説明

色素誘導体の製造方法

【課題】目的の色素誘導体を効率よく、安定して得ることができ、当該色素誘導体の反応スケールの変更が容易な、色素誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】色素からなる第一の原料と、第二の原料とを反応させる工程の反応終点における可視吸収スペクトルを準備し、当該可視吸収スペクトルと、反応終点として許容する特定範囲内で一致する範囲を反応終点エリアと予め設定する工程(I)と、前記第一の原料と、第二の原料とを反応させる工程(II)と、工程(II)における反応液を採取し可視吸収スペクトルを測定する工程(III−1)と、工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが前記反応終点エリアに該当するか否かを判定する工程(III−2)とを有する、反応終点を判定する工程(III)と、工程(III)において反応終点と判定された際に、工程(II)を終了する工程(IV)とを有する、色素誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
色素とは、可視光線を吸収し又は反射して固有の色を有する物質をいい、特に染料や顔料は、様々な分野で広く用いられている。
色素は単独で用いられる場合もあるが、様々な性能を付与するために、色素誘導体と共に用いられる場合がある。例えば、顔料を溶媒中に分散させて用いる場合には、当該顔料の分散性、分散安定性を向上したり、分散液の流動性を向上したり、顔料の成長を抑制するために、顔料と共に顔料誘導体を用いる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、良好な一般特性、例えば、高い着色強度、良好な分散性、良好な耐ワニス性、耐移行性、耐熱性、耐光性、耐候性及び良好な光彩を得る手段として、ピロロピロール化合物を含有する組成物が記載されており、スルホン酸塩やフタルイミドメチル基等の置換基を導入したピロロピロール化合物の合成方法が開示されている。しかし、特許文献1に開示された合成方法は、副反応が多く、得られた目的物の組成は、ロット間で差が生じるという問題があった。
【0004】
特許文献2では、結晶化改質剤として、キノフタロン誘導体が記載されており、キノフタロン誘導体の合成方法が記載されている。しかし、特許文献2に開示された合成方法は、未反応物や副生成物を多く含む為、得られた目的物の純度は低いものであった。
【0005】
特許文献3では、キナクリドンスルホン酸誘導体の製造方法が開示されている。特許文献3では、スルホン化の終点は、キナクリドン骨格に含ませるスルホン酸基またはスルホン酸塩の数に応じて、反応時間のみで制御する方法が記載されている。具体的には、反応温度を固定し反応時間を変化させて得られた反応生成物サンプルを得て、マススペクトル又は赤外線吸収スペクトルから検量線を作成し、合成条件を決定して、次回からは反応時間のみで制御している。しかし、特許文献3の方法では、反応スケールや反応温度等の反応条件を変更するたびに検量線を作成し直す必要があり、また、量産製造する場合には、原料のロットぶれ等の影響を受け、反応時間のみの制御では所望の目的物が得られないことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−149759号公報
【特許文献2】特開2004−501911号公報
【特許文献3】特開2003−96324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
色素誘導体の合成において、反応時間を長くすると、副反応が進み、副生成物が多く生成するという問題があった。一方、反応時間を短くすると、未反応物が多く、目的の色素誘導体が十分に得られないという問題があった。
このため、従来、色素誘導体が効率よく得られる反応時間と反応温度を予め検討し、これを反応条件として設定し、当該反応条件で合成を行うことにより色素誘導体を得ていた。しかしながら、このような反応時間を指標とした方法では、反応スケールや反応温度等の反応条件を変更した場合に、反応条件の検討を改めて行い、反応条件を設定し直す必要があった。
また、工業的に量産する場合、反応時間のみを管理する方法では、例えば原料のロットぶれ等、種々の要因で、反応の進行が変化してしまい、製品にロット差が生じるという問題があった。例えば、原料の色素のロットにより、溶媒に対する溶解時間が異なると、反応時間にばらつきが生じるため、目的物の収率が悪化するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、目的の色素誘導体を高収率で、安定して得ることができ、当該色素誘導体の反応スケールの変更が容易な、色素誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、予め、色素誘導体が高収率で得られる時点での反応液の可視吸収スペクトルを準備し、合成中の反応液から得られた可視吸収スペクトルと比較することにより、反応の進行を確認し、反応の終了を決定すると、目的の色素誘導体を高収率で安定的に製造できることを見出した。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
【0010】
本発明は、色素からなる第一の原料と、第二の原料とを反応させる工程を有する、色素誘導体の製造方法であって、
前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させる工程の反応終点における反応液の380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを準備し、当該可視吸収スペクトルと、反応終点として許容する特定範囲内で一致する範囲を反応終点エリアと予め設定する工程(I)と、
前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させる工程(II)と、
前記工程(II)における反応液を採取し380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを測定する工程(III−1)と、前記工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが前記反応終点エリアに該当するか否かを判定する工程(III−2)とを有する、反応終点を判定する工程(III)と、
前記工程(III)において反応終点と判定された際に、前記工程(II)を終了する工程(IV)とを有する、色素誘導体の製造方法を提供する。
【0011】
本発明に係る色素誘導体の製造方法においては、前記工程(I)において、得られた可視吸収スペクトルの特定の極大吸収波長(a−1)との差が特定範囲内で、且つ、得られた可視吸収スペクトルの特定波長(a−2)における吸光度に対する、別の特定波長(a−3)における吸光度の比との差が特定範囲内である場合を、反応終点エリアと設定することにより、反応終点の判定を容易なものとし、色素誘導体を高収率で安定して得られる点から好ましい。
【0012】
本発明に係る色素誘導体の製造方法においては、前記工程(IV)の後、更に、前記色素誘導体を、洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下となるまで、電気伝導度が0.05〜15.00μS/cmである脱イオン水で洗浄する工程(V)を有することが、得られた色素誘導体の純度が向上する点から好ましい。
【0013】
本発明に係る色素誘導体の製造方法においては、更に、乾燥後の前記色素誘導体の最大粒径を100μm以下とする粉砕工程(VI)を有することが、色素誘導体を分散して使用する場合に、分散液中に沈殿物を生じず、色素誘導体の分散性及び分散安定性を向上する点から好ましい。
【0014】
本発明に係る色素誘導体の製造方法は、前記第一の原料が顔料又は染料である、顔料誘導体又は染料誘導体の製造方法として好適に用いることができる。
【0015】
本発明に係る色素誘導体の製造方法は、C.I.ピグメントイエロー138と、フタルイミド類とを濃硫酸又は発煙硫酸中で反応させる工程を有する、C.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体の製造方法であって、
反応液をN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと省略することがある)で可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、前記工程(I)において、可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長が451.0nm〜452.0nmの範囲内にあり、且つ、波長427.5nmにおける吸光度に対する、波長428.5nmにおける吸光度の比が1.0010〜1.0070の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定する製造方法として好適に用いることができる。
【0016】
本発明に係る色素誘導体の製造方法は、C.I.ピグメントイエロー138と、濃硫酸又は発煙硫酸とを反応させる工程を有する、C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体の製造方法であって、
