船舶用汚水分解処理装置
【課題】簡単かつコンパクトな構成で環境汚染を防止しつつ、船舶のトイレ等から排出された汚水を効果的に浄化する船舶用汚水分解処理装置を提供する。
【解決手段】船舶に設置された便器1から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室7〜11を備えた汚水浄化槽2と、この汚水浄化槽2により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽3と、上記汚水浄化槽2により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段13とを備えるとともに、上記余剰水貯留槽3の容量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定した。
【解決手段】船舶に設置された便器1から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室7〜11を備えた汚水浄化槽2と、この汚水浄化槽2により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽3と、上記汚水浄化槽2により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段13とを備えるとともに、上記余剰水貯留槽3の容量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶等に設置されてトイレ等から排出された汚水を簡単かつコンパクトな構成で効果的に浄化することができる船舶用汚水分解処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、船内に設置された便器と、この便器から排出された汚物が含まれる汚水を、微生物を担持した多数の担体に接触させて生物学的に処理する微生物反応槽と、この微生物反応槽内にエアを曝気する曝気手段と、上記微生物反応槽で処理された汚水を、微生物を担持した多数の担体で形成した濾材層で濾過する濾過槽とからなり、上記汚水を微生物反応槽と濾過槽で浄化してから船外に排出するように構成した船舶用トイレット装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−99890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された船舶用トイレット装置は、船内に設置された便器から排出される汚物を含む汚水を、微生物反応槽で曝気しながら多数の担体に接触させることにより生物学的に処理した後、濾過槽において濾材層で濾過してから船外に排出するように構成されているため、上記微生物反応槽および濾過槽により汚水を適正に浄化処理できれば、処理水をそのまま排出しても河川や海が汚染されるのを防止することが可能である。しかし、上記船舶用トイレット装置では、微生物反応槽および濾過槽において処理できずにグレーチング床下の沈降室内へ沈降した固形物を排出管により外部に放出するように構成されているため、この固形物を含んだ汚水によって河川や海が汚染されるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単かつコンパクトな構成で環境汚染を防止しつつ、船舶のトイレ等から排出された汚水を効果的に浄化することができる船舶用汚水分解処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、船舶に設置された便器から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を備えた汚水浄化槽と、この汚水浄化槽により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽と、上記汚水浄化槽により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段とを備えるとともに、上記余剰水貯留槽の容量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定したものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の船舶用汚水分解処理装置において、上記汚水浄化槽の上流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管と、上記浄化処理室内の浄化水量を検出する検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管を開放する開閉弁とを備えたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の船舶用汚水分解処理装置において、上記余剰水貯留槽内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽に設けられた浄化処理室の冷却水として供給する冷却水供給手段を備えたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置において、船内に設けられた熱源からの熱を上記汚水浄化槽の暖房用として供給することにより上記浄化処理室を加熱する加熱手段を備えたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置において、上記汚水浄化槽を第1コンテナ内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽を第2コンテナ内に収容し、この第2コンテナ上に上記第1コンテナを載置した状態で両コンテナを船体に固定したものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置において、船体の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部を上記余剰水貯留槽として利用したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、上記汚水浄化槽おいて便器から排出された乗組員の屎尿と便器用の洗浄水とを浄化処理するとともに、この浄化水を上記給水手段により上記便器用の洗浄水等として再利用するように構成したため、この洗浄水量を増減させることなく一定値に保持するとともに、航海中に徐々に蓄積される乗組員の屎尿量に対応した量の浄化水を、上記余剰水貯留槽内に貯留することにより、上記汚水が外部に排出されること起因した環境汚染の発生を確実に防止しつつ、航海を継続することができ、かつ上記浄化水貯留槽の容量を必要最小限に設定して上記船舶用汚水分解処理装置を簡単かつコンパクトに構成できるという利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明では、上記汚水浄化槽の上流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管と、上記浄化処理室内の浄化水量を検出する検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管を開放する開閉弁とを設けたため、船舶が揺れた場合においても、下流側の浄化処理室から浄化水が上流側の浄化処理室に逆流するのを効果的に防止し、上記下流側の中水貯留室内の水量を一定に維持できるとともに、浄化処理室において充分に処理されなかった処理水が上記導出管を介して下流側に導出されるのを防止することにより、下流側の浄化処理室の水質を良好に維持できるという利点がある。
【0014】
請求項3に係る発明では、上記余剰水貯留槽内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽に設けられた浄化処理室の冷却水として供給する冷却水供給手段を設けたため、赤道直下のような酷暑地域を航海する際において、上記各浄化処理室を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持することができるため、簡単な構成で上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0015】
