説明

芳香族ポリスルホン樹脂及びその膜

【課題】靭性が高く、多孔質膜をはじめとする膜の材料として好適な芳香族ポリスルホン樹脂を提供する。
【解決手段】還元粘度が0.55〜0.65dL/gであり、好ましくは0.58〜0.62dL/gであり、数平均分子量(Mn)が22000以上であり、好ましくは23500以上であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値が2.54以下であり、好ましくは2.50以下である芳香族ポリスルホン樹脂とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜の材料として好適な芳香族ポリスルホン樹脂、及びこれを用いてなる膜に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリスルホン樹脂は、耐熱性や耐薬品性に優れることから、各種用途に用いられている。その用途の1つとして、限外濾過や精密濾過等の濾過に用いられる多孔質膜の材料が挙げられ、例えば、特開2006−230459号公報(特許文献1)には、多孔質中空糸膜の材料として、芳香族ポリスルホン樹脂を用いることが記載されており、具体的には、還元粘度が0.36、0.48又は0.52である芳香族ポリスルホン樹脂を用いた例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−230459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
濾過に長時間使用することにより目詰まりが生じ、濾過効率が低下した多孔質膜は、通常、その目詰まりを解消すべく、空気や水を逆流させることにより洗浄されるが、従来の芳香族ポリスルホン樹脂を材料とする多孔質膜は、芳香族ポリスルホン樹脂の靭性が必ずしも十分でないため、洗浄の際に過大な圧力がかかると、切れや裂け等の破損が生じることがある。そこで、本発明の目的は、靭性が高く、多孔質膜をはじめとする膜の材料として好適な芳香族ポリスルホン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、還元粘度が0.55〜0.65dL/gであり、数平均分子量(Mn)が22000以上であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値が2.54以下であることを特徴とする芳香族ポリスルホン樹脂を提供する。また、本発明によれば、前記芳香族ポリスルホン樹脂を含む膜も提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は、靭性が高いので、多孔質膜をはじめとする膜の材料として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
芳香族ポリスルホン樹脂は、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)及びスルホニル基(−SO2−)を含む繰返し単位を有する樹脂である。本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は、耐熱性や耐薬品性の点から、繰返し単位が、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある)を有することが好ましく、さらに、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある)や、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある)等の他の繰返し単位を有していてもよい。本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は、繰返し単位(1)を、全繰返し単位の合計に対して、50〜100モル%有することが好ましく、80〜100モル%有することがより好ましい。
【0008】
−Ph1−SO2−Ph2−O− (1)
【0009】
(Ph1及びPh2は、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0010】
−Ph3−R−Ph4−O− (2)
【0011】
(Ph3及びPh4は、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0012】
−(Ph5)n−O− (3)
【0013】
(Ph5は、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは、1〜3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPh5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0014】
Ph1〜Ph5のいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基であってもよいし、m−フェニレン基であってもよいし、o−フェニレン基であってもよいが、p−フェニレン基であることが好ましい。前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基及びt−ブチル基が挙げられ、その炭素数は、通常1〜5である。前記フェニレン基にある水素原子を置換してもよいアリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基及びp−トルイル基が挙げられ、その炭素数は、通常6〜15である。Rで表されるアルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基が挙げられ、その炭素数は、通常1〜5である。
