説明

芝刈機

【課題】モーアを支持するリンクアームの回動範囲を段階的に規制する回転規制具と刈高設定器の配置構成を合理的になし、ガタの少ない状態で容易迅速に刈高設定が行える刈高さ調整装置を提供する。
【解決手段】モーア1を、車体1に対して前部リンク38と、該前部リンク38と4辺リンクを形成すべく設ける左右一対の昇降リンク40L,40Rとで連結し、これら左右一対の昇降リンク40L,40Rと車体1側の横支持軸44との間には夫々リンク機構41L,41Rを設け、横支持軸44回りにリンク機構41L,41Rを回動することにより、昇降リンク40L,40Rを介してモーア1を平行上下動する構成とし、前記運転席12の左右一側には、前記横支持軸44を回動させる昇降レバー42を備え、前記運転席12の左右他側には刈高調節装置50の調整ダイヤル54を設け、コンパクトでかつ作動を確実とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行機体にモーアを昇降自在に備える芝刈機に関し、特に該モーアの刈高さを調整するモーアの刈高さ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芝刈機機体の腹部に昇降自在に設けられるモーアを地面に接近させて芝刈り作業を行うが、この際ブレードの芝に対する上下方向の作用位置を変更調整して所謂刈高さの調整を行う。従来は、刈高設定器を回転操作すると、モーアを支持するリンクアームの回動範囲を段階的に規制する回転規制具が回転し、リンクアームの下降位置を規制してモーアの刈高さを設定することにより、オペレータは運転席に座ったままでモーアの刈り高さを変更設定でき、乗用芝刈機の操作性を向上した構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4207743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の芝刈機は非駆動の前輪の直後においてモーアを昇降自在に連結する所謂ゼロターンモーアに構成されるもので、前記リンクアームに作用する回転規制具は、オペレータの運転席から前方に離れた位置に構成されて、刈高設定器と回転規制具までの距離が長いため刈高設定器の回転をワイヤ連結によって回転規制具に伝達する構成としている。したがって、経年変化によるワイヤの伸びやガタに伴って正確な刈高設定が損なわれる恐れがある。
【0005】
そこで、この発明は、回転規制具と刈高設定器の配置構成を合理的になし、ガタの少ない状態で容易迅速に刈高設定が行える刈高さ調整装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記技術的課題を解決するために次の技術的手段を講じた。
即ち、請求項1に記載の発明は、左右前輪10,10と左右後輪6,6を備えた車体2にモーア1を昇降自在に装着し、オペレータの運転席12を備えた芝刈機において、前記モーア1を、車体2に対して前部リンク38と、該前部リンク38と4辺リンクを形成すべく設ける左右一対の昇降リンク40L,40Rとにより連結し、これら左右一対の昇降リンク40L,40Rと車体1側の横支持軸44との間には夫々リンク機構41L,41Rを設け、横支持軸44回りにリンク機構41L,41Rを回動することにより、昇降リンク40L,40Rを介してモーア1を平行上下動する構成とし、前記運転席12の左右一側には、前記横支持軸44を回動させる昇降レバー42を備え、前記運転席12の左右他側には刈高調節装置50の調整ダイヤル54を設けた芝刈機とした。
【0007】
