船外機
【課題】エンジンからオイルが排出され易い構成を採りながら、横倒し状態でオイルがオイルパンからエンジンに逆流することがないようにする。
【解決手段】オイルパン25の上端部に、互いに対向する複数の板状部材(上部プレート42と下部プレート43)からなる蓋体を設ける。上部プレート42と下部プレート43との間にオイル通路形成用の空間S1を形成する。上部プレート42と下部プレート43における前記空間S1と対応する部位に第1の連通孔46と第2の連通孔52とを穿設する。これらの連通孔46,52を、平面視において上部、下部プレート46,52の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けた。
【解決手段】オイルパン25の上端部に、互いに対向する複数の板状部材(上部プレート42と下部プレート43)からなる蓋体を設ける。上部プレート42と下部プレート43との間にオイル通路形成用の空間S1を形成する。上部プレート42と下部プレート43における前記空間S1と対応する部位に第1の連通孔46と第2の連通孔52とを穿設する。これらの連通孔46,52を、平面視において上部、下部プレート46,52の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパンからオイルがエンジンに逆流するのを防ぐ逆流防止構造を備えた船外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンを搭載した船外機においては、船体から取外して横倒しの状態で運搬したり載置すると、オイルパン内のオイルがエンジン内に逆流することがある。このような場合、オイルがたとえばブリーザーホースを通ってサイレンサから外部に漏洩するおそれがある。
【0003】
このようなオイルのエンジン側への逆流を防ぐための逆流防止構造を備えた船外機としては、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に開示された船外機は、船体に操舵自在に支持されたアッパーケーシングと、このアッパーケーシングの上に取付けられたガイドエキゾーストと、このガイドエキゾーストの上に搭載されたエンジンと、前記ガイドエキゾーストの下面に下方へ延びるように取付けられたオイルパンとを備えている。
【0004】
前記エンジンの下端部には、オイルを排出するためのオイル戻し通路が形成され、前記ガイドエキゾーストには、オイルを前記オイル戻し通路からオイルパン内に流下させるためのオイル孔が穿設されている。このオイル孔は、平面視においてオイルパンの略中央部に位置付けられており、オイルパンの開口部分に較べて開口面積が小さくなるように形成されている。
【0005】
この従来の船外機に設けられているオイルの逆流防止構造によれば、船外機を船体から取外して地面に横倒しの状態で載置した状態では、オイル孔がオイルパンの上下方向の略中央部に位置することになる。このため、この船外機においては、横倒し状態でもオイルパン内にオイルの大部分がオイル孔より下に溜まる状態で残る。
【特許文献1】特公平4−11438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されているオイルの逆流防止構造では、船外機が横倒し状態となったときにオイル孔より上にあるオイルは、オイル孔からエンジンに逆流してしまう。このような不具合を解消するためには、オイル孔の孔径をさらに小さく形成することが考えられる。
【0007】
しかし、このようにオイル孔を小さく形成すると、運転時にオイルがエンジンからオイルパン内に流下し難くなり、オイルがクランク室やカム室に溜まってしまうおそれがある。クランク室やカム室に貯留されたオイルが回転する部材に接触すると、回転負荷となり、エンジンの出力が低下してしまう。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、エンジンからオイルが排出され易い構成を採りながら、横倒し状態でオイルがオイルパンからエンジンに逆流することがない船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る船外機は、4サイクルエンジンと、このエンジンのオイルが上端部から流下するオイルパンとを備えた船外機において、前記オイルパンの上端部に、互いに対向する複数の板状部材によって構成された蓋体を設け、これらの板状部材どうしの間にオイル通路形成用の空間を形成し、これらの板状部材における前記空間と対応する部位に、上面側と下面側とを連通する連通孔をそれぞれ穿設し、これらの連通孔を、平面視において前記板状部材の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けたものである。
【0010】
請求項2に記載した発明に係る船外機は、請求項1に記載した船外機において、前記複数の板状部材のうち上側に位置する板状部材の連通孔の孔径を、下側に位置する板状部材の連通孔の孔径より大きく形成したものである。
【0011】
請求項3に記載した発明に係る船外機は、請求項1または請求項2に記載した船外機において、前記オイル通路形成用の空間内に、平面視において連通孔どうしの間に隔壁を設け、この隔壁を、上側に位置する板状部材と下側に位置する板状部材とを接続し、かつ平面視において連通孔どうしの間を横切って前記空間の水平方向の一端から他端の近傍まで延びるように形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンのオイルは、複数の連通孔と、板状部材どうしの間の空間とを通ってオイルパン内に流下する。船外機が横倒しの状態にある場合、これらの連通孔は、オイルパンの上部と下部とに対応する位置にある。オイルパン内のオイルは、オイルパンの上部側に位置する連通孔から外に流出することはないから、複数の連通孔の全てをオイルが通過することはできない。
【0013】
このため、この船外機によれば、横倒し状態であってもオイルがオイルパンからエンジンに逆流することはない。しかも、連通孔の孔径は、オイルがエンジン内に滞留することがない孔径に形成することができる。
したがって、本発明によれば、エンジンからオイルが排出され易い構成を採りながら、横倒し状態でオイルがオイルパンからエンジンに逆流することがない船外機を提供することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、上側の板状部材と下側の板状部材との間の空間内にエンジンのオイルが流下し易くなる。このため、高速運転時などでエンジンへのオイルの供給量が増大し、クランク室の底に流下するオイルの量が増大したときにも、オイルがクランク室内に滞留することがないから、クランク室内で回転する部材がオイルに接触することによりエンジンの出力が低下することはない。また、下側に位置する板状部材の連通孔の孔径は相対的に小さいから、船外機が横倒しにされたときは、前記空間内にオイルパン内のオイルが流出し難くなる。
【0015】
したがって、この発明によれば、横倒しにされたときにオイルパン内のオイルが流出することがないばかりか、高出力が得られる船外機を提供することができる。特に、この発明によれば、板状部材の連通孔の孔径と、板状部材間の空間の容積とをそれぞれ変えることにより、オイルのエンジン側への逆流を防止しながら、オイルパンに戻るオイルの流量や流速(オイルの戻り易さ)を最適にすることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、船外機が横倒しになった状態で複数の連通孔の高低差が小さくなるような場合であっても、隔壁によって実質的な高低差を大きくすることができる。このため、オイルがエンジンに逆流するのを確実に防ぎながら、連通孔を形成する位置の設計上の自由度を大きくとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る船外機の一実施の形態を図1〜図7によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る船外機の側面図、図2は要部を拡大して示す断面図、図3はガイドエキゾーストとオイルパンの平面図である。図4はオイルパンの平面図、図5はオイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。図6は上部プレートの平面図、図7は下部プレートの平面図である。図4、図6および図7においては、図5に示すオイルパン、上部・下部プレートの破断位置をV−V線によって示す。
【0018】
これらの図において、符号1で示すものは、この実施の形態による船外機1を示す。この船外機1は、図1に示すように、船体2の船尾板3にクランプブラケット4とスイベルブラケット5とを介して操舵自在かつチルト可能に支持されたアッパーケーシング6と、このアッパーケーシング6の下端部に取付けられたロアケーシング7と、このロアケーシング7に回転自在に設けられたプロペラ8と、前記アッパーケーシング6の上端部に取付けられたガイドエキゾースト9と、このガイドエキゾースト9の上部に搭載されたエンジン10と、このエンジン10を覆うカウリング11などによって構成されている。
