説明

艶出し撥水性付与クロス

【課題】 布帛に含浸させるクロス処理剤に、トリメチルシロキシケイ酸のオルガノポリシロキサン溶液を用いている艶出し撥水性付与クロスに関して、塗装面の拭上げ作業を行うだけで、撥水性と共に艶や滑り感が長期に渡って持続する被膜を塗装面に形成することのできる艶出し撥水性付与クロスを提供する。
【解決手段】 トリメチルシロキシケイ酸のオルガノポリシロキサン溶液に、ワックス成分と、10万cs以上の粘度の高粘度ジメチルポリシロキサンと、界面活性剤と、有機溶剤と、水と、を混合乳化させることによってクロス処理剤を調製する。親水性繊維でなる中間層と親油性ファイバーでなる外層とによって形成された3層構造を有する不織布でなる布帛に、クロス処理剤の不揮発性成分を含浸保持させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、艶出し撥水性付与クロスに関する。特に、自動車や建築物などの表面平滑な塗装面を拭き上げることによって、被処理面としての上記塗装面に艶と撥水性とを付与することができるだけでなく、その艶及び撥水性の持続性を改善する対策を講じた艶出し撥水性付与クロスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディの塗装面に撥水性を付与したり塗装面を艶出し処理する汎用的な方法として、洗車後の自動車ボディの塗装面に、天然ワックスや合成ワックスを主成分とするワックス処理剤を、布や不織布などの布帛を使用して塗布するという方法が行われてきた。しかし、この方法は、洗車後の塗装面に残留する水分を十分に拭き取った後に、その塗装面をワックス処理剤で拭き上げるというものであるので、水分拭取り、ワックス塗布、さらに余剰ワックスの拭取り除去、という多大な労力と時間を費やす一連の作業工程を行うことが不可欠であった。
【0003】
そこで、このような作業性に関する問題点を改善し得る方法として、布帛に一定のクロス処理剤を含浸保持させてなる撥水性付与クロスを用いて自動車ボディの塗装面を拭き上げるという方法が提案された(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されている撥水性付与クロスは、トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液でなるクロス処理剤を、織布又は不織布でなる布帛に含浸させておくことを基本としている。そして、この撥水性付与クロスを用いて自動車ボディの塗装面を拭き上げると、常温(25℃)で不揮発性を示す被膜が塗装面を被覆してその塗装面に撥水性や光沢のある艶が付与される、とされている。また、この特許文献1による、トリメチルシロキシケイ酸を溶解させるための溶剤としてのジメチルポリシロキサンの粘度を5〜1万csという低レベルに定めることによって、布帛へのジメチルポリシロキサン溶液の含浸性を改善すると同時に、塗装面に対する布帛の滑り性の低下を抑えて拭上げ作業性が損なわれないようにすることも示唆されている。
【0005】
さらに、上掲の特許文献1には、上記した撥水性クロスを用いて拭上げ処理した塗装面を被覆している被膜にはオイル分と樹脂分(トリメチルシロキシケイ酸)が含まれていること、その被膜が撥水作用を発揮するものの、塗装面に対する定着性に乏しいこと、撥水性は主に樹脂分によって発揮され、塗装面の艶や滑り感は主にオイル分によって発揮されること、などが記載されている。
【0006】
さらに加えて、上掲の特許文献1には、塗装面での被膜の持続性についての問題点を改善するためには、撥水性付与クロスに含浸する上記クロス処理剤に、遊離水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸誘導体を含浸させておくことが、塗装面に対する上記被膜の定着性を改善して当該被膜の持続性を高める上で有益である旨、記載されている。
【特許文献1】特開2000−336580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1によって提案されているところの、遊離水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸誘導体を含有する上記クロス処理剤(トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液)を布帛に含浸させてあるだけでは、被膜に含まれる樹脂分としてのトリメチルシロキシケイ酸がその被膜中に残留して撥水性を発揮するものの、被膜に含まれるオイル分が降雨や洗車作業時の水洗によって比較的簡単に洗い流されてしまって、塗装面の艶や滑り感が早期に損なわれてしまうということが知見された。
【0008】
この点に関し、特許文献1によって提案されている撥水性付与クロスでは、上記したように遊離水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸誘導体をクロス処理剤に含有させておくことが、塗装面に対する被膜の定着性を改善して当該被膜の持続性を高める上で有益であるとされているけれども、遊離水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸誘導体をただ単にクロス処理剤に含有させておくだけでは、定着性の改善効果がそれほど顕著に現れず、その結果として、降雨や水洗によってもトリメチルケイ酸による撥水効果は残っているとしても、光沢性の艶自体は容易に消失してしまうことが判っている。このことから、遊離水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸誘導体よって発揮される定着性の改善効果はきわめて限定的であるということが云える。
【0009】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであって、布帛に含浸させるクロス処理剤に、トリメチルシロキシケイ酸のオルガノポリシロキサン(たとえば、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーンとジメチルポリシロキサンの混合液など)を用いることを基本としている。その上で、降雨や水洗によっても塗装面を被覆している被膜中の樹脂分とオイル分とが洗い流されにくくなるような工夫を講じることにより、拭上げ作業を行うだけで、撥水性と共に艶や滑り感が、特許文献1に記載されている遊離水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸誘導体を追加するだけによる場合よりも、長期に渡って持続する被膜を塗装面に形成することのできる艶出し撥水性付与クロスを提供することを目的とする。
