説明

自転車

【課題】自転車に乗車する者の身体特徴、操作性の好み、走行する路面の状況などに応じて自転車の主要機構部材の寸法、相互の位置関係を変化させる機能を有する自転車を提供する。
【解決手段】自転車1は、前輪14を保持するためのヘッドチューブ10と固着されるダウンチューブ43および後輪30を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、フレーム固定部に対して回動軸を中心として回動可能とされるシートチューブ44と、シートチューブ44を回動させるシートスティ45と、シートスティ45を制御する制御部23と、を備えるようにして、シートチューブ44のチェンスティとなす角度が変更できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車に関し、特に、主要機構部材の寸法、主要機構部材の相互の位置関係を変化させることができる自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図22は、二輪車の代表例としての従来の自転車を示す図である(特許文献1を参照)。特許文献1には、クランク軸107とサドル111の着座中心とを結ぶ直線がクランク軸107を通る水平線となす角度を58°〜65°とするとともに、クランク軸107からペダル109の回転中心までの距離であるクランク長さを127mm〜152mmとする自転車の技術が記載されている。このように自転車の主要機構部材の寸法を設定することによって、女性がスカートを着用しても違和感なく座乗できるとしている。また、背筋を伸ばしてのサドルへの自然な着座姿勢と充分なペダル踏力が得られるとともに、両足が確実に地面に届くようにしても膝関節をある程度伸ばしてペダリングすることが可能で、坂道等においても軽快に疲労も少なく安全に走行することができるとしている。
【0003】
図23は、また、別の従来の自転車を示す図である(特許文献2を参照)。特許文献2に記載された電動自転車120では、バッテリを収納したバッテリボックス131をシートチューブ112の後方の空間に沿って脱着可能に配置している。電動自転車120では、サドル本体134にバックレスト143が取り付けられているので、バックレスト143がバッテリボックス131の着脱動作を阻害する。そこで、サドルは、軸136を中心として回動する可倒式サドル114とされ、サドル114の下方に配されるバッテリボックス131をシートチューブ112に沿って着脱する際にはバックレスト143はサドル本体134と共に跳ね上げられて退避して、バッテリボックス131の着脱を容易に行うことができる技術が記載されている。
【0004】
図24は、通信システムに関する技術を示す図である(特許文献3を参照)。図24に記載された通信システムでは、伝送媒体202に対して情報信号を変調してなる電界を付与する送信機201と、伝送媒体202を介して電界を検出して情報信号に対応した復調信号を得る受信機203と、備えている。受信機203は、伝送媒体202に面する受信電極231と、受信電極231に接続されたセンサ電極232a、232bと、センサ電極232a、232bのそれぞれに設けられ、直列に接続されたコイル233a、233bと、を有している。このような簡単な回路構成でありながら、高感度な受信機を備えた通信システムの技術が記載されている。
【0005】
図25は、振動型ジャイロスコープに関する技術を示す図である(特許文献4を参照)。振動型ジャイロスコープ311においては、単結晶材料の圧電材料により形成される弾性体312の同一面に第一の電極313aと第二の電極313bが形成され、他方の面に対向電極が形成される。電極313aと313bに逆位相の交流電力が与えられると、弾性体312はX方向へ曲げ振動する。Z軸回りの回転系内では、コリオリ力により弾性体312がY方向へ振動し、この振動により誘起された電力が電極313aと313bに現れる。両電極313aと313bの検出電力を加算手段317で加算することにより、駆動電力が消去され、コリオリ力による振動成分のみが取り出される。このようにして、振動型ジャイロスコープに加わる加速度に比例した電圧VOUTを得ることができる。
【0006】
また、アクチュエータ技術としては、SQUIGGLE(スクイグル)(登録商標)モータが知られている。SQUIGGLEモータは90度の位相差を持つ2つの交流信号によりピエゾ素子を駆動し、ナットを円筒共振周波数で振動させる。ナットの振動によりスクリュウが回されネジ溝により、軸方向に駆動力が出力されるものである(非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−119863号公報
【特許文献2】特許第4129070号公報
【特許文献3】特開2008−271360号公報
【特許文献4】特許第3439861号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】インターネット〈URL:http://www.tomuki.co.jp/seihin_NewScale_01_01.htm〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、自転車を操作する者の特定の身体的特徴に適合するように、主要機構部材の寸法、相互の位置関係を予め設定した自転車が記載されている。また、特許文献2には、自転車の停止時において、電池交換の目的を達するために、自転車の主要機構部材の相互の位置関係を変化させることができる自転車が記載されている。ここで、特許文献1、特許文献2に記載の技術は、自転車に乗車する複数者の異なる身体的特徴、好みに合わせて、自転車の主要機構部材の寸法、相互の位置関係を変化させるものではない。
【0010】
自転車に乗車する者の身体的特徴、好みに合わせ自転車の主要機構部材の寸法、相互の位置関係を変化させるものとしては、従来は市販の各種ステムやハンドル(フラットハンドル、アップハンドル、ライザバー等)を装着して、好みの仕様とすることがおこなわれている。しかしながら、このような方法では、自転車の所有者が各自改造を行わなければならなかった。つまり、ユーザの多くは、自分の好みにあった寸法、仕様の自転車を多数の商品の中から探し出す手間をかけなければならず、改造する場合にも手間がかかり面倒であった。また、希望の仕様の自転車が市場では得られない場合も多かった。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決して、自転車に乗車する者の身体特徴、操作性の好みが種々である場合、または、走行する路面の状況が種々である場合、これらに応じて自転車の主要機構部材の寸法、主要機構部材の相互の位置関係を変化させる機能を有する従来にはない自転車の技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の自転車は、前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、前記フレーム固定部に対して回動軸を中心として回動可能とされるシートチューブと、前記シートチューブを回動させるシートチューブアクチュエータと、前記シートチューブアクチュエータを制御する制御部と、を備える。
【0013】
また、別の本発明の自転車は、前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、前記フレーム固定部に連結されるシートチューブと、前記シートチューブと接続されるシートポストと、前記シートポストに連結される回動軸を中心として、回動可能とされるサドルと、前記サドルを回動させて、前記シートポストに対する該サドルの腰かけ面のなす角度を可変とするサドルアクチュエータと、前記サドルアクチュエータを制御する制御部と、を備える。
【0014】
また、さらに別の本発明の自転車は、前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、前記ヘッドチューブに挿入されるハンドルポストと、前記ハンドルポストの一方の先端に回動可能に連結され、前記前輪の進行方向を操縦するハンドルレバーと、前記ハンドルレバーを回動させて、前記ハンドルポストに対する該ハンドルレバーのなす角度を可変とするハンドルレバーアクチュエータと、前記ハンドルレバーアクチュエータを制御する制御部と、を備える。
【0015】
また、さらに、また別の本発明の自転車は、前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、前記フレーム固定部に連結されるシートチューブと、前記シートチューブに挿入されるシートポストと、前記シートポストの先端に配されたサドルと、前記シートポストの前記シートチューブに挿入される部分の長さを可変とするシートポスト長可変アクチュエータと、前記シートポスト長可変アクチュエータを制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自転車は、自転車の主要機構部材の寸法、主要機構部材の相互の位置関係を変化させ、自転車に乗車する者の身体特徴、操作性の好みに適合させることができ、また、走行する路面が傾いている場合においても良好な操作性を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の自転車を示す図である。
【図2】自転車の主要機構部材であるフレームの主要部を示す図である。
【図3】シートスティの断面を模式的に示す図である。
【図4】ハンドルレバーとハンドルスティとハンドルポストとの関係を模式的に示す図である。
【図5】サドル回動軸を中心として回動するサドルの位置変化を示す図である。
【図6】角度回動機構によって各部材部の位置、各部材部の相互の位置関係が、どのように変化するかを模式的に示す図である。
【図7】制御系を示す図である。
【図8】比較例として、従来の自転車の坂道の走行状態を示す図である。
【図9】第1実施例の制御方法によって得られる自転車の走行状態を模式的に示す図である。
【図10】シートチューブを回動させるシートチューブ回動角度設定処理の内容をフローチャートで示すものである。
【図11】第2実施例の制御方法を模式的に示す図である。
【図12】サドルを回動させるサドル回動角度設定処理(第2実施例の制御方法)の内容をフローチャートで示すものである。
【図13】第3実施例の制御方法の処理の内容をフローチャートで示すものである。
【図14】ハンドルレバーを回動させるハンドルレバー回動角度設定処理(第4実施例の制御方法)の内容をフローチャートで示すものである。
【図15】第5実施例の制御方法の処理の内容をフローチャートで示すものである。
【図16】シートポスト長可変部材の断面構造を示すものである。
【図17】ラック・アンド・ピニオン方式による回動機構を示す図である。
【図18】油圧シリンダー方式による回動機構を示す図である。
【図19】油圧シリンダーの動作を説明する模式図である。
【図20】ギヤ付モータを用いる回動機構を示す図である。
【図21】制御部が音声認識回路、音声応答回路を備える場合の制御処理のフローチャートである。
【図22】従来の自転車を示す図である。
【図23】別の従来の自転車を示す図である。
【図24】背景技術としての電界通信システムに関する技術を示す図である。
【図25】背景技術としての振動型ジャイロスコープに関する技術を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施形態の自転車は、シートチューブ、サドル、または、ハンドルレバーのいずれか、と他の部材との相互の位置関係、さらには、これら主要機構部の寸法を、制御部によって制御されるアクチュエータによって変更することができるものである。ここで、制御部は、シートチューブ、サドル、ハンドルレバーの各々を個別に制御するのみならず、これらの2つ以上を任意に組み合わせて連係して制御することができるものである。以下、図面を参照して、具体的な実施形態について説明をする。
