説明

色素増感型太陽電池素子モジュール

【課題】接続不良を生じにくい色素増感型太陽電池素子モジュール、および色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造する製造方法を提供する。
【解決手段】色素増感型太陽電池素子10は、樹脂製基板1a、1bの一方の表面に形成された第1電極層11、および第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板の他方の表面に形成された第2電極層21、および第2電極層上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層および触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3とを有し、隣り合う色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間には、電極層間を接続するための導電性接続部4が形成されており、導電性接続部は、一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続不良を生じにくい色素増感型太陽電池素子モジュール、および上記色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能な色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の増加が原因とされる地球温暖化等の環境問題が深刻となり、世界的にその対策が進められている。中でも環境に対する負荷が小さく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池に関する積極的な研究開発が進められている。このような太陽電池としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、および化合物半導体太陽電池などが既に実用化されているが、これらの太陽電池は製造コストが高い等の問題がある。そこで、環境負荷が小さく、かつ製造コストを削減できる太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目され研究開発が進められている。
【0003】
また、上記色素増感型太陽電池においては、実用化するためにはより大きな出力電圧が必要であることから、複数の色素増感型太陽電池素子を接続して色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが試みられている(例えば特許文献1)。
【0004】
このような色素増感型太陽電池素子モジュールの形成方法としては、例えば個々の色素増感型太陽電池素子を作製した後、それぞれを配線を用いて接続させることにより色素増感型太陽電池素子モジュールとする方法を挙げることができる。しかしながら、上記の方法では、個々の色素増感型太陽電池素子をそれぞれ配線させる必要があることから、形成工程が煩雑であるといった問題があった。
【0005】
そこで、2枚の基材の間に複数個の色素増感型太陽電池素子を形成し、上記2枚の基材の内部でそれぞれの色素増感型太陽電池素子を接続する方法が試みられている。このような方法としては、例えば、各々の色素増感型太陽電池素子に用いられる酸化物半導体電極層、電解質層、および対極電極層の形成位置を少しずつずらして形成することにより、隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの電極層を対向させ、対向する電極層の間に金属ペーストを配置して、色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させる方法を挙げることができる。
【0006】
しかしながら、上記の方法では、上記色素増感型太陽電池素子に用いられる各構成の形成位置を調整する工程において、それぞれの構成を積層させる際の位置合わせが困難であることから、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の接続不良の原因となる場合があるといった問題があった。
【0007】
ここで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、従来、上記基材としてガラス基板が用いられているが、近年、色素増感型太陽電池モジュールについてはフレキシブル化が望まれているところ、基材としてフレキシブルな基板を用いることが検討されている。しかしながら、上記色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる一対の基材として、上記フレキシブル性を有する基板を用い、上述した金属ペーストを配置する方法により各々の色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させた場合は、上記基板が湾曲することから、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の距離が変化する場合があるため、電極層同士が離れて接続不良を起こす可能性があるといった問題があった。
【0008】
よって、上述した2枚の基材の内部でそれぞれの色素増感型太陽電池素子を接続する方法においては、隣り合う色素増感型太陽電池素子間を十分に接続させることが困難であるといった問題があった。
【0009】
そこで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、各々の色素増感型太陽電池素子を、接続不良を発生させずに容易に接続させる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−299545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、製造が容易であり、接続不良を生じにくい高品質な色素増感型太陽電池素子モジュール、および上記色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能な色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、上記色素増感型太陽電池素子は、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有し、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間には、これらの電極層間を接続するための導電性接続部が形成されており、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールを提供する。
【0013】
本発明によれば、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の上記樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されていることから、一対の上記樹脂製基板の間に色素増感型太陽電池素子を形成した後に、上記樹脂製基板の外側から上記導電性接続部を貫通させて形成することができるので、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。また、本発明によれば、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の電極層間には上記導電性接続部が形成されていることから、接続不良の少ない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。また、上記導電性接続部を外側から貫通させて形成することができることから、上記一対の樹脂製基板の間に色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記導電性接続部の形成位置、個数、および形状等を適宜選択して上記導電性接続部を形成することにより、多様な形態の色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。
【0014】
本発明においては、上記一方の樹脂製基板の表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層が形成され、かつ、上記他方の樹脂製基板の表面には、他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層が形成されており、上記導電性接続部は、上記一方の樹脂製基板に形成された上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層と、上記他方の樹脂製基板に形成された上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層とを接続するために、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されていることが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを上記の構成とすることにより、対向する上記樹脂製基板上にそれぞれ形成されている電極層間を容易に接続させることが可能となる。
【0015】
本発明においては、上記構成において、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通するように形成されていることが好ましい。上記導電性接続部を複数か所に設けることにより、上記電極層間をより確実に接続させることができることから、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを高品質なものとすることが可能となる。
また、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間の距離が離れて形成されている場合であっても、上記導電性接続部を形成することにより、上記電極層間を容易に接続させることが可能となる。
【0016】
本発明においては、上記一方の樹脂製基板の表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの上記第1電極層もしくはそれぞれの上記第2電極層が形成されており、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通する2以上の貫通部と、上記2以上の貫通部間を上記樹脂製基板の外側で導通させるための外側導電部とを有することにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層間もしくは上記第2電極層間を接続するものであることが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを上記の構成とすることにより、同一の樹脂製基板上に形成されている電極層間を容易に接続させることが可能となる。
【0017】
本発明においては、上記導電性接続部が上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されていることが好ましい。これにより、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールにおける上記導電性接続部の形成位置を固定することが可能となることから、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の電極層間をより好適に接続することができる。
【0018】
本発明においては、上記導電性接続部が金属部材からなることが好ましい。上記導電性接続部が金属部材からなることにより、上記色素増感型太陽電池素子の電極層間に上記導電性接続部を容易に形成することができる。
【0019】
