説明

色標識オリゴ糖又は多糖

本発明は、色標識オリゴ糖又は多糖、この色標識オリゴ糖又は多糖の製造方法、及び腎機能の決定のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色標識オリゴ糖又は多糖、これらの色標識オリゴ糖又は多糖の製造方法、腎機能の決定のための薬剤の製造のためのその使用、及び腎機能の決定のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腎診断においては定量的及び定性的機能検査が大きな役割を果たす。その場合とりわけ糸球体濾過率が測定される。糸球体濾過率は腎機能を推定するために重要な要素である。それは腎クリアランスから少なくとも近似的に決定することができる。腎クリアランスは腎臓の特異的能力として、血液の特定の外因的又は内因的物質の除去を表す。腎クリアランス及び糸球体濾過率の決定のために様々な指示物質が知られている。その場合最も頻繁に使用される指示物質はクレアチニンである。内因性指示物質のもう一つの例はシスタチンCである。外因性指示物質はイヌリンである。Gretzら(Pediatr. Nephrol. 22(2007); 167-169)は糸球体濾過率の種々の測定方法を記述する。
【0003】
米国特許第6,995,019号はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)がシネストリンに結合された指示物質を記載する。FITC結合イヌリンもLorenz及びGruenstein(Renal Physiol. 45(1999); 172-177)により周知である。
【0004】
FITCの最大発光は520nmにある。ヘモグロビンは520nmで極めて強い吸収を示す。その結果、例えば溶血過程の場合、ヘモグロビンの存在下でFITC標識指示物質により糸球体濾過率を測定すると、エラーや誤差が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の根底にある技術問題は、腎クリアランスの正確な測定を可能にし、その際ヘモグロビンの存在が測定に有害な影響を及ぼさない指示物質を提供することである。
【0006】
本発明の根底にある別の技術問題は、腎クリアランス測定用の改善された指示物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は独立請求項に記載の色標識オリゴ糖又は多糖、特に色素と結合されたオリゴ糖又は多糖を含み、色素が少なくとも725nm、最高で875nmの最大発光を有する、色標識オリゴ糖又は多糖によって、その根底にある技術問題を解決する。さらに本発明は、シアニン色素と結合されたオリゴ糖又は多糖を含む色標識オリゴ糖又は多糖によってその根底にある技術問題を解決する。
【0008】
また本発明は、シアニン色素と結合されたオリゴ糖又は多糖を含み、シアニン色素が少なくとも725nm、最高875nmの最大発光を有する、色標識オリゴ糖又は多糖を提供することによって、その根底にある技術問題を解決する。
【0009】
糸球体濾過率を決定するには、腎臓によって排泄される指示物質を使用しなければならない。腎臓は親水性物質を排泄する。意外なことに、疎水性色素は特定の親水性オリゴ糖又は多糖と結合されていれば、腎臓によってほとんどの場合は排泄され、又は特によく排泄されることが判明した。特に、好ましい実施形態では、色標識指示物質の使用可能性がオリゴ糖又は多糖の鎖長によって影響されることが判明した。
【0010】
さらに意外なことに、好ましい実施形態では特定のオリゴ糖又は多糖の選択によって色素の半減期が調整されることが判明した。例えば色素標識1-F-フルクトフラノシル-D-ニストースの半減期は色素標識シニストリンの半減期より長い。
【0011】
さらに好ましい実施形態で判明したところでは、DP2ないし10、とりわけDP2ないし7の色標識オリゴ糖も指示物質として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る色標識オリゴ糖及び多糖は、腎機能の測定のための正確な、時間のかからない方法を可能にする。
【0013】
本発明において、色標識オリゴ糖又は多糖はオリゴ糖であることが好ましい。本発明において、色標識オリゴ糖又は多糖は多糖であることが好ましい。
【0014】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は2ないし65の重合度(DPともいう)を有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は3ないし65のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は4ないし65のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は5ないし65のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は6ないし65のDPを有することが好ましい。
【0015】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は2ないし50のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は3ないし50のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は4ないし50のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は5ないし50のDPを有することが好ましい。
【0016】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は2ないし40のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は3ないし40のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は4ないし40のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は5ないし40のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は10ないし40のDPを有することが好ましい。
【0017】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は2ないし25のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は3ないし25のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は4ないし25のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は5ないし25のDPを有することが好ましい。
【0018】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は2ないし12のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は3ないし12のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は4ないし12のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は5ないし12のDPを有することが好ましい。
【0019】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は2ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は3ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は4ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は5ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は6ないし10のDPを有することが好ましい。
【0020】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は少なくとも2のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は少なくとも3のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は少なくとも4のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は少なくとも5のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は少なくとも6のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は少なくとも7のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は少なくとも8のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は最高で10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は最高で25のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は最高で30のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は最高で40のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は最高で50のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は最高で65のDPを有することが好ましい。
【0021】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は2又は3のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64又は65のDPを有することが好ましい。
【0022】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は65を超えるDPを有することが好ましい。
【0023】
本発明に関連してオリゴ糖とは、2ないし約10個、特に2ないし10個、特に2ないし7個の単糖単位からなる炭水化物を意味する。本発明に関連して多糖とは、少なくとも10個、とりわけ10個を超える単糖単位からなる炭水化物を意味する。
【0024】
本発明において、オリゴ糖は2のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は3のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は4のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は5のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は6のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は7のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は8のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は9のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は2ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は3ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は4ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は5ないし10のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は2ないし7のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は3ないし7のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は4ないし7のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は5ないし7のDPを有することが好ましい。
【0025】
