説明

色調監視装置、色調管理システム、色調監視方法、及び色調管理方法

【課題】色調の監視及び色合わせを容易に行うことができる不安定な要因の影響を受けることなく、また、カラーパッチ等無しでインキ濃度の変化を検出できる色調監視装置、色調管理システム、及び色調監視方法を提供する。
【解決手段】色調監視装置21は、ベタ濃度調整部50で仮定した推定ベタ濃度と、多値化処理部41で算出した網点面積率と、に基づいて輪転機19で印刷した印刷物のRGBIr値を印刷機モデル演算部47で推定し、この推定RGBIr値と、光学センサ25で撮像した印刷物の実測RGBIr値と、に基づいて所定の計算方法で推定ベタ濃度を算出する。そして、この推定ベタ濃度と、標準ベタ濃度記憶部45から読み出した標準ベタ濃度と、が一致するようにインキ量を制御する制御信号をインキキー制御装置23に出力する。これにより、カラーパッチ等を用いずにインキ濃度を正確に推定でき、色調の監視及び色合わせを容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機で連続的に印刷した印刷物の色調の変動を監視する色調監視装置及び色調監視方法、並びに色調の変動の監視結果に基づき、インキ量を補正して一定の色調に保つ色調管理システム及び色調管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機で印刷した印刷面の色調を目的の色調に合わせるための手段として、従来はカラーパッチ等の単色のベタ部や特定の組み合わせのパターンを印刷物の絵柄以外の部分に印刷し、その部分の濃度や分光特性または色座標値などの表色系で管理する方法が多く提案されている。
【特許文献1】特開2001−18364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、カラーパッチを用いた場合、その部分の色を監視することは容易であるが、実際の印刷物は場所によってインキ毎の消費量が異なり、同じ網点面積率の組み合わせであっても同じようには印刷されないので、本当に合わせたい部分の色を合わせることにはならないという問題があった。
【0004】
また、これらは選択部分を濃度や分光特性または色座標値などの表色系で管理する方法であるため、監視している部分の現在の色の状態はわかっても、そのためにはどの場所のどのインキをどれくらい増減させれば良いかが明確ではないという問題があった。
【0005】
さらに、新聞やチラシ印刷のように、断裁しろが無く、カラーパッチを設けることができない印刷物があり、この場合には上記の方法が使用できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、色調の監視及び色合わせを容易に行うことができ、また画像の画素単位でインキ濃度の変化を検出でき、さらにカラーパッチ等を用いなくてもインキ濃度を正確に推定できる色調監視装置、色調管理システム、色調監視方法、及び色調管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)印刷機で複数のインキにより印刷された印刷物を複数の異なる波長領域で撮像して、各波長領域の実測画像データを画素単位で出力する撮像手段と、
前記印刷物のインキ毎の網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて、前記撮像手段の各波長領域の実測画像データを推定した推定画像データを1画素または複数画素単位で算出する数学的モデルであって、印刷機をシミュレートした印刷機モデルにより、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記実測画像データと、がほほ等しくなるときの解を求め、この解を各インキの推定ベタ濃度値として出力する推定ベタ濃度出力手段と、
各インキのベタ濃度の目標値である目標ベタ濃度値を記憶する記憶手段と、
前記各インキの推定ベタ濃度値と前記各インキの目標ベタ濃度値との差であるベタ濃度差を演算する濃度差演算手段と、
前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差を集計して一定範囲毎のベタ濃度差を算出し、この一定範囲毎のベタ濃度差に基づいて、前記印刷機の各インキ量を一定範囲毎に制御する制御信号を出力する制御信号出力手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成においては、撮像手段が出力した実測画像データと、推定ベタ濃度出力手段が印刷機の数学的モデルにより算出した推定画像データと、の差から各インキのベタ濃度値の推定値(推定ベタ濃度値)を求める。そして、この推定ベタ濃度値と目標ベタ濃度値との差であるベタ濃度差を演算し、ベタ濃度差を集計して一定範囲毎のベタ濃度差に基づいて、一定範囲毎にインキ量を制御するための制御信号を出力する。したがって、印刷された面全体を比較できるため、実際に色調を合わせたい部分を見ることが可能となるとともに、推定画像データの差は常に各インキの単色ベタ濃度の変動に結びついているため、どの部分のどのインキをどれくらい変動させれば目標とする画像データのベタ濃度に一致させられるかが明確となり、一定範囲毎にインキ量を容易に制御できる。
【0009】
(2)前記推定ベタ濃度出力手段は、前記印刷機モデルにより1画素または複数画素単位で推定画像データを算出する印刷機モデル演算手段を含み、
前記印刷機モデル演算手段は、
各インキの単色ベタ濃度から、各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値を算出する混色モデル演算部と、
前記混色モデル演算部が算出した各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値から、その反射率を算出する反射率演算部と、
各インキのベタ濃度及びデジタルデータ上の網点面積率値から実際に印刷された紙面上の網点面積率を求めるドットゲインモデル演算部と、
前記ドットゲインモデル演算部が求めた紙面上の網点面積率から、各インキのベタ重ね部分の面積率を算出する面積率演算部と、
前記反射率演算部が算出した反射率及び前記面積率演算部が算出した面積率に基づいて、各インキの組み合わせに対する再現色を求めて、前記撮像手段の実測画像データを推定した推定画像データを算出する推定値演算部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成においては、推定ベタ濃度出力手段は、前記印刷機モデルにより1画素または複数画素単位で推定画像データを算出する印刷機モデル演算手段を含み、
前記印刷機モデル演算手段は、混色モデル演算部と、ドットゲインモデル演算部と、反射率演算部及び面積率演算部の出力に基づいて、推定画像データを算出する推定値演算部と、を備えている。混色モデルやドットゲインモデルを用いることで、各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値や各ベタ重ね印刷部分の網点面積率値を容易に算出することができるので、推定画像データを効率良く算出することができる。また、複数の異なる波長領域で表現される画像は、全て単色ベタ濃度に結びつけることが出来るため、インキの増減を的確に推定することができる。
【0011】
(3)前記混色モデル演算部は、前記単色ベタ濃度をインキ膜厚に換算し、インキの膜厚とインキ濃度の関係を求める膜厚モデルまたは関数近似法を用いて、各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値を算出することを特徴とする。
【0012】
膜厚モデルは、インキの膜厚がいくら増えても、ある一定濃度以上には上がらず、紙及びインキの表面での反射を考慮した場合も、この表面の反射が最大濃度を決定するという特性を計算上で再現するモデルである。この構成においては、混色モデル演算部に膜厚モデルを適用することで、各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値を容易に算出できる。また、膜厚モデルを用いることにより、混色部分をある光源で見た時に見えるモノクロ濃淡画像を単色インキでの仮想膜厚に置き換えることが可能となり、仮想膜厚と各インキの膜厚との関係から単色ベタ部のインキ膜厚を求めることができ、更に単色ベタ部の濃度を求めることが容易となる。また、関数近似法として例えば多項式近似法を用いることで、多項式の次数を変えることにより任意の精度を得ることが可能であり、モデルを仮定しないので特定の印刷方式に依存することがなく、あらゆる印刷方式に適用可能である。
【0013】
(4)前記推定ベタ濃度出力手段は、上流の製版データを多値化した各インキの網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて推定画像データを算出することを特徴とする。
【0014】
この構成においては、推定ベタ濃度出力手段は、各インキの網点面積率を、上流の製版データを多値化して取得し、この網点面積率と各インキのベタ濃度値に基づいて推定画像データを算出する。したがって、上流の製版データを取得することで、網点面積率を簡便かつ容易に取得でき、推定画像データを速やかに算出できる。また、上流の画像データを取得することで、推定ではなく正確な網点面積率を使用することが可能となり、印刷機モデルの演算での誤差の要因を減らすことが可能となる。
【0015】
(5)前記推定ベタ濃度出力手段は、前記撮像手段で撮像した印刷物の実測画像データから標準ベタ濃度を仮定し、この仮定した標準ベタ濃度から推定した各インキの網点面積率と、前記各インキのベタ濃度値と、に基づいて推定画像データを算出することを特徴とする。
【0016】
この構成においては、推定ベタ濃度出力手段は、撮像手段で撮像した印刷物の実測画像データから標準濃度を仮定し、この仮定した標準濃度から各インキの網点面積率を推定して取得する。そして、この網点面積率に基づいて推定画像データを算出する。したがって、上流の画像データを取得できない場合でも、標準ベタ濃度を仮定することで、各インキの網点面積率を推定して取得し、推定画像データを算出することが可能となる。また、上流のデータを必要としないので、既存の印刷機に閉じたシステムとして追加することが容易となる。またこの場合、印刷機モデルの演算での誤差は残るものの、デジタルデータ上の網点面積率に対して、実際に製版されて印刷機で使用された時に有効となる、機械および印刷機モデルの特性を含んだ実効網点面積率を使用することとなり、印刷機モデルの誤差をカバーすることも期待できる。
