説明

芳香族アミン化合物及びこれを用いた有機電界発光素子、並びに有機電界発光素子を用いた表示装置

【課題】高い蛍光量子収率で赤色発光を呈し安定性に優れた芳香族アミン化合物及びこれを用いた有機電界発光素子並びにこれを用いた表示素子を提供すること。
【解決手段】有機電界発光素子は、基板1上に、透明陽極2、発光層5、陰極3が積層され保護膜4によって構成され、発光30は陰極で反射されたものを含み陽極を透過して透明基板側から観測される。発光層は、窒素に−X1、−X2、−(Ar1−Ar2−Y)が結合した芳香族アミン化合物を含み、X1、X2は互いに同一又は異なってもよく、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれ、Ar1、Ar2はアリーレン基、Y(n≧1)の少なくとも1つはトリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた基であり、残りは、ヒドロ基、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子の電子輸送材料、ホール輸送材料、発光材料として有用な芳香族アミン化合物及びこれを用いた有機電界発光素子、並びに有機電界発光素子を用いた表示装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光であって応答速度が高速であり、視野角依存性のないフラットパネルディスプレイの一候補として、有機電界発光素子(EL素子)への注目されており、それを構成する有機材料への関心が高まっている。その中でも特に、安定な青色発光層を形成しうる材料は少なく、フルカラー有機電界発光素子の実現には不可欠な課題となっている。
【0003】
有機電界発光素子を高輝度、高効率とするために、ホスト化合物及びゲスト化合物(ドーパント)を用いて発光層を構成するドーピング法が用いられている。ホスト化合物からドーパント化合物へのエネルギー移動効率が大であるようなホスト化合物を選ぶことによって、有機電界発光素子の発光効率を大とすることができる。例えば、9,10−ジフェニルアントラセン系化合物は電子輸送性ホスト、ホール輸送性ホストとなり得ることが知られている。
【0004】
芳香族アミンは電子写真用感光体として多く研究されてきたが、その後有機電界素子のホール輸送材料として優れた特性を示すことが報告され、多くの化合物が報告されている。最近では、芳香族アミンを発光層に用いる提案もなされている。
【0005】
有機電界発光素子を構成する有機層は、以下に示すように、種々の有機材料を用いて形成されている。
【0006】
先ず、「有機エレクトロルミネッセンス素子」と題する後記の特許文献1には、正孔と電子とが再結合する再結合領域及び該再結合に応答して発光する発光領域を少なくとも有する有機化合物層と、この有機化合物層を挾持する一対の電極とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、上記再結合領域及び/又は発光領域に、蛍光性ドーパントとして芳香族アミンを含有させ、発光材料(ホスト材料)として、ジスチリルアリーレン系化合物を含有させた有機EL素子に関する記載があり、特許文献1の発明の有機EL素子は、正孔と電子とが再結合する再結合領域又は該再結合に応答して発光する発光領域の少なくとも何れかに、特定の構造の蛍光性ドーパントを含有させたものであって、長時間駆動しても発光色の変化が少ない等、長寿命を有し、且つ発光効率が高く、例えば情報産業機器のディスプレイ等に好適に用いられるとしている。
【0007】
また、「有機エレクトロルミネッセント素子」と題する後記の特許文献2には、ペリレン化合物を、特定の芳香族炭化水素或いは芳香族複素環を置換基にもつ芳香族アミン化合物、芳香族ジアミン化合物又は芳香族トリアミン化合物と混合して用いた場合に、特に優れた特性を有する赤色発光有機EL素子が得られるとの記載がある。
【0008】
また、「有機エレクトロルミネッセント素子」と題する後記の特許文献3には、5−シアノピロメテン−BF2錯体を、特定の芳香族炭化水素或いは芳香族複素環を置換基にもつ芳香族アミン化合物、芳香族ジアミン化合物又は芳香族トリアミン化合物と混合して用いた場合に、特に優れた特性を有する赤色発光有機EL素子が得られるとの記載がある。
【0009】
また、「有機エレクトロルミネッセンス素子」と題する後記の特許文献4には、ビス−2,5−(2−ベンザゾイル)ヒドロキノン化合物を、特定の芳香族炭化水素或いは芳香族複素環を置換基にもつ芳香族アミン化合物、芳香族ジアミン化合物又は芳香族トリアミン化合物と混合して用いた場合に、特に優れた特性を有する赤色発光有機EL素子が得られるとの記載がある。
【0010】
また、「炭化水素化合物及び有機電界発光素子」と題する後記の特許文献5には、一対の電極間に、9,10−ジ(3’−フルオランテニル)アントラセン誘導体を少なくとも一種含有する層を、少なくとも一層挟持してなる有機電界発光素子が記載されている。
【0011】
また、「有機エレクトロルミネッセンス素子」と題する後記の特許文献6には、フルオランテン構造にアリール構造が結合した新規炭化水素化合物を有機化合物膜に添加すると有機エレクトロルミネッセンス素子の耐熱性が向上し、更に正孔輸送性及び電子輸送性が向上して高発光効率となることの記載がある。
【0012】
また、「有機系多層型エレクトロルミネセンス素子」と題する後記の特許文献7には、正孔輸送層材料の代表例としてアントラセン誘導体が記載されている。
【0013】
また、「有機EL素子用化合物」と題する後記の特許文献8には、フェニルアントラセン誘導体である有機EL素子用化合物の記載がある。
【0014】
また、「有機エレクトロルミネッセンス)素子」と題する後記の特許文献9には、中心にジフェニルアントラセン構造、末端にアリール基置換された特定構造を有する化合物の記載がある。
【0015】
また、「有機発光デバイス」と題する後記の特許文献10には、多環式炭化水素(PAH)及び2種以上のPAH(ベンゼン、ナフタレン、アントラセンを含む)の組合せを含んでなり、有機発光デバイスの発光層のホスト成分として好適なベンゼノイド化合物の記載がある。
【0016】
更に、「有機エレクトロルミネッセンス素子及びのアントラセン誘導体」と題する後記の特許文献11には、有機EL素子を実現するためのアントラセン誘導体の記載がある。
【0017】
【特許文献1】特許3506281号明細書(段落0006〜0010、段落0079、段落0085)
【特許文献2】特許3104223号明細書(段落0006〜0008、段落0123)
【特許文献3】特許3011165号明細書(段落0008〜0010、段落0196)
【特許文献4】特許3092584号明細書(段落0008〜0010、段落014
【特許文献5】特開2001−257074号公報(段落0004〜0006、0017)
【特許文献6】特開2002−69044号公報(段落0004、段落0011)
【特許文献7】特開2000−182776号公報(段落0008〜0013)
【特許文献8】特許第3838816号明細書(段落0009〜0012)
【特許文献9】特開2001−335516号公報(段落0004〜0014)
【特許文献10】特開2002−260861号公報(段落0004〜0005、段落0013)
【特許文献11】特許第4041816号明細書(段落0004〜0006、段落0021)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献4では、ビス−2,5−(2−ベンザゾイル)ヒドロキノン化合物と芳香族アミン化合物の混合層、特許文献3では、5−シアノピロメテン−BF2錯体と芳香族アミン化合物の混合層、また、特許文献2では、ペリレンと芳香族アミン化合物の混合層で発光層を形成することで赤色発光を実現しているが、発光輝度が低く、実用には十分でない。
【0019】
有機電界発光素子の開発において、発光材料の選択は、素子の信頼性を確保する上で最重要の課題である。赤色発光材料となりうる候補のうち、色純度に優れていると共に蛍光量子収率が高く、且つ、安定なアモルファス薄膜を形成しうるものは少ない。更に、高輝度で安定、且つ、色純度の高い赤色発光素子の実現が望まれているのが現状である。
【0020】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、有機電界発光素子を構成する有機層の形成に好適に使用することができ、高い蛍光量子収率で赤色発光を呈する芳香族アミン化合物これを用いた有機電界発光素子、並びに有機電界発光素子を用いた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
我々は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する芳香族アミン化合物と、それに効率良くエネルギーを伝達することが可能な材料とから発光層を構成した有機電界発光素子を作製し、更に高輝度、高信頼性の赤色発光素子の提供する本発明に到達したものである。
【0022】
即ち、本発明は、下記一般式[I]で示される芳香族アミン化合物に係るものである。
【0023】
一般式[I]:
【0024】
【化1】

【0025】
(但し、前記一般式[I]において、X1、X2は、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた基であり、X1、X2は互いに同一又は異なってもよく、Ar1、Ar2はアリーレン基であり、n≧1であり、Ar2の置換基であるYの少なくとも1つはトリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、残りの置換基Yは、ヒドロ基、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた基である。)。
【0026】
また、本発明は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられた有機層とを有し、前記有機層の少なくとも一層が、上記の芳香族アミン化合物の少なくとも1種類をドーパント材料として含んだアミン化合物含有層である、有機電界発光素子に係るものである。
【0027】
また、本発明は、上記の有機電界発光素子を有する画素が複数個配置された画素部と、前記画素部の各画素に印加される電圧のオンオフを制御する制御部とを有する表示装置に係るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、有機電界発光素子を構成する際に、アントラセン骨格を含む化合物からなるホスト材料と好適に組み合わせることができる好適なゲスト材料とすることができ、高い蛍光量子収率で赤色発光を呈する芳香族アミン化合物を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、前記芳香族アミン化合物を、アントラセン骨格を含む化合物からなるホスト材料と好適に組み合わせることによって、高い蛍光量子収率で赤色発光を呈する有機電界発光素子を提供することができる。
【0030】
また、本発明によれば、高い蛍光量子収率で赤色発光を呈し、フルカラー表示可能な表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の芳香族アミン化合物では、X1、X2に関し、前記アルキル基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリール基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、前記アリル基は置換基を有してもよく、前記アルコキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリールオキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、Ar1は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、Ar2は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり、Ar2の置換基であるYに関して、前記アルキル基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリール基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、前記アリル基は置換基を有してもよく、前記アルコキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリールオキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよい構成とするのがよい。このような構成によれば、合成時に市販の試薬から比較的容易に当該の芳香族アミン化合物を合成することができ、分子量を適正な範囲にすることができるので合成時の精製が容易である。
【0032】
また、前記一般式[I]において、X1、X2は、互いに同一又は異なるアリール基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラニル基、置換基を有してもよいアリル基から選ばれた置換基を有してもよく、Ar1は下記一般式(1)〜(44)から選ばれた基であり、下記一般式[a]で示される基は、下記一般式(45)〜(69)から選ばれた基であり、この選ばれた基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)から選ばれた少なくとも1つは、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、残りのRm(mは456から732の範囲の整数)、及び、選ばれたAr1の有するRk(kは1から453の範囲の整数)はそれぞれ、ヒドロ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラニル基、置換基を有してもよいアリル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいアントラニルオキシ基から選ばれた基である構成とするのがよい。このような構成によれば、分子自身の嵩高さが適当であるので分子同士の相互作用が強すぎずまた弱すぎない程度になり、真空蒸着、スピンコート、その他の方法による製膜であっても自身の濃度消光を抑制してホスト分子からのエネルギー移動効率を高めることができ、真空蒸着による有機電界素子の作製時には昇華しやすいために有利である。
【0033】
一般式[a]:
【0034】
【化2】

【0035】
一般式(1)〜(21):
【0036】
【化3】

【0037】
一般式(22)〜(44):
【0038】
【化4】

【0039】
一般式(45)〜(55):
【0040】
【化5】

【0041】
一般式(56)〜(69):
【0042】
【化6】

【0043】
また、選ばれたAr1の有するRk(kは1から453の範囲の整数)の全てがヒドロ基であり、前記一般式[a]で示される基から選ばれた基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)の2つが、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた基である構成とするのがよい。このような構成によれば、一般式[a]で示される基の電子吸引性が高まり一般式[a]はアクセプター性を帯び、ドナー性であるアミン部から一般式[a]で示される基への電子移動が起きて分子の分極率が多きい電荷移動状態を形成しやすくなる。一般式[I]で示される化合物の電荷移動状態は蛍光性のエキシプレックスであり、エキシプレックスからの蛍光は構成要素であるドナー部、またはアクセプター部の個別の蛍光よりも長波長である。すなわち、アミン部のドナー性、又は一般式[a]で示される基のアクセプター性を調整することで一般式[I]で示される化合の蛍光を赤色シフトさせることができる。
【0044】
また、X1がフェニル基、X2が2−ナフチル基、Ar1が2,6−ナフチレン基、下記一般式[a]で示される基が、9位及び10位にシアノ基、7位にメチル基の置換基を有する2−フェナントリル基であり、下記[Ia]によって示される第三アミン化合物である構成とするのがよい。このような構成によれば、上記の原理により、赤色発光材料として最適な580nm〜650nmに蛍光極大を有する材料とすることができる。
【0045】
一般式[a]:
【0046】
【化7】

【0047】
[Ia]:
【0048】
【化8】

【0049】
また、X1がフェニル基、X2が2−ナフチル基、Ar1が2,6−ナフチレン基、下記一般式[a]で示される基が、9位及び10位にシアノ基の置換基を有する2−アンスリル基であり、下記[Ib]によって示される第三アミン化合物である構成とするのがよい。このような構成によれば、上記の原理により、赤色発光材料として最適な630nm〜700nmに蛍光極大を有する材料とすることができる。
【0050】
一般式[a]:
【0051】
【化9】

【0052】
[Ib]:
【0053】
【化10】

【0054】
本発明の有機電界発光素子では、前記有機層は、ホール輸送層と電子輸送層が積層された構造を有する構成とするのがよい。このような構成によれば、ホールおよび電子の注入障壁を小さくすることができる。
【0055】
また、少なくとも前記ホール輸送層が前記アミン化合物含有層である構成とするのがよい。このような構成によれば、ホール輸送材料層から前記アミン化合物層へのホールの注入障壁を最小化することができる。
【0056】
また、少なくとも前記電子輸送層が前記アミン化合物含有層である構成とするのがよい。このような構成によれば、電子輸送材料層から前記アミン化合物層への電子の注入障壁を最小化することができる。
【0057】
また、前記有機層は、ホール輸送層、発光層、及び、電子輸送層が積層された構造を有する構成とするのがよい。このような構成によれば、ホール輸送層からのホールと電子輸送層からの電子が発光層に閉じ込められ、効率的に再結合を起すので発光効率を最大化することができる。
【0058】
また、少なくとも前記発光層が前記アミン化合物含有層である構成とするのがよい。このような構成によれば、発光層内のホール移動度と電子移動度がともに大きいので発光層の抵抗成分を最小化することができる。
【0059】
また、前記発光層が、前記ドーパント材料とホスト材料とから形成された前記アミン化合物含有層であり、前記ホスト材料がアントラセン骨格を含む化合物である構成とするのがよい。このような構成によれば、ホール輸送層からのホールと電子輸送層からの電子の再結合確率が高いアントラセンホスト分子上で再結合し、そのエネルギーがドーパント分子に移動するので、アントラセンホストの青色蛍光の代わりに前記ドーパント材料に由来する赤色発光を高効率に得ることができる。
【0060】
また、前記アミン化合物含有層に含まれる前記ドーパント材料は50%以下である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記ドーパント材料自身による濃度消光を抑制することができる。
【0061】
本発明の表示装置では、前記制御部はスイッチング素子を含む構成とするのがよい。このような構成によれば、動画を表示するディスプレイ装置として利用することができる。
【0062】
本発明は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に設けられた有機層とを有し、有機層の少なくとも一層が、上記の芳香族アミン化合物の少なくとも1種類、及び、下記一般式[IIa]から一般式[IIe]によって示されるアントラセン誘導体化合物の少なくとも1種類を含む混合層である、有機電界発光素子Aに係るものである。本発明によれば、鮮やかな赤色発光を高効率、低消費電力で呈する高信頼性の有機電界発光素子を提供することができる。
【0063】
一般式[IIa]:
【0064】
【化11】