このように構成すると、左右一方側の昇降レバー42を手動操作してモーア1を上昇させておき、他方側の調整ダイヤル54で刈高さを調整設定することにより、昇降レバー42を下降操作すると設定した刈高さでモーア1は停止する。このように、車体1運転席12の左側及び右側に夫々昇降レバー42と調整ダイヤル54を配置することによって、運転席12に座ったままで刈高さの調整が行えて便利である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記左右の昇降リンク40L,40Rには夫々リンク機構41L,41Rを対応させて設け、前記横支持軸44の両側に前記リンク機構の一方側リンク機構41R及び他方リンク機構41Lを夫々連結し、該一方側のリンク機構41Rに昇降レバー42を連結し、他方側のリンク機構41Lの近傍に調整ダイヤル54を軸支する調整軸51を設け、この調整軸51には調整ダイヤル54の操作によりリンク機構41Lを係合し該昇降リンク40Lの横支持軸44回りの下降側回動を異なるモーア1高さで規制するリンクストッパ52を設けてなる請求項1に記載の芝刈機とした。
【0009】
このように構成すると、昇降レバー42の昇降操作に基づき、リンク機構の一方側リンク機構41Rを介して左右昇降リンクのうち一方の昇降リンク40Rを上下に連動し、さらにこの昇降レバー42の回動操作で横支持軸44を回動するが、この回動が他方側リンク機構41Lに作用して他方の昇降リンク40Lを上下に連動してモーア1を平行上下させる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記調整軸51のリンクストッパ52の円周方向に高さ調整凹部53を形成し前記他方側リンク機構41Lを構成するアーム部41Ldに設けた係止ピン部41Leを係合させて他方側リンク機構41Lを規制する構成とし、前記高さ調整凹部53は円周方向所定間隔に複数凹部53a,53b…53gを調整軸51中心からの距離を夫々異ならせて形成してなる請求項2に記載の芝刈機とする。
【0011】
このように構成すると、他方側リンク機構41Lの係止ピン部41Leとリンクストッパ52の高さ調整凹部53a,53b…53gのいずれかが係合することで他方側リンク機構41Lをロックし、かつ横支持軸44を介して一方側リンク機構41Rもロックしてモーア1の下降を規制する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、昇降レバー42をモーア1の略最上げ状態で保持する上昇側ロック機構を備えた請求項1〜請求項3のいずれか1に記載の芝刈機とする。このように構成すると上昇位置でロックでき、ロックの状態で調整ダイヤル52による刈高さ設定を行う。
【0013】
請求項5に記載の発明は、調整軸51にはリンクストッパ52を一体的に設けると共に、調整ダイヤル54及び調整軸51の回転を規制するクリック機構55を設けた請求項1〜請求項4のいずれか1に記載の芝刈機とする。
【0014】
このように構成すると、調整軸51に刈高調節装置50を構成するリンクストッパ、クリック機構55をまとめて配置できコンパクト化が図れる。
請求項6に記載の発明は、リンクストッパ52の一側に刈高さ表示する表示板56を備えた請求項5に記載の芝刈機とする。調整ダイヤル52操作の際に目盛等を付した表示板56を具備するから設定刈り高さの把握が容易である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明は、左右一方側の昇降レバー42を手動操作してモーア1を上昇させておき、他方側の調整ダイヤル54で刈高さを調整設定することにより、昇降レバー42を下降操作すると設定した刈高さでモーア1は停止する。このように、車体1運転席12の左側及び右側に夫々昇降レバー42と調整ダイヤル54を配置することによって、運転席12に座ったままで刈高さの調整が行えて便利である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、昇降レバー42の昇降操作に基づき、リンク機構の一方側リンク機構41Rを介して左右昇降リンクのうち一方の昇降リンク40Rを上下に連動し、さらにこの昇降レバー42の回動操作で横支持軸44を回動するが、この回動が他方側リンク機構41Lに作用して他方の昇降リンク40Lを上下に連動してモーア1を平行上下させるから、モーア1の昇降作動が確実である。然も、一方及び他方のリンク機構41L,41Rの左右別々に昇降レバー42又は刈高調整装置50を組み込むため一箇所にまとめる場合に比べて構成の複雑化を免れる。
