説明

自走式清掃装置

【課題】床面の清掃作業によって生じる踏み跡が当該床面に残留するのを確実に防止し、確実に清掃することができる自走式清掃装置を提供する。
【解決手段】自走式清掃装置100は、床面Fに対して清掃作業を行うものである。この自走式清掃装置100は、清掃時に床面Fに対してほぼ同一方向に傾斜した傾斜姿勢で接触する多数のブラシ毛103aを有する4つのブラシ部103と、各ブラシ部103に振動を与えるバイブレータ102と、各ブラシ部103よりも上方に位置し、清掃時に作業者108が搭乗するステップ板105とを備え、ステップ板105に作業者108が搭乗した状態で、バイブレータ102の作動により各ブラシ部103を振動させ、該振動した各ブラシ部103と床面Fとの接触により、該床面Fを清掃しつつ走行するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に対して清掃作業を行う自走式清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗やガソリンスタンド等の床面を清掃する床面清掃装置が知られている。このような床面清掃装置としては、例えば、特許文献1や非特許文献1に記載されている、ブラシによって床面の塵芥を擦り取る装置がある。
【0003】
特許文献1に記載されている床面清掃装置は、床面に対してブラシを上下方向に往復振動させるものである。この床面清掃装置は、当該床面清掃装置を操作する操作部(グリップ部)を有しており、清掃時には、作業者が操作部を把持しつつ、床面清掃装置とともに床面を移動するよう構成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の床面清掃装置では、清掃時に作業者が床面清掃装置の後方から当該床面清掃装置を操作するため、清掃された床面を作業者が踏み歩くこととなり、清掃された床面に作業者の足跡(踏み跡)が残るという問題があった。
【0005】
また、非特許文献1に記載されている床面清掃装置は、ブラシを床面に対して平行に回転させるものである。この床面清掃装置は、作業者が床面清掃装置の搭乗席に搭乗し、床面清掃装置の下方に設置された車輪を操作することにより走行するよう構成されている。
【0006】
しなしながら、非特許文献1の床面清掃装置では、清掃時にブラシの後方に位置する車輪があり、その車輪が清掃された床面を走行することとなるため、清掃された床面に車輪の跡(踏み跡)が残るという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−111705号公報
【非特許文献1】“クリーンバーニー 搭乗式自動床面洗浄機 SE−860N”、[online]、アマノ株式会社、[2005年5月9日検索]、インターネット〈URL:http://www.amano.co.jp/Clean/product/each/se860n/index.html〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、床面の清掃作業によって生じる踏み跡が当該床面に残留するのを確実に防止し、確実に清掃することができる自走式清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1) 床面に対して清掃作業を行う自走式清掃装置であって、
清掃時に床面に対してほぼ同一方向に傾斜した傾斜姿勢で接触する多数のブラシ毛を有する少なくとも1つのブラシ部と、
前記ブラシ部に振動を与える振動源と、
清掃時に作業者が搭乗するステップ部とを備え、
前記ステップ部に作業者が搭乗した状態で、前記振動源の作動により前記ブラシ部を振動させ、該振動したブラシ部と床面との接触により、該床面を清掃しつつ走行するよう構成されていることを特徴とする自走式清掃装置。
【0010】
(2) 前記ステップ部に搭乗した作業者の重心の移動により、走行方向の転換が行われる上記(1)に記載の自走式清掃装置。
【0011】
(3) 前記ステップ部は、該ステップ部に搭乗した作業者が起立した姿勢を採るよう構成されている上記(1)または(2)に記載の自走式清掃装置。
【0012】
(4) 床面に対して清掃作業を行う自走式清掃装置であって、
清掃時に床面に対してほぼ同一方向に傾斜した姿勢で接触する多数のブラシ毛を有する少なくとも1つのブラシ部と、
前記ブラシ部に振動を与える振動源と、
前記ブラシ部よりも上方に位置し、前記自走式清掃装置の重心を移動させる重心移動機構と、
前記振動源および前記重心移動機構の作動を遠隔操作する遠隔操作手段とを備え、