【0065】
一般式[IIb]:9,10−ジ(3−フルオランテニル)アントラセン
【0066】
【化12】

【0067】
一般式[IIc]:9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン
【0068】
【化13】

【0069】
一般式[IId]:
【0070】
【化14】

【0071】
一般式[IIe]:
【0072】
【化15】

【0073】
また、有機電界発光素子Aにおいて、前記有機層がホール輸送層と電子輸送層が積層された構造を有する構成(a)とするのがよい。このような構成によれば、ホールおよび電子の注入障壁を小さくすることができる。
【0074】
また、構成(a)において、少なくとも前記ホール輸送層が前記混合層からなる構成とするのがよい。このような構成によれば、ホール輸送材料層から前記アミン化合物層へのホールの注入障壁を最小化することができる。
【0075】
また、構成(a)において、少なくとも前記電子輸送層が前記混合層からなる構成とするのがよい。このような構成によれば、電子輸送材料層から前記アミン化合物層への電子の注入障壁を最小化することができる。
【0076】
また、有機電界発光素子Aにおいて、前記有機層がホール輸送層、発光層、及び、電子輸送層が積層された構造を有する構成(b)とするのがよい。このような構成によれば、ホール輸送層からのホールと電子輸送層からの電子が発光層に閉じ込められ、効率的に再結合を起すので発光効率を最大化することができる。
【0077】
また、構成(b)において、前記発光層が前記混合層からなる構成とするのがよい。このような構成によれば、発光層内のホール移動度と電子移動度がともに大きいので発光層の抵抗成分を最小化することができる。
【0078】
また、前記発光層が、ホスト材料とドーパント材料から形成され、前記芳香族アミン化合物が前記ドーパント材料として含有されている構成とするのがよい。このような構成によれば、ホール輸送層からのホールと電子輸送層からの電子の再結合確率が高いホスト分子上で再結合し、そのエネルギーがドーパント分子に移動するので、アホストの蛍光の代わりに前記ドーパント材料に由来する赤色シフトした発光を高効率に得ることができる。
【0079】
一般式[IIa]から一般式[IIe]によって示されるアントラセン誘導体化合物は、そのアントラセン環の9位の水素原子が、1−ナフチル基、3−フルオランテニル基、2−ナフチル基、イソプロピル基の何れかで置換されている。また、アントラセン環の10位の水素原子が、フェニル基、3−フルオランテニル基、2−ナフチル基の何れかで置換されている。
【0080】
なお、一般式[IIa]から一般式[IIe]によって示されるアントラセン誘導体化合物のアントラセン環の1位から8位の水素原子は、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルキル基、炭素数5から25で置換基を有してもよくヘテロ原子を環の構成成分として含んでもよいアリール基、置換基を有してもよいアリル基、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素数6から25で置換基を有してもよいアリールオキシ基から選ばれた基で置換されていてもよい。
【0081】
また、アントラセン環の10位に結合する第1のフェニル基の水素原子、及び、この第1のフェニル基の水素原子が置換され結合された第2のフェニル基の水素原子は、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルキル基、炭素数6から25で置換基を有してもよくヘテロ原子を環の構成成分として含んでもよいアリール基、置換基を有してもよいアリル基、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素数6から25で置換基を有してもよいアリールオキシ基から選ばれた基で置換されていてもよく、隣り合う基同士が相同して環を形成してもよい。
【0082】
更に、アントラセン環に結合するフルオランテニル基及びナフチル基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0083】
本発明の芳香族アミン化合物、及び、これに混合して使用するアントラセン誘導体化合物(ホスト化合物)ついて説明する。
【0084】
[芳香族アミン化合物の構成]
本発明の芳香族アミン化合物は、上述の一般式[I]によって示され、上述の一般式(1)〜(44)から選択される2価の基Ar1と、上述の一般式(45)〜(69)から選択され、上述の一般式[a]で示される1価の基との結合によって与えられる化合物である。
【0085】
本発明の明細書で使用する、アリール(Aryl)基は、芳香族炭化水素から1個の水素原子を引き抜いて形成された基を意味し、アリーレン(Arylene)基は、アリール基から1個の水素原子を引き抜いて形成された基を意味するものとする。なお、芳香族炭化水素(アーレン(Arene)、Aromatic hydrocarbons)は、芳香族性を示す単環又は複数の環から構成される炭化水素であり、その複数の水素原子の一部が置換されていてもよく、単環又は多環芳香環の芳香族化合物を意味するものとする。芳香族性を示す複数の環は、複数の単環が縮合せずに直線状に結合されてなるアセン(acene)又はポリアセン(plyacene)と呼ばれるもの、2個又はそれ以上の環が2個又はそれ以上の炭素原子を共有して結合してなる縮合環であってもよい。また、アリール(Aryl)基は、単環又は複数の環から構成され芳香族性を示す複素環式化合物(炭素原子(C)以外に、酸素原子(O)、窒素原子(N)、硫黄原子(S)等のヘテロ原子が環を構成する原子として含む化合物)から1個の水素原子を引き抜いて形成された基を含むものとする。
【0086】
本発明の芳香族アミン化合物(上述の一般式[I]によって示される。)において、X1、X2は、互いに同一又は異なる基であり、Ar1、Ar2はアリーレン基である。Ar1は、アルキル基(alkyl基、−Cn2n+1)、アリール基、アリル基(allyl基、−CH2CH=CH2)、アルコキシ基(alkoxy基、−OCn2n+1)、アリールオキシ基(Aryloxy基、−OAr(ArはAryl基を示す。)から選ばれた基で置換されていてもよい。Ar2は、少なくとも1つ以上の置換基Yを有し、置換基Yの少なくとも1つは、トリフルオロメチル基(−CF3)、シアノ基(−CN)、ハロゲン基(ハロ基、−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれた基であり、残りの置換基Yは、ヒドロ基(−H)、アルキル基(alkyl基、−Cn2n+1)、アリール基、アリル基(allyl基、−CH2CH=CH2)、アルコキシ基(alkoxy基、−OCn2n+1)、アリールオキシ基(Aryloxy基、−OAr(ArはAryl基を示す。)から選ばれた基である。
【0087】
1、X2は、ヒドロ基、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれる。Ar1、Ar2は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり、置換基を有してもよい、アリーレン基である。
【0088】
Ar1、Ar2は、例えば、フェニレン基(phenylene基、−C64−)、ナフチレン基(naphthylene基、−C106−)、アントリレン基(anthrylene基、−C148−)、フェナントレン基(phenanthrylene基、−C148−)等のアリーレン基である。
【0089】
Ar2は、トリフルオロメチル基(−CF3)、シアノ基(−CN)、ハロゲン基(ハロ基、−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれた置換基を少なくとも1つ有し、更に、Ar2はアルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた置換基Yを有してもよい。
【0090】
なお、Ar1とX1、又は/及び、Ar2とX2が相同して環を形成していてもよい。また、Ar1とAr2が相同して環を形成していてもよい。
【0091】
1、X2において、アルキル基、アルコキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり、アリール基、アリールオキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下である。また、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基は、置換基を有してもよい。
【0092】
1、X2は、互いに同一又は異なるアリール基であり、メチル基(methyl基、−CH3)、エチル基(ethyl基、−CH2CH3)、n−プロピル基(propyl基、−(CH2)2CH3)、iso−プロピル基(iso-propyl基、−CH(CH3)2)、n−ブチル基(n-butyl基、−(CH2)3CH3)、iso−ブチル基(iso-butyl基、−CH2CH(CH3)2)、tert−ブチル基(tert-butyl基、−(CH3)3)、sec−ブチル基(sec-butyl基、−CH(CH3)CH2CH3)、シクロヘキシル基(cyclohexyl基、−C611)、フェニル基(phenyl基、−C65)、ナフチル基(naphthyl基、−C107)、アントラニル(アントリル)基(anthryl基、−C149)、フェナントリル基(phenanthryl基、−C149)、アリル基から選ばれた置換基を有してもよい。
【0093】
なお、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、アリル基は、置換基を有してもよい。
【0094】
上述の一般式[a]で示される1価の基において、Ar2は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり、少なくとも1つ以上の置換基Yを有し、置換基Yの少なくとも1つはトリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、残りの置換基Yは、ヒドロ基、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた基である。アルキル基、アルコキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり、また、アリール基、アリールオキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下である。また、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基は、置換基を有してもよい。
【0095】
[芳香族アミン化合物における2価の基(−Ar1−)]
Ar1は、上述の一般式(1)〜(44)から選ばれた基であり、上述の一般式[a]で示される1価の基は、上述の一般式(45)〜(69)から選ばれた基である。
【0096】
Ar2の置換基Yは、上述の一般式(45)〜(69)から選ばれ、上述の一般式[a]で示される1価の基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)から選ばれた1つである。
【0097】
上述の一般式(1)〜(44)に示される2価の基Ar1は、芳香族化合物(複数の異性構造を含む。)及びその誘導体を母体として、この母体から、2個の水素原子を引き抜いて形成された2価の基である。なお、母体から引き抜かれる2個の水素原子の位置よって、2価の基(−Ar1−)は、複数の異性構造のものが存在する。この母体の芳香族炭化水素の例を次に示す。
【0098】
ベンゼン(benzene、C66)、ナフタレン(naphthalene、C108)、アントラセン(anthracene、C1410)、フェナントレン(phenanthrene、C1410)、テトラセン(ナフタセン)(tetracene(naphthacene)、C1812)、テトラフェン(ナフトアントラセン)(tetraphene(naphtoanthracene)、C1812)、クリセン(chrysene、C1812)、ピレン(pyrene、C1610)、ペリレン(perylene、C2012)、ビフェニル(biphenyl、C1210)、テルフェニル(terphenyl、C1814)、クァテルフェニル(quaterphenyl、C2418)、9H−フルオレン(C1310、9H-fluorene)、フェニル−9H−フルオレン(C1914、phenyl-9H-fluorene)、ジフェニル−9H−フルオレン(C2518、diphenyl-9H-fluorene)、ビ−[9H−フルオレン](C2618、bi-[9H-fluorene])、フェニルナフタレン(phenylnaphthalene、C1612)、ジフェニルナフタレン(diphenylnaphthalene、C2216)、ジフェニルナアントラセン(diphenylanthracene、C2618)、ビナフタレン(binaphthalene、C2014)、ビアントラセン(bianthracene、C2818)。
【0099】
次に、一般式(1)〜(44)を、置換基を有さない2価の芳香族炭化水素基(−Ar1−)を例にとって説明する。
【0100】
(1):p−フェニレン基、(2):1,4−ナフチレン基、(3):1,5−ナフチレン基、(4):9,10−アントリレン基、(5):1,4−アントリレン基、(6):1,5−アントリレン基、(7):6,11−ナフタセニレン基、(8):ベンゾ[a]アントラセン(benz[a]anthracene、C1812)の7位と2位の水素原子を引き抜いて形成された基、(9):5,11−クリセニレン基、(10):2,6−ナフチレン基。
【0101】
(11):6,10−フェナントリレン基、(12):6,12−クリセニレン基、(13):ベンゾ[a]アントラセンの2位と6位の水素原子を引き抜いて形成された基、(14):4,9−ピレニレン基、(15):2,6−アントリレン基、(16):1,6−ピレニレン基、(17):2,7−フェナントリレン基、(18):5,11−ペリレニレン基、(19):1,6−ペリレニレン基、(20):1,7−ペリレニレン基。
【0102】
(21):ベンゾ[a]アントラセンの5位と10位の水素原子を引き抜いて形成された基、(22):4,4’−ビフェ二レン基、(23):4,4’−テルフェニレン基、(24):4,4'−クァテルフェニレン基、(25):2,7−フルオレニレン基、(26):2−フェニル−9H−フルオレン(2-phenyl-9H-fluorene、C1914)における、9H−フルオレンの7位とフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(27):2,7−ジフェニル−9H−フルオレン(2,7-diphenyl-9H-fluorene、C2518)における、2個のフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0103】
(28):2,2'−ビ[9H−フルオレン](2,2'-bi[9H-fluorene]、C2618)における、7位、7’位の水素原子を引き抜いて形成された基、(29):1−フェニルナフタレン(phenylnaphthalene、C1612)における、ナフタレンの4位とフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(30):1,1'−ビナフタレン(1,1'-binaphthalene、C2014)における、4位、4’位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0104】
(31):2−フェニルナフタレン(2-phenylnaphthalene、C1612)における、ナフタレンの6位とフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(32):1,4−ジフェニルナフタレン(1,4-diphenylnaphthalene、C2216)における、2個のフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(33):9,10−ジフェニルアントラセン(9,10-diphenylanthracene、C2618)における、2個のフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(34):2,2’−ビナフタレン(2,2'-binaphthalene、C2014)における、6位、6’位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0105】
(35):1,5−ジフェニルナフタレン(1,5-diphenylnaphthalene、C2216)における、2個のフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(36):1,2−ジヒドロナフタレン(1,2-dihydronaphthalene、C1010)における、3位、7位の水素原子を引き抜いて形成された基、(37):1,2−ジヒドロフェナントレン(1,2-dihydrophenanthrene、C1412)における、3位、9位の水素原子を引き抜いて形成された基、(38):3,4−ジヒドロベンゾ[a]アントラセン(3,4-dihydrobenz[a]anthracene、C1814)における、2位、6位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0106】
(39):1,2−ジヒドロアントラセン(1,2-dihydroanthracene、C1412)における、3位、7位の水素原子を引き抜いて形成された基、(40):7−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(7-phenyl-1,2-dihydronaphthalene、C1614)における、ナフタレンの3位とフェニル基の4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(41):3−(2−ナフチル)−1,2−ジヒドロナフタレン(3-(2-naphthyl)-1,2-dihydronaphthalene、C2016)における、ナフチル基の6位、ジヒドロナフタレンの7位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0107】
(42):3−(1,2−ジヒドロナフチル)−1,2−ジヒドロナフタレン(3-(1,2-dihydronaphthyl)-1,2-dihydronaphthalene)における、ジヒドロナフチル基の7位、ジヒドロナフタレンの3位の水素原子を引き抜いて形成された基、(43):3−フェニル−1,2−ジヒドロアントラセン(3-phenyl-1,2-dihydronaphthalene、C2016)における、フェニル基の4位、ジヒドロアントラセン7位の水素原子を引き抜いて形成された基、(44):5,6,11,12−テトラヒドロクリセン(5,6,11,12-tetrahydorochrysene、C1816)。
【0108】
以上説明した(1)〜(44)は、上述の一般式(1)〜(44)において、置換基を有さない2価の芳香族炭化水素基(−Ar1−)である。そして、上記の(1)〜(44)に示した2価の芳香族炭化水素基において、ヒドロ基(−H)を置換基Rで置換したものが、上述の一般式(1)〜(44)である。
【0109】
[芳香族アミン化合物における上述の一般式[a]で示される1価の基]
上述の一般式[a]で示される基は、上述の一般式(45)〜(69)から選ばれた基であり、この選ばれた基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)から選ばれた少なくとも1つは、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、残りのRm(mは456から732の範囲の整数は、ヒドロ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラニル基、置換基を有してもよいアリル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいアントラニルオキシ基から選ばれた基である。
【0110】
上述の一般式[a]で示される基は、芳香族化合物(複数の異性構造を含む。)及びその誘導体を母体として、この母体から、1個の水素原子を引き抜いて形成された基である。なお、母体から引き抜かれる1個の水素原子の位置よって、1価の基は、複数の異性構造のものが存在する。この母体の芳香族炭化水素の例を次に示す。
【0111】
ベンゼン(benzene、C66)、ナフタレン(naphthalene、C108)、アントラセン(anthracene、C1410)、フェナントレン(phenanthrene、C1410)、テトラセン(ナフタセン)(tetracene(naphthacene)、C1812)、テトラフェン(ナフトアントラセン)(tetraphene(naphtoanthracene)、C1812)、クリセン(chrysene、C1812)、3,4−ベンゾフェナントレン(3,4-bennzophenanthrene)、C1812)、トリフェニレン(9,10−ベンゾフェナントレン)(triphenylene(9,10-benzophenanthrene)、C1812)。
【0112】
次に、上述の一般式[a]で示され、一般式(45)〜(69)で示される1価の基をを、置換基を有さない1価の芳香族炭化水素基とした場合を例にとって説明する。
(45):フェニル基、(46):1−ナフチル基、(47):2−ナフチル基、(48):1−アントリル基、(49):2−アントリル基、(50):9−アントリル基、(51):4−フェナントリル基、(52):3−フェナントリル基。
【0113】
(53):2−フェナントリル基、(54):1−フェナントリル基、(55):8−フェナントリル基、(56):1,2−ジヒドロナフタレン(1,2-dihydronaphthalene、C1010)における、3位の水素原子を引き抜いて形成された基、(57):1,2−ジヒドロフェナントレン(1,2-dihydrophenanthrene、C1412)における、3位の水素原子を引き抜いて形成された基、(58):3,4−ジヒドロフェナントレン(3,4-dihydrophenanthrene、C1412)における、2位の水素原子を引き抜いて形成された基、(59):1,2−ジヒドロアントラセン(1,2-dihydroanthracene、C1412)における、3位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0114】
(60):3,4−ジヒドロベンゾ[a]アントラセン(3,4-dihydrobenz[a]anthracene、C1814)における、2位の水素原子を引き抜いて形成された基、(61):1,2−ジヒドロベンゾ[a]アントラセン(1,2-dihydrobenz[a]anthracene、C1814)における、3位の水素原子を引き抜いて形成された基、(62):1,2−ジヒドロナフタセン(1,2-dihydronaphthacene、C1814)における、3位の水素原子を引き抜いて形成された基、(63):1,2−ジヒドロクリセン(1,2-dihydrochrysene、C1814)における、3位の水素原子を引き抜いて形成された基、(64):3,4−ジヒドロベンゾ[c]アントラセン(3,4-dihydrobenz[c]anthracene、C1814)における、5位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0115】
(65):1,2−ジヒドロトリフェニレン(1,2-dihydrotriphenylene、C1814)における、3位の水素原子を引き抜いて形成された基、(66):3,4−ジヒドロクリセン(3,4-dihydrochrysene、C1814)における、2位の水素原子を引き抜いて形成された基、(67):5,6−ジヒドロベンゾ[c]アントラセン(5,6-dihydrobenz[c]anthracene、C1814)における、4位の水素原子を引き抜いて形成された基、(68):10,11−ジヒドロベンゾ[a]アントラセン(10,11-dihydrobenz[a]anthracene、C1814)における、9位の水素原子を引き抜いて形成された基、(69):8,9−ジヒドロベンゾ[a]アントラセン(8,9-dihydrobenz[a]anthracene、C1814)における、10位の水素原子を引き抜いて形成された基。
【0116】
以上説明した(45)〜(69)は、上述の一般式(45)〜(69)において、置換基を有さない1価の芳香族炭化水素基である。そして、上記の(45)〜(69)に示した1価の芳香族炭化水素基において、ヒドロ基(−H)を置換基Rで置換したものが、上述の一般式(45)〜(69)である。
【0117】
なお、上記の2価の基(−Ar1−)、上記の1価の基(上述の一般式[a]で示される基)はそれぞれ、上記に示した母体以外から水素原子を引き抜いて形成された基であってもよい。例えば、次に示す母体から1個或いは2個の水素原子を引き抜いて形成された基(複数の異性構造の基が存在する。)であってもよい。
【0118】
ペンタレン(pentalene、C86)、ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene、C86)、1Hインデン(1H-indene、C98)、アズレン(azulene、C108)、アセナフチレン(acenaphthylene、C128)、インダセン(indacene、C128)、ビフェニレン(biphenylene、C128)、ヘプタレン(heptalene、C1210)、フェナレン(peri−ベンゾナフタレン)(phenalene(peri-benzonaphthalene)、C1310)、アセアントリレン(aceanthrylene、C1610)、フェニルナフタレン(phenylnaphthalene、C1612)、アセフェナントリレン(acephenanthrylene、C1610)、ペンタセン(pentacene、C2214)、ベンゾナフタセン(benznaphthacene、C2214)、ピセン(picene、C2214)、ベンゾクリセン(benzochrysene、C2214)、ジベンゾアントラセン(dibenzanthracene、C2214)、ジベンゾフェナンレン(dibenzphenanthrene、C2214)、ジベンゾピレン(dibenzopyrene、C2412)、テルナフタレン(ternaphthalene、C30H020)、クァテルナフタレン(quaternaphthalene、C40H026)、テルアントラセン(teranthracene、C4226)、クァテルアントラセン(quateranthracene、C5634)。
【0119】
[置換基R]
上述の一般式(1)〜(44)から選ばれたAr1の有するRk(kは1から453の範囲の整数)、上述の一般式(45)〜(69)から選ばれた1価の基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)、及び、Ar2の置換基Yはそれぞれ、次に示す基から選ばれた基である。なお、Ar2の置換基Yの少なくとも1つはトリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた基であるものとする。
【0120】
即ち、ヒドロ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、アリル基、メトキシ基(methoxy基、−OCH3)、エトキシ基(ethoxy基、−OCH2CH3)、n−プロポキシ基(n-propoxy基、−O(CH2)2CH3)、iso−プロポキシ基(iso-propoxy基、−OCH(CH3)2)、n−ブトキシ基(n-butoxy基、−O(CH2)3CH3)、iso−ブトキシ基(iso-butoxy基、−OCH2CH(CH3)2)、tert−ブトキシ基(tert-butoxy基、−O(CH3)3)、sec−ブトキシ基(sec-butoxy基、−OCH(CH3)CH2CH3)、シクロヘキシルオキシ基(cyclohexyloxy基、−OC611)、フェノキシ基(phenoxy基、−OC65)、ナフトキシ基(naphtoxy基、−OC107)、アントラニルオキシ(アントリルオキシ)基(anthryloxy基、−OC149)、フェナントリルオキシ基(phenanthryloxy基、−OC149)から選ばれる。
【0121】
ここで、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、アリル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラニルオキシ基、フェナントリルオキシ基は、置換基を有してもよい。
【0122】
上述の一般式(1)〜(44)から選ばれたAr1の有するRk(kは1から453の範囲の整数)は、それら全てがヒドロ基であってもよい。また、上述の一般式(45)〜(69)から選ばれた1価の基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)のうちの少なくとも1個又は2個は、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基(ハロ基)から選ばれた基である。
【0123】
本発明の芳香族アミン化合物として、次に示す(a)或いは(b)の第三アミン化合物が好ましい。
【0124】
(a)上述の一般式[I]において、X1がフェニル基(−C65)、X2が2−ナフチル基(−C107)、Ar1が2,6−ナフチレン基(−C106)であり、Ar2が9位及び10位にシアノ基(−CN)、7位にメチル基(−CH3)の置換基を有する2−フェナントリル基である上述の[Ia]によって示される第三アミン化合物。
【0125】
この第三アミン化合物は、無置換のフェニル基、無置換の2−ナフチル基、及び、2,6−ナフチレン基がそれぞれ、アミン窒素(N)に結合されている芳香族第三アミン化合物である。この2−フェナントリル基は、9位及び10位にシアノ基(−CN)、7位にメチル基の置換基を有する基(−C146CH3(CN)2)である。
【0126】
(b)上述の一般式[I]において、X1がフェニル基、X2が2−ナフチル基、Ar1が2,6−ナフチレン基であり、Ar2が9位及び10位にシアノ基の置換基を有する2,6−アントリル基である上述の[Ib]によって示される第三アミン化合物。
【0127】
この第三アミン化合物は、無置換のフェニル基、無置換の2−ナフチル基、及び、26−ナフチレン基がそれぞれ、アミン窒素(N)に結合されている芳香族第三アミン化合物である。この2,6−アントリル基は、9位及び10位にシアノ基(−CN)の置換基を有する基(−C147(CN)2)である。
【0128】
本発明による芳香族アミン化合物は、X1、X2の双方がヒドロ基である場合、第一アミン化合物であり、X1、X2の一方がヒドロ基、他方がアリール基である場合、第ニアミン化合物であり、X1、X2の双方がアリール基である場合、第三アミン化合物である。
【0129】
本発明による芳香族アミン化合物は、優れた特性を有する有機電界発光素の作製のために好適に使用することができる。上述の一般式[I]で示される構造を有する芳香族アミン化合物の複数種類のものを、発光領域を有する有機層に含ませて、有機電界発光素子を構成することができる。
【0130】
また、本発明の化合物を含む層を形成するに使用可能な材料としては、本発明の化合物の他に、ホール輸送材料(例えば、芳香族アミン類等)、電子輸送材料(例えば、Alq3、ピラゾリン類等)、又は、一般に赤色発光用ドーパントとして用いられる一連の化合物(DCM及びその類似化合物、ポルフィリン類、フタロシアニン類、ペリレン化合物、ナイルレッド、スクアリリウム化合物等)、及び導電性高分子(ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンビニレン等)が挙げられる。
【0131】
[芳香族アミン化合物と共に使用されるアントラセン誘導体化合物(ホスト化合物)]
本発明の有機電界発光素子は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に設けられた有機層とを有し、有機層の少なくとも一層が、上述の一般式[I]によって示される芳香族アミン化合物の少なくとも1種類、及び、アントラセン誘導体化合物の少なくとも1種類を含む混合層である。
【0132】
この有機電界発光素子において、有機層は、ホール輸送層、発光層、及び、電子輸送層が積層された構造を有しており、発光層が上記の混合層からなり、発光層が、ホスト材料とドーパント材料から形成され、上述の一般式[I]によって示される芳香族アミン化合物がドーパント材料として含有されている。
【0133】
即ち、発光層は、上述の一般式[I]によって示される芳香族アミン化合物とアントラセン誘導体化合物との混合層である。このアントラセン誘導体化合物として、上述の一般式[IIa]から一般式[IIe]によって示される化合物を使用することができる。発光層を、ホスト材料とドーパント材料から形成される混合層とすることによって、芳香族アミン化合物単独で発光層を構成した場合に比較して、発光強度(蛍光強度)を大幅に向上させることができ、耐熱性を向上させることができる。
【0134】
[IIa]:
【0135】
【化16】