【0010】
併せて、本発明は、クロス処理剤を含浸させておく布帛の構造に工夫を講じることにより、拭上げ作業時に十分な量の上記した樹脂分とオイル分とが継続的に塗装面に供給されるようにし、その結果として塗装面に形成された被膜の定着性を改善して、塗装面の撥水性は勿論、塗装面の艶や滑り感をも長期に亘って持続させることのできる艶出し撥水性付与クロスを提供することを目的としている。
【0011】
また、本発明は、艶の持続性を高めるために高粘度ジメチルポリシロキサンを用いているにもかかわらず、拭上げ作業性の低下を来たしにくい艶出し撥水性付与クロスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る艶出し撥水性付与クロスは、トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液と、ワックス成分と、10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンと、界面活性剤と、有機溶剤と、水と、を混合乳化させてなるクロス処理剤に含まれる不揮発性成分を布帛に含浸させてなる。併せて、上記布帛が、親水性繊維でなる中間層と、その中間層を挟んで両側に積層された親油性ファイバーでなる外層とによって形成された3層構造を有する不織布でなる。
【0013】
トリメチルシロキシケイ酸は、下記一般式(1)によって表され、常温で不揮発性を呈する粉体である。
〔(CH33 SiO1/2〕x ・〔SiO2〕y ………(1)
ただし、x=1〜3、y=0. 5〜8
【0014】
本発明の艶出し撥水性付与クロスでは、布帛にトリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液を含浸させることを基本としている。そして、その溶液と共に、ワックス成分と、10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンとを含浸させてある。また、布帛に上記の高粘度ジメチルポリシロキサンを含有する上記トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液を含浸させるのに、その溶液を適切な粘度範囲のエマルジョンにするために、界面活性剤、有機溶剤、水を混合させている。このことから、トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液は、上記の高粘度ジメチルポリシロキサンよりも低粘度であることを要する。
【0015】
しかも、本発明では、布帛として、親水性繊維でなる中間層と、その中間層を挟んで両側に積層された親油性ファイバーでなる外層とによって形成された3層構造を有する不織布を採用している。
【0016】
本発明において、布帛を上記のような3層構造にしたのは、塗装面の拭上げ作業中に、布帛に含浸されている艶出し成分や撥水成分を継続的に塗装面に十分に供給することができるようにするためである。
【0017】
すなわち、拭上げ作業には、布帛又は塗装面に水を補給することが必ず要求されるのであって、その補給水を布帛が吸い込むと、布帛に吸い込まれた補給水が、布帛に含浸されているワックス成分やトリメチルシロキシケイ酸などの不揮発性成分と置き代わって、それらの成分が塗装面に供給される。補給水には、洗車後に塗装面に残留した水分を利用することができる。しかし、夏場などのように気温が高いときには洗車してもすぐに塗装面が乾燥してしまい、十分な量の水が塗装面に残留していないことも多い。
【0018】
そこで、本発明では、布帛に水を吸い込ませた状態を維持させるために、外層を親油性ファイバー、好ましくは親油性マイクロファイバーで形成し、中間層を親水性繊維で形成した3層構造の不織布を布帛として用いている。こうしておけば、補給水が親油性の外層を通過して親水性の中間層に吸い込まれやすくなり、親水性の中間層に吸い込まれた補給水が、布帛に含浸されているワックス成分(オイル分)やトリメチルシロキシケイ酸(樹脂分)などの不揮発性成分を押し出してそれに置き代わるので、不揮発性成分が塗装面に供給されやすくなる。その上、布帛が上記したような3層構造を形成していると、ワックス成分などのオイル分やトリメチルシロキシケイ酸などの樹脂分が親水性の中間層よりも親油性の外層により多く保持されることからも、不揮発性成分が塗装面に供給されやすくなるということが云える。したがって、親油性ファイバーと親水性繊維とを混紡した1層構造の布帛を用いることは、水を拭き上げる際にオイル分が過剰に布帛から出たり、水跡が塗装面に残りやすくなったり、さらには、樹脂分の過剰流出によって拭上げ時の滑り性が悪くなって布帛を塗装面上で滑らせるのが重くなるので好ましいことではない。
【0019】
また、3層構造の布帛の親水性の中間層よりも親油性の外層にワックス成分がより多く含浸保持されていて、しかも、その外層に保持されているワックス成分などのオイル分ややトリメチルシロキシケイ酸などの樹脂分は、外層が親油性であるために拭上げ作業時のワックス成分の外層からの流出量が適度に抑制されることにもなる。このことは、オイル分や樹脂分が塗装面の局所に部分的に過剰に供給されて被膜の一様性が阻害されるという事態を抑制することに役立つだけでなく、単一のクロスを用いて大きな面積に一様な艶出し被膜を楽に形成するということにも役立つ。その上、中間層に多く保持される水は、中間層が親水性であるために一気に塗装面に流出してしまうことがなくなり、塗装面に水が少ない状況下であっても、水が布帛から徐々に少しずつ流出して大きな面積に一様な艶出し被膜を楽に形成するということに役立つ。さらに、中間層が親水性であるので、中間層での水の保持量を増大させることが可能になるだけでなく、中間層の外側に積層されている親油性の外層に多く含浸されているワックス成分などのオイル分やトリメチルシロキシケイ酸などの樹脂分を、中間層から出てくる水によってより多く流出させることが可能になり、その結果、拭上げ作業によって形成される被膜の膜厚が厚くなり、その被膜の撥水性がより長く持続するようになることは勿論、特に光沢のある艶の持続性がいっそう向上することになる。これらの点についても、親油性ファイバーと親水性繊維とを混紡した1層構造の布帛を用いる場合を凌駕している。