請求項4に係る発明では、ボイラまたはエンジン等の熱源から供給された熱により上記汚水浄化槽を加熱するように構成したため、寒冷地域等を航海する際に、上記各浄化処理室を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持して、上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0016】
請求項5に係る発明では、上記汚水浄化槽を第1コンテナ内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽を第2コンテナ内に収容し、この第2コンテナ上に上記第1コンテナを載置した状態で両コンテナを船体に固定したため、上記船舶用汚水分解処理装置の設置面積を必要最小限に抑えつつ、所定の容量を有する上記汚水浄化槽および余剰水貯留槽を適正に設置できるという利点がある。
【0017】
請求項6に係る発明では、船体の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部を上記余剰水貯留槽として利用したため、船体を補強するために設けられた上記空間部の有効利用を図り、船体の内部スペースを狭めることなく、上記船舶用汚水分解処理装置を適正に設置できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る船舶用汚水分解処理装置の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線断面図である。
【図9】浄化水貯留室の連通路の具体的構成を示す側面断面図である。
【図10】本発明に係る船舶用汚水分解処理装置の別の実施形態を示す側面断面図である。
【図11】本発明に係る船舶用汚水分解処理装置のさらに別の実施形態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図3は、本発明に係る船舶用汚水分解処理装置の実施形態を示している。この船舶用汚水分解処理装置は、船内の便器1から排出された汚水を浄化処理する汚水浄化槽2と、この汚水浄化槽2により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽3とを有している。上記汚水浄化槽2は、第1コンテナ4内に収容された状態で船体内の所定位置に設置され、上記余剰水貯留槽3は、第2コンテナ5内に収容された状態で上記第1コンテナ4に隣接した位置に設置されている。
【0020】
上記汚水浄化槽2の内部は、排出管6を介して上記便器1の汚水排出部に接続された流量調整室7と、この流量調整室7から導出された汚泥を分解処理する汚泥分解室8と、上記流量調整室7から導出された排水を浄化処理する膜分離室9と、この膜分離室9から導出された処理水を浄化処理するカキ殻中性室10と、このカキ殻中性室10から導出された中水を浄化処理しつつ貯留する中水貯留室11とに区画されている。
【0021】
また、上記第1コンテナ4内には、中水貯留室11内の貯留水を、上記便器1に洗浄水として供給するとともに、船舶用機器の熱交換器等に冷却水として供給する給水手段13用の給水ポンプ14と、上記汚水浄化槽2内の各部にエアを供給するエア供給手段15用のブロア16とが配置された下部機械室17が設けられている。
【0022】
上記下部機械室17の上方には、図3および図4に示すように、膜分離室9内の処理水をカキ殻中性室10に移送する移送手段19の移送ポンプ20と、上記中水貯留室11内の貯留水を循環させる循環手段21の循環ポンプ22と、オゾン処理手段23とが配置された上部機械室24が設けられている。上記オゾン処理手段23には、オゾンを生成するオゾン生成器25と、このオゾン生成器25に送られる空気から窒素を除去して酸素濃度を高める窒素除去器26と、上記オゾン生成器25で生成されたオゾンを利用して酸化分解処理を行う噴流ボックス27,62とが設けられている。
【0023】
上記流量調整室7には、図5に示すように、便器1から排出管6を介して供給された汚水中のしさ(汚泥)を除去するしさ除去部31と、このしさ除去部31において汚泥が除去された汚水を計量しつつ、上記汚水浄化槽2の処理能力に応じた量の汚水を上記流量調整室7から膜分離室9に移送する計量移送手段32とが設けられている。
【0024】
上記しさ除去部31の下方には、上記エア供給手段15から供給されたエアの放出部34が配設され、上記しさ除去部31に捕集されたトイレットペーパ等を破砕して汚水に溶け易くするためのエアが上記放出部34から放出されるようになっている。また、上記流量調整室7の下部には、図6に示すように、エア供給手段15から供給されたエアを放出して流量調整室7内の汚水を撹拌する撹拌部35が設けられている。上記しさ除去部31において除去された汚泥および上記流量調整室7の底部に堆積した汚泥を含む汚水は、図示を省略したエアリフト手段を介して、例えば数日に一回程度の割合で上記汚泥分解室8に移送されるように構成されている。
【0025】
上記汚泥分解室8は、図7に示すように、エアリフト手段を介して流量調整室7から移送された汚水中の汚泥を分解処理する爆気室36と、この爆気室36からオーバフローすることにより供給された汚水中の汚泥等をオゾンにより酸化分解処理するオゾン反応室37とに区画されている。上記爆気室36の底部には、エア供給手段15から供給されたエアを放出して爆気室36内の汚水を撹拌する撹拌部38が設置されている。
【0026】
上記撹拌部38の上方には、エアを利用した好気性微生物の好気処理により上記爆気室36に供給された汚水中の汚泥成分を低分子化する好気処理部39が形成されるとともに、その周囲には嫌気性微生物の嫌気処理により上記汚泥成分を嫌気処理して低分子化する嫌気処理部40が設けられている。そして、上記好気処理部39における好気処理と、上記嫌気処理部40における嫌気処理とが、上記汚泥分解室8の爆気室36内において繰り返されることにより、上記汚水中の汚泥等が徐々に分解されるようになっている。
【0027】
また、上記オゾン反応室37内には水中ポンプ41が配設されている。この水中ポンプ41は、オゾン反応室37内の処理水を処理水供給管42によりオゾン処理手段23の噴流ボックス27に供給し、上記オゾン生成器25から供給されたオゾンを利用して上記処理水中の汚泥成分等を酸化分解処理した後、処理水返送管43を介してオゾン反応室37内の底部に処理水を返送するものである。このようにしてオゾン反応室37内で処理水が対流しつつ汚泥成分の分解が行われるように構成されている。
【0028】
上記処理水返送管43には、処理水の一部を上記爆気室36内に供給する分岐管44と、この分岐管44による処理水の供給を停止させる開閉弁(図示せず)とが設けられている。この開閉弁を閉止した状態では、上記オゾン反応室37からオゾン処理手段23に処理水が循環しつつ、酸化分解処理される。一方、上記開閉弁を開放した状態では、処理水供給管42を介してオゾン処理手段23に供給された処理水の一部が分岐管44を介して上記爆気室36内に返送され、この爆気室36内における爆気処理と、上記オゾン処理手段23における酸化分解処理とが繰り返される。
【0029】
上記オゾン反応室37と流量調整室7とを区画する区画壁には、オゾン反応室37内の処理液を上記流量調整室7内にオーバフローさせる開口部もしくは連通管が設けられている。そして、上記汚泥分解室8において汚泥が分解処理された後に、流量調整室7内にオーバフローした処理水は、図5に示すように、流量調整室7から上記計量移送手段32を介して膜分離室9に順次供給される。この膜分離室9には、図8に示すように、上記処理水中の汚泥成分を濾過する平膜または中空紙膜を備えた濾過膜槽45と、上記エア供給手段15から供給されたエアを放出して散気管46とが設けられている。
【0030】
上記流量調整室7から膜分離室9内に供給された処理水は、上記散気管46を介して供給された空気によって撹拌されつつ、上記濾過膜槽45により処理中の汚泥成分が濾過されて除去されるとともに、この汚泥成分が濾過膜槽45に付着して生息した微生物により分解される。また、上記膜分離室9内の底部に沈殿した汚泥成分は、汚泥返送手段47を介して汚泥分解室8に返送され、この汚泥分解室8において再処理される(図5参照)。そして、上記膜分離室9において浄化処理された処理水は、上記移送手段19の移送ポンプ20により吸引されてカキ殻中性室10に移送される。
【0031】
