説明

良好な耐食性・溶接性を有する溶融Sn−Zn系めっき鋼板

【課題】 優れた耐食性・溶接性を有し、特に自動車燃料タンク材料として好適な6価Crフリー、Pbフリーの溶融Sn−Zn系めっきを提供する。
【解決手段】 1〜8.8質量%のZnと残部がSn:91.2〜99.0質量%および不可避的不純物からなる溶融めっき層を鋼板表面に形成した溶融Sn基めっき鋼板であって、該めっき層が、アーム状に伸びたSnデンドライト晶とそのSnデンドライトのアーム間をSn−Zn二元共晶組織が埋めている組織からなっており、該めっき表面に金属クロム換算で3〜50mg/m2 の3価クロム化合物からなる表面処理皮膜を形成していることを特徴とする耐食性、溶接性に優れた溶融Sn−Znめっき鋼板である。
【効果】 めっき鋼板は、Cr6+、Pbを使用しない燃料タンク材料として好適な特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐食性、接合性を兼備し、自動車燃料タンク材料、家庭用電気機械、産業機械材料として6価クロムを含まない表面処理を施した溶融Sn−Zn系めっき鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車燃料タンク材料として耐食性・加工性・半田性(溶接性)等の優れたPb−Sn合金めっき鋼板が主として用いられ、幅広く使用されている。一方、Sn−Zn合金めっき鋼板は、例えば特開昭52−130438号公報(特許文献1)のように、ZnおよびSnイオンを含む水溶液中で電解する電気めっき法で主として製造されてきた。Snを主体とするSn−Zn合金めっき鋼板は、耐食性や半田性に優れており電子部品などに多く使用されてきた。一方、自動車燃料タンク用途でこのSn−Znめっき鋼板が優れた特性を有することが知見され、特開平8−269733号公報(特許文献2)、特開平8−269734号公報(特許文献3)、特開2004−131819号公報(特許文献4)等において溶融Sn−Znめっき鋼板が開示されてきた。
【0003】
自動車燃料タンクは、多くの付属品やパイプを接合したり、燃料の漏れの無いよう、周囲をシーム溶接する必要があり、材料側には連続生産を妨げない良好で安定した接合性が要求される。ところが、Sn系めっき鋼板は、スポット溶接やシーム溶接等の抵抗溶接は可能であるものの、めっき層のSnが溶接電極であるCuと合金化しやすいという性質を有するために、電極先端がSn−Cu系金属間化合物に転化していく。この金属間化合物は脆性であるため次第に欠損して行き、表面積拡大に伴う電流密度低下により十分な発熱が得られなくなり、電極寿命が劣るという課題があった。
【0004】
この課題は特にスポット溶接時に顕著となるもので、スポット溶接時の電極寿命が極端に短くなっていた。この課題に対して特許第3002445号公報(特許文献5)、特開2004−360019号公報(特許文献6)においてSn系めっき鋼板のめっき表面粗度、表面皮膜量により表面接触抵抗値を適正に制御することで連続溶接性を向上させる技術が開示されてきた。
【0005】
【特許文献1】特開昭52−130438号公報
【特許文献2】特開平8−269733号公報
【特許文献3】特開平8−269734号公報
【特許文献4】特開2004−131819号公報
【特許文献5】特許第3002445号公報
【特許文献6】特開2004−360019号公報
【特許文献7】特開2004−531639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、製造コスト削減のため、更なる連続溶接性向上に対するニーズは依然高く、また、CARB(California Air Resource Board)規制やELV(End of Life Vehicle)指令等の環境規制により自動車の高寿命化も強く要望されてきている。EU指令等の環境規制により6価クロメートが使用不可になるため、特開2004−531639号公報(特許文献7)等の種々の3価クロムタイプや完全クロムフリータイプの後処理皮膜が開発されている。残念ながら、その防錆性の実態は6価クロメートに及ばない。付着量増により、確かに耐食性は向上するものの、表面接触抵抗が高くなるため抵抗溶接性が悪化する。
