説明

芯材、地中連続壁、ソイルセメント壁、地中壁杭、ソイルセメント壁杭、場所打ちコンクリート杭

【課題】経済性、施工性がよく、地震時などに軟弱層にあたる部分に作用する大きな水平方向荷重に対する耐力を備えた芯材を提供する。
【解決手段】ソイルセメント壁10は、その一部に、下端が支持層3まで到達し、支持層3内のソイルセメント13が高強度ソイルセメント16で構成されている壁杭部20を備え、壁杭部20には、横方向に並ぶように配置された鉛直方向に延びる複数のH型鋼12と、少なくとも軟弱層4に相当する位置に設けられた、これらH型鋼12を壁面両側で連結する第1の鋼板14とを備える芯材11が埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎構造の一部として用いることのできるソイルセメント壁、ソイルセメント壁杭、地中連続壁、地中壁杭、場所打ちコンクリート杭及びこれらに埋設される芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の地下構造物を施工する場合は、地下構造物の外周に山留め壁を施工し、山留め壁で囲まれた内部を掘削していく工法が広く実施されている。山留め壁としては、ソイルセメント柱列壁や地中連続壁などが一般的であり、これらの山留め壁は建物の構築後も撤去することなく、建物の外周の地中に埋設したまま残置している。
【0003】
ところで、従来、このような山留め壁には基礎としての機能を期待していない。このため、建物の外周には山留め壁とは別に基礎杭を設けなければならず、これは非効率である。そこで、例えば特許文献1には、建物外周の要所位置において、山留め壁であるソイルセメント柱列壁に埋設されたH鋼芯材の下端を支持層に到達するように形成し、ソイルセメント柱列壁の一部を基礎構造として用いる方法が記載されている。
【特許文献1】特許第2736542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の方法では、ソイルセメント柱列壁の掘削孔一つ分のソイルを支持層まで到達させ、その中心に一本のH型鋼を埋設することで、ソイルセメントの柱を形成し、基礎杭の代わりとして用いている。しかし、地震時などには、ソイルセメント柱列壁には軟弱層にあたる部分に水平方向に大きな荷重が作用するが、上記の構成では、水平方向荷重に対して、中心にH型鋼が埋設された掘削孔一つ分のソイルで抵抗しなければならず、充分な水平方向耐力を得ることは難しい。
また、上記の構成では、H型鋼に伝達された建物の荷重をソイルセメントに伝達する機構が設けられておらず、また、ソイルセメントの柱では鉛直荷重に対する強度が不充分であるため、建物の鉛直荷重を負担するために充分な鉛直方向の強度を得ることは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、経済性、施工性がよく、地震時などに軟弱層にあたる部分に作用する水平方向荷重に対して充分な耐力を備える地中構造物を実現し、さらには、この地中構造物を基礎構造の一部として鉛直方向荷重を負担させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の芯材は、地中連続壁、ソイルセメント壁又は場所打ちコンクリート杭などの地中構造物に埋設されて用いられる芯材であって、横方向に並ぶように配置された鉛直方向に延びる複数の鉄骨部材と、少なくとも軟弱層に相当する位置に設けられた、これら鉄骨部材を壁面両側で連結する鋼材とを備えることを特徴とする。本発明によれば、鉄骨部材を鋼板で連結することにより、軟弱層内を伝播する横揺れに対して、複数の鉄骨部材が一体となり抵抗することができる。
【0007】
上記の芯材において、前記複数の鉄骨部材は下端が支持層まで到達し、前記支持層に相当する位置の表面に凸部を有してもよい。また、前記複数の鉄骨部材は下端が到達し、少なくとも前記支持層に相当する位置に設けられた前記複数の鉄骨部材を壁面両側で連結する横方向に延びる第2の鋼材を備えてもよい。また、 前記複数の鋼材の少なくとも一部は、水平方向に対して傾斜して設けられていてもよい。また、前記鉄骨部材はH型鋼であり、前記H型鋼のウェブ表面にスタッド又は凸部あるいはそれらの両方が取り付けられていてもよい。
