説明

芳香族化合物の製造方法及びその方法で得られた芳香族化合物

【課題】 芳香族化合物に含まれるハロゲン元素含有量を効果的に低減し得る芳香族化合物の製造方法、及びこの方法により製造され、長寿命の有機EL素子を得るための材料として有用な芳香族化合物を提供すること。
【解決手段】 ハロゲン含有中間体を介して製造された、ハロゲン元素含有量が10〜1000質量ppmである芳香族化合物を、さらに脱ハロゲン化剤と反応させることにより、ハロゲン元素含有量を10質量ppm以下とする芳香族化合物の製造方法、及びこの方法によって製造された芳香族化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス用材料として有用な芳香族化合物の製造方法及びその方法で得られた芳香族化合物に関し、詳しくはハロゲン化合物の含有量が低減された芳香族化合物の製造方法及びその方法で得られた芳香族化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記することがある。)は、一対の電極の間に少なくとも有機発光層を狭持してなる発光素子であり、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子が有機発光層内で再結合することによって生じるエネルギーを発光として取り出している。
有機EL素子は自発光素子であり、高効率発光・低コスト・軽量・薄型等の様々な特性を持つため、近年盛んに開発が行われている。有機EL素子の課題としては、駆動に伴い発光輝度が低下する現象が知られており、この輝度劣化を抑制するために様々な改良が試みられている。
例えば有機EL素子に用いられる有機材料中のハロゲン不純物濃度を1,000質量ppm未満に制御することにより、有機EL素子の輝度劣化を抑制できることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
有機EL素子に用いる芳香族化合物を所望のハロゲン不純物濃度に制御する方法として、上記特許文献には昇華精製や再結晶といった精製技術を適宜組み合わせることが開示されている。しかし近年、さらにハロゲン不純物量を制御する技術が必要になってきており、有機EL素子用材料のハロゲン元素量をさらに低減することが可能な製造技術を開発する必要があった。
通常、有機EL素子用材料は、ウルマン反応、グリニャール反応、鈴木カップリング反応等の、芳香族ハロゲン化物を中間体とした合成方法により製造されている。有機EL素子は、用いられる材料中の不純物が素子性能(輝度劣化や初期効率)に大きな影響を与えることが知られており、通常、昇華精製やカラム精製、再結晶法のように、材料の物性の違いを利用した精製により高純度化がなされている。
有機EL素子用材料の高純度化に焦点を絞った場合、特に有機EL素子用材料中の不純物であるハロゲン化合物の低減、中でも反応性が高い、臭素化物やヨウ素化物を低減することが重要であるが、従来の方法では臭素化物やヨウ素化物を十分に低減することができなかった。
【0003】
【特許文献1】特許第3290432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、芳香族化合物に含まれるハロゲン元素含有量を効果的に低減し得る芳香族化合物の製造方法、及びこの方法により製造され、長寿命の有機EL素子を得るための材料として有用な芳香族化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、芳香族化合物の粗生成物であって、ハロゲン元素含有量が特定範囲の粗生成物を化学反応により脱ハロゲン化処理することにより、ハロゲン元素含有量が特定値以下の芳香族化合物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の芳香族化合物の製造方法及びその方法で得られた芳香族化合物を提供するものである。
1. ハロゲン含有中間体を介して製造された、ハロゲン元素含有量が10〜1000質量ppmである芳香族化合物を、さらに脱ハロゲン化剤と反応させることにより、ハロゲン元素含有量を10質量ppm以下とすることを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
2. 芳香族化合物が、有機エレクトロルミネッセンス用材料である上記1に記載の芳香族化合物の製造方法。
3. 脱ハロゲン化剤が、グリニャール試薬、有機リチウム化合物及びボロン酸誘導体から選ばれる少なくとも一種である上記1又は2記載の芳香族化合物の製造方法。
4. 芳香族化合物が、核炭素数14〜20の縮合芳香族環を分子内に有する化合物である上記1〜3のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
5. 芳香族化合物が、分子内に窒素原子を1〜12個有する化合物である上記1〜4のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
6. ハロゲン元素が、少なくとも臭素又はヨウ素である上記1〜5のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
7. グリニャール試薬が、フェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムブロミド及びエチルマグネシウムヨージドから選ばれる少なくとも一種である上記3〜6のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
8. 有機リチウム化合物が、n−ブチルリチウム及びフェニルリチウムから選ばれる少なくとも一種である上記3〜6のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
9. ボロン酸誘導体が、フェニルボウ酸である上記3〜6のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
10. 上記1〜9のいずれかに記載の方法によって製造された芳香族化合物。
11. 有機エレクトロルミネッセンス用材料である上記10に記載の芳香族化合物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ハロゲン元素含有量が10質量ppm以下の芳香族化合物を得ることができる。また、この芳香族化合物を有機EL素子用材料として用いることにより、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の芳香族化合物の製造方法は、ハロゲン含有中間体を介して製造された、ハロゲン元素含有量が10〜1000質量ppmである芳香族化合物を、さらに脱ハロゲン化剤と反応させることにより、この芳香族化合物のハロゲン元素含有量を10質量ppm以下とする製造方法である。上記反応は、合成により得られた芳香族化合物の不純物である芳香族ハロゲン化物を化学反応により別の化合物に変換し、無害化する処理である。
芳香族ハロゲン化物を別の化合物に変換させる方法としては、脱ハロゲン化剤を用いる公知の反応を採用することができ、グリニャール反応、有機リチウム化合物を用いる反応、ボロン酸誘導体を用いる反応(鈴木カップリング反応)は反応収率が高いので、特に好適である。
【0008】
グリニャール反応は、芳香族ハロゲン化物と、グリニャール試薬との反応により行うカップリング反応である。グリニャール試薬として市販の試薬や、適宜調整して用いられるアリールマグネシウムブロミド、アリールマグネシウムヨージド、アルキルマグネシウムブロミド及びアルキルマグネシウムヨージドなどを用いることができる。中でもフェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムブロミド及びエチルマグネシウムヨージドを用いることが好ましい。特に好適なのはフェニルマグネシウムブロミド及びフェニルマグネシウムヨージドである。グリニャール試薬は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
反応溶媒としては一般的な溶媒を用いることができるが、具体的にはジメトキシエタンやテトラヒドロフランのようなエーテル系の溶媒が特に好適である。またこれらの混合溶媒を用いてもよい。反応溶媒は脱水処理されていることが望ましい。
反応温度は、通常−30〜100℃の範囲で選択され、−10〜80℃が好ましい。反応時間は、通常1〜48時間の範囲で選択され、2〜8時間が好ましい。反応はアルゴン気流下で行うことが好ましい。
【0009】
有機リチウム(Li)化合物を用いる反応は、具体的には芳香族ハロゲン化物と、有機リチウム試薬との反応により行うカップリング反応である。有機リチウム化合物として市販の種々の試薬を用いることができるが、アリールリチウム及びアルキルリチウムが好ましい。特に好ましくはn−ブチルリチウム及びフェニルリチウムである。有機リチウム化合物は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
反応溶媒としては一般的な溶媒を用いることができるが、シクロヘキサンやデカリンの等の環状炭化水素系溶媒、ジメトキシエタンやテトラヒドロフラン等のエーテル系の溶媒が好適である。またこれらの混合溶媒を用いてもよい。
反応温度は、通常−100〜50℃の範囲で選択され、−80〜10℃が好ましい。反応時間は、通常1〜48時間の範囲で選択され、1〜8時間が好ましい。反応は窒素気流下又はアルゴン気流下で行うことが好ましい。
【0010】
ボロン酸誘導体を用いる反応は、鈴木カップリング反応とも言われ、芳香族ハロゲン化物と、ボロン酸誘導体の反応により行うカップリング反応である。ボロン酸誘導体として市販の種々のボロン酸を用いることができるが、フェニルボロン酸やその誘導体を用いることが好ましい。ボロン酸誘導体は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
鈴木カップリング反応を好ましく用いる理由は、ハロゲンとの反応性が高いだけでなく、ニトロ基やメトキシ基等の置換基を有する材料に対して脱ハロゲン化処理を行っても、これらの置換基と反応しないことも挙げられる。
反応溶媒としては一般的な溶媒を用いることができる。具体的には、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系の溶媒、シクロヘキサンやデカリン等の環状炭化水素系溶媒、ジメトキシエタンやテトラヒドロフラン等のエーテル系の溶媒などが挙げられる。これらの中で、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系の溶媒、ジメトキシエタンやテトラヒドロフランのようなエーテル系の溶媒が特に好適である。またこれらの混合溶媒を用いてもよい。
【0011】
反応は、これらの溶媒と水との二層系の溶媒を攪拌しながら懸濁状態で行うことが好ましい。この反応には、通常塩基が用いられ、塩基としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、リン酸塩及び水酸化物が挙げられ、特に好適なのは炭酸カリウム、炭酸セシウム及びリン酸カリウムである。
また、この反応においては、触媒として、通常、PdやNi等の遷移金属錯体を用いることができる。具体的にはPd(PPh34や酢酸パラジウムが好ましい。またPdやNi等の遷移金属錯体をリン系の配位子と併せて用いてもよい。例えばトリス(o−トリル)ホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン等が配位子として好ましく用いられる。
反応温度は、通常50〜200℃の範囲で選択され、70〜150℃が好ましい。反応時間は、通常4〜48時間の範囲で選択され、8〜16時間が好ましい。反応は窒素気流下又はアルゴン気流下で行うことが好ましい。
【0012】
芳香族化合物の製造に際し、不純物であるハロゲン元素が最大限で1,000質量ppm含まれる粗生成物の段階で、上記のような化学反応処理を行うことにより、芳香族化合物中のハロゲン元素含有量を著しく低減することができる。
また、上記粗生成物を通常の方法で精製してハロゲン元素含有量を100質量ppm以下に低減した芳香族化合物に対して、上記化学反応処理を行うことによってさらにハロゲン不純物濃度を低減させることができる。
このような脱ハロゲン化処理により、芳香族化合物のハロゲン元素含有量は、10質量ppm以下に低減されるが、1質量ppm以下に低減されることが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法は、いずれの芳香族化合物の製造にも有効であるが、核炭素数14〜20の縮合芳香族環を分子内に持つ芳香族化合物の粗生成物を用いて有機EL素子用材料を製造する場合に特に好適である。核炭素数14〜20の縮合芳香族環を分子内に持つ芳香族化合物としては、例えばアントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ベンズアントラセン、ペリレン、フルオランテン、テトラセン等が挙げられる。
上記のような縮合芳香族環を分子内に有する芳香族化合物としては、例えば以下の1〜7の化合物が好適である。
1.下記一般式(1)で表されるアントラセン誘導体。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(1)において、Arは置換又は無置換の核炭素数10〜50の縮合芳香族基である。この縮合芳香族基としては、例えば、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基等が挙げられる。Arの縮合芳香族基としては、下記一般式
【0016】
【化2】