【0019】
前記アッパーケーシング6は、図2に示すように、一体成形により一体に形成された外壁12と内壁13とを備えている。前記外壁12は、アッパーケーシング6の外観をなすものであり、前記内壁13は、排ガスと冷却水とを排出する通路を形成するためのものである。前記内壁13の上端部は、上下方向に延びる縦壁13aと、水平方向に延びる底壁13bとによって、上方に向けて開放する箱状に形成されている。以下においては、この箱状に形成された内壁13の上端部を単に内壁13の箱状部14という。前記底壁13bには、後述する排気管15の下端部が挿入される第1の円形孔16と、後述する冷却水供給用パイプ17が挿通される第2の円形孔18とが穿設されている。
【0020】
前記エンジン10は、水冷式4サイクル多気筒エンジンで、図1および図2に示すように、クランクケース21、シリンダボディ22、シリンダヘッド23、ヘッドカバー24およびオイルパン25などを備え、クランク軸26(図2参照)の軸線が上下方向を指向する状態でガイドエキゾースト9の上に搭載されている。図2において、符号27はコンロッドを示し、28はピストンを示す。
【0021】
前記クランク軸26の下端部には、ドライブシャフト31が一体に回転するように接続されている。このドライブシャフト31は、図1に示すように、アッパーケーシング6を上下方向に貫通してロアケーシング7内に挿入されており、ロアケーシング7内において前後進切替機構32を介してプロペラ軸33に接続されている。このドライブシャフト31の中間部分には、冷却水をエンジン10に供給するための冷却水ポンプ34が設けられている。
【0022】
前記エンジン10は、クランク室35の底にオイルが流下するように形成されている。前記クランク室35の底の一部を構成するシリンダボディ22の下端部には、オイルをクランク室35内から後述するオイルパン25内に流下させるためのオイル出口孔36が形成されている。
また、前記シリンダボディ22の下端部には、図2に示すように、このエンジン10の排ガス出口37、冷却水出口38、オイル入口39および冷却水入口40がそれぞれ下方に向けて開口するように形成されている。
【0023】
前記オイルパン25は、図2に示すように、上方に向けて開放する箱状であって、図3に示すように、平面視においてL字状に形成されている。このオイルパン25における前記L字を構成する2辺に挟まれた部位には、船外機1の左側と後方とに向けて開放する凹部41が形成されている。
【0024】
また、前記オイルパン25は、図2に示すように、前記シリンダボディ22の下端部に後述する上部プレート42と下部プレート43とを介して取付用ボルト44によって取付けられている。前記上部プレート42とシリンダボディ22との間には、オイルが漏洩するのを防ぐためにシール部材45が介装されている。このシール部材45は、後述する上部プレート42の上面(図6参照)と略同じ形状に形成されている。
【0025】
上部プレート42と下部プレート43とは、図2および図5に示すように、シリンダボディ22の前記オイル出口孔36とオイルパン25内との間にオイルの逆流を防ぐオイル通路(後述する空間S1)を形成するためのものである。これら両プレートは、図5〜図7に示すように、それぞれ板状に形成されている。また、これら両プレートの外形形状は、図6および図7に示すように、前記オイルパン25の外形形状と同じ形状に形成されている。前記上部プレート42が本発明でいう上側に位置する板状部材を構成し、前記下部プレート43が本発明でいう下側に位置する板状部材を構成している。また、これらの上部プレート42と下部プレート43とによって、本発明でいうオイルパンの蓋体が構成されている。なお、図4に示すオイルパン25と、図6に示す上部プレート42と、図7に示す下部プレート43とは、これらの図の右側の部位が船外機前側に位置するようにエンジン10に取付けられる。
【0026】
上部プレート42は、厚みが一定の金属板によって形成されており、図6に示すように、オイルを流下させるための第1の連通孔46と、エンジン10に供給するオイルを通すためのオイル孔47と、前記オイルパン取付用ボルト44を挿通させるための複数の貫通孔48が穿設されている。
【0027】
前記第1の連通孔46は、この実施の形態においては、上部プレート42における船外機右側の後端部に、上部プレート42の上面側と下面側とを連通するように形成されている。前記第1の連通孔46は、オイルパン25、上部プレート43、下部プレート44をシリンダボディ22に取付けた状態で前記オイル出口孔36の開口(図示せず)と対向するように位置付けられている。
【0028】
この実施の形態による第1の連通孔46の孔径は、オイルがエンジン運転時にクランク室35内に滞留することなくオイル出口孔36から第1の連通孔46を通って前記空間S内に流れ込むことができるような必要最小限の孔径に設定されている。なお、第1の連通孔46とオイル出口孔36の孔径は、図6中に二点鎖線で示したように拡げることができる。
【0029】
このように第1の連通孔46の孔径を相対的に大きく形成することにより、オイルがクランク室35内から空間S1内に流下し易くなる。このため、クランク室35の底に流下したオイルは、エンジン10の運転域が高速、高回転運転域にあるとき(クランク室35の底に流下するオイルの量が最大になるとき)にも速やかに前記空間S1内に流下する。
【0030】
前記オイル孔47は、図2に示すように、前記シリンダボディ22に形成されたオイル入口39と、オイルパン25内に設けられたオイルパイプ49の上端開口とを連通している。オイル入口39は、シリンダヘッド23に設けられたオイルポンプ50のオイル吸引口50aに接続されている。前記オイルパイプ49は、オイルパン25内のオイルを吸い上げるためのもので、上端部が前記上部プレート42に接続されてオイルパン25内を上下方向に延びている。このオイルパイプ49の下端部には、ストレーナ51が取付けられている。このオイルパイプ49の支持は、上部プレート42にオイルパイプ49の上端を溶接することによって行ったり、ブラケット(図示せず)を使用してオイルパン25に接続することによって行うことができる。
【0031】
前記下部プレート43は、金属板の中央部を凹ませた形状に形成されている。詳述すると、この下部プレート43は、図5および図7に示すように、水平方向に延びる平板部43aと、この平板部43aの外縁部分から上方に突出する突条部43bとによって構成されている。前記平板部43aには、オイルを流下させるための第2の連通孔52と、前記オイルパイプ49を挿通させるための貫通孔53と、前記オイルパン取付用ボルト44を挿通させるための複数の貫通孔54とが穿設されている。この平板部43aの下面は、前記オイルパン25の上端に形成された取付合面55(図3および図4参照)と密着するように平坦に形成されている。
【0032】
前記第2の連通孔52は、下部プレート43における船外機左側の前端部に位置付けられており、前記平板部43aの上面側と下面側とを連通するように形成されている。すなわち、前記第1の連通孔46と前記第2の連通孔52とは、平面視において上部プレート42および下部プレート43の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けられている。この実施の形態においては、図6において実線で示す第1の連通孔46の孔径と、前記第2の連通孔52の孔径とは同じ寸法に形成されている。
【0033】
前記突条部43bは、前記平板部43aの外縁に沿って途切れることなく一連に形成されている。この突条部43bの高さは、前記平板部43aと上部プレート42との間に空間S1が形成されるように、予め定めた寸法に形成されている。この予め定めた寸法とは、たとえば、図5に示すように、上部プレート42に下部プレート43を重ねた状態で前記突条部43bの内側に形成された空間S1がエンジン運転時にオイルで略満たされるような寸法に設定されている。すなわち、空間S1の容積は、オイルの供給量が最大となるときにクランク室35の底にオイルが滞留することがなく、しかも、空間S1内に空所が形成されることがないように、換言すれば、必要最小限の容積となるように設定されている。
【0034】
これらの上部プレート42と下部プレート43とは、互いに重ねた状態でオイルパン25の上に載せられ、このオイルパン25とともに取付用ボルト44によってシリンダボディ22に取付けられている。この取付用ボルト44は、オイルパン25の上端部に穿設された複数の貫通孔56(図3および図4参照)と、上部プレート42の貫通孔48と、下部プレート43の貫通孔54とに下方から挿通され、シリンダボディ22に螺着されている。すなわち、オイルパン25、プレート42および下部プレート43は、共締めによってシリンダボディ22に取付けられている。
