説明

航空機などの乗り物において支払いを行うためのシステムおよび方法

民間航空機などの輸送用乗り物において乗客に提供される製品および/またはサービスに対して支払いを行うためのシステムおよび方法である。特に、本発明は、料金を無線で借方および貸方に記入できる電子財布として、書き換え可能無線周波数識別装置(RFID)またはスマートカード技術を用いるシステムおよび方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、民間航空機などの輸送用乗り物において乗客に提供される製品および/またはサービスに対して支払いを行うためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、料金を借方および貸方に記入できる電子財布として、書き換え可能無線周波数識別装置(RFID)またはスマートカード技術を用いるシステムおよび方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
一般に、軽食または映画などの航空機における製品およびサービスは、無料か、またはフライトアテンダントなどの航空会社客室乗務員によって回収される料金で提供される。いくつかのより洗練されたシステムでは、クレジットカードを用いて、いくつかの製品またはサービスに対して支払うことに備えている。空の旅がより競合的になるにつれて、航空会社は、代替の収入源を探っている。例えば、航空会社は、食事、飲料、娯楽、製品、電力、ならびに場合によっては電話サービスおよびインターネット接続に対して支払いを請求している。
【0003】
典型的には、これらの提供される製品およびサービスは、比較的低価格であり、したがって、乗客は、典型的には、かかる品目に対して現金で支払う。したがって、乗務員は、現金を扱い、つり銭を乗客に返却する必要がある。しかしながら、乗務員は、典型的には、現金を扱い、かつ効果的につり銭を提供するための機上の資源を有しない。つり銭を提供できない場合には、ある乗客が正確なつり銭をもらえないことがあるので、販売が減少する可能性があり、このような事情では、乗務員は、製品またはサービスを無料で提供することを決定する可能性がある。さらに、現金は、失われるか、または盗まれる可能性がある。さらに、乗務員が、収入を生む多くの取引に関わることは不便であり、かつ非能率である。例えば、パーソナルコンピュータ(PC)の使用、インターネット接続、電話サービスおよび視聴覚娯楽は、これらのサービスに対して料金を回収する必要がなければ、客室乗務員の関与なしでローカルに扱うことができる。また、フライトが国際線である場合には、通貨タイプ、為替レート、言語等における差異によって、最も単純な取引さえも複雑になる。場合によっては、航空会社は、18もの異なるタイプの通貨をサポートしようと試みたことがある。通貨を制限することによって、為替レート問題は緩和されるが、販売が制限される可能性もある。
【0004】
クレジットカードは、為替問題を回避するのに有用であり得るが、小額のクレジットカード取引に伴う労働および処理費用は、特定の取引によって得られる実際の収入を超える可能性がある。さらに、クレジットカードを用いないか、または機内システムにクレジットカード情報を提供することを快く感じない乗客がいる。さらに、クレジットカード取引は、安全なデータ保存、および航空機外の適切な取引清算会社への転送を必要とする。したがって、システム障害の可能性があり、これにより、飛行中に蓄積された全ての取引が失われる可能性がある。デビットカードは、クレジットカードと同様の問題を有する。
【0005】
上記の問題を解決する試みでは、クレジットカード読み取り装置を客室に配置して、乗務員の関与を必要としない取引の完了を容易にすることができる。しかしながら、乗客がアクセス可能なクレジットカード読み取り装置は、より高い故障率および乱用にさらされる可能性がある。これによって、保守費用と同様に、乗客が所望の製品またはサービスを得ることができない可能性も高まる場合があり、したがって、これは、顧客満足度に悪影響を及ぼす。さらに、クレジットカードまたはデビットカード取引は、航空機から適切な取引センタへの情報転送を必要とするが、これは、労力および費用を必要とする。また、かかる転送は、安全でなければならず、適切に実行されない場合には、金銭上の損失に帰着する。
【0006】
本発明のこれらおよび他の目的、利点および新規な特徴は、添付の図面と関連して読めば下記の詳細な説明からより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面の簡単な説明
【図1】本発明の実施形態に従って、RFIDカードまたはスマートカード技術を有するカード、および航空機などの乗り物でかかった料金に対してカードの借り方および貸し方に記入するために用いることができるRFIDまたはスマートカード読み取り機器の例を示す。
【図2】図1に示すようなカードを読み取るために用いることができる乗務員読み取り装置の例を示す。
【図3】図1に示すようなカードを提供できるキオスクの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下でより詳細に説明するように、本明細書で説明する本発明の実施形態は、民間航空機、船、列車、バスなどの輸送用乗り物において乗客に提供される製品および/またはサービスに対して支払いを行うためのシステムおよび方法を提供する。例示的な目的のために、以下の説明は、航空機に関連してシステムおよび方法を説明する。
