苗移植機
【課題】圃場の肥料残留状況に対応した一様な目標施肥濃度の肥料散布を実現することができる苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機は、圃場走行可能に支持されて圃場に苗株を植え付ける植付部(4)と、この植付部(4)の植付動作と対応してその直前位置で植付幅に及ぶ圃場面をロータ(11)の回転動作によって整地する整地装置(6)と、放出流量を調節可能に肥料を散布する施肥装置(5)とを備えて構成され、上記整地装置(6)のロータ(11)には、圃場の電気伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設け、この伝導率センサ(23)の信号の換算によって得られる検出濃度に基づき、別途設定の目標施肥濃度に必要な散布密度によって施肥装置(5)の放出流量を制御する制御部を設けたものである。
【解決手段】苗移植機は、圃場走行可能に支持されて圃場に苗株を植え付ける植付部(4)と、この植付部(4)の植付動作と対応してその直前位置で植付幅に及ぶ圃場面をロータ(11)の回転動作によって整地する整地装置(6)と、放出流量を調節可能に肥料を散布する施肥装置(5)とを備えて構成され、上記整地装置(6)のロータ(11)には、圃場の電気伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設け、この伝導率センサ(23)の信号の換算によって得られる検出濃度に基づき、別途設定の目標施肥濃度に必要な散布密度によって施肥装置(5)の放出流量を制御する制御部を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行可能に支持されて圃場に苗株を植え付ける植付部と、この植付部の植付動作と対応して肥料の散布量を調節可能な施肥装置とを備える苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2に記載のように、圃場走行可能に支持されて圃場に苗を植え付ける植付部と、この植付部の植付動作と対応して肥料の散布量を調節可能な施肥装置とを備える苗移植機が知られている。施肥装置は、定量繰出バルブの繰出し速度を機体走行速度と対応して調節することにより、植付け時の走行速度によることなく、面積当たりの設定量の肥料散布を行うことにより、肥料を目標密度で圃場に一様に散布しながら、苗の植付けをすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118778号公報
【特許文献2】特開2006−217920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圃場には、過去の施肥による残留分があり、その残留量は作柄次第で変化することから、施肥量の設定は経験を要し、また、潅水流動等によって残留量の部分的な変化があることから、圃場内を一律に肥料散布しても、一様な目標施肥濃度を実現することは困難である。その結果、施肥量の過不足により苗の適正な生育が阻害され、例えば、施肥量が過大な場合には、徒長化による株の倒伏で機械収穫作業に支障を来したり、穀粒の味落ちを招き、また過少の場合には、収量減や病虫害耐性低下等の問題を招く。
【0005】
本発明の目的は、圃場の肥料残留状況に対応した一様な目標施肥濃度の肥料散布を実現することができる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場を走行する作業機体(2)に昇降機構(3)を介して圃場に苗株を植え付ける植付部(4)を設け、該植付部(4)の植付動作に対応して上下動して苗の植付幅に及ぶ圃場面を整地回転体(11)の回転動作によって整地する整地装置(6)を設け、圃場に肥料を散布する施肥装置(5)を設けた苗移植機において、前記整地装置(6)の整地回転体(11)に圃場の電気伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設け、該伝導率センサ(23)の信号の換算によって得られる肥料の検出濃度に基づいて前記施肥装置(5)の施肥量を制御する制御装置(C)を設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0007】