(Ar1は、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基である。)
【0017】
から選ばれる基が好ましい。Ar1としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、9−(10−フェニル)アントリル基、9−(10−ナフチル−1 −イル)アントリル基、9−(10−ナフチル−2−イル)アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−(10−フェニル)アントリル基、9−(10−ナフチル−1−イル)アントリル基、9−(10−ナフチル−2−イル)アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0018】
また、上記芳香族基は、さらに置換基で置換されていてもよく、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(エトキシ基、メトキシ基、i−プロポキシ基、n−プロポキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、核原子数5〜40のアリール基、核原子数5〜40のアリール基で置換されたアミノ基、核原子数5〜40のアリール基を有するエステル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するエステル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Ar’は置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基である。この芳香族基としては、上記Ar1において例示したものと同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0019】
一般式(1)において、Xは、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、置換又は無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換又は無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換又は無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換又は無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基である。
Xにおける置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基としては、上記Ar1において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0020】
Xにおける置換又は無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基の例としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、
【0021】
1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、
【0022】
2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0023】
Xにおける置換又は無置換のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
置換又は無置換のシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
【0024】
置換又は無置換のアルコキシ基は、−OYで表される基であり、Yの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0025】
置換又は無置換のアラルキル基の例としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0026】
置換又は無置換のアリールオキシ基は、−OY’と表され、Y’の例としてはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、
【0027】
1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、
【0028】
1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0029】
置換又は無置換のアリールチオ基は、−SY”と表され、Y”の例としてはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、
【0030】
1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、
【0031】
1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0032】
置換又は無置換のアルコキシカルボニル基は−COOZと表され、Zの例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
また、環を形成する2価基の例としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0033】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
一般式(1)において、a、b及びcは、それぞれ0〜4の整数であり、0〜1であると好ましい。nは1〜3の整数である。またnが2以上の場合は、[ ]内の
【0034】
【化3】

