説明

良好な耐燃料性を有する熱可塑性ポリウレタン

脂肪族炭化水素燃料に特徴的に耐性のある高分子量熱可塑性ポリウレタン組成物(ここで上記ポリウレタン組成物は、可撓性燃料容器の構造における脂肪族炭化水素燃料バリアとして使用するために適合され、上記ポリウレタンは、非ヒンダードジイソシアネートおよび脂肪族鎖伸長剤と反応したポリ(ジエチレンアジペート)グリコールの反応生成物である)。上記ポリウレタン組成物は、優れた耐燃料性(特に、耐アルコール含有燃料性)を示す。上記組成物は、可塑化され得、強化ファブリックの携帯式可撓性燃料容器の成形において使用され得る。上記可塑化された組成物は、増強された耐燃料性に加えて、よりよい冷温急激回復特徴を示す。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、ポリ(ジエチレンアジペート)グリコールから合成され、優れた耐燃料性(特に、アルコール含有燃料に対する耐性)を示すポリウレタン組成物に関する。
【0002】
燃料(例えば、ガソリンもしくはジェット燃料)の保管に利用される可撓性燃料タンクは、長期間の耐燃料性および加水分解安定性、これとともに、頑強さ、弾性、ならびに脂肪族炭化水素燃料と常に接触している状態の間の極端な天候において強度および完全性を維持するに十分な可撓性を要する。一般には、熱可塑性ポリマーおよび特定の熱可塑性ポリウレタンは、可撓性を提供し得るが、それらは、必ず適切な構造強度および可撓性を示すわけではなく、長期間の炭化水素液体燃料に対する耐性、およびなくてはならない加水分解安定性を欠いている。ポリマー、ポリマー複合材、およびそれらから構築された可撓性燃料タンクの物理的特性および仕様は、MIL T52983B(1984年9月17日)に示され、耐燃料性のための試験は、ASTM D471−79において、特に燃料Bおよび燃料Dに対する耐性について記載されている。燃料タンクは、一般に、ポリウレタンポリマーに基づいて提示されてきた。特許文献2において、例えば、複雑な熱硬化性は、代表的には、剛性構造を含む航空機燃料タンクの構築において架橋される。同様に、特許文献1は、熱硬化性アミン架橋ポリウレタンポリマーに基づいて、航空機に使用される剛性構造の燃料タンクのための多層剛性積層物を開示している。
【0003】
無関連の可撓性ファブリック構築において使用されるポリウレタン被覆ファブリックは、特許文献3(フェイスマスク)および特許文献4(レインコート)において開示されている。汎用非強化熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ジイソシアネートと反応し、低分子量ジオールで伸長したポリエステルポリオールに基づいて、特許文献5、特許文献6および特許文献7に開示されている。さらに(剛性もしくは可撓性強化製品のいずれかのためのファブリックと組み合わされず)、これら特許において開示されているポリマーは、高い脂肪族炭化水素燃料に対する耐性も、耐加水分解性も、可撓性燃料タンクの構築に必要な他の構造的および利用性特性も、必ずしも示さなくてよい、単に汎用性のポリウレタンエラストマーである。ポリエステルベースのポリウレタンを含む他のポリウレタンポリマーは、以下の特許において開示されている:特許文献8(炭化水素溶媒に耐性を有するが、極性溶媒中では可溶性の押し出し成形されたプラスチックシートを開示している);特許文献9(特に、分散性充填剤および顔料に適合され、接着剤に有用な耐熱性および耐溶媒性の架橋ポリウレタンに関する);特許文献10(エラストマーキャスト成形(elastomeric cast molding)において使用される耐熱性の、架橋された結晶性ポリウレタンに関する);特許文献11(高熱射出成形プロセスにおいて熱架橋されるように適合されたポリエステルポリウレタンポリマーを提示する);および特許文献12(荷重に耐える(load bearing)架橋されたポリウレタンキャスティングおよびプラスチックを開示している)。特許文献13は、多孔性ポリウレタン発泡体を開示しているのに対して、特許文献14は、放射線活性化架橋ポリウレタンを開示している。
【0004】
可撓性燃料タンクのための物理的必要条件、化学的必要条件および構造的必要条件としては、長期の可撓性および耐久性、弾性および頑強さ(特に、長期間の炭化水素燃料に対する耐性および加水分解安定性)、水もしくは燃料に浸漬される前およびその後の高い引張り強さ、ならびに特定の応力−歪み必要条件(例えば、引張り強さ、伸長率、および弾性率(modulus))が挙げられる。しかし、優れた物理的特性を示すと通常考えられる種々のポリウレタンポリマーは、不適切であることが分かった。ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、およびポリ(テトラメチレンアジペート)グリコールに基づくポリウレタンポリマーは、満足いくものではなく、特に、満足のいく脂肪族炭化水素燃料に対する耐性を欠いている。ポリカプロラクトンポリウレタンおよびポリエーテルポリテトラメチレンエーテルグリコールポリウレタンは、例えば、適切な加水分解安定性を示したが、十分な液体炭化水素燃料に対する耐性を欠いていた。
