説明

苗移植機

【課題】畝溝の幅が異なるいずれの圃場に対しても、前輪と鎮圧輪を畝溝上を直進性良く走行させることができる苗移植機を提供すること。
【解決手段】左右一対のガイド輪8,8はガイド輪軸17eに支持されるが、該ガイド輪軸17eのガイド輪取付位置は左右方向に変更可能であるので、畝溝の幅に合わせてガイド輪軸17eの左右方向幅を調整して、ガイド輪8,8の左右に畝Uの傾斜面の下端部に当接させた状態で、機体を畝溝に沿って前方に案内することができる。こうして後輪2が畝Uの上面を走行する構成でありながら、前輪3及びガイド輪8,8により、精度良く機体の進行方向を維持できる。また、ガイド輪8,8の間には前輪3があり、該前輪3のタイヤ幅は苗植付具60が苗を植え付け易い大きさに設定されている。また前輪3の畝溝鎮圧力はスプリング3bで付勢された支持部材17cで調整して、圃場の硬さに応じて変更可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝に追従して機体を走行させる歩行型のたばこや野菜の苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畝溝又は畝上を走行する前輪と畝溝又は畝上を走行する左右一対の車輪を機体に設けると共に、機体の後部に操舵用ハンドルを設け、操縦者が歩行で機体の進行に追従しながらハンドル操作を行う歩行型の苗移植機が知られている。
【0003】
上記苗移植機の中には畝溝に苗を植え付ける苗植付装置を備え、機体の進行方向の前方中央の前輪を畝溝上を走行させ、左右一対の後輪を畝上を走行させる苗移植機がある。このような苗移植機の中には、その直進走行性を維持するために後輪の後方に一対の鎮圧輪を配置して、この鎮圧輪を畝溝上を走行させる構成を採用した下記特許文献1記載の苗移植機がある。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を向いて左右方向をそれぞれ左、右と言い、前進方向を前、後退方向を後と言うことにする。
【特許文献1】特開2004−180536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の苗移植機は、一対の前輪と一対の鎮圧輪を畝溝上を走行させることで、その直進走行性を維持する優れた構成を備えているが、溝幅が広いと一対の前輪と一対の鎮圧輪が畝溝上を蛇行する可能性がある。また溝幅が狭すぎると一対の前輪と一対の鎮圧輪が畝溝上を走行できなくなる可能性もある。
本発明の課題は、畝溝の幅が異なるいずれの圃場に対しても、前輪と鎮圧輪を畝溝上を直進性良く走行させることができる苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は次の解決手段で解決される。
すなわち、エンジン(9)を搭載した機体と、圃場の畝上を走行する機体の進行方向左右一対の後輪(2,2)と、圃場の畝溝に苗を植え付ける苗植付具(60)と、該苗植付具(60)より前方で圃場の畝溝を走行する前輪(3)と、前輪(3)の近傍で畝溝上を走行し、かつ畝の傾斜面に当接して機体の進行方向を案内する機体の進行方向左右一対のガイド輪(8,8)とを設けた苗移植機である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、後輪が畝上面を走行する構成でありながら、前輪(3)及びガイド輪(8,8)により、精度良く進行方向を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
図1の側面図と図2の平面図は本実施例のさとうきび苗などの移植用の野菜移植機の全体構造図であり、図3は前方から見た前輪3とその支持機構を示す図である。また、図4は図1の苗移植機の走行部と植付部の連結部分の斜視図である。
【0008】
この野菜移植機1は、後輪2,2と前輪3を有する走行部1aによって畝溝上に機体を進行させながら、苗供給装置4、苗植付装置5等からなる植付部1bで野菜のポット苗を畝溝に植付ける構成となっている。作業者は、機体後方に設けた操縦ハンドル6で適宜機体を操向操作すると共に、植付作業時には機体側方を歩きながら苗供給装置4へ苗を補給する。以下、各部の構成について説明する。
【0009】
まず、走行部1aについて説明する。
