説明

芳香族モノマー−及び共役ポリマー−金属錯体

発光ダイオード(LED)デバイス用ポリマーを調製するのに有用なハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体を記述する。当該芳香族モノマー−金属錯体は共役を遮断する結合基を含むように設計され、それにより当該芳香族モノマーフラグメントと当該金属錯体フラグメントの間の電子非局在化を有利なように低減又は阻止する。共役の遮断は当該芳香族モノマー−金属錯体から形成されたポリマーにおける金属錯体のりん光発光特性を保つのに多くの場合望ましい。得られた共役エレクトロルミネセントポリマーは実質的に又は完全に当該ポリマー骨格の特性と無関係である正確に制御された金属錯体化及び電子特性を有している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族モノマー−金属錯体、当該モノマー−金属錯体から調製できる芳香族ポリマー−金属錯体及び当該ポリマー−金属錯体の膜を含有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスは種々の電子装置中に見られる。そのようなデバイスでは、有機活性層が2種の電気接触層の間に挟まれている。当該活性層は当該接触層の間に電位バイアスを印加すると光を発する。
【0003】
ペンダント金属錯体基を含有するポリマーは、特にアクティブマトリックス駆動のポリマーLEDディスプレイ類において発光用途に適したポリマーの部類を構成している。これらのポリマーは、例えば最初に金属と錯体化できうる配位子を含有しているモノマーを重合し、その後当該ポリマーと有機金属錯体化化合物を接触させて金属中心をポリマー結合配位子に挿入することで調製できる。例えば、Macromolecules,vol.35,No.19,2002においてPei等が種々のEu+3α,β−ジケトン類に直接配位したペンダントビピリジル基を有する共役ポリマーを記述している。
【0004】
同様にWO 02/31896,pp17から18にて、Periyasamy等は1又は2工程の合成経路いずれかにより調製するランタニド金属錯体ポリマーを記述している。1工程経路では、MLエミッターを金属−反応官能基性(X)を有するポリマーと反応させてペンダント−X−MLn−1基を有するポリマーを生成させる。2工程の経路では、ペンダントのヒドロキシエチル官能基のあるポリマーを初めにカルボン酸官能基を含有するビピリジル化合物と縮合してビピリジルエステル官能基性(X−L’)を含有するポリマーを形成し、それをその後MLと反応させてペンダントX−L’−MLn−1官能基性を伴うポリマーを形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら金属錯体エレクトロルミネセントポリマーの問題の1つは、ペンダント配位子と金属錯体化試薬との不完全な反応である。この非効率的なカップリングが金属−配位子錯体化の程度を制御するのを困難とするので最終ポリマーの性質の非予測性を生じることがある。従って、正確に制御した金属錯体化を伴った発光性ポリマーを調製することが有利に働くであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様では、ハロゲン化又はボロナート化した芳香族モノマーフラグメント及び金属錯体フラグメントを含んでいて以下の式で表されるハロゲン化又はボロナート化した芳香族モノマー−金属錯体化合物を提供して、必要に対応するが:
【0007】
【化1】


式中Lは二座配位子;MはIr、Pt、Rh又はOs;但しnは2のときMがIr、Rh又はOsで、nは1のときMがPtであるというのが条件であり;各Zは独立にO、S又はNH;YはCR又はNで、RはH又はC1〜20−アルキル;そしてRとRはそれぞれ別個に一価の置換基又はH、但し少なくともRとRの1つがハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマーフラグメント及び当該芳香族モノマーフラグメントと金属錯体フラグメントの間の共役を遮断する結合基を含有することが条件である。
【0008】
第二の態様では本発明は、a)芳香族フラグメントと金属錯体フラグメントを有している芳香族モノマー−金属錯体の構造単位、ここで、その構造単位は以下の式で表され:
【0009】
【化2】


式中Lは二座配位子;MはIr、Pt、Rh又はOs;但しnが2である場合MがIr、Rh又はOs、nが1である場合MがPtというのが条件であり;各Zは独立にO、S又はNH;YはCR又はNで、RはH又はC1〜20−アルキル;そしてR′とR′はそれぞれ別個に一価の置換基又はH、但し少なくともR′とR′の1つがポリマー骨格の部分である芳香族基及び当該芳香族基と金属錯体フラグメントの間の共役を遮断する結合基を含有することが条件である構造単位;及びb)ポリマーが当該ハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体の構造単位と少なくとも1つの芳香族コモノマーの構造単位で作られる重合骨格に沿って共役していることが特徴である少なくとも1つの芳香族コモノマーの構造単位を含む骨格を有する、エレクトロルミネセントポリマーである。
【0010】
第三の態様では、本発明は発光性ポリマーの膜又は発光性ポリマーを含有する混合体の膜を含んでいる電子デバイスで、該膜はアノードとカソードの間に挟みこまれており、該ポリマーはa)芳香族フラグメント及び金属錯体フラグメントを有するハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体の構造単位、その構造単位は以下の式で表され:
【0011】
【化3】


式中Lは二座配位子;MはIr、Pt、Rh又はOs;但しnが2である場合、MはIr、Rh又はOsであり、nが1である場合、MはPtであるというのが条件であり;各Zは独立にO、S又はNH;YはCR又はNで、RはH又はC1〜20−アルキル;及びRとRの少なくとも1つがポリマー骨格の部分である芳香族基及び当該芳香族基と金属錯体フラグメントの間の共役を遮断する結合基を含有することが条件であるとき、R′とR′はそれぞれ別個に一価の置換基又はHである構造単位、及びb)ポリマーは当該芳香族モノマー−金属錯体の構造単位とコモノマーの構造単位で作られたポリマー骨格に沿って共役していることが特徴である芳香族コモノマーの構造単位である骨格を有する。
【0012】
本発明は正確に制御された金属錯体化で共役した電気活性ポリマーを調製する簡易な方法を提供することで当該技術が必要とするものに対応する。更に、当該金属錯体基は電子及び/又は発光の特性を有しており、当該錯体及び当該共役ポリマー骨格の間に挿入された共役遮断結合基によって当該共役ポリマー骨格の性質への影響は最低限である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第一の態様は、ハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマーフラグメント及び金属錯体フラグメントを有するハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体を含んでいる組成物であり、以下の式で表され:
【0014】
【化4】