なお、上記移送ポンプ19の処理水の移送圧力を検出する圧力センサを設け、この圧力センサの検出値に基づいて上記濾過膜槽45に目詰まりが発生したか否かを検出し、目詰まりの発生が検出された時点で、上記濾過膜槽45を洗浄する等によりその目詰まりを解消することが望ましい。この場合、上記膜分離室9の内部を二つに区画し、その両方に濾過膜槽45をそれぞれ配設するとともに、両者を交互に使用するように構成してもよい。すなわち、上記圧力センサの検出信号に応じて一方の濾過膜槽45に目詰まりの発生が検出された時点で、他方の濾過膜槽45を使用するように処理水の移送経路を切り換えた状態で、目詰まりを生じた濾過膜槽45の目詰まりを解消する洗浄作業等を行うようにしてもよい。このように構成した場合には、上記船舶用汚水浄化処理装置の作動を停止させることなく、長期間の連続運転が可能となるという利点がある。
【0032】
上記カキ殻中性室10内には、例えばメッシュ状の袋体内にカキ、ホタテ貝、ホッキ貝、真珠貝、アサリ、シジミ、はまぐり、アオヤギ、カラス貝、サザエ、ミル貝もしくは貝化石等からなる貝殻、または死滅して白化した珊瑚等が収容された接触材48が充填されるとともに、その下方に上記エア供給手段15から供給されたエアを放出する散気管49が配設されている。そして、上記膜分離室9からカキ殻中性室10に供給された処理水は、散気管49から放出された空気によって撹拌されつつ、上記接触材48中の貝殻・珊瑚等に付着した状態で生息する微生物により、上記処理水中の汚泥成分が分解処理される。
【0033】
また、上記膜分離室9内に供給された空気等によって処理水が酸性化した場合には、上記貝殻または珊瑚等から炭酸カルシウム(CaCO2)が溶解して上記処理水が中和される。しかも、このようにカキ殻中性室10内において、処理水を中性化することにより、太陽虫等の原生動物および腔腸動物を多量に発生、繁殖させることができるため、上記処理水中に存在する大腸菌等の細菌を、上記原生動物等に補食させて絶滅させることにより、上記汚水浄化槽2から導出される浄化水中に細菌が混入するのを効果的に防止することができる。
【0034】
上記カキ殻中性室10と中水貯留室11との間には、カキ殻中性室10内の浄化水を下流側の中水貯留室11に導出する上記導出管51が設けられるとともに、この導出管51には、図9に示すように、上記カキ殻中性室10内の浄化水量を検出するフロート52からなる検出手段を介して駆動されることにより、上記導出管51を開閉する開閉弁53が設けられている。そして、上記カキ殻中性室10内の浄化水量が予め設定された一定値以上となって上記フロート52が浮上すると、上記開閉弁53が開放状態となり、カキ殻中性室10内の浄化水が導出管51を介して上記中水貯留室11にオーバフローするように構成されている。
【0035】
上記中水貯留室11には、例えば布材等からなる袋体内に石炭系の活性炭が充填された活性炭収容体54が配設されている。そして、上記上部機械室24に配設された循環ポンプ22を有する循環手段21を介して吸引された中水貯留室11内の処理水が、上記活性炭収容体54の下方部に吐出されて循環しつつ、石炭系活性炭の色素吸着作用により上記処理水が効果的に脱色されるようになっている。上記中水貯留室11において脱色処理された浄化水は、上記下部機械室17に配設された給水ポンプ14を有する給水手段13により必要に応じて船舶用の給水部に供給され、上記便器1用の洗浄水、または熱交換起用の冷却水として使用される。
【0036】
また、図9に示すように、上記中水貯留室11内の貯留水を循環させる循環手段21の循環パイプ55には、浄化水を余剰水貯留槽3に導出する導出管56が設けられている。この導出管56には、中水貯留室11内の浄化水量を検出するフロート57からなる検出手段を介して駆動されることにより、上記導出管56を開閉する開閉弁58が設けられている。そして、上記中水貯留室11内の浄化水量が予め設定された一定値以上となって上記フロート57が浮上すると、上記開閉弁58が開放状態となり、上記循環手段21を介して循環させる貯留水の一部が導出管56から導出ホース59を介して上記余剰水貯留槽3に供給されるようになっている。
【0037】
また、図4および図5に示すように、上記中水貯留室11内には水中ポンプ60が配設され、この水中ポンプ60により中水貯留室11内の貯留水が中水還流管61を介してオゾン処理手段23の噴流ボックス62に供給される。そして、上記オゾン生成器25から供給されたオゾンを利用して上記処理水が殺菌処理された後、中水還流管61を介して中水貯留室11内に返送される。このようにして中水貯留室11内で中水が対流しつつ、注水の水質向上が図られた後、上記余剰水貯留槽3に供給されて貯留されるように構成されている。
【0038】
上記余剰水貯留槽3の容量は、船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定されている。例えば、上記汚水分解処理装置が設置される船舶の乗組員数30人である場合において、一人の乗組員が1日に排出する屎尿量が1.5Lであると仮定すれば、上記船舶の全乗組員が排出する一年分の屎尿水量は、約16.4トン(≒1.5L×30人×365日)となる。
【0039】
したがって、上記船舶の航海期間が1年未満である場合には、上記余剰水貯留槽3の容量を、16.4トンまたはそれ以上の値に設定することにより、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値またはそれの浄化水を上記余剰水貯留槽3内に貯留することが可能となる。また、上記船舶の航海期間が1年以上、二年未満である場合には、上記余剰水貯留槽3の容量を、32.8トンまたはそれ以上の値に設定することにより、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値またはそれ以上の浄化水を上記余剰水貯留槽3内に貯留可能となる。
【0040】
また、上記第2コンテナ5には、図1に示すように、余剰水貯留槽3内に貯留された浄化水を、上記汚水浄化槽2の最上流部に設けられた流量調整室7内に張水として供給する張水供給手段63の張水ポンプが設けられている。そして、上記船舶が母港に寄港して汚水浄化槽2の保守点検する場合等には、第1コンテナ4および汚水浄化槽2の上部に設けられた点検用開口(図示せず)を開放した状態で、この点検用開口を介して上記流量調整室7内にバキュームカーの吸引ホースを挿入し、上記流量調整室7内の汚水を吸引して外部に導出する。
【0041】
また、上記汚水浄化槽2の各室7〜11を接続する接続管(図示せず)に設けられた開閉弁を順次開放して、上記バキュームカーの吸引ホースにより汚水を外部に導出する作業を継続することにより、上記汚泥分解室8および膜分離室9等から接続管を介して流量調整室7内に還流された処理水を順次外部に導出する。さらに、上記張水供給手段63から供給される余剰水により流量調整室7の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、この流量調整室7内から上記汚泥分解室8および膜分離室9内等に上記余剰水を順次供給することにより、この余剰水を張水として上記各室7〜11内に充填する。
【0042】
上記のように船舶に設置された便器1から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室7〜11を備えた汚水浄化槽2と、この汚水浄化槽2により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽3と、上記汚水浄化槽2により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段13とを設けるとともに、上記余剰水貯留槽3の余剰水貯留量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定したため、簡単かつコンパクトな構成で環境汚染を防止しつつ、船舶のトイレ等から排出された汚水を効果的に浄化できるという利点がある。
【0043】
すなわち、上記汚水浄化槽2おいて便器1から排出された乗組員の屎尿と便器1用の洗浄水とを浄化処理するとともに、この浄化水を上記給水手段13により上記便器1用の洗浄水等として再利用するように構成したため、この洗浄水等は増減することなく一定値に保持される。これに対して上記汚水浄化槽2おいて浄化処理された乗組員の屎尿は、航海中に徐々に蓄積されるため、この蓄積量に対応した浄化水を上記余剰水貯留槽3内に貯留し得るように構成することにより、上記汚水が外部に排出されること起因した環境汚染の発生を確実に防止しつつ、航海を継続することができる。しかも、上記浄化水貯留槽3の容量を必要最小限に設定することにより、上記船舶用汚水分解処理装置を簡単かつコンパクトに構成できるという利点がある。
