説明

色素増感型光電変換素子

【課題】安価で変換効率の良い光電気変換素子及び太陽電池を提供する。
【解決手段】酸化物半導体微粒子の薄膜に、下記式(1)で表される色素又はその塩を担持させる。


(X乃至Xはそれぞれ酸素、硫黄又はセレン、R乃至Rは水素、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン、アミノ基、アルコキシル基又は特定構造式を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色素又はその塩で増感された半導体微粒子の薄膜を有する光電変換素子及びそれを用いた太陽電池に関し、詳しくは酸化物半導体微粒子の薄膜に特定の構造を有する色素を担持させた光電変換素子及びそれを利用した太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石炭等の化石燃料に代わるエネルギー資源として太陽光を利用する太陽電池が注目されている。現在、結晶又はアモルファスのシリコンを用いたシリコン太陽電池、あるいはガリウム、ヒ素等を用いた化合物半導体太陽電池等について、盛んに開発検討がなされている。しかし、それらは製造に要するエネルギー及びコストが高いため、汎用的に使用するのが困難であるという問題点がある。また色素で増感した半導体微粒子を用いた光電変換素子、あるいはこれを用いた太陽電池も知られており、これを作成する材料、製造技術が開示されている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照)。この光電変換素子は酸化チタン等の比較的安価な酸化物半導体を用いて製造されるため、従来のシリコン等を用いた太陽電池に比べコストの安い光電変換素子が得られる可能性があり、またカラフルな太陽電池が得られることなどにより注目を集めている。しかし、シリコン太陽電池と比較し、変換効率が低いという問題が残っており、更なる変換効率の向上が望まれている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特許第2664194号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】B.O’Reganら、Nature、第353巻、737頁(1991年)
【非特許文献2】M.K.Nazeeruddinら、J.Am.Chem.Soc.,第115巻、6382頁(1993年)
【非特許文献3】W.Kuboら、Chem.Lett.,1241頁(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色素で増感された酸化物半導体微粒子を用いた光電変換素子において、安定で、変換効率が高く、かつ実用性の高い光電変換素子の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、特定の構造を有する色素を用いて半導体微粒子の薄膜を増感し、光電変換素子を作成する事により前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)基板上に設けられた酸化物半導体微粒子の薄膜に、下記式(1)で表される色素又はその塩を担持させてなる光電変換素子、
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、X乃至Xはそれぞれ酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシル基又は下記式(2)を表し、R乃至Rの少なくとも1つ以上は下記式(2)である。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式(2)中、Y及びZはそれぞれ独立に水素原子、カルボキシル基、シアノ基又はリン酸基を表す。Qは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。A乃至Aはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。m1は0乃至16のいずれかの整数を表す。式(2)中、*は式(1)のR乃至Rの結合位置を表す。)
(2)Rが式(2)で表され、R乃至Rがそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アミノ基又はアルコキシル基である前項(1)に記載の光電変換素子、
(3)Qが硫黄原子である前項(2)に記載の光電変換素子、
(4)Rが下記式(3)で表される前項(3)に記載の光電変換素子、
【0012】
【化3】

【0013】
(式(3)中、A、Y及びZは前項(1)に記載の式(2)におけるのと同じ意味を表す。A乃至A11はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。n1は0乃至4のいずれかの整数を表す。*は式(1)のRの結合位置を表す。)
(5)A及びA10が脂肪族炭化水素基である前項(4)に記載の光電変換素子、
(6)A及びA10がn−ヘキシル基である前項(5)に記載の光電変換素子、
(7)A、A乃至A及びA11がいずれも水素原子である前項(4)乃至(6)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(8)n1が0乃至2のいずれかの整数である前項(4)乃至(7)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(9)R、R及びRがいずれも水素原子であり、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は芳香族炭化水素基である前項(2)乃至(8)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(10)R及びRがいずれも下記式(4)で表される前項(9)に記載の光電変換素子、
【0014】
【化4】

【0015】
(式(4)中、*は式(1)のR及びRとの結合位置を表す。)
(11)X乃至Xがいずれも硫黄原子である前項(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(12)Y及びZの少なくとも1つがカルボキシル基である前項(1)乃至(11)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(13)Y及びZのいずれか1つがカルボキシル基であり、他方がシアノ基である前項(12)に記載の光電変換素子、
(14)Yがカルボキシル基でありZがシアノ基である前項(13)に記載の光電変換素子、
(15)Aが水素原子である前項(1)乃至(14)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(16)式(1)で表される色素またはその塩が、下記式(7)乃至(10)のいずれかである前項(1)に記載の光電変換素子、
【0016】
【化5】

【0017】
(17)前項(1)乃至(16)のいずれか一項に記載の光電変換素子を用いてなる太陽電池、
(18)前項(1)に記載の式(1)で表される色素又はその塩、
(19)前項(16)に記載の式(7)乃至(10)で表される色素又はその塩
に関する。
【発明の効果】
【0018】
特定の構造を有する本発明の色素又はその塩を用いることにより、変換効率が高く安定性の高い光電変換素子及び太陽電池を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】色素増感光電変換素子のセルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の光電変換素子は、基板上に設けられた酸化物半導体微粒子の薄膜に、下記式(1)で表される色素(その塩を含む。以下同様)を担持させたものである。なお本願明細書において、「化合物」とは、特に断りの無い場合には化合物又はその塩を表すものとする。
【0021】
【化6】