本発明は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に、上記一対の樹脂製基板の一方の外側から内部に上記樹脂製基板を貫通するように設けられた導電性接続部を形成する導電性接続部形成工程と、を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、上記導電性接続部形成工程を有することにより、上記一対の樹脂製基板の間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記導電性接続部を設けて隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることが可能であることから、色素増感型太陽電池用モジュールを容易に製造することができる。また、上記導電性接続部形成工程においては、上記導電性接続部の形成位置、個数、形状等を選択することにより、多様な形態の色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上記導電性接続部が上記樹脂製基板を外側から貫通するように形成されているものであることから、上記一対の樹脂製基板の間に複数の色素増感型太陽電池素子を形成した後に、上記導電性接続部を形成することにより、容易に色素増感型太陽電池素子モジュールを製造することができる。また、上記導電性接続部を有することから、各々の色素増感型太陽電池素子の電極層間での接続不良を少ないものとすることができる。さらに色素増感型太陽電池素子モジュールにおける上記導電性接続部の形成位置、数、形状等を適宜選択することにより、多様な形態の色素増感型太陽電池素子モジュールを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略図である。
【図9】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図13】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図14】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図15】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュール、および本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを製造する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について詳細に説明する。
【0024】
A.色素増感型太陽電池素子モジュール
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、上記色素増感型太陽電池素子は、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有し、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間には、これらの電極層間を接続するための導電性接続部が形成されており、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
ここで、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層側または対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要があることから、本発明においては、一対の上記樹脂製基板のうち少なくとも一方は透明樹脂製基板であり、かつ、上記透明樹脂製基板上に形成される電極層は透明性を有する電極層であるものとする。
【0026】
本発明によれば、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の上記樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されていることから、上記一対の樹脂製基板の間に上記色素増感型太陽電池素子を形成した後に、上記樹脂製基板の外側から上記導電性接続部を貫通させて形成することができるので、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に得ることが可能となる。また、本発明によれば、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間には上記導電性接続部が形成されていることから、接続不良の少ない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。また、上記導電性接続部を外側から貫通させて形成することができることから、上記一対の樹脂製基板の間に色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記導電性接続部の形成位置、個数、および形状等を適宜選択して上記導電性接続部を形成することにより、多様な形態の色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。
【0027】
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上記導電性接続部により接続される、隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの電極層の位置関係により2つの態様に分けて考えることができる。上記2つの態様としては、具体的には、隣り合う色素増感型太陽電池素子において上記導電性接続部によって接続される電極層がそれぞれ異なる上記樹脂製基板の表面に形成されている態様(以下、第1態様とする。)と、隣り合う色素増感型太陽電池素子において上記導電性接続部によって接続される電極層がそれぞれ同一の上記樹脂製基板の表面に形成されている態様(以下、第2の態様とする。)とを挙げることができる。以下、それぞれの態様について説明する。
【0028】
I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
まず、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの第1態様について説明する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、隣り合う色素増感型太陽電池素子において、上記導電性接続部によって接続される電極層がそれぞれ異なる上記樹脂製基板の表面に形成されているもの、すなわち、一方の上記樹脂製基板の表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層もしくは上記第2電極層のいずれかの電極層が形成され、かつ、他方の上記樹脂製基板の表面には、他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層もしくは上記第2電極層のいずれかの電極層が形成されており、上記導電性接続部は、上記一方の樹脂製基板に形成された上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と、上記他方の樹脂製基板に形成された上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続するために、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されているものである。
【0029】
以下、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる各構成について説明する。
【0030】
1.導電性接続部
本態様に用いられる導電性接続部は、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続するために、少なくとも上記一方の上記樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されているものである。
【0031】
上記導電性接続部は、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層との位置関係によって、2つの態様に分けて考えることができる。より具体的には、上記導電性接続部が、少なくとも一部が対向するように形成された、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続するものである態様(以下、第1の態様とする。)と、上記導電性接続部が、対向することなく離れて形成された、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続するものである態様(以下、第2の態様とする。)とを挙げることができる。以下、本態様に用いられる導電性接続部のそれぞれの態様について説明する。
【0032】
(1)第1の態様
本態様の導電性接続部は、少なくとも一部が対向するように形成された、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続するものである。
【0033】
本態様の導電性接続部、およびこれを用いた本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールについて図を用いて説明する。図1は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bと、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1b間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10(図1においては3個の色素増感型太陽電池素子)と、を有するものである。また、色素増感型太陽電池素子10は、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11、および第1電極層11上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21、および第2電極層21上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有するものである。なお、図1においては、電解質層3が固体電解質層である例について示している。
【0034】
また、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、隣り合う色素増感型太陽電池素子10において、樹脂製基板1a上に形成された一方の色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11と、樹脂製基板1b上に形成された他方の色素増感型太陽電池素子10の第2電極層21とが対向するように形成されているものであり、対向する第1電極層11および第2電極層21を接続するため、樹脂製基板1aの外側から樹脂製基板1bの外側まで貫通するように形成された導電性接続部4を有するものである。
【0035】
このような導電性接続部としては、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すように、樹脂製基板1a上に形成された第1電極層11および樹脂製基板1b上に形成された第2電極層21間を接続するものであってもよいし、図2(a)に示すように、樹脂製基板1a上に形成された第1電極層11および樹脂製基板1b上に形成された第1電極層11間を接続するものであってもよいし、図2(b)に示すように、樹脂製基板1a上に形成された第2電極層21および樹脂製基板1b上に形成された第2電極層21間を接続するものであってもよい。
ここで、通常、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの製造時に、上記色素増感型太陽電池素子を形成する際には、形成工程を容易な工程とすることが可能であることから、同一の上記樹脂製基板上には、上記第1電極層のみ、もしくは上記第2電極層のみが形成されることが好ましい。したがって、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいても、一方の上記樹脂製基板上には上記第1電極層のみ、もしくは上記第2電極層のみを有することが好ましい。したがって、本態様においては、上記色素増感型太陽電池素子の製造が容易であることから、図1に示すように、樹脂製基板1a上に形成された第1電極層11および樹脂製基板1b上に形成された第2電極層21間を接続するものであることが好ましい。なお、図2は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0036】
また、上記導電性接続部としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば図1に示すように、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されているものであってもよいし、図3に示すように、上記一方の樹脂製基板のみを外側から貫通し、上記他方の樹脂製基板上に形成された上記電極層と接触するように形成されているものであってもよい。なお、図3においては、樹脂製基板1aを外側から貫通して樹脂製基板1b上に形成された第2電極層21と接触するように、導電性接続部4が形成されている例について示している。また、図3において説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、図示はしないが、上記一方の樹脂製基板を外側から貫通し、上記他方の樹脂製基板上に形成された上記電極層を貫通し、上記他方の樹脂製基板を貫通しないように形成されているものであってもよい。
