説明

航空機エンジンのパイロンに対してクロスバーを連結するためのシステム

本発明は、調整バーをエンジンマウントの剛直構造上へと連結し得るよう構成された装置に関するものであって、ピンシステム(32)を具備し、このピンシステムが、ブラケット(34)の第1ピンシステム通路(38)内においてスライド可能に取り付けられ、これにより、ピンシステムは、第1長手方向軸線に沿って、第1の向き(44)に通常的延出位置から退避位置へと移動可能とされ、可逆的に、第2の向き(46)に退避位置から通常的延出位置へと移動可能とされている。本発明による装置は、さらに、ピンシステムの内部に設けられたピン延出部材(60)を具備し、このピン延出部材は、第1長手方向軸線に対して平行に、第2の向きに通常的退避位置から延出位置へと移動可能とされ、可逆的に、第1の向きに延出位置から通常的退避位置へと移動可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、航空機エンジンを固定するためのパイロンの領域に関するものであり、その場合、各パイロンは、航空機ウィングと、それぞれ対応するエンジンと、の間に介装されることを意図したものである。
【0002】
本発明は、ターボジェットエンジンまたはターボプロップエンジンを搭載した任意のタイプの航空機に対して、適用することができる。
【0003】
このタイプのパイロンは、また、EMS(Engine Mounting Structure )とも称されるものであって、ターボジェットエンジンを航空機ウィングの下側に懸架することを可能とする、あるいは、航空機ウィングの上側にターボジェットエンジンを取り付けることを可能とする。
【0004】
より詳細には、本発明は、航空機エンジンによって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイスの調整バーを、そのエンジンのためのマウントの剛直構造上へと、連結し得るよう構成された装置に関するものである。本発明は、また、そのような装置を具備したスラストマウントデバイスに関するものである。
【0005】
加えて、本発明は、また、エンジンマウントの剛直構造上に航空機エンジンを取り付けるための方法に関するものである。
【背景技術】
【0006】
エンジンマウントは、ターボジェットエンジンと航空機ウィングとの間の連結インターフェースを形成し得るように効果的に構成されている。エンジンマウントにより、関連するターボジェットエンジンによって生成された負荷をこの航空機の構造へと伝達することができるとともに、さらに、エンジンと航空機との間にわたっての、燃料や電力や油圧システムやエアの供給回収経路を提供することができる。
【0007】
負荷の伝達を確実に行い得るよう、エンジンマウントは、多くの場合に『ボックス』タイプのものからなる剛直構造を備えている。すなわち、上下のスパーと、横方向リブを介して相互連結された双方のサイドパネルと、からなるアセンブリによって形成された、剛直構造を備えている。
【0008】
また、マウントには、剛直構造とターボジェットエンジンとの間に介装される取付手段が設けられている。この取付手段は、全体的に、2つのエンジンアタッチメントと、ターボジェットエンジンによって生成されたスラスト負荷を伝達するためのスラストマウントデバイスと、を備えている。
【0009】
従来技術においては、このスラストマウントは、例えば、2つのサイドリンクを備えている。サイドリンクは、第1に、ターボジェットエンジンのファンケースの後方部分に対して連結され、第2に、中央エンジンケースに固定された後方アタッチメントに対して連結されている。
【0010】
同様に、エンジンマウントデバイスは、さらに、他のシリーズをなす複数のアタッチメントを備えている。これらアタッチメントは、剛直構造と航空機ウィングとの間に介装されるマウントシステムを形成する。このマウントシステムは、通常、2つまたは3つのアタッチメントを備えている。
【0011】
最後に、エンジンマウントには、空気力学的カウリングを付帯しつつ様々なシステムを切り離したり支持したりするための二次構造を備えている。
【0012】
上述したように、従来技術において提案されている手法においては、一般に、スラストマウントデバイスを、取付手段の後方アタッチメントに対して、連結する。
【0013】
したがって、スラストマウントデバイスには、2つのサイドリンクの後方端部を回転取付するための調整バーが、後方エンジンアタッチメントのボディ上に設けられる。その後、エンジンをエンジンマウントに向けて吊り上げられる。このことは、エンジンをエンジンマウントに向けて持ち上げた後に、エンジンマウントの剛直構造上へのエンジン取付手法において、前方エンジンアタッチメントの取付ステップが必要があること、および、後方エンジンアタッチメントの取付ステップが必要があること、を意味する。しかしながら、スラストマウントデバイスの取付ステップは行われない。
【0014】
それでも、最近では、剛直構造上に2つの個別の取付ポイントを設けることが有利であることが、観測されている。1つの取付ポイントは、エンジンの後方アタッチメントに対してであり、他の取付ポイントは、スラストマウントデバイスに対してである。このような構成においては、したがって、スラストマウントデバイスの調整バーを、エンジンマウントの剛直構造上へと組み立てるという追加的なステップが必要となる。
【0015】
しかしながら、このステップの実施が極めて困難であることに注意されたい。なぜなら、エンジンの吊り上げは、通常は鉛直方向に行われ、なおかつ、前もってエンジンに対して連結された調整バーのピンシステム通路内へと導入することを意図したピンシステムは、一般に、鉛直方向に対して傾斜して延在しており、このため、明らかなように、これら2つの構成部材を組み立てようとしても問題点が発生する。なお、本出願人の知る限りにおいて、本出願に関する関連文献は、存在していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の目的は、航空機エンジンによって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイスの調整バーを、エンジンマウントの剛直構造上へと、連結し得るよう構成された装置であるとともに、エンジンマウントの剛直構造上へとエンジンを取り付けるに際して調整バーの取付ステップを容易とし得るような装置を提供することである。
【0017】
また、本発明の他の目的は、そのような装置を具備したスラストマウントデバイスを提供することであり、また、そのようなスラストマウントデバイスが設けられたエンジンマウントを提供することである。
【0018】
最後に、発明のさらなる目的は、エンジンマウントの剛直構造上へのエンジンの取付方法を提供することである。
【0019】