【0017】
(6)前記撮像手段は、前記実測画像データとして、波長領域毎の反射光量値または反射光量値に基づく別の値を画素単位で出力することを特徴とする。
【0018】
この構成においては、撮像手段は、波長領域毎の反射光量値または反射光量値に基づく別の値を実測画像データとして画素単位で出力する。したがって、例えば、反射光量値の変換を対数関数のようなものにすることにより、濃度の濃い部分と薄い部分で要求する精度を変えることができ、濃度の階調に近い、適正な精度を全体に渡って得ることができる。
【0019】
(7)前記撮像手段が波長領域毎の反射光量を出力すると、この反射光量値に基づく別の値に変換する変換手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成においては、変換手段は、撮像手段が出力した波長領域毎の反射光量値を別の値に変換する。したがって、撮像手段が波長領域毎の反射光量値を出力する場合には、別の値に変換することで、(6)と同様の効果が得られる。
【0021】
(8)前記印刷物に複数の監視点を設定して、その座標情報を前記推定ベタ濃度出力手段及び前記推定ベタ濃度出力手段に出力する監視点設定手段を備え、
前記推定ベタ濃度出力手段及び前記推定ベタ濃度出力手段は、監視点単位で処理を行うことを特徴とする。
【0022】
この構成においては、監視点設定手段により設定された監視点単位で、推定ベタ濃度出力手段及び推定ベタ濃度出力手段は処理を行う。したがって、適切に監視点を設定することで監視する画素数を削減できるので、色調の監視処理を高速化できる。
【0023】
(9)ICCプロファイルまたは多次元LUTに基づいて、上流の製版データから、前記撮像手段の実測画像データを推定した基準画像データを画素単位で生成する画像処理手段を備え、
前記推定ベタ濃度出力手段は、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記基準画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を前記目標ベタ濃度値として前記記憶手段に記憶させることを特徴とする。
【0024】
この構成においては、上流の製版データから生成した基準画像データと、推定ベタ濃度出力手段が算出した推定画像データを比較して、両データの差が一定値以下になったときのベタ濃度値を目標ベタ濃度値とする。したがって、撮像手段で撮像した実測画像データと推定ベタ濃度出力手段が出力した推定画像データとから得られた推定ベタ濃度を、この目標ベタ濃度に近づけるように制御することで、印刷物の色調をその画像に適した値にすることができる。
【0025】
(10)前記推定ベタ濃度出力手段は、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記基準画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を前記目標ベタ濃度値として前記記憶手段に記憶させることを特徴とする。
【0026】
この構成においては、色合わせが完了した基準印刷物を撮像手段で撮像して、その基準画像データと推定画像データとに基づいて各インキのベタ濃度値を求めて、この各インキの目標ベタ濃度値を記憶手段に記憶させる。したがって、実際に色調を確認した基準印刷物に基づいて、印刷物の色調を監視・調整することができる。
【0027】
(11)前記記憶手段は、予め設定された基準のベタ濃度値を前記各インキの目標ベタ濃度値として記憶することを特徴とする。
【0028】
この構成においては、予め設定された基準のベタ濃度値を前記各インキの目標ベタ濃度値として記憶手段は記憶している。したがって、基準のベタ濃度値として、例えば新聞社の標準のベタ濃度値を設定することで、印刷物の色調をその新新聞社の基準に合ったものにすることができる。
【0029】
(12)前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値と、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、前記制御信号出力手段が集計した一定範囲毎のベタ濃度差と、の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
この構成においては、報知手段は、濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、濃度調整手段が出力した推定ベタ濃度値の少なくともいずれかを報知する。したがって、印刷機のオペレータは、報知手段の報知内容に基づいてインキ量を調整することができる。
【0031】
(13)前記記憶手段、前記濃度差演算手段、及び前記制御信号出力手段に代えて、前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
この構成においては、撮像手段が出力した実測画像データと、推定ベタ濃度出力手段が算出した推定画像データと、の差から各インキのベタ濃度値の推定値である推定ベタ濃度値を求める。そして、この推定ベタ濃度値を報知手段で報知する。したがって、印刷された面全体を比較できるため、実際に色調を合わせたい部分を見ることが可能となるとともに、推定画像データの差は常に各インキの単色ベタ濃度の変動に結びついているため、どの部分のどのインキをどれくらい変動させれば目標とする画像データのベタ濃度に一致させられるかが明確となり、オペレータは、報知手段の報知内容に基づいて印刷機のインキ量を制御可能となる。また、カラーバッチが無くても、ベタ部の濃度値を推定することができる。
【0033】
(14)前記制御信号出力手段に代えて、前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値と、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、前記制御信号出力手段が集計した一定範囲毎のベタ濃度差と、の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0034】
この構成においては、オペレータは、報知手段の報知内容に基づいて印刷機のインキ量を制御可能となる。
【0035】
(15)前記制御信号出力手段に代えて、前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値、または前記濃度差演算手段が演算した各インキのベタ濃度差の少なくとも一方を集計して一定範囲毎の推定ベタ濃度値またはベタ濃度差の少なくとも一方を算出する集計手段と、
前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値と、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、前記制御信号出力手段が算出した一定範囲毎の推定ベタ濃度値または一定範囲毎のベタ濃度差と、の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
この構成においては、オペレータは、報知手段の報知内容に基づいて印刷機のインキ量を制御可能となる。
【0037】
(16)(1)乃至(12)のいずれかに記載の色調監視装置と、
前記色調監視装置の制御信号出力手段が出力した制御信号に基づいて、前記印刷機が印刷に用いるインキ量を調整するインキ量制御装置と、
を含むことを特徴とする。
【0038】
この構成においては、色調監視装置は、印刷機が印刷した印刷物の色調を監視してインキ量を制御する制御信号を出力し、インキ量制御装置が、色調監視装置の制御信号出力手段が出力した制御信号に基づいて、印刷機のインキ量を調整する。したがって、この色調管理システムを採用することで、印刷された面全体を比較できるため、実際に色調を合わせたい部分を見ることが可能となるとともに、推定画像データの差は常に各インキの単色ベタ濃度の変動に結びついているため、どの部分のどのインキをどれくらい変動させれば目標とする画像データのベタ濃度に一致させられるかが明確となり、印刷物の色調を一定範囲内に精度良く保つことができる。
【0039】
(17)撮像手段が、印刷機で複数のインキを用いて印刷された印刷物を複数の異なる波長領域で撮像して、各波長領域の実測画像データを出力する手順と、
推定ベタ濃度出力手段が、前記印刷物のインキ毎の網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて、前記撮像手段の各波長領域の実測画像データを推定した推定画像データを1画素または複数画素単位で算出する数学的モデルであって、印刷機をシミュレートした印刷機モデルにより、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記実測画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を各インキの推定ベタ濃度値として出力する手順と、
報知手段が、前記推定ベタ濃度値を報知する手順と、
を備えたことを特徴とする。
【0040】
この構成においては、(13)と同様の効果を得ることができる。
【0041】
(18)撮像手段が、印刷機で複数のインキを用いて印刷した印刷物を複数の異なる波長領域で撮像して、各波長領域の実測画像データを画素単位で出力する手順と、
推定ベタ濃度出力手段が、前記印刷物のインキ毎の網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて、前記撮像手段の各波長領域の実測画像データを推定した推定画像データを1画素または複数画素単位で算出する数学的モデルであって、印刷機をシミュレートした印刷機モデルにより、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記実測画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を各インキの推定ベタ濃度値として出力する手順と、