【0020】
トリメチルポリシロキシケイ酸を溶質とする溶液は、布帛に含浸した状態でも硬化しない。
【0021】
本発明において、高粘度ジメチルポリシロキサンは、10万cs以上という非常に高い粘度を有しているので、この高粘度ジメチルポリシロキサンを含む艶出し被膜は、塗装面に対する定着性に富んでいる。そのため、上記艶出し被膜が、降雨や水洗によって容易に洗い流されてしまうという事態は起こらない。一般的には、10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンは、定着性に富む性質を利用して、自動車ボディの塗装面よりも過酷な条件下にある自動車タイヤの艶出し剤に採用されている。これに対し、粘度が10万csよりも極端に低いジメチルポリシロキサンは、タイヤに塗布したときにタイヤに吸収されてしまったり降雨や水洗によってすぐに洗い流されてしまう程度の定着性を有しているに過ぎない。
【0022】
しかしながら、粘度が10万csという高値の高粘度ジメチルポリシロキサンは、塗装面に対する定着性が顕著に現れて降雨や水洗によってすぐに洗い流されてしまうということはないけれども、その反面で、塗装面をタオルなどの布帛で拭き上げる作業では非常に伸び性が悪く、均一に拭き上げることが困難である。そこで、塗装面の拭上げ作業の作業性を重視すると、粘度が10万cs以上の高粘度ジメチルポリシロキサンを塗装面の艶出し剤として使用することは困難である。本発明では、この困難性が、上記した3層構造の布帛を用いることによって解消される。すなわち、上記したように、塗装面に水が少ない状況下であっても、水が布帛から徐々に少しずつ流出するので、流出した水が潤滑剤としての機能を発揮して拭上げ作業の作業性の低下が抑制されることになる。
【0023】
クロス処理剤に含まれるワックス成分は、固形ワックスや液体ワックスなどとして、さらには水に分散させた形で布帛に含浸させたものとして従来より汎用され、そのワックス成分が塗装面の艶出しに寄与することが周知である。しかし、本発明では、布帛に含浸するワックス成分が、水分を含まない不揮発性成分である点が特異である。
【0024】
ところが、ワックス成分を、水分を含まない不揮発性成分の形で布帛に含浸させておくと、布帛には当然のことながら石油系溶剤が含まれていないので、拭上げ作業時に塗装面に供給されたワックス成分を均一に伸ばしにくくなる。そこで、本発明では、布帛が上記した3層構造を有することを利用して利用してワックス成分を伸ばし性を改善している。
【0025】
すなわち、本発明では、布帛の中間層が親水性であるために、その中間層に水を吸い込ませ易くなり、そしてその保持された水分が親油性の外層を通過して塗装面に流出する。そのため、親油性の外層に保持されているワックス成分などのオイル分が、外層を通過する水分と共に塗装面に押し出され、塗装面での布帛の滑り性が潤滑剤として機能する水分の働きにより改善され、同時に、ワックス成分の伸び性も同様の水分の働きにより改善されることになる。
【0026】
本発明では、クロス処理液に、有機溶剤だけでなく、界面活性剤も含まれている。これは、界面活性剤が親油性の乳化剤としての性質を有することを利用するためであり、クロス処理液をW/Oタイプのエマルジョンにするためである。
【0027】
この点に関し、クロス処理液には、界面活性剤を用いずに有機溶剤だけを含ませることも可能である。しかしながら、有機溶剤は揮発成分であるので、製品としての艶出し撥水性付与クロスの布帛には含浸されていないか、あるいはほとんど含まれていない成分である。そのため、界面活性剤と有機溶剤との2剤のうちの有機溶剤だけを布帛に含浸させ、その後の有機溶剤の蒸散工程を経て艶出し撥水性付与クロスを製作すると、製品に含まれないか、あるいはほとんど含まれない有機溶剤に多くのコストが費やされることになって全体コストが高くつく不利がある。
【0028】
したがって、本発明のように、クロス処理液に有機溶剤だけでなく、水又は界面活性剤をも利用すると、コスト削減効果が得られる。その上、界面活性剤を用いてクロス処理液を乳化すると、液粘度が高くなり、布帛への含浸時のピックアップ率(含浸量)が向上するという利点もある。
【0029】
その上、クロス処理液に界面活性剤を含ませてエマルジョンにしておくと、クロス処理液に含まれるワックス成分が布帛に均一に分布するようになり、また布帛に含まれたワックス分を、水分で伸ばしやすくなるという利点もある。
【0030】
本発明において、上記トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液には、ジメチルポリシロキサン、炭化水素系溶剤、ジメチルポリシロキサンと環状ジメチルポリキシサンとの混合液、環状ジメチルポリシロキサン、のうちのいずれかを溶剤とする溶液を用いることが可能である。言い換えると、上記溶液は、トリメチルシロキシケイ酸のオルガノポリシロキサン溶液であればよい。
【0031】
本発明において、上記ワックス成分は、特に制限されず、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木蝋などの植物系ワックス、例えば、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどの鉱物系ワックスなどの天然ワックス、例えば、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アミドワックス、カスターワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。また、好ましくは、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、シリコーンワックス、マイクロクリスタリンワックスの群から選ぶことが望ましい。
これらワックスは単独で用いても、或いは、2種以上併用してもよく、また、酸価を有してもよい。
【0032】
本発明において、上記クロス処理剤は、粘度調製剤として、粘度5〜1万csのジメチルポリシロキサンを含んでいてもよい。
【0033】
本発明において、上記クロス処理剤は、水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸を含んでいてもよい。