【0022】
式(1)中、X乃至Xはそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、いずれも硫黄原子であることが好ましい。
【0023】
式(1)中、R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシル基又は後述の式(2)を表し、R乃至Rの少なくとも1つ以上は後述の式(2)である。
【0024】
式(1)のR乃至Rにおける脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基が挙げられ、置換基を有していてもよい炭素数1〜36の飽和又は不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の飽和又は不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基がさらに好ましい。また、置換基を有していてもよい環状のアルキル基としては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキル等が挙げられる。脂肪族炭化水素基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、オクチル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル基、イソへキセニル基、シクロへキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、ペンチニル基、へキシニル基、イソへキシニル基、シクロへキシニル基等が挙げられる。これらは前記のように置換基を有していてもよい。脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、ヒドロキシル基、リン酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、置換アミド基、アシル基及び置換されていてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0025】
なお、脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられた芳香族炭化水素基としては、後述するR乃至Rにおける芳香族炭化水素基と同様のものが、また、脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられた脂肪族炭化水素基としては、前記R乃至Rの説明で挙げられた脂肪族炭化水素基と同様の脂肪族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられたアルコキシカルボニル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルコキシカルボニル基等が挙げられ、その具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−ペントキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、n−ヘプチルオキシカルボニル、n−ノニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられたアリールカルボニル基としては、例えば上記の芳香族炭化水素基とカルボニル基とを結合させたアリールカルボニル基等が挙げられ、その具体例としてはフェニルカルボニル、ナフトカルボニル等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられたアリールオキシ基としては、例えば後述するR乃至Rにおける芳香族炭化水素基と酸化原子とを結合させたアリールオキシ基等が挙げられ、その具体例としてはフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0026】
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられた置換アミド基としては、例えばアミド、アセトアミド、アルキルアミド、アリールアミド基が挙げられ、具体的に好ましいものはアミド、アセトアミド、N−メチルアミド、N−エチルアミド、N−(n−プロピル)アミド、N−(n−ブチル)アミド、N−イソブチルアミド、N−(sec−ブチルアミド)、N−(t−ブチル)アミド、N,N−ジメチルアミド、N,N−ジエチルアミド、N,N−ジ(n−プロピル)アミド、N,N−ジ(n−ブチル)アミド、N,N−ジイソブチルアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N−(n−プロピル)アセトアミド、N−(n−ブチル)アセトアミド、N−イソブチルアセトアミド、N−(sec−ブチル)アセトアミド、N−(t−ブチル)アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジ(n−プロピル)アセトアミド、N,N−ジ(n−ブチル)アセトアミド、N,N−ジイソブチルアセトアミド、フェニルアミド、ナフチルアミド、フェニルアセトアミド、ナフチルアセトアミド等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられたアシル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1乃至4のアルキルカルボニル基であり、具体的にはアセチル、プロピオニル、トリフルオロメチルカルボニル、ペンタフルオロエチルカルボニル、ベンゾイル、ナフトイル等が挙げられる。
【0027】
式(1)のR乃至Rにおける芳香族炭化水素基とは、芳香環から水素原子1個を除いた基を意味し、芳香環の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ペリレン、テリレン、フルオレン、ビフェニル、ターフェニル等の芳香族炭化水素環、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェン、テトラチオフェン等のポリチオフェン、インデン、アズレン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピラゾール、ピラゾリジン、チアゾリジン、オキサゾリジン、ピラン、クロメン、ピロール、ピロリジン、ベンゾイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ジアゾール、インドリン、チエノチオフェン、フラン、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジン、チアゾール、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、インドレニン、ベンゾインドレニン、ピラジン、キノリン、キナゾリン等の複素芳香環、フルオレン、カルバゾール等の縮合型芳香環等が挙げられ、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェン、テトラチオフェン等のポリチオフェンであることが好ましく、テトラチオフェンであることが更に好ましい。これらの芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0028】
前記芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、前述の脂肪族炭化水素基やハロゲン原子等が挙げられ、溶媒への溶解性、分子構造制御、電池性能等目的に応じて適宜選択可能である。特に炭素数1〜36の飽和アルキル基であることが好ましい。飽和アルキル基とは、前述の脂肪族炭化水素基で挙げられたものと同様でよい。
【0029】
式(1)のR乃至Rにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0030】
式(1)のR乃至Rにおけるアミノ基としては、例えばアミノ基、モノ又はジメチルアミノ基、モノ又はジエチルアミノ基、モノ又はジ(n−プロピル)アミノ基、モノ又はジ(n−ブチル)アミノ基、モノ又はジ(n−ヘキシル)アミノ基等のアルキル置換アミノ基、モノ又はジフェニルアミノ基、モノ又はジナフチルアミノ基等の芳香族置換アミノ基、モノアルキルモノフェニルアミノ基等のアルキル基と芳香族炭化水素残基が一つずつ置換したアミノ基又はベンジルアミノ基、またアセチルアミノ基、フェニルアセチルアミノ基等が挙げられる。
【0031】
式(1)のR乃至Rにおけるアルコキシル基としては、例えば、前述の脂肪族炭化水素基に酸素原子を結合させた基を表し、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。これらアルコキシル基はR乃至Rにおける脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げられたものと同様の置換基を有していてもよい。
【0032】
式(1)中、R乃至Rのいずれか少なくとも1つ以上は下記式(2)を表す。そして、Rが式(2)であり、R乃至Rがそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アミノ基又はアルコキシル基であることが好ましく、R、R及びRがいずれも水素原子であり、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は芳香族炭化水素基であることがより好ましく、R、R及びRがいずれも水素原子であり、R及びRがいずれも下記式(4)であることが更に好ましい。
【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
式(4)中、*は式(1)のR及びRが結合している位置を表す。
【0036】
式(2)中、Qは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、硫黄原子であることが好ましい。
【0037】
式(2)中、A及びAはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。A及びAにおける脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子及びアルコキシル基としては、それぞれ、前記R乃至Rにおけるのと同様のものが挙げられる。
【0038】
式(2)中、m1は0乃至16のいずれかの整数を表し、0乃至4の整数であることが好ましい。
【0039】
なお、式(2)中、*は上記式(1)のR乃至Rが結合している位置を表す。
【0040】
式(1)におけるRが下記式(3)であることが更に好ましい。
【0041】
【化9】