前記振動源の作動により前記ブラシ部を振動させ、該振動したブラシ部と床面との接触により、該床面を清掃しつつ走行し、前記重心移動機構の作動により、走行方向の転換が行われるよう構成されていることを特徴とする自走式清掃装置。
【0013】
(5) 前記重心移動機構は、錘と、該錘を前記自走式清掃装置の進行方向に対してほぼ直交する方向に移動する移動手段とを有する上記(4)に記載の自走式清掃装置。
【0014】
(6) 前記遠隔操作手段は、前記振動源および前記重心移動機構を作動させる信号を送信する送信部と、該送信部と無線通信可能であり、前記送信部からの信号に基づいて前記振動源および前記重心移動機構を作動させる受信部とを有する上記(4)または(5)に記載の自走式清掃装置。
【0015】
(7) 前記振動源は、それが発する振動の振動数が可変である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の自走式清掃装置。
【0016】
(8) 洗浄液を貯蔵し、該貯蔵された洗浄液を床面に供給する洗浄液供給部を備える上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の自走式清掃装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、清掃時に作業者がステップ部に搭乗し、この状態で、ブラシ部を振動させ、その振動したブラシ部と床面との接触により、自走式清掃装置が走行(自走)するため、床面の清掃作業によって生じる踏み跡が当該床面に残留するのを確実に防止し、確実に清掃することができる。
【0018】
また、本発明によれば、遠隔操作によりブラシ部を振動させ、その振動したブラシ部と床面との接触により、自走式清掃装置が自走するため、床面の清掃作業によって生じる踏み跡が当該床面に残留するのを確実に防止し、確実に清掃することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の自走式清掃装置の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の自走式清掃装置の第1実施形態の概略構成を示す図であり、(A)は、同装置の側面図であり、(B)は同装置の平面図である。なお、以下の説明では、図1(A)中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」という。また、図1(A)および(B)中、右側を「前」または「前方」、および左側を「後」または「後方」という。
【0020】
図1に示す本発明の自走式清掃装置(以下、単に「清掃装置」という)100は、床面Fに対して清掃作業を行う装置である。この清掃装置100は、放射状に突出した4つの腕部101aを有するX字状のフレーム101と、フレーム101の上側においてその中心部に設けられたバイブレータ102(振動源)と、フレーム101の4つの腕部101aの端部の下側にそれぞれ設けられた4つのブラシ部103と、フレーム101の上側においてバイブレータ102よりも前方に設けられた洗浄液タンク104と、フレーム101の前後方向に隣接する2つの腕部101aの間に設けられたステップ板(ステップ部)105と、フレーム101からほぼ上方に向って延在する把持部106と、把持部106の上方に設置された操作パネル110と、汚れた洗浄液(廃液)を回収する回収手段120とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0021】
フレーム101は、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせた構成材料からなり、例えば、4本のアルミニウムの押し出し材をネジ止めによって接合することで構成されている。
【0022】
図1に示すように、フレーム101の中央部には、各ブラシ部103に振動を与えるバイブレータ102が固定されている。
【0023】
このバイブレータ102は、ピストン(図示せず)を内蔵したものである。前記ピストンは、例えば、電気モータの回転力をクランクによって変換した往復力、空気圧または油圧によって駆動される。これにより、バイブレータ102(ピストン)は上下方向に振動(微小振動)し、この振動がフレーム101を介して各ブラシ部103に伝達する。
【0024】
バイブレータ102が空気圧によって駆動される場合には、エアコンプレッサ(図示せず)からバイブレータ102へ圧縮空気が供給される。
【0025】
なお、エアコンプレッサは、清掃装置100に設けられていてもよいし、清掃装置100とは別の場所に設けられていてもよい。エアコンプレッサが清掃装置100とは別の場所に設けられている場合には、圧縮空気は、チューブ107を介してバイブレータ102へ供給される。