【0034】
本発明において、クロス処理剤に含まれる上記高粘度ジメチルポリシロキサンの配合量は、クロス処理剤100重量部に対して1〜5重量部であることが望ましい。高粘度ジメチルポリシロキサンの配合量がクロス処理剤100重量部に対して1重量部よりも少ないと、拭上げ作業によって塗装面に形成される艶出し被膜の定着性が不足し、満足のいく艶出し効果の持続性が得られない。高粘度ジメチルポリシロキサンの配合量がクロス処理剤100重量部に対して5重量部よりも多いと、拭上げ作業時に艶出し被膜を均一に伸ばしにくくなり作業性が低下する。高粘度ジメチルポリシロキサンの配合量がクロス処理剤100重量部に対して1〜5重量部であると、拭上げ作業によって塗装面に形成される被膜に十分な定着性が付与されて、満足のいく艶出し効果の持続性が得られる。しかも、拭上げ作業時に布帛が塗装面を滑りやすくなって作業性の低下が生じにくい。
本発明において、上記親油性ファイバーが、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維又はポリエステル繊維、或いは、ポリプロピレン繊維又はポリエチレン繊維とポリエステル繊維との混合繊維、又はポリプロピレン繊維とポリエステル繊維との混合繊維、又はポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維との混合繊維のいずれかであることが望ましい。
なお、上記親油性ファイバーは上記繊維をマイクロファイバー繊維などとして使用することが望ましい。
また、上記親水性繊維が、パルプ繊維又はレーヨン繊維のいずれかであることが望ましい。
【0035】
本発明では、上記布帛に含浸されているクロス処理剤中の不揮発性成分の重量が、布帛重量の15%以上であることが望ましい。布帛に含浸されているクロス処理剤中の不揮発性成分の重量が布帛重量の15%よりも少ないと、布帛で塗装面を拭き上げても、布帛に含浸されている不揮発性成分が十分に塗装面に供給されなくなり、被膜を形成することが困難になる。好ましくは、布帛に含浸されているクロス処理剤中の不揮発性成分の重量は、布帛重量の15〜25%である。
既述したようにクロス処理剤は、トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液と、ワックス成分と、10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンと、界面活性剤と、有機溶剤と、水と、を混合乳化させてなる。クロス処理剤に含まれる上記の各成分の中で、トリメチルシロキシケイ酸を溶解させている溶剤、有機溶剤、及び水は揮発性成分に主に分類されるのに対し、トリメチルシロキシケイ酸、ワックス成分、高粘度ジメチルポリシロキサン、界面活性剤は不揮発性成分に主に分類される。また、本発明に係る艶出し撥水性付与クロスにおいて、布帛にはクロス処理剤に含まれる不揮発性成分が含浸されていることが必須であるけれども、その布帛には揮発性成分が多少残留していても差し支えない。したがって、上掲の揮発性成分である溶剤、有機溶剤及び水のうちの1種又は複数種類が、上記の不揮発性成分と共に布帛に含浸されているものも本発明の範囲にふくまれる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る艶出し撥水性付与クロスは、布帛にトリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液を含浸させることを基本とし、その溶液と共に、ワックス成分と、10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンと、界面活性剤と、有機溶剤と、水と、を混合乳化させてなるクロス処理剤に含まれる不揮発性成分を布帛に含浸させてある。そのため、ワックス成分や高粘度ジメチルポリシロキサンを含んでいないクロス処理剤を布帛に含浸させたものに比べて、拭上げ作業によって塗装面に形成される被膜の持続性、特に、光沢のある艶や被膜表面の滑り感の持続性を飛躍的に高めることができるようになり、一般に汎用されている固形ワックスを使った場合と同様の艶感や滑り感が得られるようになるという効果を発揮する。その結果、耐洗浄性が向上して降雨や水洗によって早期に艶が無くなるという事態を起こらなくすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施形態に係る艶出し撥水性付与クロスは、クロス処理剤に含まれる不揮発性成分を布帛に含浸させてなる。また、布帛は、親水性繊維でなる中間層と、その中間層を挟んで両側に積層された親油性ファイバーでなる外層とによって形成された3層構造を有する不織布でなる。さらに、上記クロス処理剤は、トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液と、ワックス成分と、10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンと、界面活性剤と、有機溶剤と、水と、を混合乳化させてなる。
【0038】
クロス処理剤の調製に使われるトリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液には、常温不揮発性のものが好適に用いられる。たとえば、粘度5〜10,000cst(25℃)の範囲のメチルポリシロキサンなどの溶剤に、トリメチルシロキシケイ酸を30.0〜60.0wt%の割合で溶解させたものを好適に用いることができる。具体的には、信越化学工業(株)のKF−7312K、KF−9021、X−21−5250、X−21−5595、X−21−5616、東レダウコーニングシリコーン(株)のDC−593、BY11−018、旭化成ワッカーシリコーン(株)のRELEASE AGENT1038などがある。配合割合は、たとえば、クロス処理剤100重量部に対して5〜20重量部が適切である。5重量部よりも少ないと、塗装面に形成した被膜の撥水性が不足しやすく、20重量部よりも多いと、布帛表面がべたべたとして使用感が悪化する。配合割合が5〜20重量部であると、被膜の撥水性の不足や使用感の悪化が生じにくい。
【0039】
