説明

艶消し剤

無機酸化物粒子;及び、無機酸化物粒子上にコートされているワックス;を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用な艶消し剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、コーティングを製造するのに有用なワックスコート無機酸化物艶消し剤、それから製造されるコーティング配合物、及び得られる艶消しコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
微粒化ワックスは、塗料又はラッカーフィルム又はコーティングに望ましい特性(例えば、可撓性、感触、及び光沢)を与えることが周知である。また、無機酸化物粒子も、コーティングに艶消し表面を導入するために用いられている。無機酸化物粒子をワックスでコート/含浸させると(このプロセスは、通常、流体エネルギーミル(微粒化器)内で酸化物粒子及びワックスを一緒に粉砕することによって行われる)、更なる生成物の利益を速やかに得ることができる。ワックスは、酸化物粒子と塗料又はラッカーとの適合性を向上させ、配合物中の他の成分との相互作用を抑止することができるが、他の機能は保存中の硬質の沈殿物(これは再分散させることができない)の形成を抑止することである。この保護が与えられるメカニズムは未だ完全には理解されていないが、再分散させることのできない硬質の沈殿物が形成されたら上記記載の利益は全て実現することができなくなるので、塗料又はラッカー製造者に対するその利益は広く認識されている。
【0003】
文献においては、一般に2つのタイプのワックスコート酸化物粒子が開示されている。特許文献1においては、流体エネルギーミル内で中密度のシリカゲルを微結晶ワックスと共粉砕することによって製造されるシリカ艶消し剤が開示されている。特許文献2においては、熱可塑性材料を含むワックスの水性エマルジョン又は分散液で沈降シリカを処理することによってシリカ艶消し剤を製造することができることが教示されている。所謂「乾燥」共微粒化ルートによって製造されるシリカ艶消し剤の特性は、流体エネルギーミルに供給する前に、脂肪酸(特許文献3)、又は種々の分子量の合成ポリエチレンワックス(特許文献4)を微結晶ワックスに加えることによって更に向上させることができる。前者によりワックスコート生成物の分散性が向上し、一方後者は商業的に入手できる材料と比較して高められた沈降特性を有する生成物を示す。上記記載の「乾燥」処理ルートはワックス又はワックスブレンドの融点よりも高い温度を用い、一方、特許文献5においては、モンタン酸エステルのような機能性ワックスを用いる、50℃より低い微粒化温度で満足できるワックスコートシリカを製造することができるプロセスが開示されている。
【0004】
特許文献6においては、シリカ粒子上にコーティングされている、硬質微結晶ワックス、可塑化性微結晶ワックス、及び合成ポリエチレンワックスを含むワックスの三元ブレンドを用いる艶消し剤が記載されている。特許文献7は、ワックスコート沈降シリカ艶消し剤に関し、ここではワックスとしては、ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、又はシリコーンワックスを挙げることができる。
【0005】
特許文献8においては、種々のコーティングにおいて艶消し剤として用いるための、無機酸化物成分を含まないワックス粒子の使用が記載されている。用いるワックスとしては、オレフィンワックス及び種々の他のワックスの混合物が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許798,621
【特許文献2】英国特許1,236,775
【特許文献3】英国特許1,461,511
【特許文献4】米国特許4,097,302
【特許文献5】英国特許1,538,474
【特許文献6】米国特許5,326,395
【特許文献7】米国特許出願2004/0047792 A1
【特許文献8】米国特許6,761,764 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コーティング産業において、改良された耐摩耗性及び化学安定性も与えながら許容できる艶消し特性を与える無機酸化物艶消し剤に関する必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要:
本発明は、無機酸化物粒子;及び、無機酸化物粒子上にコートされているか又はその中に含浸されているワックス;を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用な艶消し剤に関する。
【0009】
また、本発明は、無機酸化物粒子;及び、無機酸化物粒子上にコートされているか又はその中に含浸されているワックス;を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用なコーティング配合物にも関する。
【0010】
更に、本発明は、無機酸化物粒子;及び、無機酸化物粒子上にコートされているか又はその中に含浸されているワックス;を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングに関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明によるコーティングの耐摩耗性に対するワックスの結晶化度の影響を示す。