【0042】
式(2)及び式(3)中、Aは水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表し、水素原子であることが好ましい。Aにおける脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基としては、それぞれ前記R乃至Rにおけるのと同様のものが挙げられる。
【0043】
式(2)及び式(3)中、Y及びZはそれぞれ水素原子、カルボキシル基、シアノ基又はリン酸基を表し、カルボキシル基又はシアノ基であることが好ましく、Y及びZのいずれか少なくとも1つ以上がカルボキシル基であることがより好ましく、Y及びZのいずれか1つがカルボキシル基でかつ他方がシアノ基であることが更に好ましく、Yがカルボキシル基でありZがシアノ基であることが最も好ましい。
【0044】
式(3)中、A乃至A11はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表し、A、A乃至A、A11がいずれも水素原子であることが好ましい。また、A及びA10は脂肪族炭化水素基であることが好ましく、n−ヘキシル基であることがより好ましく、A、A乃至A、A11がいずれも水素原子であり、かつA及びA10がいずれも脂肪族炭化水素基であることが更に好ましく、A、A乃至A、A11が水素原子であり、かつA及びA10がn−ヘキシル基であること最も好ましい。
乃至A11における脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基としては、それぞれ前記R乃至Rにおけるのと同様のものが挙げられる。
【0045】
式(3)中、n1は0乃至4のいずれかの整数を表し、0乃至2の整数であることが好ましい。
【0046】
式(1)で表される色素がカルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基、スルホン酸基等の酸性基を置換基として有する場合、色素は塩を形成していてもよく、塩の例としては例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の塩、又は有機塩基、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピペラジニウム、ピペリジニウムなどの4級アンモニウム等の塩が挙げられる。好ましいものはテトラブチルアンモニウム塩およびピペリジニウム塩である。塩を形成する目的としては、主に、光電変換効率の向上、溶媒への溶解性制御、化合物の安定性又は合成及び精製の容易さ等が挙げられる。
【0047】
式(1)で表される色素又はその塩はシス体、トランス体及びその混合物、光学活性体、ラセミ体等の構造異性体をとり得るが、いずれの異性体も特に限定されず本発明における光増感用色素として良好に使用でき、それぞれの異性体を単独で用いてもよいし、複数からなる混合物として用いてもよい。
【0048】
式(1)で表される色素又はその塩としては、上記式(1)のX乃至X及びR乃至R、式(2)のY、Z、Q、A乃至A及びm1、式(3)のA、Y、Z、A乃至A11及びn1のそれぞれにおける好ましいものを組み合わせた色素又はその塩が特に好ましく、具体的には下記式(7)乃至(10)で表される色素又はその塩が挙げられる。
【0049】
【化10】

【0050】
式(7)乃至(10)で表される色素は、例えば、以下に示す反応経路によって製造することができるが、式(7)乃至(10)以外の式(1)に包含される色素もこれらの反応経路に準じて製造することができる。
【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
以下に式(1)で表される色素の具体例を、下記一般式(1000)を用いて表し、表1に示す。表中、TPAはトリフェニルアミンを示す。
【0056】
【化15】

