説明

臭素の回収のために電気分解を用いる気状アルカンから液体炭化水素への臭素ベースの変換方法およびシステム

本発明は、気状アルカンから液体炭化水素への変換に関し、より詳細には、1つまたは複数の実施形態では、アルカンの臭素化およびその後の臭素化アルカンから炭化水素への変換を含む方法およびシステムであって臭素の回収が電気分解を含む方法およびシステムに関する。一実施形態では、ハロゲン化アルカンを含む流れを供給するステップと、ハロゲン化アルカンの少なくとも一部を含む合成反応物から、炭化水素および臭化水素を含む合成生成物を形成するステップと、臭素の少なくとも一部を回収するステップであって、回収が電気分解を含むステップとを含む方法を含む、様々な方法およびシステムが、本明細書に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、米国仮特許出願第61/061,475号(2008年6月13日出願)に基づき、そしてこの仮特許出願に対する優先権を主張する。この仮特許出願は、その全内容が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、気状アルカンから液体炭化水素への変換に関し、より詳細には、1つまたは複数の実施形態では、アルカンの臭素化およびその後の臭素化アルカンから炭化水素への変換を含む方法およびシステムであって臭素の回収が電気分解を含む方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
メタンおよびその他の軽質アルカンを主に含む天然ガスは、世界中で大量に発見されている。天然ガスが発見された地域の多くは、重要なガスパイプラインのインフラストラクチャまたは天然ガスに対する市場の需要がある人口集中領域から離れている。天然ガスの密度が低いので、その気状形態でのパイプラインによる輸送または容器内の圧縮ガスとしての輸送には、費用がかかる。したがって、天然ガスを気状形態で輸送し得る距離には、実際的なおよび経済的な限界がある。天然ガス(LNG)の低温液状化は、長距離にわたって天然ガスをより経済的に輸送するために、しばしば使用される。しかし、このLNGプロセスは費用がかかる可能性があり、LNGの輸入に備えたわずかな国々において限られた再ガス化設備しかない。
【0004】
天然ガス中に見出されたアルカンを、より容易に輸送され得る液体に変換し、したがって天然ガスから付加価値をもたらす、いくつかの技法を使用することができる。この変換に関するある技法は、アルカンを臭素化して臭素化アルカンを形成するステップ、および適切な触媒で臭素化アルカンを炭化水素に変化するステップを含むことができる、臭素ベースのプロセスである。このプロセスにおける臭素化および変換の両ステップからの望ましくない副生成物は、臭化水素である。臭素ベースのプロセスで生成された炭化水素を液体生成物として回収し得る前に、臭化水素を炭化水素から分離する必要があると考えられる。次いで臭素を臭化水素から回収し、プロセス内で再循環することができる。ある場合には、水性流で炭化水素流から臭化水素を洗い落とし、その後、溶解した臭化水素を中和して金属臭化物塩を形成するステップを含む、水性技法を使用することができる。次いで金属臭化物塩を酸化して、臭素を回収することができる。別の場合には、臭化水素と金属酸化物とを反応させて金属臭化物塩を形成し、次いでこの塩を場合によって酸化して臭素を回収するステップを含む、乾式技法を使用してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、気状アルカンから液体炭化水素への変換に関し、より詳細には、1つまたは複数の実施形態では、アルカンの臭素化およびその後の臭素化アルカンから炭化水素への変換を含む方法およびシステムであって臭素の回収が電気分解を含む方法およびシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、ハロゲン化アルカンを含む流れを供給するステップと、ハロゲン化アルカンの少なくとも一部を含む合成反応物から、炭化水素および臭化水素を含む合成生成物を形成するステップと、臭素の少なくとも一部を回収するステップであって、この回収が電気分解を含むステップとを含む方法を含む。
【0007】
別の実施形態は、ハロゲン化水素を含む流れを供給するステップと、気相電気分解を使用して、ハロゲン化水素の少なくとも一部を少なくとも分子状ハロゲンに変換するステップと、炭化水素を含む流れを供給するステップと、分子状ハロゲンの少なくとも一部を炭化水素の少なくとも一部と反応させることによって、ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化水素を含むハロゲン化生成物を形成するステップとを含む方法を含む。
【0008】
さらに別の実施形態は、ハロゲン化アルカンを含む流れを供給するステップと、ハロゲン化アルカンの少なくとも一部を含む合成反応物から、炭化水素およびハロゲン化水素を含む合成生成物を形成するステップと、合成生成物からハロゲン化水素の少なくとも一部を分離するステップと、液相電気分解を使用して、分離したハロゲン化水素の少なくとも一部を少なくとも分子状のハロゲンに変換するステップとを含む方法を含む。
【0009】
本発明の特徴および利点は、当業者に容易に明らかにされよう。数多くの変更を当業者により行うことができるが、そのような変更は本発明の精神の範囲内である。
【0010】
これらの図面は、本発明の実施形態のいくつかの特定の態様を例示するものであり、本発明を限定しまたは定義するのに使用されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による、臭素化を含みかつ臭素の回収に電気分解を使用する液体炭化水素を生成するためのプロセスの、例示のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による、臭素化を含みかつ臭素の回収に電気分解を使用する液体炭化水素を生成するための別のプロセスの、例示のブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、臭素の回収に使用することができる例示の電解セルを示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による、臭素の回収に使用することができる別の例示の電解セルを示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態による、臭素の回収に使用することができるさらに別の例示の電解セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、気状アルカンから液体炭化水素への変換に関し、より詳細には、1つまたは複数の実施形態では、アルカンの臭素化およびその後の臭素化アルカンから炭化水素への変換を含む方法およびシステムであって臭素の回収が電気分解を含む方法およびシステムに関する。
【0013】