【0026】
また、バイブレータ102は、それが発する振動の振動数を変えることができるのが好ましい。これにより、清掃装置100の走行速度を適宜変更することができる。例えば、バイブレータ102の振動数を上昇させた場合、清掃装置100の走行速度も上昇する。また、バイブレータ102の振動数を低下させた場合、清掃装置100の走行速度も低下する。
【0027】
フレーム101の各腕部101aの端部には、ブラシ部103が固定されている。
各ブラシ部103は、円盤状の基板103bと、基板103bの下面に設けられた多数のブラシ毛103aとで構成されている。
各基板103bは、清掃時に床面Fに対して平行な姿勢となるよう設置されている。
【0028】
なお、各基板103bの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種木材、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0029】
各基板103bの下面には、多数のブラシ毛103aが植毛されている。
図1(A)に示すように、多数のブラシ毛103aは、清掃時に床面Fに対してほぼ同一方向に傾斜した姿勢で接触する。以下、この姿勢を「傾斜姿勢」という。なお、4つのブラシ部103は、これらのブラシ部103に設けられた多数のブラシ毛103aが全て、清掃時に床面Fに対してほぼ同一方向に傾斜した姿勢となるよう設置されている。
【0030】
また、この傾斜姿勢における傾斜角度をθとした場合、傾斜角度θは、特に限定されないが、例えば、10度〜20度であるのが好ましい。
【0031】
また、多数のブラシ毛103aは、図1に示す状態で、すなわち、ステップ板105に作業者108が搭乗した状態で、傾斜姿勢が維持される程度の剛性を有する材料で構成されている。このような材料としては、例えば、各種金属材料、各種樹脂材料等を単独または組み合わせて用いることができる。また、これらの材料のうち、特に、ポリプロピレン(PP)が好ましい。
また、各ブラシ毛103aとして、哺乳動物の体毛(動物性材料)を用いてもよい。
【0032】
多数のブラシ毛103aが前述したような剛性を有していることにより、傾斜姿勢を確実に維持することができ、よって、バイブレータ102の作動で振動した各ブラシ部103(多数のブラシ毛103a)と床面Fとの接触により、清掃装置100が床面Fを確実に自走することができる。また、清掃装置100が床面Fを確実に清掃することができる。
【0033】
このように構成された各ブラシ部103では、バイブレータ102の作動により発生した上下方向の振動がフレーム101を介して伝達され、ブラシ毛103aが上下方向に振動する。これにより、各ブラシ毛103aが床面Fとの接触することで、清掃装置100は、床面F上の塵芥などを擦り取る、すなわち、清掃することができる。
【0034】
また、上下方向に振動する各ブラシ毛103aは、傾斜方向に湾曲または収縮・復元を繰り返す。各ブラシ毛103aは、収縮した状態から復元する状態となるときに、床面Fから反作用力を受ける。この反作用力により、清掃装置100が図1中矢印方向に走行することができる。
【0035】
フレーム101の前部には、洗浄液タンク104が固定されている。この洗浄液タンク104は、界面活性剤などの洗浄液を貯蔵するタンクであり、上部に開閉自在なキャップ104aを備えている。このキャップ104aを開くことにより、洗浄液を補充することができる。
【0036】
また、洗浄液タンク104には、4本のチューブ104bが接続されている。各チューブ104bは、ブラシ部103の基板103bの下面に開口しており、洗浄液タンク104内に貯留されている洗浄液を床面Fに供給(散布)することができる。
【0037】
また、4本のチューブ104bの途中には、電磁弁104cが設置されている。この電磁弁104cの開・閉により、洗浄液の供給・遮断が行われる。また、電磁弁104cは、通常、閉状態となっている。
【0038】
清掃装置100では、洗浄液タンク104と各チューブ104bと電磁弁104cとより、洗浄液を床面Fに供給する洗浄液供給部が構成されている。これにより、床面Fをより確実に清掃することができる。
【0039】
図1(A)に示すように、フレーム101の上部の両側には、それぞれ、ステップ板105が固定されている。これらのステップ板105には、清掃時に作業者108が踏襲する(踏み立つ)ことができる。
【0040】