【0057】
【表1】

【0058】
本発明の色素増感光電変換素子は、例えば、基板上に酸化物半導体微粒子の薄膜を設け、次いでこの薄膜に式(1)の色素を担持させたものである。
【0059】
酸化物半導体微粒子の薄膜を設ける基板としては、その表面が導電性であるものが好ましいが、そのような基板は市場にて容易に入手可能である。具体的には、例えば、ガラスの表面若しくはポリエチレンテレフタレート又はポリエーテルスルフォン等の透明性のある高分子材料の表面に、インジウム、フッ素、アンチモンをドープした酸化スズなどの導電性金属酸化物や銅、銀、金等の金属の薄膜を設けたものを用いることが出来る。その導電性としては通常1000Ω以下であればよく、特に100Ω以下のものが好ましい。
また、酸化物半導体の微粒子としては金属酸化物が好ましく、その具体例としてはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、バナジウムなどの酸化物が挙げられる。これらのうちチタン、スズ、亜鉛、ニオブ、インジウム等の酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズがより好ましい。これらの酸化物半導体は単一で使用することもできるが、混合したり、半導体の表面にコーティングして使用することもできる。酸化物半導体微粒子の粒径は、平均粒径として通常1〜500nmであり、好ましくは1〜100nmである。またこの酸化物半導体の微粒子は大きな粒径のものと小さな粒径のものを混合したり、多層にして用いることも出来る。
【0060】
酸化物半導体微粒子の薄膜は、酸化物半導体微粒子をスプレイ噴霧などで直接基板上に塗布する方法、基板を電極として電気的に半導体微粒子を薄膜状に析出させる方法、半導体微粒子のスラリー又は半導体アルコキサイド等の半導体微粒子の前駆体を加水分解することにより得られた微粒子を含有するペーストを基板上に塗布した後、乾燥、硬化もしくは焼成する方法等によって基板上に形成することができる。酸化物半導体を用いる電極の性能上、スラリーを用いる方法が好ましい。この方法の場合、スラリーは2次凝集している酸化物半導体微粒子を常法により分散媒中に平均1次粒子径が1〜200nmになるように分散させることにより得られる。
【0061】
スラリーを分散させる分散媒としては、半導体微粒子を分散させ得るものであれば特に限定されず、水、エタノール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン等の炭化水素等が用いられ、これらは混合して用いてもよく、また水を用いることはスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。また酸化物半導体微粒子の分散状態を安定化させる目的で分散安定剤を用いることができる。用いうる分散安定剤としては、例えば酢酸、塩酸、硝酸等の酸、又はアセチルアセトン、アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の有機溶媒等が挙げられる。
【0062】
スラリーを塗布した基板は焼成してもよく、その焼成温度は通常100℃以上、好ましくは200℃以上で、かつ上限はおおむね基板の融点(軟化点)以下であり、通常上限は900℃であり、好ましくは600℃以下である。また焼成時間には特に限定はないが、おおむね4時間以内が好ましい。基板上の酸化物半導体微粒子の薄膜の厚さは通常1〜200μm、好ましくは1〜50μmである。
【0063】
酸化物半導体微粒子の薄膜に2次処理を施してもよい。例えば半導体と同一の金属のアルコキサイド、金属アシロキシド、塩化物、硝化物、硫化物等の溶液に直接、酸化物半導体微粒子の薄膜の設けられた基板ごと浸漬させて乾燥もしくは再焼成することにより半導体微粒子の薄膜の性能を向上させることもできる。金属アルコキサイドとしてはチタンエトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt−ブトキサイドなど、また金属アシロキシドとしてはn−ジブチル−ジアセチルスズ等が挙げられ、それらのアルコール溶液が用いられる。塩化物としては例えば四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、その水溶液が用いられる。
このようにして得られた酸化物半導体薄膜は酸化物半導体の微粒子から成っている。
【0064】
次に酸化物半導体微粒子の薄膜に本発明の式(1)で表される色素を担持させる方法について説明する。
式(1)の色素を担持させる方法としては、該色素を溶解しうる溶媒にて色素を溶解して得た溶液、又は溶解性の低い色素にあっては色素を分散せしめて得た分散液に上記酸化物半導体微粒子の薄膜の設けられた基板を浸漬する方法が挙げられる。溶液又は分散液中の濃度は色素によって適宜決める。その溶液又は分散液中に、基板上に作成した半導体微粒子の薄膜を浸す。浸漬温度は概ね常温から溶媒の沸点迄であり、また浸漬時間は1分間から48時間程度である。色素を溶解させるのに使用しうる溶媒の具体例として、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、t−ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。また、式(1)の色素がこれらの溶媒に対して十分な溶解度を示さない場合は、テトラブチルアンモニウムヨーダイド等のアンモニウム塩を添加し、色素の溶解を促進させることもできる。溶液中の色素濃度は通常1×10−6M〜1M、好ましくは1×10−5M〜1×10−1Mである。このようにして式(1)の色素で増感された酸化物半導体微粒子の薄膜を有した本発明の光電変換素子が得られる。
【0065】
担持する式(1)の色素は1種類でもよいし、複数種類を混合してもよい。また、混合する場合は本発明の式(1)の色素同士でもよいし、他の色素や金属錯体色素を混合してもよい。特に吸収波長の異なる色素同士を混合することにより、幅広い吸収波長を利用することが出来るため変換効率の高い太陽電池が得られる。色素を2種以上用いる場合は色素を半導体微粒子の薄膜に順次吸着させても、混合溶解して吸着させてもよい。
【0066】
混合する色素の比率に特に限定は無く、それぞれの色素より最適化条件が適宜選択されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの色素につき少なくとも10%モル程度以上使用するのが好ましい。2種以上の色素を溶解又は分散した溶液を用いて、酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を吸着する場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様でよい。色素を混合して使用する場合の溶媒としては前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。
【0067】
酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持する際、色素同士の会合を防ぐために、包摂化合物の共存下で色素を担持することが効果的である。ここで包摂化合物としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられるが、好ましいものとしてはデオキシコール酸、デヒドロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。また、色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン(TBP)等のアミン化合物で半導体微粒子の薄膜を処理してもよい。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に色素を担持した半導体微粒子の薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。
【0068】
本発明の太陽電池は、上記酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持させた光電変換素子電極、対極、及びレドックス電解質又は正孔輸送材料又はp型半導体等から構成される。レドックス電解質、正孔輸送材料、p型半導体等の形態としては、液体、凝固体(ゲル及びゲル状)、固体などが挙げられる。液状のものとしてはレドックス電解質、溶融塩、正孔輸送材料、p型半導体等をそれぞれ溶媒に溶解させたものや常温溶融塩などが、凝固体(ゲル及びゲル状)の場合は、これらをポリマーマトリックスや低分子ゲル化剤等に含ませたもの等がそれぞれ挙げられる。固体のものとしてはレドックス電解質、溶融塩、正孔輸送材料、p型半導体等を用いることができる。正孔輸送材料としてはアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子、トリフェニレン系化合物などのディスコティック液晶相に用いる物などが挙げられる。また、p型半導体としてはCuI、CuSCN等が挙げられる。
【0069】
対極としては導電性を有しており、レドックス電解質の還元反応に触媒的に作用するものが好ましい。例えばガラス又は高分子フィルムに白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したものや、導電性微粒子を塗り付けたものが使用できる。
【0070】
本発明の太陽電池に用いるレドックス電解質としては、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物及びハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン、コバルト錯体などの金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等の有機酸化還元系電解質等を挙げることができるが、ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン化合物−ハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、例えばヨウ素分子や臭素分子等があげられ、ヨウ素分子が好ましい。また、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物としては、例えばLiBr、NaBr、KBr、LiI、NaI、KI、CsI、CaI、MgI、CuI等のハロゲン化金属塩あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイドなどのハロゲンの有機4級アンモニウム塩等が挙げられるが、ヨウ素イオンを対イオンとする塩類が好ましい。また、上記ヨウ素イオンの他にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ジシアノイミドイオン等のイミドイオンを対イオンとする電解質を用いることも好ましい。
【0071】
レドックス電解質はそれを含む溶液の形で構成されている場合、その溶媒には電気化学的に不活性なものが用いられる。例えばアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、メチルフォルメート、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−オキサゾリジン−2−オン、スルホラン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられ、これらの中でも、特に、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、3−メチル−オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。これらは単独もしくは2種以上組み合わせて用いてもよい。ゲル状電解質の場合は、オリゴマー及びポリマー等のマトリックスに電解質あるいは電解質溶液を含有させたものや、非特許文献3に記載の低分子ゲル化剤等に同じく電解質あるいは電解質溶液を含有させたもの等が挙げられる。レドックス電解質の濃度は通常0.01〜99質量%で、好ましくは0.1〜90質量%程度である。
【0072】
本発明の太陽電池は、基板上の酸化物半導体微粒子の薄膜に本発明の式(1)の色素を担持した光電変換素子の電極に、それを挟むように対極を配置し、その間にレドックス電解質等を含んだ溶液を充填することにより得られる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
吸収スペクトルは島津磁気分光光度計UV−3100型(P/N206−13500島津製作所製)により、核磁気共鳴分析はLAMBER−NMR(400MHz、270MHz)(日本電子社製)により、質量分析は島津GCMS−QP5050A型質量分析装置(島津製作所製)及びMALDI−MS KRATOS ANALYTICAL KOMPACT(島津製作所製)により、元素分析はParkin Elmer2400型元素分析計によりそれぞれ測定した。
【0074】
合成例1
1,3,5−トリクロロベンゼン10.0gと、ヨウ素80.6gとを濃硫酸150ml中で125〜135℃で48時間攪拌し、反応終了後、反応液を氷に加えた。生成した固体結晶をろ取及びナトリウムビスルフィド水溶液400ml、水400ml、エタノール100mlで洗浄し、その後、テトラヒドロフラン(THF)で再結晶して、化合物(2001)22.1gを白色針状結晶として得た。
得られた化合物(2001)のマススペクトルは、以下の通りであった。
MS(EI) m/z; 558(M+)
【0075】
【化16】

