説明

芳香族アミン誘導体、発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置

【課題】有機EL用発光材料として良好な、新規芳香族アミン誘導体の提供。
【解決手段】N,N’−ビス(ジベンゾフラン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn−II)、N,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn−II)、N,N’−ビス(ジベンゾフラン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn)等の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を印加することにより発光が得られ、少なくとも発光素子の一部に適用可能な新規有機化合物に関する。また当該有機化合物を用いた発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これらの発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の物質を含む層を挟んだ素子である。該素子に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要であり、発光素子の応答速度が非常に速いこと等が利点として挙げられる。このため、フラットパネルディスプレイ素子として好適であるとされている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。
【0004】
そして、これらの発光素子は膜状に形成できるため、面状の発光を容易に得ることができる。よって、面状の発光を利用した大面積の素子を形成することができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
そのエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であるか無機化合物であるかによって大別することができるが、発光性の物質に有機化合物を用いる有機ELの場合、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極の一方から電子が、また他方からホール(正孔)がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、発光性の有機化合物中で電子、およびホールが再結合することにより、発光性の有機化合物は励起状態を形成し、その励起状態から基底状態に戻る際の緩和エネルギーとして発光する。
【0006】
このようなメカニズムから、上述の発光素子は電流励起型の発光素子と呼ばれる。なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光がリン光と呼ばれている。
【0007】
また、電子と正孔(ホール)の再結合による励起とその緩和に伴う発光の他に、電流励起された有機化合物の励起エネルギーが他の有機化合物に移動することで、その有機化合物が励起され、緩和する際に発光するという方法もある。この方法は、発光させたい有機化合物分子が高濃度である場合、例えばスタッキング相互作用を起こし発光効率が悪くなってしまう場合(濃度消光)に有効な手段である。
【0008】
具体的には、この方法では、有機ELにおいて、発光材料を発光層中に分散(ドープ)させる。発光させたい有機化合物分子をホスト材料にドープして、スタッキング相互作用を抑制することで、発光素子を高効率化させることができる。該発光素子において、電流によって励起したホスト材料からドーパント材料へ励起エネルギーが移動することでドーパント材料が発光する。なお、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをドーパント材料(ゲスト材料とも言う。)と呼ぶものとする。
【0009】
また、発光材料が発する光は、その物質固有の光であり、良好な色の発光を呈する材料を開発することはそれだけで困難である。加えて、長寿命や低消費電力などその他の重要な特性を満たす発光素子を得ることは、非常に困難である。これは寿命や消費電力など、発光素子の重要な性能は、発光を呈する物質のみに依存する訳ではなく、素子構造、そして、発光物質とホスト材料との相性なども大きく影響しているためである。
【0010】
特に、青色発光素子は他の色の発光素子に比べ寿命が短く、長い寿命と良好な色純度を両立しうる材料の開発が望まれている。例えば、有機ELを表示素子等として用いたフラットパネルディスプレイなどを商品化するには、青色発光素子の長寿命化と色純度の向上は重要な課題であり、さらなる改良が求められている。それゆえ、様々な分子構造を有する発光素子材料が提案されている。(例えば特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−204238号公報
【特許文献2】国際公開第2005/108348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は色純度が高く、長寿命な青色発光素子を提供するためになされたもので、本発明の一態様は、色純度が高く、有機EL用青色発光材料として良好な、新規芳香族アミン誘導体を提供することを課題の一とする。
【0013】
また、これら新規な芳香族アミン誘導体を用いた発光素子、発光装置、照明装置、および電子機器を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、下記一般式(G1)で表される芳香族アミン誘導体である。
【0015】
【化1】

【0016】
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数14〜18の、置換または無置換の縮合芳香族炭化水素を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1であり、pは、1または2である。さらに、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0017】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G2)で表される芳香族アミン誘導体である。
【0018】
【化2】

【0019】
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数14〜18の、置換または無置換の縮合芳香族炭化水素を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1であり、pは、1または2である。さらに、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0020】
一般式(G1)、および一般式(G2)中のArとしては、(Ar1−1)または(Ar1−2)が挙げられる。一般式(Ar1−1)および(Ar1−2)中のR〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。ただし、一般式(G1)、および一般式(G2)中のArが一般式(Ar1−1)の場合、一般式(G1)、および一般式(G2)中のpは1であり、一般式(G1)、および一般式(G2)中のArが一般式(Ar1−2)の場合、一般式(G1)および一般式(G2)中のpは2である。
【0021】
【化3】

【0022】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G3)で表される芳香族アミン誘導体である。一般式(G3)は、一般式(G1)においてArが(Ar1−2)で、jが0、pが2である芳香族アミン誘導体である。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(G3)中、R〜R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは、0または1である。さらに、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0025】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G4)で表される芳香族アミン誘導体である。一般式(G4)は一般式(G1)においてArが(Ar1−2)でjが1、pが2である芳香族アミン誘導体である。
【0026】
【化5】

【0027】
一般式(G4)中、R〜R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、α及びαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは0または1である。さらに、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0028】
一般式(G1)〜一般式(G4)において、α〜αは、それぞれ独立に、下記構造式(α−1)〜(α−3)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G5)で表される芳香族アミン誘導体である。一般式(G5)は一般式(G4)において、αが構造式(α−2)の芳香族アミン誘導体である。
【0031】
【化7】

【0032】
一般式(G5)中、R〜R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは0または1である。さらに、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0033】
一般式(G5)においても一般式(G1)〜一般式(G4)と同様にnは0または1で、nが1のとき、αは既出の構造式(α−1)〜(α−3)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0034】
一般式(G1)〜一般式(G5)において、Arは、下記構造式(Ar2−1)〜(Ar2−6)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0035】
【化8】

【0036】
一般式(G1)〜一般式(G5)において、R〜R10は、それぞれ独立に、下記構造式(R−1)〜(R−9)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0037】
【化9】

【0038】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G6)で表される芳香族アミン誘導体である。
【0039】
【化10】

【0040】
一般式(G6)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0041】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G7)で表される芳香族アミン誘導体である。
【0042】
【化11】

【0043】
一般式(G7)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0044】
また、本発明の一態様は、下記一般式(G8)で表される芳香族アミン誘導体である。
【0045】
【化12】

【0046】
一般式(G8)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0047】
また、本発明の一態様は、一対の電極間にEL層を有する発光素子であって、EL層は、発光層を含み、該発光層は、上記の芳香族アミン誘導体(一般式(G1)〜一般式(G8))のいずれかを含むことを特徴とする。
【0048】
さらに、本発明の一態様は、上記の発光素子を用いて形成された発光装置、および該発光装置を用いて形成された電子機器である。また、発光装置を用いて形成された照明装置である。
【0049】
また、本発明の発光装置の一態様は、上記発光素子と、発光素子の発光を制御する制御手段とを有する。なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置を含む)を含む。また、パネルにコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0050】
本発明の一態様の芳香族アミン誘導体は、短波長の可視光の発光が可能であり、色純度の良い青色発光を得ることができる。
【0051】
また、本発明の一態様の芳香族アミン誘導体を用いることにより発光効率、および信頼性の高い発光素子を得ることができる。
【0052】
さらに、この発光素子を用いることにより、信頼性の高い発光装置、電子機器、および照明装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】発光素子を説明する図。
【図2】発光素子を説明する図。
【図3】発光素子を説明する図。
【図4】発光装置を説明する図。
【図5】発光装置を説明する図。
【図6】電子機器を説明する図。
【図7】照明装置を説明する図。
【図8】FrA−IIのH NMRチャートを示す図。
【図9】1,6FrAPrn−IIのH NMRチャートを示す図。
【図10】1,6FrAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図11】1,6FrAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図12】ThA−IIのH NMRチャートを示す図。
【図13】1,6ThAPrn−IIのH NMRチャートを示す図。
【図14】1,6ThAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図15】1,6ThAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図16】1,6FrAPrnのH NMRチャートを示す図。
【図17】1,6FrAPrnのトルエン溶液における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図18】1,6FrAPrnの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図19】1,6ThAPrnのH NMRチャートを示す図。
【図20】1,6ThAPrnのトルエン溶液における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図21】1,6ThAPrnの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図22】1,6mFrBAPrn−IIのH NMRチャートを示す図。
【図23】1,6mFrBAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図24】1,6mFrBAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図25】1,6mThBAPrn−IIのH NMRチャートを示す図。
【図26】1,6mThBAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図27】1,6mThBAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図28】1,6FrBAPrn−IIのH NMRチャートを示す図。
【図29】1,6FrBAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図30】1,6FrBAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図31】実施例の発光素子を説明する図。
【図32】発光素子1乃至発光素子4の特性を示す図。
【図33】発光素子1乃至発光素子4の特性を示す図。
【図34】発光素子1乃至発光素子4の特性を示す図。
【図35】発光素子1乃至発光素子4の特性を示す図。
【図36】発光素子5乃至発光素子7の特性を示す図。
【図37】発光素子5乃至発光素子7の特性を示す図。
【図38】発光素子5乃至発光素子7の特性を示す図。
【図39】発光素子5乃至発光素子7の特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0055】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である芳香族アミン誘導体について説明する。
【0056】
本実施の形態の芳香族アミン誘導体は、下記一般式(G1)および下記一般式(G2)で表される芳香族アミン誘導体である。
【0057】
【化13】

【0058】
【化14】

【0059】
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αまたはαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数14〜18の、置換または無置換の縮合芳香族炭化水素を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1であり、pは1または2である。さらに、AはO(酸素)またはS(硫黄)である。
【0060】
なお、一般式(G1)および一般式(G2)中の置換基R〜Rとしてアルキル基を用いた場合、有機溶剤への溶解性が向上するため、精製が容易になり好ましい。また溶解性が向上することで、湿式で有機EL素子を作製する場合に、成膜した膜の均一性も向上するため好ましい。
【0061】
また、分子内にジベンゾフラニル基または、ジベンゾチオフェニル基のような立体的で嵩高い構造を有しているために、分子同士の相互作用が抑制され、モルフォロジー(分子形態)が改善される。このことにより、膜質が向上し、濃度消光やエキシマーの形成を抑制しやすくなる。
【0062】
さらに、ジベンゾフラニル基および、ジベンゾチオフェニル基は電気化学的に安定である。このため、一般式(G1)および一般式(G2)で表されるような分子内にジベンゾフラニル基、およびジベンゾチオフェニル基を有する化合物は高効率、長寿命な化合物であると言え、発光材料として好適である。
【0063】
一般式(G1)および一般式(G2)中のArは、下記一般式(Ar1−1)または(Ar1−2)が挙げられる。一般式(Ar1−1)および(Ar1−2)中のR〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表し、Arが一般式(Ar1−1)の場合、一般式(G1)及び一般式(G2)中のpは1となり、一般式(Ar1−2)の場合にpは2となる。
【0064】
【化15】

【0065】
一般式(Ar1−1)および一般式(Ar1−2)で表される置換基を分子内に有し、一般式(G1)および一般式(G2)で表される芳香族アミン誘導体は、量子収率や発光効率が高くなるため好ましい。
【0066】
そして、一般式(Ar1−1)および(Ar1−2)中の置換基R〜R10としてアルキル基を有する場合も、有機溶剤への溶解性が向上するため、精製が容易となり、湿式で有機EL素子を作製する場合も、成膜した膜の均一性が向上するので好ましい。さらに分子がより立体的な構造を形成するため、膜質も向上し、濃度消光やエキシマーの形成を抑制しやすくなる。
【0067】
なお、R〜R、αおよびα、Arがそれぞれ置換基を有する場合、その置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基のようなアルキル基や、フェニル基やビフェニル基のようなアリール基が挙げられる。また該アルキル基同士は互いに連結し、環を形成していても良い。
【0068】
課題を解決するための手段として、下記一般式(G3)で表されるように、一般式(G1)で表される化合物のArが一般式(Ar1−2)で、jが0、pが2となる芳香族アミン誘導体を用いることが、好ましい。R〜R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは、0または1であり、AはO(酸素)またはS(硫黄)である。
【0069】
【化16】

【0070】
また、課題を解決するにあたり、下記一般式(G9)で表されるように、一般式(G2)で表される化合物のArが(Ar1−2)で、jが0、pが2となる芳香族アミン誘導体を用いてもよい。R〜R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは、0または1であり、AはO(酸素)またはS(硫黄)である。
【0071】
【化17】

