説明

芳香族化合物のデュアルゾーンアルキル化方法

芳香族基質とアルキル剤を連続アルキル化ゾーンで接触させてアルキル芳香族化合物を得るプロセスを含む、アルキル化剤を用いる芳香族基質の触媒アルキル化方法を開示する。第1の触媒はUZM−8ゼオライトを含み、第2の触媒はβゼオライトを含む。この方法は、プロピレンを用いてベンゼンをアルキル化してクメンを生成するのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルキル化によってモノアルキル化芳香族化合物を生成する方法を開示する。より具体的には、異なる触媒を用いるデュアルアルキル化ゾーンを使用してクメンおよびエチルベンゼンを生成する選択性の高い的アルキル化方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
〜Cのオレフィンを用いる芳香族化合物のアルキル化およびポリアルキル芳香族化合物のトランスアルキル化は、モノアルキル化芳香族化合物を生成するための2つの一般的な反応である。クメン(イソプロピルベンゼン)を生成するために工業的に実施されるこれらの2つの反応例としては、プロピレンを用いるベンゼンのアルキル化、およびベンゼンとジイソプロピルベンゼン(DIPB)によるトランスアルキル化がある。アルキル化反応によって、クメンおよび、DIPBやトリイソプロピルベンゼン(TIPB)等の共通の副生成物が形成される。DIPB、TIPB、およびより高分子量のポリイソプロピルベンゼンの一部はベンゼンにより容易にトランスアルキル化され、クメンが生成される。1つのプロセス内でアルキル化とトランスアルキル化を組み合わせることで、このようにクメン生成量を最大限にすることができる。このような組み合わせにおいては、一方がアルキル化のためで他方がトランスアルキル化のための2つの反応ゾーンを設けるか、あるいは、アルキル化とトランスアルキル化の両方が起こる1つの反応ゾーンを設けることができる。
【0003】
モノアルキル化芳香族化合物を生成するためのアルキル化およびトランスアルキル化反応における重要な操作変数は、アルキル基当たりのアリール基のモル比である。このモル比の分子は、特定の期間に反応ゾーンを通過するアリール基のモル数である。アリール基のモル数は、化合物中のアリール基の存在位置にかかわらず、全アリール基の合計値である。たとえば、クメンの生成においては、1モルのベンゼン、1モルのクメン、および1モルのDIPBからは、それぞれ1モルずつのアリール基によりアリール基の合計値が得られる。このモル比の分母は、所望のモノアルキル化芳香族化合物のアルキル基の炭素原子数と同数の炭素原子数を有し同じ特定の期間に反応ゾーンを通過するアルキル基のモル数である。アルキル基のモル数は、化合物中にアルキル基またはアルキル基が存在することとは関係なく、所望のモノアルキル化芳香族化合物のアルキル基の炭素原子数と同数の炭素原子数を有する全アルキル基およびアルケニル基の合計値であるが、パラフィン化合物は含まれていない。クメン製造においては、プロピル基のモル数は、化合物中にプロピル基またはプロペニル基が存在することとは関係なく、全プロピル基およびプロペニル基の合計値であるが、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、およびより高分子量のパラフィン等のパラフィン化合物はプロピル基のモル数の計算からは除外される。たとえば、1モルのプロピレンおよび1モルのクメンからは、それぞれ1モルずつのプロピル基によりプロピル基の合計値が得られる。しかし、1モルのDIPBからは、2モルのプロピル基が得られ、1モルのTIBPからは、3モルのプロピル基が得られる。ヘキシルベンゼンおよびノニルベンゼンからは、0モルのプロピル基が得られる。モノアルキル化芳香族化合物を生成するためのアルキル化反応に関連する他の操作変数は、アルキル化剤当たりの芳香族基質のモル比であり、クメンの生成においては、このモル比の分子はベンゼンのモル数であり、分母はプロピレンのモル数である。
【0004】
ゼオライトを含有する多くの触媒が提案されてきており、芳香族化合物のアルキル化およびトランスアルキル化に使用されてきている。反応がアルキル化かトランスアルキル化かにかかわらず、ゼオライト触媒が、初期にその特定の機能を発揮する能力を示すだけでなく、長期間にわたり十分にその特定の機能を発揮する能力を有することは、きわめて重要なことである。特定の炭化水素の反応環境中で、特定の触媒がその所期の機能をどの程度十分に発揮するかを測定するために、当技術分野で用いる分析用語は、活性、選択性、および安定性である。さらに、本明細書で検討するために、これらの用語を所定の供給原料に対して便宜的に以下のように定義する。(1)「活性」は、特定の厳格度で炭化水素反応物を生成物に転換する触媒の能力の程度であり、厳格度とは、用いられた条件、すなわち温度、圧力、接触時間、反応物の濃度、およびパラフィンのような希釈剤の存在である。(2)「選択性」は、供給または転換された反応物の量に対する所望の生成物または得られた生成物の量である。さらに、(3)「安定性」は、活性および選択性のパラメータの時間にともなう変化率を示す。当然、変化率が小さいほど、より安定した触媒であることを意味する。
【0005】
クメンを生成する方法において、たとえば、活性は、一般的に特定の厳格度で起こるプロピレンの転換量を意味し、通常アルキル化反応容器からの流出物のオレフィン含有量によって測定され、選択性は特定の活性度または厳格度で求められるプロピレンの消費量に対するクメンの収量を意味し、さらに、安定性は、通常適切な時間間隔を置いた後の触媒床中の(発熱反応による)最高温度の位置で測定される活性の時間にともなう変化率に等しい。
【0006】
しかし、連続アルキル化プロセスが行われてオレフィンが定常的に転換されると、活性の変化率が転換温度の変化率に対応するように反応中の転換温度を調整することによって、厳格度は絶えず調整される。なお、発熱位置の変化は、通常、活性の安定性を示すと考えられている。あるいは、オレフィンの破過(breakthrough)が起こる時点まで反応温度を変化させずに発熱位置が触媒床の中を順に進行して変化するように、更なる触媒を用いて活性の不安定性を補償してもよい。破過の時点では、操作温度を上げて活性の損失を補うか、あるいは、触媒を再生して失った活性を回復させなければならない。安定性は、通常、クメン収率によって測定される収率の時間による変化率に等しい。
【0007】
したがって、当アルキル化技術分野において研究者たちが直面する主な課題は、活性の安定性および収率の安定性を有する選択性のある触媒システムの開発である。芳香族化合物のアルキル化のために提案および/または使用されてきたゼオライトは、β、UZM−8、ならびに、Y、ZSM−5、PSH−3、MCM−22、MCM−36、MCM−49、およびMCM−56を含む他のゼオライトを含む。炭化水素製造工業において、アルキル基当たりのアリール基のモル比をより小さくし、原料オレフィンをより効率的に利用することが求められていることに応じて、アルキル化芳香族化合物の生成方法の改良が探求されている。
【発明の概要】
【0008】
連続アルキル化ゾーン中で芳香族基質とアルキル化剤を接触させてアルキル化芳香族化合物を得るプロセスを含む、アルキル化剤を用いる芳香族基質の触媒アルキル化方法を開示する。第1の触媒は、UZM−8ゼオライトを含み、第2の触媒は、βゼオライトを含む。このプロセスは、逐次構成においてこのゼオライトの組み合わせを用いると、従来技術に対し、選択性、活性の安定性、および選択性の安定性が驚くほど改善されるという発見に基づいている。ここで開示されるプロセスは、水分濃度が高い場合だけでなく、アルキル基当たりのアリール基のモル比が小さい場合およびアルキル剤の空間速度が大きい場合を含む厳しい条件での操作に特に適している。
【0009】