反応液をNMPで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、前記工程(I)において、可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が450.0nm〜452.0nmの範囲内にあり、且つ、波長451.0nmにおける吸光度に対する、波長438.0nmにおける吸光度の比が1.2200以上の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定する製造方法として好適に用いることができる。
【0017】
また、本発明に係る色素誘導体の製造方法は、ジケトピロロピロール顔料と、フタルイミド類とを濃硫酸又は発煙硫酸中で反応させる工程を有する、ジケトピロロピロール顔料のフタルイミドメチル化誘導体の製造方法であって、
反応液をNMPで可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、前記工程(I)において、可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長が475.0〜477.0nmの範囲内にあり、且つ、前記470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長における吸光度と、波長505.5nmにおける吸光度の比が0.6800〜0.7400の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定する製造方法として好適に用いることができる。前記ジケトピロロピロール顔料としては、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255又はC.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71又はC.I.ピグメントオレンジ73が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、目的の色素誘導体を、高収率で安定して得ることができ、当該色素誘導体の反応スケールや反応温度等の反応条件の変更が容易な、色素誘導体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る色素誘導体の製造方法は、色素からなる第一の原料と、第二の原料とを反応させる工程を有する、色素誘導体の製造方法であって、
前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させる工程の反応終点における反応液の380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを準備し、当該可視吸収スペクトルと、反応終点として許容する特定範囲内で一致する範囲を反応終点エリアと予め設定する工程(I)と、
前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させる工程(II)と、
前記工程(II)における反応液を採取し380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを測定する工程(III−1)と、前記工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが前記反応終点エリアに該当するか否かを判定する工程(III−2)とを有する、反応終点を判定する工程(III)と、
前記工程(III)において反応終点と判定された際に、前記工程(II)を終了する工程(IV)とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る色素誘導体の製造方法は、前記特定の第一の原料と、第二の原料との反応中に、その反応液を採取し、当該反応液の可視吸収スペクトルがあらかじめ設定された特定の反応終点エリアに該当するか否かを判定し、反応終点を確認することにより、目的の色素誘導体を高収率で安定して得ることができる。また、当該製造方法によれば、色素誘導体の反応スケールや反応温度等の反応条件を容易に変更することが可能である。
【0021】
色素誘導体の合成においては、反応時間を長くすると副反応物が多く生成し、反応時間を短くすると未反応物が多くなる。目的の色素誘導体を効率よく得るためには、副反応物と未反応物がともに少ないタイミングで反応を終了させる必要がある。このタイミングを計る手段として、従来、色素誘導体が効率よく得られる反応時間や反応温度等を予め検討して反応条件を設定し、当該設定された反応条件と同一条件で合成をおこなうことにより色素誘導体を得ていた。しかしながら、このような方法は、得られる色素誘導体の反応条件を一定にするという間接的な方法で管理することとなるため、原料のロットぶれや外部環境の変化等、種々の要因が反応の進行に影響を与え、反応生成物のロット間差を生じ得る。
これに対して、上記のように、前記第一の原料と第二の原料との反応中に、反応液の可視吸収スペクトルを測定することにより、反応の進行状況を直接的に管理することができるため、適切なタイミングで反応を終了することができる。第一の原料である色素と反応生成物である色素誘導体は、いずれも可視吸収スペクトルのいずれかの波長を吸収する特性があることから、反応液の可視吸収スペクトルは経時的に変化する。そのため、本発明においては、可視吸収スペクトルにより反応の進行状況を管理することができる。可視吸収スペクトルは、例えば反応溶媒である硫酸や発煙硫酸の除去工程を必要とするNMRスペクトルやマススペクトル等よりも短時間で容易に測定が可能なことから、量産する場合の生産管理に用いることが可能である。
また、このような方法によれば、反応スケールや反応温度等の反応条件を変更した場合であっても、反応終点における可視吸収スペクトルは同じであるため、改めて終点とする反応時間等の反応条件の検討を行う必要がなく、反応スケールや反応温度等の反応条件の変更を容易にすることができる。
【0022】
本発明の製造方法は、色素からなる第一の原料と、第二の原料とを反応させる工程を有する色素誘導体の製造方法であって、少なくとも工程(I)〜工程(IV)を有するものであり、必要に応じて更に他の工程を有していても良いものである。
以下、このような本発明の製造方法について、各工程を順に説明する。
【0023】
<工程(I)>
本発明における工程(I)は、前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させる工程の反応終点における反応液の380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを準備し、当該可視吸収スペクトルと、反応終点として許容する特定範囲内で一致する範囲を反応終点エリアと予め設定する工程であって、後述する反応終点を判定する工程(III)における反応終点エリアを予め設定する工程である。
【0024】
[色素からなる第一の原料]
本発明において色素誘導体の第一の原料は、色素からなるものである。本発明において色素とは、波長380.0〜780.0nmの電磁波のうち少なくとも一部を吸収し又は反射して、固有の色を持つ物質をいう。第一の原料として用いられる色素は、特に限定されない。第一の原料は、波長380.0〜780.0nmの電磁波のうち少なくとも一部を吸収する有機基を含む化合物から適宜選択して用いられる。中でも、色相と合成の容易さの点から、前記第一の原料としては顔料又は染料であることが好ましい。
第一の原料として用いられる顔料としては、中でも、後述する第二の原料の導入が容易である点から、芳香環を有する顔料又は染料が好ましく、例えば、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。
中でも、色相の点から、キノフタロン系顔料又はジケトピロロピロール系顔料を用いることが好ましい。
キノフタロン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71又はC.I.ピグメントオレンジ73等が挙げられる。
【0025】
[第二の原料]
本発明において、第二の原料は、前記第一の原料と反応し、後述する色素誘導体を形成するものであればよく、特に限定されない。例えば、スルホン酸誘導体を得る場合には、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸又はこれらの混合物を第二の原料として用いることができる。また、イミドアルキル化誘導体を得る場合には、環状イミド類を挙げることができる。
【0026】
前記環状イミド類としては、例えば、下記化学式(i)で表される環状イミドや、下記化学式(ii)で表されるヒドロキシアルキル環状イミドが挙げられる。例えば、フタルイミドメチル化誘導体を得る場合には、フタルイミド類、例えばフタルイミドや、ヒドロキシメチルフタルイミドが挙げられる。
【0027】
【化1】

(式(i)及び、式(ii)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、又は−(C=O)−C−(C=O)−により置換されていても良い。)
【0028】
化学式(i)及び(ii)中、Rの炭素数1〜6のアルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基等が挙げられる。中でも、製造が容易な点から、アルキレン基としては、メチレン基であることが好ましい。
【0029】
化学式(i)及び(ii)中、Xは、アリーレンを表し、1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン、2,3−ナフチレン、1,8−ナフチレン、及び2,2’−ビフェニレン等が挙げられる。化学式(i)及び(ii)中のXとしては、フタルイミドとなる1,2−フェニレン、及び、ナフタルイミドとなる1,8−ナフチレンが好ましい。