【0005】
特許文献15(E.G.Kolycheck)は、非ヒンダードジイソシアネートおよび伸長剤グリコールと同時に反応したエチレンエーテルオリゴマーグリコール中間体のポリマー反応生成物である高分子量熱可塑性ポリウレタンを教示している。上記エチレンエーテルオリゴマーグリコール中間体は、(a)ジエチレングリコール−脂肪族直鎖ポリエステル、もしくは(b)ポリエチレングリコールであり、約500〜約5,000ダルトンの数平均分子量を有する。得られたポリウレタンポリマーは、約60,000〜約500,000ダルトンの重量平均分子量を有し、優れた耐燃料性を示し、ガソリンもしくはジェット燃料の保管のために、強化ファブリック(reinforcing fabric)成形可撓性燃料タンクもしくは容器において使用される。
【0006】
ガソリンおよびジェット燃料の他に、ガソリンの特別ブレンド(例えば、E85)は、85%エタノールおよび15%ガソリンのより環境に配慮したガソリンブレンドであり、燃料の保管のためのよりよい材料の必要性をもたらした。これら材料は、上記燃料のための容器へと成形され得ると同時に、上記優れた耐燃料性を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,565,729号明細書
【特許文献2】米国特許第4,487,913号明細書
【特許文献3】米国特許第4,689,385号明細書
【特許文献4】米国特許第2,657,151号明細書
【特許文献5】米国特許第4,169,196号明細書
【特許文献6】米国特許第3,528,948号明細書
【特許文献7】米国特許第3,706,710号明細書
【特許文献8】米国特許第2,871,218号明細書
【特許文献9】米国特許第4,400,498号明細書
【特許文献10】米国特許第4,191,818号明細書
【特許文献11】米国特許第3,214,411号明細書
【特許文献12】米国特許第3,012,992号明細書
【特許文献13】米国特許第4,439,552号明細書
【特許文献14】米国特許第4,762,884号明細書
【特許文献15】米国特許第5,047,495号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
脂肪族炭化水素燃料に特徴的に耐性のある高分子量熱可塑性ポリウレタン(もしくはTPU)組成物であって、ここで上記ポリウレタン組成物は、可撓性燃料容器の構造において脂肪族炭化水素燃料バリアとして使用するために適合されており、上記ポリウレタンは、非ヒンダードジイソシアネートおよび脂肪族鎖伸長剤と反応したポリ(ジエチレンアジペート)グリコールの反応生成物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ポリウレタン組成物(これは、ポリ(ジエチレングリコール)アジペートから合成され、非ヒンダードジイソシアネートおよび脂肪族鎖伸長剤と反応させられて、上記ポリマーを形成する)に関する。上記ポリウレタン組成物は、優れた耐燃料性(特に、アルコール含有燃料に対する耐性)を示す。上記組成物は、可塑化され得、強化ファブリックの携帯式可撓性燃料容器の成形において使用され得る。上記可塑化された組成物は、増強された耐燃料性に加えて、よりよい冷温急激回復(snap back)特徴を示す。
【0010】
好ましい実施形態において、上記ポリウレタンは、上記マクログリコールとしてポリ(ジエチレンアジペート)グリコール、上記鎖伸長剤として1,4−ブタンジオール、および上記ジイソシアネートとしてメチレンジフェニルイソシアネート(MDI)から合成される。上記熱可塑性ポリウレタン(TPU)に組み込まれるべき好ましい可塑剤は、ベンジルブチルフタレートである。ベンジルブチルフタレートは、Ferro CorporationからSanticizer 160として市販されている。
【0011】
