色素増感型太陽電池素子モジュール
【課題】本発明は、一対の基材の位置ずれを防止し、接続不良もしくは内部短絡を生じにくい高品質な色素増感型太陽電池素子モジュール、および上記色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能な色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールを提供することにより、上記課題を解決する。
【解決手段】フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基材の位置ずれを防止し、接続不良もしくは内部短絡を生じにくい高品質な色素増感型太陽電池素子モジュール、および上記色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能な色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の増加が原因とされる地球温暖化等の環境問題が深刻となり、世界的にその対策が進められている。中でも環境に対する負荷が小さく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池に関する積極的な研究開発が進められている。このような太陽電池としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、および化合物半導体太陽電池などが既に実用化されているが、これらの太陽電池は製造コストが高い等の問題がある。そこで、環境負荷が小さく、かつ製造コストを削減できる太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目され研究開発が進められている。
【0003】
また、上記色素増感型太陽電池においては、実用化するためには、より大きな出力電圧が必要であることから、複数の色素増感型太陽電池素子を接続して色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが試みられている。
【0004】
このような色素増感型太陽電池素子モジュールの形成方法としては、例えば個々の色素増感型太陽電池素子を作製した後、それぞれを配線を用いて接続させることにより色素増感型太陽電池素子モジュールとする方法を挙げることができる。しかしながら、上記の方法では、個々の色素増感型太陽電池素子をそれぞれ配線させる必要があることから、形成工程が煩雑であるといった問題があった。
【0005】
そこで、2枚の基材の間に複数個の色素増感型太陽電池素子を形成し、一対の基材の内部でそれぞれの色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続する方法が試みられている。このような方法としては、例えば、各々の色素増感型太陽電池素子に用いられる酸化物半導体電極層、電解質層、および対極電極層の形成位置を少しずつずらして形成することにより、隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの電極層を対向させ、対向する電極層の間に金属ペーストを配置して、色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させる方法を挙げることができる。
【0006】
ここで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、従来、上記基材としてガラス基板が用いられているが、近年、色素増感型太陽電池モジュールについてはフレキシブル化が望まれているところ、基材としてフレキシブルな基板を用いることが検討されている。しかしながら、上記色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる基材として上記フレキシブル性を有する基板を用い、上述した金属ペーストを配置する方法により各々の色素増感型太陽電池素子を接続させた場合は、上記基板が湾曲することから、上記基板の位置ずれが発生し、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の距離が変化する場合があるため、金属ペーストと電極層とが離れて接続不良を起こす可能性があるといった問題があった。
【0007】
上記の問題に対して、特許文献1では、図17に示す構成の色素増感型太陽電池素子モジュールが提案されている。図17に示すように、特許文献1において提案されている色素増感型太陽電池素子モジュール100は、ガラス基板101aと樹脂製基板101bと、ガラス基板101aおよび樹脂製基板101bの間に形成された複数の色素増感型太陽電池素子110を有するものである。また、色素増感型太陽電池素子110は、ガラス基板101aの表面に形成された第1電極層111、および第1電極層111上に形成され、色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層112を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板101bの表面に形成された第2電極層121、および第2電極層121上に形成された触媒層122を有する対極電極層と、上記多孔質層112および上記触媒層122の間に設けられた電解質層103とを有するものである。また、色素増感型太陽電池素子モジュール100の端部に形成される色素増感型太陽電池素子110は封止部材106を有するものである。
特許文献1に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール100においては、樹脂製基板101bの外側に、複数の凸部が設けられた押圧板150を配置することにより、隣り合う色素増感型太陽電池素子110の第1電極層111および第2電極層121を接触させるものである。また、ガラス基板101aおよび押圧板150は、色素増感型太陽電池素子モジュール100の端部に設けられた固定枠160によって固定されているものである。
【0008】
しかしながら、上記の構成を有する色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、上記押圧板により、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に圧力をかけて接触させることはできるものの、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの端部に配置された固定枠のみで上記ガラス基板および押圧板を固定するものであることから、上記色素増感型太陽電池素子モジュールのガラス基板および樹脂製基板の位置を、所定の位置関係に十分に保つことは困難であり、上記一対の基材の位置ずれによる接続不良を十分に防止することが困難であるといった問題があった。
【0009】
ところで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材としては、金属箔等のフレキシブル性を有する金属層を用いることも検討されている。上記金属層を色素増感型太陽電池素子モジュールの基材として用いる場合は、上記金属層を上記色素増感型太陽電池素子の電極層としても用いることが可能である。上記金属層を上記電極層として用いた場合は、色素増感型太陽電池素子をフレキシブルかつ大面積化した場合にも集電が良好であるといった利点や、上記色素増感型太陽電池素子の形成の際に高温での焼成が可能となるといった利点を有する。
【0010】
このような金属層は、同一の金属層上に複数の色素増感型太陽電池素子が形成され、上記金属層によって、各々の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されている色素増感型太陽電池素子モジュールの基材として好適に用いることができる。
しかしながら、上記金属層を上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材として用いた場合は、上記金属層が湾曲することにより、同一の色素増感型太陽電池素子の電極層間が接触して、内部短絡が発生してしまうといった問題があった。
【0011】
なお、上記内部短絡の発生は、上記金属層を有する色素増感型太陽電池素子モジュールに限らず、同一の電極層上に複数の色素増感型太陽電池素子が形成され、上記電極層によって各々の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されている色素増感型太陽電池素子モジュールにおいても起こり得る問題である。
【0012】
そこで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材にフレキシブル性を有する樹脂製基板を用いた場合には、上記基板の位置ずれを防止し、各々の色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続不良を発生させずに容易に接続させる方法が求められている。
また、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材にフレキシブル性を有する金属層を用いた場合には、内部短絡の発生を防止する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−299545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、一対の基材の位置ずれを防止し、接続不良もしくは内部短絡を生じにくい高品質な色素増感型太陽電池素子モジュール、および上記色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能な色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールを提供する。
【0016】
本発明によれば、上記固定部材が、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側までを貫通するように形成され、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置されることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記一対の樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。
【0017】
本発明においては、上記色素増感型太陽電池素子は、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有し、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子は、上記一方の樹脂製基板に形成された一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層と、上記他方の樹脂製基板に形成された他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層とが、少なくとも一部対向するように形成されているものであり、上記固定部材は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に形成され、これら電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることが好ましい。上記一対の樹脂製基板の位置を、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続可能な位置関係に確実に固定することができることから、上記電極層間の接続が容易であり、接続欠陥のない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能である。
【0018】
また本発明においては、上記一方の樹脂製基板の表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層が形成され、かつ、上記他方の樹脂製基板の表面には、上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層が形成されており、上記固定部材は、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層および上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることが好ましい。上記色素増感型太陽電池素子モジュールを上記構成とすることにより、直列構造の色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
【0019】
本発明においては、上記固定部材が導電性を有するものであることが好ましい。上記固定部材が導電性を有するものであることにより、上記固定部材を用いて上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続することが可能となる。
【0020】
本発明は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールを提供する。
【0021】
本発明によれば、上記固定部材が上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されていることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記金属層および上記透明樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、耐久性に優れたものとすることができる。また、上記固定部材により上記金属層および上記透明樹脂製基板を固定することによって、内部短絡を防止することができる。
【0022】
本発明においては、上記固定部材により固定されている部分の厚みが、上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄いことが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールが上記構成となるように、上記固定部材を配置することにより、上記一対の樹脂製基板間、もしくは上記金属層および透明樹脂製基板間の距離を短くすることが可能となり、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間の接続をより確実なものとすることができるからである。
【0023】
本発明は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、上記一対の樹脂製基板の間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記固定部材を設ける上記固定部材配置工程を有することにより、上記電極層間が所定の位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定することが可能となることから、接続不良が少なく、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
【0025】
本発明は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供する。
【0026】
本発明によれば、上記固定部材配置工程を有することにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に上記固定部材を配置することが可能であることから、内部短絡の発生を防止し、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上記固定部材を有することにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記一対の基材を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、上記一対の基材の位置ずれによる劣化を防止することができ、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。また、本発明によれば、上記固定部材を有することにより、上記一対の基材を所定の位置関係に長期間保持することが可能となることから、色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の接続不良、もしくは、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの内部短絡の発生等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す模式図である。
【図9】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図13】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図14】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図15】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法の一例を示す工程図である。
【図16】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法の他の一例を示す工程図である。
【図17】色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュール、および本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを製造する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について詳細に説明する。
【0030】
A.色素増感型太陽電池素子モジュール
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールは、一対の基材として、フレキシブル性を有する基板を用いたものであり、一方の基材の外側から他方の基材の外側まで貫通する固定部材を形成することによって、上記一対の基材を所定の位置関係で固定することを特徴とするものである。このような色素増感型太陽電池素子モジュールとしては、上記一対の基材が一対の樹脂製基板である態様(以下、第1態様とする。)と、上記一対の基材が金属層および透明樹脂製基板である態様(以下、第2態様とする。)との2つの態様を挙げることができる。以下、各態様について説明する。
【0031】
I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの第1態様について説明する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0032】
ここで、上記色素増感型太陽電池素子は、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有するものである。
なお、以下の説明においては、第1電極層または第2電極層をまとめて説明する場合には、単に電極層と称する場合がある。
【0033】
またここで、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層側または対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要があることから、本態様においては、上記一対の樹脂製基板のうち少なくとも一方は透明樹脂製基板であり、かつ、上記透明樹脂製基板上に形成される電極層は透明性を有する電極層であるものとする。
【0034】
本態様によれば、上記固定部材が、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側までを貫通するように形成され、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置されていることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記一対の樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、上記一対の樹脂製基板の位置ずれによる劣化を防止することができるので、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。
【0035】
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上述した固定部材を有することに大きな特徴を有するものである。また、上記固定部材としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置され、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されているものであれば特に限定されるものではない。
【0036】
本態様においては、なかでも、上記固定部材が、隣り合う色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層間および第2電極層間、もしくは第2電極層間に配置され、これらの電極層が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定するものであることが好ましい。これにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続可能な位置関係に確実に固定することができることから、上記電極層間の接続が容易であり、接続欠陥のない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となる。
【0037】
上述した固定部材を有する色素増感型太陽電池素子モジュールとしては、例えば以下の形態のものを挙げることができる。以下、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの形態について図を用いて説明する。
【0038】
図1は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bと、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1b間に形成された少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10(図1においては3個の色素増感型太陽電池素子10)と、を有するものである。また、色素増感型太陽電池素子10は、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11、および第1電極層11上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21、および第2電極層21上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有するものである。
また、図1に示すように、本態様に用いられる固定部材4は、対向する第1電極層11および第2電極層21が接続可能な位置関係となるように、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの位置を固定するものであり、樹脂製基板1aの外側から樹脂製基板1bの外側まで貫通するように形成されているものである。なお、図1においては、電解質層3が固体電解質層である例について示している。また、図1においては、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの両方が透明樹脂製基板であり、第1電極層11および第2電極層21の両方が透明性を有する電極層である例について示している。
【0039】
また、本態様において、「隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能」である状態とは、図1に示すように、電極層間を接触させて接続させた状態、図2、図3(a)、および図4(a)に示すように、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間に導電性材料5を介在させて接続させた状態、図3(b)および図4(b)に示すように、導電性を有する固定部材4を用いることによって隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間を接続させた状態を指す。なお、図2、図3(a)および図4(a)に示すように、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層の間に導電性材料5を介在させて接続を行う場合においては、さらに固定部材4として導電性を有するものを用い、導電性材料5および導電性を有する固定部材4を併用して接続を行ってもよい。
また、導電性を有する固定部材を用いて隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間を接続させる場合は、図3および図4に示すように、固定部材4が導電性を有する外側連結固定部n’を有するものを用いる場合がある。外側連結固定部については後述するので、ここでの説明は省略する。
【0040】
さらに本態様においては、図1および図2に示すように、少なくとも一部が対向するように形成された隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよいし、図3および図4に示すように、離れて形成された色素増感型太陽電池素子10の電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよい。また、離れて形成された色素増感型太陽電池素子10の電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置する場合においては、図3に示すように、異なる樹脂製基板の表面にそれぞれ形成された電極層同士が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよいし、図4に示すように、同一の樹脂製基板の表面に形成された電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよい。
【0041】
なお、図2〜図4はいずれも、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0042】
また、図1から図3においては、いずれも、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11と樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21とが接続可能となるように、固定部材4が配置されている例について示しているが、他にも、例えば図5(a)に示すように、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11と樹脂製基板1bの表面に形成された第1電極層11とが接続可能となるように、固定部材4を配置してもよいし、また例えば図5(b)に示すように、樹脂製基板1aの表面に形成された第2電極層21と樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21とが接続可能となるように、固定部材4を配置してもよい。なお、図5は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0043】