【0015】
本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は、還元粘度が0.55〜0.65dL/gであり、好ましくは0.58〜0.62dL/gである。還元粘度が前記範囲外であると、芳香族ポリスルホン樹脂の靭性が不十分となる。また、還元粘度が前記上限を超えると、芳香族ポリスルホン樹脂の加工性が不十分となる。
【0016】
また、本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は、数平均分子量(Mn)が22000以上であり、好ましくは23500以上である。Mnが前記下限に満たないと、芳香族ポリスルホン樹脂の靭性が不十分となる。なお、Mnの上限は、適宜調整されるが、芳香族ポリスルホン樹脂の加工性の点から、通常30000であり、好ましくは27000である。
【0017】
さらに、本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値(Mw/Mn)が2.54以下であり、好ましくは2.50以下である。Mw/Mnが前記上限を超えると、芳香族ポリスルホン樹脂の靭性が不十分となる。なお、Mw/Mnの下限は、理論上1であり、1に近いほど、好ましい。
【0018】
芳香族ポリスルホン樹脂は、対応する芳香族ジハロゲノスルホン化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とを、塩基として炭酸のアルカリ金属塩を用いて、有機極性溶媒中で重縮合させることにより、好適に製造することができる。例えば、繰返し単位(1)を有する樹脂は、芳香族ジハロゲノスルホン化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」ということがある)を用い、芳香族ジヒドロキシ化合物として下記式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」ということがある)を用いることにより、好適に製造することができる。また、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)とを有する樹脂は、芳香族ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、芳香族ジヒドロキシ化合物として下記式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」ということがある)を用いることにより、好適に製造することができる。また、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)とを有する樹脂は、芳香族ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、芳香族ジヒドロキシ化合物として下記式(7)で表される化合物(以下、「化合物(7)」ということがある)を用いることにより、好適に製造することができる。
【0019】
1−Ph1−SO2−Ph2−X2 (4)
【0020】
(X1及びX2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。Ph1及びPh2は、前記と同義である。)
【0021】
HO−Ph1−SO2−Ph2−OH (5)
【0022】
(Ph1及びPh2は、前記と同義である。)
【0023】
HO−Ph3−R−Ph4−OH (6)
【0024】
(Ph3、Ph4及びRは、前記と同義である。)
【0025】
HO−(Ph5)n−OH (7)
【0026】
(Ph5及びnは、前記と同義である。)
【0027】
化合物(4)の例としては、ビス(4−クロロフェニル)スルホン及び4−クロロフェニル−3’,4’−ジクロロフェニルスルホンが挙げられる。化合物(5)の例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン及びビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)スルホンが挙げられる。化合物(6)の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド及びビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルが挙げられる。化合物(7)の例としては、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、フェニルヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び4,4’’’−ジヒドロキシ−p−クオターフェニルが挙げられる。
【0028】
