説明

芯鞘型機能繊維

【課題】 紡糸安定性、表示素子の安定性、繊維の安定性などが向上した情報表示装置の用途や表示機能や装飾機能を有する衣料、壁紙、幕などの用途に利用可能な機能繊維を提供する。
【解決手段】 鞘部が合成樹脂(A)、芯部が分散溶媒(B)中に表示素子(C)を分散させた分散液(D)からなる芯鞘型繊維であり、前記(A)、(B)、(C)及び(D)が下記(イ)〜(ニ)の要件を満足することを特徴とする芯鞘型機能繊維。
(イ):分散溶媒(B)又は分散液(D)による合成樹脂(A)の膨潤度が5%未満である。
(ロ):合成樹脂(A)の可視光透過率が70%以上である。
(ハ):合成樹脂(A)の臨界表面張力γcと、分散溶媒(B)又は分散液(D)の表面張力γの差が20mN/m以下である。
(ニ):表示素子(C)が、印加電圧応答性を有する少なくとも2色の回転粒子、無機粒子、有機粒子、コレステリック液晶のいずれかからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューター、携帯電話や電子ブックのディスプレイなどの情報表示装置の用途、表示機能や装飾機能を有する衣料、壁紙、幕などの用途に利用可能な芯鞘型機能繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型かつ軽量で、携帯性に優れた表示装置の開発に注目が集まり、なかでも、電界により光学的吸収特性や光学的反射特性を変化させて像表示を行い、紙と同様なフレキシビリティと電子情報を容易に書き換えることが可能な機能とを有する表示装置、いわゆる電子ペーパーと呼ばれる表示装置の開発研究が盛んになっている。
その中で、よりフレキシビリティを高め、衣料素材や壁紙素材などとして広く利用が可能とするために、中空繊維状物中に表示素子を含有させる中空繊維方式が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
特許文献1では、中空繊維を製造後に、中空繊維の中空部に表示素子を充填させるものであるため、繊維の壁厚が厚くなり、かつ製造方法が複雑な点が問題であり、特許文献2では、紡糸段階で共押出法によって中空部に泳動粒子分散流体を含有させるため、製造工程が少なくできるものの、紡糸安定性の向上が課題があり、また、特許文献3では、紡糸段階で共押出法によって中空部に泳動粒子分散流体を含有させ、かつ、紡糸時に延伸することも開示されているが、繊維形成材料と泳動粒子分散流体との相互作用が適切でないため、繊維斑発生の低減、表示素子の安定性、中空繊維の安定性の向上などの課題を解決することが必要であった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−202536号公報
【特許文献2】特開2003−280049号公報
【特許文献3】特開2004−177902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決しようとするものであり、紡糸安定性、表示素子の安定性、繊維の安定性などが向上した情報表示装置の用途や表示機能や装飾機能を有する衣料、壁紙、幕などの用途に利用可能な機能繊維を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するために、以下の構成を採用するものである。
(1)鞘部が合成樹脂(A)、芯部が分散溶媒(B)中に表示素子(C)を分散させた分散液(D)からなる芯鞘型繊維であり、前記(A)、(B)、(C)及び(D)が下記(イ)〜(ニ)の要件を満足することを特徴とする芯鞘機能繊維。
(イ):分散溶媒(B)又は分散液(D)による合成樹脂(A)の膨潤度が5%未満である。
(ロ):合成樹脂(A)の可視光透過率が70%以上である。
(ハ):合成樹脂樹脂(A)の臨界表面張力γcと、分散溶媒(B)又は分散液(D)の表面張力γの差が20 mN/m以下である。
(ニ):表示素子(C)が、印加電圧応答性を有する少なくとも2色の回転粒子、無機粒子、有機粒子、コレステリック液晶のいずれかからなる。
(2)繊維の外径変動率が30%未満で、かつ外壁厚変動が30%未満であることを特徴とする前記(1)に記載の芯鞘型機能繊維。