記憶手段が、各インキのベタ濃度の目標値である目標ベタ濃度値を記憶する手順と、
濃度差演算手段が、前記各インキの推定ベタ濃度値と、前記各インキの目標ベタ濃度値と、のベタ濃度差を演算する手順と、
制御信号出力手段が、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差を集計して一定範囲毎のベタ濃度差を算出し、この一定範囲毎のベタ濃度差に基づいて、前記印刷機の各インキ量を制御する制御信号を出力する手順と、
インキ量制御手段が、前記制御信号に基づいて、前記印刷機が印刷に使用するインキ量を一定範囲毎に調整する手順と、
を備えたことを特徴とする。
【0042】
この構成においては、(1)と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、印刷物を取り込んだ光学センサの実測画像データを、センサの画像と等価な推測画像データと比較し、その差から各インキのベタ濃度値の推定値を求め、この推定ベタ濃度値と目標ベタ濃度値との差を監視点毎に演算する。これにより、カラーパッチ等の特定のパターンではなく、印刷された面全体を比較できるため、実際に色調を合わせたい部分を見ることが可能となるとともに、実測画像データと推定画像データの差は常に各インキの単色ベタ濃度の変動に結びついているため、どの部分のどのインキをどれくらい変動させれば目標とする画像に一致させられるかが明確となる。また、どの部分のどのインキをどれくらい変動させれば良いかを、インキ供給機構の関係する領域毎に集計し、インキ供給量を制御することにより自動的に色調を目的とするものに合わせることが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は、本発明の実施形態に係る色調管理システムを含む印刷システムの概略構成を示したブロック図である。図1に示す色調管理システム3は、印刷物の一例として新聞紙の色調を管理するシステムである。なお、本構成の新聞社側の構成については一般的なものを記述しているが、これに限るものではない。
【0045】
印刷システム1は、モニタ113が接続された紙面編集装置(コンピュータ)11、RIP(Raster Image Processor)12、画像ファイルを蓄積・提供する画像サーバ13、校正刷りデータの画像処理を行う画像処理装置14、校正紙を印刷する校正用プリンタ15、刷版を製作するCTP(Computer to Plate)17、印刷物(新聞紙)を印刷するオフセット輪転機(以下、単に輪転機と称する。)19、印刷物の色調を監視する色調監視装置21、色調監視装置21が推定したインキの状態を表示するモニタ22、インキキー72A〜72Hの開度を制御するインキキー制御装置23、及び輪転機19で印刷された印刷物の画像を撮像する光学センサ25F,25Rを備えた構成である。また、本発明の色調管理システム3は、色調監視装置21と、インキキー制御装置23と、光学センサ25F・25Rから成る。なお、輪転機19のインキの状態を報知するために、モニタ22により画像により色調の情報を報知するだけでなく、スピーカやブサー等を設けて音声により色調の情報を報知するようにしても良い。
【0046】
ここで、輪転機19では、印刷物(新聞紙)の両面に文字や絵柄が印刷され、これらを光学センサ25F・25Rで撮像して、印刷物の両面の色調を管理するが、以下の説明では、説明を簡略化するために印刷物の表面を光学センサ25Fで撮像して色調監視・管理を行う説明のみ記載するが、印刷物の裏面についても同様に光学センサ25Rで撮像して色調監視・管理を行うものとする。
【0047】
紙面編集装置11は、編集者Hが、記事やカラー写真、クライアントKから依頼された新聞掲載用のカラー広告等をモニタ113に表示させて紙面編集を行うためのものである。紙面編集装置11は、標準的な輪転機に合った色調特性となるように設定されたプロファイルを記憶部111で記憶している。紙面編集装置11では、制御部112が記憶部111からこのプロファイルを読み出して、編集されたカラー広告等の画像をプロファイル変換してRIP12へ出力する。RIP12は、プロファイル変換された画像から複数のインキに対応する2値網点画像データを作成し、画像サーバ13にこれらの2値網点画像データを出力する。RIP12は、2値網点画像データとして、例えば1bit Tiff形式の画像データを作成する。
【0048】
画像サーバ13は、これらの画像データを蓄積する。
【0049】
画像処理装置14は、校正用プリンタ15の色調特性となるように設定されたプロファイルを記憶部141で記憶している。画像処理装置14では、制御部142が記憶部141からこのプロファイルを読み出すとともに、画像サーバ13に蓄積された各2値網点画像データを読み出して、校正用プリンタ15の色調特性となるように多値化及びプロファイル変換を行い、変換した画像データを校正用プリンタ15に出力する。
【0050】
校正用プリンタ15は、画像処理装置14から出力された画像データに基づく画像を印刷して校正紙31を出力する。クライアントKは、校正紙31の内容を確認して、校正紙31の内容に問題があれば編集者Hに問題点を伝える。この場合、編集者Hは、紙面編集装置11で画像を修正し、校正用プリンタ15で印刷した校正紙31を再度クライアントKに確認してもらう。クライアントKは、校正紙31の内容に問題が無ければ(または無くなれば)、その旨を編集者Hに伝える。
【0051】
紙面編集装置11は、編集者Hにより校正紙31の内容に問題が無い旨の操作を検出すると、この画像データを正規の画像データとしてRIP12に出力し、画像サーバ13に2値網点画像データを蓄積させる。
【0052】
CTP17は、画像サーバ13から正規の画像データ(2値網点画像データ)を読み出して、輪転機19の各インキ用の刷版を制作する。
【0053】
輪転機19は、CTP17で製作された刷版がセットされており、ロール紙Rからウェブ状の連続紙Pを供給し、印刷ユニット73でブラック(Black:以下、Kと称する。)・シアン(Cyan:以下、Cと称する。)・マゼンタ(Magenta:以下、Mと称する。)・イエロー(Yellow:以下、Yと称する。)のインキが複数のインキキー72A〜72Hから供給され、連続紙Pの両面に文字や絵柄を印刷する。なお、インキの供給順はこの順番に限定されるものではなく、新聞社や印刷工場により異なる順番でインキが供給される。インキキー72A〜72Hは、一定幅であり、連続紙Pの紙面に対して複数配列されている。また、輪転機19では、図示していないが、例えば、CMYKとオレンジとグリーンの6色によるヘキサクローム印刷や、CMYKと赤・緑・青(RGB)の7色によるハイファイ印刷など5色以上のインキによる印刷が可能である。また、輪転機19では、CMYKと1つまたは複数の特色(スポットカラー、特練色とも言う。)インキによる特色印刷も可能である。
【0054】
印刷ユニット73の後段(下流側)には、連続紙Pの表側に対向して光学センサ25Fが、連続紙Pの裏面側に対向して光学センサ25Rが設けられている。光学センサ25F・25Rは、印刷ユニット73でCMYKや他の色のインキによる印刷が完了した走行中の印刷紙面の表面(表胴側)及び裏面(裏胴側)を撮像して、複数の波長領域の画像データ(センサ値)を画素毎に出力する。
【0055】
ここで、光学センサ25F・25Rは、一例として、不図示の光源から照射されて連続紙Pの表面で反射した光を受光して、赤(Red:以下、Rと称する。)・緑(Green:以下、Gと称する。)・青(Blue:以下、Bと称する。)・赤外(Infrared rays:以下、Irと称する。)の4つの波長領域で撮像を行い、R・G・B・Ir(以下、RGBIrと記載する場合もある。)の4つの波長領域の画像データ(センサ値)を画素毎に出力する。なお、光学センサ25F・25Rは、一例として反射光量値をデジタルデータとして出力する。なお、不図示の光源は、可視光の全波長を含む光を照射するものでも、R・G・B・Irの4つの波長領域のみの光を照射するものでも良く、また、1つの光源でも複数の光源でも良い。なお、CMYKに加えて他の色のインキを使用して印刷を行う場合には、印刷した絵柄をRGBIrの波長領域で撮像しても、さらに他の波長領域で撮像しても良い。
【0056】
また、以下の説明において、センサ値を以下のように定義する。
センサ値 : 光学センサが検出した反射光量そのもの、または、光学センサが検出した反射光量と白紙部の反射光量との関係を以下のように演算した値とする。
【0057】
センサ値=−log10(光量/白紙部の光量)
但し、logの底は10に限るものではなく、他の値でも良い。なお、センサ値は、これらの値に限定するものではなく、その他、任意の1価関数でも良く、光学センサ25F・25Rが反射光量値を出力するのか、それとも反射光量値を変換した所定の値(反射光量値とは別の値)を出力するのか、に応じて定義すればよい。
【0058】
また、光学センサ25F・25Rは、上記のようにRGBIrの4つの波長領域で撮像して、各波長領域のセンサ値(実測画像データ)を画素毎に出力するので、以下の説明では、4つの波長領域のセンサ値をまとめてRGBIr値と称する。
【0059】
輪転機19には、複数のインキキー72A〜72Hの開度を制御して紙面に供給するインキ量を調整するインキキー制御装置23が接続されて、色調監視装置21には、モニタ22が接続されている。インキキー制御装置23は、色調監視装置21からの制御信号により、またはオペレータがモニタ22の表示内容に応じて行う操作に応じて、各インキキー72A〜72Hの開度を調整する。
【0060】
色調監視装置21は、多値化処理部41、監視点座標出力部42、画像処理部43、プロファイル記憶部44、標準ベタ濃度記憶部45、印刷機モデル演算部47、第一比較演算部49、ベタ濃度調整部50、第二比較演算部51、集計部52、画像メモリ53、及びセンサ値変換部54を備えている。
【0061】
ここで、色調監視装置21では、光学センサ25F・25Rが撮像して画素単位で出力した画像データを、1画素単位、または複数画素を1要素として取りまとめた1要素単位で、多値化処理部41、画像処理部43、及びセンサ値変換部54は処理を行うことが可能である。この取りまとめ方法には、以下のようなものがある。