【0072】
さらに、一般式(G1)で表される化合物において、下記一般式(G4)で表されるように、Arが(Ar1−2)、jが1、pが2となる芳香族アミン誘導体も好ましい。R〜R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは、0または1であり、AはO(酸素)またはS(硫黄)である。
【0073】
【化18】

【0074】
一般式(G3)、一般式(G4)および一般式(G9)で表される芳香族アミン誘導体は、発光スペクトルの半値幅が狭く、高い色純度の発光色が得やすい。特に、色純度の良い青の発光色が得やすい。また、ストークスシフトが小さいので、この材料を有機EL素子の発光材料としてドープした場合、ホスト材料からのエネルギー移動が効率よく起こり、高い発光効率が得やすい。
【0075】
さらに、一般式(G3)、一般式(G4)および一般式(G9)のように、一般式(G1)または一般式(G2)中のpを2とすることで分子量が増え、熱物性が良くなる。このため、有機EL素子の発光材料として用いた場合に、蒸着安定性が増す。
【0076】
一般式(G1)乃至一般式(G4)、および一般式(G9)において、α〜αは、それぞれ独立に、下記構造式(α−1)〜(α−3)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0077】
【化19】

【0078】
さらに、下記一般式(G5)のように、上記一般式(G4)おけるαを上記構造式(α−2)とすることで、分子構造をさらに嵩高くし、分子同士の相互作用を抑制した熱物性の良い構造とすることができる。R〜R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは、0または1であり、AはO(酸素)またはS(硫黄)である。
【0079】
【化20】

【0080】
一般式(G5)においても一般式(G1)〜一般式(G4)と同様にnは0または1で、nが1のとき、αは既出の構造式(α−1)〜(α−3)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0081】
上記一般式(G1)乃至一般式(G5)、および一般式(G9)において、Arは、下記構造式(Ar2−1)乃至(Ar2−6)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0082】
【化21】

【0083】
また、上述の一般式(G1)乃至一般式(G5)、および一般式(G9)において、R〜R10は、それぞれ独立に、下記構造式(R−1)〜(R−9)で表されるいずれか一であるのが好ましい。
【0084】
【化22】

【0085】
一般式(G1)乃至一般式(G5)、および一般式(G9)に示される芳香族アミン誘導体の具体例としては、構造式(100)〜構造式(380)に示される芳香族アミン誘導体が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0086】
【化23】

【0087】
【化24】

【0088】
【化25】

【0089】
【化26】

【0090】
【化27】

【0091】
【化28】

【0092】
【化29】

【0093】
【化30】

【0094】
【化31】

【0095】
【化32】

【0096】
【化33】

【0097】
【化34】

【0098】
【化35】

【0099】
【化36】

【0100】
【化37】

【0101】
【化38】

【0102】
【化39】

【0103】
【化40】

【0104】
【化41】

【0105】
【化42】

【0106】
【化43】

【0107】
【化44】

【0108】
【化45】

【0109】
【化46】

【0110】
【化47】

【0111】
【化48】

【0112】
【化49】

【0113】
【化50】

【0114】
【化51】

【0115】
【化52】

【0116】
【化53】

【0117】
【化54】

【0118】
【化55】

【0119】
【化56】

【0120】
【化57】

【0121】
【化58】

【0122】
【化59】

【0123】
【化60】

【0124】
【化61】

【0125】
【化62】

【0126】
【化63】

【0127】
【化64】

【0128】
【化65】

【0129】
【化66】

【0130】
【化67】

【0131】
【化68】

【0132】
【化69】

【0133】
【化70】

【0134】
【化71】

【0135】
【化72】

【0136】
【化73】

【0137】
【化74】

【0138】
【化75】

【0139】
【化76】

【0140】
【化77】

【0141】
【化78】

【0142】
【化79】

【0143】
【化80】

【0144】
【化81】

【0145】
【化82】

【0146】
【化83】

【0147】
【化84】

【0148】
【化85】

【0149】
【化86】

【0150】
【化87】

【0151】
【化88】

【0152】
【化89】

【0153】
【化90】

【0154】
【化91】

【0155】
【化92】

【0156】
本実施の形態の芳香族アミン誘導体の合成方法としては、種々の反応を適用することができる。例えば、以下に示す合成方法を行うことによって、一般式(G1)で表される本実施の形態の芳香族アミン誘導体を合成することができる。なお、本発明の一様態である芳香族アミン誘導体の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
【0157】
〈一般式(G1)で表される芳香族アミン誘導体の合成方法〉
合成スキーム(A−1)に示すように、ジベンゾフラン誘導体、またはジベンゾチオフェン誘導体のハロゲン化物(a1)とアミンを有するアリール化合物(a2)とをカップリングさせることで、アミン誘導体(a3)が得られる。
【0158】
【化93】

【0159】
なお、合成スキーム(A−1)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1である。また、Xは、ハロゲンを表し、反応性の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素とする。
【0160】
合成スキーム(A−1)において、ジベンゾフラン誘導体、またはジベンゾチオフェン誘導体のハロゲン化物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、または2級アリールアミン化合物)とのカップリング反応には様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0161】
合成スキーム(A−1)において、ハートウィッグ・ブッフバルト反応を用いる場合について示す。金属触媒としてはパラジウム触媒を用いることができ、パラジウム触媒としてはパラジウム錯体とその配位子の混合物を用いることができる。具体的なパラジウム錯体としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等が挙げられる。
【0162】
配位子としては、トリ(tert−ブチル)ホスフィンや、トリ(n−ヘキシル)ホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィンや、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(略称:DPPF)等が挙げられる。
【0163】
塩基として用いることができる物質としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等を挙げることができる。
【0164】
この反応は溶液中で行うことが好ましく、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ただし、用いることができる触媒およびその配位子、塩基、溶媒はこれらに限られるものでは無い。またこの反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0165】
また、合成スキーム(A−1)において、ウルマン反応を用いる場合について示す。金属触媒としては銅触媒を用いることができ、具体的には、ヨウ化銅(I)、または酢酸銅(II)が挙げられる。また、塩基として用いることができる物質としては、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0166】
この反応は溶液中で行うことが好ましく、用いることができる溶媒としては、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ただし、用いることができる触媒、塩基、溶媒はこれらに限られるものでは無い。またこの反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0167】
なお、ウルマン反応では、反応温度が100℃以上の方がより短時間かつ高収率で目的物が得られるため、DMPU、キシレンなど沸点の高い溶媒を用いることが好ましい。また、反応温度として、150℃以上より高い温度が更に好ましいため、より沸点の高いDMPUを溶媒として用いることがより好ましい。
【0168】
次に、合成スキーム(A−2)で示すように、アミン誘導体(a3)とハロゲン化アレーン(a4)とをカップリングさせることで、一般式(G1)で表される芳香族アミン誘導体を得ることができる。
【0169】
【化94】

【0170】
なお、合成スキーム(A−2)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数14〜18の、置換または無置換の縮合芳香族炭化水素を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1であり、pは、1または2である。また、Xは、ハロゲンを表し、反応性の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素とする。
【0171】
このとき、p=1の場合はアミン誘導体(a3)をハロゲン化アレーン(a4)に対して当量反応させ、p=2の場合はアミン誘導体(a3)をハロゲン化アレーン(a4)に対して2当量反応させる。
【0172】
合成スキーム(A−2)において、ハロゲン基を有するアリール化合物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、または2級アリールアミン化合物)とのカップリング反応は様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。なお、合成スキーム(A−2)において、合成スキーム(A−1)と同様に、ハートウィッグ・ブッフバルト反応、ウルマン反応を用いればよい。
【0173】
以上のようにして、本実施の形態の芳香族アミン誘導体(G1)を合成することができる。
【0174】
〈一般式(G2)で表される芳香族アミン誘導体の合成方法〉
まず、合成スキーム(A−3)に示すように、ジベンゾフラン誘導体、またはジベンゾチオフェン誘導体のハロゲン化物(a5)とアミンを有するアリール化合物(a6)とをカップリングさせることで、アミン誘導体(a7)が得られる。
【0175】
【化95】

【0176】
なお、合成スキーム(A−3)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1である。また、Xは、ハロゲンを表し、反応性の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素とする。
【0177】
合成スキーム(A−3)において、ジベンゾフラン誘導体、またはジベンゾチオフェン誘導体のハロゲン化物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、または2級アリールアミン化合物)とのカップリング反応は様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0178】
合成スキーム(A−3)において、ハートウィッグ・ブッフバルト反応を用いる場合について示す。金属触媒としてはパラジウム触媒を用いることができ、パラジウム触媒としてはパラジウム錯体とその配位子の混合物を用いることができる。具体的なパラジウム錯体としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等が挙げられる。
【0179】
配位子としては、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリ(n−ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、及び1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(略称:DPPF)等が挙げられる。
【0180】
塩基として用いることができる物質としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等を挙げることができる。この反応は溶液中で行うことが好ましく、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ただし、用いることができる触媒およびその配位子、塩基、溶媒はこれらに限られるものでは無い。また、この反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0181】
また、合成スキーム(A−3)において、ウルマン反応を用いる場合について示す。金属触媒としては銅触媒を用いることができ、具体的には、ヨウ化銅(I)、または酢酸銅(II)が挙げられる。また、塩基として用いることができる物質としては、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0182】
また、この反応は溶液中で行うことが好ましく、用いることができる溶媒としては、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ただし、用いることができる触媒、塩基、溶媒はこれらに限られるものでは無い。またこの反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0183】
なお、ウルマン反応では、反応温度が100℃以上の方がより短時間かつ高収率で目的物が得られるため、DMPU、キシレンなど沸点の高い溶媒を用いることが好ましい。また、反応温度として、150℃以上より高い温度が更に好ましいため、より沸点の高いDMPUを溶媒として用いることがより好ましい。
【0184】
次に、合成スキーム(A−4)で示すように、アミン誘導体(a7)とハロゲン化アレーン(a8)とをカップリングさせることで、一般式(G2)で表される芳香族アミン誘導体を得ることができる。
【0185】
【化96】

【0186】
なお、合成スキーム(A−4)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数14〜18の、置換または無置換の縮合芳香族炭化水素を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1であり、pは、1または2である。また、Xは、ハロゲンを表し、反応性の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素とする。
【0187】
このとき、p=1の場合はアミン誘導体(a7)をハロゲン化アレーン(a8)に対して当量反応させ、p=2の場合はアミン誘導体(a7)をハロゲン化アレーン(a8)に対して2当量反応させる。
【0188】
合成スキーム(A−4)において、ハロゲン基を有するアリール化合物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物または2級アリールアミン化合物)とのカップリング反応は様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0189】
なお、合成スキーム(A−4)において、合成スキーム(A−3)と同様に、ハートウィッグ・ブッフバルト反応、ウルマン反応を用いることができる。
【0190】
以上のようにして、本実施の形態の芳香族アミン誘導体(G2)を合成することができる。
【0191】
本実施の形態の芳香族アミン誘導体(G1)、または芳香族アミン誘導体(G2)は、短波長の可視光の発光が可能であり、色純度の良い青色発光を得ることができるアミン誘導体である。
【0192】
また、本実施の形態の芳香族アミン誘導体(G1)、または芳香族アミン誘導体(G2)を用いて発光素子を形成することにより、発光素子の特性を向上させることができる。
【0193】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0194】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した一般式(G3)、一般式(G9)で表される芳香族アミン誘導体、及び一般式(G6)および一般式(G10)で表される芳香族アミン誘導体について説明する。
【0195】
下記一般式(G6)は、一般式(G3)で表される化合物において、R〜R、RおよびR10が水素原子であり、Arが実施の形態1で示した構造式(Ar2−1)であり、nが0であり、AがO(酸素)またはS(硫黄)である、芳香族アミン誘導体である。また、下記一般式(G6)で表される芳香族アミン誘導体の特徴は、一般式(G3)中のジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基の4位で3級アミンを形成していることである。
【0196】
【化97】