(3)前記(1)に記載の合成樹脂(A)と分散液(D)を2重円筒型ノズルより同時に押し出す際に、分散液及び/又は紡出糸にに超音波を照射することによって表示素子(C)の沈降を抑制しつつ紡出し、未延伸又は延伸後に冷却固化して芯鞘型繊維を得ることを特徴とする芯鞘型機能繊維の製造方法。
(4)前記(1)〜(2)のいずれかに記載の芯鞘型機能繊維を用いたシート状物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、芯鞘繊維外径の変動が小さくかつ透明性の高い表示液体を内封した機能繊維を安価に製造することが可能となる。本発明では、同心2重円筒型ノズルを使用して、芯鞘繊維の外壁となる合成樹脂(A)と、表示素子として機能する分散液(D)を同時に押し出し、さらに紡糸工程での紡糸ドラフトによって芯鞘繊維を10〜100μmの外径まで細くすることが1段の工程で可能であり、従来の技術に比較して飛躍的にコストを低減することができる。また、分散液(D)に対して好適な樹脂(A)を選定することにより、安定した紡糸が可能となるため、紡糸中での破断の頻度が低減できるため、さらにコスト的な優位性が高くなる。さらに同時に、安定した紡糸が可能となる効果により、糸の外径の変動が小さくなる。
本発明の機能性繊維においては、外径および外壁厚のムラが低減されているために、視認性の高いディスプレイを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、芯鞘繊維の鞘部を構成する合成樹脂(A)としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−ペンテンなどのα−オレフィンの単独重合体もしくは相互共重合体またはこれらのα−オレフィンと他のモノマ−の共重合体からなるポリオレフィン系合成樹脂のほか、ナイロン等のポリアミド系合成樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト等のポリエステル系合成樹脂、ポリ塩化ビニル系合成樹脂、ポリ塩化ビニリデン−ビニル共重合体系合成樹脂等が挙げられ、これら2種類以上をブレンドしたものであっても良い。またオンラインで重合可能な紫外線硬化樹脂等も好ましく用いることができる。
【0008】
分散溶媒(B)としては、芯鞘繊維の鞘部や表示素子を膨潤させない場合であれば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類や、シリコンオイルなどの油脂類などを単独または適宜混合したものや合成樹脂、合成ワックスなどの合成物や、天然ワックス、シリコーンオイル、フッ素オイル等の公知の溶液化合物などを用いることができる。
【0009】
表示素子(C)としては、印加電圧応答性を有する少なくとも2色の回転粒子、無機粒子、有機粒子、コレステリック液晶のいずれかからなる。
例えば、酸化チタン、カーボンブラック、紺青又はフタロシアニングリーンや周知のコロイド粒子のほか、種々の有機および無機顔料、染料、金属粉、ガラスあるいは樹脂等の微粉末、コレステリック液晶などを使用できる。これらの内の1種類のみを用いることも可能であり、2種類以上、特に白粒子、黒粒子を用いること、赤、青、緑の3色を用いること、さらには白、黒、赤、青、緑の5色の粒子を用いることも可能である。
【0010】
電気泳動粒子の粒径は、0.01〜10μmが好ましい。粒径をこのような範囲とすることで好適に分散させることができ、移動速度も実用上問題のない速度とすることが出来る。
また、泳動粒子の表面電荷量の制御や分散性を高める目的で、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等を添加してもよい。
【0011】
高分子分散型のコレステリック液晶としては、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系などの正の誘電率異方性を有するネマチック液晶、またはこれらの混合物に、エステル誘導体、シアノビフェニル誘導体、ビスアニール誘導体などの、不斉炭素を有するカイラル剤を添加した材料を用いることができる。