【0037】
本態様においては、なかでも、上記導電性接続部が、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されているものであることが好ましい。これにより、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおける上記導電性接続部の形成位置を固定することが可能となることから、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の電極層間をより好適に接続することができる。
【0038】
また、上記導電性接続部としては、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば図1に示すように、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から1か所貫通するように形成されているものであってもよいし、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通するように形成されているものであってもよい(例えば、図6(b)参照)。本態様においては、なかでも少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通するように形成されているものであることが好ましい。上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を複数か所に形成された上記導電性接続部によって確実に接続することができることから、接続欠陥のない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができるからである。
【0039】
また本態様においては、上記導電性接続部は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、導電性接続部4が色素増感型太陽電池素子10の多孔質層12や、固体電解質層3等に接触するような構成であってもよい。
一般に、色素増感型太陽電池素子においては、同一の色素増感型太陽電池素子における第1電極層および第2電極層が接触した場合に短絡が発生するものであるが、本態様に用いられる導電性接続部は、別個の色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させるものであることから、上記導電性接続部に一方の色素増感型太陽電池素子の多孔質層、固体電解質層等が接触している場合であっても、同一の色素増感型太陽電池素子内の第1電極層および第2電極層が接触しない場合には内部短絡は起こらないからである。
なお、図4は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。また、図4において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0040】
本態様においては、上記導電性接続部が形成される領域には、電極層のみが形成されていることがより好ましい。これにより、上記導電性接続部を用いて電極層間をより好適に接続することができるからである。また、上記色素増感型太陽電池素子の固体電解質層にはヨウ化物イオンが含まれている電解質が用いられる場合があることから、上記導電性接続部および固体電解質層が接触する場合は、ヨウ化物イオンによって、上記導電性接続部が腐食されてしまうおそれがあるからである。
【0041】
さらに、上記導電性接続部は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができるように形成されているものであれば、特に限定されず、例えば図1に示すように、色素増感型太陽電池素子モジュール100において、導電性接続部4が形成されている部分の厚みが、色素増感型太陽電池素子10が形成されている部分の厚みと同等となるように形成されていてもよいし、図5(a)に示すように、導電性接続部4が形成されている部分の厚みが、色素増感型太陽電池素子10が形成されている部分の厚みよりも薄くなるように形成されていてもよいし、図5(b)に示すように、導電性接続部4が、一方の色素増感型太陽電池素子10の電極層と他方の色素増感型太陽電池素子10の電極層(図5(b)では、第1電極層11および第2電極層21)とを接触させるように形成されているものであってもよい。なかでも、上記導電性接続部が、一方の色素増感型太陽電池素子の電極層と他方の色素増感型太陽電池素子の電極層とを接触させるように形成されているものであることが好ましい。上記隣り合う色素増感型太陽電池素子モジュールの電極層間をより好適に接続させることが可能となるからである。
【0042】
ここで、本態様における「上記導電性接続部が形成されている部分の厚み」とは、図5(a)に示すように、導電性接続部4が形成されている部分の樹脂製基板1aの外側表面から樹脂製基板1bの外側表面までの距離tを指し、「上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分」とは、図5(a)に示すように、色素増感型太陽電池素子10が形成されている部分の樹脂製基板1aの外側表面から樹脂製基板1bの外側表面までの距離uを指すものである。なお、図5は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0043】
本態様に用いられる導電性接続部の形状としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば図6(a)に示すように、平面状の導電性接続部4であってもよいし、図6(b)に示すように柱状の導電性接続部4であってもよいが、平面状の導電性接続部4であることがより好ましい。上記導電性接続部が平面状であることにより、電極層間の導通に寄与する導電性接続部の面積を大きくすることができることから、より高品質な色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となる。ここで、図6は、図1に示される色素増感型太陽電池素子モジュールのA−A断面を斜め方向から観察した模式図である。なお、図6において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
上記導電性接続部は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて少なくとも1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に設けられるものであれば特に限定されず、任意の隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に設けることができる。本態様においては、なかでも本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいてすべての隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に上記導電性接続部が設けられていることが好ましい。これにより、それぞれの電極層間の接続不良を抑制することができるため出力電圧の大きな色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となるからである。
【0045】
上記導電性接続部としては、上述した構成を有し、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができるものであれば特に限定されるものではないが、上記導電性接続部が金属部材からなることが好ましい。上記導電性接続部として金属部材を用いた場合は、上記金属部材を一方の上記樹脂製基板の外側から貫通させることが容易であることから、上記導電性接続部を容易に形成することが可能となるからである。
【0046】
このような金属部材に用いられる金属としては、剛性を有するものであれば特に限定されるものではなく具体的には、ステンレスや、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、銀、鉛、亜鉛、チタン、クロム、タングステン、金、白金およびこれらの合金等を挙げることができる。本態様においては上述した金属のなかでもヨウ化物イオンに対する耐腐食性の高い金属を用いることが好ましい。上記色素増感型太陽電池素子が有する電解質層にはヨウ化物イオンが含有されている場合があるため、上記金属部材をヨウ化物イオンに対する耐腐食性の高いものとすることにより、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの経時的な劣化を防止することが可能となるからである。
【0047】
上記金属部材の形状としては、隣り合う色素増感型太陽電池素子の一方の電極層を接続させることができる形状であれば特に限定されるものではなく、平面状の構成を有するものであってもよいし、柱状の構成を有するものであってもよい。具体的には、上記金属部材の断面形状が矩形であるもの、また上記金属部材の形状が楔型であるもの、針状であるもの等の形状を挙げることができる。
【0048】
上記金属部材としては、具体的には、金属線材、金属板等を挙げることができる。
【0049】
上記金属部材としては、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通させることができるものであれば特に限定されるものではないが、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側まで貫通させることができるものであることが好ましい。また、この場合には、図7に示すように、金属部材(導電性接続部4)の先端に、上記金属部材が上記色素増感型太陽電池素子モジュール100から外れてしまうことを防止する固定部nを有することが好ましい。なお、図7は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例について示すものであり、説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0050】
このような固定部としては、上記金属部材が上記色素増感型太陽電池素子モジュールから外れてしまうことを防止することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば上記金属部材の先端を折り曲げることによって形成することができる。また、樹脂材料を用いて、上記金属部材の先端を樹脂製基板に固定することによって形成することが可能である。
【0051】
また、本態様の導電性接続部としては、少なくとも上記一方の上記樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通する2以上の貫通部と、上記2以上の貫通部間を上記樹脂製基板の外側で導通させるための外側導電部とを有するものであってもよい。
なお、上記構成を有する導電性接続部については、後述する「(2)第2の態様」の項で説明するため、ここでの記載は省略する。
【0052】
(2)第2の態様
次に、上記導電性接続部の第2の態様について説明する。
本態様の導電性接続部は、上記導電性接続部が、対向することなく離れて形成された、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層と上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続するものである。また、本態様の導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通する2以上の貫通部と、上記2以上の貫通部間を上記樹脂製基板の外側で導通させるための外側導電部とを必須の構成とするものである。
【0053】
本態様の導電性接続部、およびこれを用いた本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールについて図を用いて説明する。図8は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
