説明

色素増感太陽電池

【課題】高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保できる色素増感太陽電池を提供すること。
【解決手段】互いに対向する一対の電極1,2と、一対の電極1,2を連結する封止部4と、一対の電極1,2と封止部4とによって形成されるセル空間Sに充填される電解質3とを備えており、封止部4が、樹脂を含む樹脂封止部4Aを有し、樹脂封止部4Aが、電解質3から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部14aを有し、厚さ増大部14aの傾斜面14cに沿って、一対の電極1,2のうち傾斜面14cに対向する電極2に接触する色素増感太陽電池100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素増感太陽電池が注目されており、色素増感太陽電池に関して種々の開発が行われている。
【0003】
色素増感太陽電池は一般に、多孔質酸化物半導体層を有する作用極と、対極と、作用極の多孔質酸化物半導体層に担持される光増感色素と、作用極と対極とを連結する封止部と、作用極、対極及び封止部によって包囲される空間(以下、「セル空間」と呼ぶ)に配置される電解質とを備えている。
【0004】
このような色素増感太陽電池においては、封止部は樹脂で構成されることが多く、その封止部の厚さは一般には一定とされている(例えば下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−153180号公報
【特許文献2】特開2006−4827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載の色素増感太陽電池は、高温環境下で使用される場合、耐久性の点で未だ改善の余地があった。
【0007】
即ち、色素増感太陽電池は、高温環境下で使用されると、電解質が揮発し、セル空間の圧力が上昇する。このとき、特許文献1記載の色素増感太陽電池において、封止部の厚さが大きいと、電解質が通過する通過断面積が大きくなるため、封止部を通して電解質が漏洩する可能性が高まる。
【0008】
一方、封止部において電解質の通過断面積を小さくするためには、封止部の厚さを小さくすればよい。しかし、この場合、封止部全体の厚さが小さくなるため、作用極及び対極に対する封止部の接着力が弱くなる。このため、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されてセル空間の圧力が上昇すると、作用極または対極と封止部との間で剥離が起こり、電解質が漏洩する可能性がある。
【0009】
従って、電解質の漏洩を十分に抑制でき、十分な耐久性を確保することができる色素増感太陽電池が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保できる色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するため、樹脂を含む樹脂封止部の厚さに着目して鋭意検討を重ねた。ここで、上記課題を解決するには、樹脂封止部の厚さを厚すぎず薄すぎない値に調整することも考えられるが、それでも十分な耐久性を確保できなかった。そこで、本発明者は、樹脂封止部の厚さを一定にするのではなく、樹脂封止部において電解質からの位置によって厚さを変えることにより上記課題を解決し得るのではないかと考えた。そして、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を効果的に解決し得ることを見出した。
【0012】
即ち本発明は、互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極を連結する封止部と、前記一対の電極と前記封止部とによって囲まれるセル空間に充填される電解質とを備えており、前記封止部が、樹脂を含む樹脂封止部を有し、前記樹脂封止部が、前記電解質から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部を有し、前記厚さ増大部の傾斜面に沿って、前記一対の電極のうち前記傾斜面に対向する電極に接触することを特徴とする色素増感太陽電池である。
【0013】
この色素増感太陽電池によれば、樹脂封止部が、電解質から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部を有し、厚さ増大部の傾斜面に沿って、一対の電極のうち傾斜面に対向する電極に接触している。このため、厚さ増大部の電解質側で厚さを十分に小さくして電解質の通過断面積を小さくすることが可能となる。その結果、電解質の漏洩を抑制することができる。一方、厚さ増大部では電解質から離れるにつれて厚さが増大しているため、厚さ増大部により電極に対する樹脂封止部の接着力が十分に強化される。従って、本発明の色素増感太陽電池が高温環境下で使用されセル空間の圧力が上昇して厚さ増大部と電極との界面に過大な応力が加わっても、電極からの樹脂封止部の剥離を十分に抑制することができ、電解質の漏洩を十分に抑制することができる。よって、本発明の色素増感太陽電池によれば、高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保することができる。
【0014】
なお、前記厚さ増大部は、樹脂封止部中の少なくとも一部にあればよい。即ち、樹脂封止部は、厚さ増大部よりも電解質側に厚さが一定で且つ電解質に接触する部分や、電解質から離れるにつれて厚さが減少する厚さ減少部を有していてもよい。換言すれば、厚さ増大部は樹脂封止部内のいかなる位置にあってもよい。この場合、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保することができる。これは以下の理由によるものである。すなわち、樹脂封止部が厚さ増大部を有してさえいれば、厚さ増大部により、厚さ増大部の電解質側で厚さが十分に小さくされ、電解質に対する樹脂封止部の露出面積をより小さくすることができ、電解質の漏洩を十分に抑制することができる。従って、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されても、電解質の漏洩を十分に抑制することができる。一方、厚さ増大部では電解質から離れるにつれて厚さが増大している。即ち、電解質とは反対側(電解質が届きにくい側)に厚さが大きい部分がある。別言すると、電解質の影響が小さい位置で厚さを確保することができる。このため、厚さ増大部により電極に対する樹脂封止部の接着力が十分に強化される。従って、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されても、電極に対する樹脂封止部の接着力の低下を十分に抑制することができる。
【0015】
また上記色素増感太陽電池においては、前記樹脂封止部が、前記厚さ増大部に対して前記電解質と反対側に、前記電解質から離れるにつれて厚さが減少する厚さ減少部を更に有し、前記厚さ減少部の傾斜面に沿って、前記一対の電極のうち前記傾斜面に対向する電極に接触することが好ましい。
【0016】
この場合、厚さ減少部のうち、電解質から最も離れた位置で厚さが十分に小さくなる。即ち厚さ減少部のうち、電解質から最も離れた位置で、外部から侵入する酸素や水分の通過断面積を狭めることができる。このため、外部からの酸素や水分の侵入を十分に抑制することができる。
【0017】
ここで、前記樹脂封止部が、前記厚さ減少部に対して前記電解質と反対側に、前記電解質から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部を更に有し、前記厚さ増大部の傾斜面に沿って、前記一対の電極のうち前記傾斜面に対向する電極に接触することが好ましい。
【0018】
この色素増感太陽電池によれば、厚さ減少部に対して前記電解質と反対側に設けられる厚さ増大部により、電極に対する樹脂封止部の接着力がさらに強化される。
【0019】
上記色素増感太陽電池において、前記樹脂封止部が、前記厚さ増大部及び前記厚さ減少部をそれぞれ複数有し、前記厚さ増大部及び前記厚さ減少部が、前記電解質から離れる方向に向かって交互に配列され、前記厚さ増大部及び前記厚さ減少部のうち前記厚さ増大部が前記樹脂封止部において最も前記電解質に近い位置に設けられていることが好ましい。
【0020】
この場合、封止部が複数の厚さ増大部と複数の厚さ減少部とを有することになるため、より十分な耐久性を確保できる。また色素増感太陽電池が高温環境下で使用されてセル空間の内圧が上昇することにより、樹脂封止部に対してその内周面から外周面に向かう方向の応力が加わっても、複数の厚さ増大部と複数の厚さ減少部によって、その方向への樹脂封止部の動きをより十分に規制することができる。また、電解質に最も近い位置で、電解質の漏洩断面積を小さくすることが可能となり、電解質の外部への漏洩を効果的に抑制することができる。
【0021】
上記色素増感太陽電池においては、前記厚さ増大部が前記電解質に接触していることが好ましい。
【0022】
この場合、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されてセル空間の内圧が上昇する際、最も大きな応力が加えられ封止部が最も剥離しやすい箇所が、電解質に接触する位置であり、その位置に厚さ増大部が設けられる。このため、電極に対する樹脂封止部の十分な接着力が確保され、電極からの樹脂封止部の剥離をより効果的に抑制することができる。また、厚さ増大部が前記電解質に接触しているため、電解質に対する樹脂封止部の露出面積をより小さくすることが可能となり、電解質の漏洩断面積を小さくすることが可能となる。従って、電解質の漏洩をより十分に抑制できる。
【0023】
上記色素増感太陽電池では、前記厚さ増大部と前記電極との接触面と、前記厚さ減少部と前記電極との接触面とにより、前記電解質から離れる方向に交差するように延びる溝が形成されていることが好ましい。
【0024】