【0044】
特に、上記実施形態では、便器1から排出管6を介して流量調整室7に供給された汚泥を含む汚水を上記汚泥分解室8に移送し、爆気室36およびオゾン反応室37において上記汚水中の汚泥を段階的に低分子化するとともに、上記爆気室に設けられた好気処理部39における好気処理と上記嫌気処理部40における嫌気処理と繰り返すことにより、上記処理水中の汚泥成分等を徐々に分解し、かつ上記オゾン反応室37内に配設された水中ポンプ41を介して上記オゾン反応室37内の処理水をオゾン処理手段23の噴流ボックス27に循環させることにより、オゾン反応室37内で処理水を対流させつつ汚泥成分の分解を行うように構成したため、この汚泥成分を効果的に分解処理することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態に示すように、オゾン処理手段23からオゾン反応室37内の返送される処理水の一部を上記爆気室36内に返送し、この爆気室36内における爆気処理と、上記オゾン処理手段23における酸化分解処理とを繰り返するように構成した場合には、上記処理水中の汚泥成分をより効果的に分解し、上記汚水中の汚泥が外部に排出されるのを確実に防止することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、汚水浄化槽2の下流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管、具体的にはカキ殻中性室10内の処理水を下流側の中水貯留室11に導出する導出管51と、上記浄化処理室(カキ殻中性室10)内の浄化水量を検出するフロート52からなる検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管51を開放する開閉弁53とを設けた構造としたため、船舶が揺れた場合等においても、下流側の中水貯留室11から浄化水が上流側のカキ殻中性室10内に逆流するのを防止し、上記中水貯留室11内の水量を一定に維持できるとともに、カキ殻中性室10内における充分に処理されなかった処理水が上記導出管51を介して下流側に導出されるのを防止することにより、中水貯留室11内の水質を良好に維持できるという利点がある。
【0047】
なお、上記検出手段を構成するフロート52の上下動に応じて上記開閉弁53を機械的に開閉するように構成された上記実施形態に代え、上流側の浄化処理室(カキ殻中性室10)内の浄化水量を検出する検出手段の検出信号に応じ、下流側の浄化処理室(中水貯留室11)処理水を導出する導出管を電気的に開閉する開閉弁を設けた構造としてよい。このように構成した場合においても、船舶が揺れた場合に、下流側から上流側に浄化水が逆流したり、カキ殻中性室10内において充分に処理されなかった処理水が下流側に導出されたりすることを防止しつつ、上記中水貯留室11内の水量および水質を一定に維持することができる。
【0048】
また、図1の破線で示すように、上記余剰水貯留槽3内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽2に設けられた各浄化処理室7〜11の冷却水として供給する冷却水供給手段65を設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、赤道直下のような酷暑地域を航海する際において、上記各浄化処理室7〜11を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持することができるため、簡単な構成で上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0049】
さらに、船内に設けられたボイラまたはエンジン等の熱源66から供給された熱交換媒体により上記汚水浄化槽2を加熱する加熱手段67を設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、外気温の低い寒冷地域の航海時等に、上記各浄化処理室7〜11を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持することにより、上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0050】
上記実施形態では、複数の浄化処理室7〜11を有する汚水浄化槽2を第1コンテナ4内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽3を第2コンテナ内5に収容したため、上記汚水浄化槽2および余剰水貯留槽3を効果的に保護しつつ、これらを船内の所定位置に容易かつ適正に設置できるという利点がある。
【0051】
また、図10に示すように、上記余剰水貯留槽3が収容された第2コンテナ上5に、汚水浄化槽2が収容された第1コンテナ4を載置した状態で両コンテナ4,5を船体に固定した構造としてもよい。このように構成した場合には、上記船舶用汚水分解処理装置の設置面積を必要最小限に抑えつつ、所定の容量を有する上記汚水浄化槽2および余剰水貯留槽3を適正に設置できるという利点がある。しかも、上記複数の浄化処理室7〜11を有する汚水浄化槽2が配設された第1コンテナ4を上記第2コンテナ5の上方に設置したため、上記浄化処理室7〜11の保守点検作業等を容易に行うことができる。
【0052】
なお、図11に示すように、船体64の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部68が設けられた船舶において、この空間部68を余剰水貯留槽として利用するように構成してもよい。すなわち、船体の外周部に密閉構造の空間部68を設置するとともに、船体内に設置された汚水浄化槽2により処理された浄化水を導出管により上記空間部68に導出して貯留するようにしてもよい。この構成によれば、船体を補強するために設けられた上記ダブルハル構造の空間部68を有効に利用することにより、船体64の内部スペースを狭めることなく、上記船舶用汚水分解処理装置を適正に設置できるという利点がある。
【符号の説明】
【0053】
1 便器
2 汚水浄化槽
3 余剰水貯留槽
4 第1コンテナ
5 第2コンテナ
7〜11 浄化処理室
51 導出管
52 フロート(検出手段)
53 開閉弁
65 冷却水供給手段
66 熱源
67 加熱手段
68 ダブルハル構造の空間部
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶等に設置されてトイレ等から排出された汚水を簡単かつコンパクトな構成で効果的に浄化することができる船舶用汚水分解処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、船内に設置された便器と、この便器から排出された汚物が含まれる汚水を、微生物を担持した多数の担体に接触させて生物学的に処理する微生物反応槽と、この微生物反応槽内にエアを曝気する曝気手段と、上記微生物反応槽で処理された汚水を、微生物を担持した多数の担体で形成した濾材層で濾過する濾過槽とからなり、上記汚水を微生物反応槽と濾過槽で浄化してから船外に排出するように構成した船舶用トイレット装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−99890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された船舶用トイレット装置は、船内に設置された便器から排出される汚物を含む汚水を、微生物反応槽で曝気しながら多数の担体に接触させることにより生物学的に処理した後、濾過槽において濾材層で濾過してから船外に排出するように構成されているため、上記微生物反応槽および濾過槽により汚水を適正に浄化処理できれば、処理水をそのまま排出しても河川や海が汚染されるのを防止することが可能である。