したがって、一態様においては、ここで開示されるプロセスは、アルキル化剤を用いる芳香族供給原料のアルキル化を対象とする。芳香族供給原料およびアルキル化剤を、第1のアルキル化ゾーン中で第1のアルキル化条件でUZM−8を含む第1の触媒と接触させて、第1の流出物を得る。第1の流出物を、第2のアルキル化ゾーン中で第2のアルキル化条件でβゼオライトを含む触媒と接触させて、アルキル芳香族化合物を含む第2の流出物を得る。より具体的には、芳香族基質は、ベンゼンであってもよく、オレフィンはエチレンまたはプロピレンであってもよく、さらに、アルキル芳香族化合物は、エチルベンゼンまたはクメンであってよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで開示される方法は、アルキル化剤を用いるアルキル化基質のアルカリ化に一般に応用できると期待される。本明細書に開示される方法は、より具体的には、原料芳香族化合物を原料オレフィンでアルキル化することによるアルキル芳香族化合物の生成に適用できる。ベンゼンは、重要かつ主要な原料芳香族化合物であるが、アルキル置換ベンゼン、縮合環系、およびそれらのアルキル化誘導体のような原料芳香族化合物を一般に用いてもよい。このような原料芳香族化合物としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン等;キシレン、メシチレン、メチルエチルベンゼン等;ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、およびテトラレンが挙げられる。原料芳香族化合物の置換基として提示される任意のアルキル基は、一般に、基当たり1〜8個の炭素原子、好適には、基当たり1〜4個の炭素原子を含む。2種以上の原料芳香族化合物を用いてもよい。原料芳香族化合物は、1つまたは2つ以上の芳香族原料流により、アルキル化触媒床に導入することができる。各芳香族原料流は、1種または2種以上の原料芳香族化合物を含んでもよい。芳香族原料流は、原料芳香族化合物に加えて、これらに限定されないが、原料芳香族化合物の炭素原子数と同数か、それより1個多いかまたは1個少ない炭素原子数を有する飽和および不飽和環式炭化水素を含む非芳香族化合物を含んでもよい。たとえば、ベンゼンを含む芳香族原料流は、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンテン、シクロヘキセン、またはシクロヘプテン、さらにはこれらのうちのいずれかのメチル化物、またはこれらの混合物も含んでもよい。各芳香族原料流中の各原料芳香族化合物の濃度は、0.01重量%から100重量%の範囲にある。ベンゼン、トルエン、キシレン、および/または他の原料芳香族化合物の供給源は、ナフサ改質装置、芳香族抽出装置、ならびにパラキシレンおよび他の芳香族化合物を生成するための石油化学コンビナートからの製品流を含む。
【0011】
2〜6個の炭素原子を含む原料オレフィンは、ここで開示されるプロセスを考慮した主なアルキル化剤である。このような原料オレフィンとしては、例えば、C〜Cのオレフィン、すなわちエチレン、プロピレン、ブテン−1、cis−ブテン−2、trans−ブテン−2、およびイソブテンが挙げられる。しかし、ここで開示されるプロセスにおいては、2〜20個の炭素原子を有する原料オレフィンを有効に用いることができる。2種以上の原料オレフィンを用いてもよい。原料オレフィンは、1つまたは2つ以上のオレフィン原料流で、アルキル化触媒床に導入することができる。各オレフィン原料流は、1種または2種以上のオレフィンを含んでもよい。オレフィン原料流は、原料オレフィンに加えて、オレフィンと同数の炭素原子数を有する、パラフィンのような非オレフィンを含んでもよい。たとえば、プロプレンを含むオレフィン原料流は、プロパンを含んでもよく、エチレンを含むオレフィン原料流は、エタンを含んでもよい。各オレフィン原料流中の各原料オレフォンの濃度は、0.01重量%から100重量%の範囲にある。オレフィンの混合物を含むオレフィン原料流の供給源は、製油所のFCCプロパン/プロピレン原料流、ナフサクラッキング装置の排ガス、ガス工場の排ガス、および他の製油所からの流を含む。
【0012】
当技術分野において、芳香族触媒アルキル化プロセスの基本構成は、公知である。原料芳香族化合物および原料オレフィンは、予熱され、一般に1基から4基までの一連の反応器を含むアルキル化ゾーンに供給される。適切な冷却手段を反応器の間に設けて、各反応器における発熱反応の正味の発熱を補償してもよい。各反応器の上流に、または反応器に適正な手段を設けて、更なる原料芳香族化合物、原料オレフィン、または他の原料流(たとえば、反応器からの流出物、あるいは1種または2種以上のポリアルキルベンゼンを含む原料流)を、アルキル化ゾーン内の任意の反応器に供給してもよい。各アルキル化反応器は、1種または2種以上のアルキル化触媒床を含むことができる。当技術分野において、適切な反応器として機能することができる容器または筺体は、公知である。一般的なアルキル化ゾーンの構成は、4個の触媒床を有する1基の反応器、触媒床をそれぞれ2個ずつ有する2基の反応器、ならびに4個の触媒床を有する反応器および2個の触媒床を有するもう1基の反応器を含む。反応器の数は、一般に8基より少なく、所定の反応器中の触媒床の数は、6個より少ない。
【0013】
第1のアルキル化ゾーンおよび第2のアルキル化ゾーンは、それぞれ第1のアルキル化触媒および第2のアルキル化触媒を含む。各アルキル化ゾーンは、通常、別々の反応器を含む。たとえば、第1のアルキル化ゾーンは、第1の反応器を含み、第2のアルキル化ゾーンは、2基の後続の反応器を含む。しかし、単一の容器または筺体の中の別々の触媒床をそれぞれアルキル化ゾーンとすることが可能である。各アルキル化ゾーンは、適切な冷却手段または原料流を導入する手段を各反応器の間に設ける2基以上の反応器を含んでもよい。区画化されたアルキル化ゾーンはまた、ここで開示されるプロセスのどちらの触媒複合体とも異なる組成物を有する触媒複合体を含む1つまたは2つ以上の反応ゾーンによって分離してもよい。
【0014】
両方のアルキル化ゾーンにおける第1の触媒および第2の触媒の全質量のうち、第1の触媒は、好適には、10%から90%、好適には、50%から80%、第2の触媒は、10%から60%、好適には、20%から50%を占める。
【0015】
触媒は、連続的な触媒の再生をともなう固定床システムまたは移動床システムに含まれ、それによって連続的に回収、再生されて、反応器に戻される。これらの手段は、次のような当業者にとって公知の触媒再生システムと関連している。たとえば、(1)温度を上げることによって操作厳格度を維持し、最終的に、触媒の再生および再活性化のために装置を停止させる、固定床反応器を含む半再生装置、(2)触媒が失活するときに、個々の固定床反応器がマニホールド配列によって連続的に隔離されて、他の反応器が依然として操業している間に、隔離された反応器中の触媒が再生されて再活性化されるスイング反応装置(swing-reactor unit)、(3)移動床反応器から回収された触媒が、ここで述べるように再活性化されて反応器に戻る連続再生設備、または、(4)同じゾーンにおける半再生設備と連続再生設備の複合型システム。ここで開示されるプロセスの好適な態様は、固定床半再生システムである。固定床半再生システムの一態様において、固定床UZM−8アルキル化ゾーンは、既存の固定床半再生βアルキル化プロセス装置に付加されて、βアルキル化ゾーンの上流の原料流を処理して、半再生システムにおいて得られる収率、活性安定性、および/または収率の安定性を高める。
【0016】
本開示の適用可能な最も広く実施されている炭化水素の転換プロセスは、ベンゼンをエチレンで触媒アルキル化させてエチルベンゼンを生成するプロセス、ベンゼンをプロピレンでアルキル化させてクメンを生成するプロセス、およびベンゼンをブテンでアルキル化させてブチルベンゼンを生成するプロセスである。本明細書における考察は、主にクメンの触媒反応システムへの適用に関するものであるが、エチルベンゼンの触媒反応システムについて述べることもある。この考察によって特許請求の範囲に記載の開示の範囲を限定する意図はない。
【0017】
ここで開示されるプロセスによる第1の連続アルキル化ゾーン中で用いられる触媒は、UZM−8と称されるアルミノケイ酸塩ゼオライト類および置換アルミノケイ酸塩ゼオライト類の1種または2種以上のメンバーを含む。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,756,030号(B1)に、UZM−8およびその生成が記述されているため、ここでこれらの触媒について詳細に述べる必要はない。簡単にいうと、UZM−8ゼオライトは、1種または2種以上の有機アンモニウム種のみが構造指向剤(structure dictating agent)として用いられる無アルカリ媒体中で生成される。この場合、微孔性結晶ゼオライト(UZM−8)は、実験式:
p+Al1−xSi
で表される合成された状態の形態の無水の組成を有する。ここで、Rは、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、第4級アンモニウムイオン、二第4級アンモニウムイオン、プロトン化アルカノールアミン、および4級化アルカノールアンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機アンモニウム陽イオンである。好適な有機アンモニウム陽イオンは、非環式のものか、または一置換基として環式の基を含まないものである。これらの中で、置換基として少なくとも2のメチル基を含むものが、特に好ましい。好適な陽イオンの例としては、DEDMA、ETMA、HMおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。Rの(Al+E)に対する比は、rで表され、0.05から5まで変化する。Rの加重平均価数であるpの値は、1から2まで変化する。Siの(Al+E)に対する比は、yで表され、6.5から35まで変化する。Eは、四面体配位元素であり、骨格中に存在し、ガリウム、鉄、クロム、インジウム、およびホウ素からなる群から選ばれる。Eのモル比率はxで表され、0から0.5までの値を有する。一方、zはOの(Al+E)に対するモル比であり、式:
z=(r・p+3+4・y)/2
により与えられる。
【0018】
有機アンモニウム陽イオンとアルカリ金属陽イオンおよび/またはアルカリ土類金属陽イオンの両方を構造指向剤として用いて、UZM−8ゼオライトを生成することができる。上記の無アルカリ媒体の場合と同じ有機アンモニウム陽イオンをここで用いることができる。アルカリ金属陽イオンまたはアルカリ土類金属陽イオンは、0.05M/Siより少ない量で存在する場合に、UZM−8の結晶化の速度を上げることが観察されている。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むシステムの場合は、微孔性結晶ゼオライト(UZM−8)は、実験式:
n+p+Al1−xSi
で表される合成された状態の無水の組成を有する。式中、Mは、少なくとも1種の交換可能な陽イオンを表し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる。陽イオンMの具体的な例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な陽イオンRとしては、DEDMA、ETMA、HMおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。Mの(Al+E)に対する比であるmの値は、0.01から2まで変化する。Mの加重平均価数であるnの値は、1から2まで変化する。Rの(Al+E)に対する比は、rで表され、0.05から5まで変化する。Rの加重平均価数であるpの値は、1から2まで変化する。Siの(Al+E)に対する比は、yで表され、6.5から35まで変化する。Eは、四面体配位の元素であり、骨格中に存在し、ガリウム、鉄、クロム、インジウム、およびホウ素からなる群から選ばれる。Eのモル比率はxで表され、0から0.5までの値を有する。一方、zは、Oの(Al+E)に対するモル比であり、式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
によって与えられる。式中、Mがただ1種の金属であるときは、Mの加重平均価数は、その1種の金属の価数である。すなわち、+1または+2である。しかし、2種以上の金属Mが存在する場合、Mの総価数は、式:
【0019】
【数1】

【0020】
によって与えられ、Mの加重平均価数nは、式:
【0021】
【数2】

【0022】
によって与えられる。
【0023】
同様に、ただ1種の有機陽イオンRが存在する場合、Rの加重平均価数は、陽イオンR単独の価数である。すなわち、+1または+2である。2種以上の陽イオンRが存在する場合、Rの総価数は、式:
【0024】
【数3】

【0025】
で与えられ、Rの加重平均価数pは、式:
【0026】
【数4】

【0027】
で与えられる。
【0028】
ここで開示されるプロセスの第1のアルキル化ゾーンで用いられる微孔性結晶ゼオライトは、Rの反応源、アルミニウム、シリコン、ならびに必要ならMおよびEを合わせることによって調製された反応混合物の水熱結晶化によって生成される。アルミニウムの供給源としては、アルミニウムアルコキシド、沈降アルミナ、アルミニウム金属、アルミン酸ナトリウム、有機アンモニウムアルミン酸塩、アルミニウム塩、およびアルミナゾルが挙げられるが、これらに限定されない。アルミニウムアルコキシドの具体的な例としては、アルミニウムオルト−sec−ブトキシドおよびアルミニウムオルトイソプロポキシドが挙げられるが、これらに限定されない。シリカの供給源としては、テトラエチルオルトケイ酸塩、コロイド状シリカ、沈降シリカ、アルカリケイ酸塩、および有機アンモニウムケイ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。アルミノケイ酸有機アンモニウム塩溶液からなる特別な試薬も、Al、Si、およびRの同時供給源として機能することができる。元素Eの供給源としては、ホウ酸アルカリ塩、ホウ酸、沈降オキシ水酸化ガリウム、硫酸ガリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸クロム、および塩化インジウムが挙げられるが、これらに限定されない。金属Mの供給源としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のそれぞれのハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩および水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。Rは、有機アンモニウム陽イオンまたはアミンとして導入してもよい。Rが第4級アンモニウム陽イオンまたは4級化アルカノールアンモニウム陽イオンである場合、その供給源としては、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、およびフッ化物が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な例としては、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMA)、水酸化エチルトリメチルアンモニウム(ETMA)、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサメトニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、塩化DEDMA、塩化テトラメチルアンモニウム、および塩化コリンが挙げられるが、これらに限定されない。Rは、後に加水分解して有機アンモニウム陽イオンを形成するアミン、ジアミン、アルカノールアミンとして導入してもよい。特定の例としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリエチルアミン、およびトリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。Rの好適な供給源としては、ETMAOH、DEDMAOH、および二水酸化ヘキサメトニウム(HM(OH))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
所望の成分の反応源を含む反応混合物は、式:
aM2/nO :bR2/pO:1−cAl:cE:dSiO:eH
によって、酸化物のモル比で表すことができる。式中、aは、0から25まで変化し、bは、1.5から80まで変化し、cは、0から1.0まで変化し、dは、10から100まで変化し、eは、100から15000まで変化する。アルコキシドを用いる場合、蒸留または蒸発手順を含めてアルコールの加水分解生成物を除去することが好ましい。反応混合物を、自然圧力下の密封された反応容器中で、85℃から225℃(185〜437°F)、好適には125℃から150℃まで(257〜302°F)の温度で、1〜28日間、好適には4〜14日間反応させる。結晶化の完了後、固体生成物を、濾過または遠心分離のような手段によって不均一混合物から分離し、次いで、脱イオン水で洗浄し、さらに、100℃(212°F)まで環境温度で空気乾燥する。
【0030】
上述の方法によって得られるUZM−8アルミノケイ酸塩ゼオライトは、少なくとも以下の表1に記載の面間隔dおよび相対強度を有するX線回折パターンによって特徴付けられる。
【0031】
【表1】

【0032】
UZM−8の組成は、少なくとも600℃(1112°F)(且つ、通常は少なくとも700℃(1292°F))まで安定している。典型的な焼成UZM−8試料と関連する特有の回折線は、以下の表2に示されている。UZM−8の合成された状態の形態は、有機陽イオンで拡大され、積層構造であることを示している。
【0033】
【表2】

【0034】
その独特な性質の一因となっているUZM−8合成の一面から見ると、それが均質溶液から合成することができるということである。化学的に、可溶アルミノケイ酸塩の先駆物質は、煮沸中に凝縮して、広大な外表面積および結晶の細孔中に短い拡散経路を有する小さな結晶を形成する。このことが、この物質の吸着力と触媒活性の両方に影響を与えている。