式中Lは二座配位子;MはIr、Pt、Rh又はOsで好ましくはIrで;MがPtであればnは1であり、MがIr、Rh又はOsであればnは2であり;各Zは個々にO、S又はNHで、好ましくはO;YはCR又はNで、ここでRはH又はC1〜20アルキル、好ましくはCR、より好ましくはCHである。少なくともR及びRの1つはハロゲン化又はボロナート化芳香族フラグメント及び当該芳香族フラグメントと金属錯体の間の共役を遮断する結合基を含有している。
【0015】
本明細書で使用する形容詞“ボロナート化”はボラン基、ボロン酸エステル基又はボロン酸基で置換された芳香族フラグメント又は化合物を称する。同じように、“ハロゲン化又はボロナート化”は本明細書では、a)少なくとも1個のハロゲン基、b)少なくとも1個のボロナート化基又はc)少なくとも1個のハロゲン及び少なくとも1個のボロナート化基のいずれかを含有する芳香族フラグメント又は化合物を称するのに用いられる。
【0016】
本発明のハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体は金属錯体フラグメント及び1個以上のハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマーフラグメントを含んでいるものと考えられ、以下で表されるが:
【0017】
【化5】


式中Arは芳香族基;Xはハロ原子又はボロナート基、好ましくは、各Xはハロゲン原子又はボロナート基のいずれかで、より好ましくは、各Xはクロロ又はブロモであり;m+oの合計は正の整数で、好ましくは1,2又は3;より好ましくは1又は2;及びp+qの合計は正の整数で、好ましくは1,2又は3;より好ましくは1又は2である。p(又はq)が0のとき、R(又はR)はHを含むいずれの置換体にもなりうる。
【0018】
好ましいハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体はイリジウム(III)アセチルアセトナトフラグメントを含有し−式中でMはIr、各ZはOであり、そしてYはCHであり、以下の非置換又は置換された化合物:2−フェニルピリジン類、2−ベンジルピリジン類、2−(2−チエニル)ピリジン類、2−(2−フラニル)ピリジン類、2,2’−ジピリジン類、2−ベンゾ[b]チエン−2−イル−ピリジン類、2−フェニルベンゾチアゾール類、2−(1−ナフタレニル)ベンゾチアゾール類、2−(1−アントラセニル)ベンゾチアゾール類、2−フェニルベンゾオキサゾール類、2−(1−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール類、2−(1−アントラセニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−ナフタレニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−アントラセニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−アントラセニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−チエニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−フラニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−チエニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−フラニル)ベンゾオキサゾール類、ベンゾ[h]キノリン類、2−フェニルキノリン類、2−(2−ナフタレニル)キノリン類、2−(2−アントラセニル)キノリン類、2−(1−ナフタレニル)キノリン類、2−(1−アントラセニル)キノリン類、2−フェニルメチルピリジン類、2−フェノキシピリジン類、2−フェニルチオピリジン類、フェニル−2−ピリジニルメタノン類、2−エテニルピリジン類、2−ベンゼンメタンイミン類、2−(ピロール−2−イル)ピリジン類、2−(イミダゾール−2−イル)−ピリジン類、2−フェニル−1H−イミダゾール類及び2−フェニルインドール類から好ましく選ばれる配位子と錯体化している。
【0019】
本明細書で使用する“芳香族化合物”には、他に記さなければ芳香族及び複素環式芳香族化合物の両方が含まれる。同様に、本明細書で使用する語句“アリール”は、他に記さなければアリール及びヘテロアリールの基又は化合物の両者が含まれる。当該ハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマーフラグメント(類)が調製できる、適した芳香族化合物及び構造単位の例は米国特許第6,169,163号(‘163特許)の欄12、行23〜53にあり、そして構造1〜5は欄11〜12の最後尾から欄13〜14の中央にあり、これらの教示は参考により本明細書に組み込まれている。
【0020】
少なくとも1個のハロゲン化又はボロナート化芳香族フラグメントが結合基を介して当該錯体フラグメントに結合していて;当該ハロゲン化又はボロナート化した芳香族モノマー−金属錯体が2個のハロゲン化又はボロナート化芳香族フラグメントを含有する場合、即ちR及びRの両方にハロゲン化又はボロナート化芳香族フラグメントが含まれれば、各芳香族フラグメントは結合基を介して当該金属錯体フラグメントに結合しているのが好ましい。更に、RとRの両方にハロゲン化又はボロナート化芳香族フラグメントが含まれると、それらの芳香族フラグメントの各々はハロゲン基1個のみ、又はボロナート基1個のみを含有するのが好ましい。当該語句“ビス(モノハロゲン化芳香族)モノマー−金属錯体”及び“ビス(モノボロナート化芳香族)モノマー−金属錯体”は本明細書では特にこれらの好ましい化合物を称するために使用される。
【0021】
当該結合基は共役を遮断する接続基又は原子で、それにより当該芳香族モノマーと当該金属錯体フラグメントの間の電子非局在化を妨げている。この当該フラグメント間の共役の遮断は当該芳香族モノマーフラグメントから形成される当該錯体と当該共役ポリマー骨格の間でも同様な遮断を生じる。共役の遮断はしばしば芳香族モノマー−金属錯体から形成されるポリマーにおける金属錯体のリン光発光の特性を保持するに望ましい。電子が当該共役ポリマーと当該錯体の間で非局在化すれば当該性質が不利に乱されることがありうる。
【0022】
当該結合基は二価の基を含有し、それは置換又は非置換された直鎖、分岐又はシクロヒドロカルビレン基又は二価のヘテロ原子或いはそれらの組合わせである。結合基の例には、単独又は組合わせで、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基とシクロヘキシル基、及び酸素原子や硫黄原子のようなヘテロ原子、Rが置換基であるSiR及びトリアリールアミン類を除くアミン基が含まれる。好ましい結合基にはメチレン基及びオキシメチレン基が含まれる。本明細書で使用する“オキシメチレン基”は−OCH−又はCHO−基を称する。
【0023】
当該錯体フラグメントが1個のハロゲン化又はボロナート化芳香族フラグメントのみに結合しているとすると、後者は1個のハロゲン原子又はボロナート基のみを含んでいてよく−その場合当該モノハロゲン化芳香族モノマー−金属錯体は末端封鎖基として適しているであろう−しかし少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のボロナート基或いは少なくとも1個のハロゲン原子及び1個のボロナート基、より好ましくは2個のハロゲン原子、最も好ましくは2個の臭素原子又は2個の塩素原子を含有するのが好ましい。
【0024】
結合基を介して当該金属錯体に結合するように変更できる二臭素化及びジボロナート化芳香族モノマーの具体的な例には、‘163特許の欄43〜49の表1〜4に示された化合物が含まれていて、その教示は参照で本明細書に組入れられている。当業者であれば、これらの教示からモノハロゲン化、モノボロナート化及びモノハロゲン化−モノボロナート化芳香族モノマーを作成するやり方は理解するであろう。
【0025】
(ジハロゲン化芳香族モノマー−金属錯体の一般的調製手順)
結合基を介して金属錯体に結合したジハロゲン化芳香族フラグメントを含有するハロゲン化芳香族モノマー−金属錯体は、金属錯体−反応性ジハロゲン化芳香族化合物(化合物A)をビス−金属錯体(化合物B)と結合させて調製できる。これらの前駆体は以下のように調製できる:
【0026】
(金属錯体−反応性ジハロゲン化芳香族化合物を調製するための図式)
【0027】
【化6】