【0136】
[IIa]によって示される化合物は、アントラセン誘導体からなる芳香族化合物であり、9位に1−ナフチル基(−C107)、10位にo−ビフェニル基(−C6465)を有するアントラセンであり、9−(ビフェニル−2−イル)アントラセン((C2618)、9-(biphenyl-2-yl)anthracene)の10位の水素原子を、1−ナフチル基(−C107)で置換した化合物である。
【0137】
[IIb]:
【0138】
【化17】

【0139】
[IIb]によって示される化合物は、フルオランテン(C1610、fluoranthene)とアントラセン(C1410、anthracene)が結合した芳香族化合物であり、アントラセンの9位、10位にそれぞれ、フルオランテニル基(fluoranthenyl基、−C169)が結合した構造を有する。
【0140】
一般式[IIc]:
【0141】
【化18】

【0142】
[IIc]によって示される化合物は、ナフタレンとアントラセンが結合した芳香族化合物であり、アントラセンの9位、10位にそれぞれ、2−ナフチル基(naphthyl基、−C107)が結合した構造を有する。
【0143】
一般式[IId]:
【0144】
【化19】

【0145】
[IId]によって示される化合物は、アントラセンの9位、10位にそれぞれ、1−ナフチル基(naphthyl基、−C107)、第1のフェニル基(phenyl基、−C65)が結合した構造を有し、第1のフェニル基が、置換基としてシアノ基(−CN)を有する第2のフェニル基(phenyl基、−C64(CN)を有している。
【0146】
一般式[IIe]:
【0147】
【化20】