TPUポリマーは、ポリイソシアネートと中間体(例えば、ヒドロキシル末端化ポリエステル、ヒドロキシル末端化ポリエーテル、ヒドロキシル末端化ポリカーボネートもしくはこれらの混合物(ヒドロキシル末端化中間体は、一般にポリオールといわれる))と、1種以上のグリコール鎖伸長剤(これらのうちの全ては、当業者に周知である)とを反応させることによって、調製され得る。米国特許第6,777,466号(Ecksteinら)は、本発明の実施形態において利用され得、その全体が本明細書に参考として援用される、特定のTPUポリマーを提供するためのプロセスの詳細な開示を提供する。
【0012】
上記ポリエステル−エーテル中間体、ヒドロキシル末端化した飽和ポリエステル−エーテルポリマーは、過剰当量のジエチレングリコールと、かなり少ない当量の、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族(好ましくは、アルキル)ジカルボン酸(ここで最も好ましいのは、アジピン酸である)とを反応させることによって合成される。他の有用なジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸が挙げられる。最も好ましいポリエステル−エーテル中間体は、ポリジエチレングリコールアジペートである。本発明のこの局面によれば、モル過剰のジエチレングリコールは、グリコールの約5モル%〜約50モル%過剰のレベルで、より少ないモルのジカルボン酸と反応させられて、約500〜5000ダルトンの間、および好ましくは、約700〜2500の数平均分子量を有する、ヒドロキシル末端化ポリエステル−エーテルオリゴマー鎖を提供する。上記短鎖ポリエステル−エーテルオリゴマーは、反復ジエチレンエーテル構造を含み、当量ベースで、1当量のジカルボン酸と同時に反応して、低分子量ポリエステル−エーテルオリゴマー中間体を生成する、約1.05〜1.5当量のジエチレングリコールを含む。上記非常に過剰当量のジエチレングリコールは、上記ポリエステル−エーテルオリゴマーの数平均分子量を、好ましくは、2500ダルトン未満に制御し、さらにヒドロキシル末端化直鎖状ポリエステル−エーテルオリゴマーを確実にする。上記ポリエステル−エーテルオリゴマーは、上記ジエチレングリコールと上記より少ない当量のジカルボン酸とを、約150℃〜230℃の温度で、エステル化触媒(例えば、塩化スズ(II))の存在下もしくは非存在下で、約ゼロへと酸価を低下させるために十分な時間にわたって反応させることによって合成される。
【0013】
上記ヒドロキシル末端化ポリエステル−エーテルオリゴマー中間体は、いわゆる、オリゴマー、ジイソシアネート、および伸長剤グリコールの1回注入もしくは同時共反応(simultaneous co−reaction)において、伸長剤グリコールとともに非ヒンダードジイソシアネートとさらに反応させられて、非常に高分子量の、広くは、約60,000〜500,000ダルトン、好ましくは、約80,000〜180,000、および最も好ましくは、約100,000〜180,000ダルトンの重量平均分子量を有する直鎖状ポリウレタンを生成する。上記重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準物質を使用して、GPCによって決定される。本発明のこの局面に従う上記ポリエステル−エーテルオリゴマーに基づく、非常に高分子量の直鎖状ポリウレタンは、異常に高分子量のポリウレタンポリマーが低分子量ポリエステル−エーテルオリゴマーから生成されるという点において独特である。
【0014】
熱可塑性ポリウレタンは、上記ジエチレンエーテルエステルオリゴマーグリコール中間体、芳香族もしくは脂肪族の非ヒンダードジイソシアネート、および伸長剤グリコールを、好ましくは、1回注入プロセスにおいて一緒に反応させることによって生成され得る。モルベースで、オリゴマーグリコール中間体の各モルあたりの伸長剤グリコールの量は、約0.1〜約3.0モル、望ましくは、約0.2〜約2.1モル、および好ましくは、約0.5〜約1.5モルである。モルベースで、上記高分子量ポリウレタンポリマーは、上記伸長剤グリコールおよび上記オリゴマーグリコール両方の和の各合計1.0モル(すなわち、伸長剤グリコール+オリゴマーグリコール=1.0)あたり、約0.97〜約1.02モル、および好ましくは、約1.0モルの非ヒンダードジイソシアネートを含む。
【0015】
有用な非ヒンダードジイソシアネートは、芳香族非ヒンダードジイソシアネートを含み、これらとしては、例えば、1,4−ジイソシアナトベンゼン(PPDI)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m−キシレンジイソシアネート(XDI)、ならびに非ヒンダード環式脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、およびH12 MDI)が挙げられる。最も好ましいジイソシアネートは、MDIである。適切な伸長剤グリコール(すなわち、鎖伸長剤)は、2〜6個の炭素原子を有しかつ1級アルコール基のみを含む脂肪族の短鎖グリコールである。好ましいグリコールとしては、ジエチレングリコール、1,3 プロパンジオール、1,4−ブタンジオール,1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールが挙げられ、最も好ましいグリコールは、1,4−ブタンジオールである。
