説明

芳香族ポリマーの製造方法

【課題】有機エレクトロニクス材料等には、分子量の高い芳香族ポリマーを用いる場合があり、さらに、分子量の高い芳香族ポリマーを製造する方法が求められていた。
【解決手段】パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩、相間移動触媒、水及び脂肪族エーテル溶媒存在下、下記(A)及び/又は(B)の芳香族モノマーを重合する工程を含むことを特徴とする。
(A)ホウ素含有官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー及び反応性官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー
(B)反応性官能基を少なくとも1つ及びホウ素含有官能基を少なくとも1つ同一分子内に有する芳香族モノマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ポリマーの製造方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族環がπ共役した芳香族ポリマーは、例えば、有機エレクトロニクス材料などに有用である。この芳香族ポリマーの製造方法としては、芳香族モノマーを鈴木カップリング反応によって製造する方法が知られている。
【0003】
具体的には、例えば、特許文献1には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、相間移動触媒、炭酸ナトリウム水溶液及びトルエン存在下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレンと2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンを芳香族モノマーとして用い、これらを重合することにより、重量平均分子量(Mw)148,000、数平均分子量(Mn)47,980の芳香族ポリマーを製造する方法が記載されている(特許文献1の実施例1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001-520289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機エレクトロニクス材料等には、分子量の高い芳香族ポリマーを用いる場合があり、さらに分子量の高い芳香族ポリマーを製造する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況下、本発明者らは鈴木カップリング反応による重合によって芳香族ポリマーを製造する方法について鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。すなわち、本発明に係る芳香族ポリマーの製造方法は、パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩、相間移動触媒、水及び脂肪族エーテル溶媒存在下、下記(A)及び/又は(B)の芳香族モノマーを重合する工程を含むことを特徴とする。
(A)ホウ素含有官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー及び反応性官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー
(B)反応性官能基を少なくとも1つ及びホウ素含有官能基を少なくとも1つ同一分子内に有する芳香族モノマー
【0007】
前記水の量としては、ホウ素含有官能基1モルに対して1〜25モルの範囲が好ましい。
【0008】
また、前記相関移動触媒としては、有機第4級アンモニウム塩であるのが好ましい。
【0009】
前記アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸セシウムであるのが好ましい。
【0010】
ホウ素含有官能基としては、下記式で表わされる官能基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であるのが好ましい。
【0011】
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表わす。R5は炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
【0012】
反応性官能基としては、ハロゲン原子であるのが好ましい。
【0013】
脂肪族エーテル溶媒としては、テトラヒドロフランであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、さらに分子量の高い芳香族ポリマーを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る芳香族ポリマーの製造方法は、(A)ホウ素含有官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー(以下、「芳香族モノマーM1」と記すことがある)と反応性官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー(以下、「芳香族モノマーM2」と記すことがある)とを、パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩、相間移動触媒、水及び脂肪族エーテル溶媒存在下に重合する工程を含む製造方法、(B)反応性官能基を少なくとも1つ及びホウ素含有官能基を少なくとも1つ同一分子内に有する芳香族モノマー(以下、「芳香族モノマーM3」と記すことがある)を互いに、パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩、相間移動触媒、水及び脂肪族エーテル溶媒存在下に重合する工程を含む製造方法、並びに、芳香族モノマーM1、芳香族モノマーM2及び芳香族モノマーM3を互いに、パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩、相間移動触媒、水及び脂肪族エーテル溶媒存在下に重合する工程を含む製造方法である。
【0016】
本発明の製造方法で用いる芳香族モノマーM1は、ホウ素含有官能基を少なくとも2つ有し、1つ以上の芳香環を有するモノマーであればよく、ホウ素含有官能基を2つ有し、1〜6個の芳香環を有するモノマーが好ましい。芳香族モノマーM1が、2以上の芳香環を有するモノマーである場合、ホウ素含有官能基は、同じ芳香環に結合していてもよいし、異なる芳香環に結合していてもよい。
【0017】
芳香族モノマーM1のホウ素含有官能基としては、下記式で表される官能基が挙げられる。
【0018】
【化2】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表わす。R5は炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