【0148】
[IIe]によって示される化合物は、アントラセンの9位、10位にそれぞれ、イソプロピル基(isopropyl基、−C36)、第1のフェニル基(phenyl基、−C65)が結合した構造を有し、第1のフェニル基が、置換基として第2のフェニル基(phenyl基、−C64(CN)を有している。
【0149】
本発明による芳香族アミン化合物は、アミン窒素(N)に−X1、−X2、−Ar1−がそれぞれ結合され、上述の一般式[a]によって示される基が−Ar1−に結合してなるものである。X1、X2は、ヒドロ基、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた互いに同一又は異なる基、Ar1、Ar2はアリーレン基、YはAr2の置換基であり、置換基Yの少なくとも1つはトリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、残りの置換基Yは、ヒドロ基、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた基である。
【0150】
本発明による芳香族アミン化合物は、有機電界発光素子の電子輸送層、ホール輸送層、及び、発光層を構成する材料として、好適に使用することができ、最適な波長で高輝度且つ安定な赤色発光を呈する。
る。
【0151】
本発明による芳香族アミン化合物を備えた有機電界発光素子は、表示装置、照明装置等に好適に使用することができる。
【0152】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0153】
先ず、本発明による有機電界発光素子の構成例について説明する。
【0154】
<実施の形態>
[透過型有機電界発光素子の構成例]
図1は、本発明の実施の形態における、透過型有機電界発光素子40Aの構成例を説明する要部概略断面図である。
【0155】
図1に示す下面発光型の有機電界発光素子は、基板1上に、順次、透明陽極2、有機層(発光層)5、陰極3が積層され、積層されたこれらの層が保護膜4によって保護された構造を有し、透明陽極2と陰極3の間に電圧が印加されて、有機層5から発光30を生じる。この発光30は、陽極2を透過する透過型の構成によって、陰極3で反射されたものを含み、透明陽極2を透過して外部に放射され、透明な基板1の側から観測される。
【0156】
[反射型有機電界発光素子の構成例]
図2は、本発明の実施の形態における、反射型有機電界発光素子40Bの構成例を説明する要部概略断面図である。
【0157】
図2に示す上面発光型の有機電界発光素子は、基板1上に、順次、陽極2、有機層(発光層)5、薄い陰極3が積層され、積層されたこれらの層が保護膜4によって保護された構造を有し、陽極2と陰極3の間に電圧が印加されて、有機層5から発光30を生じる。この発光30は、陽極2によって反射される反射型の構成によって、陽極2で反射されたものを含み、薄い陰極3を透過して外部に放射され、陰極3の側から観測される。
【0158】
図1、図2において、基板1として、ガラス、プラスチック、又は、他の適宜の材料を用いることができ、有機電界発光素子を他の発光素子と組み合わせて用いる場合には、他の発光素子と基板を共用することもできる。
【0159】
陽極2として、ITO、SnO2等を使用できる。陰極3を構成する電極材料としては、Li、Mg、Ca等の活性な金属とAg、Al、In等の金属との合金或いは積層した構造を使用することができる。
【0160】
また、陰極3の厚さを調節することにより、透過型有機電界発光素子1Aにおいては、用途に合った光反射率、反射型有機電界発光素子1Bにおいては、用途に合った光透過率をそれぞれ得ることができる。有機電界発光素子全体を覆い封止して保護する保護層4は、耐湿性、低い水透過性、耐紫外線性を有し、透明な材質であり、気密性を保持することできるものであれば、各種の材料を使用することができる。
【0161】
また、有機層(発光層)5は、上述した芳香族アミン化合物を発光材料として含有している。この発光層について、有機電界発光30を得る層構成としては、従来公知の種々の構成を用いることができる。後述するように、例えば、正孔輸送層と電子輸送層の何れかを構成する材料が発光性を有する場合、これらの薄膜を積層した構造を使用できる。
【0162】
更に、電荷輸送性能を上げるために、正孔輸送層と電子輸送層の何れ若しくは両方が、複数種の材料の薄膜を積層した構造、又は、複数種の材料を混合した組成からなる薄膜を使用してもよい。
【0163】
また、発光性能を上げるために、少なくとも1種以上の蛍光性の材料を用いて、この材料からなる薄膜を正孔輸送層と電子輸送層の間に挟持した構造、更に、少なくとも1種以上の蛍光性の材料を正孔輸送層若しくは電子輸送層、又は、これらの両方に含ませた構造を使用してもよい。これらの場合には、発光効率を改善するために、正孔又は電子の輸送を制御するための薄膜をその層構成に含ませることも可能である。
【0164】
上述の一般式[I]で示した芳香族アミン化合物は、電子輸送性能と正孔輸送性能の両方を持つため、素子構造中、電子輸送性材料との混合発光層としても、或いは、正孔輸送性材料との混合発光層としても用いることが可能である。また、この化合物を含む混合層を電子輸送層と正孔輸送層に挟み込んだ構成で発光材料として用いることも可能である。
【0165】
なお、有機層5は、真空蒸着、スピンコート、インクジェット、スクリーン印刷、フレキソ印刷やオフセット印刷、グラビア印刷、レーザー転写、熱転写、エレクトロスプレイデポジション等の方法で作成することができる。
【0166】
本発明に基づく有機電界発光素子においては、有機層が、正孔輸送層と電子輸送層とが積層された有機積層構造(シングルへテロ構造)を有しており、正孔輸送層又は電子輸送層の形成材料として上述した芳香族アミン化合物を含む混合層が用いられてもよい。
【0167】
或いは、有機層が正孔輸送層と発光層と電子輸送層とが順次積層された有機積層構造(ダブルヘテロ構造)を有しており、発光層の形成材料として上述した芳香族アミン化合物を含む混合層が用いられてもよい。このような有機積層構造を有する有機電界発光素子の例を次に説明する。
【0168】
[シングルへテロ型の有機電界発光素子の構成例]
図3は、本発明の実施の形態における、シングルへテロ型の有機電界発光素子40Cの構成例を説明する要部概略断面図である。
【0169】
図3に示す下面発光型の有機電界発光素子は、基板1上に、順次、陽極2、正孔輸送層6と電子輸送層7とからなる有機層5a、陰極3とが積層され、積層されたこれらの層が保護膜4によって保護された構造を有している。陽極2と陰極3の間に電圧が印加されて、有機層5aから発光30を生じる。
【0170】
図3に示す発光層を省略した層構成の素子では、正孔輸送層6と電子輸送層7の界面から発生する所定波長の発光30は、陽極2を透過する透過型、又は、陽極2によって反射される反射型の構成によって、外部に放射される。透過型の構成では、陰極3で反射されたものを含み透明な陽極2を透過して放射され、透明な基板1側から観測され、反射型の構成では、陽極2で反射されたものを含み薄い陰極3を透過して放射され、陰極3の側から観測される。
【0171】
[ダブルへテロ型の有機電界発光素子の構成例]
図4は、本発明の実施の形態における、ダブルへテロ型の有機電界発光素子40Dの構成例を説明する要部概略断面図である。
【0172】
図4に示す上面発光型の有機電界発光素子は、基板1上に、順次、陽極2、正孔輸送層10と発光層11と電子輸送層12とからなる有機層5b、陰極3が積層され、積層されたこれらの層が保護膜4によって保護された構造を有している。陽極2と陰極3の間に電圧が印加されて、有機層5bから発光30を生じるダブルへテロ構造の有機電界発光素子40Dである。
【0173】
図4に示す層構成の素子では、陽極2と陰極3の間に直流電圧を印加することにより、陽極2から注入された正孔が正孔輸送層10を経て、また、陰極3から注入された電子が電子輸送層12を経て、それぞれ発光層11に到達する。この結果、発光層11においては電子/正孔の再結合が生じて一重項励起子が生成し、この一重項励起子から所定波長の発光30を発生する。
【0174】
図4に示す層構成の素子では、発光層11から発生する所定波長の発光30は、陽極2を透過する透過型、又は、陽極2によって反射される反射型の構成によって、外部に放射される。透過型の構成では、陰極3で反射されたものを含み透明な陽極2を透過して放射され、透明な基板1側から観測され、反射型の構成では、陽極2で反射されたものを含み薄い陰極3を透過して放射され、陰極3の側から観測される。
【0175】
図3、図4に示す有機電界発光素子において、基板1として、例えば、ガラス、プラスチック等の光透過性の材料を適宣用いることができる。図3、図4に示す素子を他の発光素子と組み合わせて用いる場合や、図3、図4に示す素子の積層構造をマトリックス状に配置する場合等には、この基板を共用してもよい。また、図3、図4に示す素子は何れも、上述したように、透過型、反射型の何れの構造も採ることができる。
【0176】
陽極2として、ITO(indium tin oxide)やSnO2等が使用できる。この陽極2と正孔輸送層6(又は、正孔輸送層10)との間には、電荷注入効率を改善する目的で、有機物若しくは有機金属化合物からなる薄膜を設けてもよい。なお、保護層4が金属等の導電性材料で形成されている場合は、陽極2の側面に絶縁膜が設けられていてもよい。
【0177】
陰極3に用いる材料としては、Li、Mg、Ca、Cs等の活性な金属とAg、Al、In等の金属との合金を使用でき、これらの金属層が積層した構造であってもよい。なお、陰極の厚みや材質を適宜選択することによって、透過型、反射型として構成され用途に見合った有機電界発光素子を作製できる。
【0178】
保護層4は、封止膜として作用するものであり、有機電界発光素子全体を覆う構造とすることで、電荷注入効率や発光効率を向上できる。保護層4はその気密性が保たれればよく、アルミニウム、金、クロム等の単金属又は合金、有機又は無機樹脂等から適宜その材料を選択することができる。
【0179】
図3に示すシングルへテロ構造の有機電界発光素子Cにおける有機層5aは、正孔輸送層6と電子輸送層7とが積層された有機層であり、これらの何れか又は双方に上述した芳香族アミン化合物を含む混合層が含有され、発光性の正孔輸送層6又は電子輸送層7としてよい。
【0180】
また、有機電界発光素子Cにおいて、発光層は電子輸送性発光層7であってよいが、電源から印加される電圧によっては、正孔輸送層6やその界面で発光される場合がある。
【0181】
図4に示すダブルへテロ構造の有機電界発光素子Dにおける有機層5bは、正孔輸送層10と上述した芳香族アミン化合物を含む混合層を含有する発光層11と電子輸送層12とが積層された有機層であるが、その他、種々の積層構造を採ることができる。例えば、正孔輸送層と電子輸送層の何れか若しくは両方が発光してもよい。
【0182】
また、正孔輸送層において、正孔輸送性能を向上させるため、複数種の正孔輸送材料を積層した正孔輸送層を形成してもよい。
【0183】
また、有機電界発光素子Dにおいて、発光層は、発光層11以外に、電子輸送層12であってもよく、正孔輸送層10であってもよい。発光性能を向上させるため、少なくとも1種の蛍光性材料を用いた発光層11を正孔輸送層と電子輸送層との間に狭持させた構造であるのがよい。また、この蛍光性材料を正孔輸送層又は電子輸送層、或いはこれら両層に含有させた構造を構成してよい。このような場合、発光効率を改善するために、正孔又は電子の輸送を制御するための薄膜(ホールブロッキング層やエキシトン生成層等)をその層構成に含ませることも可能である。
【0184】
上述した各有機電界発光素子A、B、C、Dに印加する電流は通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子が破壊しない範囲内であれば特に制限はないが、有機電界発光素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
【0185】
次に、本発明による有機電界発光素子を使用した表示装置の例について説明する。
【0186】
[有機電界発光素子を用いたフルカラー平面ディスプレイの構成例]
図5は、本発明の実施の形態における、有機電界発光素子を用いたフルカラーの平面ディスプレイの構成例を説明する図である。
【0187】
図5に示すように、例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色を発光可能な有機層5(5a、5b)が、陰極3と陽極2との間に配されている。陰極3及び陽極2は、互いに交差するストライプ状に設けることができる。陰極3及び陽極2は、輝度信号回路34及びシフトレジスタ内蔵の制御回路35により選択されて、それぞれに信号電圧が印加される。これによって、単純マトリックス方式又はアクティブマトリックス方式で選択された陰極3及び陽極2が交差する位置(画素)の有機層5が発光するように構成されている。
【0188】
図5に示す例は、8×3RGB単純マトリックスを示し、正孔輸送層5と電子輸送層6からなる有機層5a、又は、正孔輸送層5と発光層11と電子輸送層6からなる有機層5bを陰極3と陽極2の間に配設したものである(図3、図4参照)。陰極3と陽極2は共にストライプ状にパターニングされ、互いにマトリクス状に直交しており、シフトレジスタ内蔵の制御回路35及び輝度信号34により時系列的に信号電圧が印加される。これにより、陰極3と陽極2のストライプ状パターンの交差位置で発光するように構成されている。
【0189】
上述した有機電界発光素子は、文字・記号等のディスプレイとしては勿論、画像再生装置としても使用できる。また、陰極3と陽極2のストライプ状パターンを赤(R)、緑(G)、青(B)の色毎に配し、マルチカラー或いはフルカラーの全固体型フラットパネルディスプレイを構成することが可能となる。
【0190】
上述した各有機電界発光素子は薄膜トランジスタによって駆動されてもよい。
【0191】
次に、薄膜トランジスタ駆動上面発光素子の例を図6に示す。
【0192】
[薄膜トランジスタ駆動上面発光素子の構成例]
図6は、本発明の実施の形態における、薄膜トランジスタ駆動による上面発光(トップエミッション)素子の構成例を説明する要部概略断面図である。
【0193】
図6に示す発光素子は、有機層5から発生する発光が、陽極2で反射されたものを含み薄い陰極3を透過して放射され、陰極3の側から観測される反射型の素子として構成され上面に光が放射される上面発光(トップエミッション)素子である。
【0194】
図6に示すように、薄膜トランジスタ17は、ゲート電極23、ドレイン電極19、ソース電極24、半導体層21、層間絶縁膜22、層間絶縁膜20、配線25、配線26、絶縁膜27、平坦化層18等からなり、これらが基板1上に形成されている。発光30を生じる有機層(発光層)5、及び、陰極3が障壁16によって分離されて、有機電界発光素子の複数個が陽極2上に形成され、保護膜4によって保護されている。
【0195】
次に、本発明による芳香族アミン化合物の例について説明する。
【0196】
[芳香族アミン化合物の例]
本発明の芳香族アミン化合物の好ましい例として、次に示す化合物(71)、化合物(77)の第三アミン化合物を挙げることができる。
【0197】
化合物(71):N−フェニル−2,2’−[6’−(9’,10’−ジシアノ)フェナントリル]ジナフチルアミン
【0198】
【化21】