本発明は、上記の課題を解決し、耐食性、溶接性を高度にバランスし、6価クロムを使用しない溶融Sn−Znめっき鋼板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、防錆・溶接能向上させたSn−Znめっき鋼板を提供することを目的に、めっき組成・組織・3価クロム化合物を含む表面処理皮膜の付着量と分布状況を種々検討し、本発明に至ったものである。従来、耐食性と溶接性を向上させる対策は二律背反の関係(つまり、防錆能を上げるためには、めっきや表面処理の付着量を増加させれば良いが、溶接性は両方共に悪化する方向)にあったが、めっき組成・組織・3価クロム化合物を含む表面処理皮膜の付着量分布を最適化することで、両性能の向上を図ることができることを知見した。
【0008】
つまり、本発明は、1〜8.8質量%のZnと残部がSn:91.2〜99.0質量%および不可避的不純物からなる溶融めっき層を鋼板表面に形成した溶融Sn基めっき鋼板であって、該めっき層が、アーム状に伸びたSnデンドライト晶とそのSnデンドライトのアーム間をSn−Zn二元共晶組織が埋めている組織からなっており、該めっき表面に金属クロム換算で3〜50mg/m2 の3価クロム化合物からなる表面処理皮膜を形成していることを特徴とする耐食性、溶接性に優れた溶融Sn−Znめっき鋼板である。
【0009】
また、めっき層のSnデンドライト晶上に表面処理皮膜中のクロムが残っていることや、さらにSn−Zn二元共晶組織上のクロム付着量がSnデンドライト晶上の3倍以上にすることでさらに溶接性・耐食性の高位バランスを図ることが可能である。以上のように表面処理皮膜のクロム付着量分布を最適化するためには、3価クロム化合物を有する表面処理薬剤の物性値を、表面張力が30〜80mN/m、かつ、粘度が1.0〜2.5mP・sにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によって、耐食性、溶接性に優れ、劣化ガソリン等に対しても長期間耐える燃料タンク用の6価クロムフリー、鉛フリー防錆鋼板が得られたことは工業的に極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明について詳細に説明する。
鋼鋳片を熱間圧延・酸洗・冷間圧延・焼鈍・調質圧延等の一連の工程を経た焼鈍済みの鋼板、また圧延材を被めっき材として、圧延油あるいは酸化膜の除去等の前処理を行った後、めっきを行う。鋼成分については、燃料タンクの複雑な形状に加工できる成分系であること、鋼−めっき層界面の合金層の厚みが薄くめっき剥離を防止できること、燃料タンク内部および外部環境における腐食の進展を抑制する成分系である必要がある。
【0012】
本発明では、Sn−Zn合金めっきは溶融めっき法で行うことを基本とする。溶融めっき法を採用した最大の理由は、めっき付着量の確保のためである。電気めっき法でも長時間の電解を行えばめっき付着量は確保できるが、経済的ではない。本発明で狙うめっき付着量範囲は、20〜150g/m2 (片面)と比較的厚目付の領域であり、溶融めっき法が最適である。さらにめっき元素の電位差が大きい場合、適切に組成を制御することは困難を伴うため、Sn−Zn合金は溶融めっき法が最適である。
【0013】
次に、めっき組成のZnの限定理由であるが、燃料タンク内面と外面における耐食性のバランスにより限定したものである。タンク外面は、完璧な防錆能力が必要とされるためタンク成形後に塗装される。したがって、塗装厚みが防錆能力を決定するが、素材としてはめっき層のもつ防食効果により赤錆を防止する。特に、塗装のつきまわりの悪い部位ではこのめっき層のもつ防食効果は極めて重要となる。Sn基めっきのZnの添加でめっき層の電位を下げ、犠牲防食能を付与する。そのためには1質量%以上のZnの添加が必要である。Sn−Zn二元共晶点である8.8質量%を超える過剰なZnの添加は、Snデンドライトが晶出しない、融点上昇をひきおこし、めっき下層の金属間化合物層の過剰な成長につながる等の理由で8.8質量%以下でなくてはならない。
【0014】