【0035】
は、同じでも異なっていてもよい。
2.下記一般式(2)で表される非対称モノアントラセン誘導体。
【0036】
【化4】

【0037】
一般式(2)において、m及びnは、それぞれ1〜4の整数であり、1又は2が好ましい。
ただし、m=n=1でかつAr1とAr2のベンゼン環への結合位置が左右対称型の場合には、Ar1とAr2は同一ではなく、m又はnが2〜4の整数の場合にはmとnは異なる整数である。なお、本発明において、左右対称型とは、アントラセン環の9位に結合するベンゼン環において、Ar1及びR9が置換する位置(X1位,X2位)に対し、アントラセン環の10位に結合するベンゼン環において、Ar2及びR10がそれぞれX1位,X2位に置換する場合を左右対称型という。
すなわち、一般式(2)のアントラセン誘導体は、アントラセン核に結合する左右の芳香族環基で置換されたベンゼン環が左右非対称となる構造であり、上記アントラセン誘導体は非対称構造を有している。
例えば、アントラセン核の2位と3位の置換基が異なっていても、9位及び10位に結合する置換基が同一のものであれば、ここでいう非対称には含まれない。
上記一般式(2)において、m及び/又はnが1であるものが好ましく、m=1の場合、下記一般式(3)〜(5)で表されるものがさらに好ましい。
【0038】
【化5】

【0039】
一般式(3)〜(5)において、Ar1、Ar2、n、R1〜R10は上記一般式(2)と同じである。なお、上記と同様にn=1でかつAr1とAr2のベンゼン環への結合位置が左右対称型の場合には、Ar1とAr2は同一ではない。
一般式(2)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基である。
Ar1とAr2の置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基としては、上記一般式(1)において例示したものと同様のものが挙げられ、特に、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が好ましい。
【0040】
一般式(2)において、R1〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基、置換又は無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換又は無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換又は無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換又は無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基である。
1〜R10の置換又は無置換の芳香族環基、置換又は無置換の芳香族複素環基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のアリールチオ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基の例としては、上記一般式(1)におけるXで例示したものと同様のものが挙げられる。
【0041】
1〜R10のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
上記Ar1、Ar2及びR1〜R10の示す基における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、芳香族複素環基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基などが挙げられる。
3.下記一般式(6)で表される非対称アントラセン誘導体。
【0042】
【化6】

【0043】
一般式(6)の非対称アントラセン誘導体は、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX−Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。
ここで、X−Y軸に対して対称型となる基が結合する場合がないとは、好ましくは一般式(6)において以下のような構造となっていることを言う。
(I)A3とA4が異なる。
(II)A3とA4が同じ場合は、
(II−i)Ar3とAr4が異なる。
(II−ii)R19とR20が異なる。
(II−iii) Ar3とAr4が同じかつR19とR20が同じ場合、
(II−iii−1)A3におけるアントラセン環9位との結合位置と、A4におけるアントラセン環10位との結合位置が異なる。
(II−iii−2)Ar3及びAr4が共に水素原子でない場合、A3におけるAr3の結合位置と、A4におけるAr4の結合位置が異なる。
(II−iii−3)R19及びR20が共に水素原子でない場合、A3におけるR19の結合位置と、A4におけるR20の結合位置が異なる。
【0044】
一般式(6)において、A3及びA4は、それぞれ独立に、置換又は無置換の核炭素数10〜20(好ましくは核炭素数10〜16)の縮合芳香族環基である。
3及びA4の置換又は無置換の縮合芳香族環基としては、例えば、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナンスリル基、2−フェナンスリル基、3−フェナンスリル基、4−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナンスリル基である。
【0045】
一般式(6)において、Ar3及びAr4は、それぞれ独立に、水素原子、あるいは置換又は無置換の核炭素数6〜50(好ましくは核炭素数6〜16)の芳香族環基である。
Ar3とAr4の置換又は無置換の芳香族環基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナンスリル基、2−フェナンスリル基、3−フェナンスリル基、4−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナンスリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基である。
【0046】
一般式(6)において、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基、置換又は無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換又は無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換又は無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換又は無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換又は無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。
11〜R20の置換又は無置換の芳香族環基、置換又は無置換の芳香族複素環基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のアリールチオ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基の例としては、上記一般式(1)におけるXで例示したものと同様のものが挙げられる。
【0047】
11〜R20のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
上記Ar3、Ar4及びR11〜R20の示す基における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、芳香族複素環基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基などが挙げられる。
Ar3、Ar4及びR11〜R20は、それぞれ複数であってもよく、隣接するもの同士で飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよく、環状構造としては、ベンゼン環等の不飽和6員環の他、飽和又は不飽和の5員環又は7員環構造等が挙げられる。
また、本発明において、上記一般式(6)で表される非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン−1−イル基及び/又は置換もしくは無置換の核炭素数12〜20の縮合芳香族環基を有すると好ましい。この置換基としては、上記Ar3、Ar4及びR11〜R20の示す基における置換基と同様のものが挙げられる。
4.下記一般式(6')で表される非対称アントラセン誘導体。
【0048】
【化7】

【0049】
一般式(6')は、上記一般式(6)において、A3'及びA4'が、それぞれ独立に、置換又は無置換の核炭素数10〜20の縮合芳香族環基であり、A3'及びA4'の少なくとも一方は、4位に置換基を有するナフタレン−1−イル基又は置換又は無置換の核炭素数12〜20の縮合芳香族環基であると限定したものであり、Ar3、Ar4、R11〜R20は、それぞれ独立に、一般式(6)と同じであるため、これら各基の具体例、好ましい基、置換基の例は、一般式(6)で説明したものと同じである。また、一般式(6)同様に、一般式(6')において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX−Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。
5.下記一般式(7)で表される非対称ピレン誘導体。
【0050】
【化8】