【0030】
Xのアリーレン基に置換されていても良いハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましい。
Xのアリーレン基に置換されていても良いアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、及び、置換されたフェニルスルホニル基、例えば、p−トリルスルホニル基、p−クロロフェニルスルホニル基、p−ブロモフェニルスルホニル基等を挙げることができる。
Xのアリーレン基に置換されていても良いアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンジル基等を挙げることができる。
【0031】
[反応終点における反応液の380.0nm〜780.0nmの可視吸収スペクトル]
本発明において反応終点は、通常、最も高収率で目的物の色素誘導体が得られ、且つ、副生成物が少なくなる時点に設定される。
反応終点を決定する方法は特に限定されない。例えば、反応温度を一定にして、反応液を一定時間ごとにサンプリングし、当該反応液サンプルについて、NMR分析、質量分析、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて、反応液中の目的物や副生成物等の割合等、反応状態の分析を行う。そして、最も高収率で目的物の色素誘導体が得られ、且つ、副生成物が少なくなる時点を反応終点と決定する。
【0032】
また、反応液を一定時間ごとにサンプリングした反応液サンプルについて、可視吸収スペクトルを測定しておく。可視吸収スペクトルは、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて380.0nm〜780.0nmの波長域で測定することで得ることができる。そして、上記方法により決定した反応終点における反応液の可視吸収スペクトルを、反応終点における380.0nm〜780.0nmの可視吸収スペクトルとして準備することができる。
可視吸収スペクトルの測定において、反応液の濃度が高い場合には、当該反応液を適宜溶媒で希釈して用いることができる。希釈する目安としては、予め設定された吸収波長領域における最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05(0.95〜1.05)の値になる様に希釈することが好ましい。
希釈に用いる溶媒は特に限定されないが、通常、反応液と同一の溶媒、又は、反応液と混和し、且つ、反応液や可視吸収スペクトル測定に影響を与えない溶媒から適宜選択して用いられる。
【0033】
[反応終点エリア]
本発明において、反応終点エリアとは、前記反応終点における反応液の可視吸収スペクトルと、反応終点として許容する特定範囲内で一致する範囲をいい、後述する工程(II)における反応液が反応終点にあると判定されるエリアをいう。
工程(II)における反応液から得られた可視吸収スペクトルが反応終点エリア内で一致する場合、当該反応液は、前記反応終点における色素誘導体と同等の色素誘導体が生成している。
【0034】
反応終点エリアの設定方法は特に限定されず、色素誘導体の使用方法に応じて許容される範囲内で、高収率で目的物の色素誘導体が得られ、且つ、副生成物が少なくなる範囲を適宜設定すれば良い。
反応終点として許容する特定範囲を設定する方法としては、例えば、反応収率が、先に決定した反応終点の反応収率と比べて98%以内にあり、且つ、副生成物の含有率が目的物に対して1重量%以下等を目安にすることができる。
或いは、例えば、反応液を一定時間ごとにサンプリングした反応液サンプルについて、更に、目的の使用方法における性能評価を行い、性能を良好に発揮できると判断される範囲を、反応終点として許容する特定範囲とすることができる。目的の使用方法における性能評価としては、例えば、顔料分散性の向上のために色素誘導体が用いられる場合には、顔料分散性の評価を行う。また、結晶析出抑制のために色素誘導体が用いられる場合には、結晶析出抑制の評価を行う。
そして、反応終点として許容する特定範囲のうち、最短時間の可視吸収スペクトル、反応終点の可視吸収スペクトル、及び最長時間の可視吸収スペクトルを用いて、反応終点エリアを設定する。
【0035】
また、測定した全波長域で反応終点エリアを設定する必要はなく、一部の波長について設定すればよい。
反応終点エリアの好ましい設定方法は、例えば、前記工程(I)において、得られた可視吸収スペクトルの特定の極大吸収波長(a−1)との差が特定範囲内で、且つ、得られた可視吸収スペクトルの特定波長(a−2)における吸光度に対する、別の特定波長(a−3)における吸光度の比との差が特定範囲内である場合を、反応終点エリアと設定する方法等が挙げられる。終点エリアをこのように設定した場合、後述する反応終点を判定する工程(III)を短時間で行うことができる点から好ましい。
【0036】
例えば、C.I.ピグメントイエロー138と、フタルイミド類とを濃硫酸又は発煙硫酸中で反応させる工程を有する、C.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体の製造方法において、フタルイミドメチル基を1つ導入する場合は、反応液をNMPで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、工程(I)において、可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長(a−1)が451.0nm〜452.0nmの範囲内にあり、且つ、(a−2)波長427.5nmにおける吸光度に対する、(a−3)波長428.5nmにおける吸光度の比が1.0010〜1.0070の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定することができる。
【0037】
また、C.I.ピグメントイエロー138と、濃硫酸又は発煙硫酸とを反応させる工程を有する、C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体の製造方法において、スルホン酸基を1つ導入する場合は、反応液をNMPで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、工程(I)において、可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長(a−1)が450.0nm〜452.0nmの範囲内にあり、且つ、(a−2)波長451.0nmにおける吸光度に対する、(a−3)波長438.0nmにおける吸光度の比が1.2200以上の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定することができる。
【0038】
また、ジケトピロロピロール顔料と、フタルイミド類とを濃硫酸又は発煙硫酸中で反応させる工程を有する、ジケトピロロピロール顔料のフタルイミドメチル化誘導体の製造方法において、フタルイミドメチル基を1つ導入する場合は、反応液をNMPで可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、工程(I)において、可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長(a−1)が475.0〜477.0nmの範囲内にあり、且つ、前記470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長(a−2)における吸光度と、(a−3)波長505.5nmにおける吸光度の比が0.6800〜0.7400の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定することができる。
【0039】
<工程(II)>
本発明において工程(II)は、前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させて、前記色素誘導体を得る工程である。当該反応は、通常溶媒中で、加熱することにより進行する。
当該工程(II)は、前記工程(I)の前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させる工程と基本的には同じ工程であるが、反応条件は全く同一でなくても許容される。例えば、反応スケールや反応温度等の反応条件が異なっていても、本発明の可視吸収スペクトルを反応終点の指標とする製造方法を使用することができる。
【0040】
例えば、色素のスルホン酸誘導体は、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸又はこれらの混合液などに、色素を投入してスルホン化反応させることにより得ることができる。
当該反応における濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸又はこれらの混合液の量は、特に限定されない。第一の原料によっても異なるが、通常、第一の原料1gに対して、発煙硫酸は1〜10gであり、3〜7gであることが好ましい。
また、反応温度は特に限定されないが、通常0〜200℃程度であり、50〜100℃であることが好ましい。また、上記反応の反応圧力に特に制限は無いが、常圧〜0.1MPaが好ましく、常圧がより好ましい。
【0041】
また、色素のイミドアルキル化誘導体は、濃硫酸又は発煙硫酸存在下で、色素に環状イミド類を反応させることにより得ることができる。