なお、化合物(4)以外の芳香族ジハロゲノスルホン化合物の例としては、4,4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニルが挙げられる。また、芳香族ジハロゲノスルホン化合物及び/又は芳香族ジヒドロキシ化合物の全部又は一部に代えて、4−ヒドロキシ−4’−(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル等の分子中にハロゲノ基及びヒドロキシル基を有する化合物を用いることもできる。
【0029】
炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸アルカリであってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ)であってもよいし、両者の混合物であってもよい。炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく用いられ、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましく用いられる。
【0030】
有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン及びジフェニルスルホンが挙げられる。
【0031】
芳香族ジハロゲノスルホン化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常95〜110モル%であり、好ましくは100〜105モル%である。目的とする反応は、芳香族ジハロゲノスルホン化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物との脱ハロゲン化水素重縮合であり、仮に副反応が生じなければ、両者のモル比が1:1に近いほど、すなわち芳香族ジハロゲノスルホン化合物の使用量が芳香族ジヒドロキシ化合物に対して100モル%に近いほど、得られる芳香族ポリスルホン樹脂は、重合度が高くなり、その結果、還元粘度が高くなり、Mnが大きくなり、Mw/Mnが小さくなる傾向にあるが、実際は、副生する水酸化アルカリ等により、ハロゲノ基のヒドロキシル基への置換反応や解重合等の副反応が生じ、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホン樹脂の重合度が低下するので、この副反応の度合いも考慮して、前記所定の還元粘度、Mn及びMw/Mnを有する芳香族ポリスルホン樹脂が得られるように、芳香族ジハロゲノスルホン化合物の使用量を調整する必要がある。
【0032】
炭酸のアルカリ金属塩の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物のヒドロキシル基に対して、アルカリ金属として、通常95〜115モル%であり、好ましくは100〜110モル%である。仮に副反応が生じなければ、炭酸のアルカリ金属塩の使用量が多いほど、目的とする重縮合が速やかに進行するので、得られる芳香族ポリスルホン樹脂は、重合度が高くなり、その結果、還元粘度が高くなり、Mnが大きくなり、Mw/Mnが小さくなる傾向にあるが、実際は、炭酸のアルカリ金属塩の使用量が多いほど、前記同様の副反応が生じ易くなり、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホン樹脂の重合度が低下するので、この副反応の度合いも考慮して、前記所定の還元粘度、Mn及びMw/Mnを有する芳香族ポリスルホン樹脂が得られるように、炭酸のアルカリ金属塩の使用量を調整する必要がある。
【0033】
典型的な芳香族ポリスルホン樹脂の製造方法では、第1段階として、芳香族ジハロゲノスルホン化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とを有機極性溶媒に溶解させ、第2段階として、第1段階で得られた溶液に、炭酸のアルカリ金属塩を加えて、芳香族ジハロゲノスルホン化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とを重縮合させ、第3段階として、第2段階で得られた反応混合物から、未反応の炭酸のアルカリ金属塩、副生したハロゲン化アルカリ、及び有機極性溶媒を除去して、芳香族ポリスルホン樹脂を取得する。
【0034】
第1段階の溶解温度は、通常40〜180℃である。また、第2段階の重縮合温度は、通常180〜400℃である。仮に副反応が生じなければ、重縮合温度が高いほど、目的とする重縮合が速やかに進行するので、得られる芳香族ポリスルホン樹脂は、重合度が高くなり、その結果、還元粘度が高くなり、Mnが大きくなり、Mw/Mnが小さくなる傾向にあるが、実際は、重縮合温度が高いほど、前記同様の副反応が生じ易くなり、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホン樹脂の重合度が低下するので、この副反応の度合いも考慮して、前記所定の還元粘度、Mn及びMw/Mnを有する芳香族ポリスルホン樹脂が得られるように、重縮合温度を調整する必要がある。
【0035】
また、第2段階の重縮合は、通常、副生する水を除去しながら徐々に昇温し、有機極性溶媒の還流温度に達した後、さらに通常1〜50時間、好ましくは10〜30時間保温することにより行うのがよい。仮に副反応が生じなければ、重縮合時間が長いほど、目的とする重縮合が進むので、得られる芳香族ポリスルホン樹脂は、重合度が高くなり、その結果、還元粘度が高くなり、Mnが大きくなり、Mw/Mnが小さくなる傾向にあるが、実際は、重縮合時間が長いほど、前記同様の副反応も進み、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホン樹脂の重合度が低下するので、この副反応の度合いも考慮して、前記所定の還元粘度、Mn及びMw/Mnを有する芳香族ポリスルホン樹脂が得られるように、重縮合時間を調整する必要がある。