【0197】
また、下記一般式(G10)は、一般式(G9)で表される化合物において、R〜R、RおよびR10が水素原子であり、Arが実施の形態1で示した構造式(Ar2−1)であり、nが0であり、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)である、芳香族アミン誘導体である。また、下記一般式(G10)における芳香族アミン誘導体の特徴は、一般式(G9)中のジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基の2位で3級アミンを形成していることである。
【0198】
【化98】

【0199】
一般式(G6)および一般式(G10)で表される芳香族アミン誘導体は、共に高発光効率、長寿命な発光材料であるが、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基の4位で3級アミンを形成している一般式(G6)で表される芳香族アミン誘導体のほうが、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基の2位で3級アミンを形成する一般式(G10)で表される芳香族アミン誘導体よりも、色純度の良い青色を呈色するので好ましい。これは、3級アミンを形成するジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基の結合位置によって、発光材料分子の共役性の違いが生じるためである。そして、該発光材料分子の共役性の違いが発光スペクトルのピーク位置を短波長側にシフトさせるためである。
【0200】
また、一般式(G6)、または一般式(G10)で表される芳香族アミン誘導体において、AがS(硫黄)であるジベンゾチオフェニル基よりも、AがO(酸素)であるジベンゾフラニル基のほうが、発光スペクトルのピーク位置が短波長側に現れるため、色純度の良い青色を呈色する。
【0201】
つまり、一般式(G6)で表される芳香族アミン誘導体、または一般式(G10)で表される芳香族アミン誘導体のなかで、AがO(酸素)であり、ジベンゾフラニル基の4位で3級アミンを形成している構造式(G6−1)の化合物が、最も色純度の高い青色を呈色する。
【0202】
【化99】

【0203】
〈一般式(G6)で表される芳香族アミン誘導体の合成方法〉
高効率、長寿命であり、色純度の高い青色を呈色する一般式(G6)における合成方法としては、種々の反応を適用することができる。一つの例として、合成スキーム(A−5)で得ることができる。
【0204】
【化100】

【0205】
合成スキーム(A−5)で示すように、2級芳香族アミン誘導体(a9)とハロゲン化ピレン(a10)とをカップリングさせることで、一般式(G6)で表される芳香族アミン誘導体を得ることができる。なお、合成スキーム(A−5)において、AはO(酸素)またはS(硫黄)を表す。Xは、ハロゲンを表し、反応性の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素とする。
【0206】
合成スキーム(A−5)において、ハロゲン基を有するピレン化合物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、または2級アリールアミン化合物)とのカップリング反応は様々な反応条件がある。実施の形態1と同様に塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法であるハートウィッグ・ブッフバルト反応や、ウルマン反応を用いることができる。このとき、アミン誘導体(a9)をハロゲン化ピレン(a10)に対して2当量反応させることで、一般式(G6)を合成することができる。
【0207】
〈一般式(G11)で表される2級芳香族アミン誘導体(a9)の合成方法〉
ここで、合成スキーム(A−5)に示した2級芳香族アミン誘導体(a9)の合成方法を、一般式(G11)を用いて説明する。一つの例として、合成スキーム(A−6)で得ることができる。
【0208】
【化101】

【0209】
なお、合成スキーム(A−6)において、Aは、O(酸素)またはS(硫黄)を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。また、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは、0または1である。具体的には、実施の形態1で説明したものが挙げられる。また、Xは、ハロゲンを表し、反応性の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素とする。
【0210】
合成スキーム(A−6)に示した反応は、ジベンゾフラン誘導体、またはジベンゾチオフェン誘導体のハロゲン化物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、または2級アリールアミン化合物)とのカップリング反応である。このカップリング反応は、様々な反応条件で行うことができる。その一例として、実施の形態1で説明したハートウィッグ・ブッフバルト反応や、ウルマン反応等の塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0211】
前記合成スキーム(A−5)で示したように、高効率、長寿命であり、色純度の高い青色を呈色する一般式(G6)で表される芳香族アミン誘導体を得るためには、一般式(G11)で表される2級芳香族アミン誘導体が必要となる。さらに、一般式(G11)で表される2級芳香族アミン誘導体は、新規な物質であり、大変有用な化合物である。
【0212】
【化102】

【0213】
以上により、本実施の形態で示した化合物を用いることで、本発明の課題である有機EL用青色発光材料として良好な、新規な芳香族アミン誘導体を提供することができる。また、本実施の形態で示した新規な芳香族アミン誘導体を用いて発光素子を形成することにより、発光素子の特性を向上させることができる。
【0214】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0215】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示した一般式(G4)で表される芳香族アミン誘導体について説明する。特に、一般式(G4)中のαが上記構造式(α−2)である一般式(G5)において、R〜R、RおよびR10が水素原子であり、Arが上記構造式(Ar2−1)であり、nが0である一般式(G7)について説明する。さらに、一般式(G4)のうちαが(α−1)であり、R〜R、RおよびR10が水素原子であり、Arが上記構造式(Ar2−1)であり、nが0である一般式(G8)で表される芳香族アミン誘導体についても説明する。
【0216】
【化103】

【0217】
【化104】

【0218】
一般式(G7)の特徴としては、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基が、アミノ基に結合するフェニレン基のメタ位で結合していることである。また、一般式(G8)の特徴は、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基が、アミノ基に結合するフェニレン基のパラ位で結合していることである。なお、一般式(G7)、および一般式(G8)中のAは、O(酸素)またはS(硫黄)である。
【0219】
一般式(G7)、および一般式(G8)で表される芳香族アミン誘導体は、共に高効率、長寿命な発光材料であるが、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基が、フェニレン基のメタ位で結合している一般式(G7)で表される芳香族アミン誘導体は、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチオフェニル基が、フェニレン基のパラ位で結合している一般式(G8)で表される芳香族アミン誘導体よりも、発光スペクトルが短波長側にシフトするため、より色純度の高い青色を呈色することができる。
【0220】
〈一般式(G7)で表される芳香族アミン誘導体の合成方法〉
一般式(G7)における合成方法としては、種々の反応を適用することができる。一つの例として、合成スキーム(A−7)で得ることができる。
【0221】
【化105】