本発明の方法およびシステムには、多くの潜在的な利点があると考えられ、そのごく一部が本明細書に示唆されている。多くの潜在的な利点の1つとは、液体炭化水素を生成するために、臭素ベースのプロセスで電気分解を使用して、臭素を回収し再循環できることと考えられる。前述のように、臭化水素は一般に、液体炭化水素を生成するための臭素ベースのプロセスにおける望ましくない副生成物である。本発明の実施形態によれば、生成された臭化水素を電気分解して水素および臭素を形成するために、電気エネルギーを使用してもよい。したがって臭素は、このプロセス内で回収され再循環され得る。
【0014】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による、臭素回収のための液相電気分解を含む、液体炭化水素を生成するためのプロセスの、例示のブロック図が示されている。図示される実施形態において、このプロセスは、臭素化反応器2、合成反応器4、臭化水素分離器ユニット6、生成物回収ユニット8、および液相電気分解ユニット10を含む。以下に、より詳細に論じられるように、ある特定の実施形態では、液相電気分解ユニット10を使用して、このプロセスで生成された臭化水素を電気分解し、それによって臭素を回収することができる。このように、臭素はプロセス内で回収し再循環することができる。さらに、図1の実施形態は、個別の生成物として水素を生成してもよい。
【0015】
図示されるように、アルカンを含む気状供給流12は、臭素流14と合わせることができ、得られた混合物を臭素化反応器2に導入することができる。図1は、臭素化反応器2よりも前で、気状供給流12と臭素流14とを合わせることを例示しているが、当業者なら、本開示を受けて、気状供給流12および臭素流14を臭素化反応器2内で合わせてもよいことが理解されよう。気状供給流12は、一般にアルカンを含み、例えば約1atmから約100atmの範囲内、あるいは約1atmから約30atmの範囲内の圧力にあってもよい。気状供給流12中に存在するアルカンは、例えば、低分子量アルカンを含んでいてもよい。本明細書で使用される「低分子量アルカン」という用語は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、またはこれらの混合物を指す。例として、気状供給流中に存在する低分子量アルカンは、メタンであってもよい。また、本発明の実施形態で使用される気状供給流12は、天然に生ずるものであっても合成により生成されるものであっても、低分子量アルカンを含有するガスの任意の供給源にすることができる。本発明のプロセスの実施形態で使用してもよい適切な気状供給材料の例には、天然ガス、炭層メタン、再ガス化液化天然ガス、ガス水和物、クラスレート、もしくはこれら両方から得られたガス、有機物質もしくはバイオマスの嫌気性分解から得られたガス、合成により生成された天然ガスもしくはアルカン、またはこれらの混合物が含まれるが、これらに限定するものではない。ある特定の実施形態では、気状供給流12は、供給ガスと再循環ガス流とを含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、気状供給流12は、硫黄化合物および二酸化炭素が除去されるよう処理してもよい。いずれにしても、ある特定の実施形態では、少量の二酸化炭素、例えば約2モル%未満の二酸化炭素を、気状供給流12中に存在させてもよい。
【0016】
臭素流14は、一般に臭素を含み、ある圧力に、例えば約1atmから約100atmの範囲、あるいは約1atmから約30atmの範囲にあってもよい。ある特定の実施形態では、臭素は、水蒸気を実質的に含まないという点で乾燥していてもよい。ある特定の実施形態では、臭素流14中に存在する臭素は、気体状態、液体状態、またはこれらの混合物であってもよい。図示されるように、臭素流14は、このプロセス内で回収され再循環される、液相電気分解ユニット10から得られる臭素を含有する。図1には図示されていないが、追加の臭素を補給流の形態でこのプロセスに導入してもよい。さらに、図示されていないが、ある特定の実施形態では、気状供給流12と臭素流14との混合物を熱交換器に通して臭素を蒸発させ、その後、臭素化反応器2内に導入してもよい。
【0017】
前述のように、気状供給流12および臭素流14を合わせかつ臭素化反応器2内に導入してもよい。気状供給流12中のアルカンと臭素流14中の臭素とのモル比は、例えば、2.5:1を超過していてもよい。図示されていないが、ある特定の実施形態では、臭素化反応器2は、アルカンおよび臭素の混合物を反応開始温度に、例えば約250℃から約400℃の範囲内に加熱するために、入口予熱器ゾーンを有していてもよい。
【0018】
臭素化反応器2では、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成してもよい。例としてメタンは、臭素化反応器2内で臭素と反応させて、臭素化メタンおよび臭化水素を形成してもよい。メタンを臭素と反応させる場合、一臭素化メタンの形成は、以下の一般的な反応により生ずる。
CH+Br→CHBr+HBr (1)
この反応は一般に、一臭素化メタンに対する非常に高い選択性によって生じる。例えば、約4:1から約9:1の範囲の過剰なメタンで動作する、メタンの非触媒的臭素化の場合、反応選択性は一般に、モルベースで、一臭素化メタンが約70%から約80%の範囲内にあり、二臭素化メタンが約20%から約30%の範囲内にあってもよい。一臭素化メタンに関して選択性を改善するために、臭素化反応を、より大幅に過剰なメタンで実行してもよい。一般に、ごく少量の三臭素化メタンおよび四臭素化メタンも臭素化反応で形成されるはずであると考えられる。エタン、プロパン、およびブタンなどの高級アルカンも容易に臭素化でき、その結果、臭素化エタン、臭素化プロパン、および臭素化ブタンなどの一および多臭素化アルカンが得られる。
【0019】
ある実施形態では、臭素化反応器2における臭素化反応は、例えば約250℃から約600℃の範囲内温度および約1atmから約100atmの範囲内の圧力で、あるいは約1atmから約30atmの範囲の圧力で、発熱状態で生じる。この温度範囲の上限は、臭素化反応の発熱性により供給混合物を加熱することができる反応開始温度範囲の上限よりも高くてよい。当業者に理解されるように、本開示を受けて、臭素化反応器2内の反応は、均質気相反応または不均質(触媒)反応であってもよい。臭素化反応器10で利用することができる適切な触媒の例には、白金、パラジウム、または、FeOBrやFeOClなどの担持型非化学量論的金属オキシハロゲン化物、または、TaOF、NbOF、ZrOF、SbOFなどの担持型化学量論的金属オキシハロゲン化物であって、Olahら、J.Am.Chem.Soc.1985年、107巻、7097〜7105頁に記載されているものが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0020】