しかし、上記船舶用トイレット装置では、微生物反応槽および濾過槽において処理できずにグレーチング床下の沈降室内へ沈降した固形物を排出管により外部に放出するように構成されているため、この固形物を含んだ汚水によって河川や海が汚染されるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単かつコンパクトな構成で環境汚染を防止しつつ、船舶のトイレ等から排出された汚水を効果的に浄化することができる船舶用汚水分解処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、船舶に設置された便器から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を備えた汚水浄化槽と、この汚水浄化槽により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽と、上記汚水浄化槽により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段とを備えるとともに、上記余剰水貯留槽の容量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定したものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の船舶用汚水分解処理装置において、上記汚水浄化槽の上流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管と、上記浄化処理室内の浄化水量を検出する検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管を開放する開閉弁とを備えたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の船舶用汚水分解処理装置において、上記余剰水貯留槽内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽に設けられた浄化処理室の冷却水として供給する冷却水供給手段を備えたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置において、船内に設けられた熱源からの熱を上記汚水浄化槽の暖房用として供給することにより上記浄化処理室を加熱する加熱手段を備えたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置において、上記汚水浄化槽を第1コンテナ内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽を第2コンテナ内に収容し、この第2コンテナ上に上記第1コンテナを載置した状態で両コンテナを船体に固定したものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置において、船体の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部を上記余剰水貯留槽として利用したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、上記汚水浄化槽おいて便器から排出された乗組員の屎尿と便器用の洗浄水とを浄化処理するとともに、この浄化水を上記給水手段により上記便器用の洗浄水等として再利用するように構成したため、この洗浄水量を増減させることなく一定値に保持するとともに、航海中に徐々に蓄積される乗組員の屎尿量に対応した量の浄化水を、上記余剰水貯留槽内に貯留することにより、上記汚水が外部に排出されること起因した環境汚染の発生を確実に防止しつつ、航海を継続することができ、かつ上記浄化水貯留槽の容量を必要最小限に設定して上記船舶用汚水分解処理装置を簡単かつコンパクトに構成できるという利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明では、上記汚水浄化槽の上流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管と、上記浄化処理室内の浄化水量を検出する検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管を開放する開閉弁とを設けたため、船舶が揺れた場合においても、下流側の浄化処理室から浄化水が上流側の浄化処理室に逆流するのを効果的に防止し、上記下流側の中水貯留室内の水量を一定に維持できるとともに、浄化処理室において充分に処理されなかった処理水が上記導出管を介して下流側に導出されるのを防止することにより、下流側の浄化処理室の水質を良好に維持できるという利点がある。
【0014】
請求項3に係る発明では、上記余剰水貯留槽内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽に設けられた浄化処理室の冷却水として供給する冷却水供給手段を設けたため、赤道直下のような酷暑地域を航海する際において、上記各浄化処理室を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持することができるため、簡単な構成で上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0015】
請求項4に係る発明では、ボイラまたはエンジン等の熱源から供給された熱により上記汚水浄化槽を加熱するように構成したため、寒冷地域等を航海する際に、上記各浄化処理室を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持して、上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0016】
請求項5に係る発明では、上記汚水浄化槽を第1コンテナ内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽を第2コンテナ内に収容し、この第2コンテナ上に上記第1コンテナを載置した状態で両コンテナを船体に固定したため、上記船舶用汚水分解処理装置の設置面積を必要最小限に抑えつつ、所定の容量を有する上記汚水浄化槽および余剰水貯留槽を適正に設置できるという利点がある。
【0017】
請求項6に係る発明では、船体の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部を上記余剰水貯留槽として利用したため、船体を補強するために設けられた上記空間部の有効利用を図り、船体の内部スペースを狭めることなく、上記船舶用汚水分解処理装置を適正に設置できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る船舶用汚水分解処理装置の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線断面図である。
【図9】浄化水貯留室の連通路の具体的構成を示す側面断面図である。
【図10】本発明に係る船舶用汚水分解処理装置の別の実施形態を示す側面断面図である。
【図11】本発明に係る船舶用汚水分解処理装置のさらに別の実施形態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図3は、本発明に係る船舶用汚水分解処理装置の実施形態を示している。この船舶用汚水分解処理装置は、船内の便器1から排出された汚水を浄化処理する汚水浄化槽2と、この汚水浄化槽2により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽3とを有している。上記汚水浄化槽2は、第1コンテナ4内に収容された状態で船体内の所定位置に設置され、上記余剰水貯留槽3は、第2コンテナ5内に収容された状態で上記第1コンテナ4に隣接した位置に設置されている。
【0020】
上記汚水浄化槽2の内部は、排出管6を介して上記便器1の汚水排出部に接続された流量調整室7と、この流量調整室7から導出された汚泥を分解処理する汚泥分解室8と、上記流量調整室7から導出された排水を浄化処理する膜分離室9と、この膜分離室9から導出された処理水を浄化処理するカキ殻中性室10と、このカキ殻中性室10から導出された中水を浄化処理しつつ貯留する中水貯留室11とに区画されている。
【0021】
また、上記第1コンテナ4内には、中水貯留室11内の貯留水を、上記便器1に洗浄水として供給するとともに、船舶用機器の熱交換器等に冷却水として供給する給水手段13用の給水ポンプ14と、上記汚水浄化槽2内の各部にエアを供給するエア供給手段15用のブロア16とが配置された下部機械室17が設けられている。
【0022】