【0222】
合成スキーム(A−7)で示した反応は、実施の形態1で説明したように、ハロゲン基を有するピレン化合物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、または2級アリールアミン化合物)とのカップリング反応である。このカップリング反応は、様々な反応条件で行うことができる。その一例として、実施の形態1で説明したハートウィッグ・ブッフバルト反応や、ウルマン反応等の塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0223】
合成スキーム(A−7)で示すように、2級芳香族アミン誘導体(a13)とハロゲン化ピレン(a10)とをカップリングさせることで、一般式(G7)で表されるアミン誘導体を得ることができる。このとき、2級芳香族アミン誘導体(a13)をハロゲン化ピレン(a10)に対して2当量反応させることで、一般式(G7)を合成することができる。また、この反応は溶液中で行うことが好ましく、用いることができる溶媒としては、実施の形態1で説明した溶媒を用いることができる。さらに、この反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。Xは、ハロゲンを表し、反応性の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素とする。なお、合成スキーム(A−7)において、AはO(酸素)またはS(硫黄)を表す。
【0224】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体を用いて形成した発光素子について説明する。
【0225】
本実施の形態における発光素子は、陽極として機能する第1の電極、陰極として機能する第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に設けられたEL層とから構成されている。なお、本実施の形態における発光素子は、第1の電極の方が第2の電極よりも電位が高くなるように、それぞれに電圧を印加したときに、発光が得られるものとする。
【0226】
また、本実施の形態における発光素子のEL層は、陽極として機能する第1の電極側から第1の層(正孔注入層)、第2の層(正孔輸送層)、第3の層(発光層)、第4の層(電子輸送層)、第5の層(電子注入層)を含む構成とする。
【0227】
本実施の形態における発光素子の構造を、図1を用いて説明する。基板101は、発光素子の支持体として用いられる。基板101としては、例えばガラス、石英、プラスチックなどを用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0228】
なお、上記基板101は、本実施の形態の発光素子を利用する製品である発光装置あるいは電子機器中に残存させてもよいが、最終製品中に残存せず発光素子の作製工程における支持体としての機能のみを有していてもよい。
【0229】
基板101上に形成される第1の電極102には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。但し、本実施の形態においては、第1の電極102と接して形成されるEL層103のうちの第1の層111は、第1の電極102の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成される為、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)であれば、あらゆる公知の材料を用いることができる。
【0230】
これらの材料は、スパッタリング法により形成することができる。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜10wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより形成してもよい。
【0231】
また、第1の電極102上に形成されるEL層103のうち、第1の電極102に接して形成される第1の層111に用いる材料として、後述する複合材料を含む層を用いた場合には、第1の電極102に用いる材料は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金(AlSi)等も用いることができる。
【0232】
また、仕事関数の小さい材料である元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0233】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて第1の電極102を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0234】
第1の電極102上に形成されるEL層103には、実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体の他に公知の材料を用いることができ、低分子系化合物および高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層103を形成する物質には、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0235】
EL層103は、例えば、正孔注入性の高い物質を含む正孔注入層と、正孔輸送性の高い物質を含む正孔輸送層と、発光性物質を含む発光層と、電子輸送性の高い物質を含む電子輸送層と、電子注入性の高い物質を含む電子注入層とを適宜組み合わせて積層することにより形成される。
【0236】
なお、図1(A)に示すEL層103は、第1の電極102側から第1の層(正孔注入層)111、第2の層(正孔輸送層)112、第3の層(発光層)113、第4の層(電子輸送層)114、および第5の層(電子注入層)115の順に積層されている。
【0237】
第1の層111は、正孔注入性の高い物質を含む正孔注入層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、低分子の有機化合物としては、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物が挙げられる。
【0238】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等も挙げられる。また、実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体を用いることもできる。
【0239】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0240】
また、第1の層111として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、第1の電極102として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。なお、本明細書中において、複合とは、単に2つの材料を混合させるだけでなく、複数の材料を混合することによって材料間での電荷の授受が行われ得る状態になることを言う。
【0241】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下に、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0242】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、MTDATA、TDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を挙げることができる。
【0243】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を挙げることができる。
【0244】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン等の芳香族炭化水素化合物や、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等のビニル基を有している芳香族炭化水素化合物も挙げることができる。また、実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体を用いることもできる。
【0245】
また、複合材料に用いることができるアクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族〜第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガンおよび酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0246】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述したアクセプター性物質を用いて複合材料を形成し、第1の層111に用いてもよい。さらに、実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体も上述したアクセプター性物質と組み合わせて複合材料を形成し、第1の層111に用いることもできる。
【0247】
第2の層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、実施の形態1〜実施の形態3で示した芳香族アミン誘導体も用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0248】
また、第2の層112には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0249】
なお、第2の層112として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0250】
第3の層113は、発光性の高い物質を含む発光層である。該発光層は、発光性の高い物質を主成分とする構成、または発光性の高い物質を他の物質に分散させた構成とすることができる。本実施の形態では、該発光性の高い物質として、実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体を用いる。
【0251】
実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体を他の物質に分散させる場合には、実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体の割合が、質量比で全体の10%以下になるようにするのが好ましい。また、発光性の物質を分散させる物質としては、公知の物質を用いることができるが、発光性の物質(実施の形態1乃至3で示した芳香族アミン誘導体)よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が浅く(絶対値が小さく)、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が深い(絶対値が大きい)物質を用いることが好ましい。
【0252】
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体を用いることができる。
【0253】
また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(ビフェニル−4−イル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物を用いることができる。
【0254】
その他、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−[4−(3,6−ジフェニル−N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)などの縮合芳香族化合物を用いることもできる。
【0255】
また、発光物質を分散させるための物質は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。さらに、発光物質へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq等を添加してもよい。このように、発光物質を他の物質に分散させた構成とすることで、第3の層113の結晶化を抑制することができる。さらに、発光性の高い物質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0256】
また、上述した物質のうち、特に電子輸送性の物質に発光性の物質を分散させて第3の層113を形成することがより好ましい。具体的には、上述した金属錯体、複素環化合物、縮合芳香族化合物のうちのCzPA、DNA、t−BuDNA、さらには、のちに示す第4の層114に用いることのできる物質として挙げられる高分子化合物を用いることもできる。
【0257】
なお、第3の層113は2層以上の複数層で形成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して第3の層113とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する物質を用いることができる。より好ましくは第1の発光層のホスト材料は電子輸送性よりも正孔輸送性の高い材料を用い、第2の発光層のホスト材料は正孔輸送性よりも電子輸送性の高い材料が好ましい。上記の構成とすることで第1の発光層と第2の発光層との間が発光領域となり、より高効率な素子が得られる。
【0258】
以上、説明した第3の層113は、複数の材料で構成されている場合、真空蒸着法での共蒸着、または混合溶液を用いた方法としてインクジェット法、スピンコート法、若しくはディップコート法などを用いて作製することができる。
【0259】
第4の層114は、電子輸送性の高い物質を含む電子輸送層である。第4の層114には、例えば、低分子の有機化合物として、Alq、Almq、BeBq、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、PBD、OXD−7、TAZ、TPBI、BPhen、BCPなどの複素環化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が2層以上積層したものとしてもよい。
【0260】
また、第4の層114には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることができる。
【0261】
また、第5の層115は、電子注入性の高い物質を含む電子注入層である。第5の層115には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、第2の電極104からの電子注入をより効率良く行うことができる。
【0262】
第2の電極104には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0263】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて第2の電極104を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0264】
なお、第5の層115を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いて第2の電極104を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0265】
また、第1の層(正孔注入層)111、第2の層(正孔輸送層)112、第3の層(発光層)113、第4の層(電子輸送層)114、および第5の層(電子注入層)115が順次積層して形成されるEL層103の作製方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法など用いることができる。なお、各層ごとに異なる形成方法を用いてもよい。
【0266】
第2の電極104についても、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法だけでなく、金属材料のペーストを用いて湿式法により形成することができる。
【0267】
またそれぞれ第1の電極102、第1の層(正孔注入層)111、第2の層(正孔輸送層)112、第3の層(発光層)113間は主に正孔を流すため、隣接する層間のキャリア注入障壁を小さくするためにHOMO準位(金属の場合は仕事関数)が同じか同程度であることが望ましい。同様に、それぞれ第3の層(発光層)113、第4の層(電子輸送層)114、第5の層(電子注入層)115、第2の電極104間は、主に電子を流すため、隣接する層間のキャリア注入障壁を小さくするためにLUMO準位(金属の場合は仕事関数)が同じか同程度であることが望ましい。好ましくはその差は0.2eV以内、より好ましくは0.1eV以内であることが好ましい。
【0268】
また、あえてそれぞれ第2の層(正孔輸送層)112、第3の層(発光層)113間のHOMO準位、第3の層(発光層)113、第4の層(電子輸送層)114間のLUMO準位の差を大きくすることで、発光層でのキャリアを閉じこめ、より効率の良い発光素子となり好ましい。ただしこの場合、障壁が大きすぎると駆動電圧が高くなり、素子への負担となるため、好ましくはその差は0.4eV以内、より好ましくは0.2eV以内であることが好ましい。
【0269】
本実施の形態の発光素子は、第1の電極102と第2の電極104との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層103において正孔と電子とが再結合することにより、発光性の有機化合物は励起状態を形成し、その励起状態から基底状態に戻る際の緩和エネルギーとして発光する。そして、この発光は、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方、または両方が透光性を有する電極とする必要がある。
【0270】
なお、第1の電極102のみが透光性を有する電極である場合には、図2(A)に示すように、EL層103で生じた発光は第1の電極102を通って基板101側から取り出される。また、第2の電極104のみが透光性を有する電極である場合には、図2(B)に示すように、EL層103で生じた発光は第2の電極104を通って基板101と逆側から取り出される。さらに、第1の電極102および第2の電極104がいずれも透光性を有する電極である場合には、図2(C)に示すように、EL層103で生じた発光は第1の電極102および第2の電極104を通って、基板101側および基板101と逆側の両方から取り出される。
【0271】
なお、第1の電極102と第2の電極104との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。少なくとも正孔輸送層である第2の層112、および発光層である第3の層113を有する構成であれば、上記以外のものでもよい。
【0272】
また、図1(B)に示すように、基板101上に陰極として機能する第2の電極104、EL層103、陽極として機能する第1の電極102が順次積層された構造としてもよい。なお、この場合のEL層103は、第2の電極104上に第5の層115、第4の層114、第3の層113、第2の層112、第1の層111、第1の電極102が順次積層された構造となる。
【0273】
なお、本実施の形態の発光素子を用いることで、パッシブマトリクス型の発光装置や、薄膜トランジスタ(TFT)によって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することができる。
【0274】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合におけるTFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであってもよい。さらに、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半導体膜を用いてもよい。
【0275】
以上より、本実施の形態で示した発光素子は、発光物質として実施の形態1乃至3の芳香族アミン誘導体を含んで形成されることから、素子効率が向上し、且つ長寿命の発光素子とすることができる。
【0276】
(実施の形態5)
本実施の形態は、複数の発光ユニット(EL層とも記す)を積層した構成の発光素子(以下、積層型素子という。)の態様について、図3を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する積層型発光素子である。各発光ユニットの構成としては、実施の形態4で示した構成と同様な構成を用いることができる。つまり、実施の形態4で示した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素子である。本実施の形態では、複数の発光ユニットを有する発光素子について説明する。
【0277】
図3(A)において、第1の電極321と第2の電極322との間には、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312が積層されている。第1の電極321と第2の電極322は実施の形態4で説明したものを適用することができる。また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312は同じ構成であっても、異なる構成であってもよく、該構成は実施の形態4と同様の構成とすることができる。
【0278】
電荷発生層313は、第1の電極321と第2の電極322に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入する層である。つまり、正孔輸送性の高い有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを含む構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物と電子供与体(ドナー)とを含む構成であっても、単層でも複数の層を積層した構成であってもよい。複数の層を積層した構成としては、正孔を注入する層と電子を注入する層とを積層する構成であることが好ましい。
【0279】
正孔を注入する層としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化レニウム、酸化ルテニウム等の半導体や絶縁体を用いることができる。あるいは、正孔輸送性の高い物質に、アクセプター性物質が添加された構成であってもよい。正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層は、アクセプター性物質として、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)や、酸化バナジウムや酸化モリブデンや酸化タングステン等の金属酸化物を含む。正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物、オリゴマー、デンドリマー、ポリマーなど、種々の化合物を用いることができる。なお、実施の形態1乃至実施の形態3で示した本発明の芳香族アミン誘導体も同様に用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質としては、正孔移動度が10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0280】
電子を注入する層としては、酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸セシウム等の絶縁体や半導体を用いることができる。あるいは、電子輸送性の高い物質に、ドナー性物質が添加された構成であってもよい。ドナー性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物をドナー性物質として用いてもよい。電子輸送性の高い物質としては、実施の形態1乃至実施の形態3で示した材料を用いることができる。なお、電子輸送性の高い物質としては、電子移動度が10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。電子輸送性の高い物質とドナー性物質とを有する複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0281】
また、電荷発生層313として、実施の形態4で示した電極材料を用いることもできる。例えば、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物を含む層と透明導電膜とを組み合わせて形成しても良い。なお、光取り出し効率の点から、電荷発生層は透光性の高い層とすることが好ましい。
【0282】
いずれにしても、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312に挟まれる電荷発生層313は、第1の電極321と第2の電極322に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、第1の電極の電位の方が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層313は、第1の発光ユニット311に電子を注入し、第2の発光ユニット312に正孔を注入するものであればいかなる構成でもよい。
【0283】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、図3(B)に示すように、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能である。電流密度を低く保てるため、長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0284】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットの発光色と第2の発光ユニットの発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1の発光ユニットの発光色が赤色であり、第2の発光ユニットの発光色が緑色であり、第3の発光ユニットの発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0285】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0286】
(実施の形態6)
本実施の形態では、画素部に実施の形態4または実施の形態5の発光素子を有する発光装置について図4を用いて説明する。なお、図4(A)は、発光装置を示す上面図、図4(B)は図4(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。
【0287】
図4(A)において、点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板、405はシール材であり、シール材405で囲まれた内側は、図4(B)に示すように空間407になっている。
【0288】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401、およびゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。また、本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0289】
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。素子基板410上には駆動回路部、および画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401と、画素部402中の一つの画素が示されている。なお、ソース側駆動回路401はNチャネル型TFT423とPチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0290】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成される。
【0291】
絶縁物414として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、または光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型の感光性材料を用いることができる。また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部または下端部に曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いることで、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることができる。
【0292】
第1の電極413上には、EL層416、および第2の電極417がそれぞれ形成される。ここで、第1の電極413に用いる材料としては、さまざまな金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。なお、具体的な材料としては、実施の形態4において第1の電極に用いることができるとして示した材料を用いることができるものとする。
【0293】
また、EL層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層416は、実施の形態4または実施の形態5で示した構成を有している。また、EL層416を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。また、EL層に用いる材料としては、有機化合物だけでなく、無機化合物を用いてもよい。
【0294】
また、第2の電極417に用いる材料としては、さまざまな金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。第2の電極417を陰極として用いる場合には、その中でも、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。例えば、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)等が挙げられる。
【0295】
なお、EL層416で生じた光が第2の電極417を透過する構成とする場合には、第2の電極417として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等)との積層を用いることも可能である。
【0296】
さらに、シール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、素子基板410、封止基板404、およびシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される場合もある。
【0297】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0298】
以上のようにして、実施の形態4または実施の形態5で説明した発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0299】
また、実施の形態4または実施の形態5で説明した発光素子は、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパッシブマトリクス型の発光装置に用いることもできる。図5に上記実施の形態で示した発光素子を用いたパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図および断面図を示す。なお、図5(A)は、発光装置を示す斜視図、図5(B)は図5(A)をX−Yで切断した断面図である。
【0300】
図5において、基板501上の第1の電極502と第2の電極503との間にはEL層504が設けられている。第1の電極502の端部は絶縁層505で覆われている。そして、絶縁層505上には隔壁層506が設けられている。隔壁層506の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁層506の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(図5(B)において絶縁層505と接する辺)の方が上辺(図5(B)において、絶縁層505と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層506を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0301】
以上により、実施の形態4または5の発光素子を有するパッシブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0302】
なお、本実施の形態で示した発光装置(アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス型)は、いずれも上記実施の形態で示した発光効率の高く、長寿命の発光素子を用いて形成されることから、消費電力が低減され、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0303】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【0304】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態6に示す発光装置をその一部に含む電子機器、および照明装置について説明する。電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的には、Digital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図6に示す。
【0305】
図6(A)は本発明の一態様に係るテレビ装置であり、筐体611、支持台612、表示部613、スピーカー部614、ビデオ入力端子615等を含む。このテレビ装置において、表示部613には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の発光装置は、高い発光効率が得られるという特徴を有していることから、本発明の発光装置を適用することで消費電力の低減されたテレビ装置を得ることができる。
【0306】
図6(B)は本発明の一態様に係るコンピュータであり、本体621、筐体622、表示部623、キーボード624、外部接続ポート625、ポインティングデバイス626等を含む。このコンピュータにおいて、表示部623には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の発光装置は、高い発光効率が得られるという特徴を有していることから、本発明の発光装置を適用することで消費電力の低減されたコンピュータを得ることができる。
【0307】
図6(C)は本発明の一態様に係る携帯電話であり、本体631、筐体632、表示部633、音声入力部634、音声出力部635、操作キー636、外部接続ポート637、アンテナ638等を含む。この携帯電話において、表示部633には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の発光装置は、高い発光効率が得られるという特徴を有していることから、本発明の発光装置を適用することで消費電力の低減された携帯電話を得ることができる。
【0308】
図6(D)は本発明の一態様に係るカメラであり、本体641、表示部642、筐体643、外部接続ポート644、リモコン受信部645、受像部646、バッテリー647、音声入力部648、操作キー649、接眼部650等を含む。このカメラにおいて、表示部642には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の発光装置は、高い発光効率が得られるという特徴を有していることから、本発明の発光装置を適用することで消費電力の低減されたカメラを得ることができる。
【0309】
以上のように、本発明の一態様の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の発光装置を用いることにより、消費電力の低減された電子機器を得ることができる。
【0310】
また、本発明の一態様の発光装置は、照明装置として用いることもできる。図7は、上記実施の形態を適用して形成される発光装置を、室内の照明装置701として用いた例である。上記実施の形態で示した発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、上記実施の形態で示した発光装置は、卓上照明器具700として用いることも可能である。なお、照明器具には天井固定型の照明器具、卓上照明器具の他にも、壁掛け型の照明器具、車内用照明、誘導灯なども含まれる。上記実施の形態を適用して形成される発光装置は、長寿命な発光素子を有しているため、長寿命な照明装置として用いることが可能となる。
【0311】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【実施例1】
【0312】
本実施例では、実施の形態2で示した構造式(G6−1)で表されるN,N’−ビス(ジベンゾフラン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn−II)を製造する例を示す。
【0313】
【化106】