【0035】
前記ガイドエキゾースト9は、金属材料によって板状に形成されており、図示していないマウント部材を介してハンドル部材61(図1参照)に支持されている。前記ハンドル部材61は、上下方向に延びるステアリング軸(図示せず)の上端部に設けられており、このステアリング軸を介して前記スイベルブラケット5に回動自在に支持されている。ステアリング軸の下端部には、図1に示すように、連結部材62を介してアッパーケーシング6の下部が取付けられている。
【0036】
また、このガイドエキゾースト9は、前記アッパーケーシング6の外壁12によって囲まれた空間を上方から塞ぐ形状に形成されている。前記アッパーケーシング6の前記箱状部14は、ガイドエキゾースト9をアッパーケーシング6に取付けることによって上方から閉塞される。
【0037】
このガイドエキゾースト9の上端部には、図3に示すように、平坦面からなるエンジン用取付座63が形成されている。この取付座63には、エンジン固定用のボルト(図示せず)を挿通させるための複数の貫通孔64が穿設されている。エンジン固定用のボルトは、ガイドエキゾースト9の下方から前記貫通孔64に挿入され、クランクケース21およびシリンダボディ22の下端部に螺着される。前記取付座63には、平面視において取付座63と略同じ形状のシール部材65(図2参照)が重ねられ、このシール部材65を介してエンジン10が載せられている。
【0038】
このガイドエキゾースト9には、図2および図3に示すように、前記オイルパン25を挿入するための穴71と、前記ドライブシャフト31を挿通するための貫通孔72と、排ガスを通すための排気通路73と、エンジン10に供給する冷却水を通すための供給用冷却水通路74と、エンジン10から排出された冷却水を通すための排出用冷却水通路75とが形成されている。
【0039】
前記オイルパン25を挿入するための穴71は、ガイドエキゾースト9にこれを上下方向に貫通するように形成されている。また、この穴71の開口形状は、図3に示すように、平面視においてオイルパン25の形状に合わせたL字状に形成されている。この穴71の開口面積は、穴71内にオイルパン25を挿入した状態で穴壁面とオイルパン25との間に空間S2が形成される大きさに形成されている。前記オイルパン25は、図2に示すように、ガイドエキゾースト9の前記穴71を通され、前記アッパーケーシング6の箱状部14内に挿入されている。
【0040】
前記排気通路73は、ガイドエキゾースト9の下端部に取付けられた排気管15(図2参照)と前記シリンダボディ22の排ガス出口37とを連通するための通路で、ガイドエキゾースト9の一側部にガイドエキゾースト9を上下方向に貫通するように形成されている。前記一側部とは、ガイドエキゾースト9における前記オイルパン25の凹部41内に臨む部分である。このため、排気管15は、前記オイルパン25の凹部41内に挿入された状態でガイドエキゾースト9から下方に延びている。
【0041】
排気管15の上端部は、図示していない取付用ボルトによってガイドエキゾースト9の下端部に取付けられている。この排気管15の下端部は、図2に示すように、前記箱状部14に形成された第1の円形孔16に嵌合している。この嵌合部分には、排ガスが箱状部14内に漏洩するのを防ぐためにシール部材76が設けられている。排気管15から箱状部14の下方に排出された排ガスは、従来の船外機と同様に、前記アッパーケーシング6の内壁13内の下部から前記プロペラ軸33の周囲の空間を通ってプロペラ8の後方に排出される。
【0042】
前記供給用冷却水通路74は、ガイドエキゾースト9の下端部に取付けられた冷却水供給用パイプ17と、前記シリンダボディ22の冷却水入口40とを連通している。前記冷却水供給用パイプ17は、ガイドエキゾースト9から前記箱状部14の第2の円形孔18を通して下方に延ばされている。この冷却水供給用パイプ17の下端部は、前記冷却水ポンプ34の冷却水吐出口(図示せず)に接続されている。冷却水供給用パイプ17が箱状部14を貫通する部分には、シール部材77が設けられている。
【0043】
前記排出用冷却水通路75は、ガイドエキゾースト9の下方に位置する前記箱状部14内の空間と、前記シリンダボディ22の冷却水出口38とを連通している。この排出用冷却水通路75は、図3に示すように、ガイドエキゾースト9の上面に形成された凹溝75aと、この凹溝75aの底からガイドエキゾースト9を貫通するように下方に延びる貫通穴75bとから構成されている。この貫通穴75bの下端は、平面視において前記箱状部14の内側に位置付けられている。
【0044】
このため、エンジン10を冷却した冷却水は、冷却水出口38から排出用冷却水通路75を通って箱状部14内に流下する。箱状部14は、底壁13bの第1、第2の円形孔16,18が排気管15と冷却水供給用パイプ17とによって閉塞されているために、上方から冷却水が流下することにより内部に冷却水が溜まる。このように箱状部14内に冷却水が溜まることにより、オイルパン25と排気管15とが冷却水中に浸漬されることになって冷却される。
【0045】
箱状部14の上端部には、図示してはいないが、このように箱状部14内に溜められた冷却水を溢出させるための冷却水排出口が形成されている。この冷却水排出口から流出した冷却水は、アッパーケーシング6の外壁12と内壁13との間を流下し、アッパーケーシング6の下部内に形成されている水室(図示せず)に流れ込む。この水室は、船外機1の外の水が出入り自在となるように形成されている。
【0046】
上述したように構成された船外機1においては、エンジン運転時にはクランク室35内のオイルは、オイル出口孔36から上部プレート42の第1の連通孔46を通って前記空間S1内に流れ込む。そして、このオイルは、下部プレート43の上面に沿って空間S1内を横に流れ、第2の連通孔52からオイルパン25内に流下する。
【0047】
船外機1を船体2から取外し、たとえば船外機右側が下に位置するように地面に横倒し状態で載置した場合、上部プレート42と下部プレート43とは、図6および図7において、これら両図の下側が地面側に位置するように起立する。この場合、上部プレート42の第1の連通孔46は、オイルパン25の下部と対応する位置にあり、下部プレート43の第2の連通孔52は、オイルパン25の上部と対応する位置にある。
【0048】
このように横倒しになった状態において、オイルパン25内のオイルは、相対的に高い位置にある下部プレートの第2の連通孔52を通ることはできないから、エンジン10側へ逆流することはない。一方、船外機1の左側が地面に接するように横倒しになった状態では、上記とは逆に前記第2の連通孔52が相対的に低い位置にあるから、オイルパン25内のオイルは、この第2の連通孔52を通って前記空間S1内に流出する。しかし、第1の連通孔46は高い位置にあるから、前記空間S1内のオイルは、そこからエンジン10側へ逆流することはない。
【0049】
船外機1がその前端部または後端部が下に位置するように横倒しにされた場合であっても、第1の連通孔46と第2の連通孔52とのうち何れか一方が必ずオイルパン25の上部と対応する高い位置に位置するから、オイルパン25内のオイルが上部プレート42よりエンジン側へ逆流することはない。
【0050】
したがって、この実施の形態によれば、第1、第2の連通孔46,52の両方をオイルが通過することはできないから、横倒し状態であってもオイルがオイルパン25からエンジン10に逆流することはない。第1、第2の連通孔46,52の孔径は、オイルがクランク室35内に滞留することがない孔径に形成されているから、エンジン10からオイルが排出され易い構成を採りながら、横倒し状態でオイルがオイルパン25からエンジン10に逆流するのを防ぐことができる。
【0051】
また、図6中に二点鎖線で示したように、上部プレート42の第1の連通孔46の孔径を下部プレート43の第2の連通孔52の孔径より大きく形成することにより、上部プレート42と下部プレート43との間の空間S1内にエンジン10のオイルを流下し易くすることができる。このため、この構成を採ることにより、高速運転時などでエンジンへのオイルの供給量が増大し、クランク室35の底に流下するオイルの量が増大したときにも、オイルがクランク室35内に滞留するのを確実に防ぐことができる。この結果、クランク室35内で回転するクランク軸26がオイルに接触することによりエンジンの出力が低下するのを防ぐことができる。また、下部プレート43の第2の連通孔52の孔径は必要最小限の大きさに形成されているから、この第2の連通孔52が上側に位置するように船外機1が横倒しにされたときにオイルパン25内のオイルの液面が第2の連通孔52に達し難くなる。
【0052】
したがって、第1の連通孔46の孔径を相対的に大きく形成することによって、横倒しにされたときにオイルパン25内のオイルが流出することがないばかりか、高出力が得られる船外機1を提供することができる。特に、この実施の形態によれば、第1、第2の連通孔46,52の孔径と、前記空間S1の容積とをそれぞれ変えることにより、オイルのエンジン10側への逆流を防止しながら、オイルパン25に戻るオイルの流量や流速(オイルの戻り易さ)を最適にすることができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