【0019】
炭素数1〜6の無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の無置換アルキル基が挙げられる。かかるアルキル基の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基等が挙げられる。
【0020】
2価の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい2価脂肪族基や2価芳香族基が挙げられる。2価脂肪族基には鎖状及び環状のものが包含され、例えば、炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等)が挙げられる。また、2価芳香族基にはアリーレン基が包含され、例えば、炭素数6〜14、好ましくは6〜12のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、ナフチレン基等)等が挙げられる。
【0021】
2価の炭化水素基を有するホウ素含有官能基として、例えば、下記式(41)〜(445)で表される各官能基が挙げられる。
【0022】
【化3】

【0023】
本発明の製造方法で用いる芳香族モノマーM2は、反応性官能基を少なくとも2つ有し、1つ以上の芳香環を有するモノマーであればよく、反応性官能基を2つ有し、1〜6個の芳香環を有するモノマーが好ましい。芳香族モノマーM2が、2以上の芳香環を有するモノマーである場合、反応性官能基は、同じ芳香環に結合していてもよいし、異なる芳香環に結合していてもよい。
【0024】
芳香族モノマーM2の反応性官能基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニル基、メタンスルホニル基等のハロゲン原子で置換されていてもよいアルカンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等のアリールスルホニル基等が挙げられ、これらの中でもハロゲン原子が好ましい。
【0025】
本発明の製造方法で用いる芳香族モノマーM3は、少なくとも1つのホウ素含有官能基と少なくとも1つの反応性官能基を有し、1つ以上の芳香環を有するモノマーであればよく、1つのホウ素含有官能基と1つの反応性官能基を有し、1〜6個の芳香環を有するモノマーが好ましい。芳香族モノマーM3のホウ素含有官能基としては、前記芳香族モノマーM1のホウ素含有官能基と同様のものが挙げられ、反応性官能基としては、前記芳香族モノマーM2の反応性官能基と同様のものが挙げられる。芳香族モノマーM3が、2以上の芳香環を有するモノマーである場合、ホウ素含有官能基と反応性官能基は、同じ芳香環に結合していてもよいし、異なる芳香環に結合していてもよい。
【0026】
以上説明した芳香族モノマーM1、芳香族モノマーM2及び芳香族モノマーM3が有する芳香環としては、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環等の縮合芳香環;フラン環、チオフェン環、ピリジン環、フェノキシアジン環、フェノチアジン環、ベンゾチアジアゾール環等のヘテロ芳香環等が挙げられる。また、ビフェニレン基のようにベンゼン環が単結合した芳香環のように、得られる芳香族ポリマーの主鎖を形成する前記芳香環は、芳香族性を有する限り、互いに、単結合、ヘテロ原子、スルホニル基又はカルボニル基で連結されたものであってもよい。具体的には、例えば、下記式(a)〜(m)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化4】

(式中、X1及びX2はそれぞれ独立して、ホウ素含有官能基又は反応性官能基を表わし、Rは水素原子又は重合反応に関与しない基を表わす。また、芳香環の隣接する炭素原子に結合した2つのRが互いに結合して、その結合炭素原子と一緒になって環を形成してもよい。nは0〜6の整数を表す。Yは、周期表第16族元素を表わし、Zは、−O−、−S−、−N(R7)−、−C(R8)(R9)−を表わす。ここで、R7、R8及びR9はそれぞれ独立して、水素原子又は重合反応に関与しない基を表わす)
【0028】
重合反応に関与しない基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のアルキル基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のアルコキシ基、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基等、例えば、フェノキシ基等の炭素数6〜20のアリールオキシ基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等の炭素数2〜20のアシル基等が挙げられる。
【0029】
周期表第16族元素としては、酸素、硫黄、セレン等が挙げられる。
【0030】
芳香族モノマーM1としては、例えば、2,2’−(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(3,5−ジメトキシ−9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9−オクチルカルバゾール−3,6−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、1,4−ベンゼンジボロン酸、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)ビス(1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(2−メチル−5−オクチル−1,4−フェニレン)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(2,5−ジブチル−1,4−フェニレン)ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,2’−[2,5−ビス(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン]ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)、2,5−チオフェンジボロン酸、2,5−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン2−イル)チオフェン、2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン2−イル)チオフェン、2,5−ビス(1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)チオフェン、2,5−ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)チオフェン、4,4’−ビフェニルボロン酸、1,1’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン2−イル)−4,4’−ビフェニル、1,1’−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン2−イル)−4,4’−ビフェニル、1,1’−ビス(1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)−4,4’−ビフェニル、1,1’−ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)−4,4’−ビフェニル、5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン2−イル)−2,2’−ビチオフェン等が挙げられる。