【0314】
[ステップ1:N−(ジベンゾフラン−4−イル)−N−フェニル−アミン(略称:FrA−II)の合成方法]
【0315】
4−ヨードジベンゾフラン4.5g(15.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド4.5g(4.6mmol)を300mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン98.0mL、アニリン2.8mL(19.1mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.3mLを加えた。
【0316】
この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)54.1mg(0.1mmol)を加え、80℃にして6.5時間攪拌した。攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。
【0317】
得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=5:1)により精製し、得られたフラクションを濃縮し、目的の白色固体を3.3g、収率84%で得た。上記ステップ1の合成スキームを、以下(B1−1)に示す。
【0318】
【化107】

【0319】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物であるN−(ジベンゾフラン−4−イル)−N−フェニル−アミン(略称:FrA−II)であることを確認した。
【0320】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=6.20(s、1H)、6.98−7.03(m、1H)、7.21−7.59(m、10H)、7.95(d、J=7.8Hz、1H)
【0321】
また、H NMRチャートを図8(A)、(B)に示す。なお、図8(B)は、図8(A)における6.00ppm〜8.25ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0322】
[ステップ2:N,N’−ビス(ジベンゾフラン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn−II)の合成方法]
【0323】
1,6−ジブロモピレン0.8g(2.1mmol)、N−(ジベンゾフラン−4−イル)−N−フェニル−アミン1.1g(4.2mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.6g(6.2mmol)を50mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン20.0mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.3mLを加えた。
【0324】
この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)46.7mg(0.1mmol)を加え、80℃にして3.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。
【0325】
得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=7:3)により精製し、得られたフラクションを濃縮した。濃縮して得られた固体をクロロホルムとヘキサンにて再結晶をし、目的の黄色固体を0.7g、収率45%で得た。
【0326】
得られた0.6gの黄色固体、をトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力3.1Pa、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、305℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、黄色固体を0.5g、回収率83%で得た。上記ステップ2の合成スキームを、以下(B1−2)に示す。
【0327】
【化108】

【0328】
核磁気共鳴法(NMR)およびMSスペクトルによって、上記ステップで合成した化合物が、目的物であるN,N’−ビス(ジベンゾフラン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn−II)であることを確認した。
【0329】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=6.86(d、J=7.8Hz、4H)、6.93(t、J=7.2Hz、2H)、7.11−7.22(m、8H)、7.31−7.41(m、6H)、7.70(d、J=6.8Hz、2H)、7.88−7.97(m、6H)、8.08(d、J=8.4Hz、2H)、8.25(d、J=9.0Hz、2H)
【0330】
また、H NMRチャートを図9(A)、(B)に示す。なお、図9(B)は、図9(A)における6.75ppm〜8.50ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0331】
得られた化合物のエレクトロスプレーイオン化質量分析(Electro Spray Ionization Mass Spectrum、ESI−MS)スペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=717(M+H);C5232(716.25)
【0332】
また、1,6FrAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルを図10(A)に、発光スペクトルを図10(B)に示す。また、1,6FrAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルを図11(A)に、発光スペクトルを図11(B)に示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。発光スペクトルの測定には蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。図10(A)および図11(A)に示した吸収スペクトルは、それぞれ参照用のスペクトルを差し引いた吸収スペクトルである。図10(A)における参照用のスペクトルは、石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルであり、該図11(A)における参照用のスペクトルは、石英基板の吸収スペクトルである。なお、図10および図11において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では421nm付近に吸収が見られ、最大発光波長は450nm(励起波長370nm)であった。また、薄膜の場合では430nm付近に吸収がみられ、発光スペクトルのピークは461、488nm(励起波長428nm)であった。
【0333】
これらの結果より、トルエン溶液における1,6FrAPrn−IIのストークスシフトは29nmと小さいことが確認された。
【0334】
また、1,6FrAPrn−IIの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図11(B)に示した1,6FrAPrn−IIの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、1,6FrAPrn−IIのHOMO準位は、−5.57eVであり、エネルギーギャップは、2.72eVであり、LUMO準位は、−2.85eVであった。
【0335】
次に、酸化還元反応特性をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。以下に測定方法について詳述する。
【0336】
(参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーの算出)
まず、本実施例で用いる参照電極(Ag/Ag電極)の真空準位に対するポテンシャルエネルギー(eV)を算出した。つまり、Ag/Ag電極のフェルミ準位を算出した。メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位は、標準水素電極に対して+0.610[V vs. SHE]であることが知られている(参考文献;Christian R.Goldsmith et al., J.Am.Chem.Soc., Vol.124, No.1,83−96, 2002)。一方、本実施例で用いる参照電極を用いて、メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位を求めたところ、+0.11V[vs.Ag/Ag]であった。したがって、この参照電極のポテンシャルエネルギーは、標準水素電極に対して0.50[eV]低くなっていることが確認できた。
【0337】
ここで、標準水素電極の真空準位からのポテンシャルエネルギーは−4.44eVであることが知られている(参考文献;大西敏博・小山珠美著、高分子EL材料(共立出版)、p.64−67)。以上のことから、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.44−0.50=−4.94[eV]であると算出できた。
【0338】
(目的物のCV測定)
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)((株)東京化成製カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一した。
【0339】
この溶液を用いて、目的物のCV測定を行った。参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから1.50Vまで走査した後、1.50Vから−0.10Vまで走査したところ、酸化を示す明確なピークが観測された。また、走査を100サイクル繰り返した後でも、そのピークの形状がほとんど変化しなかった。このことから、1,6FrAPrn−IIは酸化状態と中性状態との間で繰り返される酸化還元に対して良好な特性を示すことが確認できた。
【0340】
なお、このCV測定において、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.58Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.46Vであった。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、(Epa+Epc)/2[V])は0.52Vと算出できる。このことは、1,6FrAPrn−IIは0.52[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、1,6FrAPrn−IIのHOMO準位は、−4.94−0.52=−5.46[eV]であることが確認できた。
【0341】
得られた1,6FrAPrn−IIの熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速200mL/min)の条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、5%重量減少温度は420℃であり、良好な耐熱性を示した。
【実施例2】
【0342】
本実施例では、構造式(G6−2)で表されるN,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn−II)を製造する例を示す。
【0343】
【化109】

【0344】
[ステップ1:N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N−フェニル−アミン(略称:ThA−II)の合成方法]
【0345】
4−ヨードジベンゾチオフェン4.7g(15.3mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド4.5g(4.6mmol)を300mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン98.0mL、アニリン2.7mL(18.3mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.3mLを加えた。
【0346】
この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)69.8mg(0.1mmol)を加え、80℃にして14時間攪拌した。攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。
【0347】
得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=4:1)により精製し、得られたフラクションを濃縮し、目的物を3.9g、収率90%で得た。上記ステップ1の合成スキームを、以下(B2−1)に示す。
【0348】
【化110】

【0349】
核磁気共鳴法(NMR)によって、上記ステップにて合成した化合物が、N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N−フェニル−アミン(略称:ThA−II)であることを確認した。
【0350】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=5.66(s、1H)、6.95−7.00(m、1H)、7.07−7.10(m、2H)、7.27−7.50(m、6H)、7.83−7.89(m、2H)、8.13−8.19(m、1H)
【0351】
また、H NMRチャートを図12(A)、(B)に示す。なお、図12(B)は、図12(A)における5.50ppm〜8.25ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0352】
[ステップ2:N,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn−II)の合成方法]
【0353】
1,6−ジブロモピレン0.7g(2.0mmol)、N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N−フェニル−アミン1.1g(4.0mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.6g(6.0mmol)を300mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン20.0mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.3mLを加えた。
【0354】
この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)40.3mg(0.1mmol)を加え、80℃にして3.5時間攪拌した。攪拌後、クロロホルム400mLを加え、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。
【0355】
得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=7:3)により精製し、得られたフラクションを濃縮した。
【0356】
濃縮して得られた固体をクロロホルムとヘキサンにて再結晶をし、目的の黄色固体を0.6g、収率39%で得た。得られた0.6gの黄色固体、をトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.5Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minでながしながら、313℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、黄色固体を0.5g、回収率82%で得た。上記ステップ2の合成スキームを、以下(B2−2)に示す。
【0357】
【化111】

【0358】
核磁気共鳴法(NMR)およびMSスペクトルによって、上記ステップで合成した化合物が目的物であるN,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn−II)であることを確認した。
【0359】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=6.92−7.02(m、6H)、7.20−7.27(m、6H)、7.35−7.46(m、6H)、7.66−7.69(m、2H)、7.81(d、J=8.4Hz、2H)、7.87(d、J=9.0Hz、2H)、7.96(d、J=7.8Hz、2H)、8.03(d、J=8.4Hz、2H)、8.15−8.18(m、4H)
【0360】
また、H NMRチャートを図13(A)、(B)に示す。なお、図13(B)は、図13(A)における6.75ppm〜8.25ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0361】
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=748(M+H);C5232(748.2)
【0362】
また、1,6ThAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルを図14(A)に、発光スペクトルを図14(B)に示す。また、1,6ThAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルを図15(A)に、発光スペクトルを図15(B)に示す。吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定は、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。図14(A)、および図15(A)の吸収スペクトルは、それぞれ、実施例1と同様に参照用のスペクトルを差し引いた吸収スペクトルである。図14、および図15において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では424nm付近に吸収が見られ、最大発光波長は455nm(励起波長370nm)であった。また、薄膜の場合では432nm付近に吸収がみられ、発光スペクトルのピークは483、501nm(励起波長438nm)であった。
【0363】
これらの結果より、トルエン溶液における1,6ThAPrn−IIのストークスシフトは31nmと小さいことが確認された。
【0364】
また、1,6ThAPrn−IIの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。その結果、1,6ThAPrn−IIのHOMO準位は、−5.49eVであり、エネルギーギャップは、2.69eVであり、LUMO準位は、−2.80eVであった。
【0365】
酸化還元反応特性を、実施例1と同様にCV測定によって調べた。
【0366】
本実施例のCV測定において、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから0.6Vまで走査した後、0.6Vから−0.10Vまで走査し測定したところ、酸化を示す明確なピークが観測された。また、走査を100サイクル繰り返した後でも、そのピークの形状がほとんど変化しなかった。このことから、1,6ThAPrn−IIは酸化状態と中性状態との間で繰り返される酸化還元に対して良好な特性を示すことが確認できた。
【0367】
なお、このCV測定において、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.59Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.48Vであった。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、(Epa+Epc)/2[V])は0.54Vと算出できる。このことは、1,6ThAPrn−IIは0.54[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、1,6ThAPrn−IIのHOMO準位は、−4.94−0.54=−5.48[eV]であることが確認できた。
【0368】
1,6ThAPrn−IIについて、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて熱重量測定−示差熱分析を行った。重量と温度の関係(熱重量測定)から、1,6ThAPrn−IIの5%重量減少温度は458℃であり、良好な耐熱性を示した。
【実施例3】
【0369】
本実施例では、構造式(G10−1)で表される、N,N’−ビス(ジベンゾフラン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn)を製造する例を示す。
【0370】
【化112】

【0371】
1,6−ジブロモピレン0.9g(2.5mmol)、N−(ジベンゾフラン−2−イル)−N−フェニル−アミン1.3g(5.0mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.7g(7.4mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。
【0372】
この混合物にトルエン25.0mL、およびトリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.3mLを加えた。この混合物を80℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)34.9mg(0.06mmol)を加え7時間攪拌した。攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。
【0373】
得られたろ液を濃縮し得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=7:3)により精製し、得られたフラクションを濃縮した。得られた固体をトルエンとヘキサンにより再結晶を行い、目的物の黄色固体を1.3g、収率71%で得た。
【0374】
得られた黄色固体1.2gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.4Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minでながしながら、302℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、黄色プリズム結晶を1.1g、回収率90%で得た。上記合成例の合成スキームを以下(C1−1)に示す。
【0375】
【化113】