本発明において、多糖は少なくとも10のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は少なくとも11のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は10ないし65のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は11ないし65のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は20ないし65のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は40ないし65のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は10のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は11のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は12のDPを有することが好ましい。本発明において、多糖は10ないし12のDPを有することが好ましい。
【0026】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は分枝していることが好ましい。本発明において、オリゴ糖は分枝していることが好ましい。本発明において、多糖は分枝していることが好ましい。
【0027】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は分枝していないことが好ましい。本発明において、オリゴ糖は分枝していないことが好ましい。本発明において、多糖は分枝していないことが好ましい。
【0028】
本発明において、オリゴ糖又は多糖はオリゴフルクタン、ポリフルクタン、イヌリン、シニストリン、並びにα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有する不溶性マルトデキストリン又はデキストリンからなる群より選択されることが好ましい。
【0029】
本発明において、オリゴフルクタン又はポリフルクタンのフルクトース分子はβ-2,1-結合により互いに結合されていることが好ましい。本発明において、オリゴフルクタンのフルクトース分子はβ-2,1結合により互いに結合されていることが好ましい。本発明において、ポリフルクタンのフルクトース分子はβ-2,1結合により互いに結合されていることが好ましい。
【0030】
本発明において、オリゴフルクタンはオリゴフルクトース及び/又はフルクトオリゴ糖(FOS)であることが好ましい。本発明において、フルクトオリゴ糖はGFn(グルコース−フルクトースn)型又はFn(フルクトースn)型であることが好ましい。本発明において、フルクトオリゴ糖は末端グルコース分子を含むことが好ましい。フルクトオリゴ糖がピラノース構造の末端フルクトース分子を含むようにすることもできる。本発明において、フルクトオリゴ糖は末端グルコース分子を含まないことが好ましい。
【0031】
本発明において使用されるオリゴ糖又は多糖を得るための供給源は、例えば多くの植物、例えばキクニガナ/チコリ(Wegwarten/Zichorien)が貯蔵物質/貯蔵炭水化物として貯蔵するフルクタン−イヌリン(「アラント」デンプン[Alanstaerke]CAS-No.9005-80-5)である。チコリ、例えばChicorium intybusからイヌリンは水抽出及びその後の精製処理によって得られる。例えば細菌性フルクトシル転移酵素によってもフルクタンの非植物依存性合成又は酵素生成が可能である。
【0032】
その際生成物混合物が生じるならば、慣用の方法によりこの混合物から所望の分子を分離することができる。細菌性フルクトシル転移酵素により生成されるイヌリンは、通常長鎖であるが、植物性イヌリンより多く分枝している(フルクトース分子の鎖内のβ(2→6)分枝)。本発明において、ポリフルクタンはGFn型又はFn型であることが好ましい。本発明において、ポリフルクタンは末端グルコース分子を含むことが好ましい。本発明において、ポリフルクタンは末端グルコース分子を含まないことが好ましい。
【0033】
本発明において、オリゴ糖又は多糖はシニストリンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖はイヌリンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖はオリゴフルクタンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖はポリフルクタンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はオリゴフルクタンであることが好ましい。本発明において、多糖はポリフルクタンであることが好ましい。
【0034】
本発明において、オリゴ糖又は多糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有する不溶性マルトデキストリン又はデキストリンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有するマルトデキストリン又はデキストリンであることが好ましい。本発明において、多糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有するマルトデキストリン又はデキストリンであることが好ましい。
【0035】
本発明において、オリゴ糖又は多糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有する不溶性マルトデキストリンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有するマルトデキストリンであることが好ましい。本発明において、多糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有するマルトデキストリンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有する不溶性デキストリンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有するデキストリンであることが好ましい。本発明において、多糖はα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有するデキストリンであることが好ましい。
【0036】
本発明において、オリゴ糖は1-F-フルクトフラノシル-D-ニストースであることが好ましい。
【0037】
本発明において、オリゴ糖はケストースであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はニストースであることが好ましい。
【0038】
本発明において、オリゴ糖はF4型であることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はF5型であることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はGF3型であることが好ましい。本発明において、オリゴ糖はGF4型であることが好ましい。
【0039】
本発明において、オリゴ糖は4個のフルクトース分子からなることが好ましい。本発明において、オリゴ糖は5個のフルクトース分子からなることが好ましい。本発明において、オリゴ糖は3個のフルクトース分子と1個のグルコース分子からなることが好ましい。本発明において、オリゴ糖は4個のフルクトース分子と1個のグルコース分子からなることが好ましい。本発明において、オリゴ糖は4のDPを有することが好ましい。本発明において、オリゴ糖は5のDPを有することが好ましい。
【0040】
本発明において、オリゴ糖又は多糖はポリフルクトサンであることが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖はフルクトース単位からなることが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は主としてフルクトース単位を含むことが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は本質的にグルコース単位を含まず、特にグルコース単位を全く含まないことが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は末端グルコース単位のみを含むことが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は全体の割合で、好ましくは最高0ないし10%、特に好ましくは最高1ないし10%、さらに好ましくは最高1ないし5%、特に最高2ないし3%、特に最高1%のグルコースを含む。本発明において、オリゴ糖又は多糖は全体の割合で最高0ないし5%のグルコースを含むことが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖は全体の割合で最高0ないし3%のグルコースを含むことが好ましい。
【0041】
色標識のためのオリゴ糖又は多糖の調製は、所望の物質をすでに成分に含む混合物からクロマトグラフィーによりこれを分離することによって行うことが好ましい。
【0042】
本発明において、オリゴ糖又は多糖に結合される色素は少なくとも725nm、最高875nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は少なくとも750nm、最高850nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は少なくとも775nm、最高825nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は少なくとも790nm、最高810nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は少なくとも700nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は少なくとも725nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は少なくとも750nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は少なくとも775nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は約800nmの最大発光を有することが好ましい。本発明において、色素は800nmの最大発光を有することが好ましい。
【0043】
本発明において、オリゴ糖又は多糖に結合された色素、特に蛍光色素の最大発光の決定は、欧州薬局方に記載の方法により行うことが好ましい。オリゴ糖又は多糖に結合された色素、特に蛍光色素の最大発光の決定は、欧州薬局方に記載の方法に準拠して行うことが好ましい。本発明において、色素の溶液を適当な容器に満たし、単色光で照射し、続いて試料(probe)から出る蛍光光線の強度を入射光線に対して90°の角度で測定することが好ましい。この測定のための装置として、例えば日立蛍光光度計F-3010を使用することができる。本発明において、測定は、好ましくは室温、特に25℃で行う。本発明において、試料溶液の濃度は、好ましくは5ないし50μg/ml、特に約30μg/ml又は10−6mol/lである。
【0044】
本発明に関連して色素とは特に上記の最大発光を有する上記の色素を意味する。
【0045】
本発明において、色素はシアニン色素であることが好ましい。
【0046】
本発明において、色素は蛍光色素であることが好ましい。
【0047】
本発明において、色素は、当業者にFITCとしても知られているフルオレセインイソチオシアネートではないことが好ましい。本発明において、色素はFITC誘導体ではないことが好ましい。
【0048】
本発明において、色素は単官能又は二官能イソチオシアネート−シアニン色素であることが好ましい。本発明において、色素はイソチオシアネート−シアニン色素であることが好ましい。本発明において、色素は単官能イソチオシアネート−シアニン色素であることが好ましい。本発明において、色素は二官能イソチオシアネート−シアニン色素であることが好ましい。本発明において、色素はイソチオシアネート−シアニン誘導体であることが好ましい。
【0049】
本発明において、色素はインドシアニングリーン誘導体であることが好ましい。本発明において、色素はインドシアニングリーンであることが好ましい。
【0050】
本発明において、色標識オリゴ糖又は多糖はCY-ITC-SACの構造を有することが好ましい。ここでCYはシアニン色素、ITCはイソチオシアネート、SACはオリゴ糖又は多糖である。本発明において、CYは本明細書に開示する色素であることが好ましい。本発明において、CYはインドシアニングリーン誘導体であることが好ましい。本発明において、CYはインドシアニングリーンであることが好ましい。
【0051】
本発明において、色素がインドシアニングリーンであり、インドシアニングリーン誘導体がインドシアニングリーン及びイソチオシアネートから合成されている色標識オリゴ糖又は多糖が好ましい。
【0052】
本発明において、色素はCY色素であることが好ましい。CY色素及びその命名法はMujumdarら、Cystometry 10(1980); 11-19頁及びErnstら、Cystometry 10(1989); 3-10頁に記載されている。
【0053】
本発明において、色素はCY7.4であることが好ましい。本発明において、色素はCY7.4−ヨードアセトアミドであることが好ましい。本発明において、色素はCY7.4−イソチオシアネートであることが好ましい。
【0054】
本発明において、色素は式Iの構造を有することが好ましい:
【化1】