【図2】図2は、他のものと比較した本発明によるコーティングの耐摩耗性を示す。
【図3】図3は、他のものと比較した本発明によるコーティングの木材ラッカーにおける艶消し効率を示す。
【図4】図4は、他のものと比較した本発明によるコーティングのUVラッカーにおける艶消し効率を示す。
【図5】図5は、他のものと比較した本発明のコーティングの化学耐性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の記述:
ここで用いる用語は、ここで他に定義されていない限り、産業界において許容されているその意味を与えるものである。
【0013】
「粒子」という用語は、単独又はその集合体(例えば粉末)のいずれかの、規則的か又は不規則な形状若しくは表面を有する物質の回転楕円体、顆粒、破片、又は断片を含む固体を指すように用いる。
【0014】
「無機酸化物」という用語は、元素及び酸素の二元化合物を示すように用い、金属及び半金属の酸化物を含む。かかる酸化物の例は、SiO、Al、AlPO、MgO、TiO、ZrO、Fe、又はこれらの混合物を含んでいてよい。混合無機酸化物としては、従来の製造方法(例えば、共ブレンド、共沈殿、共ゲル化等)によって製造することのできるSiO、Al、MgO、SiO、Al、Fe等が挙げられる。酸化物は、ゲル状、沈降、ヒューム状、コロイド状などの種々の形態であってよい。
【0015】
無機酸化物としては、また、天然鉱物、処理/活性化鉱物、モンモリロナイト、アタパルジャイト、ベントナイト、パリゴルスカイト、フラー土、珪藻岩、スメクタイト、ホルマイト、ケイ砂、石灰石、カオリン、ボールクレー、タルク、葉蝋石、パーライト、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカヒドロゲル、シリカゲル、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、透析シリカ、アルミナゼオライト、モレキュラーシーブ、珪藻土、逆相シリカ、漂白クレー、及びこれらの混合物を挙げることもできる。
【0016】
一態様においては、本発明は、無機酸化物粒子;及び、無機酸化物粒子上にコートされているワックス;を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用な艶消し剤に関する。ワックスは、約55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上の結晶化度を有していてよい。他の態様においては、ワックスは、90%以上(例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%)の結晶化度を有する。ポリマーの結晶化度は、ASTM−E793(1985(1989改訂))を用いる示差走査熱量測定によって測定する。
【0017】
ここで記載する結晶化度を有する本発明のワックスは、結晶化度が100%未満である場合には、結晶質領域及びアモルファス領域を有するポリマーを含む。本発明のポリマーは、また、アタクチックポリマーと比較してアイソタクチック又はシンジオタクチックとして示すこともでき、即ち、ポリマーはその原子又は懸垂基の規則的で不規則でない配列を有する。例えば、高度に結晶質(例えば50%超)のポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリケトン、ポリエステルなどが挙げられる。好ましくは、ポリマーはポリオレフィンである。これは、これらのポリマーはより低い温度で溶融するからである。本発明のポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリメチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど、或いはこれらの混合物のようなポリアルキレンを挙げることができる。より好ましくは、本発明のワックスは、アイソタクチック及び/又はシンジオタクチックのポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物であってよく、更により好ましくはポリエチレンタイプのものである。好適なワックスは、90%より大きい結晶化度を可能にする規則的なポリマー鎖を含む。好適なワックスは、1000〜30,000g/モルの重量平均モル質量を、90〜140℃、好ましくは110℃〜140℃の滴点と共に有する。ワックスは、140℃の温度において測定して1000mPas以下、好ましくは10〜500mPasの溶融粘度を有する。
【0018】
本発明のポリマーは、50%より高い結晶化度を与える任意の従来方法を用いて合成することができる。例えば、チーグラー・ナッタ重合を用いるか又は有機金属触媒重合によってポリオレフィンを製造することができる。好ましくは、有機金属触媒重合はメタロセンタイプのものである。かかるプロセスは、例えば、米国特許5,081,322;5,643,846;5,919,723;6,194,341;及び6,750,307に記載されている。
【0019】
本発明の無機酸化物としては、ここで言及する種々の酸化物を挙げることができる。しかしながら、1つの好ましい態様においては、無機酸化物はシリカである。この態様の説明を以下に行うが、任意の無機酸化物をシリカに代えて用いることもできる。