これらの目的のため、本発明の主題は、航空機エンジンによって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイスの調整バーを、エンジンマウントの剛直構造上へと、連結し得るよう構成された装置であって、この装置が、第1に、剛直構造に対して固定されることを意図したブラケットであるとともに、第1長手方向軸線に沿って延在する第1ピンシステム通路が貫通形成されているようなブラケットと、第2に、第1ピンシステム通路を通過するピンシステムと、を具備している。本発明においては、ピンシステムは、第1通路内をスライドし得るようにして取り付けられ、これにより、第1長手方向軸線に沿った第1の向きに通常的延出位置から退避位置へと移動可能とされ、なおかつ、可逆的に、第1長手方向軸線に沿った第2の向きに退避位置から通常的延出位置へと移動可能とされ、通常的延出位置においては、ピンシステムは、ブラケットから突出していて、調整バーに対して協働することができ、退避位置においては、ピンシステムは、ブラケット内へと引っ込められている。加えて、装置は、さらに、ピンシステムの内部にに設けられたピン延出部材を具備し、このピン延出部材は、第1長手方向軸線に対して平行に、第2の向きに通常的退避位置から延出位置へと移動可能とされ、なおかつ、可逆的に、第1の向きに延出位置から通常的退避位置へと移動可能とされ、通常的退避位置においては、ピン延出部材は、ピンシステム内へと引っ込められ、延出位置においては、ピン延出部材は、ピンシステムに対して連結されたままピンシステムを超えて突出している。
【0020】
有利には、本発明による装置における格別の構成によれば、たとえピンシステムが鉛直方向に対して傾斜していたとしても、また、たとえエンジンがエンジンマウントの方向において鉛直方向に吊り上げられる場合であっても、装置上への調整バーの取付ステップを、比較的容易に実行することができる。エンジンマウントに対する最終位置へのまたは最終位置近傍へのエンジンの配置は、エンジンの吊り上げ時に、ピンシステムと調整バーとの間における一切の干渉を引き起こすことなく、実行することができる。なぜなら、ピンシステムが、スライド可能に取り付けられているからであり、このため、ピンシステムを、装置のブラケットの内部に引っ込められた退避位置へと移動させ得るからである。
【0021】
指摘事項として、エンジンマウントに対しての最終位置に向けてエンジンを移動させる際には、ピンシステムのスライド移動は、エンジンに対して連結されたる調整バーを当接させることによって、ピンシステムを通常的延出位置から退避位置へと徐々に行うことができる。明らかなように、例えばエンジンの吊り上げ前にピンシステムを退避位置に移動させさらにその退避位置に維持する手法といったような、他の手法を想定することができる。
【0022】
次に、エンジンマウントに対する最終位置へとまたはその近傍へとエンジンが到達した時点で、ピン延出部材を、延出位置へと延出させることができる。ピン延出部材は、調整バーの通路のサイズと比較して直径が小さいことのために、その通路内へと容易に進入することができる。したがって、調整バーのピンシステム通路を通過したピン延出部材は、好ましくは、そのピンシステム通路を超えて延出されたピン延出部材は、操作者が容易にアクセスし得るような把持部材や係止部材等を形成することができる。その場合、ピン延出部材に対して印加される駆動力は、ピン延出部材が連結されているピンシステムに対して直接的に伝達されることとなる。
【0023】
したがって、調整バーを通過させてピンシステムを通常的延出位置へと戻すという目的に関しては、例えば、ピン延出部材を第2の向きに並進移動させ得るような適切なツールを使用するだけで、十分である。その後、ピン延出部材を、ピンシステムに対して第1の向きに移動させることによって、ピン延出部材を、その通常的退避位置へと戻すことができる。詳細に後述する他の可能性においては、ピン延出部材をウォームスクリューとして機能させることができ、これにより、ピンシステムを通常的延出位置に向けて第2の向きに移動させ得ることに、注意されたい。
【0024】
明らかなように、上述したような容易な取付は、エンジンの取り外しの際にも、同様にして適用することができる。その場合、通常的な鉛直方向におけるエンジンの取り外しを開始する前に、ピンシステムは、ピン延出部材を使用して、退避位置とされる。
【0025】
好ましくは、ピンシステムには、係止手段が設けられ、この係止手段は、ピンシステムが通常的延出位置にある時には、ブラケットに対しての第2の向きにおけるピンシステムの並進移動をロックすることができる。また、係止手段は、好ましくは、ピンシステム上に形成された肩部とされる。
【0026】
好ましくは、装置は、ピンシステムを案内するためのガイド部材であるとともに、ブラケットに対して固定されたガイド部材を具備している。このガイド部材には、係止部を設けることができ、この係止部は、ブラケットに対しての第1の向きにおけるピンシステムの並進移動を阻止することができる。これにより、ピンシステムが第1の向きに移動する際に、ピンシステムが第1通路から離脱することを防止することができる。また、ガイド部材は、第1長手方向軸線に沿ってのピンシステムの並進移動時には、第1長手方向軸線まわりにおけるピンシステムの回転を防止し得るように構成することができる。これにより、ピンシステムが第1通路内で動けなくなってしまうというリスクを制限することができる。
【0027】
なおも好ましくは、ピン延出部材は、ピンシステムに対して取り付けられたネジとされ、このネジは、ピンシステム内へと進入し得るものとされる。したがって、このネジは、第1長手方向軸線に沿って配置されているように、構成することができる。これにより、このネジは、このネジを付帯しているピンシステムに対して同心的に配置される。明らかなように、本発明の範囲を逸脱することなく、ピン延出部材の構成に関しては、他の構成を想定することができる。
【0028】
最後に、ピンシステムは、互いに同心的なものとされた内方ピンと外方ピンとを備え、これら2つのピンは、互いに固定されており、内方ピンは、中空形状とされ、これにより、内部にピン延出部材を収容し得るものとされている。調整バーを通過させることを意図したピンを、このように二重化することは、2つのピンのどちらかが破損した場合に、いわゆる『フェールセーフ』機能を提供する。
【0029】
本発明の主題は、さらに、航空機エンジンによって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイスであって、このデバイスは、エンジンとエンジンマウントの剛直構造との間に位置することを意図したものとされ、
−上述したような装置と;
−2つのサイドスラストリンクであるとともに、各々は、エンジンに対して連結されることを意図した前方端部と、後方端部と、を備えているような、2つのサイドスラストリンクと;
−調整バーと;
を具備し、
調整バーに対して、サイドスラストリンクの各後方端部は、回転可能に取り付けられ、調整バーは、第1長手方向軸線と一致する第2長手方向軸線を有し、調整バーには、第2長手方向軸線に沿って延在する第2ピンシステム通路が貫通形成され、装置のピンシステムは、第2通路を通過する。
【0030】