【0035】
合成された状態のUZM−8は、細孔中にいくらかの電荷平衡陽イオンを含むものである。アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む反応混合物から合成する場合、これらのいくらかの陽イオンは、他の陽イオンと交換できる陽イオンであってもよい。有機アンモニウム陽イオンの場合は、制御条件下で加熱することにより除去することができる。UZM−8を無アルカリ系において生成する場合、有機アンモニウム陽イオンは、制御された焼成によって最もよく除去され、イオン交換手順を介在せずに酸型のゼオライトを生成する。制御焼成条件は、以下で述べる複合触媒の焼成条件を含み、望ましくはゼオライトが結合剤と合わせた後に制御された焼成を行うと考えられる。一方、イオン交換によって、有機アンモニウムの一部を除去することができる。特別なイオン交換の場合、アンモニア雰囲気中での有機アンモニウム型のUZM−8の焼成によって、アンモニウム型のUZM−8を生成できる。
【0036】
ここで開示されるプロセスの第1のアルキル化ゾーンで用いられる触媒は、好適には、焼成UZM−8を含む。合成された状態のUZM−8の焼成は、X線回折パターンにおけるような変化をもたらす。ここで開示されるプロセスにおいて用いられる触媒中で用いられるUZM−8ゼオライトは、好適には、0.1重量%より少ない、より好適には0.05重量%より少ない、さらに好適には0.02重量%より少ない量のアルカリ金属およびアルカリ金属土類を含む。
【0037】
ここで開示されるプロセスの第2の連続アルキル化ゾーンで用いられる触媒は、当業者に周知であるβゼオライトを含む。適切なβゼオライトとしては、天然の3種の結晶多形の混合物、その3種の結晶多形のいずれかひとつ、またはその3種の結晶多形の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。適切なβゼオライトとしては、Hイオンが少なくとも部分的に含有金属陽イオンを置換した天然のゼオライト、ならびに、いくらかの量のアルカリ金属陽イオンまたはアルカリ金属陽イオン、あるいは他の金属の陽イオンがイオン交換によって導入されているβゼオライトが挙げられる。βゼオライトの種々の改質も、本開示の目的に好適である。適切な改質βゼオライトとしては、蒸気処理およびアンモニウムイオン処理によって改質されたβゼオライト、ならびに、ホウ素、ガリウム、または鉄によるアルミニウムの同形置換によって改質されたβゼオライトを用いて、Hイオンが少なくとも部分的に含有金属陽イオンを置換したβゼオライトが挙げられるが、これらに限定されない。本開示に従って用いられる適切なゼオライトとしては、改変された生成方法、たとえば、水分、二酸化ケイ素の供給源、フッ化物イオンの供給源、テトラエチルアンモニウム陽イオンの供給源、および必要なら3価の酸化物の供給源を含む反応混合物の形成を含む生成方法、によって合成されたゼオライトが挙げられるが、これらに限定されない。本開示に従ってアルキル化で用いられるβゼオライトの1種が、米国特許第5,723,710号に開示されており、その教示内容を参照によって本明細書に組み込む。この好適なゼオライトは、表面改質βゼオライトであり、テンプレートとなる天然のβゼオライトの酸洗浄の結果得られる。米国特許第4,891,458号、第5,081,323号、および第5,522,984号も、参照により本明細書に組み込む。
【0038】
ここで開示されるプロセスで用いられる場合、連続アルキル化ゾーンの一方または両方で好適に用いられるゼオライトは、触媒粒子を手軽に形成するため、ゼオライトが5〜100質量%、結合剤が0〜95質量の割合で結合剤と混合され、ゼオライトが複合体の10〜90質量%を占めるものが好ましい。結合剤は、好適には、多孔性で5〜800m/gの表面積を有し、炭化水素転換プロセスで利用される条件に対して比較的耐熱性がある。結合剤の例としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、マグネシア、ボリア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、クロミア−アルミナ、アルミナ−ボリア、シリカ−ジルコニア等、シリカ、シリカゲル、および粘土鉱物があるが、これらに限定されない。好適な結合剤は、非晶シリカ、ならびに、γ−、η−、およびθ−アルミナを含むアルミナであり、γ−、およびη−アルミナが特に好適である。
【0039】
連続アルキル化ゾーンの一方または両方で用いられるゼオライトは、結合剤を用いて、または用いずに、ピル、ペレット、押出成形品、球体等のような種々の形状に形成することができる。好適な形状は、押出成形品および球体である。押出成形品は従来の手段によって調製され、その手段では、金属成分を添加する前後のいずれかでゼオライトを結合剤および適切な解膠剤と混合して、直接焼成に耐えられるだけの完全性を有する押出成形品が形成できるような正確な含水率を有する均質な生地または濃厚なペーストを形成する。次いで、生地は、金型を通して押出され、押出成形品になる。押出成形品は、多数の異なる形状をとることが可能であり、円筒型、クローバー型、ダンベル型、ならびに対称および非対称の多葉型が挙げられるが、これらに限定されない。押出成形品は、さらに、当技術分野において公知のいかなる手段によっても、球体のような任意の所望の形状に成形することができ、このことも、本開示の範囲内である。
【0040】
球体は、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第2,620,314号に記載の周知の油滴方法によって調製できる。この方法では、ゼオライトの混合物、ならびに、たとえばアルミナゾルおよびゲル化剤を、高温を維持した油浴中に滴下する。混合物の液滴は、固まってヒドロゲル球体を形成するまで油浴中に維持される。次いで、球体は、油浴から連続的に回収されて、その物理的特性をさらに高めるために、典型的には、油剤およびアンモニア性溶剤中で特定の熟成処理が行われる。熟成しゲル化した粒子は、次いで、洗浄され、50〜200℃(122〜392°F)の比較的低温で乾燥されて、450〜700℃(842〜1292°F)で1〜20時間焼成の工程が行われる。この処理によって、ヒドロゲルが対応するアルミナ基質へ転換される。
【0041】
触媒複合体は、100℃から320℃(212〜608°F)までの温度で、2時間から24時間またはより長時間乾燥され、通常は、空気雰囲気中、400℃から650℃(752〜1202°F)までの温度で1時間から20時間焼成される。空気中の焼成の前に、触媒複合体を窒素中で焼成の温度範囲に加熱して、その温度範囲で触媒複合体を1時間から10時間保持してもよい。
【0042】
ここで開示されるプロセスの第1の連続アルキル化ゾーンのための触媒複合体中で用いられる結合剤は、好適には、UZM−8より少ない量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含み、より好適には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をほとんど含まないか、または全く含まない。したがって、結合剤が触媒複合体全体のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量を効果的に減らすため、第1の連続アルキル化ゾーンのための触媒複合体のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量は、触媒複合体の形成において用いられるUZM−8のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量よりも少ない。
【0043】
第1のアルキル化ゾーンで用いられる触媒は、上述のUZM−8ゼオライトだけでなく上述のβゼオライトを含んでもよいが、好適には、UZM−8ゼオライトをβゼオライトよりも多く含む。他方、第2のアルキル化ゾーンで用いられる触媒は、βゼオライトだけでなくUZM−8ゼオライトを含んでもよいが、好適には、βゼオライトをUZM−8ゼオライトよりも多く含む。いずれかの触媒が、2種以上のゼオライトを含むとき、この混合触媒は、触媒粒子を形成する前に異なるゼオライト成分を物理的に混合することによって、または、1種のゼオライトを含む触媒粒子をもう1種のゼオライトを含む触媒粒子と物理的に混合することによって、生成される。混合ゼオライトを生成する手段の前者の例では、通常は、結合剤とともにこれら2種のゼオライトを一緒に混ぜて(co-mull)押出しできる物質を形成して、次いで、両方のゼオライトを含む粒子を押出す。
【0044】