この色素増感太陽電池では、厚さ増大部と電極との接触面、厚さ減少部と電極との接触面とにより溝が形成されている。即ち厚さ増大部および厚さ減少部は一体となって溝に食い込んでいる。このため、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されてセル空間の内圧が上昇することにより、樹脂封止部に対して、その内周面から外周面に向かう方向の応力が加わっても、その方向への樹脂封止部の動きを十分に規制することができる。さらに電極に溝が形成されることにより、セル空間から電極と樹脂封止部との界面を通って外部に向かう電解質、外部から侵入してセル空間に向かう酸素や水分の通過経路をより長くすることができる。また電解質や外部からの水分が溝を通過する際、電解質又は外部からの酸素や水分の一部が溝に入り込み、溝に沿って進みやすくなる。その結果、樹脂封止部からセル空間への酸素や水分の侵入、樹脂封止部から外部への電解質の漏洩が十分に抑制される。また、温度変化に伴い、夕方から夜間にかけてなどのように温度が低下するような環境下では、セル空間の内圧が下降することにより、樹脂封止部に対して、その外周面から内周面に向かう方向の応力が加わる。この場合にも、外周面から内周面に向かう方向への樹脂封止部の動きを十分に規制することができる。
【0025】
上記色素増感太陽電池では、前記樹脂封止部の最大厚さが10μm以上であることが好ましい。
【0026】
この場合、樹脂封止部の最大厚さが10μm以上になることで、樹脂封止部の厚さが十分に確保され、電極に対する樹脂封止部の接着力が十分に確保される。このため、電解質の漏洩を効果的に抑制することができる。
【0027】
前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極が可撓性を有することが好ましい。
【0028】
この場合、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されてセル空間の内圧が上昇しても、一対の電極のうち少なくとも一方の電極は撓むことが可能である。このため、樹脂封止部と、可撓性を有する電極との界面にかかる応力を十分に緩和することができる。
【0029】
上記色素増感太陽電池では、例えば前記一対の電極のうち一方の電極が、導電性基板と、前記導電性基板上に設けられる多孔質酸化物半導体層とを有し、前記導電性基板の前記多孔質酸化物半導体層側の表面が平坦面であり、前記厚さ増大部と前記一対の電極のうち他方の電極との接触面が前記平坦面に対して傾斜していてもよい。
【0030】
上記色素増感太陽電池は、前記封止部に対して前記電解質と反対側に、前記封止部と前記一対の電極との境界を少なくとも覆う被覆部を更に備え、前記被覆部が樹脂を含むことが好ましい。
【0031】
この場合、電解質の漏洩又は外部からの電解質への酸素や水分の侵入が、封止部のみならず被覆部によっても抑制されることになる。特に、封止部と一方の電極との界面、封止部と他方の電極との界面での漏洩又は外部から電解質への酸素や水分の侵入が被覆部によって効果的に抑制される。
【0032】
また本発明は、互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極を連結する封止部と、前記一対の電極と前記封止部とによって囲まれるセル空間に充填される電解質とを備えており、前記封止部が、樹脂を含む樹脂封止部を有し、前記樹脂封止部が、前記一対の電極の少なくとも一方の電極に接触し且つ前記電解質から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部を有することを特徴とする色素増感太陽電池であってもよい。
【0033】
なお、本発明において、電極について「可撓性を有する」とは、20℃の環境下で50mm×200mmのシート状電極の長辺側の両縁部(それぞれ幅5mm)を張力1Nで水平に固定し、電極の中央に20g重の荷重をかけた際の電極の撓みの最大変形率が20%を超えるものを言うものとする。ここで、最大変形率とは、下記式:
最大変形率(%)=100×(最大変位量/シート状電極の厚さ)
に基づいて算出される値を言う。従って、例えば厚さ0.04mmのシート状電極が上記のようにして荷重をかけることにより撓み、最大変位量が0.01mmとなった場合、最大変形率は25%となり、このシート状電極は「可撓性を有する」こととなる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保できる色素増感太陽電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の色素増感太陽電池の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図2の厚さ増大部を示す部分拡大図である。
【図4】図2の厚さ減少部を示す部分拡大図である。
【図5】図1の作用極を示す断面図である。
【図6】図1の対極を示す断面図である。
【図7】図5の作用極を示す平面図である。
【図8】図1の色素増感太陽電池の製造工程における無機封止部形成工程を示す断面図である。
【図9】図6の対極を示す平面図である。
【図10】図1の色素増感太陽電池の製造工程における樹脂封止部形成工程を示す断面図である。
【図11】図1の色素増感太陽電池の製造工程における電解質配置工程を示す断面図である。
【図12】図1の色素増感太陽電池の製造工程における重合せ工程を示す断面図である。
【図13】図1の色素増感太陽電池の製造工程における封止部形成工程を示す断面図である。
【図14】本発明の色素増感太陽電池の第2実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図15】本発明の色素増感太陽電池の第3実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図16】本発明の色素増感太陽電池の第4実施形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
<第1実施形態>
まず本発明に係る色素増感太陽電池の第1実施形態について図1〜図4を用いて説明する。図1は、本発明に係る色素増感太陽電池の第1実施形態を示す断面図、図2は、図1の部分拡大断面図、図3は、図2の厚さ増大部を示す部分拡大図、図4は、図2の厚さ減少部を示す部分拡大図である。
【0038】
図1及び図2に示すように、色素増感太陽電池100は、作用極1と、作用極1に対向するように配置される対極2とを備えている。作用極1と対極2とは封止部4によって連結されている。そして、作用極1と対極2と封止部4とによって包囲されるセル空間S内には電解質3が充填されている。
【0039】
作用極1は、透明基板6と、透明基板6の対極2側に設けられる透明導電膜7と、透明導電膜7の上に設けられる多孔質酸化物半導体層8とを備えている。ここで、封止部4は、透明導電膜7の表面1aに接着されている。なお、透明導電膜7の表面1aは、透明導電膜7を構成する材料の結晶の大きさ程度の凹凸(概ね1μm程度)を有していてもよいが、そのような凹凸を有していなくてもよい。以下、結晶の大きさ程度以上の凹凸を有していない表面1aについては平坦面として記述する。
【0040】
また作用極1のうちの多孔質酸化物半導体層8には光増感色素が担持されている。なお、色素増感太陽電池100においては、透明基板6と透明導電膜7とにより導電性基板が構成されている。
【0041】
対極2は、対極基板と、対極基板のうち作用極1側に設けられて対極2の表面における還元反応を促進する導電性の触媒膜とを備えており、可撓性を有している。
【0042】
封止部4は、対極2に接着される樹脂封止部4Aと、樹脂封止部4Aと作用極1とを連結する無機封止部4Bとから構成されている。樹脂封止部4Aは、対極2の第2環状部位C2で対極2に接着され、無機封止部4Bは、作用極1の第1環状部位C1に接着されている。無機封止部4Bは、透明導電膜7上に固定される集電配線11と、集電配線11を覆って保護する配線保護層12とを備えている。
【0043】
樹脂封止部4Aは、電解質3から離れるにつれて厚さが増大する複数(例えば4つ)の環状の厚さ増大部14aと、複数の厚さ増大部14aの各々に対して電解質3と反対側に設けられ、電解質3から離れるにつれて厚さが減少する複数(例えば4つ)の環状の厚さ減少部14bとを有している。即ち、樹脂封止部4Aは、その最も外側に厚さ減少部14bを有し、その最も内側に電解質3と接触するように厚さ増大部14aを有している。なお、厚さ増大部14a及び厚さ減少部14bは図2〜図4において二点鎖線で示されるものである。
【0044】
厚さ増大部14aの厚さは、図3に示すように、電解質3側でHA0となっており、HA0が厚さ増大部14aの最小厚さである。そして、厚さ増大部14aの厚さは、電解質3から離れるにつれて増加し、電解質3から最も離れた位置でHA1となっている。このHA1は厚さ増大部14aの最大の厚さとなる。
【0045】
一方、厚さ減少部14bの厚さは、図4に示すように、電解質3側でHA1となっており、HA1が厚さ減少部14bの最大厚さである。そして、厚さ減少部14bの厚さは、電解質3から離れるにつれて減少し、電解質3から最も離れた位置でHA0となっている。このHA0は厚さ減少部14bの最小の厚さとなる。
【0046】
複数の環状の厚さ増大部14aおよび複数の環状の厚さ減少部14bはそれぞれ、封止部4に沿って連続状に形成されており、電解質3から離れる方向に向かって交互に配列されている。ここで、樹脂封止部4Aのうち最も内側にあるのが厚さ増大部14aであり、最も外側にあるのが厚さ減少部14bであり、最も内側にある厚さ増大部14aは電解質3と接触している。
【0047】
色素増感太陽電池100では、厚さ増大部14aは、電解質3からの距離の増加に比例するように厚さが増大している。即ち厚さ増大部14aの傾斜面14cは平坦面となっている。そして、樹脂封止部4Aは、厚さ増大部14aの傾斜面14cに沿って対極2の厚さ増大部対向接触面2aに接触している。このため、厚さ増大部対向接触面2aも平坦面となっている。厚さ減少部14bは、電解質3からの距離の増加に比例するように厚さが減少している。即ち厚さ減少部14bの傾斜面14dは平坦面となっている。そして、樹脂封止部4Aは、厚さ増大部14aの傾斜面14dに沿って対極2の厚さ減少部対向接触面2bに接触している。このため、厚さ減少部対向接触面2bも平坦面となっている。
【0048】