【0008】
また、本発明の地中連続壁は、上記の芯材が埋設されていることを特徴とし、また、本発明のソイルセメント壁は、上記の芯材が埋設されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のソイルセメント壁は、軟弱層を含んだ地盤の液状化を防止すべく建物を取り囲むように地中に設けられるソイルセメント壁であって、上記の芯材が埋設されていることを特徴とする。上記のソイルセメント壁であって、少なくとも軟弱層のソイルセメントが高強度ソイルセメントにより構成されていてもよい。このような構成によれば、ソイルセメント壁に囲まれた軟弱層を堅固に拘束することにより、軟弱地盤を構成する土砂に生じるせん断歪みを抑え、地盤の液状化を防止できる。
【0010】
また、本発明の地中壁杭は、上記の芯材が埋設され、下端が支持層まで到達していることを特徴とする。また、本発明のソイルセメント壁杭は、上記の芯材の埋設されたソイルセメント壁杭であって、下端が支持層まで到達し、支持層内のソイルセメントが高強度ソイルセメントで構成されていることを特徴とする。また、本発明の場所打ちコンクリート杭は、上記の芯材が埋設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄骨部材の軟弱層に相当する位置において、鉄骨部材と鋼材とがトラス状を呈するように、鉄骨部材を鋼板により連結することにより、軟弱層にあたる部分に水平方向の荷重が作用しても、この荷重に対して複数の鉄骨部材が一体となって抵抗することができる。これにより、地震時などに軟弱層にあたる部分に作用する水平方向荷重に対する耐力を向上することができる。また、本発明の芯材に伝達された建物の荷重をソイルセメントに確実に伝達することができるため、この芯材を用いることで地中壁を基礎構造の一部として用いることができる。これにより、建物の外周近傍の基礎杭の一部を減らすことができ、基礎杭の施工にかかっていたコストや施工期間を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のソイルセメント壁の一実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、本実施形態ではソイルセメント壁を例として説明するが、本発明は、ソイルセメント柱列壁や地中連続壁などにも適用することができる。
図1は、ソイルセメント壁10の配置を示す水平方向断面図であり、図2は、図1におけるII−II’断面図である。また、図3(A)は、図1におけるIII−III’断面図であり、同図(B)は、IV−IV’断面図であり、同図(C)は、図1におけるV−V’断面図である。図2及び図3に示すように、本実施形態のソイルセメント壁10は、土砂等からなる軟弱層4と、強固な地盤からなる支持層3とを備え、液状化を起こす可能性を有する地盤に設けられるものである。ソイルセメント壁10は、建物2の周囲を取り囲むように設けられており、さらに、その下端は液状化を起こす可能性のある軟弱層4よりも深くまで到達している。また、ソイルセメント壁10は、適宜間隔をあけて、下端が支持層3まで到達するように形成された壁杭部20を備える。
【0013】
図4は、壁杭部20の詳細な構成図であり、同図(A)は水平方向断面図、同図(B)は鉛直方向断面図を示す。同図に示すように、壁杭部20は、ソイルセメント13と、ソイルセメント13内に埋設された芯材11とで構成される。壁杭部20を構成するソイルセメント13は、支持層3及び軟弱層4に相当する部分が高強度ソイルセメント16により構成され、それ以外の部分は、普通強度のソイルセメントにより構成される。なお、高強度ソイルセメント16は、普通強度のソイルセメントに比べて土砂に対するセメント量の割合を増加させることで形成され、4[N/mm]以上の強度を有するソイルセメントである。ただし、一般的には高強度ソイルセメントの強度の上限は20[N/mm]程度である。
【0014】