クロス処理剤の調製に使われるワックス成分には、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどを好適に用いることができる。ワックス成分はエマルジョンの形であってもよい。具体的には、ベーカーペトロライト社のポリワックス500、日本精蝋(株)のエマスター0001、エマスター0413(エマルジョン)、信越化学工業(株)のKP−561P、KP−562P、旭化成ワッカーシリコーン(株)のSillcone Wax W23、Wacker−Belsil SDM5D55、Sillicone Wax 23DB7 VP、E32、Sillicone Wax 23DBB VP、東レダウコーニングシリコーン(株)の2502Cosmetic Fluid、2503Cosmetic Wax、AMS−C30Cosmetic Wax、580Waxなどがある。配合割合は、たとえば、クロス処理剤100重量部に対して0.5〜2重量部が適切である。0.5重量部よりも少ないと、被膜の光沢のある艶出し効果を得にくく、2重量部よりも多いと、布帛の滑り性が低下して拭上げ作業性が低下する。配合割合が0.5〜2重量部であると、固形ワックスを用いた場合と遜色のない光沢のある艶が得られ、拭上げ作業性の低下も起こりにくい。
【0040】
クロス処理剤の調製に使われる10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンは、塗装面に対する被膜の定着性を高めることに役立ち、この高粘度ジメチルポリシロキサンを用いたことによって、拭上げ作業によって塗装面に形成される被膜の光沢のある艶や撥水性の持続性が向上する。そのため、降雨や水洗によっても容易に艶が消失してしまうという事態が起こらない。具体的には、信越化学工業(株)のKF96H−10万cs、KF96H−30万cs、KF96H−50万csなどがある。配合割合は、たとえば、クロス処理剤100重量部に対して1〜5重量部が適切である。1重量部よりも少ないと、拭上げ作業によって塗装面に形成される艶出し被膜の定着性が不足し、満足のいく艶出し効果の持続性が得られない。5重量部よりも多いと、拭上げ作業時に艶出し被膜を均一に伸ばしにくくなり作業性が低下する。配合割合が1〜5重量部であると、十分な定着性の改善効果が得られ、拭上げ作業性の低下も起こりにくい。
【0041】
クロス処理剤の調製に使われる界面活性剤は、クロス処理剤をW/Oタイプに乳化して布帛への含浸性を高め、クロス処理液に含まれるワックス成分が布帛に均一に分布させ、また布帛に含まれたワックス分を、水分で伸ばし易くするのに有益である。クロス処理液をW/Oタイプとするためには、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)が10以下のものが必要であって、たとえば、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルや、その他にグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどを用いることができる。具体的には、花王(株)のレオドールスーパーSP−L10、日油(株)のノニオンOP−83RATなどがある。配合割合は、たとえば、クロス処理剤100重量部に対して0.5〜2重量部が適切である。0.5重量部よりも少ないと、クロス処理剤を乳化させることが困難になり、2重量部よりも多いと、撥水性の低下や被膜成分の定着性が低下する。0.5〜2重量部であると、クロス処理剤が容易に乳化し、被膜が均一になりやすい。
【0042】
クロス処理剤の調製に使われる有機溶剤は揮発成分である。有機溶剤にはターペン油、工業ガソリン、灯油、ミネラルスピリット、ストダートソルベント、ノルマルパラフィン系、イソパラフィン系、アルコール系、ナフテン系、無臭系等の脂肪族溶剤、塩素系溶剤、芳香族系溶剤、シリコーン系溶剤が挙げられる。また、これらの有機溶剤は布帛の繊維を痛めないようなものを用いるのが好ましい。具体的には、エクソンモービル化学(有)のペガゾール3040などがある。配合割合は、たとえば、クロス処理剤100重量部に対して20〜80重量部が適切であり、好ましくは20〜40重量部であり、水分が多い方が安定性が向上する。
【0043】
クロス処理剤の調製に使われる水は揮発成分である。配合割合は、たとえば、クロス処理剤100重量部に対して40〜70重量部が適切である。
【0044】
トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液は、ジメチルポリシロキサン、炭化水素系溶剤(例えばイソドデカンなど)、ジメチルポリシロキサンと炭化水素系溶剤(例えばイソドデカンなど)との混合液、環状ジメチルポリシロキサンのうちのいずれかを溶剤とする溶液である。クロス処理剤には、粘度調製剤として、粘度5〜1万csのジメチルポリシロキサンを適宜含ませることができる。
【0045】
クロス処理剤には、水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸を含ませることが可能である。この実施形態の艶出し撥水性付与クロスにおいて、水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸は、クロス処理剤の粘度調製、および水酸基を有することから被膜の定着性向上のために使用される。
【0046】
3層構造の外層を形成する親油性ファイバーには、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維又はポリエステル繊維、或いは、ポリプロピレン繊維又はポリエチレン繊維とポリエステル繊維との混合繊維、又はポリプロピレン繊維とポリエステル繊維との混合繊維、又はポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維との混合繊維などを用いることが可能である。3層構造の中間層を形成する親水性繊維には、パルプ繊維やレーヨン繊維を用いることができる。そして、3層構造の布帛に含浸されているクロス処理剤の重量は、布帛重量の15%以上であることが望ましい。
【実施例】
【0047】
実施例1〜4としてのクロス処理剤の組成、クロス処理剤の調製方法、拭上げ作業試験方法、拭上げ作業試験の評価などを次に示す。なお、比較例1〜3についても同様の事項を示す。
【0048】
実施例1
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
ジメチルポリシロキサン溶液(KF−7312K) 10.0
高粘度ジメチルポリシロキサン(KF96H−10万cs) 2.0