厚さ増大部14a及び厚さ減少部14bの厚さが上記のように変化しており、樹脂封止部4Aは、複数の厚さ増大部14a及び複数の厚さ減少部14bを有する。このため、樹脂封止部4Aの対極2側の表面においては、複数の環状突起部が電解質3から離れる方向に向かって配列され、各環状突起部は、電解質3から離れる方向に交差するように形成されることになる。このため、対極2の第2環状部位C2は、複数の突起部に対して相補的な形状を有している。即ち、対極2の第2環状部位C2には、複数の環状溝15が電解質3から離れる方向に向かって配列され、各環状溝15は、電解質3から離れる方向に交差するように形成されている。言い換えると、各環状溝15は、対極2の第2環状部位C2において、環状の厚さ増大部14aに沿って延びている。
【0049】
なお、厚さ増大部14a、厚さ減少部14bは、それらの厚さの増減のみを規定する。従って、厚さ増大部14a、厚さ減少部14bがそれぞれ複数存在する場合には、複数の厚さ増大部14a同士、及び厚さ減少部14b同士の形状は必ずしも同一である必要はない。
【0050】
ここで、環状溝15は、厚さ増大部14aに対向して接触する対極2の厚さ増大部対向接触面2aと、厚さ減少部14bに対向して接触する対極2の厚さ減少部対向接触面2bとによって形成されている。厚さ増大部対向接触面2aは、作用極1の平坦な表面1aに対して、電解質3から離れるにつれて樹脂封止部4Aの厚さを増大させるように傾斜している。厚さ減少部対向接触面2bは、作用極1の平坦な表面1aに対して、樹脂封止部4Aの厚さを減少させるように傾斜している。
【0051】
上述した色素増感太陽電池100によれば、樹脂封止部4Aが、電解質3から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部14aを有し、厚さ増大部14aの傾斜面14cに沿って、傾斜面14cに対向する対極2に接触している。このため、厚さ増大部14aはその電解質3側で厚さを十分に小さくして電解質3の通過断面積を小さくすることが可能となる。その結果、電解質3の漏洩を抑制することができる。また色素増感太陽電池100では、封止部4が、樹脂封止部4Aと、樹脂封止部4Aよりも高い封止能を有する無機封止部4Bとで構成されているため、封止部4において無機封止部4Bが樹脂封止部に置換される場合に比べて、電解質3の漏洩をより十分に抑制することができる。一方、厚さ増大部14aは電解質3から離れるにつれて厚さが増大しているため、厚さ増大部14aにより対極2に対する樹脂封止部4Aの接着力が強化される。従って、色素増感太陽電池100が高温環境下で使用されセル空間Sの圧力が上昇して厚さ増大部14aと対極2との界面に過大な応力が加わっても、対極2からの樹脂封止部4Aの剥離を十分に抑制することができ、電解質3の漏洩を十分に抑制することができる。よって、色素増感太陽電池100によれば、高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保することができる。
【0052】
特に、色素増感太陽電池100では、樹脂封止部4Aの最も内側に厚さ増大部14aが設けられ、この厚さ増大部14aが電解質3に接触している。即ち、色素増感太陽電池100が高温環境下で使用されてセル空間Sの内圧が上昇する際、最も大きな応力が加えられ樹脂封止部4Aが最も剥離しやすい箇所が、電解質3に接触する位置であり、この位置に厚さ増大部14aが設けられる。このため、対極2に対する樹脂封止部4Aの十分な接着力が確保され、厚さ増大部14aが電解質3に接触していない場合と比べて、対極2からの樹脂封止部4Aの剥離をより効果的に抑制することができる。また、厚さ増大部14aが電解質3に接触しているため、電解質3に対する樹脂封止部4Aの露出面積をより小さくすることが可能となり、電解質3の漏洩断面積を小さくすることが可能となる。従って、電解質3の外部への漏洩をより十分に抑制できる。
【0053】
また色素増感太陽電池100においては、封止部4が、厚さ増大部14aの各々に対して電解質3と反対側に、電解質3から離れるにつれて厚さが減少する厚さ減少部14bを更に有し、厚さ減少部14bの傾斜面14dに沿って、傾斜面14dに対向する対極2に接触する。このため、厚さ減少部14bにおいては、電解質3から最も離れた位置で厚さが十分に小さくなる。即ち厚さ減少部14bのうち、電解質3から最も離れた位置で、外部から侵入する酸素や水分の通過断面積を狭めることができる。このため、外部からの酸素や水分の侵入を十分に抑制することができる。またこの色素増感太陽電池100では、対極2の厚さ増大部対向接触面2aと、対極2の厚さ減少部対向接触面2bとにより環状溝15が形成されている。即ち厚さ増大部14aおよび厚さ減少部14bは、一体となって環状溝15に食い込んでいる。このため、色素増感太陽電池100が高温環境下で使用されてセル空間Sの内圧が上昇することにより、樹脂封止部4Aに対して、その内周面から外周面に向かう方向の応力が加わっても、内周面から外周面に向かう方向への樹脂封止部4Aの動きを十分に規制することができる。また、温度変化に伴い、夕方から夜間にかけてなどのように温度が低下するような環境下では、セル空間Sの内圧が下降することにより、樹脂封止部4Aに対して、その外周面から内周面に向かう方向の応力が加わる。この場合にも、外周面から内周面に向かう方向への樹脂封止部4Aの動きを十分に規制することができる。また、電解質3に最も近い位置で、電解質3の漏洩断面積を小さくすることが可能となり、電解質3の外部への漏洩を効果的に抑制することができる。
【0054】
さらに対極2に環状溝15が形成されることにより、セル空間Sから対極2と樹脂封止部4Aとの界面を通って外部に向かう電解質3、外部から対極2と樹脂封止部4Aとの界面を通って侵入する酸素や水分の通過経路をより長くすることができる。しかも、電解質3又は外部からの酸素や水分が環状溝15を通過する際、電解質3又は外部からの酸素や水分の一部が環状溝15に入り込み、環状溝15に沿って進みやすくなる。その結果、封止部4からセル空間Sへの酸素や水分の侵入、封止部4から外部への電解質Sの漏洩が十分に抑制される。特に外部からの水分については、環状溝15で捕捉され易くなり、捕捉された水分は環状溝15に沿って進みやすくなるため、電解質3に向かう水分の量を十分に低減させることができる。しかも、色素増感太陽電池100では、対極2の表面に形成されているのは、連続状に形成された環状溝15であるため、水分が環状溝15に捕捉されると、環状溝15に沿って進むことになる。このため、捕捉された水分を環状溝15に閉じ込めることができる。
【0055】
また色素増感太陽電池100では、樹脂封止部4Aの最も外側に厚さ減少部14bが配置されている。このため、樹脂封止部4Aの最も外側に厚さ増大部14aを配置する場合に比べて、樹脂封止部4Aの厚さをより小さくすることができ、外部雰囲気に対する樹脂封止部4Aの露出面積をより小さくすることができる。従って、色素増感太陽電池100が高湿環境下で使用されても、水分の侵入をより十分に抑制することができ、色素増感太陽電池100において、より十分な耐久性を確保することができる。
【0056】
さらに本実施形態では、対極2が可撓性を有している。このため、色素増感太陽電池100が高温環境下で使用されてセル空間Sの内圧が上昇しても、対極2が撓むため、樹脂封止部4Aと対極2との界面にかかる応力を十分に緩和することができる。
【0057】
なお、色素増感太陽電池100では、樹脂封止部4Aの最大厚さ、即ちHA1は特に制限されるものではないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。樹脂封止部4Aの最大厚さが10μm以上になると、樹脂封止部4Aの厚さが十分に確保され、対極2に対する樹脂封止部4Aの接着力が十分に確保される。このため、電解質3の漏洩を効果的に抑制することができ、色素増感太陽電池100の耐久性をより十分に向上させることができる。
【0058】
但し、樹脂封止部4Aの最大厚さは、1000μm以下であることが、電解質3の透過断面積を小さくするという理由から好ましい。
【0059】
また樹脂封止部4Aの厚さの最大値と最小値との差、即ち、(HA1−HA0)は0μ
mより大きければいかなる値でもよいが、1〜95μmであることが好ましく、5〜90μmであることがより好ましい。
【0060】
この場合、(HA1−HA0)が上記範囲を外れる場合に比べて、色素増感太陽電池100の耐久性をより向上させることができる。
【0061】
次に、色素増感太陽電池100の製造方法について図5〜図13を用いて説明する。
【0062】
[準備工程]
まず作用極1及び対極2を準備する。
【0063】
(作用極)
作用極1は以下のようにして得ることができる(図5)。
【0064】
はじめに透明基板6の上に透明導電膜7を形成して積層体を形成する。透明導電膜7の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが用いられる。これらのうちスプレー熱分解法が装置コストの点から好ましい。
【0065】
透明基板6を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板6の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50μm〜10000μmの範囲にすればよい。
【0066】
透明導電膜7を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜7は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜7が単層で構成される場合、透明導電膜7は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。また透明導電膜7として、複数の層で構成される積層体を用いると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOで構成される層と、FTOで構成される層との積層体を用いることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電膜7が実現できる。透明導電膜7の厚さは例えば0.01μm〜2μmの範囲にすればよい。
