説明

色調整装置

【課題】設備の大型化や調整時間の増大を防止しつつ、赤外カットフィルタの特性によらない高精度な色調整が可能な色調整装置を提供すること。
【解決手段】BPF円盤24を回転させつつデジタルカメラ26による撮影を行って得られた色信号データから特定波長における撮像系部材の相対分光感度データを得る。特定波長以外の補間波長における相対分光感度データは、撮影により得られた色信号データとリファレンスデータとを用いて算出する。さらに、波長630[nm]の相対分光感度データについては、色信号データより求められた波長620[nm]及び波長640[nm]の相対分光感度データを用いた所定の補間式に従って算出する。特定波長及び補間波長における相対分光感度データを得た後、スプライン補間によって撮像系部材の色成分毎の分光感度特性データを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にデジタルカメラに好適な色調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なデジタルカメラの撮像系部材は、撮像レンズ群と、赤外カットフィルタと、撮像素子とを有している。このような撮像系部材においては、撮像レンズ群を介して入射した光が撮像素子に結像されて画像信号となる。
ここで、撮像素子の前面にはカラーフィルタが配されている。カラーフィルタは分光感度特性上のばらつきが大きく、デジタルカメラによる画像の色再現に大きな影響を与える。この影響をデジタルカメラ内で最小限に抑えるためには、色調整処理における補正値を個々のデジタルカメラ毎に調整する必要がある。
【0003】
このような色調整装置の例として、特許文献1では、所定の光源と撮像系部材との間にバンドパスフィルタを介在させて撮像を行う。バンドパスフィルタは、光源の特定波長帯の光のみを通過させるように構成されている。このような構成において、特許文献1では、所定の光源と撮像系部材との間に介在させるバンドパスフィルタの種類を変えて複数回の撮影を行い、この複数回の撮影の結果から撮像系部材の分光感度特性をカラーフィルタの色成分毎に検出している。そして、バンドパスフィルタを介しての撮影により求められた分光感度特性に対して補間処理を施すことにより、バンドパスフィルタが通過可能な波長以外の波長における分光感度特性を求めて撮像系部材のホワイトバランス調整や色調整を行うようにしている。
【0004】
また、特許文献2では、特許文献1のようなバンドパスフィルタを用いずに撮像系部材のホワイトバランス調整や色調整を行えるようにしている。この特許文献2においては、光源と撮像系部材との間に赤外カットフィルタを介在させた撮像と、光源と撮像系部材との間に赤外カットフィルタを介在させない撮像と、の2回の撮影を行い、この2回の撮影結果とリファレンスデータとに基づいて撮像系部材の分光感度特性を予測してホワイトバランス調整や色調整を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4460717号公報
【特許文献2】特開2007−067816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1では、撮像系部材のR成分の分光感度特性における赤外カットフィルタの赤外カットオフ波長付近の分光感度特性を直線補間によって求めている。これは、撮像系部材に設けられている赤外カットフィルタの特性が赤外吸収タイプであることを想定しているためである。これに対し、赤外反射タイプの赤外カットフィルタが設けられた撮像系部材に対して特許文献1の手法を単純に適用してしまうと実際に求めるべき値との誤差が大きくなり易い。特許文献1でもバンドパスフィルタの種類を増やして撮影回数を増やせば、赤外反射タイプの赤外カットフィルタが設けられた撮像系部材に対しても補間処理による誤差を小さくすることが可能である。しかしながら、この場合には設備の大型化や調整時間の増大に繋がる。
【0007】