一方、タンク内面での腐食は、正常なガソリンのみの場合には問題とならないが、水の混入・塩素イオンの混入・ガソリンの酸化劣化による有機カルボン酸の生成等により、かなり激しい腐食環境が出現する。もし、穿孔腐食によりガソリンがタンク外部の漏れた場合、重大事故につながる恐れがあり、これらの腐食は完全に防止されねばならない。上記の腐食促進成分を含む劣化ガソリンを作製し、各種条件下での性能を調べたところ、Znを8.8質量%以下含有するSn−Zn合金めっき皮膜は極めて優れた耐食性を発揮することが確認された。
【0015】
Znを全く含まない純SnまたはZn含有量が1質量%未満の場合、腐食環境中に暴露された初期より、めっき金属が地鉄に対し犠牲防食能を持たないため、タンク内面ではめっきピンホール部での孔食、タンク外面では早期の赤錆発生が問題となる。一方、Znが8.8質量%を超えて多量に含まれる場合、Znが優先的に溶解し、腐食生成物が短期間に多量に発生するため、キャブレターの目詰まりを起こしやすい問題がある。
【0016】
また、Zn含有量が多くなることによってめっき層の加工性も低下し、Sn基めっきの特長である良プレス成形性を損なう。さらにZn含有量が多くなることによってめっき層の融点上昇とZn酸化物に起因し、はんだ性が大幅に低下する。したがって、本発明におけるSn−Zn合金めっきにおけるZn含有量は、1〜8.8質量%の範囲、更により十分な犠牲防食作用を得るには3.0〜8.8質量%の範囲にすることが望ましい。
【0017】
本発明のめっき組成域では、通常、溶融Sn−Znめっき組織は初晶Snとスパングル状の二元共晶組織の混在した凝固組織となる。このときZnはスパングル−スパングル粒界に特に偏析しやすくなっている。スパングル−スパングル粒界にZnが偏析しやすい理由は明確ではないが、Znと親和性の高い微量の不純物が影響していると考えられる。このスパングル−スパングル粒界に偏析したZnは前述のように腐食の起点になり、穿孔腐食をおこしやすい状態をひきだす。
【0018】
このようなZnの偏析をなくすためには、図1のように初晶のSnを積極的にアーム状のデンドライトとして発達させ、スパングルの成長を抑制することが必要である。本発明の組成域ではSnが初晶として晶出するため、アーム状のSnデンドライトがネットワーク状に凝固初期にめっき層に張りめぐらされれば、共晶反応で生成するスパングル状の二元共晶はデンドライトのアームに成長を抑制され大きく発達できない。そのため、巨大なスパングル同士がぶつかり合うことはなくなり、スパングル−スパングル粒界に偏析するZnはなくなり、タンク内外面での耐食性が著しく向上する。
【0019】
Snのデンドライトを積極的に発達させるために、Snのデンドライトの成長起点を増やしてやればよい。この溶融めっきの凝固過程は鋼板側の抜熱が大きく、めっき/地鉄の界面側から凝固していく。したがって、溶融めっき層の下層の合金層に微細な凹凸をつけるか、地鉄そのものに微細な凹凸をつければ、デンドライトの成長起点をつくることができる。合金層に微細な凹凸をつけるには、溶融めっきと鋼板との合金化反応を制御すればよく、具体的にはプレめっきの種類、めっき浴温、浸漬時間を制御すればよい。プレめっきの種類としてはNi、Co、Cuの単体やFeとの合金あるいはこれらの金属同士の合金であっても良い。プレめっき量としては0.01〜2.0g/m2 程度で十分である。また、地鉄表面に凹凸をつけるには溶融めっき前の圧延工程にて表面粗度を付与してやればよい。
【0020】
本発明では、上述めっき層表面を更に3価クロム化合物を主成分とする薬剤を塗布し、乾燥皮膜中金属クロム換算で3〜50mg/m2 を確保することで耐食性と良好な溶接性が得られる。3mg/m2 未満では防錆力不足により十分な耐食性を期待できず、50mg/m2 超では表面接触抵抗が急激に高くなるため抵抗溶接性が急激に悪化する。よって、表面処理皮膜付着量は乾燥皮膜中金属クロム換算で3〜50mg/m2 を確保することが必要である。
【0021】
また、前述のめっき組織と表面処理付着量からなる材料の耐食性と溶接性が高位にバランスする理由について鋭意検討した結果、溶融めっき凝固時において初晶として優先的に成長するアーム状のSnデンドライト晶と、最終凝固部であり、凝固時に体積収縮(擬似“引け巣”現象)を伴うSn−Zn二元共晶部とのめっき表面高低差に起因するクロム付着量差が溶接性・耐食性に大きく影響していることを知見した。つまり、腐食の起点となるSn−Zn二元共晶組織は、めっき表面での凹部に当たり、表面処理薬剤を塗布した際に液溜まりとなる。その結果、Sn−Zn二元共晶組織上ではCr付着量が多くなるため優れた耐食性を確保することが可能となる。