各ステップ板105は、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせた構成材料からなる板状部材であり、例えばアルミニウムのプレス板が好適に用いられる。
【0041】
2枚のステップ板105は、図1(B)中、上下対称に設置されている。これにより、両ステップ板105に作業者108が搭乗したとき、この作業者108の体重が図1(B)中の清掃装置100に対して上下均等にかかるため、作業者108の重心Cが清掃装置100中心付近に位置することとなる。
【0042】
このような構成により、清掃装置100が図1中矢印方向に安定して走行することができる。
【0043】
また、これらのステップ板105に搭乗した作業者108が搭乗したとき、作業者108は、起立した姿勢を採る。これにより、作業者108が自身の重心Cの移動を容易に行うことができ、よって、清掃装置100の走行方向の転換を容易に行うことができる。例えば、重心Cが図1(B)中、上方に移動した場合には、清掃装置100は、進行方向左側(矢印(L)方向)に曲がる。また、重心Cが図1(B)中、下方に移動した場合には、清掃装置100は、進行方向右側(矢印(R)方向)に曲がる。
【0044】
フレーム101の上部には、把持部106が突出形成されている。この把持部106は、清掃装置100に乗り立った作業者108が自身を支えて、起立した姿勢を維持するために把持する部位である。
【0045】
把持部106は、例えば丸パイプ等によって構成され、上端部109が把持される。この上端部109は、ステップ板105上に立乗した作業者108の腰の位置とほぼ同じ高さに位置している。これにより、作業者108は、自然な姿勢で上端部109を把持することができる。
【0046】
また、把持部106の途中には、操作パネル110が固定されている。この操作パネル110を操作することにより、例えば、バイブレータ102のオン/オフ、バイブレータ102の振動数の変更、電磁弁104cの開/閉を行うことができる。
【0047】
操作パネル110は、把持部106の上端部109近傍に設置されているのが好ましい。これにより、作業者108が操作パネル110を容易に操作することができる。
【0048】
回収手段120は、床面F上の廃液(汚れた洗浄液)を掻き取るスクレーパ121と、掻き取られた廃液を吸引するポンプ122と、ポンプ122に接続されたチューブ123と、チューブ123の途中に設けられたドレインタンク(図示せず)とを有している。
【0049】
ポンプ122は、フレーム101の上部に設置されている。
ポンプ122には、チューブ123が接続されている。このチューブ123は、床面Fに開口している。ポンプ122の作動により、チューブ123を介して、ドレインタンクに廃液が回収(収納)される。
【0050】
スクレーパ121は、断面がL字状をなす部材で構成されている。このスクレーパ121は、その端部121aが床面Fに当接する。清掃装置100が走行することにより、スクレーパ121の端部121aによって、廃液が集められる。
【0051】
次に、清掃装置100の作動について説明する。
清掃装置100によって床面Fを清掃する場合、まず、清掃装置100を床面Fに載置する。その後、作業者108がステップ板105に立乗し、この状態で、操作パネル110を操作してバイブレータ102を起動する。
【0052】
バイブレータ102の振動(微小振動)は、各ブラシ部103に伝達される。これにより、各ブラシ部103のブラシ毛103aが振動する。振動するブラシ毛103aは、床面Fとの接触により、床面F上の塵芥などを擦り取る。また、このとき、清掃装置100は、前述したように前方へ走行する。
【0053】
清掃装置100の走行中、作業者108が清掃装置100をその進行方向の左側または右側へ進行方向を変更させたいときには、作業者108は、自身の身体を変更したい方向へ傾斜させて、重心Cを移動する。これにより、清掃装置100の進行方向を変更することができる。
【0054】
例えば、直進する清掃装置100を図1(B)中、矢印(L)方向へ方向転換する場合には、作業者108は、重心Cを図1(B)中、上方に移動する。
【0055】
また、作業者108は、床面Fの塵芥等を除去するために洗浄液を必要とする場合(床面Fの汚れが酷い場合)には、操作パネル110を操作して、閉状態の電磁弁104cを開状態とする。これにより、床面Fに洗浄液が供給され、床面F上の塵芥等を確実に除去することができる。また、床面Fに供給され、床面Fの洗浄に使用された洗浄液は、回収手段120により床面Fから回収される。
【0056】
また、清掃装置100の走行速度を調整する必要がある場合には、操作パネル110を操作して、バイブレータ102の振動数を調整する。