好ましくは、このデバイスは、さらに、取り外し可能手段を具備し、この取り外し可能手段は、第1および第2通路を通しての第1の向きにおけるピンシステムの並進移動を阻止するものとされている。並進移動を阻止するための取り外し可能手段は、ナットとすることができ、このナットは、ピンシステムに対して螺着されるとともに、調整バーに対して当接する。
【0031】
本発明のさらなる主題は、航空機ウィングとエンジンとの間に介装されることを意図したエンジンマウントに関するものであって、剛直構造と、この剛直構造上にエンジンを取り付けるための取付手段と、を具備し、取付手段が、エンジンによって生成されたスラスト負荷を伝達する上述したようなスラストマウントデバイスを備えている。
【0032】
好ましくは、取付手段は、さらに、剛直構造の第1ポイントに対して固定された前方アタッチメントと、剛直構造の第2ポイントに対して固定された後方アタッチメントと、を備え、スラストマウントデバイスは、第1および第2ポイントから離間した第3ポイントのところにおいて、剛直構造に対して固定される。
【0033】
スラストマウントデバイスが、前方アタッチメントとは独立してなおかつ後方アタッチメントとは独立して、剛直構造に対して直接的に連結されているという事実により、取付手段を形成する様々な部材を通して伝達される負荷どうしの間の、より詳細には、後方エッジアタッチメントを通して伝達される負荷とスラストマウントデバイスを通して伝達される負荷と間の、相互作用を大幅に制限することができる。
【0034】
上記構成により、したがって、有利には、後方アタッチメントの構成およびスラストマウントデバイスの構成を高度に最適化することができ、その結果、過度のオーバーサイズを避けることができる。
【0035】
好ましくは、ピンシステムは、エンジンマウントの鉛直方向に対して傾斜して配置され、好ましくは、剛直構造から後方向きに傾斜して延在する。
【0036】
最後に、本発明のさらなる主題は、上述したようなエンジンマウントの剛直構造上に航空機エンジンを取り付けるための取付方法であって、この方法は、リンクを介してエンジンに対して既に連結済みの調整バーを、前もって剛直構造上に取り付けられた装置上へと、取り付けるという取付ステップを具備し、この取付ステップにおいては、
−退避位置とされたピンシステムに対して、第2の向きに、ピン延出部材を移動させるという移動操作を行い、これにより、ピン延出部材を、調整バーの第2通路を通過させ、これにより、ピン延出部材を延出位置とし;
−ピン延出部材の位置を設定するという設定操作を行い、これにより、ピンシステムを、第1および第2ピンシステム通路を通過して移動させ、これにより、ピンシステムを、通常的延出位置とする。
【0037】
明らかなように、ピン延出部材の移動操作の前には、ピンシステムは、任意の手段を使用することによって、退避位置とされる。好ましくは、取付ステップの前に、ピンシステムを、通常的延出位置から退避位置へと移動させ、この移動を、エンジンマウントに対する最終位置に向けてのエンジンの吊り上げ時に、調整バーに対して当接させることによって行う。
【0038】
さらに好ましくは、取付ステップを行った後に、前方エンジンアタッチメントの取付と、後方エンジンアタッチメントの取付と、を行う。
【0039】
加えて、ピン延出部材の設定操作は、調整バーとピン延出部材とのそれぞれに対して対向した当接ポイントを有したツールを使用しつつ、ネジという態様とされたピン延出部材を、ピンシステムに対して回転させることによって、行う。したがって、この好ましい実施形態においては、ネジは、ウォームスクリューのように作用し、ネジの回転により、したがって、ピンシステムを、このネジに対して、第2の向きに移動させることができる。ネジ自体は、第1長手方向軸線の方向において、調整バーに対して同じ位置を維持する。
【0040】
明らかなように、ピン延出部材の設定操作は、例えばただ単にピン延出部材を第2の向きに並進移動させるといったような、他の任意の手法によって行うことができる。ピン延出部材が延出位置となる際に、ピン延出部材とピンシステムとが互いに連結されていることにより、ピン延出部材に対して印加された並進移動力は、ピンシステムに対して直接的に伝達される。
【0041】
最後に、ピン延出部材の設定操作を、ピンシステムの端部に取り付けられたガイドヘッドを使用して行うように、構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の他の利点や特徴点は、本発明を何ら制限するものではない以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0043】
以下の説明においては、添付図面を参照する。
【0044】
図1には、航空機エンジンアセンブリ1が図示されている。この航空機エンジンアセンブリ1は、図示の明瞭化のために破線で図示された航空機のウィング2の下側に取り付けることを意図したものである。このアセンブリ1は、本発明の好ましい一実施形態によるエンジンマウント4と、例えばこのエンジンマウント4の下方に懸架されるターボジェットエンジンといったようなエンジン6と、を備えている。
【0045】
全体的に、エンジンマウント4は、剛直構造8と;この剛直構造8に付帯された取付手段であるとともに、エンジン6を取り付けるための取付手段であり、さらに、複数のエンジンアタッチメント10,12を有した取付手段と;エンジン6によって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイス14と;を備えている。
【0046】
指摘事項として、アセンブリ1がナセル(図示せず)によって囲まれることを意図したものであることに注意されたい。また、エンジンマウント4が、航空機のウィング2の下側にこのアセンブリ1を確実に懸架し得るよう、他のシリーズをなす複数のアタッチメント取付部材16を備えていることに注意されたい。
【0047】
以下の説明においては、慣例に従い、エンジンマウント4の長手方向を、X方向として表記する。X方向は、また、ターボジェットエンジン6の中心軸線にも対応する。この方向Xは、このターボジェットエンジン6の長手方向軸線5に対して平行である。また、方向Yを使用することにより、エンジンマウント4の横断方向を表示する。この方向Yは、また、ターボジェットエンジンの横断方向にも対応する。方向Zは、鉛直方向すなわち高さ方向である。これらX,Y,Zは、互いに直交している。
【0048】
また、『前方』および『後方』という用語は、ジェットエンジン6によってもたらされたスラスト力に基づく航空機の進行方向に関するものである。この進行方向は、矢印7によって図式されている。
【0049】
図1においては、2つのエンジンアタッチメント10,12と、一連をなす複数のアタッチメント16と、スラストマウントデバイス14と、が示されており、さらに、エンジンマウント4の剛直構造8が示されている。例えば空気力学的カウルを支持しつつ様々なシステムを切り離したり支持したりする二次構造といったような、エンジンマウント4の図示していない他の構成部材は、従来的なものであって、従来技術におけるものと同一のまたは同様の部材であり、当業者には公知の部材である。よって、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0050】