【0067】
次に、上記のようにして得られた透明導電膜7上に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。酸化物半導体粒子としては、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)及び酸化アルミニウム(Al)などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0068】
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して透明導電膜7上に多孔質酸化物半導体層8を形成する。焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は350℃〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0069】
多孔質酸化物半導体層8は、多孔質酸化物半導体で構成される。多孔質酸化物半導体は、例えば上述した酸化物半導体粒子で構成される。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、即ち光電変換を行う場が広くなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。ここで、多孔質酸化物半導体層8が、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させてなる積層体で構成されることが好ましい。この場合、積層体内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、入射光を積層体の外部へ逃がすことなく効率よく光を電子に変換することができる。多孔質酸化物半導体層8の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層8は、異なる材料からなる複数の半導体層の積層体で構成することもできる。
【0070】
(対極)
一方、対極2は、以下のようにして得ることができる(図6)。
【0071】
即ちまず対極基板を準備する。そして、対極基板の上に触媒膜を形成する。触媒膜の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
【0072】
対極基板としては、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン等の耐食性の金属材料や、ITO、FTO等の導電性酸化物や、炭素、導電性高分子を用いることができる。
【0073】
触媒膜は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0074】
対極2の厚さは例えば0.005mm〜0.5mmの範囲内で、対極2が可撓性を有する厚さを適宜決定すればよい。
【0075】
例えば対極基板が金属材料である場合には、対極2に可撓性を付与しうる対極基板の厚さは通常500μm以下であり、好ましくは200μm以下である。下限は、ピンホールの発生が十分少ない厚みであればよく、この厚みは箔を製造する方法や金属の種類により異なる。例えば、圧延チタン箔を対極基板として用いる場合には対極基板の厚さは通常、20μm以上であればよいが、ピンホールの発生が十分少ない薄い箔が得られる場合にはこの限りではない。
【0076】
[無機封止部形成工程]
次に、図7及び図8に示すように、作用極1のうち透明導電膜7の表面上の部位であって多孔質酸化物半導体層8を包囲する第1環状部位C1に無機封止部4Bを形成する。具体的には、無機封止部4Bは、透明導電膜7の第1環状部位C1に集電配線11を形成した後、集電配線11を配線保護層12で被覆することによって得ることができる。
【0077】
ここで、集電配線11は、銀などの金属材料を含むペーストを塗布し焼成することによって得ることができる。配線保護層12は、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料を含むペーストを集電配線11に塗布し焼成することによって得ることができる。
【0078】
[樹脂封止部形成工程]
一方、図9及び図10に示すように、対極2の表面上の部位である第2環状部位C2に樹脂封止部4Aを形成する。樹脂封止部4Aを構成する樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などが挙げられる。樹脂封止部4Aが熱可塑性樹脂からなる場合には、例えば熱可塑性樹脂からなる環状のシートを準備し、このシートを第2環状部位C2に配置し加熱溶融させることによって得ることができる。樹脂封止部4Aが紫外線硬化樹脂である場合には、樹脂封止部4Aは、紫外線硬化樹脂の前駆体である紫外線硬化性樹脂を対極2の第2環状部位C2に塗布することによって得ることができる。
【0079】
[色素担持工程]
次に、作用極1の多孔質酸化物半導体層8に光増感色素を担持させる。このためには、作用極1を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層8に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を酸化物半導体多孔層8に吸着させることによっても、光増感色素を多孔質酸化物半導体層8に担持させることが可能である。
【0080】
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0081】
[電解質層配置工程]
次に、図11に示すように、作用極1上であって無機封止部4Bの内側に電解質3を配置する。電解質3は、作用極1上であって無機封止部4Bの内側に注入したり、印刷したりすることによって得ることができる。
【0082】
ここで、電解質3が液状である場合は、電解質3を、無機封止部4Bを超えて無機封止部4Bの外側に溢れるまで注入することができる。この場合、無機封止部4Bの内側に電解質3を十分に注入することが可能となる。また無機封止部4Bと樹脂封止部4Aとを接着して封止部4を形成するに際し、作用極1と対極2と封止部4とによって囲まれるセル空間Sから空気を十分に排除することができ、光電変換効率を十分に向上させることができる。
【0083】
電解質3は通常、電解液で構成され、この電解液は例えばI/Iなどの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/Iのほか、臭素/臭化物イオンなどの対が挙げられる。色素増感太陽電池100は、酸化還元対としてI/Iのような揮発性溶質及び、高温下で揮発しやすいアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルのような有機溶媒を含む電解液を電解質として用いた場合に特に有効である。この場合、色素増感太陽電池100の周囲の環境温度の変化によりセル空間Sの内圧の変化が特に大きくなり、封止部4と対極2との界面、および封止部4と作用極1との界面から電解質3が漏洩しやすくなるからである。なお、上記揮発性溶媒にはゲル化剤を加えてもよい。また電解質3は、イオン液体と揮発性成分との混合物からなるイオン液体電解質で構成されてもよい。この場合も、色素増感太陽電池100の周囲の環境温度の変化によりセル空間Sの内圧の変化が大きくなるためである。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが好適に用いられる。また揮発性成分としては、上記の有機溶媒や、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、LiI、I、4−t−ブチルピリジンなどが挙げられる。さらに電解質3としては、上記イオン液体電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットイオンゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化したイオン液体電解質を用いてもよい。
【0084】
[重合せ工程]
次に、図12に示すように、作用極1と対極2とを対向させて、無機封止部4Bと樹脂封止部4Aとを重ね合わせる。
【0085】
[封止部形成工程]
次に、樹脂封止部4Aを、無機封止部4B及び対極2に接着させる。
【0086】
このとき、樹脂封止部4Aを構成する樹脂として、例えば熱可塑性樹脂を用いる場合は、樹脂封止部4Aを加圧しながら溶融させる。具体的には図13に示すように、枠状部材20を用い、対極2を介して樹脂封止部4Aを加圧しながら加熱して溶融させる。ここで、枠状部材20としては、その環状の加圧面21に、対極2に形成しようとする環状溝15と同様の形状の環状溝21aが形成されたものを用いる。具体的には、複数の環状溝21aが加圧面21に沿って形成されたものを用いる。ここで、枠状部材20の材料は、良好な熱伝導性を有するものであることが好ましく、このような材料としては、例えば真鍮、銅などが挙げられる。このような加圧面21を有する枠状部材20を用いて樹脂封止部4Aを加熱及び加圧すると、対極2は可撓性を有するため、対極2の周縁部は容易に変形し、ジグザグ構造を有することとなる。
【0087】
即ち、対極2の第2環状部位C2に、複数の環状溝15が、電解質3から離れる方向に沿って形成され、対極2の第2環状部位C2と反対側の表面にも、複数の環状溝15が形成される。このとき、各環状溝15は、電解質3から離れる方向に交差するように延びることになる。そして、対極2の第2環状部位C2に複数の環状溝15が形成されると同時に、樹脂封止部4Aには、対極2側に複数の環状突起部が形成されることになる。
【0088】
なお、上記ジグザグ構造は、対極2を介して加圧面21の形状が転写される。このため、加圧面21の形状が必ずしもそのまま転写されて形成されるのではなく、通常は加圧面21の形状を基に変形した形状となる。例えば、加圧面21の環状溝21aが先端角度60°の規則正しい形状を有していても、そのまま先端角度60°の溝形状が対極2の第2環状部位C2に転写されるものではない。例えば第2環状部位C2が、先端角度が少し大きくなった溝形状、例えば、先端角度が63°程度の溝を有する場合がある。さらにこの先端角度は、場所により異なり、62°の溝や70°の溝が第2環状部位C2に形成されることも起こり得る。また加圧面21には溝ではなく、曲面が形成されていてもよい。この場合、第2環状部位C2には、加圧面21の形状を基に変形した形状が形成される。加圧面21に溝、曲面のいずれが形成されている場合でも、厚さ増大部14aと厚さ減少部14bを形成することが可能である。