図8に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bと、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1b間に形成された少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10(図8では、2個の色素増感型太陽電池素子)とを有するものであり、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11と樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21とが対向せず、離れて形成されているものである。
また、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、隣り合う色素増感型太陽電池素子10において、樹脂製基板1a上に形成された一方の色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11と、樹脂製基板1b上に形成された他方の色素増感型太陽電池素子10の第2電極層21とが対向せず、離れて形成されているものであり、第1電極層11と第2電極層21とを接続するため、樹脂製基板1aの外側から樹脂製基板1bの外側まで貫通する2つの貫通部4aと、2つの貫通部4a間を樹脂製基板1aの外側で導通させるための外側導電部4bとを有する導電性接続部4を有するものである。また、図8においては、導電性接続部4が、貫通部4aの先端に固定部nを有する例について示している。なお、図8において説明していない符号については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0054】
本態様の導電性接続部における上記貫通部および上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の各電極層の位置関係としては、上記導電性接続部を用いて上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の各電極層間を接続することができるような位置関係であれば特に限定されるものではない。
【0055】
ここで、本態様の導電性接続部の上記貫通部および各電極層の位置関係について図9を用いて説明する。図9は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。なお、図9においては、導電性接続部4は少なくとも樹脂製基板1aを外側から貫通する2つの貫通部4aと、2つの貫通部4a間を樹脂製基板1aの外側で導通させるための外側導電部4bとを有するものである。このような構成を有する導電性接続部4の一方の貫通部4aと樹脂製基板1a上に形成された第1電極層11との位置関係としては、例えば、図9(a)に示すように、貫通部4aが樹脂製基板1aのみを貫通し、かつ、第1電極層11と少なくとも接触するように形成されていていてもよいし、図9(b)に示すように、貫通部4aが、樹脂製基板1a、第1電極層11、および樹脂製基板1bを貫通するように形成されていてもよい。また図示はしないが、上記導電性接続部の貫通部が上記一方の樹脂製基板のみを貫通し、さらに貫通した上記樹脂製基板上の電極層を貫通し、対向する上記樹脂製基板は貫通しないように形成されていてもよい。
また、導電性接続部4の他方の貫通部4aと上記樹脂製基板1b上に形成された第2電極層21との位置関係としては、例えば図9(a)に示すように、貫通部4aが樹脂製基板1aを貫通し、かつ、第2電極層21と少なくとも接するように形成されていてもよいし、図9(b)に示すように、貫通部4aが樹脂製基板1a、触媒層22、第2電極層21、および樹脂製基板1bを貫通するように形成されていてもよい。また図示はしないが、上記導電性接続部の上記貫通部が、上記一方の樹脂製基板を貫通し、さらに対向する樹脂製基板上に形成された電極層のみを貫通するように形成されていてもよい。
【0056】
本態様に用いられる導電性接続部が上述した構成を有する場合も、上記導電性接続部のそれぞれの貫通部は図9(b)に示すように、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されていることが好ましい。これにより色素増感型太陽電池素子モジュールにおける上記導電性接続部の形成位置を固定できることから、上記導電性接続部を用いて隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を好適に接続することが可能となるからである。
【0057】
さらに、本態様の導電性接続部は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の各電極層に対して2以上の貫通部を有するものであってもよい。上記導電性接続部が上記構成を有することにより、隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの電極層を複数の貫通部を用いてより確実に接続させることができるので、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの性能を向上させることが可能となる。
【0058】
上記導電性接続部は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができるように形成されているものであれば、特に限定されず、図8に示すように、色素増感型太陽電池素子モジュール100において、導電性接続部4が形成されている部分の厚みが、色素増感型太陽電池素子10が形成されている部分の厚みと同等となるように形成されていてもよいし、図示はしないが、上記導電性接続部が形成されている部分の厚みが、上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄くなるように形成されていてもよい。
【0059】
本態様に用いられる導電性接続部の形状としては、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができる形状であれば特に限定されるものではない。このような導電性接続部の形状において、上記導電性接続部の貫通部の形状については、「(1)第1の態様」の項で説明した導電性接続部の形状と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0060】
また、上記導電性接続部の形状において、上記外側導電部の形状については、上記2以上の貫通部間を上記樹脂製基板の外側で導通させることができる形状であれば特に限定されるものではなく、上記貫通部の形状に合わせて適宜選択して決定することができる。具体的には、平面状、線状等を挙げることができる。
【0061】
上記導電性接続部としては、上記2以上の貫通部および外側導電部を有し、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができるものであれば特に限定されるものではないが、上記導電性接続部が金属部材からなることが好ましい。上記導電性接続部として金属部材を用いた場合は、上記金属部材を一方の上記樹脂製基板の外側から貫通させることが容易であることから、上記導電性接続部を容易に形成することが可能となるからである。
【0062】
上記金属部材に用いられる金属については、「(1)第1の態様」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
また、上記導電性接続部として、上記金属部材を用いた場合は、上記2以上の貫通部および外側導電部が一体で形成されていてもよいし、別体で形成されていてもよい。本態様においては、上記2以上の貫通部および外側導電部が一体で形成されていることがより好ましい。上記金属部材を容易に加工することができ、扱いも容易であるからである。
【0064】
また、上記金属部材の形状としては、上記金属部材を配置することにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができる形状であれば特に限定されるものではない。上記金属部材の断面形状が、コの字型形状、櫛型形状等を挙げることができる。なお、上記金属部材において、上記貫通部に相当する部分の形状については、「(1)第1の態様」の項で説明した金属部材の形状と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、上記金属部材において、上記外側導電部に相当する部分の形状については、上記貫通部に相当する部分の形状に合わせて適宜選択される。
【0065】
本態様の導電性接続部において、上記以外の点については、「(1)第1の態様」の項で説明した導電性接続部と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0066】
2.樹脂製基板
次に、本態様に用いられる一対の樹脂製基板について説明する。ここで、上記樹脂製基板はフレキシブル性を有するものである。
上記フレキシブル性としては、JIS R1601のファインセラミックスの曲げ試験方法で、5KNの力をかけたときに曲がることを指す。
【0067】
ここで、色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる色素増感型太陽電池素子は、酸化物半導体電極層側または対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要がある。そのため、上記一対の樹脂製基板は少なくとも一方が透明樹脂製基板である必要がある。なお、通常は、両方の樹脂製基板に透明樹脂製基板が用いられる。
【0068】
上記透明樹脂製基板の透明性としては、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールが太陽光を受光することにより機能を発揮することができるように、太陽光を透過することができるものであれば特に限定されるものではないが、本態様においては、全光線透過率80%以上であることがより好ましい。なお、上記透明性は、JIS K7361-1:1997に準拠した測定方法により測定した値である。
【0069】
上記樹脂製基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエステルナフタレートフィルム(PEN)、ポリカーボネートフィルム(PC)からなる基材を用いることができる。
【0070】
また、本態様に用いられる樹脂製基板の厚みは、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの用途等に応じて適宜選択することができるものであるが、通常、10μm〜2000μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜1800μmの範囲内であることが好ましく、さらに100μm〜1500μmの範囲内であることが好ましい。
【0071】
3.色素増感型太陽電池素子
次に本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子について説明する。本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有するものである。以下、各部材について説明する。
【0072】
(1)酸化物半導体電極層
本態様に用いられる酸化物半導体電極層は、上記一対の樹脂製基板のうち、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有するものである。
以下、第1電極層および多孔質層についてそれぞれ説明する。
【0073】
(a)第1電極層
本態様に用いられる第1電極層について説明する。本態様に用いられる第1電極層は、一方の樹脂製基板の表面に形成されるものである。
【0074】
また、上記第1電極層としては、透明性を有する電極層であってもよいし、透明性を有さない電極層であってもよい。上述したように、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層側または上記対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要があることから、酸化物半導体電極層側から太陽光を受光する場合は上記第1電極層は透明性を有する電極層である必要がある。またこの場合、上記第1電極層を形成する樹脂製基板には透明樹脂製基板が用いられる。
【0075】
上記第1電極層が透明性を有する電極層である場合は、具体的には、透明電極層、メッシュ電極層、および透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層を挙げることができる。また、第1電極層が透明性を有さない電極層である場合は、金属層を挙げることができる。
以下、それぞれについて説明する。
【0076】
(i)透明電極層