【0062】
1.複数画素を平均化して1処理単位とする。例えば、縦3画素×横3画素のエリアの平均値を1処理単位として扱う。これにより、1画素単位のノイズの影響を緩和したり、処理速度を上げたりするメリットがある。
【0063】
2.RGBIrまたはCMYKの網点面積率が、ある一定の範囲内のものを1単位としてこの平均値を1処理単位とする。例えば、RGBIrをそれぞれ0〜100の値で表現した場合、これを5刻みで1つの範囲としてRGBIrをそれぞれ20の範囲に分割し、RGBIrの組み合わせで20×20×20×20=160000に区分して、この同じ区分に入る画素を平均化して1処理単位として扱う。この方法により、均一な絵柄(平網部)がある絵柄に対しては処理速度及び精度を上げることができる。
【0064】
また、以下の説明では、複数の監視点を、1画素または1要素単位に設定し、各監視点について、色調の監視・管理を行う場合を例に挙げて説明する。
【0065】
多値化処理部41は、画像サーバ13から2値網点画像データを読み出して、この2値網点画像データから各画素の刷版上の網点面積率(Ac,Am,Ay,Ak=デジタルデータでの網点面積率)を作成して、監視点座標出力部42や印刷機モデル演算部47へ出力する。
【0066】
監視点座標出力部42は、画素毎の画像データを解析して、RGBIrの各色の複数の監視点を設定する。また、監視点座標出力部42は、前記のようにして設定した複数の監視点の座標データを記憶しており、監視点の座標データを画像処理部43、印刷機モデル演算部47、及び第一比較演算部49に出力する。なお、監視点としては、画素単位であれば、すべての画素を設定しても、一部の画素、例えば色調の監視に好適な画素を選択して設定しても良い。
【0067】
画像処理部43は、画像サーバ13からテストチャートの2値網点画像データを読み出して、この2値網点画像データと、画像メモリ53及びセンサ値変換部54を介して出力された、光学センサ25Fで色調調節済テストチャートの画像データを読み取ったセンサ値(RGBIr値)と、の関係を分析して、プロファイルP3を作成する。そして、このプロファイルP3をプロファイル記憶部44に記憶させる。また、画像処理部43は、ブロファイル記憶部44からプロファイルP3を読み出して、画像サーバ13から2値網点画像データを多値化・プロファイル変換して作成したRGBIr値の基準値(基準画像データ)を、第一比較演算部49へ出力する。
【0068】
プロファイル記憶部44は、画像処理部43が作成したプロファイルP3を記憶する。
【0069】
標準ベタ濃度記憶部45は、ベタ濃度の標準値(目標値)を記憶する。
【0070】
印刷機モデル演算部47は、輪転機19の動作をシミュレートしたものであり、ベタ濃度値と、画像の網点面積率と、を与えると、そのときの光学センサ25Fで読み取った画像のRGBIr値の近似値(推定画像データ)を出力する。なお、印刷機モデル演算部47の詳細な構成については後述する。
【0071】
第一比較演算部49は、画像処理部43が作成したRGBIr値(基準画像データと、印刷機モデル演算部47が出力したRGBIr値(推定画像データ)と、を例えば監視点毎に比較して、両RGBIr値の差分を計算し、ベタ濃度調整部50へ出力する。
【0072】
ベタ濃度調整部50は、印刷機モデル演算部47が出力したRGBIr値が、画像処理部43が出力したRGBIr値に近くなるように、つまり第一比較演算部49が出力した両RGBIr値の差分が一定値以下に収束するように、ベタ濃度値(推定ベタ濃度値)を演算して出力する。
【0073】
なお、印刷機モデル演算部47、第一比較演算部49、及びベタ濃度調整部50が、推定ベタ濃度出力手段に相当する。
【0074】
第二比較演算部51は、標準ベタ濃度記憶部45から目標の単色ベタ濃度値(目標ベタ濃度値)を読み出して、この目標の単色ベタ濃度値(目標ベタ濃度値)と、印刷機モデルにより推定した単色ベタ濃度値(推定ベタ濃度値)と、を例えば監視点毎に比較し、比較結果であるベタ濃度差(ベタ濃度偏差)を集計部52へ出力する。
【0075】
集計部52は、第二比較演算部51が出力した演算結果(ベタ濃度差)を一定範囲毎に、つまりコラム(インキ量の制御単位幅であるインキキー幅)毎に平均化し、この平均ベタ濃度偏差を、インキキー制御装置23へ出力する。また、集計部52は、ベタ濃度調整部50が出力した推定ベタ濃度値、第二比較演算部51が出力したベタ濃度差、または上記のように算出した平均ベタ濃度偏差(平均ベタ濃度差)の少なくともいずれかをモニタ22が表示するように、これらの信号をモニタ22に出力する。
【0076】
モニタ22は、集計部52から受け取った信号に基づいた画像を表示する。
【0077】
画像メモリ53は、光学センサ25Fが印刷物の画像を読み取って出力したRGBIrの各反射光量値、または反射光量値に基づく値を記憶する。
【0078】
センサ値変換部54は、画像メモリ53からRGBIrの各反射光量値を読み出して、上記用語定義によるセンサ値に変換し、画像処理部43または第一比較演算部49に出力する。
【0079】
なお、色調監視装置21において、センサ値として光学センサ25F・25Rが出力した反射光量値に対して対数変換処理などを行わずに用いる場合や、光学センサ25F・25Rが反射光量に基づく別の値(例えば、反射光量値を対物変換した値)を出力する場合には、センサ値変換部54は設けなくても良い。また、センサ値変換部54は、画像メモリ53の上流側に設けても良い。
【0080】
色調管理システム3の色調監視装置21は、輪転機19が印刷したドライダウン前の新聞紙画像を光学センサ25Fで監視し、インキキー制御装置23に制御信号を出力して、輪転機19の各インキキー72A〜72Hの開度を調整する。これにより、輪転機19で印刷した連続紙Pをドライダウンした後の新聞紙33の色調(インキ濃度値)が、新聞社で決めた適正印刷状態の色調に、結果的に、ほぼ一致するようになる。
【0081】
また、色調監視装置21の印刷機モデル演算部47には、ベタ濃度値と、画像の面積率と、を与えると、そのときの光学センサ25Fで読み取った画像のRGBIr値の近似値が得られるように、輪転機19の動作をシミュレートする印刷機モデル(数学的モデル、)(数式、テーブルまたはその組み合わせ)が設定されている。印刷機モデルは、輪転機19の動作をシミュレートして画像のRGBIr値を算出するので、初期状態において色調を調整するためのテスト印刷を従来のように大量に行わなくても良く、初期状態のテスト印刷回数を削減することができ、テストのためにインキや新聞紙を大量に消費するのを防止することが可能となる。
【0082】
図2は、印刷機モデル演算部の構成を示す図である。印刷機モデル演算部47は、ベタ混色モデル演算部61、反射率演算部63、ドットゲインモデル演算部65、面積率演算部67、及びノイゲバウアモデル演算部(推定値演算部)69を備えている。
【0083】
ベタ混色モデル演算部61は、各インキの単色ベタ濃度から、各インキのベタ重ね部(重ね部分)の濃度値を求める混色モデルに基づいて混色ベタ部の濃度を計算する。また、本発明では、ベタ混色モデル演算部61は、単色ベタ濃度をインキ膜厚に換算する膜厚モデルに基づいて、混色ベタ部の濃度を計算する。
【0084】
反射率演算部63は、ベタ混色モデル演算部61が計算した混色ベタ部の濃度に基づいて単色ベタ部及び混色ベタ部の反射率を計算する。
【0085】
ドットゲインモデル演算部65は、ベタ濃度調整部50が出力した各インキのベタ濃度値及び多値化処理部41が出力した網点面積率値から、各重ね部(重ね部分)の面積率を求めるドットゲインモデルに基づいて、紙面上での網点面積値を計算する。
【0086】
面積率演算部67は、ドットゲインモデル演算部65が計算した紙面上での網点面積値に基づいて、単色ベタ部及び混色ベタ部の面積率を計算する。
【0087】
ノイゲバウアモデル演算部69は、周知のノイゲバウアの式を用いて、反射率演算部63が出力した単色ベタ部及び混色ベタ部の反射率と、面積率演算部67が出力した単色ベタ部及び混色ベタ部の面積率と、から、印刷物の画像の推定RGBIr値を算出する。
【0088】
ここで、上記のベタ混色モデル演算部61、ドットゲインモデル演算部65,及びノイゲバウアモデル演算部69において、計算に用いるドットゲインモデル、混色モデル、膜厚モデル、及びノイゲバウアモデルについて説明する。図3は、ドットゲインモデル及び混色モデルを説明するための図である。
【0089】
<ドットゲインモデル>
製版工程においては、図3(A)に示すように、インキが乗る部分と乗らない部分を小さなドットの集合で表現し、これをマクロに見ることにより階調及び色の違いを表現することを目的としている。このインキが乗る小さなドットの占める面積の割合を網点面積率という。オフセット印刷では、版から紙に直接ではなく、一旦ゴムを貼ったローラ(ブランケット胴)に転写してから、紙に転写するが、図3(B)に示すように、実際にインキを乗せて印刷した場合は、インキが立体的に乗る。そのため、図3(C)に示すように、その量により版の上に形成されたドットからインキがはみ出る現象が生じる。この場合には、版の上に形成された網点面積率よりも、実際に印刷された紙面上の網点面積率の方が大きくなるドットゲイン(網点の太り)と呼ばれる現象が生じる。
【0090】
このドットゲインの割合は、図3(D)に示すように、同じインキを使った輪転機であっても元の網点面積率とインキの量によって変わる。また、紙面に直接インキが乗る場合と、多色インキで印刷済みの部分の上にインキ乗る場合とではドットゲインが異なる現象がある。このような特性を、単色ベタ濃度と網点面積率から計算上で再現して、各インキの重ね印刷部の面積率を求めるものをドットゲインモデルと称する。なお、ドットゲインの発生原因は複数あり、その主な要因の一つが上記の版の上に形成されたドットからインキがはみ出る現象によるものである。
【0091】
<混色モデル>
例えばCMYKの4色で印刷した場合、それぞれの版はインキが乗るか乗らないかの2値で表現されたドットの集合であるから、印刷されたものもミクロで見ると、インキが乗っている部分は100%のベタで印刷されていると見ることができる。