【0089】
こうして、作用極1と対極2とを貼り合せ、作用極1と対極2との間に封止部4を形成する。このとき、封止部4は、樹脂封止部4Aと無機封止部4Bとからなり、樹脂封止部4Aが最も外側に厚さ減少部14bを有し、電解質3から離れる方向に向かって、厚さ増大部14aと厚さ減少部14bとを交互に配置させ、樹脂封止部4Aの最も内側に厚さ増大部14aを有するものとなる。無機封止部4Bと樹脂封止部4Aとの貼合せは、例えば大気圧下で行うことができる。
【0090】
このとき、無機封止部4B及び樹脂封止部4Aの加圧は通常、1〜50MPaで行い、好ましくは2〜30MPa、より好ましくは3〜20MPaで行う。
【0091】
樹脂封止部4Aを構成する樹脂として、例えば熱可塑性樹脂を用いる場合は、樹脂封止部4Aを溶融させるときの温度は、樹脂封止部4Aの融点以上とする。
【0092】
但し、樹脂封止部4Aを溶融させるときの温度は、(樹脂封止部4Aに含まれる樹脂の融点+200℃)以下であることが好ましい。上記温度が(樹脂封止部4Aに含まれる樹脂の融点+200℃)を超えると、樹脂封止部4Aに含まれる樹脂が熱によって分解するおそれがある。
【0093】
なお、樹脂封止部4Aが紫外線硬化樹脂である場合は、樹脂封止部4Aを加圧しながら紫外線を照射することによって樹脂封止部4Aを、無機封止部4B及び対極2に接着させる。このとき、枠状部材20と同様の形状を有する枠状部材を用い、対極2を介して樹脂封止部4Aを加圧しながら、枠状部材を通して樹脂封止部4Aに紫外線を照射する。ここで、枠状部材を構成する材料としては、紫外線を透過するガラス等が用いられる。この枠状部材を用いて樹脂封止部4Aを加圧すると、対極2は可撓性を有するため、対極2の周縁部は容易に変形し、ジグザグ構造を有することとなる。即ち、対極2の第2環状部位C2に、複数の環状溝15が、電解質3から離れる方向に沿って形成され、対極2の第2環状部位C2と反対側の表面にも、複数の環状溝15が形成される。このとき、各環状溝15は、電解質3から離れる方向に交差するように延びることとなる。そして、対極2の第2環状部位C2に複数の環状溝15が形成されると同時に、樹脂封止部4Aには、対極2側に複数の環状突起部が形成されることになる。
【0094】
こうして、色素増感太陽電池100が得られ、色素増感太陽電池100の製造が完了する。
【0095】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る色素増感太陽電池の第2実施形態について図14を用いて説明する。図14は、本発明に係る色素増感太陽電池の第2実施形態を示す部分拡大断面図である。なお、図14において、第1実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0096】
図14に示すように、本実施形態の色素増感太陽電池200は、封止部4及び作用極1の境界13と、封止部4及び対極2の境界14と、封止部4の外周面と、対極2のうち封止部4と反対側の表面とを覆う被覆部5を更に備える点で第1実施形態の色素増感太陽電池100と相違する。
【0097】
この場合、電解質3の漏洩又は外部からの電解質3への酸素や水分の侵入が、封止部4のみならず被覆部5によっても抑制されることになる。特に、封止部4と対極2との境界14、封止部4と作用極1との境界13での漏洩又は外部からの電解質3への酸素や水分の侵入が被覆部5によって効果的に抑制される。また被覆部5は、対極2のうち封止部4と反対側の表面をも覆っているため、封止部4と対極2との界面および被覆部5と対極2との界面を通る電解質3の漏洩、外部から封止部4と対極2との界面および被覆部5と対極2との界面を通ってくる水分や酸素の侵入をも抑制することもできる。特に対極2の封止部4と反対側の表面には環状溝が形成されているため、対極2の封止部4と反対側の表面には環状溝が形成されていない場合に比べて、電解質3や水分、酸素等の通過距離がより長くなる。このため、電解質3の界面漏洩や、外部からの水分や酸素の侵入をより効果的に抑制できる。
【0098】
ここで、被覆部5は樹脂を含む。樹脂としては、酸変性ポリオレフィン、紫外線硬化樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂またはエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いることができる。特に、樹脂として、酸変性ポリオレフィンまたは紫外線硬化樹脂を用いた場合、被覆部5と作用極1、対極2、封止部4との接着が強固になり、それぞれの界面において、電解質3の漏洩及び外部からの電解質3への酸素や水分の侵入をより十分に抑制できる。
【0099】
なお、被覆部5は樹脂のほか、金属、ガラスなどの無機材料を含んでもよい。この場合、被覆部5は、樹脂中に無機材料を分散させたものであってもよく、樹脂からなる樹脂層と、無機材料からなる無機層との積層体で構成するようにしてもよい。
【0100】
本発明は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1及び第2実施形態では、封止部4が樹脂封止部4Aと無機封止部4Bとによって構成され、樹脂封止部4Aは対極2のみに接着されているが、図15に示す色素増感太陽電池300のように、封止部304が樹脂封止部4Aのみからなり、樹脂封止部4Aが作用極1及び対極2の両方に接着されていてもよい。即ち、色素増感太陽電池300においては、封止部304が無機封止部4Bを有していなくてもよい。この場合、厚さ増大部14aの厚さがそのまま封止部304の厚さとなり、この厚さは電解質3から離れるにつれて増大することになる。
【0101】
また上記第1及び第2実施形態においては、作用極1の第1環状部位C1が平坦面となっているが、第1環状部位C1は必ずしも平坦面である必要はない。例えば第1環状部位C1に、第2環状部位C2と同様に環状溝15が1つ又は複数形成されていてもよい。
【0102】
また上記第1及び第2実施形態では、厚さ増大部14aが電解質3に接触しているが、厚さ増大部14aは電解質3に接触していなくてもよい。即ち、封止部4は、厚さ増大部14aよりも電解質3側に、厚さが一定で且つ電解質3に接触する部分や、電解質3から離れるにつれて厚さが減少する厚さ減少部14bを有していてもよい。換言すれば、厚さ増大部14aは樹脂封止部4A内のいかなる位置にあってもよい。この場合、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保することができる。これは以下の理由によるものである。すなわち、樹脂封止部4Aが厚さ増大部14aを有してさえいれば、厚さ増大部14aにより、厚さ増大部14aの電解質3側で厚さが十分に小さくされ、電解質に対する樹脂封止部4Aの露出面積をより小さくすることができ、電解質3の漏洩を十分に抑制することができる。従って、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されても、電解質3の漏洩を十分に抑制することができる。一方、厚さ増大部14aでは電解質3から離れるにつれて厚さが増大している。即ち、電解質3とは反対側(電解質3が届きにくい側)に厚さが大きい部分がある。別言すると、電解質3の影響が小さい位置で厚さを確保することができる。このため、厚さ増大部14aにより対極2に対する樹脂封止部4Aの接着力が十分に強化される。従って、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されても、対極2に対する樹脂封止部4Aの接着力の低下を十分に抑制することができる。
【0103】
また上記第1及び第2実施形態では、対極2の第2環状部位C2のみならず、対極2の第2環状部位C2と反対側にも環状溝15が形成されているが、対極2の第2環状部位C2と反対側の環状溝15は必ずしも必要なものでない。例えば対極2が可撓性を有しない場合には、樹脂封止部4Aを加圧する前に、対極2の第2環状部位C2に予め環状溝15を形成しておき、樹脂封止部4Aの加圧は、平坦な加圧面を有する枠状部材を用いて行えばよい。なお、この場合には、対極2の第2環状部位C2の構成要素である、対極2の厚さ増大部対向接触面2aと対極2の厚さ減少部対向接触面2bを予め形成する必要があるが、これらは、サンドブラストまたはウォータブラスト等により対極2の表面を切削することにより形成することができる。
【0104】
さらに上記第1及び第2実施形態では、樹脂封止部4Aは、複数の厚さ増大部14aと複数の厚さ減少部14bを有しているが、樹脂封止部4Aは、図16に示す色素増感太陽電池400のように、厚さ増大部14aを1つのみ有していればよく、必ずしも厚さ減少部14bを有していなくてもよい。
【0105】
また上記第1及び第2実施形態では、厚さ増大部14aと対極2の厚さ増大部対向接触面2a、及び厚さ減少部14bと対極2の厚さ減少部対向接触面2bは平坦面となっているが、この厚さ増大部対向接触面2a、厚さ減少部対向接触面2bは必ずしも平坦面である必要はなく、電解質3から離れるにつれて厚さ増大部14aの厚さを増大させ又は厚さ減少部14bの厚さを減少させることが可能であれば曲面であってもよい。
【0106】
また上記第1および第2実施形態では、環状の厚さ増大部14aおよび環状の厚さ減少部14bはそれぞれ連続状に形成されているが、不連続に形成されていてもよい。
【0107】
さらに上記第1および第2実施形態では、対極2のみならず、作用極1が可撓性を有していてもよい。あるいは、対極2に代えて、作用極1が可撓性を有していてもよい。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0109】
(実施例1)
はじめに、10cm×10cm×4mmのFTO基板を準備した。続いて、FTO基板の上に、ドクターブレード法によって酸化チタンペースト(Solaronix社製、Ti nanoixide