【0199】
化合物(77):N−フェニル−2,2’−[6’−(9’,10’−ジシアノ)アントリル]ジナフチルアミン
【0200】
【化22】

【0201】
化合物(71)は、上述の一般式[I]において、X1を2−フェニル基(−C65)、X2をナフチル基(−C107)、Ar1を2,6−ナフチレン基(−C106−)、Ar2を、9位及び10位にシアノ基(−CN)、7位にメチル基(−CH3)の置換基を有する2−フェナントリル基とする第三アミン化合物である。
【0202】
この第三アミン化合物は、無置換のフェニル基、無置換の2−ナフチル基、及び、2,6−ナフチレン基がそれぞれ、アミン窒素(N)に結合されている芳香族第三アミン化合物である。この2,6−ナフチレン基には、9位及び10位にシアノ基(−CN)、7位にメチル基の置換基を有する2−フェナントリル基(−C146CH3(CN)2)が結合されている。
【0203】
化合物(77)は、上述の一般式[I]において、X1をフェニル基、X2を2−ナフチル基、Ar1を2,6−ナフチレン基、Ar2を、9位及び10位にシアノ基の置換基を有する2−アントリレル基とする第三アミン化合物である。
【0204】
この第三アミン化合物は、無置換のフェニル基、無置換の2−ナフチル基、及び、2,62−ナフチル基がそれぞれ、アミン窒素(N)に結合されている芳香族第三アミン化合物である。この2,62−ナフチル基には、9位及び10位にシアノ基(−CN)の置換基を有する6−アントリル基(−C147(CN)2)が結合されている。
【0205】
次に、本発明による芳香族アミン化合物の合成例について説明する。
【0206】
[芳香族アミン化合物の合成例]
本発明による化合物(71)及び化合物(77)の合成スキームの例を次に説明する。
【0207】
[化合物(71)の芳香族第三アミン化合物の合成スキーム例]
図7は、本発明の実施の形態における、化合物(71)の合成スキーム例を説明する図である。
【0208】
先ず、化合物A1(C74BrN(4−ブロモフェニルイソシアニド))と化合物A2(C99N(p−メチルベンジルシアニド))を、Et2O(無水エチルエーテル)に溶解し、沃素I2を加える。次いで、NaOMe(ナトリウムメトキシド)のMeOH(メタノール)溶液を滴下、攪拌させて、化合物(72)を含む粗体を得る。
【0209】
化合物(72)を含む粗体をtoluene(トルエン)に溶解し、沃素I2を加えた反応溶液に酸素O2を通気させながら、紫外線を照射して、副生成物と化合物(73)を含む粗体を得る。この粗体をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製された化合物(73)を得る。
【0210】
化合物A3(C107BrO、6−ブロモ−ナフタレン−2−オール)のCH2Cl2((ジクロロメタン)溶液に、2,6-Lutidine(C79N、2,6−ルチジン、2,6−ジメチルピリジン)とCF3SO3H(トリフルオロメタンスルホン酸)を添加し反応させる。この反応液をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物(74)を得る。
【0211】
化合物(74)、化合物A4(C1613N、N‐フェニル−2−ナフチルアミン、2‐アニリノナフタレン)、Pd(OAc)2(二酢酸パラジウム(II))、P(t−Bu)3(Bu=C49、トリ(tert−ブチル)ホスフィン)、Na(O−tBu)(ナトリウムtert−ブトキシド)、及び、xylenes(0−キシレン、m−キシレン、p−キシレンの混合物を xylenes という。)を、Ar(アルゴン)ガス流下で、混合し、反応させる。この反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物(75)を得る。
【0212】
化合物(75)、化合物A5(C122424、ビスピナコラートジボロン、bis(pinacolate)diboron)、PdCl2(dppf)(C3428FeP2・PdCl2、ジクロロパラジウムジフェニルフォスフィノフェロセン、(bis(diphenylphosphino)ferrocene)dichloropalladium)、dppf(C3428FeP2、ジフェニルフォスフィノフェロセン)、KOAc(酢酸カリウム)、及び、1,4-dioxane(C482)を混合し、Arガス流下で、還流させ反応させる。この反応液をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物(76)を得る。なお、PdCl2(dppf)は、フェロセン骨格上に2個のホスフィン部位を有する構造をもつdppf(C3428FeP2)とPdCl2との配位化合物である。
【0213】
化合物(76)、化合物(73)を含む粗体、Pd(PPh34(Pd[P(C6534、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、Tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、MeOCH2CH2OMe(1,2−ジメトキシエタン)を混合し、Arガス流下で、還流させ反応させて化合物(71)を含む粗体を得る。この粗体をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物(71)を得る。
【0214】
[化合物(77)の芳香族第三アミン化合物の合成スキーム例]
図8は、本発明の実施の形態における、化合物(77)の合成スキーム例を説明する図である。
【0215】
化合物(78)及び化合物(79)は、図7に示す化合物(75)及び化合物(76)と同様にして合成することができる。
【0216】
図7と同様にして得られた化合物(74)、化合物B1(C1613N、N−フェニル−1−ナフチルアミン、1−アニリノナフタレン)、Pd(OAc)2(二酢酸パラジウム(II))、P(t−Bu)3(Bu=C49、トリ(tert−ブチル)ホスフィン)、Na(O−tBu)(ナトリウムtert−ブトキシド)、及び、xylenes を混合し、Arガス流下で、反応させる。この反応液をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物(78)を得る。
【0217】
化合物(78)、化合物A5(ビスピナコラートジボロン(C122424))、PdCl2(dppf)(C3428FeP2・PdCl2、ジクロロパラジウムジフェニルフォスフィノフェロセン、(bis(diphenylphosphino)ferrocene)dichloropalladium)、dppf(C3428FeP2、ジフェニルフォスフィノフェロセン)、KOAc(酢酸カリウム)、及び、1,4-dioxane(C482)を混合し、Arガス流下で、還流させ反応させる。この反応液をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物(79)を得る。
【0218】
暗室にてオイル除去したNaH(水素化ナトリウム)と、脱水DMSO(C26OS、ジメチルスルホキシド)と、化合物B2(C147Cl2、2−クロロ−9,10−アントラキノン)を混合する。この混合液に、アルゴン雰囲気下で、Me3+-(C39+-(トリメチルヨード硫黄(IV)、trimethyliodosulfur(IV)))の脱水DMSO溶液を室温以下で時間をかけて滴下する。室温で攪拌後、氷水に注ぎ、終夜攪拌する。酢酸エチルを加え分液する。有機層を水、食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下濃縮して、化合物B2をエポキシ化(epoxidization)させて化合物(エポキシド)(80)の粗液体を得る。なお、C39+-は、C39+(トリメチルスルホニウム、trimethylsulfonium)とI-の塩である。
【0219】
LiBr(臭化リチウム)及びKI(ヨウ化カリウム)の acetonitrile(C23N、アセトニトリル)溶液に、暗室にてアルゴン雰囲気下で、化合物(80)を加える。加温下
にて長時間攪拌し反応させた後、析出した固体をろ別する。粗結晶をアセトニトリルで洗浄して、化合物(80)のエポキシ環を開環させたオレンジ色結晶の化合物(81)を得る。
【0220】
化合物(81)から化合物(82)を経て化合物(83)を得る方法は、一般的な有機合成の手法に従って、化合物(81)のNEt3/pyridine:SO3酸化により、−COHを選択的に−C=Oに酸化して、化合物(82)を得、続いて、NH4OH・HCl(塩酸ヒドロキシアンモニウム)によりアルデヒド化合物(82)からオキシムを経由してニトリル化合物(83)を得ることができる。
【0221】
化合物(81)の脱水DMSO溶液に、37℃以下、アルゴン雰囲気下で、NEt3(C615N、トリエチルアミン)とPyridine:SO3(C55N・SO3、ピリジン・三酸化硫黄錯体、Pyridine-Sulfur Trioxide Complex、sulfur trioxide・pyridine salt)を加える。攪拌後、水に注ぎ、析出物をろ過し、この析出物を、再度、水中で懸濁させ攪拌後、ろ過する。次に、メタノール中で懸濁させ攪拌後、ろ過し、オレンジ色結晶の化合物(82)を得る。
【0222】
NaOAc(酢酸ナトリウム)のHOAc(AcはCH3COを示し、HOAcは酢酸である。)溶液に、NH4OH・HCl(塩酸ヒドロキシアンモニウム)と化合物(82)を加えて還流し反応させ、冷却後、水に注ぎ、結晶をろ過する。得られた結晶粗体を、水とメタノールで順に洗浄した後、シリカゲルカラム(溶出液:熱トルエン)で精製し、得られた粗精製固体をTHF(テトラヒドロフラン)で複数回再結晶して鮮黄色結晶の化合物(83)を得る。
【0223】
化合物(79)、化合物(83)、Pd(PPh34(Pd[P(C6534、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、Tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、DME(MeOCH2CH2OMe、1,2−ジメトキシエタン)を混合し、Arガス流下で、還流して反応させる。反応液を減圧乾燥し、得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:熱トルエン)で精製し、赤色の粗体を得る。これを昇華精製し、化合物(77)の純品を得る。
【0224】
次に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0225】
<実施例>
[有機電界発光素子(その1)]
先ず、化合物(71)、下記のホスト化合物(84)を含む有機発光層を用いた有機電界発光素子について説明する。
【0226】
(1)化合物(71)を含む有機発光層の構成と蛍光強度
ガラス基板上に真空蒸着法により10-4Pa以下の真空下で、化合物(71)とホスト化合物(84)の混合膜(共蒸着膜、厚さ25nm)を形成した。
【0227】
化合物(71):
【0228】
【化23】

【0229】
化合物(84):
【0230】
【化24】

【0231】
ホスト化合物(84)は、アントラセン誘導体からなる芳香族化合物であり、9位に1−ナフチル基(−C107)、10位にo−ビフェニル基(−C6465)を有する9−(ビフェニル−2−イル)−10−(1−ナフチル)アントラセン(C3624、9-(biphenyl-2-yl)-10-(1-naphthyl)anthracene)である。ホスト化合物(84)は、9−(ビフェニル−2−イル)アントラセン)(C2618、9-(biphenyl-2-yl)anthracene)の10位のヒドロ基(−H)を1−ナフチレン基(−C107)で置換して得ることができる。化合物(84)は、9−(1−ナフチル)−10−ブロモ−アントラセンと2−ビフェニルボロン酸を反応させて合成することができるが、合成方法の詳細については、実施例において後述する。
【0232】
図9は、本発明の実施例における、化合物(71)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【0233】
図9は蛍光スペクトルを示し、横軸は波長(nm)、縦軸は蛍光強度(任意単位)を示す。図9において、(a)は化合物(71)100%の薄膜に関する蛍光スペクトル、(b)は化合物(71)40%とホスト化合物(84)60%の混合膜(共蒸着膜)の蛍光スペクトルを示す(共蒸着膜の組成を示す%は体積%である。以下の説明においても同様である。)。
【0234】
なお、図9において、(a)は化合物(71)の吸収極大である453nm、(b)はホスト化合物(84)の吸収極大である382nmでそれぞれ励起して得られた蛍光スペクトルであり、共蒸着膜ではホスト化合物(84)の蛍光が見えずに、エネルギー移動の結果、化合物(71)から赤色の蛍光が見えている。
【0235】
図9中の(a)に示す化合物(71)100%薄膜に関する蛍光スペクトルは、蛍光極大610nmで良好な赤色発光材料となることが示された。一方、図9中の(b)に示す共蒸着膜では、蛍光強度が、(a)は化合物(71)100%の薄膜に比べて、3倍に増加し、適切なフィルターと組み合わせることで良好な赤色発光素子を与えることを示唆している。
【0236】
(2)有機電界発光素子の作製
第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層によって構成された正孔輸送層層10(図4を参照。)と、化合物(71)とホスト化合物(84)の混合層(共蒸着膜)からなる発光層を有する、図4に示すダブルヘテロ構造透過型有機電界発光素子を作製した。
【0237】
第一の正孔輸送層は、m−MTDATA(C57484、4,4',4”-tris(3-methyl-phenylphenylamino)tri-phenylamine、トリス[4−(3−メチルフェニルアミノ)フェニル]アミン)からなる。第ニの正孔輸送層は、α−NPD(C44322、4,4'-bis[N,N'-di(1-naphthyl)-N,N'-diphenyl]biphenyldiamine、4,4'−ビス[フェニル(1−ナフチル)アミノ]ビフェニル)からなる。
【0238】
m−MTDATA:
【0239】
【化25】

【0240】
α−NPD:
【0241】
【化26】

【0242】
先ず、真空蒸着装置中に、100nmの厚さのITOからなる陽極が一表面に形成された30mm×30mmのガラス基板をセッティングした。蒸着マスクとして複数の2.0mm×2.0mmの単位開口を有する金属マスクを基板に近接して配置し、真空蒸着法により10-4Pa以下の真空下で、第一の正孔輸送層を構成する材料であるm−MTDATAを110nmの厚さで蒸着した。続いて、第二の正孔輸送層を構成する材料であるα−NPDを110nmの厚さで蒸着した。
【0243】
更に、発光層を構成する材料として化合物(71)とホスト化合物(84)を40%:60%の比率となるように正孔輸送層に接して65nmの厚さで蒸着した。更に、電子輸送層としてAlq3(C2718AlN33、tris(8-quinolinyloxy) aluminum、トリス(8−キノリノール)アルミニウム)を発光層に接して30nmの厚さで蒸着した。蒸着レートは各々0.2nm/秒とした。
【0244】
陰極を構成する材料としてMgとAgの積層膜を採用し蒸着により、蒸着レート1nm/秒として、Mg膜を50mnの厚さ、及び、Ag膜を150nmの厚さで形成し、図4に示したような有機電界発光素子を作製した。
【0245】
(3)有機電界発光素子の特性
以上のようにして作製した有機電界発光素子に、窒素雰囲気下で順バイアス直流電圧を加えて発光特性を評価した。発光色は赤色であり、分光測定を行った結果、図9と類似の発光スペクトルを得た。分光測定は、大塚電子社製のフォトダイオードアレイを検出器とした分光器を用いた。また、電圧−輝度特性、外部量子効率を測定した。
【0246】
図10は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図であり、横軸は印加電圧(V)、縦軸は輝度(Cd/cm2)を示す。
【0247】
図11は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図であり、横軸は輝度(Cd/cm2)、縦軸は外部量子効率(%)を示す。
【0248】
図12は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の発光スペクトル(有機電界発光スペクトル)の例を示す図であり、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を示す。
【0249】
図10、図11に示すように、電圧−輝度特性の測定から、8Vで3000cd/m2の輝度であり、このときの外部量子効率は2.2%と非常に高効率であり、図12はこのときの有機電界発光スペクトルを示す。
【0250】
この有機電界発光素子の作製後、窒素雰囲気下に1カ月間放置したが、発光素子の特性劣化は観察されなかった。また、初期輝度100cd/m2で電流値を一定に通電して連続発光させて、強制劣化させた際、輝度が半減するまでの時間は2000時間であった。
【0251】
[有機電界発光素子(その2)]
次に、化合物(77)、下記のホスト化合物(85)を含む有機発光層を用いた有機電界発光素子について説明する。
【0252】
(1)化合物(77)を含む有機発光層の構成と蛍光強度
ガラス基板上に真空蒸着法により10-4Pa以下の真空下で、化合物(77)とホスト化合物(85)の混合膜(共蒸着膜、厚さ30nm)を形成した。
【0253】
化合物(77):
【0254】
【化27】

【0255】
化合物(85):9,10−ジ(3−フルオランテニル)アントラセン
【0256】
【化28】

【0257】
化合物(85)は、特許文献5及び特許文献6に記載されている化合物である。この化合物(85)は、フルオランテン(C1610、fluoranthene)とアントラセン(C1410、anthracene)が結合した芳香族化合物であり、アントラセンの9位、10位にそれぞれ、フルオランテニル基(fluoranthenyl基、−C169)が結合した構造を有する。
【0258】
図13は、本発明の実施例における、化合物(77)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【0259】
図13は蛍光スペクトルを示し、横軸は波長(nm)、縦軸は蛍光強度(任意単位)を示す。図13において、(a)は化合物(77)100%の薄膜に関する蛍光スペクトル、(b)は化合物(77)5%とホスト化合物(85)95%の混合膜(共蒸着膜)の蛍光スペクトルを示す。
【0260】
なお、図9において、(a)は化合物(77)の吸収極大である484nm、(b)はホスト化合物(85)の吸収極大である384nmでそれぞれ励起して得られた蛍光スペクトルであり、共蒸着膜ではホスト化合物(85)の蛍光が抑制され、エネルギー移動の結果、化合物(77)から赤色の蛍光が見えている。
【0261】
図13中の(a)に示す化合物(77)100%薄膜に関する蛍光スペクトルは、蛍光極大695nmで深赤色発光材料となることが示された。一方、図13中の(b)に示す共蒸着膜では、蛍光強度が、(a)は化合物(77)100%の薄膜に比べて、100倍に増加し、適切なフィルターと組み合わせることで良好な赤色発光素子を与えることを示唆している。
【0262】
(2)有機電界発光素子の作製
第一の正孔輸送層と第二の正孔輸送層によって構成された正孔輸送層層10(図4を参照。)と、化合物(77)とホスト化合物(85)の混合層(共蒸着膜)からなる発光層を有する、図4に示すダブルヘテロ構造透過型有機電界発光素子を作製した。第一の正孔輸送層はm−MTDATA、第ニの正孔輸送層はα−NPDである。
【0263】
先ず、真空蒸着装置中に、100nmの厚さのITOからなる陽極が一表面に形成された30mm×30mmのガラス基板をセッティングした。蒸着マスクとして複数の2.0mm×2.0mmの単位開口を有する金属マスクを基板に近接して配置し、真空蒸着法により10-4Pa以下の真空下で、第一の正孔輸送層を構成する材料であるm−MTDATAを110nmの厚さで蒸着した。続いて、第二の正孔輸送層を構成する材料であるα−NPDを140nmの厚さで蒸着した。
【0264】
更に、発光層を構成する材料として化合物(77)とホスト化合物(85)を5%:95%の比率となるように正孔輸送層に接して55nmの厚さで蒸着した。更に、電子輸送層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)を発光層に接して30nmの厚さで蒸着した。蒸着レートは各々0.2nm/秒とした。
【0265】
陰極を構成する材料としてMgとAgの積層膜を採用し蒸着により、蒸着レート1nm/秒として、Mg膜を50mnの厚さ、及び、Ag膜を150nmの厚さで形成し、図4に示したような有機電界発光素子を作製した。
【0266】
(3)有機電界発光素子の特性
以上のようにして作製した有機電界発光素子に、窒素雰囲気下で順バイアス直流電圧を加えて発光特性を評価した。発光色は赤色であり、分光測定を行った結果、図9と同様の発光スペクトルを得た。分光測定は、大塚電子社製のフォトダイオードアレイを検出器とした分光器を用いた。また、電圧−輝度特性、外部量子効率を測定した。
【0267】
図14は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図であり、横軸は印加電圧(V)、縦軸は輝度(Cd/cm2)を示す。
【0268】
図15は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図であり、横軸は輝度(Cd/cm2)、縦軸は外部量子効率(%)を示す。
【0269】
図16は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の発光スペクトル(有機電界発光スペクトル)の例を示す図であり、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を示す。
【0270】
図14、図15に示すように、電圧−輝度特性の測定から、8Vで500cd/m2の輝度であり、このときの外部量子効率は1.8%と非常に高効率であり、図16はこのときの有機電界発光スペクトルを示す。
【0271】
この有機電界発光素子の作製後、窒素雰囲気下に1カ月間放置したが、発光素子の特性劣化は観察されなかった。また、初期輝度100cd/m2で電流値を一定に通電して連続発光させて、強制劣化させた際、輝度が半減するまでの時間は2000時間であった。
【0272】
[有機電界発光素子(その3)]
次に、化合物(71)、下記のホスト化合物(86)を含む有機発光層を用いた有機電界発光素子について説明する。
【0273】
(1)化合物(71)を含む有機発光層の構成と蛍光強度
ガラス基板上に真空蒸着法により10-4Pa以下の真空下で、化合物(71)とホスト化合物(86)(ADNの慣用名で知られている。)の混合膜(共蒸着膜、厚さ25nm)を形成した。
【0274】
化合物(86):9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン
【0275】
【化29】