加えて、ターボジェットエンジン6が、前方部分に、環状ファンダクト20を形成する大きなサイズのファンケース18を備えていること、および、後方部分に、このターボジェットエンジンのコアを包囲する小さなサイズの中央ケース22を備えていること、を指摘しておく。ケース18,20は、明らかなように、互いに固定されている。
【0051】
図1からわかるように、マウント4のエンジンアタッチメント10,12は、数が2つであるように構成されている。エンジンアタッチメント10は、前方エンジンアタッチメントと称され、エンジンアタッチメント12は、後方エンジンアタッチメントと称される。
【0052】
本発明のこの好ましい実施形態においては、剛直構造8は、実質的に方向Xに沿って後方から前方へと延在するボックスの形態とされている。
【0053】
したがって、ボックス8は、ターボジェットエンジンに関して通常的に見受けられるような形状のものとされる。特に、ボックス8は、各々が矩形形状とされた横方向リブ(図示せず)を備え、前方スパート、後方スパーと、双方のサイドパネルと、に対して連結される。
【0054】
この好ましい実施形態における取付手段は、まず最初に、剛直構造8の前端とファンケース18の上部との間に配置された前方エンジンアタッチメント10を備えている。剛直構造8の前端は、ピラミッドとも称される。当業者に公知の従来的構成においては、前方エンジンアタッチメント10は、剛直構造8の第1ポイントP1に対して固定される。本発明の範囲から逸脱することなく、前方アタッチメントを、中央ケース22上に取り付け得ることに、注意されたい。
【0055】
また、当業者に公知の従来的構成と同様に、後方エンジンアタッチメント12は、剛直構造8と中央ケース22との間に配置されており、ポイントP1よりも後方側において、剛直構造8のポイントP2に対して固定されている。
【0056】
概略的に図示しているように、スラストマウントデバイス14が、剛直構造の第3ポイントP3に対して固定されている。ポイントP3は、好ましくは、2つのポイントP1,P2の間に、位置している。この点に関し、上述した複数のポイントが、好ましくは、エンジンマウントの鉛直方向中央平面(図示せず)内に位置していることに注意されたい。
【0057】
指摘しておくならば、図1に示す側面図においては、距離の比P1P3/P1P2は、0.1〜0.9という幅広い範囲とすることができる。望ましい構成は、係合解除時に、スラストマウントデバイス14の調整バーが、2つのアタッチメント10,12によって妨害されることなく、自由に動き得ることである。
【0058】
全体的に、スラストマウントデバイス14は、詳細に後述するように、2つのサイドスラストリンク26(図1においては、1つだけが見えている)を備えている。これらサイドスラストリンクの各々は、中央ケース22に対して連結された前方端部を備えている。この前方端部は、例えば、ターボジェットエンジン6の水平方向中央平面上においてまたはその近傍において、あるいは、そのような水平方向中央平面内においてまたはその近傍において、中央ケース22に対して連結されている。
【0059】
図2に示すように、このスラストマウントデバイス14の後方部分においては、2つのサイドリンク26の各々は、後方端部を有しており、これら後方端部は、好ましくは二重ピンとされたようなピン28を介して、調整バー28上において回転可能とされている。
【0060】
調整バー28は、デバイス14の装置33上に取り付けられたピボットである。この装置33は、本発明の主題をなすものであって、一般に、ピンシステム32と、剛直構造8の下スパー36に対して固定されたブラケット34と、を備えている。
【0061】
図3aを参照して、本発明の好ましい実施形態による装置33について、説明する。したがって、この装置33は、エンジンマウント4の剛直構造8に対して調整バー28(この図には図示されていない)を連結し得るように構成されている。この図3aにおいては、装置33は、調整バーがピンシステム32に取り付けられた直後と同じ配置状況で、図示されている。より詳細には、ピンシステム32は、通常的延出位置と称される配置状況とされている。この状況においては、ピンシステム32は、ブラケット34に対して十分に下向きに突出している。これにより、ピンシステム32は、調整バー28と協働することができるあるいは係合することができる。
【0062】
さらに図3aに示すように、装置33は、例えば剛直構造8の2つの隣接リブ(図示せず)の間といったようなところにおいて、下スパー36に対して固定されたブラケット34を備えている。このブラケット34は、スパー36よりも下側へと突出している。そして、このブラケット34を貫通して、第1ピンシステム通路38が、第1長手方向軸線40に沿って、形成されている。好ましくは、軸線40は、XZ平面内に位置しているとともに、Z方向に対して傾斜している。これにより、軸線40は、後方向きに、かつ、下向きに、剛直構造8から延在している。
【0063】
明らかなように、ピンシステム32が、第1ピンシステム通路38を通過していることにより、ピンシステム32も、また、上記軸線軸40と同じ傾斜を有している。すなわち、ピンシステム32は、剛直構造から後方向きに延在している。また、ピンシステム32と第1通路38との間に、犠牲的な摩擦リング42を挿入し得ることに、注意されたい。
【0064】
本発明の1つの特定の見地は、ピンシステム32を、第1通路38内においてスライド可能に取り付けることである。これにより、ピンシステム32は、図3aに示す通常的延出位置から、ブラケット34の内部へと引っ込められた退避位置(図3b)へと、第1の向き44に従って、第1長手方向軸線40に沿って駆動されることができる。なおかつ、ピンシステム32は、可逆的に、第1の向きとが逆向きをなす第2の向き46に従って、退避位置から通常的延出位置へと駆動されることができる。
【0065】
ピンシステム32は、好ましくは、内方ピン48と、外方ピン50と、を備えている。これらピン48,50は、互いに同心的なものであり、任意の手段を介して互いに固定されている。図示の好ましい実施形態においては、主要ピンと称し得る外方ピン50と、『フェールセーフ』ピンと称し得る内方ピン48と、の間の固定関係は、係止とナット52との組合せを使用して得られている。ナット52は、ピン48の上端上に取り付けられており、ピン50の上端に対して当接している。上述した係止は、ピン48上に設けられた肩部54と、ピン50上に設けられた肩部56と、によって得られており、ナット52を螺着した状態において、ピン50に対してのピン48の上向き移動が禁止し得るように、構成されている。これにより、ピンシステム32は、コンパクトな相互連結アセンブリとなり、第1通路38内をスライドすることができる。
【0066】