【0051】
一般式(7)において、Ar及びAr’は、それぞれ置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基である。
この芳香族基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、9−(10−フェニル)アントリル基、9−(10−ナフチル−1 −イル)アントリル基、9−(10−ナフチル−2−イル)アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−(10−フェニル)アントリル基、9−(10−ナフチル−1 −イル)アントリル基、9−(10−ナフチル−2−イル)アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0052】
また、上記芳香族基は、さらに置換基で置換されていてもよく、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(エトキシ基、メトキシ基、i−プロポキシ基、n−プロポキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、核原子数5〜40のアリール基、核原子数5〜40のアリール基で置換されたアミノ基、核原子数5〜40のアリール基を有するエステル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するエステル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0053】
一般式(7)において、L及びL’は、それぞれ置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のナフタレニレン基、置換又は無置換のフルオレニレン基、あるいは置換又は無置換のジベンゾシロリレン基であり、置換又は無置換のフェニレン基、あるいは置換又は無置換のフルオレニレン基が好ましい。
また、この置換基としては、上記芳香族基で挙げたものと同様のものが挙げられる。
一般式(7)において、mは0〜2(好ましくは0〜1)の整数、nは1〜4(好ましくは1〜2)の整数、sは0〜2(好ましくは0〜1)の整数、tは0〜4(好ましくは0〜2)の整数である。
また、一般式(7)において、L又はArは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L’又はAr’は、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、一般式(7)において、n+tが偶数の時、Ar,Ar’,L,L’は下記(1) 又は(2) を満たす。
(1) Ar≠Ar’及び/又はL≠L’(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2) Ar=Ar’かつL=L’の時
(2-1) m≠s及び/又はn≠t、又は
(2-2) m=sかつn=tの時、
(2-2-1) L及びL’、又はピレンが、それぞれAr及びAr’上の異なる結合位置に結合しているか、(2-2-2) L及びL’、又はピレンが、Ar及びAr’上の同じ結合位置で結合している場合、L及びL’又はAr及びAr’のピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
一般式(7)において、Ar及びAr’は、それぞれ置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基である。L及びL’は、それぞれ置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のナフタレニレン基、置換又は無置換のフルオレニレン基、あるいは置換又は無置換のジベンゾシロリレン基である。
mは0〜2の整数、nは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。また、L又はArは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L’又はAr’は、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、n+tが偶数の時、Ar,Ar’,L,L’は下記(1) 又は(2) を満たす。
(1) Ar≠Ar’及び/又はL≠L’(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2) Ar=Ar’かつL=L’の時
(2-1) m≠s及び/又はn≠t、又は
(2-2) m=sかつn=tの時、
(2-2-1) L及びL’、又はピレンが、それぞれAr及びAr’上の異なる結合位置に結合しているか、(2-2-2) L及びL’、又はピレンが、Ar及びAr’上の同じ結合位置で結合している場合、L及びL’又はAr及びAr’のピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
6.下記一般式(8)で表される非対称ピレン誘導体。
【0054】
【化9】

【0055】
一般式(8)において、Ar、Ar’、L、L’、m、s及びtは上記一般式(7)と同じであり、Ar、Ar’、L及びL’の具体例、好ましい具体例及び置換基の例も同様である。また、一般式(8)において、L’又はAr’は、ピレンの2〜10位のいずれかに結合する。
ただし、一般式(8)において、tが奇数の時、Ar,Ar’,L,L’は下記(1')又は(2')を満たす。
(1')Ar≠Ar’及び/又はL≠L’(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2')Ar=Ar’かつL=L’の時
(2-1')m≠s及び/又はt≠1、又は
(2-2')m=sかつt=1の時、
(2-2-1')L及びL’、又はピレンが、それぞれAr及びAr’上の異なる結合位置に結合しているか、(2-2-2')L及びL’、又はピレンが、Ar及びAr’上の同じ結合位置で結合している場合、L’又はAr’のピレンにおける置換位置が6位である場合はない。
7.下記一般式(9)で表される非対称ピレン誘導体。
【0056】
【化10】

【0057】
一般式(9)において、Ar、Ar’、L、L’、m及びsは上記一般式(7)と同じであり、Ar、Ar’、L及びL’の具体例、好ましい具体例及び置換基の例も同様である。
【0058】
本発明の製造方法は、分子内に窒素原子を1〜12個有する芳香族化合物の粗生成物を用いて有機EL素子用材料を製造する場合にも好適である。
分子内に窒素原子を1〜12個有する芳香族化合物としては、芳香族ジアミン、芳香族トリアミン、芳香族テトラアミン等のアミン系化合物、ジカルバゾール誘導体、トリカルバゾール誘導体、テトラカルバゾール誘導体等のカルバゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、フェナンスロリン系化合物、キノキサリン系化合物、ヘキサアザトリフェニレン系化合物、インドリジン系化合物、ビピリジル系化合物、ピリミジン系化合物、トリアジン系化合物及びフタロシアニン系化合物等が挙げられる。
上述した芳香族化合物のうち、特に対称性が低い化合物は、芳香族ハロゲン化物を何種類も用いたり、ハロゲンの反応性の差を利用して複雑な反応を行ったりするので、特にハロゲン不純物が有機EL素子用材料内に残留しやすい。また分子内に窒素原子を有する化合物は、遊離したハロゲンと分子内錯体を形成しやすく、ハロゲン不純物が残留しやすい。これらの理由により、本発明のような化学反応処理を経由する製造方法は、特に高純度領域において有機EL素子用材料内のハロゲン含有量を低減させるためにはきわめて有効である。
分子内に窒素原子を1〜12個有する芳香族化合物の具体例としては下記一般式(10)〜(14)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
【化11】

【0060】
(式中、Ar5〜Ar13及びAr21〜Ar23は、それぞれ独立に、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、及び核炭素数5〜50の芳香族複素環基から選ばれる基を示す。Ar5とAr6、Ar7とAr8及びAr9Ar10は、それぞれ互いに連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよい。a〜c及びp〜rは、それぞれ0〜3の整数である。置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基としては、上記一般式(7)で例示したもの同様のものが挙げられる。核炭素数5〜50の芳香族複素環基としては、上記一般式(1)におけるXで例示したものと同様のものが挙げられる。)
【0061】
【化12】

【0062】
(式中、Ar25〜Ar28は、それぞれ独立に、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、及び置換又は無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基から選ばれる基を示す。Ar26とAr27は、互いに連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよい。L1は、単結合、置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、及び核炭素数5〜50の芳香族複素環基から選ばれる基を示す。xは0〜5の整数である。置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、及び核炭素数5〜50の芳香族複素環基としては、上記一般式(10)と同様のものが挙げられる。)
【0063】
HAr−L2−Ar31−Ar32 (12)
(式中、HArは、置換又は無置換の炭素数3〜40の含窒素複素環を示す。L2は、単結合、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換又は無置換の炭素数3〜60のヘテロアリーレン基、及び置換又は無置換のフルオレニレン基から選ばれる基を示す。Ar31は、置換又は無置換の炭素数6〜60の2価の芳香族炭化水素基を示す。Ar32は、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリール基、及び置換又は無置換の炭素数3〜60のヘテロアリール基から選ばれる基を示す。)
【0064】
【化13】