【0055】
本発明において、式IのX、Y、R1、R2及びR3は、種々の基であることが好ましい。本発明において、mは1、2又は3であることが好ましい。本発明において、mは3であることが好ましい。本発明において、XはS、O、N-R-基又はイソプロピリデン基であることが好ましい。本発明において、YはS、O、N-R-基又はイソプロピリデン基であることが好ましい。本発明において、R1はメチル基であることが好ましい。本発明において、R2はスルホプロピル基又はスルホブチル基であることが好ましい。本発明において、R2はスルホプロピル基であることが好ましい。本発明において、R2はスルホブチル基であることが好ましい。本発明において、R3はITC、H、NH2、NCS、NHBOC又はNHCSNHCH3であることが好ましい。本発明において、R3=ITCであることが好ましい。本発明において、R3=NHBOC、即ち5-t-ブチルカルバミド基であることが好ましい。本発明において、R3=NH2であることが好ましい。本発明において、R3=NCSであることが好ましい。本発明において、R3=NHCSNHCH3であることが好ましい。
【0056】
本発明において、色素は式IIの構造を有することが好ましい:
【化2】

【0057】
本発明において、式IIのX、Y、R1、R2、R3及びR4は、種々の基であることが好ましい。本発明において、mは1、2又は3であることが好ましい。本発明において、mは3であることが好ましい。本発明において、XはS、O、N-R-基又はイソプロピリデン基であることが好ましい。本発明において、YはS、O、N-R-基又はイソプロピリデン基であることが好ましい。本発明において、R1はメチル基であることが好ましい。本発明において、R2はスルホプロピル基又はスルホブチル基であることが好ましい。本発明において、R2はスルホプロピル基であることが好ましい。本発明において、R2はスルホブチル基であることが好ましい。本発明において、R3はITC、H、NH2、NCS、NHBOC又はNHCSNHCH3であることが好ましい。本発明において、R3=ITCであることが好ましい。本発明において、R3=NHBOC、即ち5-t-ブチルカルバミド基であることが好ましい。本発明において、R3=NH2であることが好ましい。本発明において、R3=NCSであることが好ましい。本発明において、R3=NHCSNHCH3であることが好ましい。本発明において、R4はITC、H、NH2、NCS、NHBOC又はNHCSNHCH3であることが好ましい。本発明において、R4=ITCであることが好ましい。本発明において、R4=NHBOC、即ち5-t-ブチルカルバミド基であることが好ましい。本発明において、R4=NH2であることが好ましい。本発明において、R4=NCSであることが好ましい。本発明において、R4=NHCSNHCH3であることが好ましい。
【0058】
本発明において、色素はCY7.8であることが好ましい。本発明において、色素はCY7.8−イソチオシアネートであることが好ましい。
【0059】
本発明において、色素は式IIIの構造を有することが好ましい:
【化3】

【0060】
本発明において、式IIIのmは1、2又は3であることが好ましい。本発明において、mは3であることが好ましい。式IIIのBOCはt−ブトキシカルボニルを表す。
【0061】
本発明において、色素はメロシアニン色素であることが好ましい。本発明において、色素はMC6.1であることが好ましい。本発明において、色素はMC6.2であることが好ましい。本発明において、色素はMC6.1−ヨードアセトアミドであることが好ましい。本発明において、色素はMC6.2−ヨードアセトアミドであることが好ましい。
【0062】
本発明において、色素は式IVの構造を有することが好ましい:
【化4】

【0063】
本発明において、式IVのX、Y、R1、R2及びR3は種々の基であることが好ましい。本発明において、mは1、2又は3であることが好ましい。本発明において、mは3であることが好ましい。本発明において、XはS、O、N-R-基又はイソプロピリデン基であることが好ましい。本発明において、YはS、O、N-R-基又はイソプロピリデン基であることが好ましい。本発明において、Xはイソプロピリデン基であることが好ましい。本発明において、Yは硫黄であることが好ましい。本発明において、Yは酸素であることが好ましい。本発明において、R1はメチル基であることが好ましい。本発明において、R2はエチル基であることが好ましい。本発明において、R2はブチル基であることが好ましい。本発明において、R3はIAであることが好ましい。ここでIAはヨードアセトアミドを表す。
【0064】
本発明において、色素は式Vの構造を有することが好ましい:
【化5】

【0065】
本発明において、色素は式Vの色素の誘導体であることが好ましい。
【0066】
本発明において、色素は式VIの構造を有することが好ましい:
【化6】

【0067】
本発明において、式VIのR1はイソチオシアネートであることが好ましい。
【0068】
本発明において、色素は式VIIの構造を有することが好ましい:
【化7】