【0376】
核磁気共鳴法(NMR)およびMSスペクトルによって、上記ステップで合成した化合物が目的物であるN,N’−ビス(ジベンゾフラン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn)であることを確認した。
【0377】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=6.94(t、J=6.9Hz、2H)、7.02(d、J=7.8Hz、4H)、7.15−7.46(m、12H)、7.53(d、J=8.4Hz、2H)、7.72−7.75(m、4H)、7.82−7.86(m、2H)、7.90−7.93(m、2H)、8.09−8.14(m、2H)、8.17−8.23(m、2H)
【0378】
また、H NMRチャートを図16(A)、(B)に示す。なお、図16(B)は、図16(A)における6.75ppm〜8.00ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0379】
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=717(M+H);C5232(716.25)
【0380】
また、1,6FrAPrnのトルエン溶液における吸収スペクトルを図17(A)に、発光スペクトルを図17(B)に示す。また、1,6FrAPrnの薄膜における吸収スペクトルを図18(A)に、発光スペクトルを図18(B)に示す。吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定は、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。図17(A)、および図18(A)の吸収スペクトルは、それぞれ、実施例1と同様に参照用のスペクトルを差し引いた吸収スペクトルである。なお、図17、および図18において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では434nm付近に吸収が見られ、最大発光波長は465nm(励起波長370nm)であった。また、薄膜の場合では441nm付近に吸収がみられ、発光スペクトルのピークは480、508nm(励起波長441nm)であった。
【0381】
これらの結果より、トルエン溶液における1,6FrAPrnのストークスシフトは31nmと小さいことが確認された。
【0382】
また、1,6FrAPrnの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。その結果、1,6FrAPrnのHOMO準位は、−5.48eVであり、エネルギーギャップは、2.64eVであり、LUMO準位は、−2.84eVであった。
【0383】
酸化還元反応特性を、実施例1と同様にCV測定によって調べた。
【0384】
本実施例のCV測定においては、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから0.6Vまで走査した後、0.6Vから−0.10Vまで走査し測定したところ、酸化を示す明確なピークが観測された。また、走査を100サイクル繰り返した後でも、そのピークの形状がほとんど変化しなかった。このことから、1,6FrAPrnは酸化状態と中性状態との間で繰り返される酸化還元に対して良好な特性を示すことが確認できた。
【0385】
なお、このCV測定において、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.48Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.40Vであった。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、(Epa+Epc)/2[V])は0.44Vと算出できる。このことは、1,6FrAPrnは0.44[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、1,6FrAPrnのHOMO準位は、−4.94−0.44=−5.38[eV]であることが確認できた。
【0386】
1,6FrAPrnについて、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて熱重量測定−示差熱分析を行った。重量と温度の関係(熱重量測定)から、得られた1,6FrAPrnの5%重量減少温度は448℃であり、良好な耐熱性を示した。
【実施例4】
【0387】
本実施例では、構造式(G10−2)で表される、N,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn)を製造する例を示す。
【0388】
【化114】

【0389】
1,6−ジブロモピレン0.9g(2.4mmol)、N−(ジベンゾチオフェン−2−イル)−N−フェニル−アミン1.3g(4.8mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.7g(7.0mmol)を50mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。
【0390】
この混合物にトルエン25.0mLとトリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を80℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)25.7mg(0.04mmol)を加え2.0時間攪拌した。
【0391】
攪拌後、混合物を90℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)26.0mg(0.04mmol)を加え3.5時間攪拌した。攪拌後、混合物を80℃にし、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加え、1.0時間攪拌した。攪拌後、この混合物を85℃にし、3.5時間攪拌した。攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。
【0392】
得られたろ液を濃縮し得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=7:3)により精製し、得られたフラクションを濃縮し、黄色固体を得た。得られた固体をトルエンとヘキサンにより再結晶を行い、黄色固体を0.6g、収率34%で得た。
【0393】
得られた黄色固体0.6gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.5Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minでながしながら、300℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、目的物の黄色プリズム結晶を0.4g、回収率74%で得た。上記合成例の合成スキームを以下(C2−1)に示す。
【0394】
【化115】

【0395】
核磁気共鳴法(NMR)およびMSスペクトルによって、上記ステップで合成した化合物が、目的物であるN,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn)であることを確認した。
【0396】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=6.95−7.00(m、2H)、7.08−7.11(m、4H)、7.02−7.42(m、10H)、7.68(d、J=8.1Hz、2H)、7.80−7.94(m、10H)、8.11(d、J=8.4Hz、2H)、8.21(d、J=9.3Hz、2H)
【0397】
また、H NMRチャートを図19(A)、(B)に示す。なお、図19(B)は、図19(A)における6.75ppm〜8.50ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0398】
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=749(M+H);C5232(748.2)
【0399】
また、1,6ThAPrnのトルエン溶液における吸収スペクトルを図20(A)に、発光スペクトルを図20(B)に示す。また、1,6ThAPrnの薄膜における吸収スペクトルを図21(A)に、発光スペクトルを図21(B)に示す。吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定は、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。図20(A)、および図21(A)の吸収スペクトルは、それぞれ、実施例1と同様に参照用のスペクトルを差し引いた吸収スペクトルである。なお、図20、および図21において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では436nm付近に吸収が見られ、最大発光波長は467nm(励起波長370nm)であった。また、薄膜の場合では445nm付近に吸収がみられ、最大発光波長は563nm(励起波長445nm)であった。
【0400】
これらの結果より、1,6ThAPrnのトルエン溶液中でのストークスシフトは31nmと小さいことが確認された。
【0401】
また、1,6ThAPrnの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。その結果、1,6ThAPrnのHOMO準位は、−5.48eVであり、エネルギーギャップは、2.61eVであり、LUMO準位は、−2.87eVであった。
【0402】
酸化還元反応特性を、実施例1と同様にCV測定によって調べた。
【0403】
本実施例のCV測定においては、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから0.6Vまで走査した後、0.6Vから−0.10Vまで走査し測定したところ、酸化を示す明確なピークが観測された。また、走査を100サイクル繰り返した後でも、そのピークの形状がほとんど変化しなかった。このことから、1,6ThAPrnは酸化状態と中性状態との間で繰り返される酸化還元に対して良好な特性を示すことが確認できた。
【0404】
なお、このCV測定において、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.49Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.40Vであった。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、(Epa+Epc)/2[V])は0.45Vと算出できる。このことは、1,6ThAPrnは0.45[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、1,6ThAPrnのHOMO準位は、−4.94−0.45=−5.39[eV]であることが確認できた。
【0405】
1,6ThAPrnについて、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて熱重量測定−示差熱分析を行った。重量と温度の関係(熱重量測定)から、1,6ThAPrnの5%重量減少温度は468℃であり、良好な耐熱性を示した。
【実施例5】
【0406】
本実施例では、構造式(G7−1)で表される、N,N’−ビス〔3−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mFrBAPrn−II)を製造する例を示す。
【0407】
【化116】

【0408】
[ステップ1:3−(ジベンゾフラン−4−イル)−ジフェニルアミンの合成方法]
【0409】
4−(3−ブロモフェニル)ジベンゾフラン2.5g(7.7mmol)と、ナトリウム tert−ブトキシド2.1g(21.6mmol)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。
【0410】
この混合物にトルエン50.0mL、アニリン0.7mL(7.6mmol)とトリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を65℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)42.5mg(0.1mmol)を加え、80℃にして2.0時間攪拌した。
【0411】
攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し得た油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:2)により精製し、油状物を2.4g、収率91%で得た。上記ステップ1の合成スキームを、以下(D1−1)に示す。
【0412】
【化117】

【0413】
[ステップ2:N,N’−ビス〔3−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mFrBAPrn−II)の合成方法]
【0414】
1,6−ジブロモピレン0.6g(1.5mmol)とナトリウム tert−ブトキシド0.5g(4.7mmol)を50mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン2.2mL、トルエン15.0mLに溶かした3−(ジベンゾフラン−4−イル)−ジフェニルアミン1.0g(3.1mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。
【0415】
この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)41.2mg(0.1mmol)を加え、80℃にして2時間攪拌した。攪拌後、吸引ろ過をして固体を得た。
【0416】
得られた固体にトルエン500mLを加え、110℃に加熱し、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体にトルエン45mLを加え、加熱した。
【0417】
この混合物を吸引ろ過して黄色固体を0.8g、収率65%で得た。得られた0.8gの黄色固体、をトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.4Pa、アルゴンガスを流量4.0mL/minで流しながら、305℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、黄色固体を0.6g、回収率73%で得た。上記ステップ2の合成スキームを、以下(D1−2)に示す。
【0418】
【化118】

【0419】
核磁気共鳴法(NMR)およびMSスペクトルによって、上記ステップで合成された化合物が目的物であるN,N’−ビス〔3−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mFrBAPrn−II)であることを確認した。
【0420】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=6.98−7.03(m、2H)、7.09−7.14(m、4H)、7.19−7.39(m、16H)、7.48−7.51(m、4H)、7.70(t、J=1.8Hz、2H)、7.82−7.87(m、4H)、7.92(d、J=8.1Hz、2H)、7.98(d、J=9.3Hz、2H)、8.15(d、J=8.4Hz、2H)、8.27(d、J=9.0Hz、2H)
【0421】
また、H NMRチャートを図22(A)、(B)に示す。なお、図22(B)は、図22(A)における6.75ppm〜8.50ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0422】
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=869(M+H);C6440(868.31)
【0423】
また、1,6mFrBAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルを図23(A)に、発光スペクトルを図23(B)に示す。また、1,6mFrBAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルを図24(A)に、発光スペクトルを図24(B)に示す。吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定は、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。図23(A)、および図24(A)の吸収スペクトルは、それぞれ、実施例1と同様に参照用のスペクトルを差し引いた吸収スペクトルである。なお、図23、および図24において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では428nm付近に吸収が見られ、最大発光波長は458nm(励起波長370nm)であった。また、薄膜の場合では437nm付近に吸収がみられ、発光波長は484、501nm(励起波長434nm)であった。
【0424】
これらの結果より、1,6mFrBAPrn−IIのトルエン溶液中でのストークスシフトは30nmと小さいことが確認された。
【0425】
また、1,6mFrBAPrn−IIの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。その結果、1,6mFrBAPrn−IIのHOMO準位は、−5.51eVであり、エネルギーギャップは、2.67eVであり、LUMO準位は、−2.84eVであった。
【0426】
酸化還元反応特性を、実施例1と同様にCV測定によって調べた。
【0427】
本実施例のCV測定においては、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから0.6Vまで走査した後、0.6Vから−0.10Vまで走査し測定したところ、酸化を示す明確なピークが観測された。また、走査を100サイクル繰り返した後でも、そのピークの形状がほとんど変化しなかった。このことから、1,6mFrBAPrn−IIは酸化状態と中性状態との間で繰り返される酸化還元に対して良好な特性を示すことが確認できた。
【0428】
なお、このCV測定において、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.52Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.45Vであった。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、(Epa+Epc)/2[V])は0.49Vと算出できる。このことは、1,6mFrBAPrn−IIは0.49[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、1,6mFrBAPrn−IIのHOMO準位は、−4.94−0.49=−5.43[eV]であることが確認できた。
【0429】
1,6mFrBAPrn−IIについて、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて熱重量測定−示差熱分析を行った。重量と温度の関係(熱重量測定)から、1,6mFrBAPrn−IIの5%重量減少温度は500℃以上であり、良好な耐熱性を示した。
【実施例6】
【0430】
本実施例では、構造式(G7−2)で表される、N,N’−ビス〔3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mThBAPrn−II)を製造する例を示す。
【0431】
【化119】

【0432】
[ステップ1:3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)−ジフェニルアミンの合成方法]
【0433】
4−(3−ブロモフェニル)ジベンゾチオフェン2.4g(7.1mmol)と、ナトリウム tert−ブトキシド2.0g(20.9mmol)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。
【0434】
この混合物にトルエン50.0mL、アニリン0.7mL(7.6mmol)とトリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)42.7mg(0.1mmol)を加え、80℃にして5.0時間攪拌した。
【0435】
攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し得た油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=2:1)により精製し、目的物を2.4g、収率95%で得た。上記ステップ1の合成スキームを、以下(D2−1)に示す。
【0436】
【化120】