【0276】
図17は、本発明の実施例における、化合物(71)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【0277】
図17は蛍光スペクトルを示し、横軸は波長(nm)、縦軸は蛍光強度(任意単位)を示す。図17において、(a)は化合物(71)100%の薄膜に関する蛍光スペクトル、(b)は化合物(71)30%とホスト化合物(86)70%の混合膜(共蒸着膜)の蛍光スペクトルを示す。
【0278】
なお、図17において、(a)は化合物(71)の吸収極大である453nm、(b)はホスト化合物(86)の吸収極大である382nmでそれぞれ励起して得られた蛍光スペクトルであり、共蒸着膜ではホスト化合物(86)の蛍光が見えずに、エネルギー移動の結果、化合物(71)から赤色の蛍光が見えている。共蒸着膜では蛍光強度が2.3倍に増加し、適切なフィルターと組み合わせることによって、良好な赤色発光素子を与えることを示唆している。
【0279】
(2)有機電界発光素子の作製
有機電界発光素子(その1)において、発光層を、化合物(71)とホスト化合物(86)の比率が30%:70%となるように、正孔輸送層に接して厚さ35nmで共蒸着し、その他は有機電界発光素子(その1)と同様にして、ダブルヘテロ構造透過型の有機電界発光素子を作製した。
【0280】
(3)有機電界発光素子の特性
上述のようにして作製された有機電界発光素子に、窒素雰囲気下で順バイアス直流電圧を加えて発光特性を評価した。発光色は赤色であり、分光測定を行った結果、図17と類似の発光スペクトルを得た。分光測定は、大塚電子社製のフォトダイオードアレイを検出器とした分光器を用いた。また、電圧−輝度特性、外部量子効率を測定した。
【0281】
図18は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図であり、横軸は印加電圧(V)、縦軸は輝度(Cd/cm2)を示す。
【0282】
図19は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図であり、横軸は輝度(Cd/cm2)、縦軸は外部量子効率(%)を示す。
【0283】
図20は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の発光スペクトル(有機電界発光スペクトル)の例を示す図であり、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を示す。
【0284】
図18、図19に示すように、電圧−輝度特性の測定から、8Vで3500cd/m2の輝度、このときの外部量子効率は2.4%と非常に高効率であり、図20はこのときの有機電界発光スペクトルを示す。
【0285】
この有機電界発光素子の作製後、窒素雰囲気下に1カ月間放置したが、発光素子の特性劣化は観察されなかった。また、初期輝度100cd/m2で電流値を一定に通電して連続発光させて、強制劣化させた際、輝度が半減するまで2100時間であった。
【0286】
[有機電界発光素子(その4)]
次に、化合物(77)、ホスト化合物(86)を含む有機発光層を用いた有機電界発光素子について説明する。
【0287】
(1)化合物(77)を含む有機発光層の構成と蛍光強度
ガラス基板上に真空蒸着法により10-4Pa以下の真空下で化合物(77)とホスト化合物(86)の混合膜(共蒸着膜、厚さ25nm)を形成した。
【0288】
図21は、本発明の実施例における、化合物(77)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【0289】
図21は蛍光スペクトルを示し、横軸は波長(nm)、縦軸は蛍光強度(任意単位)を示す。図21において、(a)は化合物(77)100%の薄膜に関する蛍光スペクトル、(b)は化合物(77)5%とホスト化合物(86)95%の混合膜(共蒸着膜)の蛍光スペクトルを示す。
【0290】
なお、図21において、(a)は化合物(77)の吸収極大である384nm、(b)はホスト化合物(86)の吸収極大である382nmでそれぞれ励起して得られた蛍光スペクトルであり、共蒸着膜ではホスト化合物(86)の蛍光が抑制され、代わりにエネルギー移動の結果、化合物(77)から赤色の蛍光が見えている。共蒸着膜では蛍光強度が110倍に増加し、適切なフィルターと組み合わせることによって、良好な赤色発光素子を与えることを示唆している。
【0291】
(2)有機電界発光素子の作製
有機電界発光素子(その1)において、発光層を、化合物(77)とホスト化合物(86)の比率が5%:95%となるように、正孔輸送層に接して厚さ50nmで共蒸着し、更に、電子輸送層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)を発光層に接して20nm蒸着し、その他は有機電界発光素子(その1)と同様にして、ダブルヘテロ構造透過型の有機電界発光素子を作製した。
【0292】
(3)有機電界発光素子の特性
上述のようにして作製された有機電界発光素子に、窒素雰囲気下で順バイアス直流電圧を加えて発光特性を評価した。発光色は赤色であり、分光測定を行った結果、図21と類似の発光スペクトルを得た。分光測定は、大塚電子社製のフォトダイオードアレイを検出器とした分光器を用いた。また、電圧−輝度特性、外部量子効率を測定した。
【0293】
図22は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図であり、横軸は印加電圧(V)、縦軸は輝度(Cd/cm2)を示す。
【0294】
図23は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図であり、横軸は輝度(Cd/cm2)、縦軸は外部量子効率(%)を示す。
【0295】
図24は、本発明の実施例における、有機電界発光素子の発光スペクトル(有機電界発光スペクトル)の例を示す図であり、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を示す。
【0296】
図22、図23に示すように、電圧−輝度特性の測定から、8Vで220cd/m2の輝度、このときの外部量子効率は1.2%と非常に高効率であり、図24はこのときの有機電界発光スペクトルを示す。
【0297】
この有機電界発光素子の作製後、窒素雰囲気下に1カ月間放置したが、発光素子の特性劣化は観察されなかった。また、初期輝度100cd/m2で電流値を一定に通電して連続発光させて、強制劣化させた際、輝度が半減するまで1800時間であった。
【0298】
なお、上述した有機電界発光素子(その1)〜有機電界発光素子(その4)において、ホスト化合物として、後述するホスト化合物(87)、ホスト化合物(88)を使用することもできる。また、芳香族アミン化合物とホスト化合物の組合せは、変更してもよい。
【0299】
次に、本発明による芳香族アミン化合物、ホスト化合物の合成例について説明する。
【0300】
[芳香族アミン化合物の合成例]
本発明による化合物(71)及び化合物(77)の合成例を、図7に従って以下に説明する。
【0301】
(1)化合物(71)の芳香族第三アミン化合物の合成例
化合物(71):
【0302】
【化30】

【0303】
(1−1)化合物(72)の合成例
化合物A1(C74BrN、4−ブロモフェニルイソシアニド、p-bromo-tolucyanide)48.0g(0.24mol)と化合物A2(C99N、p−メチルベンジルシアニド、p-xylylcyanide)96.4g(0.73mol)を、Et2O(無水エチルエーテル)1.5Lに溶解した。ヨウ素(I2)249g(0.98mol)を加えた。続いて、反応液を氷浴上で15℃に保ちつつ、NaOMe(ナトリウムメトキシド)106g(1.96mol)のMeOH(メタノール)溶液500mLを滴下し、30分間攪拌した。析出結晶をろ別し、MeOHで洗浄後、化合物(72)の他に副生成物を含む粗体95.2gを得た。
【0304】
(1−2)化合物(73)の合成例
化合物(72)を含む粗体93.5gをtoluene(トルエン)19Lに溶解し、ヨウ素(I2)5g(19.7mmol)を添加した。反応溶液に酸素を通気させ、攪拌しながら2日間紫外線を照射した。反応液を半分に濃縮し、析出結晶をろ別した。粗結晶をシリカゲルクリマトグラフィー(溶出液:toluene)にて精製し、化合物(73)の他に副生成物を含む祖体17gを得た。
【0305】
(1−3)化合物(74)の合成例
化合物A3(6-bromonaphthol、C107BrO、6−ブロモ−ナフタレン−2−オール)29.6g(0.13mol)の dichloromethane(CH2Cl2、ジクロロメタン)溶液450mLに、2,6-Lutidine(C79N、2,6−ルチジン、2,6−ジメチルピリジン)28.4g(0.26mol)と trifluoromethanesulfonic acid(CF3SO3H、トリフルオロメタンスルホン酸)44.4g(0.16mol)を添加し、35℃で1時間攪拌した。反応液をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:toluene)にて精製し、化合物(74)46.0g(収率98%)を得た。
【0306】
(1−4)化合物(75)の合成例
化合物(74)45.0g(0.13mol)、N-phenyl-2-naphthylamine 27.9g(0.13mol)、Pd(OAc)2 0.70g(3.1mmol)、化合物A4(tri-tert-phenylphosphine、C1613N、N−フェニル−2−ナフチルアミン、2−アニリノナフタレン)2.85g(14.1mol)、Na(O-tert-Bu)(ナトリウムtert−ブトキシド)14.7g(0.15mol)、及び、xylenes 418mLを、Arガス流下で、混合して120℃で2時間攪拌した。反応液に水を加えて分液し、有機層を減圧濃縮した。粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:toluene)で精製し、化合物(75)53.9g(収率86%)を得た。
【0307】
(1−5)化合物(76)の合成例
化合物(75)40.5g(0.082mol)、化合物A5(C122424、bis(pinacolate)diboron、ビスピナコラートジボロン)25.0g(0.098mol)、PdCl2(dppf)(C3428FeP2・PdCl2、ジクロロパラジウムジフェニルフォスフィノフェロセン、bis(diphenylphosphino)ferrocene))dichloropalladium)3.9g(5.3mmol)、dppf(C3428FeP2、ジフェニルフォスフィノフェロセン)1.4g(2.5mol)、K(OAc)2(酢酸カリウム)24.3g(0.25mol)、及び、1,4-dioxane(C482)486mLを混合して、Arガス流下で、一晩還流し反応させた。反応液を減圧乾燥し粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:toluene/hexane=2/3〜2/1)で精製し、化合物(76) 25.0g(収率65%)を得た。
【0308】
(1−6)化合物(71)の合成例
化合物(76)13.0g(27.6mol)、化合物(73)を約35%含む粗体16g、Pd(PPh34(Pd[P(C6534、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))1.8g(1.6mmol)、1MNa2CO3(炭酸ナトリウム)96mL、ethyleneglycol(MeOCH2CH2OMe、1,2−ジメトキシエタン)、dimethyl ether(C26O、DME、ジメチエーテル)113mLを混合して、Arガス流下で、一晩還流し反応させた。反応液を減圧乾燥し粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:toluene)で精製し、化合物(71)を含む粗体21gを得た。昇華精製により化合物(71)の純品3.0g(5.1mmol)を得た(昇華後の収率18%)。
【0309】
図25は、本発明の実施例における、化合物(71)の 1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
【0310】
図25において、横軸はケミカルシフト(ppm)、縦軸は核磁気共鳴信号強度を示し、各信号ピークのケミカルシフト値を上部に示し、信号ピークの近傍に信号強度を示している。なお、NMRスペクトルは、日本電子株式会社の型番 JNM-AL300 FT NMR装置を用いて測定した。
【0311】
δppm(300MHz,CDCl);2.74(s,3H),7.13(t,1H),7.22−7.26(m,2H),7.31−7.45(m,6H),7.52(d,2H),7.62(d,1H),7.69(d,1H),7.75−7.89(m,5H),8.14−8.18(m,2H),8.26(d,1H),8.42(d,1H),8.62(s,1H),8.96(s,1H)。
【0312】
脂肪族水素3個に対して芳香族水素が24個観測されており、化合物(71)の分子構造と一致する。
【0313】
図26は、本発明の実施例における、化合物(71)の MALDI-TOF-MS(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization−Time Of Flight−Mass Spectrometer、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法−飛行時間型−質量分析計)スペクトルを示す図である。
【0314】
図26に示すMSスペクトルは、島津製作所製の型番 KRATOS AXIMA-CFR の装置を用いて測定したものであり、測定された各ピークに関するm/z(m:分子量、z:電荷数)の計算値を示す。
【0315】
図26に示すように、化合物(71)(化学式C43273)の分子量の計算値585.69に対して、測定された各ピークに関するm/z(m:分子量、z:電荷数)とパターン係数(出現頻度係数)は、585.22(100%)、586.22(47.6%)、587.23(10.7%)、588.23(1.6%)であった。分子量の測定値は585.84であった。
【0316】
図25、図26に示したNMRスペクトル、MSスペクトルは、合成された化合物(71)が所望のものであることを示していた。
【0317】
次に、合成された化合物(71)の吸収、発光特性について説明する。吸収スペクトル、発光スペクトルは、日立製作所製の型番 U-3310 分光光度計及び FL-4500 蛍光光度計を用いて測定した。化合物(71)はTHF中で吸収極大425nm、モル吸光係数24,200を示し、蛍光極大641nm、蛍光量子収率0.24を示した。
【0318】
なお、示差走査熱量測定(DSC、Differential Thermal Analysis)により、化合物(71)のガラス転移温度は観測されず、融点は307℃であることを確認した。
【0319】
(2)化合物(77)の芳香族第三アミン化合物の合成例
化合物(77):
【0320】
【化31】