T/sp)を、その厚さが10μmとなるように塗布した後、熱風循環タイプのオーブンに入れて500℃で3時間焼成し、FTO基板上に多孔質酸化物半導体層を形成し、5cm×5cmの作用極を得た。
【0110】
一方、6cm×6cm×2mmのチタンからなる対極基板を準備した。そして、対極基板上に、スパッタリング法により、厚さ10nmの白金触媒膜を形成し、対極を得た。
【0111】
こうして作用極及び対極を準備した。
【0112】
次に、アイオノマーであるハイミラン(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)からなる6cm×6cm×100μmのシートの中央に、5cm×5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。そして、この樹脂シートを、作用極の多孔質酸化物半導体層を包囲する環状の部位に配置した。この樹脂シートを180℃で5分間加熱し溶融させることによって環状部位に接着し、FTO基板上における環状部位に第1樹脂封止部を形成した。
【0113】
次に、この作用極を、光増感色素であるN719色素を0.2mM溶かした脱水エタノール液中に一昼夜浸漬して作用極に光増感色素を担持させた。
【0114】
一方、上記と同一の樹脂シートを準備し、この樹脂シートを対極の白金触媒膜上における環状の部位に配置した。そして、この樹脂シートを180℃で5分間加熱し溶融させる
ことによって環状部位に接着し、対極の白金触媒膜上における環状部位に第2樹脂封止部を形成した。
【0115】
次いで、第1樹脂封止部を設けた作用極を、FTO基板の多孔質酸化物半導体層側の表面が水平になるように配置し、第1樹脂封止部の内側に、メトキシアセトニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む揮発系電解質を注入した。
【0116】
次に、第2樹脂封止部を設けた対極を、作用極に対向させ、大気圧下で、第1樹脂封止部と第2樹脂封止部とを重ね合わせた。そして、大気圧下で、第1樹脂封止部と同じ大きさの真鍮製の枠状部材を加熱し、この枠状部材を対極の第2樹脂封止部とは反対側に配置し、プレス機を用いて、5MPaで第1樹脂封止部及び第2樹脂封止部を加圧しながら148℃で加熱して溶融させ、1つの厚さ増大部からなる封止部を得た。このとき、枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が切欠き面となっているものを用いた。具体的には、枠状部材を平坦面上に、加圧面を平坦面側に向けて置いたときに、環状の加圧面の最内周縁が平坦面に接し、環状の加圧面の最外周縁の平坦面からの高さが5μmとなるように且つ加圧面が平坦面となるように加工された枠状部材を用いた。またこのとき、厚さ増大部は、最小厚さが10μmで、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように形成した。こうして色素増感太陽電池を得た。
【0117】
(実施例2)
厚さ増大部に対して電解質と反対側に、電解質から離れるにつれて厚さが減少する厚さ減少部をさらに設け、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように且つ第1及び第2樹脂封止部として、エチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製)を用いて封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が深さ5μm、幅50μmの1つのV字状の溝で構成されているものを用いた。
【0118】
(実施例3)
2つの厚さ増大部と1つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が電解質から離れる方向に向かって交互に形成され、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が、深さ5μmで幅50μmの1つのV字状の環状溝とその外側に環状溝に沿って形成された1つの切欠き面とで構成されているものを用いた。
【0119】
(実施例4)
2つの厚さ増大部と2つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が電解質から離れる方向に向かって交互に形成され且つ厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が深さ5μmで幅が50μmの2つのV字状の環状溝で構成されているものを用いた。
【0120】
(実施例5)
3つの厚さ増大部と3つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が電解質から離れる方向に向かって交互に形成され厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように且つ第1樹脂封止部及び第2樹脂封止部として、エチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製)を用いて封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が深さ5μmで幅が50μmの3つのV字状の環状溝で構成されているものを用いた。
【0121】
(実施例6)
5つの厚さ増大部と5つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が電解質から離れる方向に向かって交互に形成され、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように且つ第1樹脂封止部及び第2樹脂封止部として、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体であるバイネル(デュポン社製)を用いて封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が深さ5μmで幅が50μmの5つのV字状の環状溝で構成されているものを用いた。
【0122】
(実施例7)
6つの厚さ増大部と5つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が電解質から離れる方向に向かって交互に形成され厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように且つ第1樹脂封止部及び第2樹脂封止部として、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体であるバイネル(デュポン社製)を用いて封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が、深さ5μmで幅が50μmの5つのV字状の環状溝とそれらの外側に環状溝に沿って形成された1つの切欠き面とを有する加圧面を持ったものを用いた。
【0123】
(実施例8)
まず実施例1と同様にして作用極及び対極を準備した。
【0124】
次に、光増感色素であるN719色素を0.2mM溶かした脱水エタノール液中に一昼夜浸漬して作用極に光増感色素を担持させた。
【0125】
次に、作用極の多孔質酸化物半導体層を包囲する環状の部位にUV硬化性樹脂である31x−101(スリーボンド社製)を塗布し乾燥させて第1樹脂封止部を形成した。
【0126】
次に、対極の白金薄膜上における環状部位に、UV硬化性樹脂である31x−101を塗布し乾燥させ、第2樹脂封止部を形成した。
【0127】
次いで、第2樹脂封止部を設けた対極を、白金薄膜の表面が水平になるように配置し、第2樹脂封止部の内側に、メトキシアセトニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む揮発系電解質を注入した。
【0128】
次に、第1樹脂封止部を設けた作用極を、対極に対向させ、大気圧下で作用極と対極とを重ね合わせた。そして、大気圧下で、第1樹脂封止部と同じ大きさのガラス製の枠状部材を作用極の第1樹脂封止部とは反対側に配置し、プレス機を用いて、5MPaで第1樹脂封止部及び第2樹脂封止部を加圧しながら枠状部材を通して第1樹脂封止部及び第2樹脂封止部に紫外線を照射させた。こうして、樹脂封止部の最も内側に厚さ増大部を配置し、電解質から離れる方向に向かって8つの厚さ増大部及び8つの厚さ減少部を交互に配列してなる封止部を形成した。このとき、ガラス製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が深さ5μmで幅が50μmの8つのV字状の溝で構成されているものを用いた。またこのとき、厚さ増大部及び厚さ減少部はそれぞれ、最小厚さが20μmで、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように形成した。こうして色素増感太陽電池を得た。
【0129】
(実施例9)
封止部を形成した後、UV硬化性樹脂である31x−101中にガラスを混入してなる樹脂組成物を、封止部と作用極との境界、封止部と対極との境界を覆うように塗布し、この樹脂組成物に紫外線を照射することによって被覆部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0130】
(実施例10)
封止部を形成した後、UV硬化性樹脂である31x−101中にガラスを混入してなる樹脂組成物を、封止部と作用極との境界、封止部と対極との境界を覆うように塗布し、この樹脂組成物に紫外線を照射することによって被覆部を形成したこと以外は実施例4と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0131】
(実施例11)
封止部を形成した後、以下のように被覆部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0132】