【0076】
合成例2
窒素雰囲気下、3−メチル−1−ブチン−3−オール2.94g、Pd(PPhCl 560mg、ジイソプロピルアミン4.2ml、CuI 307mgを、トルエン45mlに溶解した化合物(2001)5.0g溶液に添加し、反応させた。反応液を22時間還流した後、反応液に水を加え、クロロホルム(100ml×3)で抽出した。クロロホルム相を飽和食塩水(100ml×3)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸マグネシウムを除去し、次いで溶媒を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をベンゼン及び冷トルエンで洗浄し、化合物(2002)2.4gを白色粉末として得た。
得られた化合物(2002)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(270MHz,CDCl3,TMS) : δ1.37(s,18H),2.14(s,3H)
MS(EI) m/z; 426(M+)
【0077】
【化17】

【0078】
合成例3
硫化ナトリウム・9水和物6.98gをN−メチルピロリドン85mlに添加した溶液に、化合物(2002)1.5gを加え、185〜195℃で36時間攪拌した。反応終了後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液300mlに注加し、トルエン(200ml×3)で抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(300ml×3)で洗浄し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸マグネシウムを除去し、次いで溶媒を留去した。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、化合物(2005)593mgを白色固体として得た。
得られた化合物(2005)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(270MHz,CDCl3,TMS) : δ7.64(d, J=5.4Hz, 3H), 7.54(d, J=5.4Hz, 3H)
MS(EI) m/z; 246(M+)
【0079】
【化18】

【0080】
合成例4
窒素雰囲気下、化合物(2005)1.0gを1,2−ジクロロエタン20mlに溶解させた溶液に、N,N−ジエチルホルムアミド(DMF)1.03mlを添加した。氷冷下、オキシ塩化リン1.24mlをゆっくりと添加した。反応液を攪拌しながら24時間加熱還流、さらに1N塩化ナトリウム水溶液30mlを添加し、室温で30分間攪拌し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸マグネシウムを除去し、次いでクロロホルムを留去した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム、Rf=0.5)で精製し、化合物(2006)525mgをペール黄色粉末として得た。
得られた化合物(2006)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(270MHz,CDCl3,TMS) : δ7.51-7,56(m, 4H), 8.12(s,1H),10.07(s, 1H)
MS(EI) m/z; 274(M+)
【0081】
【化19】

【0082】
合成例5
化合物(2006)424mgをジクロロメタン20mlに溶解し、N−ブロモスクシンイミド(NBS)550mgを加えた酢酸5ml溶液を0℃以上を保ちながら滴下した。反応液を室温で24時間攪拌した。析出物をろ取し、水とエタノールで洗浄した。得られた結晶をクロロベンゼンで再結晶し、化合物(2007)340mgを白色粉末として得た。
得られた化合物(2007)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(270MHz,CDCl3,TMS) : δ7.94(s, 2H), 8.15(s,1H),10.03(s, 1H)
MS(EI) m/z; 430(M+)
【0083】
【化20】

【0084】
合成例6
氷冷下、NBS(12.5g)のDMF溶液40mlを3−ヘキシルチオフェン11.8gのDMF溶液20mlに1時間かけて滴下した。室温で12時間攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、スクシンイミドを析出させた。この析出物をセライト濾過で除去し、ヘキサンで洗浄した。濾液をヘキサン(30ml×3)で抽出し、この有機相を水(30ml×3)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ溶媒を除去した。得られた生成物を減圧蒸留で精製し目的物である、2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン 13.0gを無色オイルとして得た。
得られた2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェンのH−NMRは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS) : δ0.88(t,J=6.8Hz,3H),1.26-1.36(m,6H),1.56(quint, J=6.4Hz,2H),2.56(t, J=8.0Hz,2H),6.79(d,J=5.6Hz,1H),7.18(d,J=5.6Hz,1H)
【0085】
合成例7
NBS(8.0g)のDMF溶液25mlを2,2’−ビチオフェン(3.7g)に氷冷下で30分間かけて滴下した。室温で12時間攪拌後、析出してきた黄色固体を水100ml、エタノール300mlを加え濾過した。得られた生成物をヘキサンで再結晶し、目的である、4,4’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン 5.2gを淡黄色板状結晶として得た。
得られた4,4’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェンのH−NMRは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS) : δ6.85(dd,J=4.0Hz,2H),6.96(dd,J=4.0Hz,2H)
【0086】
合成例8
窒素置換した100ml三口フラスコ中に、マグネシウム(1.25g)とジエチルエーテル1mlを入れ、これに2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン11.9gを20分間かけて滴下し、反応が開始したら還流が持続するようにジエチルエーテル10mlを追加した。2時間還流させ、生成したグリニャール試薬300mlを三口フラスコ中の4,4’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン(5.6g)、Ni(dppp)Clのジエチルエーテル40ml/ベンゼン30mlの混合溶液に30分間かけて滴下した。12時間還流後、氷冷下で飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加えて反応を停止した。析出した塩はセライト濾過で除去し、クロロホルムで洗浄した。濾液をクロロホルム50mlで2回抽出し、有機相を水100mlで2回、飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで2回洗浄した。クロロホルム相を硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを除去後、溶媒を留去した。得られた混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン、Rf=0.3成分)で分離生成することで、化合物(2008)6.8gを黄色オイルとして得た。
得られた化合物(2008)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS) : δ0.89(t, J=7.2Hz,6H), 1.26-1.40(m, 12H), 1.65(quint, J=8.0Hz,4H),2.78(t, J=8.0Hz, 4H), 6.94(d, J=5.2Hz, 2H),7.02(d,J=4.0Hz,2H), 7.13(d,J=3.6Hz, 2H),7.18(d, J=5.2Hz, 2H)
MS(GC)m/z;498
【0087】
【化21】