【0065】
(式中、Rは、水素原子、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換又は無置換のピリジル基、置換又は無置換のキノリル基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、及び置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基から選ばれる基を示す。nは0〜4の整数である。R31は、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換又は無置換のピリジル基、置換又は無置換のキノリル基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数1〜20のアルコキシ基から選ばれる基を示す。R32は、水素原子、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換又は無置換のピリジル基、置換又は無置換のキノリル基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、及び置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基から選ばれる基を示す。L3は、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換又は無置換のピリジニレン基、置換又は無置換のキノリニレン基及び置換又は無置換のフルオレニレン基から選ばれる基を示す。Ar31は、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換又は無置換のピリジニレン基、及び置換又は無置換のキノリニレン基から選ばれる基を示す。Ar32は、置換又は無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換又は無置換のピリジル基、置換又は無置換のキノリル基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、及び置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基から選ばれる基を示す。)
【0066】
本発明の芳香族化合物は、有機EL素子、有機半導体、電子写真感光体等用の材料として好適である。本発明の芳香族化合物を用いた有機EL素子の代表的な素子構成としては、
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
などの構造を挙げることができる。
これらの中で通常(8)の構成が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。また、上記有機EL素子において、本発明の芳香族化合物は、上記のどの有機層に用いられてもよいが、これらの構成要素の中の発光帯域又は正孔輸送帯域に含有されていることが好ましい。
【実施例】
【0067】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
合成例1(9−(ナフチル−2−イル)−10−(4−(ナフチル−1−イル)フェニル−1−イル)アントラセン(BH1)の合成)
(1)9−(ナフチル−2−イル)アントラセンの合成
窒素気流下、9−ブロモアントラセン30.0kg(東京化成社製)、2−ナフチルボロン酸24.1kg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.157kg、炭酸カリウム48.4kg(日本曹達社製)、トルエン150L、ソルミックス150Lを1000Lの反応釜に入れ、78℃で50時間反応させた。
これを室温まで冷却した後、テトラヒドロフラン188L、水188Lを加え分液し、5質量%水酸化ナトリウム水溶液115L、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液115L、5質量%塩化ナトリウム水溶液115Lの順に用いて洗浄し、有機層を減圧濃縮した。
この有機層を、シリカゲル300kgを充填したカラムを用い、トルエンを展開溶媒として精製し、減圧濃縮後、スラリー状になるまでn−ヘプタン590Lを加え、室温で濾過した。これを乾燥させることにより、9−(ナフチル−2−イル)アントラセン33.2kgが得られた。
【0068】
(2)9−ブロモ−10−(ナフチル−2−イル)アントラセンの合成
窒素気流下、上記(1)で得られた9−(ナフチル−2−イル)アントラセン33.2kg、ジメチルホルムアミド265Lを1000Lの反応釜に入れ、N−ブロモコハク酸イミド21.36kg(みどり化学社製)をジメチルホルムアミド100Lに溶解したものを30〜35℃の範囲内で滴下した。
4時間反応させた後、水454Lを滴下し、反応物を濾過し、得られた結晶を水60Lで洗浄した。これにクロロホルム276Lに溶解し、水80Lで洗浄し、硫酸マグネシウム7kgで乾燥させた後、有機層を減圧濃縮し、スラリー状になるまでn−ヘプタン590Lを加え、室温で濾過した。得られた結晶をトルエン57Lに溶解し、n−ヘプタン230L添加後、−5℃まで冷却し、その後60℃まで昇温し、結晶を濾取した。これを乾燥させたところ、9−ブロモ−10−(ナフチル−2−イル)アントラセン34.6kgが得られた。
【0069】
(3)(9−(ナフチル−2−イル)アントラセン−10−イル)ボロン酸の合成
窒素気流下、上記(2)で得られた9−ブロモ−10−(ナフチル−2−イル)アントラセン17.3kg、テトラヒドロフラン138Lを200Lの反応釜に入れ、−70℃に冷却し、17質量%n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液20.4kg(アジアリチウム社製)を−64〜−70℃で滴下し、同温で2時間反応させた。これにホウ酸トリメチル9.38kg(大八化学社製)を−64〜−70℃で滴下し、同温で2時間反応させた。これに5mol/Lの塩酸103Lを5℃以下で滴下し、室温で分液し、有機層を5質量%炭酸水素ナトリウム60Lで洗浄し、トルエン60Lで抽出した。
上記と同様の工程をもう一度行い、両者併せたものを10質量%塩化ナトリウム水溶液120Lで洗浄し、減圧濃縮を行った。スラリー状になるまでn−ヘプタン200Lを加え、結晶を濾過し、50℃に加温したトルエン30L中で洗浄し、室温まで冷却した後、結晶を濾取した。これを乾燥させたところ、(9−(ナフチル−2−イル)アントラセン−10−イル)ボロン酸20.3kgが得られた。
【0070】
(4)1−(4−ブロモフェニル−1−イル)ナフタレンの合成
窒素気流下、1−ナフチルボロン酸14.7kg、4−ブロモヨードベンゼン22.0kg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.797kg、炭酸カリウム24.7kg(日本曹達社製)及びトルエン220Lを内容積500Lの反応釜に入れ、75℃で32時間反応させた。
これに水220Lを加えて分液し、5質量%水酸化ナトリウム水溶液130L、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液130L、5質量%塩化ナトリウム水溶液130Lの順に用いて洗浄した。この洗浄物を減圧濃縮し、シリカゲル220kgを充填したカラムを用い、展開溶媒としてn−ヘプタンを用いて精製し、減圧濃縮後、減圧蒸留を行い、1−(4−ブロモフェニル−1−イル)ナフタレン16.9kgを得た。
【0071】
(5)9−(ナフチル−2−イル)−10−(4−(ナフチル−1−イル)フェニル−1−イル)アントラセン(BH1)の合成
窒素気流下、上記(3)で得られた(9−(ナフチル−2−イル)アントラセン−10−イル)ボロン酸5.0kg、上記(4)で得られた1−(4−ブロモフェニル−1−イル)ナフタレン4.07kg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム332g、炭酸カリウム5.95kg(日本曹達社製)、水50L及びジメトキシエタン50Lを内容積200Lの反応釜に入れ、75℃で18時間反応させた。
室温まで冷却した後、結晶を濾取し、水24L、メタノール24L及びn−ヘプタン24Lで洗浄した。次に50℃のn−ヘプタン44L中で洗浄し、室温まで冷却した後、結晶を濾取した。
これを、シリカゲル25kgを充填したカラムで、展開溶媒としてヘキサン/トルエン=3/1を用いて精製し、減圧濃縮した後、アセトン2.5Lを加え濾過し、アセトン2.5L、ヘキサン2.5Lで洗浄した。これを乾燥させた後、真空度3×10-3Pa、ボート温度270〜280℃で昇華精製を行い、9−(ナフチル−2−イル)−10−(4−(ナフチル−1−イル)フェニル−1−イル)アントラセン(BH1)4.81kgを得た。
このBH1のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)純度は、面百値で99.98%であった。このBH1中に存在するBr量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、28質量ppmであった。