また、特許文献2では赤外反射タイプの場合のR成分の分光感度特性を求める場合も想定されている。即ち、特許文献2では、最もばらつきが大きいR成分の分光感度特性を得ることに着目している。これに対し、特許文献2では、緑成分や青成分の分光感度特性の算出については簡略化されている。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、設備の大型化や調整時間の増大を防止しつつ、赤外カットフィルタの特性によらない高精度な色調整が可能な色調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様の色調整装置は、赤外の色成分を除去するための赤外カットフィルタと、被写体からの光を複数の色成分に分割する色成分分割手段と、前記複数の色成分に分割された光をそれぞれ色信号データに変換する撮像素子と、を含む撮像系部材を有するデジタルカメラをセットして色調整を行う色調整装置であって、光源と、前記光源と前記セットしたデジタルカメラの撮像系部材との間に配置され、前記光源からの光の特定波長帯のみを通過させて前記撮像系部材に受光させる分光手段と、前記分光手段を介して前記光源からの光を前記デジタルカメラで撮影して得られる前記特定波長の色信号データと、前記赤外カットフィルタと前記色成分分割手段と撮像素子との組み合わせを所定の組み合わせとした場合に得られる前記撮像系部材の色成分毎の第1の相対分光感度特性データ、前記第1の相対分光感度特性データが得られる組み合わせに対して前記赤外カットフィルタの赤外カットオフ波長を短波長側とした場合に得られる前記撮像系部材の第2の相対分光感度特性データ、及び前記第1の相対分光感度特性データが得られる組み合わせに対して前記赤外カットフィルタの赤外カットオフ波長を長波長側とした場合に得られる前記撮像系部材の第3の相対分光感度特性データの少なくとも何れか2つと、を用いて補間処理することにより、前記特定波長以外の波長も含めた前記撮像系部材の相対分光感度特性データを検出する分光感度検出手段と、前記分光感度検出手段で得られた相対分光感度特性データに基づいて、前記撮像系部材のホワイトバランス係数を算出するホワイトバランス係数算出手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設備の大型化や調整時間の増大を防止しつつ、赤外カットフィルタの特性によらない高精度な色調整が可能な色調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る色調整装置の全体構成を示す図である。
【図2】A光源の分光感度特性を示す図である。
【図3】デジタルカメラの一般的な撮像系部材の構成図である。
【図4】BPF円盤の構成図である。
【図5】デジタルカメラの色調整方法の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】画像中の色成分を示す図である。
【図7】一般的な撮像素子の相対分光感度特性を示す図である。
【図8】赤外反射タイプのIRカットフィルタの分光透過率特性を示す図である。
【図9】赤外反射タイプのIRカットフィルタが適用されている場合に算出される相対分光感度特性データに生じ得る誤差について説明する図である。
【図10】H(620)/H(640)の値とH(630)/H(640)の値との関係を示すグラフの例である。
【図11】本発明の一実施形態の手法によって算出される相対分光感度特性データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る色調整装置の全体構成を示す図である。図1に示す色調整装置20は、光源室20aと、カメラ室20bとの2室を備える筐体を有している。これらの光源室20aとカメラ室20bとは、円孔板23により分けられている。円孔板23には、円孔23aが形成されている。
【0013】
光源室20aには、暗箱21が配置されている。暗箱21のカメラ室20bと対向する面には、円孔21aが形成されている。また、暗箱21内には光源22が設けられている。光源22は、例えばA光源のような標準光源である。このA光源の分光感度特性を図2に示す。ここで、光源22としては、短波長側から長波長側へ放射レベルが連続的に単調増加するような光源であれば、A光源以外の光源を用いることもできる。図1に示す構成において、暗箱21内の光源22からの光は、円孔21a、23aを介してカメラ室20bに出射される。
【0014】
カメラ室20bには、デジタルカメラ26がセットされる。また、デジタルカメラ26と円孔板23との間にはBPF円盤24が配置されている。このような構成において、デジタルカメラ26により、BPF円盤24を介して暗箱21内を撮影可能になされている。
【0015】
