け、この下流側の同一線上には流量制御バルブ部(24)を設けると共に、薬液の流れを第1屈曲経路部(21)によって所定角度に方向変換すべく構成してあることを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、入口側から出口側までの経路長さを最短にでき、圧力低下を防止することができる。しかも、構成がシンプルで部品点数を少なくできる。
請求項3記載の本発明は、請求項2において、前記流量制御バルブ部(24)は、薬液タンク(5)の底側に配置してあることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、流量制御バルブユニットの上部側には空間が確保できるので、散布ブームの昇降、スライドを作動させる操作スイッチや各種センサ等が設け易くなる。
請求項4記載の本発明は、請求項1又は請求項2において、前記第1屈曲経路部(21)と第2屈曲経路部(22)との間の中継経路部(20b)は、直線経路に構成すると共に、その途中部には流量センサ(25)を設けてあることを特徴とする。
【0012】
上記構成によると、主たる経路が直線経路であるため、圧力損失を大幅に低減でき、流量センサ(25)による経路内の流量測定が正確に行える。
請求項5記載の本発明は、請求項1又は請求項2又は請求項3において、前記薬液流通経路部(20)は、薬液タンク(5)と一体的に装備し、薬液タンク(5)を本機に対し着脱可能に構成してあることを特徴とする。
【0013】
上記構成によると、薬液流通経路部や流量制御バルブ部等がタンク側に一体的に装備されているので、薬液タンクと共に本機側から簡単に取り外すことができ、これにより、本機側のメンテナンスを容易に行える。
【発明の効果】
【0014】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、薬液流通経路の屈曲経路部は最低限の2箇所とすることで、従来のものより大幅に圧力損失を低減することができ、省エネ化が可能となった。
【0015】
請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、入口側から出口側までの経路長さを最短にでき、圧力低下を防止することができる。しかも、構成がシンプルで部品点数も少なくすることができる。
【0016】
請求項3の本発明によれば、請求項2の発明効果に加えて、流量制御バルブ部は、薬液タンクの底側に寝かせた状態に配置してあるので、流量制御バルブユニットの上部側に所定の空間が確保でき、散布ブームの昇降、左右のスライドを作動させる操作スイッチや各種センサ等が設け易くなる。
【0017】
請求項4の本発明によれば、請求項1又は請求項2の発明効果を奏することができるものでありながら、中継経路部が直線状に構成されているため、圧力損失を大幅に低減できるばかりでなく、流量センサによる経路内の流量検知を正確に行うことができる。
【0018】
請求項5の本発明によれば、薬液流通経路部を構成する配管ユニットがタンク側に一体的に装備されているので、薬液タンクと共に本機側から簡単に取り外すことができ、これにより、本機側のメンテナンスが必要に応じて容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自走型防除機の側面図
【図2】同上要部の正面図
【図3】散布制御ユニットの側面図
【図4】散布制御ユニット及び薬液タンクの側面図
【図5】散布制御ユニットの一部の側面図
【図6】散布装置の配管系統図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、自走型防除機を示すものであり、この車体1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪3と後輪4とに伝えるようにしている。機体後部には薬液を収容している薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の前部側中央部に運転席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。薬液タンク5内の薬液は、防除ポンプ8により散布ブ−ム9に設けられた散布ホ−ス10のノズル11から噴出されるようになっている。
【0021】
機体の左右両側には散布ブ−ムを収納支持するためのブーム収納支持枠12が立設され、受け具13によって係止保持されるようになっている。
運転席6の横側部には、マイコン制御の防除コントローラ14、防除ポンプ8の駆動を入切する防除ポンプスイッチ15や、手動で開閉できる各散布ブーム9の散布コック16等が設置される。防除コントローラ14には、車速センサ17による車速連動型自動散布制御手段が備えられている。
【0022】
次に、図3、図4において、防除ポンプ8より圧送される薬液の入口側経路部から散布ブーム9に通ずる散布コック16側への出口側経路部までの薬液流通経路20の配管構造について説明すると、ポンプ側入口端部から第1屈曲経路部(第1分岐管)21までの入口側経路部20aは水平直線経路とし、第1分岐管21から第2屈曲経路部(第2分岐管)22までの中継経路部20bは上下方向の垂直状直線経路とし、また、第2分岐管22から散布コック16までの出口側経路部20cは水平直線経路となるように配管している。
【0023】
入口側経路部20aの途中部には、一定圧以上の液圧を逃がす安全弁23を有した余水戻し経路29が設けられてタンク5に還元できるようになっている。また、この薬液タンク5の底部との間には攪拌経路30が連通されて、一部の薬液を攪拌ノズル31によってタンク内へ常時噴出還元させて、このタンク内の薬液を攪拌するようになっている。
【0024】
入口側経路部20aの下流側同一線上には、ニードルバルブ24aやバルブ作動用モータ24b等を備えた流量制御バルブ(ユニット)24が設置され、薬液タンク5の底面側に沿うように寝かせた状態に配置構成されている。また、中継経路部20bの途中部には流量を測定する流量センサ25が設けられている。薬液流通経路20中の流量は流量センサ25にて測定するが、圧力は圧力センサ26にて測定するようになっている。
【0025】
以上のように、薬液流通経路20、余水戻し経路29や攪拌経路30等を備えた配管ユニットは、薬液タンク5側に一体的に装備し、本機に対しては薬液タンクと共に着脱できる構成としている。