また、図4においては、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11間、もしくは樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21間が接続可能となるように、固定部材4が配置されている例について示しているが、他にも図6に示すように、樹脂製基板1aの表面、または樹脂製基板1bの表面に形成された第1電極層11および第2電極層21間が接続可能となるように、固定部材4が配置されていてもよい。なお、図6は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図4と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
ここで、通常、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの製造時に、上記色素増感型太陽電池素子を形成する際には、形成工程を容易な工程とすることが可能であることから、同一の上記樹脂製基板上には、上記第1電極層のみ、もしくは上記第2電極層のみが形成されることが好ましい。したがって、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいても、一方の上記樹脂製基板上には上記第1電極層のみ、もしくは上記第2電極層のみを有することが好ましい。
よって、上記固定部材が、異なる樹脂製基板の表面に形成された電極層間が接続可能となるように配置される場合においては、第1電極層および第2電極層間が接続可能となるように配置されることが好ましい。また、上記固定部材が、同一樹脂製基板の表面に形成された電極層間が接続可能となるように配置される場合においては、第1電極層間または第2電極層間が接続可能となるように配置されることが好ましい。
【0045】
上記固定部材を配置する位置については、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定することが可能であれば、特に限定されず、例えば、図7に示すように、固定部材4が色素増感型太陽電池素子10の多孔質層12や、電解質層3等に接触する位置に、固定部材4を配置してもよい。なお、図7は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。また、図7において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0046】
なお、本態様においては、上記固定部材が導電性を有する場合であっても、上記色素増感型太陽電池素子の多孔質層や電解質層と接触する位置に固定部材を配置することが可能である。
ここで、一般に、色素増感型太陽電池素子においては、同一の色素増感型太陽電池素子における第1電極層および第2電極層が接触した場合に内部短絡が発生するものである。しかしながら、本態様の固定部材は、別個の色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定するものである。よって、隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、一方の色素増感型太陽電池素子の多孔質層、電解質層等が上記固定部材と接触している場合であっても、同一の色素増感型太陽電池素子内の第1電極層および第2電極層が接触しない場合には内部短絡は発生しない。
【0047】
本態様においては、なかでも、上記電解質層が存在しない領域に、上記固定部材が配置されることが好ましい。上記色素増感型太陽電池素子においては、電解質層として、ヨウ化物イオンを含有するものが用いられる場合があることから、上記固定部材および固体電解質層が接触する場合は、上記固定部材がヨウ化物イオンにより腐食されてしまうおそれがあるからである。
【0048】
また、本態様における固定部材の配置としては、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように配置することができれば、特に限定されるものではない。なかでも、上記固定部材の配置としては、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、上記固定部材により固定されている部分の厚みが上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄くなるように配置されていることが好ましい。これにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間の距離を短くすることが可能となり、上記電極層間の接続をより確実なものとすることができるからである。ここで、本態様における「上記固定部材により固定されている部分の厚み」とは、図2に示すように、固定部材4が配置された部分の樹脂製基板1aの外側表面から樹脂製基板1bの外側表面までの距離t1を指し、「上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚み」とは、図2に示すように、色素増感型太陽電池素子10が形成された部分の樹脂製基板1aの外側表面から樹脂製基板1bの外側表面までの距離u1を指すものである。
【0049】
本態様における色素増感型太陽電池素子モジュールの形態としては、上述した形態のなかでも、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子が、上記一方の樹脂製基板に形成された一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層と、上記他方の樹脂製基板に形成された他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層とが、少なくとも一部対向するように形成されているものであることが好ましい。上記形態の色素増感型太陽電池素子モジュールは、一対の樹脂製基板の位置ずれによる、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の接続不良が発生しやすいものである。よって、上記形態の色素増感型太陽電池素子モジュールに上記固定部材を配置した場合は、その効果を大きく発揮することができるからである。
【0050】
また、製造工程の容易性を考慮すると、上記の形態においては、図1や図2に示すように、一方の樹脂製基板1aの表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、上記一方の色素増感型太陽電池素子の第1電極層11が形成され、かつ、他方の樹脂製基板1bの表面には、上記他方の色素増感型太陽電池素子の第2電極層21が形成されているものであり、固定部材4は、第1電極層11および第2電極層21が接続可能となるように、一対の樹脂製基板を固定するものであることがより好ましい。さらに、本態様においては、図2に示すように、第1電極層11および第2電極層21の間に導電性材料5が介在するものであることが好ましい。上記構成とすることにより、上記第1電極層および第2電極層間をより好適に接続することが可能となるからである。
【0051】
上記の説明においては、上記固定部材が、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定するものである色素増感型太陽電池素子モジュールの態様について説明したが、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールとしては、上記以外の態様として、例えば、上記樹脂性基板の表面全体に形成された第1電極層および第2電極層上に、複数の色素増感型太陽電池素子が形成され、上記第1電極層および第2電極層によって各々の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されている態様を挙げることができる。このような態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの固定部材の配置等については、「II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明することができるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
以下、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる各構成について説明する。
【0053】
1.固定部材
本態様に用いられる固定部材は、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に配置されるものであり、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されているものである。
【0054】
このような固定部材としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に少なくとも1の固定部材が形成されているものであればよいが、好ましくは、2以上の固定部材が形成されていることが好ましい(例えば図8(b)参照)。上記固定部材を複数形成することにより、上記一対の樹脂製基板をより好適に固定することが可能であることから、長期間の使用により、上記固定部材が複数回湾曲された場合であっても、一対の樹脂製基板の位置ずれによる劣化を防止することが可能となる。
【0055】
また、本態様に用いられる固定部材は、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に配置されるものであり、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されているものであれば特に限定されないが、上記固定部材が、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定するものであることがより好ましい。上記一対の樹脂製基板の位置を、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続可能な位置関係に確実に固定することができることから、接続欠陥のない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となる。
【0056】
さらに、上記固定部材は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、少なくとも1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に設けられるものであれば、特に限定されず、任意の隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に設けることができる。本態様においては、なかでも、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、すべての隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に上記固定部材が設けられていることが好ましい。これにより、それぞれの電極層間の接続不良を抑制することができるため出力電圧の大きな色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となるからである。また、これにより、上記一対の樹脂製基板をより強固に固定することができることから、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールを耐久性に優れたものとすることが可能となる。
【0057】
また、上記固定部材は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定することができるものであれば特に限定されるものではなく、導電性を有するものであってもよいし、導電性を有さないものであってもよい。
【0058】
上記固定部材が導電性を有するものである場合は、上記固定部材の材料としては、金属を挙げることができる。また上記金属としては、剛性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、具体的には、ステンレスや、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、銀、鉛、亜鉛、チタン、クロム、タングステン、金、白金およびこれらの合金等等を挙げることができる。本態様においては上述した金属のなかでもヨウ化物イオンに対する耐腐食性の高い金属を用いることが好ましい。上記色素増感型太陽電池素子が有する電解質層にはヨウ化物イオンが含有されている場合があるため、上記固定部材に用いる金属をヨウ化物イオンに対する耐腐食性の高いものとすることにより、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの経時的な劣化を防止することが可能となるからである。
【0059】
また、上記固定部材が導電性を有さないものである場合に用いられる材料としては、樹脂、ガラス、金属酸化物等を挙げることができる。また、導電性を有する金属等の表面に絶縁膜をコーティングしたものについても、導電性を有さない固定部材として用いることが可能である。
【0060】
本態様においては、上記固定部材が導電性を有するものであることがより好ましい。上記固定部材が導電性を有するものであることにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を上記固定部材によっても接続することができることから、接続不良をより効果的に防止することができる。
【0061】
本態様の固定部材の形状としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定することができる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば図8(a)に示すように、平面状の固定部材4であってもよいし、図8(b)に示すように柱状の固定部材4であってもよいが、平面状の固定部材4であることがより好ましい。上記固定部材が平面状であることにより、上記一対の樹脂製基板をより強固に固定することが可能となり、上記一対の樹脂製基板の位置ずれをより好適に防止することが可能となる。ここで、図8は、図1に示される色素増感型太陽電池素子モジュールのA−A断面を斜め方向から観察した模式図である。なお、図8において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
上記固定部材の具体的な形状としては、板状、柱状、線状等を挙げることができる。また、上記固定部材が柱状、線状である場合は、その断面形状として矩形、円形、楕円形、多角形等の形状を挙げることができる。
【0063】
また、本態様に用いられる固定部材としては、図9に示すように、固定部材4の端部に、上記固定部材4が色素増感型太陽電池素子モジュール100から固定部材が外れてしまうことを防止するための固定部nを有していることが好ましい。上記固定部材の端部に固定部を有することにより、上記一対の樹脂製基板の位置をより好適に固定することが可能となるからである。なお、図9においては、固体部材4の両端に固定部nを有する例について示しているが、図示はしないが、上記固定部は、上記固定部材のいずれか一方の端部に設けられていてもよい。また、図9は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
上記固定部としては、図9に示すように、個々の固定部材4を固定するものであってもよいし、図3、図4、図6および図10に示すように、複数の固定部材4を一方の樹脂製基板(図3、図4、図6および図10においては樹脂製基板1b)の外側で連結させて固定する外側連結固定部n’であってもよい。
【0065】
本態様において、1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子間に形成された複数の固定部材を固定する場合においては、上記外側連結固定部を用いることが好ましい。個々の固定部材に固定部を設ける場合に比べて、容易に固定を行うことができるからである。さらに、図10に示すように、外側連結固定部n’と固定部材4とが一体で形成されている場合は、図8(b)に示される場合に比べて、1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子10間に複数の固定部材4を容易に配置することができるからである。
【0066】
また、本態様においては、上記固定部が導電性を有する外側連結固定部であり、かつ上記外側連結固定部により固定される固定部材が導電性を有するものである場合には、図3図4および図6に示すように、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の上記電極層間を固定部材4によって接続する際に、好適に用いることが可能となる。
【0067】
このような固定部としては、上記固定部材を固定し、上記色素増感型太陽電池素子モジュールから上記固定部材が外れてしまうことを防止することができるものであれば、特に限定されるものではなく、固定部材と一体で形成されているものであってもよいし、固定部材と別体で形成されているものであってもよい。また、上記固定部材としては、導電性を有するものであってもよいし、導電性を有しないものであってもよい。
【0068】
また、上記固定部の形状については、上記固定部材を上記色素増感型太陽電池素子モジュールの所定の位置に固定することができるものであれば特に限定されず、上述した固定部材の形状に合わせて適宜選択して用いることができる。
【0069】
このような固定部としては、具体的には、上記固定部材を所定の形状に折り曲げて形成したもの、上記固定部材の端部に、導電性材料もしくは絶縁性材料を別途形成したもの等を挙げることができる。
【0070】
2.樹脂製基板
次に、本態様に用いられる一対の樹脂製基板について説明する。ここで、上記樹脂製基板はフレキシブル性を有するものである。
上記フレキシブル性としては、JIS R1601のファインセラミックスの曲げ試験方法で、5KNの力をかけたときに曲がることを指す。
【0071】
ここで、色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる色素増感型太陽電池素子は、酸化物半導体電極層側または対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要がある。そのため、上記一対の樹脂製基板は少なくとも一方が透明樹脂製基板である必要がある。なお、通常は、両方の樹脂製基板に透明樹脂製基板が用いられる。
【0072】
上記透明樹脂製基板の透明性としては、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールが太陽光を受光することにより機能を発揮することができるように、太陽光を透過することができるものであれば特に限定されるものではないが、本態様においては、全光線透過率80%以上であることがより好ましい。なお、上記全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠した測定方法により測定した値である。
【0073】
上記樹脂製基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエステルナフタレートフィルム(PEN)、ポリカーボネートフィルム(PC)からなる基材を用いることができる。
【0074】
また、本態様に用いられる樹脂製基板の厚みは、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの用途等に応じて適宜選択することができるものであるが、通常、10μm〜2000μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜1800μmの範囲内であることが好ましく、さらに100μm〜1500μmの範囲内であることが好ましい。
【0075】
3.色素増感型太陽電池素子
次に本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子について説明する。本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記樹脂製基板の一方の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、上記樹脂製基板の他方の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有するものである。以下、各部材について説明する。
【0076】
(1)酸化物半導体電極層
本態様に用いられる酸化物半導体電極層は、上記樹脂製基板の一方の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有するものである。
以下、第1電極層および多孔質層についてそれぞれ説明する。
【0077】
(a)第1電極層
本態様に用いられる第1電極層について説明する。本態様に用いられる第1電極層は、一方の樹脂製基板の表面に形成されるものである。
【0078】
また、上記第1電極層としては、透明性を有する電極層であってもよいし、透明性を有さない電極層であってもよい。上述したように、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層側または上記対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要があることから、酸化物半導体電極層側から太陽光を受光する場合は上記第1電極層は透明性を有する電極層である必要がある。またこの場合、上記第1電極層を形成する樹脂製基板には透明樹脂製基板が用いられる。
【0079】
上記第1電極層が透明性を有する電極層である場合は、具体的には、透明電極層、メッシュ電極層、および透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層を挙げることができる。また、第1電極層が透明性を有さない電極層である場合は、金属層を挙げることができる。
以下、それぞれについて説明する。
【0080】
(i)透明電極層
本態様に用いられる透明電極層を構成する材料としては、透明性を有し、所定の導電性を有する材料であれば、特に限定されるものではなく、導電性高分子材料や金属酸化物等を用いることができる。
上記金属酸化物としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本態様に用いられる金属酸化物は、太陽光に対して透過性を有するものであることが好ましい。このような太陽光に対する透過性を有する金属酸化物としては、例えば、SnO2、ZnO、酸化インジウムにスズを添加した化合物(ITO)、フッ素ドープしたSnO2(以下、FTOと称する。)、酸化インジウムに酸化亜鉛を添加した化合物(IZO)を挙げることができる。
一方、上記導電性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリエチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いることもできる。
【0081】
本態様に用いられる透明電極層は、単一の層からなる構成であってもよく、また、複数の層が積層された構成であってもよい。複数の層が積層された構成としては、例えば、仕事関数が互いに異なる材料からなる層が積層された態様や、互いに異なる金属酸化物からなる層が積層された態様を挙げることができる。
【0082】
本態様に用いられる透明電極層の厚みは、通常、5nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、均質な透明電極層を形成することが困難となる場合や全光線透過率が低下して良好な光電変換効率を得ることが難しくなる場合があり、また、厚みが上記範囲よりも薄いと、透明電極層の導電性が不足する可能性があるからである。
なお、上記厚みは、透明電極層が複数の層から構成される場合には、すべての層の厚みを合計した総厚みを指すものとする。
【0083】
上記透明電極層を基材上に形成する方法としては、一般的な電極層の形成方法と同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
【0084】
(ii)メッシュ電極層
次にメッシュ電極層について説明する。本態様に用いられるメッシュ電極層は、導電性材料を用いてメッシュ状に形成された電極層である。
【0085】
上記メッシュ電極層のメッシュの形状としては、例えば、三角形の格子状、平行四辺形の格子状、六角形の格子状等を挙げることができる。
【0086】
上記メッシュ電極層の厚みとしては、0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記メッシュ電極層の厚みが上記範囲を超える場合は、上記メッシュ電極層を形成するための材料、時間等が多くかかるため、製造効率が低下したり、製造コストが高くなるからである。また、上記メッシュ電極層の厚みが上記範囲に満たない場合は、上記メッシュ電極層が電極層としての機能を十分に果たさない可能性があるからである。
【0087】
本態様に用いられるメッシュ電極層の開口部の比率としては、50%〜99.9%の範囲内であることが好ましい。上記メッシュ電極層の開口部の比率が上記範囲に満たない場合は、本態様の色素増感型太陽電池素子が第1電極層側から太陽光を十分に受光することができないため、発電効率を下げる可能性があるからである。また、上記メッシュ電極層の開口部の比率が上記範囲を超える場合は、上記メッシュ電極層が電極層としての機能を向上させることが困難となるおそれがあるからである。
【0088】
また、上記メッシュ電極層の線幅、およびメッシュ電極層の開口幅としては、用いられる色素増感型太陽電池素子の形状に合わせて適宜選択されるものであるが、上記メッシュ電極層の線幅としては、0.02μm〜10mmの範囲内、なかでも1μm〜2mmの範囲内、特に10μm〜1mmの範囲内であることが好ましく、上記メッシュ電極層の開口幅としては、1μm〜2000μmの範囲内、なかでも10μm〜1000μmの範囲内、特に100μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。
【0089】
上記メッシュ電極層の材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、具体的には、後述する「(iv)金属層」の項で説明する金属層と同様の金属等を挙げることができる。
【0090】
(iii)透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層
本態様に用いられる第1電極層としては、上述した透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層を用いることができる。上記の構成とすることにより、上記透明電極層の導電性が不足する場合に、メッシュ電極層により補充することができるため、本態様の色素増感型太陽電池素子をより発電効率に優れたものにできるという利点がある。