【0072】
実施例1(BH1のグリニャール反応処理)
アルゴン気流下、BH1 600gを無水THF 9L中に懸濁させ、そこに32質量%フェニルマグネシウムブロマイドのテトラヒドロフラン溶液(東京化成社製)60mlを氷冷下で徐々に滴下し、50〜60℃で30分間攪拌した。希硫酸を加えて未反応物を分解し、トルエンで反応物を抽出し、有機層を5質量%NaOH水溶液、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液及び10質量%食塩水で洗浄した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にトルエンを加えて原液とし、シリカゲルとアルミナを使用してカラムによる精製を行った。留出液を減圧濃縮しスラリー状になったところでヘプタン2Lを徐々に投入し、その後冷却した。5℃まで冷却後に結晶を濾過し、黄色結晶490gを得た。
この黄色結晶を真空度3×10-3Pa、ボート温度270〜280℃で昇華精製し、グリニャール反応処理BH1(以下、GBH1という)415gを得た。
このGBH1のHPLC純度は面百値で99.99%以上であり、このGBH1中に存在するBr量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、1質量ppm未満であった。
【0073】
実施例2(BH1の有機リチウム試薬反応処理)
窒素パージ下、BH1 600g、無水トルエン5Lと無水エーテル5Lに溶解し、そこに15質量% n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(東京化成社製)75mlを−78℃で徐々に加えた。その後0℃で1時間攪拌し、水を加えて反応を停止した。トルエンで反応物を抽出し、有機層を5質量%NaOH水溶液、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液及び10質量%食塩水で洗浄した後に減圧濃縮した。濃縮残渣にトルエンを加え原液とし、シリカゲルとアルミナを使用してカラムによる精製を行った。留出液を減圧濃縮しスラリー状になったところでヘプタン2Lを徐々に投入し、その後冷却した。5℃まで冷却後に結晶を濾過し、黄色結晶495gを得た。
この黄色結晶を真空度3×10-3Pa、ボート温度270〜280℃で昇華精製し、有機リチウム試薬反応処理BH1(以下、LBH1という)421gを得た。
このLBH1のHPLC純度は面百値で99.99%以上であり、このLBH1中に存在するBr量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、1質量ppm未満であった。
【0074】
実施例3(BH1の鈴木カップリング反応処理)
窒素パージ下、BH1 600g、トルエン9L、フェニルボロン酸14.4g、炭酸カリウム49.2g及び水3L、Pd(PPh3426gを仕込み、75℃まで昇温した。同温で一晩熟成後に冷却し、水層を分離した。有機層を5質量%NaOH水溶液、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液、10質量%食塩水で洗浄後に減圧濃縮した。濃縮残渣にトルエンを加え原液とし、シリカゲルとアルミナを使用してカラムによる精製を行った。留出液を減圧濃縮しスラリー状になったところでヘプタン1920mlを徐々に投入し、その後冷却した。5℃まで冷却後に結晶を濾過し、黄色結晶540gを得た。
この黄色結晶を真空度3×10-3Pa、ボート温度270〜280℃で昇華精製し、鈴木カップリング反応処理BH1(以下、SBH1という)475gを得た。
このSBH1のHPLC純度は面百値で99.99%以上であり、このSBH1中に存在するBr量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、1質量ppm未満であった。
【0075】
合成例2(N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニリル)ベンジジン(HT1)の合成)
内容積1000mlの三つ口フラスコに4−ブロモビフェニル100g(東京化成社品)、ベンズアミド23.1g(東京化成社製)、ヨウ化第一銅3.6g(関東化学社製)、無水炭酸カリウム58g(関東化学社製)を入れた。さらに攪拌子を入れ、フラスコの両側にラバーキャップをセットし、中央の口に還流用蛇管、その上に三方コックとアルゴンガスを封入した風船をセットし、系内を真空ポンプを用いて3回、風船内のアルゴンガスで置換した。
次にジエチルベンゼン500mlをシリンジでラバーセプタムを通して加え、フラスコをオイルバスにセットし、溶液を攪拌しながら徐々に200℃まで昇温した。6時間後、オイルバスからフラスコを外して反応を終了させ、アルゴン雰囲気下、12時間放置した。
反応溶液を分液ロートに移し、ジクロロメタン1000mlを加えて沈殿物を溶解させ、飽和食塩水600mlで洗浄後、有機層を無水炭酸カリウムで乾燥させた。炭酸カリウムを濾別して得られた有機層の溶媒を留去し、得られた残渣にトルエン2000mlとエタノール400mlを加え、乾燥管を装着して80℃に加熱し、残渣を完全に溶解した。その後12時間放置し、室温まで除冷することにより再結晶化させた。
析出した結晶を濾別し、60℃で真空乾燥させることによりN,N−ジ−(4−ビフェニリル)ベンズアミド74gを得た。
内容積3Lの三口フラスコに、N,N−ジ−(4−ビフェニリル)ベンズアミド70g、4,4’−ジヨードビフェニル31.5g(和光純薬社製)、ヨウ化第一銅1.5g、水酸化カリウム36gをそれぞれ入れ、ひとつの側口にラバーキャップを装着し、中央に還流用蛇管、その上に三方コックとアルゴンガスを封入した風船をセットし、系内を真空ポンプを用いて、3回風船内のアルゴンガスで置換した。
次にキシレン1000mlをシリンジでラバーセプタムを通して加え、フラスコをオイルバスにセットし、溶液を攪拌しながら140℃まで徐々に昇温した。6時間、140℃で攪拌後、オイルバスからフラスコを外し、12時間室温で放置した。
析出した沈殿物をジクロロメタン3Lで完全に溶解して分液ロートに移した後、飽和食塩水3Lで洗浄した後、分別した有機層を無水炭酸カリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を留去し、得られた残渣にトルエン10L、エタノール3Lを加え、乾燥管に装着して80℃まで加熱し、沈殿物を溶解させた後、室温まで除冷した。次に沈殿物を濾別し、少量のトルエン及びエタノールで洗浄した後、真空乾燥機を用いて60℃で3時間乾燥させ、真空度3×10-3Pa、ボート温度360〜370℃で昇華精製を行い、N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニリル)ベンジジン(HT1)70gを得た。
このHT1のHPLC純度は、面百値で99.98%であった。またこのHT1中に存在するBr量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、20質量ppmであった。
【0076】
実施例4(HT1の化学反応処理)
窒素パージ下、HT1 50g、トルエン5L、フェニルボロン酸0.8g、炭酸カリウム2.7g、200ml、Pd(PPh341.4gを仕込み75℃まで昇温した。同温で一晩熟成後に冷却し、水層を分離した。沈殿を濾過し、水、メタノール、アセトンで洗浄後、トルエンを用いて再結晶を行って精製し、黄色結晶47gを得た。
この黄色結晶を真空度3×10-3Pa、ボート温度350〜360℃で昇華精製し、化学反応処理HT1(以下、SHT1という)41gを得た。
このSHT1のHPLC純度は面百値で99.99%以上であり、このSHT1中に存在するBr量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、1質量ppm未満であった。
【0077】
実施例5(GBH1の評価)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に、上記透明電極を覆うようにして膜厚80nmのHT1を成膜した。このHT1膜は、正孔輸送層として機能する。
さらに膜厚40nmのGBH1を蒸着し成膜した。同時にドーパントとして、下記式で表されるアミン化合物D1を、GBH1とD1の質量比が40:2になるように蒸着した。この膜は、発光層として機能する。
この膜上に膜厚20nmのAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、下記式)膜を成膜した。このAlq膜は、電子輸送層として機能する。この後、LiFを1nmの厚さに蒸着し、電子注入層を形成した。このLiF膜上に金属Alを蒸着させて金属陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光色は青色であった。
初期輝度5000nit、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0078】
【化14】

