説明

舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置

【課題】タンパエッジとスクリードプレートやストライクオフプレートとの間隙部からアスファルト分が侵入するのを防止し、施工準備時に行っていたアスファルト分を軟化するための加熱作業をなくす。
【解決手段】舗装機械のスクリード装置14に設けられ、ストライクオフプレート21とスクリードプレート22との間にタンパエッジ34を上下動可能に設置して舗装面を締め固めるタンパ装置30において、前記タンパエッジ34の前後にあるストライクオフプレート21およびスクリードプレート22との間隙部Sに、それぞれ前記タンパエッジ34に接触するスクレーパ35を設け、それぞれのスクレーパ35の先端部がタンパエッジ34に一定の押圧力で当接するようなスプリング37を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置に関するものであり、特に、アスファルト合材のアスファルト分がタンパエッジの間隙部からスクリード内へ侵入しようとするのを防止するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にアスファルトフィニッシャなどの舗装機械には、舗装面を敷き均すためのスクリード装置が設けられているが、該スクリード装置に、舗装面を締め固めるタンパ装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載のタンパ装置は、スクリードプレート(スクリード本体)と、該スクリードプレートの前側に設けられたストライクオフプレート(デフレクタ)との間に設けられ、車体の幅方向に配設された回転軸にカム部が形成され、カム部に外嵌されて一体に回転する軸受部にタンパバーを介して前記タンパエッジが接続されている。このタンパバーは、スプリング(弾機)によって上方へ常時押圧されており、前記回転軸の回転に伴いタンパバーが上下動することにより、タンパエッジが上下振動して舗装面を締め固めるように形成されている。
【特許文献1】特許第3794931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明は、図5に示すように、スクリードプレート50とストライクオフプレート51との間にタンパ装置52が設置され、該タンパ装置52の下端部に設けたタンパエッジ53を上下動可能に形成して舗装面を締め固めるように形成されている。そして、タンパエッジ53が円滑に上下動できるように、タンパエッジ53の前後に、それぞれ間隙部Sを設けてある。
【0005】
したがって、施工中にその間隙部Sからアスファルト合材のアスファルト分Aが侵入して内部に堆積する。施工中は、合材自体の温度やスクリードプレート50の加熱により、アスファルト分Aが固まることはないが、施工が終わってスクリードプレート50やストライクオフプレート51やタンパエッジ53が冷えてくると、堆積したアスファルト分Aが固化し始める。
【0006】
堆積したアスファルト分Aが固化すると、タンパエッジ53が固化したアスファルト分Aに固定されて上下動不可能となる。このため、次回の施工時にタンパエッジ53などを部分的に加熱して、堆積したアスファルト分Aを軟化させる必要がある。アスファルト分Aの軟化作業を忘れてタンパエッジ53を動作させようとすると、油圧源から送られた圧油により油圧機器が無理に作動し、油圧機器やタンパ装置を破損させることになる。
【0007】
そこで、タンパエッジとスクリードプレートやストライクオフプレートなどの間隙部からアスファルト分が侵入するのを防止し、施工準備時に行っていたアスファルト分を軟化するための加熱作業をなくすために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、舗装機械のスクリード装置に設けられ、ストライクオフプレートとスクリードプレートとの間にタンパエッジを上下動可能に設置して舗装面を締め固めるタンパ装置において、前記タンパエッジの前後にあるストライクオフプレートおよびスクリードプレートとの間隙部に、それぞれ前記タンパエッジに接触するスクレーパを設け、それぞれのスクレーパの先端部がタンパエッジに一定の押圧力で当接するような付勢手段を備えたことを特徴とする舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、タンパエッジの前後にあるストライクオフプレートおよびスクリードプレートとの間隙部に、それぞれスクレーパを設けて付勢手段でタンパエッジへ押圧してあるので、該スクレーパにより前後の間隙部が閉塞されている。このため、施工中にアスファルト合材のアスファルト分が、タンパエッジの前後の間隙部から侵入しようとしても、前記スクレーパにより間隙部が閉塞されているので、アスファルト分の侵入が阻止される。また、前記スクレーパはタンパエッジに弾性的に接触しているので、タンパエッジの上下動時はスクレーパがタンパエッジに摺擦してアスファルト分を掻き落とす。
【0010】