【0031】
芳香族モノマーM2としては、例えば、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジドデシルフルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジヘキシルフルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジオクチルフルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジドデシルフルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジヘキシルフルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジオクチルフルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジドデシルフルオレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモ−2−エチルベンゼン、1,4−ジブロモ−2−メトキシベンゼン、ジメチル 2,5−ジブロモテレフタレート、1,4−ジブロモナフタレン、9,10−ジブロモアントラセン、1,5−ジブロモアントラセン、3,5−ジブロモピリジン、1,1’−ジブロモ−4,4’−ビフェニル、2,5−ジブロモピリジン、1,4−ジブロモ−2,5−ジヘキシルオキシベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1−ブロモ−4−クロロトルエン、1−ブロモ−4−クロロ−2−プロピルベンゼン、2,5−ジブロモ−4’−フェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン、2,5−ジブロモ−3−オクチルチオフェン、2,5−ジブロモ−3−ドデシルチオフェン、2,5−ジクロロ−3−ヘキシルチオフェン、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン、5,5’−ジブロモ−3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−4−(4−tert−ブチル)アニリン、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−4−(1−メチルプロピル)アニリン、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アニリン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−n−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−ビシクロ[4,2,0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−アミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス[4−(1,1−ジメチルエチル)−2,6−ジメチルフェニル]−1,4−ジアミノベンゼン、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾセレナジアゾール、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、4,7−ビス(5−ブロモ−4−メチル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、4,7−ビス(5−ブロモ−3−メチル−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、3,7−ジブロモ−10−(4−n−ブチルフェニル)−10H−フェノチアジン、3,7−ジブロモ−10−(4−n−ブチルフェニル)−10H−フェノキシアジン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(3−エトキシカルボニルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0032】
芳香族モノマーM3としては、例えば、2−(2−ブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン−7−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(2−ブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン−7−イル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(2−ブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン−7−イル)−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(2−ブロモ−9,9−ジドデシルフルオレン−7−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(2−クロロ−9,9−ジヘキシルフルオレン−7−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(4−ブロモフェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(4−ブロモ−2−エチル−3−メチルフェニル)−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(4−ブロモ−2−エトキシ−5−イソプロピルフェニル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