請求項3に記載した発明に係る船外機の一実施の形態を図8〜図11によって詳細に説明する。
図8はオイルパンの平面図、図9はオイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。図10は上部プレートの平面図、図11は下部プレートの平面図である。図8、図10および図11においては、図9に示すオイルパン、上部・下部プレートの破断位置をV−V線によって示す。これらの図において、前記図1〜図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0054】
この実施の形態による上部プレート42の第1の連通孔46は、上部プレート42における船外機右側の後端部に穿設されている。この第1の連通孔46は、この実施の形態を採る場合であっても、図10中に二点鎖線で示すように、相対的に孔径が大きくなるように形成することができる。
【0055】
この実施の形態による下部プレート43の第2の連通孔52は、下部プレート43における船外機右側の前端部であって、平面視において、前記第1の連通孔46より船外機右側にずれる位置に穿設されている。すなわち、この実施の形態においても、前記第1の連通孔46と前記第2の連通孔52とは、平面視において上部プレート42および下部プレート43の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けられている。なお、図8に示すオイルパンと、図10に示す上部プレート42と、図11に示す下部プレート43とは、これらの図の右側の部位が船外機前側に位置するようにエンジン10に取付けられる。
【0056】
前記上部プレート42のオイル孔47と、下部プレート43の貫通孔53とは、図10および図11に示すように、上部プレート47、下部プレート43における船外機左側の前端部に穿設されている。
【0057】
この実施の形態による下部プレート43には、図9および図11に示すように、第1の隔壁81と第2の隔壁82とが一体成形により一体に形成されている。これらの第1、第2の隔壁81,82は、平面視において前記第1の連通孔46と第2の連通孔52との間に位置するように設けられている。これら第1、第2の隔壁81,82の高さは、図9に示すように、下部プレート43に上部プレート42を重ねた状態で第1、第2の隔壁81,82の上端面が上部プレート42の下面に接触するように形成されている。
【0058】
前記第1の隔壁81は、図11に示すように、下部プレート43の後部83より左右方向に広くなるように形成された前部84内で左右方向に延び、前部84内を前後方向に仕切るように形成されている。第1の隔壁81の船外機右側の端部は、下部プレート43の突条部43bに接続され、船外機左側の端部は、貫通孔53の周囲に形成された筒状部85に接続されている。すなわち、第1の隔壁81は、平面視において第1、第2の連通孔46,52どうしの間を横切って空間S1の水平方向の一端(船外機右側の端部)から他端の近傍まで延びるように形成されている。
【0059】
前記第2の隔壁82は、図11に示すように、下部プレート43の後部83内を左右方向に延び、後部83内を前後方向に仕切るように形成されている。詳述すると、第2の隔壁82の船外機左側の端部は、下部プレート43の突条部43bに接続され、船外機右側の端部は、後部83内であって後部83と前部84との境界部分の近傍に位置付けられている。
【0060】
この実施の形態による第2の隔壁82は、船外機左側の端部から右側の端部に向かうにしたがって漸次前側に位置するように傾斜しており、平面視において、上部プレート42の第1の連通孔46より船外機前側に位置するように形成されている。すなわち、第2の隔壁82は、平面視において第1、第2の連通孔46,52どうしの間を横切って空間S1の水平方向の一端(船外機左側の端部)から他端の近傍まで延びるように形成されている。
【0061】
この実施の形態によれば、船外機1を船体2から取外し、たとえば船外機右側が下に位置するように地面に横倒し状態で載置した場合、上部プレート42と下部プレート43とは、図10および図11において、これら両図の下側が地面側に位置するように起立する。この場合、第1の連通孔46と第2の連通孔52とは、両方ともオイルパン25の下部と対応する位置にある。
【0062】
このとき、オイルパン25内のオイルは、第2の連通孔52から空間S1内に流出する。しかし、この横倒しの状態においては、第1の連通孔46と第2の連通孔52との間に第1の隔壁81が空間S1の底から上端部の近傍まで延びるように位置しているから、オイルは、第1の隔壁81よって堰き止められ、第1の連通孔46側(エンジン10側)へ流れることはない。
【0063】
一方、船外機1の左側が地面に接するように横倒しになった状態では、上記とは逆に第1、第2の連通孔46,52の位置が高くなる。このとき、オイルパン25内がオイルで満たされるように大量のオイルがオイルパン25内に貯留されていた場合は、第2の連通孔52から空間S1内にオイルが流出するおそれがある。第2の連通孔52から流出したオイルは、第1の隔壁81と突条部83bとの間の隙間を通って空間S1内の後側へも浸入し、後部83内に溜まるようになる。
しかし、後部83内は、第2の隔壁82によって前後方向に仕切られているから、オイルは、その液面が第2の隔壁82を越えるまでは第2の隔壁82より船外機前側に溜められるから、この場合にもオイルのエンジン10側への逆流を防ぐことができる。
【0064】
船外機1がその前端部または後端部が下に位置するように横倒しにされた場合は、第1の連通孔46と第2の連通孔52とのうち何れか一方が必ずオイルパン25の上部と対応する高い位置に位置するから、オイルパン25内のオイルが上部プレート42よりエンジン側へ逆流することはない。
【0065】
したがって、この実施の形態においても第1の実施の形態を採るときと同様にオイルのエンジン10側への逆流を防止することができる。また、この実施の形態においても、第1の連通孔46の孔径を図10中に二点鎖線で示すように大きく形成することにより、前記空間S1内にエンジン10のオイルを流下し易くすることができる。
【0066】
上述した実施の形態においては、ガイドエキゾースト9を貫通するように排出用冷却水通路75を形成しているが、冷却水を箱状部14内に排出するためには、オイルパン挿入用の穴71内に冷却水を排出する構成を採ることができる。また、ガイドエキゾースト9に形成されている各穴、通路などの位置は、この実施の形態に限定されることはなく、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る船外機の側面図である。
【図2】要部を拡大して示す断面図である。
【図3】ガイドエキゾーストとオイルパンの平面図である。
【図4】オイルパンの平面図である。
【図5】オイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。
【図6】上部プレートの平面図である。
【図7】下部プレートの平面図である。
【図8】オイルパンの平面図である。
【図9】オイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。
【図10】上部プレートの平面図である。
【図11】下部プレートの平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…船外機、10…エンジン、25…オイルパン、36…オイル出口孔、42…上部プレート、43…下部プレート、46…第1の連通孔、52…第2の連通孔、81…第1の隔壁、82…第2の隔壁、S1…空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパンからオイルがエンジンに逆流するのを防ぐ逆流防止構造を備えた船外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンを搭載した船外機においては、船体から取外して横倒しの状態で運搬したり載置すると、オイルパン内のオイルがエンジン内に逆流することがある。このような場合、オイルがたとえばブリーザーホースを通ってサイレンサから外部に漏洩するおそれがある。
【0003】
このようなオイルのエンジン側への逆流を防ぐための逆流防止構造を備えた船外機としては、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に開示された船外機は、船体に操舵自在に支持されたアッパーケーシングと、このアッパーケーシングの上に取付けられたガイドエキゾーストと、このガイドエキゾーストの上に搭載されたエンジンと、前記ガイドエキゾーストの下面に下方へ延びるように取付けられたオイルパンとを備えている。