整地装置(6)に圃場の伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設けたことにより、苗を植え付ける前に植付位置周辺の肥料濃度を検出し、肥料成分の過不足に対応する量の肥料を施肥装置(5)で施肥することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記整地装置(6)に整地回転体(11)よりも大径の検知回転体(11a)を設け、該検知回転体(11a)に伝導率センサ(23)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
大径の検知回転体(11a)によって伝導率センサ(23)を確実に圃場面に接触させることができるので、圃場の植付け深さと同じ、または植え付け深さ近傍の肥料濃度が高精度で検出される。
【0009】
請求項3に係る発明は、左右一対の側方整地回転体(12,12)と中央の中央整地回転体(13)で前記整地装置(6)を構成し、該側方整地回転体(12,12)と中央整地回転体(13)にそれぞれ伝導率センサ(23)を設け、該複数の伝動率センサ(23,23,23…)の検出濃度の平均値を前記制御装置(C)で算出して施肥装置(5)の施肥量を制御する構成としたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機とした。
圃場の肥料濃度を複数の伝導率センサ(23)で検出して肥料濃度の平均値を算出することにより、植付左右幅の全域に亘って適切な量の肥料が散布される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、整地装置(6)に圃場の伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設けたことにより、苗を植え付ける前に植付位置周辺の肥料濃度を検出し、検出した肥料濃度に対応して施肥装置(5)の施肥量を自動調節することができるので、苗の植付位置周辺に適切な量の肥料が散布され、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できるとともに、肥料が適量散布されることによる無駄な肥料の消費を抑えることができるので、肥料の使用量が節約される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、整地回転体(11)よりも大径の検知回転体(11a)に伝導率センサ(23)を設けたことにより、伝動率センサ(23)が確実に圃場面に接触するため、圃場の植付け深さと同じ、または植え付け深さ近傍の肥料濃度を高精度で検出することができるので、施肥装置(5)の施肥量がいっそう適量となり、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の効果に加え、伝導率センサ(23)を左右のサイドロータ(12,12)と中央のセンターロータ(13)にそれぞれ設け、この複数の伝動率センサ(23,23,23)が検出した肥料濃度の平均値を算出することにより、植付左右幅の全域に亘って適切な量の肥料が散布することができるので、施肥装置(5)の施肥量がいっそう適量となり、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図
【図2】植付装置の接地部分を含む整地装置の拡大平面図
【図3】(a)センサ付きのロータの拡大側面図(b)別型のセンサ付きのロータの拡大側面図
【図4】メーターパネルの見取図
【図5】ハンドルボンネットの最大開放時の側面図
【図6】植付装置の下降支持状態の側面図
【図7】植付装置の中間高さの支持状態の側面図
【図8】植付装置の上昇支持状態の側面図
【図9】施肥制御のブロック図
【図10】施肥制御のフローチャート
【図11】平均施肥制御のブロック図
【図12】平均施肥制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記技術思想に基づいて具体的に構成した発明の実施形態について、以下に図面に沿って詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した苗移植機の側面図である。
苗移植機1は、圃場走行可能な機体2の後部に、平行リンクによって構成される昇降機構3を介して苗株を植え付けする植付装置4と、この植付装置の植付動作と対応して肥料の散布量を調節可能な施肥装置5と、植付装置4の接地部分の直前位置に一体に昇降可能に支持されて植付幅に及ぶ圃場面を整地する整地装置6とを備え、また、操舵ハンドル7の基部に操作部を含むメーターパネル8を設けて構成される。
【0015】
詳細に説明すると、施肥装置5は、貯留部5aから定量繰出バルブ5bを介して連通する放出口5cを植付装置4の植付け位置の近傍に一体に構成し、所要の散布密度で肥料を散布するために、散布時の走行速度に応じて定量繰出バルブ5bの放出流量を制御可能に構成する。