コレステリック液晶の螺旋ピッチは、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量で調整し、例えば、選択反射光の中心波長が、それぞれ400〜500nm、500〜600nm、600〜700nmの範囲内になるようにできるものである。
【0012】
本発明においては、上記の各材料(表示素子を除く)は、さらに以下の(イ)〜(ハ)の関係を満足することが必要である。
(イ):芯鞘繊維の鞘部を構成する合成樹脂(A)は、分散溶媒(B)又は分散液(D)による合成樹脂(A)の膨潤度が5%未満であることが必要である。好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満である。膨潤度が5%を超えると、安定な防止が困難であり、紡糸された繊維の安定性も悪くなる。
なお、本発明における膨潤度とは、分散溶媒(B)の合成樹脂(A)に対する吸収性の程度を示すものであり、合成樹脂(A)の平板を分散溶媒(B)又は分散液(D)に浸漬し、40℃で24時間放置後、平板を取り出して、表面に付着した分散溶媒を洗浄除去した後、平板に吸収された分散溶媒の質量を求め、平板の質量増加率で膨潤度を評価したものである。
【0013】
(ロ):合成樹脂(A)の可視光透過率が70%以上であることが必要である。可視光透過率が70%未満であると、視認性に優れたディスプレイにすることが困難である。好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0014】
(ハ):合成樹脂(A)の臨界表面張力γcと、分散溶媒(B)の表面張力γの差が20 mN/m以下である。
表面張力γの差が20 mN/mを超えると、繊維の外径変動や外壁厚変動が大きくなり、紡糸安定性が低下する。好ましくは15 mN/m以下である。
【0015】
また、紡糸安定性をよくするためには、合成樹脂(A)の融点(℃)と分散溶媒(B)や分散液(D)の沸点(℃)を考慮することも重要であり、合成樹脂(A)の融点(℃)−20℃<分散溶媒(B)又は分散液(D)沸点(℃)である事が好ましい。
合成樹脂(A)の融点が、分散溶媒(B)の沸点よりも20℃以上低くないと、分散溶媒(B)が沸騰するなどして紡糸が困難になることがある。
【0016】
本発明において、繊維の外径変動率が30%未満で、かつ外壁厚変動が30%未満であることが好ましい。
【0017】
本発明の芯鞘型繊維は、上記の関係を満足する材料を合成樹脂(A)が鞘部、分散液(D)が芯部となるように、2重円筒型ノズルを用いて紡糸することにより製造することができる。
合成樹脂(A)が鞘部、分散液(D)が芯部となるように、2重円筒型ノズルより同時に押し出す際に、分散液及び/又は紡出糸に超音波を照射すると、表示素子(C)の沈降を抑制することができ、かつ、押し出し後には芯鞘型繊維を延伸しながらあるいは延伸後に冷却固化することが好ましい。
【0018】
得られた本発明の繊維は、それ自体であるいは、汎用の繊維と混紡、混繊、交織、交編などで混用することによって、織物、編物、不織布などのシート状物とすることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例によってさらに詳しくこの発明を説明するが、これら実施例によって本発明は限定されるものではない。
【0020】
(膨潤度の測定)
合成樹脂(A)の50mm×50mmで厚さ1mmの平板を分散溶媒(B)又は分散液(D)に浸漬し、40℃で24時間放置後、平板を取り出して、表面に付着した分散溶媒を洗浄除去した後、平板に吸収された分散溶媒の質量を求め、平板の質量増加率で膨潤度を評価した。
◎:質量増加率2%未満
○:質量増加率2〜5%未満
△:質量増加率5〜20%未満
×:質量増加率20%以上
【0021】
(融点の測定)
鞘部に用いる合成樹脂(A)を、片刃ナイフなどを用いて0.1mm程度の大きさに細かく裁断した後、5mgを計量しアルミ製の容器に充填する。アルミ製容器は使用する示差走査型熱量計(DSC)に専用のものを用いる。DSCは例えばパーキンエルマー社製DSC7や同社Pyrisなどを用いることができる。室温から測定を開始し、10℃毎分の昇温速度で温度を上昇させて試料のDSC曲線を測定する。測定したDSC曲線より、合成樹脂(A)の結晶融解に起因する吸熱ピークのピークトップの温度を融点と定義する。