【0019】
[第1実施形態]
(実施形態の自転車の構造の説明)
図1は、実施形態の自転車を示す図である。図2は、自転車の主要機構部材であるフレームの主要部を示す図である。図1に示す自転車1は、図2に示すフレーム2を主要機構部材として、このフレーム2に各種の部品が組み付けられて構成されている。図1、図2を参照して実施形態の自転車1の構造について説明をする。
【0020】
図2を参照して、まず、フレーム2について簡単に説明する。フレーム2は、自転車の骨格をなす部分であり、フレーム固定部材41と、フレーム固定部材41に固着されるチェンスティ42およびダウンチューブ43と、フレーム固定部材41に対して回動可能とされるシートチューブ44とを有している。フレーム固定部材41とチェンスティ42およびダウンチューブ43とは溶接によって固着しても、一体成型するものであっても良く、これらはフレーム固定部を形成している。フレーム固定部材41に固着されたダウンチューブ43はチューブ形状(管形状)とされている。また、チェンスティ42に固着される部材であるシートスティ左固定部453aおよびシートスティ右固定部453bとシートチューブ44との間にはシートスティ45が配されている。
【0021】
フレーム固定部の一部であるフレーム固定部材41にはクランク軸46が回転可能に取り付けられている。クランク軸46には、左クランク(図示せず)を介して左側のペダル20a(図1を参照)が取り付けられ、右クランク24bを介してペダル20b(図1を参照)が取り付けられている。そして、左側のペダル20a、ペダル20bからの駆動力がチェン(図示せず)に伝達されるようになされている。
【0022】
チェンスティ42はチェンスティ左部材42aとチェンスティ右部材42bとを有しており、チェンスティ左部材42aとチェンスティ右部材42bとの間に後輪30(図1を参照)が回転可能に配される。チェンスティ左部材42aには左後輪軸受47aが設けられ、チェンスティ右部材42bには右後輪軸受47bが設けられて、左後輪軸受47aと右後輪軸受47bとからなる後輪軸受47によって後輪30が回転可能に保持される。
【0023】
実施形態の自転車1では、シートチューブ44がフレーム固定部材41に対して回動可能とされる特徴を有している。例えば、クランク軸46の近傍に配されたシートチューブ回動軸48を中心として、シートチューブ44がフレーム固定部材41に対して回動可能とされている。シートチューブ44はチューブ形状とされ、シートポスト24(図1を参照)を内部に保持する部材とされている。シートチューブ44はフレーム固定部材41に対して、シートチューブ回動軸48を中心としてチェンスティ42およびダウンチューブ43の伸びる前後方向に回動可能に連結されている。シートチューブ44の回動の方向は図2の矢印Aで示す方向である。なお、クランク軸46の近傍とは、クランク軸46の外周にシートチューブ回動軸48を設けて、クランク軸46とシートチューブ回動軸48との回転中心が同一軸上に存在することを含み、クランク軸46からシートチューブ回動軸48までの距離が、例えば20cm以内であることをいうものである。クランク軸46とシートチューブ回動軸48との回転中心が同一軸上に存在するようになす場合には、固定部に固着されたシートチューブ回動軸48の内側でクランク軸46が回転運動をし、シートチューブ回動軸48の外側でシートチューブ44が回動することとなる。
【0024】
シートチューブ44の回動量は、シートスティ45の長さに応じたものとなる。つまり、シートチューブ44とチェンスティ42とシートスティ45とシートスティ固定部(シートスティ左固定部453a、シートスティ右固定部453b)とで略3角形の形状が形成され、シートスティ45の長さを変化させることによって、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θが定められるようになされている。どのようにしてシートスティ45の長さを変化させるかについては後述する。
【0025】
シートスティ45は、シートスティ外筒451とシートスティ外筒451の内部で長さ方向(チューブの伸びる方向)に可動するシートスティ内筒452とを有している。シートスティ内筒452はチューブ形状をしており、シートスティ外筒451のシートスティ内筒452と接する部分はチューブ形状とされている。シートスティ外筒451とシートスティ内筒452とでシートスティ45を形成している。また、シートスティ外筒451のシートスティ内筒452と接しない側には、シートスティ外筒451を保持するためのシートスティ左固定部453aとシートスティ右固定部453bとが配されている。シートスティ左固定部453aの一端はチェンスティ左部材42aに固着され、シートスティ右固定部453bの一端はチェンスティ右部材42bに固着されている。そして、シートスティ左固定部453aとシートスティ右固定部453bとの間に後輪30が回転可能に配される。
【0026】
シートスティ内筒452は、図2の表面から裏面方向に伸びるシートスティ内筒回動軸49を中心として回動可能とされており、シートスティ内筒回動軸49の両端はシートチューブ44に連結されている。一方、シートスティ外筒451は、図2の表面から裏面方向に伸びるシートスティ外筒回動軸50を中心として回動可能とされており、シートスティ外筒回動軸50の両端はシートスティ左固定部453aの他端とシートスティ右固定部453bの他端とに各々固着されている。
【0027】
図1に戻り、自転車1の全体の構造を簡単に説明する。自転車1は、実施形態では電動アシスト自転車である。電動アシスト自転車は引用文献2にも記載された周知の技術であるので説明を省略する。
【0028】
フレーム2には各種部品が取り付けられている。ダウンチューブ43の先端にはヘッドチューブ10が溶接等で固着されている。ヘッドチューブ10はチューブ形状とされ、ヘッドチューブ10の内部にハンドルポスト11が挿入されている。ハンドルポスト11はヘッドチューブ10の内部で回動する。ハンドルポスト11の一方の先端にはハンドルレバー12が連結され、他方の先端には前ホーク13が連結されて、ハンドルレバー12によって、前ホーク13に取り付けた前輪14の進行方向を操縦できるようにされている。
【0029】
実施形態の自転車1のハンドルレバー12はハンドルスティ15と連結された特徴ある角度回動機構を有している。ハンドルレバー12はハンドルレバー回動軸16を中心として回動可能とされ、ハンドルレバー12は図1の矢印Bで示すチェンスティ42の伸びる方向、ハンドルポスト11の前後方向に回動する。
【0030】
ハンドルレバー12を回動させる回動力は、ハンドルスティ15によって付与される。ハンドルスティ15は、チューブ形状のハンドルスティ外筒151とハンドルスティ外筒151の内部で長さ方向に可動するハンドルスティ内筒152とを有している。ハンドルスティ内筒152の先端部分はハンドルレバー12に固着されたハンドルスティ内筒回動軸18に回動可能に連結され、ハンドルスティ外筒151の先端部分はハンドルポスト11に固着されたハンドルスティ外筒回動軸17に回動可能に連結されている。
【0031】
ハンドルスティ内筒152がハンドルスティ外筒151に挿入される挿入量に応じてハンドルスティ15の長さが変化するようにされており、その結果としてハンドルレバー12はハンドルレバー回動軸16を中心として回動する。ハンドルスティ15の詳細な構造については、後述する。
【0032】
シートチューブ44には電池22と制御部23とが固着されている。チェンスティカバー21の裏面側には、チェンスティ42と、いずれも図示しない部材である、電動モータ、チェン、ギヤ、電磁クラッチ等の機構部品が配されている。電池22はアシストの電動モータ、実施形態の制御系を構成する各アクチュエータ、制御部23および周辺回路の電力源である。
【0033】
制御部23は、アシストの電動モータからの駆動力と、クランク軸46を回転中心として人力によって回転されるペダル20a、ペダル20bからの駆動力とのチェンに伝達される力の割合の制御をおこなう。チェンによって伝達された駆動力が後輪30に伝達される。
【0034】
シートチューブ44の内部にはチューブ形状のシートポスト24が嵌めあわされている。シートチューブ44から突出するシートポスト24の長さを調整することによって、シートポスト24の先端に取り付けられたサドル25の地面からの高さを調整できるようにされている。従来は、シートポスト24のシートチューブ44から突出する部分の長さは手動で設定されている。実施形態では、自動設定を可能とするものであるが、この点については後述する。
【0035】
実施形態の自転車1のサドル25はシートポスト24に対して回動する特徴ある角度回動機構を有している。サドル25はサドル回動軸26を中心として、図1の矢印Cで示す方向に回動するように取り付けられている。そして、サドル25に固着されたサドルスティ内筒272とシートポスト24に固着されたサドルスティ外筒271からなるサドルスティ27によって、サドル25はサドル回動軸26を中心としてチェンスティ42の伸びる方向、シートポスト24の前後方向に回動するようにされている。サドルスティ27の詳細な構造については、後述する。
【0036】
チェンスティ左部材42aとチェンスティ右部材42bとの各々の先端には、左後輪軸受47aと右後輪軸受47bとが設けられ、左後輪軸受47aと右後輪軸受47bとからなる後輪軸受47によって、後輪30は保持されている。チェンからの駆動力が後輪30に連結された歯車(図示せず)によって回転力に変換され後輪30は回転する。
【0037】
(実施形態の自転車の特徴部である角度回動機構の詳細なる説明)
実施形態の自転車1の特徴は、シートチューブ回動軸48を中心としてシートチューブ44を回動させる角度回動機構、ハンドルレバー回動軸16を中心としてハンドルレバー12を回動させる角度回動機構、サドル回動軸26を中心としてサドル25を回動させる角度回動機構を有する点にある。シートチューブ44を回動させるためのシートチューブアクチュエータがシートスティ45であり、ハンドルレバー12を回動させるハンドルレバーアクチュエータがハンドルスティ15であり、サドル25を回動させるサドルアクチュエータがサドルスティ27である。以下、これらの各部を回動させるアクチュエータについて順に説明をする。
【0038】
図3はシートスティ外筒451とシートスティ内筒452とからなるシートスティ45の断面を模式的に示す図である。シートスティ内筒452の一端には内筒孔452aが設けられ、この内筒孔452aにシートスティ内筒回動軸49を貫通させて回動可能とされる。シートスティ内筒452の他端には、他の部分よりも直径が大きい突出部452bが設けられている。そして、シートスティ外筒451にねじ込まれたストッパ451eによって突出部452bが係止されてシートスティ外筒451からシートスティ内筒452が抜けることがないようにされている。シートスティ内筒452の内部には溝付軸受452cが配されている。
【0039】
シートスティ外筒451の一端には外筒孔451aが設けられ、この外筒孔451aにシートスティ外筒回動軸50を貫通させて回動可能とされる。シートスティ外筒451の内部には内筒移動モータ固定部451bとシートスティ外筒451の中心から長さ方向に伸びるネジ付回転軸451cとを有する内筒移動モータが装着されている。
【0040】
ネジ付回転軸451cと溝付軸受452cとは螺合しており、内筒移動モータに電力が供給されることによって、内筒移動モータ固定部451bに対してネジ付回転軸451cが回転してシートスティ外筒451の内部に取り込まれるシートスティ内筒452の長さが変化させられる。ここで、内筒移動モータ固定部451bに加えられる電圧の極性を切替えることによってネジ付回転軸451cの回転方向を切替えることができ、シートスティ外筒451に対するシートスティ内筒452の移動方向を制御できる。