走行部ミッションケース7の前側にエンジン9が配置されている。エンジン9の左側面部には該エンジン9の動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上側をボンネット12が覆っている。走行部ミッションケース7の背面部に側面視長方形の左右に長い連結フレーム13が一体に設けられており、この連結フレーム13の背面右端部に走行部1aと操縦ハンドル6をつなぐメインフレーム14の前端部が固着連結されている。メインフレーム14は、植付部1bの平面視右側を通って後方に延び、途中で斜め上向きに湾曲し、そのまま植付部1bの後方位置まで延びている。そして、その後端部に操縦ハンドル6が固着して取り付けられている。
【0010】
走行部ミッションケース7の左右側面から突出する回動筒部15,15に走行伝動ケース16,16が一体に取り付けられ、その走行伝動ケース16,16の先端部に駆動走行車輪である後輪2,2が軸支されている。また、エンジン9の下側のエンジン支持フレーム17には機体中央部にピボット軸17aが設けられ、該ピボット軸17aに正面視でコ字状の車軸受け部17bが設けられている。ピボット軸17aは機体に対する上下支持位置を変更可能な取付穴を有し、その上下支持位置を変えることで、前輪3の接地高さを調節できる。また車軸受け部17bのコ字状の空間内には取付部材3aを介して前輪3が支持されている。車軸受け部17bのコ字状の空間の内側には弾性的に取付部材3aを支持するスプリング3b付きの支持部材17cが設けられている。支持部材17cは車軸受け部17bのコ字状の空間の内側で、水平方向に設けられたスプリング反力受け部材17dで支持されている。また車軸受け部17bの左右外側には左右一対のガイド輪8,8を支持するガイド輪軸17eが設けられている。ガイド輪軸17eには左右方向に複数の取付穴があり、ガイド輪8,8の取付位置を変更できる構成になっている。
【0011】
走行部1aには機体に対して後輪2,2を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、接地プレート28が畝溝面を検知して感知リンク機構29を介して油圧バルブユニット20内の昇降シリンダ2を作動制御するものである。
【0012】
走行部ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニット20には、その後方に向けて昇降シリンダ21が設けられ、該シリンダ21のピストンロッド21aの先端部に天秤杆22が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッド21aは、油圧バルブユニット20とメインフレーム14に取り付けた取付部材23とに支持されたガイド軸24に沿って摺動するようになっている。
【0013】
天秤杆22の左右両端部と回動筒部15,15に固着したスイングアーム25,25が連結ロッド26,26を介してそれぞれ連結している。左側の連結ロッド26は、ローリングシリンダ27が組み込まれており、該シリンダ27を伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0014】
昇降シリンダ21及びローリングシリンダ27は、前記油圧ポンプ10から供給される作動油を油圧バルブユニット20内の制御バルブ(図示せず)で制御して作動させられる。昇降シリンダ21を伸縮作動させると、天秤杆22が前後し、スイングアーム25が昇降シリンダ21と連結されているので、天秤杆22の前後動作に連動して上下動して、これと一体の左右の後輪2,2が同方向に同量だけ、機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ27を伸縮作動させると、左右一方(左側)の後輪2のみが機体に対して上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0015】
次に植付部1bの構成を説明する。
連結フレーム13の上面に走行部ミッションケース7から伝動される植付部ミッションケース30の下部が固着され、該植付部ミッションケース30の上部に第一植付伝動ケース31の基部が固着され、更に該第一植付伝動ケース31の先端部に第二植付伝動ケース32の基部が固着されている。そして、第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32に後述する苗植付装置5の作動機構が連結されている。苗植付装置5の苗植付具60は、走行部1aよりも後側に位置している。また、植付部ミッションケース30に基部を固着した上部フレーム34に苗載台55が取り付けられ、苗供給装置4は苗載台55の後方に配置され、また苗供給装置4と苗載台55は苗植付具60の上方に位置するように配置されている。
【0016】