なお、透明電極層およびメッシュ電極層については、上述したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0091】
(iv)金属層
上述したように、本態様に用いられる第1電極層が透明性を有さない電極層である場合は、金属層を用いることができる。上記金属層としては、フレキシブル性を有するものである限り特に限定されないが、材質としては、銅、アルミニウム、チタン、クロム、タングステン、モリブデン、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、亜鉛、各種ステンレスおよびそれらの合金等が挙げられ、チタン、クロム、タングステン、各種ステンレスおよびそれらの合金が望ましい。また、金属層からなる第1電極層が用いられる場合、当該金属層の厚みとしては、フレキシブル性を有し、第1電極層上に上述した多孔質層を形成することが可能な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、5μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、20μm〜200μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0092】
(b)多孔質層
本態様に用いられる多孔質層は上述した第1電極層上に形成されるものであり、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含むものである。
【0093】
(i)金属酸化物半導体微粒子
本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子としては、半導体特性を備える金属酸化物からなるものであれば、特に限定されるものではない。本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、MgO、Al2O3、CeO2、Bi2O3、Mn3O4、Y2O3、WO3、Ta2O5、Nb2O5、La2O3等を挙げることができる。
【0094】
なかでも本態様においては、TiO2からなる金属酸化物半導体微粒子を用いることが最も好ましい。TiO2は、特に半導体特性に優れるからである。
【0095】
本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子の平均粒径としては、通常、1nm〜10μmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0096】
(ii)色素増感剤
本態様に用いられる色素増感剤としては、光を吸収して起電力を生じさせることが可能なものであれば、特に限定はされない。このような色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を挙げることができる。上記有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン、インドリン、カルバゾール系の色素が挙げられる。本態様においてはこれらの有機色素の中でも、クマリン系色素を用いることが好ましい。また、上記金属錯体色素としてはルテニウム系色素を用いることが好ましく、特にルテニウム錯体であるルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素を用いることが好ましい。このようなルテニウム錯体は吸収する光の波長範囲が広いため、光電変換できる光の波長領域を大幅に広げることができるからである。
【0097】
(iii)任意の成分
本態様に用いられる多孔質層には、上記金属酸化物半導体微粒子の他に任意の成分が含まれていてもよい。本態様に用いられる任意の成分としては、例えば、樹脂を挙げることができる。上記多孔質層に樹脂が含有されることにより、本態様に用いられる多孔質層の脆性を改善することができるからである。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カプロラクタン等を挙げることができる。
【0098】
(iv)その他
本態様に用いられる多孔質層の厚みは、通常、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0099】
本態様に用いられる多孔質層の形成方法については、一般的な色素増感型太陽電池素子を形成する際に用いられる多孔質層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0100】
(2)対極電極層
次に、本態様に用いられる対極電極層は、上記樹脂製基板の他方の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有するものである。以下、それぞれについて説明する。
【0101】
(a)第2電極層
本態様に用いられる第2電極層としては、後述する触媒層を形成することにより、色素増感型太陽電池素子の対極電極層として用いることができるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有する電極層であってもよいし、透明性を有さない電極層であってもよい。上述したように、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子においては、上記酸化物半導体電極層側または上記対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要がある。よって、上記対極電極層側から太陽光を受光する場合には、第2電極層としては透明性を有する電極層が用いられる。またこの場合、第2電極層を形成する樹脂製基板には透明樹脂製基板が用いられる。
【0102】
上記第2電極層については、上記第1電極層の項で説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
(b)触媒層
本態様に用いられる触媒層は上記第2電極層上に形成されるものである。第2電極層に触媒層が形成されていることにより、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子をより発電効率に優れたものにすることができる。このような触媒層の例としては、例えば、上記第2電極層上に白金(Pt)を蒸着した態様や、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、パラトルエンスルホン酸(PTS)およびこれらの混合物から触媒層を形成する態様を挙げることができるが、この限りではない。
【0104】
このような触媒層の厚みとしては、1nm〜10μmの範囲内、なかでも10nm〜1000nmの範囲内、特に10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0105】
(3)電解質層
次に本態様に用いられる電解質層について説明する。
本態様に用いられる電解質層は、上記多孔質層および上記触媒層の間に形成されるものであり、酸化還元対を含むものである。
【0106】
本態様における電解質層に用いられる酸化還元対としては、一般的に色素増感型太陽電池の電解質層に用いられているものであれば、特に限定されるものではない。中でも本態様に用いられる酸化還元対は、ヨウ素およびヨウ化物の組合せ、臭素および臭化物の組合せであることが好ましい。
【0107】
上記酸化還元対として本態様に用いられるヨウ素およびヨウ化物の組合せとしては、例えば、LiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物と、I2との組合せを挙げることができる。
さらに、上記臭素および臭化物の組合せとしては、例えば、LiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物と、Br2との組合せを挙げることができる。
【0108】
本態様における電解質層には、上記酸化還元対以外のその他の化合物として、架橋剤、光重合開始剤、増粘剤、常温融解塩等の添加剤を含有していてもよい。
【0109】
本態様に用いられる電解質層は、ゲル状、固体状または液体状のいずれの形態からなる電解質層であってもよいが、固体状の電解質層であることがより好ましい。上記固体状の電解質層は液漏れ等の問題が生じにくく、扱いが容易であるからである。
【0110】
(4)その他の構成
本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層、対極電極層、および電解質層を有しているものであれば特に限定されるものではなく、必要な部材を適宜追加して用いることができる。このような部材としては、図11に示すように、例えば上記電解質層として、液体状もしくはゲル状の電解質層3を用いた場合に用いられる封止のためのシール材6を挙げることができる。このようなシール材6については一般的な色素増感型太陽電池素子に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、図11は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
4.その他の部材
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上述した固定部材、樹脂製基板、および色素増感型太陽電池素子を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記以外の構成を適宜選択して用いることができる。このような構成としては、上記樹脂製基板の外側から上記固定部材を貫通させた位置に形成される貫通孔を封止するための封止部を挙げることができる。本態様においては、上記封止部を設けることにより、大気中の水分が色素増感型太陽電池素子モジュール内に浸入することを防止することが可能となる。ここで、上記色素増感型太陽電池素子モジュール内に水分が浸入した場合には、多孔質層に坦持されている色素増感剤が脱離することにより色素増感型太陽電池素子が経時的に劣化してしまう可能性が考えられる。そのため、上記封止部を形成することは好ましい。
【0112】
上記封止部としては一般的な樹脂材料を用いることにより形成することができることから、ここでの説明は省略する。
【0113】
また、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に導電性材料が配置されていることが好ましい。これにより、上記電極層間をより好適に接続することができるからである。
本態様に用いられる導電性材料については、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられるものと同様とすることができ、例えば金属ペースト、導電性高分子化合物等を挙げることができる。
【0114】
II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
次に、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの第2態様について説明する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0115】
なお、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、同一の金属層上に複数の色素増感型太陽電池素子が形成されたものであることから、各々の色素増感型太陽電池素子は並列に接続されたものである。
【0116】
本態様によれば、上記固定部材が上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されていることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記金属層および上記透明樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、耐久性に優れたものとすることができる。また、上記固定部材により上記金属層および上記透明樹脂製基板を固定することによって、内部短絡を防止することができる。
【0117】
本態様の色素増感型太陽電子素子モジュールとしては、上記金属層上に多孔質層が形成される態様(以下、Aの態様とする。)と、上記金属層上に触媒層が形成される態様(以下、Bの態様とする。)との2つの態様に分けて考えることができる。以下、各態様についてそれぞれ説明する。
【0118】
1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記透明性を有する電極層の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0119】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールについて図を用いて説明する。
図12は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。図12に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する金属層1cと、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層1eを有する透明樹脂製基板1dと、金属層1cの表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12と、透明性を有する電極層1eの表面に形成された触媒層22と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する色素増感型太陽電池素子10が、2以上(図12では、3個の色素増感型太陽電池素子10)形成されているものであり、隣り合う色素増感型太陽電池素子10間には、金属層1cの外側から透明樹脂製基板1dの外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材4が配置されているものである。なお、図12においては、電解質層3として固体電解質層が用いられている例について示している。
【0120】
上記固定部材を配置する位置としては、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように固定部材を形成することができ、かつ、上記金属層および上記透明性を有する電極層が接続しないように、隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置することができる位置であれば特に限定されるものではないが、上記固定部材が、色素増感型太陽電池素子の多孔質層および電解質層と接触しない位置であることが好ましい。上記固定部材を容易に配置することが可能であるからである。
【0121】
上記固定部材の配置としては、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側まで貫通するように形成され、かつ、上記金属層および上記透明性を有する電極層が接続しないように、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に配置することができる配置であれば特に限定されるものではない。なかでも、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、上記固定部材により固定されている部分の厚みが上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄くなるように、上記固定部材が配置されていることが好ましい。
【0122】
ここで、本態様における「上記固定部材により固定されている部分の厚み」とは、図12に示すように、固定部材4が配置された部分の金属層1cの外側表面から透明樹脂製基板1dの外側表面までの距離t2を指し、「上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚み」とは、図2に示すように、色素増感型太陽電池素子10が形成された部分の金属層1cの外側表面から透明樹脂製基板1dの外側表面までの距離u2を指すものである。
【0123】
以下、本態様に用いられる各部材について、それぞれ説明する。
【0124】
(1)固定部材
本態様に用いられる固定部材は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置されるものであり、上記金属層の外側から、上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されているものである。また、本態様における固定部材は、上記金属層および透明性を有する電極層が接続しないように、上記金属層および透明樹脂製基板を固定するものである。
【0125】
本態様に用いられる固定部材の材料としては、絶縁性を有し、かつ、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側まで貫通する固定部材を形成することができる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した導電性を有さない固定部材の材料と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0126】
また、上記固定部材の形状、個数、形成位置等についても、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成され、かつ、上記金属層および透明性を有する電極層が接続しないように上記金属層および透明樹脂製基板を固定することができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0127】
(2)金属層
本態様に用いられる金属層は、フレキシブル性を有するものである。
【0128】
本態様に用いられる金属層のフレキシブル性とは、JIS Z 2248の金属材料曲げ試験方法で、5KNの力をかけたときに曲がることを指す。
【0129】
本態様に用いられる金属層については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した第1電極層に用いられる金属層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0130】
(3)透明樹脂製基板
本態様に用いられる透明樹脂製基板は、フレキシブル性を有するものである。上記透明樹脂製基板については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した樹脂製基板に用いられる透明樹脂製基板と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
(4)多孔質層
本態様に用いられる多孔質層は、上記金属層の表面にパターン状に形成されるものである。このような多孔質層については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した多孔質層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0132】
(5)透明性を有する電極層および触媒層
本態様に用いられる透明性を有する電極層は、上記透明樹脂製基板の表面に形成されるものである。上記透明性を有する電極層については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した第1電極層に用いられる透明性を有する電極層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、2以上の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されるものであることから、上記透明性を有する電極層は、通常、上記透明樹脂製基板の表面全体に形成されるものである。
しかしながら、上記固定部材が設けられている領域は、上記金属層と短絡する可能性があることから、この部分が部分的に除去された透明性を有する電極層であってもよい。
【0133】
また、本態様に用いられる触媒層としては、上記透明性を有する電極層上に形成されているものであれば特に限定されるものではなく、上記透明性を有する電極層の表面全体に形成されていてもよいし、上記多孔質層の形状に合わせて、上記透明性を有する電極層上にパターン状に形成されていてもよいが、パターン状に形成されていることがより好ましい。本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造コストを削減することが可能となるからである。
【0134】
本態様に用いられる触媒層について詳しくは、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0135】
(6)その他の構成
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上記固定部材、金属層、透明樹脂製基板、および色素増感型太陽電池素子を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な構成を適宜選択して用いることが可能である。
【0136】
このような構成としては、上記樹脂製基板の外側から上記固定部材を貫通させた位置に形成される貫通孔を封止するための封止部を挙げることができる。なお、上記封止部については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0137】
また、本態様においては、上記金属層および透明性を有する電極層を接触させないように固定部材を配置する必要があることから、図13に示すように、固定部材4が形成されている領域の金属層1cおよび透明性を有する電極層1eの間には、絶縁層7が形成されていることが好ましい。これにより、上記金属層1cおよび透明性を有する電極層1eの間での接触を確実に防止することができるため、内部短絡の無い色素増感型太陽電池素子モジュール100とすることができる。なお、図13においては、固定部4が固定部nを有する例について示している。
【0138】
上記絶縁層としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる絶縁性材料を用いて形成することが可能である。
【0139】
また、本態様において、上記透明性を有する電極層上に触媒層がパターン状に形成されている場合は、上記透明性を有する電極層上の触媒層が形成されていない領域に配線を設けることが好ましい。上記透明性を有する電極層は、通常、上記透明樹脂製基板の表面全体に形成されるものであることから、大面積化した場合に、その抵抗が大きくなり導電性が低下するおそれがある。そこで、上記配線を設けて、上記透明性を有する電極層の導電性の低下を防止することが好ましい。
なお、上記配線については、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる配線と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0140】
2.Bの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記透明性を有する電極層の表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0141】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールについて図を用いて説明する。図14は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。図14に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する金属層1cと、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層1eを有する透明樹脂製基板1dと、透明性を有する電極層1eの表面に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12と、金属層1cの表面に形成された触媒層22と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する色素増感型太陽電池素子10が、2以上(図14では、3個の色素増感型太陽電池素子10)形成されているものであり、隣り合う色素増感型太陽電池素子10間には、金属層1cの外側から透明樹脂製基板1dの外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材4が配置されているものである。
なお、図14においては、電解質層3として、固体電解質層を用いた例について示している。
【0142】
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールとAの態様の色素増感型太陽電池素子モジュールとの違いは、金属層および透明樹脂製基板の配置の違いによる、色素増感型太陽電池素子の構成の違いである。本態様における固定部材の配置や、本態様に用いられる固定部材、金属層、透明樹脂製基板、透明性を有する電極層およびその他の構成については、「1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0143】
本態様に用いられる多孔質層は、上記透明樹脂製基板の上記透明性を有する電極層上にパターン状に形成されたものである。上記多孔質層については、上記透明性を有する電極層上に形成されていること以外については、「1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0144】
また、本態様に用いられる触媒層は、上記金属層上に形成されるものである。上記触媒層については、上記金属層上に形成されること以外については、「1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0145】
B.色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法
次に本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について説明する。
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、上述した「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で記載した第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュールを製造する製造方法(以下、第3態様とする。)と、第2態様の色素増太陽電池素子モジュールを製造する製造方法(以下、第4態様とする。)との2つの態様に分けて考えることができる。以下、各態様についてそれぞれ説明する。
【0146】
I.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程とを有することを特徴とする製造方法である。
【0147】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について、図を用いて説明する。