【0069】
本発明において、色標識オリゴ糖又は多糖は式VIIIの物質を含むことが好ましい:
【化8】

【0070】
ここでSACはオリゴ糖又は多糖である。
【0071】
本発明において、色標識オリゴ糖又は多糖は式IXの物質を含むことが好ましい:
【化9】

【0072】
ここでRは少なくとも1個の別のフルクトース単位を表す。
【0073】
本発明において、オリゴ糖又は多糖は色素に直接結合されていることが好ましい。本発明において、オリゴ糖又は多糖はイソチオシアネートを介して色素に結合されていることが好ましい。本発明において、イソチオシアネートは色素とオリゴ糖又は多糖との間のカップリングの役割をすることが好ましい。本発明において、イソチオシアネートは色素の成分であることが好ましい。本発明において、イソチオシアネートは色素の成分ではないことが好ましい。本発明において、色素はオリゴ糖又は多糖のフルクトース単位又はグルコース単位に結合されていることが好ましい。その場合色素はフルクトース単位又はグルコース単位の遊離OH基に結合することができる。本発明において、色素はオリゴ糖又は多糖の末端フルクトース単位に結合されていることが好ましい。本発明において、色素はオリゴ糖又は多糖の末端グルコース単位に結合されていることが好ましい。本発明において、色素はオリゴ糖又は多糖の中間フルクトース単位に結合されていることが好ましい。
【0074】
また本発明は、色標識オリゴ糖又は多糖、特に本発明に係るオリゴ糖又は多糖の製造方法を提供することによって、その根底にある問題を解決する。本発明において、(a)オリゴ糖又は多糖を溶媒に溶解し、(b)溶解したオリゴ糖又は多糖に水素化物、特に水素化ナトリウムを加え、(c)溶解した色素、特に蛍光色素を加え、(d)色標識オリゴ糖又は多糖を固形物として単離して行う、本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の製造方法が好ましい。
【0075】
本発明において、ステップ(b)の水素化物は水素化ナトリウムであることが好ましい。本発明において、ステップ(b)の水素化物は水素化ホウ素ナトリウム、即ちNABH4であることが好ましい。本発明において、ステップ(b)の水素化物は水素化リチウムアルミニウム、即ちLiAlH4であることが好ましい。
【0076】
また本発明はこの方法によって製造された色標識オリゴ糖又は多糖に関する。
【0077】
本発明において、色素は、好ましくは蛍光色素、とりわけ上記の蛍光色素である。本発明において、色素は上記の色素であることが好ましい。
【0078】
本発明において、ステップ(a)の溶媒は極性溶媒であることが好ましい。本発明において、ステップ(a)の溶媒は非プロトン性溶媒であることが好ましい。本発明において、ステップ(a)の溶媒は極性非プロトン性溶媒であることが好ましい。本発明において、ステップ(a)の溶媒は無水ジメチルホルムアミドであることが好ましい。
【0079】
本発明において、ステップ(d)で含水塩化アンモニウムを加え、続いて抽出し、続いて凍結乾燥することによって、色標識オリゴ糖又は多糖を単離することが好ましい。
【0080】
本発明において、ステップ(d)で再結晶及び/又はゲル濾過により色標識オリゴ糖又は多糖を精製することが好ましい。
【0081】
また本発明は、本発明の方法(conventional method)により製造された色標識オリゴ糖又は多糖に関する。
【0082】
また本発明は腎機能の決定のための本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の使用に関する。また本発明は糸球体濾過率の決定のための本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の使用に関する。また本発明は腎クリアランスの決定のための本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の使用に関する。
【0083】
腎機能の決定のため及び/又は診断薬としての本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の使用は非侵襲的検出を可能にする。このことは被検者の身体的被害の減少に寄与する。
【0084】
また本発明は腎機能決定のための薬剤の製造のための本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の使用に関する。また本発明は糸球体濾過率の決定のための薬剤の製造のための本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の使用に関する。また本発明は腎クリアランスの決定のための薬剤の製造のための本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の使用に関する。
【0085】
また本発明は、本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖を含む、特に腎機能の決定のための、診断薬に関する。本発明において、診断薬は腎機能の決定のために使用されることが好ましい。本発明において、診断薬は糸球体濾過率の決定のためであることが好ましい。本発明において、診断薬は腎クリアランスの決定のためであることが好ましい。
【0086】
本発明において、診断薬は本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖を含むことが好ましい。本発明において、診断薬は本発明に係る少なくとも2つの異なる色標識オリゴ糖又は多糖を含むことが好ましい。
【0087】
本発明において、診断薬は、添加剤、担体物質、賦形剤及びこれらの混合物からなる群より選択される物質を含むことが好ましい。本発明において、診断薬は添加剤を含むことが好ましい。本発明において、診断薬は担体物質を含むことが好ましい。本発明において、診断薬は賦形剤を含むことが好ましい。本発明において、診断薬は生理的に適合する緩衝物質を含むことが好ましい。
【0088】
本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖は、本発明において、非経口投与される診断薬の成分として使用することが好ましい。本発明において、診断薬の調製のために、本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖を、水、特にDAB(ドイツ薬局方)10による注射用の水、又は生理的食塩水、特に等張塩化ナトリウム溶液に溶解することが好ましい。本発明において、診断薬中の本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の濃度は、好ましくは10ないし250mg/ml、特に25ないし125mg/mlの範囲である。