【0041】
また、内筒移動モータのネジ付回転軸451cには、ネジ付回転軸451cの回転角度を検出するレゾルバ451dが連結されている。ネジ付回転軸451cの1回転を2πラジアンとして、基準の位置から何ラジアン回転したかをレゾルバ451dによって検出して、シートスティ外筒451に対するシートスティ内筒452の位置を検出することができるようになされている。そして、レゾルバ451dからの信号が制御部23に入力されてシートスティ45の外筒孔451aの中心から内筒孔452aの中心までの距離LSTの検出を制御部23ができるようになされている。
【0042】
具体的には、ネジ付回転軸451cが2πラジアン回転することによって、距離LSTは、ネジ付回転軸451cの1ピッチ分の長さ変化する。つまり、基準位置から正負に何ラジアン変化したかを検出し、これに1ピッチ分の長さを掛け、基準の位置を加算して、距離LSTを正確に知ることができる。
【0043】
図3は、また、同様な構造を有するハンドルスティ15とサドルスティ27の断面図でもあり、図3の括弧内の符号は、ハンドルスティ15とサドルスティ27の同様な部分を各々示すものである。
【0044】
図4はハンドルレバー12とハンドルスティ15とハンドルポスト11との関係を模式的に示す図である。ハンドルレバー12の中央部にハンドルスティ内筒回動軸18が配され、ハンドルポスト11にハンドルスティ外筒回動軸17が配されている。そして、ハンドルスティ内筒回動軸18とハンドルスティ外筒回動軸17との間にハンドルスティ15が橋渡しされている。
【0045】
図3に示すようにハンドルスティ15の構造は、シートスティ45と同様なものとされている。ハンドルスティ15はハンドルスティ外筒151と、ハンドルスティ内筒152とを有している。ハンドルスティ外筒151には、外筒孔151a、内筒移動モータ固定部151bとネジ付回転軸151cとを有する内筒移動モータ、レゾルバ151d、ストッパ151eが、配されている。
【0046】
また、ハンドルスティ内筒152には、内筒孔152a、突出部152b、溝付軸受152cが、配されている。
【0047】
内筒移動モータ固定部151bに電力が供給されることによって、内筒移動モータ固定部151bに対してネジ付回転軸151cが回転してハンドルスティ外筒151の内部に取り込まれるハンドルスティ内筒152の長さが変化させられ、内筒孔152aと外筒孔151aとの間の距離を変化させることができるようになされている。
【0048】
サドルスティ27の構造は、図3に示すシートスティ45と同様なものとされている。サドルスティ27はサドルスティ外筒271と、サドルスティ内筒272とを有している。サドルスティ外筒271には、外筒孔271a、内筒移動モータ固定部271bとネジ付回転軸271cとを有する内筒移動モータ、レゾルバ271d、ストッパ271eが、設けられている。また、サドルスティ内筒272には、内筒孔272a、突出部272b、溝付軸受272cが、設けられている。
【0049】
サドルスティ27の内筒移動モータ固定部271bに電力が供給されることによって、内筒移動モータ固定部271bに対してネジ付回転軸271cが回転してサドルスティ外筒271の内部に取り込まれるサドルスティ内筒272の長さが変化させられ、内筒孔272aと外筒孔271aとの間の距離を変化させることができるようになされている。
【0050】
サドルスティ27の内筒孔272aにはサドルスティ内筒回動軸29が貫通して、サドルスティ27の外筒孔271aにはサドルスティ外筒回動軸28が貫通している。このために、内筒孔272aと外筒孔271aとの間の距離に応じてサドル25のシートポスト24に対する角度を変化させることができるようになされている。
【0051】
図5はサドル回動軸26を中心として回動するサドル25の位置変化を示す図である。図5(a)は通常位置、例えば、地面が傾いていない場合に好適なサドル25の位置を示すものである。図5(b)はサドル25が角度ψ前傾する場合のサドル25の位置を示すものである。サドル25が前傾する場合(角度ψの値を小さくする場合)には通常位置におけるよりも内筒孔272aと外筒孔271aとの間の距離、つまり、サドルスティ内筒回動軸29とサドルスティ外筒回動軸28との間の距離が大きなものとされている。
【0052】
図6は、実施形態の自転車の機構の特徴部である角度回動機構によって各部材部の位置、各部材部の相互の位置関係が、どのように変化するかを模式的に示す図である。水平路面が、X軸、Y軸を含む平面であり、Z軸の負方向(矢印の反対方向)が重力の向かう方向(垂線方向)であるとして、相互に直交する、X軸、Y軸、Z軸によって、角度回動機構の動作の説明をする。Y軸の正方向は図6の紙面の表面から裏面に向かう向きとする。
【0053】
シートチューブ回動軸48を中心とするシートチューブ44の回動角度は、例えば、角度θ、角度θのように変化する。ハンドルレバー回動軸16を中心とするハンドルレバー12の回動角度は、例えば、角度φ、角度φのように変化する。サドル回動軸26を中心とするサドル25の回動角度は、例えば、角度ψ、角度ψのように変化する。これらの角度変化はX軸とZ軸とを含む平面内(図6の紙面内)で生じる。なお、距離Laはシートチューブ回動軸とサドル25の腰かけ面の中央との間の距離であり、距離Lbはハンドルレバー回動軸16とハンドルレバー12の握り部の中央との間の距離である。
【0054】
(実施形態の制御系の説明)
図7は実施形態の制御系を示す図である。図7を参照して実施形態の制御系について説明する。制御系は制御部23を中心として構成されている。制御部23には、ジャイロスコープ61、操作入力部・表示部62、ID検出部(個人情報検出部)63、電力増幅部64、電力増幅部65、電力増幅部66、ハンドルスティ15のレゾルバ151d、シートスティ45のレゾルバ451d、サドルスティ27のレゾルバ271d、の各々が接続されている。また、電力増幅部64にはハンドルスティ15の内筒移動モータ固定部151b、電力増幅部65にはシートスティ45の内筒移動モータ固定部451b、電力増幅部66にはサドルスティ27の内筒移動モータ固定部271b、の各々が接続されている。なお、図7では電動アシスト自転車の例で制御系を説明をしているが、アシストモータを備えない自転車、常時電動機で駆動力が与えられる電動自転車においても、実施形態の機構部およびこれらの制御方法は適用できる。
【0055】
制御部23は、いずれも図示しない、CPU(中央演算装置)、RAM(ラム)、書き換え可能な不揮発性メモリ、ROM(ロム)、I/Oインターフェイス回路(入出力インターフェイス回路)を有している。CPUのバスライン(アドレスバスライン・データバスライン)にはCPU、RAM(ラム)、ROM(ロム)、I/Oインターフェイス回路が接続されている。
【0056】
ROMはCPUで実行されるプログラムを記憶し、RAMはCPUでの演算データを一時記憶する。また、I/Oインターフェイス回路は外部回路とCPUとの間での信号の入出力を助けるためのA/D変換器、D/A変換器等を有している。また、ROMには、ハンドルスティ15の制御のためのルックアップテーブル、シートスティ45の制御のためのルックアップテーブル、サドルスティ27の制御のためのルックアップテーブル、さらには、後述するシートポスト長可変部材(図16の符号54を参照)制御のためのルックアップテーブル、の各々が格納されている。不揮発性メモリには、記憶内容の書き換え後、電源を切断しても保持したい記憶内容が記憶される。
【0057】
ジャイロスコープ61は、特許文献4に示すようなジャイロスコープが用いられる。ジャイロスコープ61は、図6に示すY軸廻りの角速度を検出するように、自転車の可動しない部分(例えば、チェンスティ)に固着される。このようなジャイロスコープ(ジャイロセンサ)は、所謂、レートジャイロであり直接に角度を検出するのではなく、角速度を検出するセンサである。
【0058】
自転車が水平路面にある場合からどの程度Y軸廻りで傾いているかの角度δを検出するためには、ジャイロスコープで検出する電圧VOUTに換算された角速度に応じた信号を、CPUで時間積分をして角度を求めることとなる。ジャイロスコープから得られる電圧VOUT、初期値C、ジャイロスコープ固有の定数C、時間τにおける角度を初期値Cとして、角度δは、(数1)で求められる。
【0059】
【数1】

【0060】
ID検出部63には、特許文献3に記載された通信システムの受信機203が用いられている。そして、通信システムの送信機201を、自転車の所有者または所有者から許可を得て自転車を操作する者が身につける。このようにして、人体を伝送媒体202として、車体に人体が接近することによって、送信機から送信される、ID(個人認証情報)と個人毎の自転車に関する情報である制御設定情報(IDと制御設定情報とを併せて個人情報と総称する)が受信機203で受信される。制御部23はIDを解読して、そのIDが予め登録されている場合には、盗難防止のための鍵を解除して自転車の走行を可能とすることができる。また、ID検出部63から得られる、自転車に関する制御設定情報を制御部23は得ることができる。制御設定情報を得た制御部23でおこなわれる種々の制御の詳細な内容については後述する。
【0061】
(実施形態における制御系の作用)
実施形態の自転車1は、図7に示すような制御系を有して、自転車1を様々に制御することが可能となる。図7に示す制御系では、ハンドルスティ15、シートスティ45、サドルスティ27、さらには、電動アシストモータの4つのアクチュエータの各々を制御することができ、種々の制御方法を採用できる。以下に実施例としていくつかの制御方法を述べる。
【0062】
(制御方法の第1実施例)
第1実施例は、シートスティ45を制御してシートチューブ44を回動させる制御方法に関するものである。図8は、比較例として、従来の自転車による坂道(傾斜路面)の走行状態を示す図である。図8(a)〜図8(c)に示すように、従来の自転車ではシートチューブ44はチェンスティ42に対して平坦路面の走行に適した角度(通常の角度)である角度θsを有しており、この通常の角度θsは走行する地面の傾きによって変わるものではない。
【0063】
図8(a)は、水平面と路面とのなす角度である路面角度δ=0の平坦な地面を走行する場合を示し、この場合は人が腰かけるサドル25の面は、地面に対して略水平に保たれている。図8(b)は路面角度δ=Δθu(Δθu>0)の上り坂を走行する場合を示し、この場合は人が腰かけるサドル25の面は、地面に対して後下がりとなっている。図8(c)は路面角度δ=Δθd(Δθd<0)の下り坂を走行する場合を示し、この場合は人が腰かけるサドル25の面は、地面に対して前下がりとなっている。
【0064】
図8(b)に示す状態では、自転車に乗る人(操車者)は、サドル25から後方に落下する感覚を感じるので、無理に前かがみの体勢を維持して、落下を防止することとなりがちである。一方、図8(c)に示す状態では、サドル25から前方に落下する感覚を操車者は感じるので、無理に後ろに反る体勢(姿勢)を維持して、落下を防止することになりがちとなる。このように坂の上り下りでは体勢を変化させねばならず、操車者の疲労は大きなものとなった。特に、高齢者にとっては、前かがみの体勢、後ろに反る体勢、を長時間維持することは大きな負担である。また、坂道では、重力の影響で、上述したような力が人体に加わり、このために、恐怖感を感じることとなる。
【0065】
図9は、第1実施例の制御方法によって得られる自転車の走行状態を模式的に示す図である。図9(a)は平坦な地面を走行する場合を示し、この場合は人が腰かけるサドル25の面は、地面に対して略水平に保たれている。図9(b)は路面角度δ=Δθuの上り坂を走行する場合を示し、この場合も、人が腰かけるサドル25の面は、地面に対して略水平に保たれている。図9(c)は路面角度δ=Δθdの下り坂を走行する場合を示し、この場合も同様に、人が腰かけるサドル25の面は、地面に対して略水平に保たれている。