【0036】
第3段階では、まず、第2段階で得られた反応混合物から、未反応の炭酸のアルカリ金属塩、及び副生したハロゲン化アルカリを、濾過や遠心分離等で除去することにより、芳香族ポリスルホン樹脂が有機極性溶媒に溶解してなる溶液を得ることができる。次いで、この溶液から、有機極性溶媒を除去することにより、芳香族ポリスルホン樹脂を得ることができる。有機極性溶媒の除去は、前記溶液から直接、有機極性溶媒を留去することにより行ってもよいし、前記溶液を芳香族ポリスルホン樹脂の貧溶媒と混合して、芳香族ポリスルホン樹脂を析出させ、濾過や遠心分離等で分離することにより行ってもよい。
【0037】
芳香族ポリスルホン樹脂の貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、ヘプタン及び水が挙げられ、除去し易いことからメタノールが好ましい。
【0038】
また、比較的高融点の有機極性溶媒が重合溶媒として用いられる場合には、第2段階で得られた反応混合物を冷却固化させた後、粉砕し、得られた粉体から、水を用いて、未反応の炭酸のアルカリ金属塩、及び副生したハロゲン化アルカリを抽出除去すると共に、芳香族ポリスルホン樹脂に対して溶解力を持たず、かつ、有機極性溶媒に対して溶解力をもつ溶媒を用いて、有機極性溶媒を抽出除去することも可能である。
【0039】
前記粉体の体積平均粒径は、抽出効率及び抽出時の作業性の点から、好ましくは200〜2000μmであり、より好ましくは250〜1500μmであり、さらに好ましくは300〜1000μmである。あまり大きいと、抽出効率が悪く、あまり小さいと、抽出の際に固結したり、抽出後に濾過や乾燥を行う際に目詰まりを起こしたりするため、好ましくない。
【0040】
抽出溶媒としては、例えば重合溶媒にジフェニルスルホンを使用した場合、アセトンとメタノールの混合溶媒を用いることができる。ここで、アセトンとメタノールの混合比は、通常、抽出効率と芳香族ポリスルホン樹脂粉体の固着性から決められる。
【0041】
また、別の典型的な芳香族ポリスルホン樹脂の製造方法では、第1段階として、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸のアルカリ金属塩とを有機極性溶媒中で反応させ、副生する水を除去し、第2段階として、第1段階で得られた反応混合物に、芳香族ジハロゲノスルホン化合物を加えて、重縮合を行い、第3段階として、先と同様、第2段階で得られた反応混合物から、未反応の炭酸のアルカリ金属塩、副生したハロゲン化アルカリ、及び有機極性溶媒を除去して、芳香族ポリスルホン樹脂を取得する。
【0042】
なお、この別法において、第1段階では、副生する水を除去するために、水と共沸する有機溶媒を加えて、共沸脱水を行ってもよい。水と共沸する有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン及びシクロヘキサンが挙げられる。共沸脱水の温度は、通常70〜200℃である。
【0043】
また、この別法において、第2段階の重縮合温度は通常40〜180℃であり、先と同様、副反応の度合いも考慮して、前記所定の還元粘度、Mn及びMw/Mnを有する芳香族ポリスルホン樹脂が得られるように、重縮合温度や重縮合時間を調整する必要がある。
【0044】
こうして得られる本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は、靭性が高いことから、各種用途に用いることができ、特に多孔質膜をはじめとする膜の材料として好適に用いることができる。
【0045】
本発明の芳香族ポリスルホン樹脂を含む膜は、例えば、平膜であってもよいし、管状膜であってもよいし、中空糸膜であってもよく、また、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。なお、多層膜である場合、本発明の芳香族ポリスルホン樹脂を含む層のみを2層以上有する多層膜であってもよいし、本発明の芳香族ポリスルホン樹脂を含む層を1層以上有し、かつ他の層を1層以上有する多層膜であってもよい。
【0046】
膜の製造は、公知の方法を適宜採用することができ、多孔質膜の製造は、例えば、芳香族ポリスルホン樹脂を溶媒に溶解させ、この溶液を所定の形状に押し出し、エアギャップを介して乾湿式で、又はエアギャップを介さずに湿式で、凝固液に導入して、相分離及び脱溶媒することにより行ってもよいし、芳香族ポリスルホン樹脂を溶媒に溶解させ、この溶液を所定の形状の基材に流延し、凝固液に浸漬して、相分離及び脱溶媒することにより行ってもよい。また、非多孔質膜の製造は、例えば、芳香族ポリスルホン樹脂を溶融させ、所定の形状に押し出すことにより行ってもよいし、芳香族ポリスルホン樹脂を溶融させ、所定の形状の基材に流延することにより行ってもよいし、芳香族ポリスルホン樹脂を溶媒に溶解させ、この溶液を所定の形状の基材に流延し、脱溶媒することにより行ってもよい。
【0047】