【0022】
(可視光透過率の測定)
本発明の機能性繊維を、片刃ナイフで繊維軸に対して45度方向に切削して両断する。切断面に付着した分散液(D)はろ紙などで除去し、光学顕微鏡用のスライドガラスとカバーガラスの間に挟みこむ。スライドグラスを透過型光学顕微鏡(Nikon社:Optiphoto(R))にセットし、45度に切削したことで露出した外壁内面の画像を画像記録装置(Nikon デジタルカメラ DXm1200)にて記録する。その際に、外壁内面の法線が光学顕微鏡の光軸にほぼ平行になっている部分のみを記録する。さらに、外壁内面の画像を記録したものと同じ光源条件を用いて直ちに外壁の無い部分(すなわちスライドグラスとカバーグラスのみを透過した光による)画像を記録する。外壁の透過像、ガラスのみの透過像をそれぞれ任意の場所で5ヶ所記録し、それぞれの画像をデジタル画像処理ソフト(Adobe社、Photoshop(R))で読み込み、ヒストグラム機能を用いて画像の明るさの平均値を計測する。外壁を透過した光の透過光強度とガラスのみを透過した光の透過光強度より、次式を用いて可視光透過率を求める。
可視光透過率(%)=[(外壁を透過した光の強度)/(ガラスのみを透過した光の強度)]×100
【0023】
(臨界表面張力の測定)
異なる表面張力γLを持つノルマルアルカンの樹脂(A)の平坦な表面に対する接触角θを求め、γLに対してcosθをプロットする(Zismanプロット)。直線を外挿してcosθが1.0となるγLを求める。そのγL(cosθ=1.0)を臨界表面張力γcとする。
【0024】
(外径、外壁厚の測定)
本発明の機能性繊維をスライドガラスとカバーガラスの間に挟みこむ。光学顕微鏡(Nikon社、Optiphoto(R))を用いて機能繊維の外径と芯部の径を計測する。外径と芯部の径の差の2分の1を外壁厚に相当する。外径と外壁厚は、機能繊維の任意の場所20箇所の値を計測し、その算術平均の値を用いる。また、外径変動率と外壁厚変動率は次式で求める。
・外形変動率(%)=[(外径の標準偏差)/(外径の平均値)]×100
○:10%未満、 △:10〜30%未満 、×:30%以上
・外壁厚変動率(%)=[(外壁厚の標準偏差)/(外壁厚の平均値)]×100
○:10%未満、 △:10〜30%未満 、×:30%以上
【0025】
実施例1
ランダムコポリマーポリプロピレン(ウインテック、日本ポリプロ社製、融点125℃、臨界表面張力γc=33mN/m)を1軸押し出し機のホッパーより投入し、200℃で溶融し、170℃に加熱した同心2重円筒型ノズルの外筒と内筒の間より1g/minの吐出量にて押し出した。同時に、シリコンオイル(沸点229℃、表面張力γ=20mN/m)に黒白アクリル粒子を分散させた分散液を、室温にて超音波洗浄器を用いて超音波を照射することにより沈降を抑制しながら2重円筒ノズルの内筒内部に供給した。2重円筒ノズルから押し出された芯鞘型繊維は、風速0.2m/sの室温の空気で冷却しながら速度200m/minで回転するゴデットローラーにて引き伸ばした。得られた繊維の寸法や特性および紡糸性は表1に示す。
【0026】
実施例2
表示素子が、酸化チタン粒子とカーボンブラックであること以外は実施例1と同じ方法により芯鞘型中空繊維を作成した。得られた繊維の寸法や特性および紡糸性は表1に示す。
【0027】
実施例3
表示素子として、特開平11-149088号公報に従って得たコレステリック液晶と高分子前駆体の混合溶液(正の誘電率異方性を有するネマチック液晶BL012(メルク社製)69.0質量%、右旋性のカイラル剤CB15(メルク社製)15.5質量%、および右旋性のカイラル剤CE2(メルク社製)15.5質量%を混合した溶液に、チオール系UV重合高分子前駆体NOA65(ノーランド社製)を15質量%添加したもの)を用いたこと以外は実施例1と同じ方法により芯鞘型繊維を作成した。得られた繊維の寸法や特性および紡糸性は表1に示す。
【0028】
実施例4
実施例3で得られた芯鞘型繊維を100℃で加熱しながら延伸倍率2倍で延伸した。得られた繊維の寸法や特性および紡糸性は表1に示す。