【0057】
そして、床面Fの清掃が終了した後、作業者108は、操作パネル110を操作して、バイブレータ102を停止させる。その後、作業者108は、清掃装置100から降り立つ。
【0058】
このように、清掃装置100では、床面Fの清掃の開始から終了までの間、作業者108が清掃装置100に搭乗した状態となる。これにより、作業者108が随伴することなく清掃装置100を操作することができ、よって、従来の清掃装置のように床面Fの清掃作業により生じる、すなわち、随伴により生じる作業者108の踏み跡が、床面Fに残留するのが確実に防止される。また、清掃開始から終了までの間、床面Fに踏み跡が残留していない状態が維持され、よって、床面Fを確実に清掃したことになる。
【0059】
<第2実施形態>
図2は、本発明の自走式清掃装置の第2実施形態の概略構成を示す図であり、(A)は、同装置の側面図であり、(B)は、同装置の平面図である。図3は、図2に示す自走式清掃装置のブロック図である。なお、以下の説明では、図2(A)中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」という。また、図2(A)および(B)中、右側を「前」または「前方」、および左側を「後」または「後方」という。
【0060】
以下、これらの図を参照して本発明の自走式清掃装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0061】
本実施形態は、フレームの上方の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0062】
図2に示す自走式清掃装置(以下、単に「清掃装置」という)200は、フレーム101と、フレーム101の上部に設置されたバイブレータ102と、フレーム101の4つの腕部101aの端部にそれぞれ設けられた4つのブラシ部103と、フレーム101の上部に設置された洗浄液タンク104と、フレーム101の上部に設置され、清掃装置200の重心を移動させる重心移動機構201と、清掃装置200を遠隔操作する遠隔操作手段202と、回収手段120とを備えている。
【0063】
フレーム101と、バイブレータ102と、各ブラシ部103と、洗浄液タンク104と、回収手段120との構成は、前記第1実施形態とほぼ同様であるため、これらのついての説明を省略する。
【0064】
図2に示すように、重心移動機構201は、フレーム101の前部に固定されている。
重心移動機構201は、フレーム101に固定された平板状の部材である基板203と、錘204と、基板203上に固定され、錘204を図2(B)中、上下方向に移動可能に載置する2本のリニアガイド205と、基板203上に各リニアガイド205と平行に設けられたボールねじ206と、ボールねじ206の一端部に接続されてボールねじ206を回転させるモータ207とを有している。また、各リニアガイド205のスライダ205aは、ボールねじ206のナット208と連結されている。
【0065】
重心移動機構201では、モータ207が回転するのに伴なって、ボールねじ206が回転する。ボールねじ206の回転により、ナット208は、図2(B)中、上または下方向に移動する。このナット208には、錘204が連結されているため、錘204もナット208と同様に、図2(B)中、上または下方向に移動する。これにより、清掃装置200の重心が進行方向に対してほぼ直交する方向に移動することとなり、清掃装置200の走行方向の転換が確実に行われる。
【0066】
例えば、直進中の清掃装置200を図2(B)中、矢印(L)方向へ方向転換する場合には、錘204を図2(B)中、上方へ移動する。また、直進中の清掃装置200を図2(B)中、矢印(R)方向へ方向転換する場合には、錘204を図2(B)中、下方へ移動する。
【0067】
なお、清掃装置200を直進させる場合には、錘204の重心204aを清掃装置200の中心線O上に位置させる。
【0068】
また、清掃装置200では、2本のリニアガイド205と、ボールねじ206と、モータ207とにより、錘204を清掃装置200の進行方向に対してほぼ直交する方向に移動する移動手段が構成されている。
【0069】
図3に示すように、遠隔操作手段202は、制御部209と、受信部210と、送信部(送信機)211とを有している。制御部209および受信部210は、フレーム101に設置されている。また、送信部211は、清掃装置200を遠隔操作する作業者108によって、把持されている。このような遠隔操作手段202は、バイブレータ102と、重心移動機構201のモータ207と、電磁弁104cとの作動を遠隔操作するものである。