上記下部機械室17の上方には、図3および図4に示すように、膜分離室9内の処理水をカキ殻中性室10に移送する移送手段19の移送ポンプ20と、上記中水貯留室11内の貯留水を循環させる循環手段21の循環ポンプ22と、オゾン処理手段23とが配置された上部機械室24が設けられている。上記オゾン処理手段23には、オゾンを生成するオゾン生成器25と、このオゾン生成器25に送られる空気から窒素を除去して酸素濃度を高める窒素除去器26と、上記オゾン生成器25で生成されたオゾンを利用して酸化分解処理を行う噴流ボックス27,62とが設けられている。
【0023】
上記流量調整室7には、図5に示すように、便器1から排出管6を介して供給された汚水中のしさ(汚泥)を除去するしさ除去部31と、このしさ除去部31において汚泥が除去された汚水を計量しつつ、上記汚水浄化槽2の処理能力に応じた量の汚水を上記流量調整室7から膜分離室9に移送する計量移送手段32とが設けられている。
【0024】
上記しさ除去部31の下方には、上記エア供給手段15から供給されたエアの放出部34が配設され、上記しさ除去部31に捕集されたトイレットペーパ等を破砕して汚水に溶け易くするためのエアが上記放出部34から放出されるようになっている。また、上記流量調整室7の下部には、図6に示すように、エア供給手段15から供給されたエアを放出して流量調整室7内の汚水を撹拌する撹拌部35が設けられている。上記しさ除去部31において除去された汚泥および上記流量調整室7の底部に堆積した汚泥を含む汚水は、図示を省略したエアリフト手段を介して、例えば数日に一回程度の割合で上記汚泥分解室8に移送されるように構成されている。
【0025】
上記汚泥分解室8は、図7に示すように、エアリフト手段を介して流量調整室7から移送された汚水中の汚泥を分解処理する爆気室36と、この爆気室36からオーバフローすることにより供給された汚水中の汚泥等をオゾンにより酸化分解処理するオゾン反応室37とに区画されている。上記爆気室36の底部には、エア供給手段15から供給されたエアを放出して爆気室36内の汚水を撹拌する撹拌部38が設置されている。
【0026】
上記撹拌部38の上方には、エアを利用した好気性微生物の好気処理により上記爆気室36に供給された汚水中の汚泥成分を低分子化する好気処理部39が形成されるとともに、その周囲には嫌気性微生物の嫌気処理により上記汚泥成分を嫌気処理して低分子化する嫌気処理部40が設けられている。そして、上記好気処理部39における好気処理と、上記嫌気処理部40における嫌気処理とが、上記汚泥分解室8の爆気室36内において繰り返されることにより、上記汚水中の汚泥等が徐々に分解されるようになっている。
【0027】
また、上記オゾン反応室37内には水中ポンプ41が配設されている。この水中ポンプ41は、オゾン反応室37内の処理水を処理水供給管42によりオゾン処理手段23の噴流ボックス27に供給し、上記オゾン生成器25から供給されたオゾンを利用して上記処理水中の汚泥成分等を酸化分解処理した後、処理水返送管43を介してオゾン反応室37内の底部に処理水を返送するものである。このようにしてオゾン反応室37内で処理水が対流しつつ汚泥成分の分解が行われるように構成されている。
【0028】
上記処理水返送管43には、処理水の一部を上記爆気室36内に供給する分岐管44と、この分岐管44による処理水の供給を停止させる開閉弁(図示せず)とが設けられている。この開閉弁を閉止した状態では、上記オゾン反応室37からオゾン処理手段23に処理水が循環しつつ、酸化分解処理される。一方、上記開閉弁を開放した状態では、処理水供給管42を介してオゾン処理手段23に供給された処理水の一部が分岐管44を介して上記爆気室36内に返送され、この爆気室36内における爆気処理と、上記オゾン処理手段23における酸化分解処理とが繰り返される。
【0029】
上記オゾン反応室37と流量調整室7とを区画する区画壁には、オゾン反応室37内の処理液を上記流量調整室7内にオーバフローさせる開口部もしくは連通管が設けられている。そして、上記汚泥分解室8において汚泥が分解処理された後に、流量調整室7内にオーバフローした処理水は、図5に示すように、流量調整室7から上記計量移送手段32を介して膜分離室9に順次供給される。この膜分離室9には、図8に示すように、上記処理水中の汚泥成分を濾過する平膜または中空紙膜を備えた濾過膜槽45と、上記エア供給手段15から供給されたエアを放出して散気管46とが設けられている。
【0030】
上記流量調整室7から膜分離室9内に供給された処理水は、上記散気管46を介して供給された空気によって撹拌されつつ、上記濾過膜槽45により処理中の汚泥成分が濾過されて除去されるとともに、この汚泥成分が濾過膜槽45に付着して生息した微生物により分解される。また、上記膜分離室9内の底部に沈殿した汚泥成分は、汚泥返送手段47を介して汚泥分解室8に返送され、この汚泥分解室8において再処理される(図5参照)。そして、上記膜分離室9において浄化処理された処理水は、上記移送手段19の移送ポンプ20により吸引されてカキ殻中性室10に移送される。
【0031】
なお、上記移送ポンプ19の処理水の移送圧力を検出する圧力センサを設け、この圧力センサの検出値に基づいて上記濾過膜槽45に目詰まりが発生したか否かを検出し、目詰まりの発生が検出された時点で、上記濾過膜槽45を洗浄する等によりその目詰まりを解消することが望ましい。この場合、上記膜分離室9の内部を二つに区画し、その両方に濾過膜槽45をそれぞれ配設するとともに、両者を交互に使用するように構成してもよい。すなわち、上記圧力センサの検出信号に応じて一方の濾過膜槽45に目詰まりの発生が検出された時点で、他方の濾過膜槽45を使用するように処理水の移送経路を切り換えた状態で、目詰まりを生じた濾過膜槽45の目詰まりを解消する洗浄作業等を行うようにしてもよい。このように構成した場合には、上記船舶用汚水浄化処理装置の作動を停止させることなく、長期間の連続運転が可能となるという利点がある。
【0032】
上記カキ殻中性室10内には、例えばメッシュ状の袋体内にカキ、ホタテ貝、ホッキ貝、真珠貝、アサリ、シジミ、はまぐり、アオヤギ、カラス貝、サザエ、ミル貝もしくは貝化石等からなる貝殻、または死滅して白化した珊瑚等が収容された接触材48が充填されるとともに、その下方に上記エア供給手段15から供給されたエアを放出する散気管49が配設されている。そして、上記膜分離室9からカキ殻中性室10に供給された処理水は、散気管49から放出された空気によって撹拌されつつ、上記接触材48中の貝殻・珊瑚等に付着した状態で生息する微生物により、上記処理水中の汚泥成分が分解処理される。
【0033】
また、上記膜分離室9内に供給された空気等によって処理水が酸性化した場合には、上記貝殻または珊瑚等から炭酸カルシウム(CaCO2)が溶解して上記処理水が中和される。しかも、このようにカキ殻中性室10内において、処理水を中性化することにより、太陽虫等の原生動物および腔腸動物を多量に発生、繁殖させることができるため、上記処理水中に存在する大腸菌等の細菌を、上記原生動物等に補食させて絶滅させることにより、上記汚水浄化槽2から導出される浄化水中に細菌が混入するのを効果的に防止することができる。
【0034】
上記カキ殻中性室10と中水貯留室11との間には、カキ殻中性室10内の浄化水を下流側の中水貯留室11に導出する上記導出管51が設けられるとともに、この導出管51には、図9に示すように、上記カキ殻中性室10内の浄化水量を検出するフロート52からなる検出手段を介して駆動されることにより、上記導出管51を開閉する開閉弁53が設けられている。そして、上記カキ殻中性室10内の浄化水量が予め設定された一定値以上となって上記フロート52が浮上すると、上記開閉弁53が開放状態となり、カキ殻中性室10内の浄化水が導出管51を介して上記中水貯留室11にオーバフローするように構成されている。
【0035】
上記中水貯留室11には、例えば布材等からなる袋体内に石炭系の活性炭が充填された活性炭収容体54が配設されている。そして、上記上部機械室24に配設された循環ポンプ22を有する循環手段21を介して吸引された中水貯留室11内の処理水が、上記活性炭収容体54の下方部に吐出されて循環しつつ、石炭系活性炭の色素吸着作用により上記処理水が効果的に脱色されるようになっている。上記中水貯留室11において脱色処理された浄化水は、上記下部機械室17に配設された給水ポンプ14を有する給水手段13により必要に応じて船舶用の給水部に供給され、上記便器1用の洗浄水、または熱交換起用の冷却水として使用される。
【0036】
