説明

芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品

【課題】脂肪族ポリエステルを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の密度の増加を抑えつつ、剛性及び流動性を向上させ、かつ、真珠光沢などの外観不良の改善された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート98〜1質量%、(B)脂肪族ポリエステル1〜98質量%、及び(C)天然由来有機充填剤1〜80質量%からなる組み合わせを含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。詳しくは芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリエステル及び天然由来有機充填剤を特定割合で含有し、密度の増加を抑えつつ、流動性及び剛性に優れ、良好な外観を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ならびにそれからなる成形品に関する。この樹脂組成物は、OA機器、情報通信機器、家庭電化機器分野などに利用が可能である。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は耐衝撃性などの機械的特性に優れ、耐熱性、透明性に優れているため、電気、電子、OA機器、機械、自動車などの様々な分野で用いられているが、原料が石油由来であり、また使用後の分解性の面から近年問題とされている環境への負荷が大きいことが課題となっている。
一方脂肪族ポリエステル樹脂は生分解性を有するものも多く、利用後の環境への配慮の面から非常に注目を集めている。特にトウモロコシやサトウキビといった植物由来の原料から作られるポリ乳酸樹脂は、最終的には水と二酸化炭素に分解される(カーボンニュートラル)という点から環境負荷を低減できるため、環境対応型樹脂として開発が進んでいる。更に植物性プラスチックとしては高い融点を持ち、溶融成形が可能であることから実用上優れた植物性・生分解性樹脂としての利用が期待されている。また石油由来の脂肪族ポリエステル樹脂の中にも将来的に原料の一部から全てを植物由来に切り替えるとされているものもあり注目が集まっている。
しかしながらポリ乳酸をはじめとした脂肪族ポリエステル樹脂は、耐熱性を中心とした機械的物性が低いため、単体を成形品として機械的強度が要求される部材に利用することは困難である。
そこで脂肪族ポリエステル樹脂を芳香族ポリカーボネートとアロイ化することにより本問題を解決しようとする試みがなされてきた。
【0003】
一方、脂肪族ポリエステル樹脂の機械特性や耐熱性を改良するための方法の一つとして、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤を使用する方法が検討されているが、大量に加える必要があるため、流動性が低下したり、成形品の密度が増大したり、焼却または廃棄時にゴミとなる残留物が増加して環境に負荷がかかるなどの問題がある。このため、有機充填剤の利用が検討されており、例えば、特許文献1にはポリ乳酸をはじめとするポリエステル樹脂に対して天然由来の有機充填剤を添加することが記載されているが、エポキシ基含有ビニル系単位を含む重合体を含有しない樹脂組成物では、成形性や表面外観が劣ることが記載されている。
従って、密度が小さく、剛性及び流動性に優れ、かつ、外観が良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、未だ知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−117768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脂肪族ポリエステルを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の密度の増加を抑えつつ、剛性及び流動性を向上させ、かつ、真珠光沢などの外観不良の改善された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、脂肪族ポリエステルを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、天然由来有機充填剤を配合することで、上記目的を達成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.(A)芳香族ポリカーボネート98〜1質量%、(B)脂肪族ポリエステル1〜98質量%、及び(C)天然由来有機充填剤1〜80質量%からなる組み合わせを含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
2.前記(A)芳香族ポリカーボネート80〜20質量%、前記(B)脂肪族ポリエステル17〜70質量%、及び前記(C)天然由来有機充填剤3〜40質量%からなる組み合わせを含む上記1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
3.前記(A)芳香族ポリカーボネート80〜50質量%、前記(B)脂肪族ポリエステル17〜50質量%、及び前記(C)天然由来有機充填剤3〜30質量%からなる組み合わせを含む上記2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
4.前記(B)脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンから選ばれる少なくとも1種である上記1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