上述のように、臭素化反応器2内に供給された臭素は、本発明のある特定の実施形態において、乾燥していてもよい。臭素化反応器2での臭素化反応から実質的に全ての水蒸気を排除することによって、望ましくない二酸化炭素の形成が実質的に排除されるべきであり、それによって、臭素化アルカンに対するアルカン臭素化の選択性が増大し、アルカンからの二酸化炭素の形成で発生する大量の廃熱が潜在的に排除される。さらに、実質的に全ての水蒸気の排除によって、本発明のある特定の実施形態で使用され得る下流触媒の熱水分解が、最小限に抑えられるはずである。
【0021】
図1に示されるように、臭素化流16は、臭素化反応器2から引き出されて合成反応器4内に導入されてもよい。一般に、臭素化反応器2から引き出された臭素化流16は、臭素化アルカンおよび臭化水素を含む。臭素化流16中に存在する臭素化アルカンは、一および多臭素化アルカンを含んでいてもよい。図示されていないが、臭素化流16の少なくとも一部は、臭素置換が少ない臭素化アルカンが形成されるよう処理されていてもよい。例えば、臭素化流16の少なくとも一部は、二臭素化アルカンから一臭素化アルカンに変換されるよう処理してもよい。この処理の例には、二臭素化アルカンと低分子量アルカン(メタン、エタン、プロパン、またはブタンなど)との反応、または二臭素化アルカンと水素との反応が挙げられる。これらの反応は、例えば、金属臭化物または金属オキシハロゲン化物触媒などの触媒の存在下で、引き起こしてもよい。図示されていないが、臭素化流16は、合成反応器4に導入する前に、約150℃から約450℃の範囲の温度にまで熱交換器内で冷却してもよい。
【0022】
合成反応器4では、臭素化アルカンを、触媒存在下で発熱反応させて、生成物である炭化水素および追加の臭化水素を形成してもよい。反応は、例えば、約150℃から約500℃の範囲の温度、および約1atmから100atmの範囲の圧力、あるいは約1atmから約30atmの範囲の圧力で引き起こしてもよい。生成物である炭化水素は一般に、例えばC3、C4、およびC5+ガソリン範囲、および重質炭化水素、例えばアルカンおよび芳香族など、ならびにエチレンやプロピレンなどのオレフィンを含んでいてもよい。臭素化およびその後の合成反応を含む、生成物である炭化水素を生成するための例示のプロセスは、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,244,867号、米国特許第7,348,464号、および米国特許公開第2006/0100469号に、より詳細に記載されている。
【0023】
触媒は、臭素化アルカンから高分子量炭化水素への変換を触媒するための様々な適切な材料の、いずれかであってよい。ある実施形態では、合成反応器4は、触媒の固定床を含んでいてもよい。合成触媒の流動床は、ある状況で、特により大きな適用例で使用してもよく、コークスの一定の除去や生成物である組成物に対する安定した選択性など、ある特定の利点を有していてもよい。適切な触媒の例には、酸性イオン交換物質である一般的な官能基を有しかつ合成結晶質アルミノシリケート酸化物フレームワークも含有する、かなり広範な材料が含まれる。ある実施形態では、結晶質アルミノシリケート酸化物フレームワーク中のアルミニウムの一部は、マグネシウム、ホウ素、ガリウム、および/またはチタンで置き換わってもよい。ある実施形態では、結晶質アルミノシリケート酸化物フレームワーク中のケイ素の一部は、リンで任意選択で置き換わってもよい。結晶質アルミノシリケート触媒は一般に、結晶質アルミノシリケート酸化物フレームワーク構造内に有意な陰イオン電荷を有していてもよく、この電荷は例えば、H、Li、Na、K、もしくはCsの群またはMg、Ca、Sr、もしくはBaの群から選択された元素の陽イオンとのバランスをとることができるものである。ゼオライト系触媒はナトリウム形態で一般に得られるが、プロトンまたは水素形態(水酸化アンモニウムとのイオン交換およびその後の焼成を介して)が好ましく、または混合型のプロトン/ナトリウム形態を使用してもよい。ゼオライトは、Li、K、もしくはCsなどのその他のアルカリ金属陽イオン、Mg、Ca、Sr、もしくはBaなどのアルカリ土類金属陽イオン、またはNi、Cu、Fe、Mn、V、およびWなどの遷移金属陽イオン、またはLaもしくはCeなどの希土類金属陽イオンとのイオン交換によって、修飾させてもよい。そのような後続のイオン交換は、荷電平衡対イオンの代わりに用いてもよいが、さらに酸化物フレームワーク内のイオンの代わりに部分的に用いてもよく、その結果、酸化物フレームワークの結晶質構成および構造の修飾が得られる。結晶質アルミノシリケートまたは置換された結晶質アルミノシリケートは、ミクロ孔またはメソ孔結晶質アルミノシリケートを含んでいてもよいが、ある実施形態では、合成ミクロ孔結晶質ゼオライトを含んでいてもよく、例えば、ZSM−5などのMFI構造のものである。さらに、結晶質アルミノシリケートまたは置換された結晶質アルミノシリケートは、ある実施形態において、その後、Mg、Ca、Sr、またはBa、La、またはCe塩の水溶液に含浸させてもよい。ある実施形態では、これらの塩は、MgBrやCeBrなどの臭化物塩などのハロゲン化物塩であってもよい。任意選択で、結晶質アルミノシリケートまたは置換された結晶質アルミノシリケートは、約0.1から約1重量%の間のPt、約0.1から5重量%の間のPd、または約0.1から約5重量%の間のNiを、金属状態で含有していてもよい。そのような材料は、主に最初は結晶質であるが、いくつかの結晶質触媒は、初期のイオン交換もしくは含浸によって、または反応条件でもしくは再生中の動作によって、結晶化度のいくらかの損失を受ける可能性があり、したがってかなりの非晶質特性をも含有する可能性があり、さらになお有意な、場合によっては改善された活性を保持する可能性もあることに、留意すべきである。
【0024】
合成反応器4で使用される特定の触媒は、例えば、所望の特定の生成物である炭化水素に依存することになる。例えば、主にC3、C4、およびC5+ガソリン範囲の芳香族化合物および重質炭化水素画分を有する、生成物である炭化水素が望まれる場合、ZSM−5ゼオライト触媒を使用してもよい。オレフィンおよびC+生成物の混合物を含む、生成物である炭化水素を生成することが望まれる場合、X型もしくはY型ゼオライト触媒またはSAPOゼオライト触媒を使用してもよい。適切なゼオライトの例には、10−XなどのX型、またはY型ゼオライトが含まれるが、異なる孔径および酸性度を有するその他のゼオライトを、本発明の実施形態で使用してもよい。
【0025】