【0017】
請求項3〜6に記載の発明は、調整軸51に刈高さ調節装置50を設けるものであるが、調整軸51に刈高調節装置50を構成するリンクストッパ52のほか、クリック機構55をまとめて配置できコンパクト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一部を断面した全体側面図
【図2】全体平面図
【図3】コレクタの右側面図(イ)(ロ)
【図4】全体側面図
【図5】モーア及び昇降リンクを示す右側面図
【図6】昇降レバー部の拡大側面図
【図7】左右リンク機構部と横支持軸部の斜視図
【図8】モーア及び昇降リンクを示す左側面図
【図9】刈高調節装置部の拡大側面図
【図10】刈高調節装置部の拡大正断面図
【図11】ブレーキペダル構成1の参考斜視図(イ)、その一部の断面図(ロ)、作用説明図(ハ)
【図12】ブレーキペダル構成2の参考斜視図(イ)、その一部の背面図(ロ)
【図13】ブレーキペダル構成3の参考斜視図(イ)、作用説明用側面図(ロ)
【図14】ブレーキペダル構成4の参考斜視図(イ)、作用説明図(ロ)
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1において、ブレードを縦駆動軸回りに回転することにより植生する芝草を切断処理するモーア1の構成とし、該モーア1を走行車体2の腹部に装着するミッドモーアの形態としている。モーア1のデッキ3の中央後部に集草口5を形成しており、該集草口5は、左右後輪6,6間のダクト7を経て、車体2の後端部のリヤフレーム8に取り付けるコレクタ9に連通する構成である。
【0020】
前記車体2は、前輪10,10と前記後輪6,6、前輪10,10を操舵するステアリングハンドル11、運転席12、エンジン13、フロア14等を備えている。このフロア14の下側には前後方向にわたって該エンジン13の動力を取り出す出力軸15を設け、この出力軸15の動力は自在継手を介して連結する走行伝動軸20、この走行伝動軸20の後端に接続され変速伝動機構を内装する伝動ケース21、該伝動ケース21からの動力は油圧無段変速装置(HST)22で変速して前記後輪6,6を駆動する構成としている。
【0021】
また、前記走行伝動軸20の前端側に伝動ベルト16を設けこの伝動ベルト16を介してモーア1の入力軸17を回転伝動し、この入力軸17から前記モーアデッキ3内のブレード軸18,18を駆動し、この軸18,18下端のブレード19,19は縦軸芯まわりに互いに逆回転して芝草の刈り取りを行う構成である。
【0022】
車体2の後端部の前記リヤフレーム8は、車体2下部左右の前後主フレームの後端部に装着されている。前記リヤフレーム8にはコレクタ9へのダクト7の後端部に対向する矩形の開口部(図示ぜず)を備えて、この開口部にダクト7後端部が嵌入する構成である。そしてリヤフレーム8の左右に取付ブラケット23,23を介してコレクタ9を装着する。
【0023】
コレクタ9は、パイプ材を枠組み構成するパイプフレーム26,26にて箱形状に形成し、その上下面左右面及び後面を通風性ネットNで囲う構成である。なお、コレクタ9の前面は通風性ネットNで覆わず開放部Gを形成し、前記リヤフレーム8に対応する構成である。そして、開放部Gはリヤフレーム8に接続させたダクト7の終端のダクト開口部と連通する構成としている。
【0024】
前記モーア1のブレード19,19の回転で芝草を刈り取ると共に、送風を発生させ、刈り取った芝草をダクト7を通過して終端のダクト開口部、及びコレクタ9の開放部からコレクタ9内に排出して収容することができる。そして、芝草を搬送した送風は通風性ネットNから排風する構成である。
【0025】
コレクタ9の左右一側(図例では右側、図3)の前部にコレクタ9をコレクタ回動軸24回りに回動させる回動操作レバー30を設けている。前記コレクタ9の一側(図例では右側)において、前記取付ブラケット23部にレバー支持ブラケット31を設け、前記回動操作レバー30を該ブラケット31に挿通状態にて長手方向にスライド自在に支持している。コレクタ9が刈り取った芝草を受け入れ収容する作業位置にあるときは縦長姿勢でその長手方向にスライドさせて把持部が低い位置になるよう収納状態とすることができる。そして、オペレータが回動操作レバー30を操作するときには回動操作レバー30の上部を把持して前方に回動操作する。回動操作レバー30の下部に、レバー長手方向と交差する方向に突出する係合リング32を形成する。