【0004】
前記エンジンの下端部には、オイルを排出するためのオイル戻し通路が形成され、前記ガイドエキゾーストには、オイルを前記オイル戻し通路からオイルパン内に流下させるためのオイル孔が穿設されている。このオイル孔は、平面視においてオイルパンの略中央部に位置付けられており、オイルパンの開口部分に較べて開口面積が小さくなるように形成されている。
【0005】
この従来の船外機に設けられているオイルの逆流防止構造によれば、船外機を船体から取外して地面に横倒しの状態で載置した状態では、オイル孔がオイルパンの上下方向の略中央部に位置することになる。このため、この船外機においては、横倒し状態でもオイルパン内にオイルの大部分がオイル孔より下に溜まる状態で残る。
【特許文献1】特公平4−11438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されているオイルの逆流防止構造では、船外機が横倒し状態となったときにオイル孔より上にあるオイルは、オイル孔からエンジンに逆流してしまう。このような不具合を解消するためには、オイル孔の孔径をさらに小さく形成することが考えられる。
【0007】
しかし、このようにオイル孔を小さく形成すると、運転時にオイルがエンジンからオイルパン内に流下し難くなり、オイルがクランク室やカム室に溜まってしまうおそれがある。クランク室やカム室に貯留されたオイルが回転する部材に接触すると、回転負荷となり、エンジンの出力が低下してしまう。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、エンジンからオイルが排出され易い構成を採りながら、横倒し状態でオイルがオイルパンからエンジンに逆流することがない船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る船外機は、4サイクルエンジンと、このエンジンのオイルが上端部から流下するオイルパンとを備えた船外機において、前記オイルパンの上端部に、互いに対向する複数の板状部材によって構成された蓋体を設け、これらの板状部材どうしの間にオイル通路形成用の空間を形成し、これらの板状部材における前記空間と対応する部位に、上面側と下面側とを連通する連通孔をそれぞれ穿設し、これらの連通孔を、平面視において前記板状部材の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けたものである。
【0010】
請求項2に記載した発明に係る船外機は、請求項1に記載した船外機において、前記複数の板状部材のうち上側に位置する板状部材の連通孔の孔径を、下側に位置する板状部材の連通孔の孔径より大きく形成したものである。
【0011】
請求項3に記載した発明に係る船外機は、請求項1または請求項2に記載した船外機において、前記オイル通路形成用の空間内に、平面視において連通孔どうしの間に隔壁を設け、この隔壁を、上側に位置する板状部材と下側に位置する板状部材とを接続し、かつ平面視において連通孔どうしの間を横切って前記空間の水平方向の一端から他端の近傍まで延びるように形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンのオイルは、複数の連通孔と、板状部材どうしの間の空間とを通ってオイルパン内に流下する。船外機が横倒しの状態にある場合、これらの連通孔は、オイルパンの上部と下部とに対応する位置にある。オイルパン内のオイルは、オイルパンの上部側に位置する連通孔から外に流出することはないから、複数の連通孔の全てをオイルが通過することはできない。
【0013】
このため、この船外機によれば、横倒し状態であってもオイルがオイルパンからエンジンに逆流することはない。しかも、連通孔の孔径は、オイルがエンジン内に滞留することがない孔径に形成することができる。
したがって、本発明によれば、エンジンからオイルが排出され易い構成を採りながら、横倒し状態でオイルがオイルパンからエンジンに逆流することがない船外機を提供することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、上側の板状部材と下側の板状部材との間の空間内にエンジンのオイルが流下し易くなる。このため、高速運転時などでエンジンへのオイルの供給量が増大し、クランク室の底に流下するオイルの量が増大したときにも、オイルがクランク室内に滞留することがないから、クランク室内で回転する部材がオイルに接触することによりエンジンの出力が低下することはない。また、下側に位置する板状部材の連通孔の孔径は相対的に小さいから、船外機が横倒しにされたときは、前記空間内にオイルパン内のオイルが流出し難くなる。
【0015】
したがって、この発明によれば、横倒しにされたときにオイルパン内のオイルが流出することがないばかりか、高出力が得られる船外機を提供することができる。特に、この発明によれば、板状部材の連通孔の孔径と、板状部材間の空間の容積とをそれぞれ変えることにより、オイルのエンジン側への逆流を防止しながら、オイルパンに戻るオイルの流量や流速(オイルの戻り易さ)を最適にすることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、船外機が横倒しになった状態で複数の連通孔の高低差が小さくなるような場合であっても、隔壁によって実質的な高低差を大きくすることができる。このため、オイルがエンジンに逆流するのを確実に防ぎながら、連通孔を形成する位置の設計上の自由度を大きくとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る船外機の一実施の形態を図1〜図7によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る船外機の側面図、図2は要部を拡大して示す断面図、図3はガイドエキゾーストとオイルパンの平面図である。図4はオイルパンの平面図、図5はオイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。図6は上部プレートの平面図、図7は下部プレートの平面図である。図4、図6および図7においては、図5に示すオイルパン、上部・下部プレートの破断位置をV−V線によって示す。
【0018】
これらの図において、符号1で示すものは、この実施の形態による船外機1を示す。この船外機1は、図1に示すように、船体2の船尾板3にクランプブラケット4とスイベルブラケット5とを介して操舵自在かつチルト可能に支持されたアッパーケーシング6と、このアッパーケーシング6の下端部に取付けられたロアケーシング7と、このロアケーシング7に回転自在に設けられたプロペラ8と、前記アッパーケーシング6の上端部に取付けられたガイドエキゾースト9と、このガイドエキゾースト9の上部に搭載されたエンジン10と、このエンジン10を覆うカウリング11などによって構成されている。
【0019】
前記アッパーケーシング6は、図2に示すように、一体成形により一体に形成された外壁12と内壁13とを備えている。前記外壁12は、アッパーケーシング6の外観をなすものであり、前記内壁13は、排ガスと冷却水とを排出する通路を形成するためのものである。前記内壁13の上端部は、上下方向に延びる縦壁13aと、水平方向に延びる底壁13bとによって、上方に向けて開放する箱状に形成されている。以下においては、この箱状に形成された内壁13の上端部を単に内壁13の箱状部14という。前記底壁13bには、後述する排気管15の下端部が挿入される第1の円形孔16と、後述する冷却水供給用パイプ17が挿通される第2の円形孔18とが穿設されている。
【0020】
前記エンジン10は、水冷式4サイクル多気筒エンジンで、図1および図2に示すように、クランクケース21、シリンダボディ22、シリンダヘッド23、ヘッドカバー24およびオイルパン25などを備え、クランク軸26(図2参照)の軸線が上下方向を指向する状態でガイドエキゾースト9の上に搭載されている。図2において、符号27はコンロッドを示し、28はピストンを示す。
【0021】
前記クランク軸26の下端部には、ドライブシャフト31が一体に回転するように接続されている。このドライブシャフト31は、図1に示すように、アッパーケーシング6を上下方向に貫通してロアケーシング7内に挿入されており、ロアケーシング7内において前後進切替機構32を介してプロペラ軸33に接続されている。このドライブシャフト31の中間部分には、冷却水をエンジン10に供給するための冷却水ポンプ34が設けられている。
【0022】
前記エンジン10は、クランク室35の底にオイルが流下するように形成されている。前記クランク室35の底の一部を構成するシリンダボディ22の下端部には、オイルをクランク室35内から後述するオイルパン25内に流下させるためのオイル出口孔36が形成されている。