図3は、デジタルカメラ26に用いられている撮像系部材の構成図である。同図に示すように、撮像レンズ群11を介して入射した光源22からの光は、光学的なローパスフィルタとしての赤外(IR)カットフィルタ12を通過して有害赤外成分が除去された後に、撮像素子部13に入射される。
【0016】
撮像素子部13は、マイクロレンズアレイ13aと、カラーフィルタ13bと、撮像素子13cとを有している。撮像素子部13のマイクロレンズアレイ13aにより画素毎に集光された光は、例えば原色系ベイヤ配列の色成分分割手段としてのカラーフィルタ13bを介して撮像素子13cに結像される。ここで、原色系ベイヤ配列のカラーフィルタとは、R、Gr、Gb、Bの4ピクセルを1つの画素配列単位とするカラーフィルタである。
【0017】
分光手段としてのBPF円盤24は、図4に示すように複数、例えば7枚のそれぞれピーク波長の異なるバンドパスフィルタ(BPF)241〜247を同一円周上に配置して構成されている。そして、BPF円盤24の中心軸にはモータ25が取り付けられている。このモータ25の回転駆動により光源22とデジタルカメラ26との間の光路上に任意のバンドパスフィルタ241〜247を挿入することができる。ここでは、バンドパスフィルタ241〜247のピーク波長が440[nm],480[nm],520[nm],560[nm],600[nm],620[nm],640[nm]であるとし、それぞれ半値幅が20[nm]であるとする。
【0018】
さらに、図1において、デジタルカメラ26には接続ケーブル27が接続され、接続ケーブル27はパーソナルコンピュータ(PC)28に接続されている。接続ケーブル27は、例えばUSB等の接続ケーブルである。PC28は、分光感度検出手段としての機能、ホワイトバランス係数算出手段としての機能、目標色補正係数算出手段としての機能を有し、デジタルカメラ26毎の補正値を算出し、算出した補正値をデジタルカメラ26に設定する。また、PC28は、モータ25の回転駆動により光路中に挿入するBPF円盤24のバンドパスフィルタ241〜247の選択、デジタルカメラ26での撮影等の動作も制御する。
【0019】
次に本実施形態に係る色調整装置の動作について説明する。
図5は、図1に示した如くセットしたデジタルカメラ26の色調整方法の処理内容を示すフローチャートである。図5の処理は、図1のPC28の例えばハードディスクに記憶されたプログラムに従って実行されるものである。
【0020】
まず、PC28は、初期設定としてBPF円盤24のバンドパスフィルタの波長を示す変数nに初期値「1」を設定する(ステップS1)。
その後、PC28は、変数nにより示されるバンドパスフィルタ24n(nは1〜7)をデジタルカメラ26の光路中に挿入した上で、デジタルカメラ26による光源22の撮影を実行させる(ステップS2)。デジタルカメラ26による撮影の結果として得られたカラーフィルタ13bの色配列に対応した色信号データは、接続ケーブル27を介してPC28に入力される。撮影の実行後、PC28は、変数nの値がBPF円盤24に形成された全バンドパスフィルタの数N(図4の例ではN=7)に達したか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3の判定において、変数nの値がNに達していない場合に、PC28は、変数nの値に1を加える(ステップS4)。その後、PC28は、処理をステップS2に戻し、新たなバンドパスフィルタを用いた撮影を実行させる。
【0021】
各バンドパスフィルタを用いた撮影においては、図6に示すように、撮影により得られた色信号データの中央部の例えば縦32ピクセル×横32ピクセルのR,Gr,Gb,Bの各色成分の平均値を計算する。特に、Gr,Gbに関してはさらに以下のようにする。
G=(Gr+Gb)/2
これにより、R,G,Bの各色成分の平均値を計算することができる。図4の場合、R,Bはそれぞれ256ピクセル、Gは512ピクセルの色信号データの平均となる。ステップS2〜S4の処理を繰り返し実行することで、BPF円盤24の全てのバンドパスフィルタ241〜247を用いての撮影の結果として、バンドパスフィルタの枚数7×3(RGB)=21個の平均の色信号データが算出される。
【0022】
ステップS3の判定において、変数nの値がバンドパスフィルタの全数Nと等しいと判定した場合に、PC28は、7回の撮影により得られた21個の色信号データを用いてデジタルカメラ26の撮像系部材の相対分光感度データを算出する(ステップS5)。