【0026】
前記車体側後部フレーム8とコレクタ9との間に、前記回動操作レバー30の長手方向操作に連動しうるロック機構33を構成し、回動操作レバー30の引き上げ操作に連動してロック機構33のロック用フックを固定ピンから脱するようロック解除させる。もってコレクタ9のコレクタ回動軸24回りの回動を規制し又は解除するようになっている。
【0027】
ついでモーア1の支持構成について説明する。モーア1の前記ブレード19の回転外周及び上面を囲うようにモーアデッキ3を形成し、該モーアデッキ3に、前記ブレード軸18を回転可能に支持するモーア伝動ケース35,35を枠組形成して補強構造としている。モーア1乃至モーアデッキ3の前後に前ゲージ輪36,36と後ゲージ輪37,37を設けてモーア1を接地支持可能に設けている。また、モーア1のモーアデッキ3前面と車体1の最前部フレームとの間を左右一対の前部リンク38,38によって上下昇降自在に連結し、一方前部を前記車体1側支軸39aに上下回動自在に連結され、上記前部リンク38とは平行リンクに構成された昇降リンク40の後部側をモーアデッキ3の後部上面に配置する横支軸39bに連結し、該昇降リンク40の後端部にリンク機構41を介して昇降レバー42を連結し、該昇降レバー42の操作でモーア1が昇降できる構成としている。なお、これら昇降リンク40,リンク機構41及び横支軸39は夫々車体1乃至モーアデッキ3の左右に一対に配設される。以下左または右側を意味する場合には符号にL又はRを付して区別する。
【0028】
前記左右の昇降リンク40L,40Rのうち、車体1右側の昇降リンク40Rにリンク機構41Rを連結し、前記昇降レバー42の昇降操作をモーアデッキ3乃至モーア1に連動連結する構成である。すなわち、昇降リンク40Rの後端部にリンク機構41Rのロッド41Raの下端を接続し、該ロッド41Raの上端は長孔41Rbを備えたプレート部材41Rcに連結し、この長孔41Rbに、リンク機構41Rを構成するアーム41Rdを係合する。アーム41Rdの基端部は車体1に適宜に固着したベースプレートによって補強されたホルダ43Rに軸支された筒状の横支持軸44に回動自在に支持される。該アーム41Rdの途中部には連結部材45を介して前記昇降レバー42の基部側を連結固定して、該昇降レバー42の横支持軸44回りの矢印A方向の回動操作によってアーム41Rdを直接引き上げてロッド41Rbを介して昇降リンク40Rを上昇側に連動しモーア1乃至モーアデッキ3を上昇する。逆の反矢印A方向に操作するとモーア1は下降する。
【0029】
前記昇降レバー42の筒状アーム部に細ロッド42aを挿通し、常時はレバー先端部の押圧部42bを押し上げるように付勢されており、細ロッド42aの端部は、カムプレート46の係合凹部45aに係合・離脱する揺動爪47を連動する。すなわち、前記アーム41Rdと一体的に設けられ前記横支持軸44回りに回動するカムプレート46の外周に所定箇所に設けた係合凹部46aに揺動爪47が係合・離脱すべく設けられ、係合するときはカムプレート46の動きをロックし、つまりリンク機構41R及び昇降リンク41Rの動きを規制する構成である。係合凹部46aは昇降リンク41Rによるモーア1の最上げ位置U(上昇側ロック機構)に設定できる(下降側ロック機構)。なお、前記長孔41Rbに対してアーム41Rdを係合する構成であるから、モーア1に下方からの突き上げ作用が働いても、つまり急な凸部に出くわしても長孔41Rbの範囲で上方に退避動可能な構成である。48は前記アーム41Rdに一体的に設ける副アーム部49と適宜車体1との間に配設されてリンク機構41Rのアーム41Rd先端を上昇側、すなわちモーア1上昇側に付勢するバランスバネである。
【0030】