ピンシステム32は、ブラケット34に対してシステムが第2の向き46に並進移動することを阻止し得る係止手段を使用することによって、図3aに示すような通常的延出位置に保持される。この係止手段は、ピンシステム32に属するものであって、好ましくは、外方ピン50の上端に設けられた肩部58という形態とされている。したがって、この肩部58は、ブラケット34の上向き当接面59と協働する。
【0067】
しかしながら、明らかなように、装置33を、システムがその通常的延出位置にある際に、ブラケット34に対して第1の向き44にシステム32を並進移動させ得るように、構成し得ることに、注意されたい。
【0068】
本発明のさらなる特定の見地は、装置33が、ピン延出部材60を備えていることである。ピン延出部材60は、ピンシステムの内方ピン48によって、内部に配置されている。この部材60は、この部材60が内方ピン48の内部に引っ込められた図3aのような通常的退避位置から、ピンシステム32に対して連結されたままピンシステムから突出した延出位置へと、第2の向き46に従って、第1長手方向軸線40に対して平行に移動することができる。部材60は、可逆的に、延出位置から通常的退避位置へと第1の向き44に移動することができる。詳細に後述するように、この部材60は、延出された時には、ピンシステム32が退避位置にある状況では、調整バー内に形成された通路内へと容易に進入することができる。よって、ピン延出部材60は、調整バーのピンシステム通路を通過した際には、好ましくはピンシステム通路を超えて延出された際には、したがって、操作者が容易にアクセスし得るような、把持部材や係止部材等となることができる。その場合、ピン延出部材60に対して印加される駆動力は、ピン延出部材60が連結されているピンシステム32に対して直接的に伝達されることとなる。したがって、その駆動力により、単に部材60の移動を設定するだけで、ピンシステム32を調整バーのピンシステム通路内へと容易に進入させることができる。
【0069】
ピン延出部材60を内方ピン48内へと収容し得るよう、この内方ピンは、したがって、中空形状とされている。また、部材60が単純なネジから構成されているという好ましい態様においては、内方ピン48は、そのネジと螺着することを意図したネジ山を備えたものである必要がある。
【0070】
指摘事項として、好ましくは第1長手方向軸線40に沿って配置されたようなネジ60の直径と、外方ピン50の直径と同一のピンシステム32の直径と、の間の比が、好ましくは、0.2〜0.8とされる点に注意されたい。
【0071】
図3aおよび図4を参照することにより、装置33が、ピンシステム32のためのガイド部材62を備えていることがわかる。ガイド部材62は、ブラケット34に対して固定されている。より詳細には、このガイド部材62は、ロッドまたはアームという形状のものとされ、長手方向軸線40に対して平行であり、なおかつ、長手方向軸線40から位置がずらされている(オフセットされている)。ガイド部材62は、ブラケット34の上部から第1の向き44に突出されており、ピンシステム32に対して固定されたプレート64に形成されたオリフィスを通過している。プレート64は、例えば、ナット52と外方ピン50との間に配置されている。
【0072】
したがって、ピンシステム32を移動させた際には、プレート64のオリフィスとガイド部材62との間のごくわずかのクリアランスでの協働により、ブラケット34に対してシステム32が軸線50に沿って並進移動することを保証し得るだけでなく、より格別なことに、この同じ第1長手方向軸線40まわりにおけるピンシステム32の回転を防止することも保証することができる。このことは、有利には、ピンシステム32が第1通路38内で動けなくなってしまうというリスクを制限する。
【0073】
加えて、剛直部材の内部に配置されたガイド部材62には、係止部66が設けられている。この係止部66は、ブラケット34に対して第1の向き44に並進移動しているピンシステムを停止させることができる。この係止部66は、ロッドの上端に配置されている。これにより、第1通路38からのピンシステム32の完全な抜け出しが防止されるようになっている。
【0074】
図3bにおいては、装置33は、異なる配置状況で図示されている。図3aの配置状況が、『状況I』と称される通常的休止位置であるのに対し、図3bの状況は、『状況II』と称される。図3bにおいては、ピンシステム32は、第1の向き44への移動を完了している。すなわち、ピンシステム32は、退避位置となっている。この退避位置においては、ピンシステム32は、ブラケット34の内部に退避しており、なおかつ、ピン延出部材60は、なおも、通常的退避位置とされている。すなわち、ピン延出部材60は、ピンシステム32内に退避している。好ましくは、この状況においては、ピンシステム32は、ブラケット34から下向きにはもはや突出しない構成とすることができる。また、任意の手法を使用することによって、ブラケット34に対して第2の向きにピンシステム32がスライドすることを防止することにより、この配置状況を維持し得る点を、指摘しておく。
【0075】
図3cにおいては、装置33は、『状況III』と称されるようなさらに他の配置状況で図示されている。図3cにおいては、ピンシステム32は、なおも、任意の手段を使用することによって、退避位置に維持されている。しかしながら、ピン延出部材60は、軸線40に沿って第2の向き46に移動されており、延出位置とされている。この延出位置においては、ピン延出部材60は、ピンシステム32に対して連結された状態で、ピンシステム32を超えて下向きに突出している。明らかなように、第2の向き46におけるピン延出部材60の移動は、ネジの螺着を緩めることによって行われる。また、このネジのネジ山と内方ピン48のネジ山との間の螺着により、延出位置にネジを維持することと、ピンシステム32に対してピン延出部材60を固定することと、の両方を同時に達成することができる。
【0076】
最後に、図3dは、『状況IV』と称される他の配置状況を図示している。図3dにおいては、ピンシステム32は、通常的延出位置へと戻されており、ピン50の肩部58と表面59との間の接触によって、この位置に維持されている。しかしながら、ピン延出部材60は、なおも、延出位置とされている。
【0077】
上記すべての配置状況は、エンジンマウントの剛直構造の上に航空機エンジンを取り付けるための方法を実施するに際して、装置33が連続的に取ることを意図した状況である。以下においては、取付方法について詳細に説明する。
【0078】
さて、図5には、上述した装置33を具備したスラストマウントデバイス14が、詳細に図示されている。スラストマウントデバイス14は、状況Iに対応した完全取付状況で示されている。この状況においては、調整バー28が、ピンシステム32と協働している。
【0079】