【0023】
ステップS5において、PC28は、色信号データから光源22の分光感度とバンドパスフィルタの分光透過率の影響を削除するべく演算を実行する。ここで、例えばピーク波長が440[nm]であるバンドパスフィルタ241の場合、光源22の分光感度特性が図2に示すようなものであるとすると、この特性中の波長440[nm]を挟んで20[nm]が半値幅である。ここで、光源22の分光感度特性を波長420[nm]〜波長460[nm]の範囲に渡って積分した値をAsrc_440とし、バンドパスフィルタ241の波長440[nm]での分光透過率をTr_440(0<Tr_440<1)とし、撮影時に平均値を算出した色信号データをそれぞれR_440in、G_440in、B_440inとし、求める色成分毎の分光感度データをそれぞれR_cam_440、G_cam_440、B_cam_440とすると、これらは以下のように求めることができる。
R_cam_440=R_440_in/(Asrc_440×Tr_440)
G_cam_440=G_440_in/(Asrc_440×Tr_440)
B_cam_440=B_440_in/(Asrc_440×Tr_440) (式1)
(式1)と同様の演算を、他のバンドパスフィルタ242〜247についても実行する。全バンドパスフィルタに対する演算の結果、21個のデータが得られたら、次段からの演算を容易にするために、演算の結果として得られた中の最大の値が1024となるように全21個のデータを正規化する。
【0024】
次に、PC28は、デジタルカメラ26の撮像系部材として用いられているIRカットフィルタ12が赤外反射タイプであるか否かを判定する(ステップS6)。デジタルカメラ26に、IRカットフィルタ12の種類を示す情報を予め記憶しておけば、ステップS6の判定を、デジタルカメラ26から情報を取得することで行うことが可能である。
【0025】
一般に、撮像素子の相対分光感度特性は、図7に示すような特性を有することが知られている。図7に示すように、R成分については赤外領域にも感度を有している。このため、R成分の光を正しく検出するために、R成分の光に含まれる赤外成分を除去する必要がある。このために、撮像素子部13の前面にIRカットフィルタ12が配置される。ここで、IRカットフィルタには、赤外吸収タイプと赤外反射タイプとがあることが知られている。
【0026】
赤外吸収タイプのIRカットフィルタは、入射した光の赤外成分を吸収するように構成されたIRカットフィルタである。
また、赤外反射タイプのIRカットフィルタは、入射した光の赤外成分を反射するように構成されたIRカットフィルタである。図8に、赤外反射タイプのIRカットフィルタの分光透過率特性の例を示す。図8の特性は、出願人によるシミュレーションによって得られたものである。
【0027】
一般に、赤外反射タイプのIRカットフィルタは、カットオフ波長の製造ばらつきが大きいことが知られている。図8は、このばらつきを考慮して3種の特性を示している。図8に示す特性TYPは、赤外カットオフ開始波長と赤外カットオフ終了波長とがそれぞれ所定の値(図8ではカットオフ開始波長が620[nm]、カットオフ終了波長が640[nm])となる代表的なIRカットフィルタの分光透過率特性を示している。また、特性MINは、複数のIRカットフィルタの分光透過率特性を検出した結果、赤外カットオフ開始波長が最も低波長側にシフトした特性を示している。また、特性MAXは、複数のIRカットフィルタの分光透過率特性を検出した結果、赤外カットオフ波長が最も長波長側にシフトした特性を示している。
【0028】
BPF円盤24が有するバンドパスフィルタの波長以外の波長も含めた撮像系部材の全体としての相対分光感度特性(即ち、IRカットフィルタ12と撮像素子部13との組み合わせとしての相対分光感度特性)を求めるに際し、赤外波長帯である波長620[nm]〜640[nm]の範囲については単純にスプライン補間をしてしまうと実際の感度との誤差が大きくなることが知られている。赤外吸収タイプのIRカットフィルタであれば、波長620[nm]と波長640[nm]の間を直線補間することにより、実際の感度との誤差を小さくすることができる。これに対し、赤外反射タイプのIRカットフィルタの場合には、図9のAで示すように、波長620[nm]と波長640[nm]の間を直線補間してしまうと、実際の感度との誤差が大きくなってしまう。したがって、本実施形態では、撮像系部材として用いられているIRカットフィルタ12が赤外反射タイプであるか否かに応じて異なる補間処理を行う。