即ちまず酸変性ポリオレフィンであるニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製)中にガラスを混入してなる複合フィルムを準備した。次いで、この複合フィルムを、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように配置し、複合フィルムを覆うようにテフロンフィルムをかぶせた。そして、テフロンフィルム越しに複合フィルムを加熱溶融させ、室温で自然冷却させた後、テフロンフィルムを除去した。こうして被覆部を形成した。
【0133】
(実施例12)
封止部を形成した後、以下のように被覆部を形成したこと以外は実施例3と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0134】
即ちまず酸変性ポリオレフィンであるバイネル(デュポン社製)中にガラスを混入してなる複合フィルムを準備した。次いで、この複合フィルムを、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように配置し、複合フィルムを覆うようにテフロンフィルムをかぶせた。そして、テフロンフィルムを越しに複合フィルムを加熱溶融させ、室温で自然冷却させた後、テフロンフィルムを除去した。こうして被覆部を形成した。
【0135】
(実施例13)
厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように且つ第1及び第2樹脂封止部としてハイミランを用いて封止部を形成した後、以下のようにして被覆部を形成したこと以外は実施例2と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0136】
即ちまずブチルゴムとアルミ板との積層板を準備した。次いで、この積層板を、ブチルゴム層を封止部側に向けて、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように配置し、積層体を覆うようにテフロンフィルムをかぶせた。そして、テフロンフィルム越しに積層板を加熱溶融させ、室温で自然冷却させた後、テフロンフィルムを除去した。こうして被覆部を形成した。
【0137】
(実施例14)
3つの厚さ増大部と2つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が、電解質から離れる方向に向かって交互に形成され、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが40μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように且つ第1樹脂封止部及び第2樹脂封止部として、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体であるバイネルを用いて封止部を形成し、その後、以下のようにして被覆部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0138】
即ちまずブチルゴムとアルミ板との積層板を準備した。次いで、この積層板を、ブチルゴム層を封止部側に向けて、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように配置し、積層板を覆うようにテフロンフィルムをかぶせた。そして、テフロンフィルム越しに積層板を加熱溶融させ、室温で自然冷却させた後、テフロンフィルムを除去した。こうして被覆部を形成した。
【0139】
(実施例15)
第1及び第2樹脂封止部として、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体であるバイネルを用い、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが60μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように封止部を形成した後、以下のようにして被覆部を形成したこと以外は実施例4と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0140】
即ちまずエポキシ樹脂組成物であるマクシーブ(三菱瓦斯化学社製)を準備した。次いで、このエポキシ樹脂組成物を、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように塗布した。その後、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた。こうして被覆部を形成した。
【0141】
(実施例16)
厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが30μm、最大厚さと最小厚さとの差が90μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例15と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0142】
(実施例17)
厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが30μm、最大厚さと最小厚さとの差が95μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例15と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0143】
(実施例18)
厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが100μm、最大厚さと最小厚さとの差が50μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例15と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0144】
(実施例19)
3つの厚さ増大部と3つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が、電解質から離れる方向に向かって交互に形成され、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが60μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように封止部を形成し、その後、以下のようにして被覆部を形成したこと以外は実施例8と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0145】
即ちまずエポキシ樹脂組成物であるEP51FL−2(MASTER BOND社製)を準備した。次いで、このエポキシ樹脂組成物を、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように塗布した。その後、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた。こうして被覆部を形成した。
【0146】
(実施例20)
封止部における最小厚さと最大厚さとの差が1μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0147】
(実施例21)
封止部における最小厚さと最大厚さとの差が1μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例3と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0148】
(実施例22)
封止部における最小厚さと最大厚さとの差が1μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例9と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0149】
(実施例23)
1つの厚さ増大部と1つの厚さ減少部とを有し、封止部における最小厚さと最大厚さとの差が1μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例11と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0150】
(実施例24)
3つの厚さ増大部と3つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が、電解質から離れる方向に向かって交互に形成され、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが40μm、最小厚さと最大厚さとの差が1μmとなるように封止部を形成すると共に、封止部を形成した後、以下のようにして被覆部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0151】
即ちまずブチルゴムとアルミ板との積層板を準備した。次いで、この積層板を、ブチルゴム層を封止部側に向けて、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように配置し、積層板を覆うようにテフロンフィルムをかぶせた。そして、テフロンフィルム越しに積層板を加熱溶融させ、室温で自然冷却させた後、テフロンフィルムを除去した。こうして被覆部を形成した。
【0152】
(実施例25)
3つの厚さ増大部と3つの厚さ減少部とを有し、厚さ増大部と厚さ減少部が、電解質から離れる方向に向かって交互に形成され、厚さ増大部と厚さ減少部の最小厚さが40μmで、最小厚さと最大厚さとの差が1μmとなるように封止部を形成すると共に、封止部を形成した後、以下のようにして被覆部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0153】
即ちまずエポキシ樹脂組成物であるEP008(米山化学社製)を準備した。次いで、このエポキシ樹脂組成物を、封止部及び対極の境界と、封止部及び作用極の境界と、対極の外周面と、対極の背面の一部とを覆うように且つ封止部を包囲するように塗布した。その後、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた。こうして被覆部を形成した。
【0154】
(実施例26)