また、前記シリンダボディ22の下端部には、図2に示すように、このエンジン10の排ガス出口37、冷却水出口38、オイル入口39および冷却水入口40がそれぞれ下方に向けて開口するように形成されている。
【0023】
前記オイルパン25は、図2に示すように、上方に向けて開放する箱状であって、図3に示すように、平面視においてL字状に形成されている。このオイルパン25における前記L字を構成する2辺に挟まれた部位には、船外機1の左側と後方とに向けて開放する凹部41が形成されている。
【0024】
また、前記オイルパン25は、図2に示すように、前記シリンダボディ22の下端部に後述する上部プレート42と下部プレート43とを介して取付用ボルト44によって取付けられている。前記上部プレート42とシリンダボディ22との間には、オイルが漏洩するのを防ぐためにシール部材45が介装されている。このシール部材45は、後述する上部プレート42の上面(図6参照)と略同じ形状に形成されている。
【0025】
上部プレート42と下部プレート43とは、図2および図5に示すように、シリンダボディ22の前記オイル出口孔36とオイルパン25内との間にオイルの逆流を防ぐオイル通路(後述する空間S1)を形成するためのものである。これら両プレートは、図5〜図7に示すように、それぞれ板状に形成されている。また、これら両プレートの外形形状は、図6および図7に示すように、前記オイルパン25の外形形状と同じ形状に形成されている。前記上部プレート42が本発明でいう上側に位置する板状部材を構成し、前記下部プレート43が本発明でいう下側に位置する板状部材を構成している。また、これらの上部プレート42と下部プレート43とによって、本発明でいうオイルパンの蓋体が構成されている。なお、図4に示すオイルパン25と、図6に示す上部プレート42と、図7に示す下部プレート43とは、これらの図の右側の部位が船外機前側に位置するようにエンジン10に取付けられる。
【0026】
上部プレート42は、厚みが一定の金属板によって形成されており、図6に示すように、オイルを流下させるための第1の連通孔46と、エンジン10に供給するオイルを通すためのオイル孔47と、前記オイルパン取付用ボルト44を挿通させるための複数の貫通孔48が穿設されている。
【0027】
前記第1の連通孔46は、この実施の形態においては、上部プレート42における船外機右側の後端部に、上部プレート42の上面側と下面側とを連通するように形成されている。前記第1の連通孔46は、オイルパン25、上部プレート43、下部プレート44をシリンダボディ22に取付けた状態で前記オイル出口孔36の開口(図示せず)と対向するように位置付けられている。
【0028】
この実施の形態による第1の連通孔46の孔径は、オイルがエンジン運転時にクランク室35内に滞留することなくオイル出口孔36から第1の連通孔46を通って前記空間S内に流れ込むことができるような必要最小限の孔径に設定されている。なお、第1の連通孔46とオイル出口孔36の孔径は、図6中に二点鎖線で示したように拡げることができる。
【0029】
このように第1の連通孔46の孔径を相対的に大きく形成することにより、オイルがクランク室35内から空間S1内に流下し易くなる。このため、クランク室35の底に流下したオイルは、エンジン10の運転域が高速、高回転運転域にあるとき(クランク室35の底に流下するオイルの量が最大になるとき)にも速やかに前記空間S1内に流下する。
【0030】
前記オイル孔47は、図2に示すように、前記シリンダボディ22に形成されたオイル入口39と、オイルパン25内に設けられたオイルパイプ49の上端開口とを連通している。オイル入口39は、シリンダヘッド23に設けられたオイルポンプ50のオイル吸引口50aに接続されている。前記オイルパイプ49は、オイルパン25内のオイルを吸い上げるためのもので、上端部が前記上部プレート42に接続されてオイルパン25内を上下方向に延びている。このオイルパイプ49の下端部には、ストレーナ51が取付けられている。このオイルパイプ49の支持は、上部プレート42にオイルパイプ49の上端を溶接することによって行ったり、ブラケット(図示せず)を使用してオイルパン25に接続することによって行うことができる。
【0031】
前記下部プレート43は、金属板の中央部を凹ませた形状に形成されている。詳述すると、この下部プレート43は、図5および図7に示すように、水平方向に延びる平板部43aと、この平板部43aの外縁部分から上方に突出する突条部43bとによって構成されている。前記平板部43aには、オイルを流下させるための第2の連通孔52と、前記オイルパイプ49を挿通させるための貫通孔53と、前記オイルパン取付用ボルト44を挿通させるための複数の貫通孔54とが穿設されている。この平板部43aの下面は、前記オイルパン25の上端に形成された取付合面55(図3および図4参照)と密着するように平坦に形成されている。
【0032】
前記第2の連通孔52は、下部プレート43における船外機左側の前端部に位置付けられており、前記平板部43aの上面側と下面側とを連通するように形成されている。すなわち、前記第1の連通孔46と前記第2の連通孔52とは、平面視において上部プレート42および下部プレート43の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けられている。この実施の形態においては、図6において実線で示す第1の連通孔46の孔径と、前記第2の連通孔52の孔径とは同じ寸法に形成されている。
【0033】
前記突条部43bは、前記平板部43aの外縁に沿って途切れることなく一連に形成されている。この突条部43bの高さは、前記平板部43aと上部プレート42との間に空間S1が形成されるように、予め定めた寸法に形成されている。この予め定めた寸法とは、たとえば、図5に示すように、上部プレート42に下部プレート43を重ねた状態で前記突条部43bの内側に形成された空間S1がエンジン運転時にオイルで略満たされるような寸法に設定されている。すなわち、空間S1の容積は、オイルの供給量が最大となるときにクランク室35の底にオイルが滞留することがなく、しかも、空間S1内に空所が形成されることがないように、換言すれば、必要最小限の容積となるように設定されている。
【0034】
これらの上部プレート42と下部プレート43とは、互いに重ねた状態でオイルパン25の上に載せられ、このオイルパン25とともに取付用ボルト44によってシリンダボディ22に取付けられている。この取付用ボルト44は、オイルパン25の上端部に穿設された複数の貫通孔56(図3および図4参照)と、上部プレート42の貫通孔48と、下部プレート43の貫通孔54とに下方から挿通され、シリンダボディ22に螺着されている。すなわち、オイルパン25、プレート42および下部プレート43は、共締めによってシリンダボディ22に取付けられている。
【0035】
前記ガイドエキゾースト9は、金属材料によって板状に形成されており、図示していないマウント部材を介してハンドル部材61(図1参照)に支持されている。前記ハンドル部材61は、上下方向に延びるステアリング軸(図示せず)の上端部に設けられており、このステアリング軸を介して前記スイベルブラケット5に回動自在に支持されている。ステアリング軸の下端部には、図1に示すように、連結部材62を介してアッパーケーシング6の下部が取付けられている。
【0036】
また、このガイドエキゾースト9は、前記アッパーケーシング6の外壁12によって囲まれた空間を上方から塞ぐ形状に形成されている。前記アッパーケーシング6の前記箱状部14は、ガイドエキゾースト9をアッパーケーシング6に取付けることによって上方から閉塞される。
【0037】
このガイドエキゾースト9の上端部には、図3に示すように、平坦面からなるエンジン用取付座63が形成されている。この取付座63には、エンジン固定用のボルト(図示せず)を挿通させるための複数の貫通孔64が穿設されている。エンジン固定用のボルトは、ガイドエキゾースト9の下方から前記貫通孔64に挿入され、クランクケース21およびシリンダボディ22の下端部に螺着される。前記取付座63には、平面視において取付座63と略同じ形状のシール部材65(図2参照)が重ねられ、このシール部材65を介してエンジン10が載せられている。
【0038】
このガイドエキゾースト9には、図2および図3に示すように、前記オイルパン25を挿入するための穴71と、前記ドライブシャフト31を挿通するための貫通孔72と、排ガスを通すための排気通路73と、エンジン10に供給する冷却水を通すための供給用冷却水通路74と、エンジン10から排出された冷却水を通すための排出用冷却水通路75とが形成されている。
【0039】
前記オイルパン25を挿入するための穴71は、ガイドエキゾースト9にこれを上下方向に貫通するように形成されている。また、この穴71の開口形状は、図3に示すように、平面視においてオイルパン25の形状に合わせたL字状に形成されている。この穴71の開口面積は、穴71内にオイルパン25を挿入した状態で穴壁面とオイルパン25との間に空間S2が形成される大きさに形成されている。前記オイルパン25は、図2に示すように、ガイドエキゾースト9の前記穴71を通され、前記アッパーケーシング6の箱状部14内に挿入されている。