【0009】
このシステムおよび方法は、電子財布としての書き換え可能RFID、およびRFIDに記憶された金額を管理および変更するために必要な支援機器を用いる。支援機器は、機内娯楽システム(IFES)などの航空機娯楽システム技術で実現され、現金不要の貸借システムを提供することができる。したがって、本発明の実施形態によって、現金またはクレジットカードを扱う複雑さがなくなり、他方でまた、航空会社は、最終的な取引の前に、かつクレジットカードの承認など、航空機外の通信を必要とせずに、製品および/またはサービスに対して金銭を回収することが可能になる。
【0010】
図1は、読み取り/書き込みRFID100(「カード100」)、およびカード100からデータを無線で読み取り、かつそこにデータを書き込むことができる乗り物内(例えば機内)RFID機器102(「読み取り装置102」)の例を示す概念ブロック図である。カード100は、典型的なクレジットカードの寸法、またはさらに小さな寸法さえ有することができ、電子財布として機能する。特に、カード100上のメモリ104は、映画、軽食、電話またはインターネットサービス、PC電力等の購入など、指定された、かつユーザが承認した取引の結果として変更できる金額を表わす情報を記憶する。当業者によって理解されるように、カード100は、RFID技術の代わりに、またはその技術に加えて、「スマートカード」技術を用いることができる。図1にさらに示すように、各乗客座席106には、読み取り装置102を装備することができる。読み取り装置102は、ケーブルなどの電子装置を介してまたは無線で、IFES108と通信し、したがって、IFES108と対話し、乗客との取引を完了する。典型的には、読み取り装置102は、IFES108と通信し、かつ、例えば座席106の背面に存在できる乗客用表示装置110にかまたはその近くに位置することが可能である。
【0011】
手持ち式乗務員読み取り装置112を追加してシステムに補足することができ、この読み取り装置112の例を図2に示す。乗務員読み取り装置112は、読み取り装置102と類似の機能を有し、無線でまたはドッキングステーションを介してIFES108と通信することができる。手持ち式乗務員読み取り装置112によって、乗務員は、食べ物、飲料、ヘッドセットなどの製品に対する支払いために、乗客のカードを読み取ることが可能になる。また、必要に応じて、読み取り装置102または手持ち式乗務員読み取り装置112を用いて、免税品などのより高価な品目に対する支払いのために、カード100を読み取ることができる。図3に示すように、例えば空港ターミナルに地上キオスク114を追加して、システムにさらに補足することができる。キオスク114は、新しいカード100を提供するか、または既存のカード100に金額を加えることができる。
【0012】
動作中に、IFES108によってまたはIFES108を介して提供されるサービスの支払いは、IFES108と対話する読み取り装置102によって回収することが可能である。かかるサービスには、ビデオオンデマンド映画、衛星テレビパッケージ、電話サービスおよびインターネット接続の購入が含まれる。乗客は、所望のサービスまたは呼び物(feature)を選択するために、表示装置110に表示できるメニューシステムを用いることができる。システムは、例えば、視覚または音声の合図で、乗客に、当人のカード100を表示装置110または読み取り装置102の前か近くに置くように頼むことによって、支払いを要求することになろう。表示装置110における読み取り装置102は、無線で、カード100にアクセスし、カード100の金額を確認し、取引記録および新しい金額をカード100に書き込むことになろう。
【0013】
さらに、上記のように、客室乗務員によって提供される製品またはサービスは、乗務員読み取り装置112を用いて支払うことが可能である。食事、飲料または商品の購入は、乗務員読み取り装置112によって集金可能な製品およびサービスの例である。あるいは、IFES108を用いて、客室乗務員によって提供される製品またはサービスの支払いを回収することが可能である。乗務員読み取り装置112は、IFEシステム読み取り装置と類似の方法で動作することになろう。客室乗務員は、回収金額を乗務員読み取り装置112に入力し、乗客カード100は、乗務員読み取り装置112上を通過し、次に、乗務員読み取り装置112は、無線で、カード100にアクセスし、カード100における金額を確認し、取引記録および新しい金額をカード100に書き込むことになろう。乗務員読み取り装置112はまた、特に、より高額な品目に対して印刷されたレシートを提供することが可能である。
【0014】
IFESおよび/または乗務員読み取り装置112はまた、金額問い合わせ機能を支援可能である。かかる機能によって、乗客は、IFES表示装置110において「現在の金額残高」を選択し、表示装置110上かまたはその近くでカード100を通過させることになろう。表示装置110の読み取り装置102は、現在の金額をカード100から無線で読み取り、表示することになろう。また、必要に応じて、取引リストを提示することが可能である。