ジメチルポリシロキサン(KF96−500cs) 3.0
カルナバワックス 0.5
界面活性剤(レオドールスーパーSP−L10) 1.0
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 53.5
100.0wt%
【0049】
トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に加熱溶解(95℃)させた後、攪拌しながら水(90℃)を加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た(不揮発分濃度16.5wt%)。
【0050】
この処理剤を、30×50cmにカットしたポリエステルを外層とし、パルプを中間層とした3層構造不織布(目付け量100g/m2 、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により20g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水を蒸散させ、含浸量3.3g(クロス重量の22%相当)の艶出し撥水性クロス(以下「艶出し吸水クロス」という)を得た。
【0051】
実施例2
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
イソドデカン溶液(X−21−5595) 11.0
(不揮発性成分60%)
高粘度ジメチルポリシロキサン(KF96H−30万cs) 2.0
ジメチルポリシロキサン(KF96−100cs) 6.0
ポリエチレンワックス(ポリワックス500) 0.5
界面活性剤(ノニオンOP−83RAT) 1.0
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 49.5
100.0wt%
【0052】
トリメチルシロキシケイ酸のイソドデカン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に加熱溶解(95℃)させた後、攪拌しながら水(90℃)を加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た(不揮発分濃度16.1wt%)。
【0053】
この処理剤を30×50cmにカットしたポリエチレンとポリプロピレンとのマイクロファイバーを外層とし、レーヨンを中間層とした3層構造不織布(目付け量100g/m2 、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により20g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水などを蒸散させ、含浸量3.22g(クロス重量の約21.5%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0054】
実施例3
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
ジメチルポリシロキサン溶液(RA−1038 ) 8.0
水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸(R−910) 1.0
高粘度ジメチルポリシロキサン(KF96H−50万cs) 2.0
ジメチルポリシロキサン(KF96−100cs) 4.0
界面活性剤(ノニオンOP−83RAT) 0.8
マイクロクリスタリンワックスエマルジョン(エマスター0001)
(不揮発性成分40%) 1.5
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 52.7
100.0wt%
【0055】
トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に溶解させた後、攪拌しながら水(常温)とマイクロクリスタリンワックスエマルジョンを加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た(不揮発分濃度16.4wt%)。
【0056】
この処理剤を30×50cmにカットしたポリエチレンとポリプロピレンとのマイクロファイバーを外層とし、パルプを中間層とした3層構造不織布(目付け量100g/m2
、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により20g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水を蒸散させ、含浸量3.28g(クロス重量の21.9%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0057】
実施例4
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
ジメチルポリシロキサン溶液(RA−1038 ) 7.0
トリメチルシロキシケイ酸の
イソドデカン溶液(X−21−5595) 3.0
(不揮発性成分60%)
水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸(R−910) 0.5
高粘度ジメチルポリシロキサン(KF96H−10万cs) 3.0
ジメチルポリシロキサン(KF96−100cs) 4.0
界面活性剤(ノニオンOP−83RAT) 1.0
カルナバワックスエマルジョン(エマスター0413) 2.0
(不揮発性成分35%)
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 49.5
100.0wt%
【0058】
トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に溶解させた後、攪拌しながら水(常温)とカルナバワックスエマルジョンを加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た(不揮発分濃度18.00wt%)。
【0059】
この処理剤を30×50cmにカットしたポリエステルとポリプロピレンとのマイクロファイバーを外層とし、パルプを中間層とした3層構造不織布(目付け量100g/m2