上述したように、スラストマウントデバイス14は、装置33を備えているだけでなく、2つのサイドスラストリンク26をも備えている。サイドスラストリンク26の各々は、エンジンに対して連結された前方端部と、第2ピンシステム通路68が貫通形成された調整バー28に対して連結された後方端部と、を備えている。したがって、第2通路68は、第2長手方向軸線70に沿って延在している。第2長手方向軸線70は、スラストマウントデバイス14が、図示されたような完全取付状況にある時には、第1長手方向軸線40に一致する。また、装置33のピンシステム32は、明らかに、この第2通路68を貫通している。この場合にも、ピンシステム32と第2通路68との間に、犠牲的摩擦リング71を設けることができる。
【0080】
デバイス14は、さらに、ピンシステム32の並進移動を防止するよう機能する取り外し可能手段72を備えている。取り外し可能手段72は、第1通路38および第2通路68を通っての第1の向き44におけるピンシステムの並進移動を阻止している。取り外し可能手段72は、明らかなように、ピンシステム32が第2通路68を通過し終わった後に、ピンシステム32に対して取り付けられ、これにより、デバイス14の取付を完了させる。
【0081】
好ましくは、並進移動を阻止するための取り外し可能手段は、ナット72という態様とされ、調整バー28の当接底面74に対して当接しつつ、外方ピン50の下端に対して螺着される。したがって、スラストマウントデバイス14を完全に取り付けた後には、ピンシステム32は、肩部58と表面59との間の係止によって、さらに、ナット72と表面74との間の係止によって、双方の向き44,46において、軸線40に沿っての並進移動が阻止される。明らかなように、この阻止は、調整バー28が、ピンシステム32を付帯しているブラケット34に対して係合した際に得られるものであって、調整バー28とピンシステム32との間の直接的な接触は必須ではない。
【0082】
さて、図6a〜図6dには、エンジンマウントの剛直構造上に航空機エンジンを取り付けるに際して実施されるような、機械的33上への調整バー28の取付のための他の操作を図示している。
【0083】
この方法の実施に際しては、まず最初に、調整バー28を、リンク26を介してエンジン6に対して連結することが好ましい。一方、装置33は、前もって、状況Iでもって、剛直構造8上に取り付けられる。
【0084】
この方法においては、その後、好ましくは、従来的手段を使用しての、エンジンマウント4に向けてのエンジン6の鉛直方向の吊り上げが開始される。この吊り上げにより、エンジンは、エンジンマウントに対しての最終位置へと到達する、あるいは、そのような最終位置の近傍位置へと到達する。
【0085】
その最終位置に向けてのエンジン6の鉛直方向移動における所定の適切な時点において、装置33のピンシステム32の下端が、このようなエンジンの移動に伴って、調整バー28に対して当接することとなる。この点に関し、吊り上げを行う前に、図6aに示すように、システム32の下端上に、オリーブ形状の(あるいは、先細り形状の)ガイド78を取り付けることができる。この場合、ガイドのヘッドは、第2通路68に対して位置合わせされる。ガイドのヘッドが、第2通路68に対して進入することができる。よって、第2通路68の上部に対してガイド78が当接して第2通路68内へとガイド78が部分的に進入することにより、エンジン吊り上げの最終時点においては、システム32は、第1の向き44に変位することができる。したがって、エンジンの鉛直方向吊り上げ時には、移動する調整バー28に対して単に当接させるだけで、システム32を、通常的延出位置から退避位置へと自動的に移行させ得ることは、理解されるであろう。
【0086】
エンジンが最終位置に達したまたはその近傍に達した時点では、装置33は、調整バー28によって、図6aに示すような状況IIに保持される。
【0087】
次に、好ましくは、当業者に公知なような従来的態様によって、前方エンジンアタッチメント10の取付ステップと、後方エンジンアタッチメント12の取付ステップとが、行われる。
【0088】
その後、ピンシステム32が図3bおよび図6aに示すような状況IIとされた状態で、調整バー28の取付ステップを開始することができる。
【0089】
その後、最初の操作においては、ピン延出部材60を、第2の向き46において、退避位置とされたピンシステム32に対して、移動させる。これにより、ピン延出部材60は、図6bに示すように、第2通路68を通過して、延出位置へと到達する。この時点で、装置33は、状況IIIとなる。すなわち、ピン延出部材60が、調整バー28から、下向きに実質的に突出する。明らかなように、延出位置へのこの移行は、ネジ60の螺着を単に緩めるだけで、行われる。その際、ピンシステム32は、一切駆動されることがなく、退避位置とされたままである。
【0090】
その後、ピン延出部材60の移動または位置を設定する。これにより、ピンシステム32を、第1および第2通路38,68を通して第2の向き46において変位させる。この移動設定または位置設定は、図6cおよび図6dに示すように、例えばベルクランクといったような、調整バー28とピン延出部材60とのそれぞれに対して、対向した当接ポイントを有したツールを使用することによって、実行される。ベルクランク80が上述したようにして設置された後には、必要な操作は、ネジ60を回転させることだけである。これにより、ネジ60は、ウォームスクリューのように作用し、図6dに示すように、内方ピン48を、したがって、ピンシステム32の全体を、第2の向き46に移動させる。したがって、このようなネジ60の回転によって、調整バー28を軸線40方向に維持しつつ、第2の向きに移動しているピンシステム32の内部へと、徐々に進入する。
【0091】
最後に、必要に応じて、ピン延出部材60を、通常的延出位置とされたピンシステム32に対して第1の向き44になおも移動させる。これにより、ピン延出部材60を、通常的な退避位置とすることができる。明らかなように、この操作は、ベルクランク80を取り外した後に行われ、それ以前の操作によってもピン延出部材60が未だ退避位置とされていない場合にのみ行われる。
【0092】
最後に、ガイドを取り外した後に、並進移動を阻止す取り外し可能手段72を、ピンシステム32上へと取り付ける。これにより、図5に示すような、エンジンマウント上へのエンジンの完全な取付が完了する。
【0093】
明らかなように、当業者であれば、本発明を何ら制限することなく例示されたようなエンジンマウント4やスラストマウントデバイス14や装置33や取付方法に対して、様々な修正を行うことができる。この点については、本発明を、航空機ウィングの下側にエンジンを固定し得るものとして説明したけれども。本発明を適用することによって、この同じウィングの上側にも、エンジンを固定し得ることを、指摘することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明によるエンジンマウントを具備しているような航空機エンジンアセンブリを概略的に示す側面図である。
【図2】図1のエンジンマウントに属するスラストマウントデバイスを部分的に示す斜視図である。