【0029】
ステップS6の判定において、IRカットフィルタ12が赤外反射タイプである場合、PC28は、ステップS5で求めた7種類の特定波長以外の補間波長における相対分光感度データを求める(ステップS7)。ここでは、以下の表1に示す波長における相対分光感度特性データR_cam_x、G_cam_x、B_cam_xを求める。xは、以下の表1の波長の値を示している。表1に示す波長の値は、後述のスプライン補間に適した波長を色成分毎に設定したものである。これらの波長は、色成分毎の相対分光感度データがそれぞれ特徴的な変化をする部分に対応している。
【0030】
【表1】

ここで、相対分光感度データR_cam_x、G_cam_x、B_cam_xを求めるに際し、特性TYPのIRカットフィルタが設けられた代表的な組み合わせの撮像系部材の波長毎の相対分光感度特性データが既知であるとする。以下、この特性TYPのIRカットフィルタが設けられた撮像系部材のR成分、G成分、B成分の波長毎の相対分光感度特性データをリファレンスデータとし、それぞれをR_ref_x、G_ref_x、B_ref_xと表記する。xは、波長の値を示し、波長380[nm]〜波長700[nm]の間で1[nm]刻みで変化するものである。さらに、詳細は後述するが、波長630[nm]のR成分の相対分光感度特性データを求めるために、特性MIN及び特性MAXのIRカットフィルタが設けられた代表的な組み合わせの撮像系部材のR成分における波長620[nm]〜波長640[nm]の相対分光感度データも既知であるとする。特性TYP、特性MIN、特性MAXのIRカットフィルタが設けられた撮像系部材の相対分光感度特性データは何れも実測やシミュレーション等によって求めることができる。
【0031】
特性TYPのIRカットフィルタが設けられた撮像系部材の波長毎の相対分光感度特性データ、及び特性MIN及び特性MAXのIRカットフィルタが設けられた代表的な組み合わせの撮像系部材のR成分における波長620[nm]〜波長640[nm]の相対分光感度データが既知であるとすると、表1で示した各相対分光感度データを以下の(式2)のように求めることが可能である。
R_cam_380=R_ref_380
G_cam_380=G_ref_380
B_cam_380=B_ref_380
R_cam_420=R_cam_440×(R_ref_420/R_ref_440)
G_cam_420=G_cam_440×(G_ref_420/G_ref_440)
B_cam_420=B_cam_440×(B_ref_420/B_ref_440)
G_cam_460=G_cam_440×(G_ref_460/G_ref_440)
B_cam_460=B_cam_440×(B_ref_460/B_ref_440)
R_cam_500=R_cam_520×(R_ref_500/R_ref_520)
G_cam_500=G_cam_520×(G_ref_500/G_ref_520)
R_cam_540=R_cam_560×(R_ref_540/R_ref_560) (式2)
G_cam_540=G_cam_560×(G_ref_540/G_ref_560)
R_cam_570=R_cam_600×(R_ref_570/R_ref_600)
R_cam_590=R_cam_600×(R_ref_590/R_ref_600)
G_cam_590=G_cam_600×(G_ref_590/G_ref_600)
R_cam_610=R_cam_600×(R_ref_610/R_ref_600)
R_cam_630=b
ただし、次のa<R_cam_620のとき、b=a
次のa≧R_cam_620のとき、b=R_cam_620
a=α×R_cam_620+β×R_cam_640
R_cam_670=R_cam_660×(R_ref_670/R_ref_660)
R_cam_680=R_ref_680
R_cam_700=R_ref_700
G_cam_700=G_ref_700
B_cam_700=B_ref_700
