説明

芳香・消臭用木質材料の形態、及びこれを絡ませて製作した木質球

【課題】芳香効果が長時間持続し、天然木質材料の古来から言われる各種成分の繰り返し浸出が可能で、高いコストパフォーマンスを備える木片集合体を提供する。
【解決手段】本件発明に係る木質材料は、厚さが0.2mm〜0.6mm、幅が0.6mm〜1.2mm、長さ10mm〜45mmであることを特徴とし、長手方向に木質材料の繊維が走っており、表面はややささくれ立っている木片の集合体。
前記木片の製造は、刃先のリード角が10〜20°の丸鋸刃を所定の回転速度で回転させ、木質材料を、その繊維方向に沿って、所定の速度で送ることにより切削されたものである。さらに前記木片を絡み合わせてほぼ球形に成形した木片集合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒノキ、ヒバなど芳香、消臭、抗菌効果のある木質材料を、その芳香効果などを最大限に発揮し、繰り返し使用可能で、かつインテリアとしても利用可能な木片の形態及び木片の集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されている消臭剤、芳香剤には、合成化学物質が含有されているものであり、これらは化学物質過敏症の原因物質の一つともいわれている。一方、木質材料には鎮静効果、消臭効果、抗菌効果等を持つ揮発性の芳香成分が含まれており、近年は人に優しい天然材料として再評価さている。
【0003】
木質材料を芳香剤などに利用する方法として、例えば特許文献1には、各種木質材料のパーチクル、オガ屑、カンナ屑さらには木片のうちの一以上を逸散しないようにして、木質材料中に含有される抗菌成分、芳香成分を温水中に滲出させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−112444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際に芳香剤として各種木質材料のパーチクル(粒子)、オガ屑、カンナ屑等を使用しても、木質材料が持つ芳香成分が流通、保存過程で経時的に減少する。そのために市場を流通し消費者の手に渡ったときには、その木質材料の本来持つ芳香特性を十分に生かせず、芳香効果が十分に得られず、また長時間持続することもなかった。その結果、消費者の意識としては、自然素材としての木質材料そのもののコストパフォーマンスも低いと思われ購買意欲を喚起するに至らなかった。
【0006】
以上のことから、本発明の目的は、芳香効果が長時間持続し、天然木質材料の古来から言われる各種成分の繰り返し浸出が可能で、高いコストパフォーマンスを備える木質材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明者は鋭意研究を行った結果、以下に述べる発明により、上述した課題を解決するに至ったのである。
【0008】
本件発明に係る木質材料は、木質材料に含有される各種成分を大気中に浸出させるための芳香剤、消臭剤として用いる木片集合体であって、当該木片は、厚さが0.2mm〜0.6mm、幅が0.6mm〜1.2mm、長さ10mm〜45mmを特徴としたものである。
【0009】
前記木片は、長手方向に木質材料の繊維が走っており、表面はややささくれ立っていることを特徴とした木片の集合体である。
【0010】
前記木片は、刃先のリード角が10°〜20°の丸鋸刃を所定の回転速度で回転させ、木質材料の繊維方向に沿って、材木を所定の速度で送ることにより切削されたものである。
【0011】
さらに前記木片を絡み合わせてほぼ球形に成形したことを特徴とする木片集合体である。
【発明の効果】
【0012】
本件発明に係る木質材料は、所定の範囲のサイズの木片を用いることで、成分の抽出速度が遅過ぎず、且つ、早過ぎない。また、芳香性、消臭性がうすくなっても、手のひらに乗せ、手のひらで数回押さえることによって、芳香、消臭等が復元されるのが特徴である。
【0013】
上記の特徴は、例えば特許文献1に記載されているパーチクル、オガ屑、カンナ屑、木片とは異なる効果を発揮する。
すなわち、木質材料のパーチクル(粒子)やオガ屑は一般的には細かい粒状であり、分散して使用すれば表面積が広い利点があるが、短時間で成分が発散してしまう欠点がある。逆にオガ屑等を密な状態で使用すれば、通気性が悪く成分が発散しにくい。また、細かい粉が室内や空気を汚す懸念もある。
カンナ屑は一般的には薄い平面状で、表面積が広く成分が短時間で発散しやすく、一般的には嵩だかで扱いにくい。
木片は、体積に比べて表面積が小さいので短時間で芳香成分を発散しなくなる。
【0014】
本発明の木質材料の形態は、厚さが0.2mm〜0.6mm、幅が0.6〜1.2mm、長さが10mm〜45mmの扁平で細長い形状であり、長手方向に木質材料の繊維が走っており、表面はややささくれ立って、全体形状は自然にかつ不規則にカールした形状を呈している。