請求項2記載の発明は、舗装機械のスクリード装置に設けられ、モールボードとスクリードプレートとの間にタンパエッジを上下動可能に設置して舗装面を締め固めるタンパ装置において、前記タンパエッジの後部にあるスクリードプレートとの間隙部に、前記タンパエッジに接触するスクレーパを設け、該スクレーパの先端部がタンパエッジに一定の押圧力で当接するような付勢手段を備えたことを特徴とする舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、タンパエッジの後部にあるスクリードプレートとの間隙部に、スクレーパを設けて付勢手段でタンパエッジへ押圧してあるので、該スクレーパにより後部の間隙部が閉塞されている。このため、施工中にアスファルト合材のアスファルト分が、タンパエッジの後部の間隙部から侵入しようとしても、前記スクレーパにより間隙部が閉塞されているので、アスファルト分の侵入が阻止される。また、前記スクレーパはタンパエッジに弾性的に接触しているので、タンパエッジの上下動時はスクレーパがタンパエッジに摺擦してアスファルト分を掻き落とす。
【0012】
請求項3記載の発明は、上記スクレーパは、上記タンパエッジの前後面に沿ってタンパエッジと略同じ長さに設けられ、それぞれの基端部に適宜間隔でスプリングを介装して先端部を前記タンパエッジの前後面へ押圧付勢するように形成したことを特徴とする請求項1記載の舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、スクレーパがタンパエッジと略同じ長さに設けられているので、スクレーパがタンパエッジの全長に亘って間隙部を閉塞し、間隙部からのアスファルト分の侵入が阻止される。また、スクレーパの基端部に適宜間隔でスプリングを介装して押圧付勢するので、スクレーパの先端部が所定の押圧力でタンパエッジの前後面に接触する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明は、タンパエッジの間隙部がスクレーパの弾性的接触により閉塞されているので、タンパエッジの前後の間隙部からアスファルト合材のアスファルト分が侵入するのを防止できる。したがって、アスファルト分が堆積して固化するおそれがなく、従来、施工準備時に行っていたアスファルト分を軟化するための加熱作業が不要になる。
【0015】
請求項2記載の発明は、タンパエッジの間隙部がスクレーパの弾性的接触により閉塞されているので、タンパエッジの後部の間隙部からアスファルト合材のアスファルト分が侵入するのを防止できる。したがって、アスファルト分が堆積して固化するおそれがなく、従来、施工準備時に行っていたアスファルト分を軟化するための加熱作業が不要になる。
【0016】
請求項3記載の発明は、スクレーパがタンパエッジと略同じ長さに設けられ、かつ、スプリングにより所定押圧力でスクレーパの先端部がタンパエッジの前後面に接触するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、スクレーパが安定的にタンパエッジに弾性的接触し、アスファルト分の侵入を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置について、好適な実施例をあげて説明する。タンパエッジとスクリードプレートやストライクオフプレートとの間隙部からアスファルト分が侵入するのを防止し、施工準備時に行っていたアスファルト分を軟化するための加熱作業をなくすという目的を達成するために、本発明は舗装機械のスクリード装置に設けられ、ストライクオフプレートとスクリードプレートとの間にタンパエッジを上下動可能に設置して舗装面を締め固めるタンパ装置において、前記タンパエッジの前後にあるストライクオフプレートおよびスクリードプレートとの間隙部に、それぞれ前記タンパエッジに接触するスクレーパを設け、それぞれのスクレーパの先端部がタンパエッジに一定の押圧力で当接するような付勢手段を備えたことにより実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は舗装機械の一例としてホイール式のアスファルトフィニッシャ10を示す側面図である。当該アスファルトフィニッシャ10は、車体11の前部にホッパ12が配置され、該ホッパ12に投入されたアスファルト合材はフィーダコンベヤ(図示せず)により後方へ搬送され、車体11の後部に設けたスクリュースプレッダ13にて車体11の幅方向へ拡散されながら路面へ撒布され、撒布されたアスファルト合材はスクリード装置14により均等な厚さに敷き均される。
【0019】
車体11の両側から後方に向けてレベリングアーム15を延出し、該レベリングアーム15の後端に前記スクリード装置14の外側面が装着されている。該スクリード装置14は主スクリード14Aと、該主スクリード14Aの後部に設けられて、車体11の幅方向へ伸縮可能な補助スクリード14B,14Cとから構成されている。また、車体11の中央部から後部にかけて、操縦装置16と運転席17が設けられている。
【0020】
そして、車体11の左右両側には、前記ホッパ12の下部位置に前輪18,18が設けられ、前記操縦装置16から運転席17付近の下部位置に後輪19,19がそれぞれ設けられている。また、ホイール式ではなくクローラ式の走行機構が備えられる場合もある。
【0021】
図2は請求項1に係るスクリード装置14の内部を示す側面図、図3は図2のX−X断面図である。図2および図3に示すように、車体の進行方向から順に、モールボード20とストライクオフプレート21とスクリードプレート22が設けられ、このストライクオフプレート21とスクリードプレート22との間にタンパ装置30が設けられている。
【0022】
前記タンパ装置30は、車体の幅方向すなわちスクリード装置14の左右方向に配設された回転軸31と、回転軸31に形成された偏心カム部(図示せず)に外嵌する軸受32と、軸受32に連結したタンパバー33と、タンパバー33の下端部に接続されたタンパエッジ34などから構成されている。