(式2)からも分かるように、IRカットフィルタの分光透過率のばらつきによる相対分光感度特性のばらつきの少ない補間波長に対応した相対分光感度データについては、リファレンスデータをそのまま用いる。また、IRカットフィルタの分光透過率のばらつきによる相対分光感度特性のばらつきが比較的大きい補間波長に対応した相対分光感度データについては、直近のリファレンスデータとの相対分光感度データの比から求める。
【0032】
これに対し、図9で示したように、IRカットフィルタの分光透過率のばらつきによる相対分光感度特性のばらつきが特に大きい波長630[nm]のR成分の相対分光感度データについては所定の補間式を用いて求める。この波長630[nm]のR成分の相対分光感度データの求め方について説明する。
【0033】
以下の説明において、R成分の各波長における相対分光感度データをH(x)と表記することとする。ここで、xは波長の値を示す。このとき、種々の分光透過率特性の赤外反射タイプのIRカットフィルタについて、H(620)/H(640)の値とH(630)/H(640)の値とを求めたとする。そして、H(620)/H(640)を横軸に設定し、H(630)/H(640)を縦軸に設定してグラフを作成したとする。このとき、図10のようなグラフが得られることが出願人によるシミュレーションの結果から分かっている。図10に示すように、H(620)/H(640)の値とH(630)/H(640)の値との関係は線形関係となる。図10に示す直線式は、以下のように表わすことが可能である。
H(630)/H(640)=α×(H(620)/H(640))+β (式3)
(式3)をH(630)について解けば、以下の(式4)の関係が得られる。
H(630)=α×H(620)+β×H(640) (式4)
(式4)で示す補間式が(式2)において示した“a”に対応している。ここで、特性TYP、特性MIN、特性MAXの620[nm]〜640[nm]の相対分光感度データがそれぞれ既知であれば、(式3)の係数α、βを求めることが可能である。即ち、図9のR11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33の9点が既知であれば係数α、βを求めることが可能である。図8の例の場合、α=0.83、β=0.19となる。
【0034】
以上説明した(式4)から、任意の特性の赤外反射タイプのIRカットフィルタに対する630[nm]の相対分光感度データを求めることが可能である。なお、(式2)でも示したように、“a”の値がR_cam_620以上の場合には、R_cam_630の値をR_cam_620の値にクリップする。図8に示すように、通常、R成分の相対分光感度特性においては、波長630[nm]の相対分光感度データよりも波長620[nm]の相対分光感度データのほうが小さい。したがって、“a”の値がR_cam_620以上の場合には、そのときの“a”の値は用いずにR_cam_620の値を用いることとする。
【0035】
以上のようにして波長380[nm]〜波長700[nm]の各補間波長に対応した相対分光感度特性データを求めた後、PC28は、ステップS5で求めた波長における相対分光感度データとステップS7で求めた補間波長における相対分光感度データとを用いたスプライン補間によって、波長1[nm]毎の撮像系部材の相対分光感度特性データを得る(ステップS8)。ここで、スプライン補間の結果、相対分光感度データの値が0未満となる場合には、その波長における相対分光感度データを0にクリップする。スプライン補間の結果を図11に示す。ここで、図11(a)が撮像系部材のR成分の分光感度特性データを示し、図11(b)が撮像系部材のG成分の分光感度特性データを示し、図11(c)が撮像系部材のB成分の分光感度特性データを示している。また、各図の黒丸でプロットされている点が実測によって求められた特定波長における相対分光感度データを示す。一方、各図の白丸でプロットされている点が補間処理によって求められた補間波長における相対分光感度データを示す。
【0036】
また、ステップS6の判定において、IRカットフィルタ12が赤外吸収タイプである場合、PC28は、ステップS5で求めた7種類の波長における相対分光感度データを用いたスプライン補間によって、波長1[nm]毎の撮像系部材の相対分光感度特性データを得る(ステップS9)。ここで、スプライン補間の結果、相対分光感度データの値が0未満となる場合には、その波長における相対分光感度データを0にクリップする。また、波長620[nm]〜640[nm]の範囲については直線補間によって相対分光感度データを得る。