【0089】
また本発明は、本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖あるいは本発明に係る診断薬を投与することを特徴とする、特に腎機能の決定のための診断方法に関する。本発明において、診断方法は腎機能の決定のために使用することが好ましい。本発明において、診断方法は糸球体濾過率の決定のために使用することが好ましい。本発明において、診断方法は腎クリアランスの決定のために使用することが好ましい。
【0090】
本発明において、本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖あるいは本発明に係る診断薬は、好ましくは脊椎動物、とりわけ哺乳動物、特にヒトに投与する。本発明において、診断方法は哺乳動物に適用することが好ましい。本発明において、診断方法はヒトに適用することが好ましい。
【0091】
本発明において、診断方法は本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖を用いて行うことが好ましい。本発明において、診断方法は少なくとも2つの異なる本発明の色標識オリゴ糖又は多糖を用いて行うことが好ましい。
【0092】
腎機能の判定のために、本発明において、所定の用量の本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の非経口投与の後の本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の血中濃度の時間的推移を決定することが好ましい。
【0093】
本発明において、診断方法は蛍光測定を含むことが好ましい。本発明において、蛍光測定により本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖の濃度を決定することによって、診断を行うことが好ましい。本発明において、蛍光測定は先行技術の方法で行うことが好ましい(例えばSohtellら、Acta Physiol. Scand. 119(1983); 313ないし316頁、Lorenz及びGruenstein, Am. J. Physiol. 276(1999) 172-177頁を参照)。
【0094】
蛍光測定は高い感度と測定の迅速性という利点をもたらす。
【0095】
本発明において、診断は経皮的に行うことが好ましい。
【0096】
本発明において、被検哺乳動物、特にヒトの皮膚への光の照射と、本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖あるいは本発明に係る色標識オリゴ糖又は多糖を含む診断薬によって生じる皮膚からの蛍光の検出とを包含する、腎機能決定のための非侵襲的診断方法が好ましい。
【0097】
本発明において、本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の蛍光測定をin vitroで、例えば血液試料で行うことが好ましい。本発明において、蛍光測定のために酵素前処理を行わないことが好ましい。
【0098】
本発明において、蛍光測定は慣用の標準機器で行うことが好ましい。本発明において、色標識オリゴ糖又は多糖の蛍光測定は非侵襲的検出方法で行うことが好ましい。非侵襲的検出方法とは、例えば採血による事前の試料採取をせずに組織又は体液中の本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の検出ができる方法である。本発明において、組織又は体液中の本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の蛍光測定を行うことが好ましい。本発明において、蛍光の励起のために被験者の皮膚に光を照射し、皮膚から出る蛍光を検出する蛍光測定を使用することが好ましい。本発明において、非侵襲的検出器ヘッドによりこの測定を行うことが好ましい。本発明において、検出器ヘッドの光源、例えば紫外領域で放射するレーザが、グラスファイバ光学装置を経て皮膚を照明し、そこに含まれる本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の色素を励起して蛍光を生じさせることが好ましい。本発明において、蛍光をグラスファイバ光学装置で吸収し、適当な検出器、例えばCCD(電荷結合素子)分光器で測定することが好ましい。その場合、光源及び/又は検出器を検出器ヘッドに組み込み、又は検出器ヘッドの外部に配置することができる。本発明において、検出器ヘッドは接着剤、例えば透過性接着フィルムで被験者の皮膚上に被着し、全測定期間のあいだそこに残置することが好ましい。
【0099】
本発明において、本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の非侵襲的測定は長期間にわたって連続的に行うことが好ましい。本発明において、非侵襲的測定を臨床的に適切な測定時間のあいだ行うことが好ましい。本発明において、非侵襲的測定は、好ましくは2ないし4時間、特に約3時間、特に3時間の期間にわたって行う。
【0100】
本発明において、診断薬として使用される本発明の色標識オリゴ糖又は多糖の用量は、体重1kgにつき薬剤5ないし200mg、特に好ましくは体重1kgにつき薬剤5ないし100mg、さらに好ましくは体重1kgにつき薬剤5ないし50mg、とりわけ体重1kgにつき薬剤5ないし20mgである。
【0101】
本発明のその他の有利な実施態様は従属請求項で明らかである。
【0102】
下記の実施例は発明の説明のためのものであるが、発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0103】
色標識のためのオリゴ糖又は多糖の調製
使用した出発材料:
使用した出発材料BeneoTMGR及びBeneoTM95はBeneo-Orafti社(ベルギー国Tienen)製のものである。チコリ(Chicorium intybus)から製造されるイヌリンからなり、食品分野で使用される製品である。
【0104】
BeneoTMGR:BeneoTMGRは、約92%がイヌリン(オリゴフルクトース、重合度分布は表1を参照)、約8%がグルコース(G)、フルクトース(F)及びスクロース(GF)からなる。
【0105】
BeneoTM95:BeneoTM95は、約95%がイヌリン(オリゴフルクトース、重合度分布は表1を参照)、約5%がグルコース(G)、フルクトース(F)及びスクロース(GF)からなる。表は、BeneoTMGRと比較して短鎖フルクトース分が大きいことをはっきり示している。
【表1】