5.前記(C)天然由来有機充填剤が、長繊維ペレット化されたものであり、かつ、平均繊維長が3〜12mmのものである上記1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
6.前記(C)天然由来有機充填剤が、ジュート繊維、レーヨン繊維、竹繊維、ケナフ繊維及びヘンプ繊維から選ばれる少なくとも一種を長繊維ペレット化したものである上記5に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
7.前記(A)芳香族ポリカーボネート、(B)脂肪族ポリエステル、及び(C)天然由来有機充填剤からなる組み合わせ100質量部に対して、さらに、(D)カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種を0.01〜10質量部含む上記1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、
8.上記1〜7のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脂肪族ポリエステルを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の密度の増加を抑えつつ、剛性及び流動性が向上し、かつ、真珠光沢などの外観不良の改善された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について、詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート98〜1質量%、(B)脂肪族ポリエステル1〜98質量%、及び(C)天然由来有機充填剤1〜80質量%からなる組み合わせを含むことを特徴とする。
【0010】
(A)芳香族ポリカーボネート(PC)としては、特に制限はなく種々のものが挙げられ、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造されるものを用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、2価フェノールとホスゲンの反応、2価フェノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換反応により製造されたものを使用することができる。
【0011】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
【0012】
特に好ましい2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどである。この他、2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
なお、本発明における(A)芳香族ポリカーボネートは、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0014】
また、本発明に用いる(A)芳香族ポリカーボネートとしては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネートであってもよい。また、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々のポリカーボネートの混合物を用いることもできる。本発明において用いられる(A)芳香族ポリカーボネートは、構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。また、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量は、10,000〜100,000、好ましくは、11,000〜40,000、特に12,000〜25,000のものが好適である。
【0015】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(A)芳香族ポリカーボネートの配合割合は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量に基づき、98〜1質量%であり、好ましくは80〜20質量%、更に好ましくは80〜50質量%である。
前記(A)芳香族ポリカーボネートの配合割合が1質量%未満であると、熱変形温度が著しく低下し、98質量%を超えると剛性、流動性が向上しない。
【0016】
本発明の芳香族ポリカーボネート組成物における(B)脂肪族ポリエステルは、ポリ乳酸、乳酸類とヒドロキシカルボン酸との共重合体、脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸を原料としたポリエステル、ポリカプロラクトン等を用いることができる。また、異なる脂肪族ポリエステル同士の共重合体であってもよい。
【0017】
ポリ乳酸は、通常ラクタイドと呼ばれる乳酸の環状二量体から開環重合により合成され、その製造方法は、米国特許第1,995,970号明細書、米国特許第2,362,511号明細書、米国特許第2,683,136号明細書等に開示されている。
また、乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸の共重合体は、通常ラクタイドとヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体から開環重合により合成され、その製造方法は、米国特許第3,635,956号明細書、米国特許第3,797,499号明細書等に開示されている。
開環重合によらず、直接脱水重縮合により乳酸系樹脂を製造する場合には、乳酸類と必要に応じて、他のヒドロキシカルボン酸を、好ましくは有機溶媒、特に、フェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは、共沸により留出した溶媒から水を除き、実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した重合度の乳酸系樹脂が得られる。