【0016】
整地装置6は、植付装置4の接地部分を含む拡大平面図を図2に示すように、整地回転体である複数の整地ロータ羽11…を一体に連結して所要長さに構成した側方整地回転体である左右のサイドロータ12,12および中央整地回転体であるセンターロータ13をその左右の伝動部14,14で一体に構成し、その片側の近傍に回転動力を受ける伝動シャフト15を連結して植付け全幅の範囲に及んで転動動作可能に構成する。左右のサイドロータ12,12のそれぞれの支軸12a,12aの略中央位置には、それぞれ支持フレーム16,16を軸支して植付装置4の接地部分の直前位置に同植付装置4から吊下げ支持する。
【0017】
また、整地装置6を構成する一部の整地ロータ羽11…、例えば、左右のサイドロータ12,12およびセンターロータ13のそれぞれの略中央位置に圃場の電気伝導率を検出するためのECセンサと略称される伝導率センサを組み込んで、肥料散布走行時に圃場の残留肥料濃度を把握可能に構成する。
【0018】
検知回転体であるセンサ付きの検知ロータ羽11aは、図3の拡大側面図(a)(b)に示すように、前進転動によって圃場土塊を粉砕しながら掘り起こすように所定角度に傾斜する分周板22…を等角度位置に配置して通常の整地ロータ羽11…より一回り大きく大径に形成し、(a)分周板22…の全数について背面部に伝導率センサ23…を組み込み、または一部の分周板22…について等間隔に、少なくとも1箇所に組み込む例のほか、(b)分周板22…の内周部にリング状に伝導率センサ23…を組み込んだ例の如く、土壌内の植付け深さを越える範囲で残留肥料濃度を検出するように構成する。
【0019】
伝導率センサ23…の検出信号は、図9のブロック図、図10のフローチャートに示すように、制御装置Cを介して肥料濃度に換算され、この肥料濃度が制御装置Cに設定された肥料濃度と比較されて施肥装置5の定量繰出バルブ5bの開閉頻度を制御するものである。
該肥料濃度が制御装置Cで設定した上限値以上であれば、施肥装置5の定量繰出バルブ5bの開閉頻度を減少させ、肥料の放出量を減少させる制御を行なうことにより、肥料が過剰に施肥されることを防止できるので、苗が倒伏しやすくなることや収穫物(米)の食味が低下することが防止される。
また、肥料濃度が制御装置Cで設定した下限値未満であれば、施肥装置5の定量繰出バルブ5bの開閉頻度を増加させ、肥料の放出量を増加させる制御を行なうことにより、苗が肥料不足により生育不良を起こすことを防止できるので、収穫物の収量が増加する。
【0020】
複数位置で検出する場合の検出濃度の算出については、図11のブロック図、図12のフローチャートに示すように、植付け全幅について等間隔位置に検知ロータ羽11a…を配置し、該検知ロータ羽11a…に設けた伝動率センサ23…が検出した各々の肥料濃度から制御装置Cで平均値を算出することにより、苗の植付け全幅についての実体的な残留濃度を把握することができ、定量繰出バルブ5bの開閉頻度を微細に調整して圃場の肥料濃度を適正に保ち、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止でき、収穫量が増大すると共に、収穫物の商品価値が向上する。
【0021】
上記構成による施肥装置5を備えた苗移植機は、整地装置6に圃場の伝導率を検出する伝導率センサ23を設けたことにより、苗を植え付ける前に植付位置周辺の残留施肥状態を検出して目標施肥濃度に必要な散布量が定まるので、苗の植付位置に適切な量の肥料が散布され、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できるとともに、肥料が適量散布されることにより、無駄な肥料の消費を抑えることができるので、肥料の使用量の節約を図ることができる。
【0022】
(施肥操作パネル)
肥料散布のための操作部は、足回りのスペースを確保して作業性を向上するために、操舵ハンドル7の基部に設けたメーターパネル8に設ける。詳細には、図4のメーターパネル部の見取図に示すように、油圧感度や植始め等の植付け走行の動作設定の操作部31と、植付装置4や施肥装置5等の作業機器の動作状態を表示する表示部32とを中心に配置した上で、その操作部31の後端部すなわち手前側に、施肥量を設定するための施肥操作部33を操舵ハンドル7から外れる範囲に配置し、また、操舵ハンドル7の内側で表示部32の奥側に、施肥装置の設定値と施肥状態のデータを切替え表示が可能な可変パネル34を、視認可能に操舵ハンドル7を避けて配置する。
【0023】