【0092】
したがって、CMYK4色の印刷の場合は、それぞれが100%のベタで印刷された部分か、白紙の部分かの2通りに分けられるため、2通りの4乗=16通りに分けることができる。つまり、全ての箇所をミクロで見れば、図3(E)に示すように、白紙部、C単色ベタ部、M単色ベタ部、Y単色ベタ部、K単色ベタ部、CM混色部、CY混色部、CK混色部、MY混色部、MK混色部、YK混色部、CMY混色部、CMK混色部、CYK混色部、MYK混色部、CMYK混色部の16通りのベタ混色(白紙を含む)で表現できる。一方、印刷機モデルへの入力はCMYKの各面積率およびCMYKの各単色濃度であるので、C単色ベタ部乃至CMYK混色部の15通りのベタ混色部のRGBIr各反射率乃至反射濃度を入力のCMYK各単色濃度から求める必要があり、これを計算上で再現するものがベタ混色モデルである。
【0093】
また、本願発明では、このベタ混色部の反射率を表現する方法として、独自に考案した膜厚モデルを採用している。
【0094】
<膜厚モデル>
図4〜図9は、膜厚モデルを説明するための図である。膜厚モデルは、混色モデルの一例である。膜厚モデルは、インキの膜厚がいくら増えても、ある一定濃度以上には上がらず、紙及びインキの表面での反射を考慮した場合も、この表面の反射が最大濃度を決定するという特性を計算上で再現するものである。
【0095】
膜厚モデルは、以下の式を基本とし、これに以下の工夫を加えている。
【0096】
D=D・(1−e−mt
t:膜厚
m:紙、インキ等に依存する係数
:最大濃度
[工夫1]
インキの刷り順により、単色ベタ部、混色部の膜厚の関係が変わる。そのため、単色ベタ部および混色部の膜厚を図4のように考える。
【0097】
[工夫2]
単色の光源で、モノクロカメラで見た時に見える濃淡画像は、単色インキでその画像と等価なものを再現できることを意味しているため、各光源(ここではR,G,B,Irとするが、この限りではない)毎に代表インキ(ここでは、R光源に対してはCインキ、G光源に対してはMインキ、B光源に対してはYインキ、Ir光源に対してはKインキとするが、この限りではない)を決め、その代表インキでの膜厚に換算する(図5〜8参照)。
【0098】
[工夫3]
前記の式および、膜厚の関係から、図9の関係をつなげることにより、RGBIr画像からYMCK単色ベタ部の濃度(インキ量)を求める。
【0099】
<ノイゲバウアモデル>
周知のノイゲバウアの式を用いて網点印刷の色再現を行うモデルであり、白地、単色インキ部、2次、3次、4次色インキベタ部分を対象色として計測し、混色モデルでのRGBIr各反射率に各色部分の出現確率を乗じて任意のCMYK組み合わせに対する再現色を求める。
【0100】
印刷機モデル演算部47は、単色ベタ部のセンサ濃度と、上流システム(画像サーバ13)から取得する刷版作成用デジタルデータの網点面積率との2つを入力とし、予想センサ値(推定RGBIr値)を計算して出力する。
【0101】
単色ベタ部濃度は、単色100%のベタ部が印刷物中にあった場合にその部分の濃度のことで、実際の印刷物中には単色ベタ部が存在していない場合もある。単色ベタ部濃度は、インキの膜厚に相関する量である。
【0102】
なお、上記のドットゲインモデルやノイゲバウアモデルとしては、より精度の高い様々な修正式が提案されており、これらを適用することも可能であり、実施例に限定されるものではない。
【0103】
また、混色モデルとして膜厚モデル以外に、関数近似法として例えば近似多項式を用いた方法等も適用可能である。
【0104】
近似多項式の例: 単色ベタ濃度 Dc_r, Dm_g, Dy_b, Dk_irが与えられたとき、
Dc_g= C2c_r・Dc_r2 + C1c_r・Dc_r + C0c_r
Dc_b= C2c_b・Dc_r2 + C1c_b・Dc_r + C0c_b
Dc_ir=C2c_ir・Dc_r2 + C1c_ir・Dc_r + C0c_ ir
Dm_r=C2m_r・Dm_g2 + C1m_r・Dm_g + C0c_r
Dm_b=C2m_b・Dm_g2 + C1m_b・Dm_g + C0c_b
Dm_ir=C2m_ir・Dm_g2 + C1m_ir・Dm_g + C0c_ir
Dy_r=C2y_r・Dy_b2 + C1y_r・Dy_b + C0y_r
Dy_g=C2y_g・Dy_b2 + C1y_g・Dy_b + C0y_g
Dy_ir=C2y_ir・Dy_b2 + C1y_ir・Dy_b + C0y_ir
Dk_r=C2k_r・Dk_ir2 + C1k_r・Dk_ir + C0k_r
Dk_g=C2k_g・Dk_ir2 + C1k_g・Dk_ir + C0k_r
Dk_b=C2k_b・Dk_ir2 + C1k_b・Dk_ir + C0k_r
(以下、xにはr,g,b,irが入るものとする。)
Dcm_x=C2cm_x・Dc_x + C1cm_x・Dm_x + C0cm_x・Dc_x・Dm_x
Dcy_x=C2cy_x・Dc_x + C1cy_x・Dy_x + C0cy_x・Dc_x・Dy_x
Dck_x=C2ck_x・Dc_x + C1ck_x・Dk_x + C0ck_x・Dc_x・Dk_x
Dmy_x=C2my_x・Dm_x + C1my _x・Dy_x + C0my _x・Dm_x・Dy_x
Dmk_x=C2mk_x・Dm_x + C1mk_x・Dk_x + C0mk_x・Dm_x・Dk_x
Dyk_x=C2yk_x・Dy_x + C1yk_x・Dk_x + C0yk_x・Dy_x・Dk_x
Dcmy_x=C7cmy_x・Dc_x + C6cmy_x・Dm_x + C5cmy_x・Dy_x +
C4cmy_x・Dcm_x + C3cmy_x・Dcy_x + C2cmy_x・Dmy_x +
C1cmy_x・Dc_x・D m_x・D y_x + C0cmy_x
Dcmk_x=C7cmk_x・Dc_x + C6cmk_x・Dm_x + C5cmk_x・Dk_x +
C4cmk_x・Dcm_x + C3cmk_x・Dck_x + C2cmk_x・Dmk_x +
C1cmk_x・Dc_x・Dm_x・Dk_x + C0cmk_x
Dcyk_x=C7cyk_x・Dc_x + C6cyk_x・Dy_x + C5cyk_x・Dk_x +
C4cyk_x・Dcy_x + C3cyk_x・Dck_x + C2cyk_x・Dyk_x +
C1cyk_x・Dc_x・Dy_x・Dk_x + C0cyk_x
Dmyk_x=C7myk_x・Dm_x + C6myk_x・Dy_x + C5myk_x・Dk_x +
C4myk_x・Dmy_x + C3myk_x・Dmk_x + C2myk_x・Dk_x +
C1myk_x・Dm_x・Dy_x・Dk_x + C0myk_x
Dcmyk_x=C15_x・Dc_x + C14_x・Dm_x + C13_x・Dy_x + C12_x・Dk_x +
C11_x・Dcm_x + C10_x・Dcy_x + C9_x・Dck_x +
C8_x・Dmy_x + C7_x・Dmk_x + C6_x・Dyk_x +
C5_x・Dcmy_x + C4_x・Dcmk_x + C3_x・Dcyk_x + C2_x・Dmyk_x +
C1_x・Dc_x・Dm_x・Dy_x・Dk_x + C0_x
近似多項式の係数(C1,C2,C3などで始まる係数)は、回帰分析手法(例えば最小二乗法)で実際の印刷物にフィッティングさせて決める。近似多項式を用いた方法では、多項式の次数を変えることにより任意の精度を得ることが可能であり、モデルを仮定しないので特定の印刷方式に依存することがなく、あらゆる印刷方式に適用可能である。
【0105】
以下、上記の印刷機モデルを用いて、センサ画像からベタ濃度を求める計算方法の説明を行う。
【0106】
まず、色調監視装置21の構成・動作の詳細について、図1、図10〜図12に基づいて説明する。図10は、前処理の手順を示すフローチャートである。図11は、目標単色ベタ濃度設定処理の手順を示すフローチャートである。図12は、色調監視処理の手順を示すフローチャートである。
【0107】
<プロファイル算出処理>
色調監視装置21は、本装置を設置時、または再調整時に、プロファイル算出処理として以下の処理を行う。
【0108】
まず、色調監視装置21は、図1,図10(A)に示すように、テストチャートを用いて色合わせを行い、色合わせが正常に完了した状態で印刷したテストチャート(印刷物)の画像を光学センサ(RGBIrセンサ)25Fで読み取って(s1)、画像メモリ53に画像データの画素毎の反射光量値を記憶させる(s2)。
【0109】
センサ値変換部54は、画像メモリ53から印刷物の画素毎の反射光量値を読み出して、この反射光量値を上記用語定義によるセンサ値(RGBIr値)に変換し画像処理部43に出力する(s3)。
【0110】
画像処理部43は、センサ値変換部54からセンサ値(RGBIr値)を取得すると、画像サーバ13に蓄積されているテストチャートの画像データを読み出して(s4)、双方の関係を画像処理部43で分析して、プロファイル(ICCプロファイル)P3を作成する(s5)。そして、画像処理部43は、このプロファイルP3をプロファイル記憶部44に記憶(格納)させる(s6)。
【0111】
なお、画像処理部43が作成するプロファイルP3は、ICCプロファイルでも良いが、このプロファイルP3に代えて、4入力4出力の4次元LUTをプロファイル記憶部44に記憶させても良い。また、4次元LUTに限るものではなく、4変数以上の多次元LUTでも良い。
【0112】
<監視点設定処理>
色調監視装置21は、日常の印刷の開始時に、監視点設定処理と、後述する目標単色ベタ濃度設定処理を実施する。なお、印刷前でも、当日印刷する絵柄のデータの作成が完了後であれば、上記2つの処理は実施可能である。但し、実測画像データを用いる方法の場合は、印刷開始後でないと実施不可である。
【0113】
色調監視装置21では、監視点設定処理として、図1、図10(B)に示すように、画像処理部43が、画像サーバ13に蓄積された画像ファイルのデジタルデータ(2値網点画像データ)を取得する(s11)。そして、画像処理部43は、2値網点画像データに対して、多値化・プロファイル変換を行い、得られた画素毎の画像データ(RGBIr値)を監視点座標出力部42へ出力する(s12)。