また、図9に示すように、上記中水貯留室11内の貯留水を循環させる循環手段21の循環パイプ55には、浄化水を余剰水貯留槽3に導出する導出管56が設けられている。この導出管56には、中水貯留室11内の浄化水量を検出するフロート57からなる検出手段を介して駆動されることにより、上記導出管56を開閉する開閉弁58が設けられている。そして、上記中水貯留室11内の浄化水量が予め設定された一定値以上となって上記フロート57が浮上すると、上記開閉弁58が開放状態となり、上記循環手段21を介して循環させる貯留水の一部が導出管56から導出ホース59を介して上記余剰水貯留槽3に供給されるようになっている。
【0037】
また、図4および図5に示すように、上記中水貯留室11内には水中ポンプ60が配設され、この水中ポンプ60により中水貯留室11内の貯留水が中水還流管61を介してオゾン処理手段23の噴流ボックス62に供給される。そして、上記オゾン生成器25から供給されたオゾンを利用して上記処理水が殺菌処理された後、中水還流管61を介して中水貯留室11内に返送される。このようにして中水貯留室11内で中水が対流しつつ、注水の水質向上が図られた後、上記余剰水貯留槽3に供給されて貯留されるように構成されている。
【0038】
上記余剰水貯留槽3の容量は、船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定されている。例えば、上記汚水分解処理装置が設置される船舶の乗組員数30人である場合において、一人の乗組員が1日に排出する屎尿量が1.5Lであると仮定すれば、上記船舶の全乗組員が排出する一年分の屎尿水量は、約16.4トン(≒1.5L×30人×365日)となる。
【0039】
したがって、上記船舶の航海期間が1年未満である場合には、上記余剰水貯留槽3の容量を、16.4トンまたはそれ以上の値に設定することにより、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値またはそれの浄化水を上記余剰水貯留槽3内に貯留することが可能となる。また、上記船舶の航海期間が1年以上、二年未満である場合には、上記余剰水貯留槽3の容量を、32.8トンまたはそれ以上の値に設定することにより、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値またはそれ以上の浄化水を上記余剰水貯留槽3内に貯留可能となる。
【0040】
また、上記第2コンテナ5には、図1に示すように、余剰水貯留槽3内に貯留された浄化水を、上記汚水浄化槽2の最上流部に設けられた流量調整室7内に張水として供給する張水供給手段63の張水ポンプが設けられている。そして、上記船舶が母港に寄港して汚水浄化槽2の保守点検する場合等には、第1コンテナ4および汚水浄化槽2の上部に設けられた点検用開口(図示せず)を開放した状態で、この点検用開口を介して上記流量調整室7内にバキュームカーの吸引ホースを挿入し、上記流量調整室7内の汚水を吸引して外部に導出する。
【0041】
また、上記汚水浄化槽2の各室7〜11を接続する接続管(図示せず)に設けられた開閉弁を順次開放して、上記バキュームカーの吸引ホースにより汚水を外部に導出する作業を継続することにより、上記汚泥分解室8および膜分離室9等から接続管を介して流量調整室7内に還流された処理水を順次外部に導出する。さらに、上記張水供給手段63から供給される余剰水により流量調整室7の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、この流量調整室7内から上記汚泥分解室8および膜分離室9内等に上記余剰水を順次供給することにより、この余剰水を張水として上記各室7〜11内に充填する。
【0042】
上記のように船舶に設置された便器1から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室7〜11を備えた汚水浄化槽2と、この汚水浄化槽2により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽3と、上記汚水浄化槽2により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段13とを設けるとともに、上記余剰水貯留槽3の余剰水貯留量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定したため、簡単かつコンパクトな構成で環境汚染を防止しつつ、船舶のトイレ等から排出された汚水を効果的に浄化できるという利点がある。
【0043】
すなわち、上記汚水浄化槽2おいて便器1から排出された乗組員の屎尿と便器1用の洗浄水とを浄化処理するとともに、この浄化水を上記給水手段13により上記便器1用の洗浄水等として再利用するように構成したため、この洗浄水等は増減することなく一定値に保持される。これに対して上記汚水浄化槽2おいて浄化処理された乗組員の屎尿は、航海中に徐々に蓄積されるため、この蓄積量に対応した浄化水を上記余剰水貯留槽3内に貯留し得るように構成することにより、上記汚水が外部に排出されること起因した環境汚染の発生を確実に防止しつつ、航海を継続することができる。しかも、上記浄化水貯留槽3の容量を必要最小限に設定することにより、上記船舶用汚水分解処理装置を簡単かつコンパクトに構成できるという利点がある。
【0044】
特に、上記実施形態では、便器1から排出管6を介して流量調整室7に供給された汚泥を含む汚水を上記汚泥分解室8に移送し、爆気室36およびオゾン反応室37において上記汚水中の汚泥を段階的に低分子化するとともに、上記爆気室に設けられた好気処理部39における好気処理と上記嫌気処理部40における嫌気処理と繰り返すことにより、上記処理水中の汚泥成分等を徐々に分解し、かつ上記オゾン反応室37内に配設された水中ポンプ41を介して上記オゾン反応室37内の処理水をオゾン処理手段23の噴流ボックス27に循環させることにより、オゾン反応室37内で処理水を対流させつつ汚泥成分の分解を行うように構成したため、この汚泥成分を効果的に分解処理することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態に示すように、オゾン処理手段23からオゾン反応室37内の返送される処理水の一部を上記爆気室36内に返送し、この爆気室36内における爆気処理と、上記オゾン処理手段23における酸化分解処理とを繰り返するように構成した場合には、上記処理水中の汚泥成分をより効果的に分解し、上記汚水中の汚泥が外部に排出されるのを確実に防止することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、汚水浄化槽2の下流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管、具体的にはカキ殻中性室10内の処理水を下流側の中水貯留室11に導出する導出管51と、上記浄化処理室(カキ殻中性室10)内の浄化水量を検出するフロート52からなる検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管51を開放する開閉弁53とを設けた構造としたため、船舶が揺れた場合等においても、下流側の中水貯留室11から浄化水が上流側のカキ殻中性室10内に逆流するのを防止し、上記中水貯留室11内の水量を一定に維持できるとともに、カキ殻中性室10内における充分に処理されなかった処理水が上記導出管51を介して下流側に導出されるのを防止することにより、中水貯留室11内の水質を良好に維持できるという利点がある。
【0047】
なお、上記検出手段を構成するフロート52の上下動に応じて上記開閉弁53を機械的に開閉するように構成された上記実施形態に代え、上流側の浄化処理室(カキ殻中性室10)内の浄化水量を検出する検出手段の検出信号に応じ、下流側の浄化処理室(中水貯留室11)処理水を導出する導出管を電気的に開閉する開閉弁を設けた構造としてよい。このように構成した場合においても、船舶が揺れた場合に、下流側から上流側に浄化水が逆流したり、カキ殻中性室10内において充分に処理されなかった処理水が下流側に導出されたりすることを防止しつつ、上記中水貯留室11内の水量および水質を一定に維持することができる。
【0048】