ここで開示されるプロセスにおいて、第1のアルキル化触媒は、好適には、第2のアルキル化触媒に比べてオレフィンがより高濃度のとき、またはオレフィンの毎時重量空間速度がより大きいときのいずれか、あるいは両方に該当するときに作用する位置にある。したがって、原料オレフィンは、好適には、第1のアルキル化ゾーンに導入されるか、または、原料オレフィンが第1および第2のアルキル化ゾーンの両方に導入される場合に、第2のアルキル化ゾーンよりも第1のアルキル化ゾーンへより多く導入される。第1のアルキル化ゾーンは、好適には、炭化水素の流れに関して、第2のアルキル化ゾーンの上流に位置する。いかなる特定の理論にも制限されないが、オレフィンの濃度が比較的高いとき、UZM−8ゼオライトは、所望のモノアルキル化芳香族化合物の生成に特に選択的であると考えられる。
【0045】
第1および第2のアルキル化ゾーンは、好適には、連続して配置される。第1のアルキル化ゾーンの流出物の少なくとも一部分が、第2のアルキル化ゾーンに移動する。一態様においては、第2のアルキル化ゾーンの流出物は、モノアルキル化芳香族化合物を回収するための生成物分離施設に移動する。このような生成物分離施設は、一般に、第2の流出物からの分別物を回収するための1または2以上の分別ゾーンを含む。たとえば、クメンの生成においては、生成物分離施設は、一般に、未反応のベンゼンをアルキル化ゾーンに再循環させるために回収するベンゼン分別塔、より重いポリアルキルベンゼンから生成物のクメンを回収するためのクメン分別塔、他のより重い成分からDIPBおよびTIPBを分離するための任意のポリアルキルベンゼン分別塔を含む。生成物分離施設は、第2のゾーンの流出物中の未反応のプロピレン、プロパン、またはC以下の軽質パラフィンの濃度が分離に十分なほど高いならば、脱プロパン装置を含んでもよい。生成物分離施設は、このように、他の分別物とともにモノアルキル化芳香族化合物を含む分別物を生成し、さらに、生成物分離施設から回収されたこれらの他の分別物のうちの少なくとも1種の一部分またはすべては、第1のアルキル化ゾーン、第2のアルキル化ゾーン、または両方のゾーンに再循環させることができる。クメンの生成においては、たとえば、再循環される回収された分別物は、ベンゼン、ポリイソプロピルベンゼン、またはその両方を含む。本明細書中で別に言及のない限り、「部分」という用語は、プロセス流について述べるとき、流れのアリコート部分か、または、アリコートが由来する全体の流れとは異なる組成を有する流れの異なる分別物のいずれかを表す。流れのアリコート部分は、その元となる流れと本質的に同じ組成を有する流れの一部分である。
【0046】
一態様においては、2つのアルキル化ゾーンは、連続して配置され、原料芳香族化合物および原料オレフィンは、UZM−8触媒を含む第1のアルキル化ゾーンに供給される。βゼオライトを含む第2のアルキル化ゾーンのアルキル化流出物のアリコート部分は、UZM−8触媒を含む第1のアルキル化ゾーンに再循環される。少なくとも理論上は、第2のアルキル化ゾーンの流出物のこのアリコート部分は、経済的考察によってのみ制限される割合で再循環することができる。第2のゾーンの流出物は、流れを下って生成物分離施設に送られるアリコート部分を除いて、どのような量でも再循環に無制限に利用することができる。第1のアルキル化ゾーンの流出物中の任意の原料芳香族化合物または原料オレフィンは、第2のアルキル化ゾーンに供給される。更なる原料芳香族化合物および/または原料オレフィンも、第1のアルキル化ゾーンの下流地点で第2のアルキル化ゾーンに供給してもよいが、更なる原料オレフィンは、第2のアルキル化ゾーンに供給しないことが好ましい。
【0047】
他の一態様においては、2つのアルキル化ゾーンは、連続して配置され、生成物分離施設中のアルキルベンゼン塔は、底流を生成し、この底流が、UZM−8触媒を含む第1のアルキル化ゾーンに再循環される。アルキルベンゼン塔の底流は、比較的低濃度のアルキルベンゼン(クメン等)、および比較的高濃度のポリアルキルベンゼン(DIPBおよびTIPB等)を含む。βゼオライトを含む第2のアルキル化ゾーンの流出物のアリコート部分も、第1のアルキル化ゾーンに再循環することができる。
【0048】
他の一態様においては、オレフィン原料流は、芳香族原料流および第1のアルキル化ゾーンの流出物の冷却されたアリコート部分と混合される。この混合流は、第1のアルキル化ゾーンに入って、UZM−8ゼオライトを含む触媒と接触する。第1のアルキル化ゾーンの流出物は、2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、β触媒を含む第2のアルキル化ゾーンに移動する。第1のアルキル化ゾーンの流出物流の他方のアリコート部分は、ボイラーの供給水と間接的に熱交換をして蒸気を生成することによって冷却され、次いで、混合されて、第1のアルキル化ゾーンに供給される混合流を形成する。
【0049】
他の一態様においては、2基のアルキル化反応器は、連続して配置され、それぞれ2つのUZM−8ゼオライト触媒床を含み、この2つの触媒床も、連続して配置される。原料芳香族化合物は、第1のアルキル化反応器の第1の触媒床に供給され、原料オレフィンは、各触媒床に供給される。第1のアルキル化反応器の流出物は、熱交換器中で冷却されて、第2のアルキル化反応器に流れる。第2のアルキル化反応器の流出物は、2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、β触媒を含む下流のアルキル化反応器に流れる。他方のアリコート部分は、熱交換器中で冷却されて、さらに2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、第1のアルキル化反応器に流れ、他方のアリコート部分は、βゼオライト触媒を含む第2のアルキル化ゾーンに流れる。
【0050】
他の一態様においては、2つのアルキル化反応器は、連続して配置され、それぞれ一対のUZM−8ゼオライト触媒床を含み、この対になった触媒床も、それぞれ連続して配置される。原料芳香族化合物は、第1のアルキル化反応器の第1の触媒床に供給され、原料オレフィンは、各触媒床に供給される。第1のアルキル化反応器の流出物は、熱交換器で冷却されて、第2のアルキル化反応器に流れる。第2のアルキル化反応器の流出物は、2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、βゼオライトを含む下流のアルキル化反応器に流れる。他方のアリコート部分は、熱交換器で冷却されて、さらに2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、第1のアルキル化反応器の第1の触媒床に流れ、他方のアリコート部分は、第2のアルキル化反応器の第1の触媒床に流れる。
【0051】
他の一態様においては、トランスアルキル化反応器および第1のアルキル化反応器は、連続して配置される。ポリアルキルベンゼンおよびベンゼンは、任意の適切なトランスアルキル化反応器に入り、Yを含む触媒のような任意の適切なトランスアルキル化触媒と接触して、アルキルベンゼンを形成する。トランスアルキル化反応器の流出物は、必要なら加熱または冷却されて、第1のアルキル化反応器に流れる。第1のアルキル化反応器は、連続して配置された2つのUZM−8ゼオライト触媒床を含み、原料オレフィンが、各触媒床に供給される。第1のアルキル化反応器の流出物は、2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、βゼオライト触媒を含む第2のアルキル化反応器に流れ、他方のアリコート部分は、熱交換器で冷却されて、アルキル化反応器の第1の触媒床に流れる。第2のアルキル化反応器の流出物は、生成物分離施設に流れる。必要ならば、第2のアルキル化反応器の流出物のアリコート部分を、第1のアルキル化反応器の触媒床の一方、または両方に、および/または第2のアルキル化反応器に再循環することができる。
【0052】
他の一態様においては、アルキル化反応器は、連続して配置された4つの触媒床を含む。原料オレフィンおよび原料芳香族化合物は、任意の適切なアルキル化触媒を含むことができる第1の触媒床に供給される。第1の触媒床の流出物は、UZM−8ゼオライト触媒を含む第2の触媒床に流れる。追加の原料オレフィンは、第2の触媒床に供給される。第2の触媒床の流出物は、第3の触媒床に供給される。この第3の触媒床は、第1の触媒床で用いるために記述された触媒のような任意の適切なアルキル化触媒を含むことができる。必要なら、追加の原料オレフィンを、第3の触媒床に供給する。第3の触媒床の流出物は、βゼオライト触媒を含む第4の触媒床に移動する。追加のオレフィンは、第4の触媒床には供給しない。第4の触媒床の流出物は、アルキル化反応器から回収されて、2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、下流のアルキル化反応器または生成物分離施設に流れ、他方のアリコート部分は、熱交換器中で冷却されて、アルキル化反応器の1つまたは2つ以上の触媒床に流れる。