【0088】
合成例9
窒素雰囲気下、化合物(2008)2.1gをTHF45mlに溶解し、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム2.7mlを滴下した。反応液を30分間かけ−30℃まで温め、塩化トリブチルスズ1.4mlを添加した。反応液を室温で4時間攪拌した後、水に注加しクロロホルムで抽出した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸マグネシウムを除去し、溶媒を留去した。得られた生成物をHPLC(JAIGEL−1H,2H,CHCl3,Rv=240ml)で精製し、化合物(2009)1.7gを黄色オイルとして得た。
得られた化合物(2009)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS):δ0.89-0.93(m,15H),1.09-1.13(m,6H),1.31-1.38(m,18H),1.54-1.66(m,10H),2.78(t,J=8.3Hz,2H),2.80(t,J=8.3Hz,2H),6.94(d,J=5.4Hz,1H),6.96(s,1H),7.01(d,J=3.9Hz,1H),7.02(d,J=4.0Hz,1H),7.12(d,J=3.9Hz,1H),7.18(d,J=5.4Hz,1H)
MS(MALDI-TOF)calcd for 787.88(M+); found 788.11
【0089】
【化22】

【0090】
合成例10
窒素雰囲気下、化合物(2007)132mgと化合物(2009)504mgをトルエン10mlに加え、更にPd(PPhを110mg加え、18時間加熱還流した。冷却後、反応液をセライトでろ過及びトルエンで洗浄し、ろ液をエバポレーターで減圧乾燥した。得られた生成物を中圧シリカゲルカラム(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製し、化合物(2010)194mgを橙色個体として得た。
得られた化合物(2010)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(270MHz,CDCl3,TMS) : δ0.89-0.94(m, 12H), 1.32-1.45(m, 24H), 1.61-1.66(m, 8H),2.62(t, J=8.1Hz, 4H), 2.77(t, J=8.1Hz, 4H), 6.93-7.05(m, 16H), 7.11(s, 2H), 7.18(d, J=3.8Hz, 2H), 7.19(d, J=3.8Hz, 2H), 7.80(s, 1H), 9.92(s, 1H)
MS(MALDI-TOF)calcd for 1266.24(M+); found 1266.89
【0091】
【化23】

【0092】
合成例11
窒素雰囲気下、50ml三口フラスコに化合物(2008)1.0g、1,2−ジクロロエタン25mlを入れ、氷冷下でオキシ塩化リン0.56ml、DMF0.16mlを加えて、17時間還流した。室温に戻した後、1N水酸化ナトリウム水溶液100ml、水(100ml×3)、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウム除去後、溶媒を留去した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン:ヘキサン=1:1、Rf=0.36成分)で分離精製することにより、化合物(2011)840mgを赤色固体として得た。
得られた化合物(2011)のH−NMRは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS):δ0.89(m,6H),1.29-1.41(m,12H),1.61(quint, J=6.8Hz,2H),1.70(quint,J=6.8Hz,2H),2.78(t,J=7.6Hz,2H),2.83(t,J=8.0Hz,2H),6.95(d,J=5.2Hz,1H),7.04(d,J=3.2Hz,1H),7.17(d,J=4.0Hz,1H),7.18(d,J=3.2Hz,1H),7.20(d,J=5.6Hz,1H),7.22(d,J=4.0Hz,1H),7.60(s,1H),9.83(s,1H)
【0093】
【化24】

【0094】
合成例12
氷冷下、NBS460mgをDMF15mlに溶解させた溶液を、化合物(2011)1.38gのDMF−CS(1:1/v:v)混合溶液50mlに20分間かけて滴下した。室温で12時間攪拌した後、溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、スクシンイミドを析出させた。析出物をセライト濾過で除去し、クロロホルムで洗浄した。濾液をクロロホルム(100ml×3)で抽出し、この有機相を水(100ml×3)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、硫酸マグネシウムを除去後、溶媒を留去し、化合物(2012)1.47gを赤橙色固体として得た。
得られた化合物(2012)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS):δ0.89(m,6H),1.29-1.41(m,12H),1.61-1.70(m, 4H),2.70(t,J=7.6Hz,2H),2.81(t,J=8.0Hz,2H),6.91(s,1H),6.99(d,J=3.2Hz,1H),7.17(d,J=4.0Hz,1H),7.18(d,J=3.2Hz,1H),7.22(d,J=4.0Hz,1H),7.60(s,1H),9.83(s,1H)
MS(GC) m/z;606
【0095】
【化25】

【0096】
合成例13
化合物(2008)の代わりに化合物(2005)を用いた以外は、合成例9と同様の処理を行い、化合物(2005)300mgから化合物(2013)471mgを収率72%で得た。
得られた化合物(2013)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS):δ0.92(t,J=7.3Hz,9H),1.21(t,J=8.6Hz,6H),1.30-1.42(m,6H),1.61(quint,J=4.6Hz,6H),7.48(d,J=5.1Hz,2H),7.59(d,J=4.9Hz,1H),7.64(d,J=5.1Hz,2H)
MS(EI) m/z;533(M+)
【0097】
【化26】