図4に示すように、植付部ミッションケース30の入力軸30aは該ケース30の下端部から前方に突出しており、これを走行部ミッションケース7のPTO取出部7aに挿入することにより、該PTO取出部7a内の走行部側の軸(図示せず)に伝動連結するようになっている。また、植付部ミッションケース30は、前記連結フレーム13にボルト38,…によって着脱自在に取り付けられている。このため、ボルト38,…を外し、PTO取出部7aから入力軸30aを抜くことにより、走行部1aから植付部1bごと取り外すことができ、植付部1bのメンテナンスが容易に行える。
【0017】
側面視において、植付部ミッションケース30は連結フレーム13から後方上向きに設けられ、且つ第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の上端部から後方下向きに設けられ、且つ第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31の下端部から水平後方に設けられている。この構成とすることにより、機体の前後長を必要以上に長くすることなく、第二植付伝動ケース32の下側に前記天秤杆22が移動するためのスペースが確保されている。
【0018】
また、平面視において、植付部ミッションケース30は、連結フレーム13の右端部に固着されており、昇降シリンダ21と天秤杆22と右側の連結ロッド26の間に形成される機体制御機構の右側空間部を通って上方に延びている。そして、第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の左側、第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31のさらに左側に配置されている。ローリングシリンダ27が設けられていない分だけ左側空間部よりも右側空間部の方が広いので、植付部ミッションケース30を右側に配置するのが好ましい。
また、植付部ミッションケース30、第一植付伝動ケース31及び第二植付伝動ケース32を左右に振り分けて配置することにより、左右の重量バランスが良好となる。
【0019】
また、図3に示すように、左右一対のガイド輪8,8はガイド輪軸17eに支持されるが、該ガイド輪軸17eのガイド輪取付位置は左右方向に変更可能であるので、畝溝の幅に合わせてガイド輪軸17eの左右方向幅を調整して、ガイド輪8,8の左右側部を畝Uの傾斜面の下端部に当接させた状態で、機体を畝溝に沿って前方に案内することができる。 したがって、後輪2が畝Uの上面を走行する構成でありながら、前輪3及びガイド輪8,8により、精度良く機体の進行方向を維持できる。
【0020】
また、ガイド輪8,8の間には前輪3があり、該前輪3のタイヤ幅は苗植付具60が苗を植え付け易い大きさに設定されている。また前輪3の畝溝鎮圧力はスプリング3bで付勢された支持部材17cで調整して、圃場の硬さに応じて変更可能になっている。
【0021】
さとうきび移植機のような、さとうきび苗の畝溝植えの場合、下方向にスイングアーム25の回動角度を設定しているため、昇降シリンダ21を縮小させても後輪2が苗移植機の機体の重心付近まで移動しない問題点がある。
これは昇降シリンダ21のシリンダストロークが足りないためであるので、図5の要部側面図で説明するように、新規なストローク長増加用アーム36を用いる。このストローク長増加用アーム36の先端部とスイングアーム25とをローリングシリンダ27とその先端に接続する連結ロッド26で連結し、さらに該アーム36の中間部に設けた長穴36a内を摺動自在なピン22aを設け、該ピン22aを天秤秤22に固定させる。アーム36の回動支点を支持し、機体左右方向に延びたロッド36bをメインフレーム14に固定し、該ロッド36bの両端に回動自在にストローク長増加用アーム36の基部を取り付ける。
【0022】
上記構成で昇降シリンダ21が伸びるとストローク長増加用アーム36内の長穴36aを天秤秤22が摺動することで昇降シリンダ21によるストローク長が増えるため、後輪2のリフト幅が大きくなり、また、アーム36がスムーズにスイングする。このとき、アーム36の長穴36a内を天秤秤22に設けたピン22aが摺動自在であるが、アーム36の回動長さを変える場合には図6に示すようにアーム36の先端部側に多段状に設けた取付穴36cへの連結ロッド26の取付け位置を変えれば良い。
【0023】
また、図7(a)は図6のストローク長増加用アーム36の回動支点位置にあるロッド36bを昇降シリンダ21のストローク長の中間に配置した構成の側面図を、図7(b)は前記回動支点となるロッド36bを昇降シリンダ21のストローク長の最短側に寄せた構成の側面図を示す。
【0024】