【0106】
分取ゲルクロマトグラフィー
所望の鎖長の分子を分離するために、サイズ排除クロマトグラフィー(英語でSize Exclusion Chromatography(SEC))を適用した。これはゲル浸透クロマトグラフィー(Gel-Peameations-Chromatography(GPC))とも呼ばれる。
【0107】
カラムで分離される物質の検出は、とりわけ光線がある角度で光学的に異なる媒質に入射するときに生じる偏向/方向の変化を測定する屈折率検出器(Refraction Index-Detector(RI))によって行われる。RI検出器は電圧(mV)を出力し、この電圧は時間と対比して記録される(クロマトグラム)。
【0108】
分離材として“Toyopearl HW-40 S”(Tosoh Bioscience、ドイツ国D-70567シュツットガルト)、分子構造:ヒドロキシル化メタクリレート重合体、平均粒度:30 μm、粒度分布:20−40μm、排除限度:10000ドルトン以下、平均孔サイズ:50Å(0.005μm)、分離カラムの高さ:125cm、分離カラムの直径:10cm)を使用する。
【0109】
分離条件:
ゲル床容積 3×8L=24L
温度 60℃
移動相 完全脱塩した脱気水
流速 12mL/分
回分量 それぞれ10%(W/W)TSで150ml
【0110】
HPAECによる分析:
すべての試料の分析はHPAEC(High Pressure Anion Exchange Chromatography)によって行う。固定相は強塩基性陰イオン交換樹脂であり、これに種々の陰イオンがさまざまな強さで結合する。ここで分析される炭水化物は弱酸であるから、塩基性環境で陰イオンとして存在し、そのpK値に応じて勾配溶離により分離し、検出することができる。保持時間は単糖から多糖へと増加する。
【0111】
検出は、3つの異なる電位で動作するパルス電流滴定(PAD)で行う。第1の電位は金電極で試料のイオンの酸化を生じさせ、その際それぞれの試料イオンの濃度に相当する電位が発生する。第2の電位を作用させることによって電極表面が酸化される。第3の電位の作用のもとで電極表面が金に還元され、それが同時に電極を清浄化する。
【表2】