【0018】
原料の乳酸類としては、L−及びD−乳酸、又はその混合物、乳酸の二量体であるラクタイドのいずれも使用することができる。
また、乳酸類と併用できる他のヒドロキシカルボン酸類としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などがあり、更にヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、グリコール酸の二量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを使用することもできる。
乳酸系樹脂の製造に際し、適当な分子量調節剤、分岐剤、その他の改質剤などを添加することもできる。
また、乳酸類及び共重合体成分としてのヒドロキシカルボン酸類は、いずれも単独又は2種以上を使用することができ、更に得られた乳酸系樹脂を2種以上混合し使用してもよい。
【0019】
前記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物などが挙げられ、これらは1種または2種以上で用いることができる。
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、およびこれらのジメチルエステル体などが挙げられ、これらも1種または2種以上で用いることができる。
前記脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸を原料としたポリエステルの具体例としては、ポリブチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリネオペンチルグリコールオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられ、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートが特に好ましい。
【0020】
本発明における(B)脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸が流動性と熱的・機械的物性の点で優れており、分子量の大きいものが好ましく、重量平均分子量3万以上のものが更に好ましい。
本発明における(B)脂肪族ポリエステルとしては、具体的には、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(B)脂肪族ポリエステルの配合割合は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量に基づき、1〜98質量%であり、好ましくは17〜70質量%、更に好ましくは17〜50質量%である。(B)脂肪族ポリエステルの配合割合が1質量%未満であると、流動性、剛性が向上しない。また、98質量%を超えると熱変形温度が著しく低下する。
【0021】
本発明で用いる(C)天然由来有機充填剤としては、天然物に由来するものであれば特に限定されず、好ましくはセルロースを含むものである。
本発明における(C)天然由来有機充填剤の具体例としては、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやレーヨンなどのセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維などの繊維状のもの、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などの粉末状のものが挙げられ、耐熱性の観点から、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉などの粉末状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、レーヨン繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維が好ましく、紙粉、木粉、竹粉、竹繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、レーヨン繊維がより好ましく、竹繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、レーヨン繊維がさらに好ましい。また、これらの(C)天然由来有機充填剤は、天然物から直接採取したものを用いてもよいが、地球環境の保護や資源保全の観点から、古紙、廃木材および古衣などの廃材をリサイクルして用いてもよい。古紙とは、新聞紙、雑誌、コピー用紙などのOA用紙、その他の再生パルプ、もしくは、段ボール、ボール紙、紙管などの板紙であり、植物繊維を原料として加工されたものであれば、いずれを用いてもよいが、耐熱性の観点から、新聞紙および段ボール、ボール紙、紙管などの板紙の粉砕品が好ましい。また、木材の具体例としては、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリなどの広葉樹材などがあり、その種類は問わない。
【0022】
前記(C)天然由来有機充填剤は、表面処理したものを用いてもよく、アルカリ処理、熱処理、アセチル化処理、シアノエチル化処理、シランカップリング処理、グリオギザール処理など各種公知の方法で表面処理した(C)天然由来有機充填剤を用いることにより、耐熱性だけでなく、機械特性も向上する傾向にあり好ましい。