【0037】
以上のようにして撮像系部材の全体としての相対分光感度特性データを算出した後、PC28は、光源毎にホワイトバランスの補正値を算出する(ステップS10)。さらに、PC28は、特に目標となる色についての色補正値を算出する(ステップS11)。これらの補正値の算出により、図5の一連の処理を終了する。ここで、相対分光感度特性データからホワイトバランスの補正値や色補正値を算出するための手法は、例えば特許第4460717号公報において開示されている手法を用いることが可能である。したがって、ここではその詳細については説明を省略する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、赤外反射タイプのIRカットフィルタが設けられている撮像系部材に対するホワイトバランス補正及び色補正のための相対分光感度特性データの算出の際に、直線補間をすると誤差が大きくなる波長である補間対象の波長630[nm]の相対分光感度データを、色信号データから算出された相対分光感度データのうち、波長630[nm]に対して短波長側の特定波長である波長620[nm]における相対分光感度データと波長630[nm]に対して長波長側の特定波長である波長640[nm]の相対分光感度データと、を用いて算出している。H(620)/H(640)の値とH(630)/H(640)の値とには線形関係があることが分かっているので、波長620[nm]の相対分光感度データと波長640[nm]の相対分光感度データとから、その間の波長である波長630[nm]の相対分光感度データも正確に算出することが可能となる。これにより、赤外反射タイプのIRカットフィルタが設けられた撮像系部材を有するデジタルカメラ26に対しても正確な色調整を行うことが可能である。また、赤外吸収タイプについては従来と同様にして正確な色調整を行うことが可能である。
【0039】
また、表1のようにしてスプライン補間に適するように補間波長を設定することにより、赤外反射タイプのIRカットフィルタであればスプライン補間のみで色成分毎の正確な分光感度特性データを算出することが可能である。この場合、スプライン補間と線形補間とを組み合わせる必要がなく、結果として処理時間の短縮化を図ることが可能である。
【0040】
ここで、本実施形態においては、赤外吸収タイプのIRカットフィルタについてはスプライン補間と線形補間とを組み合わせて分光感度特性データを算出するようにしているが、赤外反射タイプのIRカットフィルタと同様に補間波長の相対分光感度データを求めるようにすればスプライン補間のみで分光感度特性データを算出することも可能である。この場合には、赤外吸収タイプのIRカットフィルタが設けられた代表的な撮像系部材の相対分光感度データもリファレンスデータとしてPC28に記憶させておく必要がある。
【0041】
また、本実施形態においては、(式4)のα、βを求めるために、特性TYP、特性MIN、特性MAXのIRカットフィルタがそれぞれ設けられた3種の代表的な撮像系部材の相対分光感度特性データを用いて図10のグラフを作成している。H(620)/H(640)の値とH(630)/H(640)の値とは線形関係であるので、最低2点がプロットできれば図10のグラフを作成することが可能である。即ち、α、βを求めるためには必ずしも特性TYP、特性MIN、特性MAXのIRカットフィルタがそれぞれ設けられた3種の相対分光感度特性データの全てを得る必要はない。即ち、特性TYPと、特性MIN、特性MAXの少なくとも何れか2つを得れば良い。逆に4点以上をプロットしてより正確に図10のグラフを作成してα、βを求めるようにしても良い。
【0042】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0043】
11…撮像レンズ群、12…赤外(IR)カットフィルタ、13…撮像素子部、20…色調整装置、20a…光源室、20b…カメラ室、21…暗箱、22…光源、23…円孔板、24…BPF円盤、25…モータ、26…デジタルカメラ、27…接続ケーブル、28…パーソナルコンピュータ(PC)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外の色成分を除去するための赤外カットフィルタと、被写体からの光を複数の色成分に分割する色成分分割手段と、前記複数の色成分に分割された光をそれぞれ色信号データに変換する撮像素子と、を含む撮像系部材を有するデジタルカメラをセットして色調整を行う色調整装置であって、