【0020】
本発明の艶消し剤を製造するのに用いるシリカは、シリカが0.8〜2.4cc/gの範囲の孔容積を有しているという条件の下で、従来の多孔質シリカ艶消し剤を製造するのに用いられるものであってよい。好ましくは、シリカの孔容積は0.9〜1.2cc/gの範囲である。ここで言及する孔容積は、下記に記載する窒素ポロシメトリーによって測定する。
【0021】
シリカゲルが好ましい。ヒドロゲル、キセロゲル、及びエアロゲルも全て好適である。無機ゲルを製造するための一般的な手順は、金属又はメタロイドの塩溶液を酸で中和し、その後、静置することによってヒドロゲルを形成することによる。ヒドロゲルは、次に洗浄して比較的高い濃度の可溶性塩を除去しなければならない。この洗浄段階中の処理によって、最終生成物の多孔率のような物理的特性が決定される。これらの特性を得るための方法は公知である。例えば、最終的なゲルの孔容積及び表面積は、洗浄溶液のpH及び温度、洗浄速度、ヒドロゲルの粒径、及び洗浄時間によって定まる。一般に、洗浄時間を短くすることによって孔容積を限定することができる。しかしながら、上記で言及した孔容積が最終ゲル内で形成されるのであれば、特定の洗浄条件は用いる特定の無機ヒドロゲルに応じて変化させることができ、本発明にとってそれ自体重要ではない。上述したように、当業者はこれらの洗浄条件に精通しており、本発明において用いるために望ましい孔容積を形成する好適な洗浄条件を容易に決定することができる。例えば、3〜5の出発pHで、50〜90℃において5〜25時間洗浄したシリカゲルは、上述の範囲内の孔容積を有するゲル(エアロゲル)を形成する。
【0022】
特に好適なシリカとしては、W.R. Grace & Co.-Conn.からの艶消し剤であるSyloid(登録商標)のような商業的に入手できるシリカ艶消し剤を製造するのに用いるヒドロゲルが挙げられる。
【0023】
本発明のワックス含有艶消し剤は、シリカを約2〜12ミクロンの所望の粒径に粉砕すると同時にワックスを溶融する従来の共粉砕法によって製造することができる。かかるプロセスは、Hosokawa Micron Limitedから入手できるAlpine(登録商標)ミル、及びNetzsch, Inc.から入手できるCondux(登録商標)万能ミルのような流体エネルギーミル又は微粒化器内で最も有効に行われる。運転温度はワックスの要求に従って変化させることができる。流体エネルギーミルに供給する空気の入口温度は、少なくとも、粉砕装置の滞留時間プロファイル内でのワックスの溶融を確保するのに十分に高いものでなければならない。ワックスは、最終生成物が15〜30重量%のワックス含量を有するようにミルに加える。
【0024】
本発明の他の態様は、無機酸化物粒子;無機酸化物粒子上にコートされているワックス;び、他のコーティング配合成分;を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用なコーティング配合物に関する。
【0025】
ここで記載した無機酸化物及びワックスに加えて、コーティング配合物は、従来のコーティング成分を含んでいてよい。例えば、有機材料を用いる艶消し剤の製造においては、一般にワックスを0.1〜10%の濃度で加える。従来の配合物におけるワックスは、PEワックス、PPワックス、FTパラフィン、天然ワックス、モンタンワックス、マクロ結晶質及び微結晶パラフィンワックス、アミドワックス、並びにこれらのブレンドである。シリカ及びワックスのブレンドは、粉末混合物及び溶融混合物として存在する。これらのワックスは、フレーク、ペレット、粉末、分散液、又は微粒化物の形状で、好ましくは微粒化粉末として加える。他のコーティング成分としては、ニトロセルロース、イソシアニド、ポリオール、アクリレート等のようなバインダー;殺生物剤;界面活性剤;消泡剤;増粘剤;光開始剤;UV安定剤;酸化防止剤;流動性改良剤;染料;金属イオン封鎖剤;殺生物剤;分散剤;顔料、例えば二酸化チタン、有機顔料、カーボンブラック;増量剤、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、及びシリケート;充填剤、例えばガラス又はポリマー微少球体、石英、及び砂;凍結防止剤;可塑剤;接着促進剤、例えばシラン;凝集剤(coalescents);湿潤剤;滑り添加剤及び滑り止め添加剤;架橋剤;消泡剤;着色剤;粘着性付与剤;ワックス;防腐剤;凍結/解凍保護剤;腐食抑制剤;抗凝集剤;並びに溶媒及び希釈剤、例えばキシレン、無機スピリット、ガソリン、水等;が挙げられる。
【0026】
本発明の他の態様は、無機酸化物粒子;及び、無機酸化物粒子上にコートされているか又はこの中に含浸されているワックス;を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングに関する。
【0027】
本コーティングは、ここで記載するコーティング配合物を用いることによって製造する。まず、無機酸化物とワックスを、ミキサー(例えばHenschelミキサー)内で、所定時間(例えば10〜20分間)、所定速度(例えば2000〜3000rpm)でブレンドして、酸化物/ワックス混合物を均一にブレンドすることによって、本発明の艶消し剤を製造する。次に、混合物をミル(例えば、Alpine AGから入手できるAlpine AFG-100のような流体エネルギーミル)内に配置して、ワックスを酸化物に含浸及びコートさせ、均一な所望の粒径を得る。粉砕は、典型的には、50〜200℃の温度において、600grあたり10〜15分の間行う。