【0028】
(ビス−金属錯体の調製用の図式)
【0029】
【化7】


式中Ar、Ar’及びAr”は芳香族部分であり、少なくともAr’及びAr”の1つはヘテロ芳香族であるという条件で同じであるか異なってもよい;Ar’X及びAr”Xの1つはアリールハロゲンで他の1つはアリールハロゲン又はアリールボロナートであり;R及びRはそれぞれ別個に置換基で、好ましくはC1〜20アルキル基又はアリール基、より好ましくはメチル、エチル又はフェニルであり;R’は独立にH、アルキル又はアリール、好ましくはH又はC1〜20アルキル基、より好ましくはHで;Gは結合又は二価基、好ましくはアルキレン又は1個以上のヘテロ原子を含有するアルキレン、より好ましくはアルキレン、最も好ましくはメチレンを含有し、そして各X’は独立にハロ、−OH又はO−C1〜20−アルキル、好ましくは各X’がブロモ又はクロロである。X’がハロである場合、ヒドロキシ又はアルコキシの追加は必要なく;X’が−OH又はO−C1〜20−アルキルである場合、ヒドロキシ又はアルコキシの追加が好ましい。
【0030】
Gがメチレンである場合、化合物A及びBは塩基の存在下で結合できて以下の一般構造Cを形成する。
【0031】
【化8】


強調表示したオキシメチレン基はジハロゲン化芳香族フラグメントを当該金属錯体フラグメントに結び付けて、それにより当該フラグメント間の共役を遮断する。上の説明では、当該フラグメント−CHOArXがRで、RはRである。
【0032】
ArXには好ましくは1,4−ジハロフェニル類、1,2−ジハロフェニル類、1,3−ジハロフェニル類、1,4−ジハロナフタレニル類、4,4’−ジハロビフェニリル類、2,6−ジハロナフタレニル類、2,5−ジハロフラニル類、2,5−ジハロチエニル類、5,5−ジハロ−2,2’ビチエニル類、9,10−ジハロアントラセニル類、4,7−ジハロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾリル類、N,N−ジ(4−ハロフェニル)アミノフェニル類、N,N−ジ(4−ハロフェニル)−p−メチルアミノフェニル類、3,6−ジハロ−N−置換カルバゾリル類、2,7−ジハロ−N−置換カルバゾリル類、3,6−ジハロ−ジベンゾシロール類、2,7−ジハロ−ジベンゾシロール類、N−置換−フェノチアジン−3,7−ジイル類、N−置換−フェノキサジン−3,7−ジイル類、トリアリールアミン−ジイル類、N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン−ジイル類、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン−ジイル類、アリールシラン−ジイル類、2,7−ジハロ−9,9−二置換フルオレニル類が含まれ、この中のハロはブロモ又はクロロである。ArXは同様に好ましくはこれらのフラグメントのジボロナートかモノハロ−モノボロナート類似体類である。一般的に、ArXはより好ましくはジハロ芳香族フラグメントである。当該複数詞(例えば、ジハロフェニル類)を使用するのは、これらのフラグメントはX基に加えて他の置換基が含まれてもよいことを表している。
【0033】
当該式HOArXの化合物には、直接的に芳香族環に結合しているOH基を有する化合物を含んでいることに加え、OH基と芳香環を結合する二価基を有している化合物も含まれると理解すべきである。OH基が直接的に芳香族環に結合している化合物は既知であるか(例えば、2,5−ジクロロフェノール)、又は例えばArXのニトロ化、還元、ジアゾ化そしてArXの加水分解により調製できる。この合成経路の詳細はWoo等の米国特許第5,708,130号の欄21、行41〜67から欄22、行1〜37にて記述しており、この教示は参考で本明細書に組み込んである。
【0034】
OHが二価基により芳香環から分離されているHOArXの作り方の事例は、ジハロ芳香族化合物とCO及びHClをAlClと圧力の存在下で反応させて相当するジハロ芳香族アルデヒドを生成させると、それをいずれかの適した手段で相当するヒドロキシメチルジハロ芳香族化合物に還元できる。
【0035】
HOArXは好ましくは2,5−ジブロモフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,7−ジハロ−9,9−二置換フルオレン類及び9,9−二置換2,7−フルオレニルジボロナート類で、当該フルオレンは示したように9,9−位置が1個か2個のヒドロキシフェニレン基で置換されている:
【0036】
【化9】


式中R”はH又は置換基で、好ましくはH、アルキル又はアリール、より好ましくはH又はC〜C10アルキルである。R”がHの場合、得られるジハロゲン化又はジボロナート化芳香族モノマー−金属錯体は1モノマー当たり以下に表すように2個の金属錯体を含有してもよい:
【0037】
【化10】

【0038】
構造Fは酸の存在下、2,7−ジハロゲン化9−フルオレンとHOPh又は1種以上の反応物質がHOPhを含有するR”OPhの混合物を反応させて調製できる。2,7−ジハロ−9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの調製は‘163特許の欄6の行51〜67から欄7の行1〜26により詳しく説明されており、この教示は参考で当明細書に組み込まれている。
【0039】
以下の化学構造I〜VIIIは、結合基を介してイリジウム錯体に結合している二臭素化芳香族フラグメントを含有している臭素化芳香族モノマー−金属錯体の具体的例である。
【0040】
【化11】


【化12】


【化13】

【0041】
(ビス(モノハロゲン化芳香族)モノマー−金属錯体の調製用の一般的手順)
【0042】
ビス(モノハロゲン化芳香族)モノマー−金属錯体はビス(モノハロアリール)ジオンとビス金属錯体Bを結合することで調製できる。ビス(モノハロアリール)ジオンは以下のようにして調製できる:
【0043】
【化14】