【0066】
ここで、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度について説明をする。図9(a)に示す平坦な地面を走行する場合には、好適な角度として角度θsに設定される。そして、図9(b)に示すように路面角度δ=Δθuの上り坂を走行する場合において、人が腰かけるサドル25の面が地面に対して略水平に保たれるようにするための、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度の大きさは、(数2)で表される。ここで路面角度δ=Δθu(Δθu>0)であるので、角度θn=θs+Δθu(θn>θs)である。
【0067】
【数2】

【0068】
また、図9(c)に示す路面角度δ=Δθdの下り坂を走行する場合において、人が腰かけるサドル25の面が地面に対して略水平に保たれるようにするための、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnの大きさは、路面角度δ=Δθd(Δθd<0)であるので、角度θn=θs+Δθd(θd<θs)である。
【0069】
このように、坂道の傾斜の角度に応じてシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度を変化するように設定すれば、操車者はどっしりとサドル25に腰かけた楽な状態で操車をすることが可能となる。そして、坂道の傾きに応じて、体勢を変化させる必要がないので疲労がより少なくなり、恐怖感も薄れる。特に、体力が劣る高齢者にとって負担を小さくできる。このようにして、シートチューブ44を回動させてシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度を所望の値とする制御をおこなうことができる。
【0070】
図10は、シートチューブ44を回動させるシートチューブ回動角度設定処理の内容を、CPUがおこなう処理のフローチャートで示すものである。シートポスト回動角度設定処理は所定周期毎の割込処理とされている。
【0071】
図7に示す制御系のブロック図を参照しながら、図10のフローチャートに沿って、第1実施例で実行される制御部23のCPUがおこなう処理の内容を説明する。
【0072】
ステップST101では、ジャイロスコープ61で角速度に応じた信号(電圧VOUT)が検出され、CPUはこの検出された電圧VOUTを取り込み、角度変化量を得る。
ここで、電圧VOUTから角度変化量への変換は、(数1)に示す定数Cと電圧VOUTとの掛算をCPUが実行することでおこなわれる。定数Cの値はジャイロスコープ61の特性と、CPUでは(数1)の連続系における積分に替えて和分がおこなわれるので割り込みの周期と、に応じて定められる。
【0073】
ステップST102では、CPUは、ステップST101で得られた角度変化量に前回の処理で得られた角度変化量を加算し、現在の路面角度を求める。
ここで、前回の処理において得られた角度((数1)の初期値C)を得るためには、いずれかの時間における初期角度Cが必要となる。
この初期角度Cは、例えば、以下のようにして得る。
所定の期間、自転車が操作されなかった後に、始めて操作が開始される時点で自転車を水平路面においた状態(水平路面に自転車を置いたと等価の状態を含む)にして、ジャイロスコープ61と制御部23の電源をON(オン)する。そして、このときの初期角度Cを0度であるとして制御部のRAMに書き込む。
【0074】
ステップST103では、CPUは、制御部23を制御して、ROMのルックアップテーブルを参照して、現在の路面角度δに応じてシートスティ45の長さを制御する。
つまり、図9(a)で示されるように、路面角度δ=0度の場合にはシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度は角度θsと設定される。
また、路面角度δの場合にはシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度は(数2)で表される角度θnに設定される。ここで、ROMに配されたルックアップテーブルには、角度θnを記憶させておくことなく、路面角度δとレゾルバ451dの検出値との関係を記憶しておくことによって制御部23における制御はより簡単なものとできる。
【0075】
例えば、路面角度δ=0の場合には、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす望ましい角度は角度θsであるが、ルックアップテーブルを参照すると、このときのレゾルバ451dの検出値が目標検出値Rssと記憶されている。
路面角度δ=Δθuの場合には、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす望ましい角度は角度θn=θs+Δθuであるが、ルックアップテーブルを参照すると、レゾルバ451dの検出値が目標検出値Rsuと記憶されている。
路面角度δ=Δθdの場合には、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす望ましい角度は角度θn=θs+Δθdであるが、ルックアップテーブルを参照すると、レゾルバ451dの検出値が目標検出値Rsdとして記憶されている。
【0076】
所望のレゾルバ451dの検出値が得られるまで、ネジ付回転軸451cを回転させる処理は、フィードバック制御によっておこなわれる。より具体的には以下のようにおこなわれる。
CPUは、ルックアップテーブルを参照して現在の路面角度に対するレゾルバの目標検出値とレゾルバ451dの現在の検出値Rs(図7を参照)との差分を得る。また、CPUは、この差分に対して周知技術であるサーボ系を最適化するための位相補償をおこなうためのデジタルフィルタリング処理を施し、電力増幅部65に演算の最終結果に応じた信号を送出する。電力増幅部65からシートスティ45の内筒移動モータ固定部451bに印加される信号Dsによってネジ付回転軸451cは回転される。
そして、現在の路面の状態が、図9(a)に示す状態であれば、ネジ付回転軸451cは、現在のレゾルバ451dの検出値が目標検出値Rssに達すると回転を停止し、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度は角度θsに維持される。
図9(b)に示す状態であれば、ネジ付回転軸451cは、レゾルバ451dの検出値が目標検出値Rsuに達すると回転を停止し、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度は角度θn=θs+Δθuに維持される。
図9(c)に示す状態であれば、ネジ付回転軸451cは、レゾルバ451dの検出値が目標検出値Rsdに達すると回転を停止し、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度は角度θn=θs+Δθdに維持される。
【0077】
ステップST104では、CPUは、前回得られた角度を今回の角度(次回の処理においてステップST102で使用する角度)に書き換える。そして処理は終了する。
次の割り込みによって再びステップST101から処理は開始される。
【0078】
このような制御方法を採用することによって、走行路面がどのように傾いていたとしても傾斜の角度に応じて、自転車の主要機構部材であるシートチューブ44とチェンスティ42との相互の位置関係を自動的に制御して、サドル25の面を水平に保つことができる。そして、操車者は楽な状態で操車をすることが可能となり、特に、高齢者にとって負担を小さくできる。
【0079】
また、操車者の好みの角度は、必ずしも、人が腰かけるサドルの面が地面に対して略水平に保たれるようにするだけに限られず、やや、前傾姿勢、やや後傾姿勢に設定するようにしても良い。つまり、(数2)で示す制御方法は一例に過ぎない。例えば、水平ではなく所定のオフセット角度を設定することによって、路面の傾きによらず、操車者の好みの角度にサドル25の面を常時設定することができる。さらに、走行路面の傾きの大きさに応じて、人が腰かけるサドルの面が地面に対する角度を適宜に定めることもできる。この場合にどの様にサドルの面が地面に対する角度を定めるかについては、ルックアップテーブルの内容でどの様にも定め得るものである。さらに、ルックアップテーブルをROMに配置せず、不揮発性メモリに配置するようにして、ルックアップテーブルの内容(走行路面の傾きとサドルの面が地面に対する角度との関係)を操車者の好みに応じて随時書き換えるようにしても良い。
【0080】
(制御方法の第2実施例)
第2実施例は、サドルスティ27を制御してサドル25を回動させる制御方法に関するものである。
【0081】
第2実施例では、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度は変化することなく一定に維持し、サドルスティ27を制御して、平坦な地面を走行する場合、上り坂を走行する場合、下り坂を走行する場合のいずれにおいても人が腰かけるサドル25の面は、地面に対して略水平に保つものである。
【0082】
図6に示すようにサドル回動軸26を中心として、シートチューブ44に挿入されているシートポスト24に対するサドル25の腰かけ面の傾きを制御することができることは既に説明をした。また、図5に示すようにサドルスティ外筒271に挿入されているサドルスティ内筒272の突出する部分の長さを変化させることによってシートポスト24に対するサドル25の面の傾きを制御することができることも既に説明をした。第2実施例はこのような特徴ある機構部を用いておこなう制御方法である。
【0083】
図11は、第2実施例の制御方法を模式的に示す図である。図11(a)は平坦な地面を走行する場合を示し、サドル25の腰かけ面は、略水平(重力方向に対して直角)に保たれている。図11(b)は路面角度δ=Δθuの上り坂を走行する場合を示し、この場合も、サドル25の腰かけ面は、重力方向に対して直角に保たれている。図11(c)は路面角度δ=Δθdの下り坂を走行する場合を示し、この場合も同様に、サドル25の腰かけ面は、重力方向に対して直角に保たれている。
【0084】
サドル25の腰かけ面を重力方向に対して直角に保つために、シートポスト24に対するサドル25の面のなす角度ψ(図5を参照)をどのように制御すれば良いかについて以下説明をする。
【0085】
図11(a)に示す平坦な地面を走行する場合に好適な、シートポスト24に対するサドル25の面のなす角度ψの大きさは角度ψsである。そして、図11(b)に示すように路面角度δ=Δθuの上り坂を走行する場合に好適な、シートポスト24に対するサドル25の面のなす角度の大きさ角度ψnは(数3)で表される。ここで路面角度δ=Δθu(Δθu>0)であるので、角度ψn=ψs−Δθu(ψn<ψs)である。
【0086】
【数3】

【0087】
(数3)は路面の傾きの正負に関係なく成立するものである。図11(c)に示すように路面角度δ=Δθdの下り坂を走行する場合に好適な、シートポスト24に対するサドル25の面のなす角度ψnの大きさは、路面角度δ=Δθd(Δθd<0)であるので、(数3)より得られる角度ψn=ψs−Δθd(ψn>ψs)である。
【0088】
このように、坂道の傾斜の角度に応じてシートポスト24に対するサドル25の面のなす角度を異なるように設定すれば、操車者はどっしりとサドル25に腰かけた楽な状態で操車をすることが可能となる。そして、坂道の傾きに応じて、体勢を変化させる必要がないので疲労が少なく、特に、高齢者にとって負担を小さくできる。