本態様に用いられる透明電極層を構成する材料としては、透明性を有し、所定の導電性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、導電性高分子材料や金属酸化物等を用いることができる。
上記金属酸化物としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本態様に用いられる金属酸化物は太陽光に対して透過性を有するものであることが好ましい。このような太陽光に対する透過性を有する金属酸化物としては、例えば、SnO、ZnO、酸化インジウムにスズを添加した化合物(ITO)、フッ素ドープしたSnO(以下、FTOと称する。)、酸化インジウムに酸化亜鉛を添加した化合物(IZO)を挙げることができる。
一方、上記導電性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリエチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いることもできる。
【0077】
本態様に用いられる透明電極層は、単一の層からなる構成であってもよく、また、複数の層が積層された構成であってもよい。複数の層が積層された構成としては、例えば、仕事関数が互いに異なる材料からなる層が積層された態様や、互いに異なる金属酸化物からなる層が積層された態様を挙げることができる。
【0078】
本態様に用いられる透明電極層の厚みは、通常、5nm〜2000nmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、均質な透明電極層を形成することが困難となる場合や全光線透過率が低下して良好な光電変換効率を得ることが難しくなる場合があり、また、厚みが上記範囲よりも薄いと、透明電極層の導電性が不足する可能性があるからである。
なお、上記厚みは、透明電極層が複数の層から構成される場合には、すべての層の厚みを合計した総厚みを指すものとする。
【0079】
上記透明電極層を基材上に形成する方法としては、一般的な電極層の形成方法と同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
【0080】
(ii)メッシュ電極層
次にメッシュ電極層について説明する。本態様に用いられるメッシュ電極層は、導電性材料を用いてメッシュ状に形成された電極層である。
【0081】
上記メッシュ電極層のメッシュの形状としては、例えば、三角形の格子状、平行四辺形の格子状、六角形の格子状等を挙げることができる。
【0082】
上記メッシュ電極層の厚みとしては、0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記メッシュ電極層の厚みが上記範囲を超える場合は、上記メッシュ電極層を形成するための材料、時間等が多くかかるため、製造効率が低下したり、製造コストが高くなるからである。また、上記メッシュ電極層の厚みが上記範囲に満たない場合は、上記メッシュ電極層が電極層としての機能を十分に果たさない可能性があるからである。
【0083】
本態様に用いられるメッシュ電極層の開口部の比率としては、50%〜99.9%の範囲内であることが好ましい。上記メッシュ電極層の開口部の比率が上記範囲に満たない場合は、本態様の色素増感型太陽電池素子が第1電極層側から太陽光を十分に受光することができないため、発電効率を下げる可能性があるからである。また、上記メッシュ電極層の開口部の比率が上記範囲を超える場合は、上記メッシュ電極層が電極層としての機能を向上させることが困難となるおそれがあるからである。
【0084】
また、上記メッシュ電極層の線幅、およびメッシュピッチとしては、用いられる色素増感型太陽電池素子の形状に合わせて適宜選択されるものであるが、上記メッシュ電極層の線幅としては、0.02μm〜10mmの範囲内、なかでも1μm〜2mmの範囲内、特に10μm〜1mmの範囲内であることが好ましく、上記メッシュ電極層のメッシュピッチとしては、1μm〜500μmの範囲内、なかでも5μm〜100μmの範囲内、特に10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0085】
上記メッシュ電極層の材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、具体的には、後述する「(iv)金属層」の項で説明する金属層と同様の金属等を挙げることができる。
【0086】
(iii)透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層
本態様に用いられる第1電極層としては、上述した透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層を用いることができる。上記の構成とすることにより、上記透明電極層の導電性が不足する場合に、メッシュ電極層により補充することができるため、本態様の色素増感型太陽電池素子をより発電効率に優れたものにできるという利点がある。
なお、透明電極層およびメッシュ電極層については、上述したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
(iv)金属層
上述したように、本態様に用いられる第1電極層が透明性を有さない電極層である場合は、金属層を用いることができる。上記金属層としては、フレキシブル性を有するものである限り特に限定されないが、材質としては、銅、アルミニウム、チタン、クロム、タングステン、モリブデン、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、亜鉛、各種ステンレスおよびそれらの合金等が挙げられ、チタン、クロム、タングステン、各種ステンレスおよびそれらの合金が望ましい。また、金属層からなる第1電極層が用いられる場合、当該金属層の厚みとしては、フレキシブル性を有し、第1電極層上に上述した多孔質層を形成することが可能な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、5μ〜1000μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、20μm〜200μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0088】
(b)多孔質層
本態様に用いられる多孔質層は上述した第1電極層上に形成されるものであり、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含むものである。
【0089】
(i)金属酸化物半導体微粒子
本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子としては、半導体特性を備える金属酸化物からなるものであれば、特に限定されるものではない。本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、TiO、ZnO、SnO、ITO、ZrO、MgO、Al、CeO、Bi、Mn、Y、WO、Ta、Nb、La等を挙げることができる。
【0090】
なかでも本態様においては、TiOからなる金属酸化物半導体微粒子を用いることが最も好ましい。TiOは特に半導体特性に優れるからである。
【0091】
本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子の平均粒径としては、通常、1nm〜10μmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0092】
(ii)色素増感剤
本態様に用いられる色素増感剤としては、光を吸収して起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。このような色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を挙げることができる。上記有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン、インドリン、カルバゾール系の色素が挙げられる。本態様においては、これらの有機色素の中でも、クマリン系色素を用いることが好ましい。また、上記金属錯体色素としてはルテニウム系色素を用いることが好ましく、特にルテニウム錯体であるルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素を用いることが好ましい。このようなルテニウム錯体は吸収する光の波長範囲が広いため、光電変換できる光の波長領域を大幅に広げることができるからである。
【0093】
(iii)任意の成分
本態様に用いられる多孔質層には、上記金属酸化物半導体微粒子の他に任意の成分が含まれていてもよい。本態様に用いられる任意の成分としては、例えば、樹脂を挙げることができる。上記多孔質層に樹脂が含有されることにより、本態様に用いられる多孔質層の脆性を改善することができるからである。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カプロラクタン等を挙げることができる。
【0094】
(iv)その他
本態様に用いられる多孔質層の厚みは、通常、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0095】
本態様に用いられる多孔質層の形成方法については、一般的な色素増感型太陽電池素子を形成する際に用いられる多孔質層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
(2)対極電極層
次に、本態様に用いられる対極電極層は、上記一対の樹脂製基板のうち、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有するものである。以下、それぞれについて説明する。
【0097】
(a)第2電極層
本態様に用いられる第2電極層としては、後述する触媒層を形成することにより、色素増感型太陽電池素子の対極電極層として用いることができるものであれば、特に限定されるものではなく、透明性を有する電極層であってもよいし、透明性を有さない電極層であってもよい。上述したように、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子においては、上記酸化物半導体電極層側または上記対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要がある。よって、上記対極電極層側から太陽光を受光する場合には、第2電極層としては透明性を有する電極層が用いられる。またこの場合、第2電極層を形成する樹脂製基板には透明樹脂製基板が用いられる。
【0098】
上記第2電極層については、上記第1電極層の項で説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0099】
(b)触媒層
本態様に用いられる触媒層は、上記第2電極層上に形成されるものである。第2電極層に触媒層が形成されていることにより、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子をより発電効率に優れたものにすることができる。このような触媒層の例としては、例えば、上記第2電極層上にPtを蒸着した態様や、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、パラトルエンスルホン酸(PTS)およびこれらの混合物から触媒層を形成する態様を挙げることができるが、この限りではない。
【0100】
このような触媒層の厚みとしては、1nm〜10μmの範囲内、なかでも10nm〜1000nmの範囲内、特に10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0101】
(3)電解質層
次に本態様に用いられる電解質層について説明する。
本態様に用いられる電解質層は、上記多孔質層および上記触媒層の間に形成されるものであり、酸化還元対を含むものである。
【0102】
本態様における電解質層に用いられる酸化還元対としては、一般的に色素増感型太陽電池の電解質層に用いられているものであれば特に限定はされるものではない。中でも本態様に用いられる酸化還元対は、ヨウ素およびヨウ化物の組合せ、臭素および臭化物の組合せであることが好ましい。
【0103】
上記酸化還元対として本態様に用いられるヨウ素およびヨウ化物の組合せとしては、例えば、LiI、NaI、KI、CaI等の金属ヨウ化物と、Iとの組合せを挙げることができる。
さらに、上記臭素および臭化物の組合せとしては、例えば、LiBr、NaBr、KBr、CaBr等の金属臭化物と、Brとの組合せを挙げることができる。