【図3a】図2のスラストマウントデバイスに属する装置を詳細に示す図であって、スラストマウントデバイスの調整バーをエンジンマウントの剛直構造上へと連結するに際しての様々な配置状況でもって装置を図示している。
【図3b】図2のスラストマウントデバイスに属する装置を詳細に示す図であって、スラストマウントデバイスの調整バーをエンジンマウントの剛直構造上へと連結するに際しての様々な配置状況でもって装置を図示している。
【図3c】図2のスラストマウントデバイスに属する装置を詳細に示す図であって、スラストマウントデバイスの調整バーをエンジンマウントの剛直構造上へと連結するに際しての様々な配置状況でもって装置を図示している。
【図3d】図2のスラストマウントデバイスに属する装置を詳細に示す図であって、スラストマウントデバイスの調整バーをエンジンマウントの剛直構造上へと連結するに際しての様々な配置状況でもって装置を図示している。
【図4】図3a〜図3dに示す装置を示す平面図である。
【図5】例えば図3a〜図3dに示す装置といったような装置を備えているような図2のスラストマウントデバイスを詳細に示す側面図である。
【図6a】図3a〜図3dに示す装置上への調整バーの取付ステップにおける様々な操作を概略的に示す図であって、このステップは、エンジンマウントの剛直構造上への航空機エンジンの取付方法を実施する際に、行われる。
【図6b】図3a〜図3dに示す装置上への調整バーの取付ステップにおける様々な操作を概略的に示す図であって、このステップは、エンジンマウントの剛直構造上への航空機エンジンの取付方法を実施する際に、行われる。
【図6c】図3a〜図3dに示す装置上への調整バーの取付ステップにおける様々な操作を概略的に示す図であって、このステップは、エンジンマウントの剛直構造上への航空機エンジンの取付方法を実施する際に、行われる。
【図6d】図3a〜図3dに示す装置上への調整バーの取付ステップにおける様々な操作を概略的に示す図であって、このステップは、エンジンマウントの剛直構造上への航空機エンジンの取付方法を実施する際に、行われる。
【符号の説明】
【0095】
4 エンジンマウント
6 航空機エンジン
8 剛直構造
10 前方アタッチメント
12 後方アタッチメント
14 スラストマウントデバイス
26 サイドスラストリンク
28 調整バー
32 ピンシステム
33 装置
34 ブラケット
38 第1ピンシステム通路
40 第1長手方向軸線
44 第1の向き
46 第2の向き
48 内方ピン
50 外方ピン
58 係止手段、肩部
60 ピン延出部材、ネジ
62 ガイド部材
66 係止部
68 第2ピンシステム通路
70 第2長手方向軸線
72 取り外し可能手段、ナット
78 ガイド
80 ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機エンジン(6)によって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイスの調整バー(28)を、エンジンマウント(4)の剛直構造(8)上へと、連結し得るよう構成された装置(33)であって、
前記装置(33)が、
第1に、前記剛直構造(8)に対して固定されることを意図したブラケット(34)であるとともに、第1長手方向軸線(40)に沿って延在する第1ピンシステム通路(38)が貫通形成されているようなブラケット(34)と、
第2に、前記第1ピンシステム通路(38)を通過するピンシステム(32)と、
を具備している場合に、
前記ピンシステム(32)が、前記第1通路(38)内をスライドし得るようにして取り付けられ、これにより、前記第1長手方向軸線に沿った第1の向き(44)に通常的延出位置から退避位置へと移動可能とされ、なおかつ、可逆的に、前記第1長手方向軸線に沿った第2の向き(46)に前記退避位置から前記通常的延出位置へと移動可能とされ、
前記通常的延出位置においては、前記ピンシステムが、前記ブラケット(34)から突出していて、前記調整バー(28)に対して協働することができ、
前記退避位置においては、前記ピンシステムが、前記ブラケット内へと引っ込められ、
前記装置が、さらに、前記ピンシステム(32)の内部に設けられたピン延出部材(60)を具備し、
このピン延出部材(60)が、前記第1長手方向軸線に対して平行に、前記第2の向き(46)に通常的退避位置から延出位置へと移動可能とされ、なおかつ、可逆的に、前記第1の向き(44)に前記延出位置から前記通常的退避位置へと移動可能とされ、
前記通常的退避位置においては、前記ピン延出部材(60)が、前記ピンシステム内へと引っ込められ、
前記延出位置においては、前記ピン延出部材(60)が、前記ピンシステム(32)に対して連結されたまま前記ピンシステム(32)を超えて突出していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置(33)において、
前記ピンシステム(32)には、係止手段(58)が設けられ、
この係止手段(58)が、前記ピンシステム(32)が前記通常的延出位置にある時には、前記ブラケット(34)に対しての前記第2の向き(46)における前記ピンシステム(32)の並進移動を阻止するものとされていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置(33)において、
前記係止手段が、前記ピンシステム(32)上に形成された肩部(58)とされていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置(33)において、
前記ピンシステム(32)を案内するためのガイド部材(62)であるとともに、前記ブラケット(34)に対して固定されたガイド部材(62)を具備していることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置(33)において、
前記ガイド部材(62)には、係止部(66)が設けられ、
この係止部(66)が、前記ブラケット(34)に対しての前記第1の向き(44)における前記ピンシステム(32)の並進移動を阻止するものとされていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の装置(33)において、
前記ガイド部材(62)が、前記第1長手方向軸線(40)に沿っての前記ピンシステム(32)の並進移動時には、前記第1長手方向軸線(40)まわりにおける前記ピンシステム(32)の回転を防止し得るように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置(33)において、
前記ピン延出部材が、前記ピンシステム(32)に対して取り付けられたネジ(60)とされ、
このネジが、前記ピンシステム内へと進入し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項4または7記載の装置(33)において、
前記ネジ(60)が、前記第1長手方向軸線(40)に沿って配置されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置(33)において、