【0437】
[ステップ2:N,N’−ビス〔3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mThBAPrn−II)の合成方法]
【0438】
1,6−ジブロモピレン0.6g(1.7mmol)とナトリウム tert−ブトキシド0.5g(5.2mmol)を50mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン2.0mL、トルエン15.0mLに溶かした3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)−ジフェニルアミン1.2g(3.3mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。
【0439】
この混合物を80℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)17.2mg(0.03mmol)を加え、1.0時間攪拌した。攪拌後、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)18.5mg(0.03mmol)を加え、1.0時間攪拌した。
【0440】
攪拌後、トルエン600mLを加え、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し固体を得た。
【0441】
得られた固体にトルエン75mLを加え、加熱した。この混合物を吸引ろ過して黄色固体を得た。得られた黄色固体0.6gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.3Pa、アルゴンガスを流量6.0mL/minでながしながら、308℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、黄色固体を0.5g、回収率77%で得た。上記ステップ2の合成スキームを、以下(D2−2)に示す。
【0442】
【化121】

【0443】
核磁気共鳴法(NMR)およびMSスペクトルによって、上記ステップで合成した化合物が、N,N’−ビス〔3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mThBAPrn−II)であることを確認した。
【0444】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.00−7.44(m、28H)、7.90−7.97(m、6H)、8.00(d、J=9.3Hz、2H)、8.17(d、J=8.4Hz、2H)、8.27(d、J=9.3Hz、2H)
【0445】
また、H NMRチャートを図25(A)、(B)に示す。なお、図25(B)は、図25(A)における6.75ppm〜8.50ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0446】
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=901(M+H);C6440(900.26)
【0447】
また、1,6mThBAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルを図26(A)に、発光スペクトルを図26(B)に示す。また、1,6mThBAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルを図27(A)に、発光スペクトルを図27(B)に示す。吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定は、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。図26(A)、および図27(A)の吸収スペクトルは、それぞれ、実施例1と同様に参照用のスペクトルを差し引いた吸収スペクトルである。図26、および図27において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では429nm付近に吸収が見られ、最大発光波長は457nm(励起波長370nm)であった。また、薄膜の場合では438nm付近に吸収がみられ、発光スペクトルのピークは475、504nm(励起波長432nm)であった。
【0448】
これらの結果より、1,6mThBAPrn−IIのトルエン溶液中でのストークスシフトは28nmと小さいことが確認された。
【0449】
また、1,6mThBAPrn−IIの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。その結果、1,6mThBAPrn−IIのHOMO準位は、−5.51eVであり、エネルギーギャップは、2.66eVであり、LUMO準位は、−2.85eVであった。
【0450】
酸化還元反応特性を、実施例1と同様にCV測定によって調べた。
【0451】
本実施例のCV測定においては、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから0.6Vまで走査した後、0.6Vから−0.10Vまで走査し測定したところ、酸化を示す明確なピークが観測された。また、走査を100サイクル繰り返した後でも、そのピークの形状がほとんど変化しなかった。このことから、1,6mThBAPrn−IIは酸化状態と中性状態との間で繰り返される酸化還元に対して良好な特性を示すことが確認できた。
【0452】
なお、このCV測定において、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.53Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.45Vであった。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、(Epa+Epc)/2[V])は0.49Vと算出できる。このことは、1,6mThBAPrn−IIは0.49[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、1,6mThBAPrn−IIのHOMO準位は、−4.94−0.49=−5.43[eV]であることが確認できた。
【0453】
1,6mThBAPrn−IIについて、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて熱重量測定−示差熱分析を行った。重量と温度の関係(熱重量測定)から、1,6mThBAPrn−IIの5%重量減少温度は500℃以上であり、良好な耐熱性を示した。
【実施例7】
【0454】
本実施例では、構造式(G8−1)で表される、N,N’−ビス〔4−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrBAPrn−II)を製造する例を示す。
【0455】
【化122】

【0456】
[ステップ1:4−(ジベンゾフラン−4−イル)ジフェニルアミンの合成方法]
【0457】
4−ブロモジフェニルアミン1.8g(7.5mmol)、(ジベンゾフラン−4−イル)ボロン酸1.6g(7.5mmol)、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン0.1g(0.4mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。
【0458】
この混合物にトルエン30.0mL、エタノール9.3mL、炭酸カリウム水溶液(2mol/L)7.5mLを加え、フラスコ内を減圧しながら攪拌して、この混合物を脱気した。
【0459】
脱気後、混合物を60℃にした後、酢酸パラジウム(II)41.2mg(0.2mmol)を加えた。この混合物を80℃にし、80℃で3.0時間還流し、還流後、混合物にトルエンと水を加え、有機層と水層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。この抽出溶液と有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄をした。
【0460】
この抽出溶液と有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた混合物を自然ろ過して硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:7)により精製し、得られたフラクションを濃縮し、目的の白色固体を2.1g 収率83%で得た。上記ステップ1の合成スキームを、以下(E1−1)に示す。
【0461】
【化123】

【0462】
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=336(M+H);C2417NO(335.13)
【0463】
[ステップ2:N,N’−ビス〔4−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrBAPrn−II)の合成方法]
【0464】
1,6−ジブロモピレン0.6g(1.7mmol)、4−(ジベンゾフラン−4−イル)ジフェニルアミン1.2g(3.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.5g(5.2mmol)を50mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン17.0mLとトリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.3mLを加えた。
【0465】
この混合物を80℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)33.4mg(0.1mmol)を加え、80℃にして4.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール、セライト、アルミナを通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し固体を得た。
【0466】
得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=7:3)により精製し、得られたフラクションを濃縮した。濃縮して得られた固体をクロロホルムとヘキサンにて洗浄し、黄色固体を1.0g、収率66%で得た。
【0467】
得られた1.0gの黄色固体、をトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.6Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minでながしながら、370℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、黄色固体を0.8g、回収率86%で得た。上記ステップ2の合成スキームを、以下(E1−2)に示す。
【0468】
【化124】

【0469】
核磁気共鳴法(NMR)およびMSスペクトルによって、上記ステップで合成した化合物がN,N’−ビス〔4−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrBAPrn−II)であることを確認した。
【0470】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.02(t、J=6.9Hz、2H)、7.20−7.48(m、18H)、7.56(d、J=7.8Hz、4H)、7.81(d、J=8.7Hz、4H)、7.88−8.01(m、8H)、8.17(d、J=8.4Hz、2H)、8.23(d、J=9.3Hz、2H)
【0471】
また、H NMRチャートを図28(A)、(B)に示す。なお、図28(B)は、図28(A)における6.75ppm〜8.50ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0472】
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果を以下に示す。
MS(ESI−MS):m/z=869(M+H);C6440(868.31)
【0473】
また、1,6FrBAPrn−IIのトルエン溶液における吸収スペクトルを図29(A)に、発光スペクトルを図29(B)に示す。また、1,6FrBAPrn−IIの薄膜における吸収スペクトルを図30(A)に、発光スペクトルを図30(B)に示す。吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定は、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。図29(A)、および図30(A)の吸収スペクトルは、それぞれ、実施例1と同様に参照用のスペクトルを差し引いた吸収スペクトルである。図29、および図30において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では433nm付近に吸収が見られ、最大発光波長は464nm(励起波長370nm)であった。また、薄膜の場合では443nm付近に吸収がみられ、最大発光波長は528nm(励起波長441nm)であった。
【0474】
これらの結果より、1,6FrBAPrn−IIのトルエン溶液中でのストークスシフトは31nmと小さいことが確認された。
【0475】
また、1,6FrBAPrn−IIの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて行った。その結果、1,6FrBAPrn−IIのHOMO準位は、−5.49eVであり、エネルギーギャップは、2.62eVであり、LUMO準位は、−2.87eVであった。
【0476】
酸化還元反応特性、実施例1と同様にCV測定によって調べた。
【0477】
本実施例のCV測定においては、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから0.6Vまで走査した後、0.6Vから−0.10Vまで走査し測定したところ、酸化を示す明確なピークが観測された。また、走査を100サイクル繰り返した後でも、そのピークの形状がほとんど変化しなかった。このことから、1,6FrBAPrn−IIは酸化状態と中性状態との間で繰り返される酸化還元に対して良好な特性を示すことが確認できた。
【0478】
なお、このCV測定において、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.52Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.43Vであった。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、(Epa+Epc)/2[V])は0.48Vと算出できる。このことは、1,6FrBAPrn−IIは0.48[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、1,6FrBAPrn−IIのHOMO準位は、−4.94−0.48=−5.42[eV]であることが確認できた。
【0479】
1,6FrBAPrn−IIについて、実施例1と同様の装置および測定方法を用いて熱重量測定−示差熱分析を行った。重量と温度の関係(熱重量測定)から、1,6FrBAPrn−IIの5%重量減少温度は500℃以上であり、良好な耐熱性を示した。
【実施例8】
【0480】
本実施例では、実施の形態2に記載の芳香族アミン誘導体を発光材料として用いた発光素子の作製方法、および素子特性の測定結果を示す。具体的には、発光素子1として構造式(G6−1)で表されるN,N’−ビス(ジベンゾフラン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn−II)を、発光素子2として構造式(G6−2)で表されるN,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn−II)を、発光素子3として構造式(G10−1)で表されるN,N’−ビス(ジベンゾフラン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn)を、発光素子4として構造式(G10−2)で表されるN,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn)を用いて形成した発光素子について示す。
【0481】
以下、発光素子1乃至4の作製方法について図31を用いて説明する。また、本実施例で用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【0482】
【化125】

【0483】
(発光素子1)
まず、ガラス基板である基板2101上に、陽極2102を形成した。まず、スパッタリング法にて、厚さ110nmの酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ膜を形成し、形成した膜を電極面積が2mm×2mmとなるように加工した。
【0484】
次に、陽極2102上に複数の層が積層されたEL層を形成した。本実施例において、EL層は、正孔注入層2103、正孔輸送層2104、発光層2105、電子輸送層2106、電子注入層2107が順次積層された構造を有する。
【0485】
本実施例では、陽極2102が形成された基板2101を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。該基板ホルダーに固定する際、陽極2102が形成された面を下方にした。真空蒸着装置内を10−4Pa程度まで減圧した後、陽極2102上に、正孔注入層2103として、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着法により形成した。形成した正孔注入層2103の厚さは50nmとし、NPBと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:1(=NPB:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0486】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、正孔注入層2103上に厚さ10nmの正孔輸送層2104を形成した。なお、正孔輸送層2104にはNPBを用いた。
【0487】
次に、正孔輸送層2104上に、発光層2105として、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス(ジベンゾフラン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn−II)とを共蒸着法により形成した。形成した発光層2105の厚さは30nmとし、CzPAと1,6FrAPrn−IIとの重量比は、1:0.05(=CzPA:1,6FrAPrn−II)となるように蒸着レートを調節した。
【0488】
次に、抵抗加熱による蒸着法により、発光層2105上にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)を、該Alq上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を形成し、該Alqおよび該BPhenを電子輸送層2106とした。なお、形成した電子輸送層2106において、該Alqの厚さは10nmであり、該BPhenの厚さは15nmである。
【0489】
次に、電子輸送層2106上に、電子注入層2107として、厚さ1nmのフッ化リチウム(LiF)を形成した。なお、電子注入層2107は抵抗加熱による蒸着法を用いて形成した。
【0490】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用いて、電子注入層2107上に陰極2108を形成し、本実施例の発光素子1を作製した。なお、陰極2108として、200nmの厚さのアルミニウムを形成した。
【0491】
(発光素子2)
発光素子2において、発光層2105以外は、発光素子1と同様に形成した。発光素子2は、発光層2105として、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−4−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn−II)とを共蒸着法により形成した。形成した発光層2105の厚さは30nmとし、CzPAと1,6ThAPrn−IIとの重量比は、1:0.05(=CzPA:1,6ThAPrn−II)となるように蒸着レートを調節した。
【0492】
以上により、本実施例の発光素子2を作製した。
【0493】
(発光素子3)
発光素子3において、発光層2105以外は、発光素子1と同様に形成した。発光素子3は、発光層2105として、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス(ジベンゾフラン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrAPrn)とを共蒸着法により形成した。形成した発光層2105の厚さは30nmとし、CzPAと1,6FrAPrnとの重量比は、1:0.01(=CzPA:1,6FrAPrn)となるように蒸着レートを調節した。
【0494】
以上により、本実施例の発光素子3を作製した。
【0495】
(発光素子4)
発光素子4において、発光層2105以外は、発光素子1と同様に形成した。発光素子4は、発光層2105として、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス(ジベンゾチオフェン−2−イル)−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6ThAPrn)とを共蒸着法により形成した。形成した発光層2105の厚さは30nmとし、CzPAと1,6ThAPrnとの重量比は、1:0.01(=CzPA:1,6ThAPrn)となるように蒸着レートを調節した。
【0496】
以上により、本実施例の発光素子4を作製した。
【0497】
本実施例で作製した発光素子1乃至4の素子構成を表1に示す。表1では、混合比は全て重量比で表している。
【0498】
【表1】