前記車体1の左側の昇降リンク40L側に刈高調節装置50を構成する。刈高調整装置50は、前記昇降リンク40Lの後端に連結するリンク機構41Lに係合して該昇降リンク40Lの下降を規制する構成である。即ち、前記昇降リンク40Lの後端部にリンク機構41Lのロッド41Laの下端を接続し、該ロッド41Laの上端は長孔41Lbを備えたプレート部材41Lcに連結し、この長孔41Lbに、リンク機構41Lを構成するアーム41Ldを係合する。該アーム41Ldは、左側においてベースプレートにて補強されたホルダ43Lに軸支された前記横支持軸44に回動自在に支持され、該アーム41LdはL型に形成され長アーム部から略直角に延出した短アーム部の先端側に係止ピン部41Leを具備している。なお、横支持軸44の左右にリンク機構41L,41Rを装着するから、昇降レバー42の昇降操作に基づき、リンク機構の一方側リンク機構41Rを介して左右昇降リンクのうち一方の昇降リンク40Rを上下に連動し、さらにこの昇降レバー42の回動操作で横支持軸44を回動するが、この回動が他方側リンク機構41Lに作用して他方の昇降リンク40Lを上下に連動してモーア1を平行上下させる。
【0031】
前記係止ピン部41Leは、前記横支持軸44近傍に配置された調整軸51回りに回動するリンクストッパ52の高さ調整凹部53に係合してロックされ前記アーム41Ldの矢印B方向の回動を規制する構成である。リンクストッパ52の高さ調整凹部53は円周方向所定間隔に複数(図例では53a,53b…53gの7箇所)設けられ、夫々に半径長さを異ならせて形成され、リンクストッパ52の固定支持軸51回りの回動操作に基づき、係止ピン部41Leに対応する高さ調整凹部53a,53b…53gを選択設定することでモーア1乃至モーアデッキ3の下降位置が制限を受け、刈草の刈高さを設定できる構成である。即ち、上記半径長さが大きいほど前記アーム41Ldと長孔41Rbとの係合個所は上位になって、つまり刈高さが高くなる図9の状態は、係止ピン部41Leが高さ調整凹部のうち半径が最も大きい凹部53aに係止されるから、設定可能な刈高さのうち最も刈高さが高い状態を示している。逆に半径長さが小さいほど当該係合個所が下位になって刈高さは低くなる。
【0032】
上記のように、左側リンク機構41Lのアーム41Ld、係止ピン部41Le、リンクストッパ52、及びリンクストッパ52を固定支持軸51回りに回動操作する扇状の調整ダイヤル54、クリック機構55等によって刈高調節装置50を構成する。クリック機構55は、水平姿勢の前記調整軸51に組み込まれ、外側から前記調整ダイヤル54、所定間隔を置いてリンクストッパ52を固着し、さらにその内側にクリック機構55のカム板55aを固着し、左側ベースプレート43Lに該カム板55aの周縁に形成したスプロケット状の凹部55b,55b…に係合する板ばね状係止具55cを延出構成している。上記調整軸51の軸方向における所定間隔部にはL型の前記アーム41Ldの短アーム部が進入する構成としている。
【0033】
また、リンクストッパ52の一側(図例では車体側)に円弧面を呈する表示板56を取り付けて目盛等を付すことにより設定刈高さを確認できる構成としている。詳細には、フェンダ等車体のカバー部に切欠き窓部57を形成し、該窓部57に調整ダイヤル54の上部に位置する外周一部を露出状にのぞませ、同じくこの切欠き窓部57から表示部57の一部を確認できるようになし、該一部に設定刈高さに相当する表示、例えば刈高さ寸法の表示が設定ダイヤル54の回動操作とともに順次現われる構成である。58は前記アーム41Ldに一体的に設ける副アーム部59と適宜車体1との間に配設されてリンク機構41Lのアーム41Ld先端を上昇側、すなわちモーア1上昇側に付勢するバランスバネである。前記昇降レバー42側のバランスバネと相俟って横支持軸44をモーア上昇連動側に付勢し、昇降レバー42による引き上げ操作を補助できる。
【0034】