【0022】
また、めっき表面の凸部にあたるアーム状のSnデントライト晶上には表面処理薬剤が留まり難くCr付着量が少なくなるため、表面接触抵抗を下げて優れた溶接性を確保することができる。図2に本発明に係るめっき−表面処理被膜鋼板断面模式図を示す。この図に示すように、アーム状のSnデントライト晶3の部分が凸形状になりクロム付着量差が少なくなり、Sn−Zn二元共晶部1は凹形状になるためクロム付着量差が多くなる。Snデンドライト上にも表面処理皮膜2の3価Cr化合物が被覆されないと耐食性が劣化するため、Snデンドライト晶上にもCrが残っていることが望ましい。また、Sn−Zn二元共晶組織上のクロム付着量をSnデンドライト晶上の3倍以上にすることでさらに優れた耐食性と溶接性を両立できることを知見した。
【0023】
さらに、上述のような3価クロム化合物を含んだ表面処理皮膜のミクロな付着量分布状況を得るためには、薬剤の液特性を最適化することが望ましく、表面張力が30〜80mN/m、かつ、粘度が1.0〜2.5mP・sであることが望ましい。薬剤の表面張力が30mN/m未満、もしくは粘度が1.0mP・s未満の場合、めっき表面に均一に表面処理薬剤が塗布されるため溶接性向上が期待できない。また、表面張力が80mN/m超、もしくは粘度が2.5mP・s超の場合、めっき表面でまったく塗布されない部分が出てくるため耐食性が悪くなりやすい。
【0024】
また、薬剤中の3価クロム化合物としては硫酸クロム(III)、硝酸クロム(III)、重リン酸クロム(III)、弗化クロム(III)、ハロゲン化クロム(III)などがあげられる。薬剤中の水分散性シリカとしてはコロイダルシリカや気相シリカ等が望ましい。耐食性や塗料密着性を向上のための追加成分としては硝酸金属塩の添加が望ましく、その硝酸金属塩中の金属がアルカリ土類金属、Co,Ni,ZrおよびTiからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが望ましい。
【0025】
また、表面処理皮膜とめっき表面との密着性を向上させるために追加成分としてホスホン酸またはホスホン酸化合物が望ましい。ホスホン酸化合物として特に限定はしないが、メチルジホスホン酸、メチレンホスホン酸、エチリデンジホスホン酸等、或いはこれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩等、分子中にホスホン酸基またはその塩を1以上有するキレート剤が挙げられ、それらの酸化体としてはこれらホスホン酸系キレート剤の内、その分子中に窒素原子を有するものが酸化されてN−オキシド体になっているものが挙げられる。さらに、耐食性、塗装性を向上させる目的で、追加成分として水溶性樹脂を配合することが望ましい。水溶性樹脂としては特に限定するものではないが、水溶性アクリル樹脂が望ましい。
【実施例】
【0026】
本発明の燃料タンク用防錆鋼板の品質特性を実施例で示す。
板厚0.8mmの焼鈍・調圧済みの鋼板に、電気めっき法によりワット浴からNiめっきを0.1g/m2 (片面あたり)施した。この鋼板に塩化亜鉛、塩化アンモニウム及び塩酸を含むめっき用フラックスを塗布した後、Sn−Zn溶融めっき浴に導入した。めっき浴と鋼板表面を反応させた後めっき浴より鋼板を引き出し、ガスワイピング法により付着量調整を行い、めっき付着量(Sn+Znの全付着量)は40g/m2 (片面あたり)に制御した。ガスワイピングの後、エアジェットクーラーにて冷却速度を種々変化させ溶融めっき層を凝固し、Snデンドライトの面積率、アーム間隔を変更した。この鋼板の金属組織を調べるため、めっき表層より、SnとZnの分布状態をEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)にて分析し、Snデンドライトの面積率とSnデンドライトのアーム間隔を任意の100点平均により算出した。
【0027】