前記(C)天然由来有機充填剤として用いられる紙粉としては、本発明で規定する要件を満たす限り、特に限定されるものではないが、耐熱性を向上することができるという点から、接着剤を含むことが好ましい。接着剤としては、紙を加工する際に通常使用されるものであれば特に限定されるものではなく、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョンなどのエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、セルロース系接着剤、天然ゴム系接着剤、澱粉糊およびエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤やポリアミド系接着剤などのホットメルト接着剤などを挙げることができ、エマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤およびホットメルト接着剤が好ましく、エマルジョン系接着剤およびポリビニルアルコール系接着剤がより好ましい。なお、これらの接着剤は、紙加工剤用のバインダーなどとしても使用されるものである。また、接着剤には、クレイ、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウムおよび酸化ネオジウムなどの無機充填剤が含まれていることが好ましく、クレイ、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、合成マイカおよびシリカがより好ましい。
【0023】
また、前記(C)天然由来有機充填剤としては、耐熱性を向上することができるという点から、灰分が5質量%以上であることが好ましく、5.5質量%以上であることがより好ましく、7.5質量%以上であることがさらに好ましい。上限については、特に限定されるものではないが、60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。ここで、灰分とは、電気炉などを用いて450℃以上の高温で8時間有機充填剤を焼成した時の残存する灰分の質量の焼成前の紙粉の質量に対する割合である。
【0024】
また、前記(C)天然由来有機充填剤としては、耐熱性を向上することができるという点から、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウム、チタンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウムをいずれも含むことがより好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄をいずれも含むことがさらに好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウムをいずれも含むことが特に好ましい。
【0025】
さらに、アルミニウムの量がマグネシウムの量よりも多いことが好ましく、アルミニウムとケイ素のそれぞれの量がマグネシウムの量よりも多いことがより好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウムのそれぞれの量がマグネシウムの量よりも多いことがさらに好ましい。アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウム、チタンの存在量比としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記元素の総数を100とした場合、アルミニウムが1〜60%、ケイ素が20〜90%、カルシウムが1〜30%、硫黄が1〜20%、マグネシウムが0〜20%、チタンが0〜20%であることが好ましく、アルミニウムが1〜50%、ケイ素が20〜85%、カルシウムが1〜20%、硫黄が1〜15%、マグネシウムが0〜10%、チタンが0〜10%であることがより好ましく、アルミニウムが3〜50%、ケイ素が25〜80%、カルシウムが3〜20%、硫黄が2〜10%、マグネシウムが0〜8%、チタンが0〜3%であることがさらに好ましい。これらの元素分析については、(C)天然由来有機充填剤の単体、(C)天然由来有機充填剤の灰分のいずれを用いても測定することができるが、灰分を用いることが好ましい。なお、元素分析は、蛍光X線分析、原子吸光法、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)とエネルギー分散形X線マイクロアナライザー(XMA)を組み合わせた装置を用いることにより測定することができるが、本発明では蛍光X線分析を用いて測定した値である。
【0026】
また、前記(C)天然由来有機充填剤としては、耐熱性を向上することができるという点から、表面上に微粒子が付着するセルロースを含むことが好ましい。微粒子とは、特に限定されるものではなく、有機物もしくは無機物のいずれでもよく、前記した各種薬品が付着したことで生じる微粒子であってもよい。微粒子の形状は、針状、板状、球状のいずれでもよい。微粒子のサイズは、特に限定されるものではないが、0.1〜5000nmの範囲に分布していることが好ましく、0.3〜1000nmの範囲に分布していることがより好ましく、0.5〜500nmの範囲に分布していることがさらに好ましく、1〜100nmの範囲に分布していることが特に好ましく、1〜80nmの範囲に分布していることが最も好ましい。なお、ここで特定の範囲に「分布している」とは、微粒子総数の80%以上が特定の範囲に含まれることを意味する。微粒子の付着形態は、凝集状態もしくは分散状態のいずれでもよいが、分散状態で付着していることがより好ましい。上記微粒子のサイズは、本発明の樹脂組成物から得られる成形品を透過型電子顕微鏡により8万倍の倍率で観察することができる。
【0027】
前記(C)天然由来有機充填剤としては、予め脂肪族ポリエステルに含浸し、長繊維ペレット化したものを用いてもよい。(C)天然由来有機充填剤が含浸する脂肪族ポリエステルとしては、上記(B)脂肪族ポリエステルと同様のものを用いることができ、ポリ乳酸を用いることが好ましい。