施肥操作部33には、散布量設定のための増減調節スイッチ35、一律散布とセンサ検出散布を切換えるための通常可変切換スイッチ36、その操作を切換えるためのモード切換スイッチ33aを設ける。可変パネル34には、表示項目を選択するための表示切換スイッチ37を備えて、「施肥量設定」「比重」「施肥量」「使用量」の表示項目インジケータ34aとともに、対応するデータを表示する。
【0024】
また、上記表示部32と可変パネル34は、ステアリングポスト7aを開閉可能にカバーするハンドルボンネット7bの上端部に一体に構成し、その最大開放時の側面図を図5に示すように、メンテナンスのためにハンドルボンネット7bを開いた状態で操舵ハンドル7と干渉しないようにその内側位置に配置する。
【0025】
(整地装置支持部)
植付装置4は昇降可能に昇降機構3によって支持され、この昇降機構3は、図6の植付装置の下降支持状態の側面図に示すように、左右のロアアーム3a、3aを備えた平行リンクによって構成される。また、整地装置6は、左右の支持フレーム16,16と吊バネ41によって植付装置4から吊り下げ支持される。左右の支持フレーム16,16はそれぞれサイドロータ12,12を支持し、吊バネ41は左右の伝動部14,14を弾性支持する。
【0026】
左右の伝動部14,14には、それぞれL字状に屈曲する吊上部42,42を設け、この吊上部42,42とそれぞれ係合して吊上げ支持するとともに、復帰力を越える回動動作によって離脱可能な回動フック43,43を設け、それぞれの上端を支持フレーム16,16に軸支する。
【0027】
左右の回動フック43,43は、それぞれ支点43a,43aを越えて延びるアーム44,44を一体に備えるとともに、図7の中間高さの支持状態の側面図に示すように、アーム44,44のそれぞれの先端44a,44aがロアアーム3a、3aと干渉して回動フック43,43が吊上部42,42から離脱する方向に回動可能に構成する。
【0028】
上記整地装置6の支持構成により、昇降機構3が植付装置4を下降位置から上昇させる際(図6)は、左右の支持フレーム16,16の上昇により、回動フック43,43が吊上部42,42を介して整地装置6を水平姿勢で吊り上げる。
【0029】
昇降機構3が中間高さ位置(図7)において、左右のアーム44,44の先端44a,44aがそれぞれロアアーム3a、3aと干渉すると、回動フック43,43が吊上部42,42から離脱する方向に回動され、続く上昇行程において、図8の上昇支持状態の側面図に示すように、左右のロアアーム3a、3aが後ろ上がりになって整地装置6と干渉し、吊バネ41の弾性支持によって整地装置6が前下がり姿勢に保持される。
【0030】
下降行程においては、上記の逆行動作により、左右のロアアーム3a、3aに対してそれぞれアーム44,44との干渉が無くなると、左右の回動フック43,43がそれぞれ吊上部42,42に係合して整地装置6が水平姿勢で圃場に下降する。
【0031】
したがって、整地装置6が前下がり姿勢で下降した場合に前側のセンターロータ13が土壌中に入り込み、機体の前進に対して走行抵抗を及ぼすとともに、圃場の泥土を押し上げて苗の植付けに支障を来すという問題を解消して効率的な植付作業が可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 苗移植機
2 機体
3 昇降機構
4 植付装置
5 施肥装置
5b 定量繰出バルブ
5c 放出口
6 整地装置
11 整地ロータ羽(整地回転体)
11a 検知ロータ羽(検知回転体)
12 サイドロータ(側方整地回転体)
13 センターロータ(中央整地回転体)
22 分周板
23 伝導率センサ
C 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行可能に支持されて圃場に苗株を植え付ける植付部と、この植付部の植付動作と対応して肥料の散布量を調節可能な施肥装置とを備える苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2に記載のように、圃場走行可能に支持されて圃場に苗を植え付ける植付部と、この植付部の植付動作と対応して肥料の散布量を調節可能な施肥装置とを備える苗移植機が知られている。施肥装置は、定量繰出バルブの繰出し速度を機体走行速度と対応して調節することにより、植付け時の走行速度によることなく、面積当たりの設定量の肥料散布を行うことにより、肥料を目標密度で圃場に一様に散布しながら、苗の植付けをすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118778号公報