合成反応器4が動作する温度は、所望の特定の生成物である炭化水素に対する反応の選択性を決定する際の、1つのパラメータである。例えば、X型もしくはY型ゼオライト、またはSAPOゼオライト触媒を使用し、かつオレフィンを生成することが望まれる場合、合成反応器4は、約250℃から約500℃の範囲内の温度で動作することができる。合成反応器4で約450℃よりも高い温度であると、望ましくないメタンなどの軽質炭化水素の収率が増大し、かつコークスの堆積も生じる可能性があるのに対し、より低い温度では、一般に、エチレン、プロピレン、ブチレン、およびより重い分子量の炭化水素の収率が増大することになる。例えば、10Xゼオライト触媒上でのアルキル臭化物反応の場合、環化反応も、C7+画分がかなりの置換芳香族を含有するように生じ得ることが考えられる。例えば、約400℃に近い高温では、臭素化メタン変換が一般に、約90%以上に向かって増大するはずであり;しかしC+炭化水素に対する選択性は、一般に、オレフィンなどの軽質生成物に対する選択性が高くなると共に低下するはずであると考えられる。例えば、約550℃を超える温度では、臭素化メタンからメタンおよび炭素質コークスへの高い変換率が生じると考えられる。約300℃から約450℃の間の温度範囲では、反応の副生成物として、より少量のコークスが、動作中に時間と共に触媒上におそらくは蓄積されることになり、反応条件および供給ガスの組成に応じて、数百時間までの時間範囲にわたって触媒活性の低下を引き起こす。逆に言えば、この範囲の下端の温度(例えば、約300℃より低い)は、触媒からのより重質な生成物の脱着速度が低いことにより、コークス化に寄与する可能性もある。したがって、合成反応器4内の約250℃から約500℃の範囲内、好ましくは約350℃から約450℃の範囲の動作温度は、一般に、パス当たりのより高い変換率に対し、所望のオレフィンおよびC+炭化水素の高い選択性と炭素形成に起因する遅い失活速度のバランスをとるはずであり、それが、触媒の量、再循環速度、および必要とされる設備サイズを最小限に抑えるはずである。
【0026】
例えば、望ましい生成物である炭化水素が、主にC3、C4、およびC5+ガソリン範囲およびより重質な炭化水素画分である場合、合成反応器4は、約150℃から約450℃の範囲内の温度で動作してもよい。合成反応器4内の約300℃よりも高い温度は、軽質炭化水素の収率の増大をもたらす可能性があり、それに対してより低い温度は一般に、より重い分子量炭化水素の収率の増大をもたらす可能性がある。例として、約150℃程度の低い温度でZSM−5ゼオライト触媒上で臭素化メタンが反応する温度範囲の下端では、約20%程度のかなりの臭素化メタン変換が生じる可能性があり、このときC+炭化水素に対する選択性は高い。例えば、ZSM−5ゼオライト触媒上での臭素化メタン反応の場合、C7+画分が置換芳香族を主に含むことができるように、環化反応も起こる可能性がある。例えば、約300℃に近い高温では、臭素化メタン変換率は、一般に約90%以上に向かって増大するはずであり;しかし、C+炭化水素に対する選択性は一般に低下する可能性があり、より軽質の生成物、特に望ましくないメタンに対する選択性は、増大する可能性がある。驚くべきことに、ベンゼン、エタン、またはC〜Cオレフィン成分は、ZSM−5触媒が約390℃の温度で使用される場合など、ある実施形態によれば、反応流出物中に典型的には存在せず、またはごく少量でしか存在しない。しかし、例えば約450℃に近い温度では、臭素化メタンからメタンおよび炭素質コークスへのほぼ完全な変換を引き起こすことができる。約350℃から約420℃の間の動作温度範囲では、反応の副生成物として、少量の炭素が動作中に時間と共に触媒上に蓄積される可能性があり、反応条件および供給ガスの組成に応じて、最長数日間の時間範囲にわたって触媒活性の低下が潜在的に引き起こされる。メタンの形成に関連したより高い反応温度(例えば、約420℃よりも高い)は、臭素化アルカンの熱分解と、炭素またはコークスの形成に好都合であり、したがって、触媒の失活速度の増大をもたらすと考えられる。逆に言えば、この範囲の下端の温度(例えば、約350℃よりも低い)は、触媒からのより重質な生成物の脱着速度が低いことにより、コークス化に寄与する可能性もある。したがって、合成反応器4における約150℃から約450℃の間の範囲、好ましくは約350℃から約420℃の範囲、最も好ましくは約370℃から約400℃の範囲内の動作温度は、一般に、パス当たりのより高い変換率に対し、所望のC+炭化水素の高い選択性および炭素形成によるより遅い失活速度のバランスをとるはずであり、それによって、触媒の量、再循環速度、および必要とされる設備サイズが最小限に抑えられる。
【0027】
触媒は、合成反応器4を通常のプロセス流から切り離し、例えば約1atmから約5atmバールの範囲の圧力でかつ約400℃から約650℃の範囲の高温で、不活性ガスでパージして、可能な限り触媒に吸着された未反応の材料を除去することにより、その場で周期的に再生されてもよい。次いで堆積した重質生成物、コークス、またはこれらの両方を、例えば約1atmから約5atmの範囲の圧力でかつ約400℃から約650℃の範囲の高温で、空気または不活性ガスで希釈された酸素を合成反応器4に添加することによって、CO、CO、およびHOに酸化してもよい。酸化生成物および残留空気または不活性ガスは、再生期間中に合成反応器4から排出してもよい。しかし、再生オフガスは少量の臭素含有種ならびに過剰な未反応の酸素を含有する可能性があるので、再生ガス流出物は、プロセスの酸化部分に向けてもよく、その場合、臭素含有種は、元素臭素に変換され、回収されてプロセス内で再使用することができる。
【0028】
図1に示されるように、合成出口流18は、合成反応器4から引き出すことができる。一般に、合成出口流18は、生成物である炭化水素、および合成反応器4で生成された追加の臭化水素を含んでいてもよい。合成出口流18はさらに、臭素化反応器2で発生した臭化水素を含んでいてもよい。例えば、合成出口流18は、C3、C4、およびC5+ガソリン範囲、およびより重質な炭化水素、例えばアルカンおよび芳香族など、ならびにエチレンやプロピレンなどのオレフィンを含めたものを含んでいてもよい。その他の例として、合成出口流18は、C3、C4、およびC5+ガソリン範囲、およびより重質な炭化水素画分、ならびに追加の臭化水素を含んでいてもよい。ある実施形態では、合成出口流18中に存在する炭化水素のC7+画分は、主に置換芳香族を含んでいてもよい。
【0029】
上述のように、図1のプロセスはさらに、臭化水素分離器ユニット6を含む。図示される実施形態では、合成出口流18が、臭化水素分離器ユニット6に導入され得る。臭化水素分離器ユニット6では、合成出口流18中に存在する臭化水素の少なくとも一部を、生成物である炭化水素から分離することができる。ある実施形態では、約98%よりも高くほぼ100%までの臭化水素を、生成物である炭化水素から分離することができる。臭化水素分離器ユニット6で使用される適切なプロセスの例は、ガスであってもよい合成出口流18と液体とを接触させることを含むことができる。合成出口流18中に存在する臭化水素は、液体中に溶解していてもよく、混合物は、電気分解供給流20を介して臭化水素分離器ユニット6から除去することができる。以下により詳細に記載するように、生成物である炭化水素を含んでいてもよい炭化水素流22は、臭化水素分離器ユニット6から除去することができる。
【0030】