【0112】
イヌリン(BeneoTM95)からのDP5ないしDP10(“DP5+”)の範囲のフルクトオリゴ糖混合物のクロマトグラフィー分離:
目標は主に分子の大きさがDP5ないしDP10のフルクタンだけを含むオリゴフルクタン混合物の調製である。BeneoTM95は最高95%がDP2ないしDP9の範囲のフルクタンを含むため(表1を参照)、<DP5の低分子領域だけをクロマトグラフィーで分離すればよい。
【0113】
11.7gのTS生成物に対して分離装置で6回の分離(条件:上記を参照)を行い、その際それぞれ10%(W/W)TSを含む150mLをカラムに送入した。合計で90gのTS BeneoTM95を溶解し、クロマトグラフィーを行った。
【0114】
生成物溶液を分離の後に7つの異なる画分で捕集した。まず大きな分子がカラムを溶離することが知られているから、この範囲ではその後小さな分子が溶離される範囲よりも密に区分けした。画分の組成をHPAECにより分析した。HPAEC分析だけでもピークを個々の鎖長に割り当てることが可能である。すでに目標化合物の部分にもはや属さないフルクトース四量体F4は、第4画分で初めて現れる。第7画分では小さな分子の割合が非常に大きいため、もはや使用せず、廃棄した。第2及び第6画分は一括して、回転蒸発装置で40℃及び40mbarで10%(W/W)TSまで濃縮した。
【0115】
活性炭による脱色と凍結乾燥:
分取ゲルクロマトグラフィーによって得た濃縮溶液は淡黄色の着色を示し、これを活性炭で除去することができる。そのために溶液を室温で、250mLの活性炭(Epibon MC-h 12-40, Donau Carbon GmbH & Co. KG、フランクフルト)を満たしたフリットボトムのガラスカラムに入れ、脱色された溶液を捕集する。前処理のために活性炭を熱い完全脱塩水でよく洗浄した。活性炭は有色物質のほかにフルクタンも吸着するから、脱色の収量は48%である(使用した乾燥物に対して)。
【0116】
脱色によって溶液が再び希釈されるから、凍結乾燥の準備のために回転蒸発装置で40℃及び40mbarで10%(W/W)TSまで濃縮しなければならない。濃縮した溶液を−20℃で凍結し、続いて0.6mbarで凍結乾燥する。試験で合計11.7gの凍結乾燥生成物を得た。
【0117】
調製された生成物のHPAECクロマトグラムで、出発材料BeneoTM95と比較して、小さな分子(この場合<DP5)は保持時間<18分でもはや存在しないことがはっきり判る。
【0118】
組成:
【表3】

【0119】
イヌリン(BeneoTMGR)からのDP10(“DP10”)のフルクトオリゴ糖画分のクロマトグラフィー分離:
目標は主としてDP10の大きさの分子だけを含むポリフルクタン画分の調製である。出発材料としてBeneoTMGRを使用した(表1を参照)。
【0120】
4.7gのTS生成物に対して分離設備で11回の分離(条件:上記を参照)を行い、その際10%(W/W)TSを含むそれぞれ150mLのBeneoTMGRをカラムに送入した。合計で225gのTS BeneoTMGRを溶解し、クロマトグラフィーを行った。収量は2%である。DP10に関する純度は約30%である。
【0121】
イヌリン(BeneoTMGR)からの>DP10(“DP10+”)の範囲のフルクトオリゴ糖混合物のクロマトグラフィー分離:
目標は主としてDP10ないしDP15の分子の大きさを有するフルクタンだけを含むオリゴフルクタン混合物の調製である。BeneoTMGRはDP2ないし約DP60の範囲のフルクタンからなるため(表1又はBeneo-Orafti社(ベルギー国Tienen)製造元データ)、クロマトグラフィー分離の前に、イソプロパノールで約DP15以上のDP範囲を沈殿させ、濾過して除いた。
【0122】
イソプロパノール沈殿:
−ビーカーで110gのBeneoTMGRを1100gの完全脱塩水に計り取る。
−高分子成分の沈殿のために2200gのイソプロパノールを加え、10分間攪拌する。
−乳状溶液を吸引漏斗によりまずブラックバンドフィルターで、次いで0.45μmフィルターで濾別した。
−濾液は回転蒸発装置で50℃で初期量の3分の1に濃縮され(370g)、こうしてクロマトグラフィーのために使用することができる。
−55.6gTSのオリゴフルクタン混合物を得た。
【0123】
3.3gTSの生成物DP10+に対して分離設備で2回の分離(条件:上記を参照)を行い、その際10%(W/W)TSを含むそれぞれ150mLのオリゴフルクタン混合物をカラムに送入した。収量は3%である。
【表4】