発明例の一例として表1のNo.1の凝固組織を図1に示す。また、めっき上に3価クロム水溶液を主体とした薬剤をめっき表面に塗布・乾燥して表面処理皮膜を形成させた。付着量は薬剤中の3価クロム濃度を適宜変更して調節した。付着量は蛍光X線分析によりφ10mmエリアの平均値を採用した。また、めっき表層より、Crの分布状態をEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)にて分析し、Sn−Zn2元共晶組織上とSnデンドライト組織上のCr付着量比を任意の100点平均により算出した。
【0028】
タンク外面の塩害環境での耐食性はSST960時間後の赤錆発生面積率で評価し、赤錆面積率10%以下を良好とした。タンク内面の耐食性は圧力容器中にて、100℃で一昼夜放置した強制劣化ガソリンに10vol%の水を添加し腐食液を作製した。この腐食液350ml中にて、ビードつき引抜加工をおこなっためっき鋼板(板厚減少率15%、30×35mm端面・裏面シール)を45℃×3週間の腐食試験を行い、溶出した金属イオンのイオン種と溶出量を測定した。溶出量は総金属量200ppm未満を良好とした。溶接性はスポット溶接の電極寿命打点数で評価した。溶接条件は、Cr−Cu電極(16φ−DR8R−先端6φ40R)、加圧力:200kg、予備加圧:50サイクル、通電:10サイクル、ホールド:30サイクル(60Hz)、電流:チリ発生電流×95%で実施した。300点以上を良好とした。各種性能結果を表2に示す。
【0029】
表1、2のNo.1〜5までの本発明例では、いずれも使用に十分耐えうる特性を有している。No.6の比較例ではZn質量%が低いため、十分な犠牲防食効果を有しておらず外面耐食性にやや劣る。No.7、8の比較例ではZn質量%が高く、もはやSnデンドライトが晶出せずZn偏析が助長されるため、内外面のいずれの耐食性も低下した。No.9はCr付着量が少なく、内外面のいずれの耐食性も低下した。No.10はCr付着量が多く表面接触抵抗値が高いため、電極寿命打点数が少ない。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るめっき凝固組織図を示す顕微鏡写真図である。
【図2】本発明に係るめっき−表面処理皮膜部鋼板断面模式図を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 Sn−Zn二元共晶部
2 表面処理被膜
3 アーム状Snデンドライト晶


特許出願人 新日本製鐵株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜8.8質量%のZnと残部がSn:91.2〜99.0質量%および不可避的不純物からなる溶融めっき層を鋼板表面に形成した溶融Sn基めっき鋼板であって、該めっき層が、アーム状に伸びたSnデンドライト晶とそのSnデンドライトのアーム間をSn−Zn二元共晶組織が埋めている組織からなっており、該めっき表面に金属クロム換算で3〜50mg/m2 の3価クロム化合物からなる表面処理皮膜を形成していることを特徴とする耐食性、溶接性に優れた溶融Sn−Znめっき鋼板。
【請求項2】
めっき層のSnデンドライト晶上に表面処理皮膜中のクロムが残っていることを特徴とする請求項1に記載の耐食性、溶接性に優れた溶融Sn−Znめっき鋼板。
【請求項3】
Sn−Zn二元共晶組織上のクロム付着量がSnデンドライト晶上の3倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性、溶接性に優れた溶融Sn−Znめっき鋼板。
【請求項4】
3価クロム化合物を有する表面処理薬剤において、表面張力が30〜80mN/m、かつ、粘度が1.0〜2.5mP・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐食性、溶接性に優れた溶融Sn−Znめっき鋼板とその製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−348365(P2006−348365A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178745(P2005−178745)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】