【0028】
艶消し剤の形成に続いて、艶消し剤を、ラッカー、塗料、ワニス、又はインクを含む直ぐに使用できる(ready-to-use)コーティング内に、ミキサー(例えば、VMA-Getzmann GmbHから入手できるDispermat CN10-F2ミキサー)を用い、所定速度(例えば1000〜5000rpm)で、艶消し剤が良好に分散するまでの時間(例えば5〜30分間)分散させることによって、コーティング配合物を製造する。次に、Erichsen GmbH & Co. KG.から入手できるK-Control Coater K101のようなErichsenコーターを用いて、木材、金属、プラスチック等のような基材上にコーティングを典型的な厚さ(例えば25〜100ミクロン)で適用することができる。次に、コーティングを室温において所定時間(約24時間)乾燥する。
【0029】
本発明の艶消し剤は、従来の艶消し剤を用いて製造した他のコーティングを凌ぐ改良された耐摩耗性を与える。例えば、ここで規定する摩耗試験にコーティングをかけた後の本発明の艶消し剤を含むコーティングに関する光沢単位の減少は、60°において10単位未満、20°において5単位未満であり、好ましくは60°において7単位未満、20°において4単位未満であり、より好ましくは60°において5単位未満、20°において3単位未満であり、更により好ましくは60°において3単位未満、20°において2単位未満である。
【0030】
更に、本発明の艶消し剤は、他の従来の艶消し剤と同等の艶消し効率、及び従来の艶消し剤を凌ぐ向上した化学耐性を与える。
【0031】
本発明を限られた数の態様によって説明したが、これらの特定の態様は本明細書において記載され特許請求されている発明の範囲を制限することを意図するものではない。更なる修正及び変更が可能であることは、本明細書中の代表的な態様を検討することにより当業者に明らかである。実施例及び明細書の残りの部分における全ての部及びパーセントは、他に特定しない限り重量基準である。更に、明細書又は特許請求の範囲において示す全ての数値範囲、例えば特定の特性の組、測定値の単位、条件、物理的状態、又は割合を示すものは、明らかに、言及するか又は他の方法で示すかかる範囲内に含まれる全ての数、並びにそのように示されている全ての範囲内の数の全ての部分集合を文字通り含むものであると意図される。例えば、下限R及び上限Rを有する数値範囲が開示されている場合には常に、この範囲内に含まれる任意の数Rが具体的に開示されている。特に、この範囲内の次式の数R:R=R+k(R−R)(式中、kは1%の増分で1%〜100%の範囲の変数であり、例えばkは、1%、2%、3%、4%、5%、・・・50%、51%、52%、・・・95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である)が具体的に開示されている。更に、上記で算出されるRの任意の二つの値によって表される任意の数値範囲も、具体的に開示されている。本明細書において示し記載したものに加えて、本発明の任意の修正は、上記の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなろう。かかる修正は、特許請求の範囲内に包含されると意図される。更に、本願において引用した全ての公報又は特許は、その全てを本明細書中に包含する。
【実施例】
【0032】
直ぐ後の段落は、本発明を評価するために用いた試験及び配合物を示す。
【0033】
(A)窒素表面積−孔容積:
窒素表面積は、MicromeriticsによるASAP2400装置による多点法を用いるBrunauer, Emmett, 及びTeller(BET)の標準窒素ポロシメトリー吸着法によって測定する。試料を、真空下100℃において12時間脱気する。p/p0 0.967において吸収される窒素ガスの体積から表面積を算出する。この装置はまた孔径分布も与え、これから、孔の10%がこの孔径より小さい孔容積寸法(D10)を得ることができる。同じように、孔の50%(D50)及び90%(D90)がこの孔径より小さい孔径を得ることができる。更に、脱着曲線から、与えられた孔径範囲に関する孔容積(mL/g)を得ることができる。
【0034】
(B)粘度:
粘度は、原液のBrookfield RVT DV2粘度計、又は30光沢単位に達する配合物のBohlin Rheometer VORを用いて測定する。測定前に、配合物を24時間脱気する。
【0035】
(C)重量中央粒径:
重量中央粒径又はここで呼ぶ「中央粒径」は、パスレングス(path length)100mmのレンズを用いるMalvern Mastersizerによって測定する。この装置は、低出力He/Neレーザーを用いるフラウンホーファー回折の原理を用いる。測定の前に、試料を超音波によって10秒間水中に分散させて水性懸濁液を形成する。Malvern Mastersizerによってシリカの重量粒径分布を測定する。これらの装置から得られるデータから、重量中央粒径(d50)、10パーセント値(d10)、及び98パーセント値(d98)が容易に得られる。
【0036】
(D)炭素含量:
Leco Corporationから入手できるLECO SC44によってコーティングシリカの炭素含量を測定する。存在する炭素を、誘導炉を用いて高温で二酸化炭素に転化させる。次に、赤外検出システムによって気体を検出する。得られる炭素レベルからワックス含量(%w/w)を算出する。
【0037】
(E)光沢:
本発明を用いて予測される光沢及び艶消し効果をDIN−67530(その内容は参照として本明細書中に包含する)によって測定した。
【0038】
実施例1〜5:
以下の方法にしたがってワックスコートシリカ艶消し剤を製造した。米国特許4,097,302に示されている方法によって製造され、300m/gのBET窒素表面積及び2mL/gの孔容積を有するフラッシュ乾燥した100部のシリカゲルを、Henschelミキサー内において、20部のワックスと2500rpmで15分間混合した。次に、混合物を、AFG100流体エネルギーミル(Alpineから入手できる)内において、130℃の温度で600gあたり10分の間粉砕した。粉砕装置の滞留時間プロファイル内でのワックスの溶融を確保するためには、100〜140℃の温度で十分に高かった。
【0039】
実施例1〜5の異なる艶消し剤を、表1に示すラッカー(即ちラッカー1)及び市販の2K-PU木材ラッカー(即ちラッカー2:Sirca SpA Industriaから入手できるSirca)の中に、Getzmannから入手できるDispermat VMAを用いて3000rpmにおいて10分間分散させた。
【0040】
【表1】

【0041】
Ucecoat 7849(Surface Specialties, Inc.から入手できる)及びNeocryl XK-15(DSM NeoResins)はオリゴマーアクリレートである。Byk-025(BYK-Chemieから入手できる)はポリシロキサンであり、Byk 346(同様にBYK-Chemieから入手できる)はポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンである。Irgacure 500(Ciba Specialty Chemicalsから入手できる)は、50%のベンゾフェノン及び50%の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンである。Dowanol DPMは、Dow Chemical Companyからのグリコールエーテルエステルである。Coapur 6050(Coatex SASから入手できる)は、水性塗料/ラッカー配合物用のポリウレタン増粘剤である。
【0042】
Erichsenから入手できるK-Control Coater"K101"を用いて、ラッカーを黒色の試験カードの上にフィルムとして100μmの厚さで適用した。次に、フィルムを、Heraeusから入手できるLUT 6050乾燥器内において45℃で20分間乾燥した。次に、ISTから入手できる重合装置:タイプM-20-2*1-TR-Ss-SLCを用いて、フィルムに2−UV光を10分照射した。室温で1週間後、ここで記載するTaber試験を用いてコーティングの耐摩耗性を試験した。
【0043】
Taber試験は、Erichsenから入手できるラバーロールを有するTaber Abraiser 5131を用いて行った。この装置においては、60rpmの速度で時計方向に回転する2つの摩耗ホイールによって9Nの圧力を試験カードに加えて摩耗を起こした。ホイール上の摩耗媒体は、3M Scotch Brite繊維ウエブCF-HPタイプ7498(F-SFN)であった。カードを500rpmにかけた。Taber試験の前後において20°及び60°における光沢レベルを測定し、光沢単位の変化を求めた。光沢単位の変化が小さいことは、良好な耐摩耗性を示す。結果を表2及び図2に示す。
【0044】
下表中において示されている略号は以下のように定義される。
【0045】
APS:重量中央粒径;
PV:孔容積;
SA:表面積;
PE:ポリエチレン;
COMP:比較例。
【0046】
【表2】

【0047】
表2及び図1の結果は、粒径及びワックス含量を比較的一定に保つと、本発明の範囲内の高い結晶化度のワックスを有する艶消し剤は、本発明の範囲外の低い結晶化度のワックスを有する艶消し剤よりも良好な耐摩耗性を有することを示す。本発明1及び2を比較例1〜3と比較すると、本発明の艶消し剤を用いて製造したコーティングの耐摩耗性は、他の艶消し剤の少なくとも2倍である。
【0048】
また、予期しなかったことに、本発明に関して特許請求した粒径範囲の下端のより小さいAPSを有する艶消し剤を用いると耐摩耗性が向上することも分かった。図2を参照すると、6ミクロンのAPSを有するコーティングは8ミクロンのAPSを有するコーティングよりも遙かに低い耐摩耗性を有する。
【0049】
図3は、本発明の艶消し剤(赤線)が、従来の艶消し剤を用いて製造したコーティングと少なくとも同等の艶消し効率を有するコーティングを与えることを示す。試料を、実施例1〜5において上記で記載したようにラッカー2中に混合した。明青色の線は、Deuteron GmbHから入手できる市販の有機艶消し剤であるPergopak M3の艶消し効率を示す。黄色の線はFuji Sylysia Chemical, Ltd.から入手できる市販のゲルベースの艶消し剤であるFuji Sylysia 276を示し、緑色の線はW.R. Grace & Co.から入手できる市販のシリカゲル艶消し剤であるSyloid ED52を示す。暗青色の線は、Degussa AGから入手できる市販の沈降シリカ艶消し剤であるAcematt OK412の効率を示す。