図7(c)と図7(d)はそれぞれ図7(a)の構成と図7(b)の構成に対応させてアーム36の動きを分かり易く図示したものであるが、図7(a)の構成における後輪2のリフト可能な高さh1と、図7(b)の構成における後輪2のリフト可能な高さh2との間には
h1<h2
の関係がある。
従ってアーム36の回動支点位置にあるロッド36bを昇降シリンダ21のストローク長の中間に配置した場合は、アーム36の先端部の上下移動が少なくなるため、連結ロッド26の振れを少なくできる。
【0025】
また図6に示すようにアーム36の先端部側に多段に設けた取付穴36cへの連結ロッド26の取付位置を変えることで、機体のスイング変化量を変えることができる。さらに、長さの異なるアーム36を用意しておき、これを交換することでも前記スイング変化量(後輪2のリフト高さ)を変えることができる。アーム長が短いと前記スイング変化量が小さくなり、アーム長が長いと前記スイング変化量が大きくなる。
【0026】
次に苗供給装置4と苗植付装置5の説明を簡単にする。
苗供給装置4は、複数の苗供給カップ40、…を円周上に等間隔で配置したターンテーブル41を備えている。このターンテーブル41は機体の左右中心よりも若干右寄りの位置に配置されている。ターンテーブル41は詳細な説明は省略するが、中心軸42(図2)を支点にして回転自在に設けられ、苗植付装置5の作動と同期して苗供給カップ40、…の取付間隔分づつ間欠的に回転し、各苗供給カップ40、…の底部の開閉自在なシャッタ(図示せず)が特定位置で開放することで苗植付装置5(の先端が尖ったカップ状の苗植付具60)へ供給された苗を畝溝に植え付けることができる。なお、カップ状の苗植付具60が図1の一点鎖線Xに示す軌跡で動き、その上死点近傍で苗供給カップ40から苗を受け取りながら、その下死点近傍で開き、中の苗が畝溝に植え付けられる。
【0027】
ターンテーブル41の前側には育苗トレイを載せられる苗載台55が設けられている。苗載台55は、上部フレーム34から前方に突設した図示しない取付棒を介して取り付けられ、育苗トレイを水平に支持するように設けられている。
【0028】
人手により、苗載台55に載置されている育苗トレイのポット苗を各苗供給カップ40、…に補給する。ターンテーブル41の回転により苗の入った苗供給カップ40が苗供給位置まで移動すると、シャッタ(図示せず)が開き苗が苗植付装置5の苗植付具60の中に落下する。
【0029】
また苗植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪80、80が設けられている。この鎮圧輪80、80は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、ロッド92に遊嵌させた重り81によって下向きに付勢されており、機体の進行に伴って畝溝面を転動し、苗が植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。
【0030】
また、ロッド92はメインフレーム14の前後中間部に固着した支持枠86に上下に揺動自在に支持された揺動フレーム87の後端部に取り付けられている。畝溝面の凹凸に応じて鎮圧輪80、80が機体に対し上下動すると、その鎮圧輪80、80の上下動により接地プレート28が畝溝面を検出して感知リンク機構29を介して油圧バルブユニット20内の昇降用油圧バルブ(図示せず)に伝えられ、揺動フレーム87の角度が元に戻る方向に昇降シリンダ21を作動させる。これにより、畝溝面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御する。
【0031】
更に、メインフレーム14の後部には鎮圧輪固定レバー90が回動自在に支持され、鎮圧輪固定レバー90は鎮圧輪80、80を非接地状態まで上昇させた位置で固定するものである。
揺動フレーム87は機体の右側に配置されているので、機体の左側を歩行する作業者がこの揺動フレーム87に接触することがなく、確実な鎮圧を行えると共に、機体の昇降を正確に行える。
【0032】
操縦ハンドル6は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部にグリップ6a、6aが取り付けられている。旋回時や路上走行時には、作業者がグリップ6a、6aを握って操縦する。操縦ハンドル6は機体の左右中心から右側にずらせて設けられているので、畝の右側の溝を歩行しながらハンドル操作や苗補給作業を行いやすく、また、機体の左側を歩行しながら苗補給作業を行う時に邪魔にならない。
【0033】