式中ではG’の少なくとも1つは非共役した二価の基を含有し;好ましくは、各G’は独立に非共役二価基を;好ましくはアルキレン、或いは1個以上のヘテロ原子を含有するアルキレン、より好ましくはアルキレン又はオキシアルキレン、最も好ましくはメチレン又はオキシメチレンを含有する。
【0044】
当該ビス(モノハロゲン化芳香族)モノマー−金属錯体は、ビス(モノハロアリール)ジエステルとビス金属錯体Bを結合させても調製できる。ビス(モノハロアリール)ジエステルEは示すようにマロン酸とヒドロキシル化芳香族ハロゲン化物でエステル化して調製でき:
【0045】
【化15】


式中でR’は以前に定義したもので、Gは結合又は二価基、好ましくは−CH−基又は結合;より好ましくは結合を表す。
【0046】
以下の化学構造はビス(モノハロゲン化芳香族)モノマー−金属錯体の具体的な例を表している:
【0047】
【化16】


【化17】


当該構造IX〜XIのそれぞれにおいて、共役はメチレン基で遮断されている。構造XIIでは、共役はオキシメチレン基で遮断されている。IX〜XIの場合、R及びRはそれぞれ−CHArX;XIIではR及びRはそれぞれ−OCHArXである。
【0048】
好ましくとはいえないが、例えば当該一臭素化芳香族フラグメントの1つのみを構造XIIIで表したように結合基を介して当該金属錯体フラグメントに結合するような部分的に共役を断絶することも可能である。
【0049】
【化18】

【0050】
ハロゲン化又はボロナート化した芳香族モノマーフラグメントのハロ原子又はボロナート化した基の数が2個を越えると、得られるポリマーは通常分岐又は架橋或いは両方を含有するであろう。構造XIVは三臭素化芳香族モノマー−金属錯体の実例である。
【0051】
【化19】

【0052】
構造XVは一臭素化芳香族モノマー−金属錯体の実例である。
【0053】
【化20】

【0054】
(金属錯体を含有している共役発光ポリマー)
【0055】
当該ハロゲン化又はボロナート化した芳香族モノマー−金属錯体は金属−錯体化共役発光ポリマー用の前駆体で、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであることができ、多くの手法のいずれかで調製できる。例えば、当該ポリマーは‘163特許の欄41の行50〜67から欄42の行1〜24で例示されているSuzukiカップリング反応で調製できる。
【0056】
今回の場合、当該Suzukiカップリング反応は触媒、好ましくはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のようなPd/トリフェニルホスフィン触媒の存在下で、a)ハロゲン化芳香族モノマー−金属錯体とボロナート化芳香族化合物;又はb)ボロナート化芳香族モノマー−金属錯体とハロゲン化芳香族化合物;又はc)ハロゲン化及びボロナート化芳香族モノマー−金属錯体とハロゲン化及びボロナート化芳香族化合物;又はd)ハロゲン化芳香族モノマー−金属錯体とボロナート化芳香族モノマー−金属錯体とのいずれかの反応で実施できる。この説明から1種より多い反応性芳香族モノマー−金属錯体及び1種より多いコモノマーが使用できることは理解されるであろう。
【0057】
好ましくは、当該Suzukiカップリング反応は少なくとも1つの、好ましくは1種のジハロゲン化又はビス(モノハロゲン化)芳香族モノマー−金属錯体と少なくとも1種、好ましくは1種より多い二臭素化芳香族化合物を反応して実施される。得られるポリマーの構造単位を構成する1種以上のコモノマー類の芳香族基は、当該ハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体に関連する芳香族基と同一又は異なってもよいが、異なるのが好ましい。当該ポリマー骨格の部分になるコモノマー類の芳香族基が当該ポリマー骨格の部分になる芳香族モノマー−金属錯体の芳香族基と同じであると、ペンダント、組み込み又は末端封鎖された基を伴う骨格を有している余り好ましからざるホモポリマーが形成される。当該芳香族基が異なる場合、ペンダント、組み込み又は末端封鎖された基を伴う骨格を有する好ましいコポリマー(又はターポリマーなど)が形成される。
【0058】
上で示唆したように、反応混合物中に種々のハロゲン化及びボロナート化したモノマーを含むことにより2種より多いモノマー類の構造単位を有するポリマーを調製することが可能であり、場合により好ましい。末端封鎖の金属錯体を伴う共役発光ポリマーを調製することは同様に望ましいであろう。そのようなポリマーはモノハロゲン化又はモノボロナート化芳香族モノマー−金属錯体から調製できる。
【0059】
重合化は1種以上のジハロゲン化芳香族モノマー−金属錯体と1種以上のジハロゲン化芳香族化合物をニッケル塩の存在下に‘163特許の欄11の行9〜34で記述されているように結合することで実施でき、その記述は参考で本明細書に組み込んである。
【0060】
当該ハロゲン化又はボロナート化或いはハロゲン化とボロナート化芳香族モノマー−金属錯体と結合するのに用いることができる芳香族コモノマー類は殆ど限りないが、代表的な一覧には、1,4−ジXベンゼン類、1,3−ジXベンゼン類、1,2−ジXベンゼン類、4,4’−ジXビフェニル類、1,4−ジXナフタレン類、2,6−ジXナフタレン類、2,5−ジXフラン類、2,5−ジXチオフェン類、5,5−ジX−2,2’−ビチオフェン類、9,10−ジXアントラセン類、4,7−ジX−2,1,3−ベンゾチアジアゾール類、N,N−ジ(4−Xフェニル)アニリン類、N,N−ジ(4−Xフェニル)−p−トリルアミン類を含むジXトリアリールアミン類;及びN−ジXフェニル−N−フェニルアニリン類、3,8−ジX−N−置換カルバゾール類、4,7−ジX−N−置換カルバゾール類、3,8−ジX−ジベンゾシロール類、4,7−ジX−ジベンゾシロール類、N−置換−3,7−ジXフェノチアジン類、N−置換−3,7−ジXフェノキサジン類、3,8−ジXジベンゾシロール類、4,7−ジXジベンゾシロール類、ジX−N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン類、ジX−N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン類、ジXアリールシラン類、及び9,9−置換基が結合して環構造をなすフルオレン類を含む2,7−ジX−9,9−二置換フルオレン類、及びそれらの組合せが含まれるが、式中の各Xは独立にハロ又はボロナート、好ましくはブロモ又はクロロ又はボロナート、より好ましくはブロモ又はボロナートである。
【0061】
特に適したジボロナート化芳香族基は9,9−二置換2,7−フルオレニルジボロナートである。前に述べたように、複数詞の使用(例えば、ジハロフェニル類)は、これらの化合物にはハロ又はボロナート基に加えて他の置換基が含まれてもよいことを示している。
【0062】
得られる当該ポリマーは当該芳香族モノマー−金属錯体の構造単位及び当該コモノマーの構造単位を含有している。本明細書で使用する用語“構造単位”は当該モノマーの重合化後にポリマー骨格を構成するモノマーの残基を称するために使用する。結合基を介して金属錯体に結合している芳香族基の構造単位は以下の構造で表される:
【0063】
【化21】