【0114】
監視点座標出力部42は、画素毎の画像データを解析して、RGBIrの各色それぞれ複数の監視点を設定する(s13)。すなわち、監視点座標出力部42は、画像データに対して、監視に適した順にランク分けを行い、各コラム(インキキー幅)にRGBIrの各色それぞれ予め設定された適当な数の監視点を優先順位の高いものから選択する。なお、このように監視点を設定することで、一部の画像を選択して監視点とする場合には、監視点として適切な点を精度良く選択できる。
【0115】
監視点座標出力部42は、以下の処理において、画像処理部43、印刷機モデル演算部47、第一比較演算部49に、監視点の座標を出力する。なお、監視点としては、すべての画素を設定しても、一部の画素を選択して設定しても良い。
【0116】
<目標単色ベタ濃度設定処理>
続いて、色調監視装置21では、輪転機19のベタ濃度を推定するために、以下の処理を行う。
【0117】
図1、図11に示すように、監視点座標出力部42は、輪転機19でこれから印刷する画像の監視点の座標を、画像処理部43、印刷機モデル演算部47、第一比較演算部49に出力する。また、画像処理部43は、輪転機19でこれから印刷する画像のデータを画像サーバ13から読み出し(s21)、プロファイル記憶部44からプロファイルP3(または4次元LUT)を読み出す(s22)。そして、画像処理部43は、この画像データに対して多値化及びプロファイル変換を行い、監視点の座標情報に基づき、この画像の複数の監視点のRGBIr値(基準画像データ)を作成する。そして、各監視点のRGBIr値を第一比較演算部49へ出力する(s23)。
【0118】
多値化処理部41は、画像サーバ13から、輪転機19でこれから印刷する画像ファイルのデジタルデータ(2値網点画像データ)を取得する。そして、2値網点画像データから各画素の刷版上の網点面積率(Ac,Am,Ay,Ak=デジタルデータでの網点面積率)を作成して、監視点座標出力部42へ出力する(s24)。また、ベタ濃度調整部50は、反復解法の初期値はどこから始まっても良いので、各インキの単色ベタ濃度を適当に仮定して、印刷機モデル演算部47へ出力する(s25)。なお、収束を早くするために、単色ベタ濃度の仮値としては標準ベタ濃度が好適である。
【0119】
印刷機モデル演算部47は、ベタ濃度調整部50が出力したベタ濃度値と、多値化処理部41が出力した面積率と、により得られる各監視点のRGBIr値(推定値)を、印刷機モデルに基づいて計算する。このとき、ドットゲイン及び濃度によるドットゲインの変化を考慮する。続いて、計算上のRGBIr値を第一比較演算部49へ出力する(s26)。
【0120】
第一比較演算部49は、画像処理部43が作成したRGBIr値と、印刷機モデル演算部47が出力したRGBIr値と、を監視点毎に比較して、両RGBIr値の差を計算し、ベタ濃度調整部50へ出力する(s27)。
【0121】
ベタ濃度調整部50は、印刷機モデル演算部47が出力したRGBIr値が、画像処理部43が出力したRGBIr値に近くなり、補正量が一定値以下に収束したかどうかを判定する(s28)。ここで、各RGBIr値はベクトル量であり、このベクトルのノルム(絶対値)が一定値以下に収束したかどうかを判定する。
【0122】
ベタ濃度調整部50は、補正量(ノルム)が一定値以下に収束していなければ(s28:N)、両RGBIr値の差からベタ濃度の仮値の修正値を計算して、このベタ濃度の仮値を印刷機モデル演算部47へ出力する(s25)。
【0123】
そして、ベタ濃度調整部50、印刷機モデル演算部47、及び第一比較演算部49は、ステップs25〜s28の処理を再度行い、印刷機モデルによる計算上のRGBIr値(Rr,Rg,Rb,Rir)と、光学センサ25Fが撮像したRGBIr値(Sr,Sg,Sb,Sir)を比較し、両RGBIr値が最も近づくように単色ベタ濃度を修正して、計算上のRGBIr値と光学センサ25FのRGBIr値との差が一定値以下、または修正量が一定値以下になるまで上記の処理を反復させる。なお、終了条件は、多次元非線形の最適化アルゴリズムのどの方法を選択するか、また、印刷する画像によって異なる。
【0124】
一方、両RGBIr値の差が、一定値以下に収束すれば(s28:Y)、監視点毎の単色ベタ濃度を、目標の単色ベタ濃度値(目標ベタ濃度値)として、標準ベタ濃度記憶部45に記憶させる(s29)。
【0125】
なお、ステップs25〜s28では、周知の多次元非線形の最適化アルゴリズム(NewtonRaphson法、準Newton法、最急降下法、共役勾配法等)の計算方法を用いている。
【0126】
ここで、色調管理システム3では、画像サーバ13に蓄積された画像ファイルから基準画像データを作成するのではなく、色合わせが完了した印刷物(基準印刷物)を光学センサ25F・25Rで撮像して、得られたセンサ値(RGBIr値)を基準画像データと用いることができる。この場合には、上記の説明のステップs21〜s23の処理に代えて、光学センサ25F(25R)で、色合わせが完了した印刷物(基準印刷物)を撮像して、この光学センサ25F(25R)が出力したセンサ値から複数の監視点のRGBIr値(基準画像データ)をセンサ値変換部54で作成して、第一比較演算部49に出力すると良い。そして、上記の目標単色ベタ濃度設定処理におけるステップs24以降を行えばよい。
【0127】
これにより、実際に色調を確認した基準印刷物に基づいて、印刷物の色調を監視・調整することができる。
【0128】
また、標準ベタ濃度記憶部45に、上記のように目標の単色ベタ濃度(目標ベタ濃度)を記憶させるのではなく、例えば新聞社の標準のベタ濃度値を予め記憶させておくようにしても良い。これにより、印刷物の色調をその新聞社の基準にあったものにすることができる。
【0129】
また、色調管理システム3では、画像サーバ13に蓄積された画像ファイルからCMYK網点の面積率の値が取得できないこともあり得る。このように、上流システムから画像ファイルが取得できない場合には、図2(B)に示すように、初期設定時に、印刷機モデル演算部47に対して、単色ベタ部濃度を与えるとともに、仮の網点面積率を与えて、網点面積率が一定値以下に収束するように、反復計算することで、CMYK網点の面積率の値を取得できる。標準ベタ濃度を与えて、光学センサ25Fで撮像したセンサ画像を目標とする値として、CMYKの網点面積率を反復計算で求めることができる。また、センサ画像の代わりに上位で生成した画像を目標値として、網点面積率を反復計算で求めることもできる。
【0130】
前者の場合は、上流からのデータが無い場合の方法になるが、後者の場合は、上流のデータを使用することができる環境において、データ転送量の削減、データ転送トラブル時の対応、印刷機モデルの癖を吸収する為にあえて上流からの面積率を使用しない等の場合に対応できる。
【0131】
<色調管理処理>
輪転機19は、オペレータによって印刷が開始されると、ロール紙Rから供給されるウェブ状の連続紙Pに、所定の画像として例えば新聞8ページ分の画像を連続して印刷する。
【0132】
図1及び図12に示すように、監視点座標出力部42は、輪転機19でこれから印刷する画像の監視点の座標を、画像処理部43、印刷機モデル演算部47、第一比較演算部49に出力する。輪転機19で印刷が開始されると、光学センサ25Fは、連続紙Pに印刷された画像を、R・G・B・Irの4つの波長領域に分けて連続して撮像し、R・G・B・Irの各波長領域の画像データ(反射光量値)を画素単位で、画像メモリ53へ出力する(s31)。
【0133】
画像メモリ53は、光学センサ25Fから送られてきたR・G・B・Irの各波長領域の画像データ(反射光量値)を画素単位で、印刷の1周期分(例えば新聞8ページ分)記憶する(s32)。
【0134】
センサ値変換部54は、R・G・B・Irの各波長領域の画像データ(反射光量値)を画像メモリ53から読み出して、センサ値(RGBIr値の実測値)に変換して、第一比較演算部49へ出力する(s33)。
【0135】
一方、多値化処理部41は、目標単色ベタ濃度設定処理にて作成した、輪転機19で印刷中の画像における各監視点の網点面積率を出力する(s34)。
【0136】
また、ベタ濃度調整部50は、輪転機19で印刷された印刷物の各インキのベタ濃度を仮定し、このベタ濃度の仮値を印刷機モデル演算部47へ出力する(s35)。
【0137】
印刷機モデル演算部47は、目標単色ベタ濃度設定処理にて設定した各監視点の網点面積率と、適当に仮定した各インキの単色ベタ濃度(ベタ濃度の仮値)と、に基づいて、この単色ベタ濃度で上記面積率の印刷物を印刷したときに、光学センサ25Fで観測されるRGBIr値(推定値)を、印刷機モデルを使って計算する。このとき、ドットゲイン及び濃度によるドットゲインの変化を考慮する。続いて、各監視点の計算上のRGBIr値(推定値)を、第一比較演算部49へ出力する(s36)。
【0138】
第一比較演算部49は、センサ値変換部54から取得したRGBIr値(実測値)と、印刷機モデル演算部47から取得したRGBIr値(推定値)と、を監視点毎に比較して、その差をベタ濃度調整部50に出力する(s37)。
【0139】
ベタ濃度調整部50は、両RGBIr値の差(補正量)が一定値以下に収束したかどうかを判定する(s38)。ここで、目標単色ベタ濃度設定処理と同様、各RGBIr値はベクトル量であり、このベクトルのノルム(絶対値)が一定値以下に収束したかどうかを判定する。
【0140】
補正量(ノルム)が一定値以下に収束していなければ(s38:N)、ベタ濃度調整部50は、両RGBIr値の差からベタ濃度の仮値の修正値を計算して、このベタ濃度の仮値を印刷機モデル演算部47へ出力する(s35)。
【0141】
そして、ベタ濃度調整部50、印刷機モデル演算部47、及び第一比較演算部49は、ステップs35〜s38の処理を再度行い、印刷機モデルによる計算上のRGBIr値(Rr,Rg,Rb,Rir)と、光学センサ25Fが観測したRGBIr値(Sr,Sg,Sb,Sir)を比較し、両RGBIr値が最も近づくように単色ベタ濃度を修正して、計算上のRGBIr値と光学センサ25FのRGBIr値との差が一定値以下、または修正量が一定値以下になるまで上記の処理を反復させる。