前記表面のささくれと、カールした形状によりお互いに絡み合いやすく、前記木質材料の集合体に外側から圧力を加えて捏ねることにより容易に結合して、球体や俵形等の弾力性のある塊になり、一旦塊になるとその形状を維持する特徴があり、そのままインテリアとして飾ることができる。
また、細かい粉をほとんど含まないので室内を汚すことも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による木片の外観図
【図2】本発明による木片の集合体
【図3】本発明による木片の製造方法
【図4】本発明による木片を製造するのに適した丸鋸
【図5】本発明による木片集合体を球にする初期過程の概念図
【図6】本発明による木片集合体を球形に成形した完成概念図
【図7】本発明による木片集合体を球形に成形した完成品の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図7を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明による木片1の外観図を示したものであり、厚さは0.2mm〜0.6mm(好ましくは0.3mm程度)、幅は0.6mm〜1.2mm(好ましくは0.8mm程度)の扁平形状で、長さは10mm〜45mmである。
木片の長さ方向と木質材料の繊維方向2はほぼ一致しており、表面はささくれ立っており、羽毛状または棘状の突起3が多数形成されている。
木片1の全体形状は、不規則にねじれており、かつ不規則にカールしている。
図2は、木片の集合体の写真である。
【0017】
図3は図1に示した木片1の製造方法の一例を示しており、図4は図3に示した丸鋸の刃先の拡大図である。
すべての刃先について同一方向にリード角θが10°〜20°(好ましくは約15°)である丸鋸を、所定の回転速度で回転させ、材料となる木質材料4を図3に示したように木質材料の繊維方向2に沿って押して所定の速度Vで移動させることにより、図1に示したような幅、厚さ、長さの木片が生成される。
このとき、木片の幅は木質材料の左右位置(削り幅)で0.8mm程度になるように決め、木片の厚さは丸鋸の一刃あたりの削り厚さが0.3mm程度になるように木質材料の送り速度で決める。
すなわち、木質材料の送り速度V(mm/sec)は、丸鋸の回転速度をN(r/min)、丸鋸の刃数をZとすると、V≒(0.3×N×Z)/60で表される。
【0018】
丸鋸に15°程度のリード角が付いていることにより、適度な切れ味を発揮して連続した木片になりやすく、リード角により切削された木片がすぐに側面に排出されるので、切削直後の木片が木質材料と刃の間に挟まれて細分化してしまうことを防ぐことができる。その結果、粉や粒子成分が少ない比較的均一な大きさの細長い木片を得ることができる。ここで、リード角が10度より小さいと、切れ味が悪くなって木片が途中で途切れ、長さが短くなりすぎて好ましくない。逆にリード角が20度より大きいと、鋸刃に作用する側方力が大きくなり刃が割れやすくなって危険である。
【0019】
本発明による木片の大きさは、厚さが0.2mm〜0.6mmで、幅が0.6mm〜1.2mmで、長さが10mm〜45mmであり、このサイズを備えることが長期間繰り返し使用を想定したときに好ましい。木片の厚さが0.2mm未満、又は長さが10mm未満となると、製造時の木片サイズの制御が困難であるばかりでなく、木が含む芳香成分及び薬効成分の浸出が早くなり過ぎて、使用可能な期間が減少する。
一方、木片の厚さが0.6mmを超えると、木球にする際に木片自体の破砕が起こりやすく(つまり曲げたときに折れやすくなる)、粉状態の木片が生じやすくなり、製品品質の安定化が図れなくなる。
また、木片の幅が1.2mmを超えた場合、又は長さが45mmを超えた場合には、木球にする際に、互いに絡み合いにくくなり成形することが困難になり、成形できたとしても表面が滑らかな球形にならないので好ましくない。
【0020】
本発明による木片は、丸鋸の刃先のようにあまり鋭利でない刃によって細長く破断して得られる形状であることが好ましい。このように木質材料の繊維に沿って浅めに削ぐように切り込んで破断させることにより得た木片は表面が粗く、且つ、表面が毛羽立った状態になるので、空気との接触面積を広く採ることができるため木片の含有成分の放出、及び異臭の吸収に効果的である。
このことは一般的な形状の板材や、表面を研磨した木質材料に比べて、木質材料含有成分の放出性能と吸引性において非常に優れている。
【0021】
本発明による木片の別の特徴として、木片の集合体に外部から圧力を加えて捏ねることにより容易に絡み合って塊になる点がある。
この理由は、木片の厚さが0.2mm〜0.6mmで、幅が0.6mm〜1.2mmで、長さが10mm〜45mmで、かつ表面がささくれて毛羽立っており、かつ不規則に湾曲していることにより、互いに絡み合いやすく、細長いことにより互いに深く進入して結合し、かつ表面のささくれによって摩擦力が強く働くので形状が安定して維持されるからである。
【0022】
図5は木片を球形の型に詰め込んだ後に、型を分割して取り出した状態の概念図であり、当初は木片の密度が粗い。