生成物である炭化水素から臭化水素を洗い落とすのに使用してもよい適切な液体の一例には、水が含まれる。これらの実施形態において、臭化水素は水中に溶解し、少なくとも部分的にイオン化し、酸性水溶液を形成する。生成物である炭化水素から臭化水素を洗い落とすのに使用してもよい適切な液体の別の例には、金属水酸化物種、金属オキシ臭化物種、金属酸化物種、またはこれらの混合物を含有する、水性の部分酸化した金属臭化物塩溶液が含まれる。部分酸化した金属臭化物塩溶液に溶解した臭化水素は、臭化水素分離器ユニット6から除去され得る電気分解供給流20中に金属臭化物塩を形成するように、中和されるべきである。臭化物塩の適切な金属の例には、それほど高価ではなくかつより低い温度、例えば約120℃から約200℃の範囲の温度で酸化され得るので、Fe(III)、Cu(II)、およびZn(II)が含まれる。しかし、酸化可能な臭化物塩を形成するその他の金属を使用してもよい。ある実施形態では、Ca(II)やMg(II)など、臭化物塩および水酸化物も形成し得るアルカリ土類金属を、使用してもよい。
【0031】
上述のように、生成物である炭化水素を含む炭化水素流22は、臭化水素分離器ユニット6から除去してもよい。一般に、炭化水素流22は、過剰な未反応のアルカンと、臭化水素が分離された生成物である炭化水素を含む。図1に示されるように、炭化水素流22を生成物回収ユニット8に導入して、例えばC5+炭化水素を液体生成物流24として回収してもよい。液体生成物流24は、例えば、アルカンおよび置換芳香族を含めたC5+炭化水素を含んでいてもよい。ある実施形態では、液体生成物流24は、エチレンやプロピレンなどのオレフィンを含んでいてもよい。ある実施形態では、液体生成物流24は、液化石油ガスおよびガソリン燃料範囲の様々な炭化水素を含んでいてもよく、その中にはかなりの芳香族含量が含まれ、ガソリン燃料範囲内の炭化水素のオクタン価が著しく増大する。図示されていないが、ある実施形態では、生成物回収ユニット8は、脱水および液体回収を含んでいてもよい。固体床乾燥剤吸着およびその後の冷蔵凝縮、低温膨張、または吸収油もしくはその他の溶媒の循環など、脱水および液体回収の任意の従来の方法は、天然ガスまたは精製ガス流の処理および生成物である炭化水素の回収に使用されるように、本発明の実施形態で使用することができる。
【0032】
生成物回収ユニット8からの残留蒸気流出物の少なくとも一部は、アルカン再循環流26として回収することができる。アルカン再循環流26は、例えば、メタンおよびおそらくはその他の未反応の低分子量アルカンを含んでいてもよい。図示されるように、アルカン再循環流26は、再循環され、気状供給流12と合わせることができる。ある実施形態では、再循環されたアルカン再循環流26は、供給ガスモル体積の少なくとも1.5倍にすることができる。図1に示されていないが、ある実施形態では、生成物回収ユニット8からの残留蒸気流出物の別の一部を、このプロセスの燃料として使用してもよい。さらに、やはり図1に示されていないが、ある実施形態では、生成物回収ユニット8からの残留蒸気流出物の別の一部を再循環し、合成反応器4に導入される臭素化アルカン濃度を希釈するのに使用してもよい。臭素化アルカン濃度を希釈するのに使用する場合、残留蒸気流出物は一般に、変換率対選択性を最大にするために、かつ炭素質コークスの堆積による触媒失活速度を最小限に抑えるために、合成反応器4が選択された動作温度で、例えば約150℃から約500℃の範囲で維持されるよう、反応熱を吸収する速度で再循環すべきである。このように、再循環蒸気流出物によってもたらされた希釈は、合成反応器4内の温度の緩和に加え、臭素化反応器2における臭素化の選択性を制御できるようにすべきである。
【0033】
上述のように、臭化水素は、臭化水素分離器ユニット6内で、生成物である炭化水素から分離することができる。図1に示されるように、電気分解供給流20は、臭化水素分離器ユニット6から引き出し、液相電気分解ユニット10に供給することができる。ある実施形態では、電気分解供給流20は、水と、その中に溶解した分離済みの臭化水素を含有していてもよい。ある実施形態では、電気分解供給流20は、水と、その中に溶解した金属臭化物塩の形態をとる中和済みの臭化水素を含有していてもよい。金属臭化物塩は、例えば、臭化水素が、生成物である炭化水素から臭化水素を洗い落とすのに使用される液体中で中和される実施形態において、電気分解供給流20中に存在していてもよい。
【0034】
液相電気分解ユニット10では、電気分解供給流20中に存在する臭化水素または金属臭化物塩から臭素を回収することができる。臭化水素電気分解の実施形態では、臭化水素の少なくとも一部を電気分解して元素臭素および水素を形成するために、また金属臭化物塩電気分解の実施形態では、金属臭化物の少なくとも一部を電気分解して元素臭素および金属、還元状態の金属イオン、または金属水酸化物を形成するために、電気エネルギーを使用してもよい。溶液中の還元性金属イオンの存在には、必要とされるカソード過電圧を低下させ、したがって酸性水溶液の電気分解に比べて電力必要量が最小限に抑えられるという利点があると考えられる。塩酸水溶液(HCl)の電気分解では、Uhdeプロセスを使用してもよく、おそらくは臭化水素酸水溶液、例えば電気分解供給流20に溶解した臭化水素の電気分解におそらくは適応させることができる。
【0035】
図1には示されていないが、1つまたは複数の電解セルが液相電気分解ユニット10に含めることができる。当業者なら、本開示を受けて、本発明のある特定の実施形態により、電解セルを並行してまたは順次動作できることが理解されよう。臭化水素の電気分解の実施形態では、電気エネルギーを、水およびその中に溶解した臭化水素を含む電気分解供給流20内に通すことができ、このとき臭素は電解セルのアノードに生成され、水素はカソードに生成される。金属臭化物塩の電気分解では、電気エネルギーを、水およびその中に溶解した金属臭化物塩を含む電気分解供給流20内に通すことができ、その場合、臭素は電解セルのアノードに生成され、金属、還元状態の金属イオン、または金属水酸化物はカソードに生成される。図示されていないが、水素および臭素を分離するのに必要なエネルギーは、電源によって供給することができる。
【0036】
例として、臭化水素の電気分解は、電解セルのアノードおよびカソード電極でそれぞれ生ずる下記の一般的な半反応に従って、金属イオンが実質的に存在しない臭化水素酸水溶液中で引き起こすことができる:
2Br(−)→Br+2e (2)
2H(+)+2e→H (3)
別の例として、金属臭化物塩(例えば、Fe(III)Br)の電気分解は、電解セルのアノードおよびカソード電極でそれぞれ生じる下記の一般的な半反応に従って、引き起こすことができる:
2Br(−)→Br+2e (4)
2Fe(+3)+2e→2Fe(+2) (5)
および2H2O+2e−=H+2OH(−)
但し、Fe(+3)およびFe(+2)は、さらに、OH(−)と反応して水酸化鉄を形成してもよい。
【0037】