グリップ6a、6aの下側にはサイドクラッチレバー100、100が設けられている。また、操縦ハンドル6の基部には操作パネル101が設けられ、該操作パネル101に、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー102、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー103等が設けられている。
【0034】
なお、前輪3が駆動輪で、前後輪3、2が共に上下するタイプの苗移植機では、ハンドル6を持ち上げて後輪2を圃場から浮かせて前輪3で機体を旋回させる。
【0035】
また、本発明の苗移植機は、図8の側面図と図9(a)の平面図に示すように、後輪部をクローラ112で構成した構成にしても良い。
図8と図9(a)に示すように後輪部をクローラ112で構成する場合には、ぬかるんだ圃場での走行性が車輪の場合より向上する。また、クローラ112の駆動スプロケット113と従動スプロケット114の間隔を短くすることでクローラ112の軸間を短くすることができるので、苗供給装置4よりも前方にクローラ112が設置されることになり、クローラ112が苗供給装置4への苗補給の邪魔にならない。また、クローラ112を苗供給装置4より前方に配置できるので苗供給装置4の横にオペレータが立って苗移植付作業ができる。
【0036】
さらに、クローラ112のトレッドを調節できるようにクローラ112の駆動スプロケット113を支持するスプロケット支持軸115を左右方向に長さ調節可能に取り付ける。図9(b)に図9(a)の背面図を示すがクローラ112のトレッドが調節できると、2つの畝U,Uの間隔に合わせてクローラ112を畝上を走行できるように設定可能であるだけでなく、縦断面が三角形状の畝Uであっても、その頂点上をクローラ112で踏みつけて走行可能になる。これはクローラ112がタイヤに比べて接地面積が大いため畝Uが崩れ難いためであり、また、クローラ112を備えた苗移植機の車体バランスが一点接地タイプのタイヤを用いる苗移植機より良い利点もある。クローラ112がタイヤに比べて接地面積が大きいことは湿田走行時にも有利である。なお、クローラ112のスプロケット113,114の径を小さくして、クローラ112の接地面積を多くとると湿田走行性がさらに向上する。
【0037】
また、クローラ112の駆動スプロケット113を支持するスプロケット支持軸115を中心にしてクローラ112を昇降シリンダ116により、旋回時と植付時の二段に揺動可能にする。クローラ112を下方向に回動して苗移植機を容易に旋回させることができ、また、クローラ112の接地面が最大になるように回動して苗移植機を下げることができ、車高が低くなることから苗を深く植え付けできる。
【0038】
また、クローラ112の接地面が最大になるように苗移植機を最下げの状態(図8のクローラ実線位置)で苗の移植を行うために、植付深さは苗植付具60の苗植付装置5内での高さを上下調節できるように、苗植付具60の上部には複数段の取付穴などを設けている。
【0039】
また図10には、畝溝に沿わすように前輪に代えてソリ状の滑走体117を設けた苗移植機の構成を示す。図10(a)は苗移植機の側面図であり、図10(b)は図10(a)のソリ状の滑走体117の正面図である。
この構成は、苗の植付シーズンに雨が多い地方で、畝溝がぬかるんでいる場合に有用であり、ぬかるみ状態の圃場面でも、雨後などに泥はねを防止しながら、苗の植付作業ができる。
【0040】
また、図11(a)の苗移植機の平面図と図11(b)(図11(a)の前方の一部正面図)及び図12(a)の苗移植機の側面図と図12(b)(図12(a)の後方の一部背面図に示すように、苗移植機の全部の車輪を8輪構成とすることもできる。
【0041】
図11に示す構成は、中央前方の前輪3,3の間に一対のガイド輪50,50を配置する。ガイド輪50は機体に固定され支持部材51で車軸52を支持されるが、該支持部材51はスプリング53で機体取付部54に弾性支持されている。そのためガイド輪50はスプリング53で弾性付勢されながら地面に接地しているので、畝溝から外れることはない。
【0042】
なお、図11に示す苗移植機は図1等に示す後輪2と機体主要部を支持するメインフレーム14に代えて一対のフレーム120,120で後輪2と機体主要部を支持する構成である。その他の構成については、図1等で示す同一部材は同一符号を付して、その説明は省略する。
【0043】
また図12(a)と図12(b)(図12(a)の後方の一部背面図)に示すようにオペレータが補助台車121に乗って後方から苗を供給する構成にしても良い。この補助台車121のタイヤ122が畝溝面を鎮圧するので、このタイヤ122が鎮圧輪を兼ねることができる。さらに補助台車121には覆土板(爪)123を設けることで覆土が可能となり、圃場に移植後の苗の乾燥を防止できる。また本構成では図1に示す接地プレート28の代用品として接地プレート28’を設けている。