【0053】
他の一態様においては、2基のアルキル化反応器は、連続して配置され、第1のアルキル化反応器は、一対のUZM−8ゼオライト触媒床を含み、第2のアルキル化反応器は、一対のβゼオライト触媒床を含む。この対になった2つの触媒床もそれぞれ連続して配置される。原料芳香族化合物は、第1のアルキル化反応器の第1の触媒床に供給され、原料オレフィンは、第1のアルキル化反応器の各触媒床に供給される。第1のアルキル化反応器の流出物は、熱交換器中で冷却されて、更なる原料オレフィンとともに、第2のアルキル化反応器に流れる。第2のアルキル化反応器の流出物は、脱エタン装置(deethanizer)または脱プロパン装置(depropanizer)または脱ブタン装置(debutanizer)のような分別塔に流れて、第2のアルキル化反応器の流出物からより軽質な炭化水素を回収する。これらのより軽質な炭化水素は、エチルベンゼンを生成するときは、エタンおよびより軽質な化合物であってもよく、クメンを生成するときは、プロパンおよびより軽質な化合物であってもよく、ブチルベンゼンを生成するときは、ブタンおよびより軽質な化合物であってもよい。この分別塔の底流は、2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、生成物分離施設に流れる。他方のアリコート部分は、必要なら熱交換器中で冷却されて、さらに2つのアリコート部分に分かれる。一方のアリコート部分は、第1のアルキル化反応器の第1の触媒床に流れ、他方のアリコート部分は、第2のアルキル化ゾーンの第1の触媒床に流れる。
【0054】
必要ならば、ここで述べる各態様において、第1のアルキル化ゾーンからの流出物の一部分は、第1のアルキル化ゾーンに再循環させてもよく、第2のアルキル化ゾーンからの流出物の一部分は、第2のアルキル化ゾーンに再循環させてもよく、及び/または、第2のアルキル化ゾーンからの流出物の一部分は、第1のアルキル化ゾーンに再循環させてもよい。さらに、各態様において、必要なら、第1のゾーンの流出物の一部分、第2のゾーンの流出物の一部分、または両方からの塔頂流(overhead stream)として、ベンゼンのような原料芳香族化合物を回収して、第1のゾーン、第2のゾーン、または両方のゾーンに再循環させるために、分別塔を用いてもよい。好適には、原料芳香族化合物は、第2のゾーンに導入されて、その結果、第1のゾーンのフェニル基当たりのアリール基のモル比が、第2のゾーンよりも小さくなる。さらに、エチレン、プロピレン、またはブタンのようなここで開示される原料オレフィンのいずれも、ならびに、ベンゼンのような原料芳香族化合物のいずれも、任意の態様において用いることができる。
【0055】
第1および第2のアルキル化ゾーンのアルキル化条件には、アルキル基当たりのアリール基のモル比が、一般に25から1であることが含まれる。このモル比は1より小さくてもよく、0.75以下であってもよいと考えられている。アルキル基当たりのアリール基のモル比は、第1および第2のアルキル化ゾーンの両方で同じであってもよい。あるいは、このモル比は、第1のアルキル化ゾーンよりも第2のアルキル化ゾーン中で大きくてもよい。たとえば、第1のアルキル化ゾーンと第2のアルキル化ゾーンの間に原料芳香族化合物を導入することによってモル比をより大きくすることができる。原料オレフィンを反応ゾーンに導入すると、このモル比が小さくなるため、第1のアルキル化ゾーンと第2のアルキル化ゾーンの間、または第2のアルキル化ゾーンには、追加の原料オレフィンを添加しないことが好ましい。しかし、小さなモル比で高濃度のオレフォンを処理する結果生じる反応熱およびデルタ温度を制御する必要を考えると、実用的な見地から、種々のアルキル化触媒床の間に原料オレフィンを分配して導入する必要がある。また、モノアルキル化芳香族化合物を生成するために、ジアルキル化芳香族化合物またはトリアルキル化芳香族化合物をアルキル化ゾーンに導入すると(たとえば、クメンを生成するために、DIPBまたはTIPBをアルキル化ゾーンに導入すると)、このモル比が小さくなると考えられるため、第2のアルキル化ゾーンには、このようなポリアルキル化芳香族化合物をこれ以上追加しないことが好ましい。
【0056】
アルキル化ゾーンの流出物の一部分が、同じアルキル化ゾーンに再循環される場合、アルキル化ゾーンに入る流出物の再循環された部分の単位時間当たりの重量の、アルキル化触媒ゾーンに入る原料芳香族化合物および原料オレフィンの重量の合計値に対する比は、少なくとも0.1、少なくとも1.0、少なくとも2.5、少なくとも4.0、少なくとも7.0、または少なくとも10.0である。この比は、ここで、流出物の循環比またはR/FFとして表されることがある。第2のアルキル化ゾーンの流出物の一部分が、第1のアルキル化ゾーンに再循環される場合、第1のアルキル化ゾーンに入る第2のアルキル化ゾーンの流出物の再循環された部分の単位時間当たりの重量の、第1のアルキル化ゾーンに入る原料芳香族化合物および原料オレフィンの単位時間当たりの重量の合計値に対する比は、少なくとも0.1、少なくとも1.0、少なくとも2.5、少なくとも4.0、少なくとも7.0、または少なくとも10.0である。
【0057】
一般に、アルキル剤、特にオレフィン系アルキル化剤当たりのアルキル化基質を所定のモル比にしたばあい、原料流中のアルキル基に対するアリール基のモル比が大きくなるにつれて、アルキル化反応の結果として起こるアルキル化ゾーン中の温度上昇が小さくなる。アルキル化反応は、穏やかな発熱反応であると考えられている。アルキル化ゾーン、アルキル化反応器、および/またはアルキル化触媒床は、生成された熱を除去するために間接的な熱交換手段を有することができるが、各ゾーン、反応器、または触媒床は、好適には断熱性であり、そのため、流出物流の排出口の温度は、反応器の注入口の温度よりも高い。R/FFの増加、および供給流中のアルキル基に対するアリール基のモル比の増加は、アルキル化ゾーン中でヒートシンクとして働くことができるアリール基の量の増加を招き、アルキル化ゾーンの温度上昇を減少させる。ここで開示されるプロセスの実施においては、アルキル化基質の適切なアルキル化温度は、一般に、60℃(140°F)からそのアルキル化基質の臨界温度までであり、475℃(887°F)か、またはより高温であってもよいが、アルキル化ゾーンの注入口の温度は、一般に、60℃から260℃まで(140°F〜500°F)であり、好適には、100℃から250℃まで(212°F〜482°F)である。アルキル化ゾーンで起こる温度上昇は、アルキル化ゾーン中の全流量によって決まり、10℃から190℃(18°F〜342°F)であると考えられるが、この温度上昇は一般には、5℃から130℃まで(9°F〜234°F)であり、好適には、5℃から50℃まで(9°F〜90°F)である。
【0058】
前述のように、アルキル化ゾーンの温度上昇は、供給流中のアリール基のアルキル基に対するモル比を調整することによって制御できる。温度上昇を最小限にすることは、反応器の排出口の温度が高いときの、n−プロピルベンゼンのような化合物および重質芳香族の形成をもたらす芳香族側鎖の異性化のような望ましくない副反応の発生防止に役立つ。アルキル化温度が高いときも、アルキル化ゾーン中のベンゼンおよび所望のモノアルキル化芳香族化合物(たとえば、エチルベンゼンまたはクメン)の蒸発を引き起こすことがある。ここで開示するプロセスの一態様においては、アルキル化ゾーンの温度上昇は、アルキル化反応ゾーンから流出物流を回収し、必要なら、この流出物流の一部分を冷却し、この流出物流の冷却された一部分を反応ゾーンに再循環することによって制御できる。
【0059】
どちらのアルキル化ゾーンにおけるアルキル化も、液相中で行われることが好ましい。したがって、アルキル化圧力は、少なくとも部分的な液相を確保するのに十分なほど高いことが好ましい。反応のための圧力範囲は、通常、1379kPa(g)から6985kPa(g)まで(200〜1000psi(g))、より一般的には、2069kPa(g)から4137kPa(g)まで(300〜600psi(g))、さらにより一般的には、3103kPa(g)から4137kPa(g)まで(450〜600psi(g))である。好適には、アルキル化条件は、ベンゼンを液相中に維持するのに十分な条件であり、プロピレンにとって超臨界の条件である。
【0060】