なお、左側昇降リンク40Lと右側昇降リンク40R、左側リンク機構41Lと右側リンク機構41Rは夫々長さや支点位置、リンク比、長孔41Lb,41Rb長さ等共通に構成され、車体1の右側に配置の昇降レバー42の操作に伴ないモーア1乃至モーアデッキ2は一挙に上下昇降動でき、また、昇降レバー42を操作してモーア1を最上げ位置Dに保持した後、ダイヤル54を回して所定の刈高調整操作し、再度昇降レバー42を下降側操作する。この場合モーア1は下降するが、係止ピン部41Leがリンクストッパ52の高さ調整凹部53a〜53gのいずれか対応する個所にて係合するため、該係合をもってリンク機構41Lの下降を規制するものであるから、結局モーア1はその刈高さを設定できることとなる。
【0035】
以上の実施例によれば、運転席12のオペレータは、右手で昇降レバー42を操作して最上げ位置Dにモーア1を上昇し、そのままの姿勢で右側の刈高調節装置50の調整ダイヤル54を調整軸51回りに前後方向に回動して所定の刈高さに設定しうるものであるから、油圧シリンダ機構などの手段によることなく容易にモーア1の上昇姿勢を得ることができ、調整ダイヤル54の操作も姿勢を変えることなく調整作業を行えて便利である。また、一旦係止ピン部41Leが調整凹部53a〜53gのいずれかに係合すると両者はロック状態となって不測な昇降レバー42の操作を行い得ず安全である。
【0036】
さらに、刈高調節装置50を構成するリンクストッパ52等を調整軸51にまとめて配置できるためコンパクト化が図れる。
設定ダイヤル54の外形形状を円弧状とし、円盤一部を切欠く形状としたが、このように構成するとクリック機構55等のメンテナンスが便利である。該設定ダイヤル54は外周に欠除部のない完全円盤型で構成してもよい。
【0037】
図11〜図14の例は、左右ブレーキペダルの連結構造に関する。すなわち、左・右後輪6L,6Rはデフ機構(図示せず)を介して左右の後車軸60L,60Rによって駆動される。該左右後車軸60L,60Rには夫々ブレーキ機構(図示せず)が組み込まれ、足踏み式のブレーキペダル61L,61Rによって独立的に制動できる構成である。そして、ステアリングハンドル11操作と共に、これら左右のブレーキペダル61L,61Rは別々に踏込み操作すると、左後輪6Lまたは右後輪6Rが制動されて小回り旋回を行うことができる。
【0038】
しかしながら、高速走行を予定した路上走行においては左右独立的に制動が掛かる急旋回の原因となって危険である。このため左右のブレーキペダル61L,61Rを連結状態として踏込み操作することで左右のブレーキが同時に制動できる構成とする。このため、例えば特開2000−25588号では、左右ブレーキペダルを、当該両ペダルのブレーキアーム間に跨設した連結部材の係脱で、双方が同期して踏込み可能な連動操作と各別に独立して踏込み可能な非連動操作に切換えるように構成している。ところが、この構成では、手指によって連結部材を操作するものであるから、機体を停止したり、オペレータが運転席から離れたりする必要がある。そこで、図11〜図14の例は左右ブレーキペダルを運転席に座ったまま確実かつ容易に行わせようとするものである。
【0039】
先ず図11に示す構成は、ブレーキペダル61L,61Rの基部に一体のペダルボス部62L,62Rを、車体1の一側(通常は右側)に設けたブレーキ軸63に回動自在に嵌合する。ペダルボス部62L,62Rにはそれぞれブラケット64L,64Rによってブレーキロッド65L,65Rを連結しており、該ブレーキロッド65L,65Rに前記図外ブレーキ機構を連動連結するものである。上記左右のペダルボス部62L,62Rの間にプレート状ロック部材66のボス部66aをブレーキ軸63に嵌合している。
【0040】