図15は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法の一例を示す工程図である。図15に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの間に形成された2以上の色素増感型太陽電池素子10を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11、および第1電極層11上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21、および第2電極層21上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10(図15では、3個の色素増感型太陽電池素子10)を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程(図15(a))と、固定部材4を、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11および第2電極層12間に、樹脂製基板1aの外側から樹脂製基板1bの外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程とを有する製造方法である。なお、図15(b)は、固定部材配置工程において、樹脂製基板1aの外部から固定部材4が樹脂製基板1aを貫通する過程を示すものであり、図15(c)は、樹脂製基板1aを貫通した固定部材4が、一方の色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11、および他方の色素増感型太陽電池素子10の第2電極層12を貫通し、さらに樹脂製基板1bの外側まで貫通させ、第1電極層11および第2電極層21が接触するように樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの位置を固定する過程を示すものである。
【0148】
本態様によれば、上記固定部材配置工程を有することにより、一対の樹脂製基板の間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記固定部材を設けることにより、上記電極層間が所定の位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定することが可能となることから、接続不良が少なく、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
以下、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法に用いられる各工程についてそれぞれ説明する。
【0149】
1.色素増感型太陽電池素子形成工程
本態様における色素増感型太陽電池素子形成工程は、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する工程である。
【0150】
本工程に用いられる色素増感型太陽電池素子の形成方法については一般的な色素増感型太陽電池素子を形成する際に用いられるものと同様とすることができる。上記色素増感型太陽電池素子の形成方法としては、以下のような形成方法を一例として挙げることができる。
まず、一対の樹脂製基板を準備し、一方の樹脂製基板の表面に2以上の第1電極層を形成した後、それぞれの上記第1電極層上に多孔質層を形成することにより、酸化物半導体電極層を形成する。また、他方の樹脂製基板の表面に、上記酸化物半導体電極層と同数の第2電極層を形成した後、それぞれの上記第2電極層上に触媒層を形成することにより対極電極層を形成する。次に、上記一対の樹脂製基板を、それぞれの上記多孔質層および触媒層が対向するように配置してシール材を用いて封止し、次いで液体状またはゲル状の電解質を酸化物半導体電極基板および対極基板の間に注入することによって電解質層を形成することにより色素増感型太陽電池素子を形成する。
【0151】
また、上記色素増感型太陽電池素子の形成方法としては次に例示するような形成方法を用いることも可能である。
まず、上述した色素増感型太陽電池素子の形成方法と同様にして、一方の樹脂製基板に複数の酸化物半導体電極層を形成し、他方の樹脂製基板に複数の対極電極層を形成する。次に、上記酸化物半導体電極層の多孔質層上に固体状の電解質層材料を塗布して乾燥させることにより固体電解質層を形成し、ついで、一対の上記樹脂製基板を上記固体電解質層および触媒層が対向するように接触させて配置することにより色素増感型太陽電池素子を形成する。
【0152】
本工程において、形成される色素増感型太陽電池素子の電解質層として固体電解質層を用いる場合は、Roll to Roll法を用いることにより、一対の樹脂製基板間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成してもよい。
【0153】
なお、上記に挙げた色素増感型太陽電池素子の形成方法はいずれも一例であり、本態様においては、他の一般的な色素増感型太陽電池素子の形成方法についても用いることが可能である。
【0154】
本工程において用いられる上記樹脂製基板および色素増感型太陽電池素子の各部材については、「A.色素増感太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、本工程において形成される上記色素増感型太陽電池素子についても、「A.色素増感太陽電池素子モジュール」の項で説明したので、ここでの説明は省略する。
【0155】
2.固定部材配置工程
本工程は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する工程である。
【0156】
本工程において、上記固定部材の配置等、および本工程に用いられる固定部材については、「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0157】
上記固定部材の配置方法としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置することができる配置方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記一対の樹脂製基板の外側から、上記固定部材を配置させるための貫通孔を予め設け、上記固定部材を上記貫通孔を通すことによって設ける方法であってもよいし、また例えば、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記固定部材を直接貫通させることによって設ける方法であってもよいが、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記固定部材を直接貫通させることによって設ける方法であることがより好ましい。上記固定部材を形成する工程が少なくて済み、製造効率を向上させることができるからである。
【0158】
上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記固定部材を直接貫通させることによって設ける方法としては、具体的には、針状の固定部材を用いて、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記針状の固定部材を貫通させる方法、ホッチキスを用いて上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで固定部材を貫通させる方法等を挙げることができる。
【0159】
3.その他の工程
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、上述した色素増感型太陽電池素子形成工程、および固定部材配置工程を有する製造方法であれば特に限定されず、必要な工程を適宜追加することが可能である。このような工程としては、例えば上記固定部材の貫通部分を樹脂材料等により封止する封止部を形成する封止部形成工程等を挙げることができる。また、このような工程としては、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に導電性材料を配置する導電性材料配置工程を挙げることができる。なお、上記導電性材料配置工程は、通常、色素増感型太陽電池素子形成工程と同時に行われることが好ましい。
【0160】
II.第4態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0161】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について、図を用いて説明する。図16は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を示す工程図である。図16に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する金属層1cと、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層1eを有する透明樹脂製基板1dと、金属層1cの表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12と、透明樹脂製基板1dの透明性を有する電極層1eの表面に形成された触媒層22と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する色素増感型太陽電池素子10を、2以上(図16では、3個の色素増感型太陽電池10)形成する色素増感型太陽電池素子形成工程(図16(a))と、隣り合う色素増感型太陽電池素子10間に、絶縁性を有する固定部材4を、金属層1cの外側から透明樹脂製基板1dの外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、を有するものである。なお、図16(b)では、固定部材配置工程において、固定部材4を透明樹脂製基板1dの外側から内部へと貫通させている過程を示しており、図16(c)では、固定部材4を透明樹脂製基板1dの外側から金属層の外側1cまで貫通させて配置している過程を示している。
以下、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法における各工程について説明する。
【0162】
1.色素増感型太陽電池素子形成工程
本態様における色素増感型太陽電池素子形成工程は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する工程である。
【0163】
本態様における色素増感型太陽電池素子形成工程については、金属層上に多孔質層、または触媒層を用いること以外については、「1.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法」で説明した色素増感型太陽電池素子形成工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0164】
なお、本工程に用いられる金属層、透明樹脂製基板、透明性を有する電極層、多孔質層、および触媒層については、上述した「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の「II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0165】
2.固定部材配置工程
本工程は、隣り合う色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する工程である。
【0166】
本工程に用いられる固定部材については、上述した第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0167】
また、本工程に用いられる固定部材の配置方法については、上述した「1.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法」で説明した方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0168】
3.その他の工程
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、上述した色素増感型太陽電池素子形成工程、および固定部材配置工程を有する製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜選択して追加することができる。このような工程としては、封止部形成工程を挙げることができる。上記封止部形成工程については、上述した「1.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法」で説明した工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、このような工程としては、隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を挙げることができる。なお、上記絶縁層形成工程は、通常、上記色素増感型太陽電池素子形成工程と同時に行われることが好ましい。
【0169】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0170】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0171】
[実施例1]
(酸化物半導体電極層の作製)
50mm×50mm、厚み50μmのTi箔基板(竹内金属箔工業株式会社)(第1電極層)上にエタノール中で酸化チタン粒子P25(日本エアロジル株式会社)に0.5%のエチルセルロース STD-100(日新化成工業株式会社)を混合させたペーストを塗布、乾燥させ、500℃で30分焼成して多孔質層形成用層を形成した(膜厚5μm)。その後、アセトニトリル/t−ブタノール=1/1溶媒中にN719色素(Dyesol)を0.3mM溶解させた液を調製し、この溶液中に上記Ti箔基板を20時間浸漬させて多孔質層を形成し、酸化物半導体電極層を作製した。その後、この酸化物半導体電極層を厚み100μmのプラスチック基板上に10mmの間隔をあけて2枚設置した。
【0172】
(対極電極層の作製)
厚み125μmのITO膜/PEN基板(第2電極層)上にスパッタで白金を全光線透過率65%になるように積層して触媒層を形成し、50mm×50mmにカットして対極電極層を形成した。その後、この対極電極層を厚み100μmの透明プラスチック基板上に10mmの間隔をあけて2枚設置した。
【0173】
(樹脂電解質溶液の調製)
6mol/l hexyl metyl imidazolum iodide(富山薬品)、0.6mol/l I2(メルク株式会社)、 0.45mol/l n-metyl benzoimidazol(Aldrich)をhexyl metyl imidazolum tetracyano borate(メルク株式会社)に溶解した電解液を調製した。次にSTD-100(日新化成)をエタノールに10wt%溶解させた樹脂溶液を調製し、上記電解液:樹脂溶液=1:6(重量比)で混合した樹脂電解質溶液を調製した。
【0174】
(色素増感型太陽電池素子モジュールの作製)
酸化物半導体電極層の多孔質層上に、固形膜厚100μmで樹脂電解質溶液を塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させて固体電解質層を形成した。その後、酸化物半導体電極層上の固体電解質層と対極電極層の触媒層とを対向させ、第1電極層および第2電極層を左右を10mmずらして貼り合わせ、真空ラミネーターにて熱ラミネートすることで色素増感型太陽電池素子を作製した。
その後、第1電極層と第2電極層の触媒層とが離れた状態で、ホッチキスを用いて金属製の固定部材を、1対のプラスチック基板の上下を貫通するように配置することにより、第1電極層と第2電極層とを接続させて、一対の樹脂製基板を固定した。
また両サイドの取り出し部分に関しては同様にホッチキスを使って金属製の固定部材を配置し、外部に設置した導電テープとともに接続した。
【0175】
[実施例2]
(色素増感型太陽電池モジュールの作製)
色素増感型太陽電池素子の第1電極層と第2電極層の触媒層とが接触した状態で、ホッチキスを用いて金属製の固定部材を、1対のプラスチック基板の上下を貫通するように配置することにより、第1電極層と第2電極層とを接続させて、一対の樹脂製基板を固定したこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池素子モジュールを作製した。
【0176】
[評価]
実施例1および実施例2で得られた色素増感型太陽電池素子モジュールの性能評価として、光電変換効率を測定した。なお、測定装置は分光計器CEP-2000を用い、AM1.5の条件下で測定を行った。結果を表1に示す。また、表1中のJsc(mA/cm2)は短絡電流密度、Voc(V)は解放電圧、FFは曲線因子、η(%)は光電変換効率を表すものである。
【0177】
【表1】
【0178】
固定部材を形成することにより、一対の樹脂製基板間を固定することができ、光電変換効率の高い色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に作製することができた。
【0179】
[実施例3]
(多孔質層の作製)
50mm×50mm、厚み50μmのTi箔基板(竹内金属箔工業株式会社)(金属層)上にエタノール中で酸化チタン粒子P25(日本エアロジル株式会社)に0.5%のエチルセルロース STD-100(日新化成工業株式会社)を混合させたペーストを50mm×15mmの塗布面積で10mmの間隔を空けて2箇所に塗布を行った。その後、120℃のオーブンで10分間乾燥させ、500℃で30分焼成して多孔質層形成用層を形成した(膜厚5μm)。その後、アセトニトリル/t−ブタノール=1/1溶媒中にN719色素(Dyesol)を0.3mM溶解させた液を調製し、この溶液中に上記Ti箔基板を20時間浸漬させて多孔質層を形成した。
【0180】
(触媒層の作製)
厚み125μmのITO/PEN基板(透明電極層および透明樹脂製基板)上に50mm×15mmの面積で10mmの間隔を空けて2箇所に全光線透過率65%になるように白金をスパッタ成膜することで、触媒層を形成した。
【0181】
(樹脂電解質溶液の調製)
6mol/l hexyl metyl imidazolum iodide(富山薬品)、0.6mol/l I2(メルク株式会社)、 0.45mol/l n-metyl benzoimidazol(Aldrich)をhexyl metyl imidazolum tetracyano borat(メルク株式会社)に溶解した電解液を調製した。次にSTD-100(日新化成)をエタノールに10wt%溶解させた樹脂溶液を調製し、上記電解液:樹脂溶液=1:6(重量比)で混合した樹脂電解質溶液を調製した。
【0182】
(色素増感型太陽電池素子モジュールの作製)
金属層の多孔質層上に、固形膜厚5μmで樹脂電解質溶液を塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させて固体電解質層を形成した。その後、金属層の固体電解質層と透明樹脂製基板の触媒層とを対向させて貼り合わせて色素増感型太陽電池素子とし、両サイドの取り出し部分はホッチキスを使って金属製の固定部材を配置し、外部に設置した導電テープとともに接続した。その後、モジュールの上下を熱過疎性の透明樹脂フィルムを用いて覆い、真空ラミネーターにて熱ラミネートした。その後、隣り合う色素増感型太陽電池素子間にホッチキスを用いて樹脂製の固定部材を配置して、透明樹脂製基板上の透明電極層と金属層とが接触しないように固定して、色素増感型太陽電池素子モジュールを得た。
【0183】
[実施例4]
以下に示すように、透明樹脂製基板上の透明電極層上に触媒層および配線を形成したこと以外は、実施例3と同様にして、色素増感型太陽電池素子モジュールを得た。
厚み125μmのITO/PEN基板(透明電極層および透明樹脂製基板)上に50mm×15mmの面積で10mmの間隔を空けて2箇所に全光線透過率65%になるように白金をスパッタ成膜して触媒層を形成した。また、触媒層が形成されていない箇所にAg膜を50mm×8mmの面積でスクリーン印刷により形成して、2つの触媒層間に配線を形成した。
【0184】
実施例3および実施例4で得られた色素増感型太陽電池素子モジュールの性能評価として、光電変換効率を測定した。なお、測定方法については、実施例1および実施例2と同様の測定方法を用いた。結果を表2に示す。
【0185】
【表2】
【0186】
固定部材を用いることにより、金属層および樹脂製基板間を固定することができ、光電変換効率の高い色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することができた。
【符号の説明】
【0187】
1a、1b … 樹脂製基板
1c … 透明樹脂製基板
1d … 金属層
1e … 透明性を有する電極層
11 … 第1電極層
12 … 多孔質層
21 … 第2電極層
22 … 触媒層
3 … 電解質層
4 … 固定部材
n … 固定部
n’ … 外側連結固定部
10 … 色素増感型太陽電池素子
100 … 色素増感型太陽電池素子モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基材の位置ずれを防止し、接続不良もしくは内部短絡を生じにくい高品質な色素増感型太陽電池素子モジュール、および上記色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能な色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の増加が原因とされる地球温暖化等の環境問題が深刻となり、世界的にその対策が進められている。中でも環境に対する負荷が小さく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池に関する積極的な研究開発が進められている。このような太陽電池としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、および化合物半導体太陽電池などが既に実用化されているが、これらの太陽電池は製造コストが高い等の問題がある。そこで、環境負荷が小さく、かつ製造コストを削減できる太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目され研究開発が進められている。
【0003】
また、上記色素増感型太陽電池においては、実用化するためには、より大きな出力電圧が必要であることから、複数の色素増感型太陽電池素子を接続して色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが試みられている。
【0004】
このような色素増感型太陽電池素子モジュールの形成方法としては、例えば個々の色素増感型太陽電池素子を作製した後、それぞれを配線を用いて接続させることにより色素増感型太陽電池素子モジュールとする方法を挙げることができる。しかしながら、上記の方法では、個々の色素増感型太陽電池素子をそれぞれ配線させる必要があることから、形成工程が煩雑であるといった問題があった。
【0005】
そこで、2枚の基材の間に複数個の色素増感型太陽電池素子を形成し、一対の基材の内部でそれぞれの色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続する方法が試みられている。このような方法としては、例えば、各々の色素増感型太陽電池素子に用いられる酸化物半導体電極層、電解質層、および対極電極層の形成位置を少しずつずらして形成することにより、隣り合う色素増感型太陽電池素子のそれぞれの電極層を対向させ、対向する電極層の間に金属ペーストを配置して、色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続させる方法を挙げることができる。
【0006】
ここで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、従来、上記基材としてガラス基板が用いられているが、近年、色素増感型太陽電池モジュールについてはフレキシブル化が望まれているところ、基材としてフレキシブルな基板を用いることが検討されている。しかしながら、上記色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる基材として上記フレキシブル性を有する基板を用い、上述した金属ペーストを配置する方法により各々の色素増感型太陽電池素子を接続させた場合は、上記基板が湾曲することから、上記基板の位置ずれが発生し、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の距離が変化する場合があるため、金属ペーストと電極層とが離れて接続不良を起こす可能性があるといった問題があった。
【0007】
上記の問題に対して、特許文献1では、図17に示す構成の色素増感型太陽電池素子モジュールが提案されている。図17に示すように、特許文献1において提案されている色素増感型太陽電池素子モジュール100は、ガラス基板101aと樹脂製基板101bと、ガラス基板101aおよび樹脂製基板101bの間に形成された複数の色素増感型太陽電池素子110を有するものである。また、色素増感型太陽電池素子110は、ガラス基板101aの表面に形成された第1電極層111、および第1電極層111上に形成され、色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層112を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板101bの表面に形成された第2電極層121、および第2電極層121上に形成された触媒層122を有する対極電極層と、上記多孔質層112および上記触媒層122の間に設けられた電解質層103とを有するものである。また、色素増感型太陽電池素子モジュール100の端部に形成される色素増感型太陽電池素子110は封止部材106を有するものである。
特許文献1に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール100においては、樹脂製基板101bの外側に、複数の凸部が設けられた押圧板150を配置することにより、隣り合う色素増感型太陽電池素子110の第1電極層111および第2電極層121を接触させるものである。また、ガラス基板101aおよび押圧板150は、色素増感型太陽電池素子モジュール100の端部に設けられた固定枠160によって固定されているものである。
【0008】
しかしながら、上記の構成を有する色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、上記押圧板により、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に圧力をかけて接触させることはできるものの、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの端部に配置された固定枠のみで上記ガラス基板および押圧板を固定するものであることから、上記色素増感型太陽電池素子モジュールのガラス基板および樹脂製基板の位置を、所定の位置関係に十分に保つことは困難であり、上記一対の基材の位置ずれによる接続不良を十分に防止することが困難であるといった問題があった。
【0009】