【特許文献2】特開2006−217920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圃場には、過去の施肥による残留分があり、その残留量は作柄次第で変化することから、施肥量の設定は経験を要し、また、潅水流動等によって残留量の部分的な変化があることから、圃場内を一律に肥料散布しても、一様な目標施肥濃度を実現することは困難である。その結果、施肥量の過不足により苗の適正な生育が阻害され、例えば、施肥量が過大な場合には、徒長化による株の倒伏で機械収穫作業に支障を来したり、穀粒の味落ちを招き、また過少の場合には、収量減や病虫害耐性低下等の問題を招く。
【0005】
本発明の目的は、圃場の肥料残留状況に対応した一様な目標施肥濃度の肥料散布を実現することができる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場を走行する作業機体(2)に昇降機構(3)を介して圃場に苗株を植え付ける植付部(4)を設け、該植付部(4)の植付動作に対応して上下動して苗の植付幅に及ぶ圃場面を整地回転体(11)の回転動作によって整地する整地装置(6)を設け、圃場に肥料を散布する施肥装置(5)を設けた苗移植機において、前記整地装置(6)の整地回転体(11)に圃場の電気伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設け、該伝導率センサ(23)の信号の換算によって得られる肥料の検出濃度に基づいて前記施肥装置(5)の施肥量を制御する制御装置(C)を設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0007】
整地装置(6)に圃場の伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設けたことにより、苗を植え付ける前に植付位置周辺の肥料濃度を検出し、肥料成分の過不足に対応する量の肥料を施肥装置(5)で施肥することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記整地装置(6)に整地回転体(11)よりも大径の検知回転体(11a)を設け、該検知回転体(11a)に伝導率センサ(23)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
大径の検知回転体(11a)によって伝導率センサ(23)を確実に圃場面に接触させることができるので、圃場の植付け深さと同じ、または植え付け深さ近傍の肥料濃度が高精度で検出される。
【0009】
請求項3に係る発明は、左右一対の側方整地回転体(12,12)と中央の中央整地回転体(13)で前記整地装置(6)を構成し、該側方整地回転体(12,12)と中央整地回転体(13)にそれぞれ伝導率センサ(23)を設け、該複数の伝動率センサ(23,23,23…)の検出濃度の平均値を前記制御装置(C)で算出して施肥装置(5)の施肥量を制御する構成としたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機とした。
圃場の肥料濃度を複数の伝導率センサ(23)で検出して肥料濃度の平均値を算出することにより、植付左右幅の全域に亘って適切な量の肥料が散布される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、整地装置(6)に圃場の伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設けたことにより、苗を植え付ける前に植付位置周辺の肥料濃度を検出し、検出した肥料濃度に対応して施肥装置(5)の施肥量を自動調節することができるので、苗の植付位置周辺に適切な量の肥料が散布され、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できるとともに、肥料が適量散布されることによる無駄な肥料の消費を抑えることができるので、肥料の使用量が節約される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、整地回転体(11)よりも大径の検知回転体(11a)に伝導率センサ(23)を設けたことにより、伝動率センサ(23)が確実に圃場面に接触するため、圃場の植付け深さと同じ、または植え付け深さ近傍の肥料濃度を高精度で検出することができるので、施肥装置(5)の施肥量がいっそう適量となり、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の効果に加え、伝導率センサ(23)を左右のサイドロータ(12,12)と中央のセンターロータ(13)にそれぞれ設け、この複数の伝動率センサ(23,23,23)が検出した肥料濃度の平均値を算出することにより、植付左右幅の全域に亘って適切な量の肥料が散布することができるので、施肥装置(5)の施肥量がいっそう適量となり、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図