したがって、臭素は、本発明の実施形態により、液相電気分解ユニット10で発生させることができる。臭素を含む臭素流14は、液相電気分解ユニット10から除去し、臭素化反応器2に供給することができる。したがって、臭化物は、本発明の実施形態により、回収しかつこのプロセス内で再循環させることができる。さらに、臭化水素、金属臭化物物、またはこれらの両方が液相電気分解ユニットに供給されるか否かに応じて、還元金属イオン、ヒドロキシルイオン、または金属水酸化物、水素、またはこれらの2種以上が、液相電気分解ユニット10内で発生すべきである。したがって、水素/水素、還元金属イオン、ヒドロキシルイオン、または金属水酸化物、またはこれらの2種以上を含む還元金属イオン流28は、液相電気分解ユニット10から除去することもできる。その他の使用の中で、水素は、プロセス内で再循環することができ、または石油精製や化学合成などの追加のプロセスで使用することができる。さらに、臭化水素(または金属臭化物塩)が電気分解される水を含む水流30を、液相電気分解ユニット10から除去してもよい。
【0038】
一実施形態では、液相電気分解ユニット10内の電解セルの1つまたは複数は、空気がカソード上を通過する空気減極モードで動作することができる。空気減極モードの実施形態では、臭化水素電気分解が、水をカソードで生成すべきであり、金属臭化物塩電気分解は、金属水酸化物または金属酸化物をカソードで生成すべきである。例として、空気減極モードの実施形態における臭化水素の電気分解は、下記の反応にしたがって、水をカソードで生成することができかつ電極を部分的に減極することができる。
【0039】
【化1】

空気減極の実施形態は、水素に関する局所的な必要性がない場合に特に役立てることができる。ある実施形態では、2個以上の電解セルを並列で使用し、それらの1つまたは複数を空気減極カソードで動作させ、水素ではなく水を生成することができる。
【0040】
その他の例として、空気減極モードの実施形態における金属臭化物塩(例えば、Fe(III)Br)の電気分解は、以下の全体反応に従って、遊離水酸化物を生成することができかつ電極を部分的に減極することができる:
Fe(+3a)+3/2O+3H(+)+6e−=Fe(OH) (7)
図2を参照すると、本発明の一実施形態による、臭素回収のための気相電気分解を含む、生成物である炭化水素を生成するためのプロセスの、例示のブロック図が図示されている。図示される実施形態では、このプロセスは、臭素化反応器2、合成反応器4、生成物回収ユニット8、および気相電気分解ユニット32を含む。以下により詳細に論じられるように、ある実施形態では、気相電気分解ユニット32を使用して、このプロセスで生成された臭化水素を電気分解し、それによって臭素を回収することができる。したがって、臭素を回収し、このプロセス内で再循環することができる。
【0041】
図2に示されるように、アルカンを含む気状供給流12を再循環流34と合わせることができ、得られた混合物を、臭素化反応器2内に導入することができる。以下により詳細に論じられるように、再循環流34は、未反応の低分子量アルカンおよび気相電気分解ユニット32から回収された臭素を含んでいてもよい。図示されていないが、追加の臭素は、補給流の形でプロセス内に導入してもよい。臭素化反応器2では、アルカンを臭素と反応させて、臭素化アルカンおよび臭化水素を形成することができる。臭素化流16を臭素化反応器2から引き出し、合成反応器4に供給することができる。一般に、臭素化反応器2から引き出された臭素化流16は、ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化水素を含む。合成反応器4では、臭素化アルカンを、触媒の存在下で発熱反応させて、生成物である炭化水素および追加の臭化水素を形成してもよい。合成出口流18は、合成反応器4から引き出すことができる。一般に、合成出口流18は、合成反応器4で生成された生成物である炭化水素および追加の臭化水素を含んでいてもよい。合成出口流18はさらに、臭素化反応器2で生成された臭化水素を含んでいてもよい。
【0042】
図示される実施形態では、合成出口流18を、生成物回収ユニット8に導入して、例えば生成物である炭化水素を液体生成物流24として回収することができる。液体生成物流24は、例えば、アルカンおよび置換芳香族を含めたC5+炭化水素を含んでいてもよい。ある実施形態では、液体生成物流32は、エチレンやプロピレンなどのオレフィンを含んでいてもよい。ある実施形態では、液体生成物流24は、液化石油ガスおよびガソリン燃料範囲の様々な炭化水素を含んでいてもよく、かなりの芳香族含量が含まれる可能性があり、ガソリン燃料範囲の炭化水素のオクタン価は著しく高いものである。
【0043】
生成物回収ユニット8からの蒸気流出物流22は、気相電気分解ユニット32に供給することができる。ある実施形態では、蒸気流出物流22は、メタンおよびおそらくはその他の未反応の低分子量アルカンを含んでいてもよい。さらに、図2に示される実施形態では、蒸気流出物流22はさらに、生成物回収ユニット8に導入された合成出口流30中に存在する臭化水素を含んでいてもよい。この臭化水素は、臭素化反応器2および合成反応器4で生成されたものであってもよい。
【0044】
気相電気分解ユニット32では、臭素を、蒸気流出物流22中に存在する臭化水素から回収することができる。電気エネルギーを使用して、臭化水素の少なくとも一部を電気分解し、それによって元素臭素と水素を形成することができる。臭化水素の電気分解は、一般に、式(2)および(3)で先に例示した半反応に従って生じ得る。臭化水素の気相電気分解に関する例示のプロセスは、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,411,641号に記載されている。図2には示されていないが、1つまたは複数の電解セルは、気相電気分解ユニット32に含まれていてもよい。ある実施形態では、気相電気分解ユニット32内の電解セルの1つまたは複数は、空気がカソード上を通過する空気減極モードで動作することができる。空気減極モードの実施形態では、臭化水素の電気分解が、上記の式(6)により示された半反応に従って、カソードで水を生成すべきである。空気減極された実施形態は、水素に関して局所的な必要性がない場合に特に役立てることができる。ある実施形態では、2個以上の電解セルを並列で使用し、それらの1つまたは複数を空気減極カソードで動作させ、水素ではなく水を生成することができる。
【0045】
したがって、臭素は、本発明の実施形態によれば、気相電気分解ユニット32で回収することができる。再循環流34は、気相電気分解ユニット32から除去することができる。再循環流34は、例えば、回収された臭素、ならびにメタン、および場合によっては生成物回収ユニット8で回収されなかったその他の未反応の低分子量アルカンを含んでいてもよい。図示されるように、再循環流34を再循環し、気状供給流12と合わせることができる。ある実施形態では、再循環された再循環流34が、供給ガスモル体積の少なくとも1.5倍の量で、アルカンを含有していてもよい。図1には示されていないが、ある実施形態では、再循環流34の別の部分を、プロセス用燃料として使用してもよい。さらに、やはり図1には示されていないが、ある実施形態では、再循環流34の別の部分を再循環し、合成反応器4内に導入された臭素化アルカンの濃度を希釈するのに使用してもよい。臭素化アルカン濃度を希釈するのに使用する場合、再循環流34の一部は、変換率対選択性を最大限にするためにかつ炭素質コークスの堆積に起因した触媒失活速度を最小限に抑えるために、合成反応器4が選択された動作温度で、例えば約150℃から約500℃の範囲で維持されるような反応熱の吸収速度で一般に再循環されるべきである。このように、再循環した蒸気流出物によってもたらされた希釈により、合成反応器4内の温度の緩和に加えて臭素化反応器2内での臭素化の選択性を制御可能にすべきである。