式中L、n、M、Z及びYは前に定義してあり、少なくともR’及びR’の1つは当該ポリマー骨格の部分である芳香族基、好ましくはフェニル基又は9,9−二置換フルオレン−2,7−ジイル;そして当該芳香族基と当該金属錯体フラグメントの間の共役を遮断する結合基Gを含有している。R’及びR’の他の一方は当該ポリマー骨格の部分である芳香族基を含有するか、又はHを含む一価の置換基であってもよい。R’及びR’の1つだけが当該ポリマーの骨格に組み込まれたフェニレン部分のような芳香族基を含有する場合、以下の構造単位が形成される:
【0064】
【化22】

【0065】
R’及びR’の両方が当該ポリマーの骨格に組み込まれたフェニル部分のような芳香族基を含有する場合、以下の構造単位が形成される:
【0066】
【化23】

【0067】
同様に図で示すように、1,4−位置を介して当該ポリマー骨格に組み込まれているベンゼンコモノマーの構造単位は1,4−フェニレン基で;2,7−位置を介して当該ポリマー骨格に組み込まれている9,9−二置換フルオレンコモノマーの構造単位は9,9−二置換フルオレン−2,7−ジイル基である:
【0068】
【化24】

【0069】
従って、上で表示したコモノマー類に相当する構造単位は1,4−フェニレン類、1,3−フェニレン類、1,2−フェニレン類、4,4’−ビフェニレン類、ナフタレン−1,4−ジイル類、ナフタレン−2,6−ジイル、フラン−2,5−ジイル類、チオフェン−2,5−ジイル類、2,2’−ビチオフェン−5,5−ジイル類、アントラセン類−9,10−ジイル類、2,1,3−ベンゾチアジアゾール類−4,7−ジイル類、N−置換カルバゾール−3,8−ジイル類、N−置換カルバゾール−4,7−ジイル類、ジベンゾシロール−3,8−ジイル類、ジベンゾシロール−4,7−ジイル類、N−置換−フェノチアジン−3,7−ジイル類、N−置換−フェノキサジン類−3,7−ジイル類、トリフェニルアミン−4,4’−ジイル類、ジフェニル−p−トリルアミン−4,4’−ジイル類及びN,N−ジフェニルアニリン−3,5−ジイル類を含むトリアリールアミン−ジイル類、N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン−ジイル類、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン−ジイル類、アリールシラン−ジイル類及び9,9−二置換フルオレン類−2,7−ジイル類である。しかしながら、当該ポリマーはそれが作られる方法では制限されないと理解されるべきである。
【0070】
当該金属錯体は当該ポリマー骨格に吊り下がり(pendant)であるか、内に組み込まれるか又は末端封鎖していることができる。当該金属錯体は、当該ポリマーが構造I〜VIIIで表されるような結合基を介して当該金属錯体に結合するジハロゲン化芳香族フラグメントから調製されると当該共役した骨格に吊り下がり、構造IX〜XIIで表されるような結合基を介すると当該共役骨格に組み込まれ、そして構造XVで表されるような結合基を介すると当該共役骨格を末端封鎖する。
【0071】
得られたポリマーは、当該芳香族モノマー−金属錯体の構造単位の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%及び最も好ましくは100%が当該ポリマー骨格に吊り下がり、組み込み及び/又は末端封鎖の形の金属錯体を含有しているので、正確に制御できる金属錯体を伴う共役骨格を有している。極端な場合、構造I〜VIIIのいずれかから調製されるホモポリマーは当該ポリマー骨格中の全てのフェニレン基にペンダント基を有するであろう。他の極端な場合、例えば構造XVで表した芳香族化合物−金属錯体を単一ハロゲン又はボロナート基を含有している共役ポリマーの末端封鎖するのに使用する場合、当該共役コポリマーはただ1つの金属錯体基を含有できる。構造I〜XII及びXVで表したような好ましいハロゲン化又はボロナート化、或いはハロゲン化とボロナート化芳香族モノマー−金属錯体に関しては、当該金属錯体は当該配位子と当該ポリマー骨格の間に直接的非局在化がないので当該共役骨格から隔離され、該隔離が当該金属錯体の発光の特性を保存する。
【0072】
好ましくは、ハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体の構造単位と当該コモノマーの構造単位の比率は、好ましくは少なくとも0.01:99.99、より好ましくは少なくとも0.1:99.9で、最も好ましくは少なくとも1:99であり;そして好ましくは20:80より多くなく、より好ましくは10:90より多くはない。
【0073】
当該ポリマーをビス(モノハロゲン化芳香族)モノマー−金属錯体を用いて調製するとき、共役は当該金属錯体と当該骨格の間ばかりでなく、当該骨格それ自体内で遮断される。そこで、用語“共役ポリマー”及び“共役ポリマー骨格” は、当該ポリマー骨格が少なくとも2つの隣接構造単位、好ましくは少なくとも5つの隣接構造単位、より好ましくは少なくとも10の隣接構造単位全体で非局在化した電子を有するポリマー骨格を大まかに言う場合に使用される。
【0074】
本発明のポリマーは好ましくは重量平均分子量Mwが少なくとも5000ダルトン、より好ましくは少なくとも10,000ダルトン、より好ましくは少なくとも50,000ダルトン、そして最も好ましくは少なくとも100,000ダルトン;そして好ましくは2,000,000ダルトン未満を有する。Mwはゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、ポリスチレン標準品に対して測定する。
【0075】
本発明のポリマーは1つ以上の他のポリマーと組合せて混合物を作ることができる。適切な混合するポリマーにはポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリスチレン類、ポリエステル類、ポリイミド類、ポリビニレン類、ポリカーボナート類、ポリシロール類、ポリ(ジベンゾシロール類)、ポリビニルエーテル類とエステル類、フルオロポリマー類、ポリカルバゾール類、ポリアリーレンビニレン類、ポリアリーレン類、ポリチオフェン類、ポリフラン類、ポリピロール類、ポリピリジン類、ポリフルオレン類及びそれらの組合せのホモ又はコポリマー(ターポリマー又はそれ以上を含めて)が含まれる。
【0076】
本発明のポリマー又は混合物は充分な量の溶媒と組合せて、例えばインクとして有用な溶液を作る。溶媒の量は当該溶媒それ自身及び用途によって変化するが、一般的には当該発光ポリマー、当該任意添加物又は修飾剤及び当該溶媒に基づき少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、そして最も好ましくは少なくとも95重量%の濃度で使用される。
【0077】
当該ポリマー及び修飾剤に適した溶媒の例にはベンゼン;C1〜12−アルキルベンゼン類、キシレン類、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン及びジエチルベンゼンを含んでいるモノ−、ジ−及びトリアルキルベンゼン類、;テトラヒドロフランと2,3−ベンゾフランを含んでいるフラン類;1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン;クメン;デカリン;ジュレン;クロロホルム;リモネン;ジオキサン;アニソールやメチルアニソール類を含んでいるアルコキシベンゼン類;安息香酸メチルを含んでいる安息香酸アルキル;イソプロピルビフェニルを含んでいるビフェニル類;シクロヘキシルピロリジノンを含んでいるピロリジノン類;ジメチルイミダゾリノンを含んでいるイミダゾール類及びフッ化溶媒或いはそれらの組合せが含まれる。より好ましい溶媒にはC1〜8−アルキルベンゼン類、シクロヘキシルベンゼン、キシレン類、メシチレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸メチル、イソプロピルビフェニル及びアニソールとそれらの組合せが含まれる
【0078】
典型的な用途において、正孔輸送材料をその上に堆積したインジウム−スズ−酸化物(ITO)ガラスのような基板上に当該インキ処方を堆積することができる。その後当該溶媒を蒸発させると、その上に当該インクが当該発光ポリマーの薄層を形成する。当該膜は有機発光ダイオード(OLED)デバイスにて活性層として使用され、それは自己発光フラットパネルディスプレイのようなディスプレイを作成するのに使用される。当該膜は、光源、光電池及び電界効果トランジスターデバイス類を含む他の電子デバイスでも有用である。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は例示目的のみであり、本発明の範囲を制限しようとするものではない。