(4−クロロフェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(4−クロロフェニル)−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(4−クロロ−2,3−ジイソプロピルフェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(3−ブチル−4−クロロ−5−エトキシフェニル)−1,3,2−ジオキサボリナン、2−[4’−ブロモ−(1,1’−ビフェニル)]−4−イル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−[4’−ブロモ−(1,1’−ビフェニル)]−4−イル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−[4’−クロロ−(1,1’−ビフェニル)]−4−イル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−[4’−クロロ−(1,1’−ビフェニル)]−4−イル−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−ブロモ−5−(1,3,2−ジオキサボロラン2−イル)チオフェン、5−ブロモ−5’−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン2−イル)−2,2’−ビチオフェン等が挙げられる。
【0033】
本発明で用いられるパラジウム触媒としては、ホスフィン化合物がパラジウム化合物に配位したパラジウム触媒が好適である。かかるパラジウム触媒としては、市販されているものを用いてもよいし、予めパラジウム化合物とホスフィン化合物を接触させて調製したものを用いてもよいし、パラジウム化合物とホスフィン化合物を、芳香族モノマーを含む反応系中に加えて、反応系内で調製してもよい。
【0034】
パラジウム触媒としては、例えば、ビス(アセテート)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、[トランス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロパラジウム(II)、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、シス−ジクロロビス(ジメチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トルイルホスフィン)パラジウム(II)などが挙げられ、これらの中でもジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が好適に用いられる。
【0035】
パラジウム化合物としては、例えば、酢酸パラジウム(II)又は塩化パラジウム(II)、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)ジクロロパラジウム(II)、(2,2’−ビピリジル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)クロロニトロパラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロ(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(N,N,N',N’−テトラメチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,10−フェナントロリン)パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、臭化パラジウム(II)、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ヨウ化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、塩化カリウムパラジウム(IV)、臭化カリウムパラジウム(II)、塩化カリウムパラジウム(II)、塩化ナトリウムパラジウム(II)、硝酸テトラアンミンパラジウム(II)、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレートなどが挙げら、これらの中でも酢酸パラジウム(II)が好適に用いられる。
【0036】
ホスフィン化合物としては、置換基を有していてもよい3つの置換もしくは無置換アリール基がリン原子に結合したホスフィン化合物(以下、「アリールホスフィン」と記すことがある)が好適に用いられる。このようなアリールホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ−オルト−トリルホスフィン、トリ−メタ−トリルホスフィン、トリ−パラ−トリルホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(パラ−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(オルト−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(メタ−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(パラ−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリ(メタ−クロロフェニル)ホスフィン、トリ(パラ−クロロフェニル)ホスフィン、トリ−2−フリルホスフィンなどが挙げられ、より好ましくはトリフェニルホスフィン、トリ−オルト−トリルホスフィン、トリ−パラ−トリルホスフィン、トリス(オルト−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(パラ−メトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられ、これらの中でもトリフェニルホスフィンが好適に用いられる。
【0037】
本発明の製造方法で用いるパラジウム触媒の量としては、(A)芳香族モノマーM1と芳香族モノマーM2とを接触させて芳香族ポリマーを製造する場合は、芳香族モノマーM1と芳香族モノマーM2の合計に対して、0.001〜10モル%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5モル%の範囲である。(B)芳香族モノマーM3を互いに接触させて芳香族ポリマーを製造する場合は、芳香族モノマーM3に対して、0.001〜10モル%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5モル%の範囲である。また、芳香族モノマーM1と芳香族モノマーM2と芳香族モノマーM3とを互いに接触させて芳香族ポリマーを製造する場合は、芳香族モノマーM1、芳香族モノマーM2及び芳香族モノマーM3の合計に対して、0.001〜10モル%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5モル%の範囲である。