【0046】
上述のように、水素も気相電気分解ユニット32内で生成されるべきである。したがって、水素を含む水素流36も、気相電気分解ユニット32から除去することができる。その他の使用の中で、水素は、プロセス内で再循環させてもよく、または石油精製や化学合成などの追加のプロセスで使用してもよい。ある実施形態では、気相電気分解ユニット32の1つまたは複数のセルが空気減極モードで動作する場合、生成された水も気相電気分解ユニット32から除去することができる。
【0047】
図1および2に関して既に述べたように、液相電気分解ユニット10および気相電気分解ユニット32は、本発明の実施形態により、臭化水素、金属臭化物塩、またはこれらの組合せから臭素を回収するのに使用することができる。当業者なら、本開示を受けて、様々な異なる電気化学セルおよびその配置構成を、臭化水素の気相または液相電気分解のために本発明の実施形態により使用できることが理解されよう。図3〜5は、本発明の実施形態により使用することができる電解セルを示す。
【0048】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による、臭素の回収に使用することができる例示の電解セルが示されている。図示された実施形態では、電解セル38がアノード側40、カソード側42、および陽イオン輸送膜44を含み、アノード側40およびカソード側42は、それぞれが陽イオン輸送膜44の反対側に配置されている。適切な陽イオン輸送膜の例には、その少なくとも1つがスルホン酸ペンダント基を含有している2つ以上のフルオロまたはパーフルオロモノマーのコポリマーなど、フルオロまたはパーフルオロモノマーを含む陽イオン膜が含まれる。適切な陽イオン輸送膜の別の例には、β−アルミナなどのプロトン伝導セラミックスが含まれる。図示される実施形態では、例えば臭化水素を含む供給流46を、陽イオン輸送膜44のアノード側40にある電解セル38の入口を通して導入することができる。電解セル38では、電気エネルギーを使用して、臭化水素の分子を還元し、それによって臭化物陰イオンおよび水素陽イオンを生成することができる。臭化物陰イオンは、電解セル38のアノード40側に臭素を形成することができる。図示されるように、水素陽イオンは、陽イオン輸送膜44を通してカソード側42に輸送することができ、そこで水素陽イオンを電子と結合させて水素ガスを形成することができる。水素流48および臭素流50を、電解セル38から引き出すことができる。
【0049】
図4を参照すると、本発明の一実施形態による、臭素回収に使用することができる電解セル38の別の例が示されている。図示される実施形態では、電解セル38を、空気減極モードで動作させる。図示されるように、酸素流50を陽イオン輸送膜44のカソード側42内に導入し、上記の式(6)によって示された半反応に従って酸素が水素陽イオンと結合して水を形成するようにし、その水を、水流52を介して電解セル38から引き出すことができる。
【0050】
図5を参照すると、本発明の一実施形態による、臭素回収に使用することができる別の例示の電解セルが示されている。図示される実施形態では、代替の電解セル54は、アノード側56、カソード側58、および陰イオン輸送膜60を含み、アノード側56およびカソード側58は、それぞれが、陰イオン輸送膜60の反対側に配置されている。適切な陰イオン輸送膜の例には、融解塩飽和膜が含まれる。図示される実施形態では、例えば臭化水素を含む供給流46を、陰イオン輸送膜60のカソード側58にある代替電解セル54の入口に通して導入することができる。代替の電解セル54では、電気エネルギーを使用して臭化水素の分子を還元し、それによって臭化物陰イオンおよび水素陽イオンを生成することができる。カソード側58では、水素陽イオンを電子と結合させて水素を形成することができる。図示されるように、臭化物陰イオンは、陰イオン輸送膜60に通してアノード側56に輸送することができ、そこで臭化物陰イオンを得られた電子と結合させることにより、臭素が形成される。水素流48および臭素流50は、代替の電解セル54から引き出すことができる。
【0051】
したがって本発明は、記載された目標および利点ならびに本明細書に固有の目標および利点を実現するよう十分適合される。本発明は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな種々のしかし均等な手法で変更を加え実施することができるので、上記開示された特定の実施形態は単なる例示である。さらに、以下の特許請求の範囲に記載された内容以外、本明細書に示される構成または設計の詳細を何ら限定するものではない。したがって、上記開示された特定の例示的な実施形態は、変更しまたは修正することができることが明らかであり、そのような変形例の全ては、本発明の範囲および精神に包含されると見なされる。特に、本明細書に開示された値(「約aから約b」、または均等に「およそaからb」、または均等に「およそa〜b」の形態をとる)の全ての範囲は、値のそれぞれの範囲の累乗集合(全ての部分集合からなる集合)、および値のより広い範囲内に包含される記載された全ての範囲を指すと理解すべきである。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」または「an」は、導入される要素の1つまたは複数を意味すると本明細書では定義される。また、特許請求の範囲内の用語は、特許権者によってはっきりとかつ明らかに定義されない限り、それらの平易な通常の意味を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化アルカンを含む流れを供給するステップと、
前記ハロゲン化アルカンの少なくとも一部を含む合成反応物から、炭化水素および臭化水素を含む合成生成物を形成するステップと、
臭素の少なくとも一部を回収するステップであって、前記回収が電気分解を含むステップと
を含む方法。
【請求項2】
アルカン流とハロゲン流とを反応させることによって前記ハロゲン化アルカンを形成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカン流が、約1atmから約100atmの範囲内の圧力にあってよい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカン流が、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、天然ガス、炭層メタン、再ガス化液化天然ガス、ガス水和物から得られたガス、クラスレートから得られたガス、有機物質の嫌気性分解から得られたガス、バイオマスの嫌気性分解から得られたガス、または合成により生成されたアルカンからなる群から選択された少なくとも1種のアルカンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化アルカンを形成する前記ステップが、触媒の存在下で引き起こされる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
合成生成物を形成する前記ステップが、約150℃から約500℃の範囲の温度で、および約1atmから100atmの範囲の圧力で引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電気分解が電解セルで実施され、前記電解セルが、アノード側、カソード側、およびイオン輸送膜を含み、前記アノード側および前記カソード側が、それぞれ、陽イオン輸送膜の反対側に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン輸送膜が陽イオン輸送膜を含み、前記陽イオン輸送膜が、フルオロモノマー、パーフルオロモノマー、その少なくとも1つがスルホン酸ペンダント基を含有している2種以上のフルオロもしくはパーフルオロモノマーのコポリマー、プロトン伝導セラミック、またはこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の材料を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン輸送膜が、陰イオン輸送膜を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ハロゲン化水素を含む流れを供給するステップと、
気相電気分解を使用して、前記ハロゲン化水素の少なくとも一部を少なくとも分子状のハロゲンに変換するステップと、
炭化水素を含む流れを供給するステップと、
前記分子状のハロゲンの少なくとも一部と前記炭化水素の少なくとも一部を反応させることによって、ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化水素を含むハロゲン化生成物を形成するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記ハロゲン化生成物を形成する前記ステップが、約250℃から約600℃の範囲の温度で、および約1atmから約100atmの範囲の圧力で引き起こされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化生成物を形成する前記ステップが、触媒の存在下で引き起こされる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、白金、パラジウム、式FeOBrの非担持型オキシハロゲン化物、式FeOCl、TaOF、NbOF、ZrOF、SbOFの非担持型オキシハロゲン化物からなる群から選択された少なくとも1種の触媒材料を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ハロゲン化水素を含む前記流れが低分子量アルカンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記電気分解が、空気減極モードで動作する電解セル内で引き起こされる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
ハロゲン化アルカンを含む流れを供給するステップと、
前記ハロゲン化アルカンの少なくとも一部を含む合成反応物から、炭化水素およびハロゲン化水素を含む合成生成物を形成するステップと、
前記合成生成物から前記ハロゲン化水素の少なくとも一部を分離するステップと、
液相電気分解を使用して、前記分離されたハロゲン化水素の少なくとも一部を少なくとも分子状のハロゲンに変換するステップと
を含む方法。
【請求項17】
前記合成生成物を形成する前記ステップが、触媒を含む合成反応器内で引き起こされ、前記合成反応器が、固定床反応器または流動床反応器からなる群から選択された少なくとも1つの反応器型を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、合成結晶質アルミノシリケート、アルミニウムの少なくともいくつかが少なくともいくつかのマグネシウム、ホウ素、ガリウム、チタンで置き換わった結晶質アルミノシリケート、ケイ素の少なくともいくつかがリンで置き換わった結晶質アルミノシリケート、H、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Fe、Mn、V、W、La、Ce、ハロゲン化物塩がドープされた結晶質アルミノシリケート、または元素Pt、Pd、またはNiを含有する結晶質アルミノシリケートからなる群から選択された少なくとも1種の材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒が周期的に再生される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ハロゲン化水素が、水溶液を使用して前記合成生成物から分離され、前記水溶液は液相電気分解ユニットで使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記水溶液が、金属水酸化物種、金属オキシハロゲン化物種、金属酸化物種、またはこれらの誘導体からなる群から選択された、少なくとも1種の金属ハロゲン化物塩種を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記液相電気分解が、金属ハロゲン化物塩種の形成をもたらし、前記金属は減少した酸化状態を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記液相電気分解が空気減極カソードを使用する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記液相電気分解が空気減極カソードを使用し、前記液相電気分解が、前記カソードで金属水酸化物の形成をもたらす、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524873(P2011−524873A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513719(P2011−513719)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/047162
【国際公開番号】WO2009/152408
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509158819)マラソン ジーティーエフ テクノロジー, リミテッド (6)
【Fターム(参考)】