【0042】
例えば、色素に前記化学式(i)で表される環状イミドを反応させて、色素のイミドアルキル化誘導体を得る方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で反応させることができる。
40〜60℃の発煙硫酸又は濃硫酸中に、攪拌下、化学式(i)で表される環状イミドとパラホルムアルデヒド、ホルマリン又はトリオキサンを添加し、0.5〜2.0時間、更に攪拌する。次に、この混合物に、色素を加え、攪拌下加熱することにより、色素に環状イミドアルキル基を導入することができる。
【0043】
上記反応において、化学式(i)で表される環状イミドの使用量は、導入する環状イミドアルキル基の数により適宜調整されれば良い。例えば、色素1分子中に1つの環状イミドアルキル基を導入する場合は、副生成物を抑制し、目的物の純度を向上できる点から、色素1モル当量に対して、1.0〜3.0モル当量であることが好ましく、1.0〜2.0モル当量であることがより好ましく、更に1.0〜1.5モル当量であることがより好ましい。
上記反応において、パラホルムアルデヒド、ホルマリン又はトリオキサンの使用量は、副生成物を抑制し、目的物の純度を向上できる点から、化学式(i)で表される環状イミド1モル当量に対して、1.0〜3.0モル当量であることが好ましく、1.0〜2.0モル当量であることがより好ましく、更に1.0〜1.5モル当量であることがより好ましい。
また、上記反応における発煙硫酸又は濃硫酸の量は、特に限定されない。色素などの全ての原料が溶解する量であれば良いが、多すぎる場合は生産性が低下するので全ての原料が溶解する最小の量であることが好ましい。
上記反応において、色素を加えた後の反応温度は、特に制限は無いが、通常80〜120℃程度であり、副反応を抑制する点から80〜100℃であることが好ましい。また、上記反応の反応圧力に特に制限は無いが、常圧〜0.1MPaが好ましく、常圧がより好ましい。
【0044】
また、例えば、色素に前記化学式(ii)で表される環状イミドを反応させて、色素のイミドアルキル化誘導体を得る方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で反応させることができる。
40〜60℃の濃硫酸又は発煙硫酸中に、攪拌下、化学式(ii)で表される環状イミドを添加し溶解させる。次に、色素を添加する。この混合物を80〜120℃で加熱することにより、色素に環状イミドアルキル基を導入することができる。
【0045】
上記反応において、化学式(ii)で表されるヒドロキシアルキル環状イミドの使用量は、導入する環状イミドアルキル基の数により適宜調整すればよい。例えば、色素1分子中に1つの環状イミドアルキル基を導入する場合は、副生成物を抑制し、目的物の純度を向上できる点から、色素1モル当量に対して、1.0〜3.0モル当量であることが好ましく、1.0〜2.0モル当量であることがより好ましく、更に1.0〜1.5モル当量であることがより好ましい。
また、上記反応における濃硫酸又は発煙硫酸の量は、特に限定されない。色素などの全ての原料が溶解する量であれば良いが、多すぎる場合は生産性が低下するので全ての原料が溶解する最小の量であることが好ましい。
上記反応において、反応温度は特に制限は無いが、通常80〜120℃程度であり、副反応を抑制する点から80〜100℃であることが好ましい。また、上記反応の反応圧力に特に制限は無いが、常圧〜0.1MPaが好ましく、常圧がより好ましい。
【0046】
<工程(III)>
本発明において工程(III)は、反応終点を判定する工程である。本工程で反応終点であると判定された場合は、前記工程(II)を終了する(工程(IV))。
【0047】
[前記工程(II)における反応液を採取し380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを測定する工程(III−1)]
工程(III−1)は、反応継続中の反応液から、その一部を採取し、当該採取された反応液の可視吸収スペクトルを測定する工程である。
【0048】
反応液から、その一部を採取する方法は特に限定されない。
可視吸収スペクトルの測定方法は、前記工程(I)において説明した方法と同様のものとすることがきる。工程(III−1)で反応液の可視吸収スペクトルを測定する際には、工程(I)で準備された、反応終点における反応液の380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを測定した時と、反応液の測定濃度や希釈溶媒が同じになるようにする。
【0049】
[前記工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが前記反応終点エリアに該当するか否かを判定する工程(III−2)]
工程(III−2)は、前記工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが前記工程(I)において予め設定した反応終点エリアに該当するか否かを判定する工程である。
本工程において、前記工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが反応終点エリアに該当すると判断された場合には、前記工程(II)を終了する(工程(IV))。一方、前記工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが反応終点エリアに該当しないと判断された場合には、前記工程(II)を継続し、所定の時間後、改めて工程(III)を行う。
工程(III)を繰り返し行う場合の頻度は、特に限定されず、反応スケール等により適宜設定すればよい。
【0050】
<工程(IV)>
工程(IV)は、前記工程(III)において、前記工程(II)における反応液が反応終点にあると判定された場合に、前記工程(II)の反応を終了する工程である。
反応を終了する方法は、特に限定されないが、例えば、目的物である色素誘導体の貧溶媒を加えて目的物を析出させることにより反応を終了することができる。
【0051】
<その他の工程>
本発明の色素誘導体の製造方法においては、前記工程(I)〜(IV)の他に、更に別の工程を有していても良い。
その他の工程としては、例えば、工程(IV)の後の、洗浄、乾燥、粉砕等の工程が挙げられる。
【0052】
工程(IV)の後、更に洗浄する工程(V)を有する場合には、その洗浄方法は特に限定されない。例えば、水で洗浄する方法等が挙げられ、中でも、洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下となるまで、電気伝導度が0.05〜15.00μS/cmである脱イオン水で洗浄することが、得られた色素誘導体の純度を向上する点から好ましい。
なお、電気伝導度は、電気伝導度計により測定することができる。
【0053】
更に、前記色素誘導体の最大粒径を100μm以下とする粉砕工程(VI)を有することが、色素誘導体を分散して使用する場合に、分散液中に沈殿物を生じず、色素誘導体の分散性及び分散安定性を向上する点から好ましい。
なお、上記最大粒径は、色素誘導体を脱イオン水で1000倍希釈した分散液を、粒度分布測定装置を用いて、動的光散乱法により測定することができる。
【0054】
[色素誘導体]
本発明の製造方法により得られる色素誘導体は、色素からなる第一の原料と、第二の原料との反応により生成される化合物である。
本発明において色素誘導体とは、色素骨格に官能基を付与し、様々な機能を色素に付加する役割を持つ化合物である。
例えば、色素誘導体が分散剤として用いられる場合、顔料分散時に色素誘導体を顔料に添加すると、色素誘導体の顔料類似骨格が顔料表面に吸着もしくは結合し、それにより顔料の表面が極性を有するようになることによって、分散剤と顔料間の親和性が向上し、分散性、分散安定性を確保できると考えられる。
【0055】
本発明の製造方法は、C.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体、C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体、ジケトピロロピロール顔料のフタルイミドメチル化誘導体の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
なお、実施例において、電気伝導度は、電気伝導度計(東亜ディーケーケー(株)社製、CM−60G)により測定した。
また、得られた色素誘導体の最大粒径は、日機装(株)社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150を用いて、動的光散乱法により測定した。
【0057】
[C.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体の製造]
(実施例1)
(1)工程(I)
(1−1)(顔料誘導体の合成:A−1〜A−12)
フタルイミド25.5g及びパラホルムアルデヒド7.4gを攪拌下に交互に少量ずつ、25℃、3.6質量%の発煙硫酸560g中に添加した。この混合物を50℃に加熱し、30分間この温度で攪拌した。次に、この混合物に、C.I.ピグメントイエロー138を100g添加した。この混合物を100℃に加熱し、この温度で30分間攪拌保持し反応を進めた。次いで、この反応混合物を水3500g中に添加し、60℃で30分間攪拌した。得られた沈殿物を濾別し、7.00μS/cmの脱イオン水で洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下になるまで洗浄した。その後、80℃の真空乾燥棚中で乾燥させた後、微粉砕し、黄色粉末A−1を得た。