PETフィルムの上にスパッタ法でFTO膜を形成した厚さ75μmの対極基板を用いたこと以外は実施例6と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0155】
(実施例27)
PENフィルムの上にスパッタ法でFTO膜を形成した厚さ75μmの対極基板を用いたこと以外は実施例6と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0156】
(実施例28)
厚さ増大部に対して電解質側に、電解質から離れるにつれて厚さが減少する厚さ減少部をさらに設け、厚さ減少部及び厚さ増大部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように且つ第1及び第2樹脂封止部として、エチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製)を用いて封止部を形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が高さ5μm、幅50μmの1つのクサビ状の突起で構成されているものを用いた。
【0157】
(実施例29)
1つの厚さ増大部と2つの厚さ減少部とを有し、厚さ減少部と厚さ増大部が電解質から離れる方向に向かって交互に形成され、厚さ増大部及び厚さ減少部の最小厚さが20μm、最大厚さと最小厚さとの差が5μmとなるように封止部を形成したこと以外は実施例28と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき真鍮製の枠状部材としては、環状の加圧面を有し、環状の加圧面が、深さ5μmで幅50μmの1つのクサビ状の突起とその外側にクサビ状の突起に沿って形成された1つの切欠き面とで構成されているものを用いた。
【0158】
(比較例1)
封止部を、最小厚さが5μmで、最小厚さと最大厚さとの差が0μmとなるように形成したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、枠状部材を平坦面上に、加圧面を平坦面側に向けて置いたときに、環状の加圧面の最内周縁も最外周縁も平坦面に接するように且つ加圧面が平坦面となるように加工された枠状部材を用いた。
【0159】
(比較例2)
封止部を、最小厚さが20μmで、最小厚さと最大厚さとの差が0μmとなるように形成したこと以外は実施例8と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、ガラス製の枠状部材としては、枠状部材を平坦面上に、加圧面を平坦面側に向けて置いたときに、環状の加圧面の最内周縁も最外周縁も平坦面に接するように且つ加圧面が平坦面となるように加工された枠状部材を用いた。
【0160】
(比較例3)
封止部を、最小厚さが40μmで、最小厚さと最大厚さとの差が0μmとなるように形成したこと以外は実施例2と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、枠状部材を平坦面上に、加圧面を平坦面側に向けて置いたときに、環状の加圧面の最内周縁も最外周縁も平坦面に接するように且つ加圧面が平坦面となるように加工された枠状部材を用いた。
【0161】
(比較例4)
封止部を、最小厚さが60μmで、最小厚さと最大厚さとの差が0μmとなるように形成したこと以外は実施例6と同様にして色素増感太陽電池を作製した。このとき、真鍮製の枠状部材としては、枠状部材を平坦面上に、加圧面を平坦面側に向けて置いたときに、環状の加圧面の最内周縁も最外周縁も平坦面に接するように且つ加圧面が平坦面となるように加工された枠状部材を用いた。
【0162】
[高温・大気圧環境下での色素増感太陽電池の耐久性評価:評価1]
実施例1〜29及び比較例1〜4で得られた色素増感太陽電池について、光電変換効率(η)を測定した。続いて、色素増感太陽電池について、大気圧下、85℃の高温環境下で1000h放置した後の光電変換効率(η)も測定した。そして、下記式:光電変換効率の保持率(%)=η/η×100
に基づき、光電変換効率の保持率(光電変換保持率)を算出した。結果を表1に示す。
【0163】
[高温・低圧環境下での色素増感太陽電池の耐久性評価:評価2]
実施例1〜29及び比較例1〜4で得られた色素増感太陽電池について、800hPaの低圧下で且つ85℃の高温環境下で1000h放置した後の光電変換効率(η)を測定し、上記と同様にして光電変換効率の保持率を算出した。結果を表1に示す。
【0164】
[高温・高湿・大気圧環境下での色素増感太陽電池の耐久性評価:評価3]
実施例1〜29及び比較例1〜4で得られた色素増感太陽電池について、大気圧下、85℃で、85%RHの高湿環境下で1000h放置した後の光電変換効率(η)を測定し、上記と同様にして光電変換効率の保持率を算出した。結果を表1に示す。
【表1】

【0165】
表1に示す結果より、実施例1〜29の色素増感太陽電池は、比較例1〜4の色素増感太陽電池に比べて、高温環境下での光電変換効率の保持率が高いことが分かった。特に、実施例1〜29の色素増感太陽電池は、低圧環境下では、比較例1〜4の色素増感太陽電池に比べて、光電変換効率の保持率がより一層高くなることが分かった。また実施例1〜29の色素増感太陽電池は、比較例1〜4の色素増感太陽電池に比べると、高温・高湿環境下での光電変換効率の保持率も高いことが分かった。さらに、実施例2、実施例28及び実施例29の結果より、樹脂封止部が厚さ増大部を電解質に接触させていなくても、高温環境下での光電変換効率の保持率が高いことが分かった。
【0166】
よって、本発明の色素増感太陽電池によれば、高温環境下で使用されても、十分な耐久性を確保できることが確認された。
【符号の説明】
【0167】
1…作用極(電極)
2…対極(電極)
3…電解質
4…封止部
4A…樹脂封止部
4B…無機封止部
5…被覆部
13…作用極と封止部との境界
14…対極と封止部との境界
14a…厚さ増大部
14b…厚さ減少部
14c…傾斜面
14d…傾斜面
15…環状溝
100,200,300,400…色素増感太陽電池
S…セル空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の電極と、
前記一対の電極を連結する封止部と、
前記一対の電極と前記封止部とによって囲まれるセル空間に充填される電解質とを備えており、
前記封止部が、樹脂を含む樹脂封止部を有し、
前記樹脂封止部が、前記電解質から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部を有し、前記厚さ増大部の傾斜面に沿って、前記一対の電極のうち前記傾斜面に対向する電極に接触すること
を特徴とする色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記樹脂封止部が、前記厚さ増大部に対して前記電解質と反対側に、前記電解質から離れるにつれて厚さが減少する厚さ減少部を更に有し、前記厚さ減少部の傾斜面に沿って、前記一対の電極のうち前記傾斜面に対向する電極に接触する、請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記樹脂封止部が、前記厚さ減少部に対して前記電解質と反対側に、前記電解質から離れるにつれて厚さが増大する厚さ増大部を更に有し、前記厚さ増大部の傾斜面に沿って、前記一対の電極のうち前記傾斜面に対向する電極に接触する、請求項2に記載の色素増感太陽電池。
【請求項4】
前記樹脂封止部が、前記厚さ増大部及び前記厚さ減少部をそれぞれ複数有し、
前記厚さ増大部及び前記厚さ減少部が、前記電解質から離れる方向に向かって交互に配列され、前記厚さ増大部及び前記厚さ減少部のうち前記厚さ増大部が前記樹脂封止部において最も前記電解質に近い位置に設けられている、請求項2に記載の色素増感太陽電池。
【請求項5】
前記厚さ増大部が前記電解質に接触している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
【請求項6】
前記樹脂封止部の最大厚さが10μm以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
【請求項7】
前記厚さ増大部と前記電極との接触面と、前記厚さ減少部と前記電極との接触面とにより、前記電解質から離れる方向に交差するように延びる溝が形成されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
【請求項8】
前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極が可撓性を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
【請求項9】
前記一対の電極のうち一方の電極が、導電性基板と、前記導電性基板上に設けられる多孔質酸化物半導体層とを有し、
前記導電性基板の前記多孔質酸化物半導体層側の表面が平坦面であり、
前記厚さ増大部と前記一対の電極のうち他方の電極との接触面が、前記平坦面に対して傾斜している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
【請求項10】
前記封止部に対して前記電解質と反対側に、前記封止部と前記一対の電極との境界を少なくとも覆う被覆部を更に備え、前記被覆部が樹脂を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−99448(P2012−99448A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31674(P2011−31674)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【特許番号】特許第4793953号(P4793953)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「新エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム未来技術研究開発 高耐久性色素増感太陽電池モジュールの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】