【0070】
制御部209は、モータ207、バイブレータ102および電磁弁104cとそれぞれケーブル212、213および214を介して電気的に接続されている。これにより、制御部209は、モータ207、バイブレータ102および電磁弁104cにそれぞれ制御信号を送信することができる。
【0071】
送信部211は、モータ207、バイブレータ102および電磁弁104cを作動させる信号を送信するものである。
【0072】
この送信部211は、例えば、清掃装置200の進行方向を指示するレバーと、バイブレータ102のオン/オフを切り替えるボタンと、電磁弁104cの開/閉を切り替えるボタンと、レバーやボタンからの信号を受信部210に送信する無線LANインタフェース部とを有している。
【0073】
受信部210は、送信部211と無線通信可能なものである。この受信部210は、例えば送信部211とほぼ同様の無線LANインタフェース部により、作業者108が持つ送信部211から発信された制御命令(信号)を受信し、該受信した制御命令を制御部209へ送信することができる。
【0074】
このような構成の遠隔操作手段202では、制御命令を受信部210を介して受信した制御部209は、制御命令を解釈し、その解釈した結果に応じて、モータ207、バイブレータ102または電磁弁104cへ制御信号を送信する。
【0075】
モータ207へ送信する制御信号としては、モータ207の起動/停止信号、回転方向指定信号、回転量指定信号等がある。また、バイブレータ102へ送信する制御信号としては、バイブレータ102の起動/停止信号、振動数指定信号等がある。また電磁弁104cへ送信する制御信号としては、電磁弁104cの開/閉指示信号等がある。
【0076】
次に、清掃装置200の作動について説明する。
清掃装置200によって床面Fを清掃する場合、まず、清掃装置100を床面Fに載置する。その後、作業者108が送信部211を把持して、清掃対象となる床面Fから離間した場所に位置する。
【0077】
次に、この状態で、送信部211を操作してバイブレータ102を起動する。
バイブレータ102の振動(微小振動)は、各ブラシ部103に伝達される。これにより、各ブラシ部103のブラシ毛103aが振動する。振動するブラシ毛103aは、床面Fとの接触により、床面F上の塵芥などを擦り取る。また、このとき、清掃装置200は、前記第1実施形態とほぼ同様に前方へ走行する。
【0078】
清掃装置200の走行中、作業者108が清掃装置100をその進行方向の左側または右側へ進行方向を変更させたいときには、送信部211を前記レバーを操作することにより、錘204を移動させる。これにより、清掃装置100の進行方向を変更することができる。
【0079】
例えば、直進する清掃装置200を図2(B)中、矢印(L)方向へ方向転換する場合には、錘204を図2(B)中、上方に移動する。
【0080】
また、作業者108は、床面Fの塵芥等を除去するために洗浄液を必要とする場合(床面Fの汚れが酷い場合)には、送信部211を操作して、閉状態の電磁弁104cを開状態とする。これにより、床面Fに洗浄液が供給され、床面F上の塵芥等を確実に除去することができる。
【0081】
また、清掃装置200の走行速度を調整する必要がある場合には、送信部211を操作して、バイブレータ102の振動数を調整する。
【0082】
そして、床面Fの清掃が終了した後、作業者108は、送信部211を操作して、バイブレータ102を停止させる。
【0083】
このように、清掃装置200では、床面Fの清掃の開始から終了までの間、作業者108が床面Fの領域内に踏み込こまずに清掃装置200を遠隔操作することができ、よって、従来の清掃装置のように床面Fの清掃作業により生じる、すなわち、随伴により生じる作業者108の踏み跡が、床面Fに残留するのが確実に防止される。また、清掃開始から終了までの間、床面Fに踏み跡が残留していない状態が維持され、よって、床面Fを確実に清掃したことになる。
【0084】
なお、清掃装置200は、清掃や走行に寄与するためのもの、すなわち、洗浄液タンク104、バイブレータ102、バッテリ(図示せず)等が錘204を兼ねるよう構成されていてもよい。これにより、清掃装置200を構成する部品の点数を抑制することができたり、清掃装置200の総重量を抑制することができたりする。
【0085】
以上、本発明の自走式清掃装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、自走式清掃装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0086】