【0142】
なお、終了条件は、多次元非線形の最適化アルゴリズムのどの方法を選択するか、また、印刷する画像によって異なる。
【0143】
また、ステップs35〜s38では、周知の多次元非線形の最適化アルゴリズム(NewtonRaphson法、準Newton法、最急降下法、共役勾配法等)の計算方法を用いている。
【0144】
一方、ベタ濃度調整部50は、両RGBIr値の差が、一定値以下に収束すれば(s38:Y)、このときの監視点毎の単色ベタ濃度を、印刷機モデルにより推定した単色ベタ濃度(推定ベタ濃度)として、第二比較演算部51へ出力する(s39)。
【0145】
このとき、ベタ濃度調整部50は、印刷機モデルにより推定した単色ベタ濃度(推定ベタ濃度)を、さらに集計部52に出力し、集計部52は、推定ベタ濃度値をコラム(インキ量の制御単位幅であるインキキー幅)毎に平均化し、この平均した推定ベタ濃度値をモニタ22が表示するように、信号を出力させるように構成してもよい。また、集計部52では、推定ベタ濃度値の平均化を行わずに、監視点毎の推定ベタ濃度値をモニタ22が表示するように、信号を出力させるように構成してもよい。
【0146】
第二比較演算部51は、ステップs19において標準ベタ濃度記憶部45に記憶させた目標の単色ベタ濃度(標準ベタ濃度)を読み出して(s40)、この目標の単色ベタ濃度(標準ベタ濃度)と、印刷機モデルにより推定した単色ベタ濃度(推定ベタ濃度)と、を監視点毎に比較し、比較結果であるベタ濃度偏差を集計部52へ出力する(s41)。集計部52は、この結果をコラム(インキ量の制御単位幅であるインキキー幅)毎に平均化し、この平均ベタ濃度偏差を、インキキー制御装置23へ出力する(s42)。
【0147】
このとき、集計部52は、コラム毎の平均ベタ濃度偏差をモニタ22が表示するように、信号を出力させるように構成してもよい。また、集計部52では、ベタ濃度偏差の平均化をコラム毎に行わずに、監視点毎のベタ濃度偏差をモニタ22が表示するように、信号を出力させるように構成してもよい。さらに、前記の推定ベタ濃度値とベタ濃度偏差とをモニタ22に表示するように集計部52を構成しても良い。
【0148】
インキキー制御装置23は、第二比較演算部51が出力したコラム毎の単色ベタ濃度の偏差に基づいて、各色のインキキー72A〜72Hを制御して、輪転機19におけるインキ量を調整する(s43)。
【0149】
これにより、輪転機19で印刷した連続紙Pをドライダウンした後の新聞紙33の色調(インキ濃度値)を新聞社で決めた適正印刷状態の色調は、結果的にほぼ一致するようになる。
【0150】
なお、以上の説明では、オフセット輪転機によりCMYKの4色のインキを用いて印刷した印刷物の色調監視や色調管理について説明したが、前記のヘキサクローム印刷やハイファイ印刷や特色印刷等のように、5色以上の多色印刷においても、それに合った印刷機モデルを作成することにより、印刷物の色調監視や色調管理が同様に可能である。
【0151】
すなわち、上記の説明ではInk1=C、Ink2=M、Ink3=Y、Ink4=Kの4色プロセス印刷の場合について説明を行ったが、5色以上使用している印刷、一例として、Ink1,Ink2,Ink3,Ink4、Ink5,Ink6の6色印刷の場合においても、4色以下の重ねで印刷されている領域がほとんどであるので、そのような部分に監視点を設定することにより同様に色調を監視することが可能である。
【0152】
例えば、高々Ink1,Ink2,Ink4,Ink6の4色重ねで印刷されている監視点については、上記の説明において、CをInk1に、MをInk2に、YをInk4に、KをInk6に置き換えればよい。この場合、印刷機モデル及びLUTはInk1乃至Ink6の6色対応とするか、または、6色中から4色を選び出す組合せは6通りあるので、上記説明のような4色対応のプリンタモデルおよびLUTを6組用意しておき、切り替えて使用する。
【0153】
また、印刷システム1において、印刷物の色調の調整をオペレータが行う場合には、色調監視装置21がインキキー制御装置23に対して制御信号を出力する構成を備えていなくてもよい。例えば、監視点毎の推定ベタ濃度値の確認だけでよい場合には、色調監視装置21の標準ベタ濃度記憶部45、第二比較演算部51、及び集計部52の代わりに、不図示の報知部を設けて、第一比較演算部49が出力した監視点毎の推定ベタ濃度値をモニタ22に表示させる信号を出力するように構成するとよい。
【0154】
また、色調監視装置21の集計部52の代わりに、不図示の報知部を設けて、第一比較演算部49が出力した監視点毎の推定ベタ濃度値、またはベタ濃度調整部50が出力した推定ベタ濃度値をモニタ22に表示させる信号を出力するように構成してもよい。
【0155】
さらに、集計部52がインキキー制御装置23に対して制御信号を出力しない構成にするとともに、集計部52が、ベタ濃度調整部50が出力した推定ベタ濃度値をコラム毎に平均化した平均推定ベタ濃度値、または第二比較演算部51が出力したベタ濃度差をコラム毎に平均化した平均ベタ濃度偏差(平均ベタ濃度差)の少なくとも一方を算出するように構成し、推定ベタ濃度値、平均推定ベタ濃度値、ベタ濃度差、または平均ベタ濃度偏差(平均ベタ濃度差)の少なくともいずれかをモニタ22に表示させる信号を出力するように構成してもよい。
【0156】
また、印刷システム1において、オペレータによる監視が不要の場合には、モニタ22を設けず、集計部52がモニタ22に対して信号を出力しないようにしてもよい。
【0157】
また、印刷機モデルは、上記のものに限るものではなく、輪転機(印刷機)のをシミュレートした数学的モデルであれば、別のモデルであってもよい。すなわち、各インキのベタ濃度値を未知数として、推定画像データと、推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した実測画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を各インキの推定ベタ濃度値として出力する構成であれば、上記のように反復演算を行う構成であっても、一度の演算で各インキの推定ベタ濃度値を出力する構成であってもよい。
【0158】
また、以上の説明では、印刷機の一例としてオフセット輪転機を例に挙げて説明したが、本願発明はこれに限るものではなく他の印刷機で印刷した印刷物の色調を監視(管理)する場合にも、当然適用できる。例えば、インクジェットプリンタやレーザプリンタで印刷する場合にも、その装置にあった印刷機モデルを用いることにより、同様に色調を監視することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の実施形態に係る色調管理システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】印刷機モデル演算部の構成を示す図である。
【図3】ドットゲインモデル及び混色モデルを説明するための図である。
【図4】膜厚モデルを説明するための図である。
【図5】膜厚モデルを説明するための図である。
【図6】膜厚モデルを説明するための図である。
【図7】膜厚モデルを説明するための図である。
【図8】膜厚モデルを説明するための図である。
【図9】膜厚モデルを説明するための図である。
【図10】前処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】目標単色ベタ濃度設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】色調監視処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0160】
1…印刷システム 3…色調管理システム 11…紙面編集装置 12…RIP 13…画像サーバ 14…画像処理装置 15…校正用プリンタ 19…輪転機 21…色調監視装置 22…モニタ 23…インキキー制御装置 25F,25R…光学センサ 31…校正紙 33…新聞紙 41…多値化処理部 42…監視点座標出力部 43…画像処理部 44…プロファイル記憶部 45…標準ベタ濃度記憶部 47…印刷機モデル演算部 49…第一比較演算部 50…ベタ濃度調整部 51…第二比較演算部 52…集計部 53…画像メモリ 54…センサ値変換部 61…ベタ混色モデル演算部 63…反射率演算部 65…ドットゲインモデル演算部 67…面積率演算部 69…ノイゲバウアモデル演算部 72A〜72H…インキキー 73…印刷ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機で複数のインキにより印刷された印刷物を複数の異なる波長領域で撮像して、各波長領域の実測画像データを画素単位で出力する撮像手段と、
前記印刷物のインキ毎の網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて、前記撮像手段の各波長領域の実測画像データを推定した推定画像データを1画素または複数画素単位で算出する数学的モデルであって、印刷機をシミュレートした印刷機モデルにより、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記実測画像データと、がほぼ等しくなるときの解を求め、この解を各インキの推定ベタ濃度値として出力する推定ベタ濃度出力手段と、
各インキのベタ濃度の目標値である目標ベタ濃度値を記憶する記憶手段と、
前記各インキの推定ベタ濃度値と前記各インキの目標ベタ濃度値との差であるベタ濃度差を演算する濃度差演算手段と、
前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差を集計して一定範囲毎のベタ濃度差を算出し、この一定範囲毎のベタ濃度差に基づいて、前記印刷機の各インキ量を一定範囲毎に制御する制御信号を出力する制御信号出力手段と、
を備えた色調監視装置。
【請求項2】
前記推定ベタ濃度出力手段は、前記印刷機モデルにより1画素または複数画素単位で推定画像データを算出する印刷機モデル演算手段を含み、
前記印刷機モデル演算手段は、
各インキの単色ベタ濃度から、各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値を算出する混色モデル演算部と、