前記ブレーキペダル61L,61Rの上部に、足踏ペダル部67L,67Rが左右に移動自在に備えられている。即ち、対抗するこれらペダル部67L,67Rの夫々左右外側に折曲部67La,67Raあるいは隆起部を形成し靴の外側で押圧して左右方向にスライドしうる構成とし、常時はこのペダル部67L,67Rはバネ68L,68Rの作用によって左右内向きに付勢されるように構成している。なお、該バネ68L,68Rを保持する連結ピン部材69L,69Rは、その先端が、前記ロック部材66に形成するロック孔66b,66cに嵌入し得る構成である。つまり、左側の連結ピン部材69Lと右側の連結ピン部材69Rが中央のロック部材66に嵌入することにより、このロック部材66を介して左側ブレーキペダル61Lと右側ブレーキペダル61Rとが一体的になって、左側足踏ペダル67Lまたは右側足踏ペダル67Rのいずれかを踏み込むことで、左右ブレーキが同時に制動作用できる。ところが、一方の足踏ペダル部67Lあるいは67Rに足を置き、つま先側を左側右又は右側に移動させることで、靴側部が折曲部67Laまたは67Raを押して当該足踏ペダル部67Lあるいは67Rがスライド移動してこの足踏ペダル部67L又は67Rと一体の連結ピン部材69L又は69Rをロック部材66から脱して独立して踏込み回動する構成である。
【0041】
このように構成すると、いちいち手指でロック部材を操作する必要なく、足のつま先操作で連結状態での左右ブレーキ制動動作と非連結状態での左ブレーキ又は右ブレーキ単独の制動動作を行うことができる。
【0042】
図12の例は、左右のブレーキペダル61L,61Rとは別に、前記ロック部材66と同様の支持構成としたマスターブレーキペダル70を備えている。このマスターブレーキペダル70の構成は、マスターボス部70aに支持されたマスターブレーキアーム70bの頂部に左右のブレーキペダル61L,61Rの足踏ペダル部71L,71R全幅にわたる足踏ペダル部70cに形成し、かつ左右の足踏ペダル部71L,71Rの踏み面よりも靴の入る程度の空間を置いた高い位置に前記足踏ペダル部70cを配置する。また、このマスターブレーキアーム70bの途中部には左右に夫々前記左右のブレーキペダル61L,61Rから延出した受体72L,72Rにマスターブレーキペダル70側から延出した部材に衝接ボルト73L,73Rを設けて構成する。従って、左・右の足踏ペダル部71L,71Rのいずれかを操作するときは、つま先をマスターブレーキペダル70の足踏ペダル部70c下に滑り込ませて直接左側足踏ペダル部71L又は右側足踏ペダル71Rを踏込み操作する。一方左右同時にブレーキ制動するときは、マスターブレーキペダル70の足踏ペダル部70cを踏み込む。このように構成することによって、簡単な構成で確実に片側ブレーキ作動又は左右同時ブレーキ作動を実現できる。74はマスターブレーキペダル70の足踏ペダル部70cの左右側端部から垂下させて設けるガード部材で、つま先の不測の側方からの脱落による誤操作を防止する。
【0043】
図13の構成は、図12のマスターブレーキペダル70の構成を改良したものである。図13におけるマスターブレーキペダル75は、マスターブレーキアーム75aの頂部に水平保持枠75bを設け、該保持枠75bにヒンジ75c,75cを介して足踏ペダル部75dを装着する。常時はバネ76で左右のブレーキペダル61L,61Rの足踏ペダル部71L,71R上方に位置させるが、つま先で蹴り上げると該足踏ペダル部71L,71R上方を開放する。このように構成すると、不測に片ブレーキ操作をする恐れが少なくなる。
【0044】
図14の構成は、図11におけるロック部材66と同様のマスト部材77に、左右揺動自在で常時はマスト部材77の長手方向(鉛直方向)に沿う切替体78を設けている。この切替体78の下端縁78aは左右ブレーキペダル61L,61Rのブレーキアーム79L,79Rから対抗すべく互いに内向きに凸設する係止部材80L,80Rに接当する構成であり、いすれか一方のブレーキペダル61L又は61Rを踏込み操作すると、当該踏込んだ側のブレーキペダル61L(61R)のブレーキ軸回りの回動に伴い、係止部材80L(80R)も連動し、マスト部材77の切替体78の下端縁78aを係合するため、該切替体78、他方係止部材80R(80L)を介して、ブレーキペダル61R(61L)が作動する。よって左右ブレーキが制動作動する。
【0045】