また、図4に示すように、芯材11は、横方向に並べられた鉛直方向に延びる複数のH型鋼12と、これら複数のH型鋼12を軟弱層4にあたる部分で連結するように、H型鋼12の両フランジ面12Aに取り付けられた第1の鋼板14と、H型鋼12を支持層3にあたる部分で連結するように、H型鋼12の両フランジ面12Aに取り付けられた第2の鋼板15とを備える。第1の鋼板14は、水平方向に対して傾斜した状態でH型鋼12に取付けられており、傾斜の向きが交互に反転することでトラス状の構成を呈している。このように第1の鋼板14が傾斜して設けられることで、第1の鋼板14が筋かいのように働き、軟弱層4内での壁杭部20の水平方向の耐力が向上されている。なお、図4(B)の例では、2本の鋼板14が中央のH型鋼12への取付位置にて交差するようになっているが、これに限らず、例えば後述する図12に示すような構成としてもよい。また、支持層3内の第2の鋼板15は、H型鋼12に互いに離間する方向に力が作用した場合に、これに対して抵抗することができるように略水平方向に取り付けられている。
【0015】
図5は、芯材11を構成するH型鋼12を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は、鉛直方向断面図、(C)は正面図である。同図に示すように、H型鋼12のウェブ12Bの表面には、水平方向に延びるように凸部18が形成されている。この凸部18は、例えばアングル材をH型鋼12のウェブ12Bの表面に水平に溶接することにより形成することができる。このように形成された凸部18は、その上方から頂部に向けて高さが次第に増加し、頂部から下方に向けて高さが次第に減少する構成となる。
【0016】
通常のソイルセメント壁(つまりソイルセメント壁10の壁杭部20以外の部分)は、地盤を掘削することで発生した掘削土に掘削機の先端より噴出されたセメントミルクを混合撹拌してソイルセメントを形成し、このソイルセメントが硬化する前に芯材となるH型鋼12を挿入することにより構築される。
【0017】
本実施形態のソイルセメント壁10の壁杭部20を構築する場合には、支持層3に相当する部分の土砂を掘削する際に、掘削した土砂に混合するセメントミルクのセメント量を増加させる。これにより、壁杭部20の支持層3に相当する部分のソイルセメントを高強度ソイルセメントとすることができる。なお、芯材11は、予め、地上において、複数のH型鋼12を第1の鋼板14及び第2の鋼板15により連結しておき、これをソイルセメント13に埋設すればよい。
【0018】
ここで、上述したように、H型鋼12の凸部18はその上下から頂部に向けて次第に高さが増加する形状であるため、芯材11をソイルセメント13内に挿入する際に抵抗とならず、容易に挿入することができるとともに、凸部18の下部に空気が入り込むことを防止し、さらに、ソイルセメント13が硬化する際に生じるブリージングやスライムが凸部18の下部に残留するのを防止できる。
【0019】
図6は、壁杭部20に作用する力が芯材11により支持層3に伝達される力の流れを示す図である。同図に示すように、建物2の荷重は鉛直下向きに壁杭部20の芯材11のH型鋼12に伝達される。この荷重により、表面に設けられた凸部18と高強度ソイルセメント16との間に支圧力が作用し、この支圧力により建物2の鉛直荷重が高強度ソイルセメント16に伝達される。高強度ソイルセメント16は支持層3まで到達しているため、建物2の荷重は高強度ソイルセメント16から支持層3に伝達される。
【0020】
なお、本実施形態ではH型鋼12の表面に凸部18を設ける構成としているが、凸部18に変えてスタッド17を設ける構成とすることもできる。かかる構成によっても、スタッド17により、高強度ソイルセメント16とH型鋼12とが一体となるため、H型鋼12に作用する鉛直荷重を高強度ソイルセメント16に伝達することができる。
【0021】
このように、本実施形態のソイルセメント壁10は支持層3まで達する壁杭部20を備えるとともに、この壁杭部20に埋設されたH型鋼12が凸部18を有することで、基礎杭と同様に、建物2の荷重を支持層3に伝達することができる。なお、H型鋼12には、支圧力により互いに離れる方向に力が作用するが、H型鋼12同士が第2の鋼板15により連結されているため、この力に抵抗することができる。