、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により20g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水などを蒸散させ、含浸量3.6g(クロス重量の約24.0%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0060】
実施例5
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
ジメチルポリシロキサン溶液(KF−7312K) 10.0
高粘度ジメチルポリシロキサン(KF96H−10万cs) 1.5
ジメチルポリシロキサン(KF96−200cs) 3.0
Sillicone Wax W23 0.5
界面活性剤(レオドールスーパーSP−L10) 1.0
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 54.0
100.0wt%
【0061】
トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に加熱溶解(90℃)させた後、攪拌しながら水(90℃)を加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た(不揮発分濃度16.0wt%)。
【0062】
この処理剤を、30×50cmにカットしたポリプロピレンとポリエステルのマイクロファイバーを外層とし、パルプを中間層とした3層構造不織布(目付け量100g/m2 、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により20g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水を蒸散させ、含浸量3.2g(クロス重量の21.3%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0063】
比較例1
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
ジメチルポリシロキサン溶液(KF−7312K) 10.0
ジメチルポリシロキサン(KF96−10cs) 4.0
ターペン油(ペガゾール3040) 86.0
100.0wt%
【0064】
トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に溶解させクロス処理剤を得た(不揮発分濃度14.0wt%)。
【0065】
この処理剤を30×50cmにカットしたポリエステル製不織布(目付け量100g/m2 、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により25g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油を蒸散させ、含浸量3.5g(クロス重量の約23.3%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0066】
比較例2
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
イソドデカン溶液(X−21−5595) 10.0
(不揮発性成分60%)
ジメチルポリシロキサン(KF96−500cs) 4.0
ジメチルポリシロキサン(KF96−10万cs) 2.0
界面活性剤(ノニオンOP−83RAT) 1.0
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 53.0
100.0wt%
【0067】
トリメチルシロキシケイ酸のイソドデカン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に溶解させた後、攪拌しながら水を加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た(不揮発分濃度13.0wt%)。
【0068】
この処理剤を30×50cmにカットしたポリエステルとポリプロピレンとのマイクロファイバー不織布(目付け量100g/m2 、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により25g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水などを蒸散させ、含浸量3.25g(クロス重量の約21.7%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0069】
比較例3
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
イソドデカン溶液(X−21−5595) 10.0
(不揮発性成分60%)
ジメチルポリシロキサン(KF96−500cs) 4.0
ジメチルポリシロキサン(KF96−10cs) 2.0
カルナバワックス 0.5
界面活性剤(ノニオンOP−83RAT) 1.0
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 52.5
100.0wt%
【0070】
トリメチルシロキシケイ酸のイソドデカン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に加熱溶解させた後、攪拌しながら水(90℃)を加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た。(不揮発分濃度13.5wt%)
【0071】
この処理剤を30×50cmにカットした、ポリエステルとポリプロピレンのマイクロファイバー不織布(目付け量100g/m2 、クロスの重量:15g)に、ディップロールコーター法により25g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水などを蒸散させ、含浸量3.38g(クロス重量の約22.5%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0072】
比較例4
成分名 配合量
トリメチルシロキシケイ酸の
ジメチルポリシロキサン溶液(KF−7312K) 11.0
水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸(R−910) 0.5