【図2】植付装置の接地部分を含む整地装置の拡大平面図
【図3】(a)センサ付きのロータの拡大側面図(b)別型のセンサ付きのロータの拡大側面図
【図4】メーターパネルの見取図
【図5】ハンドルボンネットの最大開放時の側面図
【図6】植付装置の下降支持状態の側面図
【図7】植付装置の中間高さの支持状態の側面図
【図8】植付装置の上昇支持状態の側面図
【図9】施肥制御のブロック図
【図10】施肥制御のフローチャート
【図11】平均施肥制御のブロック図
【図12】平均施肥制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記技術思想に基づいて具体的に構成した発明の実施形態について、以下に図面に沿って詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した苗移植機の側面図である。
苗移植機1は、圃場走行可能な機体2の後部に、平行リンクによって構成される昇降機構3を介して苗株を植え付けする植付装置4と、この植付装置の植付動作と対応して肥料の散布量を調節可能な施肥装置5と、植付装置4の接地部分の直前位置に一体に昇降可能に支持されて植付幅に及ぶ圃場面を整地する整地装置6とを備え、また、操舵ハンドル7の基部に操作部を含むメーターパネル8を設けて構成される。
【0015】
詳細に説明すると、施肥装置5は、貯留部5aから定量繰出バルブ5bを介して連通する放出口5cを植付装置4の植付け位置の近傍に一体に構成し、所要の散布密度で肥料を散布するために、散布時の走行速度に応じて定量繰出バルブ5bの放出流量を制御可能に構成する。
【0016】
整地装置6は、植付装置4の接地部分を含む拡大平面図を図2に示すように、整地回転体である複数の整地ロータ羽11…を一体に連結して所要長さに構成した側方整地回転体である左右のサイドロータ12,12および中央整地回転体であるセンターロータ13をその左右の伝動部14,14で一体に構成し、その片側の近傍に回転動力を受ける伝動シャフト15を連結して植付け全幅の範囲に及んで転動動作可能に構成する。左右のサイドロータ12,12のそれぞれの支軸12a,12aの略中央位置には、それぞれ支持フレーム16,16を軸支して植付装置4の接地部分の直前位置に同植付装置4から吊下げ支持する。
【0017】
また、整地装置6を構成する一部の整地ロータ羽11…、例えば、左右のサイドロータ12,12およびセンターロータ13のそれぞれの略中央位置に圃場の電気伝導率を検出するためのECセンサと略称される伝導率センサを組み込んで、肥料散布走行時に圃場の残留肥料濃度を把握可能に構成する。
【0018】
検知回転体であるセンサ付きの検知ロータ羽11aは、図3の拡大側面図(a)(b)に示すように、前進転動によって圃場土塊を粉砕しながら掘り起こすように所定角度に傾斜する分周板22…を等角度位置に配置して通常の整地ロータ羽11…より一回り大きく大径に形成し、(a)分周板22…の全数について背面部に伝導率センサ23…を組み込み、または一部の分周板22…について等間隔に、少なくとも1箇所に組み込む例のほか、(b)分周板22…の内周部にリング状に伝導率センサ23…を組み込んだ例の如く、土壌内の植付け深さを越える範囲で残留肥料濃度を検出するように構成する。
【0019】
伝導率センサ23…の検出信号は、図9のブロック図、図10のフローチャートに示すように、制御装置Cを介して肥料濃度に換算され、この肥料濃度が制御装置Cに設定された肥料濃度と比較されて施肥装置5の定量繰出バルブ5bの開閉頻度を制御するものである。
該肥料濃度が制御装置Cで設定した上限値以上であれば、施肥装置5の定量繰出バルブ5bの開閉頻度を減少させ、肥料の放出量を減少させる制御を行なうことにより、肥料が過剰に施肥されることを防止できるので、苗が倒伏しやすくなることや収穫物(米)の食味が低下することが防止される。
また、肥料濃度が制御装置Cで設定した下限値未満であれば、施肥装置5の定量繰出バルブ5bの開閉頻度を増加させ、肥料の放出量を増加させる制御を行なうことにより、苗が肥料不足により生育不良を起こすことを防止できるので、収穫物の収量が増加する。