【0089】
図12は、サドル25を回動させるサドル回動角度設定処理の内容を、CPUがおこなう処理のフローチャートで示すものである。シートポスト回動角度設定処理は所定周期毎の割込処理とされている。
【0090】
図11を参照しながら、図12に沿って、第2実施例で実行される制御部23でおこなわれる処理の内容を説明する。
【0091】
ステップST201では、ジャイロスコープ61で角速度に応じた信号(電圧VOUT)を検出し、CPUがこの検出された電圧VOUTを取り込み、角度変化量を得る。
ステップST201における演算は図10に示すステップST101におけると同様である。
【0092】
ステップST202では、CPUは、ステップST201で得られた角度変化量に前回の処理で得られた角度を加算し、現在の走行路面の路面角度δを求める。
初期角度Cの求め方は、図10に示すステップST102におけると同様である。
【0093】
ステップST203では、CPUは、ROMのルックアップテーブルを参照して、制御部23を制御して、現在の路面角度δに応じてサドルスティ27の長さを制御する。
路面角度δとレゾルバ271dの目標検出値との関係はルックアップテーブルとしてROMに記憶されている。レゾルバ271dの検出値が目標検出値となるまで、ネジ付回転軸271cを回転させる処理は、ステップST103におけると同様にフィードバック制御によっておこなわれる。
【0094】
ステップST204では、CPUは、前回得られた角度を今回の角度(ステップST202で得られた角度)に書き換える。そして処理は終了する。
次の割り込みによって再びステップST201から処理は開始される。
【0095】
このような制御方法を採用することによって、走行路面がどのように傾いていたとしても傾斜の角度に応じて、自転車の主要機構部材であるシートポスト24とサドル25との相互の位置関係を操車者の好みの角度に設定することができる。そして、操車者は楽な状態で操車をすることが可能となり、特に、高齢者にとって負担を小さくできる。
【0096】
また、第1実施例におけると同様に、操車者の好みの角度は、必ずしも、人が腰かけるサドルの面が地面に対して略水平に保たれるようにするだけに限られず、やや、前傾姿勢、やや後傾姿勢に設定するようにしても良い。つまり、(数3)に示す制御方法は一実施例に過ぎない。また、走行路面の傾きの大きさに応じて、サドルの面が地面に対する角度を適宜に定めることができ、この場合にどの様にサドルの面が地面に対する角度を定めるかについては、ルックアップテーブルの内容でどの様にも定め得るものである。さらに、ルックアップテーブルをROMに配置せず、不揮発性メモリに配置するようにして、ルックアップテーブルの内容(走行路面の傾きとサドルの面が地面に対する角度との関係)を操車者の好みに応じて随時書き換えるようにしても良い。
【0097】
(制御方法の第3実施例)
第3実施例は、シートスティ45を制御してシートチューブ44を回動させるとともに、サドルスティ27を制御してサドル25を回動させる、連係した制御方法に関するものである。
【0098】
第1実施例ではシートスティ45を制御して、シートチューブ44とチェンスティ42との相互の位置関係を好適なものとした。また、第2実施例ではサドルスティ27を制御して、シートポスト24とサドル25との相互の位置関係を好適なものとした。第3実施例では、シートチューブ44(シートポスト24)とチェンスティ42とサドル25との三者の相互の位置関係を好適なものとし、より良い乗り心地を得るものである。
【0099】
第1実施例ではシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度が水平路面における角度θsから大きく変化する場合、例えば、走行路面が上り勾配の場合には角度θnは勾配が大きくなるほど大きくなる。この結果、脚を伸ばして路面に足の裏を接地するに当たり、脚は重力方向に伸びるので、路面に十分に足の裏が達しない場合がある(図9(b)を参照)。つまり、上り坂で急停止する場合に安全面で問題が生じる場合もある。また、ハンドルレバー12が身体に近づきすぎてハンドル操作が困難となる虞がある。
【0100】
また、第1実施例では、走行路面が下り勾配の場合には角度θnは勾配が大きくなるほど小さくなる。この結果、路面に十分に足の裏は接するものの(図9(c)を参照)、ハンドルレバー12が身体から遠ざかり過ぎてハンドル操作が困難となる虞がある。
【0101】
第2実施例ではシートポスト24とサドル25の面のとのなす角度が、水平路面における角度ψsから大きく変化する場合に角度ψnも大きく変化する。例えば、走行路面が上り勾配である場合には角度ψnは勾配が大きくなるほど小さくなる。この結果、後輪30への荷重(人体の重さ)の分配割合は大きくなり、前輪14への荷重の分配割合は小さくなる。このために、前輪14が浮きハンドル操作が困難になる場合もある。
【0102】
また、第2実施例では走行路面が下り勾配である場合には角度ψnは勾配が大きくなるほど大きくなる。この結果、前輪14への荷重の分配割合は大きくなり、後輪30への荷重の分配割合は小さくなる。このために、後輪30が浮き安全性が損なわれる場合もある。
【0103】
第3実施例は、第1実施例の問題点と第2実施例の問題点とを解決するものである。つまり、路面角度δをシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度と、シートポスト24とサドル25の面のとのなす角度とに配分するものである。路面角度δの配分は種々の割合に設定することが可能である。例えば、シートポスト24とサドル25の面のとのなす角度への配分と、シートポスト24とサドル25の面のなす角度への配分と、を等しく半分ずつ配分することもできる。
【0104】
第3実施例では、路面角度が角度δの場合にシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnと、シートポスト24とサドル25の面のとのなす角度ψnは、(数4)の第1式と第2式とで各々表される。(数4)は上り勾配、下り勾配のいずれにも適用できる式である。ここで、配分比率kの値は0から1までの範囲であり、半分ずつ配分する場合には、配分比率kの値は0.5である。
【0105】
【数4】

【0106】
図13は、第3実施例の制御方法を実行するCPUがおこなう処理の内容をフローチャートで示すものである。シートポスト回動角度設定処理と、サドル回動角度設定処理とは上述した所定周期毎の割込処理とされている。
【0107】
ステップST301では、CPUは、上述した配分の比率を定める配分比率kの値を設定し、初期角度Cの値を設定する。
【0108】
ステップST302では、CPUは、シートチューブ回動角度処理をおこなう。シートチューブ回動角度処理は図10に示されたステップST101〜ST104までの処理である。
このときの処理は(数4)の第1式に従う。
【0109】
ステップST303では、CPUは、サドル回動角度処理をおこなう。サドル回動角度処理は図12に示されたステップST201〜ST204までの処理である。
このときの処理は(数4)の第2式に従う。
【0110】
ステップST303での処理が終了すると処理はステップST301へ戻り、再び、シートチューブ回動角度処理をおこない、続いてサドル回動角度処理を再びおこなう。そして、同様の処理を順次繰り返しておこなう。
【0111】
このように勾配の角度δの分配を(数4)の配分比率kの値によって適宜に定め、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnとシートポスト24とサドル25の面のとのなす角度ψnとに上り勾配の角度δを配分することができる。また、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnと、シートポスト24とサドル25の面のとのなす角度ψnとに下り勾配の角度δを配分することができる。これによって、前輪14と後輪30とにかかる荷重を操作性、安全性を損なうことない範囲とできるとともに、路面に十分に足の裏が接するようにして、ハンドルレバー12と身体との関係を適切に(例えば、腕を無理のない曲げ角度に)保つことができる。
【0112】
(制御方法の第4実施例)
第4実施例は、ハンドルスティ15を制御して、ハンドルレバー12を回動させる制御方法に関するものである。
【0113】
図6に示すようにハンドルレバー回動軸16を中心としてハンドルレバーが回動することによって、操車者の好みの位置にハンドルレバーを配置することができる。例えば、ハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度を図6に示すように角度φとすればスポーツ仕様とすることができ、図6に示すように角度φとすれば買い物に適した仕様とすることができる。
【0114】
図14は、ハンドルレバー12を回動させるハンドルレバー回動角度設定処理の内容を、CPUがおこなう処理のフローチャートで示すものである。ハンドルレバー回動角度設定処理は所定周期毎の割込処理とされている。
【0115】
図14に沿って、第4実施例で制御部23のCPUが実行する処理の内容を説明する。
【0116】
ステップST401では、CPUはハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度を設定するよう指示する。
ハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度の設定は、操作入力部・表示部に配されたキーから入力しておこなうことができる。また、CPUは指示をID検出部63に出して、電界通信により制御設定情報を自動的に読み取り、ハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度を設定することもできる。また、CPUのプログラムに従いROMまたは不揮発性メモリから、ハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度の設定値を読み込むこともできる。
【0117】
ステップST402では、CPUは、ステップST401で設定されたハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度読み込む。
【0118】
ステップST403では、制御部23は、ROMのルックアップテーブルを参照して、ステップST401で得られたハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度に応じた所望のレゾルバ151dの目標検出値を得る。
【0119】
ステップST404では、CPUは、レゾルバ151dの検出値が目標検出値となるまで、ネジ付回転軸151cを回転させるように制御部23を制御する。
この処理は、ステップST103におけると同様にフィードバック制御によっておこなわれる。そして処理は終了する。
【0120】
ハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度が小さいほどハンドルレバー12の位置は、路面方向に移動することとなるとともに、サドル25とハンドルレバー12との距離が接近したものとなる。よって、このようなハンドルレバー12を回動させる制御方法を採用することによって、ハンドルレバー12の回動角度を変化させてハンドルレバー12の位置を操車者の好みに合わせて設定することができる。
【0121】
(制御方法の第5実施例)
第4実施例においては、シートスティ45とサドルスティ27とを組み合わせて、シートチューブ44の回動量とサドル25の回動量とを制御するものであった。これに対して第5実施例は、シートスティ45とサドルスティ27とハンドルスティ15とを制御して、シートチューブ44の回動量とサドル25の回動量とハンドルレバー12の回動量とを連係して制御するものである。