【0038】
本発明の製造方法で用いるアルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等を挙げることができ、好ましくは、炭酸セシウムである。その使用量は、芳香族モノマーM2又は芳香族モノマーM3の反応性官能基1モルに対して、少なくとも1モル等を挙げることができ、好ましくは2〜5モルの範囲等を挙げられる。
【0039】
本発明の製造方法で用いる相間移動触媒としては、有機第4級アンモニウム塩が好ましい。より好ましくは、第4級アルキルアンモニウム塩である。第4級アルキルアンモニウム塩は、Rの構造式で示されるアンモニウム塩であり、R〜Rはアルキル基であって、R〜Rは同一であっても、異なっていてもよい。
【0040】
第4級アルキルアンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロライド、n−デシルトリメチルアンモニウムクロライド、n−オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラアミルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジミリスチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、ジメチルジオクチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、エチルヘキサデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、n−オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−オクチルアンモニウムブロマイド、テトラアミルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、トリメチルステアリルアンモニウムブロマイド、エチルトリメチルアンモニウムヨージド、エチルトリプロピルアンモニウムヨージド、テトラ−n−オクチルアンモニウムヨージド、テトラアミルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラヘプチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドが挙げられ、これらの中でもトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが好適に用いられる。
【0041】
本発明の製造方法で用いる相間移動触媒の量としては、(A)芳香族モノマーM1と芳香族モノマーM2とを接触させて芳香族ポリマーを製造する場合は、芳香族モノマーM1と芳香族モノマーM2の合計に対して、10〜100モル%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜40モル%の範囲である。(B)芳香族モノマーM3を互いに接触させて芳香族ポリマーを製造する場合は、芳香族モノマーM3に対して、10〜100モル%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜40モル%の範囲である。また、芳香族モノマーM1と芳香族モノマーM2と芳香族モノマーM3とを互いに接触させて芳香族ポリマーを製造する場合は、芳香族モノマーM1、芳香族モノマーM2及び芳香族モノマーM3の合計に対して、10〜100モル%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜100モル%の範囲である。
【0042】
本発明においては、芳香族モノマーのホウ素含有官能基1モルに対して、1〜100モルの水の存在下に芳香族モノマーの重合反応が行われる。パラジウム触媒として、アリールホスフィンがパラジウムに配位したパラジウム触媒を用いる場合は、芳香族モノマーのホウ素含有官能基1モルに対して、1〜25モルの水の存在下に重合反応を行うことが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法で用いられる脂肪族エーテル溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、これらの中でもテトラヒドロフラン(以下、THFと記すことがある)が好適に用いられる。脂肪族エーテル溶媒の使用量としては、例えば、芳香族ポリマーの合計1重量部に対して、脂肪族エーテル溶媒が1〜200重量部の範囲等を挙げることができ、好ましくは5〜100重量部の範囲等が挙げられる。使用量が200重量部以下であると、分子量の高い芳香族ポリマーが得られやすい傾向があることから好ましく、一方、使用量が1重量部以上であると、重合反応時の攪拌が容易である傾向があることから好ましい。
【0044】
本発明の製造方法において、芳香族モノマー、パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩、相間移動触媒、水、脂肪族エーテル溶媒とを任意の順序で混合すればよく、水以外の化合物を混合した後に水を滴下する方法が好ましい。水を滴下する際の温度及び時間については、例えば、85〜105℃の範囲等を挙げることができ、滴下時間としては、例えば、10分〜2時間程度の範囲等を挙げることができる。
【0045】
本発明の製造方法において、重合温度は、例えば、60〜80℃の範囲等を挙げることができる。また重合時間は、例えば、1〜5時間の範囲等を挙げることができる。撹拌動力は例えば、0.50〜1.50kw/m3の範囲等を挙げることができる。
【0046】
本発明に係る芳香族ポリマーの製造方法では、芳香族モノマー、パラジウム触媒、相関移動触媒、脂肪族エーテル溶媒、水およびアルカリ金属炭酸塩を混合して加熱撹拌して重合を行うが、必要に応じて、重合反応が停止した後、更に芳香族モノマー、アルカリ金属炭酸塩等を追加して重合を行って芳香族ポリマーの分子量を増大させてもよい。
【0047】
芳香族モノマーM1及び芳香族モノマーM2を用いる場合、芳香族モノマーM1に含まれるホウ素含有官能基1モルに対し、芳香族モノマーM2に含まれる反応性官能基が、例えば、0.8〜1.2モルの範囲等、好ましくは、0.9〜1.1モルの範囲等になるように芳香族モノマーM1及び芳香族モノマーM2を用いる。
【0048】