【0321】
(2−1)化合物(78)の合成例
図8に示す化合物(78)は、図7に示す化合物(75)と同様の方法にて合成した。
【0322】
(2−2)化合物(79)の合成例
図8に示す化合物(79)は、図7に示す化合物(76)と同様の方法にて合成した。
【0323】
(2−3)化合物(80)の合成例
暗室にてオイル除去した60%NaH(水素化ナトリウム)18.0g(0.45mol)と、脱水DMSO(C26OS、ジメチルスルホキシド)(1.2L)と、化合物B2(C147Cl2、2−クロロ−9,10−アントラキノン)48.5g(0.20mol)を混合した。この混合液に、アルゴン雰囲気下で、Me3+-(C39+-(トリメチルヨード硫黄(IV)、trimethyliodosulfur(IV)))91.8.0g(0.45mol)の脱水DMSO溶液(0.8L)を27℃以下で1時間をかけて滴下した。25℃で3時間攪拌後、氷水4Lに注ぎ、終夜攪拌した。酢酸エチルを加え分液した。有機層を水、食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下濃縮して、化合物B2をエポキシ化(epoxidization)させて化合物(エポキシド)(80)の粗液体52,8gを得た(収率97%)。なお、C39+-は、C39+(トリメチルスルホニウム、trimethylsulfonium)とI-の塩である。
【0324】
(2−4)化合物(81)の合成例
LiBr(臭化リチウム)84.7g(0.98mol)の acetonitrile(C23N、アセトニトリル)溶液(2.0L)に、暗室にてアルゴン雰囲気下で、化合物(80)52.8g(0.20mol)を加えた。60℃にて18時間攪拌し反応させた後、析出した固体をろ別した。粗結晶をアセトニトリルで洗浄して、化合物(80)のエポキシ環を開環させたオレンジ色結晶の化合物(81)57.3gを得た。
【0325】
化合物(81)から化合物(82)を経て化合物(83)を得る方法は、一般的な有機合成の手法に従って、化合物(81)のNEt3/pyridine:SO3酸化により、−COHを選択的に−C=Oに酸化して、化合物(82)を得、続いて、NH4OH・HCl(塩酸ヒドロキシアンモニウム)によりアルデヒド化合物(82)からオキシムを経由してニトリル化合物(83)を得ることができる。
【0326】
(2−5)化合物(82)の合成例
化合物(81)54.1g(0.2mol)の脱水DMSO溶液(400mL)に、37℃以下、アルゴン雰囲気下で、NEt3(C615N、トリエチルアミン)40/5g(0.4mol)と Pyridine:SO3錯体(C55N・SO3、ピリジン・三酸化硫黄錯体、Pyridine-Sulfur Trioxide Complex、sulfur trioxide・pyridine salt)63.7g(0.4mol)を加えた。2時間攪拌後、水に注ぎ、析出物をろ過し、この析出物を、再度、水中で懸濁させ攪拌後、ろ過した。次に、メタノール中で懸濁させ攪拌後、ろ過し、オレンジ色結晶の化合物(82)30.8g(収率57%)を得た。
【0327】
(2−6)化合物(83)の合成例
NaOAc(酢酸ナトリウム)18.0g(0.22mol)のHOAc(AcはCH3COを示し、HOAcは酢酸である。)溶液(300mL)に、NH4OH・HCl(塩酸ヒドロキシアンモニウム)15.3g(0.22mol)と化合物(82)26.9g(0.10mol)を加えて27時間還流し反応させ、冷却後、水に注ぎ、結晶をろ過した。得られた結晶粗体を、水とメタノールで順に洗浄した後、シリカゲルカラム(溶出液:熱トルエン)で精製し、得られた粗精製固体15.0gをTHF(C48O、テトラヒドロフラン、tetrahydrofuran)で複数回再結晶して鮮黄色結晶の化合物(83)2.2g(収率8.4%、純度98.7%)を得た。
【0328】
(2−7)化合物(77)の合成例
化合物(79)3.80g(8.07mmol)、化合物(83)2,12g(8.07mmol)、Pd(PPh34(Pd[P(C6534、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、Tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))0.28g(0.24mmol)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)1.71g(16.1mmol)、DME(MeOCH2CH2OMe、1,2−ジメトキシエタン)(76mL)を混合し、Arガス流下で、22時間還流して反応させた。反応液を減圧乾燥し、得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:熱トルエン)で精製し、赤色の粗体4.3g(収率93%)を得た。これを昇華精製し、化合物(77)の純品を得た。
【0329】
図27は、本発明の実施例における、化合物(77)の 1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
【0330】
図27において、横軸はケミカルシフト(ppm)、縦軸は核磁気共鳴信号強度を示し、各信号ピークのケミカルシフト値を上部に示し、信号ピークの近傍に信号強度を示している。なお、NMRスペクトルは、日本電子株式会社の型番 JNM-AL300 FT NMR装置を用いて測定した。
【0331】
δppm(300MHz,CDCl);7.04(t,1H),7.17(d,2H),7.26−7.29(m,3H),7.33−7.55(m,5H),7.66(d,1H),7.80−7.84(m,5H),7.92(d,1H),7.98(d,1H),8.17(s,1H),8.22(d,1H),8.49−8.53(m,2H),8.57(d,1H),8.71(s,1H)。
【0332】
芳香族水素が25個観測されており、化合物(77)の分子構造と一致する。
【0333】
図28は、本発明の実施例における、化合物(77)の MALDI-TOF-MSスペクトルを示す図である。
【0334】
図28に示すMSスペクトルは、島津製作所製の型番 KRATOS AXIMA-CFR の装置を用いて測定したものであり、測定された各ピークに関するm/z(m:分子量、z:電荷数)の計算値を示す。
【0335】
図28に示すように、化合物(77)(化学式C42253)の分子量の計算値571.67に対して、測定された各ピークに関するm/z(m:分子量、z:電荷数)とパターン係数(出現頻度係数)は、571.20(100%)、572.21(45.7%)、573.21(10.7%)、574.21(1.6%)、572.20(1.1%)であった。分子量の測定値は571.66であった。
【0336】
図27、図28に示したNMRスペクトル、MSスペクトルは、合成された化合物(77)が所望のものであることを示していた。
【0337】
次に、合成された化合物(77)の吸収、発光特性について説明する。吸収スペクトル、発光スペクトルは、日立製作所製の型番 U-3310 分光光度計及び FL-4500 蛍光光度計を用いて測定した。化合物(77)は 1,4-dioxane 中で吸収極大484nm、モル吸光係数12,100を示し、蛍光極大647nm、蛍光量子収率0.33を示した。
【0338】
なお、示差走査熱量測定(DSC、Differential Thermal Analysis)により、化合物(77)のガラス転移温度はは134℃、融点は285℃であることを確認した。
【0339】
[ホスト化合物の合成例]
図29は、本発明の実施例における、アントラセン誘導体化合物からなるホスト化合物の合成スキーム例を説明する図であり、図29(A)は下記のホスト化合物(84)、図29(B)は下記のホスト化合物(87)、図29(C)は下記のホスト化合物(88)の合成スキーム例を説明する図である。
【0340】
化合物(84):
【0341】
【化32】