また、多孔質膜として中空糸膜を製造する場合、前記溶液を紡糸原液とし、芯鞘型の二重環状ノズルを用いて、鞘側より前記溶液を吐出させると共に、芯側より凝固液(以下、「内部凝固液」ということがある)又は気体を吐出させ、これらをエアギャップを介して又は介さずに、凝固液(以下、「外部凝固液」ということがある)中に導入することが好ましい。
【0048】
前記溶液の調製に用いられる芳香族ポリスルホン樹脂の良溶媒(以下、単に「良溶媒」ということがある)としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。また、特に多孔質膜を製造する場合、前記溶液には、芳香族ポリエステル樹脂及び良溶媒以外の成分、例えば、親水性高分子、芳香族ポリスルホン樹脂の貧溶媒(以下、単に「貧溶媒」ということがある)、膨潤剤を含有させてもよい。前記溶液に親水性高分子を含有させることにより、透水性に優れ、水系流体の限外濾過や精密濾過等の濾過に好適に用いられる多孔質膜を得ることができる。なお、前記溶液に貧溶媒や膨潤剤を含有させない場合は、良溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
【0049】
親水性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルアクリレートやポリヒドロキシエチルメタクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド及びポリエチレンイミンが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でもポリビニルピロリドン、特に分子量が100万〜300万の高分子量ポリビニルピロリドンを用いると、その含有量が少なくても、前記溶液の増粘効果を高めることができるので好ましい。
【0050】
親水性高分子の使用量は、芳香族ポリスルホン樹脂100重量部に対して、通常5〜40重量部であり、好ましくは15〜30重量部である。親水性高分子の使用量があまり少ないと、得られる多孔質膜の透水性が不十分になり、あまり多いと、得られる多孔質膜の耐熱性や耐薬品性、さらには靭性が不十分となる。
【0051】
膨潤剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレングリコール類が挙げられ、除去し易いことからエチレングリコールが好ましい。
【0052】
凝固液としては、貧溶媒や、貧溶媒と良溶媒との混合溶媒を用いることができるが、凝固液として、貧溶媒と良溶媒との混合溶媒を用いると、これらの混合比を調節することにより、得られる多孔質膜の孔径や孔径分布を調節することができるので好ましく、特に内部凝固液、外部凝固液、共に、貧溶媒である水と良溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミドとの混合溶媒を用いた場合、これらの効果を効率よく引き出すことができる。また、この混合溶媒を用いることにより、その後の溶媒回収も容易に行うことができる。
【0053】
前記溶液に親水性高分子を含有させて多孔質膜を製造する場合、得られる多孔質膜には、必要に応じて、多孔質膜中の親水性高分子を不溶化処理するために、熱処理や放射線処理を行なってもよい。熱処理や放射線処理を行うことにより、親水性高分子が架橋して、多孔質膜中に固定されるため、多孔質膜を濾過膜として使用する際、親水性高分子が濾液中に溶出するのを防止することができる。
【0054】
熱処理や放射線処理は、多孔質膜が、形状や構造、機械的特性等において、著しく変化しない範囲であって、かつ親水性高分子が架橋するのに十分な条件で行うことが好ましく、どちらか一方のみの処理を行ってもよいし、その両方の処理を行ってもよい。
【0055】
例えば、親水性高分子としてポリビニルピロリドンを用いて製造した多孔質膜の熱処理は、処理温度150〜190℃で行うことが好ましく、処理時間は、多孔質膜中のポリビニルピロリドンの量により適宜設定される。
【0056】
また、多孔質膜の放射線処理は、放射線としてα線、β線、γ線、X線又は電子線を用いて行うことができる。この場合、多孔質膜中に抗酸化剤含有水を含浸した状態で行うことにより、多孔質膜のダメージを効果的に防止することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0058】
〔芳香族ポリスルホン樹脂の還元粘度の測定〕
芳香族ポリスルホン樹脂約1gをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させて、その容量を1dLとし、この溶液の粘度(η)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。また、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドの粘度(η0)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。前記溶液の粘度(η)と前記溶媒の粘度(η0)から、比粘性率((η−η0)/η0)を求め、この比粘性率を、前記溶液の濃度(約1g/dL)で割ることにより、芳香族ポリスルホン樹脂の還元粘度(dL/g)を求めた。
【0059】
〔芳香族ポリスルホン樹脂のMn及びMw/Mnの測定〕
下記の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析を行い、Mn及びMwを求め、Mw/Mnを算出した(分析数2回の平均値)。