【0020】
複数位置で検出する場合の検出濃度の算出については、図11のブロック図、図12のフローチャートに示すように、植付け全幅について等間隔位置に検知ロータ羽11a…を配置し、該検知ロータ羽11a…に設けた伝動率センサ23…が検出した各々の肥料濃度から制御装置Cで平均値を算出することにより、苗の植付け全幅についての実体的な残留濃度を把握することができ、定量繰出バルブ5bの開閉頻度を微細に調整して圃場の肥料濃度を適正に保ち、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止でき、収穫量が増大すると共に、収穫物の商品価値が向上する。
【0021】
上記構成による施肥装置5を備えた苗移植機は、整地装置6に圃場の伝導率を検出する伝導率センサ23を設けたことにより、苗を植え付ける前に植付位置周辺の残留施肥状態を検出して目標施肥濃度に必要な散布量が定まるので、苗の植付位置に適切な量の肥料が散布され、肥料の不足による生育不良や、肥料の過剰摂取による倒伏や食味の低下を防止できるとともに、肥料が適量散布されることにより、無駄な肥料の消費を抑えることができるので、肥料の使用量の節約を図ることができる。
【0022】
(施肥操作パネル)
肥料散布のための操作部は、足回りのスペースを確保して作業性を向上するために、操舵ハンドル7の基部に設けたメーターパネル8に設ける。詳細には、図4のメーターパネル部の見取図に示すように、油圧感度や植始め等の植付け走行の動作設定の操作部31と、植付装置4や施肥装置5等の作業機器の動作状態を表示する表示部32とを中心に配置した上で、その操作部31の後端部すなわち手前側に、施肥量を設定するための施肥操作部33を操舵ハンドル7から外れる範囲に配置し、また、操舵ハンドル7の内側で表示部32の奥側に、施肥装置の設定値と施肥状態のデータを切替え表示が可能な可変パネル34を、視認可能に操舵ハンドル7を避けて配置する。
【0023】
施肥操作部33には、散布量設定のための増減調節スイッチ35、一律散布とセンサ検出散布を切換えるための通常可変切換スイッチ36、その操作を切換えるためのモード切換スイッチ33aを設ける。可変パネル34には、表示項目を選択するための表示切換スイッチ37を備えて、「施肥量設定」「比重」「施肥量」「使用量」の表示項目インジケータ34aとともに、対応するデータを表示する。
【0024】
また、上記表示部32と可変パネル34は、ステアリングポスト7aを開閉可能にカバーするハンドルボンネット7bの上端部に一体に構成し、その最大開放時の側面図を図5に示すように、メンテナンスのためにハンドルボンネット7bを開いた状態で操舵ハンドル7と干渉しないようにその内側位置に配置する。
【0025】
(整地装置支持部)
植付装置4は昇降可能に昇降機構3によって支持され、この昇降機構3は、図6の植付装置の下降支持状態の側面図に示すように、左右のロアアーム3a、3aを備えた平行リンクによって構成される。また、整地装置6は、左右の支持フレーム16,16と吊バネ41によって植付装置4から吊り下げ支持される。左右の支持フレーム16,16はそれぞれサイドロータ12,12を支持し、吊バネ41は左右の伝動部14,14を弾性支持する。
【0026】
左右の伝動部14,14には、それぞれL字状に屈曲する吊上部42,42を設け、この吊上部42,42とそれぞれ係合して吊上げ支持するとともに、復帰力を越える回動動作によって離脱可能な回動フック43,43を設け、それぞれの上端を支持フレーム16,16に軸支する。
【0027】
左右の回動フック43,43は、それぞれ支点43a,43aを越えて延びるアーム44,44を一体に備えるとともに、図7の中間高さの支持状態の側面図に示すように、アーム44,44のそれぞれの先端44a,44aがロアアーム3a、3aと干渉して回動フック43,43が吊上部42,42から離脱する方向に回動可能に構成する。
【0028】
上記整地装置6の支持構成により、昇降機構3が植付装置4を下降位置から上昇させる際(図6)は、左右の支持フレーム16,16の上昇により、回動フック43,43が吊上部42,42を介して整地装置6を水平姿勢で吊り上げる。
【0029】
昇降機構3が中間高さ位置(図7)において、左右のアーム44,44の先端44a,44aがそれぞれロアアーム3a、3aと干渉すると、回動フック43,43が吊上部42,42から離脱する方向に回動され、続く上昇行程において、図8の上昇支持状態の側面図に示すように、左右のロアアーム3a、3aが後ろ上がりになって整地装置6と干渉し、吊バネ41の弾性支持によって整地装置6が前下がり姿勢に保持される。