上記長繊維ペレット化とは、少なくとも溶融成形可能な脂肪族ポリエステルと、上記(C)天然由来有機充填剤とを主原料として行われる。この場合、製造工程は特に限定されず、例えば、通常の2軸混練機等を使用した溶融混練方法((C)天然由来有機充填剤と溶融状態の樹脂とを混練する方法)、(C)天然由来有機充填剤に溶融した脂肪族ポリエステルを含浸させた後、冷却し切断する方法、樹脂粉末をドライ法又はウェット法により(C)天然由来有機充填剤に付着させ、この付着樹脂を溶融した後、冷却し切断する方法、長繊維ペレット製造装置(例えば、株式会社神戸製鋼所製のもの)を用いる方法等を適用すればよく、好ましくは長繊維ペレット製造装置を用いて製造する。
【0028】
上記長繊維ペレットの製造に際し、いずれの製造方法による場合でも脂肪族ポリエステルとしては溶融し得ることが必要である。又、長繊維ペレット等の中間材料から本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得るに際し、この中間材料としては射出成形等の成形加工が可能であることが必要である。本発明において脂肪族ポリエステルを溶融成形可能としているのは、かかる必要性を充たすためである。尚、長繊維ペレット化に用いられる脂肪族ポリエステルと、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いられる(B)脂肪族ポリエステルとは、同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
上記(C)天然由来有機充填剤を長繊維ペレット化する際には、(C)天然由来有機充填剤の繊維長が長い程、その成形加工後に得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含有される繊維の繊維長が長く、機械的物性が向上する。従って、(C)天然由来有機充填剤の繊維長は長い程よく、例えば長繊維ペレットにおいては(C)天然由来有機充填剤の繊維長をペレット長と同等程度にしておくことが望ましい。
また、上記長繊維ペレット化された(C)天然由来有機充填剤の平均繊維長は3〜12mmであることが好ましい。上記平均繊維長とは本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における(C)天然由来有機充填剤を長繊維ペレット化したものの平均繊維長をいう。尚かかる平均繊維長は長繊維ペレットの長さ(切断面間の距離)と等しくなるためペレットの長さをノギスなどを用いることで測定することができる。
【0030】
本発明の(C)天然由来有機充填剤としては、上述のようにして長繊維ペレット化されたものが好ましく、長繊維ペレット化され、平均繊維長が3〜12mmのものがより好ましく、ジュート繊維、レーヨン繊維、竹繊維、ケナフ繊維及びヘンプ繊維から選ばれる少なくとも一種が長繊維ペレット化され、平均繊維長が3〜12mmのものがさらに好ましく用いられる。
前記(C)天然由来有機充填剤としては、上述したものから少なくとも1種を選択して用いることができ、その本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における配合割合は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量に基づき、1〜80質量%であり、好ましくは3〜40質量%である。
【0031】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、さらに前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなる組み合わせ100質量部に対して(D)カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物及びオキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも一種を0.01〜10質量部配合することができ、カルボジイミド化合物、カルボジイミド化合物及びイソシアネート化合物、或いはカルボジイミド化合物及びオキサゾリン化合物を配合するのが好ましい。配合量を10質量部以下とすることにより各成分の反応相溶化を促進し(B)成分を安定化することが可能である。
【0032】
上記のカルボジイミド化合物は、分子中に一個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物をも含む。カルボジイミド化合物の製造方法としては、例えば、触媒として、例えば、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−(メチルチオ)フェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジエチル−O−2−イソプロピル−6−メチルピリミジン−4−イルホスホロチオエート等の有機リン系化合物、又は、例えばロジウム錯体、チタン錯体、タングステン錯体、パラジウム錯体等の有機金属化合物を用い、各種ポリイソシアネート化合物を約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒(たとえば、ヘキサン、ベンゼン、ジオキサン、クロロホルム等)中で脱炭酸重縮合させることにより製造する方法を挙げることができる。
【0033】
このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジナフチルカルボジイミド等を例示することができ、これらの中でも、特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0034】