前記切替体78の上部は左右ブレーキペダル61L,61Rの足踏ペダル部81L,81Rの前方に配置されつま先で左右に揺動できる切替部78bに形成されている。そして、片ブレーキを行う場合には、制動操作する側の足踏ペダル部81L(81R)に載せた足のつま先で切替体78の切替部78bを操作し相手側に近い側に揺動させると、切替体78の下端縁78aが片ブレーキを行おうとする側の係止部材80Lに偏り、ブレーキ作用を行わせない側の係止部材80Rから遠ざけて連動作用を遮断する。
【0046】
上記のように、足を乗せる足踏ペダル部のスライド移動、足乗せ先の選択設定、つま先側の切替体の作動切替等足の操作で左右同時ブレーキを行うか、いずれか一方の片ブレーキを行うかを設定できるものであるから、従来のように、手指で設定切替を行うに比較してオペレータが運転席に座ったままで切替操作できる効果がある。
【符号の説明】
【0047】
1 モーア
6 後輪
10 前輪
12 運転席
38 前部リンク
40 昇降リンク
41 リンク機構
42 昇降レバー
44 横支持軸
50 刈高調節装置
51 調整軸
52 リンクストッパ
53 調整凹部
54 調整ダイヤル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右前輪(10,10)と左右後輪(6,6)を備えた車体(2)にモーア(1)を昇降自在に装着し、オペレータの運転席(12)を備えた芝刈機において、前記モーア(1)を、車体(1)に対して前部リンク(38)と、該前部リンク(38)と4辺リンクを形成すべく設ける左右一対の昇降リンク(40L,40R)とにより連結し、これら左右一対の昇降リンク(40L,40R)と車体(2)側の横支持軸(44)との間には夫々リンク機構(41L,41R)を設け、横支持軸(44)回りにリンク機構(41L,41R)を回動することにより、昇降リンク(40L,40R)を介してモーア(1)を平行上下動する構成とし、前記運転席(12)の左右一側には、前記横支持軸(44)を回動させる昇降レバー(42)を備え、前記運転席(12)の左右他側には刈高調節装置(50)の調整ダイヤル(54)を設けた芝刈機。
【請求項2】
前記左右の昇降リンク40L,40Rには夫々リンク機構41L,41Rを対応させて設け、前記横支持軸44の両側に前記リンク機構の一方側リンク機構41R及び他方リンク機構41Lを夫々連結し、該一方側のリンク機構41Rに昇降レバー42を連結し、他方側のリンク機構41Lの近傍に調整ダイヤル54を軸支する調整軸51を設け、この調整軸51には調整ダイヤル54の操作によりリンク機構41Lを係合し該昇降リンク40Lの横支持軸44回りの下降側回動を異なるモーア1高さで規制するリンクストッパ52を設けてなる請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記調整軸(51)のリンクストッパ(52)の円周方向に高さ調整凹部(53)を形成し前記他方側リンク機構(41L)を構成するアーム部(41Ld)に設けた係止ピン部(41Le)を係合させて他方側リンク機構(41L)を規制する構成とし、前記高さ調整凹部(53)は円周方向所定間隔に複数凹部(53a,53b…53g)を調整軸(51)中心からの距離を夫々異ならせて形成してなる請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
昇降レバー(42)をモーア(1)の略最上げ状態で保持する上昇側ロック機構を備えた請求項1〜請求項3のいずれか1に記載の芝刈機。
【請求項5】
調整軸(51)にはリンクストッパ(52)を一体的に設けると共に、調整ダイヤル(54)及び調整軸(51)の回転を規制するクリック機構(55)を設けた請求項1〜請求項4のいずれか1に記載の芝刈機。
【請求項6】
リンクストッパ52の一側に刈高さ表示する表示板56を備えた請求項5に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−178983(P2012−178983A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42247(P2011−42247)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】