【0080】
(実施例1)ジブロモベンゼンモノマー−イリジウム錯体(構造III)の調製
A.1−(2,5−ジブロモ)フェノキシ−2,4−ペンタジオン前駆体の調製
アセトン(150mL)中にある2,5−ジブロモフェノール(12.6g、50mmol)、臭化酢酸エチル(8.0g、48mmol)及び炭酸カリウム(20g、150mmol)を窒素下で24時間還流した。室温に冷却後、当該反応混合物をろ過し、アセトンで洗浄した。当該溶媒を除去後、当該残留物をエタノールから再結晶すると(2,5−ジブロモフェノキシ)酢酸エチルが得られた。
次の工程では、250mLのジメトキシエタンに溶解した無水アセトン(12.3g、0.213mol)の溶液に窒素下、室温で水素化ナトリウム(4.56g、0.19mol)を加えた。当該混合物を室温で15分間攪拌し、その後(2,5−ジブロモフェノキシ)酢酸エチル(12.0g、0.0335mol)を一度に加えた。当該反応混合物を窒素下で80℃にて16時間攪拌した。冷却後、当該混合物のpHを2NのHClで7未満に調整した。当該生成物をクロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で除去し、当該生成物をエタノール(少量のトルエンを含有している)で再結晶すると1−(2,5−ジブロモ)フェノキシ−2,4−ペンタジオン(4.6g、収率38.8%、HPLCでの純度99.9%)が得られた。
B.ビス−イリジウム錯体の調製
重炭酸ナトリウム(2M水溶液、125mL,0.25mol)及びPd(0)(PPh(0.33g、0.3mol)をベンゾチオフェン−2−ボロン酸(17.8g、0.1mol)、2−ブロモピリジン(23.7g、0.15mol)及びAliquat(商標)336相間移動触媒(5g)のトルエン(400mL)溶液に加えた。当該反応混合物を100℃で18時間攪拌した。室温に冷却後、当該有機相を洗浄し,そして当該溶媒を減圧下で除去した。当該残留物をメタノール上に注いで当該生成物を沈殿させ、それをトルエンで再結晶するとHPLCで99.4%純度の2−ベンゾ[b]チエン−2−イル−ピリジンが6.2g(収率76%)で得られた。
塩化イリジウム(III)水和物(4.5g、15.1mmol、Ir%=55.11)及び2−ベンゾ[b]チエン−2−イル−ピリジン(5.38g、25.5mmol)を2−エトキシエタノール(45mL)と水(15mL)の混液中に分散させた。当該混合物を窒素下で20時間還流した。当該反応混合物を室温まで冷却し、ろ過した。当該固体を1NのHCl水溶液及びメタノールで洗浄し、その後減圧下、室温で一夜乾燥すると、淡褐色固体としてビス−イリジウム錯体が7.56g(収率91%)得られた。
C.ジブロモベンゼンモノマー−イリジウム錯体の調製
調製したビス−イリジウム錯体(5.5g、4.24mmol)、1−(2,5−ジブロモ)フェノキシ−2,4−ペンタンジオン(2.83g、8.48mmol)及び無水炭酸ナトリウム(7.0g)を2−エトキシエタノール(350mL)中に分散した。当該混合物を室温にて15分間窒素で脱ガスし、その後3時間加熱して還流した。冷却後、当該生成物はメタノール(300mL)で沈殿させた。ろ過し、一夜40℃で減圧下乾燥すると粗生成物(7.1g)が橙色固体として得られた。当該粗生成物を塩化メチレンの最小量に再溶解し、塩化メチレンで溶出するシリカゲルカラムで精製すると、褐色の固体が4.7g生じた。当該固体を更に塩化メチレンとヘキサン(6:4)の混液で溶出するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーで精製した。当該最終製品は橙色粉末3.2g(収率39.3%)として得られた。HPLC分析では純度99.5%であった。
【0081】
(実施例2)−金属錯体を含有しているポリマーの調製
攪拌しているトルエン(50mL)中の9,9−ジ(1−ヘキシル)フルオレン−2,7−ジボロン酸エチレングリコールエステル(1.9268g、4.08mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(1−ヘキシル)フルオレン(1.7150g、3.48mmol)、N,N−ジフェニル−1,3−ジブロモアニリン(0.1624g、0.40mmol)、実施例1のC項で作ったジブロモベンゼンモノマー−イリジウム錯体(0.160g、0.12mmol)、Aliquat(登録商標)336相間移動触媒(0.75g)の混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.6mg)及び2M炭酸ナトリウム水溶液(11mL)を窒素下で加えた。当該反応混合物を窒素下101℃で20時間攪拌し、そこにブロモベンゼン(トルエン10mL中に0.15g)を同じ反応条件で3時間当該ポリマーを封鎖するために添加した。その後、フェニルボロン酸(0.4g)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10mLのトルエン中に3mg溶解)を加えて同じ反応条件下で一夜、当該ポリマーを二重に封鎖するために加えた。当該反応混合物を約50℃まで冷却し、当該有機溶媒を温水で3回洗浄し、その後攪拌しながら2Lのメタノール中に注いだ。
当該黄色のポリマー繊維をろ過して集め、メタノールで洗浄し、一夜50℃で減圧乾燥した。当該ポリマーをトルエン(100mL)中に再溶解し、当該溶液をセライト及びシリカゲルを充填したカラムを通過させ、トルエンで溶出した。当該集めた溶出液を約100mLまで濃縮し、その後攪拌している2Lのメタノールに注入した。当該ポリマーを繊維として集め、一夜50℃で減圧乾燥した。当該ポリマーをトルエン(100mL)中に再溶解し、2Lのメタノール中で再沈殿させた。ろ過し、50℃で一夜の減圧乾燥した後に、黄色繊維2.3gが得られた。M=330,000、多分散度(M/M)=2.66。
【0082】
(実施例3)−金属錯体含有ポリマーの発光デバイス
ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT)の薄い膜をITO(インジウム 酸化スズ)被覆ガラス基板の上に80nmの厚さでスピンコートした。その後、実施例2で作った金属錯体含有ポリマーの膜をPEDOT膜上にキシレンの溶液から80nmの厚さでスピンコートした。乾燥後、LiFの薄層(3nm)を熱蒸着により当該ポリマー層上に堆積させ、その後カソードカルシウム(厚さ10nm)を堆積させた。その上にアルミニウム層を蒸着でカルシウムカソードを覆うように塗布した。得られたデバイスにバイアス(ITOを正に接続)を印加すると、赤色発光が得られた。当該発光の輝度は約9Vで200cd/mに達し、ルミネセンス効率は2cd/Aであった。当該デバイスは約12V、ルミネセンス効率1.8cd/Aにて輝度1000cd/mに達した。
図1は当該デバイスの電流と光出力の特性を表す。図2は輝度200cd/mにおいて記録されたエレクトロルミネセンス(EL)のスペクトルを表し、これは1931 CIE色座標の(x=0.673、y=0.319)に相当する。
当該ELスペクトルは実施例3の金属錯体含有ポリマーと同じ基本構造を有するイリジウム錯体低分子材料、ビス(2−(2’ベンゾ[b]チエニル)ピリジナト−N,C3’)イリジウム(アセチルアセトナート)から作成したOLEDデバイスのスペクトルに類似している。当該スペクトル類似性はデバイスの発光が当該ポリマー中の金属錯体フラグメント類のエレクトロホスホレセンスから由来することを示す。当該フルオレンに基づくポリマーの骨格から青色領域の発光が無いのは当該骨格から金属錯体フラグメントへの完全に近いエネルギー伝達も示している。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は発光ダイオードデバイスの電流及び光出力の特性図を表している。
【図2】図2は200cd/mにおける発光ダイオードデバイスが記録したエレクトロルミネセントスペクトルを表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化又はボロナート化した芳香族モノマーフラグメント及び金属錯体フラグメントを含み、以下の式で表されるハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマー−金属錯体化合物:
【化1】