【0499】
以上により、得られた発光素子1乃至4を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0500】
発光素子1乃至4の電圧−輝度特性を図32、輝度−電流効率特性を図33にそれぞれ示す。図32では縦軸に輝度(cd/m)、横軸に電圧(V)を示し、図33では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸に輝度(cd/m)を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の色度を表2に示す。
【0501】
【表2】

【0502】
また、発光素子1乃至4の発光スペクトルを図34に示す。
【0503】
表2および、図34から発光素子1乃至4はいずれも良好な青色発光を呈することが確認された。なかでも、1000cd/m付近における、発光素子1の色度のy座標は最も小さく、また、発光素子1の発光スペクトルピークが454nm付近と、最も短波長側に表れることから、発光素子1が最も色純度の高い青色を呈することが確認された。
【0504】
また、発光素子1乃至4の信頼性試験を行った。信頼性試験は初期輝度を1000cd/mに設定し、電流密度一定の条件でこれらの素子を駆動し、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。この信頼性試験によって得られた結果を図35に示す。図35において、横軸は通電時間(hour)、縦軸はそれぞれの時間における初期輝度に対する輝度の割合、すなわち規格化輝度(%)を表す。
【0505】
図35より、100時間駆動後において、発光素子1乃至4いずれにおいても規格化輝度が80%以上であることから、長寿命な発光素子であると言える。
【0506】
以上示したように、本実施例の発光素子1乃至4は、長寿命で色純度の高い青色発光素子とすることが可能であり、なかでも、発光素子1は最も色純度が高い青色発光素子とすることが可能であると確認された。
【実施例9】
【0507】
本実施例では、実施の形態3に記載の芳香族アミン誘導体を発光材料として用いた発光素子の作製方法、および素子特性の測定結果を示す。具体的に、発光素子5は、発光材料として、構造式(G7−1)で表されるN,N’−ビス〔3−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mFrBAPrn−II)を用いた発光素子である。また、発光素子6は、発光材料として、構造式(G7−2)で表されるN,N’−ビス〔3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mThBAPrn−II)を用いた発光素子である。また、発光素子7は、発光材料として構造式(G8−1)で表されるN,N’−ビス〔4−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrBAPrn−II)を用いた発光素子である。
【0508】
発光素子5および発光素子6の素子構成は、陽極2102、電子輸送層2106、電子注入層2107、および陰極2108において、実施例8で記載した発光素子1乃至発光素子4と同一であるが、発光層2105、正孔注入層2103および正孔輸送層2104において、実施例8で記載した発光素子1乃至発光素子4と異なる。また、発光素子7の素子構成は、陽極2102、正孔注入層2103、正孔輸送層2104、電子輸送層2106、電子注入層2107、および陰極2108において、実施例8で記載した発光素子1乃至発光素子4と同一であるが、発光層2105において、実施例8で記載した発光素子1乃至発光素子4と異なる。本実施例で新たに用いた有機化合物の構造を以下に示す。
【0509】
【化126】

【0510】
(発光素子5)
基板2101上に陽極2102を実施例8と同様にして形成した。次に、発光素子5の正孔注入層2103として、陽極2102上に、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)と酸化モリブデン(VI)とを実施例8で記載した共蒸着法により形成した。形成した正孔注入層2103の厚さは50nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調節した。
【0511】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、正孔注入層2103上に厚さ10nmの正孔輸送層2104を形成した。なお、正孔輸送層2104にはPCzPAを用いた。
【0512】
発光素子5においては、正孔輸送層2104上に、発光層2105として、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス〔3−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mFrBAPrn−II)とを実施例8で記載した共蒸着法により形成した。形成した発光層2105の厚さは30nmとし、CzPAと1,6mFrBAPrn−IIとの重量比は、1:0.05(=CzPA:1,6mFrBAPrn−II)となるように蒸着レートを調節した。
【0513】
電子輸送層2106、電子注入層2107、および陰極2108は実施例8と同様にして形成し、本実施例の発光素子5を作製した。
【0514】
(発光素子6)
基板2101上に陽極2102を実施例8と同様にして形成した。
【0515】
次に、発光素子6の正孔注入層2103および正孔輸送層2104は、発光素子5と同様の方法で形成した。次に、発光素子6の発光層2105として、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス〔3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mThBAPrn−II)とを実施例8で記載した共蒸着法により形成した。形成した発光層2105の厚さは30nmとし、CzPAと1,6mThBAPrn−IIとの重量比は、1:0.05(=CzPA:1,6mThBAPrn−II)となるように蒸着レートを調節した。
【0516】
その後、電子輸送層2106、電子注入層2107、および陰極2108は実施例8の発光素子1乃至発光素子4と同様にして形成し、本実施例の発光素子6を作製した。
【0517】
(発光素子7)
基板2101上に陽極2102、正孔注入層2103、および正孔輸送層2104を実施例8と同様にして形成した。
【0518】
次に、発光素子7の発光層2105として、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス〔4−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FrBAPrn−II)とを実施例8で記載した共蒸着法により形成した。形成した発光層2105の厚さは30nmとし、CzPAと1,6FrBAPrn−IIとの重量比は、1:0.05(=CzPA:1,6FrBAPrn−II)となるように蒸着レートを調節した。
【0519】
その後、電子輸送層2106、電子注入層2107、および陰極2108は実施例8の発光素子1乃至発光素子4と同様にして形成し、本実施例の発光素子7を作製した。
【0520】
本実施例で作製した発光素子5乃至7の素子構成を表3に示す。表3では、混合比は全て重量比で表している。
【0521】
【表3】

【0522】
以上により、得られた発光素子5乃至発光素子7を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0523】
発光素子5乃至発光素子7の電圧−輝度特性を図36、輝度−電流効率特性を図37にそれぞれ示す。図36では縦軸に輝度(cd/m)、横軸に電圧(V)を示し、図37では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸に輝度(cd/m)を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の色度を表4に示す。
【0524】
【表4】

【0525】
また、発光素子5乃至7の発光スペクトルを図38に示す。
【0526】
発光素子5乃至7のいずれも電圧に対する輝度に大きな差は観察されなかった。また、表4および、図38から発光素子5乃至発光素子7はいずれも良好な青色発光を呈することが確認された。発光素子5および発光素子6は、発光素子7よりも発光スペクトルピークが460nm付近と、短波長側に表れることから、色純度の高い青色を呈するといえる。
【0527】
また、発光素子5乃至発光素子7の信頼性試験を行った。信頼性試験は初期輝度を1000cd/mに設定し、電流密度一定の条件でこれらの素子を駆動し、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。信頼性試験によって得られた結果を図39に示す。図39において、横軸は通電時間(hour)、縦軸はそれぞれの時間における初期輝度に対する輝度の割合、すなわち規格化輝度(%)を表す。
【0528】
図39より、100時間駆動後において、発光素子5乃至発光素子7いずれにおいても規格化輝度が90%以上であり、長寿命な発光素子であることが確認できた。
【0529】
以上示したように、本実施例の発光素子5乃至発光素子7は、長寿命で色純度の高い青色発光素子とすることが可能であると確認できた。
【符号の説明】
【0530】
101 基板
102 電極
103 EL層
104 電極
111 第1の層(正孔注入層)
112 第2の層(正孔輸送層)
113 第3の層(発光層)
114 第4の層(電子輸送層)
115 第5の層(電子注入層)
311 第1の発光ユニット
312 第2の発光ユニット
313 電荷発生層
321 第1の電極
322 第2の電極
401 ソース側駆動回路
402 画素部
403 ゲート側駆動回路
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 配線
409 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
410 素子基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 電極
414 絶縁物
416 EL層
417 電極
418 発光素子
423 Nチャネル型TFT
424 Pチャネル型TFT
501 基板
502 電極
503 電極
504 EL層
505 絶縁層
506 隔壁層
611 筐体
612 支持台
613 表示部
614 スピーカー部
615 ビデオ入力端子
621 本体
622 筐体
623 表示部
624 キーボード
625 外部接続ポート
626 ポインティングデバイス
631 本体
632 筐体
633 表示部
634 音声入力部
635 音声出力部
636 操作キー
637 外部接続ポート
638 アンテナ
641 本体
642 表示部
643 筐体
644 外部接続ポート
645 リモコン受信部
646 受像部
647 バッテリー
648 音声入力部
649 操作キー
650 接眼部
700 卓上照明器具
701 照明装置
2101 基板
2102 陽極
2103 正孔注入層
2104 正孔輸送層
2105 発光層
2106 電子輸送層
2107 電子注入層
2108 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表される芳香族アミン誘導体。
【化1】


(式中、Aは、酸素または硫黄を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、さらに、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数14〜18の、置換または無置換の縮合芳香族炭化水素を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1であり、pは、1または2である。)
【請求項2】
一般式(G2)で表される芳香族アミン誘導体。
【化2】


(式中、Aは、酸素または硫黄を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、さらに、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数14〜18の、置換または無置換の縮合芳香族炭化水素を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。j、nは、それぞれ独立に0または1であり、pは、1または2である。)
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記一般式(G1)または前記一般式(G2)中のArは、下記一般式(Ar1−1)または(Ar1−2)で表されるいずれか一である芳香族アミン誘導体。
【化3】


(一般式(Ar1−1)および(Ar1−2)中、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、さらに、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。ただし、(Ar1−1)の場合、前記一般式(G1)および前記一般式(G2)中のpは1であり、(Ar1−2)の場合、前記pは2である。)
【請求項4】
一般式(G4)で表される芳香族アミン誘導体。
【化4】


(式中、Aは、酸素または硫黄を表し、R〜RおよびR、R10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αおよびαは、それぞれ独立に、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは0または1である。)
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記αおよびαは、それぞれ独立に、下記構造式(α−1)〜(α−3)で表されるいずれか一である芳香族アミン誘導体。
【化5】

【請求項6】
一般式(G3)で表される芳香族アミン誘導体。
【化6】


(式中、Aは、酸素または硫黄を表し、R〜RおよびR、R10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは0または1である。)

【請求項7】
一般式(G5)で表される芳香族アミン誘導体。
【化7】


(式中、Aは、酸素または硫黄を表し、R〜RおよびR、R10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、または、置換若しくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。さらに、αは、置換または無置換のフェニレン基を表す。さらに、Arは、環を形成する炭素数6〜13の、置換または無置換のアリール基を表す。nは、0または1である。)
【請求項8】
請求項6および請求項7において、
前記αは、下記構造式(α−1)〜(α−3)で表されるいずれか一である芳香族アミン誘導体。
【化8】

【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記Arは、下記構造式(Ar2−1)〜(Ar2−6)で表されるいずれか一である芳香族アミン誘導体。
【化9】

【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記R〜R10は、それぞれ独立に、下記構造式(R−1)〜(R−9)で表されるいずれか一である芳香族アミン誘導体。
【化10】

【請求項11】
一対の電極間にEL層を有する発光素子であって、
前記EL層は、請求項1乃至請求項10のいずれか一に記載の芳香族アミン誘導体を含む発光素子。
【請求項12】
請求項11に記載の発光素子を用いて形成された発光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の発光装置を含む電子機器。
【請求項14】
請求項12に記載の発光装置を含む照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2011−231108(P2011−231108A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86138(P2011−86138)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】