【0044】
さらに、潅水装置を使う場合には補助台車121の後方に水タンク(図示せず)を載せることができる。この場合も補助台車121のタイヤ122が鎮圧輪を兼ねるので、圃場の鎮圧力が向上する。また、補助台車121の後方に水タンクを載せると、前バランスになり易い苗移植機の姿勢が低くなり、機体のバランスが良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、農業用作業装置として利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態の苗移植機の側面図である。
【図2】図1の苗移植機の平面図である。
【図3】図2の要部正面図である。
【図4】図1の苗移植機の走行部と植付部の連結部分の斜視図である。
【図5】図1の苗移植機のシリンダ取付部分の要部側面図である。
【図6】図5のストローク長増加用アーム部分の拡大図である。
【図7】図6の作動状態を比較して説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態の苗移植機の側面図である。
【図9】図8の苗移植機の平面図(図9(a)と背面図(図9(b))である。
【図10】本発明の実施の形態の苗移植機の側面図(図10(a))とソリ状の滑走体の正面図(図10(b))である。
【図11】本発明の実施の形態の苗移植機の平面図(図11(a))とガイド輪部分の正面図(図11(b))である。
【図12】本発明の実施の形態の苗移植機の側面図(図12(a))と案内台車部分の背面図(図12(b))である。
【符号の説明】
【0047】
1 野菜移植機 1a 走行部
1b 植付部 2 後輪
3 前輪 3a 取付部材
3b スプリング 4 苗供給装置
5 苗植付装置 6 操縦ハンドル
6a グリップ 7 走行部ミッションケース
8 ガイド輪 9 エンジン
10 油圧ポンプ 11 燃料タンク
12 ボンネット 13 連結フレーム
14 メインフレーム 15 回動筒部
16 走行伝動(チェーン)ケース 16a 取付部材
17 エンジン支持フレーム 17a ピボット軸
17b 車軸受け部 17c 支持部材
17d スプリング反力受け部材 17e ガイド輪軸
20 油圧バルブユニット 21 昇降シリンダ
21a ピストンロッド 22 天秤杆
22a ピン 23 取付部材
24 ガイド軸 25 スイングアーム
26 連結ロッド 27 ローリングシリンダ
28 接地プレート 29 感知リンク機構
30 植付部ミッションケース 30a 入力軸
31 第一植付伝動ケース 32 第二植付伝動ケース
34 上部フレーム 36 ストローク長増加用アーム
36a 長穴 36b ロッド
36c 取付穴 38 ボルト
40 苗供給カップ 41 ターンテーブル
42 中心軸 50 ガイド輪
51 支持部材 52 車軸
53 スプリング 54 機体取付部
55 苗載台 60 苗植付具
80 鎮圧輪 81 重り
86 支持枠 87 揺動フレーム
90 鎮圧輪固定レバー 92 ロッド
100 サイドクラッチレバー 101 操作パネル
102 植付昇降レバー 103 メインクラッチレバー
112 クローラ 113 駆動スプロケット
114 従動スプロケット 115 スプロケット支持軸
116 クローラ昇降シリンダ 117 ソリ状滑走体
120 フレーム 121 補助台車
122 タイヤ 123 覆土板(爪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(9)を搭載した機体と、
圃場の畝上を走行する機体の進行方向左右一対の後輪(2,2)と、
圃場の畝溝に苗を植え付ける苗植付具(60)と、
該苗植付具(60)より前方で圃場の畝溝を走行する前輪(3)と、
前輪(3)の近傍で畝溝上を走行し、かつ畝の傾斜面に当接して機体の進行方向を案内する機体の進行方向左右一対のガイド輪(8,8)と
を設けたことを特徴とする苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−135477(P2007−135477A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333729(P2005−333729)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】