であって、式中Lは二座配位子;MはIr、Pt、Rh又はOs;但しnは2であるときMはIr、Rh又はOsであり、nは1であるときMはPtであるという条件があり;各Zは独立にO、S又はNH;YはCR又はNで、そこではRはH又はC1〜20−アルキル;及びRとRはそれぞれ独立に一価の置換基又はH、但し少なくともRとRの1つがハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマーフラグメント及び当該芳香族モノマーフラグメントと金属錯体フラグメントの間の共役を遮断する結合基を含有することが条件である、上記化合物。
【請求項2】
MがIr、ZがO;YがCH;nが2及びLが置換又は非置換の2−フェニルピリジン類、2−ベンジルピリジン類、2−(2−チエニル)ピリジン類、2−(2−フラニル)ピリジン類、2,2’−ジピリジン類、2−ベンゾ[b]チエン−2−イル−ピリジン類、2−フェニルベンゾチアゾール類、2−(1−ナフタレニル)ベンゾチアゾール類、2−(1−アントラセニル)ベンゾチアゾール類、2−フェニルベンゾオキサゾール類、2−(1−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール類、2−(1−アントラセニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−ナフタレニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−アントラセニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−アントラセニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−チエニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−フラニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−チエニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−フラニル)ベンゾオキサゾール類、ベンゾ[h]キノリン類、2−フェニルキノリン類、2−(2−ナフタレニル)キノリン類、2−(2−アントラセニル)キノリン類、2−(1−ナフタレニル)キノリン類、2−(1−アントラセニル)キノリン類、2−フェニルメチルピリジン類、2−フェノキシピリジン類、2−フェニルチオピリジン類、フェニル−2−ピリジニルメタノン類、2−エテニルピリジン類、2−ベンゼンメタンイミン類、2−(ピロール−2−イル)ピリジン類、2−(イミダゾール−2−イル)−ピリジン類、2−フェニル−1H−イミダゾール類及び2−フェニルインドール類からなる群より選ばれる、請求項1の化合物。
【請求項3】
Lは2−フェニルピリジン類、2−ベンジルピリジン類及び2−ベンゾ[b]チエン−2−イル−ピリジン類からなる群より選択し;Rは−G−ArX及びRが−G−ArX、メチル、エチル又はフェニルで、式中のGは−OCH−、−CHO−、−CH−又は−O−で;oは1又は2及びmは0又は1であり;各Arは独立に芳香族基で、各Xは独立にCl、Br又はボロナート基である、請求項1又は2のいずれかの化合物。
【請求項4】
が−G−ArX及びRがメチル、エチル又はフェニルで、式中各XはCl又はBrで、Arはフェニル又はフルオレニル基を含有する、請求項3の化合物。
【請求項5】
及びRがそれぞれ−OCH−ArX又は−CH−ArXで;XはCl又はBr,そしてArはフェニル又はフルオレニル基を含有している、請求項3の化合物。
【請求項6】
a)構造単位が以下の式で表され:
【化2】