【0026】
図3及び図4に示す構成において、従来の構成ではエアチャンバを設けていたので、スペースを取り、配管部品の構成、組立が複雑であったが、本例ではエアチャンバを廃止することによって解決することができる。
【0027】
上記防除コントローラ20には、自動散布と手動散布を組み合わせ、どちらの散布モードでも散布できる制御手段が備えられている。自動散布モードでは、防除ポンプ8を駆動する防除ポンプスイッチ15を押してスイッチオンし、散布コック16を開き、走行クラッチを入れて機体を前進させると自動的にマイコン防除作業が開始されるようになっている。そして、この自動散布制御中に途中で手動散布したい時には、手動ボタンスイッチ18を押すことによって手動モードに切り替り、散布圧を任意に設定することによって手動散布作業が行えるようになっている。
【0028】
図5及び図6に示す実施例について説明する。自走型防除機の散布制御において、かかる実施例では、散布コック16の開閉位置を検出するマイクロスイッチ32を設け、散布コック「閉」位置で、同時に防除ポンプ8の駆動を入り切りする電磁クラッチ33を「切り」側に作動させるように構成している。散布コック「閉」では散布ブームのノズルより薬液は散布されないが、防除ポンプは常にONされている状態を保つので、エネルギーが無駄に消費される問題がある。上記本例によると、散布しないときには、ポンプの駆動を切りにするので、かかる問題点を解消することができる。なお、枕地旋回終了後、散布コックを「入り」にした時は、これに連動して防除ポンプスイッチが自動的にONされ、散布が開始されるように構成しておくことが望ましい。
【0029】
また、防除機の走行ミッションに設けた車速センサ17の車速検出と、散布コック(噴霧コック)16の開閉の位置検出(マイクロスイッチ32)を複合的に組み合わせ、例えば、散布コックが「開」であっても、車速がゼロであれば、電磁クラッチ33をOFFにし、車速が一定以上になっても、散布コックが「閉」になれば、自動的に電磁クラッチ33をOFFにする。このように防除ポンプの作動を制御することで、エネルギー消費を少なくでき、CO2の排出も従来より抑制することができる。
【0030】
上記の散布制御は、自走型防除機のエンジン始動用のキーON状態で、直ちに散布制御を開始するように構成しておくと、散布制御専用の操作スイッチを散布開始の都度設定する必要がないので、操作忘れがなく、操作ミスも発生しない。
【0031】
車速増減によって自動散布制御するものにおいて、散布速度に最適な散布流量を制御する流量制御と、前記防除ポンプの電磁クラッチ制御を組み合わせた散布制御に構成することで、散布量の均一化と省エネルギー化を合わせ持ち、性能の高い防除機を提供することができる。
【0032】
図6に示す散布回路において、流量センサ25の検出流量で、防除ポンプ8のON・OFFを制御する散布制御手段を構成することもできる。つまり、流量センサ25の検出流量値で、散布作業中か、停止中かを判断できるようにし、散布作業中のみ電磁クラッチ33をONとし、その他はOFFする構成とすることで、効率的にエネルギーを消費することができる。流量センサが散布回路中に存在する時は、散布コックの入り切りを検出するマイクロスイッチが不用となり、低コスト設計が可能となる。
【0033】
また、複数の散布コック16,16,16の開閉位置を検出するマイクロスイッチ32,32,32を設け、本機の走行ミッションには車速センサ17を設けた構成のものにおいて、散布コックの入り切りの検出と本機の車速センサの車速検出により、散布作業の開始をマイコンに認識させ、散布制御するように構成することもできる。全ての散布コックが「開」位置で、且つ、車速センサからの車速が規定以上の時、防除ポンプを駆動するように構成することで、エネルギーを効率的に消費することができる。また、散布作業中に全ての散布コックが「閉」位置にあるか、車速センサによる車速検出値が規定値以下になるか、どちらか一方を満たせば、自動的に防除ポンプを駆動する電磁クラッチ33をOFFに切り替えて一時的に薬液の吐出を停止するよう構成することによっても、作業時の省エネ化を図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
5 薬液タンク
8 防除ポンプ
9 散布ブーム
16 散布コック
20 薬液流通経路
20a 入口側経路部
20b 中継経路部
20c 出口側経路部
21 第1屈曲経路部(分岐管)
22 第2屈曲経路部(分岐管)
24 流量制御バルブ
25 流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防除ポンプ(8)より圧送される薬液の入口側経路部(20a)から散布ブーム(9)に通ずる散布コック(16)側への出口側経路部(20c)までの薬液流通経路(20)は、最低限の第1屈曲経路部(21)と第2屈曲経路部(22)を介して連通構成してあることを特徴とする自走型防除機。
【請求項2】
前記薬液流通経路(20)の入口側経路部(20a)を水平方向に設け、この下流側の同一線上には流量制御バルブ部(24)を設けると共に、薬液の流れを第1屈曲経路部(21)によって所定角度に方向変換すべく構成してあることを特徴とする請求項1記載の自走型防除機。
【請求項3】
前記流量制御バルブ部(24)は、薬液タンク(5)の底側に配置してあることを特徴とする請求項2記載の自走型防除機。
【請求項4】
前記第1屈曲経路部(21)と第2屈曲経路部(22)との間の中継経路部(20b)は、直線経路に構成すると共に、その途中部には流量センサ(25)を設けてあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自走型防除機。
【請求項5】
前記薬液流通経路部(20)は、薬液タンク(5)と一体的に装備し、薬液タンク(5)を本機に対し着脱可能に構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の自走型防除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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