また、図1の破線で示すように、上記余剰水貯留槽3内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽2に設けられた各浄化処理室7〜11の冷却水として供給する冷却水供給手段65を設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、赤道直下のような酷暑地域を航海する際において、上記各浄化処理室7〜11を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持することができるため、簡単な構成で上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0049】
さらに、船内に設けられたボイラまたはエンジン等の熱源66から供給された熱交換媒体により上記汚水浄化槽2を加熱する加熱手段67を設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、外気温の低い寒冷地域の航海時等に、上記各浄化処理室7〜11を汚水または汚泥の浄化に適した温度に維持することにより、上記汚水または汚泥を効果的に浄化処理できるという利点がある。
【0050】
上記実施形態では、複数の浄化処理室7〜11を有する汚水浄化槽2を第1コンテナ4内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽3を第2コンテナ内5に収容したため、上記汚水浄化槽2および余剰水貯留槽3を効果的に保護しつつ、これらを船内の所定位置に容易かつ適正に設置できるという利点がある。
【0051】
また、図10に示すように、上記余剰水貯留槽3が収容された第2コンテナ上5に、汚水浄化槽2が収容された第1コンテナ4を載置した状態で両コンテナ4,5を船体に固定した構造としてもよい。このように構成した場合には、上記船舶用汚水分解処理装置の設置面積を必要最小限に抑えつつ、所定の容量を有する上記汚水浄化槽2および余剰水貯留槽3を適正に設置できるという利点がある。しかも、上記複数の浄化処理室7〜11を有する汚水浄化槽2が配設された第1コンテナ4を上記第2コンテナ5の上方に設置したため、上記浄化処理室7〜11の保守点検作業等を容易に行うことができる。
【0052】
なお、図11に示すように、船体64の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部68が設けられた船舶において、この空間部68を余剰水貯留槽として利用するように構成してもよい。すなわち、船体の外周部に密閉構造の空間部68を設置するとともに、船体内に設置された汚水浄化槽2により処理された浄化水を導出管により上記空間部68に導出して貯留するようにしてもよい。この構成によれば、船体を補強するために設けられた上記ダブルハル構造の空間部68を有効に利用することにより、船体64の内部スペースを狭めることなく、上記船舶用汚水分解処理装置を適正に設置できるという利点がある。
【符号の説明】
【0053】
1 便器
2 汚水浄化槽
3 余剰水貯留槽
4 第1コンテナ
5 第2コンテナ
7〜11 浄化処理室
51 導出管
52 フロート(検出手段)
53 開閉弁
65 冷却水供給手段
66 熱源
67 加熱手段
68 ダブルハル構造の空間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設置された便器から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を備えた汚水浄化槽と、この汚水浄化槽により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽と、上記汚水浄化槽により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段とを備えるとともに、上記余剰水貯留槽の容量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定したことを特徴とする船舶用汚水分解処理装置。
【請求項2】
上記汚水浄化槽の上流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管と、上記浄化処理室内の浄化水量を検出する検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管を開放する開閉弁とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項3】
上記余剰水貯留槽内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽に設けられた浄化処理室の冷却水として供給する冷却水供給手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項4】
船内に設けられた熱源からの熱を上記汚水浄化槽の暖房用として供給することにより上記浄化処理室を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項5】
上記汚水浄化槽を第1コンテナ内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽を第2コンテナ内に収容し、この第2コンテナ上に上記第1コンテナを載置した状態で両コンテナを船体に固定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項6】
船体の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部を上記余剰水貯留槽として利用したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項1】
船舶に設置された便器から排出された汚水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を備えた汚水浄化槽と、この汚水浄化槽により処理された浄化水を余剰水として貯留する余剰水貯留槽と、上記汚水浄化槽により処理された浄化水を船舶用の給水部に供給する給水手段とを備えるとともに、上記余剰水貯留槽の容量を船舶の乗組員数および航海期間に応じ、全乗組員が航海期間中に排出する屎尿量に対応した値に設定したことを特徴とする船舶用汚水分解処理装置。
【請求項2】
上記汚水浄化槽の上流部に設けられた浄化処理室内の浄化水を下流側に導出する導出管と、上記浄化処理室内の浄化水量を検出する検出手段と、この検出手段により浄化処理室内の浄化水量が予め設定された一定値以上となったことが検出された場合に上記導出管を開放する開閉弁とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項3】
上記余剰水貯留槽内に貯留された余剰水を上記汚水浄化槽に設けられた浄化処理室の冷却水として供給する冷却水供給手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項4】
船内に設けられた熱源からの熱を上記汚水浄化槽の暖房用として供給することにより上記浄化処理室を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項5】
上記汚水浄化槽を第1コンテナ内に収容するとともに、上記余剰水貯留槽を第2コンテナ内に収容し、この第2コンテナ上に上記第1コンテナを載置した状態で両コンテナを船体に固定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【請求項6】
船体の外周部に設けられたダブルハル構造の空間部を上記余剰水貯留槽として利用したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶用汚水分解処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−245916(P2011−245916A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118731(P2010−118731)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(500015685)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(500015685)
【Fターム(参考)】
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