【0079】
実施例6(LBH1の評価)
GBH1の代わりにLBH1を用いた以外は実施例5と全く同様に有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光色は青色であった。初期輝度5000nit、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0080】
実施例7(SBH1の評価)
GBH1の代わりにSBH1を用いた以外は実施例5と全く同様に有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光色は青色であった。初期輝度5000nit、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0081】
実施例8(SHT1の評価)
HT1の代わりにSHT1を用い、SBH1の代わりにBH1を用いた以外は実施例5と全く同様に有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光色は青色であった。初期輝度5000nit、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0082】
実施例9(GBH1及びSHT1の評価)
HT1の代わりにSHT1を用いた以外は実施例5と全く同様に有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光色は青色であった。初期輝度5000nit、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0083】
比較例1
SBH1の代わりにBH1を用いた以外は実施例3と全く同様に有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光色は青色であった。初期輝度5000nit、室温、DC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
以上の結果から、化学反応による脱ハロゲン化処理を行った材料を有機EL素子に用いると、著しく半減寿命が改善することが判った。とりわけ正孔輸送層と発光層の両方に脱ハロゲン化処理した材料を用いた場合に顕著な効果があった。
【0086】
合成例7(2−(2−ビフェニリル)−9,10−ビス(3−(1−ナフチル)フェニル)アントラセン(BH2)の合成)
下記の合成経路により下記式(A)で表されるBH2を合成した。
【0087】
【化15】