光源と、
前記光源と前記セットしたデジタルカメラの撮像系部材との間に配置され、前記光源からの光の特定波長帯のみを通過させて前記撮像系部材に受光させる分光手段と、
前記分光手段を介して前記光源からの光を前記デジタルカメラで撮影して得られる前記特定波長の色信号データと、前記赤外カットフィルタと前記色成分分割手段と撮像素子との組み合わせを所定の組み合わせとした場合に得られる前記撮像系部材の色成分毎の第1の相対分光感度特性データ、前記第1の相対分光感度特性データが得られる組み合わせに対して前記赤外カットフィルタの赤外カットオフ波長を短波長側とした場合に得られる前記撮像系部材の第2の相対分光感度特性データ、及び前記第1の相対分光感度特性データが得られる組み合わせに対して前記赤外カットフィルタの赤外カットオフ波長を長波長側とした場合に得られる前記撮像系部材の第3の相対分光感度特性データの少なくとも何れか2つと、を用いて補間処理することにより、前記特定波長以外の波長も含めた前記撮像系部材の相対分光感度特性データを検出する分光感度検出手段と、
前記分光感度検出手段で得られた相対分光感度特性データに基づいて、前記撮像系部材のホワイトバランス係数を算出するホワイトバランス係数算出手段と、
を具備することを特徴とする色調整装置。
【請求項2】
前記分光感度検出手段による補間処理において、
前記第1の相対分光感度特性データ、前記第2の相対分光感度特性データ、及び前記第3の相対分光感度特性データの少なくとも何れか2つにおける、赤外カット波長帯に属する補間対象の第1の波長に対応した第1の相対分光感度データと、前記赤外カット波長帯に属し且つ前記第1の波長に対して長波長側の前記特定波長である第2の波長に対応した第2の相対分光感度データと、前記赤外カット波長帯に属し且つ前記第1の波長に対して短波長側の第3の波長に対応した第3の相対分光感度データとから、前記第2の相対分光感度データに対する前記第1の相対分光感度データと前記第2の相対分光感度データに対する前記第3の相対分光感度データと、の関係を示す補間式を算出し、
前記第2の波長の色信号データから算出された相対分光感度データ及び前記第3の波長の色信号データから算出された相対分光感度データと前記算出された補間式とを用いて、前記赤外カット波長帯の相対分光感度特性データを補間することを特徴とする請求項1に記載の色調整装置。
【請求項3】
前記分光感度検出手段による補間処理において、前記補間式による算出結果が赤外カットオフ開始波長に相当する前記特定波長の相対分光感度よりも大きい場合には、前記補間式による算出結果を適用せず、赤外カットオフ開始波長に相当する前記特定波長の相対分光感度よりも小さな値となるように補間することを特徴とする請求項2に記載の色調整装置。
【請求項4】
前記分光感度検出手段による補間処理において、前記第1の相対分光感度特性データと前記特定波長の色信号データから算出された相対分光感度データとを用いて前記特定波長以外の波長の相対分光感度データを算出することを特徴とする請求項1に記載の色調整装置。
【請求項5】
前記分光感度検出手段による補間処理において、スプライン補間に適した補間点の波長を色成分毎に前記特定波長以外の波長として設定して行われることを特徴とする請求項1に記載の色調整装置。
【請求項6】
前記赤外カットフィルタは、赤外の色成分を反射することによって除去する赤外反射タイプの赤外カットフィルタであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の色調整装置。
【請求項7】
前記分光感度検出手段で得られた相対分光感度特性データに基づいて、目標とする色に対する前記撮像系部材の色補正係数を算出する目標色補正係数算出手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の色調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−175670(P2012−175670A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38799(P2011−38799)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】