原料オレフィンの毎時重量空間速度(WHSV)は、0.01〜8.0hr−1の範囲にある。ここで用いられる場合、成分の毎時重量空間速度は、触媒重量で割られた時間当たりの成分の重量流量を意味し、時間当たりの成分の重量流量および触媒重量は、同じ重量単位である。好適には、原料オレフォンのWHSVは、第2のアルキル化ゾーンよりも第1のアルキル化ゾーン中で、より大きい。原料オレフォンのWHSVは、好適には、第1のアルキル化ゾーン中で0.5〜2.0hr−1にわたり、第2のアルキル化ゾーン中で0.1〜1.0hr−1の範囲にある。芳香族化合物のWHSVは、一般に、両方のアルキル化ゾーン中で0.3〜480hr−1までである。
【0061】
芳香族のアルキル化において、第1および第2のアルキル化ゾーン中で起こる主な反応は、原料芳香族化合物の原料オレフィンによるアルキル化であって、モノアルキル化芳香族化合物が生成される。さらに、第1および/または第2の反応ゾーン中で他の副反応が起こることもある。たとえば、原料芳香族化合物は、ポリアルキル化芳香族化合物とトランスアルキル化して、モノアルキル化芳香族化合物を生成することができる。また、ポリアルキル化芳香族化合物は、原料オレフィンによりアルキル化できる。各反応ゾーンの流出物流は、このように、モノアルキル化芳香族化合物、アルキル化ゾーンに供給されたポリアルキル化芳香族化合物または副反応の生成物であるポリアルキル化芳香族化合物のいずれか、アルキル化ゾーンに供給された原料芳香族化合物または副反応の生産物である原料芳香族化合物のいずれか、低濃度の原料オレフィン、およびC〜Cのパラフィンを含むことができる。
【0062】
以下の実施例は、本明細書で開示するプロセスを説明する。
【実施例】
【0063】
実施例1
アルミノケイ酸塩反応混合液は、以下のように調製した。7329.73gのDEDMAOH(20%水溶液)を槽に加えた。804.38gのAl(Osec−Bu)(95%+)をこの槽に加えて、得られた溶液を45分間十分に混合した。次いで、2000gの脱イオン水をこの溶液に加え、続いて、2526.96gの沈降シリカ(商品名:Ultrasil(商標)VN SP3、89%SiO)を加えた。次に、126.69gのNaOHを212.25gの脱イオン水に溶かした水溶液を調製して反応混合液に加え、この反応混合液を30分間十分に混合した。次いで、この反応混合液を19Lの攪拌反応器に移した。槽を1000gの脱イオン水で洗い流し、洗浄液を反応器に移して反応混合液に混合した。反応混合液を3時間で150℃に加熱し、150℃で290時間煮沸した。固形生成物を濾過によって集めて、脱イオン水で洗浄し、50℃で乾燥させた。粉末X線回折分析により、単離した生成物をUZM−8ゼオライトと同定した。元素分析によって、単離した生成物は、Si/Al=11.77、Na/Al=0.26、N/Al=2.03、およびC/N=3.04の元素モル比からなることが明らかになった。単離した生成物を、1重量部のNHNO、10重量部の脱イオン水、および1重量部の単離した生成物を含むイオン交換溶液を用いて75℃で3時間アンモニウムイオン交換し、そして、固形物を濾過によって集めた。アンモニウムイオン交換および濾過は、さらに2度繰り返して行い、3回のアンモニウムイオン交換物を脱イオン水で洗浄し、50℃で乾燥した。乾燥試料を540℃に加熱して焼成し、窒素気流の存在下、その温度で2時間保持し、次いで、空気流に換えて、同じ温度で14時間保持した。その結果、そのBET表面積は481m/g、細孔容積は0.14cc/gであった。次いで、もうひとつの乾燥試料を、70重量%のUZM−8および30重量%のアルミナを含む触媒に処方した。HNOで解膠したAlを結合剤として、また、UZM−8およびアルミナの重量に対し3.0重量%のSolka−Floc(商標)粉末セルロース(BW−40;International Fiber Corp., North Tonawanda,NY,USA)を押出助剤として用いて押出成形を行い、直径1.6mm(1/16インチ)の押出成形品を得た。この押出成形品を、マッフル炉で538℃に加熱して活性化し、窒素気流の存在下、その温度で1時間保持し、次いで、空気流に換え、同じ温度で15時間保持した。この触媒の平均容積密度は0.48g/ccであった。この触媒を触媒Aと表す。
【0064】
70重量%のβゼオライトおよび30重量%のアルミナ結合剤を含む新たな触媒を生成した。この触媒を触媒Bと表す。この触媒の平均容積密度は0.55g/ccであった。触媒Bのためのβゼオライトは、米国特許第5,522,984号に記載の方法と実質的に同じ方法で生成した。
【0065】
実施例2
実施例1で生成された触媒の試験に用いられた実験手順は、下記の通りである。試験のための一定量の触媒を円筒型反応器に充填したが、触媒AとBの積層充填の試験では、底部の30%の容積に触媒Bを充填し、上部の70%の容積に触媒Aを充填した。反応器は、固定触媒床の長さ方向に沿って温度測定のために離れて配置されたサーモウェル中に熱電対を備えていた。乾燥ベンゼンを、260℃(500°F)、6.7hr/Lの液空間速度(LHSV)で、24時間反応器の中を下降させた。
【0066】
続いて、新たなベンゼンの流れを調製し、反応器の注入口の温度を、初期試験条件の所望の距離平均触媒床温度(distance average bed temperature:DABT)より低い50℃(90°F)に下げた。ここで用いられるDABTは、触媒床温度を触媒床に沿った距離に対してプロットし、触媒床の注入口から排出口までの曲線の下の面積を算出し、この面積を触媒床の長さで割って計算した温度を意味する。新たなプロピレンを反応器に導入した。次いで、反応器の流出物の一部分を再循環させ、新たなベンゼン、新たなプロピレン、および再循環された反応器の流出物を一緒にした供給物が、反応器に流れるようにした。反応器の注入口の温度を調整して所望のDABTを維持しながら、反応器の流出物を採取し分析した。次いで、反応器の注入口の温度および/または再循環された反応器の流出物の量を調整し、反応器の流出物を再度採取した。測定値および試料が、すべての所望のDABTおよび流出物循環率(R/FF)において得られるまで、このプロセスを繰り返した。
【0067】
触媒床内の温度は、流入してくる供給物が触媒と反応したとき、発熱反応のため上昇した。試験条件の期間中に、時々、温度プロファイル(触媒床を通じた距離に対する触媒床温度)をプロットした。触媒の失活率を、これらの触媒床を通じた温度プロファイルの進行率から求めた。温度プロファイルにおける温度上昇の終点値である各温度プロファイルの位置を、活性ゾーンの終点と規定した。温度プロファイルに関し、活性ゾーンの終点は、温度上昇の直線部分を直線外挿したものと触媒床の最高温度における水平線との交点における触媒床中の距離であった。各触媒の性能を測定した持続期間中に、いくらかの触媒の失活が起こり、触媒の失活率は、各触媒の試験中の操作条件の差異によってそれほど影響を受けなかったと考えられる。
【0068】
DABTは、触媒Aのみの試験では130℃(236°F)と160℃(320°F)の間にあり、触媒Bのみの試験では160℃(320°F)と175℃(347°F)の間にあり、さらに、触媒Aと触媒Bの積層充填の試験では150℃(302°F)と175℃(347°F)の間にあった。プロピレンのWHSVは、触媒Aのみの試験では2.03hr−1であり、触媒Bのみの試験では1.88hr/Lであり、さらに、触媒Aと触媒Bの積層充填の試験では1.03hr−1(あるいは、触媒Aが1.77hr−1、触媒Bが2.48hr−1)であった。これらの試験での新たに供給するベンゼンの新たに供給するプロピレンに対するモル比は2であった。これらの試験でのR/FFは6であった。プロピル基当たりのアリール基のモル比は、一緒にされた反応器の供給流、および反応器の全流出物流中で、本質的に同じであるため、エチル基当たりのアリール基のモル比は、反応器の流出物流のいずれの部分を再循環させても、それほど影響を受けない。
【0069】
これらの試験の結果を表3に示す。各試験は、ほぼ600時間の操作を含み、表3に示されたクメンとDIPBとTIPBに対する選択性の合計および失活率は、最後の525時間の操作中に決定される。平均失活率は、50時間の操作後の活性ゾーンの終了点の位置および575時間の操作後の活性ゾーンの終了点の位置から算出する。
【0070】
【表3】

【0071】
これらのデータは、触媒Aと触媒Bの積層充填の場合、触媒Aのみ、または触媒Bのみのいずれかの場合よりも、クメン+DIPB+TIPBに対する選択性が高く、また、平均失活率が低いという、予想外の結果を示している。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、触媒A(UZM−8)および触媒B(β)の組み合わせが相乗効果をもたらすと考えられる。UZM−8触媒により選択性が高くなり、β触媒により高選択性に悪影響を与えることなく平均失活率が低くなると考えられる。