ところで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材としては、金属箔等のフレキシブル性を有する金属層を用いることも検討されている。上記金属層を色素増感型太陽電池素子モジュールの基材として用いる場合は、上記金属層を上記色素増感型太陽電池素子の電極層としても用いることが可能である。上記金属層を上記電極層として用いた場合は、色素増感型太陽電池素子をフレキシブルかつ大面積化した場合にも集電が良好であるといった利点や、上記色素増感型太陽電池素子の形成の際に高温での焼成が可能となるといった利点を有する。
【0010】
このような金属層は、同一の金属層上に複数の色素増感型太陽電池素子が形成され、上記金属層によって、各々の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されている色素増感型太陽電池素子モジュールの基材として好適に用いることができる。
しかしながら、上記金属層を上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材として用いた場合は、上記金属層が湾曲することにより、同一の色素増感型太陽電池素子の電極層間が接触して、内部短絡が発生してしまうといった問題があった。
【0011】
なお、上記内部短絡の発生は、上記金属層を有する色素増感型太陽電池素子モジュールに限らず、同一の電極層上に複数の色素増感型太陽電池素子が形成され、上記電極層によって各々の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されている色素増感型太陽電池素子モジュールにおいても起こり得る問題である。
【0012】
そこで、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材にフレキシブル性を有する樹脂製基板を用いた場合には、上記基板の位置ずれを防止し、各々の色素増感型太陽電池素子の電極層間を接続不良を発生させずに容易に接続させる方法が求められている。
また、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの基材にフレキシブル性を有する金属層を用いた場合には、内部短絡の発生を防止する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−299545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、一対の基材の位置ずれを防止し、接続不良もしくは内部短絡を生じにくい高品質な色素増感型太陽電池素子モジュール、および上記色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能な色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールを提供する。
【0016】
本発明によれば、上記固定部材が、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側までを貫通するように形成され、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置されることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記一対の樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。
【0017】
本発明においては、上記色素増感型太陽電池素子は、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有し、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子は、上記一方の樹脂製基板に形成された一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層と、上記他方の樹脂製基板に形成された他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層とが、少なくとも一部対向するように形成されているものであり、上記固定部材は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に形成され、これら電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることが好ましい。上記一対の樹脂製基板の位置を、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続可能な位置関係に確実に固定することができることから、上記電極層間の接続が容易であり、接続欠陥のない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能である。
【0018】
また本発明においては、上記一方の樹脂製基板の表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層が形成され、かつ、上記他方の樹脂製基板の表面には、上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層が形成されており、上記固定部材は、上記一方の色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層および上記他方の色素増感型太陽電池素子の上記第2電極層が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることが好ましい。上記色素増感型太陽電池素子モジュールを上記構成とすることにより、直列構造の色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
【0019】
本発明においては、上記固定部材が導電性を有するものであることが好ましい。上記固定部材が導電性を有するものであることにより、上記固定部材を用いて上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続することが可能となる。
【0020】
本発明は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールを提供する。
【0021】
本発明によれば、上記固定部材が上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されていることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記金属層および上記透明樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、耐久性に優れたものとすることができる。また、上記固定部材により上記金属層および上記透明樹脂製基板を固定することによって、内部短絡を防止することができる。
【0022】
本発明においては、上記固定部材により固定されている部分の厚みが、上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄いことが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールが上記構成となるように、上記固定部材を配置することにより、上記一対の樹脂製基板間、もしくは上記金属層および透明樹脂製基板間の距離を短くすることが可能となり、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間の接続をより確実なものとすることができるからである。
【0023】
本発明は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、上記一対の樹脂製基板の間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記固定部材を設ける上記固定部材配置工程を有することにより、上記電極層間が所定の位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定することが可能となることから、接続不良が少なく、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
【0025】
本発明は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を提供する。
【0026】
本発明によれば、上記固定部材配置工程を有することにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に上記固定部材を配置することが可能であることから、内部短絡の発生を防止し、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上記固定部材を有することにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記一対の基材を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、上記一対の基材の位置ずれによる劣化を防止することができ、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。また、本発明によれば、上記固定部材を有することにより、上記一対の基材を所定の位置関係に長期間保持することが可能となることから、色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の接続不良、もしくは、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの内部短絡の発生等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す模式図である。
【図9】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図13】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図14】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。
【図15】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法の一例を示す工程図である。
【図16】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法の他の一例を示す工程図である。
【図17】色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュール、および本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールを製造する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について詳細に説明する。
【0030】
A.色素増感型太陽電池素子モジュール
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールは、一対の基材として、フレキシブル性を有する基板を用いたものであり、一方の基材の外側から他方の基材の外側まで貫通する固定部材を形成することによって、上記一対の基材を所定の位置関係で固定することを特徴とするものである。このような色素増感型太陽電池素子モジュールとしては、上記一対の基材が一対の樹脂製基板である態様(以下、第1態様とする。)と、上記一対の基材が金属層および透明樹脂製基板である態様(以下、第2態様とする。)との2つの態様を挙げることができる。以下、各態様について説明する。
【0031】
I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの第1態様について説明する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0032】
ここで、上記色素増感型太陽電池素子は、上記一方の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、上記他方の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有するものである。
なお、以下の説明においては、第1電極層または第2電極層をまとめて説明する場合には、単に電極層と称する場合がある。
【0033】
またここで、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層側または対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要があることから、本態様においては、上記一対の樹脂製基板のうち少なくとも一方は透明樹脂製基板であり、かつ、上記透明樹脂製基板上に形成される電極層は透明性を有する電極層であるものとする。
【0034】
本態様によれば、上記固定部材が、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側までを貫通するように形成され、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置されていることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記一対の樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、上記一対の樹脂製基板の位置ずれによる劣化を防止することができるので、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールとすることができる。
【0035】
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上述した固定部材を有することに大きな特徴を有するものである。また、上記固定部材としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置され、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように形成されているものであれば特に限定されるものではない。
【0036】
本態様においては、なかでも、上記固定部材が、隣り合う色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層間および第2電極層間、もしくは第2電極層間に配置され、これらの電極層が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定するものであることが好ましい。これにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続可能な位置関係に確実に固定することができることから、上記電極層間の接続が容易であり、接続欠陥のない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となる。
【0037】
上述した固定部材を有する色素増感型太陽電池素子モジュールとしては、例えば以下の形態のものを挙げることができる。以下、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの形態について図を用いて説明する。
【0038】
図1は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bと、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1b間に形成された少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10(図1においては3個の色素増感型太陽電池素子10)と、を有するものである。また、色素増感型太陽電池素子10は、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11、および第1電極層11上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21、および第2電極層21上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有するものである。
また、図1に示すように、本態様に用いられる固定部材4は、対向する第1電極層11および第2電極層21が接続可能な位置関係となるように、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの位置を固定するものであり、樹脂製基板1aの外側から樹脂製基板1bの外側まで貫通するように形成されているものである。なお、図1においては、電解質層3が固体電解質層である例について示している。また、図1においては、樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの両方が透明樹脂製基板であり、第1電極層11および第2電極層21の両方が透明性を有する電極層である例について示している。
【0039】
また、本態様において、「隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能」である状態とは、図1に示すように、電極層間を接触させて接続させた状態、図2、図3(a)、および図4(a)に示すように、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間に導電性材料5を介在させて接続させた状態、図3(b)および図4(b)に示すように、導電性を有する固定部材4を用いることによって隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間を接続させた状態を指す。なお、図2、図3(a)および図4(a)に示すように、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層の間に導電性材料5を介在させて接続を行う場合においては、さらに固定部材4として導電性を有するものを用い、導電性材料5および導電性を有する固定部材4を併用して接続を行ってもよい。
また、導電性を有する固定部材を用いて隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間を接続させる場合は、図3および図4に示すように、固定部材4が導電性を有する外側連結固定部n’を有するものを用いる場合がある。外側連結固定部については後述するので、ここでの説明は省略する。
【0040】
さらに本態様においては、図1および図2に示すように、少なくとも一部が対向するように形成された隣り合う色素増感型太陽電池素子10の電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよいし、図3および図4に示すように、離れて形成された色素増感型太陽電池素子10の電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよい。また、離れて形成された色素増感型太陽電池素子10の電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置する場合においては、図3に示すように、異なる樹脂製基板の表面にそれぞれ形成された電極層同士が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよいし、図4に示すように、同一の樹脂製基板の表面に形成された電極層間が接続可能となるように、固定部材4を配置してもよい。
【0041】
なお、図2〜図4はいずれも、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0042】
また、図1から図3においては、いずれも、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11と樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21とが接続可能となるように、固定部材4が配置されている例について示しているが、他にも、例えば図5(a)に示すように、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11と樹脂製基板1bの表面に形成された第1電極層11とが接続可能となるように、固定部材4を配置してもよいし、また例えば図5(b)に示すように、樹脂製基板1aの表面に形成された第2電極層21と樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21とが接続可能となるように、固定部材4を配置してもよい。なお、図5は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0043】
また、図4においては、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11間、もしくは樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21間が接続可能となるように、固定部材4が配置されている例について示しているが、他にも図6に示すように、樹脂製基板1aの表面、または樹脂製基板1bの表面に形成された第1電極層11および第2電極層21間が接続可能となるように、固定部材4が配置されていてもよい。なお、図6は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図4と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
ここで、通常、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの製造時に、上記色素増感型太陽電池素子を形成する際には、形成工程を容易な工程とすることが可能であることから、同一の上記樹脂製基板上には、上記第1電極層のみ、もしくは上記第2電極層のみが形成されることが好ましい。したがって、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいても、一方の上記樹脂製基板上には上記第1電極層のみ、もしくは上記第2電極層のみを有することが好ましい。
よって、上記固定部材が、異なる樹脂製基板の表面に形成された電極層間が接続可能となるように配置される場合においては、第1電極層および第2電極層間が接続可能となるように配置されることが好ましい。また、上記固定部材が、同一樹脂製基板の表面に形成された電極層間が接続可能となるように配置される場合においては、第1電極層間または第2電極層間が接続可能となるように配置されることが好ましい。
【0045】
上記固定部材を配置する位置については、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定することが可能であれば、特に限定されず、例えば、図7に示すように、固定部材4が色素増感型太陽電池素子10の多孔質層12や、電解質層3等に接触する位置に、固定部材4を配置してもよい。なお、図7は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図である。また、図7において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0046】
なお、本態様においては、上記固定部材が導電性を有する場合であっても、上記色素増感型太陽電池素子の多孔質層や電解質層と接触する位置に固定部材を配置することが可能である。
ここで、一般に、色素増感型太陽電池素子においては、同一の色素増感型太陽電池素子における第1電極層および第2電極層が接触した場合に内部短絡が発生するものである。しかしながら、本態様の固定部材は、別個の色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定するものである。よって、隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、一方の色素増感型太陽電池素子の多孔質層、電解質層等が上記固定部材と接触している場合であっても、同一の色素増感型太陽電池素子内の第1電極層および第2電極層が接触しない場合には内部短絡は発生しない。
【0047】
本態様においては、なかでも、上記電解質層が存在しない領域に、上記固定部材が配置されることが好ましい。上記色素増感型太陽電池素子においては、電解質層として、ヨウ化物イオンを含有するものが用いられる場合があることから、上記固定部材および固体電解質層が接触する場合は、上記固定部材がヨウ化物イオンにより腐食されてしまうおそれがあるからである。
【0048】
また、本態様における固定部材の配置としては、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通するように配置することができれば、特に限定されるものではない。なかでも、上記固定部材の配置としては、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、上記固定部材により固定されている部分の厚みが上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄くなるように配置されていることが好ましい。これにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間の距離を短くすることが可能となり、上記電極層間の接続をより確実なものとすることができるからである。ここで、本態様における「上記固定部材により固定されている部分の厚み」とは、図2に示すように、固定部材4が配置された部分の樹脂製基板1aの外側表面から樹脂製基板1bの外側表面までの距離t1を指し、「上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚み」とは、図2に示すように、色素増感型太陽電池素子10が形成された部分の樹脂製基板1aの外側表面から樹脂製基板1bの外側表面までの距離u1を指すものである。
【0049】
本態様における色素増感型太陽電池素子モジュールの形態としては、上述した形態のなかでも、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子が、上記一方の樹脂製基板に形成された一方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層と、上記他方の樹脂製基板に形成された他方の上記色素増感型太陽電池素子の上記第1電極層または上記第2電極層とが、少なくとも一部対向するように形成されているものであることが好ましい。上記形態の色素増感型太陽電池素子モジュールは、一対の樹脂製基板の位置ずれによる、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間の接続不良が発生しやすいものである。よって、上記形態の色素増感型太陽電池素子モジュールに上記固定部材を配置した場合は、その効果を大きく発揮することができるからである。
【0050】
また、製造工程の容易性を考慮すると、上記の形態においては、図1や図2に示すように、一方の樹脂製基板1aの表面には、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、上記一方の色素増感型太陽電池素子の第1電極層11が形成され、かつ、他方の樹脂製基板1bの表面には、上記他方の色素増感型太陽電池素子の第2電極層21が形成されているものであり、固定部材4は、第1電極層11および第2電極層21が接続可能となるように、一対の樹脂製基板を固定するものであることがより好ましい。さらに、本態様においては、図2に示すように、第1電極層11および第2電極層21の間に導電性材料5が介在するものであることが好ましい。上記構成とすることにより、上記第1電極層および第2電極層間をより好適に接続することが可能となるからである。