芳香族ポリマーの分子量は、ホウ素含有官能基に対する反応性官能基のモル比が化学量論比(1.0)に調節することにより、分子量を増大させることができる。また、芳香族ポリマーの分子量が所望値に到達しなかった場合には、新たに芳香族モノマーを追加し、さらに重合することにより分子量を所望値とすることもできる。芳香族モノマーを追加する際には、パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩及び水等を同時に追加してもよい。
【0049】
芳香族ポリマーに含まれる構造単位が異なるブロック重合体を製造する場合、芳香族モノマーに含まれるホウ素含有官能基と反応性官能基との化学量論比が異なるようにして、比較的低分子量の芳香族ポリマーを調製した後、異なる芳香族モノマーを追加することによってブロック重合体である芳香族ポリマーを得ることができる。この場合、分子量を増大させるためには、芳香族モノマーを追加する前後の合計でホウ素含有官能基と反応性官能基とが化学量論比となるようにすればよい。また、この際、パラジウム触媒、相関移動触媒、脂肪族エーテル溶媒、水およびアルカリ金属炭酸塩の量は、前記の好ましい範囲となるように、比較的低分子量の芳香族ポリマーを調製する際から調整していてもよいし、芳香族モノマーを追加する前後の合計で前記の好ましい範囲となるように調整してもよい。
【0050】
重合反応後、必要に応じて、得られたポリマーのホウ素含有官能基末端あるいは反応性官能基末端を封止してもよい。官能基末端の封止方法としては、例えば、ホウ素含有官能基を有する一官能性化合物あるいは反応性官能基を有する一官能性化合物、好ましくはフェニルボロン酸あるいはブロモベンゼンを加えた後、加熱撹拌を行えばよい。
【0051】
得られた芳香族ポリマーの取り出し方法に関しては、芳香族ポリマーを良溶媒で適当な濃度に希釈し必要に応じて洗浄、精製操作を行った後、貧溶媒中に芳香族ポリマー溶液を滴下することにより析出した芳香族ポリマーを濾別することにより取り出すことができる。分離した芳香族ポリマーの構造や分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー、NMR等の通常の分析手段により分析することができる。生成した芳香族ポリマーを溶解しない溶媒もしくはほとんど溶解しない溶媒としては、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル等が挙げられ、水及びメタノールが好ましい。
【0052】
以上のようにして製造する芳香族ポリマーの構造単位の具体例を以下に示す。下記式中、R、n、Y、Zは上記と同一の意味を表わし、ZおよびYが複数の場合、互いに異なっていてもよい。
【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
本発明の製造方法によれば、さらに分子量の高い芳香族ポリマーを製造することが可能である。また、分子量の高い芳香族ポリマーを従来の製造方法と同等程度の反応時間で製造することが可能である。さらに、芳香族モノマー等を追加するなどの方法により、分子量の高い芳香族ポリマーを製造することが容易である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0060】
実施例1
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(2.99g、5.62mmol)と、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(3.18g、5.61mmol)と、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(1.15g、2.84mmol)と、THF(127g)を加えた。この溶液に室温にて窒素を30分間吹き込んだ後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(3.9mg、5.6μmol)と、炭酸セシウム(7.31g、22.4mmol)を加え、窒素雰囲気下で、還流温度まで加熱した。この溶液に水(1.65g、91.5mmol)を1.65g/1時間の速さで滴下し、その後、反応混合物を1.5時間還流して下記構造単位を含む芳香族ポリマーを得た。得られた芳香族ポリマーを、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、下記分析条件で分析し、得られた分析結果からポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めたところ、Mwは896,000g/mol、Mnは219,000g/molであった。
【0061】
<分析条件>
GPC測定装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:PLgel 10μm MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:40℃、
移動相:テトラヒドロフラン
流量:2.0mL/分
検出:UV検出(波長228nm)
【0062】
【化10】

【0063】
実施例2
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(2.99g、5.62mmol)と、ビス(4−ブロモフェニル)−4−(1−メチルプロピル)−ベンゼンアミン(2.58g、5.61mmol)と、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(0.92g、2.29mmol)と、THF(128g)を加えた。この溶液に室温にて窒素を30分間吹き込んだ後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(3.9mg、5.6μmol)と、炭酸セシウム(7.31g、22.4mmol)を加え、窒素雰囲気下で、還流温度まで加熱した。この溶液に水(1.65g、91.5mmol)を1.65g/時間で滴下し、その後、反応混合物を2.0時間還流して下記構造単位を含む芳香族ポリマーを得た。得られた芳香族ポリマーの分子量を実施例1と同様にして測定したところ、Mwは569,000g/mol、Mnは51,000g/molであった。
【0064】
【化11】

【0065】
実施例3
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(2.93g、5.52mmol)と、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン(1.87g、5.77mmol)と、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(0.92g、2.27mmol)と、THF(129g)を加えた。この溶液に室温にて窒素を30分間吹き込んだ後、酢酸パラジウム(II)(1.3mg、5.8μmol)と、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン(0.122g、39.9μmol)と、炭酸セシウム(7.44g、22.8mmol)を加え、窒素雰囲気下で、還流温度まで加熱した。この溶液に水(1.68g、93.2mmol)を1.68g/1時間の速さで滴下し、その後、反応混合物を1.5時間還流して下記構造単位を含む芳香族ポリマーを得た。得られた芳香族ポリマーの分子量を実施例1と同様にして測定したところ、Mwは91,000g/mol、Mnは32,000g/molであった。