【0104】
本態様における電解質層には、上記酸化還元対以外のその他の化合物として、架橋剤、光重合開始剤、増粘剤、常温融解塩等の添加剤を含有していてもよい。
【0105】
本態様に用いられる電解質層は、ゲル状、固体状または液体状のいずれの形態からなる電解質層であってもよいが、固体状の電解質層であることがより好ましい。上記固体状の電解質層は液漏れ等の問題が生じにくく、扱いが容易であるからである。
【0106】
(4)その他の構成
本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層、対極電極層、および電解質層を有しているものであれば特に限定されるものではなく、必要な部材を適宜追加して用いることができる。このような部材としては、図10に示すように、例えば上記電解質層として、液体状もしくはゲル状の電解質層3を用いた場合に用いられる封止のためのシール材5を挙げることができる。このようなシール材5については一般的な色素増感型太陽電池素子に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、図10は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0107】
4.その他の部材
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上述した導電性接続部、樹脂製基板、および色素増感型太陽電池素子を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記以外の構成を適宜選択して用いることができる。このような構成としては、上記樹脂製基板の外側から上記導電性接続部を貫通させた位置に形成される貫通孔を封止するための封止部を挙げることができる。本態様においては、上記封止部を設けることにより、大気中の水分が色素増感型太陽電池素子モジュール内に浸入することを防止することが可能となる。ここで、上記色素増感型太陽電池素子モジュール内に水分が浸入した場合には、多孔質層に坦持されている色素増感剤が脱離することにより色素増感型太陽電池素子が経時的に劣化してしまう可能性が考えられる。そのため、上記封止部材を形成することは好ましい。
【0108】
上記封止部材としては一般的な樹脂材料を用いることにより形成することができることから、ここでの説明は省略する。
【0109】
5.色素増感型太陽電池素子モジュール
本態様においては、隣り合う色素増感型太陽電池素子において上記導電性接続部によって接続される電極層がそれぞれ異なる上記樹脂製基板の表面に形成されているものであれば特に限定されるものではない。本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの種々の態様のなかでも、上記一方の樹脂製基板の表面には、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子のうち、一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層が形成され、かつ、上記他方の樹脂製基板の表面には、他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層が形成されており、上記導電性接続部は、一方の上記樹脂製基板に形成された一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層と、他方の上記樹脂製基板に形成された他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層とを接続するために、少なくとも一方の上記樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されているものであることがより好ましい。上記構成を有する色素増感型太陽電池素子モジュールは製造を容易に行うことが可能であるからである。
【0110】
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上述した導電性接続部を有するものであれば特に限定されるものではなく、後述する「II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明する導電性接続部が形成されていてもよい。
【0111】
II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
次に、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの第2態様について説明する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、隣り合う色素増感型太陽電池素子において上記導電性接続部によって接続される電極層がそれぞれ同一の上記樹脂製基板の表面に形成されているもの、すなわち、一方の上記樹脂製基板の表面には、隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層もしくは上記第2電極層のいずれかの電極層と、他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層もしくは上記第2電極層のいずれかの電極層とが形成されており、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通するように形成されているものであり、かつ、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通する2以上の貫通部と、上記2以上の貫通部間を上記樹脂製基板の外側で導通させるための外側導電部とを有することを特徴とするものである。
【0112】
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールについて図を用いて説明する。図11は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
図11に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bと、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1b間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10(図11においては2個の色素増感型太陽電池素子)と、を有するものである。また、色素増感型太陽電池素子10は、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11、および第1電極層11上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21、および第2電極層21上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有するものである。なお、図11においては、電解質層3が固体電解質層である例について示している。
【0113】
また、図11に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、隣り合う色素増感型太陽電池素子10において、樹脂製基板1a上に形成された一方の色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11と、樹脂製基板1a上に形成された他方の色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11とを接続するため、樹脂製基板1aを外側から2か所貫通するように形成された導電性接続部4を有するものであり、導電性接続部4は、樹脂製基板1aの外側から、上述した隣り合う色素増感型太陽電池素子10のそれぞれの第1電極層11を貫通し、さらに樹脂基板1bを貫通する2つの貫通部4aと、2つの貫通部4a間を樹脂製基板1aの外側から導通させるための外側導電部4bとを有するものである。
【0114】
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールと上述した第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュールとの違いは、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続する上記導電性接続部に関するものであり、上記樹脂製基板および色素増感型太陽電池素子、およびその他の部材については、第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュールと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。以下、本態様に用いられる導電性接続部について説明する。
【0115】
1.導電性接続部
本態様に用いられる導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通する2以上の貫通部と、上記2以上の貫通部間を上記樹脂製基板の外側で導通させるための外側導電部とを必須の構成とするものである。
【0116】
このような導電性接続部としては、同一の上記樹脂製基板の表面に形成された一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記電極層と、他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記電極層とを接続することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、図11に示すように、樹脂製基板1a上に形成された第1電極層11および樹脂製基板1a上に形成された第1電極層11間を接続するものであってもよいし、図12(a)に示すように、樹脂製基板1a上に形成された第1電極層11および樹脂製基板1a上に形成された第2電極層21間を接続するものであってもよいし、図12(b)に示すように、樹脂製基板1a上に形成された第2電極層21および樹脂製基板1a上に形成された第2電極層21間を接続するものであってもよい。
ここで、上述した「1.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したように、通常、上記樹脂製基板上に上記色素増感型太陽電池素子を形成する際には、形成工程を容易な工程にするために、同一の樹脂製基板には、第1電極層のみ、もしくは第2電極層のみが形成されるものである。したがって、本態様では、図11や図12(b)に示されるように、同一の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層間、または同一の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層間を接続するものであることが好ましい。なお、図12は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図11と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0117】
また、本態様における上記導電性接続部の形成位置としては、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続することができる位置であれば特に限定されるものではなく、例えば図11に示すように、少なくとも上記電極層(図11ではそれぞれの第1電極層11)が形成されている側の樹脂製基板1aを外側から貫通するように形成されていてもよいし、また例えば図13に示すように、少なくとも上記電極層(図13ではそれぞれの第1電極層11)が形成されていない側の樹脂製基板1bを貫通するように形成されていてもよい。本態様においては、少なくとも上記電極層が形成されている側の樹脂製基板を外側から貫通するように形成されていることがより好ましい。より確実に上記電極層間を接続させることができるからである。なお、図13は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図11と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0118】
また本態様に用いられる上記導電性接続部の上記貫通部および隣り合う色素増感型太陽電池素子の各電極層の位置関係は、上記導電性接続部を用いて隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続することができる位置関係であれば特に限定されるものではない。例えば、上記貫通部がそれぞれの上記電極層と接触するものであってもよいし、上記貫通部がそれぞれの上記電極層を貫通するものであってもよい。