【0015】
上記で簡単に説明したように、プリセットされた金額を備えたカード100は、キオスク114においてなど、空港ターミナルで提供することが可能である。この状況において、キオスク114は、販売時点管理端末のように機能することになるだろうが、この販売時点管理端末では、乗客は、ある金額が、カード100に提供されるように要求する。支払いは、クレジットカードか、またはキオスク114の所在地において適用可能な通貨での現金払いで行われることになるだろう。カード100に入れられる金額は、航空会社によって用いられる通貨での同等の金額になるだろう。通貨交換レート、料金および他の問題は、他の金融システムに対する通信が容易で実際的であるキオスク114において、完全に解決されることになるだろう。
【0016】
カード100はまた、空港ターミナルの搭乗ゲート周辺における店舗またはカウンタで入手できるようにすることが可能である。カード100はまた、例えば、航空会社のウェブサイトを用いて航空会社から購入することが可能である。さらに、カード100は、航空機において乗務員から購入することができ、したがって、多数の将来の取引で用いるために、ただ1回の最初の取引を必要とするだけである。カード100はまた、空港ターミナルの所在地と一致する通貨で購入することが可能であり、航空会社の通貨でのカード100の金額は、カード100が記録される時間に確立されることになろう。したがって、カード100は、航空会社用の宣伝手段として用いることが可能である。低額のカード100は、乗務員によって、および郵便を介して等により、無料の特典として乗客に提供することが可能である。優良顧客には、彼らが、ある一定のロイヤルティの節目(loyalty milestones)に達した場合には、販売促進カード100を提供することが可能である。航空会社は、フリークエントフライヤーマイルを備えたカード100の購入を勧めることが可能である。
【0017】
上記から理解できるように、カード100を用いることによって、危険が回避されるかまたは少なくとも低減され、航空機環境における低価格製品およびサービスの販売が促進される。カード100の1つの追加的な利益は、カード100が乗客によって購入されたときに、金銭が航空会社によって回収されるということである。これは、航空会社が、製品を届ける前に現金を得ることを意味する。個別での金額は小さいが、ユーザが多数になることで、航空会社のためのかなりの正のキャッシュフローが得られる。
【0018】
本発明におけるほんの少数の例示的な実施形態を上記で詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示および利点から大きく逸脱せずに、例示的な実施形態において多くの変更が可能であることを容易に理解されよう。例えば、本方法において示したステップの順序および機能性は、本発明の趣旨から逸脱せずに、いくつかの点で変更してもよい。したがって、かかる全ての変更は、本発明の範囲内に含まれるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物における支払いを処理するためのシステムであって、
金額を表わす情報を記憶するための少なくとも1つのカードと、
前記乗り物に配置されるように構成され、かつ、前記カードから前記情報を無線で読み取り、前記カードにおける前記金額を調整し、前記カードに少なくとも1つの取引記録を書き込むように動作可能な少なくとも1つの読み取り装置と、
を含むシステム。
【請求項2】
前記カードが、前記読み取り装置が無線で通信する相手となる無線周波数識別装置(RFID)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カードが、前記読み取り装置が無線で通信する相手となるスマートカード技術を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記読み取り装置が、前記カードから読み取られた前記情報に応じて、前記乗り物における機内娯楽システム(IFES)と通信し、前記IFESによって提供される情報へのアクセスを可能にするように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
複数の前記カードと、それぞれが複数の前記カードを読み取るように動作可能である複数の前記読み取り装置とをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記読み取り装置が前記乗り物の座席に配置された、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記読み取り装置が、前記乗り物の座席に関連付けられた表示装置に配置された、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記読み取り装置が、前記乗り物上の人が前記カードを無線で読み取るために使用するように動作可能な携帯装置である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記乗り物が航空機であり、前記読み取り装置が前記航空機に配置され、前記カードが前記航空機における金銭取引用に使用可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカードを提供するように動作可能であるキオスクをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