上記のエポキシ化合物としては、分子内に少なくとも1つ以上のエポキシ基を有する化合物を挙げることができる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、p−ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、ネオヘキセンオキシド、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン系共重合体、エポキシ化水素化スチレン−ブタジエン系共重合体、ビスフェノール−A型エポキシ化合物、ビスフェノール−S型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、3,4−エポキシシクロヘキサメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、あるいは3,4−エポキシシクロヘキシルグリシジルエーテルなどの脂環式エポキシ化合物などを例示することができる。
【0035】
上記のイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート又は3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0036】
イソシアネート化合物は、公知の方法で容易に製造することができ、また市販品を適宜使用することもできる。市販のポリイソシアネート化合物としては、三井化学ポリウレタン株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネート「タケネート」(登録商標)、日本ポリウレタン株式会社製の水添ジフェニルメタンジイソシアネート「コロネート」(登録商標)、日本ポリウレタン株式会社製の芳香族イソシアネート「ミリオネート」(登録商標)等がある。
【0037】
上記のオキサゾリン化合物としては、例えば、2,2'−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−p−フェニレンビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−m−フェニレンビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2'−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、又は2,2'−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。また、オキサゾリン基含有反応性ポリスチレンもオキサゾリン系化合物として使用することができる。
【0038】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、前述の必須成分及び任意成分と共に、芳香族ポリカーボネート樹脂に常用されている添加剤成分を必要により添加含有させることができる。添加剤成分としては、例えば、可塑剤、安定剤、無機充填剤、難燃剤、シリコーン系化合物、フッ素樹脂等が挙げられる。添加剤成分の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0039】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は上記の各成分を通常の方法により配合し、溶融混練することで得る事ができる。このときの配合および混練は、例えば、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー(商品名)、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常200〜320℃であり、好ましくは220〜280℃の範囲で適宜選択される。
【0040】
本発明で用いる(C)天然由来有機充填剤を上記溶融混練に供する為には、あらかじめ微粉砕して粉末状にしておく方法、(C)天然由来有機充填剤を圧縮しタブレット化したものを用いる方法、(C)天然由来有機充填剤の不織布に樹脂を含浸させたものを粉砕して配合物に加える方法、またひも状の天然由来有機充填剤の場合は、本樹脂組成物に用いる樹脂を用いてあらかじめ引抜成形によって長繊維ペレット化した上で用いる方法を取ることができる。
また、2軸スクリュー押出機などを用いて混練し得られる溶融樹脂を、ひも状の天然由来有機充填剤に含浸させ引抜成形などで長繊維ペレットとして得ることも可能である。
【0041】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の溶融混練物、あるいは、得られたペレットを原料として、中空成形法、射出成形法、押出成形法、真空成形法、圧空成形法、熱曲げ成形法、カレンダー成形法、回転成形法などにより成形品とすることができる。本発明はまた、前述した本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品をも提供する。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例により、更に詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
性能評価は、下記の測定方法に従って行なった。
【0043】
(1)剛性試験
引張弾性率:JIS K 7161に準拠して測定した。(単位:MPa)
曲げ弾性率:ASTM D790に準拠して測定した。(単位:MPa)
(2)密度測定
JIS K7112に準拠して測定した。試験条件:〔測定温度:23℃〕、(単位:kg/m3
(3)流動性試験
メルトフローレート(MFR):JIS K7210に準拠して測定した。試験条件:〔温度:240℃、荷重:21.18N〕、単位:g/10min
(4)外観
目視により確認した。
○:フローマーク・真珠光沢等の外観不良が見られない
△:成形品のゲート部などで一部外観不良が見られる
×:成形品に全体的に外観不良が見られる
【0044】
実施例1〜9及び比較例1〜9
各配合原料をそれぞれ乾燥した後、表1、2に示す配合割合にて、タンブラーを用いて均一にブレンドした後、二軸スクリュー混練機で混練し、ペレット化した。