【0098】
合成例14
化合物(2012)511mgと化合物(2013)452mgをトルエン20ml中、Pd(PPH48mg存在下、16時間還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、セライト濾過し、トルエンで洗浄した。濾液を留去及び乾燥し、生成物を得た。この生成物を中圧シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン)で精製し、ヘキサン−クロロホルム混合溶媒で再結晶し、化合物(2014)560mgを赤色粉末として得た。
得られた化合物(2014)のMSスペクトル及び元素分析結果は、以下の通りであった。
MS(DI) m/z;770(M+)
Anal.Calcd(%)for C41H38OS7: C63.85,H4.97; Found C63.61,H4.94
【0099】
【化27】

【0100】
合成例15
窒素雰囲気下、化合物(2012)700mgと化合物(2009)960mgを無水トルエン55mlに溶解し、15分間アルゴンガスを吹き込み脱気した。Pd(PPhを50mg加え、20時間還流した。反応終了後、反応液をセライト濾過し、溶媒を留去した。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:ヘキサン=1:1/v:v、Rf=0.44成分)で精製し、化合物(2015)1.1gを赤色固体として得た。
得られた化合物(2015)のH−NMRは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS):δ0.87-0.92(m,12H),1.31-1.41(m,24H),1.66-1.70(m,8H),2.75-2.78(m,8H),6.95(d,J=5.3Hz,2H),7.01(s,2H),7.03(d,J=3.8Hz,2H),7.04(d,J=3.6Hz,2H),7.06(d,J=3.6Hz,2H),7.14(d,J=3.9Hz,2H),7.17-7.22(m,6H),7.60(s,1H),9.83(s,1H)
【0101】
【化28】

【0102】
合成例16
化合物(2015)332mgをDMF30mlとCS10mlの混合溶液に添加し、0℃に冷却し、NBS67mgを徐々に添加し、室温で15時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、スクシンイミドを析出させた。固体をセライト濾過により除去し、濾液をジクロロメタンで抽出して得られた有機相を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウム除去した後、溶媒を留去した。得られた生成物をジクロロメタン−ヘキサン混合溶媒で再結晶し、化合物(2016)322mgを赤色固体として得た。
得られた化合物(2016)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,TMS):δ0.87-0.92(m,12H),1.29-1.41(m,24H),1.60-1.70(m,8H),2.75-2.78(m,8H),6.91(s,1H),6.97(s,1H),7.01(s,2H),7.03(d,J=3.8Hz,1H),7.06(d,J=3.6Hz,1H),7.08(d,J=3.6Hz,1H),7.14(d,J=3.9Hz,2H),7.17-7.22(m,2H),7.60(s,1H),9.86(s,1H)
MS(MALDI-TOF)calcd for 1102.56(M+) ; found 1103.00
【0103】
【化29】

【0104】
合成例17
化合物(2012)の代わりに化合物(2016)を用いた以外は、合成例14と同様の処理を行い、化合物(2016)146mgから化合物(2017)160mgを収率96%で得た。
得られた化合物(2017)のMSスペクトルは、以下の通りであった。
MS(MALDI-TOF)calcd foe 1268.02(M+) ; found 1267.87
【0105】
【化30】

【0106】
合成例18
化合物(2005)500mgをジクロロメタン40mlに溶解し、NBS1.08gを加えた酢酸10ml溶液を0℃条件下添加し、その後、室温で24時間攪拌した。析出した結晶をろ取し、水及びエタノールで洗浄して得られた固体をクロロベンゼンで再結晶し、化合物(2018)1.27gを白色粉末として得た。
得られた化合物(2018)のH−NMR及びマススペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(270MHz,CDCl3,TMS) : δ7.61(s, 3H)
MS(EI) m/z; 426(M+)
【0107】
【化31】

【0108】
合成例19
窒素雰囲気下、トルエン40mlに化合物(2018)2.12gと化合物(2009)412mgを加え、更にPd(PPhを147mg加え16時間加熱還流した。反応後冷却し、反応液をセライト上でろ過し、トルエンで洗浄した後、溶媒を留去した。生成物を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製し、化合物(2019)545mgを橙色固体として得た。
得られた化合物(2019)のH−NMR及びマススペクトル及び元素分析は、以下の通りであった。
1H-NMR(270MHz,CDCl3,TMS):δ0.88-0.96(m,18H),1.25-1.55(m,36H),1.61-1.72(m,12H),2.67(t,J=8.1Hz,6H),2.78(t,J=8.1Hz,6H),6.94(d,J=5.4Hz,3H),6.97(s,3H),6.98(d,J=3.8Hz,3H),7.02(s,3H),7.06(d,J=3.8Hz,3H),7.07(d,J=3.8Hz,3H),7.17(d,J=5.4Hz,3H)
MS(MALDI-TOF)calcd for 1734.38(M+) ; found 1734.68
Anal.calcd(%) C=66.39,H=5.92, Found C=65.77, H=5.81
【0109】
【化32】

【0110】
合成例20
前述の化合物(2011)合成時のホルミル化手法を用い、化合物(2019)688mgのホルミル化を実施し、化合物(2020)465mg(収率66%)を赤色固体として得た。
得られた化合物(2020)のマススペクトルは、以下の通りであった。
MS(MALDI-TOF)calcd for 1762.37(M+) ; found 1762.17
【0111】
【化33】