【0051】
上記の説明においては、上記固定部材が、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定するものである色素増感型太陽電池素子モジュールの態様について説明したが、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールとしては、上記以外の態様として、例えば、上記樹脂性基板の表面全体に形成された第1電極層および第2電極層上に、複数の色素増感型太陽電池素子が形成され、上記第1電極層および第2電極層によって各々の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されている態様を挙げることができる。このような態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの固定部材の配置等については、「II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明することができるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
以下、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる各構成について説明する。
【0053】
1.固定部材
本態様に用いられる固定部材は、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に配置されるものであり、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されているものである。
【0054】
このような固定部材としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に少なくとも1の固定部材が形成されているものであればよいが、好ましくは、2以上の固定部材が形成されていることが好ましい(例えば図8(b)参照)。上記固定部材を複数形成することにより、上記一対の樹脂製基板をより好適に固定することが可能であることから、長期間の使用により、上記固定部材が複数回湾曲された場合であっても、一対の樹脂製基板の位置ずれによる劣化を防止することが可能となる。
【0055】
また、本態様に用いられる固定部材は、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に配置されるものであり、一方の上記樹脂製基板の外側から他方の上記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されているものであれば特に限定されないが、上記固定部材が、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定するものであることがより好ましい。上記一対の樹脂製基板の位置を、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を接続可能な位置関係に確実に固定することができることから、接続欠陥のない色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となる。
【0056】
さらに、上記固定部材は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、少なくとも1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に設けられるものであれば、特に限定されず、任意の隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に設けることができる。本態様においては、なかでも、上記色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、すべての隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に上記固定部材が設けられていることが好ましい。これにより、それぞれの電極層間の接続不良を抑制することができるため出力電圧の大きな色素増感型太陽電池素子モジュールとすることが可能となるからである。また、これにより、上記一対の樹脂製基板をより強固に固定することができることから、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールを耐久性に優れたものとすることが可能となる。
【0057】
また、上記固定部材は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定することができるものであれば特に限定されるものではなく、導電性を有するものであってもよいし、導電性を有さないものであってもよい。
【0058】
上記固定部材が導電性を有するものである場合は、上記固定部材の材料としては、金属を挙げることができる。また上記金属としては、剛性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、具体的には、ステンレスや、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、銀、鉛、亜鉛、チタン、クロム、タングステン、金、白金およびこれらの合金等等を挙げることができる。本態様においては上述した金属のなかでもヨウ化物イオンに対する耐腐食性の高い金属を用いることが好ましい。上記色素増感型太陽電池素子が有する電解質層にはヨウ化物イオンが含有されている場合があるため、上記固定部材に用いる金属をヨウ化物イオンに対する耐腐食性の高いものとすることにより、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの経時的な劣化を防止することが可能となるからである。
【0059】
また、上記固定部材が導電性を有さないものである場合に用いられる材料としては、樹脂、ガラス、金属酸化物等を挙げることができる。また、導電性を有する金属等の表面に絶縁膜をコーティングしたものについても、導電性を有さない固定部材として用いることが可能である。
【0060】
本態様においては、上記固定部材が導電性を有するものであることがより好ましい。上記固定部材が導電性を有するものであることにより、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間を上記固定部材によっても接続することができることから、接続不良をより効果的に防止することができる。
【0061】
本態様の固定部材の形状としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間が接続可能な位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板の位置を固定することができる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば図8(a)に示すように、平面状の固定部材4であってもよいし、図8(b)に示すように柱状の固定部材4であってもよいが、平面状の固定部材4であることがより好ましい。上記固定部材が平面状であることにより、上記一対の樹脂製基板をより強固に固定することが可能となり、上記一対の樹脂製基板の位置ずれをより好適に防止することが可能となる。ここで、図8は、図1に示される色素増感型太陽電池素子モジュールのA−A断面を斜め方向から観察した模式図である。なお、図8において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
上記固定部材の具体的な形状としては、板状、柱状、線状等を挙げることができる。また、上記固定部材が柱状、線状である場合は、その断面形状として矩形、円形、楕円形、多角形等の形状を挙げることができる。
【0063】
また、本態様に用いられる固定部材としては、図9に示すように、固定部材4の端部に、上記固定部材4が色素増感型太陽電池素子モジュール100から固定部材が外れてしまうことを防止するための固定部nを有していることが好ましい。上記固定部材の端部に固定部を有することにより、上記一対の樹脂製基板の位置をより好適に固定することが可能となるからである。なお、図9においては、固体部材4の両端に固定部nを有する例について示しているが、図示はしないが、上記固定部は、上記固定部材のいずれか一方の端部に設けられていてもよい。また、図9は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
上記固定部としては、図9に示すように、個々の固定部材4を固定するものであってもよいし、図3、図4、図6および図10に示すように、複数の固定部材4を一方の樹脂製基板(図3、図4、図6および図10においては樹脂製基板1b)の外側で連結させて固定する外側連結固定部n’であってもよい。
【0065】
本態様において、1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子間に形成された複数の固定部材を固定する場合においては、上記外側連結固定部を用いることが好ましい。個々の固定部材に固定部を設ける場合に比べて、容易に固定を行うことができるからである。さらに、図10に示すように、外側連結固定部n’と固定部材4とが一体で形成されている場合は、図8(b)に示される場合に比べて、1組の隣り合う色素増感型太陽電池素子10間に複数の固定部材4を容易に配置することができるからである。
【0066】
また、本態様においては、上記固定部が導電性を有する外側連結固定部であり、かつ上記外側連結固定部により固定される固定部材が導電性を有するものである場合には、図3図4および図6に示すように、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の上記電極層間を固定部材4によって接続する際に、好適に用いることが可能となる。
【0067】
このような固定部としては、上記固定部材を固定し、上記色素増感型太陽電池素子モジュールから上記固定部材が外れてしまうことを防止することができるものであれば、特に限定されるものではなく、固定部材と一体で形成されているものであってもよいし、固定部材と別体で形成されているものであってもよい。また、上記固定部材としては、導電性を有するものであってもよいし、導電性を有しないものであってもよい。
【0068】
また、上記固定部の形状については、上記固定部材を上記色素増感型太陽電池素子モジュールの所定の位置に固定することができるものであれば特に限定されず、上述した固定部材の形状に合わせて適宜選択して用いることができる。
【0069】
このような固定部としては、具体的には、上記固定部材を所定の形状に折り曲げて形成したもの、上記固定部材の端部に、導電性材料もしくは絶縁性材料を別途形成したもの等を挙げることができる。
【0070】
2.樹脂製基板
次に、本態様に用いられる一対の樹脂製基板について説明する。ここで、上記樹脂製基板はフレキシブル性を有するものである。
上記フレキシブル性としては、JIS R1601のファインセラミックスの曲げ試験方法で、5KNの力をかけたときに曲がることを指す。
【0071】
ここで、色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる色素増感型太陽電池素子は、酸化物半導体電極層側または対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要がある。そのため、上記一対の樹脂製基板は少なくとも一方が透明樹脂製基板である必要がある。なお、通常は、両方の樹脂製基板に透明樹脂製基板が用いられる。
【0072】
上記透明樹脂製基板の透明性としては、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールが太陽光を受光することにより機能を発揮することができるように、太陽光を透過することができるものであれば特に限定されるものではないが、本態様においては、全光線透過率80%以上であることがより好ましい。なお、上記全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠した測定方法により測定した値である。
【0073】
上記樹脂製基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエステルナフタレートフィルム(PEN)、ポリカーボネートフィルム(PC)からなる基材を用いることができる。
【0074】
また、本態様に用いられる樹脂製基板の厚みは、上記色素増感型太陽電池素子モジュールの用途等に応じて適宜選択することができるものであるが、通常、10μm〜2000μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜1800μmの範囲内であることが好ましく、さらに100μm〜1500μmの範囲内であることが好ましい。
【0075】
3.色素増感型太陽電池素子
次に本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子について説明する。本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記樹脂製基板の一方の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、上記樹脂製基板の他方の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有するものである。以下、各部材について説明する。
【0076】
(1)酸化物半導体電極層
本態様に用いられる酸化物半導体電極層は、上記樹脂製基板の一方の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有するものである。
以下、第1電極層および多孔質層についてそれぞれ説明する。
【0077】
(a)第1電極層
本態様に用いられる第1電極層について説明する。本態様に用いられる第1電極層は、一方の樹脂製基板の表面に形成されるものである。
【0078】
また、上記第1電極層としては、透明性を有する電極層であってもよいし、透明性を有さない電極層であってもよい。上述したように、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層側または上記対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要があることから、酸化物半導体電極層側から太陽光を受光する場合は上記第1電極層は透明性を有する電極層である必要がある。またこの場合、上記第1電極層を形成する樹脂製基板には透明樹脂製基板が用いられる。
【0079】
上記第1電極層が透明性を有する電極層である場合は、具体的には、透明電極層、メッシュ電極層、および透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層を挙げることができる。また、第1電極層が透明性を有さない電極層である場合は、金属層を挙げることができる。
以下、それぞれについて説明する。
【0080】
(i)透明電極層
本態様に用いられる透明電極層を構成する材料としては、透明性を有し、所定の導電性を有する材料であれば、特に限定されるものではなく、導電性高分子材料や金属酸化物等を用いることができる。
上記金属酸化物としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本態様に用いられる金属酸化物は、太陽光に対して透過性を有するものであることが好ましい。このような太陽光に対する透過性を有する金属酸化物としては、例えば、SnO2、ZnO、酸化インジウムにスズを添加した化合物(ITO)、フッ素ドープしたSnO2(以下、FTOと称する。)、酸化インジウムに酸化亜鉛を添加した化合物(IZO)を挙げることができる。
一方、上記導電性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリエチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いることもできる。
【0081】
本態様に用いられる透明電極層は、単一の層からなる構成であってもよく、また、複数の層が積層された構成であってもよい。複数の層が積層された構成としては、例えば、仕事関数が互いに異なる材料からなる層が積層された態様や、互いに異なる金属酸化物からなる層が積層された態様を挙げることができる。
【0082】
本態様に用いられる透明電極層の厚みは、通常、5nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、均質な透明電極層を形成することが困難となる場合や全光線透過率が低下して良好な光電変換効率を得ることが難しくなる場合があり、また、厚みが上記範囲よりも薄いと、透明電極層の導電性が不足する可能性があるからである。
なお、上記厚みは、透明電極層が複数の層から構成される場合には、すべての層の厚みを合計した総厚みを指すものとする。
【0083】
上記透明電極層を基材上に形成する方法としては、一般的な電極層の形成方法と同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
【0084】
(ii)メッシュ電極層
次にメッシュ電極層について説明する。本態様に用いられるメッシュ電極層は、導電性材料を用いてメッシュ状に形成された電極層である。
【0085】
上記メッシュ電極層のメッシュの形状としては、例えば、三角形の格子状、平行四辺形の格子状、六角形の格子状等を挙げることができる。
【0086】
上記メッシュ電極層の厚みとしては、0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記メッシュ電極層の厚みが上記範囲を超える場合は、上記メッシュ電極層を形成するための材料、時間等が多くかかるため、製造効率が低下したり、製造コストが高くなるからである。また、上記メッシュ電極層の厚みが上記範囲に満たない場合は、上記メッシュ電極層が電極層としての機能を十分に果たさない可能性があるからである。
【0087】
本態様に用いられるメッシュ電極層の開口部の比率としては、50%〜99.9%の範囲内であることが好ましい。上記メッシュ電極層の開口部の比率が上記範囲に満たない場合は、本態様の色素増感型太陽電池素子が第1電極層側から太陽光を十分に受光することができないため、発電効率を下げる可能性があるからである。また、上記メッシュ電極層の開口部の比率が上記範囲を超える場合は、上記メッシュ電極層が電極層としての機能を向上させることが困難となるおそれがあるからである。
【0088】
また、上記メッシュ電極層の線幅、およびメッシュ電極層の開口幅としては、用いられる色素増感型太陽電池素子の形状に合わせて適宜選択されるものであるが、上記メッシュ電極層の線幅としては、0.02μm〜10mmの範囲内、なかでも1μm〜2mmの範囲内、特に10μm〜1mmの範囲内であることが好ましく、上記メッシュ電極層の開口幅としては、1μm〜2000μmの範囲内、なかでも10μm〜1000μmの範囲内、特に100μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。
【0089】
上記メッシュ電極層の材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、具体的には、後述する「(iv)金属層」の項で説明する金属層と同様の金属等を挙げることができる。
【0090】
(iii)透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層
本態様に用いられる第1電極層としては、上述した透明電極層およびメッシュ電極層を有する電極層を用いることができる。上記の構成とすることにより、上記透明電極層の導電性が不足する場合に、メッシュ電極層により補充することができるため、本態様の色素増感型太陽電池素子をより発電効率に優れたものにできるという利点がある。
なお、透明電極層およびメッシュ電極層については、上述したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0091】
(iv)金属層
上述したように、本態様に用いられる第1電極層が透明性を有さない電極層である場合は、金属層を用いることができる。上記金属層としては、フレキシブル性を有するものである限り特に限定されないが、材質としては、銅、アルミニウム、チタン、クロム、タングステン、モリブデン、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、亜鉛、各種ステンレスおよびそれらの合金等が挙げられ、チタン、クロム、タングステン、各種ステンレスおよびそれらの合金が望ましい。また、金属層からなる第1電極層が用いられる場合、当該金属層の厚みとしては、フレキシブル性を有し、第1電極層上に上述した多孔質層を形成することが可能な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、5μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、20μm〜200μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0092】
(b)多孔質層
本態様に用いられる多孔質層は上述した第1電極層上に形成されるものであり、色素増感剤が表面に坦持された金属酸化物半導体微粒子を含むものである。
【0093】
(i)金属酸化物半導体微粒子
本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子としては、半導体特性を備える金属酸化物からなるものであれば、特に限定されるものではない。本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、MgO、Al2O3、CeO2、Bi2O3、Mn3O4、Y2O3、WO3、Ta2O5、Nb2O5、La2O3等を挙げることができる。
【0094】
なかでも本態様においては、TiO2からなる金属酸化物半導体微粒子を用いることが最も好ましい。TiO2は、特に半導体特性に優れるからである。
【0095】
本態様に用いられる金属酸化物半導体微粒子の平均粒径としては、通常、1nm〜10μmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0096】
(ii)色素増感剤
本態様に用いられる色素増感剤としては、光を吸収して起電力を生じさせることが可能なものであれば、特に限定はされない。このような色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を挙げることができる。上記有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン、インドリン、カルバゾール系の色素が挙げられる。本態様においてはこれらの有機色素の中でも、クマリン系色素を用いることが好ましい。また、上記金属錯体色素としてはルテニウム系色素を用いることが好ましく、特にルテニウム錯体であるルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素を用いることが好ましい。このようなルテニウム錯体は吸収する光の波長範囲が広いため、光電変換できる光の波長領域を大幅に広げることができるからである。
【0097】
(iii)任意の成分
本態様に用いられる多孔質層には、上記金属酸化物半導体微粒子の他に任意の成分が含まれていてもよい。本態様に用いられる任意の成分としては、例えば、樹脂を挙げることができる。上記多孔質層に樹脂が含有されることにより、本態様に用いられる多孔質層の脆性を改善することができるからである。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カプロラクタン等を挙げることができる。
【0098】
(iv)その他
本態様に用いられる多孔質層の厚みは、通常、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0099】
本態様に用いられる多孔質層の形成方法については、一般的な色素増感型太陽電池素子を形成する際に用いられる多孔質層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0100】
(2)対極電極層
次に、本態様に用いられる対極電極層は、上記樹脂製基板の他方の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有するものである。以下、それぞれについて説明する。
【0101】
(a)第2電極層
本態様に用いられる第2電極層としては、後述する触媒層を形成することにより、色素増感型太陽電池素子の対極電極層として用いることができるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有する電極層であってもよいし、透明性を有さない電極層であってもよい。上述したように、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子においては、上記酸化物半導体電極層側または上記対極電極層側の少なくとも一方から太陽光を受光する必要がある。よって、上記対極電極層側から太陽光を受光する場合には、第2電極層としては透明性を有する電極層が用いられる。またこの場合、第2電極層を形成する樹脂製基板には透明樹脂製基板が用いられる。
【0102】
上記第2電極層については、上記第1電極層の項で説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
(b)触媒層
本態様に用いられる触媒層は上記第2電極層上に形成されるものである。第2電極層に触媒層が形成されていることにより、本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子をより発電効率に優れたものにすることができる。このような触媒層の例としては、例えば、上記第2電極層上に白金(Pt)を蒸着した態様や、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルフォン酸(PSS)、ポリアニリン(PA)、パラトルエンスルホン酸(PTS)およびこれらの混合物から触媒層を形成する態様を挙げることができるが、この限りではない。
【0104】
このような触媒層の厚みとしては、1nm〜10μmの範囲内、なかでも10nm〜1000nmの範囲内、特に10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0105】
(3)電解質層
次に本態様に用いられる電解質層について説明する。
本態様に用いられる電解質層は、上記多孔質層および上記触媒層の間に形成されるものであり、酸化還元対を含むものである。
【0106】
本態様における電解質層に用いられる酸化還元対としては、一般的に色素増感型太陽電池の電解質層に用いられているものであれば、特に限定されるものではない。中でも本態様に用いられる酸化還元対は、ヨウ素およびヨウ化物の組合せ、臭素および臭化物の組合せであることが好ましい。