【0016】
本発明によれば、上記ヒドロキシル末端化ジエチレンエーテルエステルオリゴマー中間体、上記非ヒンダードジイソシアネート、および上記脂肪族伸長剤グリコールは、約100℃より高く、通常は、約120℃の温度において1回注入重合プロセスにおいて同時反応させられる。すると、上記反応は、発熱性であり、上記反応温度は、約200℃〜250℃へと上昇する。
【0017】
本発明の得られた高分子量熱可塑性ポリウレタンは、熱および圧力下で、ガソリン燃料の保管のための可撓性燃料タンクへと成形され得る強化ファブリック(例えば、ナイロン)に、(例えば、溶融コーティングによって)溶融適用されるポリマー結合材として特に有用である。上記可撓性燃料タンクはまた、上記TPU被覆ファブリックのシートを一緒に溶接して、上記燃料タンクを作り出すことによって、作製され得る。溶接は、熱溶接、RF溶接、もしくは溶媒溶接によって行われ得る。
【0018】
成形物体(例えば、燃料タンク)を形成するにあたって、本発明のポリマーは、上記成形物体の形成を促進しかつよりよい温度急激回復特徴を提供するように可塑化され得る。上記使用される可塑剤のタイプは、TPUにおける使用について公知の可塑剤のうちのいずれかであり得る。使用される最も一般的な可塑剤タイプは、フタレートであり、ブチルベンジルフタレートが最も好ましい。本発明において使用される可塑剤としては、フタレートベースの可塑剤(例えば、ジ−n−ブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、オクチルデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、およびジ−2−エチルヘキシルホスフェートイソフタレート);脂肪族エステルベースの可塑剤(例えば、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジ−n−デシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルセバケート(dibutyl sebacate)、およびジ−2−エチルヘキシルセバケート);ピロメリテート(pyrometallitate)ベースの可塑剤(例えば、トリオクチルトリメリテートおよびトリデシルトリメリテート);ホスフェートベースの可塑剤(例えば、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、およびトリクレシルホスフェート);エポキシベースの可塑剤(例えば、エポキシベースの大豆油);およびポリエステルベースのポリマー可塑剤が挙げられ得る。毒物学的観点から敏感である適用(例えば、子供のおもちゃおよび食品接触)のために、ジ−イソノニル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート(BASF製のHexamoll(登録商標) DINCH)が、上記可塑剤として使用され得る。単一の可塑剤が使用されてもよいし、2種以上の可塑剤の組み合わせが使用されてもよい。望ましい可塑剤の選択は、TPUを調合する分野の当業者によって十分に理解されるように、上記TPUポリマーの最終用途の適用に依存する。使用される可塑剤の量は、存在する場合、約0.1〜約30.0重量%の上記ポリウレタン組成物である。好ましくは、可塑剤のレベルは、上記ポリウレタン組成物のうちの約5.0〜約20.0重量%である。
【0019】
いくつかの適用のために、補助的添加剤が、本発明のTPU組成物において使用され得る。添加剤(例えば、着色剤、抗酸化剤、オゾン分解防止剤(antiozonate)、光安定化剤など)は、上記TPU組成物において使用され得る。好ましくは、補助的添加剤は、少量で(例えば、上記TPU組成物のうちの0〜5重量%、およびより好ましくは、0.1〜1重量%)存在する。不活性充填剤(例えば、タルク、クレイ、炭酸カルシウムなど)は、上記TPU組成物のうちの0〜50重量%の量で使用され得る。好ましくは、不活性充填剤は、上記TPU組成物中に存在しない。難燃剤および煙抑制剤(smoke retardant)が使用される場合、それらは、代表的には、上記TPU組成物のうちの5〜50重量%の量で存在する。