【0112】
実施例1
窒素雰囲気下、0.78mlのピペリジンと化合物(2010)262mgとシアノ酢酸35mgを乾燥クロロホルム4.7mlとアセトニトリル4.7mlの混合溶液中15時間攪拌反応させた。反応終了後、10%酢酸水溶液47mlを添加し、この液をクロロホルム−水で抽出して得られた有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸マグネシウムを除去し、溶媒を留去した。得られた固形物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、化合物(9)113mgを暗赤色固体として得た。
得られた化合物(9)のマススペクトルは、以下の通りであった。
MS(MALDI-TOF)calcd for 1335.07(M+); found 1335.24
【0113】
実施例2
化合物(2010)の代わりに化合物(2014)を使用した以外は、実施例1と同様の処理を行い、化合物(2014)300mgから化合物(7)280mgを暗赤色固体として得た。
得られた化合物(7)のMSスペクトル及び元素分析結果は、以下の通りであった。
MS(MALDI-TOF)calcd for 838.25(M+) ; Found 838.07
Anal.Calcd(%) for C44H38NO2S7 : C63.04, H4.69, N1.67 ; found C63.04, H4.69, N1.67
【0114】
実施例3
化合物(2010)の代わりに化合物(2017)を使用した以外は、実施例1と同様の処理を行い、化合物(2017)167mgから化合物(8)150mgを暗赤色固体として得た。
得られた化合物(8)のMSスペクトル及び元素分析結果は、以下の通りであった。
MS(MALDI-TOF)calcd for 1335.07(M+) ; Found 1335.06
Anal.Calcd(%) for C44H38NO2S7 : C63.04, H4.69, N1.67 ; found C63.04, H4.69, N1.67
【0115】
実施例4
化合物(2010)の代わりに化合物(2020)を使用した以外は、実施例1と同様の処理を行い、化合物(2020)330mgから化合物(10)120mgを暗赤色固体として得た。
得られた化合物(10)のマススペクトルは、以下の通りであった。
MS(MALDI-TOF)calcd for 1829.38(M+) ; found 1830.10
【0116】
色素(7)乃至(10)の諸物性データを表2に示した。酸化電位(E1/2ox/V)は、Hokuto Denko HA−301 potentiostat及びHokuto Denko HB−104 function generatorを用いて測定した。
【0117】
【表2】

【0118】
実施例5〜10
実施例1乃至4で得られた色素(7)乃至(10)を用いて、下記の作成方法により色素増感太陽電池素子を作製した。
FTOガラス(1.5cm×2.5cm)を蒸留水、アセトン、2−プロパノールでそれぞれ10分間超音波洗浄した。その後、20分間UV−O照射した。導電面に、二酸化チタンペースト(触媒化成工業社製PST−18NR:平均粒子径20nm)をドクターブレード(高さ50μm)で塗布し、500℃で50分間焼結させ、酸化チタン薄膜電極を得た。この酸化チタン薄膜電極を濃度0.3mMの色素化合物のクロロホルム溶液中に12時間浸すことで色素を吸着させ、色素吸着酸化チタン薄膜電極を得た。この色素吸着酸化チタン薄膜電極と、FTOにPtを蒸着させたPt対極とを、図1に示すように、レドックス電解質溶液(0.05M LiI,0.05M I,0.6M 1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド,0.5M t−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液)を挟むように配置し、レドックス電解質溶液の周囲をパラフィルムを用いてパッキングすることで、素子を得た。
【0119】
測定する電池の発電面積は0.25cmとして、光源はNewport Model 67005 50−500Wを用い、AM(大気圏通過空気量)1.5フィルターを通して100mW/cmとし、KEITHKEY 2400 Source Meterを用いて測定を行った。
【0120】
化合物(7)乃至(10)を用いた色素増感太陽電池の電池性能評価結果を表3に示す。
【0121】
【表3】

【0122】
表3の結果より、本願化合物(7)乃至(10)の化合物において、いずれも優れた光電変換効率が得られた。特に化合物(9)を用いた場合、Voc(開放電圧)が0.835Vと極めて高く高電圧用途に適した素子であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
特定の構造を有する本発明の色素又はその塩を増感色素に用いることにより、変換効率が高く安定性の高い光電変換素子及び太陽電池が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた酸化物半導体微粒子の薄膜に、下記式(1)で表される色素又はその塩を担持させてなる光電変換素子。
【化1】


(式(1)中、X乃至Xはそれぞれ酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシル基又は下記式(2)を表し、R乃至Rの少なくとも1つ以上は下記式(2)である。)
【化2】


(式(2)中、Y及びZはそれぞれ独立に水素原子、カルボキシル基、シアノ基又はリン酸基を表す。Qは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。A乃至Aはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。m1は0乃至16のいずれかの整数を表す。式(2)中、*は式(1)のR乃至Rの結合位置を表す。)
【請求項2】
が式(2)で表され、R乃至Rがそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、アミノ基又はアルコキシル基である請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
が硫黄原子である請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
が下記式(3)で表される請求項3に記載の光電変換素子。
【化3】


(式(3)中、A、Y及びZは請求項1に記載の式(2)におけるのと同じ意味を表す。A乃至A11はそれぞれ水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシル基を表す。n1は0乃至4のいずれかの整数を表す。*は式(1)のRの結合位置を表す。)
【請求項5】
及びA10が脂肪族炭化水素基である請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
及びA10がn−ヘキシル基である請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
、A乃至A及びA11がいずれも水素原子である請求項4乃至6のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
n1が0乃至2のいずれかの整数である請求項4乃至7のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
、R及びRがいずれも水素原子であり、R及びRがそれぞれ独立に水素原子又は芳香族炭化水素基である請求項2乃至8のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
及びRがいずれも下記式(4)で表される請求項9に記載の光電変換素子。
【化4】

【請求項11】
乃至Xがいずれも硫黄原子である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項12】
及びZの少なくとも1つがカルボキシル基である請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項13】
及びZのいずれか1つがカルボキシル基であり、他方がシアノ基である請求項12に記載の光電変換素子。
【請求項14】
がカルボキシル基でありZがシアノ基である請求項13に記載の光電変換素子。
【請求項15】
が水素原子である請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項16】
式(1)で表される色素またはその塩が、下記式(7)乃至(10)のいずれかである請求項1に記載の光電変換素子。
【化5】

【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の光電変換素子を用いてなる太陽電池。
【請求項18】
請求項1に記載の式(1)で表される色素又はその塩。
【請求項19】
請求項16に記載の式(7)乃至(10)で表される色素又はその塩。

【図1】
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【公開番号】特開2011−222373(P2011−222373A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91865(P2010−91865)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】