【0088】
(1)2−ビフェニリル−9,10−アントラキノン[化合物(A−1)]の合成
アルゴン雰囲気下、2−クロロアントラキノン3.4g(14mmol)、2−ビフェニリルボロン酸5g(17mmol,1.2eq)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.32g(0.35mmol,5質量%Pd)及び炭酸セシウム14g43mmol、2.5eq)を、無水ジオキサン40mlに懸濁させ、トリシクロヘキシルホスフィンのトルエン溶液1.1ml(25質量%,0.98mmol,1.4eq to Pd)を加えて80℃で10時間攪拌した。
得られた反応混合物を、水100mとトルエン300mlで希釈し、ゼオライトで不溶物を濾別した。有機層を濾液から分取し、飽和食塩水50mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去して濃赤色オイルを得た。このオイルを、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填)で精製した。精製は、ヘキサンと33質量%ジクロロメタンの混合溶媒で溶出させた後、ヘキサンと50質量%ジクロロメタンの混合溶媒で溶出させることにより行なった。この精製により、淡黄色固体7.1g(収率94%)を得た。得られた淡黄色固体は、 1H−NMR及びFDMS(フィールドディソープションマス分析)により、上記化合物(A−1)であることを確認した。 1H−NMR及びFDMSの測定結果を以下に示す。
1H−NMR (CDCl3,TMS) δ 7.18(5H, s),7.49(5H,s),7.76(2H,dd,J=6Hz,3Hz),8.08 (1H,d,J=8Hz),8.2-8.3 (3H,m)
FDMS,calcd for C26162 =360,found m/z=360(M+ ,100)
【0089】
(2)2−(2−ビフェニリル)−9,10−ビス(3−(1−ナフチル)フェニル)−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン[化合物(A−2)]の合成
アルゴン雰囲気下、3−(1−ナフチル)−1−ブロモベンゼン4.2g(15mmol,2.7eq)を無水トルエン25mlと無水THF25mlの混合溶媒に溶解し、ドライアイス/メタノール浴で−20℃に冷却した。これにn−ブチリリチウムのヘキサン溶液10ml(1.59mol/L,15.9mmol,1.06eq)を加え、−20℃で1時間攪拌した。これに2−(2−ビフェニリル)−9,10−アントラキノン[化合物(A−1)]2.0g(5.6mmol)を加え、室温で2時間攪拌して一晩放置した。
得られた反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液50mlで失活させ、有機層を分取し、飽和食塩水50mlで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填)で精製した。精製は、ヘキサンと50質量%ジクロロメタンの混合溶媒で溶出させ、続いてジクロロメタンで溶出させた後、ジクロロメタンと3質量%メタノールの混合溶媒で溶出させることにより行なった。この精製により、淡黄色アモルファス固体の化合物3.1g(収率74%)を得た。得られた化合物は、 1H−NMRにより、上記化合物(A−2)であることを確認した。 1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR (CDCl3,TMS) δ 2.36 (1H,s),2.89 (1H,s),6.7-7.9 (38H,m)
【0090】
(3)2−(2−ビフェニリル)−9,10−ビス(3−(1−ナフチル)フェニル)アントラセン(BH2)の合成
2−(2−ビフェニリル)−9,10−ビス(3−(1−ナフチル)フェニル)−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン[化合物(A−2)]1.1g(1.4mmol)と塩化第二スズ2水和物6.5g(29mmol,20eq)をTHF25mlに懸濁させ、濃塩酸15mlを加えて10時間還流した。
得られた反応混合物を濾別し、水及びメタノールで順次洗浄した後、乾燥させて淡黄色固体を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填)で精製した。精製は、ヘキサンと20質量%ジクロロメタンの混合溶媒で溶出させることにより行なった。この精製により、淡黄色固体1.0g(収率97%)を得た。得られた化合物は、 1H−NMR及びFDMSなどにより、上記BH2であることを確認した。 1H−NMR及びFDMSなどの測定結果を以下に示す。また、BH2のハロゲン元素含有量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、I量が5質量ppm、Br量が21質量ppm、Cl量が41質量ppmであった。
【0091】
1H−NMR (CDCl3,TMS) δ 6.93 (5H,bs),7.2-7.9 (31H,m),8.0-8.1 (2H,m)
FDMS,calcd for C5838=734,found m/z=734(M+ ,100)
λmax,407,385,366nm(PhMe)
Fmax,426,446nm(PhMe,λex=405nm)
Ip=5.69eV(500nW,82Y/eV)
Eg=2.92eV
Tg=130℃
【0092】
実施例10(BH2の有機リチウム試薬反応処理)
アルゴン雰囲気下、BH2 2.0gを無水THF10mlとトルエン10mlの混合溶媒に溶解し、−30℃に冷却した。n−ブチルリチウムの1.6mol/Lヘキサン溶液1.0mlを徐々に加え、−30℃で5時間攪拌した。得られた反応液に水1.0mlを徐々に加えた後、エバポレーターで減圧濃縮した。得られた固体をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填)で精製した。精製は、ヘキサンとトルエンの混合溶媒(ヘキサン/トルエン=3/1(質量比))で溶出させることにより行なった。得られた固体をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥させることにより、黄色の固体1.6g(回収率80%)を得た。これをLBH2と称する。
この固体中に存在するハロゲン元素量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、I量、Br量及びCl量のいずれも5質量ppm未満であった。
【0093】
実施例11(BH2の化学反応処理)
アルゴン雰囲気下、BH2 2.0g、フェニルボロン酸40mg(BH2の0.1当量、テトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)10mg(フェニルボロン酸の0.03当量)を無水トルエン10mlに溶解し、−30℃に冷却した。2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液1.3mlを加え、80℃で6時間攪拌した。得られた反応液に水1.0mlを徐々に加えた後、エバポレーターで減圧濃縮した。得られた固体をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填)で精製した。精製は、トルエンで溶出させ、続いて塩化メチレンで溶出させることにより行なった。得られた固体をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥させることにより、黄色の固体2.0g(回収率100%)を得た。これをSBH2と称する。
この固体中に存在するハロゲン元素量を、ICP−MS(燃焼)法により測定したところ、I量、Br量及びCl量のいずれも5質量ppm未満であった。
【0094】
実施例12(LBH2の評価)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に、上記透明電極を覆うようにして膜厚40nmのN,N'−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジアミノビフェニル膜(TPD232膜)を成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。
このTPD232膜上に、膜厚40nmのN,N,N',N'−テトラキス(4−ビフェニル)−4,4'−ベンジン(BPTPD)を蒸着し成膜した。このBPTPD膜は、正孔輸送層として機能する。
次に、LBH2と1,6−ビス(ジフェニルアミノ)ピレンを質量比20:1で、ジオキサンとイソプロピルアルコールとの混合溶媒(容量比1:8)に溶解し、3質量%の塗布溶液を調製した。この塗布液を用いて、上記BPTPD膜上に、スピンコート法により膜厚40nmの発光層を成膜した。得られた積層基板を、10-6Pa程度の真空下で、赤外加熱源(ハロゲンランプ)にて基板温度が120℃となるように加熱した。
四重極質量分析装置により測定結果から、30分間の加熱で膜中の残留溶媒が除去されていることが確認された。続いてこの積層基板を大気に接触させることなく、基板搬送装置により真空蒸着装置内に移送し、膜厚30nmのAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、上記式)膜を、真空蒸着法により成膜した。このAlq膜は、電子輸送層として機能する。
さらに、膜厚1μmのフッ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。この電子注入層上に金属Alを真空蒸着させて金属陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この素子に5.0Vの電圧を印加したところ、2.3mA/cm2の電流が流れ、色度(0.15,0.26)で94cd/m2の青色発光が得られた。発光効率は、4.1cd/A及び2.61m/Wであった。また、この素子を100cd/m2から室温で低電流測定したところ、輝度半減寿命は13,000時間であった。
【0095】
実施例13(SBH2の評価)
LBH2の代わりにSBH2を用いた以外は実施例12と全く同様に有機EL素子を作製した。この素子に5.0Vの電圧を印加したところ、2.3mA/cm2の電流が流れ、色度(0.15,0.26)で92cd/m2の青色発光が得られた。発光効率は、4.0cd/A及び2.51m/Wであった。また、この素子を100cd/m2から室温で低電流測定したところ、輝度半減寿命は12,000時間であった。
【0096】
比較例2(BH2の評価)
LBH2の代わりにBH2を用いた以外は実施例12と全く同様に有機EL素子を作製した。この素子に5.0Vの電圧を印加したところ、2.5mA/cm2の電流が流れ、色度(0.15,0.26)で93cd/m2の青色発光が得られた。発光効率は、3.7cd/A及び2.31m/Wであった。また、この素子を100cd/m2から室温で低電流測定したところ、輝度半減寿命は9,800時間であった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の製造方法により得られる芳香族化合物は、有機EL素子、有機半導体、電子写真感光体等用の材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン含有中間体を介して製造された、ハロゲン元素含有量が10〜1000質量ppmである芳香族化合物を、さらに脱ハロゲン化剤と反応させることにより、ハロゲン元素含有量を10質量ppm以下とすることを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
芳香族化合物が、有機エレクトロルミネッセンス用材料である請求項1に記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項3】
脱ハロゲン化剤が、グリニャール試薬、有機リチウム化合物及びボロン酸誘導体から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
芳香族化合物が、核炭素数14〜20の縮合芳香族環を分子内に有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項5】
芳香族化合物が、分子内に窒素原子を1〜12個有する化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項6】
ハロゲン元素が、少なくとも臭素又はヨウ素である請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項7】
グリニャール試薬が、フェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムブロミド及びエチルマグネシウムヨージドから選ばれる少なくとも一種である請求項3〜6のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項8】
有機リチウム化合物が、n−ブチルリチウム及びフェニルリチウムから選ばれる少なくとも一種である請求項3〜6のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項9】
ボロン酸誘導体が、フェニルボウ酸である請求項3〜6のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって製造された芳香族化合物。
【請求項11】
有機エレクトロルミネッセンス用材料である請求項10に記載の芳香族化合物。


【公開番号】特開2007−77078(P2007−77078A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267409(P2005−267409)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】