説明

色素増感太陽電池の電極、その製造方法及び色素増感太陽電池の透明導電層付基板

【課題】透明導電層と多孔質酸化物半導体層とが剥がれにくい色素増感太陽電池の電極を提供する。
【解決手段】色素増感太陽電池の電極1は、透明導電層付基板2と、多孔質酸化物半導体層6とを備える。透明導電層付基板2は、ガラス基板3、下地層4、及び透明導電層5を有する。下地層4は、ガラス基板3の一主面の上に配されている。下地層4は、ガラス基板3とは反対側の表面に凹凸を有する。透明導電層5は、下地層4の上に配されている。多孔質酸化物半導体層6は、透明導電層5の上に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池の電極、その製造方法及び色素増感太陽電池の透明導電層付基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する電池として、種々の太陽電池が知られている。例えば、特許文献1には、色素増感太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−49082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
色素増感太陽電池の電極では、基板の上に配された透明導電層の上に、多孔質酸化物半導体層が設けられる。多孔質酸化物半導体層は、高温下で熱処理されることがある。この熱処理などにより、透明導電層と多孔質酸化物半導体層とが剥がれやすくなる場合がある。
【0005】
本発明は、透明導電層と多孔質酸化物半導体層とが剥がれにくい色素増感太陽電池の電極を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る色素増感太陽電池の電極は、透明導電層付基板と、多孔質酸化物半導体層とを備える。透明導電層付基板は、ガラス基板、下地層、及び透明導電層を有する。下地層は、ガラス基板の一主面の上に配されている。下地層は、ガラス基板とは反対側の表面に凹凸を有する。透明導電層は、下地層の上に配されている。多孔質酸化物半導体層は、透明導電層の上に配されている。
【0007】
なお、本発明において、ガラス基板には、結晶化ガラスからなる基板が含まれるものとする。
【0008】
下地層のガラス基板とは反対側の表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで5nm以上であることが好ましい。
【0009】
本発明において、中心線平均粗さRaは、JISB0601に規定された方法により測定した値である。
【0010】
透明導電層の厚みは、0.5μm〜1.5μmであることが好ましい。
【0011】
透明導電層のガラス基板とは反対側の表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで5nm以上であることが好ましい。
【0012】
下地層は、酸化チタンを含むことが好ましい。
【0013】
多孔質酸化物半導体層は、酸化物粒子の燒結体からなってもよい。
【0014】
多孔質酸化物半導体層は、酸化チタンを含んでいてもよい。
【0015】
本発明に係る色素増感太陽電池の透明導電層付基板において、多孔質酸化物半導体層が一主面上に形成される。透明導電層付基板は、ガラス基板と、下地層と、透明導電層とを備える。下地層は、ガラス基板の一主面の上に配されている。下地層は、ガラス基板とは反対側の表面に凹凸を有する。透明導電層は、下地層の上に配されている。
【0016】
本発明の色素増感太陽電池の電極の製造方法は、ガラス基板の一主面の上に、スプレー法を用いて下地層を形成する工程と、下地層の上に透明導電層を形成する工程と、透明導電層の上に多孔質酸化物半導体層を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、透明導電層と多孔質酸化物半導体層とが剥がれにくい色素増感太陽電池の電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る色素増感太陽電池の電極の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態は、単なる一例であり、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。
【0020】
また、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0021】
図1は、本実施形態に係る色素増感太陽電池の電極の略図的断面図である。色素増感太陽電池の電極1は、透明導電層付基板2を備える。
【0022】
透明導電層付基板2は、ガラス基板3を有する。ガラス基板3の両表面は、平坦である。ガラス基板3の両表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.2nm〜2nm程度である。
【0023】
ガラス基板3を構成するガラスは、透光性を有するガラスであれば、特に限定されない。ガラス基板3を構成するガラスとしては、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、石英ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、ガラス基板3を構成するガラスとしては、無アルカリガラスが好ましい。無アルカリガラスは、透光性及び歪み点が高く、製造コストが安いためである。
【0024】
なお、本発明において、無アルカリガラスとは、実質的にLi,Na,Kなどのアルカリ金属成分を含まないガラスをいい、具体的には、アルカリ金属成分の含有量が、酸化物換算で、0.2質量%以下であるガラスをいう。
【0025】
ガラス基板3の厚みは、特に限定されず、例えば0.03mm〜2mm程度とすればよい。
【0026】
ガラス基板3の主面3aの上には、下地層4が配されている。下地層4は、ガラス基板3とは反対側の表面4aに凹凸を有する。表面4aの表面粗さは、中心線平均粗さRaで5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。なお、表面4aの中心線平均粗さRaが大きすぎると、多孔質酸化物半導体層が均一に形成されず、太陽電池の変換効率が低下する。このため、表面4aの中心線平均粗さRaは、500nm以下であることが好ましい。
【0027】
下地層4は、酸化チタンを含むことが好ましく、酸化チタンにより構成されていることがより好ましい。
【0028】
下地層4の厚みは、特に限定されず、例えば0.1μm〜1.5μm程度であってもよい。
【0029】