得られたペレットを、射出成形機を用いて成形し、所望の試験片を得た。この試験片を用いて性能評価を行った結果を表1、2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
第1、2表において、(A)〜(D)成分に用いた材料は以下の通りである。
芳香族ポリカーボネート樹脂:「タフロン」(登録商標) A1900(出光興産株式会社製)
脂肪族ポリエステル1:「LACEA」(登録商標) H−100(三井化学株式会社製、ポリ乳酸)
脂肪族ポリエステル2:「GSPla」(登録商標) AZ81T(三菱化学株式会社製、ポリブチレンサクシネート、Tg:−32℃)
天然由来有機充填剤1:長繊維ペレット製造装置(株式会社 神戸製鋼所製)を用い、裸状態のジュートの連続繊維に溶融状態のポリ乳酸を含浸させ、冷却した後、切断する方法により、ペレット長と同様長さの繊維を有する長繊維ペレットを作製した。尚、上述のようにして測定したこのペレットの平均繊維長は4mmだった。
天然由来有機充填剤2:長繊維ペレット製造装置(株式会社 神戸製鋼所製)を用い、裸状態のレーヨンの連続繊維に溶融状態のポリ乳酸を含浸させ、冷却した後、切断する方法により、ペレット長と同様長さの繊維を有する長繊維ペレットを作製した。尚、上述のようにして測定したこのペレットの平均繊維長は4mmだった。
無機充填剤1:ガラス繊維(GF):「グラスロン」 チョップドストランド 03MA409C(旭ファイバーグラス株式会社製)
無機充填剤2:炭素繊維(CF):「パイロフィル」 TR06U(三菱レイヨン株式会社製)
【0048】
エポキシ化合物:「エピクロン」(登録商標) AM‐040‐P(大日本インキ化学工業株式会社製、ビスフェノールAエポキシ樹脂)
カルボジイミド化合物:「カルボジライト」(登録商標) LA‐1(日清紡績株式会社製、ジシクロヘキシルカルボジイミド)
イソシアネート化合物:「タケネート」(登録商標) 600(三井化学ポリウレタン株式会社製、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)
オキサゾリン化合物:「エポクロス」(登録商標) RPS−1005(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有反応性ポリスチレン)
【0049】
表1、2表より以下のことが分かる。
(1)実施例1〜6、比較例3、4から、繊維状天然由来有機充填剤を長繊維ペレット化したものを添加することによって、密度の大きな上昇を抑えつつ、弾性率が大幅に向上し、流動性が向上し、さらに外観が良好となる。
(2)実施例1〜6、比較例1、2から、従来の無機充填剤と比較して、弾性率の向上はやや低いものの、流動性が低下せず、密度の増加を抑え、外観は良好となる。
(3)実施例4では、脂肪族ポリエステル成分を2種類にしても効果がある。
(4)実施例6では、繊維を2種類にしても効果がある。
(5)実施例7〜9、比較例5〜7から、脂肪族ポリエステル成分と天然繊維を増量した系についても、繊維を添加しない系と比較して弾性率上昇、流動性向上の効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂/当該ポリエステル樹脂の密度の増加を抑えつつ、剛性、流動性、成形外観等に優れている。
従って、OA機器、情報・通信機器、自動車部品又は家庭電化機器等の電気・電子機器のハウジング又は部品、更には自動車部品等その応用分野の拡大が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ポリカーボネート98〜1質量%、(B)脂肪族ポリエステル1〜98質量%、及び(C)天然由来有機充填剤1〜80質量%からなる組み合わせを含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)芳香族ポリカーボネート80〜20質量%、前記(B)脂肪族ポリエステル17〜70質量%、及び前記(C)天然由来有機充填剤3〜40質量%からなる組み合わせを含む請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)芳香族ポリカーボネート80〜50質量%、前記(B)脂肪族ポリエステル17〜50質量%、及び前記(C)天然由来有機充填剤3〜30質量%からなる組み合わせを含む請求項2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)天然由来有機充填剤が、長繊維ペレット化されたものであり、かつ、平均繊維長が3〜12mmのものである請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)天然由来有機充填剤が、ジュート繊維、レーヨン繊維、竹繊維、ケナフ繊維及びヘンプ繊維から選ばれる少なくとも一種を長繊維ペレット化したものである請求項5に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)芳香族ポリカーボネート、(B)脂肪族ポリエステル、及び(C)天然由来有機充填剤からなる組み合わせ100質量部に対して、さらに、(D)カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種を0.01〜10質量部含む請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2009−91505(P2009−91505A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265345(P2007−265345)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(000104364)カルプ工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】