【0040】
前記排気通路73は、ガイドエキゾースト9の下端部に取付けられた排気管15(図2参照)と前記シリンダボディ22の排ガス出口37とを連通するための通路で、ガイドエキゾースト9の一側部にガイドエキゾースト9を上下方向に貫通するように形成されている。前記一側部とは、ガイドエキゾースト9における前記オイルパン25の凹部41内に臨む部分である。このため、排気管15は、前記オイルパン25の凹部41内に挿入された状態でガイドエキゾースト9から下方に延びている。
【0041】
排気管15の上端部は、図示していない取付用ボルトによってガイドエキゾースト9の下端部に取付けられている。この排気管15の下端部は、図2に示すように、前記箱状部14に形成された第1の円形孔16に嵌合している。この嵌合部分には、排ガスが箱状部14内に漏洩するのを防ぐためにシール部材76が設けられている。排気管15から箱状部14の下方に排出された排ガスは、従来の船外機と同様に、前記アッパーケーシング6の内壁13内の下部から前記プロペラ軸33の周囲の空間を通ってプロペラ8の後方に排出される。
【0042】
前記供給用冷却水通路74は、ガイドエキゾースト9の下端部に取付けられた冷却水供給用パイプ17と、前記シリンダボディ22の冷却水入口40とを連通している。前記冷却水供給用パイプ17は、ガイドエキゾースト9から前記箱状部14の第2の円形孔18を通して下方に延ばされている。この冷却水供給用パイプ17の下端部は、前記冷却水ポンプ34の冷却水吐出口(図示せず)に接続されている。冷却水供給用パイプ17が箱状部14を貫通する部分には、シール部材77が設けられている。
【0043】
前記排出用冷却水通路75は、ガイドエキゾースト9の下方に位置する前記箱状部14内の空間と、前記シリンダボディ22の冷却水出口38とを連通している。この排出用冷却水通路75は、図3に示すように、ガイドエキゾースト9の上面に形成された凹溝75aと、この凹溝75aの底からガイドエキゾースト9を貫通するように下方に延びる貫通穴75bとから構成されている。この貫通穴75bの下端は、平面視において前記箱状部14の内側に位置付けられている。
【0044】
このため、エンジン10を冷却した冷却水は、冷却水出口38から排出用冷却水通路75を通って箱状部14内に流下する。箱状部14は、底壁13bの第1、第2の円形孔16,18が排気管15と冷却水供給用パイプ17とによって閉塞されているために、上方から冷却水が流下することにより内部に冷却水が溜まる。このように箱状部14内に冷却水が溜まることにより、オイルパン25と排気管15とが冷却水中に浸漬されることになって冷却される。
【0045】
箱状部14の上端部には、図示してはいないが、このように箱状部14内に溜められた冷却水を溢出させるための冷却水排出口が形成されている。この冷却水排出口から流出した冷却水は、アッパーケーシング6の外壁12と内壁13との間を流下し、アッパーケーシング6の下部内に形成されている水室(図示せず)に流れ込む。この水室は、船外機1の外の水が出入り自在となるように形成されている。
【0046】
上述したように構成された船外機1においては、エンジン運転時にはクランク室35内のオイルは、オイル出口孔36から上部プレート42の第1の連通孔46を通って前記空間S1内に流れ込む。そして、このオイルは、下部プレート43の上面に沿って空間S1内を横に流れ、第2の連通孔52からオイルパン25内に流下する。
【0047】
船外機1を船体2から取外し、たとえば船外機右側が下に位置するように地面に横倒し状態で載置した場合、上部プレート42と下部プレート43とは、図6および図7において、これら両図の下側が地面側に位置するように起立する。この場合、上部プレート42の第1の連通孔46は、オイルパン25の下部と対応する位置にあり、下部プレート43の第2の連通孔52は、オイルパン25の上部と対応する位置にある。
【0048】
このように横倒しになった状態において、オイルパン25内のオイルは、相対的に高い位置にある下部プレートの第2の連通孔52を通ることはできないから、エンジン10側へ逆流することはない。一方、船外機1の左側が地面に接するように横倒しになった状態では、上記とは逆に前記第2の連通孔52が相対的に低い位置にあるから、オイルパン25内のオイルは、この第2の連通孔52を通って前記空間S1内に流出する。しかし、第1の連通孔46は高い位置にあるから、前記空間S1内のオイルは、そこからエンジン10側へ逆流することはない。
【0049】
船外機1がその前端部または後端部が下に位置するように横倒しにされた場合であっても、第1の連通孔46と第2の連通孔52とのうち何れか一方が必ずオイルパン25の上部と対応する高い位置に位置するから、オイルパン25内のオイルが上部プレート42よりエンジン側へ逆流することはない。
【0050】
したがって、この実施の形態によれば、第1、第2の連通孔46,52の両方をオイルが通過することはできないから、横倒し状態であってもオイルがオイルパン25からエンジン10に逆流することはない。第1、第2の連通孔46,52の孔径は、オイルがクランク室35内に滞留することがない孔径に形成されているから、エンジン10からオイルが排出され易い構成を採りながら、横倒し状態でオイルがオイルパン25からエンジン10に逆流するのを防ぐことができる。
【0051】
また、図6中に二点鎖線で示したように、上部プレート42の第1の連通孔46の孔径を下部プレート43の第2の連通孔52の孔径より大きく形成することにより、上部プレート42と下部プレート43との間の空間S1内にエンジン10のオイルを流下し易くすることができる。このため、この構成を採ることにより、高速運転時などでエンジンへのオイルの供給量が増大し、クランク室35の底に流下するオイルの量が増大したときにも、オイルがクランク室35内に滞留するのを確実に防ぐことができる。この結果、クランク室35内で回転するクランク軸26がオイルに接触することによりエンジンの出力が低下するのを防ぐことができる。また、下部プレート43の第2の連通孔52の孔径は必要最小限の大きさに形成されているから、この第2の連通孔52が上側に位置するように船外機1が横倒しにされたときにオイルパン25内のオイルの液面が第2の連通孔52に達し難くなる。
【0052】
したがって、第1の連通孔46の孔径を相対的に大きく形成することによって、横倒しにされたときにオイルパン25内のオイルが流出することがないばかりか、高出力が得られる船外機1を提供することができる。特に、この実施の形態によれば、第1、第2の連通孔46,52の孔径と、前記空間S1の容積とをそれぞれ変えることにより、オイルのエンジン10側への逆流を防止しながら、オイルパン25に戻るオイルの流量や流速(オイルの戻り易さ)を最適にすることができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
請求項3に記載した発明に係る船外機の一実施の形態を図8〜図11によって詳細に説明する。
図8はオイルパンの平面図、図9はオイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。図10は上部プレートの平面図、図11は下部プレートの平面図である。図8、図10および図11においては、図9に示すオイルパン、上部・下部プレートの破断位置をV−V線によって示す。これらの図において、前記図1〜図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0054】
この実施の形態による上部プレート42の第1の連通孔46は、上部プレート42における船外機右側の後端部に穿設されている。この第1の連通孔46は、この実施の形態を採る場合であっても、図10中に二点鎖線で示すように、相対的に孔径が大きくなるように形成することができる。
【0055】
この実施の形態による下部プレート43の第2の連通孔52は、下部プレート43における船外機右側の前端部であって、平面視において、前記第1の連通孔46より船外機右側にずれる位置に穿設されている。すなわち、この実施の形態においても、前記第1の連通孔46と前記第2の連通孔52とは、平面視において上部プレート42および下部プレート43の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けられている。なお、図8に示すオイルパンと、図10に示す上部プレート42と、図11に示す下部プレート43とは、これらの図の右側の部位が船外機前側に位置するようにエンジン10に取付けられる。
【0056】
前記上部プレート42のオイル孔47と、下部プレート43の貫通孔53とは、図10および図11に示すように、上部プレート47、下部プレート43における船外機左側の前端部に穿設されている。
【0057】
この実施の形態による下部プレート43には、図9および図11に示すように、第1の隔壁81と第2の隔壁82とが一体成形により一体に形成されている。これらの第1、第2の隔壁81,82は、平面視において前記第1の連通孔46と第2の連通孔52との間に位置するように設けられている。これら第1、第2の隔壁81,82の高さは、図9に示すように、下部プレート43に上部プレート42を重ねた状態で第1、第2の隔壁81,82の上端面が上部プレート42の下面に接触するように形成されている。
【0058】
前記第1の隔壁81は、図11に示すように、下部プレート43の後部83より左右方向に広くなるように形成された前部84内で左右方向に延び、前部84内を前後方向に仕切るように形成されている。第1の隔壁81の船外機右側の端部は、下部プレート43の突条部43bに接続され、船外機左側の端部は、貫通孔53の周囲に形成された筒状部85に接続されている。すなわち、第1の隔壁81は、平面視において第1、第2の連通孔46,52どうしの間を横切って空間S1の水平方向の一端(船外機右側の端部)から他端の近傍まで延びるように形成されている。
【0059】
前記第2の隔壁82は、図11に示すように、下部プレート43の後部83内を左右方向に延び、後部83内を前後方向に仕切るように形成されている。詳述すると、第2の隔壁82の船外機左側の端部は、下部プレート43の突条部43bに接続され、船外機右側の端部は、後部83内であって後部83と前部84との境界部分の近傍に位置付けられている。
【0060】
この実施の形態による第2の隔壁82は、船外機左側の端部から右側の端部に向かうにしたがって漸次前側に位置するように傾斜しており、平面視において、上部プレート42の第1の連通孔46より船外機前側に位置するように形成されている。すなわち、第2の隔壁82は、平面視において第1、第2の連通孔46,52どうしの間を横切って空間S1の水平方向の一端(船外機左側の端部)から他端の近傍まで延びるように形成されている。
【0061】
この実施の形態によれば、船外機1を船体2から取外し、たとえば船外機右側が下に位置するように地面に横倒し状態で載置した場合、上部プレート42と下部プレート43とは、図10および図11において、これら両図の下側が地面側に位置するように起立する。この場合、第1の連通孔46と第2の連通孔52とは、両方ともオイルパン25の下部と対応する位置にある。
【0062】
このとき、オイルパン25内のオイルは、第2の連通孔52から空間S1内に流出する。しかし、この横倒しの状態においては、第1の連通孔46と第2の連通孔52との間に第1の隔壁81が空間S1の底から上端部の近傍まで延びるように位置しているから、オイルは、第1の隔壁81よって堰き止められ、第1の連通孔46側(エンジン10側)へ流れることはない。
【0063】
一方、船外機1の左側が地面に接するように横倒しになった状態では、上記とは逆に第1、第2の連通孔46,52の位置が高くなる。このとき、オイルパン25内がオイルで満たされるように大量のオイルがオイルパン25内に貯留されていた場合は、第2の連通孔52から空間S1内にオイルが流出するおそれがある。第2の連通孔52から流出したオイルは、第1の隔壁81と突条部83bとの間の隙間を通って空間S1内の後側へも浸入し、後部83内に溜まるようになる。
しかし、後部83内は、第2の隔壁82によって前後方向に仕切られているから、オイルは、その液面が第2の隔壁82を越えるまでは第2の隔壁82より船外機前側に溜められるから、この場合にもオイルのエンジン10側への逆流を防ぐことができる。
【0064】
船外機1がその前端部または後端部が下に位置するように横倒しにされた場合は、第1の連通孔46と第2の連通孔52とのうち何れか一方が必ずオイルパン25の上部と対応する高い位置に位置するから、オイルパン25内のオイルが上部プレート42よりエンジン側へ逆流することはない。
【0065】
したがって、この実施の形態においても第1の実施の形態を採るときと同様にオイルのエンジン10側への逆流を防止することができる。また、この実施の形態においても、第1の連通孔46の孔径を図10中に二点鎖線で示すように大きく形成することにより、前記空間S1内にエンジン10のオイルを流下し易くすることができる。
【0066】
上述した実施の形態においては、ガイドエキゾースト9を貫通するように排出用冷却水通路75を形成しているが、冷却水を箱状部14内に排出するためには、オイルパン挿入用の穴71内に冷却水を排出する構成を採ることができる。また、ガイドエキゾースト9に形成されている各穴、通路などの位置は、この実施の形態に限定されることはなく、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る船外機の側面図である。
【図2】要部を拡大して示す断面図である。
【図3】ガイドエキゾーストとオイルパンの平面図である。
【図4】オイルパンの平面図である。
【図5】オイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。
【図6】上部プレートの平面図である。
【図7】下部プレートの平面図である。
【図8】オイルパンの平面図である。
【図9】オイルパンと上部・下部プレートとを示す断面図である。
【図10】上部プレートの平面図である。
【図11】下部プレートの平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…船外機、10…エンジン、25…オイルパン、36…オイル出口孔、42…上部プレート、43…下部プレート、46…第1の連通孔、52…第2の連通孔、81…第1の隔壁、82…第2の隔壁、S1…空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4サイクルエンジンと、
このエンジンのオイルが上端部から流下するオイルパンとを備えた船外機において、
前記オイルパンの上端部には、互いに対向する複数の板状部材によって構成された蓋体が設けられ、
これらの板状部材どうしの間にはオイル通路形成用の空間が形成され、
これらの板状部材における前記空間と対応する部位には、上面側と下面側とを連通する連通孔がそれぞれ穿設され、
これらの連通孔は、平面視において前記板状部材の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けられていることを特徴とする船外機。
【請求項2】
請求項1記載の船外機において、前記複数の板状部材のうち上側に位置する板状部材の連通孔の孔径は、下側に位置する板状部材の連通孔の孔径より大きく形成されていることを特徴とする船外機。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の船外機において、前記オイル通路形成用の空間内には、平面視において連通孔どうしの間に隔壁が設けられ、
この隔壁は、上側に位置する板状部材と下側に位置する板状部材とを接続し、かつ平面視において連通孔どうしの間を横切って前記空間の水平方向の一端から他端の近傍まで延びるように形成されていることを特徴とする船外機。
【請求項1】
4サイクルエンジンと、
このエンジンのオイルが上端部から流下するオイルパンとを備えた船外機において、
前記オイルパンの上端部には、互いに対向する複数の板状部材によって構成された蓋体が設けられ、
これらの板状部材どうしの間にはオイル通路形成用の空間が形成され、
これらの板状部材における前記空間と対応する部位には、上面側と下面側とを連通する連通孔がそれぞれ穿設され、
これらの連通孔は、平面視において前記板状部材の中心を挟んで一方と他方とに振り分けられる位置であって、船外機の左右方向と前後方向との両方にずれるような位置に設けられていることを特徴とする船外機。
【請求項2】
請求項1記載の船外機において、前記複数の板状部材のうち上側に位置する板状部材の連通孔の孔径は、下側に位置する板状部材の連通孔の孔径より大きく形成されていることを特徴とする船外機。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の船外機において、前記オイル通路形成用の空間内には、平面視において連通孔どうしの間に隔壁が設けられ、
この隔壁は、上側に位置する板状部材と下側に位置する板状部材とを接続し、かつ平面視において連通孔どうしの間を横切って前記空間の水平方向の一端から他端の近傍まで延びるように形成されていることを特徴とする船外機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−274837(P2008−274837A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118723(P2007−118723)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】
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