式中Lは二座配位子;MはIr、Pt、Rh又はOsで;但しnが2であるときMがIr、Rh又はOsで、nが1であるときMがPtであるという条件であり;各Zは独立にO、S又はNH;YはCR又はNで、式中RはH又はC1〜20−アルキル;及びRとRはそれぞれ独立に一価の置換基又はH、但し少なくともR’とR’の1つが当該ポリマー骨格の部分である芳香族基及び当該芳香族基と当該金属錯体フラグメントの間の共役を遮断する結合基を含有することが条件である、芳香族フラグメント及び金属錯体フラグメントを有している芳香族モノマー−金属錯体の構造単位、及びb)ポリマーが、当該芳香族モノマー−金属錯体の構造単位及び少なくとも1つの芳香族コモノマーの構造単位で作られるポリマー骨格に沿って共役していることを特徴としている少なくとも1つの芳香族コモノマーの構造単位、を含む骨格を有しているエレクトロルミネセントポリマー。
【請求項7】
MがIr、ZがO、YがCH;nが2及び、Lが置換又は非置換の2−フェニルピリジン類、2−ベンジルピリジン類、2−(2−チエニル)ピリジン類、2−(2−フラニル)ピリジン類、2,2’−ジピリジン類、2−ベンゾ[b]チエン−2−イル−ピリジン類、2−フェニルベンゾチアゾール類、2−(1−ナフタレニル)ベンゾチアゾール類、2−(1−アントラセニル)ベンゾチアゾール類、2−フェニルベンゾオキサゾール類、2−(1−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール類、2−(1−アントラセニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−ナフタレニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−アントラセニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−アントラセニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−チエニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−フラニル)ベンゾチアゾール類、2−(2−チエニル)ベンゾオキサゾール類、2−(2−フラニル)ベンゾオキサゾール類、ベンゾ[h]キノリン類、2−フェニルキノリン類、2−(2−ナフタレニル)キノリン類、2−(2−アントラセニル)キノリン類、2−(1−ナフタレニル)キノリン類、2−(1−アントラセニル)キノリン類、2−フェニルメチルピリジン類、2−フェノキシピリジン類、2−フェニルチオピリジン類、フェニル−2−ピリジニルメタノン類、2−エテニルピリジン類、2−ベンゼンメタンイミン類、2−(ピロール−2−イル)ピリジン類、2−(イミダゾール−2−イル)−ピリジン類、2−フェニル−1H−イミダゾール類及び2−フェニルインドール類からなる群より選択されており;そして当該芳香族モノマー−金属錯体の構造単位の少なくとも90%が当該ポリマー骨格に吊り下がり、内部に組み込まれ、及び/又は末端封鎖をしている金属錯体を含有する、請求項6のポリマー。
【請求項8】
少なくとも1つの芳香族コモノマーの構造単位は、1,4−フェニレン類、1,3−フェニレン類、1,2−フェニレン類、4,4’−ビフェニレン類、ナフタレン−1,4−ジイル類、ナフタレン−2,6−ジイル、フラン−2,5−ジイル類、チオフェン−2,5−ジイル類、2,2’−ビチオフェン−5,5−ジイル類、アントラセン類−9,10−ジイル類、2,1,3−ベンゾチアジアゾール類−4,7−ジイル類、N−置換カルバゾール−3,6−ジイル類、N−置換カルバゾール−2,7−ジイル類、ジベンゾシロール−3,6−ジイル類、ジベンゾシロール−2,7−ジイル類、N−置換−フェノチアジン−3,7−ジイル類、N−置換−フェノキサジン類−3,7−ジイル類、トリアリールアミン−ジイル類、N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン−ジイル類、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン−ジイル類、アリールシラン−ジイル類及び9,9−二置換フルオレン類−2,7−ジイル類からなる群より選択される、請求項6又は7のいずれかのポリマー。
【請求項9】
当該骨格が、フェニレン類、9,9−二置換フルオレニル−2,7−ジイル類、ビス(フェニル−イリジウム錯体類)、フェニル−イリジウム錯体類、N−置換カルバゾール−3,8−ジイル類、N−置換カルバゾール−4,7−ジイル類、N,N−ジフェニルアニリン−3,5−ジイル類、トリフェニルアミン−4,4’−ジイル類、ジフェニル−p−トリルアミン−4,4’−ジイル類及びN−置換−フェノキサジン類−3,7−ジイル類からなる群の2つ以上より選択する構造単位を含有する、請求項8のポリマー。
【請求項10】
請求項6〜9の何れかのエレクトロルミネセントポリマー、及び当該ポリマー又は少なくとも1つの他のポリマー又は両方のための溶媒の混合物を含む、組成物。
【請求項11】
当該溶媒は、ベンゼン;モノアルキルベンゼン類、ジアルキルベンゼン類、トリアルキルベンゼン類、フラン類、クメン、デカリン、ジュレン、クロロホルム、リモネン、ジオキサン類、アルコキシベンゼン類、安息香酸アルキル類、ビフェニル類、ピロリジノン類、イミダゾール類及びフッ化溶媒類及びそれらの組合わせからなる群より選択する、請求項14の組成物。
【請求項12】
発光ポリマー又は当該発光ポリマーを含有する混合物の膜を含む、電子デバイスであって、該膜はアノードとカソードの間に挟まれており、該ポリマーはa)芳香族フラグメント及び金属錯体フラグメントを有する芳香族モノマー−金属錯体の構造単位、ここで、その構造単位は以下の式で表され:
【化3】


式中Lは二座配位子;MはIr、Pt、Rh又はOs;但しnが2であるときMがIr、Rh又はOsであり、nが1であればMがPtであるという条件があり;各Zは独立にO、S又はNH;YはCR又はNで、式中RはH又はC1〜20−アルキル;そしてそこでのRとRはそれぞれ独立に一価の置換基又はH、但しRとRの少なくとも1つがハロゲン化又はボロナート化芳香族モノマーフラグメント及び当該芳香族モノマーフラグメントと金属錯体フラグメントの間の共役を遮断する結合基を含有するという条件がある構造単位であり、及びb)ポリマーがハロゲン化又はボロナート化した芳香族モノマー−金属錯体の構造単位及び当該コモノマーの構造単位で作られたポリマー骨格に沿って共役していることを特徴とした芳香族コモノマーの構造単位を有している骨格を持つ、上記電子デバイス。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−531798(P2007−531798A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520216(P2006−520216)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021658
【国際公開番号】WO2005/010081
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】