【0107】
上記酸化還元対として本態様に用いられるヨウ素およびヨウ化物の組合せとしては、例えば、LiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物と、I2との組合せを挙げることができる。
さらに、上記臭素および臭化物の組合せとしては、例えば、LiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物と、Br2との組合せを挙げることができる。
【0108】
本態様における電解質層には、上記酸化還元対以外のその他の化合物として、架橋剤、光重合開始剤、増粘剤、常温融解塩等の添加剤を含有していてもよい。
【0109】
本態様に用いられる電解質層は、ゲル状、固体状または液体状のいずれの形態からなる電解質層であってもよいが、固体状の電解質層であることがより好ましい。上記固体状の電解質層は液漏れ等の問題が生じにくく、扱いが容易であるからである。
【0110】
(4)その他の構成
本態様に用いられる色素増感型太陽電池素子は、上記酸化物半導体電極層、対極電極層、および電解質層を有しているものであれば特に限定されるものではなく、必要な部材を適宜追加して用いることができる。このような部材としては、図11に示すように、例えば上記電解質層として、液体状もしくはゲル状の電解質層3を用いた場合に用いられる封止のためのシール材6を挙げることができる。このようなシール材6については一般的な色素増感型太陽電池素子に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、図11は本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
4.その他の部材
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上述した固定部材、樹脂製基板、および色素増感型太陽電池素子を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記以外の構成を適宜選択して用いることができる。このような構成としては、上記樹脂製基板の外側から上記固定部材を貫通させた位置に形成される貫通孔を封止するための封止部を挙げることができる。本態様においては、上記封止部を設けることにより、大気中の水分が色素増感型太陽電池素子モジュール内に浸入することを防止することが可能となる。ここで、上記色素増感型太陽電池素子モジュール内に水分が浸入した場合には、多孔質層に坦持されている色素増感剤が脱離することにより色素増感型太陽電池素子が経時的に劣化してしまう可能性が考えられる。そのため、上記封止部を形成することは好ましい。
【0112】
上記封止部としては一般的な樹脂材料を用いることにより形成することができることから、ここでの説明は省略する。
【0113】
また、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に導電性材料が配置されていることが好ましい。これにより、上記電極層間をより好適に接続することができるからである。
本態様に用いられる導電性材料については、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられるものと同様とすることができ、例えば金属ペースト、導電性高分子化合物等を挙げることができる。
【0114】
II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
次に、本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの第2態様について説明する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0115】
なお、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、同一の金属層上に複数の色素増感型太陽電池素子が形成されたものであることから、各々の色素増感型太陽電池素子は並列に接続されたものである。
【0116】
本態様によれば、上記固定部材が上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されていることにより、長期間の使用により上記色素増感型太陽電池素子モジュールが複数回湾曲した場合であっても、上記金属層および上記透明樹脂製基板を所定の位置関係に保つことが可能となる。これにより、耐久性に優れたものとすることができる。また、上記固定部材により上記金属層および上記透明樹脂製基板を固定することによって、内部短絡を防止することができる。
【0117】
本態様の色素増感型太陽電子素子モジュールとしては、上記金属層上に多孔質層が形成される態様(以下、Aの態様とする。)と、上記金属層上に触媒層が形成される態様(以下、Bの態様とする。)との2つの態様に分けて考えることができる。以下、各態様についてそれぞれ説明する。
【0118】
1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記透明性を有する電極層の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0119】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールについて図を用いて説明する。
図12は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。図12に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する金属層1cと、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層1eを有する透明樹脂製基板1dと、金属層1cの表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12と、透明性を有する電極層1eの表面に形成された触媒層22と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する色素増感型太陽電池素子10が、2以上(図12では、3個の色素増感型太陽電池素子10)形成されているものであり、隣り合う色素増感型太陽電池素子10間には、金属層1cの外側から透明樹脂製基板1dの外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材4が配置されているものである。なお、図12においては、電解質層3として固体電解質層が用いられている例について示している。
【0120】
上記固定部材を配置する位置としては、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように固定部材を形成することができ、かつ、上記金属層および上記透明性を有する電極層が接続しないように、隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置することができる位置であれば特に限定されるものではないが、上記固定部材が、色素増感型太陽電池素子の多孔質層および電解質層と接触しない位置であることが好ましい。上記固定部材を容易に配置することが可能であるからである。
【0121】
上記固定部材の配置としては、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側まで貫通するように形成され、かつ、上記金属層および上記透明性を有する電極層が接続しないように、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に配置することができる配置であれば特に限定されるものではない。なかでも、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールにおいて、上記固定部材により固定されている部分の厚みが上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄くなるように、上記固定部材が配置されていることが好ましい。
【0122】
ここで、本態様における「上記固定部材により固定されている部分の厚み」とは、図12に示すように、固定部材4が配置された部分の金属層1cの外側表面から透明樹脂製基板1dの外側表面までの距離t2を指し、「上記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚み」とは、図2に示すように、色素増感型太陽電池素子10が形成された部分の金属層1cの外側表面から透明樹脂製基板1dの外側表面までの距離u2を指すものである。
【0123】
以下、本態様に用いられる各部材について、それぞれ説明する。
【0124】
(1)固定部材
本態様に用いられる固定部材は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に配置されるものであり、上記金属層の外側から、上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成されているものである。また、本態様における固定部材は、上記金属層および透明性を有する電極層が接続しないように、上記金属層および透明樹脂製基板を固定するものである。
【0125】
本態様に用いられる固定部材の材料としては、絶縁性を有し、かつ、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側まで貫通する固定部材を形成することができる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した導電性を有さない固定部材の材料と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0126】
また、上記固定部材の形状、個数、形成位置等についても、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成され、かつ、上記金属層および透明性を有する電極層が接続しないように上記金属層および透明樹脂製基板を固定することができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0127】
(2)金属層
本態様に用いられる金属層は、フレキシブル性を有するものである。
【0128】
本態様に用いられる金属層のフレキシブル性とは、JIS Z 2248の金属材料曲げ試験方法で、5KNの力をかけたときに曲がることを指す。
【0129】
本態様に用いられる金属層については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した第1電極層に用いられる金属層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0130】
(3)透明樹脂製基板
本態様に用いられる透明樹脂製基板は、フレキシブル性を有するものである。上記透明樹脂製基板については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した樹脂製基板に用いられる透明樹脂製基板と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
(4)多孔質層
本態様に用いられる多孔質層は、上記金属層の表面にパターン状に形成されるものである。このような多孔質層については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した多孔質層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0132】
(5)透明性を有する電極層および触媒層
本態様に用いられる透明性を有する電極層は、上記透明樹脂製基板の表面に形成されるものである。上記透明性を有する電極層については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明した第1電極層に用いられる透明性を有する電極層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、2以上の色素増感型太陽電池素子が並列に接続されるものであることから、上記透明性を有する電極層は、通常、上記透明樹脂製基板の表面全体に形成されるものである。
しかしながら、上記固定部材が設けられている領域は、上記金属層と短絡する可能性があることから、この部分が部分的に除去された透明性を有する電極層であってもよい。
【0133】
また、本態様に用いられる触媒層としては、上記透明性を有する電極層上に形成されているものであれば特に限定されるものではなく、上記透明性を有する電極層の表面全体に形成されていてもよいし、上記多孔質層の形状に合わせて、上記透明性を有する電極層上にパターン状に形成されていてもよいが、パターン状に形成されていることがより好ましい。本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造コストを削減することが可能となるからである。
【0134】
本態様に用いられる触媒層について詳しくは、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0135】
(6)その他の構成
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、上記固定部材、金属層、透明樹脂製基板、および色素増感型太陽電池素子を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な構成を適宜選択して用いることが可能である。
【0136】
このような構成としては、上記樹脂製基板の外側から上記固定部材を貫通させた位置に形成される貫通孔を封止するための封止部を挙げることができる。なお、上記封止部については、「I.第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0137】
また、本態様においては、上記金属層および透明性を有する電極層を接触させないように固定部材を配置する必要があることから、図13に示すように、固定部材4が形成されている領域の金属層1cおよび透明性を有する電極層1eの間には、絶縁層7が形成されていることが好ましい。これにより、上記金属層1cおよび透明性を有する電極層1eの間での接触を確実に防止することができるため、内部短絡の無い色素増感型太陽電池素子モジュール100とすることができる。なお、図13においては、固定部4が固定部nを有する例について示している。
【0138】
上記絶縁層としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる絶縁性材料を用いて形成することが可能である。
【0139】
また、本態様において、上記透明性を有する電極層上に触媒層がパターン状に形成されている場合は、上記透明性を有する電極層上の触媒層が形成されていない領域に配線を設けることが好ましい。上記透明性を有する電極層は、通常、上記透明樹脂製基板の表面全体に形成されるものであることから、大面積化した場合に、その抵抗が大きくなり導電性が低下するおそれがある。そこで、上記配線を設けて、上記透明性を有する電極層の導電性の低下を防止することが好ましい。
なお、上記配線については、一般的な色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる配線と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0140】
2.Bの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記透明性を有する電極層の表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間には、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0141】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールについて図を用いて説明する。図14は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略断面図である。図14に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュール100は、フレキシブル性を有する金属層1cと、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層1eを有する透明樹脂製基板1dと、透明性を有する電極層1eの表面に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12と、金属層1cの表面に形成された触媒層22と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する色素増感型太陽電池素子10が、2以上(図14では、3個の色素増感型太陽電池素子10)形成されているものであり、隣り合う色素増感型太陽電池素子10間には、金属層1cの外側から透明樹脂製基板1dの外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材4が配置されているものである。
なお、図14においては、電解質層3として、固体電解質層を用いた例について示している。
【0142】
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールとAの態様の色素増感型太陽電池素子モジュールとの違いは、金属層および透明樹脂製基板の配置の違いによる、色素増感型太陽電池素子の構成の違いである。本態様における固定部材の配置や、本態様に用いられる固定部材、金属層、透明樹脂製基板、透明性を有する電極層およびその他の構成については、「1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0143】
本態様に用いられる多孔質層は、上記透明樹脂製基板の上記透明性を有する電極層上にパターン状に形成されたものである。上記多孔質層については、上記透明性を有する電極層上に形成されていること以外については、「1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0144】
また、本態様に用いられる触媒層は、上記金属層上に形成されるものである。上記触媒層については、上記金属層上に形成されること以外については、「1.Aの態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0145】
B.色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法
次に本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について説明する。
本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、上述した「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で記載した第1態様の色素増感型太陽電池素子モジュールを製造する製造方法(以下、第3態様とする。)と、第2態様の色素増太陽電池素子モジュールを製造する製造方法(以下、第4態様とする。)との2つの態様に分けて考えることができる。以下、各態様についてそれぞれ説明する。
【0146】
I.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、上記一対の樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程とを有することを特徴とする製造方法である。
【0147】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について、図を用いて説明する。
図15は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法の一例を示す工程図である。図15に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの間に形成された2以上の色素増感型太陽電池素子10を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、樹脂製基板1aの表面に形成された第1電極層11、および第1電極層11上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12を有する酸化物半導体電極層と、樹脂製基板1bの表面に形成された第2電極層21、および第2電極層21上に形成された触媒層22を有する対極電極層と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子10(図15では、3個の色素増感型太陽電池素子10)を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程(図15(a))と、固定部材4を、隣り合う色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11および第2電極層12間に、樹脂製基板1aの外側から樹脂製基板1bの外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程とを有する製造方法である。なお、図15(b)は、固定部材配置工程において、樹脂製基板1aの外部から固定部材4が樹脂製基板1aを貫通する過程を示すものであり、図15(c)は、樹脂製基板1aを貫通した固定部材4が、一方の色素増感型太陽電池素子10の第1電極層11、および他方の色素増感型太陽電池素子10の第2電極層12を貫通し、さらに樹脂製基板1bの外側まで貫通させ、第1電極層11および第2電極層21が接触するように樹脂製基板1aおよび樹脂製基板1bの位置を固定する過程を示すものである。
【0148】
本態様によれば、上記固定部材配置工程を有することにより、一対の樹脂製基板の間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成した後、上記固定部材を設けることにより、上記電極層間が所定の位置関係となるように、上記一対の樹脂製基板を固定することが可能となることから、接続不良が少なく、耐久性に優れた色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することが可能となる。
以下、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法に用いられる各工程についてそれぞれ説明する。
【0149】
1.色素増感型太陽電池素子形成工程
本態様における色素増感型太陽電池素子形成工程は、一方の上記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および上記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、他方の上記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および上記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する工程である。
【0150】
本工程に用いられる色素増感型太陽電池素子の形成方法については一般的な色素増感型太陽電池素子を形成する際に用いられるものと同様とすることができる。上記色素増感型太陽電池素子の形成方法としては、以下のような形成方法を一例として挙げることができる。
まず、一対の樹脂製基板を準備し、一方の樹脂製基板の表面に2以上の第1電極層を形成した後、それぞれの上記第1電極層上に多孔質層を形成することにより、酸化物半導体電極層を形成する。また、他方の樹脂製基板の表面に、上記酸化物半導体電極層と同数の第2電極層を形成した後、それぞれの上記第2電極層上に触媒層を形成することにより対極電極層を形成する。次に、上記一対の樹脂製基板を、それぞれの上記多孔質層および触媒層が対向するように配置してシール材を用いて封止し、次いで液体状またはゲル状の電解質を酸化物半導体電極基板および対極基板の間に注入することによって電解質層を形成することにより色素増感型太陽電池素子を形成する。
【0151】
また、上記色素増感型太陽電池素子の形成方法としては次に例示するような形成方法を用いることも可能である。
まず、上述した色素増感型太陽電池素子の形成方法と同様にして、一方の樹脂製基板に複数の酸化物半導体電極層を形成し、他方の樹脂製基板に複数の対極電極層を形成する。次に、上記酸化物半導体電極層の多孔質層上に固体状の電解質層材料を塗布して乾燥させることにより固体電解質層を形成し、ついで、一対の上記樹脂製基板を上記固体電解質層および触媒層が対向するように接触させて配置することにより色素増感型太陽電池素子を形成する。
【0152】
本工程において、形成される色素増感型太陽電池素子の電解質層として固体電解質層を用いる場合は、Roll to Roll法を用いることにより、一対の樹脂製基板間に2以上の色素増感型太陽電池素子を形成してもよい。
【0153】
なお、上記に挙げた色素増感型太陽電池素子の形成方法はいずれも一例であり、本態様においては、他の一般的な色素増感型太陽電池素子の形成方法についても用いることが可能である。
【0154】
本工程において用いられる上記樹脂製基板および色素増感型太陽電池素子の各部材については、「A.色素増感太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、本工程において形成される上記色素増感型太陽電池素子についても、「A.色素増感太陽電池素子モジュール」の項で説明したので、ここでの説明は省略する。
【0155】
2.固定部材配置工程
本工程は、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する工程である。
【0156】
本工程において、上記固定部材の配置等、および本工程に用いられる固定部材については、「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0157】
上記固定部材の配置方法としては、上記隣り合う色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置することができる配置方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記一対の樹脂製基板の外側から、上記固定部材を配置させるための貫通孔を予め設け、上記固定部材を上記貫通孔を通すことによって設ける方法であってもよいし、また例えば、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記固定部材を直接貫通させることによって設ける方法であってもよいが、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記固定部材を直接貫通させることによって設ける方法であることがより好ましい。上記固定部材を形成する工程が少なくて済み、製造効率を向上させることができるからである。
【0158】