ジメチルポリシロキサン(KF96−100cs) 3.0
アミノ変性ジメチルポリシロキサン(KF−862) 1.0
界面活性剤(ノニオンOP−83RAT) 1.0
ターペン油(ペガゾール3040) 30.0
水 53.5
100.0wt%
【0073】
トリメチルシロキシケイ酸のジメチルポリシロキサン溶液から界面活性剤までに掲げた上記成分をターペン油に溶解させた後、攪拌しながら水を加えて均一に乳化しクロス処理剤を得た(不揮発分濃度16.5wt%)。
【0074】
この処理剤を30×50cmにカットしたポリエステルとポリプロピレンとのマイクロファイバーを不織布(目付け量100g/m2 、クロスの重量:15g)にディップロールコーター法により20g含浸させた後、110℃の乾燥機中でターペン油と水を蒸散させ、含浸量3.3g(クロス重量の22%相当)の艶出し吸水クロスを得た。
【0075】
試験方法
作成した処理布(艶出し撥水性クロス:吸水クロス)を使用して、初期の艶、被膜の均一性、艶の耐久性、皮膜の撥水性について調べた。試験用として「平成17年型トヨタマークIIブリット−黒色塗装車」のボンネット部分を使用した。
【0076】
まず、クリーナーワックスをかけて汚れを除去し、さらに残っているワックスの被膜部分を脂肪族系溶剤で除去したもの試験面とする。この試験面を8区分(1区分は約30×50cm四方)に分けた後、実施例1〜4及び比較例1〜4のサンプルを使用して拭き上げた。この時1区画だけ空試験として無処理で残しておくようにした。試験結果を表1に示す。
【0077】
評価項目について
(1)処理直後の艶
拭き上げた直後の艶を目視にて確認
◎ 大変良い
○ 良い
△ 普通
× 悪い
【0078】
(2)被膜の均一性
拭き上げた後の仕上がり(濃淡ムラの有無等)を目視にて確認した。
◎ 大変良い
○ 良い
△ 普通
× 悪い
【0079】
(3)処理直後の撥水状態
試験面に水をかけ撥水状態を目視にて判定した。
◎ よく水玉になってはじく
○ はじきはあるが、水玉が変形している。
△ やや、はじきが鈍い
× 殆どはじかない
【0080】
(4)艶の持続性
艶の持続について、屋外暴露1ヶ月経過後、シャンプー洗車を行い、残った水滴をキレイなウエスで拭き取った後の艶の持続性を目視にて判定した(ブランク部分との比較評価による判断)。
◎ 大変良い
○ 良い
△ 普通
× 悪い
【0081】
(5)撥水の持続性
撥水性の持続について1ヶ月経過後、シャンプー洗車を行った後の撥水状態を目視で判定した。
◎ よく水玉になってはじく
○ はじきはあるが、水玉が変形している。
△ やや、はじきが鈍い
× 殆どはじかない
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示した試験結果により、実施例1〜5は、処理直後の艶、被膜の均一性、処理直後の撥水状態、艶の持続性、撥水の持続性の各項目において、比較例1〜4の作用を凌いでいることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液と、ワックス成分と、10万cs以上の粘度を有する高粘度ジメチルポリシロキサンと、界面活性剤と、有機溶剤と、水と、を混合乳化させてなるクロス処理剤に含まれる不揮発性成分を布帛に含浸させてなり、
上記布帛が、親水性繊維でなる中間層と、その中間層を挟んで両側に積層された親油性ファイバーでなる外層とによって形成された3層構造を有する不織布でなる、ことを特徴とする艶出し撥水性付与クロス。
【請求項2】
上記トリメチルシロキシケイ酸を溶質とする溶液が、ジメチルポリシロキサン、炭化水素系溶剤、ジメチルポリシロキサンと環状ジメチルポリキシサンとの混合液、環状ジメチルポリシロキサンのうちのいずれかを溶剤とする溶液である請求項1に記載した艶出し撥水性付与クロス。
【請求項3】
上記ワックス成分が、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、シリコーンワックス、マイクロクリスタリンワックスの群から選ばれている請求項1又は請求項2に記載した艶出し撥水性付与クロス。
【請求項4】
上記クロス処理剤が、粘度調製剤として、粘度5〜1万csのジメチルポリシロキサンを含む請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した艶出し撥水性付与クロス。
【請求項5】
上記クロス処理剤が水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸を含む請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した艶出し撥水性付与クロス。
【請求項6】
クロス処理剤に含まれる上記高粘度ジメチルポリシロキサンの配合量が、クロス処理剤100重量部に対して1〜5重量部である請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した艶出し撥水性付与クロス。
【請求項7】
上記親油性ファイバーが、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維又はポリエステル繊維、或いは、ポリプロピレン繊維又はポリエチレン繊維とポリエステル繊維との混合繊維、又はポリプロピレン繊維とポリエステル繊維との混合繊維、又はポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維との混合繊維のいずれかである請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載した艶出し撥水性付与クロス。
【請求項8】
上記親水性繊維が、パルプ繊維又はレーヨン繊維のいずれかである請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した艶出し撥水性付与クロス。
【請求項9】
上記布帛に含浸されているクロス処理剤中の不揮発性成分の重量が、布帛重量の15%以上である請求項1又は請求項2に記載した艶出し撥水性付与クロス。

【公開番号】特開2010−119686(P2010−119686A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297148(P2008−297148)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】