【実施例2】
【0124】
ICG-ITC標識シニストリンの合成と精製
・2gのシニストリンを還流冷却器付き三つ首フラスコでN2を給気しつつ35℃で80mlのDMFに溶解する。
・溶液を室温に冷やす。
・0.44gのNaHを小分けにして加える(溶液は僅かに黄色になり粘つく)。
・溶液を45℃で30分攪拌する。
・溶液を55℃で30分攪拌する。
・35mlのDMFに溶解した0.072gのIGC-ITCを一度に加える。
・溶液を55℃で60分攪拌する。
・室温で一晩攪拌する。
・溶液を5℃に冷却し、5mlのH2Oに溶解した0.95gのNH4Clを激しく攪拌しながら加える(溶液は褐色から暗緑色に変色する)。
・溶媒を回転蒸発装置で分離する。
・緑色の固形物が残る。
・生成物をメタノール/H2O 1/1に溶解する。
・アセトンで沈殿させる。
・固形物を40mlのメタノール/H2O 1/1に再び懸濁させる。
・2gのシリカ60を加える。
・溶媒を回転蒸発装置で分離する。
・生成物をシリカ60/メタノール/トルオール(2/1)を装填したカラムに加える。
・不純物をメタノール/トルオール(2/1)で分離する。
・生成物をメタノール/H2Oで溶離する。
・再びシリカ60と混合し、同じ溶媒で溶離する。
・生成物を−80℃で凍結する。
・凍結乾燥すると緑色の固形物が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素と結合されたオリゴ糖又は多糖を含み、色素が少なくとも725nm、最高で875nmの最大発光を有する、色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項2】
シアニン色素と結合されたオリゴ糖又は多糖を含む色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項3】
シアニン色素と結合されたオリゴ糖又は多糖を含み、シアニン色素が少なくとも725nm、最高で875nmの最大発光を有する、色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項4】
色素が蛍光色素である上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項5】
色素がシアニン色素である上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項6】
色素が単官能又は二官能イソチオシアネート−シアニン色素である上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項7】
色素がインドシアニングリーン誘導体である上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項8】
CY-ITC-SAC
の構造を有し、ここでCYはシアニン色素であり、ITCはイソチオシアネートであり、SACはオリゴ糖又は多糖である上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項9】
インドシアニングリーン誘導体がインドシアニングリーン及びイソチオシアネートから合成される請求項1に記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項10】
式VIIIの物質:
【化1】

〔SACはオリゴ糖又は多糖である〕
を含む上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項11】
オリゴ糖又は多糖が2ないし65のDP、好ましくは3ないし25のDP、さらに好ましくは4ないし25のDP、特に好ましくは5ないし10のDPを有する上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項12】
オリゴ糖又は多糖が分枝している上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項13】
オリゴ糖又は多糖が分枝していない請求項1ないし5のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項14】
オリゴ糖又は多糖がオリゴフルクタン、ポリフルクタン、イヌリン、シニストリン、並びにα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有する不溶性マルトデキストリン又はデキストリンからなるグループから選ばれている上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項15】
オリゴ糖又は多糖がシニストリンである上記請求項のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項16】
オリゴ糖又は多糖がオリゴフルクタンである請求項1ないし14のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項17】
オリゴ糖又は多糖がポリフルクタンである請求項1ないし14のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項18】
オリゴ糖が1-F-フルクトフラノシル-D-ニストースである請求項1ないし14のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項19】
オリゴ糖又は多糖がα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有する不溶性マルトデキストリンである請求項1ないし14のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項20】
オリゴ糖又は多糖がα-1,4結合のほかに少なくとも1個のα-1,3、α-1,2及び/又はα-1,6結合を有する不溶性デキストリンである請求項1ないし14のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖。
【請求項21】
(a)オリゴ糖又は多糖を溶媒に溶解し、
(b)溶解したオリゴ糖又は多糖に水素化ナトリウムを加え、
(c)溶解した色素、特に蛍光色素を加え、
(d)色標識オリゴ糖又は多糖を固形物として単離する
請求項1ないし20のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖の製造方法。
【請求項22】
ステップ(a)の溶媒が無水ジメチルホルムアミドである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(d)で塩化アンモニウム水溶液を加え、続いて抽出し、続いて凍結乾燥することによって色標識オリゴ糖又は多糖を単離する請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
腎機能の決定のための請求項1ないし20のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖の使用。
【請求項25】
腎機能の決定のための薬剤を製造するための請求項1ないし20のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖の使用。
【請求項26】
請求項1ないし20のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖、並びに添加剤、担体物質、助剤及びこれらの混合物からなる群より選択される物質を含む、特に腎機能の決定のための診断薬。
【請求項27】
請求項1ないし20のいずれか1つに記載の色標識オリゴ糖又は多糖あるいは請求項26に記載の診断薬を、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、特に好ましくはヒトに投与することを特徴とする特に腎機能の決定のための診断方法。

【公表番号】特表2010−518034(P2010−518034A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548599(P2009−548599)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000479
【国際公開番号】WO2008/095603
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509223977)ウニベルジテート ハイデルベルク (1)
【Fターム(参考)】