【0072】
実施例3
触媒Aと触媒Bの積層充填の、厳しい悪条件に対する堅牢性を示すため、実施例2で報告した期間の終了後、積層充填の試験を、種々のアルキル化条件で更に700時間続けた。この更なる操作によって、さほど著しくない触媒の失活の増加を除き、積層充填中の触媒Aおよび触媒Bの性能はそれほど影響を受けなかった。この更なる操作の最後の77時間(期間I)の間、積層触媒充填の操作条件は、反応器の注入口の温度が109℃(228°F)、プロピレンのWHSVが1.03hr−1、新たに供給するベンゼンの新たに供給するプロピレンに対するモル比が2、およびR/FFが6であった。一緒にされた供給物(たとえば、新たに供給するベンゼン、新たに供給するプロピレン、および反応器の再循環された流出物)中の水分濃度は、5重量ppmより低かった。
【0073】
供給物の高濃度の水分混入の影響をシミュレートするため、期間Iの後、水分を導入し、62時間(期間II)で一緒にされた供給物の水分濃度が150重量ppmになるようにした。この一緒にされた供給物の高濃度の水分を維持しながら、注入口の温度を、113℃(235°F)に41時間(期間III)、次いで、118℃(244°F)に23時間(期間IV)、さらに、128℃(262°F)に90時間(期間V)保持した。期間Vの後、触媒をそのままにして施設の運転を停止した。反応器へのプロピレンの導入を再開する前に、高温(たとえば、100℃(212°F)と128℃(262°F)の間)で、112時間より長い間、150重量ppmのベンゼンを積層触媒内に循環させた。一緒にされた供給物の水分濃度が5重量ppm未満、プロピレンのWHSVが1.03hr−1、新しいベンゼンの新しいプロピレンに対するモル比が2、およびR/FFが6という条件で、施設の運転を再開した。反応器注入口の温度を、128℃(262°F)で14時間(期間VI)固定し、次いで、118℃(244°F)で42時間(期間VII)固定し、さらに、108℃(226°F)で45時間(期間VIII)固定した。
【0074】
積層触媒の性能を表4に示す。これらのデータは、期間Iと期間IIの間でプロピレンの転換率が97%から75%まで大きく減少する原因となる高濃度の水分混入にかかわらず、UZM−8触媒とβ触媒の積層充填を用いて予想外に良好な性能が得られることを示唆している。期間IIの109℃(228°F)から期間Vの128℃(262°F)まで反応器の注入口の温度を上げることによって、クメンとDIPBとTIPBに対する選択性の合計をそれほど減少させずに、あるいは、TIPBまたは副生成物nPBに対する選択性をそれほど増加させずに、プロピレンの転換率は、施設を停止する前の期間Vの間中に93%に上昇し、または、期間Iの間中に達成されたレベルとほぼ同じレベルまで上昇した。さらに、期間VI〜VIIIの間中に再開した後のデータは、施設の運転停止に妨げられるのにかかわらず、再びかなり乾燥したベンゼンの反応に戻ることによって、水分の混入効果を逆転させることができることを示している。97%のオレフィン転換率、99.67〜99.72mol%のクメン+DIPB+TIPBに対する選択性を維持しながら、かつnPB/クメン率を132に低下させながら、注入口の温度を、期間VIの128℃(262°F)から期間VIIIの108℃(226°F)まで下げた。
【0075】
【表4】

【0076】
いくつかの実施例のみを説明してきたが、代替手段および変形例も、上述の記載から当業者にとって明らかである。これらの実施例と他の代替手段は均等物であり、この開示および添付の特許請求の範囲の思想および技術範囲内にあると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の連続アルキル化ゾーン中で、アルキル化剤を用いて芳香族基質を触媒アルキル化する方法であって、
(a)該第1のアルキル化ゾーン中で、該芳香族基質および該アルキル化剤を、AlO四面体単位およびSiO四面体単位の積層骨格を有する微孔性結晶ゼオライト、及び、実験式:
n+p+AlSi
で表される合成された状態の無水の組成物を含有する第1の触媒に接触させて、第1の流出物を得ること[式中、Mは少なくとも1種の交換可能な陽イオンであり、mはMの(Al+E)に対するモル比であって0〜2であり、Rは第4級アンモニウム陽イオン、二第4級アンモニウム陽イオン、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、プロトン化アルカノールアミン、および4級化アルカノールアンモニウム陽イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機アンモニウム陽イオンであり、rはRの(Al+E)に対するモル比であって0.05〜5.0の値を有し、nはMの加重平均価数であって1〜2の値を有し、pはRの加重平均価数であって1〜2の値を有し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる元素であり、xはEのモル分率であって0〜1.0の値を有し、yはSiの(Al+E)に対するモル比であって6.5〜35であり、かつzはOの(Al+E)に対するモル比であって式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
によって決定される値を有する]、および
(b)該第2のアルキル化ゾーン中で、該第1の流出物の少なくとも一部分をβゼオライトを含有する第2の触媒と接触させて、アルキル芳香族化合物を含有する第2の流出物を得ること、
を含んでなる触媒アルキル化方法。
【請求項2】
前記芳香族基質が、ベンゼン、トルエン、およびキシレンからなる群から選ばれる、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項3】
前記アルキル化剤が、C〜Cのモノオレフィンである、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項4】
前記芳香族基質がベンゼンであり、前記アルキル化剤がプロピレンであり、かつ前記アルキル芳香族化合物がクメンである、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項5】
前記第1のアルキル化ゾーンにおける第1のアルキル化条件が、0.75〜3.0のアリール基のアルキル基に対するモル比を含む、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項6】
前記第1のアルキル化ゾーンにおける第1のアルキル化条件が、0.75〜3の前記芳香族基質の前記アルキル化剤に対するモル比を含む、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項7】
前記第1のアルキル化ゾーンにおける第1のアルキル化条件が、1.0〜3のアルキル化剤の毎時重量空間速度を含む、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項8】
前記βゼオライトが、X線光電子分光法によって測定される少なくとも74.8電子ボルトの表面アルミニウム2p結合エネルギーを有することを特徴とする表面改質βゼオライトである、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項9】
前記第1の触媒が、少なくとも表1に記載の面間隔dおよび強度を有するX線回折パターンを有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【表1】

【請求項10】
前記第1のアルキル化ゾーン中での接触が、第1のアルキル化ゾーンに送られる炭化水素の重量に対して1〜20000重量ppmの水分濃度を含む第1のアルキル化条件下で行われる、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。
【請求項11】
前記第2のアルキル化ゾーン中での接触が、第2のアルキル化ゾーンに送られる炭化水素の重量に対して1〜20000重量ppmの水分濃度を含む第2のアルキル化条件下で行われる、請求項1に記載の触媒アルキル化方法。

【公表番号】特表2010−515746(P2010−515746A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545658(P2009−545658)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/050616
【国際公開番号】WO2008/088997
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】