また、上記のC.I.ピグメントイエロー138を添加後100℃加熱の攪拌保持時間を1時間から6時間まで、30分毎に延長するように変更した以外は上記と同様の操作を行い、さらに11点の黄色粉末A−2〜A−12を得た。
【0058】
(1−2)<顔料誘導体の評価:吸光度測定>
C.I.ピグメントイエロー138を添加後100℃加熱から30分後に、上記(1−1)の反応液の一部を適宜採取し、NMPで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を、分光光度計((株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて、可視吸収スペクトルを測定した。
また、上記のC.I.ピグメントイエロー138を添加後100℃加熱の攪拌保持時間を1時間から6時間まで、30分毎に延長するように変更した以外は上記と同様の操作を行い、さらに11点の可視吸収スペクトルを測定した。
【0059】
(1−3)<顔料誘導体の評価:物性分析>
上記(1−1)で得られた黄色粉末A−1〜A−12の分子量を、TOF−MS(レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置)、(株)島津製作所製)により測定した。また、得られた合成物の構造は、1H−NMR(日本電子(株)製、JEOL JNM−LA400WB)により測定した。
【0060】
(1−4)<顔料誘導体の評価:顔料分散性の評価(粘度)>
(1−4−1)バインダー樹脂Aの合成
重合槽に、溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EMDG)130重量部を仕込み、窒素雰囲気下で110℃に昇温した後、メタクリル酸メチル(MMA)32重量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)22重量部、メタクリル酸(MAA)24重量部、開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)2重量部および連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン4.5重量部を含む混合物を、それぞれ1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、合成温度を保持して反応を続け、滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.05重量部を添加した。次に、空気を吹き込みながら、メタクリル酸グリシジル(GMA)22重量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.2重量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、バインダー樹脂A(固形分44重量%)を得た。得られたバインダー樹脂Aの重量平均分子量は8500、酸価は85mgKOH/gであった。なお、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて算出し、酸価はJIS−K0070に従い測定した。
【0061】
(1−4−2)分散剤・バインダー樹脂溶液Aの調製
225mLマヨネーズ瓶中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)75.2重量部、3級アミノ基を含むブロック共重合体(商品名:BYK−LPN6919、ビックケミー社製)(アミン価135mgKOH/g、固形分60重量%)7.45重量部、上記で得られたバインダー樹脂A6.82gをそれぞれ溶解させた。混合溶液にフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.53重量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.3モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤・バインダー樹脂溶液Aを調製した。
【0062】
(1−4−3)黄色顔料分散液A−1〜A−12の調製
上記で調製した分散剤・バインダー樹脂溶液A90重量部に色材成分としてC.I.ピグメントイエロー138(PY138:平均一次粒径10〜50nm)9.7重量部、1−1で得られた黄色粉末A−1 0.3重量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて2mmジルコニアビーズで1時間、さらに0.1mmジルコニアビーズで10時間分散し、黄色顔料分散液A−1を得た。
また、黄色粉末A−1を用いる代わりに、黄色粉末A−2〜A−12をそれぞれ用いて、上記と同様の操作を行い、さらに黄色顔料分散液A−2〜A−12を得た。
【0063】
(1−4−4)黄色顔料分散液A−1〜A−12の粘度測定
上記で得られた黄色顔料分散液A−1〜A−12の粘度測定を行った。粘度測定には、日本シイベルヘグナー(株)社製「MCR301」を用いて、せん断速度が60rpmのときのせん断粘度を測定した。
【0064】
(1−5)<顔料誘導体の評価:感光性樹脂組成物の評価(コントラスト)>
(1−5−1)カラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物A−1〜A−12の調製
上記(1−4)で得られた黄色顔料分散液A−1 66.7重量部とアルカリ可溶性樹脂((1−4−1)のバインダー樹脂A、固形分44重量%)4.28重量部、3〜4官能アクリレートモノマー(商品名:アロニックスM305、東亞合成(株)製)4.39重量部、光重合開始剤:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))0.47重量部、光重合開始剤:2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(商品名:ビイミダゾール、黒金化成(株)製))0.94重量部、光重合開始剤:2−メルカプトベンゾチアゾール(東京化成(株)製)0.15重量部、光増感剤:2,4ジエチルチオキサントン(商品名:カヤキュアーDETX−S、日本化薬(株)製)1.57重量部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)41.5重量部から成るバインダー組成物A 53.3重量部とを混合し、加圧濾過を行って、カラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物A−1を得た。
また、黄色顔料分散液A−1を用いる代わりに、黄色顔料分散液A−2〜A−12をそれぞれ用いて、上記と同様の操作を行い、さらにカラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物A−2〜A−12を得た。
【0065】
(1−5−2)感光性樹脂組成物のコントラスト測定
上記(1−5−1)で得られたカラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物A−1〜A−12のそれぞれを、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射することによって硬化膜(黄色着色層)を得た。乾燥硬化後の膜厚は目標色度y=0.506になるように調整した。黄色着色層が形成されたガラス板を240℃のクリーンオーブンでポストベークし、得られた黄色着色基板のコントラスト、色度(x、y)及び輝度(Y)を測定した。コントラストは壺坂電気(株)社製「コントラスト測定装置CT−1B」を用い、色度及び輝度はオリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP−SP200」を用いて測定した。
【0066】
(1−6)<顔料誘導体の評価:標準品の設定>
上記(1−3)、(1−4)、及び(1−5)の結果から性能を良好に発揮できると判断された顔料誘導体(黄色粉末A−5、A−6、A−7及びA−8)を標準品と設定した。
【0067】
(1−7)<顔料誘導体の評価:可視吸収スペクトル反応終点エリアの設定>
上記(1−6)で設定した標準品から得られた可視吸収スペクトルは445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が451.0nm〜452.0nmにあり、且つ、波長427.5nmにおける吸光度に対する、波長428.5nmにおける吸光度の比が1.0010〜1.0070であった。これを反応終点エリアと設定した。
【0068】
(2)工程(II)〜(IV)
フタルイミド5.10kg及びパラホルムアルデヒド1.48kgを攪拌下に交互に少量ずつ、25℃、3.6質量%の発煙硫酸112kg中に添加した。この混合物を50℃に加熱し、30分間この温度で攪拌した。次に、この混合物に、C.I.ピグメントイエロー138を20kg添加した。この混合物を100℃に加熱し、この温度で攪拌保持し反応を進めた。
この反応液の一部を適宜採取し、NMPで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液とし、分光光度計((株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて、可視吸収スペクトルを測定した。得られた可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が452.0nmにあり、且つ、波長427.5nmにおける吸光度に対する、波長428.5nmにおける吸光度の比が1.0038であることを確認し、反応終点と判定した。