【0030】
下降行程においては、上記の逆行動作により、左右のロアアーム3a、3aに対してそれぞれアーム44,44との干渉が無くなると、左右の回動フック43,43がそれぞれ吊上部42,42に係合して整地装置6が水平姿勢で圃場に下降する。
【0031】
したがって、整地装置6が前下がり姿勢で下降した場合に前側のセンターロータ13が土壌中に入り込み、機体の前進に対して走行抵抗を及ぼすとともに、圃場の泥土を押し上げて苗の植付けに支障を来すという問題を解消して効率的な植付作業が可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 苗移植機
2 機体
3 昇降機構
4 植付装置
5 施肥装置
5b 定量繰出バルブ
5c 放出口
6 整地装置
11 整地ロータ羽(整地回転体)
11a 検知ロータ羽(検知回転体)
12 サイドロータ(側方整地回転体)
13 センターロータ(中央整地回転体)
22 分周板
23 伝導率センサ
C 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する作業機体(2)に昇降機構(3)を介して圃場に苗株を植え付ける植付部(4)を設け、該植付部(4)の植付動作に対応して上下動して苗の植付幅に及ぶ圃場面を整地回転体(11)の回転動作によって整地する整地装置(6)を設け、圃場に肥料を散布する施肥装置(5)を設けた苗移植機において、
前記整地装置(6)の整地回転体(11)に圃場の電気伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設け、該伝導率センサ(23)の信号の換算によって得られる肥料の検出濃度に基づいて前記施肥装置(5)の施肥量を制御する制御装置(C)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記整地装置(6)に整地回転体(11)よりも大径の検知回転体(11a)を設け、該検知回転体(11a)に伝導率センサ(23)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
左右一対の側方整地回転体(12,12)と中央の中央整地回転体(13)で前記整地装置(6)を構成し、該側方整地回転体(12,12)と中央整地回転体(13)にそれぞれ伝導率センサ(23)を設け、該複数の伝動率センサ(23,23,23…)の検出濃度の平均値を前記制御装置(C)で算出して施肥装置(5)の施肥量を制御する構成としたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項1】
圃場を走行する作業機体(2)に昇降機構(3)を介して圃場に苗株を植え付ける植付部(4)を設け、該植付部(4)の植付動作に対応して上下動して苗の植付幅に及ぶ圃場面を整地回転体(11)の回転動作によって整地する整地装置(6)を設け、圃場に肥料を散布する施肥装置(5)を設けた苗移植機において、
前記整地装置(6)の整地回転体(11)に圃場の電気伝導率を検出する伝導率センサ(23)を設け、該伝導率センサ(23)の信号の換算によって得られる肥料の検出濃度に基づいて前記施肥装置(5)の施肥量を制御する制御装置(C)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記整地装置(6)に整地回転体(11)よりも大径の検知回転体(11a)を設け、該検知回転体(11a)に伝導率センサ(23)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
左右一対の側方整地回転体(12,12)と中央の中央整地回転体(13)で前記整地装置(6)を構成し、該側方整地回転体(12,12)と中央整地回転体(13)にそれぞれ伝導率センサ(23)を設け、該複数の伝動率センサ(23,23,23…)の検出濃度の平均値を前記制御装置(C)で算出して施肥装置(5)の施肥量を制御する構成としたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−160750(P2011−160750A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28810(P2010−28810)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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