説明

船舶

【課題】波力を水の位置エネルギーに変換する発電装置を備える船舶を提供すること。
【解決手段】船尾部船体後端1の常用軽荷吃水線C下部に開口部8を設け、該開口部から上方に伸びる管路7途上に水車4を介在させ、当該水車と連結あるいは一体化された発電機3を備えるものである。さらに、船尾部船体後端近傍にサージタンク2を設け、該サージタンクと管路を連結し、上甲板14及び船尾部船体後端の一方あるいは双方に設けた取水口5と該サージタンクを連結し、サージタンクの管路側流出口及び船尾部船体後端に設けた開口部にそれぞれ電磁不還弁6,9を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、技術開発により低落差、小流量でも発電可能な水車・発電機が実用化され、小水力発電の効率化、低コスト化が進み、従来は難しかった地点でも経済性のある発電が可能となっている。具体的には有効落差3メートル、使用水量0.2m/S程度であれば経済性を満たす発電が可能となっている。
【0002】
また、水力発電はエネルギー変換効率が高いことも特徴の一つで、火力発電(熱効率は40〜50%程度)に比べても高い効率が得られる。出力の大きさにもよるが、口径500mm程度の小水力発電で70%前後の水車・発電効率が得られる。
【0003】
本発明は船舶に関するものであり、より詳しくは波力を利用した小水力発電を行い、当該電気エネルギーを、大容量蓄電池を経て船内電源の一部として利用する船舶に関するものである。
【背景技術】
【0004】
波力発電とは、水面の表面波のエネルギーを利用する発電方法をいう。
【0005】
ここに、表面波のエネルギーは面積あたりのエネルギーとして、太陽光の20〜30倍、風力の5〜10倍と利用価値が高いものである。しかし、海岸線の長い地形でないと設置しづらいこと、及び設置場所の自然環境、気象による変動が大きいことなどの問題点がある。
【0006】
かかる特徴を有する波力発電の方式は、大きく分けて1次変換によって次の3つに分類される。
【0007】
1、空気エネルギーに変換する方法を採用するもの。
【0008】
2、機械的なエネルギーに変換する方法を採用するもの。
【0009】
3、水の位置エネルギーまたは水流エネルギーに変換する方法を採用するもの。
【0010】
空気エネルギーに変換するものは、一般的に、空気室内の水面の上下動により、空気室上部に取り付けられた空気タービンを回し、エネルギーを取り出すという方法が取られる。この方法には、密度が小さく、かつ圧縮性を有する空気のエネルギーに変換して発
電するものであるために、エネルギーの伝達ロスが大きく、よって大きな発電量を得るこ
とが難しいという難点がある。
【0011】
かかる方法を採用する発電装置を備えたものとして、特開2010−168989号公報記載の船舶がある。同公報記載の船舶は、圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部と通気可能に接続された圧縮空気格納部と、該圧縮空気格納部と通気可能に接続された圧縮空気タービン部と、該圧縮空気タービン部と接続された発電機とを有するものである。
【0012】
機械的エネルギーに変換する方法としては、波エネルギーを受圧板の振り子運動としてとらえ、油圧に変換し発電機を駆動させるといった方法が取られる。
【0013】
水の位置エネルギーまたは水流エネルギーに変換する方法としては、波によって打ち寄せられる水塊を構造物の斜面に沿って遡上、そして越波させ、背後の池に貯留する。そして貯留池の水面と海水面との水位の差を利用して低落差用水車タービンを回すといった方法が取られる。
【0014】
かかる水流エネルギーに変換する波力発電装置を備えた船舶が、特表平11−506180号公報に記載されている。同公報記載の発明は、船舶にヘリカルタービンを装備し、該タービンを水面下に設置し発電するというものである。ただ、かかる方法を採用すると航行時の抵抗が増大するという問題点が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−168989号公報
【特許文献2】特表平11−506180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
現在船舶の置かれている社会的な環境は国際的な規範として省エネルギー、COガス発生の制約等避けて通れない制約となりつつあり、特に国際航路については技術的な可決が望まれる。
【0017】
更には、船舶においてバウスラスタを稼働して最大電力を必要とする時間は全体の運航時間の僅か数%であると共に、通常航行や荷役時に必要な電力は最大電力の約4割〜7割であるため、船舶の全体の運航において発電手段の発電容量の多くが無駄になり、エネルギー効率が悪いという問題があった。
【0018】
一方、陸上においては微小電力においてすらこれら制約における節電が要請されようとしており、将来部門別CO削減が求められた場合、これに対応するものとして少落差水源が近年の技術的発展により実用化が進みつつある中で、その技術的展開として日常容易に海面上で得られる風力3以上波高ビューフォート・スケール3以上の海面下における遠洋海域において特に有利な大容量海水の利用が考えられる。
【0019】
本発明はその発想のもとに技術的解決を試みるものであり、波力を水の位置エネルギーに変換する発電装置を備える船舶を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成する本発明の構成は次の通りである。
【0021】
(1) 請求項1に記載の船舶は、船舶の動揺によって生じる水流を利用し発電する波力発電装置を備えるものである。
【0022】
(2) 請求項2に記載の船舶は、船尾部船体後端の常用軽荷吃水線下部に開口部を設け、該開口部から上方に伸びる管路途上に水車を介在させ、当該水車と連結あるいは一体化された発電機を備えるものである。
【0023】
(3)請求項3に記載の船舶は、請求項2記載の船舶において、船尾部船体後端近傍にサージタンクを設け、該サージタンクと管路を連結し、上甲板及び船尾部船体後端の一方あるいは双方に設けた取水口と該サージタンクを連結し、サージタンクの管路側流出口及び船尾部船体後端に設けた開口部にそれぞれ電磁不還弁を備えるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、波浪によって生じる動揺により水流を生ぜしめ、当該水流により水車を回転させ、もって発電を行うものである。