次いで、この反応混合物を水700kg中に添加し、60℃で30分間攪拌した。得られた沈殿物を濾別し、7.00μS/cmの脱イオン水で洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下になるまで洗浄した。その後、80℃の真空乾燥棚中で乾燥させた後、微粉砕し、最大粒径が80μmの黄色粉末である、実施例1のC.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体を得た。
【0069】
(比較例1)
実施例1において、採取した反応液の可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が452.0nmにあり、波長427.5nmにおける吸光度に対する、波長428.5nmにおける吸光度の比が1.0074のときに反応を終了した以外は、実施例1と同様に操作し、比較例1のC.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体を得た。
【0070】
(比較例2)
実施例1において、採取した反応液の可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が450.0nmにあるときに、反応を終了した以外は、実施例1と同様に操作し、比較例2のC.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体を得た。
【0071】
<顔料誘導体の評価1:顔料誘導体の物性分析>
黄色粉末A−1を、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−3)と同様にして、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた合成物の物性分析を行った。また、判定基準は以下の通りとした。なお、標準品と同等とは、前記で設定された複数の標準品の物性から定められる上限値と下限値の範囲内に入ることをいう。結果を表1に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0072】
<顔料誘導体の評価2:顔料分散性の評価(粘度)>
黄色粉末A−1を、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−4)と同様にして、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた合成物について顔料分散液の評価を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表1に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0073】
<顔料誘導体の評価3:感光性樹脂組成物の評価(コントラスト)>
黄色粉末A−1を、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−5)と同様にして、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた合成物について感光性樹脂組成物の評価を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表1に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0074】
【表1】

【0075】
[C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体の製造]
(実施例2)
(1)工程(I)
(1−1)顔料誘導体の合成:B−1〜B−24
C.I.ピグメントイエロー138 100gを約10℃に冷却した11質量%の発煙硫酸500g中に攪拌下、添加した。この混合物を90℃に加熱し、この温度で30分間攪拌保持し反応を進めた。次いで、この反応混合物を25℃に冷却した後、氷水500g中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、7.00μS/cmの脱イオン水で洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下になるまで洗浄した。その後、80℃の真空乾燥棚中で乾燥させた後、微粉砕し、黄色粉末B−1を得た。
また、上記のC.I.ピグメントイエロー138を添加後90℃加熱の攪拌保持時間を1時間から12時間まで、30分毎に延長するように変更した以外は上記と同様の操作を行い、さらに23点の黄色粉末B−2〜B−24を得た。
【0076】
(1−2)<顔料誘導体の評価:吸光度測定>
C.I.ピグメントイエロー138を添加後90℃加熱から30分後に、上記(1−1)の反応液の一部を適宜採取し、NMPで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を、分光光度計((株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて、可視吸収スペクトルを測定した。
また、上記のC.I.ピグメントイエロー138を添加後90℃加熱の攪拌保持時間を1時間から12時間まで、30分毎に延長するように変更した以外は上記と同様の操作を行い、さらに23点の可視吸収スペクトルを測定した。
【0077】
(1−3)<顔料誘導体の評価:物性分析>
上記(1−1)で得られた黄色粉末B−1〜B−24の分子量を、TOF−MS(レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置)、(株)島津製作所製)により測定した。また、得られた合成物の構造は、1H−NMR(日本電子(株)製、JEOL JNM−LA400WB)により測定した。
【0078】
(1−4)<顔料誘導体の評価:顔料分散性の評価(粘度)>
(1−4−1)黄色顔料分散液B−1〜B−24の調製
上記実施例1の(1−4)で調製した分散剤・バインダー樹脂溶液A90重量部に色材成分としてC.I.ピグメントイエロー138(PY138:平均一次粒径10〜50nm)9.0重量部、上記(1−1)で得られた黄色粉末B−1 1.0重量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて2mmジルコニアビーズで1時間、さらに0.1mmジルコニアビーズで24時間分散し、黄色顔料分散液B−1を得た。
また、黄色粉末B−1を用いる代わりに、黄色粉末B−2〜B−24をそれぞれ用いて、上記と同様の操作を行い、さらに黄色顔料分散液B−2〜B−24を得た。
【0079】
(1−4−2)黄色顔料分散液B−1〜B−24の粘度測定
実施例1と同様にして、上記で得られた黄色顔料分散液B−1〜B−24の粘度測定を行った。
【0080】
(1−5)<顔料誘導体の評価:感光性樹脂組成物の評価(コントラスト)>
(1−5−1)カラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物B−1〜B−24の調製
実施例1の(1−5)において黄色顔料分散液A−1を用いる代わりに、黄色顔料分散液B−1〜B−24をそれぞれ用いて、上記と同様の操作を行い、カラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物B−1〜B−24を得た。
【0081】
(1−5−2)感光性樹脂組成物のコントラスト測定
実施例1と同様にして、上記で得られたカラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物B−1〜B−24のコントラスト測定を行った。
【0082】
(1−6)<顔料誘導体の評価:標準品の設定>
上記(1−3)、(1−4)、及び(1−5)の結果から性能を良好に発揮できると判断された顔料誘導体(黄色粉末B−4〜B−24)を標準品と設定した。
【0083】
(1−7)<顔料誘導体の評価:可視吸収スペクトル反応終点エリアの設定>
上記(1−6)で設定した標準品から得られた可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が450.nm〜452.0nmにあり、且つ、波長451.0nmにおける吸光度に対する、波長438.0nmにおける吸光度の比が1.22以上であった。これを反応終点エリアと設定した。
【0084】
(2)工程(II)〜(IV)
C.I.ピグメントイエロー138 25kgを約10℃に冷却した11質量%の発煙硫酸125kg中に攪拌下、添加した。この混合物を90℃に加熱し、この温度を保持しながら攪拌し反応を進めた。
この反応液の一部を適宜採取し、NMPで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液とし、分光光度計((株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて、可視吸収スペクトルを測定した。得られた可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が450.5nmにあり、且つ、波長451.0nmにおける吸光度に対する、波長438.0nmにおける吸光度の比が1.22であることを確認し、反応終点と判定した。