【0020】
本発明の利点は、以下の例示的実施例を参照することによってより理解される。
【実施例】
【0021】
(実施例)
本発明に従うポリウレタンポリマーのサンプルを調製し、E85燃料ブレンドでの燃料浸漬試験に供した。その結果を以下の表1に示す。本発明のポリマーとの対比を提供するために、市販のポリウレタン組成物もまた調製し、それらの結果もまた、表1に示す。
【0022】
(実施例1)
予備加熱(70℃)をし、攪拌されている保持タンクに、1000ダルトンの数平均分子量を有する100重量部のポリ(ジエチレンエーテルアジペート)グリコール(PDEEAG;Inolex製のLexorez 1100−110)、ならびに各々0.5重量部のStabilizer 7000F(Raschig)およびIrganox 1010(Ciba)を充填した。第2の予備加熱(50℃)をし、攪拌されている保持タンクに、1,4−ブタンジオール(BDO;Lyondell)を充填した。第3の予備加熱(55℃)をし、攪拌されている保持タンクに、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI;Bayer)を充填した。
【0023】
ポリウレタン組成物を、上記PDEEAG溶液(47.88重量部)、BDO(10.66重量部)、およびMDI(41.46重量部)を、急速に混合しながら静止型ミキサーに計量して、100重量部のポリウレタンポリマーを形成することによって、連続ベースで形成した。上記溶融したポリマーを、180〜200℃へと加熱し、変換が連続されるツインスクリュー押し出し器(Werner & Pfleiderer)に添加し、100重量部のポリウレタンポリマーにつき0.3重量部のエチレンビス(ステアルアミド(stearamide))(Acrawax C,Lonza)を、上記押し出し器のエントリーポートに添加した。上記ポリマー混合物を、水中ペレット形成器へと運んだ。上記ペレットを、加熱した(105℃)サイロの中に集め、約3時間にわたって乾燥させた。
【0024】
(実施例2)
予備加熱(70℃)をし、攪拌されている保持タンクに、1000ダルトンの数平均分子量を有する、100重量部のPDEEAG、23.54重量部のベンジルブチルフタレート(Ferro Corp.製のSanticizer 160)、ならびに各々0.6重量部のStabilizer 7000FおよびIrganox 1010を充填した。第2の予備加熱(50℃)をし、攪拌されている保持タンクに、BDOを充填した。第3の予備加熱(55℃)をし、攪拌されている保持タンクに、MDIを充填した。
【0025】
ポリウレタン組成物を、上記PDEEAG溶液(53.14重量部)、BDO(9.59重量部)、およびMDI(37.28重量部)を、急速に混合しながら静止型ミキサーに計量して、100重量部のポリウレタンポリマーを形成することによって、連続ベースで形成した。上記溶融したポリマーを、180〜200℃へと加熱し、変換が連続されるツインスクリュー押し出し器に添加し、100重量部のポリウレタンポリマーにつき0.3重量部のエチレンビス((ステアルアミド)を、上記押し出し器のエントリーポートに添加した。上記ポリマー混合物を、水中ペレット形成器へと運んだ。上記ペレットを、加熱した(105℃)サイロの中に集め、約3時間にわたって乾燥させた。
【0026】
(実施例3)
予備加熱(70℃)をし、攪拌されている保持タンクに、1000ダルトンの数平均分子量を有する、100重量部のPDEEAG、53.03重量部のベンジルブチルフタレート、ならびに各々0.66重量部のStabilizer 7000FおよびIrganox 1010を充填した。第2の予備加熱(50℃)をし、攪拌されている保持タンクに、BDOを充填した。第3の予備加熱(55℃)をし、攪拌されている保持タンクに、MDIを添加した。
【0027】
ポリウレタン組成物を、上記PDEEAG溶液(58.39重量部)、BDO(8.51重量部)、およびMDI(33.10重量部)を急速に混合しながら静止型ミキサーに計量して、100重量部のポリウレタンポリマーを形成することによって、連続ベースで形成した。上記溶融したポリマーを、180〜200℃へと加熱し、変換が連続されるツインスクリュー押し出し器に添加し、100重量部のポリウレタンポリマーにつき0.3重量部のエチレンビス((ステアルアミド)を、上記押し出し器に沿ってポートに添加した。上記ポリマー混合物を、水中ペレット形成器へと運んだ。上記ペレットを、加熱した(105℃)サイロの中に集め、約3時間にわたって乾燥させた。
【0028】
(実施例4)