【0066】
【化12】

【0067】
実施例4
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(0.647g、1.22mmol)と、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(0.427g、1.45mmol)と、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(0.21g、0.51mmol)と、THF(60g)を加えた。この溶液に室温にて窒素を30分間吹き込んだ後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(1.0mg、1.4μmol)と、炭酸セシウム(1.89g、5.80mmol)を加え、窒素雰囲気下で、還流温度まで加熱した。この溶液に水(0.68g、37.7mmol)を0.68g/1時間の速さで滴下し、その後、反応混合物を2.5時間還流して芳香族ポリマーを得た。得られた芳香族ポリマーの分子量を実施例1と同様にして測定したところ、Mwは4,000g/mol、Mnは1,550g/molであった。
上記で得られた反応混合物溶液に、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジヘキシルフルオレン(3.23g、6.78mmol)と、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(2.47g、5.00mmol)と、3,7−ジブロモ−10−(4−ブチルフェニル)フェノキサジン(0.723g、1.53mmol)と、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(0.71g、1.75mmol)と、THF(190g)を加えた。この溶液に室温にて窒素を30分間吹き込んだ後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(5.6mg、7.9μmol)と、炭酸セシウム(10.4g、31.8mmol)を加え、窒素雰囲気下で、還流温度まで加熱した。この溶液に水(2.35g、130mmol)を2.35g/1時間の速さで滴下し、その後、反応混合物を2.0時間還流して芳香族ポリマーを得た。得られた芳香族ポリマーの分子量を実施例1と同様にして測定したところ、Mwは1,011,000g/mol、Mnは192,000g/molであった。
【0068】
実施例5
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(1.98g、3.74mmol)と、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(2.05g、3.74mmol)と、2−(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−7−ブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(2.02g、3.74mmol)と、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(0.92g、2.29mmol)と、THF(128g)を加える。この溶液に室温にて窒素を30分間吹き込んだ後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(3.9mg、5.6μmol)と、炭酸セシウム(7.31g、22.4mmol)を加え、窒素雰囲気下で、還流温度まで加熱する。この溶液に水(1.65g、91.5mmol)を1.65g/1時間の速さで滴下し、その後、反応混合物を1.5時間還流すると、実施例1と同様の構造単位を有する芳香族ポリマーを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法によれば、一層、分子量の高い芳香族ポリマーを製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム触媒、アルカリ金属炭酸塩、相間移動触媒、水及び脂肪族エーテル溶媒存在下、下記(A)及び/又は(B)の芳香族モノマーを重合する工程を含むことを特徴とする芳香族ポリマーの製造方法。
(A)ホウ素含有官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー及び反応性官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー
(B)反応性官能基を少なくとも1つ及びホウ素含有官能基を少なくとも1つ同一分子内に有する芳香族モノマー
【請求項2】
水の量が、ホウ素含有官能基1モルに対して1〜25モルの範囲である請求項1記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記相関移動触媒が、有機第4級アンモニウム塩である請求項1又は2記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項4】
アルカリ金属炭酸塩が炭酸セシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項5】
ホウ素含有官能基が、下記式で表わされる官能基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表わす。R5は炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
反応性官能基が、ハロゲン原子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の芳香族ポリマーの製造方法。
【請求項7】
脂肪族エーテル溶媒が、テトラヒドロフランであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の芳香族ポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2011−132360(P2011−132360A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292757(P2009−292757)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】