次いで、この反応混合物を25℃に冷却した後、氷水125kg中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、7.00μS/cmの脱イオン水で洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下になるまで洗浄した。その後、80℃の真空乾燥棚中で乾燥させた後、微粉砕し、最大粒径が30μmの黄色粉末である、実施例2のC.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体を得た。
【0085】
(比較例3)
実施例2において、採取した反応液の可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が449.0nmの時点で反応を終了した以外は、実施例2と同様に操作し、比較例3のC.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体を得た。
【0086】
<顔料誘導体の評価1:顔料誘導体の物性分析>
黄色粉末B−1を、実施例2、及び比較例3で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−3)と同様にして、実施例2、及び比較例3で得られた合成物の物性分析を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表2に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0087】
<顔料誘導体の評価2:顔料分散性の評価(粘度)>
黄色粉末B−1を、実施例2、及び比較例3で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−4)と同様にして、実施例2、及び比較例3で得られた合成物について顔料分散液の評価を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表2に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0088】
<顔料誘導体の評価3:感光性樹脂組成物の評価(コントラスト)>
黄色粉末B−1を、実施例2、及び比較例3で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−5)と同様にして、実施例2、及び比較例3で得られた合成物について感光性樹脂組成物の評価を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表2に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0089】
【表2】

【0090】
[C.I.ピグメントレッド255のフタルイミドメチル化誘導体の製造]
(実施例3)
(1)工程(I)
(1−1)顔料誘導体の合成:C−1〜C−24
C.I.ピグメントレッド255 23.1gを、0℃に冷却した96%硫酸461.2g中に攪拌しながら添加した。1時間攪拌後、当該混合物に、100%硫酸461.2g、N−ヒドロキシメチルフタルイミド28.37gの順で添加した。次いで、3時間かけて14℃まで加熱し、この温度で30分間攪拌保持し反応を進めた。次いで、この反応混合物を氷水3800g中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、60℃に加温した7.00μS/cmの脱イオン水で洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下になるまで洗浄した。その後、80℃の真空乾燥棚中で乾燥させた後、微粉砕し、赤色粉末C−1を得た。
また、上記のN−ヒドロキシメチルフタルイミドを添加後14℃加熱の攪拌保持時間を1時間から12時間まで、30分毎に延長するように変更した以外は上記と同様の操作を行い、さらに23点の赤色粉末C−2〜C−24を得た。
【0091】
(1−2)<顔料誘導体の評価:吸光度測定>
N−ヒドロキシメチルフタルイミドを添加後14℃加熱から30分後に、上記(1−1)の反応液の一部を適宜採取し、NMPで可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を、分光光度計((株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて、可視吸収スペクトルを測定した。
【0092】
(1−3)<顔料誘導体の評価:物性分析>
上記(1−1)で得られた赤色粉末C−1〜C−24の分子量を、TOF−MS(レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置)、(株)島津製作所製)により測定した。また、得られた合成物の構造は、1H−NMR(日本電子(株)製、JEOL JNM−LA400WB)により測定した。
【0093】
(1−4)<顔料誘導体の評価:顔料分散性の評価(粘度)>
(1−4−1)分散剤・バインダー樹脂溶液Cの調製
225mLマヨネーズ瓶中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)66.9重量部、3級アミノ基を含むブロック共重合体(商品名:BYK−LPN6919、ビックケミー社製)(アミン価135mgKOH/g、固形分60重量%)4.83重量部、上記実施例1で得られたバインダー樹脂A14.7重量部をそれぞれ溶解させた。混合溶液にフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.3重量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.3モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤・バインダー樹脂溶液Cを調製した。
【0094】
(1−4−2)赤色顔料分散液C−1〜C−24の調製
上記で調製した分散剤・バインダー樹脂溶液C84重量部に色材成分としてC.I.ピグメントレッド254(平均一次粒径30nm)15.36重量部、上記(1−1)で得られた赤色粉末C−1 0.64重量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて2mmジルコニアビーズで1時間、さらに0.1mmジルコニアビーズで24時間分散し、赤色顔料分散液C−1を得た。
また、赤色粉末C−1を用いる代わりに、赤色粉末C−2〜C−24をそれぞれ用いて、上記と同様の操作を行い、さらに赤色顔料分散液C−2〜C−24を得た。
【0095】
(1−4−3)赤色顔料分散液C−1〜C−24の粘度測定
実施例1と同様にして、上記で得られた赤色顔料分散液C−1〜C−24の粘度測定を行った。
【0096】
(1−5)<顔料誘導体の評価:感光性樹脂組成物の評価(コントラスト)>
(1−5−1)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物C−1〜C−24の調製
上記で得られた赤色顔料分散液C−1 59.6重量部とアルカリ可溶性樹脂(上記実施例(1−4−1)のバインダー樹脂A、固形分44重量%)2.49重量部、3〜4官能アクリレートモノマー(商品名:アロニックスM305、東亞合成(株)製)1.87重量部、光重合開始剤:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))0.26重量部、光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製))0.58重量部、光増感剤:2,4ジエチルチオキサントン(商品名:カヤキュアーDETX−S、日本化薬(株)製)0.20重量部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)35.0重量部から成るバインダー組成物C40.4重量部とを混合し、加圧濾過を行って、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物C−1を得た。
また、赤色顔料分散液C−1を用いる代わりに、赤色顔料分散液C−2〜C−24をそれぞれ用いて、上記と同様の操作を行い、さらにカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物C−2〜C−24を得た。
【0097】
(1−5−2)感光性樹脂組成物のコントラスト測定
実施例1と同様にして、上記で得られたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物C−1〜C−24のコントラスト測定を行った。
【0098】
(1−6)<顔料誘導体の評価:標準品の設定>
上記1−3、1−4、及び1−5の結果から性能を良好に発揮できると判断された顔料誘導体(赤色粉末C−12、C−13、C−14、及びC−15)を標準品と設定した。
【0099】
(1−7)<顔料誘導体の評価:可視吸収スペクトル反応終点エリアの設定>
上記で設定した標準品から得られた可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長が475.0nm〜477.0nmにあり、且つ、上記極大吸収波長476.0nmにおける吸光度に対する、波長505.5nmにおける吸光度の比が0.6800〜0.7400であった。これを反応終点エリアと設定した。
【0100】
(2)工程(II)〜(IV)