前記混色モデル演算部が算出した各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値から、その反射率を算出する反射率演算部と、
各インキのベタ濃度及びデジタルデータ上の網点面積率値から実際に印刷された紙面上の網点面積率を求めるドットゲインモデル演算部と、
前記ドットゲインモデル演算部が求めた紙面上の網点面積率から、各インキのベタ重ね部分の面積率を算出する面積率演算部と、
前記反射率演算部が算出した反射率及び前記面積率演算部が算出した面積率に基づいて、各インキの組み合わせに対する再現色を求めて、前記撮像手段の実測画像データを推定した推定画像データを算出する推定値演算部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の色調監視装置。
【請求項3】
前記混色モデル演算部は、前記単色ベタ濃度をインキ膜厚に換算し、インキの膜厚とインキ濃度の関係を求める膜厚モデルまたは関数近似法を用いて、各インキのベタ重ね印刷部分の濃度値を算出することを特徴とする請求項2に記載の色調監視装置。
【請求項4】
前記推定ベタ濃度出力手段は、上流の製版データを多値化した各インキの網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて推定画像データを算出する請求項1乃至3のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項5】
前記推定ベタ濃度出力手段は、前記撮像手段で撮像した印刷物の実測画像データから標準ベタ濃度を仮定し、この仮定した標準ベタ濃度から推定した各インキの網点面積率と、前記各インキのベタ濃度値と、に基づいて推定画像データを算出する請求項1乃至3のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記実測画像データとして、波長領域毎の反射光量値または反射光量値に基づく別の値を画素単位で出力する請求項1乃至5のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項7】
前記撮像手段が波長領域毎の反射光量値を出力すると、この反射光量値に基づく別の値に変換する変換手段を備えた請求項1乃至6のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項8】
前記印刷物に複数の監視点を設定して、その座標情報を前記推定ベタ濃度出力手段及び前記推定ベタ濃度出力手段に出力する監視点設定手段を備え、
前記推定ベタ濃度出力手段及び前記推定ベタ濃度出力手段は、監視点単位で処理を行う請求項1乃至7のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項9】
ICCプロファイルまたは多次元LUTに基づいて、上流の製版データから、前記撮像手段の実測画像データを推定した基準画像データを画素単位で生成する画像処理手段を備え、
前記推定ベタ濃度出力手段は、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記基準画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を前記目標ベタ濃度値として前記記憶手段に記憶させる請求項1乃至8のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項10】
前記撮像手段は、印刷物の基準である基準印刷物を複数の異なる波長領域で撮像して、各波長領域の実測画像データを基準画像データとして出力し、
前記推定ベタ濃度出力手段は、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記基準画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を前記目標ベタ濃度値として前記記憶手段に記憶させる請求項1乃至8のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項11】
前記記憶手段は、予め設定された基準のベタ濃度値を前記各インキの目標ベタ濃度値として記憶する請求項1乃至10のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項12】
前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値と、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、前記制御信号出力手段が集計した一定範囲毎のベタ濃度差と、の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えた請求項1乃至11のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項13】
前記記憶手段、前記濃度差演算手段、及び前記制御信号出力手段に代えて、前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値を報知する報知手段を備えた請求項1乃至11のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項14】
前記制御信号出力手段に代えて、前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値と、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、前記制御信号出力手段が集計した一定範囲毎のベタ濃度差と、の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えた請求項1乃至11のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項15】
前記制御信号出力手段に代えて、前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値、または前記濃度差演算手段が演算した各インキのベタ濃度差の少なくとも一方を集計して一定範囲毎の推定ベタ濃度値またはベタ濃度差の少なくとも一方を算出する集計手段と、
前記推定ベタ濃度出力手段が出力した推定ベタ濃度値と、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差と、前記集計手段が算出した一定範囲毎の推定ベタ濃度値または一定範囲毎のベタ濃度差と、の少なくともいずれかを報知する報知手段を備えた請求項1乃至11のいずれかに記載の色調監視装置。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれかに記載の色調監視装置と、
前記色調監視装置の制御信号出力手段が出力した制御信号に基づいて、前記印刷機が印刷に用いるインキ量を一定範囲毎に調整するインキ量制御装置と、
を備えた色調管理システム。
【請求項17】
撮像手段が、印刷機で複数のインキにより印刷された印刷物を複数の異なる波長領域で撮像して、各波長領域の実測画像データを画素単位で出力する手順と、
推定ベタ濃度出力手段が、前記印刷物のインキ毎の網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて、前記撮像手段の各波長領域の実測画像データを推定した推定画像データを1画素または複数画素単位で算出する数学的モデルであって、印刷機をシミュレートした印刷機モデルにより、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記実測画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を各インキの推定ベタ濃度値として出力する手順と、
報知手段が、前記推定ベタ濃度値を報知する手順と、
を備えた色調監視方法。
【請求項18】
撮像手段が、印刷機で複数のインキにより印刷された印刷物を複数の異なる波長領域で撮像して、各波長領域の実測画像データを画素単位で出力する手順と、
推定ベタ濃度出力手段が、前記印刷物のインキ毎の網点面積率と、各インキのベタ濃度値と、に基づいて、前記撮像手段の各波長領域の実測画像データを推定した推定画像データを1画素または複数画素単位で算出する数学的モデルであって、印刷機をシミュレートした印刷機モデルにより、各インキのベタ濃度値を未知数として、前記推定画像データと、前記推定画像データの算出画素単位に応じて1画素単位または複数画素単位に処理した前記実測画像データと、が等しくなるときの解を求め、この解を各インキの推定ベタ濃度値として出力する手順と、
記憶手段が、各インキのベタ濃度の目標値である目標ベタ濃度値を記憶する手順と、
濃度差演算手段が、前記各インキの推定ベタ濃度値と、前記各インキの目標ベタ濃度値と、のベタ濃度差を演算する手順と、
制御信号出力手段が、前記濃度差演算手段が演算したベタ濃度差を集計して一定範囲毎のベタ濃度差を算出し、この一定範囲毎のベタ濃度差に基づいて、前記印刷機の各インキ量を制御する制御信号を出力する手順と、
インキ量制御手段が、前記制御信号に基づいて、前記印刷機が印刷に使用するインキ量を一定範囲毎に調整する手順と、
を備えた色調管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−83426(P2009−83426A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259177(P2007−259177)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【特許番号】特許第4176815号(P4176815)
【特許公報発行日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(598138615)東洋インスペクションズ株式会社 (12)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】