【0122】
第5実施例においては、ハンドルレバー12と身体との関係を適切に保つ制御をしながら、さらに、ハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度を制御するものである。
【0123】
第5実施例においては、勾配の角度が角度δの場合にシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnと、シートポスト24とサドル25の面とのなす角度ψnと、ハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度φnと、は(数5)で表される。角度θnは第1式、角度ψnは第2式、角度φnは第3式で各々表される。すなわち、第5実施例では、シートスティ45とサドルスティ27とハンドルスティ15の3点を連係して制御するものである。
【0124】
ここで、Laはシートチューブ回動軸48とサドル25の面の中央との間の距離(図6を参照)であり、Lbはハンドルレバー回動軸16とハンドルレバー12の握り部分との間の距離(図6を参照)である。
【0125】
【数5】

【0126】
(数5)において、第1式と第2式とは(数4)と同様のものであるが、第3式は、(数6)から導かれるものである。
【0127】
【数6】

【0128】
ここで、(数6)は、シートチューブ回動軸48とサドル25の面の中央を結ぶ直線Laと、ハンドルレバー回動軸16とハンドルレバー12の握り部分との間を結ぶ直線Lbとが略平行であることを前提として成り立つ関係式である。左辺はシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度が、角度θsから角度θnまで角度(δ×k)変化したときのX軸方向の距離の変化量である。また、(数6)の右辺はハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度が角度sから角度φnに変化したときのハンドルレバー12の握り部分のX軸方向の距離の変化量である。そして、(数6)の右辺と左辺との変化量が等しい場合には、サドル25の面の中央とハンドルレバー12の握り部との間の距離は一定に保たれ、その結果腕の曲げ具合は一定に保たれる。(数5)の第3式は、(数6)を移項して求めた式である。なお、(数6)は、δが小さい場合の一次近似式である。
【0129】
図15は、第5実施例の制御方法を実行する制御部23のCPUがおこなう処理の内容をフローチャートで示すものである。シートポスト回動角度設定処理と、サドル回動角度設定処理と、ハンドルレバー回動角度処理とは上述した所定周期毎の割込処理とされている。
【0130】
ステップST501では、初期処理であり、CPUの内部のレジスタに角度の配分比率kの値、初期角度C、シートチューブ回動軸48とサドル25の面のとの間の距離La、ハンドルレバー回動軸16とハンドルレバー12の握り部分との間の距離Lbの各値を取得して書き込む。その後の演算においては、これらのパラメータが書き込まれたレジスタを用いて、(数5)の演算おこなう。
【0131】
ステップST502では、CPUは、(数5)の第1式に従ってシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度を角度θnとするシートチューブ回動角度設定処理をおこなう。シートチューブ回動角度設定処理は図10に示す処理である。
【0132】
ステップST503では、CPUは、(数5)の第2式にしたがってシートポスト24とサドル25の面とのなす角度を角度ψnとするサドル回動角度設定処理をおこなう。サドル回動角度設定処理は図12に示す処理である。
【0133】
ステップST504では、CPUは、(数5)の第3式にしたがってハンドルポスト11とハンドルレバー12とのなす角度を角度φnとするハンドルレバー回動角度設定処理をおこなう。ハンドルレバー回動角度設定処理は図14に示す処理である。
【0134】
このようにして(数5)に従った制御をおこなえば、自転車を操車する者が無理な姿勢をとることがないようにサドル25の腰をかける面を適切に保ち、前輪14と後輪30との各々の荷重を適切に配分しながら、ハンドルレバー12の握り部までの操車者の腕の長さを、路面の傾斜によらず略一定の長さに保つようにできる。
【0135】
また、(数5)の第1式、第2式の角度の配分比率kの値、第3式に示す演算式に替えて、ROMまたは不揮発性メモリに配されたルックアップテーブルを参照して、路面の傾斜の角度δを入力して、角度θn、角度ψn、角度φnの各々を得て、角度θn、角度ψn、角度φnとなるように各々のアクチュエータを制御するようにしても良い。この場合において、標準的な身長、標準的な腕の長さ、標準的な体重、標準的な体重の重心位置、を有する者(標準体型者)を想定して、ルックアップテーブルを作成するようにしても良い。
【0136】
(制御方法の第6実施例)
さらにまた、路面角度δに応じて角度θn、角度ψn、角度φnの各々を設定するのではなく、操車者がハンドルレバー12の握り部分を押し引きすることによって別の制御方法を実現することができる。
【0137】
第6実施例も(数5)に従った制御とすることができる。(数5)の第3式では、シートチューブ44のX軸方向の基準位置からの距離Laと、ハンドルレバー12のX軸方向の基準値からの距離Lbとが関係付けられているので、操車者がハンドルレバー12の距離Lbを制御することによって、結果的に、腕の長さを所定の長さに保つためのシートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnを制御するのが第6実施例である。
【0138】
この場合には、ハンドルレバー12に圧力センサ(図示せず)を配して、この圧力センサが検出する圧力がゼロとなるように、制御部23はハンドルスティ15の内筒移動モータ固定部271bを制御する。そして、(数5)の第3式の演算をおこなって、制御部23はシートスティ45の内筒移動モータ固定部451bを制御して、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnを制御する。さらに、シートチューブ44とチェンスティ42とのなす角度θnに応じて、シートポスト24とサドル25の面とのなす角度ψnを制御するようにしても良い。このようにして、操車者はハンドルレバー12の角度を自分の好みに合ったものとしながら、腕を楽な角度で曲げる状態を保つことができる。
【0139】
上述した、(数1)〜(数5)の演算式は、どのように制御をするかの制御則の一例に過ぎず、どのような演算を用いるものであっても、同様にして、角度θn、角度ψn、角度φnの各々を連係して制御することができる。
【0140】
また、(数1)の演算については、レートジャイロスコープを採用するために、初期値Cと積分演算とが必要となるのであり、直接に角度が検出できる角度検出型のジャイロスコープを用いる場合には、初期値Cも積分演算も必要とされない。また、応答速度の遅い角度検出器(例えば、レバーの先端に錘を取り付けレバーの他端にロータリーポテンショの回転軸を取り付けたもの)とレートジャイロスコープを組み合わせて、角度検出器からの出力でレートジャイロスコープからの出力を更正するようにしても良い。
【0141】
また、制御則は、演算式によることなく、走行路面に応じた最も望ましい、角度θn、角度ψn、角度φnの各々を実験データとして収集して、ルックアップテーブルとして、これを参照して制御するようにしても良い。
【0142】
(制御方法の第7実施例)
上述した第1実施例〜第6実施例では、特定の操車者が自転車を操作する場合において、路面の傾きに応じて、自動的に自転車の主要機構部材の相互の位置関係を変化させるものであった。第7実施例は、操車者の身体特徴、好みに合わせて自転車の主要機構部材の相互の位置関係を変化させるものである。
【0143】
特定の一台の自転車を複数の者が共用する場合もある。ここで、複数の者の身体特徴は種々であり、その好みも種々である。身体特徴は、例えば、身長については150cmから200cm程度の範囲におよび、年齢については12歳から70歳の範囲におよび、性別については女性と男性とが混在している。また、好みは、スポーツ車(スポーツとして乗車するための自転車)、通勤車(通勤に使う自転車)、買い物車(日用品の買い物に使用する自転車)と様々である。
【0144】
年齢が低い者は一般的に、身長が低く、腕の長さが短いので、サドル25の路面からの位置を低くし、ハンドルレバー12の位置は低くする場合が多い。また、ある程度の高年齢では、一般的に、身長がより高く、腕の長さがより長いので、サドル25の路面からの位置を高くし、ハンドルレバー12の位置は高くする場合が多い。
【0145】
スポーツ車の場合には、サドル25の路面からの位置を高くし、サドル25の腰かける面は前傾傾向とし、シートチューブ44は前傾とし、ハンドルレバー12の位置は低くする場合が多い。通勤車、買い物車の場合には、サドル25の路面からの位置を低くし、サドル25の腰かける面は水平とし、シートチューブ44は前傾でも後傾でもなく中立位置とし、ハンドルレバー12の位置は高くする場合が多い。
【0146】
このような個人毎の好みに応じた設定は手動設定によっても自動設定によっても、実施形態の自転車ではおこなうことができる。まず、手動設定について簡単に説明をする。図7に示す操作入力部・表示部62を用いるのが、最も簡単な自転車の各種の変数の設定方法である。操作入力部・表示部62には、例えば、液晶ディスプレイが配置されており、自転車の全体図のグラフィックスが表示されている。
【0147】
そして、グラフィックスのシートチューブ44の表示部分に指を触れて指を動かす方向に実際のシートチューブ44が回動するようになされている。また、サドル25の表示部分に指を触れて指を動かす方向に実際のサドル25が回動するようになされている。また、ハンドルレバー12の表示部分に指を触れて指を動かす方向に実際のハンドルレバー12が回動するようになされている。このようにして容易に各機構部材の相互の関係を設定できる。
【0148】
また、操作入力部・表示部62に配されたテンキーを用いて、所望の角度θn、所望の角度ψn、所望の角度φnの各々を入力して、シートチューブ44、サドル25、ハンドルレバー12の各々の回動角度を所望のものとしても良い。さらに、単に、年齢、性別、身長などを入力して、標準的なモデルについて予め設定した、シートチューブ44の回動角度、サドル25の回動角度、ハンドルレバー12の回動角度の各々を設定するようにしても良い。
【0149】
以上の設定は操車者の好みによって自由に設定できるものであり、このようにして、自転車を好みの仕様のものとすることができる。しかしながら、操車者が自ら入力をしなければならず、面倒である。次に自動設定について説明をする。どのようにして、操車者の身体特徴、好みに合わせて自動的に自転車の主要機構部材の相互の位置関係を変化させるかについて、図7に示す制御系のブロック図と図25に示す特許文献3に記載の技術とを引用して説明する。
【0150】
図7に示すID検出部63には、図25に示す受信機203が内蔵されている。一方、操車者は送信機201を身につけており、人体を伝送媒体202として送信機201からのID(個人認証情報)が受信機203へ送られる。
【0151】
ID検出部63が検出する情報の内容は、個人を特定する情報であるID(個人認証情報)と、個人の好みの制御設定情報と、が含まれる。送信機201にはモード切替キーが設けられ、どのキーを設定するかで、送信される制御設定情報の内容が切り替わる。例えば、モード1のキーを設定すれば、上述した第1実施例の制御方法、モード2のキーを設定すれば、上述した第2実施例の制御方法、モード3のキーを設定すれば、上述した第3実施例の制御方法、モード4のキーを設定すれば、上述した第4実施例の制御方法、モード5のキーを設定すれば、上述した第5実施例の制御方法、を各々採用することができる。当然にこれら以外に、送信機201の所有者が自分の好みの設定を組み合わせて自分特有のモードを新たに登録することができる。