前記ピンシステム(32)が、互いに同心的なものとされた内方ピン(48)と外方ピン(50)とを備え、
これら2つのピンが、互いに固定されており、
前記内方ピン(48)が、中空形状とされ、これにより、内部に前記ピン延出部材(60)を収容し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項10】
航空機エンジンによって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイス(14)であって、
このデバイス(14)が、前記エンジン(6)とエンジンマウント(4)の剛直構造(8)との間に位置することを意図したものとされている場合に、
−請求項1〜9のいずれか1項に記載された装置(33)と;
−2つのサイドスラストリンク(26)であるとともに、各々が、前記エンジンに対して連結されることを意図した前方端部と、後方端部と、を備えているような、2つのサイドスラストリンク(26)と;
−調整バー(28)と;
を具備し、
前記調整バー(28)に対して、前記サイドスラストリンク(26)の各後方端部が、回転可能に取り付けられ、
前記調整バー(28)が、前記第1長手方向軸線(40)と一致する第2長手方向軸線(70)を有し、
前記調整バー(28)には、前記第2長手方向軸線(70)に沿って延在する第2ピンシステム通路(68)が貫通形成され、
前記装置の前記ピンシステム(32)が、前記第2通路(68)を通過することを特徴とするスラストマウントデバイス。
【請求項11】
請求項10記載のスラストマウントデバイス(14)において、
さらに、取り外し可能手段(72)を具備し、
この取り外し可能手段(72)が、前記第1および前記第2通路(38,68)を通しての前記第1の向き(44)における前記ピンシステム(32)の並進移動を阻止するものとされていることを特徴とするスラストマウントデバイス。
【請求項12】
請求項11記載のスラストマウントデバイス(14)において、
並進移動を阻止するための前記取り外し可能手段が、ナット(72)とされ、
このナットが、前記ピンシステム(32)に対して螺着されるとともに、前記調整バー(28)に対して当接することを特徴とするスラストマウントデバイス。
【請求項13】
航空機ウィング(2)とエンジン(6)との間に介装されることを意図したエンジンマウント(4)であって、
剛直構造(8)と、
この剛直構造(8)上に前記エンジン(6)を取り付けるための取付手段と、
を具備し、
前記取付手段が、前記エンジン(6)によって生成されたスラスト負荷を伝達するスラストマウントデバイス(14)であるとともに、請求項10〜12のいずれか1項に記載されたスラストマウントデバイス(14)を備えていることを特徴とするエンジンマウント。
【請求項14】
請求項13記載のエンジンマウント(4)において、
前記取付手段が、さらに、前記剛直構造(8)の第1ポイント(P1)に対して固定された前方アタッチメント(10)と、前記剛直構造(8)の第2ポイント(P2)に対して固定された後方アタッチメント(12)と、を備え、
前記スラストマウントデバイス(14)が、前記第1および前記第2ポイント(P1,P2)から離間した第3ポイント(P3)のところにおいて、前記剛直構造(8)に対して固定されることを特徴とするエンジンマウント。
【請求項15】
請求項13または14記載のエンジンマウント(4)において、
前記ピンシステム(32)が、前記エンジンマウントの鉛直方向(Z)に対して傾斜して配置されていることを特徴とするエンジンマウント。
【請求項16】
請求項15記載のエンジンマウント(4)において、
前記ピンシステム(32)が、前記剛直構造(8)から後方向きに傾斜して延在していることを特徴とするエンジンマウント。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載されたエンジンマウント(4)の剛直構造(8)上に航空機エンジン(2)を取り付けるための取付方法であって、
リンク(26)を介して前記エンジンに対して既に連結済みの前記調整バー(28)を、前もって前記剛直構造(8)上に取り付けられた前記装置(33)上へと、取り付けるという取付ステップを具備し、
この取付ステップにおいては、
−前記退避位置とされた前記ピンシステム(32)に対して、前記第2の向き(46)に、前記ピン延出部材(60)を移動させるという移動操作を行い、これにより、前記ピン延出部材(60)を、前記調整バー(28)の前記第2通路(68)を通過させ、これにより、前記ピン延出部材(60)を前記延出位置とし;
−前記ピン延出部材(60)の位置を設定するという設定操作を行い、これにより、前記ピンシステム(32)を、前記第1および前記第2ピンシステム通路(38,68)を通過して移動させ、これにより、前記ピンシステム(32)を、前記通常的延出位置とする;
ことを特徴とする取付方法。
【請求項18】
請求項17記載の取付方法において、
前記取付ステップの前に、前記ピンシステム(32)を、前記通常的延出位置から前記退避位置へと移動させ、
この移動を、前記エンジンマウントに対する最終位置に向けての前記エンジンの吊り上げ時に、前記調整バー(28)に対して当接させることによって行うことを特徴とする取付方法。
【請求項19】
請求項17または18記載の取付方法において、
前記取付ステップを行った後に、前方エンジンアタッチメント(10)の取付と、後方エンジンアタッチメント(12)の取付と、を行うことを特徴とする取付方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか1項に記載の取付方法において、
前記設定操作を、前記調整バー(28)と前記ピン延出部材(60)とのそれぞれに対して対向した当接ポイントを有したツール(80)を使用しつつ、ネジという態様とされた前記ピン延出部材(60)を、前記ピンシステム(32)に対して回転させることによって、行うことを特徴とする取付方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の取付方法において、
前記設定操作を、前記ピンシステム(32)の端部に取り付けられたオリーブ形状のガイド(78)を使用して行うことを特徴とする取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6D】
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【公表番号】特表2009−506925(P2009−506925A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528525(P2008−528525)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065883
【国際公開番号】WO2007/028764
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)