上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記固定部材を直接貫通させることによって設ける方法としては、具体的には、針状の固定部材を用いて、上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで、上記針状の固定部材を貫通させる方法、ホッチキスを用いて上記一方の樹脂製基板の外側から上記他方の樹脂製基板の外側まで固定部材を貫通させる方法等を挙げることができる。
【0159】
3.その他の工程
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、上述した色素増感型太陽電池素子形成工程、および固定部材配置工程を有する製造方法であれば特に限定されず、必要な工程を適宜追加することが可能である。このような工程としては、例えば上記固定部材の貫通部分を樹脂材料等により封止する封止部を形成する封止部形成工程等を挙げることができる。また、このような工程としては、隣り合う色素増感型太陽電池素子の電極層間に導電性材料を配置する導電性材料配置工程を挙げることができる。なお、上記導電性材料配置工程は、通常、色素増感型太陽電池素子形成工程と同時に行われることが好ましい。
【0160】
II.第4態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、隣り合う上記色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0161】
ここで、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法について、図を用いて説明する。図16は、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法を示す工程図である。図16に示すように、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、フレキシブル性を有する金属層1cと、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層1eを有する透明樹脂製基板1dと、金属層1cの表面にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層12と、透明樹脂製基板1dの透明性を有する電極層1eの表面に形成された触媒層22と、多孔質層12および触媒層22の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層3と、を有する色素増感型太陽電池素子10を、2以上(図16では、3個の色素増感型太陽電池10)形成する色素増感型太陽電池素子形成工程(図16(a))と、隣り合う色素増感型太陽電池素子10間に、絶縁性を有する固定部材4を、金属層1cの外側から透明樹脂製基板1dの外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、を有するものである。なお、図16(b)では、固定部材配置工程において、固定部材4を透明樹脂製基板1dの外側から内部へと貫通させている過程を示しており、図16(c)では、固定部材4を透明樹脂製基板1dの外側から金属層の外側1cまで貫通させて配置している過程を示している。
以下、本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法における各工程について説明する。
【0162】
1.色素増感型太陽電池素子形成工程
本態様における色素増感型太陽電池素子形成工程は、フレキシブル性を有する金属層と、フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、上記金属層の表面または上記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、上記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、上記多孔質層および上記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する工程である。
【0163】
本態様における色素増感型太陽電池素子形成工程については、金属層上に多孔質層、または触媒層を用いること以外については、「1.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法」で説明した色素増感型太陽電池素子形成工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0164】
なお、本工程に用いられる金属層、透明樹脂製基板、透明性を有する電極層、多孔質層、および触媒層については、上述した「A.色素増感型太陽電池素子モジュール」の「II.第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0165】
2.固定部材配置工程
本工程は、隣り合う色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、上記金属層の外側から上記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する工程である。
【0166】
本工程に用いられる固定部材については、上述した第2態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0167】
また、本工程に用いられる固定部材の配置方法については、上述した「1.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法」で説明した方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0168】
3.その他の工程
本態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法は、上述した色素増感型太陽電池素子形成工程、および固定部材配置工程を有する製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜選択して追加することができる。このような工程としては、封止部形成工程を挙げることができる。上記封止部形成工程については、上述した「1.第3態様の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法」で説明した工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、このような工程としては、隣り合う色素増感型太陽電池素子の上記電極層間に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を挙げることができる。なお、上記絶縁層形成工程は、通常、上記色素増感型太陽電池素子形成工程と同時に行われることが好ましい。
【0169】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0170】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0171】
[実施例1]
(酸化物半導体電極層の作製)
50mm×50mm、厚み50μmのTi箔基板(竹内金属箔工業株式会社)(第1電極層)上にエタノール中で酸化チタン粒子P25(日本エアロジル株式会社)に0.5%のエチルセルロース STD-100(日新化成工業株式会社)を混合させたペーストを塗布、乾燥させ、500℃で30分焼成して多孔質層形成用層を形成した(膜厚5μm)。その後、アセトニトリル/t−ブタノール=1/1溶媒中にN719色素(Dyesol)を0.3mM溶解させた液を調製し、この溶液中に上記Ti箔基板を20時間浸漬させて多孔質層を形成し、酸化物半導体電極層を作製した。その後、この酸化物半導体電極層を厚み100μmのプラスチック基板上に10mmの間隔をあけて2枚設置した。
【0172】
(対極電極層の作製)
厚み125μmのITO膜/PEN基板(第2電極層)上にスパッタで白金を全光線透過率65%になるように積層して触媒層を形成し、50mm×50mmにカットして対極電極層を形成した。その後、この対極電極層を厚み100μmの透明プラスチック基板上に10mmの間隔をあけて2枚設置した。
【0173】
(樹脂電解質溶液の調製)
6mol/l hexyl metyl imidazolum iodide(富山薬品)、0.6mol/l I2(メルク株式会社)、 0.45mol/l n-metyl benzoimidazol(Aldrich)をhexyl metyl imidazolum tetracyano borate(メルク株式会社)に溶解した電解液を調製した。次にSTD-100(日新化成)をエタノールに10wt%溶解させた樹脂溶液を調製し、上記電解液:樹脂溶液=1:6(重量比)で混合した樹脂電解質溶液を調製した。
【0174】
(色素増感型太陽電池素子モジュールの作製)
酸化物半導体電極層の多孔質層上に、固形膜厚100μmで樹脂電解質溶液を塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させて固体電解質層を形成した。その後、酸化物半導体電極層上の固体電解質層と対極電極層の触媒層とを対向させ、第1電極層および第2電極層を左右を10mmずらして貼り合わせ、真空ラミネーターにて熱ラミネートすることで色素増感型太陽電池素子を作製した。
その後、第1電極層と第2電極層の触媒層とが離れた状態で、ホッチキスを用いて金属製の固定部材を、1対のプラスチック基板の上下を貫通するように配置することにより、第1電極層と第2電極層とを接続させて、一対の樹脂製基板を固定した。
また両サイドの取り出し部分に関しては同様にホッチキスを使って金属製の固定部材を配置し、外部に設置した導電テープとともに接続した。
【0175】
[実施例2]
(色素増感型太陽電池モジュールの作製)
色素増感型太陽電池素子の第1電極層と第2電極層の触媒層とが接触した状態で、ホッチキスを用いて金属製の固定部材を、1対のプラスチック基板の上下を貫通するように配置することにより、第1電極層と第2電極層とを接続させて、一対の樹脂製基板を固定したこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池素子モジュールを作製した。
【0176】
[評価]
実施例1および実施例2で得られた色素増感型太陽電池素子モジュールの性能評価として、光電変換効率を測定した。なお、測定装置は分光計器CEP-2000を用い、AM1.5の条件下で測定を行った。結果を表1に示す。また、表1中のJsc(mA/cm2)は短絡電流密度、Voc(V)は解放電圧、FFは曲線因子、η(%)は光電変換効率を表すものである。
【0177】
【表1】
【0178】
固定部材を形成することにより、一対の樹脂製基板間を固定することができ、光電変換効率の高い色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に作製することができた。
【0179】
[実施例3]
(多孔質層の作製)
50mm×50mm、厚み50μmのTi箔基板(竹内金属箔工業株式会社)(金属層)上にエタノール中で酸化チタン粒子P25(日本エアロジル株式会社)に0.5%のエチルセルロース STD-100(日新化成工業株式会社)を混合させたペーストを50mm×15mmの塗布面積で10mmの間隔を空けて2箇所に塗布を行った。その後、120℃のオーブンで10分間乾燥させ、500℃で30分焼成して多孔質層形成用層を形成した(膜厚5μm)。その後、アセトニトリル/t−ブタノール=1/1溶媒中にN719色素(Dyesol)を0.3mM溶解させた液を調製し、この溶液中に上記Ti箔基板を20時間浸漬させて多孔質層を形成した。
【0180】
(触媒層の作製)
厚み125μmのITO/PEN基板(透明電極層および透明樹脂製基板)上に50mm×15mmの面積で10mmの間隔を空けて2箇所に全光線透過率65%になるように白金をスパッタ成膜することで、触媒層を形成した。
【0181】
(樹脂電解質溶液の調製)
6mol/l hexyl metyl imidazolum iodide(富山薬品)、0.6mol/l I2(メルク株式会社)、 0.45mol/l n-metyl benzoimidazol(Aldrich)をhexyl metyl imidazolum tetracyano borat(メルク株式会社)に溶解した電解液を調製した。次にSTD-100(日新化成)をエタノールに10wt%溶解させた樹脂溶液を調製し、上記電解液:樹脂溶液=1:6(重量比)で混合した樹脂電解質溶液を調製した。
【0182】
(色素増感型太陽電池素子モジュールの作製)
金属層の多孔質層上に、固形膜厚5μmで樹脂電解質溶液を塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させて固体電解質層を形成した。その後、金属層の固体電解質層と透明樹脂製基板の触媒層とを対向させて貼り合わせて色素増感型太陽電池素子とし、両サイドの取り出し部分はホッチキスを使って金属製の固定部材を配置し、外部に設置した導電テープとともに接続した。その後、モジュールの上下を熱過疎性の透明樹脂フィルムを用いて覆い、真空ラミネーターにて熱ラミネートした。その後、隣り合う色素増感型太陽電池素子間にホッチキスを用いて樹脂製の固定部材を配置して、透明樹脂製基板上の透明電極層と金属層とが接触しないように固定して、色素増感型太陽電池素子モジュールを得た。
【0183】
[実施例4]
以下に示すように、透明樹脂製基板上の透明電極層上に触媒層および配線を形成したこと以外は、実施例3と同様にして、色素増感型太陽電池素子モジュールを得た。
厚み125μmのITO/PEN基板(透明電極層および透明樹脂製基板)上に50mm×15mmの面積で10mmの間隔を空けて2箇所に全光線透過率65%になるように白金をスパッタ成膜して触媒層を形成した。また、触媒層が形成されていない箇所にAg膜を50mm×8mmの面積でスクリーン印刷により形成して、2つの触媒層間に配線を形成した。
【0184】
実施例3および実施例4で得られた色素増感型太陽電池素子モジュールの性能評価として、光電変換効率を測定した。なお、測定方法については、実施例1および実施例2と同様の測定方法を用いた。結果を表2に示す。
【0185】
【表2】
【0186】
固定部材を用いることにより、金属層および樹脂製基板間を固定することができ、光電変換効率の高い色素増感型太陽電池素子モジュールを容易に製造することができた。
【符号の説明】
【0187】
1a、1b … 樹脂製基板
1c … 透明樹脂製基板
1d … 金属層
1e … 透明性を有する電極層
11 … 第1電極層
12 … 多孔質層
21 … 第2電極層
22 … 触媒層
3 … 電解質層
4 … 固定部材
n … 固定部
n’ … 外側連結固定部
10 … 色素増感型太陽電池素子
100 … 色素増感型太陽電池素子モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、
前記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間には、一方の前記樹脂製基板の外側から他方の前記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項2】
前記色素増感型太陽電池素子は、前記一方の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および前記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、
前記他方の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および前記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有し、
前記隣り合う色素増感型太陽電池素子は、前記一方の樹脂製基板に形成された一方の前記色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層または前記第2電極層と、前記他方の樹脂製基板に形成された他方の前記色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層または前記第2電極層とが、少なくとも一部対向するように形成されているものであり、
前記固定部材は、前記隣り合う色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に形成され、これら電極層間が接続可能な位置関係となるように、前記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項3】
前記一方の樹脂製基板の表面には、前記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、前記一方の色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層が形成され、かつ、前記他方の樹脂製基板の表面には、前記他方の色素増感型太陽電池素子の前記第2電極層が形成されており、前記固定部材は、前記一方の色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層および前記他方の色素増感型太陽電池素子の前記第2電極層が接続可能な位置関係となるように、前記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることを特徴とする請求項2に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項4】
前記固定部材が導電性を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項5】
フレキシブル性を有する金属層と、
フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、前記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間には、前記金属層の外側から前記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項6】
前記固定部材により固定されている部分の厚みが、前記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項7】
フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、
前記一対の樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、
一方の前記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および前記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、
他方の前記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および前記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、
を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を前記一方の樹脂製基板の外側から前記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程と
を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法。
【請求項8】
フレキシブル性を有する金属層と、
フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、前記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、前記金属層の外側から前記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、
を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法。
【請求項1】
フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、
前記一対の樹脂製基板の間に形成された、2以上の色素増感型太陽電池素子とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールであって、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間には、一方の前記樹脂製基板の外側から他方の前記樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項2】
前記色素増感型太陽電池素子は、前記一方の樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および前記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、
前記他方の樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および前記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有し、
前記隣り合う色素増感型太陽電池素子は、前記一方の樹脂製基板に形成された一方の前記色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層または前記第2電極層と、前記他方の樹脂製基板に形成された他方の前記色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層または前記第2電極層とが、少なくとも一部対向するように形成されているものであり、
前記固定部材は、前記隣り合う色素増感型太陽電池素子の第1電極層間、第1電極層および第2電極層間、もしくは第2電極層間に形成され、これら電極層間が接続可能な位置関係となるように、前記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項3】
前記一方の樹脂製基板の表面には、前記隣り合う色素増感型太陽電池素子のうち、前記一方の色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層が形成され、かつ、前記他方の樹脂製基板の表面には、前記他方の色素増感型太陽電池素子の前記第2電極層が形成されており、前記固定部材は、前記一方の色素増感型太陽電池素子の前記第1電極層および前記他方の色素増感型太陽電池素子の前記第2電極層が接続可能な位置関係となるように、前記一対の樹脂製基板の位置を固定するものであることを特徴とする請求項2に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項4】
前記固定部材が導電性を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項5】
フレキシブル性を有する金属層と、
フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、前記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子が、2以上形成されている色素増感型太陽電池素子モジュールであって、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間には、前記金属層の外側から前記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように形成された絶縁性を有する固定部材が配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項6】
前記固定部材により固定されている部分の厚みが、前記色素増感型太陽電池素子が形成されている部分の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の色素増感型太陽電池素子モジュール。
【請求項7】
フレキシブル性を有する一対の樹脂製基板と、
前記一対の樹脂製基板間に形成された、少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子と、を有する色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法であって、
一方の前記樹脂製基板の表面に形成された第1電極層、および前記第1電極層上に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有する酸化物半導体電極層と、
他方の前記樹脂製基板の表面に形成された第2電極層、および前記第2電極層上に形成された触媒層を有する対極電極層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、
を有する少なくとも2以上の色素増感型太陽電池素子を形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間に、固定部材を前記一方の樹脂製基板の外側から前記他方の樹脂製基板の外側まで貫通させて配置する固定部材配置工程と
を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法。
【請求項8】
フレキシブル性を有する金属層と、
フレキシブル性を有し、一方の表面に形成された透明性を有する電極層を有する透明樹脂製基板と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方にパターン状に形成され、かつ色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層と、
前記金属層の表面または前記透明性を有する電極層の表面のいずれか一方であって、前記多孔質層が形成されていない方の表面に形成された触媒層と、
前記多孔質層および前記触媒層の間に設けられた酸化還元対を含む電解質層と、を有する色素増感型太陽電池素子を、2以上形成する色素増感型太陽電池素子形成工程と、
隣り合う前記色素増感型太陽電池素子間に、絶縁性を有する固定部材を、前記金属層の外側から前記透明樹脂製基板の外側までを貫通するように配置する固定部材配置工程と、
を有することを特徴とする色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−18791(P2012−18791A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154636(P2010−154636)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【特許番号】特許第4811527号(P4811527)
【特許公報発行日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【特許番号】特許第4811527号(P4811527)
【特許公報発行日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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