【0152】
また、このようにして、どのような制御方法を選択するかを決定するとともに、自分特有のモードとして、例えば、シートチューブ44の水平路面における角度θsを予め定める好みの値、サドル25の水平路面における角度ψsを予め定める好みの値、ハンドルレバー12の水平路面における角度φsを予め定める好みの値に各々定めることができる。
【0153】
例えば、モード6のキーを押せば、サドル25の角度ψsを予め定める好みの値、ハンドルレバー12の水平路面における角度φsを予め定める好みの値に各々定め、走行路面の傾きによって変化しないようにすることができる。また、例えば、モード7はスポーツ仕様、モード8は通勤仕様と予め定める好みの別の設定とすることができる。さらに、ID(個人認証情報)と、個人の好みの制御設定情報と、が関係づけられているので、制御部23はIDを認識するだけで、どのモードを設定するかを決定することができる。例えば、IDによって認識される特定の人は、傾斜した路面でも、水平路面でも、全く同じ状態に自転車を保つように予め登録しておくことができる。
【0154】
(制御方法の第8実施例)
ID検出部63から得られる情報の内容には、上述するように個人を特定するIDも含まれるので、登録されたIDを認識するまでは、節電モードとしておくことができる。具体的にはID検出部63だけは常時通電をして、制御部23はスリープモードとしておくことができる。そして、電界通信によって予め登録された者であることをID検出部63が検出後、制御部23をスリープモードから解除して、各部に電力を供給し、車輪の施錠を開錠とすることによって、自転車を使用可能とすることができるとともに、従来の自転車でおこなわれる開錠の手間を省くことができる。
【0155】
また、施錠に関しても、身体が自転車の車体から離れて送信機201からの送信信号がID検出部63に配される受信機203で検出されなくなって所定の時間が経過したら、自動的に施錠をして従来のような施錠の手間を省くことができる。この場合において、電界通信を採用しているので、身体と自転車とがあまり離れることなく施錠が施されるので安全性が高いものとなる。
【0156】
このようにして、送信機201と受信機203とを有し、人体を伝送媒体202として用いる、電界通信によるインターフェイスを備えることによって、良好な通信をおこなうことができる。特に、電界通信では、不要に遠距離まで情報を発射して他の機器に妨害を与えることがない。一方、身体の一部が直接または衣服を介して、自転車に接することによって、送信機201から受信機203に情報を伝えるという目的は十分に達せられる。
【0157】
[第2実施形態]
(実施形態の自転車の構造の説明)
第2実施形態は、自転車の主要機構部材の寸法を変化させるものである。寸法を変化させる主要機構部材として、シートチューブ44から突出するシートポスト24の長さを変化させる機構部材であるシートポスト長可変部材、ヘッドチューブ10から突出するハンドルポスト11の長さを変化させる機構部材であるハンドルポスト長可変部材を第2実施形態では採用している。
【0158】
図16は、シートポスト長可変アクチュエータとして機能するシートポスト長可変部材54の断面構造を示すものである。シートポスト長可変部材54は上述したシートチューブ44とシートポスト24とを組み合わせ、さらに、可動機構をシートチューブ44とシートポスト24との各々の内部に組み込んだものである。
【0159】
シートチューブ44の内部には、シートポスト回転防止板441aとシートポスト移動モータ固定部441bとシートポスト移動モータ固定部441bに対して回転するネジ付回転軸441cが配されている。シートポスト24の内部には、ネジ付回転軸441cと螺合する溝付軸受241cが配されている。シートポスト24の先端には、他の部分よりも直径が大きい突出部241bが設けられている。そして、シートチューブ44にねじ込まれたストッパ441eによって突出部241bが係止されてシートチューブ44からシートポスト24が抜けることがないようにされている。
【0160】
シートポスト回転防止板441aはシートチューブ44の長手方向に伸びる部材であり、シートポスト回転防止板441aの表面は、シートポスト24に設けられた細長い溝状の回転防止スリット241aの表面と対面するようにされている。回転防止スリット241aの溝幅はシートポスト回転防止板441aの幅よりも広くされ、シートチューブ44の内部でシートポスト24が回転することがないようにしながら、回転防止スリット241aの表面とシートポスト回転防止板441aの表面の一部が接触して、シートポスト24は自由に矢印Dの方向に移動可能とされている。
【0161】
なお、シートチューブ44の内面とシートポスト24の外面の相互に接する部分の断面形状を円形状ではなく、角形状(例えば、四角形状)とすれば、シートポスト回転防止板441aも回転防止スリット241aも設けなくとも、シートチューブ44の内部でシートポスト24が回転することはない。
【0162】
シートポスト移動モータ固定部441bに電力が供給されることによって、ネジ付回転軸441cが回転してシートチューブ44の内部に取り込まれるシートポスト24の長さが変化させられる。ここで、シートポスト移動モータ固定部441bに加えられる電圧の極性を切替えることによってネジ付回転軸441cの回転方向を切替えることができ、シートポスト24の移動方向を切替えることができる。
【0163】
また、シートポスト移動モータ固定部441bから伸びる、ネジ付回転軸441cには、ネジ付回転軸441cの回転角度を検出するレゾルバ441dが連結されている。ネジ付回転軸441cの1回転を2πラジアンとして、基準の位置から何ラジアン回転したかをレゾルバ441dによって検出して、シートポスト長可変部材54の長さを検出することができるようになされている。そして、レゾルバ441dからの信号は、図7に示す制御部23に入力されて、制御部23がシートポスト長可変部材54の長さを検出することができるようになされている。
【0164】
また、図示しないが、ハンドルポスト長可変部材もシートポスト長可変部材54と同様の構造を有しており、シートチューブ44に替えてヘッドチューブ10が用いられ、シートポスト24に替えてハンドルポスト11が用いられているのみであり基本的な構造に変わるところがない。
【0165】
このような主要機構部の寸法が変化する部材である、シートポスト長可変部材54、ハンドルポスト長可変部材を用いることによって、さらに、自転車は操車者にフレンドリーなものとなり、操車者にとって快適な乗り物となる。例えば、シートポスト長可変部材54の制御によって操車者の身長に合わせた最適なサドル25の高さを得ることができるようになる。また、ハンドルポスト長可変部材の制御によって操車者の体型に合わせた最適なハンドルレバー12の高さを得ることができるようになる。
【0166】
また、自転車に乗り降りする際に、シートポスト長可変部材54の長さを短くして、乗り降りを容易なものとできる。さらに、第1実施形態の主要機構部材の相互の位置関係の制御と第2実施形態の主要機構部材の寸法の制御とを組み合わせれば、より広範で適応性の高い制御が可能となる。
【0167】
[その他の変形の実施形態]
(アクチュエータの変形例)
【0168】
シートチューブアクチュエータは、シートチューブ44をチェンスティの伸びる方向に回動させるものである。また、サドルアクチュエータは、サドル25をチェンスティの伸びる方向に回動させ、シートポスト24に対するサドル25の腰かけ面のなす角度を可変とするものである。また、サドルアクチュエータは、ハンドルレバー12をチェンスティの伸びる方向に回動させ、ハンドルポスト11に対するハンドルレバー12のなす角度を可変とするものである。要するに、このような機能を有するものであれば、各アクチュエータは、上述した以外に、種々の原理に基づく機構を採用することができる。以下に、これらについて説明をする。
【0169】
シートチューブ44を回動する機構を例にして、図3に示すようなネジ方式以外の種々の方式について説明する。
【0170】
図17はラック・アンド・ピニオン方式による回動機構を示す図である。図17に示すように、フレーム3では、チェンスティ左部材42aとシートスティ455aとは溶接等で固着され、ダウンチューブ43とシートスティ455aとは溶接等で固着されている。そして、チェンスティ左部材42aとダウンチューブ43との間にシートスティ455aが橋渡しされている。また、チェンスティ右部材42bとラック付シートスティ455bとは溶接等で固着され、ダウンチューブ43とラック付シートスティ455bとは溶接等で固着されている。このようにして、チェンスティ右部材42bとダウンチューブ43との間にラック付シートスティ455bが橋渡しされている。
【0171】
シートチューブ回動モータ55がモータ固定板57を介してシートチューブ44に固着されている。シートチューブ回動モータ55の回転軸には小口径の円形歯車(ピニオン)56が取り付けられている。円形歯車56とラック付シートスティ455bに配されたラックとは噛み合い、シートチューブ回動モータ55の回転に応じて、円形歯車56は回転しながら、ラック上を移動する。この結果、シートチューブ44はシートチューブ回動軸48を回動中心として回動する。なお、シートチューブ回動モータ55にはレゾルバ(図示せず)が取り付けられており、第1実施形態と同様にしてレゾルバから検出される信号に基づき制御をすることができる。
【0172】
ハンドルレバー12の回動機構、サドル25の回動機構についても、図示はしないが、同様にラック・アンド・ピニオン方式を採用することができる。さらに、シートポスト長可変部材、ハンドルポスト長可変部材においても、ラック・アンド・ピニオン方式を採用することができる。
【0173】
図18は、油圧シリンダー方式による回動機構を示す図である。フレーム4は、図2に示すようなシートスティ45に替えて油圧シリンダー59を備えている。図19は、油圧シリンダー59の動作を説明する模式図である。図19の左図に示すようにポートP3より油が入り、早送りシリンダーは矢印で示す方向へ移動する。図19の中央図に示すように早送りシリンダーが矢印方向に移動し圧力が上昇するとシーケンス弁が作動し、ポートP1から油が入り増圧シリンダーが矢印方向に移動する。このようにしてシートチューブ44とチェンスティ42のなす角度θを大きくすることができる。図19の右図に示すようにポートP2、ポートP4から油が入り、早送りシリンダーと増圧シリンダーが戻ることによって、角度θは小さくできる。
【0174】
ハンドルレバー12の回動機構、サドル25の回動機構についても、図示はしないが、同様に油圧シリンダー方式を採用することができる。さらに、シートポスト長可変部材、ハンドルポスト長可変部材においても、油圧シリンダー方式を採用することができる。
【0175】
図20は、ギヤ付モータを用いる回動機構を示す図である。フレーム5では、ギヤ付モータ60の固定部をフレーム固定部材41にネジ止めして、ギヤ付モータ60の回転軸に直接にシートチューブ44を固着するようにしている。つまり、回動軸自体を回動させる方式である。ここで、ギヤ付モータ60の回転軸は軸保持部材70によって回動可能に保持され、シートチューブ44に加わる荷重をギヤ付モータ60の回転軸とで配分するようにしている。
【0176】
また、図示しないが、周知技術であるリニアモータを用いることによって、シートチューブ44とチェンスティ42のなす角度θを変化させることもできる。さらに、非特許文献1に記載のSQUIGGLEモータを使用して機構部を簡略化するようにしても良い。