【0022】
なお、上記の実施形態では、H型鋼12の表面に凸部18のみを設ける構成としたが、これに加えて、図7に示すように、スタッド17を打設してもよい。上述したように、H型鋼12の凸部18において支圧力が発生し、この支圧力によりH型鋼12と高強度ソイルセメント16とを離間させる方向に力が作用するが、スタッド17によりH型鋼12と高強度ソイルセメント16とが一体化することで、この力に抵抗することができる。すなわち、スタッド17を設けることにより、凸部18の支圧力によってH型鋼12と高強度ソイルセメント16を離間させる向きの力を打ち消すことができる。
【0023】
また、地震動などにより地盤が振動すると、ソイルセメント壁10の軟弱層4に相当する部分に大きな水平荷重が作用する。これに対し、本実施形態のソイルセメント壁10は、複数のH型鋼12が軟弱層4にあたる位置で第1の鋼板14により連結されているので、水平方向耐力を向上することができる。さらに、第1の鋼板14が傾斜するように取り付けられており、複数のH型鋼12と第1の鋼板14とでトラス状を呈しているため、特に面内方向の剛性を向上することができる。
【0024】
このように、本実施形態のソイルセメント壁10は支持層3まで達する壁杭部20を備えるとともに、この壁杭部20に埋設されたH型鋼12が凸部18を有することで、基礎杭と同様に、建物2の荷重を支持層3に伝達することができる。なお、H型鋼12には、支圧力により互いに離れる方向に力が作用するが、H型鋼12同士が第2の鋼板15により連結されているため、この力に抵抗することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のソイルセメント壁10によれば基礎杭と同様に建物2の鉛直荷重を支持層3に伝達することができるため、基礎構造の一部として用いることができる。以下、本実施形態のソイルセメント壁10を用いた基礎構造を説明する。
【0026】
図8は、比較例として、従来の基礎構造30を示す断面図である。また、図9は、本実施形態のソイルセメント壁10を用いた基礎構造40を示す図である。図8に示すように、従来の基礎構造30では、所定の間隔ごとに基礎杭31が設けられており、これらの基礎杭31を介して建物2の鉛直荷重を支持層3に伝達している。
【0027】
これに対して、図9に示すように、本実施形態の基礎構造40は、基礎杭41に加えて、建物2の外周にソイルセメント壁10を備える。上述したように、ソイルセメント壁10の壁杭部20は建物2の鉛直荷重を支持層3に伝達することができる。したがって、従来の基礎構造30において、建物2の外周近傍の基礎杭31が負担していた荷重をソイルセメント壁10の壁杭部20に負担させることができるため、建物2の外周近傍の基礎杭41を省略することができる。
【0028】
このように、本実施形態のソイルセメント壁10を備えた基礎構造40によれば、従来の基礎構造30における外周近傍の基礎杭を省略することができるため、費用の削減及び工期の短縮が可能となる。また、根切りを行う際は、ソイルセメント壁10を山留め壁として用い、ソイルセメント壁10の内部の掘削を行うことができる。そのため、仮設である山留め壁を再利用することができるため、工費を削減することが可能である。
【0029】
また、上述したように、本実施形態のソイルセメント壁10は、軟弱層4あたる深さに高強度ソイルセメント16が配置されており、ソイルセメント壁10で囲まれた軟弱層4の土砂を堅固に拘束することができるため、地震動による軟弱層4のせん断歪みが減少し、液状化を防ぐことができる。ソイルセメント壁10は、液状化対策として従来用いられていた地中連続壁などに比べて、構築するために必要なコストを安く抑えることができるため、コストを削減することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、本発明を液状化を起こす可能性を有する軟弱層を含む地盤に適用した場合について説明したが、本発明は通常の地盤に用いることもでき、この場合、ソイルセメント壁に支持層まで到達するような壁杭部を設け、壁杭部の支持層内のソイルセメントを高強度ソイルセメントで構成するとともに、上述した芯材を埋設すればよい。ソイルセメント壁をこのような構成とすることにより、基礎の一部としても用いることができる。