【0050】
図4は、ラッカー1を用いた場合の、他の市販の艶消し剤と比較した本発明の艶消し剤(赤線)を示す。実施例1〜5において上記で記載したように試料をラッカー1中に混合した。明青色の線は、Deuteron GmbHから入手できる市販の有機艶消し剤であるPergopak M3の艶消し効率を示す。黄色の線はFuji Sylysia Chemical, Ltd.から入手できる市販のゲルベースの艶消し剤であるFuji Sylysia 276を示し、緑色の線はW.R. Grace & Co.から入手できる市販のシリカゲル艶消し剤であるSyloid ED52を示す。暗青色の線は、Degussa AGから入手できる市販の沈降シリカ艶消し剤であるAcematt OK412の効率を示す。
【0051】
これらの異なる艶消し剤の化学耐性を、Getzmannから入手できるDispermat VMAを用いてこれらを3000rpmで10分間ラッカー1中に分散させることによって試験した。加える艶消し剤の量は、達成された光沢によって定め、表3に示す。Erichsenから入手できるK-Control Coater"K101"を用いて、ラッカーを黒色の試験カードの上にフィルムとして100μmの厚さで適用した。次に、フィルムを、Heraeusから入手できるLUT 6050乾燥器内において45℃で20分間乾燥した。次に、ISTから入手できる重合装置:タイプM-20-2*1-TR-Ss-SLCを用いて、フィルムに2−UV光を10分照射した。室温で1週間後、図5に示す異なる液体を用いてコーティングの化学耐性を試験した。この方法は、DIN−EN 12720、DIN 68861−1に記載されている。
【0052】
【表3】

【0053】
図5は、本発明の艶消し剤は従来の艶消し剤を用いて製造したコーティングを凌ぐ改良された化学耐性を有するコーティングを与えるという予期しなかった効果を示す。例えば、非艶消し水性コーティングは、水、赤ワイン、及びインクによってブリスターを形成し;茶、コーヒー、及びNaCO溶液に対して良好な耐性を有していた。艶消し剤としてSYLOID ED52を用いて製造したコーティングは、水、コーヒー、茶、及び赤ワインに対して非常に耐性であり;エタノール及びインクに対して低い耐性を有し;ビールだけがブリスターを形成し;やや明るい染みが形成された。シリカゲルコーティングは、一般に殆どの試験基質によってブリスターを形成する傾向を示した。沈降シリカ艶消し剤を用いて製造したコーティングは、コーヒー、インク、赤ワイン、及び水によってフィルムの破壊が起こり;エタノールによってフィルムが完全に破壊され;非常に大きなブリスターが形成された。ヒュームドシリカ艶消し剤から製造されたコーティングは、水、コーヒー、茶、及びビールに対して劣った耐性を与え;赤ワイン、インク、及びエタノールによってフィルムが破壊され;多数のブリスター及び白色の染みが形成された。有機艶消し剤コーティングは、一般に、殆どの試験基質に対して劣った耐性を与え、水、コーヒー、赤ワイン、及びビールによってフィルムが破壊され;多数のブリスターが形成され、非常に明るい染みが形成された。本発明の艶消し剤から製造されたコーティングは、赤ワイン及びビールに対する高い耐性;水、コーヒー、茶に対する良好な耐性;並びに、エタノール及びインクに対する僅かに低い耐性;を有し、ブリスターが形成されず;やや明るい染みが形成される;などの最も向上した特性を与えた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物粒子;及び
無機酸化物粒子上にコートされているワックス;
を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用な艶消し剤。
【請求項2】
該ワックスが約55%以上の結晶化度を有する、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項3】
該ワックスが約60%以上の結晶化度を有する、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項4】
該ワックスが約70%以上の結晶化度を有する、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項5】
該ワックスが約80%以上の結晶化度を有する、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項6】
該ワックスがポリオレフィンを含む、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項7】
該ワックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項8】
該ワックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項9】
該無機酸化物が、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、イオン酸化物、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項10】