図5に示した球体を手で押さえて挟み、かつ捏ねるように回しながら圧力を加えると、短時間で図6のように、当初の球の直径の60〜50%程度に縮小し、目が詰まった状態のきれいな球体になる。
図6はこの状態の概念図であり、図7は直径約10cmに仕上げた木質球の表面の拡大写真である。
【0023】
前記木質材料は、針葉樹、広葉樹から選ばれるものであることが好ましい。特にヒノキ、スギ、ヒバは、古来から人間の身体にヒーリング効果を与え、且つ、化学的にも抗菌化作用、抗酸化作用のあるポリフェノール、ヒノキチオール等の薬効成分が含まれることが知られており、消費者が十分に満足しうる十分な芳香と消臭効果が得られやすい。
【0024】
前記木質材料を前記木片に加工する際の木質材料の含水率は、比較的許容範囲が広く、例えば10%〜50%の含水率の範囲で問題なく加工可能である。
【0025】
次に前記木片を球形に成形した木片集合体を、種々の条件で放置した場合の変化について調査した結果を説明する。
【0026】
まず、製造直後の木質球を段ボール箱に入れ、そのまま室内で3週間保管後に取り出し、製造直後の木質球と比較する被験者の感覚による官能試験を行った。その結果、製造直後の木質球と比較して、やや芳香性が劣るように感じるが、大差のあるものとして認識できるものではなかった。
更に木質球をほぐして木片を取り出し、木片の破砕が起きているか否かを調査した。その結果、厚さ0.2mm〜0.6mm、幅0.6mm〜1.2mm、長さ10mm〜45mmの当初木片の大きさの範囲にあり、木片の破砕は起きていないことが確認できた。
【0027】
製造直後の木質球を、無包装のまま室内に3週間放置したものと、製造直後の木質球で、被験者の感覚による官能試験を行った。その結果、製造直後に比べ、明らかに芳香性が劣ることが分かった。しかし、両手のひらで木質球を数回ボールを握るようにすることで、製造直後の芳香性に戻ることが確認された。
【0028】
製造直後の木質球をそのまま冷蔵庫の中に入れ、3週間保管後に取り出し、木質材料の色及び香りを測定した。その結果、色には殆ど差異がなかったが、芳香性に於いては冷蔵庫内の異臭を吸引していた。しかし、1日〜2日大気中に放置することで、芳香性が再生することが確認でき、再度使用できることが確認できた。また、両手のひらで木質球をボールを握るようにおさえることで製造直後の香りが戻ることも確認できた。
【0029】
製造直後の木質球を浴室に湯水等が直接あたらないように置き、3週間放置後に香り及び木色を観察した。この結果を対比すると、木の香り及び木色には大きな変化はなく、湿度が高いほうが製造直後の芳香牲を持続することが分かった。
吸湿して若干ふくらむ傾向があるが、浴室から出し1日〜2日室内に放置後、両手のひらでおさえることで製造直後の状態に戻ることが確認できた。
【0030】
以上の確認結果より、本発明による木質球は、コンパクトでありながら木片の表面積が広く、かつ通気性が保たれているので木質材料に含まれる芳香成分の発散が持続的に長く保たれる利点があり、かつ一旦芳香性が弱くなっても、手のひらで押さえて内部の木片同士の位置関係をずらすか、または木片の表面同士を摩擦させることにより芳香性を回復させることができるという特徴がある。
【符号の説明】
【0031】
1 本発明による木片
2 木片または木質材料の繊維の方向
3 木片表面のささくれ
4 材料となる木質材料
5 丸鋸
6 丸鋸の刃先
7 成型初期過程の球形木片集合体
8 完成した球形木片集合体
θ リード角
V 木質材料の送り速度(mm/sec)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材料の芳香効果、又は消臭効果、又は抗菌効果を効率良く発揮させるための木片集合体であり、厚さが0.2mm〜0.6mmで、幅が0.6mm〜1.2mmで、長さが10mm〜45mmである複数の木片で構成されていることを特徴とする木片集合体。
【請求項2】
前記木片の長さ方向と木質材料の繊維方向がほぼ一致しており、かつ表面がささくれ立っていることを特徴とする請求項1に記載した木片集合体。
【請求項3】
前記木片は、刃先のリード角が10°〜20°の丸鋸刃を所定の回転速度で回転させ、木質材料を、その繊維方向に沿って、所定の速度で送ることにより切削されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した木片集合体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載した木片集合体において、前記木片を絡み合わせてほぼ球形に成形したことを特徴とする木片集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218768(P2011−218768A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100334(P2010−100334)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(506256091)有限会社 武生デザイン (2)
【Fターム(参考)】