試料:濃度が0.002g/mLである芳香族ポリスルホン樹脂のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を50μL注入
カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H」(7.8mmφ×300mm)を2本連結
カラム温度:40℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド
溶離液流量:0.8mL/分
検出器:示差屈折率計(RI)+光散乱光度計(LS)
標準試薬:ポリスチレン
【0060】
〔芳香族ポリスルホン樹脂の靱性の評価〕
芳香族ポリスルホン樹脂膜から、13cm×1cmの試験片を切り出し、MIT耐疲労試験機(東洋精機(株)製)を用いて、曲げ半径0.38mm、荷重4.9Nの条件で屈曲試験を行い、試験片が破断するまでの屈曲回数を求めた(試験数8回の平均値)。
【0061】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、温度計、及び先端に受器を付したコンデンサーを備えた重合槽に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン500g、ビス(4−クロロフェニル)スルホン589g、及び重合溶媒としてジフェニルスルホン942gを仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら180℃まで昇温した。得られた溶液に、炭酸カリウム287gを添加した後、290℃まで徐々に昇温し、290℃でさらに2時間反応させた。得られた反応液を室温まで冷却して固化させ、細かく粉砕した後、温水による洗浄及びアセトンとメタノールの混合溶媒による洗浄を数回行い、次いで150℃で加熱乾燥を行い、末端がクロロ基である芳香族ポリスルホン樹脂を粉末として得た。この芳香族ポリスルホン樹脂の還元粘度、Mn、及びMw/Mnを測定し、結果を表1に示した。
【0062】
500mLセパラブルフラスコに、前記芳香族ポリスルホン樹脂75g及びN−メチル−2−ピロリドン225gを入れ、60℃で2時間攪拌して、淡黄色の芳香族ポリスルホン溶液を得た。この溶液をガラス板(厚み3mm)の上にフィルムアプリケーターを用いてキャストし、その表面が乾燥するまで高温熱風乾燥器を用いて60℃で加熱した後、窒素雰囲気下250℃で熱処理して、ガラス板上に厚み46μmの芳香族ポリスルホン樹脂膜を形成した。次いで、ガラス板から芳香族ポリスルホン樹脂膜を剥がし、靭性を評価し、結果を表1に示した。
【0063】
比較例1
撹拌機、窒素導入管、温度計、及び先端に受器を付したコンデンサーを備えた重合槽に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン500g、ビス(4−クロロフェニル)スルホン593g、及び重合溶媒としてジフェニルスルホン949gを仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら180℃まで昇温した。得られた溶液に、無水炭酸カリウム287gを添加した後、290℃まで徐々に昇温し、290℃でさらに2時間反応させた。得られた反応液を室温まで冷却して固化させ、細かく粉砕した後、温水による洗浄及びアセトンとメタノールの混合溶媒による洗浄を数回行い、次いで150℃で加熱乾燥を行い、末端がクロロ基である芳香族ポリスルホン樹脂を粉末として得た。この芳香族ポリスルホン樹脂の還元粘度、Mn、及びMw/Mnを測定し、結果を表1に示した。
【0064】
前記芳香族ポリスルホン樹脂を用いて、実施例1と同様にして芳香族ポリスルホン樹脂膜を得、靭性を評価し、結果を表1に示した。
【0065】
比較例2
市販の芳香族ポリスルホン樹脂(BASF社製「Ultrason E6020P」)を用いた。この芳香族ポリスルホン樹脂の還元粘度、Mn、及びMw/Mnを測定し、結果を表1に示した。
【0066】
前記芳香族ポリスルホン樹脂を用いて、実施例1と同様にして芳香族ポリスルホン樹脂膜を得、靭性を評価し、結果を表1に示した。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元粘度が0.55〜0.65dL/gであり、数平均分子量(Mn)が22000以上であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値(Mw/Mn)が2.54以下であることを特徴とする芳香族ポリスルホン樹脂。
【請求項2】
下記式(1)で表される繰返し単位を有する請求項1に記載の芳香族ポリスルホン樹脂。
−Ph1−SO2−Ph2−O− (1)
(Ph1及びPh2は、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の芳香族ポリスルホン樹脂を含む膜。
【請求項4】
多孔質膜である請求項3に記載の膜。

【公開番号】特開2011−94111(P2011−94111A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204071(P2010−204071)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】