C.I.ピグメントレッド255 11.6kgを、0℃に冷却した96%硫酸230.6kg中に攪拌しながら添加した。1時間攪拌後、当該混合物に、100%硫酸230.6kg、N−ヒドロキシメチルフタルイミド14.19kgの順で添加した。次いで、3時間かけて14℃まで加熱し、攪拌保持し、反応を進めた。
この反応液の一部を適宜採取し、NMPで可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液とし、分光光度計((株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて、可視吸収スペクトルを測定した。得られた可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長が476.0nmにあり、且つ、上記極大吸収波長476.0nmにおける吸光度に対する、波長505.5nmにおける吸光度の比が0.7000であることを確認し、反応終点と判定した。
次いで、この反応混合物を氷水1900kg中に添加した。得られた沈殿物を濾別し、60℃に加温した7.00μS/cmの脱イオン水で洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下になるまで洗浄した。その後、80℃の真空乾燥棚中で乾燥させた後、微粉砕し、最大粒径が70μmの赤色粉末である、実施例3のC.I.ピグメントレッド255のフタルイミドメチル化誘導体を得た。
【0101】
(比較例4)
実施例3において、採取した反応液の可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長が475.0nmにあり、且つ、極大吸収波長475.0nmにおける吸光度に対する、波長505.5nmにおける吸光度の比が0.8400である時点で反応を終了した以外は、実施例3と同様に操作し、比較例4のC.I.ピグメントレッド255のフタルイミドメチル化誘導体を得た。
【0102】
(比較例5)
実施例3において、採取した反応液の可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長が473.0nmにある時点で反応を終了した以外は、実施例3と同様に操作し、比較例5のC.I.ピグメントレッド255のフタルイミドメチル化誘導体を得た。
【0103】
<顔料誘導体の評価1:顔料誘導体の物性分析>
赤色粉末C−1を、実施例3、比較例4及び比較例5で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−3)と同様にして、実施例3、比較例4及び比較例5で得られた合成物の物性分析を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表3に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0104】
<顔料誘導体の評価2:顔料分散性の評価(粘度)>
赤色粉末C−1を、実施例3、比較例4及び比較例5で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−4)と同様にして、実施例3、比較例4及び比較例5で得られた合成物について顔料分散液の評価を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表3に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0105】
<顔料誘導体の評価3:感光性樹脂組成物の評価(コントラスト)>
赤色粉末C−1を、実施例3、比較例4及び比較例5で得られた合成物に変更した以外は、上記(1−5)と同様にして、実施例3、比較例4及び比較例5で得られた合成物について感光性樹脂組成物の評価を行った。また、判定基準は以下の通りとした。結果を表3に示す。
○:標準品と同等
×:標準品と異なる
【0106】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素からなる第一の原料と、第二の原料とを反応させる工程を有する、色素誘導体の製造方法であって、
前記第一の原料と前記第二の原料とを反応させる工程の反応終点における反応液の380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを準備し、当該可視吸収スペクトルと、反応終点として許容する特定範囲内で一致する範囲を反応終点エリアと予め設定する工程(I)と、
前記第一の原料と、前記第二の原料とを反応させる工程(II)と、
前記工程(II)における反応液を採取し380.0〜780.0nmの可視吸収スペクトルを測定する工程(III−1)と、前記工程(III−1)で得られた可視吸収スペクトルが前記反応終点エリアに該当するか否かを判定する工程(III−2)とを有する、反応終点を判定する工程(III)と、
前記工程(III)において反応終点と判定された際に、前記工程(II)を終了する工程(IV)とを有する、色素誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)において、得られた可視吸収スペクトルの特定の極大吸収波長(a−1)との差が特定範囲内で、且つ、得られた可視吸収スペクトルの特定波長(a−2)における吸光度に対する、別の特定波長(a−3)における吸光度の比との差が特定範囲内である場合を、反応終点エリアと設定する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(IV)の後、更に、前記色素誘導体を、洗液の電気伝導度が4.0mS/cm以下となるまで、電気伝導度が0.05〜15.00μS/cmである脱イオン水で洗浄する工程(V)を有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
更に、乾燥後の前記色素誘導体の最大粒径を100μm以下とする粉砕工程(VI)を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第一の原料が、顔料又は染料であり、顔料誘導体又は染料誘導体の製造方法である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
C.I.ピグメントイエロー138と、フタルイミド類とを濃硫酸又は発煙硫酸中で反応させる工程を有する、C.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドメチル化誘導体の製造方法であって、
反応液をN−メチル−2−ピロリドンで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、前記工程(I)において、可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長が451.0nm〜452.0nmの範囲内にあり、且つ、波長427.5nmにおける吸光度に対する、波長428.5nmにおける吸光度の比が1.0010〜1.0070の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
C.I.ピグメントイエロー138と、濃硫酸又は発煙硫酸とを反応させる工程を有する、C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体の製造方法であって、
反応液をN−メチル−2−ピロリドンで可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、前記工程(I)において、可視吸収スペクトルの445.0nm〜455.0nmにおける極大吸収波長が450.0nm〜452.0nmの範囲内にあり、且つ、波長451.0nmにおける吸光度に対する、波長438.0nmにおける吸光度の比が1.2200以上の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
ジケトピロロピロール顔料と、フタルイミド類とを濃硫酸又は発煙硫酸中で反応させる工程を有する、ジケトピロロピロール顔料のフタルイミドメチル化誘導体の製造方法であって、
反応液をN−メチル−2−ピロリドンで可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける最大吸収波長の吸光度が1.00±0.05の値になる様に希釈した溶液を判定溶液として可視吸収スペクトルを測定する時に、前記工程(I)において、可視吸収スペクトルの470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長が475.0〜477.0nmの範囲内にあり、且つ、前記470.0nm〜480.0nmにおける極大吸収波長における吸光度と、波長505.5nmにおける吸光度の比が0.6800〜0.7400の範囲内にある場合を反応終点エリアと設定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ジケトピロロピロール顔料が、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71又はC.I.ピグメントオレンジ73である、請求項8に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−229377(P2012−229377A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99920(P2011−99920)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】