【0029】
実施例5
ポリエチレンテレフタレート(融点256℃、臨界表面張力γc=41mN/m)を1軸押し出し機のホッパーより投入し、300℃で溶融し、280℃に加熱した同心2重円筒型ノズルの外筒と内筒の間より2 g/minの吐出量にて押し出した。同時に、パラフィンオイル(沸点320℃、表面張力γ=25mN/m)に酸化チタン粒子とカーボンブラックを分散させた分散液を、室温にて超音波洗浄器を用いて超音波を照射することにより沈降を抑制しながら2重円筒ノズルの内筒内部に供給した。2重円筒ノズルから押し出された芯鞘型繊維は、風速0.2m/sの室温の空気で冷却しながら速度500m/minで回転するゴデットローラーにて延伸した。得られた繊維の寸法や特性および紡糸性は表1に示す。
【0030】
比較例1
塩化ビニル(軟化点70℃、臨界表面張力γc=35mN/m)を1軸押し出し機のホッパーより投入し、170℃で溶融し、150℃に加熱した同心2重円筒型ノズルの外筒と内筒の間より1g/minの吐出量にて押し出した。同時に、シリコンオイルに酸化チタン粒子とカーボンブラックを分散させた分散液を、室温にて超音波洗浄器を用いて超音波を照射することにより沈降を抑制しながら2重円筒ノズルの内筒内部に供給した。2重円筒ノズルから押し出された芯鞘型繊維は、風速0.2m/sの室温の空気で冷却しながら速度200m/minで回転するゴデットローラーにて引き伸ばした。得られた繊維の寸法や特性および紡糸性は表1に示す。
【0031】
比較例2
分散溶媒が水であること以外は実施例2と同じ方法により芯鞘型繊維を作成した。得られた繊維の寸法や特性および紡糸性は表1に示す。
実施例6
実施例1〜5で得られた芯鞘型繊維を経糸とし、ポリエチレンテレフタレート糸(165dtex/36f)を緯糸とした平織物を得て、該平織物の表面に透明電極を設け、外部に設けた電圧印加ペンの20Vの電圧を印加しながら、電圧印加ペンを織物表面に接触させて線を引いたところ、線が織物上に形成され、印加電圧応答性の表示機能が認められた。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、コンピューター、携帯電話や電子ブックのディスプレイなどの情報表示装置の用途、表示機能や装飾機能を有する衣料、壁紙、幕などの用途に利用可能な芯鞘型機能繊維を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘部が合成樹脂(A)、芯部が分散溶媒(B)中に表示素子(C)を分散させた分散液(D)からなる芯鞘型繊維であり、前記(A)、(B)、(C)及び(D)が下記(イ)〜(ニ)の要件を満足することを特徴とする芯鞘型機能繊維。
(イ):分散溶媒(B)又は分散液(D)による、合成樹脂(A)の膨潤度が5%未満である。
(ロ):合成樹脂(A)の可視光透過率が70%以上である。
(ハ):合成樹脂(A)の臨界表面張力γcと、分散溶媒(B)又は分散液(D)の表面張力γの差が20mN/m以下である。
(ニ):表示素子(C)が、印加電圧応答性を有する少なくとも2色の回転粒子、無機粒子、有機粒子、コレステリック液晶のいずれかからなる。
【請求項2】
繊維の外径変動率が30%未満で、かつ外壁厚変動が30%未満であることを特徴とする請求項1に記載の芯鞘型機能繊維。
【請求項3】
請求項1に記載の合成樹脂(A)と分散液(D)を2重円筒型ノズルより同時に押し出す際に、分散液及び/又は紡出糸に超音波を照射することによって表示素子(C)の沈降を抑制しつつ紡出し、未延伸又は延伸後に冷却固化して芯鞘型繊維を得ることを特徴とする芯鞘型機能繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれかに記載の芯鞘型機能繊維を用いたシート状物。

【公開番号】特開2007−155994(P2007−155994A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349275(P2005−349275)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】