予備加熱(70℃)をし、攪拌されている保持タンクに、1000ダルトンの数平均分子量を有する、100重量部のPDEEAG、ならびに各々0.72重量部のStabilizer 7000FおよびIrganox 1010を充填した。第2の予備加熱(50℃)をし、攪拌されている保持タンクに、BDOを充填した。第3の予備加熱(55℃)をし、攪拌されている保持タンクに、MDIを充填した。
【0029】
ポリウレタン組成物を、上記PDEEAG溶液(35.49重量部)、BDO(14.76重量部)、およびMDI(49.75重量部)を急速に混合しながら静止型ミキサーに計量して、100重量部のポリウレタンポリマーを形成することによって、連続ベースで形成した。上記溶融したポリマーを、180〜200℃へと加熱し、変換が連続されるツインスクリュー押し出し器に添加し、100重量部のポリウレタンポリマーあたり0.3重量部のエチレンビス(ステアルアミド)を、上記押し出し器に沿ってポートへ添加した。上記ポリマー混合物を、水中ペレット形成器へと運んだ。上記ペレットを、加熱した(105℃)サイロの中に集め、約3時間にわたって乾燥させた。
【0030】
(実施例5)
予備加熱(70℃)をし、攪拌されている保持タンクに、1000ダルトンの数平均分子量を有する、100重量部のPDEEAG、31.88重量部のベンジルブチルフタレート、ならびに各々0.8重量部のStabilizer 7000FおよびIrganox 1010を充填した。第2の予備加熱(50℃)をし、攪拌されている保持タンクに、BDOを充填した。第3の予備加熱(55℃)をし、攪拌されている保持タンクに、MDIを充填した。
【0031】
ポリウレタン組成物を、上記PDEEAG溶液(41.99重量部)、BDO(13.27重量部)、およびMDI(44.73重量部)を急速に混合しながら静止型ミキサーに計量して、100重量部のポリウレタンポリマーを形成することによって、連続ベースで形成した。上記溶融したポリマーを、180〜200℃へと加熱し、変換が連続されるツインスクリュー押し出し器に添加し、100重量部のポリウレタンポリマーあたり0.3重量部のエチレンビス(ステアルアミド)を、上記押し出し器に沿ってポートへ添加した。上記ポリマー混合物を、水中ペレット形成器へと運んだ。上記ペレットを、加熱した(105℃)サイロの中に集め、約3時間にわたって乾燥させた。
【0032】
(実施例6)
予備加熱(70℃)をし、攪拌されている保持タンクに、1000ダルトンの数平均分子量を有する、100重量部のPDEEAG、71.81重量部のベンジルブチルフタレート、ならびに各々0.9重量部のStabilizer 7000FおよびIrganox 1010を充填した。第2の予備加熱(50℃)をし、攪拌されている保持タンクに、BDOを充填した。第3の予備加熱(55℃)をし、攪拌されている保持タンクに、MDIを充填した。
【0033】
ポリウレタン組成物を、上記PDEEAG溶液(48.50重量部)、BDO(11.78重量部)、およびMDI(39.72重量部)を急速に混合しながら静止型ミキサーに計量して、100重量部のポリウレタンポリマーを形成することによって、連続ベースで形成した。上記溶融したポリマーを、180〜200℃へと加熱し、変換が連続されるツインスクリュー押し出し器に添加し、100重量部のポリウレタンポリマーあたり0.3重量部のエチレンビス(ステアルアミド)を、上記押し出し器に沿ってポートへ添加した。上記ポリマー混合物を、水中ペレット形成器へと運んだ。上記ペレットを、加熱した(105℃)サイロの中に集め、約3時間にわたって乾燥させた。
【0034】
(対照1)
これは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、BDO、およびMDIから、上記実施例に記載されるものと類似のプロセスで生成される、市販のポリウレタン組成物である。
【0035】
(対照2)
これは、ポリ(テトラメチレンアジペート)グリコール、BDO、およびMDIから、上記実施例に記載されるものと類似のプロセスで生成される、市販のポリウレタン組成物である。
【0036】
上記実施例1〜6に記載されるポリウレタン組成物、ならびに対照1および対照2を、1インチ直径の単独スクリュー押し出し器(Killion)で10ミル厚および30ミル厚のフィルムへと押し出した。これらフィルムを、特性試験のために使用した。表1は、特性データをまとめる。これら結果は、上記PDEEAGを使用するポリウレタンが、上記対照ポリウレタンと比較して、優れたE85耐燃料性を有することを示す。上記ベンジルブチルフタレート可塑剤の組み込みは、低温可撓性を改善すると同時に体積膨潤をさらに低下させることもまた、認められ得る。