【0025】
より具体的には、航走時において、船尾端部が波頂から波底に下降するとき生じる縦方向の動揺により、管路内の水位は開口部側から管路内を上昇し、逆に船尾端部が波底から波頂に上昇するとき、管路内の水位は下降することになる。つまりは管路内を上昇・下降する往復水流が生じるので、かかる水流を利用して水車を回転させることが可能となるのである。
【0026】
また、波高が小さい場合には、上記水位の変動が小さくなり、場合によっては水車が回転不能になる場合もありうる。かかる不都合を避けるために本発明ではサージタンクを備えるものである。
【0027】
すなわち、水位の変動が小さい際には、サージタンクの管路側流出口に設けた電磁不還弁を開放し、サージタンク内の水を管路内に放出すると共に、開口部に設けた電磁不還弁を作動させ開口部からの水の流出を防止する。これにより、管路内の水量を増加させ水車の回転不能を阻止するものである。
【0028】
かようにして本発明によれば、波高3〜4メートル程度の状態にあることが通常である外洋に就航している大型船に適用することが有用な発電装置を提供可能となるものである。
【0029】
そして、本発明の特徴として荒天時であればより効率的に発電が可能という点も挙げられる。一般に船舶の省エネルギーは自然エネルギーの利用を主体とし、太陽光を始め風力等のエネルギー利用等が実用化されつつあるが、いずれも天候に効率が左右される弱点から逃れることは不可能である。これに対し本発明では上述のようにそれが逆転され、荒天下での運用は発電効率の向上となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例船舶の中心線における船尾端部付近側面図。
【図2】船尾端部の部分甲板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の実施例は、一般的船舶が遭遇する波高3メートル近傍以上の場合の航行において、波頂と波底の位置エネルギーの差を運動エネルギーとして発電水車を駆動する場面を想定したものである。
【0032】
図中1は船尾部船体後端、2は船尾部船体後端1の上部甲板下面に配置したサージタンク、3は船尾部船体後端1下方に配置した発電機、4は発電機に直結あるいは一体化した水車である。5は取水口で、海水をサージタンク2に取り入れるためのものである。管路7内海水は開口部8より流入・取水されるものである。
【0033】
ここに開口部8は常に海水中に位置させるため常用軽荷吃水線よりも下部に設けてある。この開口部8には電磁不還弁9が設けられており、不還弁作動時には管路7内に滞留する海水の流出が阻止されるものである。
【0034】
船尾部船体後端1の常用満載吃水線A付近には取水口5が設けられている。また、図2に示されるように、上甲板14の両舷側直下にある排水路13を通じて上甲板上に打ち上げられた海水は、取水口5に集められサージタンク2内に流下するものである。
【0035】
サージタンク2は動揺を抑えるべく船体中心線B上に設けることが好ましい。更には、タンク内の海水の遊動を抑えるため、表面積を小さくすべく縦長に形成することが好ましい。
【0036】
更には、サージタンク2内には制水板10が複数設けられている。サージタンク2内の海水の遊動を抑制し、船体の動揺を抑えるためである。
【0037】
サージタンク2の管路7側流出口には電磁不還弁12が設けられている。この電磁不還弁12作動時にはサージタンク2内の海水の管路7内への流入が阻止される。
【0038】
また、船尾部船体後端1側に設けれた取水口5には、不還弁6が介在させてある。サージタンク2内の海水が取水口5より流出することを防ぐためである。
【0039】
本発明においては、発電された電力は、整流部を介して蓄電池11に蓄電される。本発明では水流が往復動を行うため、整流部により効率化が行われる。
【0040】
水車4は低水位において一般化されている汎用水車を舶用化し使用する。小水力発電に適用可能な水車形式としてクロスフロー水車、チューブラ水車、ポンプ逆転水車などが使用可能であり、250KW以下のマイクロ水力発電用として利用される水車と発電機を一体化した水中式発電機一体型水車や横軸プロペラ水車なども利用可能である。一般に、マイクロ水車として、横軸プロペラ水車の設置スペースとしては出力の目安として3〜100KW程度であれば流水方向長さ(m)×幅(m)が4.0×2.5程度で済み船舶内にも十分設置可能なものである。
【0041】
勿論これらは一例であり、適宜な水車を利用可能なものである。
【符号の説明】
【0042】
1・・船尾部船体後端
2・・取水タンク
3・・発電機
4・・水車
5・・取水口
6・・不還弁
7・・管路
8・・開口部
9・・電磁不還弁
10・・制水板
11・・蓄電池
12・・電磁不還弁
13・・排水路
14・・上甲板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の動揺によって生じる水流を利用し発電する波力発電装置を備える船舶。
【請求項2】
船尾部船体後端(1)の常用軽荷吃水線下部に開口部(8)を設け、該開口部(8)から上方に伸びる管路(7)途上に水車(4)を介在させ、水車(4)と連結された発電機(3)を備える船舶。
【請求項3】
船尾部船体後端(1)近傍にサージタンク(2)を設け、該サージタンク(2)と管路(7)を連結し、上甲板(14)及び船尾部船体後端(1)の一方あるいは双方に設けた取水口(5)と該サージタンク(2)を連結し、サージタンク(2)の管路(7)側流出口及び開口部(8)にそれぞれ電磁不還弁(12)・(9)を設けた請求項2に記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−1232(P2013−1232A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133868(P2011−133868)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【特許番号】特許第4902800号(P4902800)
【特許公報発行日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(508173853)
【Fターム(参考)】