【0023】
タンパ装置30の作動について説明すれば、図示しない油圧モータの駆動によって前記回転軸31が回転すると、偏心カム部のカム作用で軸受32の下端が上下動し、軸受32に連結したタンパバー33とともにタンパエッジ34が上下動する。タンパエッジ34が円滑に上下動できるように、タンパエッジ34の前後にあるストライクオフプレート21とスクリードプレート22との間に、それぞれ間隙部S,Sを設けてある。
【0024】
ここで、それぞれの間隙部S,Sには、タンパエッジ34に接触するスクレーパ35,35が設けられており、該スクレーパ35,35はタンパエッジ34の前後面に沿ってタンパエッジ34と略同じ長さでスクリード装置14の左右方向に配設されている。スクレーパ35,35の基端部は、ケース36,36の内部に適宜間隔で介装されたスプリング37,37…に接触しており、該スプリング37,37…によってスクレーパ35,35の先端部をタンパエッジ34の前後面に押圧付勢している。
【0025】
このように、スプリング37によりスクレーパ35の先端部がタンパエッジ34の前後面に接触するので、タンパエッジ34の前後の間隙部Sがスクレーパ35によって閉塞される。また、一定の押圧力で弾性的にスクレーパ35がタンパエッジ34に接触するため、タンパエッジ34の上下動に支障を来たすことがない。
【0026】
図4は請求項2に係るスクリード装置14の内部を示す側面図である。図2および図3に示したスクリード装置14と異なる箇所は、ストライクオフプレート21がなく、車体の進行方向から順に、モールボード20とスクリードプレート22が設けられ、このモールボード20とスクリードプレート22との間にタンパ装置30が設けられている。
【0027】
タンパ装置30の構成および作動は、図2および図3に示したものとまったく同じであるので、重複説明は省略する。モールボード20とタンパエッジ34の間には、ほとんど間隙部がなく、密着した状態でタンパエッジ34が上下動する。タンパエッジ34の後部にあるスクリードプレート22との間には、間隙部Sを設けてある。
【0028】
前記間隙部Sには、タンパエッジ34に接触するスクレーパ35が設けられている。該スクレーパ35はタンパエッジ34の後面に沿ってタンパエッジ34と略同じ長さでスクリード装置14の左右方向に配設され、その基端部は、ケース36の内部に適宜間隔で介装されたスプリング37,37…に接触しており、該スプリング37,37…によってスクレーパ35の先端部をタンパエッジ34の後面に押圧付勢している。
【0029】
該スクレーパ35はタンパエッジ34の後部側のみに設けられているが、スクレーパ35の構成および作動は、図2および図3に示したものとまったく同じであるので、重複説明は省略する
【0030】
而して、図2〜図4に記載の合材侵入防止装置は、何れも、施工中にアスファルト合材のアスファルト分がタンパエッジ34の間隙部Sから侵入しようとしても、前記スクレーパ35によってアスファルト分の侵入を防止できる。したがって、アスファルト分が堆積して固化するおそれがなく、従来、施工準備時に行っていたアスファルト分を軟化するための加熱作業が不要になる。
【0031】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用されたアスファルトフィニッシャの側面図。
【図2】請求項1に係るスクリード装置の内部を示す側面図。
【図3】図2のX−X断面図。
【図4】請求項2に係るスクリード装置の内部を示す側面図。
【図5】従来のタンパ装置の説明図。
【符号の説明】
【0033】
10 アスファルトフィニッシャ
14 スクリード装置
20 モールボード
21 ストライクオフプレート
22 スクリードプレート
30 タンパ装置
34 タンパエッジ
35 スクレーパ
37 スプリング
S 間隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装機械のスクリード装置に設けられ、ストライクオフプレートとスクリードプレートとの間にタンパエッジを上下動可能に設置して舗装面を締め固めるタンパ装置において、
前記タンパエッジの前後にあるストライクオフプレートおよびスクリードプレートとの間隙部に、それぞれ前記タンパエッジに接触するスクレーパを設け、それぞれのスクレーパの先端部がタンパエッジに一定の押圧力で当接するような付勢手段を備えたことを特徴とする舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置。
【請求項2】
舗装機械のスクリード装置に設けられ、モールボードとスクリードプレートとの間にタンパエッジを上下動可能に設置して舗装面を締め固めるタンパ装置において、
前記タンパエッジの後部にあるスクリードプレートとの間隙部に、前記タンパエッジに接触するスクレーパを設け、該スクレーパの先端部がタンパエッジに一定の押圧力で当接するような付勢手段を備えたことを特徴とする舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置。
【請求項3】
上記スクレーパは、上記タンパエッジの前後面または後面に沿ってタンパエッジと略同じ長さに設けられ、その基端部に適宜間隔でスプリングを介装してその先端部を前記タンパエッジの前後面または後面へ押圧付勢するように形成したことを特徴とする請求項1記載の舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate