説明

茶ペーストの製造方法

【課題】水分を含んだ茶滓のような湿潤茶葉を、茶葉の粒径に係らずスムーズに破砕してペースト状にできる茶ペーストの製造方法を提供する。
【解決手段】茶葉をあらかじめ温水等の液体に浸漬することにより得られた湿潤茶葉を用い、調整槽で所定の含水率となるように湿潤茶葉に希釈液を添加した上で粗破砕機で粗破砕して調整槽に循環させる。具体的には、調整槽21に希釈液を導入してカッタポンプなどで構成した粗破砕機31を稼動させることにより、希釈液を流動化させた状態で湿潤茶葉を茶葉路25から導入し、粗破砕機31と調整槽21の間での破砕及び循環処理を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉に液体を加えて細かく破砕して茶ペーストを製造する方法に関し、特に茶滓から茶ペーストを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の再利用が促進され、茶飲料の製造過程で発生する茶滓についても再利用を目的とした種々の処理法が提案されている。例えば特許文献1には、茶滓を脱水し、遠赤外線を用いて乾燥させた後に粉砕することにより、茶滓から食品添加物を製造する方法が開示されている。この方法によれば、茶滓を脱水して遠赤外線を用いて乾燥させることで、茶滓の腐敗を防ぎ、また、アミノ酸やテアニン等の有用な成分の含有量を増加させることができるとされる。
【0003】
しかし、上記方法では茶滓の脱水濾液に茶葉の含有成分が移行するため、脱水によって茶滓から有用な成分が失われる上、脱水濾液の処理が必要になる。このため、本願発明者は先に、水分を含んだ状態の茶滓を破砕してペースト状として再利用する方法を提案している(特願2004−501023)。
【0004】
ところで茶葉をペースト状にする方法としては、乾燥茶葉の微細化物に油脂や糖アルコール液等の液体を添加した混合物を所定の条件で磨砕して茶ペーストを製造する方法が提案されている(特許文献2)。特許文献2に記載された方法によれば、あらかじめ粒子径が1mm以下程度に破砕された茶葉の微細化物に液体を添加することにより、茶葉を磨砕する際の粉体の飛散を防止して茶葉を極めて細かくできる。
【0005】
しかし上記方法ではあらかじめ微細化した乾燥茶葉を用いることから、上記方法を茶滓に適用する場合には特許文献1に開示された方法と同様に茶滓を脱水乾燥させる必要がある。また、様々な大きさの茶片を含む茶葉を処理しようとすると、茶葉が磨砕装置に詰まるトラブルや磨砕処理に要する時間が長くなるといった問題を引き起こすおそれがある。
【特許文献1】特開2003−111566号公報
【特許文献2】特開2001−107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、茶葉の粒径に係らず品質が均質化された茶ペーストを簡易に製造できる茶ペーストの製造方法を提供することである。また、本発明は特に水分を含んだ茶滓のような湿潤茶葉を、茶葉の粒径や、茶の茎と葉の混合比率に係らずスムーズに破砕してペースト状にできる茶ペーストの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、茶葉をあらかじめ温水等の液体に浸漬することにより得られた湿潤茶葉を用い、調整槽で所定の含水率となるように湿潤茶葉に希釈液を添加した上で粗破砕機で粗破砕して調整槽に循環させる。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) 茶葉を液体に浸漬させて得られた湿潤茶葉を、攪拌機を備えた調整槽に導入して希釈液と混合し固形物濃度を調整して希釈茶葉を得る濃度調整工程と、前記濃度調整工程で得られた希釈茶葉を前記調整槽から送り出し粗破砕機を通過させて粗破砕する粗破砕工程と、前記粗破砕工程の粗破砕機を通過した粗破砕茶葉を前記濃度調整工程の調整槽に循環させる循環工程と、を含む茶ペーストの製造方法。
【0009】
ここで「湿潤茶葉」とは、生茶葉又は製茶が温水等の液体に1分間以上、好ましくは3〜5分間浸漬されることにより得られるもので、含水率78〜85重量%、好ましくは80〜83重量%の水分を含む。なお、液体に浸漬される「茶葉」は飲食に供される茶葉であり、飲食用に加工された「製茶」のみならず、茶樹から採取され実質的に加工されていない茶葉である「生茶葉」も含むものとする。また「製茶」とは、生茶葉が蒸熱製法、釜炒製法及び発酵等の公知の方法で加工された茶葉を意味し、乾燥された「乾燥茶葉」を含む。生茶葉が採取される茶樹の品種や、製茶を製造する加工法に特に制限はない。
【0010】
希釈液は、湿潤茶葉と希釈液との混合物(「希釈茶葉」と称する)の固形物濃度が5〜10重量%、好ましくは7〜8重量%となるように湿潤茶葉に混合される。希釈茶葉は、調整槽を経て粗破砕機を通過することにより粗破砕機で大まかに破砕され、調整槽に循環されることで次第に細かく破砕される。このため本発明によれば、湿潤茶葉に粒径が大きい葉片や、葉脈、葉柄、及び茎等の管状体が含まれる場合でも、漸次これらを細片化できるため、破砕機のトラブルを防止して、粒径が整った茶ペーストを得ることができる。
【0011】
(2) 前記濃度調整工程において、あらかじめ希釈液を前記調整槽に導入して流動化させた状態で前記湿潤茶葉を導入する(1)に記載の茶ペーストの製造方法。
【0012】
湿潤茶葉は、茶葉が水分を吸収しているため、植物組織が軟化して破砕され易いが、流動性が低い。そこで(2)記載の方法に従い、希釈液をあらかじめ調整槽に導入して流動化させた状態で湿潤茶葉を調整槽に少量ずつ導入することにより、あらかじめ流動化された希釈液の慣性を利用して湿潤茶葉の流動を促進できる。このため、湿潤茶葉が調整槽内に停滞することを防止し、かつ、希釈茶葉を粗破砕機に送り出して粗破砕機から調整槽に循環させるためのエネルギー消費を低減できる。
【0013】
調整槽内には、希釈液をあらかじめ調整槽の容量の半量程度導入し、攪拌機で流動性を与えながら、湿潤茶葉を調整槽に保持された希釈液に対して1/4〜1/2倍ずつ、5〜10分程度をかけて調整槽に導入することが好ましい。調整槽には、調整槽内の流体物の固形物濃度が7〜8重量%の範囲となるように、適宜、希釈液を追加添加してもよい。
【0014】
茶ペーストの製造方法は、回分式又は連続式のどちらとしてもよく、回分式とする場合は調整槽に一定量の希釈液及び湿潤茶葉を導入した時点で希釈液及び湿潤茶葉の調整槽への導入を停止し、粗破砕工程と循環工程のみを継続する。そして、調整槽内の流体物の平均粒径及び固形物濃度が所定値となったら、粗破砕工程及び循環工程を継続しながら、調整槽内から粗破砕茶葉を取り出す。一方、連続式では希釈液又は/及び湿潤茶葉を連続的又は間欠的に調整槽に導入して濃度調整工程を継続しながら、調整槽内の流体物の平均粒径及び固形物濃度が所定範囲内の値となったら、調整槽から送出される粗破砕物の一部を循環させながら排出する。
【0015】
(3) 前記濃度調整工程において、前記湿潤茶葉の含水率を測定し前記希釈液の量を制御する(1)又は(2)に記載の茶ペーストの製造方法。
【0016】
調整槽に導入される湿潤茶葉の含水率は種々の要因により変動し、特に湿潤茶葉として茶滓を用いる場合は変動幅が大きいため、湿潤茶葉の含水率に応じて希釈液の添加量を制御することが好ましい。
【0017】
(4) 近赤外分光法による非接触式含水率計を用いて前記湿潤茶葉の含水率を測定する(3)に記載の茶ペーストの製造方法。
【0018】
湿潤茶葉の含水率の測定手段は、特に限定されないが、近赤外分光法を利用した非接触式の含水率計を用いれば、調整槽に導入される湿潤茶葉の含水率を簡易かつ迅速に算出できる。このため(4)では、簡易、迅速、かつ高精度で希釈液の添加量を制御できる。
【0019】
(5) 前記濃度調整工程において前記湿潤茶葉に添加剤を添加する(1)から(4)のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。
【0020】
濃度調整工程では、湿潤茶葉に酸化防止剤等の添加剤を添加することにより、製造される茶ペーストの品質の保持又は/及び均質化を図ることもできる。特に好ましい添加剤としては、抗菌や抗酸化等の作用を有するポリフェノール類、及び抗酸化作用を有するビタミンCが挙げられ、これらを単独又は組み合わせて使用してよい。特に、ポリフェノール類としてカテキン類を添加するようにすれば、茶ペーストの品質保持を図るだけでなく、茶ペーストのカテキン含有量を調整することにより品質の均質化を図ることができる。また、希釈液として抗酸化性ガスを含む抗酸化水を使用することで、湿潤茶葉の希釈と添加剤の添加を兼ねることができる。
【0021】
ここで、「抗酸化性ガス」とは、酸素を還元する作用を有するガス、例えば水素ガスや一酸化炭素ガスのような還元性ガス、及び不活性ガスを意味する。本明細書において「不活性ガス」とは、化学反応の中でも特に酸化反応を起こしにくい気体を意味し、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス族元素に限らず、窒素ガス及び炭酸ガスを含む。「抗酸化水」とはこうした抗酸化性ガスを含む水を意味し、特に好適な例として炭酸水、窒素含有水、及び水素含有水が挙げられる。
【0022】
添加剤の添加量としては、ポリフェノール類については、希釈茶葉のポリフェノール類濃度が0.4〜0.8重量%となる範囲が好ましく、ビタミンCについては、希釈茶葉に対して0.05〜0.1重量%が好ましい。また、抗酸化水については、抗酸化性ガスを10〜100mg/L程度含むことが好ましく、さらにpHが3〜5であることが好ましい。
【0023】
(6) 前記濃度調整工程において、前記調整槽にマイクロバブル発生手段を設け抗酸化性ガスを吹き込む(1)から(5)のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。
【0024】
希釈液として抗酸化水を用いる場合は、あらかじめ水に抗酸化性ガスを溶解させることにより調製された抗酸化水を調整槽に導入してもよいが、抗酸化性ガスを含まない水道水等を希釈液として用い、調整槽にマイクロバブル発生手段を設けることにより、抗酸化性ガスを微細気泡化させて調整槽内の流体物に添加してもよい。本発明では、調整槽内には粗破砕された茶葉が循環されて保持されるため、抗酸化性ガスのマイクロバブルが茶葉に付着して溶解効率が向上するとともに、茶葉の表面の酸素が還元されることで酸化防止及び好気性微生物の増殖防止効果を高くできる。
【0025】
(7) 前記循環工程から前記濃度調整工程の調整槽に循環され平均粒径1000〜5000μmの固形物を含む前記粗破砕茶葉を、前記調整槽から排出して微破砕してペースト状の茶ペーストを得るペースト化工程をさらに含む(1)から(6)のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。
【0026】
本発明では、粗破砕された粗破砕茶葉をさらに細かく破砕するペースト化工程を設けることで、茶ペーストの使用用途に応じて異なる粒径の茶ペーストを製造できる。特に、ペースト化工程において、カッタ付きの攪拌羽根を備えるインライン型のミルつきポンプによる微破砕処理と、砥石を備える磨砕機による湿式磨砕処理と、をこの順で行なう2段階処理を行なうと、粒径が100μm以下に微細化された滑らかな茶ペーストを得ることができる。
【0027】
(8) 前記ペースト化工程で得られた茶ペーストを滅菌する滅菌工程をさらに含む(7)に記載の茶ペーストの製造方法。
【0028】
滅菌工程で茶ペーストを滅菌することにより製造された茶ペーストの保存性を高めることができる。滅菌工程で用いられる滅菌方法は特に限定されないが、短時間で簡易かつ確実に滅菌できる加熱滅菌を用いることが好ましい。特に、滅菌工程の前段で湿式磨砕処理を行なって茶ペーストを摩擦熱で30〜70℃程度に加温した後、速やかに滅菌工程を実施することにより、加熱に必要なエネルギー量を低減でき、好ましい。
【0029】
(9) 前記滅菌工程で滅菌された茶ペーストを無菌状態で包装容器に充填する充填工程をさらに含む(8)に記載の茶ペーストの製造方法。
【0030】
本発明では滅菌工程で滅菌された茶ペーストは、無菌条件下で滅菌された包装容器に充填する。滅菌された茶ペーストを包装容器に充填することでさらに保存性を高めることができる。
【0031】
(10) 前記湿潤茶葉は茶滓である(1)から(9)のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。
【0032】
湿潤茶葉としては、煎茶、玉露、番茶、紅茶、及びウーロン茶等の乾燥茶葉を温水に浸漬して茶飲料を製造することにより得られる茶滓を用いることが好ましい。茶滓には、製茶の60〜80%程度のポリフェノール類が残存する一方、カフェイン量が低減されている。このため茶滓から製造された茶滓ペーストは、ポリフェノール類により保存性が高められる一方、カフェインが低減されていることから幅広い用途に再利用できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、あらかじめ液体に浸漬して軟化させた湿潤茶葉を循環しながら破砕することで、繊維の絡みつき等による破砕トラブルを防止し、茶葉を徐々に細片化して粒径が整った茶ペーストを得ることができる。また本発明によれば、簡易な構成の装置で品質が均質化された茶ペーストを効率よく製造できるため、高品質の茶ペーストを安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明について具体的に説明する。図1は、本発明に係る茶ペーストの製造方法を実施するための茶ペースト製造装置(以下、単に「製造装置」)11の模式図である。
【0035】
製造装置11は、調整槽21と、粗破砕機31と、微破砕機41と、磨砕機51と、滅菌機61と、充填機71と、を備える。調整槽21と粗破砕機31とは第1接続管35で、粗破砕機31と微破砕機41とは第2接続管45で、微破砕機41と磨砕機51とは第3接続管55で、磨砕機51と滅菌機61とは第4接続管65で、滅菌機61と充填機71とは第5接続管75で、それぞれ相互に直列接続されている。
【0036】
調整槽21と粗破砕機31とは循環路36でも接続されており、第1接続管35は調整槽21の出口側と粗破砕機31の入口側とに接続され、循環路36は調整槽21の入口側と粗破砕機31の出口側とに接続されている。調整槽21には攪拌機23が設けられ、茶葉路25、希釈液路26及び添加剤路27がさらに接続され、添加剤路27には添加剤貯槽22が接続されている。
【0037】
粗破砕機31は、筒状の筐体30の内部にカッタ付きの回転羽根(以下「破砕羽根」)32と、その背面に設けられたスリットが形成された板34と、圧送用の回転羽根(以下「移送羽根」)33とを備えるカッタポンプである。微破砕機41は、筐体40内部に破砕羽根42及び破砕ミル43を備えるインラインミルポンプで構成されている。微破砕機41の破砕羽根42の背面にはスリットが形成された板44が設けられている。
【0038】
次に、本発明の第1実施態様として、上記の製造装置11を用い、湿潤茶葉としての茶滓を破砕してペースト状の茶滓ペーストを製造する方法について説明する。
【0039】
まず、希釈液として炭酸水を希釈液路26からあらかじめ調整槽21に導入する。調整槽21内の液量が一定量に達したら、攪拌機23を稼動する。次に、粗破砕機31を稼動させることにより調整槽21から送り出された炭酸水を、循環路36を介して調整槽21に循環させて流動化させる。このようにして、炭酸水を流動化させた状態で茶葉路25から茶滓を調整槽21に導入する。茶滓は、調整槽21内に導入されることで流動状態にある炭酸水と攪拌混合され、炭酸水との接触によって茶滓表面の酸素が除去され、雑菌の増殖が抑制される。
【0040】
調整槽21には、湿潤茶葉の導入に先立って調整槽21の容量の半量の希釈液を導入し、所定量の湿潤茶葉を5〜10分程度かけて漸次、調整槽21に供給することが好ましい。調整槽21には、槽内の流体物(希釈茶葉と粗破砕茶葉の混合物)の固形物濃度が5〜10重量%、好ましくは7〜8重量%となるよう、適宜、希釈液又は/及び湿潤茶葉を添加して濃度調整を行なう。このように、あらかじめ調整槽21内に導入された炭酸水を流動化させ、調整槽21内の流体物の固形物濃度を所定範囲内とすることにより、調整槽21内の流体物をスムーズに粗破砕機31に送出できる。
【0041】
ここで、茶葉路25に近赤外線分光法を利用した非接触式の含水率計(図示せず)を設ければ、調整槽21に導入される湿潤茶葉の含水率を迅速に測定し、濃度調整に必要な希釈液の添加量を速やかに求めて希釈水の添加量を高い精度で制御できる。また、添加剤貯槽22からビタミンC、ポリフェノール類、ソルビン酸等の酸化防止剤や防腐剤を添加剤として添加してもよい。ポリフェノール類の一種であるカテキンは、元来、茶葉に含まれ抗酸化や抗菌等の作用を備える成分であり、添加剤としてカテキンを添加することで、調整槽21に導入される湿潤茶葉(特に成分変動の大きい茶滓)のカテキン含有量を調整して製造される茶ペーストの品質を均質化できることから、添加剤として特に好ましい。
【0042】
本実施態様では、希釈液として抗酸化水である炭酸水を用い、あらかじめ炭酸を溶解させた炭酸水を調整槽21に導入しているが、調整槽21にマイクロバブル発生手段(図示せず)を備え付け、微細化した炭酸ガスを調整槽21内に送り込み、水道水等の希釈液に溶解させてもよい。破砕茶葉は希釈液に比して粘性が高く、マイクロバブルの保持効果が高いため、調整槽21内の流体物に循環された破砕茶葉が含まれる状態でマイクロバブルを吹き込むことが好ましい。抗酸化性ガスの吹き込み量は、希釈液に対して1〜10容量%程度とすることが好ましい。
【0043】
調整槽21では、上述した濃度調整工程が行なわれ、必要に応じて添加剤の添加や抗酸化性ガスの吹込みにより、湿潤茶葉の成分調整や品質保持処理が併せて行なわれる。次いで、調整槽21から送出された希釈液と湿潤茶葉との混合物(希釈茶葉)が第1接続管35を介して粗破砕機31に導入され粗破砕工程で粗破砕される。具体的には、粗破砕機31は破砕羽根32を有することから、粗破砕機31の筐体30内部に導入された希釈茶葉は筐体30内部を移動することにより破砕羽根32で破砕される。なお、破砕羽根32の後方にスリット付きの板34が設けられており、希釈茶葉はこの板34に堰き止められる形で破砕される。こうして粗破砕された茶滓(粗破砕茶葉)は、移送羽根33により粗破砕機31から送り出し、循環路36を介して調整槽21に循環させる。
【0044】
本実施態様では調整槽21には、粗破砕及び循環工程を経て循環された粗破砕茶葉と茶葉路25から導入される未処理の湿潤茶葉(茶滓)とが導入され、循環処理がされることにより、固形物濃度が次第に増加するとともに、固形物の粒径が次第に小さくなる。調整槽21をバッチ式で用いる場合は、調整槽21内の流体物量が所定値になった時点で茶滓の導入を停止し、流体物量の固形物濃度が上記範囲内となるように希釈液の導入量を停止又は継続しながら、粗破砕工程及び循環工程を継続し、調整槽21内の流体物の粒径が概ね均質化した時点で、循環路36の途中に接続した第2接続管45から、調整槽21内の流体物を微破砕機41に送る。
【0045】
微破砕機41には、破砕羽根42の後方にスリット付きの板44が設けられており、粗破砕茶葉はこの板44に堰き止められる形でさらに細かく破砕される。板44のスリットの大きさは、500〜2000μm程度が好ましく、微破砕機41内部での繊維等の詰まりを防止するため、微破砕機41への粗破砕茶葉の導入速度は、粗破砕機31への希釈茶葉の導入速度に比して小さくする。
【0046】
微破砕機41では、粗破砕茶葉がさらに細かく破砕され、平均粒径が500μm以下となった微破砕茶葉が得られる。本実施態様では、微破砕茶葉は回転砥石を備える湿式ミルのような磨砕機51で磨際され、平均粒径が50〜100μmの茶滓ペーストが得られる。摩砕機51によるペースト化処理では、摩擦熱により微破砕茶葉が加熱され、温度が20〜40℃程度上昇する。そこで、本発明ではこの茶滓ペーストを滅菌機61に送り、滅菌機で60〜95℃、好ましくは85〜90℃で30分以上、又は140℃で2分間、加熱滅菌する滅菌工程を行なう。滅菌された茶滓ペースト滅菌機61の後段に設けられた充填機71を用い、滅菌された包装容器に充填する。このように、茶滓ペーストを滅菌し、さらに包装容器に充填することで、長期間保存でき、茶滓ペーストの搬送及び保管を容易とする。
【0047】
なお製造装置11内には、粗破砕茶葉を貯留する粗破砕茶葉貯槽、微破砕茶葉を貯留する微破砕茶葉貯槽、茶滓ペーストを貯留するペースト貯槽等(いずれも図示せず)を設けてもよい。この場合、粗破砕茶葉貯槽は第2接続管45と接続し、微破砕茶葉貯槽は第3接続管55、ペースト貯層は第4接続管65とそれぞれ接続する。このような貯槽を設けることにより、様々な粒径に破砕されたスラリ又はペースト状物を取り出すことができる。なお各貯槽には、内部に抗酸化性ガスを充填することで、各貯槽の貯留物の品質劣化を防止することが好ましい。
【実施例】
【0048】
[実施例]
実施例として、図1に示す製造装置11を用いた実験を行なった。調整槽21は容量250Lとし、粗破砕機31としてカッタポンプ(コマツゼノア株式会社製)、微破砕機41としてインラインミル(特殊機化工業株式会社製)、磨砕機51として砥石を有する超微粒磨砕機(商品名「スーパーマスコロイダー」、増幸産業株式会社製)、滅菌機61として加熱滅菌機、充填機71としてバッグインボックス(B.I.B)式無菌充填機を用いた。
【0049】
調整槽21にはあらかじめ、希釈液として炭酸水(炭酸濃度0.01容積%、pH4)100Lを入れ、粗破砕機31を稼動させて希釈液を流動させた状態で、茶葉として煎茶を原料とする緑茶飲料の製造過程で発生した茶滓(含水率80重量%)100Lを5〜10分かけて導入した。調整槽21には希釈液路26から炭酸水を適宜、追加添加しながら調整槽21内の流体物を供給速度50L/分で粗破砕機31に送り、粗破砕機31で粗破砕して調整槽21に循環させた。茶滓及び希釈液の調整槽21への供給は、茶滓導入量100kg、希釈液導入量120Lとなった時点で停止し、さらに20分間の粗破砕及び循環処理を行なった。上記処理により固形物濃度9重量%、平均粒径2000μmの粗破砕茶葉が得られた。
【0050】
次に、粗破砕茶葉を調整槽21から粗破砕機31に送り、さらに供給速度5L/分で微破砕機41を通過させ、平均粒径500μmの微破砕茶葉とした。これを磨砕機51に供給速度2L/分で供給し、平均粒径50μm、温度45℃の茶滓ペーストを得た。得られた茶滓ペーストは、滅菌機61で85℃、30分間加熱し、定量サニタリーポンプを介して無菌条件下、計量充填機71によりビニール製の包装容器に充填した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、食品添加物等として利用できる茶ペーストの製造に用いることができ、特に茶滓をペースト状にするために利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を実施するために用いられる茶ペースト製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0053】
11 茶ペースト製造装置
21 調整槽
23 攪拌機
31 粗破砕機
41 微破砕機
51 磨砕機
61 滅菌機
71 充填機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉を液体に浸漬させて得られた湿潤茶葉を、攪拌機を備えた調整槽に導入して希釈液と混合し固形物濃度を調整して希釈茶葉を得る濃度調整工程と、
前記濃度調整工程で得られた希釈茶葉を前記調整槽から送り出し粗破砕機を通過させて粗破砕する粗破砕工程と、
前記粗破砕工程の粗破砕機を通過した粗破砕茶葉を前記濃度調整工程の調整槽に循環させる循環工程と、を含む茶ペーストの製造方法。
【請求項2】
前記濃度調整工程において、あらかじめ希釈液を前記調整槽に導入して流動化させた状態で前記湿潤茶葉を導入する請求項1に記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項3】
前記濃度調整工程において、前記湿潤茶葉の含水率を測定し前記希釈液の量を制御する請求項1又は2に記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項4】
近赤外分光法による非接触式含水率計を用いて前記湿潤茶葉の含水率を測定する請求項3に記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項5】
前記濃度調整工程において前記湿潤茶葉に添加剤を添加する請求項1から4のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項6】
前記濃度調整工程において、前記調整槽にマイクロバブル発生手段を設け抗酸化性ガスを吹き込む請求項1から5のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項7】
前記循環工程から前記濃度調整工程の調整槽に循環され平均粒径1000〜5000μmの固形物を含む前記粗破砕茶葉を、前記調整槽から排出して微破砕してペースト状の茶ペーストを得るペースト化工程をさらに含む請求項1から6のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項8】
前記ペースト化工程で得られた茶ペーストを滅菌する滅菌工程をさらに含む請求項7に記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項9】
前記滅菌工程で滅菌された茶ペーストを無菌状態で包装容器に充填する充填工程をさらに含む請求項8に記載の茶ペーストの製造方法。
【請求項10】
前記湿潤茶葉は茶滓である請求項1から9のいずれかに記載の茶ペーストの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−174711(P2006−174711A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368287(P2004−368287)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】