【0119】
本態様における上記導電性接続部の貫通部および各電極層の位置関係として、より具体的には、図14に示すように、貫通部4aが樹脂製基板1aのみを貫通し、かつ、第1電極層11と少なくとも接触するように形成されていていてもよいし、図11に示すように、貫通部4aが樹脂製基板1a、第1電極層11、および樹脂製基板1bを貫通するように形成されていてもよい。また図示はしないが、上記貫通部が一方の樹脂製基板を貫通し、さらに貫通した樹脂製基板上の電極層を貫通し、他方の樹脂製基板を貫通しないように形成されていてもよい。なお、図14は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図11と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
本態様においては、上記導電性接続部の貫通部が、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されていることがより好ましい。これにより、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおける導電性接続部の形成位置を固定することができることから、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間をより好適に接続することが可能となるからである。
【0121】
上記導電性接続部は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることができるように形成されているものであれば、特に限定されず、図11に示すように、色素増感型太陽電池素子モジュール100において、導電性接続部4が形成されている部分の厚みが、色素増感型太陽電池素子10が形成されている部分の厚みと同等となるように形成されていてもよいし、図示はしないが、上記導電性接続部が形成されている部分の厚みが、上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄くなるように形成されていてもよい。
【0122】
本態様に用いられる導電性接続部については、上記の点以外は「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で記載した第2の態様の導電性接続部と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0123】
2.色素増感型太陽電池素子モジュール
本態様においては、隣り合う色素増感型太陽電池素子において上記導電性接続部によって接続される電極層がそれぞれ同一の上記樹脂製基板の表面に形成されているものであれば特に限定されるものではない。本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの種々の態様のなかでも、上記一方の樹脂製基板の表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの上記第1電極層もしくはそれぞれの上記第2電極層が形成されており、上記導電性接続部は、少なくとも上記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通する2以上の貫通部と、上記2以上の貫通部間を上記樹脂製基板の外側で導通させるための外側導電部とを有することにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層間もしくは上記第2電極層間を接続するものであることがより好ましい。上記色素増感型太陽電池素子モジュールは、製造を容易に行うことができるからである。
【0124】
また、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上述した導電性接続部を有するものであれば特に限定されるものではなく、上述した「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した導電性接続部が形成されていてもよい。
【0125】
III.色素増感型太陽電池素子モジュール
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、上述したように、上記導電性接続部を有することにより、一対の上記樹脂製基板の間に上記色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記導電性接続部を外側から貫通させて形成することができるので、上記導電性接続部の形状、形成位置、個数等を適宜選択することにより、色素増感型太陽電池素子モジュールの形態を多様なものとすることが可能となる。
【0126】
B.色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法
次に、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について説明する。
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に、上記一対の樹脂製基板の一方の外側から内部に上記樹脂製基板を貫通するように設けられた導電性接続部を形成する導電性接続部形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0127】
なお、以下の説明においては、上記第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間を、単に電極層間と称して説明する場合がある。
【0128】
ここで本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について図を用いて説明する。図15は、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を示す工程図である。図15に示すように、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの間に形成された2以上の色素増感型太陽電池素子10を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11、および第1電極層11上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21、および上記第2電極層21上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程(図15(a))と、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11および第2電極層12間に、樹脂製基板1aの外側から内部に上記樹脂製基板1aを貫通するように設けられた導電性接続部4を形成する導電性接続部形成工程(図15(b)〜図15(c))とを有する製造方法である。なお、図15(b)は、上記導電性接続部形成工程において、樹脂製基板1aの外部から内部へ導電性接続部4が樹脂製基板1aを貫通する過程を示すものであり、図15(c)は、樹脂製基板1aを貫通した導電性接続部4が、一方の色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11、および他方の色素増感型太陽電池素子10の第2電極層12を貫通し、さらに樹脂製基板1bの外側まで貫通する過程を示すものである。
【0129】
本発明によれば、上記導電性接続部形成工程を有することにより、一対の樹脂製基板の間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記導電性接続部を設けて隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることが可能であることから、上記電極間の接続不良の少ない高品質な色素増感型太陽電池用モジュールを容易に製造することができる。また、上記導電性接続部形成工程においては、上記導電性接続部の形成位置、個数、形状等を選択することにより、多様な形態の色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することができる。
以下、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法に用いられる各工程についてそれぞれ説明する。
【0130】
1.色素増感型太陽電池素子形成工程
本発明における色素増感型太陽電池素子形成工程は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法において、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する工程である。
【0131】
本工程に用いられる色素増感型太陽電池素子の形成方法については、一般的な色素増感型太陽電池素子を形成する際に用いられるものと同様とすることができる。上記色素増感型太陽電池素子の形成方法としては、以下のような形成方法を一例として挙げることができる。
まず、一対の樹脂製基板を準備し、一方の上記樹脂製基板の表面に2以上の第1電極層を形成した後、それぞれの上記第1電極層上に多孔質層を形成することにより、酸化物半導体電極層を形成する。また、他方の樹脂製基板の表面に、上記酸化物半導体電極層と同数の第2電極層を形成した後、それぞれの上記第2電極層上に触媒層を形成することにより対極電極層を形成する。次に、一対の上記樹脂製基板を、それぞれの上記多孔質層および触媒層が対向するように配置してシール材を用いて封止し、次いで液体状またはゲル状の電解質を酸化物半導体電極基板および対極基板の間に注入することによって電解質層を形成することにより色素増感型太陽電池素子を形成する。
【0132】
また、上記色素増感型太陽電池素子の形成方法としては、次に例示するような形成方法を用いることも可能である。
まず、上述した色素増感型太陽電池素子の形成方法と同様にして、一方の樹脂製基板に複数の酸化物半導体電極層を形成し、他方の樹脂製基板に複数の対極電極層を形成する。次に、上記酸化物半導体電極層の多孔質層上に固体状の電解質層材料を塗布して乾燥させることにより固体電解質層を形成し、ついで、一対の上記樹脂製基板を上記固体電解質層および触媒層が対向するように接触させて配置することにより色素増感型太陽電池素子を形成する。
【0133】
本工程において、形成される色素増感型太陽電池素子の電解質層として固体電解質層を用いる場合は、Roll to Roll法を用いることにより、一対の樹脂製基板間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成してもよい。
上記Roll to Roll法を用いて2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する場合は、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の電極層間が離れて形成されることがあるが、本発明においては、後述する導電性接続部形成工程で導電性接続部を形成することにより、離れた電極層間であっても接続させることが可能となる。
【0134】
なお、上記に挙げた色素増感型太陽電池素子の形成方法はいずれも一例であり、本発明においては、他の一般的な色素増感型太陽電池素子の形成方法についても用いることが可能である。
【0135】
本工程において用いられる上記樹脂製基板および色素増感型太陽電池素子の各部材については、「A.色素増感太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、本工程において形成される上記色素増感型太陽電池素子についても、「A.色素増感太陽電池素子モジュール」の項で説明したので、ここでの説明は省略する。
【0136】
2.導電性接続部形成工程
本工程は、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に、上記一対の樹脂製基板の一方の外側から内部に上記樹脂製基板を貫通するように設けられた導電性接続部を形成する工程である。
【0137】
本工程により形成される導電性接続部については、「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0138】