【0177】
以上、種々の回動機構の変形例をシートチューブ44の回動機構を例として説明をしたが、ギヤ付モータを用いる方式、リニアモータを用いる方式、SQUIGGLEモータを使用する方式、のいずれの方式を用いる場合であっても、これらの回動機構はサドル25、ハンドルレバー12の回動機構、としても用いることができる。さらに、シートポスト長可変部材、ハンドルポスト長可変部材としても用いることができる。
【0178】
(その他の変形例)
図21は、制御部23が音声認識回路(図示せず)、音声応答回路(図示せず)を備える場合に、CPUがおこなう処理のフローチャートである。図21に沿って処理の内容を説明する。
【0179】
ステップST601では、CPUは、ID(個人認証情報)を取得する。また、制御設定情報を得る。
制御設定情報は個人別に設定された所望の機構部の設定のパラメータである。
IDの取得、制御設定情報の取得に際しては、電界通信が採用される。
【0180】
ステップST602では、CPUは、取得したIDが登録済みIDか否かを判断する。
登録済みIDである場合(Yes)には処理はステップST603に移る。登録済みIDでない場合(No)には処理はステップST601に戻る。
【0181】
ステップST603では、CPUは、坂道であるか否かを判断する。
坂道である場合(Yes)には処理はステップST604に移る。坂道でない場合(No)には処理はステップST601に戻る。
ここで、坂道であるか否かの判断は、ジャイロスコープで検出する坂道(路面の傾斜角度の絶対値)が所定以上の傾斜を有する場合に坂道であるとするものである。
【0182】
ステップST604では、CPUは、音声応答回路を制御して音声案内をする。音声案内の内容は、「坂道モードになります」等である。
この警告によって、自転車の機構部が動くことを操車者に知らせ、いきなり機構部が動き操車者をあわてさせることがないようにする。
【0183】
ステップST605では、CPUは、音声認識回路を制御して、傾斜モード拒否の応答があったか否かを判断する。
「停止」、「いいえ」の応答を音声認識回路が認識した場合(Yes)には、処理はステップST601へ戻る。「停止」、「いいえ」の応答を音声認識回路が認識しない場合(No)には、処理はステップST606へ移る。
【0184】
ステップST606では、CPUは、傾斜モードの制御をおこなう。傾斜モードの制御の内容は、上述した、角度θnへの変更、角度ψnへの変更、角度φnへの変更、シートポストの長さの変更、ハンドルホストの長さの変更、の中で、いずれか一つ、または、いずれかの2つ以上を組み合わせて制御するものである。
【0185】
ステップST607では、CPUは、停車または降車したかを判断する。
停車または降車したと判断した場合には処理はステップST608へ移る。停車または降車したと判断しない場合には処理はステップST601へ戻る。
停車は、速度計または車輪の回転計(いずれも図示せず)によって判断することができる。
また、電界通信を用いているので、受信機が電界を検出しなくなった場合には、送信機を身につけている操車者が降車したと判断することができる。
【0186】
ステップST608では、CPUは、傾斜モードを解除して、角度θn、角度ψn、角度φn、シートポストの長さ、ハンドルホストの長さを初期状態に戻し、処理は再びステップST601へ戻る。
【0187】
以上のように、実施形態の自転車の技術は、通常の自転車であっても、アシスト自転車であっても、電動自転車であっても実施が可能である。実施形態の自転車は、シートチューブ、サドル、または、ハンドルレバーのいずれか、あるいは、これらの2つ以上の部材の各々、と他の部材との相互の位置関係、または、各部材の寸法を、制御部によって制御されるアクチュエータによって変更して、自転車に乗車する者の身体特徴、操作性の好みに適合させることができる。また、走行する路面の状況が種々である場合においても、路面の状況に適応するように、上述の各部財の相互の位置関係、または、各部材の寸法を変化させて良好な操作性を得ることができる。
【符号の説明】
【0188】
10 ヘッドチューブ、 11 ハンドルポスト、 12 ハンドルレバー、 13 前ホーク、 14 前輪、 15 ハンドルスティ、 16 ハンドルレバー回動軸、 17 ハンドルスティ外筒回動軸、 18 ハンドルスティ内筒回動軸、 20a、 ペダル、 21 チェンスティカバー、 22 電池、 23 制御部、 24 シートポスト、 24b 右クランク、 25 サドル、 26 サドル回動軸、 27 サドルスティ、 28 サドルスティ外筒回動軸、 29 サドルスティ内筒回動軸、 30 後輪、 41 フレーム固定部材、 42 チェンスティ、 42a チェンスティ左部材、 42b チェンスティ右部材、 43 ダウンチューブ、 44 シートチューブ、 45 シートスティ、 46 クランク軸、 47 後輪軸受、 47a 左後輪軸受、 47b 右後輪軸受、 48 シートチューブ回動軸、 49 シートスティ内筒回動軸、 50 シートスティ外筒回動軸、 54 シートポスト長可変部材、 55 シートチューブ回動モータ、 56 円形歯車、 57 モータ固定板、 59 油圧シリンダー、 60 ギヤ付モータ、 61 ジャイロスコープ、 62 操作入力部・表示部、 63 ID検出部、 64、65、66 電力増幅部、 70 軸保持部材、 151 ハンドルスティ外筒、 151a、271a、451a 外筒孔、 151b、271b、451b 内筒移動モータ固定部、 151c、271c、441c、451c ネジ付回転軸、 151d、271d、441d、451d レゾルバ、 151e、271e、441e、451e ストッパ、 152 ハンドルスティ内筒、 152a、272a、452a、 内筒孔、 152b、241b、272b、452b 突出部、 152c、241c、272c、452c 溝付軸受、 201 送信機、 203 受信機、 241a 回転防止スリット、 271 サドルスティ外筒、 272 サドルスティ内筒、 441a シートポスト回転防止板、 441b シートポスト移動モータ固定部、 451 シートスティ外筒、 452 シートスティ内筒、 453a シートスティ左固定部、 453b シートスティ右固定部、 455a シートスティ、 455b ラック付シートスティ




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、
前記フレーム固定部に対して回動軸を中心として回動可能とされるシートチューブと、
前記シートチューブを回動させるシートチューブアクチュエータと、
前記シートチューブアクチュエータを制御する制御部と、
を備える自転車。
【請求項2】
前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、
前記フレーム固定部に連結されるシートチューブと、
前記シートチューブと接続されるシートポストと、
前記シートポストに連結される回動軸を中心として、回動可能とされるサドルと、
前記サドルを回動させて、前記シートポストに対する該サドルの腰かけ面のなす角度を可変とするサドルアクチュエータと、
前記サドルアクチュエータを制御する制御部と、
を備える自転車。
【請求項3】
前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、
前記ヘッドチューブに挿入されるハンドルポストと、
前記ハンドルポストの一方の先端に回動可能に連結され、前記前輪の進行方向を操縦するハンドルレバーと、
前記ハンドルレバーを回動させて、前記ハンドルポストに対する該ハンドルレバーのなす角度を可変とするハンドルレバーアクチュエータと、
前記ハンドルレバーアクチュエータを制御する制御部と、
を備える自転車。
【請求項4】
前記シートチューブと接続されるシートポストと、
前記シートポストに連結される回動軸を中心として、回動可能とされるサドルと、
前記サドルを回動させて、前記シートポストに対する該サドルの腰かけ面のなす角度を可変とするサドルアクチュエータと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記シートチューブアクチュエータと前記サドルアクチュエータとを制御する請求項1に記載の自転車。
【請求項5】
前記ヘッドチューブに挿入されるハンドルポストと、
前記ハンドルポストの一方の先端に回動可能に連結され、前記前輪の進行方向を操縦するハンドルレバーと、
前記ハンドルレバーを回動させて、前記ハンドルポストに対する該ハンドルレバーのなす角度を可変とするハンドルレバーアクチュエータと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記シートチューブアクチュエータと前記ハンドルレバーアクチュエータとを制御する請求項1に記載の自転車。
【請求項6】
前記シートチューブと接続されるシートポストと、
前記シートポストに連結される回動軸を中心として、回動可能とされるサドルと、
前記サドルを回動させて、前記シートポストに対する該サドルの腰かけ面のなす角度を可変とするサドルアクチュエータと、
前記ヘッドチューブに挿入されるハンドルポストと、
前記ハンドルポストの一方の先端に回動可能に連結され、前記前輪の進行方向を操縦するハンドルレバーと、
前記ハンドルレバーを回動させて、前記ハンドルポストに対する該ハンドルレバーのなす角度を可変とするハンドルレバーアクチュエータと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記シートチューブアクチュエータと前記ハンドルレバーアクチュエータと前記サドルアクチュエータとを制御する請求項1に記載の自転車。
【請求項7】
路面の傾斜角度を検出する角度検出手段を、さらに備え、
前記制御部は、
前記角度検出手段から検出する前記傾斜角度に基づき制御をする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の自転車。
【請求項8】
前記角度検出手段は、ジャイロスコープを有することを特徴とする請求項7に記載の自転車。
【請求項9】
操作入力部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記操作入力部から入力される情報に基づき制御をする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の自転車。
【請求項10】
前記操作入力部は、音声認識回路を有することを特徴とする請求項9に記載の自転車。
【請求項11】
電界通信によって個人情報を検出する個人情報検出部を、さらに備え、
前記制御部は、
前記個人情報検出部から入力される情報に基づき制御をする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の自転車。
【請求項12】
前輪を保持するためのヘッドチューブに固着されるダウンチューブおよび後輪を保持するためのチェンスティを有するフレーム固定部と、
前記フレーム固定部に連結されるシートチューブと、
前記シートチューブに挿入されるシートポストと、
前記シートポストの先端に配されたサドルと、
前記シートポストの前記シートチューブに挿入される部分の長さを可変とするシートポスト長可変アクチュエータと、
前記シートポスト長可変アクチュエータを制御する制御部と、
を備える自転車。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−148580(P2012−148580A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130485(P2009−130485)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】