【0031】
また、本発明の芯材は、ソイルセメント柱列壁や地中連続壁に壁杭部を設けた場合にも用いることができ、壁杭部に本発明の芯材を埋設することにより、ソイルセメント柱列壁や地中連続壁を基礎構造の一部として用いることができる。
【0032】
また、本発明の芯材は壁杭部が設けられていないソイルセメント壁に埋設してもよい。また、本発明の芯材が適用できるのは上述したソイルセメント壁に限られず、ソイルセメント柱列壁や、地中連続壁にも適用することができる。また、本発明の芯材は、独立した構成の杭や壁杭にも用いることができ、ソイルセメント柱列壁杭、ソイルセメント壁杭、地中壁杭、及び場所打ちコンクリート杭にも用いることができる。
【0033】
また、上記の実施形態では、凸部18をH型鋼12の表面にアングル材を溶接することにより形成するものとしたが、これに限らず、例えば、H型鋼12の表面に溝形、等辺の山形、不等辺山形、不等辺不等厚、I型、その他の一般形鋼や波板などを取付けることにより凸部を設けても良く、要するに、高強度ソイルセメント16との間で支圧力が働き、H型鋼12に作用する鉛直方向荷重を高強度ソイルセメント16に伝達することができればよい。
【0034】
また、上記の実施形態では、芯材11を構成する鉄骨部材としてH型鋼12を用いているが、これに限らず、鋼管などを用いてもよく、鋼管の表面に凸部を設けることにより同様の効果が得られる。
【0035】
また、本実施形態では、壁杭部20の支持層3にあたる部分のソイルセメント13のみを高強度ソイルセメント16としたが、これに限らず、例えば、建物の荷重が大きい場合には、支持層にあたる部分に加えて、その上方の部分のソイルセメントも高強度ソイルセメントとしてもよい。図10は建物2の荷重が大きい場合の壁杭部20の構成を示す図であり、(A)は壁杭部20を横切る方向の断面図であり、(B)は壁杭部20に沿った方向の断面図である。また、図11は、壁杭部20を拡大して示す図である。同図に示すように、建物2の荷重が大きい場合には、壁杭部20の支持層3にあたる部分及び支持層3の上部にあたる部分(すなわち軟弱層4の下部にあたる部分)を構成するソイルセメント13を高強度ソイルセメント16とするとともに、この部分に埋設された芯材11を構成するH型鋼12の表面に凸部18を設ける構成とすればよい。かかる構成によれば、図11に示すように建物2の荷重が大きい場合でも、支持層3以外の部分でも凸部18においても支圧力が発生するため、H型鋼12と高強度ソイルセメント16との間でより大きな荷重を伝達することが可能となる。このため、建物2の荷重が大きい場合でも、これを支持層3まで確実に伝達することができる。
【0036】
また、このような場合には、支圧力によりH型鋼12の支持層3にあたる部分よりも上部にもH型鋼12同士を離間させる方向に力が働くため、図11に示すように、H型鋼12の支持層3の上部にあたる部分の両フランジ面にも第2の鋼板15を設けるとよい。
【0037】
なお、上記の実施形態では、第1の鋼板同士が互いに交差するように取り付けた場合について説明したが、第1の鋼板の取り付け方はこれに限られず、図12の(A)〜(D)に示すような取付け方としてもよく、要するに、一部の第1の鋼板が水平方向に対して傾斜するように取り付けられ、複数の鉄骨部材が一体となって水平方向荷重に抵抗することができればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ソイルセメント壁の配置を示す水平方向断面図である。
【図2】図1におけるII−II’断面図である。
【図3】(A)は、図1におけるIII−III’断面図であり、(B)は、図1におけるIV−IV’断面図であり、(C)は、図1におけるV−V’断面図である。
【図4】壁杭部の詳細な構成図であり、同図(A)は水平方向断面図であり、同図(B)は鉛直方向断面図である。
【図5】、芯材を構成するH型鋼を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は、鉛直方向断面図、(C)は正面図である。