【0342】
化合物(87):
【0343】
【化33】

【0344】
化合物(88):
【0345】
【化34】

【0346】
(1)ホスト化合物(84)の合成例
図29(A)に従って、ホスト化合物(84)の合成について説明する。
【0347】
(1−1)化合物(90)の合成例
アリールボロン酸とハロゲン化アリールを塩基存在下で、Pd触媒を用いてビアリールを生成させるすずきカップリング反応によって、化合物(90)を合成する。化合物C1(C109BO2、1−ナフチルボロン酸、(1-naphthyl)boronic acid)12.8g(74.7mmol)、化合物C2(C149Br、9−ブロモアントラセン、9-bromoanthracene)12.8g(49.8mmol)、Pd(PPh34(Pd[P(C6534、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))1.15g(0.996mmol)、飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、sodiumbicarbonate)水溶液150mL、EtOH(エチルアルコール)100mL、及び、THF(C48O、テトラヒドロフラン、tetrahydrofuran)400mLを混合して、攪拌しつつ窒素にて3回雰囲気置換した後に、75℃で14時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウム(Na2SO4、sodium sulfate)上で乾燥したのち減圧濃縮した。粗体をアルミナクロマトグラフィー(溶出液:Toluene〜Toluene/THF=20/1)で精製し、Acetone-EtOHで再結晶して化合物(90)(C2416、9−(1−ナフチル)アントラセン、9-(1-naphthyl)anthracene)14.2g(収率94%)を得た。
【0348】
1H NMR及びFAB(高速原子衝突イオン化法)−MS測定により、目的物と同定した。
【0349】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):7.32(t,2H),7.46(t,2H),7.55−7.60(m,3H),7.68(d,2H),7.69−7.93(m,2H),8.00−8.08(m,4H),8.53(s,1H)。
【0350】
(1−2)化合物(91)の合成例
化合物(90)14.2g(46.7mmol)をクロロベンゼン(C65Cl、chlorobenzene)400mLと(C33NO、ジメチルホルムアミド、DMF、dimethylformamide)50mLの混合溶媒に溶解し、N−ブロモスクシンイミド(C44BrNO2、N-bromosuccinimide(NBS))9.0g(50.7mmol)を添加して、85℃で3時間攪拌した。反応液を冷却後、アルミナクロマトグラフィー(溶出液:Toluene)にて精製し、溶出液を減圧濃縮して析出結晶をろ別し、EtOHで洗浄して化合物(91)14.7g(収率82%)を得た。
【0351】
1H NMR及びFAB−MS測定により、目的物と同定した。
【0352】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):7.34(d,1H),7.36(d,1H),7.52(d,1H),7.58−7.62(m,6H),7.89−7.91(m,2H),8.01(d,1H),8.06(d,1H),8.63(d,2H)。
【0353】
(1−3)化合物(84)の合成例
化合物(91)4.17g(10.8mmol)、化合物C3(C1211BO2、2−ビフェニルボロン酸、2-bromobiphenylboronic acid,2-Biphenylboronic acid)2.80g(14.1mmol)、Pd(PPh34(Pd[P(C6534、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム)0.624g(0.540mmol)、飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO3)水溶液100mL、EtOH 50mL、及び、THF(テトラヒドロフラン)100mLを混合して、攪拌しつつ窒素にて3回雰囲気置換した後に、75℃で5時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウム(Na2SO4)上で乾燥したのち減圧濃縮した。粗体をシリカゲルグラフィー(溶出液:Toluene/Hexane=1/20)で精製し、Acetone-EtOHで再結晶して化合物(84)1.49g(収率30%)を得た。10-5Torrの真空下、280℃で4.44gから昇華精製して化合物(84)3.67gを得た。
【0354】
1H NMR、13C NMR、及び、FAB−MS測定により、目的物と同定した。
【0355】
図30は、本発明の実施例における、化合物(84)の 1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
【0356】
図31は、本発明の実施例における、化合物(84)の 13C NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
【0357】
図30、図31において、横軸はケミカルシフト(ppm)、縦軸は核磁気共鳴信号強度を示し、各信号ピークのケミカルシフト値を上部に示し、信号ピークの近傍に信号強度を示している。なお、NMRスペクトルは、日本電子株式会社の型番 JNM-AL300 FT NMR装置を用いて測定した。
【0358】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.71(d,1H),6.86−6.97(m,5H),7.11−7.17(m,3H),7.24−7.28(m,2H),7.33(d,2H),7.45(t,1H),7.57−7.61(m, 3H),7.65−7.72(m,5H),7.97(d,1H),8.03(d,1H)。
【0359】
1H NMRスペクトルでは芳香族水素のみが観測されており、不純物や溶媒のピークを差し引いた積分値は化合物(84)の水素数24個を示しており、化合物(84)の分子構造と一致する。13C NMRスペクトル(コンプリートデカップリング)は、アントラセンに由来する磁気的に等価な炭素が7個だとすると、化合物(84)に由来する磁気的等価な炭素数は29個であることを示している。
【0360】
化合物(84)の質量スペクトルは、日本電子株式会社の型番 GC-mate II ガスクロマトグラフ/質量分析装置で直接導入法により測定した。質量スペクトルは、EI+(電子衝突イオン化法)で確認したところ、分子イオンピークC3624=456に対応するm/zが測定された。
【0361】
図32は、本発明の実施例における、化合物(84)の 1,4-dioxane 溶液の吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【0362】
図32において、(a)吸収(Absorbance)スペクトル、(b)は蛍光(Fluorescence)スペクトルを示し、縦軸は最大値で規格化した規格化強度(Normalized Intensity)、横軸は波長(nm)を示す。
【0363】
図32に示すように、1,4-Dioxane 溶液の可視吸収極大は358,378,398nm、蛍光極大波長は413,433,458nmであった。相対蛍光量子収率は0.87と非常に高かった。
【0364】
なお、示差走査熱量測定(DSC、Differential Thermal Analysis)により、化合物(84)のガラス転移温度が92℃、融点が264℃であることを確認した。
【0365】
(2)ホスト化合物(87)の合成例
図29(B)に従って、ホスト化合物(87)の合成について説明する。
【0366】
(2−1)化合物(92)の合成例
化合物D1(C76BNO2、3−シアノフェニルボロン酸、3-cyanophenylboronic acid)15.5g(0.119mol)、化合物D2(C64Br2、1,2−ジブロモベンゼン、1,2-dibromobenzene)46.3g(0.178mol)、Pd(PPh34(Pd[P(C6534、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム)6.88g(5.96mmol)、炭酸ジセシウム(Cs2CO3、carbonic acid dicesium)47.35g(0.145mol)、DMA(C49NO、ジメチルアセトアミド、dimethylacetamide)300mL、Acetonitrile 100mL、及び、THF 400mLを混合して、攪拌しつつ窒素にて3回雰囲気置換した後に、75℃で18時間攪拌した。反応液から不溶物をろ別し、飽和食塩水を加えて分液し、有機層をNa2SO4上で乾燥したのち減圧濃縮した。粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:Toluene/Hexane=1/10〜1/2)で精製し、Acetone-EtOHで再結晶して化合物(22)(C138NBr、2’−ブロモ−1,1’−ビフェニル−3−カルボ二トリル、2'-bromo-1,1'-biphenyl-3-3carbonitrile)8.31g(収率27%)を得た。
【0367】
1H NMR及びFAB−MS測定により、目的物と同定した。
【0368】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):7.24−7.30(m,2H),7.40(t,1H),7.53(t,1H),7.64−7.77(m,4H)。
【0369】
(2−2)化合物(93)の合成例
窒素気流下、化合物(92)8.31g(32.2mmol)、化合物A5(ビスピナコラートジボロン、Bis(pinacolate)diboron)12.7g(35.4mmol)、PdCl2(dppf)(ジクロロパラジウムジフェニルフォスフィノフェロセン)2.63g(3.22mmol)、dppf(ジフェニルフォスフィノフェロセン)1.79g(3.22mmol)、K(OAc)2(酢酸カリウム)6.32g(64.4mmol)、及び、DMSO(ジメチルスルホキシド)400mLを混合して100℃で14時間攪拌した。反応液から不溶物をろ別し、飽和食塩水を加えて分液し、有機層をNa2SO4上で乾燥したのち減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:Toluene/Hexane=1/20〜Toluene/THF=250/1)で精製し、化合物(23)の粗体6.48gを得た(収率〜66%)。
【0370】
(2−3)化合物(87)の合成例
化合物(91)3.67g(9.55mmol)、化合物(93)4.48g(14.7mmol)、Pd(PPh34(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、)0.552g(0.355mmol)、飽和NaHCO3水溶液250mL、EtOH50mL、及び、Toluene 400mLを混合して、攪拌しつつ窒素にて3回雰囲気置換した後に、80℃で16時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加えて分液し、有機層をNa2SO4上で乾燥したのち減圧濃縮した。粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:Toluene/Hexane=1/20〜1/1)で精製し、Acetone-EtOHで再結晶して化合物(18)1.42g(収率32%)を得た。10-5Torrの真空下、240℃で昇華精製して1.12gを得た。
【0371】
図33は、本発明の実施例における、化合物(87)の 1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
【0372】
図34は、本発明の実施例における、化合物(87)の 13C NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
【0373】
1H NMR及びFAB−MS測定により、目的物と同定した。
【0374】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.82−6.93(m,1H),7.14−7.26(m,4H),7.29−7.37(m,3H),7.50−7.66(m,11H),7.87−7.92(m,2H),7.97−8.05(m, 2H)。
【0375】
1H NMRスペクトルでは芳香族水素のみが観測されており、不純物や溶媒のピークを差し引いた積分値は化合物(87)の水素数23個を示しており、化合物(87)の分子構造と一致する。
【0376】
13C NMRスペクトル(コンプリートデカップリング)は、シアノ基の置換した炭素を示す111ppmのピーク、及び、シアノ基の炭素を示す118ppmのピークが2本重なっていることから回転異性体を含むことを示唆しているが、各異性体に対して磁気的等価な30個の炭素であることと矛盾しない。
【0377】
質量スペクトルはFAB−MS(EI+)で確認し、分子イオンピークC3723N=481に対応するm/zが測定された。
【0378】
図35は、本発明の実施例における、化合物(87)の 1,4-dioxane 溶液の吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【0379】
図35において、(a)吸収(Absorbance)スペクトル、(b)は蛍光(Fluorescence)スペクトルを示し、縦軸は最大値で規格化した規格化強度(Normalized Intensity)、横軸は波長(nm)を示す。
【0380】
図35に示すように、1,4-Dioxane 溶液の可視吸収極大は358,378,399nm、蛍光極大波長は413,436nmであった。相対蛍光量子収率は0.79と非常に高かった。
【0381】
なお、DSC(示差走査熱量測定)により、化合物(87)のガラス転移温度が98℃、融点が204℃であることを確認した。
【0382】
(3)ホスト化合物(88)の合成例
図29(C)に従って、ホスト化合物(88)の合成について説明する。
【0383】
(3−1)化合物(94)の合成例
1Mの iso-PrMgBr(イソプロピルマグネシウムブロミド、iso-Propylmagnesium bromide)500mL(0.50mol)を dry THF(テトラフラン)300mLで希釈し、氷浴上で化合部E1(C1410O、アントロン、anthrone)25.0g(129mmol)の dry THF溶液100mLを滴下し、30分攪拌した。次に、再度0℃に冷却して1.6MのH2SO4 100mL(160mmol)を添加して徐々に昇温した後に15時間還流した。反応液に飽和食塩水を加えて分液し、有機層をNa2SO4上で乾燥した後、減圧濃縮した。粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:Toluene/Hexane=1/40)で精製し、Acetone-EtOHで再結晶して化合物(95)(C1714、9−イソプロピル−アントラセン、9-isopropyl-anthracene)24.5g(二段階収率86%)を得た。
【0384】
(3−2)化合物(96)の合成例
化合物(95)31.1g(141mmol)をクロロベンゼン(Chlorobenzene)700mLとDMF(ジメチルホルムアミド)100mLの混合溶媒に溶解し、N−ブロモスクシンイミド(N-bromosuccinimide(NBS))27.7g(155mmol)を添加して70℃で3時間攪拌した。反応液を冷却後、アルミナクロマトグラフィー(溶出液:Toluene)、続いてシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:Toluene/Hexane=1/20)にて精製し、溶出液を減圧濃縮してワックス状の化合物(96)(C1713Br、9−イソプロピル−10−ブロモアントラセン、9-isopropyl-10-bromoanthracene)24.3g(収率57%)を得た。
【0385】
1H NMR及びFAB−MS測定により、目的物と同定した。
【0386】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.75(d,6H),4.58(m,1H),7.48−7.52(m,2H),7.57(t,2H),7.47(d,2H),8.63(d,2H)。
【0387】
(3−3)化合物(88)の合成例
化合物(96)1.00g(3.34mmol)、化合物C3(2−ビフェニルボロン酸)0.500g(2.52mmol)、Pd(PPh34(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、)0.200g(0.173mmol)、飽和NaHCO3水溶液50mL、EtOH10mL、及び、Toluene 80mLを混合して、攪拌しつつ窒素にて3回雰囲気置換した後に、80℃で48時間攪拌した。反応液に飽和食塩水を加えて分液し、有機層をNa2SO4上で乾燥した後、減圧濃縮した。粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:Toluene/Hexane=1/20〜1/1)で精製し、Acetone-EtOHで再結晶して化合物(88)0.137g(収率11%)を得た。10-5Torrの真空下、2.28gを230℃で昇華精製して化合物(88)1.94gを得た。
【0388】
1H NMR及びFAB−MS測定により、目的物と同定した。
【0389】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.74(d,6H),4.55(m,1H),6.79−6.85(m,3H),6.92(d,2H),7.23−7.27(m,2H),7.36(m,3H),7.49−7.52(m,1H),7.60(d,2H),7.63(d,2H)。
【0390】
図36は、本発明の実施例における、化合物(88)の 1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す図である。
【0391】
イソプロピル基を示す1.74ppmのダブレットと4.55ppmのマルチプレットの積分値が水素7個分に相当するのに対して、6.79ppm以上の低磁場側のピークの積算値が水素17個を示しており、化合物(88)の分子構造と一致する。
【0392】
質量スペクトルはFAB−MS(EI+)で確認し、分子イオンピークC2924=372に対応するm/zが測定された。
【0393】
図37は、本発明の実施例における、化合物(88)の 1,4-dioxane 溶液の吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【0394】
図37において、(a)吸収(Absorbance)スペクトル、(b)は蛍光(Fluorescence)スペクトルを示し、縦軸は最大値で規格化した規格化強度(Normalized Intensity)、横軸は波長(nm)を示す。
【0395】
図37に示すように、1,4-Dioxane 溶液の可視吸収極大は358,378,399nm、蛍光極大波長は413,434,460nmであった。相対蛍光量子収率は0.79と非常に高かった。
【0396】
なお、DSC(示差走査熱量測定)により、化合物(88)のガラス転移温度が42℃、融点が156℃であることを確認した。
【0397】
以上説明した何れの実施例においても、芳香族アミン化合物とアントラセン誘導体化合物の混合膜を共蒸着法によって形成しこれを発光層としたが、形成された混合膜はアモルファスであり、熱的、化学的に安定なものであった。
【0398】
なお、以上説明した実施例において、ホスト化合物(84)、(88)、(89)は置換基を有していてもよい。これらの化合物のアントラセン環の水素原子は、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルキル基、炭素数5から25で置換基を有してもよくヘテロ原子を環の構成成分として含んでもよいアリール基、置換基を有してもよいアリル基、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素数6から25で置換基を有してもよいアリールオキシ基から選ばれた基で置換されていてもよい。
【0399】
また、アントラセン環の10位に結合する第1のベンゼン環の水素原子、及び、この第1のベンゼン環に結合する第2のベンゼン環の水素原子は、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルキル基、炭素数6から25で置換基を有してもよくヘテロ原子を環の構成成分として含んでもよいアリール基、置換基を有してもよいアリル基、炭素数1から12で置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素数6から25で置換基を有してもよいアリールオキシ基から選ばれた基で置換されていてもよく、隣り合う基同士が相同して環を形成してもよい。
【0400】
更に、アントラセン環の9位に結合するナフタレン環の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0401】
以上の実施の形態の説明では、特定の芳香族第三アミン化合物、ホスト化合物の合成方法とこれを使用した有機電界発光素子を例にとって説明したが、この特定の化合物とこれを使用した有機電界発光素子に限定されるものではない。
【0402】
有機電界発光素子の発光効率は、発光層を形成する芳香族アミン化合物(ドーパント化合物)とアントラセン誘導体化合物(ホスト化合物)の組成比に依存する。この組成比の好適な値は、ドーパント化合物とホスト化合物の組合せによって異なり、素子の発光色、素子の駆動電圧、発光効率等を考慮して、素子の特性が好適なものとなるように、調製されることは言うまでもない。例えば、実施例で説明した有機電界発光素子(その1)、有機電界発光素子(その3)では、ドーパント化合物の組成(体積%)は0.5%〜5%であり、有機電界発光素子(その2)、有機電界発光素子(その4)では、ドーパント化合物の組成(体積%)は20%〜40%である。また、ドーパント化合物とホスト化合物の組合せは、これらの間でのエネルギー移動が大となるように選ばれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0403】
本発明によれば、芳香族アミン化合物、ホスト化合物を用いて、発光性に優れ最適な波長で高輝度、安定な発光を呈する有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0404】
【図1】本発明の実施例における、透過型有機電界発光素子の構成例を説明する要部概略断面図である。
【図2】同上、反射型有機電界発光素子の構成例を説明する要部概略断面図である。
【図3】同上、シングルへテロ型の有機電界発光素子の構成例を説明する要部概略断面図である。
【図4】同上、ダブルへテロ型の有機電界発光素子の構成例を説明する要部概略断面図である。
【図5】同上、有機電界発光素子を用いた平面ディスプレイ構成例を説明する図である。
【図6】同上、薄膜トランジスタ駆動上面発光素子の構成例を説明する要部概略断面図である。
【図7】同上、化合物(71)の合成スキーム例を説明する図である。
【図8】同上、化合物(77)の合成スキーム例を説明する図である。
【図9】本発明の実施例における、化合物(71)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【図10】同上、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図である。
【図11】同上、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図である。
【図12】同上、有機電界発光素子の発光スペクトルの例を示す図である。
【図13】同上、化合物(77)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【図14】同上、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図である。
【図15】同上、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図である。
【図16】同上、有機電界発光素子の発光スペクトルの例を示す図である。
【図17】同上、化合物(71)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【図18】同上、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図である。
【図19】同上、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図である。
【図20】同上、有機電界発光素子の発光スペクトルの例を示す図である。
【図21】同上、化合物(77)を含む有機発光層の構成例と蛍光強度の関係を示す図である。
【図22】同上、有機電界発光素子の電圧−輝度特性の例を示す図である。
【図23】同上、有機電界発光素子の輝度−外部量子効率特性の例を示す図である。
【図24】同上、有機電界発光素子の発光スペクトルの例を示す図である。
【図25】同上、化合物(71)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図26】同上、化合物(71)の MALDI-TOF-MS スペクトルを示す図である。
【図27】同上、化合物(77)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図28】同上、化合物(77)の MALDI-TOF-MS スペクトルを示す図である。
【図29】同上、ホスト化合物の合成スキーム例を説明する図である。
【図30】同上、化合物(84)の 1H NMRスペクトルを示す図である。
【図31】同上、化合物(84)の 13C NMRスペクトルを示す図である。
【図32】同上、化合物(84)の 1,4-dioxane 溶液の吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【図33】同上、化合物(87)の 1H NMRスペクトルを示す図である。
【図34】同上、化合物(87)の 13C NMRスペクトルを示す図である。
【図35】同上、化合物(87)の 1,4-dioxane 溶液の吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【図36】同上、化合物(88)の 1H NMRスペクトルを示す図である。
【図37】同上、化合物(88)の 1,4-dioxane 溶液の吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0405】
1…基板、2…陽極、3…陰極、4…保護膜、5、5a、5b…有機層、
6、10…正孔輸送層、7、12…電子輸送層、11…発光層、16…障壁、
17…薄膜トランジスタ、18…平坦化層、19…ドレイン電極、
20、22…層間絶縁膜、21…半導体層、23…ゲート電極、24…ソース電極、
25、26…配線、27…絶縁膜、30…発光、34…輝度信号回路、35…制御回路、
40A…透過型有機電界発光素子、40B…反射型有機電界発光素子、
40C…シングルへテロ構造の有機電界発光素子、
40D…ダブルへテロ構造の有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]によって示される芳香族アミン化合物。
一般式[I]:
【化1】

(但し、前記一般式[I]において、X1、X2は、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた基であり、X1、X2は互いに同一又は異なってもよく、Ar1、Ar2はアリーレン基であり、n≧1であり、Yの少なくとも1つはトリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、残りのYは、ヒドロ基、アルキル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれた基である。)
【請求項2】
1、X2に関し、前記アルキル基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリール基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、前記アリル基は置換基を有してもよく、前記アルコキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリールオキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、Ar1は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、Ar2は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり、Yに関して、前記アルキル基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリール基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよく、前記アリル基は置換基を有してもよく、前記アルコキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が1以上、12以下であり置換基を有してもよく、前記アリールオキシ基は、置換基を有さない時の炭素数が6以上、25以下であり置換基を有してもよい、請求項1に記載の芳香族アミン化合物。
【請求項3】
前記一般式[I]において、X1、X2は、互いに同一又は異なるアリール基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラニル基、置換基を有してもよいアリル基から選ばれた置換基を有してもよく、Ar1は下記一般式(1)〜(44)から選ばれた基であり、下記一般式[a]で示される基は、下記一般式(45)〜(69)から選ばれた基であり、この選ばれた基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)から選ばれた少なくとも1つは、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、残りのRm(mは456から732の範囲の整数)、及び、選ばれたAr1の有するRk(kは1から453の範囲の整数)はそれぞれ、ヒドロ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラニル基、置換基を有してもよいアリル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいアントラニルオキシ基から選ばれた基である、請求項2に記載の芳香族アミン化合物。
一般式[a]:
【化2】

一般式(1)〜(21):
【化3】

一般式(22)〜(44)
【化4】

一般式(45)〜(55):
【化5】

一般式(56)〜(69)
【化6】

【請求項4】
選ばれたAr1の有するRk(kは1から453の範囲の整数)の全てがヒドロ基であり、前記一般式[a]で示される基から選ばれた基の有するRm(mは456から732の範囲の整数)の2つが、トリフルオロメチル基、シアノ基、ハロゲン基から選ばれた基である、請求項3に記載の芳香族アミン化合物。
【請求項5】
1がフェニル基、X2が2−ナフチル基、Ar1が2,6−ナフチレン基、下記一般式[a]で示される基が、9位及び10位にシアノ基、7位にメチル基の置換基を有する2−フェナントリル基であり、下記[Ia]によって示される第三アミン化合物である、請求項1に記載の芳香族アミン化合物。
一般式[a]:
【化7】

[Ia]:
【化8】

【請求項6】
1がフェニル基、X2が2−ナフチル基、Ar1が2,6−ナフチレン基、下記一般式[a]で示される基が、9位及び10位にシアノ基の置換基を有する2−フェナントリル基であり、下記[Ib]によって示される第三アミン化合物である、請求項1に記載の芳香族アミン化合物。
一般式[a]:
【化9】

[Ib]:
【化10】

【請求項7】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられた有機層と
を有し、前記有機層の少なくとも一層が、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の芳香族アミン化合物の少なくとも1種類をドーパント材料として含んだアミン化合物含有層である、有機電界発光素子。
【請求項8】
前記有機層は、ホール輸送層と電子輸送層が積層された構造を有する、請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
少なくとも前記ホール輸送層が前記アミン化合物含有層である、請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
少なくとも前記電子輸送層が前記アミン化合物含有層である、請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記有機層は、ホール輸送層、発光層、及び、電子輸送層が積層された構造を有する、請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
少なくとも前記発光層が前記アミン化合物含有層である、請求項11に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記発光層が、前記ドーパント材料とホスト材料とから形成された前記アミン化合物含有層であり、前記ホスト材料がアントラセン骨格を含む化合物である、請求項11に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
前記アミン化合物含有層に含まれる前記ドーパント材料は50%以下である、請求項13に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
請求項7から請求項14の何れか1項に記載の有機電界発光素子を有する画素が複数
個配置された画素部と、
前記画素部の各画素に印加される電圧のオンオフを制御する制御部と
を有する表示装置。
【請求項16】
前記制御部はスイッチング素子を含む、請求項15に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−111621(P2010−111621A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285438(P2008−285438)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】