本工程においては、上記導電性接続部として、金属部材を用いることが好ましい。上記金属部材を用いることにより、容易に上記電極層間に上記導電性接続部を形成することができるからである。上記金属部材については、上述した「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0139】
上記導電性接続部の形成方法としては、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させることが可能な上記導電性接続部を形成することができる方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば、上記一方の樹脂製基板の外側から、上記導電性接続部を配置させるための貫通孔を予め設け、上記導電性接続部を上記貫通孔を通すことによって設ける方法であってもよいし、また例えば、上記一方の樹脂製基板の外側から上記導電性接続部を直接貫通させることによって設ける方法であってもよいが、一方の上記樹脂製基板の外側から上記導電性接続部を直接貫通させることによって設ける方法であることがより好ましい。上記導電性接続部を形成する工程が少なくて済み、製造効率を向上させることができるからである。
【0140】
上記一方の樹脂製基板の外側から上記導電性接続部を直接貫通させる方法としては、具体的には、針状の金属部材を導電性接続部に用いて一方の上記樹脂製基板の外側から上記針状の金属部材を貫通させる方法、ホッチキスを用いて一方の上記樹脂製基板の外側から金属部材を貫通させる方法等を挙げることができる。
【0141】
本工程においては、本発明により製造される色素増感型太陽電池素子モジュールにおける上記導電性接続部の形成位置、個数、形状等を選択して、上記導電性接続部を形成することが可能である。よって、例えば、上述した色素増感型太陽電池素子形成工程において、一対の樹脂製基板の間に所定の配列で2以上の色素増感型太陽電池素子を形成した場合であっても、上記導電性接続部の形成位置、個数、形状の違いによって、形態の異なる色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能である。
【0142】
また、本工程においては、本発明の製造方法により製造される色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、少なくとも1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に上記導電性接続部を形成可能であれば、特に限定されないが、製造される上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、すべての隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に上記導電性接続部を形成することがより好ましい。これにより、上記電極層間での接続不良を少なくすることが可能となり、高品質な色素増感型太陽電池素子モジュールを製造することが可能となる。
【0143】
3.その他の工程
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、上述した色素増感型太陽電池素子形成工程、および導電性接続部形成工程を有する製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜追加することが可能である。このような工程としては、例えば貫通部を樹脂材料等により封止する封止部を形成する封止部形成工程等を挙げることができる。
【0144】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0146】
[実施例1]
(酸化物半導体電極層の作製)
50mm×50mm、厚み50μmのTi箔基板(竹内金属箔工業株式会社)(第1電極層)上にエタノール中で酸化チタン粒子P25(日本エアロジル株式会社)に0.5%のエチルセルロース STD-100(日新化成工業株式会社)を混合させたペーストを塗布、乾燥させ、500℃で30分焼成して多孔質層形成用層を形成した(膜厚5μm)。その後、アセトニトリル/t-ブタノール=1/1溶媒中にN719色素(Dyesol)を0.3mM溶解させた液を作製し、この溶液中に上記Ti箔基板を20時間浸漬させて多孔質層を形成し、酸化物半導体電極層を作製した。その後、この酸化物半導体電極層を厚み100μmのプラスチック基板上に10mmの間隔をあけて2枚設置した。
【0147】
(対極電極層の作製)
厚み125μmのITO膜/PEN基板(第2電極層)上にスパッタで白金を全光線透過率65%になるように積層して触媒層を形成し、50mm×50mmにカットして対極電極層を形成した。その後、この対極電極層を厚み100μmの透明プラスチック基板上に10mmの間隔をあけて2枚設置した。
【0148】
(樹脂電解質溶液の調製)
6mol/l hexyl metyl imidazolum iodide(富山薬品)、0.6mol/l I2(メルク株式会社)、 0.45mol/l n-metyl benzoimidazol(Aldrich)をhexyl metyl imidazolum tetracyano borate(メルク株式会社)に溶解した電解液を調製した。次にSTD-100(日新化成)をエタノールに10wt%溶解させた樹脂溶液を調製し、上記電解液:樹脂溶液=1:6(重量比)で混合した樹脂電解質溶液を調製した。
【0149】
(色素増感型太陽電池素子モジュールの作製)
酸化物半導体電極層の多孔質層上に、固形膜厚100μmで電解質溶液を塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させて固体電解質層を形成した。その後、酸化物半導体電極層上の固体電解質層と対極電極層の触媒層とを対向させ、第1電極層および第2電極層を左右を10mmずらして張り合わせ、真空ラミネーターにて熱ラミネートすることで色素増感型太陽電池素子を作製した。その後、第1電極層と第2電極層の触媒層とが離れた状態で、ホッチキスを用いて金属部材を、1対のプラスチック基板の上下を貫通するように配置することにより、第1電極層と第2電極層とを接続させた。また両サイドの取り出し部分に関しては同様にホッチキスを使って金属部材を配置し、外部に設置した導電テープとともに接続した。
【0150】
[実施例2]
(色素増感型太陽電池モジュールの作製)
色素増感型太陽電池素子の第1電極層と第2電極層の触媒層とが接触した状態で、ホッチキスを用いて金属部材を、1対のプラスチック基板の上下を貫通するように配置することにより、第1電極層と第2電極層とを接続させたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池素子モジュールを作製した。
【0151】
[評価]
実施例1および実施例2で得られた色素増感型太陽電池素子モジュールの性能評価として、光電変換効率を測定した。なお、測定装置は分光計器CEP-2000を用い、AM1.5の条件下で測定を行った。結果を表1に示す。また、表1中のJsc(mA/cm)は短絡電流密度、Voc(V)は開放電圧、FFは曲線因子、η(%)は光電変換効率を表すものである。
【0152】
【表1】

【0153】
導電性接続部を形成することにより、光電変換効率の高い色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に作製することができた。
【符号の説明】
【0154】
1a、1b … 樹脂製基板
11 … 第1電極層
12 … 多孔質層
21 … 第2電極層
22 … 触媒層
3 … 電解質層
4 … 導電性接続部
4a … 貫通部
4b … 外側導電部
10 … 色素増感型太陽電池素子
100 … 色素増感型太陽電池素子モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、
前記樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、
前記色素増感型太陽電池素子は、一方の前記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および前記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、
他方の前記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および前記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有し、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間には、これらの電極層間を接続するための導電性接続部が形成されており、
前記導電性接続部は、少なくとも前記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項2】
前記一方の樹脂製基板の表面には、前記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、一方の前記色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層が形成され、かつ、前記他方の樹脂製基板の表面には、他方の前記色素増感型太陽電池素子の前記第2電極層が形成されており、前記導電性接続部は、前記一方の樹脂製基板に形成された前記一方の色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層と、前記他方の樹脂製基板に形成された前記他方の色素増感型太陽電池素子の前記第2電極層とを接続するために、少なくとも前記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項3】
前記導電性接続部は、少なくとも前記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項4】
前記一方の樹脂製基板の表面には、前記隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの前記第1電極層もしくはそれぞれの前記第2電極層が形成されており、前記導電性接続部は、少なくとも前記一方の樹脂製基板のいずれかを外側から2か所以上貫通する2以上の貫通部と、前記2以上の貫通部間を前記樹脂製基板の外側で導通させるための外側導電部とを有することにより、前記隣り合う色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層間もしくは前記第2電極層間を接続するものであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項5】
前記導電性接続部が前記一方の樹脂製基板の外側から前記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項6】
前記導電性接続部が金属部材からなることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項7】
フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、
前記樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、
一方の前記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および前記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、
他方の前記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および前記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、
を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に、前記一対の樹脂製基板の一方の外側から内部に前記樹脂製基板を貫通するように設けられた導電性接続部を形成する導電性接続部形成工程と、
を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−243321(P2011−243321A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112175(P2010−112175)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【特許番号】特許第4811522号(P4811522)
【特許公報発行日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】