下地層4の表面4aの上には、透明導電層5が配されている。透明導電層5のガラス基板3とは反対側の表面5aは、下地層4のガラス基板3とは反対側の表面4aの形状と対応した形状を有する。よって、表面5aの表面粗さは、表面5aも凹凸を有し、通常、中心線平均粗さRaで5nm以上となる。
【0030】
透明導電層5を構成する材料は、透光性及び導電性を有するものであれば、特に限定されない。透明導電層5は、例えば、インジウムドープ酸化錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタンなどにより構成される。
【0031】
透明導電層5の厚みは、0.5μm〜1.5μm程度であることが好ましく、0.7μm〜1.2μm程度であることがより好ましい。透明導電層5の厚みが薄すぎると、電気抵抗が大きくなる場合がある。透明導電層5の厚みが厚すぎると、中心線平均粗さRaが小さくなる場合がある。
【0032】
透明導電層5の表面5aの上には、多孔質酸化物半導体層6が配されている。多孔質酸化物半導体層6において、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0033】
多孔質酸化物半導体層6は、酸化物粒子の燒結体、増感色素などを含んでいてもよい。
【0034】
酸化物粒子を構成する酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステンなどが挙げられる。
【0035】
焼結前の酸化物粒子の平均粒子径は、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態に係る色素増感太陽電池の電極1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0037】
まず、ガラス基板3の上に、下地層4を形成する。下地層4は、例えば、スプレー法により形成することができる。スプレー法を用いることにより、下地層4のガラス基板3とは反対側の表面4aの上に凹凸を形成することができる。具体的には、金属アルコキシドを含有する有機溶剤をスプレー法により5μm〜60μmの大きさの粒子にして吹き付けた後、350〜550℃の温度で加熱し、有機成分を揮発又は燃焼させるとともに、金属成分を酸化させることにより、所望の凹凸を有する下地層4を形成できる。 次に、下地層4の上に透明導電層5を形成する。透明導電層5は、スパッタ法、蒸着法などの成膜方法により形成することができる。
【0038】
次に、透明導電層5の上に、酸化物粒子の燒結体、増感色素などを含む多孔質酸化物半導体層6を形成する。透明導電層5を形成する方法としは、特に限定されず、公知の方法が採用できる。
【0039】
本実施形態に係る色素増感太陽電池の電極1は、ガラス基板3とは反対側の表面4aに凹凸を有する下地層4を備える。表面4aの上には、透明導電層5が配されており、透明導電層5のガラス基板3とは反対側の表面5aは、表面4aの形状と対応した形状を有する。このため、透明導電層5と透明導電層5の表面5aの上に配された多孔質酸化物半導体層6とは、アンカー効果により剥がれにくい。
【0040】
色素増感太陽電池の電極1において、下地層4の表面4aの中心線平均粗さが5nm以上、特に10nm以上である場合、表面4aの形状と対応した形状を有する透明導電層5の表面5aと多孔質酸化物半導体層6とは、剥がれにくい。
【0041】
色素増感太陽電池の電極1において、透明導電層5の厚みが、0.5μm〜1.5μm
程度、特に0.7μm〜1.2μm程度である場合、透明導電層5の表面5aの形状が下地層4の表面4aの形状と対応した形状となりやすいため好ましい。
【0042】
色素増感太陽電池の電極1において、下地層4が酸化チタンを含む場合、酸化チタンはガラス基板3及び透明導電層5との親和性が高く、ガラス基板3と下地層4及び下地層4と透明導電層5とが剥がれにくいため好ましい。
【符号の説明】
【0043】
1…色素増感太陽電池の電極
2…透明導電層付基板
3…ガラス基板
3a…ガラス基板の主面
4…下地層
4a…下地層の表面
5…透明導電層
5a…透明導電層の表面
6…多孔質酸化物半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板、前記ガラス基板の一主面の上に配されており、前記ガラス基板とは反対側の表面に凹凸を有する下地層、及び前記下地層の上に配された透明導電層を有する透明導電層付基板と、
前記透明導電層の上に配された、多孔質酸化物半導体層と、
を備える、色素増感太陽電池の電極。
【請求項2】
前記下地層の前記ガラス基板とは反対側の表面の表面粗さが、中心線平均粗さRaで5nm以上である、請求項1に記載の色素増感太陽電池の電極。
【請求項3】
前記透明導電層の厚みが、0.5μm〜1.5μmである、請求項1または2に記載の色素増感太陽電池の電極。
【請求項4】
前記透明導電層の前記ガラス基板とは反対側の表面の表面粗さが、中心線平均粗さRaで5nm以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池の電極。
【請求項5】
前記下地層が酸化チタンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池の電極。
【請求項6】
前記多孔質酸化物半導体層は、酸化物粒子の燒結体からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池の電極。
【請求項7】
前記多孔質酸化物半導体層は、酸化チタンを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池の電極。
【請求項8】
多孔質酸化物半導体層が一主面上に形成される、色素増感太陽電池の透明導電層付基板であって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一主面の上に配されており、前記ガラス基板とは反対側の表面に凹凸を有する下地層と、
前記下地層の上に配された透明導電層と、
を備える色素増感太陽電池の透明導電層付基板。
【請求項9】
ガラス基板の一主面の上に、スプレー法を用いて下地層を形成する工程と、
前記下地層の上に透明導電層を形成する工程と、
前記透明導電層の上に多孔質酸化物半導体層を形成する工程と、
を備える、色素増感太陽電池の電極の製造方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−98109(P2013−98109A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241905(P2011−241905)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】