また、ブラシ部の設置数は、4つであるのに限定されず、例えば、1つ、2つ、3つ、5つ以上であってもよい。
【0087】
また、バイブレータは、1つ設けられているのに限定されず、例えば、4つブラシ部にそれぞれ対応して設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の自走式清掃装置の第1実施形態の概略構成を示す図であり、(A)は、同装置の側面図であり、(B)は同装置の平面図である。
【図2】本発明の自走式清掃装置の第2実施形態の概略構成を示す図であり、(A)は、同装置の側面図であり、(B)は、同装置の平面図である。
【図3】図2に示す自走式清掃装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0089】
100、200 清掃装置
101 フレーム
101a 腕部
102 バイブレータ
103 ブラシ部
103a ブラシ毛
103b 基板
104 洗浄液タンク
104a キャップ
104b チューブ
104c 電磁弁
105 ステップ板
106 把持部
107 チューブ
108 作業者
109 上端部
110 操作パネル
120 回収手段
121 スクレーパ
121a 端部
122 ポンプ
123 チューブ
201 重心移動機構
202 遠隔操作手段
203 基板
204 錘
204a 重心
205 リニアガイド
205a スライダ
206 ボールねじ
207 モータ
208 ナット
209 制御部
210 受信部
211 送信部(送信機)
212、213、214 ケーブル
F 床面
C 重心
O 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対して清掃作業を行う自走式清掃装置であって、
清掃時に床面に対してほぼ同一方向に傾斜した傾斜姿勢で接触する多数のブラシ毛を有する少なくとも1つのブラシ部と、
前記ブラシ部に振動を与える振動源と、
清掃時に作業者が搭乗するステップ部とを備え、
前記ステップ部に作業者が搭乗した状態で、前記振動源の作動により前記ブラシ部を振動させ、該振動したブラシ部と床面との接触により、該床面を清掃しつつ走行するよう構成されていることを特徴とする自走式清掃装置。
【請求項2】
前記ステップ部に搭乗した作業者の重心の移動により、走行方向の転換が行われる請求項1に記載の自走式清掃装置。
【請求項3】
前記ステップ部は、該ステップ部に搭乗した作業者が起立した姿勢を採るよう構成されている請求項1または2に記載の自走式清掃装置。
【請求項4】
床面に対して清掃作業を行う自走式清掃装置であって、
清掃時に床面に対してほぼ同一方向に傾斜した姿勢で接触する多数のブラシ毛を有する少なくとも1つのブラシ部と、
前記ブラシ部に振動を与える振動源と、
前記ブラシ部よりも上方に位置し、前記自走式清掃装置の重心を移動させる重心移動機構と、
前記振動源および前記重心移動機構の作動を遠隔操作する遠隔操作手段とを備え、
前記振動源の作動により前記ブラシ部を振動させ、該振動したブラシ部と床面との接触により、該床面を清掃しつつ走行し、前記重心移動機構の作動により、走行方向の転換が行われるよう構成されていることを特徴とする自走式清掃装置。
【請求項5】
前記重心移動機構は、錘と、該錘を前記自走式清掃装置の進行方向に対してほぼ直交する方向に移動する移動手段とを有する請求項4に記載の自走式清掃装置。
【請求項6】
前記遠隔操作手段は、前記振動源および前記重心移動機構を作動させる信号を送信する送信部と、該送信部と無線通信可能であり、前記送信部からの信号に基づいて前記振動源および前記重心移動機構を作動させる受信部とを有する請求項4または5に記載の自走式清掃装置。
【請求項7】
前記振動源は、それが発する振動の振動数が可変である請求項1ないし6のいずれかに記載の自走式清掃装置。
【請求項8】
洗浄液を貯蔵し、該貯蔵された洗浄液を床面に供給する洗浄液供給部を備える請求項1ないし7のいずれかに記載の自走式清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−117213(P2007−117213A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310496(P2005−310496)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000159272)吉永機械株式会社 (6)
【Fターム(参考)】