該無機酸化物がシリカを含む、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項11】
該無機酸化物が2〜12ミクロンの中央粒径を有する、請求項1に記載の艶消し剤。
【請求項12】
無機酸化物粒子;
無機酸化物粒子上にコートされているワックス;及び
コーティング配合成分;
を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用なコーティング配合物。
【請求項13】
該ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項14】
該ワックスが約60%以上の結晶化度を有する、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項15】
該ワックスが約70%以上の結晶化度を有する、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項16】
該ワックスが約80%以上の結晶化度を有する、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項17】
該ワックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項18】
該ワックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項19】
該ワックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項20】
該無機酸化物が、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、イオン酸化物、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項21】
該無機酸化物がシリカを含む、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項22】
該無機酸化物が2〜12ミクロンの中央粒径を有する、請求項12に記載のコーティング配合物。
【請求項23】
無機酸化物粒子;及び
無機酸化物粒子上にコートされているワックス;
を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティング。
【請求項24】
該ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項25】
該ワックスが約60%以上の結晶化度を有する、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項26】
該ワックスが約70%以上の結晶化度を有する、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項27】
該ワックスが約80%以上の結晶化度を有する、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項28】
該ワックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含む、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項29】
該ワックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物を含む、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項30】
該無機酸化物が、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、イオン酸化物、又はこれらの混合物を含む、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項31】
該無機酸化物がシリカを含む、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項32】
該無機酸化物が2〜12ミクロンの粒径を有する、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項33】
Faber試験を用いる該コーティングの耐摩耗性が、60°において10光沢単位未満である、請求項23に記載の艶消しコーティング。
【請求項34】
Faber試験を用いる該コーティングの耐摩耗性が、20°において5光沢単位未満である、請求項23に記載の艶消しコーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−521539(P2010−521539A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539660(P2009−539660)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010558
【国際公開番号】WO2008/068003
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(500445446)グレース・ゲーエムベーハー・ウント・コムパニー・カーゲー (12)
【Fターム(参考)】