【0037】
【表1】

本発明は、特定の実施例および実施形態を参照しながら詳細に記載されてきたが、本明細書に含まれる上記実施例および実施形態は、例示に過ぎず、網羅的な列挙ではない。本発明のバリエーションおよび改変は、当業者に容易に見いだされる。本発明は、全てのこのような改変および等価物を含む。特許請求の範囲のみが、本発明の限定を記載することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素燃料に特徴的に耐性のある高分子量熱可塑性ポリウレタンであって、該ポリウレタンは、可撓性燃料容器の構造において脂肪族炭化水素燃料バリアとして使用するために適合されており、該ポリウレタンは、非ヒンダードジイソシアネートおよび脂肪族鎖伸長剤と反応したポリ(ジエチレンアジペート)グリコールの反応生成物を含む、高分子量熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記ジイソシアネートは、前記伸長剤グリコールおよび前記ポリ(ジエチレンアジペート)グリコールと同時に反応させられる、請求項3に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリ(ジエチレンアジペート)グリコールに対する前記伸長剤グリコールの量は、約0.1〜約3.0モルである、請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記ジイソシアネートの量は、前記ポリ(ジエチレンアジペート)グリコールおよび前記伸長剤グリコールの各合計1モルあたり、約0.97〜1.02モルであり、前記熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、約80,000〜約180,000ダルトンである、請求項3に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
請求項1に記載のポリウレタンを含み、可塑剤をさらに含む、熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記可塑剤は、ベンジルブチルフタレートである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記可塑剤は、前記ポリウレタン組成物の重量に基づいて、0.1〜30.0重量%の量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリウレタン組成物の重合の間に、可塑剤と混合した請求項1に記載のポリウレタンを含む、成形熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項11】
前記ポリウレタン組成物の重合の間に、可塑剤と混合した請求項1に記載のポリウレタン組成物から作製された、アルコール含有燃料のための成形熱可塑性ポリウレタン容器。
【請求項12】
アルコール含有燃料を保管するための可撓性容器であって、
(a)強化ファブリック;および
(b)該ファブリック上に被覆された少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン組成物;
を含み、
ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、
(i)ポリ(ジエチレンアジペート)グリコール;
(ii)少なくとも1種のグリコール鎖伸長剤;および
(iii)少なくとも1種のジイソシアネート
の反応によって作製される、
可撓性容器。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリウレタン組成物は、可塑剤をさらに含む、請求項12に記載の可撓性容器。
【請求項14】
前記可塑剤は、前記熱可塑性ポリウレタン組成物の約5〜約20重量%のレベルで存在し、前記グリコール鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールである、請求項13に記載の可撓性容器。

【公表番号】特表2011−521077(P2011−521077A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510576(P2011−510576)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/043529
【国際公開番号】WO2009/142949
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】