【図6】、壁杭部に作用する力が芯材により支持層に伝達される力の流れを示す図である。
【図7】芯材に用いられる、表面にスタッドの取り付けられたH型鋼を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)は正面図である。
【図8】従来の基礎構造を示す断面図である。
【図9】本実施形態の基礎構造を示す断面図である。
【図10】建物の荷重が大きい場合の壁杭部の構成を示す図であり、(A)は壁杭部20を横切る方向の断面図であり、(B)は壁杭部に沿った方向の断面図である。
【図11】建物の荷重が大きい場合の壁杭部の構成を示す図である。
【図12】芯材における第1の鋼板の取付け方の例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
2 建物 3 支持層
4 軟弱層 10 ソイルセメント壁
11 芯材 12 H型鋼
13 ソイルセメント 14 第1の鋼板
15 第2の鋼板 16 高強度ソイルセメント
17 スタッド 18 凸部
20 壁杭部 22 鋼材
30 従来の基礎構造 31 基礎杭
40 基礎構造 41 基礎杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中連続壁、ソイルセメント壁又は場所打ちコンクリート杭などの地中構造物に埋設されて用いられる芯材であって、
横方向に並ぶように配置された鉛直方向に延びる複数の鉄骨部材と、
少なくとも軟弱層に相当する位置に設けられた、これら鉄骨部材を壁面両側で連結する鋼材とを備えることを特徴とする芯材。
【請求項2】
前記複数の鉄骨部材は下端が支持層まで到達し、前記支持層に相当する位置の表面に凸部を有することを特徴とする請求項1記載の芯材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の芯材であって、
前記複数の鉄骨部材は下端が支持層まで到達し、少なくとも前記支持層に相当する位置に設けられた前記複数の鉄骨部材を壁面両側で連結する横方向に延びる第2の鋼材を備えることを特徴とする芯材。
【請求項4】
前記複数の鋼材の少なくとも一部は、水平方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の芯材。
【請求項5】
前記鉄骨部材はH型鋼であり、前記H型鋼のウェブ表面にスタッド又は凸部あるいはそれらの両方が取り付けられていることを特徴とする請求項1から4何れかに記載の芯材。
【請求項6】
請求項1から5何れかに記載の芯材が埋設されていることを特徴とする地中連続壁。
【請求項7】
請求項1から5何れかに記載の芯材が埋設されていることを特徴とするソイルセメント壁。
【請求項8】
軟弱層を含んだ地盤の液状化を防止すべく建物を取り囲むように地中に設けられるソイルセメント壁であって、
請求項1から5何れかに記載の芯材が埋設されていることを特徴とするソイルセメント壁。
【請求項9】
請求項8記載のソイルセメント壁であって、少なくとも軟弱層のソイルセメントが高強度ソイルセメントにより構成されていることを特徴とするソイルセメント壁。
【請求項10】
請求項1から5何れかに記載の芯材が埋設され、下端が支持層まで到達していることを特徴とする地中壁杭。
【請求項11】
請求項1から5何れかに記載の芯材の埋設されたソイルセメント壁杭であって、
下端が支持層まで到達し、支持層内のソイルセメントが高強度ソイルセメントで構成されていることを特徴とするソイルセメント壁杭。
【請求項12】
請求項1から5何れかに記載の芯材が埋設されたことを特徴とする場所打ちコンクリート杭。


【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−2230(P2008−2230A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175289(P2006−175289)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】