乗り物における支払いを処理するための方法であって、
金額を表わす情報を記憶するための少なくとも1つのカードを提供するステップと、
前記乗り物上において少なくとも1つの読み取り装置を提供するステップと、
前記読み取り装置を動作させるステップであって、前記カードから前記情報を無線で読み取り、前記カードにおける前記金額を調整し、かつ少なくとも1つの取引記録を前記カードに書き込むステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記カードが無線周波数識別装置(RFID)を含み、
前記動作ステップが、前記読み取り装置を動作させて前記RFIDと無線で通信するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カードがスマートカード技術を含み、
前記動作ステップが、前記読み取り装置を動作させて前記スマートカード技術と無線で通信するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記読み取り装置を動作させるステップであって、前記カードから読み取られた情報に応じて、前記乗り物における機内娯楽システム(IFES)と通信し、前記IFESによって提供される情報へのアクセスを可能にするステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記カード提供ステップが、複数の前記カードを提供するステップを含み、
前記読み取り装置提供ステップが、複数の前記読み取り装置を提供するステップを含み、
前記動作ステップが、前記読み取り装置のそれぞれを動作させて、前記カードの少なくとも1つを読み取るステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記読み取り装置提供ステップが、前記読み取り装置を前記乗り物の座席に設けるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記読み取り装置提供ステップが、前記読み取り装置を前記乗り物の座席に関連付けられた表示装置に設けるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記読み取り装置提供ステップが、前記乗り物上の人が前記カードを無線で読み取るために使用するように動作可能な携帯装置として前記読み取り装置を提供するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記乗り物が航空機であり、
前記読み取り装置提供ステップが、前記読み取り装置を前記航空機において提供するステップを含み、
前記カード提供ステップが、前記航空機における金銭取引で用いるための前記カードを提供するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記乗り物から遠く離れた場所にキオスクを設けるステップと、
前記キオスクを動作させて前記少なくとも1つのカードを提供するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
乗り物における支払いを処理するためのシステムであって、
金額を表わす情報を記憶するための少なくとも1つのカードと、
前記乗り物に配置されるように構成され、かつ、前記カードから前記情報を無線で読み取り、前記カードにおける前記金額を調整するように動作可能な少なくとも1つの読み取り装置と、
前記少なくとも1つのカードを提供するように動作可能なキオスクと、
を含むシステム。
【請求項22】
乗り物における支払いを処理するための方法であって、
金額を表わす情報を記憶するための少なくとも1つのカードを提供するステップと、
前記乗り物において少なくとも1つの読み取り装置を提供するステップと、
前記読み取り装置を動作させるステップであって、前記カードから前記情報を無線で読み取り、前記カードにおける金額を調整するステップと、
前記乗り物から遠く離れた場所にキオスクを設けるステップと、
前記キオスクを動作させて、前記少なくとも1つのカードを提供するステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−514051(P2010−514051A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542767(P2009−542767)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/023445
【国際公開番号】WO2008/088434
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(503202756)タレス アビオニクス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】