説明

舌圧センサ

【課題】感圧センサが正確な舌圧を検知することができるようにする。
【解決手段】シート部材3が、感圧センサ21〜25及びこれらから引き出された配線4を保持している。シート部材3が基幹部31及び枝部32、33を有している。基幹部31は、仮想直線C上に配置された3つの感圧センサ21〜23を保持している。枝部32、33は、感圧センサ24、25を保持している。そして、枝部32、33は、基幹部31における感圧センサ21と感圧センサ22との中間位置から分岐しつつ連続して延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に咀嚼及び嚥下時における口蓋に対する舌の接触圧を計測するための舌圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
摂食・嚥下障害、発音障害及び歯列の発達過程の解析においては、舌圧の運動解析が重要である。舌圧の運動解析を行うため、バルーン型の探子を口腔内に挿入し、そこに加わる舌圧を測定することが行われている。しかしながら、この場合、被験者が、体積の大きい探子及び探子と計測部本体とを接続するチューブを咥える必要があるため、被験者の生理的な咀嚼及び嚥下時の舌圧を計測することが難しい。そこで、ポリエステル、ポリイミドなどのフィルム基材の上に、圧力によって電気抵抗が変化する感圧インクを印刷したもの同士を、互いの印刷面が対面するように貼り合わせることによって形成されるシート状の圧力センサを用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。圧力センサがシート状であるため、舌圧センサを口蓋に貼り付けることが可能となり、被験者の生理的な咀嚼及び嚥下時の舌圧を正確に計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−234号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、舌圧センサを被験者の口蓋に貼り付けた状態において、複数の圧力センサが、口蓋正中線上、及び、口蓋正中線と直交する線上に配置されている。このとき、口蓋正中線及びこれに直交する線とが交差する位置に圧力センサが配置されているため、口蓋の曲率が比較的小さい女性や子供などにおいては、口蓋正中線に沿った方向及びこれに直交する方向に関するフィルム基材の曲げ応力が当該圧力センサに集中する。これにより、当該圧力センサが硬口蓋部から剥離、又は、過剰に押し付けられることがあり、正確な圧力を得ることができない状態となることがある。
【0005】
本発明の目的は、感圧センサが正確な舌圧を検知することができる舌圧センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の舌圧センサは、複数の薄型感圧センサと、前記複数の薄型感圧センサ及び各薄型感圧センサから引き出された配線を保持する可撓性シート部材とを備えている。前記可撓性シート部材が、前記複数の薄型感圧センサのうち、仮想直線上に配列された複数の前記薄型感圧センサを保持する基幹部と、前記基幹部における前記薄型感圧センサが保持されていない領域から連続して延在していると共に、前記基幹部に保持されていない一又は複数の前記薄型感圧センサを保持する一又は複数の枝部とを有している。
【0007】
本発明によると、基幹部における薄型感圧センサが保持されていない領域から枝部が延在しているため、舌圧センサを口蓋に貼り付けたときに枝部が湾曲することによって発生する応力が、基幹部に保持された薄型感圧センサに作用しにくくなる。これにより、各薄型感圧センサが正確な舌圧を検知することができる。
【0008】
本発明においては、前記基幹部に保持されていない複数の前記薄型感圧センサが、前記仮想直線を基準に線対称に配置されており、前記可撓性シート部材は、複数の前記枝部が前記仮想直線を基準に線対称となるように形成されていることが好ましい。これによると、枝部が湾曲することによって基幹部に作用する応力が仮想直線に直交する方向に関して均一化されるため、基幹部にねじれが発生するのが抑制され、各薄型感圧センサがより正確な舌圧を検知することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記基幹部における前記仮想直線に関して互いに隣り合う前記薄型感圧センサ同士の中間位置から、前記枝部が延在していることがより好ましい。これによると、舌圧センサを口蓋に貼り付けたときに枝部が湾曲することによって発生する応力が、基幹部に保持された薄型感圧センサにさらに作用しにくくなる。
【0010】
さらに、本発明においては、前記薄型感圧センサと前記配線を介して接続された複数の端子をさらに備えており、前記端子が、前記基幹部の端部近傍に配置されていることが好ましい。これによると、計測機器に接続される端子が基幹部の端部に配置されているため、舌圧センサを口蓋に貼り付けたとき、端子を口腔外に容易に引き出すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、基幹部における薄型感圧センサが保持されていない領域から枝部が延在しているため、舌圧センサを口蓋に貼り付けたときに枝部が湾曲することによって発生する応力が、基幹部に保持された薄型感圧センサに作用しにくくなる。これにより、各薄型感圧センサが正確な舌圧を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に関する舌圧センサの外観図である。
【図2】図1に示すII-II線に関する感圧センサの断面図である。
【図3】図1に示す舌圧センサを硬口蓋に貼り付けた状態を示す使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
舌圧センサ1は、口腔内の舌圧を計測する際に使用するシート状の圧力センサである。図1に示すように、舌圧センサ1は、5つの薄型の感圧センサ21〜25と、5つの感圧センサ21〜25及びこれらから引き出された配線パターン4を保持する可撓性を有するシート部材3と、各感圧センサ21〜25の検知結果を外部の計測機器に出力する端子部5とを有している。
【0015】
5つの感圧センサ21〜25は、舌圧を検知するための薄型のセンサである。5つの感圧センサ21〜25のうち、3つの感圧センサ21〜23が、仮想直線C上に配列されており、残り2つの感圧センサ24、25が、仮想直線Cを基準に線対称に配置されている。これにより、5つの感圧センサ21〜25がT字状に配置されている。
【0016】
図2に示すように、シート部材3は、一対のフィルム基材3a、3bが貼り合わされた構造を有している。フィルム基材3a、3bは、ポリエステル、PEN、またはポリイミドなどから成る可撓性のフィルムである。
【0017】
フィルム基材3a、3bの内側の面に、円形の薄膜電極11、12及び配線パターン4が配置されている。薄膜電極11、12及び配線パターン4は、フィルム基材3a、3bの内側の面に対する銀インクを用いたスクリーン印刷によって形成されている。全ての薄膜電極11、12は、薄膜電極11、12から引き出された配線パターン4によって端子部5と電気的に接続されている。薄膜電極11の表面には感圧インク層16が形成されており、薄膜電極12の表面には感圧インク層17が形成されている。感圧インク層16、17は、圧力によって電気抵抗が変化する感圧インクの層である。
【0018】
フィルム基材3a、3bを貼り合わせることによって、薄膜電極11、12が所定の空隙を介して互いに対向するように配置され、感圧センサ21〜25が形成される。このとき、感圧センサ21〜25は、フィルム基材3a、3bを貼り合わせることによって形成された内部空間に配置されている。フィルム基材3a、3bにおける内部空間を除く領域は、互いに貼り合わされて密着している。これにより、感圧センサ21〜25に水分が付着するのを防止している。なお、各感圧センサ21〜25が配置された各内部空間は、フィルム基材3a、3bを貼り合わせることによって形成された基幹部31及び枝部32、33(後述)を通過する空気流路(図示せず)を介して互いに連通している。また、空気流路は、端子部5近傍に形成された大気開放孔と連通している。これにより、内部空間は常に大気圧となり、舌圧センサ1が加圧されることによって内部空間が変形したときに、内部空間の内圧が変化するのを防止している。このため、感圧センサ21〜25に加えられた圧力をより正確に検知することができる。
【0019】
図1に示すように、シート部材3は、仮想直線Cに沿って延在している基幹部31と、基幹部31から分岐しつつ連続して延在している枝部32、33とを有している。枝部32、33は、仮想直線Cを基準に線対称となるように形成されている。基幹部31は、その一方端部近傍において、仮想直線C上に配列された3つの感圧センサ21〜23を保持していると共に、他方端部に端子部5が配置されている。枝部32は、その端部近傍において感圧センサ24を保持している。枝部33は、その端部近傍において感圧センサ25を保持している。枝部32、33は、基幹部31における感圧センサ21〜23が保持されていない領域である、仮想直線Cに関して互いに隣り合う感圧センサ21と感圧センサ22との中間位置から延在している。
【0020】
図3に示すように、舌圧センサ1は、仮想直線Cが左右方向に関する中心を通過するように口蓋に貼り付ける。このとき、口蓋が左右方向に関して湾曲しているため、枝部32、33が左右方向に沿って湾曲する。枝部32、33が湾曲することによって発生する応力は、基幹部31における枝部31、33の基端部分、つまり、感圧センサ21と感圧センサ22との中間位置に作用する。
【0021】
シート部材3を介して感圧センサ21〜25に圧力が加えられると、感圧インク層16と、感圧インク層17とが接触して積層される。このとき、加えられた圧力によって積層された感圧インク層16、17の電気抵抗値が変化する。端子部5に接続された計測機器において、薄膜電極11、12間の電気抵抗値の変化、つまり、積層された感圧インク層16、17の電気抵抗値の変化を検知することによって、感圧センサ21〜25に加えられた圧力を検知することができる。
【0022】
以上説明した本実施形態によると、基幹部31における感圧センサ21〜23が保持されていない領域から枝部32、33が分岐しつつ連続して延在しているため、舌圧センサ1を口蓋に貼り付けたときに枝部32、33が湾曲することによって発生する応力が、基幹部31に保持された感圧センサ21〜23のいずれにも作用しにくくなる。これにより、各感圧センサ21〜23が正確な舌圧を検知することができる。
【0023】
また、シート部材3が、枝部32、33が仮想直線Cを基準に線対称となるように形成されているため、舌圧センサ1を口蓋に貼り付けたときに枝部32、33が湾曲することによって発生する応力が左右方向に関して均一化される。これにより、基幹部31にねじれが発生するのが抑制され、各感圧センサ21〜23がより正確な舌圧を検知することができる。
【0024】
さらに、枝部32、33が、基幹部31における感圧センサ21と感圧センサ22との中間位置から延在しているため、舌圧センサ1を口蓋に貼り付けたときに枝部32、33が湾曲することによって発生する応力が、感圧センサ21、22に作用しにくくなる。
【0025】
また、端子部5が、基幹部31の端部に接続されているため、舌圧センサ1を口蓋に貼り付けたとき、端子部5を口腔外に容易に引き出すことができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態では、基幹部31が3つの感圧センサ21〜23を保持し、枝部32、33がそれぞれ1つの感圧センサ24、25を保持する構成であるが、基幹部及び枝部が保持する感圧センサの数は任意のものであってよい。
【0027】
また、上述の実施形態においては、シート部材3が2つの枝部32、33を有する構成であるが、シート部材が1つ又は3つ以上の枝部を有する構成であってもよい。
【0028】
加えて、上述の実施形態においては、感圧センサ24、25が、仮想直線Cを基準に線対称に配置されている構成であるが、複数の感圧センサが、仮想直線Cを基準に線対称に配置されていなくてもよい。例えば、枝部32、33が互いに異なる数の感圧センサを保持していてもよい。
【0029】
また、上述の実施形態においては、枝部32、33が仮想直線Cを基準に線対称となるように形成される構成であるが、枝部が仮想直線Cを基準に線対称に形成されていなくてもよい。
【0030】
さらに、上述の実施形態においては、枝部32、33が、基幹部31における感圧センサ21と感圧センサ22との中間位置から延在する構成であるが、枝部が、基幹部における感圧センサを保持していない領域であれば任意の場所から延在していてもよい。例えば、基幹部31における感圧センサ22と感圧センサ23との間から延在してもよいし、感圧センサ23と端子部5との間から延在していてもよい。
【0031】
また、上述の実施形態においては、端子部5が基幹部31の端部に形成される構成であるが、端子部は基幹部の他の場所に形成されていてもよいし、枝部からさらに分岐して引き出された部分に形成されていてもよい。
【0032】
さらに、上述の実施形態においては、舌圧センサ1が、感圧インクを用いた感圧センサ21〜25を有する構成であるが、舌圧センサが、他の薄型の感圧センサを有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 舌圧センサ
3 シート部材
3a、3b フィルム基材
4 配線パターン
5 端子部
11、12 薄膜電極
16、17 感圧インク層
21〜25 感圧センサ
31 基幹部
32、33 枝部
C 仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄型感圧センサと、
前記複数の薄型感圧センサ及び各薄型感圧センサから引き出された配線を保持する可撓性シート部材とを備えており、
前記可撓性シート部材が、
前記複数の薄型感圧センサのうち、仮想直線上に配列された複数の前記薄型感圧センサを保持する基幹部と、
前記基幹部における前記薄型感圧センサが保持されていない領域から連続して延在していると共に、前記基幹部に保持されていない一又は複数の前記薄型感圧センサを保持する一又は複数の枝部とを有していることを特徴とする舌圧センサ。
【請求項2】
前記基幹部に保持されていない複数の前記薄型感圧センサが、前記仮想直線を基準に線対称に配置されており、
前記可撓性シート部材は、複数の前記枝部が前記仮想直線を基準に線対称となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の舌圧センサ。
【請求項3】
前記基幹部における前記仮想直線に関して互いに隣り合う前記薄型感圧センサ同士の中間位置から、前記枝部が延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の舌圧センサ。
【請求項4】
前記薄型感圧センサと前記配線を介して接続された複数の端子をさらに備えており、
前記端子が、前記基幹部の端部近傍に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の舌圧センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−273840(P2010−273840A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128806(P2009−128806)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【特許番号】特許第4575510号(P4575510)
【特許公報発行日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人医薬基盤研究所推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】